説明

膜ろ過装置の運転制御方法

【課題】
膜損傷の検知精度とろ過水の安全性を向上でき、運転員が状況を把握しやすい膜モジュールの損傷検知方法を実現する。
【解決手段】
制御装置8は、損傷検知センサー6の計測値と予め設定された第一の判定値を比較する第一の判定を行い、第一の判定で警報レベルと判定した場合は表示手段9に警報を表示させ、第一の判定値より大きい第二の判定値による第二の判定で損傷し原水遮断レベルと判定した場合は流入弁3の閉鎖を行い、表示手段9で損傷を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水に含まれる濁質や病原性原虫などの分離除去のために設置される膜ろ過装置の運転制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜ろ過装置は、設置されている膜の孔径より大きな微粒子をほぼ100%除去でき、維持管理も容易なため、浄水施設への導入が増加している。膜は、モジュール単位に加工されており、中空糸膜の場合、膜モジュール内に中空糸が数千本組み込まれている。浄水施設では、複数の膜モジュールでユニットを構成し、膜モジュールを制御している。
【0003】
膜ろ過装置は、ろ過,逆洗,薬品洗浄などの操作が繰り返されるため、膜モジュールが損傷する恐れがある。損傷すると、濁質が処理水中に混入してしまうため、安心,安全な浄水を常時供給するためには、膜モジュールの損傷をオンラインで、高精度に検知できるシステムが必要となる。
【0004】
膜モジュールの損傷を検知する方法には、以下の方法がある。〔特許文献1〕に記載のように、ろ過水の濁度を検知し、濁度が所定値以上の値を所定時間以上検知され、その後の圧力保持試験で損傷を判定する装置がある。また、〔特許文献2〕に記載のように、透明な配管に光学的センサーを設置し、膜の損傷を検知する装置がある。〔特許文献3〕に記載のように、膜ろ過装置の後段に紫外線装置を設置し、膜の損傷時に紫外線を照射する装置がある。
【0005】
【特許文献1】特開2000−279770号公報
【特許文献2】特開2000−342937号公報
【特許文献3】特開2007−98338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
〔特許文献1〕に記載の膜の損傷検知装置は、原水水質の変動、例えば原水中の濁質粒径が小さい場合は、正常な膜でもろ過水の濁度が増加する恐れがある。また、1次判定の状態にあることを運転員が把握できず、対応が遅れる恐れがある。
【0007】
〔特許文献2〕に記載の損傷検知装置では、透明な配管に光学センサーを設置するため、周囲の光がセンサーに達する可能性があり、誤検知を引き起こす恐れがある。
【0008】
〔特許文献3〕に記載の水処理装置では、膜の損傷時に紫外線を照射できるが、安全性を高めるために損傷時にはろ過を停止するのが望ましい。
【0009】
本発明の目的は、損傷検知センサーの誤検知を防止し、損傷判定時には自動で運転を停止するため検知精度とろ過水の安全性を向上でき、運転員が状況を把握しやすい膜モジュールの損傷検知方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、損傷判定時には自動で運転を停止するための検知精度とろ過水の安全性を向上できる膜ろ過装置の運転制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、原水を複数の膜モジュールでろ過し、ろ過水を得る膜ろ過装置の運転制御方法において、各々の膜モジュールのろ過水の配管にろ過水中の異物を検知する損傷検知センサーと、前記膜モジュールの上流側に原水を遮断できる流入弁と、前記流入弁の開閉を制御し、前記損傷検知センサーの計測値を受信する制御装置と、前記損傷検知センサーの前記計測値並びに前記制御装置の制御結果を表示するための表示手段とを備え、前記制御装置が前記損傷検知センサーの計測値を予め設定された第一の判定値と比較し、前記計測値が前記第一の判定値以上で警報を表示し、前記計測値が前記第一の判定値よりも大きい第二の判定値以上で損傷と判定し、前記流入弁を閉鎖するものである。
【0012】
また、前記制御装置は、前記計測値が前記第二の判定値を超え、少なくとも一つ以上の他の該損傷検知センサーの計測値が前記第一の判定値よりも小さい場合に損傷と判定し、前記流入弁を閉鎖するものである。
【0013】
また、前記制御装置は、前記計測値を予め設定された判定値と比較し、前記計測値が前記判定値以上で警報を表示し、前記判定値を超えた継続時間が設定された時間に達した場合に損傷と判定し、前記流入弁で原水を閉鎖するものである。
【0014】
また、前記制御装置は、前記計測値が前記判定値を超えた継続時間が所定時間に達し、少なくとも一つ以上の他の該損傷検知センサーの計測値が該判定値よりも小さい場合に損傷と判定し、前記流入弁を閉鎖するものである。
【0015】
前記表示手段は、前記制御装置の正常レベル,警報レベル,原水遮断レベルの判定に応じて、判定結果毎に前記損傷検知センサーの色,形,数値,文章の内少なくとも一つ以上の表示を変更するものである。
【0016】
また、前記制御装置は、前記損傷検知センサーの計測値の平均値を求め、前記計測値と前記平均値の差の絶対値が第一の判定値以上で警報を表示させ、前記絶対値が第一の判定値よりも大きい第二の判定値以上で損傷と判定し前記流入弁を閉鎖するものである。
【0017】
また、前記制御装置は、前記計測値と前記平均値の差の絶対値が判定値以上で警報を表示し、前記判定値を超えた継続時間が設定された時間になった場合に損傷と判定し、前記流入弁を閉鎖するものである。
【0018】
また、前記表示手段は、前記損傷検知センサーの計測値と平均値,判定値を表示し、制御装置の正常レベル,警報レベル,原水遮断レベルの判定に応じて、判定結果毎に該損傷検知センサーの色,形,数値,文章の内少なくとも一つ以上の表示を変更するものである。
【0019】
また、前記制御装置に前記損傷検知センサーの計測値の初期値を保存し、前記損傷検知センサーの計測値の現状値と比較し、前記現状値が前記初期値に対し所定値以下になった場合にセンサーを異常と判定し、前記表示手段で表示するものである。
【0020】
また、前記制御装置の信号によってろ過水に紫外線を照射する紫外線装置を備え、前記制御装置が前記表示手段に警報を表示するとともに、前記紫外線装置に紫外線を照射する信号を出力するものである。
【0021】
前記損傷検知センサーは、配管の向かい合う位置に、光が透過してろ過水が漏れることのない窓を設け、前記窓の外側に発光素子、もう一方に受光素子を備えて構成され、前記受光素子の計測信号を前記制御装置に送るものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、膜モジュールの損傷検知を第一の判定で警報を出し、第二の判定で損傷時には運転を停止でき、検知精度とろ過水の安全性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の各実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0024】
本発明の実施例1を図1から図2により説明する。図1は、実施例1の膜ろ過装置の構成図である。
【0025】
膜モジュール1−1〜1−4には、MF膜(精密ろ過膜)やUF膜(限外ろ過膜)などが組み込まれており、原水中の濁質や微粒子を除去する。膜モジュール1の上流には原水ポンプ2が設置され、配管を介して原水ポンプ2により原水が膜モジュール1に供給される。膜モジュール1と原水ポンプ2の間には、モータ弁や電磁弁などの流入弁3−1〜3−4が設置され、例えば流入弁3−1を閉鎖すると膜モジュール1−1のろ過を停止できる。
【0026】
膜モジュール1でろ過されたろ過水は、膜モジュール1の下流側に設置されたろ過水タンク4に一時的に貯留される。膜モジュール1とろ過水タンクを接続する配管の途中には、逆洗ポンプ5が設けられた配管が接続され、逆洗ポンプ5の起動によって、ろ過水タンク4のろ過水が膜モジュール1の2次側から供給され、膜表面に蓄積した濁質などを剥離させる。なお、図1では、逆洗排水の配管並びにろ過と逆洗の切り替えに必要な弁を省略している。
【0027】
膜モジュール1−1〜1−4の下流側のろ過水の配管には、損傷検知センサー6−1〜6−4が設置されている。損傷検知センサー6は、レーザーダイオードなどの発光素子と、フォトダイオードなどの受光素子を備えており、ろ過水中に微粒子や気泡などが混入することより、遮られる光量を計測でき膜の損傷を検知できる。
【0028】
損傷検知センサー6とろ過水タンク4の間の配管には流量計7が設置されおり、膜ろ過装置のろ過流量を計測する。損傷検知センサー6と流量計7の計測信号は、制御装置8に伝送される。
【0029】
制御装置8は、原水ポンプ2,逆洗ポンプ5へ信号を出力し、流量計7からの信号を基に設定された流量で運転する。制御装置8は、流入弁3−1〜3−4の開閉を制御し、必要に応じて膜モジュール1−1〜1−4のろ過を個別に停止する。制御装置8の入力信号や出力信号は液晶ディスプレー等の表示手段9に入力され、運転条件や膜損傷検知の状況などが表示される。
【0030】
実施例1の損傷検知方法について、図2のフローを用いて説明する。
【0031】
step1で、制御装置8は、損傷検知センサー6−1〜6−4の計測信号を受け取り、これらの計測値と予め設定された第一の判定値Aとを比較する。ここで、計測値は絶対値で判定するとよい。計測値が判定値A以下の場合は、正常レベルと判定して終了する。制御装置8は、例えば、損傷検知センサー6−1の計測値が判定値A以上の場合、step2で、警報レベルと判定して表示手段9に警報の表示を出す信号を与える。
【0032】
step3で、制御装置8は、計測値と第二の判定値Bとを比較する。判定値Bは判定値Aよりも大きい値に設定されている。例えば、損傷検知センサー6−1の計測値が判定値B以下の場合、警報レベルと判定して終了する。損傷検知センサー6−1の計測値が判定値B以上の場合、膜モジュール1−1が損傷により原水遮断レベルにあると判定する。
【0033】
step4で、制御装置8は、流入弁3−1の閉鎖を示するための信号を流入弁3−1に与え、損傷を表示するための信号を表示手段9に与えて終了する。制御装置8は、図2で示すフローを設定された間隔で実行し、膜モジュールの状態を監視する。
【0034】
表示手段9は、制御装置8からの信号によって、膜モジュールが正常レベル,警報レベル,原水遮断レベルのいずれにあるかを表示する。表示手段9では、計測値,センサーの色,形,コメント文,表示の点滅のうち少なくとも一つ以上を上記した3種のレベルに応じて変更する。レベルに応じて表示が変更されることにより、運転員は容易に膜損傷の有無を確認できる。
【0035】
図2に示すフローを、ろ過中に実行すると良い。本実施例で用いた損傷検知センサー6は、微粒子や気泡を検知できるので、ろ過から逆洗または逆洗からろ過への切り替え時に、配管内に溜まった気泡が損傷検知センサー6を通過すると、膜モジュール自体は正常でも損傷と判定される恐れがある。このため、ろ過の切替直後を除いたろ過中に図2で示すフローを実行することにしており、このようにすることで検知精度を向上できる。
【0036】
本実施例によれば、膜モジュールの損傷検知を、第一の判定で警報を出し、第二の判定で損傷と判断した時には運転を停止でき、検知精度とろ過水の安全性を向上できる。また、判定結果に応じて表示が変化するため運転員が状況を把握しやすい。
【実施例2】
【0037】
実施例1では原水水質の変動により、例えば原水中の濁質粒径が膜モジュールの膜孔径よりも小さくなった場合は、正常でもろ過水に微粒子が混入することがあり、損傷と誤検知する恐れがある。その場合は、図3に示すフローを実行するとよい。図3のフローは、図2のフローと同様であるが、図3示すフローでは、step3とstep4との間に、step3−2を追加している。
【0038】
制御装置8は、step3で、例えば、損傷検知センサー6−1の計測値が判定値B以上の場合は、step3−2に進む。制御装置8はstep3−2で他の損傷検知センサー6−2〜6−4の計測値と判定値Aとを比較する。他の損傷検知センサー6−2〜6−4の計測値の一つ以上が判定値A以上の場合は、原水水質に由来するものと判定し、警報レベルであるとして終了する。他の損傷検知センサー6−2〜6−4の計測値がいずれも判定値A以下の場合は、制御装置8は膜モジュール1−1が損傷していると判定し、流入弁3−1を閉鎖する信号を流入弁3−1に、損傷を表示するための信号を表示手段9に与えて終了する。
【0039】
本実施例によれば、膜モジュールの損傷検知を第一の判定で警報を出し、第二の判定で損傷時には運転を停止できるので、検知精度とろ過水の安全性を向上できる。また、膜モジュール毎に損傷検知センサーを設置し、各々を比較しているので、原水水質に由来する誤検知を防止できる。
【実施例3】
【0040】
本発明の実施例3を図4により説明する。本実施例の膜ろ過装置は、実施例1と同様に構成されており、制御装置8による膜損傷の検知方法が異なる。
【0041】
本実施例を図4の制御フローによって説明する。step10で、制御装置8は、損傷検知センサー6−1〜6−4からの計測信号を受け取り、計測値と予め設定された判定値αとを比較する。ここで、計測値は絶対値で判定するとよい。
【0042】
各計測値が判定値α以下の場合は、正常レベルと判定し終了する。制御装置8は、例えば、損傷検知センサー6−1の計測値が判定値α以上の場合、警報レベルと判定し、step11で、表示手段9に警報の表示を出す信号を与える。
【0043】
step12で、制御装置8は、損傷検知センサー6−1の計測値が警報レベルに達している継続時間を求め、継続時間tと予め設定された判定時間Tとを比較する。制御装置8は、継続時間tが判定時間T以下の場合、警報レベルと判定し終了する。制御装置8は、継続時間tが判定時間T以上の場合、膜モジュール1−1が損傷により原水遮断レベルにあると判定する。制御装置8は、流入弁3−1を閉鎖する信号を流入弁3−1に、損傷を表示するための信号を表示手段9に与え終了する。制御装置8は、図4に示すフローを設定された間隔で実行し、膜モジュールの状態を監視する。
【0044】
本実施例によれば、膜モジュールの損傷検知をセンサー値の判定で警報を出し、センサー値の継続時間の判定で損傷と判定して運転を停止できるため、検知精度とろ過水の安全性を向上できる。
【実施例4】
【0045】
実施例3では、原水水質の変動、例えば、原水中の濁質粒径が膜モジュールの膜孔径よりも小さい場合、正常でもろ過水に微粒子が混入する場合があることを説明した。そのような場合は、図5に示すフローを実行するとよい。
【0046】
図5に示すフローでは、図4に示すフローのstep12とstep13との間にstep12−2を設けている。
【0047】
step13で、例えば、損傷検知センサー6−1の計測値が警報レベルに達している継続時間tが判定時間T以上の場合、step12−2に進む。制御装置8は、step12−2で、他の損傷検知センサー6−2〜6−4の計測値と判定値αとを比較する。他の損傷検知センサー6−2〜6−4の計測値の一つ以上が判定値α以上の場合は、原水水質に由来するものと判定し、警報レベルと判断して終了する。他の損傷検知センサー6−2〜6−4の計測値がいずれも判定値α以下の場合は、制御装置8は、膜モジュール1−1が損傷により原水遮断レベルにあると判定し、流入弁3−1を閉鎖するための信号を流入弁3−1に、損傷を表示するための信号を表示手段9に与え終了する。
【0048】
本実施例によれば、膜モジュールの損傷検知をセンサー値の判定で警報を出し、センサー値の継続時間の判定で損傷と判定し運転を停止できるため、検知精度とろ過水の安全性を向上できる。さらに、膜モジュール毎に損傷検知センサーを設置し、各々を比較しているので、原水水質に由来する誤検知を防止でき、検知精度を向上できる。
【実施例5】
【0049】
本発明の実施例5を図6により説明する。本実施例の膜ろ過装置は、実施例1と同様に構成されており、制御装置8による膜損傷の検知方法が異なる。
【0050】
本実施例を図6の制御フローによって説明する。step20で、制御装置8は、損傷検知センサー6−1〜6−4の計測値の平均値を求める。平均値の算出は稼動している全てのセンサーを対象とする。制御装置8は、表示手段9に平均値を表示させる。
【0051】
step21で、制御装置8は、損傷検知センサー6の中の一つの計測値と上述して平均値との差Cを求め、Cの絶対値(|C|)をとって、第一の判定値aとを比較する。制御装置8は、絶対値|C|が判定値aに比べ小さい場合は、正常レベルと判定し終了する。制御装置8は、例えば、損傷検知センサー6−1の計測値で求めた絶対値|C|が判定値a以上の場合は、警報レベルと判定し、step22で、表示手段9に警報の表示を出す信号を与える。
【0052】
step23で、制御装置8は、絶対値|C|と第二の判定値bとを比較する。判定値bは、判定値aに比べ大きい値に設定されている。絶対値|C|が判定値b以下の場合は、警報レベルと判定し終了する。絶対値|C|が判定値b以上の場合は、制御装置8は、膜モジュール1−1が損傷により原水遮断レベルにあると判定する。
【0053】
step24で、制御装置8は、流入弁3−1を閉鎖するための信号を流入弁3−1に、損傷を表示するための信号を表示手段9に与え終了する。制御装置8は、図6で示すフローを設定された間隔で実行し、膜モジュールの状態を監視する。
【0054】
制御装置8は、損傷検知センサー6−1〜6−4の計測値の初期値(L0)のデータを保存し、現状値(L)と比較し、L<Β×L0になったときにセンサーが異常であると判定し、表示手段9で表示する。このため、センサーのメンテナンスを適切に行うことができ、センサーの劣化や配管の汚れなどによる検知感度の低下を防止できる。ここで、Βは0.1〜0.7程度に設定すると良い。なお、一部の損傷検知センサー6を交換した結果、検知感度が回復し計測値が増加また減少する場合があるため、計測値の平均値の算出には予め補正できるように補正式を組み込んでおくと良い。
【0055】
本実施例によれば、膜モジュールの損傷検知を第一の判定で警報を出し、第二の判定で損傷時には運転を停止でき、検知精度とろ過水の安全性を向上できる。また、膜モジュール毎に損傷検知センサーを設置し、各々を比較しているので、原水水質に由来する誤検知を防止できる。また、判定結果で表示を変化させるため運転員が状況を把握しやすい。
【実施例6】
【0056】
図7に本発明の実施例6の制御フローを示す。本実施例では、実施例5のstep23の代わりに、step22−2を設けている。
【0057】
制御装置8は、step22−2で、例えば、損傷検知センサー6−1が警報レベルに達している継続時間を求め、継続時間t1と予め設定した判定時間T1とを比較する。制御装置8は、継続時間t1が判定時間T1以下の場合は、警報レベルと判定し終了する。制御装置8は、継続時間t1が判定時間T1以上の場合は、膜モジュール1−1が損傷により原水遮断レベルにあると判定する。制御装置8は、流入弁3−1を閉鎖するための信号を流入弁3−1に、損傷を表示するための信号を表示手段9に与え終了する。制御装置8は、図7で示すフローを設定された間隔で実行し、膜モジュールの状態を監視する。
【0058】
本実施例によれば、膜モジュールの損傷検知をセンサーレベルの判定で警報を出し、センサー値の継続時間の判定で損傷と判定し運転を停止できるため、検知精度とろ過水の安全性を向上できる。また、膜モジュール毎に損傷検知センサーを設置して各々を比較しているので、原水水質に由来する誤検知を防止できる。
【実施例7】
【0059】
本発明の実施例7を図8に示す。本実施例は、図1に示す実施例と同様に構成されているが、本実施例では、損傷検知センサー6−1〜6−4の下流に紫外線照射装置10−1〜10〜4を設置している。紫外線照射装置10は、制御装置8でon−offが制御される。紫外線を照射することで、膜モジュール1−1〜1−4が損傷した場合でもろ過水中に混入した病原性ウイルス等を無害化できる。紫外線照射装置はろ過水タンク4内に設置しても良い。
【0060】
制御装置8は、実施例1から実施例6で説明した何れかの制御方法で運転している。制御装置8は、損傷検知センサー6−1〜6−4の計測値が警報レベルにあるときに、膜モジュール1−1〜1−4に対応する紫外線照射装置10−1〜10−4をonにする。警報レベルの段階で紫外線を照射することでろ過水の安全性を確保できる。なお、損傷と判定した場合には、ろ過を停止するので、紫外線照射装置10−1〜10−4はoffにする。
【0061】
本実施例によれば、膜モジュールが損傷と判定される前の警報段階で紫外線を照射するため、ろ過水の安全性を向上できる。
【実施例8】
【0062】
実施例1から実施例7で説明した損傷検知センサーの横断面図を図9に示す。ろ過水配管91の一部に透過窓92−1,92−2が設けられている。ろ過水配管91は、図1または図7に示されるろ過水の配管である。
【0063】
透過窓92は、光が透過するがろ過水が漏洩しない密封構造となっている。透過窓92−1の外側にレーザーダイオードなどの発光素子93を、透過窓92−2の外側にはフォトダイオードなどの受光素子94を配置している。発光素子93と受光素子94は向かい合って設置されており、発光素子93の光を受光素子94で受光して、ろ過水中に微粒子や気泡などが混入するのを計測している。
【0064】
発光素子93と受光素子94は、それぞれ発光素子固定具95と受光素子固定具96でろ過水配管91に固定されている。発光素子固定具95と受光素子固定具96は、外側から透過窓92への光を遮断する構造となっており、受光素子94は発光素子93の光を受光できる。ろ過水中に微粒子が混在すると、受光素子94の受光量が変化する。受光量の計測値は制御装置8に伝送される。
【0065】
なお、図9には、電源や計測信号の配線は省略してある。発光素子93や受光素子94の不具合により、損傷検知センサーが故障した場合には、発光素子固定具95と受光素子固定具96を取り外し、部品を交換できるので膜ろ過装置の運転を継続しながら修理できる。
【0066】
本実施例によれば、損傷検知センサーが故障や検知感度が低下した場合でも、膜ろ過装置の運転を停止することなく修理または交換できるため、検知精度とろ過水の安全性を向上できる。
【0067】
以上説明したように、各実施例によれば、膜モジュールの損傷検知を第一の判定で警報を出し、第二の判定で損傷時には運転を停止でき、検知精度とろ過水の安全性を向上できる。また、膜モジュール毎に損傷検知センサーを設置し、各々を比較しているので、原水水質に由来する誤検知を防止できる。また、判定結果で表示が変化するため運転員が状況を把握しやすい。また、検知センサーは配管の外側に設置するため、膜ろ過装置を停止することなく交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施例1である膜ろ過装置の構成図である。
【図2】膜ろ過装置の制御フローの一例を示す流れ図である。
【図3】本発明の実施例2である膜ろ過装置の制御フロー図である。
【図4】本発明の実施例3である膜ろ過装置の制御フロー図である。
【図5】本発明の実施例4である膜ろ過装置の制御フロー図である。
【図6】本発明の実施例5である膜ろ過装置の制御フロー図である。
【図7】本発明の実施例6である膜ろ過装置の制御フロー図である。
【図8】本発明の実施例7である膜ろ過装置の構成図である。
【図9】本発明の実施例8である損傷検知センサーの横断面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 膜モジュール
2 ろ過ポンプ
3 流入弁
4 ろ過水タンク
5 逆洗ポンプ
6 損傷検知センサー
7 流量計
8 制御装置
9 表示手段
10 紫外線照射装置
91 ろ過水配管
92 透過窓
93 発光素子
94 受光素子
95 発光素子固定具
96 受光素子固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を複数の膜モジュールでろ過し、ろ過水を得る膜ろ過装置の膜モジュールの損傷検知方法において、各々の膜モジュールの下流側のろ過水の配管に設けられたろ過水中の異物を検知する損傷検知センサーと、前記膜モジュールの上流側に原水を遮断するために設けられた流入弁と、前記流入弁の開閉を制御し、前記損傷検知センサーの計測値を受信する制御装置と、前記損傷検知センサーの計測値、前記制御装置の制御結果を表示するための表示手段とを備え、前記制御装置が前記損傷検知センサーの計測値と予め設定された第一の判定値と比較し、前記計測値が前記第一の判定値以上で警報を表示し、前記計測値が前記第一の判定値よりも大きい第二の判定値以上で損傷と判定し、前記流入弁を閉鎖することを特徴とする膜ろ過装置の運転制御方法。
【請求項2】
請求項1において、前記制御装置は、前記計測値が前記第二の判定値を超え、少なくとも一つ以上の他の前記損傷検知センサーの計測値が前記第一の判定値よりも小さい場合に損傷と判定することを特徴とする膜ろ過装置の運転制御方法。
【請求項3】
原水を複数の膜モジュールでろ過し、ろ過水を得る膜ろ過装置の膜モジュールの損傷検知方法において、各々の膜モジュールの下流側のろ過水の配管に設けられたろ過水中の異物を検知する損傷検知センサーと、前記膜モジュールの上流側に原水を遮断するために設けられた流入弁と、前記流入弁の開閉を制御し、前記損傷検知センサーの計測値を受信する制御装置と、前記損傷検知センサーの計測値、前記制御装置の制御結果を表示するための表示手段とを備え、前記制御装置が前記損傷検知センサーの計測値を予め設定された判定値と比較し、前記計測値が前記判定値以上で警報を表示し、前記判定値を超えた継続時間が設定された時間に達した場合に損傷と判定し、前記流入弁で原水を閉鎖することを特徴とする膜ろ過装置の運転制御方法。
【請求項4】
請求項3において、前記制御装置は、前記計測値が前記判定値を超えた継続時間が設定された時間に達し、少なくとも一つ以上の他の損傷検知センサーの計測値が前記判定値よりも小さい場合に損傷と判定し、前記流入弁を閉鎖することを特徴とする膜ろ過装置の運転制御方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一つの膜ろ過装置の運転制御方法において、前記表示手段は前記制御装置の正常レベル,警報レベル,原水遮断レベルの判定に応じて、判定結果毎に損傷検知センサーの色,形,数値,文章の内少なくとも一つ以上の表示を変更することを特徴とする膜ろ過装置の運転制御方法。
【請求項6】
原水を複数の膜モジュールでろ過し、ろ過水を得る膜ろ過装置の運転制御方法において、各々の膜モジュールのろ過水の配管に設置されたろ過水中の異物を検知する損傷検知センサーと、前記膜モジュールの上流側に膜モジュール毎に設置された原水を遮断できる流入弁と、前記流入弁の開閉を制御し、前記損傷検知センサーの計測値を受信する制御装置と、前記損傷検知センサーの計測値、前記制御装置の制御結果を表示するための表示手段とを備え、前記制御装置は、前記損傷検知センサーの計測値の平均値を求め、該計測値と前記平均値の差の絶対値が第一の判定値以上で警報を表示させ、前記絶対値が第一の判定値よりも大きい第二の判定値以上で損傷と判定し、前記流入弁を閉鎖することを特徴とする膜ろ過装置の運転制御方法。
【請求項7】
原水を複数の膜モジュールでろ過しろ過水を得る膜ろ過装置の膜モジュールの損傷検知方法において、各々の膜モジュールのろ過水の配管にろ過水中の異物を検知する損傷検知センサーと、前記膜モジュールの上流側に膜モジュール毎に原水を遮断できる流入弁と、前記流入弁の開閉を制御し、前記損傷検知センサーの計測値を受信する制御装置と、前記損傷検知センサーの計測値、前記制御装置の制御結果を表示するための表示手段とを備え、前記制御装置は、前記損傷検知センサーの計測値の平均値を求め、計測値と前記平均値の差の絶対値が判定値以上で警報を表示し、前記判定値を超えた継続時間が設定された時間に達した場合に損傷と判定し、前記流入弁で原水を閉鎖することを特徴とする膜ろ過装置の運転制御方法。
【請求項8】
請求項6又は7の膜ろ過装置の運転制御方法において、前記表示手段は前記損傷検知センサーの計測値と前記平均値,前記判定値を表示し、前記制御装置の正常レベル,警報レベル,原水遮断レベルの判定に応じて、判定結果毎に該損傷検知センサーの色,形,数値,文章の内少なくとも一つ以上の表示を変更することを特徴とする膜ろ過装置の運転制御方法。
【請求項9】
請求項6から8の何れか一つの膜ろ過装置の運転制御方法において、前記制御装置に前記損傷検知センサーの計測値の初期値を保存し、前記損傷検知センサーの計測値の現状値と比較し、前記現状値が前記初期値に対し所定値以下になった場合にセンサーを異常と判定し、前記表示手段で表示することを特徴とする膜モジュールの損傷検知方法。
【請求項10】
請求項1から9の何れか一つの膜ろ過装置の運転制御方法において、前記制御装置は膜モジュールのろ過時に損傷検知の判定を行うことを特徴とする膜ろ過装置の運転制御方法。
【請求項11】
請求項1から10の何れか一つの膜ろ過装置の運転制御方法において、前記制御装置の信号によってろ過水に紫外線を照射する紫外線装置を備え、前記制御装置が前記表示手段に警報を表示するとともに、前記紫外線装置に紫外線を照射する信号を出力することを特徴とする膜ろ過装置の運転制御方法。
【請求項12】
請求項1から11の何れか一つの膜ろ過装置の運転制御方法において、前記損傷検知センサーは配管の向かい合う位置に、光が透過しろ過水が漏れることのない密封窓を設け、前記窓の外側の一方に発光素子、他方に受光素子を備え、前記受光素子の計測信号を前記制御装置に送信することを特徴とする膜ろ過装置の運転制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−233559(P2009−233559A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82354(P2008−82354)
【出願日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【特許番号】特許第4277052号(P4277052)
【特許公報発行日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】