説明

膜分離活性汚泥処理装置及びその膜面洗浄方法

【課題】
複雑な運転管理を必要とせず、膜面閉塞の少ない高効率な膜面洗浄を行うことができると共に、過大な空気量の散気を伴わない省コストな膜分離活性汚泥装置及びその膜面洗浄方法を提供する。
【解決手段】
反応槽に浸漬型膜分離装置を配置し、浸漬型膜分離装置の下方に配置した散気装置の上方または下方に、該浸漬型膜分離装置の鉛直下方の範囲外かつ反応槽下部に設置した水中ポンプを動力源とする水流装置を有することを特徴とする膜分離活性汚泥処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性汚泥を含む微生物含有液を、膜を用いて固液分離する浸漬型膜分離装置に関する。具体的には、下水等の汚水を、活性汚泥処理した後に膜分離処理する、いわゆる膜分離活性汚泥法を用いた廃水処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機性汚水を処理する方法として活性汚泥処理があり、膜分離装置を併用して槽内の活性汚泥濃度を高く維持する膜分離活性汚泥処理がある。一般的な膜分離活性汚泥法においては、反応槽内に浸漬型膜分離装置を設置し、浸漬型膜分離装置の下方に散気装置を配置し、散気装置から散気する空気によって酸素供給を行って活性汚泥処理を行うと共に、空気のエアリフト作用によって生成する上昇流を浸漬型膜分離装置の膜面に掃流として作用させ、膜面に付着するケーキを連続的に洗浄している。使用する浸漬型膜分離装置は、多数の平膜エレメントや、多数の中空糸膜エレメントからなるものが使用される。また、膜分離処理を行う際には、膜面洗浄効果の高い粗大気泡を発生させ、この粗大気泡によって発生する気液混合上昇流を膜表面に作用させて膜面洗浄することが行われている。
【0003】
ここで、膜面に作用する気泡が大きいほど、膜面への堆積汚泥に対する剪断力が高くなるので、分離膜表面の洗浄効率を高めることができる。従って、分離膜の洗浄用には粗大気泡を用いることが必要と考えられている。しかし、膜面洗浄効果を優先した粗大気泡散気装置は、(i)曝気に伴う不規則な振動が大きく、膜自体が破損しやすいという欠点があった。また、(ii)酸素溶解効率が低く、活性汚泥による生物処理に必要な酸素供給能力が不足することがある。このため十分な酸素供給を行うためには、膜面洗浄に必要な風量以上の過大な量の空気を散気する必要があり、曝気動力の増大につながる。
【0004】
そこで、(i)多量の曝気に起因した不規則な振動によって、膜面が損傷するのを防止しながら膜外表面の洗浄を行う手法として、浸漬型膜分離装置の下方に、散気装置を配置すると共に、膜エレメントに向けて被処理水を流動させる回転翼を設けた水処理装置が提案されている(特許文献1)。また、(ii)散気効率を高めるために、粗大気泡による分離膜表面の洗浄効率を維持しつつ、生物処理に必要な酸素供給のための散気量を極力少なくすることが検討され、微細気泡と粗大気泡とを共に発生させる散気方法が提案されている。例えば、浸漬型膜分離装置の下方に、粗大気泡散気装置と微細気泡散気装置との両方を設置して、粗大気泡と微細気泡を共に発生させる処理装置が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−247288号公報
【特許文献2】特開2002−224685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の構成において、(i)循環流発生手段として回転翼を用いる場合には、駆動装置の動力が大きくランニングコストが増大となる。また、回転翼の上方に散気装置を配置するので、散気装置と浸漬型膜分離装置の底部までの距離が短くなる。このため、散気装置から曝気する気泡流の分散が悪くなり、膜カートリッジの全面に均一な循環流を与えることが困難となる。一方、(ii)粗大気泡散気装置と微細気泡散気装置を併用するには、流入汚水に応じた適切な運転管理が必要であり、その運転管理は困難かつコスト高につながる。また、空気の適切な風量設定も難しく、設定風量次第では膜面洗浄効果の低下、及び総合的な空気消費動力の増大となる。
【0007】
本発明は上記した課題を解決するものであり、(i)について、ランニングコストを低減でき、かつ膜エレメントの全面に均一な循環流を与えることを可能とし、また、(ii)について、複雑な運転管理を必要とせず、過大な空気量の散気を伴わないような、省コストで高効率な膜面洗浄を行うことができる膜分離活性汚泥処理装置及びその膜面洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための本発明の膜分離活性汚泥処理装置及びその膜面洗浄方法は、以下の構成のいずれかからなる。
【0009】
(1)反応槽に浸漬型膜分離装置を配置し、浸漬型膜分離装置の下方に配置した散気装置の上方または下方に、浸漬型膜分離装置の鉛直下方の範囲外かつ反応槽下部に設置した水中ポンプを動力源とする水流装置を有することを特徴とする膜分離活性汚泥処理装置。
(2)前記散気装置が直径1mm以下の微細気泡を生成する微細気泡管を有することを特徴とする(1)に記載の膜分離活性汚泥処理装置。
(3)前記反応槽の底部から50mm以上150mm以下隔てた位置に前記水中ポンプを配置したことを特徴とする(1)または(2)に記載の膜分離活性汚泥処理装置。
【0010】
(4)反応槽に浸漬型膜分離装置を配置し、浸漬型膜分離装置の下方に配置した散気装置の上方または下方に、浸漬型膜分離装置の鉛直下方の範囲外かつ反応槽下部に設置した水中ポンプを動力源とする水流装置を有する膜分離活性汚泥処理装置における膜面洗浄方法であって、該散気装置から散気する気泡と該水流装置から生成する水流によるエアリフト作用によって生起する気液混相の上昇流を掃流として該浸漬型膜分離装置の膜面に作用させることを特徴とする膜分離活性汚泥処理装置における膜面洗浄方法。
(5)前記散気装置が直径1mm以下の微細気泡を生成する微細気泡管を有することを特徴とする(4)に記載の膜分離活性汚泥処理装置における膜面洗浄方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の膜分離活性汚泥処理方法における膜面洗浄方法によれば、水流装置から生成する水流により空気のエアリフト作用が助長されるため、必要最低限の溶存酸素濃度を確保し得る少量の散気においても十分な膜面洗浄効果を得ることができる。
【0012】
また、水流装置から生成する水流は、反応槽下部に設置した水中ポンプを動力源とすることで、反応槽液面からのヘッド圧力を利用することができるため低動力で済む。
【0013】
さらに、水中ポンプを浸漬型膜分離装置の鉛直下方の範囲外に設置することで、散気ケース内の散気装置及び水流装置で占めるスペースを、回転翼設置時に比べてコンパクトにすることができる。これより、散気装置と浸漬型膜分離装置の底部までの距離を確保することが可能となり、散気装置から曝気する気泡流の分散性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態における汚水の処理装置を示す模式正面図である。
【図2】本発明で実施の形態における汚水の処理装置を示す模式平面図である。
【図3】従来における汚水の処理装置を示す模式正面図である。(比較例1)
【図4】従来における別の汚水の処理装置を示す模式正面図である。(比較例2)
【図5】従来におけるさらに別の汚水の処理装置を示す模式正面図である。(比較例3)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、反応槽1には有機性汚水を供給する汚水供給系2が接続しており反応槽1に浸漬型膜分離装置3を水深下(500〜1500mm)L1に配置している。浸漬型膜分離装置3は、複数枚の平膜エレメント4をケース5の内部に鉛直方向に沿って配置し、かつ各平膜エレメント4を相互に所定間隔をあけて平行に配置したものであり、隣接する平膜エレメント4の間に、槽内の活性汚泥混合液をクロスフローで通液する流路を形成している。ケース5は平膜エレメント4を収納する上方の膜ケース6と下方の散気ケース7とに分割形成しており、散気ケース7は内部に散気装置8と水流装置9を上下二段に配置し、散気装置8と水流装置9より噴出する空気及び水流の全量が膜ケース6に入り込むように形成している。平膜エレメント4は、ABS樹脂製の濾板の両表面に濾過膜を配置接合し、濾板に形成した透過液流路を透過液導出管10に連通させている。
【0016】
水流装置9は反応槽1の底部から距離(0〜200mm)L4の位置に配置し、散気装置8は水流装置9から距離(50〜100mm)L3を隔てた上方に位置し、浸漬型膜分離装置3の下方に距離(50〜200mm)L2を隔てた位置に配置しており、散気装置8は粗大気泡または微細気泡を散気し、水流装置9は水流を生成する。散気装置8にはブロワ11を接続して所定空気量を調整し、水流装置9には浸漬型膜分離装置3の鉛直下方の範囲外、かつ反応槽1の下部に設置した水中ポンプ12を接続して所定水流量を調整する。これら所定の空気量及び水流量は、反応槽1内の活性汚泥処理に必要な最低限の酸素量を供給すると共に、浸漬型膜分離装置3の平膜エレメント4の膜面を洗浄するのに効果的なエアリフト作用を生起させるためのものであって、流入する対象汚水の性状及び流入量によって異なるものである。
【0017】
ここで、図上では散気装置8の下方に水流装置9を配置しているが、意図する効果が得られ、また取り合い上問題無ければその位置関係は逆でもかまわない。また、散気装置8は反応槽1内の活性汚泥処理に必要な最低限の酸素量を供給すればよく、粗大気泡装置でもかまわないが、動力コストの観点から微細気泡散気装置がより好適に使用できる。なお、各装置間の配置距離L1〜L4については、特に限定されるものではなく好適に使用できる範囲を示す。
【0018】
散気装置8について、粗大気泡散気装置は、所定口径の大散気孔(口径2〜15mm)が多数形成されてなるものが使用でき、微細気泡散気装置は、微細気泡を発生させることができる散気面を備えた散気装置であれば特に限定されず、所定口径の小散気孔(口径0.5〜1mm)が多数形成されてなるもの、また中心管及び中心管を覆う伸縮により開閉する散気孔が多数形成された弾性シートからなるものなどが使用できる(例えば、FLEXAIR T−SERIES 散気孔2mm極細スリット/EDI)。ここで、本発明における粗大気泡とは直径が1mmより大きい気泡であり、微細気泡とは直径が1mm以下の気泡である。なお、微細気泡については、気泡直径が小さいほど活性汚泥中の溶存酸素効率を高くすることができるため、マイクロ及びナノレベル(例えば100nm〜100μm)の微細気泡であればより好ましく使用することができる。
【0019】
水流装置9は、吐出方向に均一かつ汚泥詰まりが無い構造であればよく、例えば所定口径の吐出孔(口径8〜12mm)が多数形成されてなるもの、また吐出スリット(スリット幅4〜8mm、スリット長さ50〜300mm)を有するものが使用できる。
【0020】
ここで、水流装置9に接続した水中ポンプ12は、動力源として反応槽1液面からのヘッド圧力を利用できる下部に設置することが好ましい。ただし、底部では堆積した高粘性汚泥(ヘドロ状汚泥)が水中ポンプ12の吸込口を閉塞する可能性があるため、底部から所定距離(50〜150mm)L5に設置することがより好ましい。
【0021】
また、散気ケース7内部の装置スペースをコンパクトにするため、水中ポンプ12は浸漬型膜分離装置3の外部に設置する。そして、その配置は、浸漬型膜分離装置3の内部に生起する上昇流と浸漬型膜分離装置3の周囲に生起する下降流からなる旋回流(循環流)を阻害しない位置に配置すべく、図2に示すH斜線部に水中ポンプ12を配置することが好ましく、その設置方法は、散気ケース7と一体形成もしくは反応槽1と併設など任意でかまわない。尚、水中ポンプ12は、反応槽1に流入する対象汚水の性状や流入量に応じて調整することが好ましく、CV調整型、インバータ制御型など任意に使用可能であるが、動力コストの観点からインバータ制御型が好適に使用できる。
【0022】
次に上記した構成における作用を説明する。ブロワ11、水中ポンプ12を駆動して所定量の空気(処理水量に対して15〜25倍)、水流(処理水量に対して10〜20倍)を供給し、浸漬型膜分離装置3の下方領域に、水流装置9から生成する水流Aによって水流ゾーンL3を形成し、散気装置8から散気する微細気泡Bと水流装置9の水流Aとによって曝気水流混合ゾーンL2を形成する。
【0023】
曝気水流混合ゾーンL2では、微細気泡Aと水流Bが混合し、この微細気泡Aと水流Bのエアリフト作用によって生起する気液混相の上昇流が隣接する平膜エレメント4の間に流入し、活性汚泥混合液をクロスフローで浸漬型膜分離装置3に供給して固液分離し、上昇流が掃流として浸漬型膜分離装置3の膜面に作用する。このとき、水流Aが微細気泡Bにある一定の初速度を与えることで、従来の散気方法と比べて浸漬型膜分離装置3に流入する気液混相の上昇流速が格段に増す。このことにより、隣接する平膜エレメント4の間の流路に、高い速度エネルギーを持った微細気泡B、及び水流Aが流入し、効果的なエアリフト作用を生起すると共に、膜表面に付着したケークを微細気泡Bによる剪断作用及び衝突作用により高効率に平膜エレメント4の膜面を洗浄できる。
【0024】
また、微細気泡B及び水流Aの全量が膜ケース6に入り込むと共に、従来の散気方法に比べて上昇流速が格段に増すので、浸漬型膜分離装置3の内部に生起する上昇流と浸漬型膜分離装置3の周囲に生起する下降流とが明確に分離され、反応槽1の内部に旋回流が支障なく起こり、槽内の撹拌を円滑に行うことができる。さらに、水中ポンプ12を浸漬型膜分離装置3の鉛直下方の範囲外に設置することで、散気ケース7内部の装置スペースをコンパクトにすることが可能となる。これより、散気装置8と浸漬型膜分離装置3の底部までの距離を確保することが可能となり、散気装置から曝気する気泡流の分散性が向上する。その上、併用する散気装置8に局所的な散気詰まりが生じても、水流Aにより気泡を分散できるので、散気詰まりに起因するケークの膜面閉塞を少なくし長期安定運転が可能となる。
【0025】
ところで、水流装置9から生成する水流は、反応槽1下部に設置した水中ポンプ12を動力源とすることで、反応槽1液面からのヘッド圧力を利用することができるため、回転翼はもちろん、従来の粗大気泡散気装置及び微細気泡散気装置に比べて低動力で済む。また、必要最低限の溶存酸素濃度を確保し得る少量の散気においても十分な膜面洗浄効果を得ることができるため、併用する散気装置8の動力を極端に低減することができる。このことにより、極小の曝気ブロワ動力と低動力な水流ポンプ12を併用駆動することで、総合的に動力コストを低減することができる。
【0026】
また、季節もしくは水温により、対象汚水を活性汚泥処理するのに必要な酸素量が変動しても、必要な溶存酸素濃度を確保し得るだけの最小限の空気量を満たすだけでよいため、酸素消費量の増える高水温時を基準に設定しても少量の散気で済む。したがって、酸素消費量の増える高水温時の空気量を一定に設定すれば、複雑な運転管理及び風量設定は必要としない。また、水中ポンプ12にインバータ制御を組み込むことで、水流量を反応槽1に流入する対象汚水の性状及び流入量に応じて調整することができ、膜面洗浄に必要な流量を適宜可変することで駆動動力をさらに低減することができる。
【実施例】
【0027】
以下、具体的な実施例と、これとの比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0028】
[実施例]
図1の汚水処理装置を用いて有機性排水の処理を行った。この排水処理装置は、反応槽1(容積3m)、及びこれと連通した嫌気槽(図示せず/容積3m)により構成されている。有機性排水として一般下水(BOD100〜300mg/L)を30m/day流入させ、連続的に膜分離活性汚泥処理を行った。浸漬型膜分離装置3には平膜エレメント4(PVDF製平膜、孔径0.1μm)が50枚隣接設置されており、透過液導出管10に連通した所定の吸引ポンプ(図示せず)により連続的に処理水を得ている。なお、反応槽1における生物濃度(MLSS)は約10000mg/Lで一定となるように、汚泥の引き抜きを適宜行った。
【0029】
膜面洗浄装置は、散気装置8(口径0.5mm孔が多数形成されてなる微細気泡管、気泡直径約0.5mm)、及びブロワ11(定格出力0.75kw、空気量450NL/min、30kPa)と、水流装置9(口径10mm孔が多数形成されてなる吐出管)、及び浸漬型膜分離装置3の外部かつ反応槽1の下部に設置した水中ポンプ12(定格出力0.75kw、吐出量300L/min、INV制御)から構成される。各装置間の配置距離について、反応槽1の底部から水流装置9までの距離L4を約200mm、水流装置9から散気装置8までの距離L3を約100mm、散気装置8から浸漬型膜分離装置3の下方までの距離L2を約200mmに設定した。試験は2009年10月から11月の2ヶ月間実施し、散気量を250NL/min、水流吐出量を200L/min(INV出力70%)一定として連続運転を行った。
【0030】
その結果、全平膜エレメント4の膜間差圧(単位:kPa)に大きな上昇は見られず、その差圧上昇速度は2ヶ月間で0.05kPa/day(フラックス0.7m/day)と長期安定運転が可能であった。また、各平膜エレメント4の膜表面にケークはほとんど見られず、水流Aによる微細気泡Bの分散効果が見られた。消費動力については、汚水処理装置全体での積算消費電力より算出したところ、2ヶ月間、総処理水量1800m(30m/day×60day)当たり、2286.5kwhであり、原単位当たりの電力使用量は1.27kwh/mであった。
【0031】
[比較例1]
図3の汚水処理装置を用いて有機性排水の処理を行った。汚水処理装置の構成、及び処理条件については実施例と同様とした。なお、実施例と運転期間(年度)は異なるが、汚水、汚泥の水温、及び性状はほぼ同じであった。また、平膜エレメント4は同性能のものを使用した。
【0032】
膜面洗浄装置は、散気装置8(口径6mm孔が多数形成されてなる粗大気泡管、気泡直径約5mm)、及びブロワ11(定格出力1.5kw、空気量750NL/min、30kPa)から構成される。各装置間の配置距離について、反応槽1の底部から散気装置8までの距離L7を約300mm、散気装置8から浸漬型膜分離装置3の下方までの距離L6を約200mmに設定した。試験は2008年10月から11月の2ヶ月間実施し、散気量を600NL/min一定として連続運転を行った。
【0033】
その結果、全平膜エレメント4の差圧上昇速度は2ヶ月間で0.30kPa/day(フラックス0.7m/day)と、実施例の時と比べると高い値となった。また、各平膜エレメント4の膜表面に局部的なケークが幾つか見られ、不均一な散気に起因する膜面閉塞が見られた。消費動力については、2ヶ月間、総処理水量1800m当たり、2662.3kwhであり、原単位当たりの電力使用量は1.48kwh/mであり、実施例の時と比べて高い値となった。
【0034】
[比較例2]
図4の汚水処理装置を用いて有機性排水の処理を行った。汚水処理装置の構成、及び処理条件については実施例と同様とした。ただし、実施例と運転期間(年、月度)は異なり、汚泥性状が良好で好適に処理できる条件であった。また、平膜エレメント4は同性能のものを使用した。
【0035】
膜面洗浄装置は、散気装置8(口径0.5mm孔が多数形成されてなる微細気泡管、気泡直径約0.5mm)、及びブロワ11(定格出力0.75kw、空気量450NL/min、30kPa)と、反応槽1の底部に設置した回転翼13(小型水中ミキサ、定格出力1.5kw、流量500L/min)から構成される。各装置間の配置距離について、反応槽1の底部から散気装置8までの距離L10を約450mm(回転翼13の上方から散気装置8までの距離L9を約100mm)、散気装置8から浸漬型膜分離装置3の下方までの距離L8を約50mmに設定した。試験は2008年8月から9月の2ヶ月間実施し、散気量を250NL/min、攪拌流量を500L/min一定として連続運転を行った。
【0036】
その結果、全平膜エレメント4の差圧上昇速度は2ヶ月間で0.10kPa/day(フラックス0.7m/day)と安定運転可能であったが、好適な処理条件にも関わらず実施例の時と比べると高い値となった。また、各平膜エレメント4の膜表面に局部的なケークが幾つか見られ、不均一な散気に起因する膜面閉塞が見られた。消費動力については、2ヶ月間、総処理水量1800m当たり、3158.6kwhであり、原単位当たりの電力使用量は1.75kwh/mであり、実施例の時と比べて高い値となった。
【0037】
[比較例3]
図5の汚水処理装置を用いて有機性排水の処理を行った。汚水処理装置の構成、及び処理条件については実施例と同様とした。ただし、実施例と運転期間(月度)は異なり、汚泥性状が良好で好適に処理できる条件であった。また、平膜エレメント4は同性能のものを使用した。
【0038】
膜面洗浄装置は、散気装置8(口径0.5mm孔が多数形成されてなる微細気泡管、気泡直径約0.5mm)、及びブロワ11(定格出力0.75kw、空気量450NL/min、30kPa)と、水流装置9(口径10mm孔が多数形成されてなる吐出管)、及び浸漬型膜分離装置3の鉛直下方の範囲内かつ反応槽1の下部に設置した水中ポンプ12(定格出力0.75kw、吐出量300L/min、INV制御)から構成される。各装置間の配置距離について、反応槽1の底部から水流装置9までの距離L4を350mm、水流装置9から散気装置8までの距離L3を100mm、散気装置8から浸漬型膜分離装置3の下方までの距離L2を50mmに設定した。試験は2009年8月から9月の2ヶ月間実施し、散気量を250NL/min、水流吐出量を200L/min(INV出力70%)一定として連続運転を行った。
【0039】
その結果、全平膜エレメント4の差圧上昇速度は2ヶ月間で0.10kPa/day(フラックス0.7m/day)と安定運転可能であったが、好適な処理条件にも関わらず実施例の時と比べると高い値となった。また、各平膜エレメント4の膜表面に局部的なケークが幾つか見られ、不均一な散気に起因する膜面閉塞が見られた。消費動力については、2ヶ月間、総処理水量1800m当たり、2306.4kwhであり、原単位当たりの電力使用量は1.28kwh/mであり、実施例の時とほぼ同等であった。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に実施例と各比較例の結果を示すが、従来の粗大気泡管を単独使用した時(比較例1)、及び微細気泡散気装置8と回転翼13を併用した時(比較例2)に比べ、微細気泡散気装置8と水流装置9を併用した時(実施例)の方が、省コストで長期安定運転可能であった。また、微細気泡散気装置8と水流装置9を併用した場合について、水中ポンプを浸漬型膜分離装置3の鉛直下方の範囲内に設置した時(比較例3)に比べ、鉛直下方の範囲外に設置した時(実施例)の方が、散気の分散性が良くなり(ケーク付着がなくなり)、より長期安定運転可能であった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の膜分離活性汚泥処理装置及びその膜面洗浄方法は、有機性汚水を含有する下水処理等の分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1:反応槽
2:汚水供給系
3:浸漬型膜分離装置
4:平膜エレメント
5:ケース
6:膜ケース
7:散気ケース
8:散気装置
9:水流装置
10:透過液導出管
11:ブロワ
12:水中ポンプ
13:回転翼
A:水流
B:微細気泡
L1:反応槽液面から膜ケースまでの距離
L2:散気装置から膜ケースまでの距離(図1、図5)
L3:水流装置から散気装置までの距離(図1、図5)
L4:反応槽底部から水中装置までの距離(図1、図5)
L5:反応槽底部から水中ポンプまでの距離
L6:散気装置から膜ケースまでの距離(図3)
L7:反応槽底部から散気装置までの距離(図3)
L8:散気装置から膜ケースまでの距離(図4)
L9:回転翼上方から散気装置までの距離(図4)
L10:反応槽底部から散気装置までの距離(図4)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽に浸漬型膜分離装置を配置し、浸漬型膜分離装置の下方に配置した散気装置の上方または下方に、浸漬型膜分離装置の鉛直下方の範囲外かつ反応槽下部に設置した水中ポンプを動力源とする水流装置を有することを特徴とする膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項2】
前記散気装置が直径1mm以下の微細気泡を生成する微細気泡管を有することを特徴とする請求項1に記載の膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項3】
前記反応槽の底部から50mm以上150mm以下隔てた位置に前記水中ポンプを配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の膜分離活性汚泥処理装置。
【請求項4】
反応槽に浸漬型膜分離装置を配置し、浸漬型膜分離装置の下方に配置した散気装置の上方または下方に、浸漬型膜分離装置の鉛直下方の範囲外かつ反応槽下部に設置した水中ポンプを動力源とする水流装置を有する膜分離活性汚泥処理装置における膜面洗浄方法であって、該散気装置から散気する気泡と該水流装置から生成する水流によるエアリフト作用によって生起する気液混相の上昇流を掃流として該浸漬型膜分離装置の膜面に作用させることを特徴とする膜分離活性汚泥処理装置における膜面洗浄方法。
【請求項5】
前記散気装置が直径1mm以下の微細気泡を生成する微細気泡管を有することを特徴とする請求項4に記載の膜分離活性汚泥処理装置における膜面洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−45510(P2012−45510A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191740(P2010−191740)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】