説明

膜モジュールエレメント

層状シート構造体は、少なくとも1つのガス透過性で液状水分不透過性の層と、ガス透過性で水分不透過性の層に近接する、波形シートから形成されているガス送達層と、を含有する。波形シートは波形を有し、これは、ガスをガス透過性層へと運搬することができる流路を形成する。層状シート構造体の一実施形態としては、1センチメートルあたり20ダイン未満の表面エネルギーを有するガス透過性、液状水分不透過性層が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、膜曝気バイオリアクター(membrane aerated bioreactor)(MABR)で使用するための膜モジュールエレメントに関する。特に本発明は、ガス送達層に近接する、少なくとも1つのガス透過性の液状水分不透過性の層を有する膜モジュールエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
水処理プロセスは、通常、廃水中の望ましくない材料の分解を触媒するために、微生物、主にバクテリアを使用する。多くの廃水処理プロセスに共通の特徴は、微生物群への酸素の供給である。固定化微生物層が、ガス透過性水分不透過性膜に支持されており、そして酸素または他のガスが、膜を通して微生物に直接的に供給される、膜曝気バイオリアクター(MABR)は、廃水処理のための都合のよい固定化バイオマスプロセスとして提案されている。水濾過の用途に使用されるものと同様に、中空繊維およびフラットシート型膜エレメントの両方がMABRにおける使用のために提案されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、少なくとも1つのガス透過性で液状水分不透過性の層と、ガス透過性で水分不透過性の層に近接する、波形シートから形成されているガス送達層と、を含有する層状シート構造体を含む。波形シートは波形を有し、これは、ガスをガス透過性層へと運搬することができる流路を形成する。本発明は、1センチメートルあたり20ダイン未満の表面エネルギーを有する層状シート構造体をさらに含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0004】
本発明の層状シート構造体は、膜曝気バイオリアクターにおいて使用するための波形支持シートに取り付けられた膜層を含む。
【0005】
本明細書で使用される場合、用語「微多孔性」は、バブルポイント細孔径ASTM−F−316−80によって測定された場合に、0.05マイクロメートル〜3.0マイクロメートルの平均細孔径を有するフィルム、膜またはフィルム層を指す。
【0006】
本明細書で使用される場合、用語「超多孔性」は、バブルポイント細孔径ASTM−F−316−80によって測定された場合に、0.001ミクロン〜0.05ミクロンの平均細孔径を有するフィルム、膜またはフィルム層を指す。
【0007】
本明細書で使用される場合、用語「疎水性」は、液状水分または極性溶媒によって湿潤されず、かつそれらの構造を通して液状水分を弾いて、通過を防止する微多孔性膜材料を意味する。
【0008】
本明細書で使用される場合、用語「親水性」は、水分と結合するか、または水分を吸収する強い傾向を有することを意味する。
【0009】
本明細書で使用される場合、用語「疎油性」は、油、グリースまたは炭化水素溶媒のような低表面エネルギー流体によって湿潤されない微多孔性膜材料を意味する。また用語「疎油性」は、油またはグリースを弾くか、あるいは油またはグリースと結合しない傾向を含むことも意味する。
【0010】
本明細書で使用される場合、用語「波形」は、ひだ、または平行および交互の隆起および溝の形状を有することを意味する。波形は、のこぎり歯および正弦プロフィール、ならびに交互の隆起および溝を含む他のプロフィールを含む。
【0011】
本明細書で使用される場合、用語「水分不透過性」は、標準温度および圧力条件下で液状水分に不透過性であることを意味する。
【0012】
本明細書で使用される場合、用語「巨大分子添加剤」は、フルオロポリマーのような少なくとも8個の炭素を有するフルオロケミカル分子を含有する添加剤を指す。さらに、用語「巨大分子添加剤」が、反応性ヒドロキシルおよび/またはアシル官能基を有する1以上の脂肪族多官能性化合物、1以上のフルオロケミカル一官能性化合物、ならびに/あるいは12個〜72個の炭素原子を有する1以上の脂肪族一官能性化合物の反応生成物を含むことは理解されるべきである。
【0013】
本明細書で使用される場合、用語「多孔性膜」は、他の成分の輸送を選択的に不可能にしながら、構造を通して流体混合物の少なくとも一成分の選択的輸送を可能にする、複数の細孔または空孔を含む構造を指す。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「微生物支持層」は、微生物の集団がそれに取付けられ得るか、または接着され得、そして選択的様式で機能し得る層を指す。
【0015】
図1に示されるように、層状シート構造体10は、ガス透過性層12のベース表面14において、波形シートの形態のガス送達層13に取り付けられたガス透過性で液状水分不透過性の層12を含む。ガス送達層13の波形シートは、複数の壁15および複数の不連続流路16を含み、これは、酸素含有ガスのようなガスの、ガス透過性層12のベース表面14への送達を可能にする。
【0016】
ガス透過性層12は、ガス透過性層12を通してガスの透過または通過を可能にする。本発明の記載は、主に、ガス透過性層を通してガスの通過を可能にする好ましいガス透過性層12の観点からなされているが、本発明の利点を実現しながら、好ましいガス透過性層の代わりに、またはそれと組み合わせて、いずれの他の蒸気または水蒸気透過性層が代用されてもよい。
【0017】
ガス透過性層12は、約0.001マイクロメートル〜約3.0マイクロメートルの範囲であってよい細孔径を有する微多孔性または超多孔性である。好ましくは、ガス透過性層12の細孔径は、約0.5マイクロメートル未満である。好ましい最大細孔径は、廃水中の微生物のガス透過性層12の透過を防止するか、または層12における成長を防止する。加えて、ガス透過性層12は、実質的に非多孔性であってもよいが、拡散による非多孔性層の通過が観察されるように、注目のガスに対してなお十分に透過性である。
【0018】
本発明のガス透過性層12は、ガス透過性液状水分不透過性材料から一般的に製造される。ガス透過性層12の部分として使用されてよい材料のいくつかの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレンおよびそれらのコポリマー、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホンおよびそれらのコポリマー、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリ(フッ化ビニリデン)のようなフッ素樹脂、ポリ(ジメチルシロキサン)またはシリコーンゴムのようなシリコーンベースの材料、ガス透過性および液状水分不透過性にさせ得るいずれかの他の材料、またはそれらのいずれかの他の組み合わせが挙げられる。
【0019】
一般的に、ガス透過性で液状水分不透過性の膜を調製するために有用ないずれかの適切な技術および装置を使用して、ガス透過性層12を製造することができる。例として、米国特許第4,539,256号明細書(シップマン(Shipman))、米国特許第4,726,989号明細書(ムロジンスキー(Mrozinski))、米国特許第4,867,881号明細書(キンザー(Kinzer))、米国特許第5,120,594号明細書(ムロジンスキー(Mrozinski))および米国特許第5,238,623号明細書(ムロジンスキー(Mrozinski))に記載の、熱的誘導された相転移(TIPT)または熱的誘導された相分離(TIPS)プロセスを使用して、ガス透過性層12を調製することができる。
【0020】
本発明のガス透過性層を形成するために、TIPTプロセスは特に良好に適切である。本発明のために適切なガス転送および耐久性を有する半結晶性、フラットシート、微多孔性膜を形成するために、TIPTプロセスを使用する。TIPT膜は、約0.05マイクロメートル〜約1.0マイクロメートルの範囲の細孔径、および水中で、約0.7キログラム/メートル/時間(kg/m−h)〜34.0キログラム/メートル/時間の範囲の空気透過性を有し得、これは、ガス透過性層12に関して十分である。同様に、米国特許第3,432,585号明細書に開示されるような湿潤キャスティング技術を使用して、ガス透過性層12を製造してもよい。
【0021】
あるいは、本発明のガス透過性層12として、市販品として入手可能なガス透過性で水分不透過性の膜を使用してもよい。例えば、米国特許第5,176,953号明細書(ジャコビ(Jacoby)ら)、米国特許第5,236,963号明細書(ジャコビ(Jacoby)ら)および米国特許第5,317,035号明細書(ジャコビ(Jacoby)ら)に記載の微多孔性膜のような無機フィラーで装填(充填)された押出ポリオレフィンフィルムの配向によって調製された微多孔性膜は、ガス透過性層12としての使用のために適切である。
【0022】
同様に、ガス透過性層12として使用するために適切な微多孔性膜としては、米国特許第5,134,174号明細書(クー(Xu)ら)、米国特許第5,317,035号明細書(ジャコビ(Jacoby)ら)およびEP0,492,942号明細書(ジャコビ(Jacoby)ら)に開示される膜のような、ポリプロピレンまたはそれらのコポリマー、およびβ−球晶核化剤を含む組成物から調製されたものが挙げられる。
【0023】
本発明のガス送達層13は、近接するガス透過性層へのガスの送達を可能にする。操作の間、ガスは、ガス送達層13に沿ってガス透過性層12のベース表面14へと移動し、ガス透過性層12を通ってガス転送または拡散が生じ得る。
【0024】
好ましい実施形態において、ガス送達層13は、層状シート構造体10の耐久性を増強する不連続または別個の流路16を含む。例えば、層状シート構造体10のいずれかの領域が穿孔された場合、ガス送達層13の不連続流路16は、層状シート構造体10の完全浸水を防止する。例えば、廃水中に存在する破片によってガス透過性層12のいずれかの領域が穿孔された場合、不連続流路16は、ガス送達層12の流路16の1つまたは非常に少数のみが浸水することを可能にする。従って、穿孔による損害は局所的である。他方で、(1)膜層が支持層上に点結合されている膜構造体、または(2)スクリーン、多孔性フェルトもしくは布を含む膜構造体のような、不連続流路を含有しない従来の層状シート構造体は、支持層の浸水を被り、これによって従来の層状シート構造体は無効となる。
【0025】
流路16は、それを通してガスがガス透過性層12のベース表面14へと送達され、ガス送達層13の全長(図示せず)に沿って延在していても、していなくてもよい。本発明において、流路は直線であるものとして描写されているが、ガスがガス透過性層12へと有効に輸送され得る限り、他の形状または配置も許される。
【0026】
一般的に、流路を含んでなる本発明の好ましいガス送達層を調製するために、異形押出、押出複製もしくはマイクロ複製、またはキャストおよび硬化法のような技術が有用である。例として、フラットシートの波形は、本発明の好ましい実施形態に従って流路を有するガス送達層を製造するための適切な技術である。米国特許出願第2002/0154406 A1号明細書(メリル(Merrill)ら)は、本発明の波形ガス送達層を調製するために適切なフラットポリマーフィルムの波形化の代表的な方法を記載している。他の波形化方法も同様に可能である。本発明の好ましいガス送達層のもう1つの例は、ベースに対して実質的に垂直で、それらの間に流路を形成する、複数の壁がある側面を有するベースを含んでなるものである。
【0027】
あるいは、流路を含まない許容されるガス送達層としては、発泡体、多孔性材料、織物および不織布が挙げられる。これらの別のガス送達層を製造する方法は多種多様であり、当該分野において既知である。ガス透過性層12を通してガス転送または拡散が生じ得るように、ガス送達層14が、ガス透過性層12のベース表面13にガスが到達するための手段を提供することが必要条件である。
【0028】
ガス送達層およびガス透過性層は、接着結合、熱結合、超音波結合、圧力結合、溶媒結合、化学結合等のような様々な手段を通して付着されるか、または取り付けられてよい。本発明の一実施形態において、ガス送達層13は、ベース層18に近接する結合層17から製造されている。結合層17は、ガス透過性層12へのガス送達層13の接着または熱結合を促進する接着剤または低溶融樹脂を含んでもよい。ガス送達層13の結合層17を形成するために使用してもよい材料のいくつかの例としては、ポリオレフィンエラストマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレン酢酸ビニルターポリマー、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマー、ポリウレタン、ポリブチレン、ポリブチレンコポリマー、ポリイソプレン、ポリイソプレンコポリマー、アクリレート、シリコーン、天然ゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム、およびそれらの混合物が挙げられる。ガス送達層13のベース層18を形成するために使用してもよい材料のいくつかの例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、フルオロポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリウレタン、ナイロン、ならびにそれらのコポリマーおよびブレンドが挙げられる。事実上、ガス送達層13のベース層18を形成するために、いずれの溶融加工可能または焼結可能なポリマー樹脂を使用してもよい。
【0029】
図2に描写されるように、本発明の一実施形態において、好気性微生物を含む微生物群29をガス透過性層22に取り付けてもよい。また微生物群は、有機物質および/または窒素含有物質によって汚染された水性媒体を処理するために有効な、好気性および嫌気性微生物の混合培養物を含んでもよい。好ましくは、有機物質および窒素含有物質の両方を含む水性媒体を処理する時に、好気性および嫌気性微生物の両方を含有する微生物群29を使用する。
【0030】
廃水処理用途に使用される微生物は、廃水または汚染水源に典型的に由来し、そして本質的に固有である。いくつかの場合、バイオフィルムの展開を促進するため、または微生物群の組成を制御するための廃水または水性媒体に種バクテリアを添加してもよい。微生物群29の部分として含まれ得る微生物のいくつかの例としては、バシラス(Bacillus)、アルスロバクター(Arthrobacter)、ニトロソモナス(Nitrosomonas)およびニトロソバクター(Nitrobacter)バクテリア、または廃水中に存在する望ましくない成分を分解するために有効な他のいずれかの適切なバクテリア、菌類もしくは微生物剤が挙げられる(J.T.クックサン,Jr.(J.T.Cookson,Jr.)、バイオレメディエーション エンジニアリング デザイン アンド アプリケーション(Bioremediation Engineering Design and Application)、ニューヨーク(New York):マクグロー−ヒル インコーポレイテッド(McGraw−Hill,Inc.)、1995を参照のこと)。
【0031】
微生物群が、好気性および嫌気性バクテリアの両方を含む場合、好気性バクテリアをガス透過性層12のより近くに(水性媒体から遠くに離して)局在化させ、嫌気性バクテリアをガス透過性層12から遠くに離して(微生物群の外側、あるいは有機物質および/または窒素含有物質を含有する水性媒体のより近くに)局在化させる。
【0032】
図3に描写されるように、層状シート構造体30は、ガス送達層34の反対側のガス透過性層32に近接するか、または連続している微生物支持層31を任意に含んでもよい。微生物支持層31は、本発明の実施時に廃水処理を促進するために微生物が取り付けられた支持体として機能する。また支持層31は、引裂きおよび/または穿孔からガス透過性層32を保護することによって、層状シート構造体30の耐久性を増加し得る。
【0033】
微生物支持層31は、微生物接着および支持のために適切な表面を有するいずれかの材料(例えば、繊維質または多孔質)から製造されてよい。支持層31のための構造体の材料の例は、ポリマー性または非ポリマー性不織ウェブ、例えば、エアレイド、カーデッド、ステッチボンデッド、スパンボンデッド、スパンレースド、超音波ボンデッド、ウェットレイドまたはメルトブローン不織ウェブ;織物および編物材料、発泡体、穿孔材料ならびに多孔性セラミックスである。加えて、微生物支持層31として使用するために適切な発泡体としては、米国特許第5,899,893号明細書(ダイヤー(Dyer)ら)、米国特許第6,147,131号明細書(モーク(Mork)ら)および米国特許第6,274,638号明細書(ヨネムラら)、ならびに国際公開第01/21693号パンフレット(サンホースト(Thunhorst)ら)に記載の通り、高内相エマルジョン(HIPE)の重合によって調製されたものが挙げられる。
【0034】
微生物支持層31は、微生物内殖のために適切な連続気泡径を有するように設計されてもよい。この場合、微生物は、微生物支持層31の内部に成長するか、または形成する。当該分野に既知の技術によって、微生物支持層31を親水性にさせることができる。かかる技術としては、コーティング法、支持層31上への親水性ポリマー鎖の表面グラフト重合、電離放射線等、表面活性添加剤の組み入れ、または親水性および/または吸収性充填材料による支持層31の装填(充填)が挙げられる。
【0035】
加えて、支持層31は、微生物取り付けおよび/または接着のために好ましい表面化学を有してもよいか、あるいはかかる表面化学を有する粒子、繊維もしくは樹脂によって装填またはコーティングされてもよい。例えば、ほとんどのバクテリアが正味の負表面電荷を有する場合、支持層31は、好ましくは永続的な正電荷を有し得る。微生物支持層31を作製するために使用されてよい正味の正表面電荷を有する材料の例としては、一体型カチオン性またはカチオン形成性化学基を有するポリウレタン樹脂が挙げられる。あるいは、支持層31を作製するために使用されるベースポリマーに正電荷を提供する表面活性添加剤の添加は、支持層31を変性して微生物取り付けを増強するための適切な技術である。
【0036】
任意の微生物支持層31の厚さは、微生物群を支持するために機能的ないずれの厚さであってもよい。支持層31の厚さは、支持層31に接着し、そしてその内部または上で成長する微生物群の厚さの制御を可能にし得る。これは、微生物支持層の厚さから超過している微生物群のいずれの部分も除去するように、反応器条件を調節することによる微生物群の厚さの制御のために好ましい。例えば、微生物支持層の表面の接線方向にある空気泡または水の運動を通して、微生物支持層の表面で剪断力が誘発されて、その外側で成長する微生物を除去する。
【0037】
廃水は、典型的に、時間が経つにつれて膜の湿潤を引き起こし得る油、グリース、溶媒、および界面活性剤様分子のような低表面エネルギー流体を含む。従って、膜のガス送達効率および寿命が最大化するように、時間経過による界面活性剤、および油またはグリースのような低表面エネルギー流体の吸収に対する抵抗を増加させることによって、ガス透過性層の湿潤を減少させることが望ましい。ガス透過性層12の湿潤抵抗を増加させる一方法は、その表面エネルギーを減少させて疎油性にさせることである。一般的に、表面の表面エネルギーが減少すると、界面活性剤および低表面エネルギー流体による湿潤に対する表面の抵抗は増加する。
【0038】
ガス透過性層12を形成するために使用される材料が十分に疎油性ではない場合、疎油性は一般的に、ガス透過性層12の近表面領域におけるフッ素含有化学基の組み入れによって改善され得る。改善された疎油性または減少された表面エネルギーを有するガス透過性層12を生じるためのガス透過性層12の近表面領域におけるフッ素含有化学基の組み入れは、(1)ガス透過性層を調製するために使用されるバルクポリマー組成物への小分子または巨大分子フッ素化添加剤の組み入れ;(2)フッ素化化学基を含んでなる組成物による仕上げガス透過性層12のコーティング;(3)ガス状フッ素化種の存在下における電離放射線またはプラズマ放電へのガス透過性層12表面の暴露;(4)ガス透過性層12およびフッ素含有重合性化学基を提供する工程と、ガス透過性層、重合性化学基のいずれか、または両方において反応基の生成を開始し、表面付近におけるガス透過性層上または内における重合性化学基の重合および/またはグラフト重合をもたらす工程とを含んでなる、ガス透過性層12上または内部へのフッ素化化学基のグラフト重合によって達成され得る。
【0039】
米国特許第5,260,360号明細書(ムロジンスキー(Mrozinski)およびセッパラ(Seppala);1993)、ならびに米国特許第5,352,513号明細書(ムロジンスキー(Mrozinski)およびセッパラ(Seppala)1994)は、結晶性ポリオレフィンと、溶融添加剤または局所コーティング成分としてのフルオロケミカルオキサゾリジノンとを含む組成物からの疎油性の熱的誘導された相分離(TIPS)膜(ガス透過性、水分不透過性層12として有用である)の調製を記載する。フルオロケミカルオキサゾリジノンは、米国特許第5,025,052号明細書(クラター(Crater)ら;1991)に記載されている。
【0040】
米国特許第5,690,949号明細書(ワイマー(Weimer)ら;1997)および米国特許第5,738,111号明細書(ワイマー(Weimer)ら;1998)は、熱可塑性ポリマーと、溶融添加剤または局所コーティング成分としての1以上の撥油性フルオロケミカル化合物を含む疎油性TIPSウイルスバリヤ膜を記載する。これらの膜は、ガス透過性、水分不透過性層12としても有用である。好ましいフルオロケミカル化合物としては、フルオロケミカルオキサゾリジノン、フルオロケミカルアミノアルコール、フルオロケミカルピペラジン、フルオロアクリレートポリマー、フルオロケミカルアクリル酸エステル、非晶質フルオロポリマーまたはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
2002年5月29日出願の米国特許出願第10/159,752号明細書は、結晶性オレフィンポリマー、ならびに反応性ヒドロキシおよび/またはアシル官能性基を有する1以上の多官能性化合物と3個〜12個の炭素原子および共反応性ヒドロキシルまたはアシル基を有するフルオロアルキル基を含む1以上の一官能性フルオロケミカル化合物との反応生成物から調製されたフルオロケミカル添加剤を含む疎油性TIPS膜(ガス透過性、水分不透過性層12として有用)を記載する。
【0042】
小分子バルク添加剤に加えて、疎油性を有するガス透過性層12を調製するためにバルク組成物中に組み入れられたフッ素化化学基を含む巨大分子添加剤を使用してもよい。フッ素化添加剤ポリマーの小部分を非フッ素化ガス透過性膜形成性マトリックスポリマーとブレンドした場合、フッ素化添加剤ポリマーは、ポリマー移動性のために十分な温度での膜の熱処理時に膜表面で濃厚化または濃縮されると考えられる。ポリマーブレンド中でのフッ素化ポリマー添加剤の表面濃厚化は観察されており(ハント(Hunt)ら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1993、26、4854;エルマン(Elman)ら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1994、27、5341;アフロスマン(Affrossman)ら,マクロモレキュールズ(Macromolecules)1994、27、1588;シャウブ(Schaub)ら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1996、29、3982−3990)、表面自由エネルギーを最小化する系の特性の結果として生じる。
【0043】
ガス透過性層12を調製するために使用される組成物へのフルオロケミカル添加剤(ポリマーであってもなくてもよい)の添加には、米国特許第5,260,360号明細書、米国特許第5,352,513号明細書、米国特許第5,690,949号明細書および米国特許第5,738,111号明細書に開示されるようなガス透過性層12のために使用されるTIPS膜の調製におけるフルオロケミカル添加剤の使用が含まれてよい。
【0044】
ガス透過性層12の表面エネルギーは、ガス透過性層12およびフッ素を含む重合性化学基を提供する工程と、ガス透過性層、重合性化学基のいずれか、または両方において反応基の生成を開始し、表面付近におけるガス透過性層上または内における重合性化学基の重合および/またはグラフト重合をもたらす工程による、ガス透過性層12上または内部へのフッ素化化学基のグラフト化によって減少され得る。米国特許第5,156,780号明細書(ケニスバーグ(Kenigsberg)およびシチョリ(Shchori))は、本発明のガス透過性層に適用可能な多孔性基材上にフッ素化化学基をグラフト化するための代表的な方法を記載する。記載された方法は、(a)フルオロアクリレートモノマーを提供する工程と、(b)キャリア媒体にモノマーを分配して混合物を形成する工程と、(c)多孔性基材の材料と混合物を接触させて、基材にモノマー混合物を含浸させる工程と、(d)基材から実質的に全てのキャリア媒体を除去する工程と、(e)例えば、紫外線放射線または電子ビームを使用して、フルオロアクリレートモノマーの重合を開始する工程とを含んでなる。重合反応を開始するために、熱開始フリーラジカル開始剤のような開始剤ならびに架橋剤が提供されてもよい。
【0045】
文献には、原位置での重合による他の例のポリマー膜の表面変性がある。様々な参考文献に、プラズマ(イトーら,ジャーナル オブ ジ アメリカン ケミカル ソサエティ(J.Am.Chem.Soc.)1997、119、1619−1623;アクタール(Akhtar)ら、ジャーナル オブ メンブレン サイエンス(J.Membr.Sci.)1995、107、209−218;イワタ(Iwata)ら、ジャーナル オブ アプライド ポリマー サイエンス(J.Appl.Polym.Sci.)1994、54、125−128;イワタおよびマツダ、ジャーナル オブ メンブレン サイエンス(J.Membr.Sci.)1988、38、185−199)、紫外線(トム(Thom)ら、アクタ ポリテクニカ スカンジナビカ ケミカル テクノロジー アンド メタルジー シリーズ(Acta Polytech.Scand.,Chem.Technol.Metall.Ser.)1997、247、35−50;ウルブリッヒ(Ulbricht)ら、ジャーナル オブ メンブレン サイエンス(J.Membr.Sci.)1996、115、31−47)、ガンマ線(モック(Mok)ら、ジャーナル オブ アプライド ポリマー サイエンス(J.Appl.Polym.Sci.)1994、51、193−199)および電子ビーム(ホートジャービ(Hautojarvi)ら、インダストリアル アンド エンジニアリング ケミストリー リサーチ(Ind.Eng.Chem.Res.)1996、35、450−457)放射への暴露によるポリマー膜上または内での重合性化学基の原位置での重合が記載されている。
【0046】
これらの参照文献は、フッ素を含む化学基の原位置での重合を記載していないが、かかる化学基を重合するために同様の方法を使用することができる。重合性フッ素化化学基の例としては、限定されないが、フッ素化アクリレートモノマー、フッ素化メタクリレートモノマー、フッ素化スチレンモノマー、およびフリーラジカル発生または縮合反応によって重合可能な化学基を含んでなる他のフッ素化分子が挙げられる。
【0047】
フッ素化化学基をグラフト化するために適切なガス送達層12を製造するために使用可能な材料のリストには、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリ(エーテルスルホン)、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ビニル、ポリアミドおよびポリウレタン、ならびにそれらのブレンドまたはコポリマーが含まれる。フラットシートに加えて、当該分野で周知である疎油性、ガス透過性チューブ状または中空繊維膜を調製するために上記方法を使用してもよい。実際に、フラットシート膜モジュール、チューブ状膜モジュールまたは中空繊維膜モジュールとして操作するために、本発明の疎油性、ガス透過性層を構成することができることが描写される。チューブ状および中空繊維膜モジュールの場合、ガス透過性層として作用するチューブ状または中空繊維が自己支持されるため、ガス送達層は必要とされないだろう。これらの場合、膜モジュールの構造体は、チューブ状または中空繊維膜の内部にガスを送達する手段の提供を単に必要とするだろう。
【0048】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(例えば、デラウェア州、ニューアーク(Newark,Delaware)のW.L.ゴア アンド アソシエーツ インコーポレイテッド(W.L.Gore & Associates,Inc.)から入手可能なゴア−テックス(Gore−Tex)(登録商標)膜、またはペンシルバニア州、フィースタービル(Feasterville,PA)のテトラテック コーポレーション(Tetratec Corp.)から入手可能なPTFE膜)のような材料から調製された従来の疎油性膜は、典型的に、1センチメートルあたり20ダインより大きい表面エネルギーを有する。多くの場合、これらの膜はガス透過性層として許容されるが、それらは、廃水中に存在する油および他の成分によって湿潤され得る。本明細書に参照として組み入れられる米国特許第5,989,698号明細書(ムロジンスキー(Mrozinski)ら)は、PTFE微多孔性膜の特徴を記載しており、これは、鉱油によって湿潤され、接触から30秒以内で1センチメートルあたり34.7ダインの表面張力を有することが見出された。しかしながら、フッ素化化学基を含んでなる硬化性ポリウレタン組成物によるコーティング後、これらの微多孔性膜は鉱油による湿潤に抵抗し、そして実際にn−ヘプタンによる湿潤に抵抗して、少なくとも30秒間、1センチメートルあたり20.1ダインの表面張力を有した。同様に、米国特許第5,260,360号明細書(ムロジンスキー(Mrozinski)およびセッパラ(Seppala))は、バルク膜キャスティング組成物へのフルオロケミカル添加剤の添加による改善された疎油性を有するポリプロピレン膜の調製を記載する。フルオロケミカル添加剤を使用せずに調製されたポリプロピレン膜は、鉱油との接触から30秒以内で湿潤し、1センチメートルあたりの34.7ダインの表面張力を有することが観察された。しかしながら、フルオロケミカル添加剤を添加して調製されたポリプロピレン膜は鉱油による湿潤に抵抗し、そして実際に重量で65:35の鉱油とn−ヘキサデカンとの混合物の湿潤に抵抗して、後者は少なくとも30秒間、1センチメートルあたり27.5ダインの表面張力を有した。
【0049】
従って、ポリプロピレン微多孔性膜(1センチメートルあたり29〜30ダインの表面エネルギーを有する未変性ポリプロピレン)の近表面領域において化学基を組み入れることによって、従来のPTFE膜と関連して増加された疎油性を有する膜を得ることが可能である。低表面エネルギー流体および界面活性剤による湿潤に対する抵抗の改善をもたらす他にも、膜を疎油性にするために本明細書に教示される技術は、本発明のガス透過性層の調製のために都合がよい。従来のPTFE膜は、しばしば、本発明のガス送達層のような他の材料に結合することが困難である。対照的に、本明細書に記載の方法は、PTFE膜の表面エネルギー以下の表面エネルギーを有するが、それにもかかわらず、主要な割合の非フッ素化ポリマーを含んでなり、ガス送達層へのガス透過性層のより容易な結合を促進するガス透過性層の調製を可能にする。
【0050】
本発明の実施時に、低表面エネルギー流体による膜の湿潤を回避するために、ガス透過性層12が、1センチメートルあたり約20ダイン未満、好ましくは1センチメートルあたり約19ダイン未満、そして最も好ましくは1センチメートルあたり約17ダイン未満の表面エネルギーを有するように製造されることが好ましい。本明細書に記載の全ての表面フッ素化法は、単独で、または互いと組み合わせて、1センチメートルあたり20ダイン未満、好ましくは1センチメートルあたり約19ダイン未満、そして最も好ましくは1センチメートルあたり約17ダイン未満の表面エネルギーを有する本発明のガス透過性膜を製造するために使用することができる。ガス透過性層12の表面を疎油性にさせるために、他の方法を使用してもよい。
【0051】
以下の実施例によって本発明をさらに明らかにするが、これらには、本発明の範囲を限定する意図はない。
【実施例】
【0052】
ガス送達層1
従来の異形押出装置を使用して、一側面上にレール様突出部を有するテクスチャーガス送達層を製造した。ポリプロピレン/ポリエチレン衝撃コポリマー(7C06、1.5MFI、ミシガン州、ミッドランド(Midland,MI)のダウ ケミカル コーポレイション(Dow Chemical Corp.))およびポリオレフィンエラストマー(超低密度ポリエチレン)エンゲージ(ENGAGE)8100(デラウェア州、ウィルミントン(Wilmington,DE)のデュポン ダウ エラストマーズ(Dupont Dow Elastomers))を共押出して、突出部の最上部表面(先端)が低融点熱シール性エラストマーを含有する、レール様突出部を有するフラットベース層を有する流体不透過性支持シートを形成した。
【0053】
177℃から232℃へ一定増加するバレル温度断面を使用して約27kg/時間の速度で、6.35cm一軸スクリュー押出機(24:1 L/D)によって、ポリプロピレンコポリマーを押出した。約2.3kg/時間の速度で、約3.81cm(28:1 L/D)の直径、および約204℃から232℃へ増加する温度断面を有する第2の一軸スクリュー押出機へとポリオレフィンエラストマーを供給した。両方のポリマーを、232℃に維持されたマスターフレックス(MASTERFLEX)LD−40 フィルムダイ(ウィスコンシン州、オークレア(Eau Claire,WI)のプロダクション コンポネンツ(Production Components))中に供給した。成形断面を有するダイリップを備えたダイを通して垂直に下方向に押出物を押出した。ダイリップによる成形後、水を約16℃〜20℃に維持しながら約2.1メートル/分の速度で水タンク中で押出物をクエンチングした。フィルムダイは、一側面で平滑表面と、反対側で、ベース層から垂直に延在するレール様突出部として成形された均等に間隔配置された特徴から形成されたテクスチャー表面とを有するポリマーベースシートを形成するように配置された放電機械加工による開口切断部を有するダイリップを有した。均等に間隔配置された特徴に面するダイの側でエンゲージ(ENGAGE)8100エラストマーが押出されるように装置を配置した。
【0054】
ガス送達層のベース層は、約102ミクロン(0.004インチ)の厚さを有し、そしてポリプロピレンコポリマーから構成された。各レール様突出部は、ベース層に沿って連続的に延在した。各レール様突出部の寸法は、約965ミクロン(0.038インチ)の高さ、約406ミクロン(0.016インチ)の厚さ、および約1016ミクロン(0.040インチ)の中心間の間隔であった。加えて、各レール様突出部は、その遠位端(先端)で厚さ約127ミクロン(0.005インチ)の低融点エンゲージ(ENGAGE)8100層を有した。低融点樹脂は多層支持シートの約7.7重量%を占めた。
【0055】
ガス送達層2
ガス送達層1に関して上記された方法を使用して、シートの一側面で突出部を有する第1のガス送達層シートを押出し、そしてロールに巻いた。第1のシートをポータブル巻き戻しステーションから解き、そしてダイリップ出口より約1センチメートル下を平滑な裏側が通過するようにローラーの周りに供給した。ガス送達層1に関して上記された方法を使用して、シートの一側面で突出部を有する第2のガス送達層シートを第1のシートの平滑裏側上に押出した。得られた二重側面ガス送達層は両側面でレール様突出部を有し、これは、約305ミクロン(0.012インチ)のベース層厚さ、約965ミクロン(0.036インチ)のレール高さ、および約356ミクロン(0.014インチ)のレール厚さ、ならびに約991ミクロン(0.039インチ)レール中心間の間隔を有した。二重側面ガス送達層は、ベース層の両側面のレール先端で厚さ約127ミクロン(0.005インチ)のエンゲージ(ENGAGE)8100樹脂層を有した。
【0056】
実施例1
熱的誘導された相分離技術を使用して、約58.75重量%のポリプロピレン樹脂(商品名5D45でユニオン カーバイド(Union Carbide)から販売されているもの)、35.0重量%の鉱油(商品名ホワイト ミネラル オイル(White Mineral Oil)#31 USPグレードでアモコ オイル カンパニー(Amoco Oil Company)から販売されているもの)、25重量%のグリーン#7顔料を含有する4.0重量%のグリーン顔料濃縮物(商品名10066064 FDA グリーンでポリワン カンパニー(PolyOne Company)から販売されているもの)および2.25重量%のフルオロカーボンエステル(2002年5月29日出願の米国特許出願第10/159,752号明細書に記載の通り製造されたもの)を含んでなる厚さ76マイクロメートルの微多孔性膜材料シートを調製した。本明細書に参照として組み入れられる米国特許出願第10/159,752号明細書のFC−425に関して第27〜28頁に記載の手順によって、フルオロカーボンエステルを製造した。要約すると、トルエン、C49SO2N(CH3)CH2CH2OH(MeFBSE)、クエン酸、p−トルエンスルホン酸およびポリエチレンアルコール(テキサス州、シュガーランド(Sugar Land,Texas)のベーカー ペトロライト コーポレイション(Baker Petrolite Corp.)からユニリン(Unilin)−425 105−OH当量として得られたもの)を一緒に混合した。混合物を還流下で15時間加熱した。ディーンスターク(Dean Stark)トラップ(反応フラスコに装備されたもの)に所望量の水が回収された時、トルエンが蒸留除去された。ほとんどのトルエンが蒸留除去された時、溶融生成物をパンの中に注ぎ入れ、そして120℃のオーブン中で4時間乾燥させた。
【0057】
FC−425の構造は、
【化1】

である。
【0058】
60℃に維持されたキャスティングホイール上に38.1cm×0.381mmのオリフィスを有するスリップギャップシートダイを通して250℃から204℃への減少温度断面に維持された直径40mmの共回転二軸スクリュー押出機中で、9.08Kg/時間で微多孔性膜のための組成物を溶融混合した。52℃において縦方向で1.8:1および107℃において横断ウェブ方向で1.8:1で連続的様式でキャストフィルムを伸長し、そして熱を130℃に設定した。得られた微多孔性フィルムは、17ダイン/cm未満の表面エネルギーおよび約0.21ミクロンのバブルポイント細孔径を有した。
【0059】
ガス送達層2に関して上記された方法を使用して製造された二重側面ガス送達層に、低表面エネルギー微多孔性膜を熱的積層化した。張力を提供するためのエアブレーキを備えたポータブル巻き戻しステーション上に、二重側面ガス送達層のロールを配置した。フィルムに張力を提供するためのエアブレーキを備えたポータブル巻き戻しステーション上に、微多孔性膜のロールを配置した。
【0060】
直径30.5cm(12インチ)のクロムめっきの第1のニップロール上で2時の位置で微多孔性膜および二重側面ガス送達層が接触するようなウェブ経路を確立するために、一連のアイドラーローラーを使用した。ニップロールを約74℃(165°F)まで加熱した。ガス送達層の底部表面上に位置するレールの低融点樹脂含有チップを微多孔性膜と接触させ、加熱されたニップロールの周囲約60度で積層化を生じさせた。
【0061】
直径30.5cm(12インチ)のクロムめっきの第2のニップロールを第1のニップロールに直接的に隣接させて配置した。第2のニップロールを約74℃(165°F)まで加熱した。支持シートの全厚さより約254ミクロン(0.010インチ)低く設定されたギャップを使用して、約276kPa(40psi)の圧力で両ロールを一緒に挟んだ。
【0062】
張力を提供するようにクラッチを使用して上記の微多孔性膜の第2のロールを解いて、2つのニップロール間のニップに供給し、二重側面支持シートの上部表面上に位置するレールの先端が、第1のニップロールの約3時の位置で微多孔性フィルムと接触するようにさせた。3層積層構造体は、第2のニップロールの周囲約90度で接触し続けた。二重側面ガス送達層への微多孔性膜の強い結合が得られた。得られた膜積層体は、ベースシートに対して実質的に垂直な、その間に流路を形成するレール様突出部を両側面で有するフラットベースシートを含んでなるガス送達層のいずれかの側面に結合された17ダイン/cm未満の表面エネルギーを有する2つの微多孔性膜シートを含んだ。
【0063】
積層体上に純粋な鉱油を注ぎ、そして微多孔性膜が湿潤する時間を測定した。30日後、油で湿潤された膜が観察されなかった。
【0064】
比較例1
フルオロカーボンエステルを使用しなかったことを除き、実施例1に記載のものと同一の方法を使用して微多孔性膜を製造した。微多孔性膜上に純粋な鉱油を注ぎ、そして微多孔性膜が湿潤する時間を測定した。25秒以内で鉱油が微多孔性膜を湿潤することが観察された。
【0065】
実施例2
微生物支持層として、実施例1の膜積層体にスパンボンドポリプロピレン不織物を付着させた。スパンボンド不織物(RFX−92268、ジョージア州、オーステル(Austell,GA)のアモコ ファブリックス アンド ファイバーズ カンパニー(Amoco Fabrics & Fibers Co.))は、約84ミクロンの厚さ、1平方メートルあたり約17.0グラムの基本重量、および約25.7ミクロンの平均繊維径を有した。
【0066】
カミソリ刃を使用して、ガス送達層のレール方向で約35.6cm(14インチ)の長さ、およびガス送達層のレールに対して垂直な方向で約15.2cm(6インチ)の幅を有する実施例1からの膜積層体の一片を切断した。ホットメルト接着剤が、微多孔性膜の表面を横切って分散された微細繊維を形成するように、ハンドヘルドのホットメルトスプレー装置(PAM600 スプレーマティック(SPRAYMATIC)、ノースカロライナ州、シャーロット(Charlotte,NC)のファスニング テクノロジー インコーポレイテッド(Fastening Technology,Inc.))を使用して、膜積層体の一側面上で微多孔性膜の表面にホットメルト接着剤(スプレー−ボンド アドヘーシブ(SPRAY−BOND Adhesive)6111、ミネソタ州、セントポール(St.Paul,MN)の3Mカンパニー(3M Company))を適用した。次いで、不織物が微多孔性膜に永久的に結合するように、ホットメルト接着剤を有する積層体の側面上にスパンボンド不織物の一片を平らに配置した。
【0067】
0.95cm(0.375インチ)の内径を有する2つの長さ約40.6cmのPVCパイプを調製し、そしてそれぞれを一端でシールした。各パイプにおいて、シール端部から約2.5cmの位置から、長さ約15.2cm(6インチ)および幅約2mmのスロットを縦に切断した。次いで、膜積層体を2つのパイプのスロット中に挿入し、パイプの内部と積層体の流路との間の流体連結を形成した。2部エポキシ(ミネソタ州、メープルウッド(Maplewood,MN)の3Mカンパニー(3M Company)から入手可能な3M スコッチ−ウェルド(SCOTCH−WELD)DP−104接着剤)を使用して、スロットに膜積層体とパイプとの間の水密シールを形成した。得られた膜モジュールは、一側面において微生物支持層として機能する不織物を有する両側面で低表面エネルギーの微多孔性膜を含んでなる膜積層体、および積層体の流路を通してガス流動を提供し得る、膜積層体のいずれかの一端において多数のパイプを含んでいた。
【0068】
以下の組成:7g/lのグルコース、3g/lのトリプトン、2.29g/lの塩化アンモニウム、5mg/lの塩化鉄(II)、0.816g/lの一塩基性リン酸カリウム、0.568g/lの二塩基性リン酸ナトリウム、1.5mg/lの塩化鉄(II)四水和物、0.06mg/lのホウ酸、0.1mg/lの塩化マンガン(II)四水和物、0.12mg/lの塩化コバルト(II)六水和物、0.07mg/lの塩化亜鉛(II)、0.025mg/lの塩化ニッケル(II)六水和物、0.015mg/lの塩化銅(II)二水和物および0.025mg/lのモリブデン酸ナトリウム二水和物を有する5リットルの合成廃水を含有する円筒形反応器中に、膜モジュールを挿入した。水相として脱イオン水を使用した。円筒形反応器の一側面から約2.5cm(1インチ)の位置で多数のパイプが直立し、そして互いに約5.1cm(2インチ)で分離するように、膜モジュールを円筒形反応器に取り付けた。膜積層体が反応器の側面と接触しないように、膜積層体を反応器内で曲げ、膜積層体の側面は、反応器の中心に向かって内部に面する不織物微生物支持層を含んでいた。反応基を標準pHプローブおよびpHメーターセットに連結し、pHメーターに連結したポンプによって重炭酸ナトリウムの1モル溶液を滴下して注入することにより、溶液のpHが6.7より低下することを防止した。上記組成を有する無菌合成廃水を反応器中に0.116ミリリットル/分の速度で連続的に滴下して注入し、そして同一速度で反応器から流体を回収し、30日間の反応器水圧保持時間を提供した。膜モジュールの1つのパイプに空気ホースを連結し、そして約4標準リットル/分の速度で膜モジュールに空気を提供し、約5mm水の膜モジュールにわたる圧力低下を生じさせた。地方自治体の廃水処理プラント(ミネソタ州、エンパイア タウンシップ(Empire Township,MN)のエンパイア ウェーストウォーター トリートメント プラント(Empire Wastewater Treatment Plant))の活性化スラッジタンクから採取されたバクテリアを反応器中の溶液に接種し、そして磁気撹拌プレートで撹拌した。
【0069】
合成廃水に35日間含浸させた後、膜モジュールを取り出し、そして積層表面の不織物微生物支持層を有する側面で微生物フィルムを観察した。湿潤させたまま、積層体の試料を膜モジュールから切断した。蛍光染料(オレゴン州、ユージーン(Eugene,OR)のモレキュラー プローブス インコーポレイテッド(Molecular Probes,Inc.)から入手可能なライブ/デッド バクライト バクテリア バイアビリティ キット(LIVE/DEAD BACLIGHT Bacterial Viability Kit)L−13152)を使用して、積層体上の生きているバクテリア細胞を染色した。カミソリ刃を使用して染色された試料を切断し、そしてレーザー走査生物顕微鏡(オリンパス(Olympus)FV300、ニューヨーク州、メルビル(Melville,NY)のオリンパス アメリカ インコーポレイテッド(Olympus America,Inc.))によって、約480nmの励起波長および約500nmの放射波長を使用して断面を像化した。染色された生きたバクテリアを含有する微生物層を観察したところ、不織物微生物支持層の全厚さでコロニーが形成されていた。
【0070】
本発明による好ましいガス透過性層の使用は、油、グリースおよび界面活性剤様分子のような低表面エネルギー流体の存在による膜の湿潤に抵抗しながら、ガス輸送を可能にする。加えて、記載されたガス透過性層の使用は、ガス透過性層12の表面上での微生物の取り付けおよび成長、ならびに微生物群29による廃水の有効な処理を可能にする。ガス透過性層の低表面エネルギーが、(1)微生物の成長および新陳代謝を維持可能であり、そして(2)微生物活性における低下が生じずに微生物変換を維持可能であるという発見は、本発明の追加的な利点であり、MABRにおける本発明のガス送達構造体を使用する場合に効率的な処理を可能にする。
【0071】
好ましい実施形態を参照することによって本発明が説明されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく形態および細部に変更がなされてもよいことを当業者は認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明による層状シート構造体の部分断面図。
【図2】微生物層を含む、別の実施形態の層状シート構造体の部分断面図。
【図3】微生物支持層を含む、もう1つの実施形態の層状シート構造体の部分断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも1つのガス透過性で液状水分不透過性の層と、
b.前記a部分の層に近接するガス送達層と、
を含んでなる層状シート構造体であって、前記ガス送達層は波形シートから形成されており、波形が流路を形成しており、該流路を通してガスを前記a部分の層へと運搬することができる、層状シート構造体。
【請求項2】
前記a部分の層が、0.5マイクロメートル未満の平均細孔径を有する多孔性膜である、請求項1に記載の層状シート構造体。
【請求項3】
前記a部分の層に近接する微生物の集団をさらに含んでなる、請求項1に記載の層状シート構造体。
【請求項4】
前記ガス送達層の反対側で前記ガス透過性で液状水分不透過性の層に隣接する微生物支持層をさらに含んでなる、請求項1に記載の層状シート構造体。
【請求項5】
a.約20ダイン/cm未満の表面エネルギーを有する、ガス透過性で液状水分不透過性の層と、
b.前記a部分の層に近接するガス送達層と、
を含んでなる層状シート構造体であって、前記ガス送達層は、ガスを前記a部分の層へと運搬することができる手段を有する、層状シート構造体。
【請求項6】
前記ガス透過性で水分不透過性の層の表面エネルギーが、約17ダイン/cm未満である、請求項5に記載の層状シート構造体。
【請求項7】
外側表面に最も近い前記ガス透過性で液状水分不透過性の層の部分が、フッ素含有化学基を少なくとも部分的に含んでなる、請求項5に記載の層状シート構造体。
【請求項8】
外側表面に最も近い前記ガス透過性で液状水分不透過性の層の部分が、
a.フッ素含有基がグラフト化されているポリマー、および
b.フッ素化化学部分を含んでなる巨大分子添加剤
よりなる群から選択されるフッ素含有材料を含有するか、またはその表面上に有することを特徴とする、請求項7に記載の層状シート構造体。
【請求項9】
前記a部分の層が、0.5マイクロメートル未満の平均細孔径を有する多孔性膜である、請求項5に記載の層状シート構造体。
【請求項10】
前記ガス送達層が流路を形成する複数の壁を含んでなり、該流路を通してガスを前記a部分の層へと運搬することができる、請求項5に記載の層状シート構造体。
【請求項11】
前記a部分の層に近接する微生物の集団をさらに含んでなる、請求項5に記載の層状シート構造体。
【請求項12】
前記ガス送達層の反対側で前記a部分のガス透過性で液状水分不透過性の層に隣接する微生物支持層をさらに含んでなる、請求項5に記載の層状シート構造体。
【請求項13】
a.i)フッ素含有基がグラフト化されているポリマー、および
ii)フッ素化化学部分を含んでなる巨大分子添加剤
よりなる群から選択されるフッ素含有材料を含有するか、または表面上に有することを特徴とする、ガス透過性で液状水分不透過性の層と、
b.前記a部分の層に近接するガス送達層と、
を含んでなる層状シート構造体であって、前記ガス送達層はガスを前記a部分の層へと運搬することができる手段を有する、層状シート構造体。
【請求項14】
前記ガス送達層が流路を形成する複数の壁を含んでなり、該流路を通してガスを前記a部分の層へと運搬することができる、請求項13に記載の層状シート構造体。
【請求項15】
前記ガス透過性で液状水分不透過性の層が、0.5マイクロメートル未満の平均細孔径を有する多孔性膜である、請求項13に記載の層状シート構造体。
【請求項16】
前記a部分の層に近接する微生物の集団をさらに含んでなる、請求項13に記載の層状シート構造体。
【請求項17】
前記ガス送達層の反対側に、前記a部分のガス透過性で液状水分不透過性の層に隣接する微生物支持層をさらに含んでなる、請求項13に記載の層状シート構造体。
【請求項18】
前記a部分のガス透過性で液状水分不透過性の層が、ポリテトラフルオロエチレン、ビニルポリマー、ポリアミド、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホンおよびポリ(エーテルスルホン)、ならびにそれらのコポリマーよりなる群から選択されるポリマーを含んでなる、請求項13に記載の層状シート構造体。
【請求項19】
a.i)場合により硬化性であってよい、フルオロケミカルまたはフルオロポリマーを含んでなる組成物のコーティング、
ii)ガス状フッ素化種の存在下で、電離放射線またはプラズマ放電によって処理された表面、
iii)ガス透過性で液状水分不透過性の多孔性膜の組成内のフッ素化化学部分を含んでなる添加剤、および
iv)膜細孔内のフルオロポリマー
の少なくとも1つを有することを特徴とする、中空繊維を含んでなる、ガス透過性で液状水分不透過性の多孔性膜と、
b.ガスを多孔性中空繊維の内部へと送達する手段と、
を含んでなる、膜曝気バイオリアクターに有用な物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−504000(P2007−504000A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532323(P2006−532323)
【出願日】平成16年3月12日(2004.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/007607
【国際公開番号】WO2004/103536
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】