説明

膜処理による浄水製造システム

【課題】膜処理による浄水製造システムに於いて、電解水生成装置から生成される強アルカリ水を排水路に排水することなく精密ろ過膜(MF膜)等の各種の膜を洗浄するために利用し、資源の有効活用を図る技術を提供する。
【解決手段】
電解水生成装置31から強酸性水路31aを経由してpH値が2.7以下の強酸性水を使用して各種の膜29の表面を洗浄し、微生物を除去するものである。そして前記電解水生成装置31は強アルカリ水を生成しており、この電解水生成装置31を動作させると該強アルカリ水が強アルカリ水路31bを経由し分岐流路28aに流送・添加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水生成装置から生成する強酸性水を精密ろ過膜(MF膜)又は限外ろ過膜(UF膜)の洗浄に使用すると共に、電解水生成装置から同時に生成する強アルカリ水も膜循環系としての分岐流路に流送・添加して精密ろ過膜(MF膜)又は限外ろ過膜(UF膜)の膜面のシリカを溶解性とし、膜面の洗浄に供することを特徴とする膜処理による浄水製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の技術に於ける一つの例としては、特開2003−103259の公開特許公報に開示された濾過装置及び逆浸透膜の洗浄方法に係る技術がある。
これについて説明すれば、図5に示すように1は濾過装置、2は直線状又はU字形状等に束ねられ一端を樹脂等で連結固定し中空糸状に形成された図示しない逆浸透膜と逆浸透膜が収納された容器体2aを有する逆浸透膜モジュールである。容器体2aは密閉構造をとり、原水の流入側及び透過水、濃縮水の排出側には図示しない管口が開口され、各々後述の原水流路、透過水流路、濃縮水流路が接続される。原水は逆浸透膜モジュール2内において、逆浸透膜を逆浸透により透過した透過水と逆浸透膜を透過されなかった濃縮水とに分離される。4は原水を逆浸透膜モジュール2に流入させる前に粒子等を取り除く精密フィルタ、4aは精密フィルタ4で除去される粒子等を排出する精密フィルタ用排出路、4bは精密フィルタ用排出路に配設された排出用開閉弁である。精密フィルタ用排出路4aから粒子とともに排出される原水の量は、排出用開閉弁4bの開度を調節することにより、任意に設定することができる。5は図示しない原水供給口から原水供給弁5a及び精密フィルタ4を介して逆浸透膜モジュール2に接続された原水流路、6は原水流路5の精密フィルタ4の上流側に配設され原水を送水するフィードポンプ、7は原水流路5の逆浸透膜モジュール2の上流側に配設され逆浸透膜モジュール2に流入する原水を加圧する高圧ポンプである。高圧ポンプ7により原水が加圧されることで、原水は逆浸透膜モジュール2の逆浸透膜により逆浸透された透過水と逆浸透されなかった濃縮水とに分離される。分離される透過水と濃縮水の流量比は、逆浸透膜モジュール2の透過水の出口側及び濃縮水の出口側に流量調整弁を設け、この流量調整弁により設定される。8は原水流路5の逆浸透膜モジュール2の上流側に配設された逆洗用下流側三方弁、9は逆浸透膜モジュール2を透過した透過水が貯水される透過水タンク、9aは透過水タンク9に貯水された透過水を図示しない他の系統等に送水するための透過水送水流路、9bは透過水送水流路9aに配設された透過水送水用開閉弁、10は逆浸透膜モジュール2と透過水タンク9を接続する透過水流路、11は逆浸透膜モジュール2から透過水流路10側に排出された透過水が後述の透過水流路用三方弁を介して排出される透過水排出用三方弁、11aは透過水流路10に配設され透過水タンク9側と透過水排出用三方弁11側とに透過水の流路を切り換える透過水流路用三方弁、12は逆浸透膜モジュール2により濃縮された濃縮水が貯水される濃縮水タンク、12aは濃縮水タンク12に貯水された濃縮水を図示しない他の系統等に送水するための濃縮水送水流路、12bは濃縮水送水流路12aに配設された濃縮水送水用開閉弁、13は逆浸透膜モジュール2と濃縮水タンク12を接続する濃縮水流路、14は濃縮水流路13に配設された濃縮水排出用三方弁、15は強酸性水を貯水する強酸性水タンク、16は一端部が透過水タンク9に接続され他端部が後述の強酸性水生成部に接続され、透過水タンク9に貯水された透過水を強酸性水生成部に供給する透過水供給路、16aは透過水供給路16に配設され後述のバイパス路が接続された供給路用三方弁、17は強酸性水を生成し強酸性水タンク15に供給する強酸性水生成部、18は一端部が原水流路5に配設された注入用三方弁18aに接続され原水流路5を介して逆浸透膜モジュール2に連通し、他端部が強酸性水タンク15に接続され強酸性水タンク15を介して強酸性水生成部17に連通した強酸性水注入流路である。強酸性水タンク15に貯水された強酸性水は強酸性水注入流路18から注入用三方弁18aを介して原水流路5を通って逆浸透膜モジュール2へ注入される。19は強酸性水供給路16と強酸性水注入流路18をバイパスして接続するバイパス路、20は強酸性水注入流路18に配設されバイパス路19が接続されたバイパス用三方弁、21は逆洗用下流側三方弁8と透過水供給路16とを接続する逆洗用バイパス路、21aは透過水供給路16に配設され逆洗用バイパス路21が接続された逆洗用上流側三方弁、22は逆洗用バイパス路21に配設された逆洗ポンプ、23は透過水流路10と透過水供給路16とを接続する循環用バイパス路、24は透過水供給路16に配設され循環用バイパス路23が接続された循環用三方弁である。
【0003】
また、従来の技術に於ける他の例としては、図6に示す強酸性水を利用して膜を洗浄する浄水製造システムがある。
これについて説明すれば、25は原水、例えば河川水は井戸水で構成される。この原水25は原水流路25aからポンプ26により圧送されてフィルタ(膜)27で原水の前処理が行われる。そして、前処理された原水25は分岐流路28aを経由してポンプ28で圧送され各種の膜29例えば、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)等で処理され、処理水路29aを経由して処理水タンク30に貯留され、飲料水や雑用水の使用に供される。
ところで、当該各種の膜29はこの膜を洗浄する浄水製造システムの駆動頻度に応じて主に微生物により侵食されその機能が果たせなくなるときがある。そのため、この膜を洗浄する浄水製造システムに搭載した電解水生成装置31は処理水路29aからポンプ29dで流入された処理水を電解水に生成する。そして、例えば強酸性水路31aを経由してpH値が2.7以下の強酸性水を使用して前記各種の膜29の表面を洗浄し、微生物を除去するものである。そして前記電解水生成装置31は強アルカリ水を生成しており、この電解水生成装置31を動作させると該強アルカリ水が強アルカリ水路31bを経由して排水路32に排出される。
一方、原水25には多くの有機物又はシリカスケールが包含しており、この有機物又はシリカスケールは前記各種の膜29を通過することは困難でありこれを除去するために、処理水タンク30からの逆洗流路30aを経由して前記処理水を逆流させ前記各種の膜29を洗浄する。尚、図中33はバルブである。
【特許文献1】特開2003−103259号公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術に於ける一つの例によれば、強酸性水生成部17を備え、生成された強酸性水を強酸性水注入流路16により逆浸透膜モジュール2に注入し、逆浸透膜モジュール2内を除菌できるので、強酸性水の強力な除菌力により逆浸透膜表面に繁殖したバクテリア等を不活性化させ除去することができ、また強酸性水により原水中のカルシウム分等のスケールを逆浸透膜に堆積する前に溶解させ除去することができる。
しかしながら従来の技術に於ける他の例によれば、強酸性水を利用して膜を洗浄する浄水装置システムであって、一般的に原水25には5(mg/l)ないし20(mg/l)の多量の二酸化珪素いわゆるシリカ(SiO)分が包含されており、このシリカ(SiO)分が各種の膜29にスケール状として形成し、いわゆるシリカゲル層を形成し該各種の膜29を処理水が通過するとき弊害となり処理水量が低下するという問題点があった。
また、かかるシリカゲル層を膜から除去すべく当該システムに逆洗工程を付加したがそのシリカゲル層の除去が完全でなくシステムを複雑にし、実用に供しないという問題点が存在した。
また、当該システムには電解水生成装置31を備え、水の電解作用により例えばpH値11以上の強アルカリ水を生成するが、これを有効活用せず排水路32に放出し資源が浪費されるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る膜処理による浄水製造システムは叙上の問題点を解決すべく発明したものであって、電解水生成装置から生成される強アルカリ水を排水路に排水することなく精密ろ過膜(MF膜)等の各種の膜を洗浄するために利用し、資源の有効活用を図ると共に当該各種の膜に付着する有機物やシリカスケールを除去し、処理水量を増大することを目的としたものであり、次の構成、手段から成立する。
すなわち、請求項1記載の発明によれば、原水と、該原水の前処理を行うフィルタ(膜)と、該フィルタ(膜)から流送した前処理済原水を膜処理しかつ膜循環系としての分岐流路に有した各種の膜と、膜処理された原水を処理水として貯留する処理水タンクとから構成されるシステムに於いて、該システムに備えた電解水生成装置で生成された強酸性水及び強アルカリ水を前記分岐流路に流送・添加しかつ前記膜循環系としての分岐流路内の前処理済原水のpH値を少なくとも10以上に設定したことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明によれば、前記各種の膜は精密ろ過膜(MF膜)又は限外ろ過膜(UF膜)で構成されたことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明によれば、前記膜循環系としての分岐流路内の前処理済原水のpH値を11に設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る膜処理による浄水製造システムは、叙上の構成、作用を有するので次の効果がある。
【0009】
すなわち、請求項1の発明によれば、原水と、該原水の前処理を行うフィルタ(膜)と、該フィルタ(膜)から流送した前処理済原水を膜処理しかつ膜循環系としての分岐流路に有した各種の膜と、膜処理された原水を処理水として貯留する処理水タンクとから構成されるシステムに於いて、該システムに備えた電解水生成装置で生成された強酸性水及び強アルカリ水を前記分岐流路に流送・添加しかつ前記膜循環系としての分岐流路内の前処理済原水のpH値を少なくとも10以上に設定したことを特徴とする膜処理による浄水製造システムを提供する。
このような構成としたので、電解水生成装置から生成される強アルカリ水を分流流路や処理水路等の膜循環路又は膜循環系に添加し、この膜循環路又は膜循環系内を例えばpH値が10程度の高い値に実現し、各種の膜に付着したシリカゲル層を除去すると共に溶解性シリカを形成し、該各種の膜内を通過する処理水量を増大することができるという効果がある。また、システム内の排水経路に排出した強アルカリ水を廃棄することなくシステム内で利用でき資源の有効活用が図れるという効果がある。
【0010】
請求項2の発明によれば、前記各種の膜は精密ろ過膜(MF膜)又は限外ろ過膜(UF膜)で構成されたことを特徴とする膜処理による浄水製造システムを提供する。
このような構成としたので、精密ろ過膜(MF膜)又は限外ろ過膜(UF膜)に付着したシリカゲル層を迅速に除去することができるという効果がある。
【0011】
請求項3の発明によれば、前記膜循環系としての分岐流路内の前処理済原水のpH値を11に設定したことを特徴とする膜処理による浄水製造システムを提供する。
このような構成としたので、請求項1記載の効果に加えて電解水生成装置から生成される強アルカリ水を分流流路や処理水路等の膜循環路又は膜循環系に添加し、この膜循環路又は膜循環系内を例えばpH値が11に設定することにより、各種の膜に付着したシリカゲル層を除去すると共に溶解性シリカを増大させ、該各種の膜内を通過する処理水量をさらに大幅に増大することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る膜処理による浄水製造システムの実施の形態について、添付図面に基づき詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明に係る膜処理による浄水製造於ける実施の形態を示す結線図である。
図2は本発明に係る膜処理による浄水製造システムに備えた電解水生成装置の動作原理を示す説明図である。
【0014】
25は原水、例えば河川水は井戸水で構成される。この原水25は原水流路25aからポンプ26により圧送されてフィルタ(膜)27で原水の前処理が行われる。そして、前処理された原水25はフィルタ流路27a及び膜循環系としての分岐流路28aを経由してポンプ28で圧送され各種の膜29例えば、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)等で処理され、処理水路29a及びバルブ29bを経由して処理水タンク30に貯留され、飲料水や雑用水の使用に供される。
【0015】
ここで、精密ろ過膜(MF膜)は分離粒径が0.01(μm)以上の粒子を分離するもので、水中の懸濁物質、細菌類、藻類又は原虫類などを除去対象としていて浄水用に用いられる。また精密ろ過膜(MF膜)はこれに代えて限外ろ過膜(UF膜)、ナノろ過膜(NF膜)及び逆浸透膜(RO膜)の前処理として用いられる場合もある。また、限外ろ過膜(UF膜)は分子量1000〜300000の粒子を分離するもので、水中の懸濁物質、細菌類、藻類、原虫類又はウイルスなどを除去対象としていて浄水用に用いられる。またナノろ過膜(NF膜)はその分子量が最大数百の粒子を分離するもので、水中の懸濁物質、細菌類、藻類、原虫類、ウイルス、農薬、カルシウムイオン、又はマグネシウムイオンなどを除去対象としていて浄水用に用いられる。また逆浸透膜(RO膜)は分子量が数十の粒子を分離するもので、水中の懸濁物質、細菌類、藻類、原虫類、ウイルス、農薬、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、塩素イオン又はナトリウムイオンなどを除去対象としていて浄水用又は海水淡水化用に用いられる。本発明では特に精密ろ過膜(MF膜)又は限外ろ過膜(UF膜)を適用したときそれに付着するシリカゲル層を更に除去し易くなる。
【0016】
また、前記分岐流路28aは排水路32に接続され、この排水路32はバルブ32aを備え、これの開閉調節により各種の膜29で処理された原水の排水量を制御する。そして前記各種の膜29で処理された処理水は処理水路29aを流過しバルブ29bで制御され処理水タンク30に流送される。
一方、前記処理水タンク30からは、処理水がポンプ30aにより逆洗流路30bを経て、処理水路29aに圧送される。
【0017】
ところで本発明に係る膜処理による浄水製造システムには電解水生成装置31を備えており処理水が前記処理水路29aから分岐流路29cを経て該電解水生成装置31に導入される。該電解水生成装置31は図2に示す動作によって、強アルカリ水や強酸性水を生成し、強酸性水路31a及び強アルカリ水路31bを経て強アルカリ水と強酸性水を分岐流路28aに流送・添加する。
【0018】
ここで、図2に基づき、前記電解水生成装置31の動作原理を説明する。該電解水生成装置31はその内部に陽極31Aと陰極31Bを有し、略中央部分に隔膜31Cを備えている。そして、原水25が前記各種の膜29で処理されたとき、これがいわゆる処理済原水25Aであり、例えばこれが食塩水(NaCl)で構成されると、電解水生成装置31の内部は前記隔膜31Cで区分されて形成される各室に食塩水(NaCl)が充満される。そして、陽極31Aと陰極31B間に電源31Dを印加すると食塩水(NaCl)が電気分解する。該電解水生成装置31の動作により電解水生成装置31の強酸性電解水は次の化学反応を行う。HO→1/2O+2H+2e、2Cl→Cl+2e、Cl+HO→HCl+HClOとなり、該電解水生成装置31内の陽極31A側に強酸性水が生成される。該電解水生成装置31内の陰極31B側に強アルカリ水が生成される。そこで該電解水生成装置31は強酸性水及び強アルカリ水を外部に放出する。また電解水生成装置31は生成スイッチを備え、上記各強酸性水や強アルカリ水を生成するときON/OFF操作をする。そして生成された各強酸性水や強アルカリ水は本体の一部に設けた吐水口から取り出す。この生成された各強酸性水や強アルカリ水の生成水量は生成量設定スイッチを操作することにより前述した分岐流路28aに流送・添加する。
【0019】
ところで、当該各種の膜29はこの膜を洗浄する浄水製造システムの駆動頻度に応じて主に微生物により侵食されその機能が果たせなくなるときがある。そのため、この膜を洗浄する浄水製造システムに搭載した電解水生成装置31から例えば強酸性水路31aを経由してpH値が2.7以下の強酸性水を使用して前記各種の膜29の表面を洗浄し、微生物を除去するものである。そして前記電解水生成装置31は強アルカリ水を生成しており、この電解水生成装置31を動作させると該強アルカリ水が強アルカリ水路31bを経由し分岐流路28aに流送・添加される。
一方、原水25には多くの有機物又はシリカスケールが包含しており、この有機物又はシリカスケールは前記各種の膜29を通過することは困難でありこれを除去するために、処理水タンク30からの逆洗流路30aを経由して前記処理水を逆流させ前記各種の膜29を洗浄する。
【0020】
次に本発明に係る膜処理による浄水製造システムの実施の形態に基づきその作用等を説明する。
原水25は、原水流路25aを経てポンプ26に流送される。該ポンプ26は原水25に接続されたフィルタ流路27aを経て原水25をフィルタ(膜)27に圧送する。このフィルタ(膜)27で原水25の前処理を行う。このフィルタ(膜)27は、例えば前述した精密ろ過膜(MF膜)で構成される。この原水25は、河川水又は井戸水等でなり、例えば5(mg/L)ないし20(mg/L)の重量でなるシリカスケール分を包含しており、この精密ろ過膜(MF膜)は前処理で分離粒径が例えば0.01(μm)以上の粒子を分離する。
【0021】
前処理が完了した原水25は、フィルタ流路27aを経て膜循環系としての分岐流路28aに流送される。そしてポンプ28により各種の膜29に圧送される。そして膜処理により原水25を処理していくと時間経過と共に原水25のシリカ濃度が上昇し膜面29にシリカゲル層が生成され、処理水路29aから流出する膜処理された原水25の処理水量が低下していく。
そして、処理水路29aからバルブ29b及びポンプ29dを介して分岐流路29cを経て処理済原水25Aが前記電解水生成装置31に流送される。前述したことから該電解水生成装置31内の陽極31A側に強酸性水が生成される。該電解水生成装置31内の陰極31B側に強アルカリ水が生成される。該電解水生成装置31で生成された強酸性水は該電解水生成装置31に備えた生成量設定スイッチ(図示せず)をON操作することにより吐出口から強酸性水路31aを経て、前記分岐流路28a内に流送する。このとき強酸性水のpH値は例えば2.7以下であって、前記各種の膜29を洗浄し、微生物による膜29の侵食作用から防止し、該膜29の長寿命化を図っている。
【0022】
そして当膜処理による浄水製造システムに於ける分岐流路28a内すなわち膜循環系内を流送する前処理後の原水25は、実験によれば図3に示すようにpH値が3ないし9程度であって、そのシリカ濃度も500(mg/L)未満であり比較的低値を保持している。つまり、分岐流路28a内に流送している前処理後の原水25にはシリカスケール分を包含したままであり、かつこのシリカスケール分が前記各種の膜29に付着し該シリカスケール分がいわゆるシリカゲル層を形成したことが判明する。ここで図3は各種の膜29が精密ろ過膜(MF膜)による処理水中のシリカ濃度(mg/L)の関係を示している。処理水、つまり前処理後の原水25のpH値が10以上において処理水中のシリカ濃度(mg/L)が上昇しており、pH値の上昇により溶解性シリカスケールが増えて精密ろ過膜(MF膜)を通過していることが分り、後述するように強アルカリ水を添加することによりpH値11となり精密ろ過膜(MF膜)をほぼ完全に溶解性シリカスケールが通過していることが分る。
【0023】
この各種の膜29にシリカゲル層を形成したのでこれが弊害となり、この状態では各種の膜29から処理水路29aへ流出される処理量が低下することとなる。このことは実験によって図4に示すように各種の膜29が存在する膜循環系としての分岐流路28a内のpH値が3ないし9程度では当該各種の膜29に付着して形成したシリカゲル層、つまり
シリカはほとんど膜を通過しておらず、該各種の膜29の面に対してほぼ100(%)程度付着していることが判明した。
【0024】
次に前記電解水生成装置31は、陰極31B側から強アルカリ水を生成しており、前記生成量スイッチをONすることにより強アルカリ水は、該電解水生成装置31に備えた吐出口から強アルカリ水路31bを経て前記分岐流路28a内に流送・添加する。そして所定のろ過時間が経過した後、膜循環系内つまり分岐流路28a内に電解水生成装置31で生成された強アルカリ水を外部に排出することなく、強アルカリ水路31bに流送・添加することで、分岐流路28a内をpH値の高い状態すなわちpH値10以上となり例えばpH値11程度にする。
【0025】
当膜処理による浄水製造システムに於ける分岐流路28a内、すなわち膜循環系内を流送する前処理後の原水25は実験によれば図3に示すようにpH値が10以上になると、そのシリカ濃度が1000(mg/L)から7000(mg/L)程度となり急激に上昇したことが判明した。このことは各種の膜29の面に付着したシリカゲル層がいわゆる溶解性シリカスケールとなり、この溶解性シリカスケールが膜循環系内の分岐流路28a内の前処理後の原水25に溶解してシリカ濃度(mg/L)値を上げた。
【0026】
一方、当膜処理による浄水製造システムに於ける分岐流路28a内、すなわち膜循環系内を流送する前処理後の原水25は実験によれば図4に示すようにpH値が10以上になると、前述のように各種の膜29の面に付着したシリカゲル層が溶解性シリカスケールとして、前処理後の原水25の中に溶解すると共にpH値が11になると該各種の膜29に付着して形成したシリカが全て通過し各種の膜29の面に対して除去率が0(%)になったことが判明した。特に各種の膜29が精密ろ過膜(MF膜)や限外ろ過膜(UF膜)の場合各種の膜29に付着したシリカゲル層を迅速に除去し、その効果は顕著であった。この状態では各種の膜29から処理水路29aへ流出される処理水量を大幅に増大させ、本システムにより生成し膜処理された処理水を処理水タンク30内に貯留することができる。ここで、図4は各種の膜29が精密ろ過膜(MF膜)によるシリカスケールの除去率を示している。強アルカリ水を流送・添加することによりpH値が11になると処理水が全て溶解性シリカスケールとなり精密ろ過膜(MF膜)による除去率は0(%)となる。
【0027】
上述した電解水生成装置31により生成した強酸性水や強アルカリ水を膜循環系としての分岐流路29cに流送し又は添加する場合、その量や時間条件は本システム内に設置した各種の膜29の面積や厚さ等寸法や各種の設計条件及び膜循環系内の分岐流路28a内のpH値を所定値の保持する条件によって決定される。
尚、強酸性水や強アルカリ水の流送・添加手段は予めコンピュータ等で制御された自動化システムとしてもよい。
また、処理水タンク30からの逆洗流路30aを経由して前記処理水を逆流させ前記各種の膜29を洗浄する
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る膜処理による浄水製造システムに於ける実施の形態を示す結線図である。
【図2】本発明に係る膜処理による浄水製造システムに備えた電解水生成装置の動作原理を示す説明図である。
【図3】本発明に係る膜処理による浄水製造システムの分岐流路(膜循環系)に於けるpH値に対するシリカ濃度(mg/L)の特性図である。
【図4】本発明に係る膜処理による浄水製造システムの精密ろ過膜(MF膜)に於けるpH値に対するシリカ除去率の特性図である。
【図5】従来の技術に於ける第1の例であって、濾過装置及び逆浸透膜の洗浄システム例を示す結線図である。
【図6】従来の技術に於ける第2の例であって、強酸性水を利用して膜を洗浄する浄水製造システム例示す結線図である。
【符号の説明】
【0029】
25 原水
25A 処理済原水
25a 原水流路
26 ポンプ
27 フィルタ(膜)
27a フィルタ流路
28 ポンプ
28a 分岐流路
29 各種の膜
29a 処理水路
29b バルブ
29c 分岐流路
29d ポンプ
30 処理水タンク
30a ポンプ
30b 逆洗流路
31 電解水生成装置
31A 陽極
31B 陰極
31C 隔膜
31D 電源
31a 強酸性水路
31b 強アルカリ水路
32 排水路
32a バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水と、該原水の前処理を行うフィルタ(膜)と、該フィルタ(膜)から流送した前処理済原水を膜処理しかつ膜循環系としての分岐流路に有した各種の膜と、膜処理された原水を処理水として貯留する処理水タンクとから構成されるシステムに於いて、該システムに備えた電解水生成装置で生成された強酸性水及び強アルカリ水を前記分岐流路に流送・添加しかつ前記膜循環系としての分岐流路内の前処理済原水のpH値を少なくとも10以上に設定したことを特徴とする膜処理による浄水製造システム。
【請求項2】
前記各種の膜は精密ろ過膜(MF膜)又は限外ろ過膜(UF膜)で構成されたことを特徴とする膜処理による浄水製造システム。
【請求項3】
前記膜循環系としての分岐流路内の前処理済原水のpH値を11に設定したことを特徴とする膜処理による浄水製造システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−273972(P2009−273972A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−125490(P2008−125490)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000175803)三建設備工業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】