膜厚測定システム、膜厚測定方法、及び、これらに使用される超音波探触子の取付構造
【課題】第1面と第2面の間に形成される膜の厚さを計測するための膜厚測定システムを提供する。
【解決手段】第1面と第2面の間に形成される膜の厚さを計測するための膜厚測定システムであって、第1面もしくは第2面の背面側に取り付けられ、第1面もしくは第2面と膜の境界に向けて超音波を照射する超音波探触子と、この超音波探触子により受信された前記境界からの反射波の初期周期分を抽出する初期周期分抽出手段と、抽出された初期周期分に基づいて、膜厚さの測定を行う膜厚測定手段とを備えている。初期周期分として、第1反射波の負半波、正半波、負半波と正半波の和のいずれかを用いることが好ましい。
【解決手段】第1面と第2面の間に形成される膜の厚さを計測するための膜厚測定システムであって、第1面もしくは第2面の背面側に取り付けられ、第1面もしくは第2面と膜の境界に向けて超音波を照射する超音波探触子と、この超音波探触子により受信された前記境界からの反射波の初期周期分を抽出する初期周期分抽出手段と、抽出された初期周期分に基づいて、膜厚さの測定を行う膜厚測定手段とを備えている。初期周期分として、第1反射波の負半波、正半波、負半波と正半波の和のいずれかを用いることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1面と第2面の間、もしくは、第1面の表面に形成される膜の厚さを計測するための膜厚測定システム及び膜厚測定方法、及びこれらに使用される超音波探触子の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる膜の例として、ピストンリングとシリンダ(第1面と第2面)の間に形成される潤滑油膜(膜の一例)があげられる。例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等に使用されるピストンリングの表面には、用途に合った各種の表面処理が施される。かかる処理法の潤滑特性を評価する項目の例として、油膜形成状態の良否を調べるために油膜厚さを測定する方法がある。
【0003】
ピストンリングとシリンダ間に形成される油膜厚さの測定方法としては、レーザー法や誘起蛍光法が広く知られているが、シリンダの材料として透光性の材料を用いる必要があるという問題がある。
【0004】
また、静電容量法や渦電流法は、ピストンリングに孔を開けてセンサーを取り付けて、電極の周囲を絶縁体で覆う必要がある。しかし、ピストンリングに孔を開けると歪が生じるという問題がある。また、ピストンリングの材質と異なるものが表面に現れるため、センサーの取り付けにより潤滑状態が影響を受けてしまうことが考えられる。従って、正確な評価を行なうことができない。
【0005】
特に、摺動方向に速度が変化するピストンリングの潤滑特性の評価には、摺動状態での数μmの油膜厚さの測定を正確に行う技術が必要となる。ピストンリングの表面にはクラウニングが施されていたり、表面粗さが存在し、それがなじみにより変化する。また、温度の影響も受けるため、その場での膜厚を理論により求めることができない場合も多く、潤滑状態などの評価を行う上で油膜厚さの測定を行うことは不可欠である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、第1面と第2面の間に形成される膜の厚さを計測するための膜厚測定システム及び膜厚測定方法、及びこれらに使用される超音波探触子の取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係る膜厚測定システムは、
第1面と第2面の間に形成される膜の厚さを計測するための膜厚測定システムであって、
第1面もしくは第2面の背面側に取り付けられ、第1面もしくは第2面と膜の境界に向けて超音波を照射する超音波探触子と、
この超音波探触子により受信された前記境界からの反射波の初期周期分のみに着目して抽出する初期周期分抽出手段と、
抽出された初期周期分に基づいて、膜厚さの測定を行う膜厚測定手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
かかる構成による膜厚測定システムの作用・効果を説明する。具体例として、ピストンリング(第1面を有する)とシリンダ(第2面を有する)間に形成される潤滑油膜を挙げて説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0009】
ピストンリングあるいはシリンダの背面側に油膜厚さを測定するための超音波探触子を取り付ける。この超音波探触子による測定原理を図1により説明する。図1において、シリンダ1とピストンリング2の間に油膜が形成され、油膜厚さが符号Lで示されている。仮に、ピストンリング2の背面側に超音波探触子を取り付けると、この探触子から照射された超音波(入射波)は、図1に示すようにシリンダ1とピストンリング2の境界に向けて進行する。入射波は、その一部がピストンリング2と油膜の境界2aで反射すると共に、残りの一部は境界2aを透過して油膜部分を通過し、シリンダ1の表面(シリンダ1と油膜の境界1a)に到達する。この境界1aにおいて、一部は反射し、残りは透過してシリンダ1内へ進行する。境界1aで反射した超音波は、再び境界2aに到達し、境界2aでの反射と透過が再び行われる。このように、油膜中において超音波の多重反射が生じる。この油膜厚さが、照射する超音波のパルス幅に比べて薄い場合には、境界2aでの反射波と油膜内での多重反射波は分離せずに干渉しあうため、シリンダ1とピストンリング2の境界からの反射波の振幅(反射エコー高さ)は、油膜厚さに応じて変化することになる。これが、超音波探触子を用いた場合の、油膜厚さの測定原理である。
【0010】
このことは、干渉波によって生じる境界2aでの音圧と粒子速度の連続性を考慮して波動方程式を解いた結果と同じになり、その場合の膜厚とエコー高さ(反射波の大きさであり、超音波探触子により観測される)の関係は、次式のようになる。ただし、この式は2面間が平行な鏡面である場合に成立する理論式である。表面粗さが存在する場合には平均膜厚を求める式となる。
h=(Z12−Z21)/{4cot2(KL)+(Z12+Z21)2}1/2・・・(1)
ここで、Z12=Z1/Z2 、Z21=Z2/Z1、K=2π/λ2
Z1は図1に示すようにシリンダ1及びピストンリング2の音響インピーダンス(シリンダ1とピストンリング2は同じ材質とする)、Z2は油膜の音響インピーダンスである。また、λ2は油中における超音波の波長である。
【0011】
式(1)において、膜厚Lとエコー高さhの関係は、図3に示すようになる。超音波探触子により観測されるエコー高さhに対して一意的に膜厚が定まるのは、L<λ2/4(λ2は超音波の油中における波長)の領域である。図3に示すように、干渉の影響で周期的に同じ波形が繰り返されるため、L1点以下の領域が一意的に膜厚が定まる領域である。すなわち、理論式が成立する範囲においては、エコー高さhを測定することで、膜厚Lを演算して求めることができる。理論式が成立しない場合は、予めエコー高さと膜厚の関係を表す較正曲線を取得しておく必要がある。
【0012】
例えば、2MHzの超音波の場合、油中波長は約700μmであるため、175μmよりも薄い膜厚の測定が可能である。ただし、実際にはLに対するhの変化が顕著であるのは、L<λ2/8であるから、測定可能な範囲は実質的にはこの範囲となる(図3に斜線で示す)。この場合、測定可能な領域は、約90μm以下となる。
【0013】
4MHzの超音波の場合は、この領域は約40μm以下であるが、同じ膜厚Lでのエコー高さが高くなるので、高周波の超音波の場合、薄膜での感度が高くなり、条件によってはサブミクロンの膜厚測定が可能になる。
【0014】
<表面粗さの影響>
次に、油膜が形成される境界面である摺動面の表面粗さの影響について説明する。図4は、表面粗さの変化状況を示すものであり、(a)初期状態(b)なじみ状態(c)面荒れ状態を夫々示している。
【0015】
摺動面の粗さが超音波の油中波長の1/100よりも小さな場合でも、油膜厚さがそれと同程度まで薄くなると、境界面からの反射エコー高さは、表面粗さの影響を受ける。(a)に示すように、粗さ面に入射した超音波のうち、粗さの傾斜部に入射した超音波は散乱し、反射波の波高値には大きな影響を及ぼすことはない。すなわち、粗さの山や谷の頂部からの反射によりほぼ決まると考えられる。粗さ面の統計的な性質を考慮すると、このとき観測されるエコー高さは、粗さ面の平均線と相手面との間の平均膜厚による決まると考えられる。この平均膜厚は、表面粗さの最大高さYと粗さ先端と相手面との膜厚さが同じであっても、表面粗さのせん頭(粗さの先端部が徐々に削がれていき台形状になること)の進行状況により異なってくる。
【0016】
すなわち、同じように粗さ先端で固体接触が生じている面(L=0)であっても、エコー高さは、夫々異なってくることになる。従って、膜厚測定をする実際の摩擦面について、式(1)をそのまま使用することはできず、別途膜厚の較正を行う必要があることが分かる。
【0017】
前述の(1)式は連続波を仮定した場合の解であり、本発明で用いるパルス波の場合と多少異なることもある。また、油膜部と同程度の厚さの超音波探触子とピストンリング背面の接着層の厚さが問題となる場合、また、使用する超音波探傷器の追い込み領域(図5に示すように、通信回線のインピーダンス等の影響があり、通常の使用では避ける領域)に観測すべき第1反射波が位置する場合、更には、温度の補正を必要とする場合には、上記式をそのまま適用して膜厚の測定を行うことはできない。従って、事前に膜厚とエコー高さの関係を較正しておくことが好ましい。
【0018】
例えば、旋盤の移動テーブルのような平行な摺動面の場合(図6(a)参照)、膜厚Lは式(1)によりある程度推測可能であるが、ピストンリングのように、潤滑効果の改善のために、ピストンリング先端に数μmのクラウニングが施されている場合(図6(b)参照)、リング幅中央で膜厚がゼロであっても、その幅方向に徐々に膜厚は厚くなる。
【0019】
従って、超音波の照射領域は図6に示すように拡散されるものであるため、この場合には、超音波の照射領域の平均的な膜厚Lcに影響されるエコー高さhcが観測されることになる。従って、なじみを伴う運転条件では、式(1)によるリング幅中央の膜厚測定はきわめて難しく、現物についての較正が必要となる。
【0020】
<反射波の波形>
次に、反射波の波形の具体例を図2示す。波形信号には、最初の1波(第1反射波)Sと、それ以降(第2反射波以降)の成分Uに分けて考えることができる。多重反射が何度も繰り返されると、油膜の影響を大きく含んでいることになり、油膜の変動に対してエコー高さの変動が多少大きく現れることになる。このため、第1反射波でも多周期を経験した波のほうが測定に有利と考えがちであるが、実際には時間が経過すると、反射波の路程も長くなり、超音波の照射領域も拡大し目的とするリング幅中央付近以外の情報を多く含むようになる。そのため、リング幅中央の油膜厚さとエコー高さとが1:1の対応関係ではなくなり、正確な油膜厚さの測定を行えなくなる。特に、ピストンリング2の行程方向の厚さが薄い場合には、路程が長くなると、図1に示すようにリングのエッジや上下の端面2bからの反射波の影響を受けてしまい、更に正確な油膜厚さの測定を大きく阻害する。
【0021】
そこで、反射波の成分のうち、初期周期分(図2のSで例示ように1周期もしくは2周期)を用いて油膜厚さの測定を行うようにする。その結果、ピストンリングの表面に形成される油膜厚さを正確に測定可能な油膜厚測定システムを提供することができる。
【0022】
ところで、ピストンリング2のように薄い弾性体の場合、超音波探触子に加えるパワーが大きいとリングそのものが振動し、リング周辺の油やピストンとの接触の影響を大きく受けるため、油膜厚さの測定が不可能になる。そこで、パワーをできるだけ低くし、ダンピングもごく低い値に設定し、そのようなマクロなリング振動を避けて、油膜厚さの変化だけを捉えるようにする必要がある。
【0023】
本発明に係る初期周期分として、第1反射波の負半波、正半波、負半波と正半波の和(全波)のいずれかを用いることが好ましい。
【0024】
図2において、負半波はSnで正半波はSpで示される。これらのいずれかの信号を用いて油膜厚さの測定が可能である。また、正半波Spと負半波Snの和(絶対値の和)を用いることでも、同じく正確な油膜厚さの測定を行うことができる。測定では、膜厚変化に対して、エコー高さ変化が大きな波を選択すればよい。
【0025】
<2物質を介しての膜厚測定>
本発明に係る膜厚測定方法は、第1面もしくは第2面を有する第1の物質と、第2の物質とを超音波探触子と膜形成部の間に介在した状態で、その場の荷重(応力)と、それらのいずれかの背面の膜厚が変化した場合であっても膜厚さだけを正確に測定する方法であって、
第1の物質と第2の物質を分離し、それらの間に空気層を形成させて、第2の物質に取り付けられる超音波探触子により、第1の物質と第2の物質の境界面における音圧反射率及び反射音圧振幅を求める第1ステップと、
第1の物質と第2の物質を結合した状態で測定される第1の物質の背面の膜部からの反射音圧振幅と、前記第1ステップに取得された音圧反射率及び反射音圧振幅とに基づいて、膜部における音圧反射率を求める第2ステップと、を有することが好ましい。
【0026】
更に本発明において、第1面もしくは第2面を有する第1の物質と、第2の物質とを超音波探触子と膜形成部の間に介在した状態で膜厚さを測定するに際して、
第2の物質に対し取り外し可能な第3の物質を更に取り付け、この第3の物質に超音波探触子を取り付け、
第2の物質と第3の物質を分離し、それらの間に空気層を形成させて、第3の物質に取り付けられる超音波探触子により、荷重(応力)に伴い音波の透過する固体接触面積が変化する第2の物質と第3の物質の境界面における音圧反射率及び反射音圧振幅を求める第1ステップと、
第2の物質と第3の物質を結合した状態で測定される膜部からの反射音圧振幅と、前記第1ステップに取得された音圧反射率及び反射音圧振幅とに基づいて、膜部における音圧反射率を求める第2ステップとを有することが好ましい。
【0027】
かかる構成による測定方法について具体例をあげながら説明する。
【0028】
超音波探触子により油膜測定を行う場合(一般的に、第1面と第2面の間に形成される膜の厚さを測定する場合)、油膜と超音波探触子の間に介在する物質は1つであることが好ましい。しかしながら、測定対象によっては、膜形成部と超音波探触子の間に2つの物質が介在することがある。例えば、ピストンリングとシリンダ間の膜厚をシリンダ側に超音波探触子を配置して測定する場合、図7に示すように間にシリンダライナとシリンダブロックの2物質が介在する。2物質が介在する場合は、その2物質間における超音波の反射・透過も考慮する必要がある。また、旋盤の移動テーブルの摺動面のように、2物質間の面圧が荷重により変化する場合もある。
【0029】
図7に示す態様を一般化するため、物質A(シリンダブロック)・物質B(シリンダライナ)と物質C(ピストンリング)の間に膜が存在するものとし、膜厚をLとする。
【0030】
また、Aiは物質Aに入射された音波の音圧振幅、ArはAとBの接触面の音圧反射率rABにより決まる音圧振幅、BtはAとBの音圧透過率tABにより決まる音圧振幅、BrはBtに対し油膜部での反射率rBCを考慮した場合の音圧振幅、AtはBrに対し接触面での透過率tABを考慮した場合の音圧振幅であり超音波探触子により受信される波高値である。
【0031】
シリンダーブロックとシリンダライナの接触面は、密着度が高いはめ合い状態となっており、接触面を介しての超音波の伝播が可能である。従って、シリンダ側からであっても油膜の測定を行うことができる。
【0032】
かかる場合において、物質Aと物質Bが分離可能(完全な空気層で分離可能)か否か、それらの接触面が音波の伝播を考える場合に、完全な密着状態として扱ってよいのかどうか、それとも表面粗さを考慮して音波の伝播具合を評価しなければならないかによって、膜厚の測定方法が異なる。以下、各々の場合について、膜厚測定法を説明する。
【0033】
最初に、物質Aと物質Bの境界面での音波反射率rABは
rAB=Ar/Ai・・・(2)
物質AからBへの音圧透過率は、次のように表される。
tAB=1+rAB ・・・(3)
式(2)と合わせて、tAB=1+Ar/Ai
油膜部での音圧反射率rBCは、式(1)に示したように、膜厚L、油中波長λ(周波数f)、各物質の音響インピーダンス(ZB、ZC)により決まる。
【0034】
入射音圧Aiと油膜部からの反射波Atとの比は、
At=Ai・tAB・rBC・tAB 従って、
At/Ai=tAB2・rBC=(1+rAB)2rBC・・・(4)
となる。
【0035】
<ケース1>
まず最初に物質Aと物質Bが空気層により完全に分離可能な場合について説明する。この場合、両者を分離すると、物質Aへの入射エネルギーは、その裏面においてほとんどすべて反射される。従って、
Ar≒Ai
となり、このArを基準(Ar0)に設定する。
【0036】
次に、物質A,Bを接触させた場合のArから、その接触面での音圧反射率rABが
rAB=Ar/Ai=Ar/Ar0
で与えられる。従って、式(4)において、Ai=Ar0,At,rABは既知の値となるので、求めたいrBC(油膜部での反射率)が決まる。この決まったrBCから、較正実験で求めておいた膜厚とエコー高さh(従って、反射率rBC)の関係を用いて油膜厚さを求めることができる。また、物質AB間における面圧(荷重)とエコー高さ(従って、反射率rAB)の較正を行なっておけば、求めたrABから、そのときに油膜に作用する面圧(荷重)が推定できることになる。
【0037】
物質A,Bの接触状態(例えば、面圧)が一定であり続ける場合には、直接Atと膜厚の関係を較正しておき、Atの変化から膜厚測定を行えばよい。
【0038】
しかし、2面間の接触状態が変化する場合には、Atは膜厚以外にそこでの透過率や反射率の影響を受けて変化するため、上述した較正値を使用できなくなる。ここで示した方法は、かかる場合において有効である。
【0039】
例えば、物質Aに外力の(周期的)変動成分が作用する場合、物質Aと物質Bの界面にも変動応力が作用し、超音波の界面における透過率も応力により変動する。従って、超音波探触子が受信するエコー高さ信号は、膜厚の影響のみならず界面の接触状態の変動の影響も受けることになるが、上記の方法によれば、そのような応力の変動があったとしても膜厚の情報のみを取り出すことができる。すなわち、上記式(4)において膜厚に依存するrBCは、他の既知の情報に基づいて演算できるからである(rABは物質A,Bを分離することで得られる)。
【0040】
<ケース2>
次に、物質Aと物質Bを分離できない場合について図8により説明する。この場合には、rABを特定することができない。そこで、物質Aの表面に分離可能な物質Dとして遅延材を配置し、その表面に超音波探触子を取り付ける。物質A,Bが分離できないので、ArとAiの比がわからないため、遅延材を設けて、さらにもう1つ反射源を作るようにする。
【0041】
かかる構成において、超音波探触子により観測されるのは、Dr(DとAの境界での反射波振幅)と油膜部からの反射波Dtである。
【0042】
Dr=Di・rDA
Ai=Di・tDA=Di・(1+rDA)
Dtr=Ar・tDA=Ai・rAB・tDA=Di(1+rDA)2rAB
Dtt=At・tDA=Ai・tAB2・rBC・tDA=Di(1+rDA)2(1+rAB)2rBC
上記式から
Dtr/Di=tDA2・rAB
Dtt/Di=tDA2・tAB2・rBC
Dtt/Dr=tDA2・tAB2・rBC/rDA
図8に示すように、超音波探触子が取り外すことができるので、遅延材の裏面は空気(従って、完全反射面)に接しており、遅延材での音波の減衰を無視すれば、
Di≒Dr=Dr0
となる。この遅延材を物質Aに固定した場合に観測される反射波振幅Drから、
rDA=Dr/Di=Dr/Dr0
tDA=1+rDA
が求まる。更に式を変形し、
rAB=Dtr/Dr0/(1+rDA)2
rBC=Dtt/Dr0/(tDA2・tAB2)
=Dtt/Dr0/{(1+rDA)2(1+rAB)2}
このように得られた2つの式において、Dtt、Dtr、Dr0、Dr、rDA=Dr/Dr0、rABについては、すべて実測値から得ることができる。従って、別に求めておいた、膜厚とエコー高さh(rBC)の関係(較正曲線)から油膜厚さを求めることができる。また、前述のように、求めたrABから、そのときに油膜に作用する面圧(荷重)が推定できることになる。
【0043】
以上のように、2つの物質が介在する場合であっても、超音波探触子による油膜厚さの測定が可能である。また、3つ以上の物質が介在する場合も同様であり、各物質を分離して同様の測定を行うことで油膜厚さの測定ができる。
【0044】
次に、本発明に係る超音波探触子の取付構造について説明する。この取付構造は、
第1面もしくは第2面を有する第1物質の背面側に曲面部を形成し、この曲面部に柔軟性を有する超音波探触子を取り付け、照射される超音波が膜形成部における特定領域に収束するように構成したことを特徴とするものである。
【0045】
この構成によると、超音波探触子から照射される超音波を特定領域に収束するようにできるため、測定ポイントを絞った形での膜厚測定を行うことができる。また、超音波を収束させることで、その特定領域については2面が平行な鏡面であるとみなすことができ理論式の適用も可能になる。
【0046】
本発明に係る別の超音波探触子の取付構造は、
第1面もしくは第2面を有する第1物質の背面側に設けられる超音波探触子の取り付け面を備え、
取り付け面側に多数の振動素子からなるコンポジット素子の負極を配置すると共に、振動素子を挟んで負極と対抗する側に正極を配置し、正極の面積を負極の面積よりも小さくなるように設定したことが好ましい。
【0047】
コンポジット型素子は多数の振動素子により構成されるが、励起させる振動素子を限定したい場合がある。例えば、矩形状に配置される振動素子のうち四隅に位置する部分は使用しないほうが好ましいことがある。かかる場合は、正極の大きさを限定することで励起される振動素子群を選択することができる。
【0048】
本発明において、負極を正極側に折り返した部分を有することが好ましい。
【0049】
負極を正極側に折り返すことで、配線接続を簡単に行うことができるようになる。
【0050】
本発明において、正極の少なくとも四隅を曲線状に形成したことが好ましい。
【0051】
少なくとも四隅を曲線状とすることで、四隅に位置する振動素子群を使用しないようにでき、励起させる振動素子を限定することができる。例えば、矩形の四隅にRをつけたり、電極全体を円形や楕円形とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明に係る油膜厚測定システムの好適な実施形態を図面を用いて説明する。図9は、油膜厚さ測定システムの概要を示す模式図である。なお図9は、測定実験を行うためのシステムを示している。
【0053】
<油膜厚さ測定システムの概要>
シリンダ1の内面を上下摺動するピストン3にピストンリング2が取り付けられており、ピストンリング2とシリンダ1の間に油膜が形成される。実験では、ピストン3を上下させるのではなく、シリンダ2をリニアモータ5により上下駆動させた。
【0054】
シリンダ1の下方に油槽4が設けられ、油槽に溜められている潤滑油はポンプPにより吸引され、ピストン軸6の上方から潤滑油が供給される。ピストン軸6は、ピストン3と一体的に結合されており、止め具7により固定される。ピストン軸6の内部に形成された通路6aを潤滑油が通過するように構成され、ピストン3に設けられた油路8により、シリンダ1とピストンリング2の間の隙間に潤滑油を供給する。
【0055】
ピストンリング2の背面側には、油膜厚さを計測するためのセンサーとして超音波探触子9が取り付けられている。超音波探触子9の配線10は、超音波探傷器11に接続され、モニター12により油膜厚さの計測結果を観測することができる。
【0056】
超音波探触子11には、超音波探触子9が受信した反射波信号を受信してこれを解析し、油膜厚さの測定を行う機能を有する。超音波探触子11による油膜厚さの測定原理については、既に図1により説明したとおりである。また、図2で説明したように、油膜厚さの測定に際して、第1反射波の信号を用いて油膜厚さの測定を行うことで、正確な測定を行うようにしている。すなわち、反射波の初期周期分を抽出する初期周期分抽出手段の機能と、抽出された初期成分に基づいて、油膜厚さの測定を行う油膜測定手段の機能を備えている。
【0057】
図9に示すのは、ピストンリング2に超音波探触子9を配置してシリンダ1を移動する実施形態であるが、ピストンリング2に超音波探触子9を配置する場合には、シリンダを移動させて測定する場合とピストンを移動させて測定する方法がある。
【0058】
まずは、ピストンリング2に取り付ける場合のセンサー構造について説明し、次にシリンダ側からの油膜測定技術(特にシリンダ駆動型の膜厚測定装置)について説明する。
【0059】
<超音波探触子の取り付け>
ピストンリング2に超音波探触子9を取り付ける場合の好適な場所を図4により説明する。ピストンリング2は、ピストン3に取り付けやすくするため、その一部に合い口2cが設けられており、閉じたリングに比べて歪みが生じやすくなっている。かかる歪みの影響を受けやすい場所に超音波探触子1を取り付けると、測定精度に影響するため、図10のように合い口2cから角度位相で90゜離れた位置に取り付けることが好ましい。合い口2cにちょうど向かい合う位置は、最も歪みが生じやすい場所である。ただし、ピストンリング全周の膜厚を測定する場合には、この限りではない。
【0060】
また、超音波探触子9から照射する超音波のエネルギーは、できるだけ低い方が好ましい。これにより、ピストンリング2の共振を抑制する。
【0061】
図10に示すように、ピストンリング2の背面側(内面)に1箇所だけ超音波探触子9を取り付けた場合、円周方向における油膜分布を短時間で測定することが難しい。円周方向の油膜分布を効率よく測定するためには、図11(a)に示すように、多数個の超音波探触子9を円周方向に沿って配置すればよい。超音波探傷器11が1台しかない場合は、多数個の超音波探触子9との接点を順次切り替えていくことで、円周方向に沿った膜厚測定が可能になる。
【0062】
ただし、多数個の超音波探触子9の配線をうまくまとめる必要があることと、ピストン3は緩やかではあるが、円周方向に沿って回転移動するため、配線がねじ切れる可能性がある。かかる問題点は、ロータリー接点を用いたり、合い口2c部に周り止めを設けることで解消することができる。また、多数個の超音波探触子9を設ける代わりに、アレイタイプの超音波探触子9A(図11(b)参照)を用いることでも、同じような目的を達成することができる。
【0063】
図12は、超音波探触子9の取り付け位置をシリンダ1の外部に設けた例である。ピストン軸6に連結された支持体15に超音波探触子9を取り付け、ピストン3の上下に連動して、超音波探触子9も一緒に追従するようにする。超音波探触子9は、ちょうどピストンリング2に向かい合う位置に設けられる。かかる方法によっても、油膜厚さの測定を行うことができる。超音波探触子9がシリンダ1の外部に設けられるので、配線がねじ切れるという問題を容易に解消することができる。かかる構成によれば、ピストン3の中央部、入り口、出口だけでなく、任意の位置における油膜形成状態を測定することができる。ピストン3の行程位置を検出するセンサーをあわせて設けることで、行程位置と超音波探触子9からの反射波信号とを対応付けることができる。
【0064】
また図12に示す構造において、支持体15をピストン軸6周りに回転させることで、周方向における油膜厚さの分布状態を測定することができる。ピストンの場合、円周方向の特定位置の領域のみの油膜厚さを測定するのではなく、全体の油膜厚さの形成状態を測定することでより精度のよい油膜形成状態(潤滑状態)の評価を行なうことができる。
【0065】
図13は、円周方向における油膜厚さの分布を示すデータを示す。横軸は行程位置、縦軸が円周方向の角度(座標)を示す。(a)(b)(c)はピストンリングのシリンダに対する相対速度の違いを示す。図13Aは、相対速度をパラメータとして、円周方向の平均油膜厚さと工程位置の関係を示している。
【0066】
<超音波探触子の詳細構造>
図14(a)は超音波探触子9の詳細構造を示す図である。超音波探触子9の先端部9aは、R形状(球面、楕円面、その他の曲面)に形成されており、油膜部において焦点を結ぶように構成されている。焦点径は0.1〜0.2mm程度に設定されている。超音波探触子9は、支持体20に支持されており、その内部にはカプラントC(水、油、グリセリン等の液体)が充填されている。従って、超音波はこのカプラント内を伝播して油膜部へと到達する。
【0067】
支持体20とシリンダ1の外壁面の間にはOリング21が設けられ、支持体20と超音波探触子9の取り付け部にもOリング21が配置される。このような取り付け構造を採用することで、超音波探触子9を円周方向及び軸方向の両方に移動させることができる。この構成によると、円周方向における油膜厚さの分布や、ピストンの上下行程に伴う油膜厚さの変動などについても測定することができる。
【0068】
図14(b)に示すように、超音波探触子9を上下方向に移動させることで、ピストンリング2の幅方向中央だけでなく、入口や出口における膜厚や、キャビティの発生状況を調べることができる。キャビティが発生している箇所では、空洞部の音響インピーダンスが油のそれに比べて極端に低いので、普通、エコー高さは高く現われ、発生を検出できる。
【0069】
図14(c)は、超音波探触子9の取り付け構造の別実施形態を示す図である。図のように薄いゴム膜22により超音波探触子9を支持し、ゴム膜22の内部にカプラントを充填するようにしてもよい。この場合、ゴム膜とシリンダの間には、潤滑剤を塗布するため、その膜部での多重反射により、ピストンリング部の油膜厚さが同じであっても、そこからの反射エコー高さが変化してしまう。この場合は、本願請求項3もしくは4に記載の方法により、ピストンリング部の油膜厚さに応じたエコー高さを求めて、膜厚の推定を行なえばよい。
【0070】
図15は、シリンダ1の外面にアレイタイプの超音波探触子9を取り付けた例である。アレイタイプの超音波探触子9Aを行程方向に配置することで、ピストン3の行程位置と油膜厚さの関係を測定することができる。アレイタイプの超音波探触子9を円周方向に何箇所か設けることで、更に円周方向の油膜厚さの分布も測定することができる。ピストン3やシリンダ1の移動は、移動機構の制御信号から知ることができる。
【0071】
次に、違うタイプの超音波探触子を使用した例を説明する。ピストンリング2の行程方向の厚みは、実際はそれほど大きくなく、例えば1.2mm程度の厚みである。一方、通常の超音波探触子9は、サイズが2mm程度あり、ピストンリング2の幅よりも少し大きくなっている。ピストンリング2に超音波探触子9を取り付ける場合には、接着剤等が使用されるが、超音波探触子9のサイズがピストンリング2の幅寸法よりも大きいと、取り付けが行いにくいだけでなく、超音波の照射もうまく行われないため、正確な油膜厚さの測定も難しくなる。
【0072】
そこで、図16に例示するようにPVDFタイプの超音波探触子19を使用する。PVDFとは、薄いピエゾ電子プラスティックフィルムを使った高分子圧電素子のことであり、柔軟性を有している。PVDFを使用する場合には、図16(b)に示すように、ピストンリング2の背面側に円弧面2dを形成する。この円弧面2dにPVDFタイプの超音波探触子19を取り付ける。円弧面2dを形成して、照射された超音波がピストンリング2とシリンダ1の境界に焦点を結ぶようにする。これにより、超音波のエネルギーを効率よく使用することができ、膜厚測定の精度も上げることができる。このことは、後に示すコンポジット型超音波探触子を用いた場合も同様である。
【0073】
また、PVDFを使用する場合は超音波探触子19の背面側にバッキング材を塗布することが好ましい。これはPVDFの背面側に潤滑油が進入すると、そのインピーダンスの影響を受けてしまい、これが受信されるエコー高さに対して大きな影響を与える。これにより、油膜厚さの測定誤差が生じてしまう。そこで、音波の散乱や減衰機能を持たせたバッキング材で処理を施すことで、背面側からの超音波の反射がないようにし、測定誤差の要因を除去する。具体的には、ダンピングを効かす目的で混入する鉛等の粒径とその濃度や分布を制御したり、微妙な気泡を混入させることでこの目的を達成する。
【0074】
図17は、コンポジット型の超音波探触子9を用いた場合の取り付け構造を示している。コンポジット型の振動素子は、図18に示すように正極90と負極91の間に柱状の振動素子92(圧電材)が挟持されており、変形が可能であるため、加工が容易であるという特徴を有する。このコンポジット型の超音波探触子9を図18に示すように傾斜面93が形成されるように削り落とす。これにより、超音波の励振が可能な有効範囲(図18(b)に斜線で示す)は、短い方の寸法により定まるため、超音波の発生範囲をある程度狭め、ピストンリング側面への音波の拡散の影響を少なくすることができる。また、ピストンリング2に取り付けられる側は幅広の領域で保持されるため、取り付け強度を確保することができる。例えば、超音波照射の有効範囲を1mm程度に絞ることができる。
【0075】
なお、コンポジット型の超音波探触子9は絶縁層94の上に取り付けられ、これにより、ノイズ対策とすることができる。
【0076】
図19は、超音波探触子9をピストンリング2背面に取り付ける場合の取り付け構造の別実施形態を示す。(a)はリングを軸方向視でみた図である。ピストンリング2の背面に絶縁膜30を介して超音波探触子9が貼り付けられている。超音波探触子9は負極90と正極91の間に柱状の振動素子92により構成されるコンポジット型の素子である。負極90から配線を取り出しやすくするため、負極90を折り返して正極91と同じ平面上に位置させる。折り返しを行う場合は、(b)と(c)のような方法がある。すなわち、ピストンリング2の円周方向に沿って折り返す場合と、半径方向に沿って折り返す場合である。
【0077】
図20は電極の別構成例を示す図である。コンポジット型の超音波探触子9を用いる場合、励起される振動素子の角の影響をなくす必要がある。矩形状に多数の振動素子が並べられている場合、電極の大きさを設定することで励起する振動素子の範囲を限定することができる。図20において正極を楕円状に形成している。この場合、負極を適宜折り返してもよい。また、正極全体を負極によりシールドするのも好ましい方法である。
【0078】
上記のように楕円状の正極を採用することで正極に対向する位置にある振動素子92のみが励起される。同じ目的を達成するには楕円形でなくてもよく、円形や、矩形の四隅にRを付けた形状などを採用してもよい。超音波探触子9の背面側には、上記のバッキング処理を施すことで、背面からの超音波の反射がないようにする。
【0079】
本発明によれば、表面だけでなく、物質間に形成された膜の厚さや面圧(荷重)の推定も行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】油膜厚さの測定原理を説明する図
【図2】反射波の波形を示す図
【図3】超音波探触子が受信するエコー高さ信号を示す図
【図4】表面粗さの進行と膜厚との関係を示す図
【図5】追い込み領域を示す図
【図6】ピストンリングのクラウニングを説明する図
【図7】2物質が介在する場合の構成例
【図8】2物質が介在する場合の構成例
【図9】油膜厚さ測定システムの概要を示す模式図
【図10】超音波探触子の好ましい取り付け位置を示す図
【図11】超音波探触子の取り付け例を示す図
【図12】超音波探触子の取り付け例を示す図
【図13】シリンダの油膜分布の測定結果を示す図
【図13A】シリンダの油膜分布の測定結果を示す図
【図14】超音波探触子の取り付け構造を示す詳細図
【図15】超音波探触子の取り付け例を示す図
【図16】PVDFを使用した構成例を示す図
【図17】コンポジット型超音波探触子の取り付け例
【図18】コンポジット型超音波探触子の構造を示す図
【図19】超音波探触子の取り付け構造を示す図
【図20】超音波探触子の取り付け構造を示す図
【符号の説明】
【0081】
1 シリンダ
2 ピストンリング
3 ピストン
9,9i,51 超音波探触子
11 超音波探傷器
C カプラント
L 膜厚
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1面と第2面の間、もしくは、第1面の表面に形成される膜の厚さを計測するための膜厚測定システム及び膜厚測定方法、及びこれらに使用される超音波探触子の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる膜の例として、ピストンリングとシリンダ(第1面と第2面)の間に形成される潤滑油膜(膜の一例)があげられる。例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等に使用されるピストンリングの表面には、用途に合った各種の表面処理が施される。かかる処理法の潤滑特性を評価する項目の例として、油膜形成状態の良否を調べるために油膜厚さを測定する方法がある。
【0003】
ピストンリングとシリンダ間に形成される油膜厚さの測定方法としては、レーザー法や誘起蛍光法が広く知られているが、シリンダの材料として透光性の材料を用いる必要があるという問題がある。
【0004】
また、静電容量法や渦電流法は、ピストンリングに孔を開けてセンサーを取り付けて、電極の周囲を絶縁体で覆う必要がある。しかし、ピストンリングに孔を開けると歪が生じるという問題がある。また、ピストンリングの材質と異なるものが表面に現れるため、センサーの取り付けにより潤滑状態が影響を受けてしまうことが考えられる。従って、正確な評価を行なうことができない。
【0005】
特に、摺動方向に速度が変化するピストンリングの潤滑特性の評価には、摺動状態での数μmの油膜厚さの測定を正確に行う技術が必要となる。ピストンリングの表面にはクラウニングが施されていたり、表面粗さが存在し、それがなじみにより変化する。また、温度の影響も受けるため、その場での膜厚を理論により求めることができない場合も多く、潤滑状態などの評価を行う上で油膜厚さの測定を行うことは不可欠である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、第1面と第2面の間に形成される膜の厚さを計測するための膜厚測定システム及び膜厚測定方法、及びこれらに使用される超音波探触子の取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明に係る膜厚測定システムは、
第1面と第2面の間に形成される膜の厚さを計測するための膜厚測定システムであって、
第1面もしくは第2面の背面側に取り付けられ、第1面もしくは第2面と膜の境界に向けて超音波を照射する超音波探触子と、
この超音波探触子により受信された前記境界からの反射波の初期周期分のみに着目して抽出する初期周期分抽出手段と、
抽出された初期周期分に基づいて、膜厚さの測定を行う膜厚測定手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
かかる構成による膜厚測定システムの作用・効果を説明する。具体例として、ピストンリング(第1面を有する)とシリンダ(第2面を有する)間に形成される潤滑油膜を挙げて説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0009】
ピストンリングあるいはシリンダの背面側に油膜厚さを測定するための超音波探触子を取り付ける。この超音波探触子による測定原理を図1により説明する。図1において、シリンダ1とピストンリング2の間に油膜が形成され、油膜厚さが符号Lで示されている。仮に、ピストンリング2の背面側に超音波探触子を取り付けると、この探触子から照射された超音波(入射波)は、図1に示すようにシリンダ1とピストンリング2の境界に向けて進行する。入射波は、その一部がピストンリング2と油膜の境界2aで反射すると共に、残りの一部は境界2aを透過して油膜部分を通過し、シリンダ1の表面(シリンダ1と油膜の境界1a)に到達する。この境界1aにおいて、一部は反射し、残りは透過してシリンダ1内へ進行する。境界1aで反射した超音波は、再び境界2aに到達し、境界2aでの反射と透過が再び行われる。このように、油膜中において超音波の多重反射が生じる。この油膜厚さが、照射する超音波のパルス幅に比べて薄い場合には、境界2aでの反射波と油膜内での多重反射波は分離せずに干渉しあうため、シリンダ1とピストンリング2の境界からの反射波の振幅(反射エコー高さ)は、油膜厚さに応じて変化することになる。これが、超音波探触子を用いた場合の、油膜厚さの測定原理である。
【0010】
このことは、干渉波によって生じる境界2aでの音圧と粒子速度の連続性を考慮して波動方程式を解いた結果と同じになり、その場合の膜厚とエコー高さ(反射波の大きさであり、超音波探触子により観測される)の関係は、次式のようになる。ただし、この式は2面間が平行な鏡面である場合に成立する理論式である。表面粗さが存在する場合には平均膜厚を求める式となる。
h=(Z12−Z21)/{4cot2(KL)+(Z12+Z21)2}1/2・・・(1)
ここで、Z12=Z1/Z2 、Z21=Z2/Z1、K=2π/λ2
Z1は図1に示すようにシリンダ1及びピストンリング2の音響インピーダンス(シリンダ1とピストンリング2は同じ材質とする)、Z2は油膜の音響インピーダンスである。また、λ2は油中における超音波の波長である。
【0011】
式(1)において、膜厚Lとエコー高さhの関係は、図3に示すようになる。超音波探触子により観測されるエコー高さhに対して一意的に膜厚が定まるのは、L<λ2/4(λ2は超音波の油中における波長)の領域である。図3に示すように、干渉の影響で周期的に同じ波形が繰り返されるため、L1点以下の領域が一意的に膜厚が定まる領域である。すなわち、理論式が成立する範囲においては、エコー高さhを測定することで、膜厚Lを演算して求めることができる。理論式が成立しない場合は、予めエコー高さと膜厚の関係を表す較正曲線を取得しておく必要がある。
【0012】
例えば、2MHzの超音波の場合、油中波長は約700μmであるため、175μmよりも薄い膜厚の測定が可能である。ただし、実際にはLに対するhの変化が顕著であるのは、L<λ2/8であるから、測定可能な範囲は実質的にはこの範囲となる(図3に斜線で示す)。この場合、測定可能な領域は、約90μm以下となる。
【0013】
4MHzの超音波の場合は、この領域は約40μm以下であるが、同じ膜厚Lでのエコー高さが高くなるので、高周波の超音波の場合、薄膜での感度が高くなり、条件によってはサブミクロンの膜厚測定が可能になる。
【0014】
<表面粗さの影響>
次に、油膜が形成される境界面である摺動面の表面粗さの影響について説明する。図4は、表面粗さの変化状況を示すものであり、(a)初期状態(b)なじみ状態(c)面荒れ状態を夫々示している。
【0015】
摺動面の粗さが超音波の油中波長の1/100よりも小さな場合でも、油膜厚さがそれと同程度まで薄くなると、境界面からの反射エコー高さは、表面粗さの影響を受ける。(a)に示すように、粗さ面に入射した超音波のうち、粗さの傾斜部に入射した超音波は散乱し、反射波の波高値には大きな影響を及ぼすことはない。すなわち、粗さの山や谷の頂部からの反射によりほぼ決まると考えられる。粗さ面の統計的な性質を考慮すると、このとき観測されるエコー高さは、粗さ面の平均線と相手面との間の平均膜厚による決まると考えられる。この平均膜厚は、表面粗さの最大高さYと粗さ先端と相手面との膜厚さが同じであっても、表面粗さのせん頭(粗さの先端部が徐々に削がれていき台形状になること)の進行状況により異なってくる。
【0016】
すなわち、同じように粗さ先端で固体接触が生じている面(L=0)であっても、エコー高さは、夫々異なってくることになる。従って、膜厚測定をする実際の摩擦面について、式(1)をそのまま使用することはできず、別途膜厚の較正を行う必要があることが分かる。
【0017】
前述の(1)式は連続波を仮定した場合の解であり、本発明で用いるパルス波の場合と多少異なることもある。また、油膜部と同程度の厚さの超音波探触子とピストンリング背面の接着層の厚さが問題となる場合、また、使用する超音波探傷器の追い込み領域(図5に示すように、通信回線のインピーダンス等の影響があり、通常の使用では避ける領域)に観測すべき第1反射波が位置する場合、更には、温度の補正を必要とする場合には、上記式をそのまま適用して膜厚の測定を行うことはできない。従って、事前に膜厚とエコー高さの関係を較正しておくことが好ましい。
【0018】
例えば、旋盤の移動テーブルのような平行な摺動面の場合(図6(a)参照)、膜厚Lは式(1)によりある程度推測可能であるが、ピストンリングのように、潤滑効果の改善のために、ピストンリング先端に数μmのクラウニングが施されている場合(図6(b)参照)、リング幅中央で膜厚がゼロであっても、その幅方向に徐々に膜厚は厚くなる。
【0019】
従って、超音波の照射領域は図6に示すように拡散されるものであるため、この場合には、超音波の照射領域の平均的な膜厚Lcに影響されるエコー高さhcが観測されることになる。従って、なじみを伴う運転条件では、式(1)によるリング幅中央の膜厚測定はきわめて難しく、現物についての較正が必要となる。
【0020】
<反射波の波形>
次に、反射波の波形の具体例を図2示す。波形信号には、最初の1波(第1反射波)Sと、それ以降(第2反射波以降)の成分Uに分けて考えることができる。多重反射が何度も繰り返されると、油膜の影響を大きく含んでいることになり、油膜の変動に対してエコー高さの変動が多少大きく現れることになる。このため、第1反射波でも多周期を経験した波のほうが測定に有利と考えがちであるが、実際には時間が経過すると、反射波の路程も長くなり、超音波の照射領域も拡大し目的とするリング幅中央付近以外の情報を多く含むようになる。そのため、リング幅中央の油膜厚さとエコー高さとが1:1の対応関係ではなくなり、正確な油膜厚さの測定を行えなくなる。特に、ピストンリング2の行程方向の厚さが薄い場合には、路程が長くなると、図1に示すようにリングのエッジや上下の端面2bからの反射波の影響を受けてしまい、更に正確な油膜厚さの測定を大きく阻害する。
【0021】
そこで、反射波の成分のうち、初期周期分(図2のSで例示ように1周期もしくは2周期)を用いて油膜厚さの測定を行うようにする。その結果、ピストンリングの表面に形成される油膜厚さを正確に測定可能な油膜厚測定システムを提供することができる。
【0022】
ところで、ピストンリング2のように薄い弾性体の場合、超音波探触子に加えるパワーが大きいとリングそのものが振動し、リング周辺の油やピストンとの接触の影響を大きく受けるため、油膜厚さの測定が不可能になる。そこで、パワーをできるだけ低くし、ダンピングもごく低い値に設定し、そのようなマクロなリング振動を避けて、油膜厚さの変化だけを捉えるようにする必要がある。
【0023】
本発明に係る初期周期分として、第1反射波の負半波、正半波、負半波と正半波の和(全波)のいずれかを用いることが好ましい。
【0024】
図2において、負半波はSnで正半波はSpで示される。これらのいずれかの信号を用いて油膜厚さの測定が可能である。また、正半波Spと負半波Snの和(絶対値の和)を用いることでも、同じく正確な油膜厚さの測定を行うことができる。測定では、膜厚変化に対して、エコー高さ変化が大きな波を選択すればよい。
【0025】
<2物質を介しての膜厚測定>
本発明に係る膜厚測定方法は、第1面もしくは第2面を有する第1の物質と、第2の物質とを超音波探触子と膜形成部の間に介在した状態で、その場の荷重(応力)と、それらのいずれかの背面の膜厚が変化した場合であっても膜厚さだけを正確に測定する方法であって、
第1の物質と第2の物質を分離し、それらの間に空気層を形成させて、第2の物質に取り付けられる超音波探触子により、第1の物質と第2の物質の境界面における音圧反射率及び反射音圧振幅を求める第1ステップと、
第1の物質と第2の物質を結合した状態で測定される第1の物質の背面の膜部からの反射音圧振幅と、前記第1ステップに取得された音圧反射率及び反射音圧振幅とに基づいて、膜部における音圧反射率を求める第2ステップと、を有することが好ましい。
【0026】
更に本発明において、第1面もしくは第2面を有する第1の物質と、第2の物質とを超音波探触子と膜形成部の間に介在した状態で膜厚さを測定するに際して、
第2の物質に対し取り外し可能な第3の物質を更に取り付け、この第3の物質に超音波探触子を取り付け、
第2の物質と第3の物質を分離し、それらの間に空気層を形成させて、第3の物質に取り付けられる超音波探触子により、荷重(応力)に伴い音波の透過する固体接触面積が変化する第2の物質と第3の物質の境界面における音圧反射率及び反射音圧振幅を求める第1ステップと、
第2の物質と第3の物質を結合した状態で測定される膜部からの反射音圧振幅と、前記第1ステップに取得された音圧反射率及び反射音圧振幅とに基づいて、膜部における音圧反射率を求める第2ステップとを有することが好ましい。
【0027】
かかる構成による測定方法について具体例をあげながら説明する。
【0028】
超音波探触子により油膜測定を行う場合(一般的に、第1面と第2面の間に形成される膜の厚さを測定する場合)、油膜と超音波探触子の間に介在する物質は1つであることが好ましい。しかしながら、測定対象によっては、膜形成部と超音波探触子の間に2つの物質が介在することがある。例えば、ピストンリングとシリンダ間の膜厚をシリンダ側に超音波探触子を配置して測定する場合、図7に示すように間にシリンダライナとシリンダブロックの2物質が介在する。2物質が介在する場合は、その2物質間における超音波の反射・透過も考慮する必要がある。また、旋盤の移動テーブルの摺動面のように、2物質間の面圧が荷重により変化する場合もある。
【0029】
図7に示す態様を一般化するため、物質A(シリンダブロック)・物質B(シリンダライナ)と物質C(ピストンリング)の間に膜が存在するものとし、膜厚をLとする。
【0030】
また、Aiは物質Aに入射された音波の音圧振幅、ArはAとBの接触面の音圧反射率rABにより決まる音圧振幅、BtはAとBの音圧透過率tABにより決まる音圧振幅、BrはBtに対し油膜部での反射率rBCを考慮した場合の音圧振幅、AtはBrに対し接触面での透過率tABを考慮した場合の音圧振幅であり超音波探触子により受信される波高値である。
【0031】
シリンダーブロックとシリンダライナの接触面は、密着度が高いはめ合い状態となっており、接触面を介しての超音波の伝播が可能である。従って、シリンダ側からであっても油膜の測定を行うことができる。
【0032】
かかる場合において、物質Aと物質Bが分離可能(完全な空気層で分離可能)か否か、それらの接触面が音波の伝播を考える場合に、完全な密着状態として扱ってよいのかどうか、それとも表面粗さを考慮して音波の伝播具合を評価しなければならないかによって、膜厚の測定方法が異なる。以下、各々の場合について、膜厚測定法を説明する。
【0033】
最初に、物質Aと物質Bの境界面での音波反射率rABは
rAB=Ar/Ai・・・(2)
物質AからBへの音圧透過率は、次のように表される。
tAB=1+rAB ・・・(3)
式(2)と合わせて、tAB=1+Ar/Ai
油膜部での音圧反射率rBCは、式(1)に示したように、膜厚L、油中波長λ(周波数f)、各物質の音響インピーダンス(ZB、ZC)により決まる。
【0034】
入射音圧Aiと油膜部からの反射波Atとの比は、
At=Ai・tAB・rBC・tAB 従って、
At/Ai=tAB2・rBC=(1+rAB)2rBC・・・(4)
となる。
【0035】
<ケース1>
まず最初に物質Aと物質Bが空気層により完全に分離可能な場合について説明する。この場合、両者を分離すると、物質Aへの入射エネルギーは、その裏面においてほとんどすべて反射される。従って、
Ar≒Ai
となり、このArを基準(Ar0)に設定する。
【0036】
次に、物質A,Bを接触させた場合のArから、その接触面での音圧反射率rABが
rAB=Ar/Ai=Ar/Ar0
で与えられる。従って、式(4)において、Ai=Ar0,At,rABは既知の値となるので、求めたいrBC(油膜部での反射率)が決まる。この決まったrBCから、較正実験で求めておいた膜厚とエコー高さh(従って、反射率rBC)の関係を用いて油膜厚さを求めることができる。また、物質AB間における面圧(荷重)とエコー高さ(従って、反射率rAB)の較正を行なっておけば、求めたrABから、そのときに油膜に作用する面圧(荷重)が推定できることになる。
【0037】
物質A,Bの接触状態(例えば、面圧)が一定であり続ける場合には、直接Atと膜厚の関係を較正しておき、Atの変化から膜厚測定を行えばよい。
【0038】
しかし、2面間の接触状態が変化する場合には、Atは膜厚以外にそこでの透過率や反射率の影響を受けて変化するため、上述した較正値を使用できなくなる。ここで示した方法は、かかる場合において有効である。
【0039】
例えば、物質Aに外力の(周期的)変動成分が作用する場合、物質Aと物質Bの界面にも変動応力が作用し、超音波の界面における透過率も応力により変動する。従って、超音波探触子が受信するエコー高さ信号は、膜厚の影響のみならず界面の接触状態の変動の影響も受けることになるが、上記の方法によれば、そのような応力の変動があったとしても膜厚の情報のみを取り出すことができる。すなわち、上記式(4)において膜厚に依存するrBCは、他の既知の情報に基づいて演算できるからである(rABは物質A,Bを分離することで得られる)。
【0040】
<ケース2>
次に、物質Aと物質Bを分離できない場合について図8により説明する。この場合には、rABを特定することができない。そこで、物質Aの表面に分離可能な物質Dとして遅延材を配置し、その表面に超音波探触子を取り付ける。物質A,Bが分離できないので、ArとAiの比がわからないため、遅延材を設けて、さらにもう1つ反射源を作るようにする。
【0041】
かかる構成において、超音波探触子により観測されるのは、Dr(DとAの境界での反射波振幅)と油膜部からの反射波Dtである。
【0042】
Dr=Di・rDA
Ai=Di・tDA=Di・(1+rDA)
Dtr=Ar・tDA=Ai・rAB・tDA=Di(1+rDA)2rAB
Dtt=At・tDA=Ai・tAB2・rBC・tDA=Di(1+rDA)2(1+rAB)2rBC
上記式から
Dtr/Di=tDA2・rAB
Dtt/Di=tDA2・tAB2・rBC
Dtt/Dr=tDA2・tAB2・rBC/rDA
図8に示すように、超音波探触子が取り外すことができるので、遅延材の裏面は空気(従って、完全反射面)に接しており、遅延材での音波の減衰を無視すれば、
Di≒Dr=Dr0
となる。この遅延材を物質Aに固定した場合に観測される反射波振幅Drから、
rDA=Dr/Di=Dr/Dr0
tDA=1+rDA
が求まる。更に式を変形し、
rAB=Dtr/Dr0/(1+rDA)2
rBC=Dtt/Dr0/(tDA2・tAB2)
=Dtt/Dr0/{(1+rDA)2(1+rAB)2}
このように得られた2つの式において、Dtt、Dtr、Dr0、Dr、rDA=Dr/Dr0、rABについては、すべて実測値から得ることができる。従って、別に求めておいた、膜厚とエコー高さh(rBC)の関係(較正曲線)から油膜厚さを求めることができる。また、前述のように、求めたrABから、そのときに油膜に作用する面圧(荷重)が推定できることになる。
【0043】
以上のように、2つの物質が介在する場合であっても、超音波探触子による油膜厚さの測定が可能である。また、3つ以上の物質が介在する場合も同様であり、各物質を分離して同様の測定を行うことで油膜厚さの測定ができる。
【0044】
次に、本発明に係る超音波探触子の取付構造について説明する。この取付構造は、
第1面もしくは第2面を有する第1物質の背面側に曲面部を形成し、この曲面部に柔軟性を有する超音波探触子を取り付け、照射される超音波が膜形成部における特定領域に収束するように構成したことを特徴とするものである。
【0045】
この構成によると、超音波探触子から照射される超音波を特定領域に収束するようにできるため、測定ポイントを絞った形での膜厚測定を行うことができる。また、超音波を収束させることで、その特定領域については2面が平行な鏡面であるとみなすことができ理論式の適用も可能になる。
【0046】
本発明に係る別の超音波探触子の取付構造は、
第1面もしくは第2面を有する第1物質の背面側に設けられる超音波探触子の取り付け面を備え、
取り付け面側に多数の振動素子からなるコンポジット素子の負極を配置すると共に、振動素子を挟んで負極と対抗する側に正極を配置し、正極の面積を負極の面積よりも小さくなるように設定したことが好ましい。
【0047】
コンポジット型素子は多数の振動素子により構成されるが、励起させる振動素子を限定したい場合がある。例えば、矩形状に配置される振動素子のうち四隅に位置する部分は使用しないほうが好ましいことがある。かかる場合は、正極の大きさを限定することで励起される振動素子群を選択することができる。
【0048】
本発明において、負極を正極側に折り返した部分を有することが好ましい。
【0049】
負極を正極側に折り返すことで、配線接続を簡単に行うことができるようになる。
【0050】
本発明において、正極の少なくとも四隅を曲線状に形成したことが好ましい。
【0051】
少なくとも四隅を曲線状とすることで、四隅に位置する振動素子群を使用しないようにでき、励起させる振動素子を限定することができる。例えば、矩形の四隅にRをつけたり、電極全体を円形や楕円形とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明に係る油膜厚測定システムの好適な実施形態を図面を用いて説明する。図9は、油膜厚さ測定システムの概要を示す模式図である。なお図9は、測定実験を行うためのシステムを示している。
【0053】
<油膜厚さ測定システムの概要>
シリンダ1の内面を上下摺動するピストン3にピストンリング2が取り付けられており、ピストンリング2とシリンダ1の間に油膜が形成される。実験では、ピストン3を上下させるのではなく、シリンダ2をリニアモータ5により上下駆動させた。
【0054】
シリンダ1の下方に油槽4が設けられ、油槽に溜められている潤滑油はポンプPにより吸引され、ピストン軸6の上方から潤滑油が供給される。ピストン軸6は、ピストン3と一体的に結合されており、止め具7により固定される。ピストン軸6の内部に形成された通路6aを潤滑油が通過するように構成され、ピストン3に設けられた油路8により、シリンダ1とピストンリング2の間の隙間に潤滑油を供給する。
【0055】
ピストンリング2の背面側には、油膜厚さを計測するためのセンサーとして超音波探触子9が取り付けられている。超音波探触子9の配線10は、超音波探傷器11に接続され、モニター12により油膜厚さの計測結果を観測することができる。
【0056】
超音波探触子11には、超音波探触子9が受信した反射波信号を受信してこれを解析し、油膜厚さの測定を行う機能を有する。超音波探触子11による油膜厚さの測定原理については、既に図1により説明したとおりである。また、図2で説明したように、油膜厚さの測定に際して、第1反射波の信号を用いて油膜厚さの測定を行うことで、正確な測定を行うようにしている。すなわち、反射波の初期周期分を抽出する初期周期分抽出手段の機能と、抽出された初期成分に基づいて、油膜厚さの測定を行う油膜測定手段の機能を備えている。
【0057】
図9に示すのは、ピストンリング2に超音波探触子9を配置してシリンダ1を移動する実施形態であるが、ピストンリング2に超音波探触子9を配置する場合には、シリンダを移動させて測定する場合とピストンを移動させて測定する方法がある。
【0058】
まずは、ピストンリング2に取り付ける場合のセンサー構造について説明し、次にシリンダ側からの油膜測定技術(特にシリンダ駆動型の膜厚測定装置)について説明する。
【0059】
<超音波探触子の取り付け>
ピストンリング2に超音波探触子9を取り付ける場合の好適な場所を図4により説明する。ピストンリング2は、ピストン3に取り付けやすくするため、その一部に合い口2cが設けられており、閉じたリングに比べて歪みが生じやすくなっている。かかる歪みの影響を受けやすい場所に超音波探触子1を取り付けると、測定精度に影響するため、図10のように合い口2cから角度位相で90゜離れた位置に取り付けることが好ましい。合い口2cにちょうど向かい合う位置は、最も歪みが生じやすい場所である。ただし、ピストンリング全周の膜厚を測定する場合には、この限りではない。
【0060】
また、超音波探触子9から照射する超音波のエネルギーは、できるだけ低い方が好ましい。これにより、ピストンリング2の共振を抑制する。
【0061】
図10に示すように、ピストンリング2の背面側(内面)に1箇所だけ超音波探触子9を取り付けた場合、円周方向における油膜分布を短時間で測定することが難しい。円周方向の油膜分布を効率よく測定するためには、図11(a)に示すように、多数個の超音波探触子9を円周方向に沿って配置すればよい。超音波探傷器11が1台しかない場合は、多数個の超音波探触子9との接点を順次切り替えていくことで、円周方向に沿った膜厚測定が可能になる。
【0062】
ただし、多数個の超音波探触子9の配線をうまくまとめる必要があることと、ピストン3は緩やかではあるが、円周方向に沿って回転移動するため、配線がねじ切れる可能性がある。かかる問題点は、ロータリー接点を用いたり、合い口2c部に周り止めを設けることで解消することができる。また、多数個の超音波探触子9を設ける代わりに、アレイタイプの超音波探触子9A(図11(b)参照)を用いることでも、同じような目的を達成することができる。
【0063】
図12は、超音波探触子9の取り付け位置をシリンダ1の外部に設けた例である。ピストン軸6に連結された支持体15に超音波探触子9を取り付け、ピストン3の上下に連動して、超音波探触子9も一緒に追従するようにする。超音波探触子9は、ちょうどピストンリング2に向かい合う位置に設けられる。かかる方法によっても、油膜厚さの測定を行うことができる。超音波探触子9がシリンダ1の外部に設けられるので、配線がねじ切れるという問題を容易に解消することができる。かかる構成によれば、ピストン3の中央部、入り口、出口だけでなく、任意の位置における油膜形成状態を測定することができる。ピストン3の行程位置を検出するセンサーをあわせて設けることで、行程位置と超音波探触子9からの反射波信号とを対応付けることができる。
【0064】
また図12に示す構造において、支持体15をピストン軸6周りに回転させることで、周方向における油膜厚さの分布状態を測定することができる。ピストンの場合、円周方向の特定位置の領域のみの油膜厚さを測定するのではなく、全体の油膜厚さの形成状態を測定することでより精度のよい油膜形成状態(潤滑状態)の評価を行なうことができる。
【0065】
図13は、円周方向における油膜厚さの分布を示すデータを示す。横軸は行程位置、縦軸が円周方向の角度(座標)を示す。(a)(b)(c)はピストンリングのシリンダに対する相対速度の違いを示す。図13Aは、相対速度をパラメータとして、円周方向の平均油膜厚さと工程位置の関係を示している。
【0066】
<超音波探触子の詳細構造>
図14(a)は超音波探触子9の詳細構造を示す図である。超音波探触子9の先端部9aは、R形状(球面、楕円面、その他の曲面)に形成されており、油膜部において焦点を結ぶように構成されている。焦点径は0.1〜0.2mm程度に設定されている。超音波探触子9は、支持体20に支持されており、その内部にはカプラントC(水、油、グリセリン等の液体)が充填されている。従って、超音波はこのカプラント内を伝播して油膜部へと到達する。
【0067】
支持体20とシリンダ1の外壁面の間にはOリング21が設けられ、支持体20と超音波探触子9の取り付け部にもOリング21が配置される。このような取り付け構造を採用することで、超音波探触子9を円周方向及び軸方向の両方に移動させることができる。この構成によると、円周方向における油膜厚さの分布や、ピストンの上下行程に伴う油膜厚さの変動などについても測定することができる。
【0068】
図14(b)に示すように、超音波探触子9を上下方向に移動させることで、ピストンリング2の幅方向中央だけでなく、入口や出口における膜厚や、キャビティの発生状況を調べることができる。キャビティが発生している箇所では、空洞部の音響インピーダンスが油のそれに比べて極端に低いので、普通、エコー高さは高く現われ、発生を検出できる。
【0069】
図14(c)は、超音波探触子9の取り付け構造の別実施形態を示す図である。図のように薄いゴム膜22により超音波探触子9を支持し、ゴム膜22の内部にカプラントを充填するようにしてもよい。この場合、ゴム膜とシリンダの間には、潤滑剤を塗布するため、その膜部での多重反射により、ピストンリング部の油膜厚さが同じであっても、そこからの反射エコー高さが変化してしまう。この場合は、本願請求項3もしくは4に記載の方法により、ピストンリング部の油膜厚さに応じたエコー高さを求めて、膜厚の推定を行なえばよい。
【0070】
図15は、シリンダ1の外面にアレイタイプの超音波探触子9を取り付けた例である。アレイタイプの超音波探触子9Aを行程方向に配置することで、ピストン3の行程位置と油膜厚さの関係を測定することができる。アレイタイプの超音波探触子9を円周方向に何箇所か設けることで、更に円周方向の油膜厚さの分布も測定することができる。ピストン3やシリンダ1の移動は、移動機構の制御信号から知ることができる。
【0071】
次に、違うタイプの超音波探触子を使用した例を説明する。ピストンリング2の行程方向の厚みは、実際はそれほど大きくなく、例えば1.2mm程度の厚みである。一方、通常の超音波探触子9は、サイズが2mm程度あり、ピストンリング2の幅よりも少し大きくなっている。ピストンリング2に超音波探触子9を取り付ける場合には、接着剤等が使用されるが、超音波探触子9のサイズがピストンリング2の幅寸法よりも大きいと、取り付けが行いにくいだけでなく、超音波の照射もうまく行われないため、正確な油膜厚さの測定も難しくなる。
【0072】
そこで、図16に例示するようにPVDFタイプの超音波探触子19を使用する。PVDFとは、薄いピエゾ電子プラスティックフィルムを使った高分子圧電素子のことであり、柔軟性を有している。PVDFを使用する場合には、図16(b)に示すように、ピストンリング2の背面側に円弧面2dを形成する。この円弧面2dにPVDFタイプの超音波探触子19を取り付ける。円弧面2dを形成して、照射された超音波がピストンリング2とシリンダ1の境界に焦点を結ぶようにする。これにより、超音波のエネルギーを効率よく使用することができ、膜厚測定の精度も上げることができる。このことは、後に示すコンポジット型超音波探触子を用いた場合も同様である。
【0073】
また、PVDFを使用する場合は超音波探触子19の背面側にバッキング材を塗布することが好ましい。これはPVDFの背面側に潤滑油が進入すると、そのインピーダンスの影響を受けてしまい、これが受信されるエコー高さに対して大きな影響を与える。これにより、油膜厚さの測定誤差が生じてしまう。そこで、音波の散乱や減衰機能を持たせたバッキング材で処理を施すことで、背面側からの超音波の反射がないようにし、測定誤差の要因を除去する。具体的には、ダンピングを効かす目的で混入する鉛等の粒径とその濃度や分布を制御したり、微妙な気泡を混入させることでこの目的を達成する。
【0074】
図17は、コンポジット型の超音波探触子9を用いた場合の取り付け構造を示している。コンポジット型の振動素子は、図18に示すように正極90と負極91の間に柱状の振動素子92(圧電材)が挟持されており、変形が可能であるため、加工が容易であるという特徴を有する。このコンポジット型の超音波探触子9を図18に示すように傾斜面93が形成されるように削り落とす。これにより、超音波の励振が可能な有効範囲(図18(b)に斜線で示す)は、短い方の寸法により定まるため、超音波の発生範囲をある程度狭め、ピストンリング側面への音波の拡散の影響を少なくすることができる。また、ピストンリング2に取り付けられる側は幅広の領域で保持されるため、取り付け強度を確保することができる。例えば、超音波照射の有効範囲を1mm程度に絞ることができる。
【0075】
なお、コンポジット型の超音波探触子9は絶縁層94の上に取り付けられ、これにより、ノイズ対策とすることができる。
【0076】
図19は、超音波探触子9をピストンリング2背面に取り付ける場合の取り付け構造の別実施形態を示す。(a)はリングを軸方向視でみた図である。ピストンリング2の背面に絶縁膜30を介して超音波探触子9が貼り付けられている。超音波探触子9は負極90と正極91の間に柱状の振動素子92により構成されるコンポジット型の素子である。負極90から配線を取り出しやすくするため、負極90を折り返して正極91と同じ平面上に位置させる。折り返しを行う場合は、(b)と(c)のような方法がある。すなわち、ピストンリング2の円周方向に沿って折り返す場合と、半径方向に沿って折り返す場合である。
【0077】
図20は電極の別構成例を示す図である。コンポジット型の超音波探触子9を用いる場合、励起される振動素子の角の影響をなくす必要がある。矩形状に多数の振動素子が並べられている場合、電極の大きさを設定することで励起する振動素子の範囲を限定することができる。図20において正極を楕円状に形成している。この場合、負極を適宜折り返してもよい。また、正極全体を負極によりシールドするのも好ましい方法である。
【0078】
上記のように楕円状の正極を採用することで正極に対向する位置にある振動素子92のみが励起される。同じ目的を達成するには楕円形でなくてもよく、円形や、矩形の四隅にRを付けた形状などを採用してもよい。超音波探触子9の背面側には、上記のバッキング処理を施すことで、背面からの超音波の反射がないようにする。
【0079】
本発明によれば、表面だけでなく、物質間に形成された膜の厚さや面圧(荷重)の推定も行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】油膜厚さの測定原理を説明する図
【図2】反射波の波形を示す図
【図3】超音波探触子が受信するエコー高さ信号を示す図
【図4】表面粗さの進行と膜厚との関係を示す図
【図5】追い込み領域を示す図
【図6】ピストンリングのクラウニングを説明する図
【図7】2物質が介在する場合の構成例
【図8】2物質が介在する場合の構成例
【図9】油膜厚さ測定システムの概要を示す模式図
【図10】超音波探触子の好ましい取り付け位置を示す図
【図11】超音波探触子の取り付け例を示す図
【図12】超音波探触子の取り付け例を示す図
【図13】シリンダの油膜分布の測定結果を示す図
【図13A】シリンダの油膜分布の測定結果を示す図
【図14】超音波探触子の取り付け構造を示す詳細図
【図15】超音波探触子の取り付け例を示す図
【図16】PVDFを使用した構成例を示す図
【図17】コンポジット型超音波探触子の取り付け例
【図18】コンポジット型超音波探触子の構造を示す図
【図19】超音波探触子の取り付け構造を示す図
【図20】超音波探触子の取り付け構造を示す図
【符号の説明】
【0081】
1 シリンダ
2 ピストンリング
3 ピストン
9,9i,51 超音波探触子
11 超音波探傷器
C カプラント
L 膜厚
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と第2面の間に形成される膜の厚さを計測するための膜厚測定システムであって、
第1面もしくは第2面の背面側に取り付けられ、第1面もしくは第2面と膜の境界に向けて超音波を照射する超音波探触子と、
この超音波探触子により受信された前記境界からの反射波の初期周期分のみに着目して抽出する初期周期分抽出手段と、
抽出された初期周期分に基づいて、膜厚さの測定を行う膜厚測定手段とを備えていることを特徴とする膜厚測定システム。
【請求項2】
前記初期周期分として、第1反射波の負半波、正半波、負半波と正半波の和のいずれかを用いることを特徴とする請求項1に記載の膜厚測定システム。
【請求項3】
第1面もしくは第2面を有する第1の物質と、第2の物質とを超音波探触子と膜形成部の間に介在した状態で、その場の荷重と、それらのいずれかの背面の膜厚が変化した場合でも、膜厚さだけを正確に測定する方法であって、
第1の物質と第2の物質を分離し、それらの間に空気層を形成させて、第2の物質に取り付けられる超音波探触子により、第1の物質と第2の物質の境界面における音圧反射率及び反射音圧振幅を求める第1ステップと、
第1の物質と第2の物質を結合した状態で測定される第1の物質の背面の膜部からの反射音圧振幅と、前記第1ステップに取得された音圧反射率及び反射音圧振幅とに基づいて、膜部における音圧反射率を求める第2ステップと、
を有することを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項4】
第1面もしくは第2面を有する第1の物質と、第2の物質とを超音波探触子と膜形成部の間に介在した状態で膜厚さを測定する方法であって、
第2の物質に対し取り外し可能な第3の物質を更に取り付け、この第3の物質に超音波探触子を取り付け、
第2の物質と第3の物質を分離し、それらの間に空気層を形成させて、第3の物質に取り付けられる超音波探触子により、荷重に伴い音波の透過する固体接触面積が変化する第2の物質と第3の物質の境界面における音圧反射率及び反射音圧振幅を求める第1ステップと、
第2の物質と第3の物質を結合した状態で測定される膜部からの反射音圧振幅と、前記第1ステップに取得された音圧反射率及び反射音圧振幅とに基づいて、膜部における音圧反射率を求める第2ステップと、
を有することを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の膜厚測定システム、もしくは、請求項3又は4に記載の膜厚測定方法において使用される超音波探触子の取付構造であって、
第1面もしくは第2面を有する第1物質の背面側に設けられる超音波探触子の取り付け面を備え、
取り付け面側に多数の振動素子からなるコンポジット素子の負極を配置すると共に、振動素子を挟んで負極と対抗する側に正極を配置し、正極の面積を負極の面積よりも小さくなるように設定するとともに、正極の少なくとも四隅を曲線状に形成したことを特徴とする超音波探触子の取付構造。
【請求項1】
第1面と第2面の間に形成される膜の厚さを計測するための膜厚測定システムであって、
第1面もしくは第2面の背面側に取り付けられ、第1面もしくは第2面と膜の境界に向けて超音波を照射する超音波探触子と、
この超音波探触子により受信された前記境界からの反射波の初期周期分のみに着目して抽出する初期周期分抽出手段と、
抽出された初期周期分に基づいて、膜厚さの測定を行う膜厚測定手段とを備えていることを特徴とする膜厚測定システム。
【請求項2】
前記初期周期分として、第1反射波の負半波、正半波、負半波と正半波の和のいずれかを用いることを特徴とする請求項1に記載の膜厚測定システム。
【請求項3】
第1面もしくは第2面を有する第1の物質と、第2の物質とを超音波探触子と膜形成部の間に介在した状態で、その場の荷重と、それらのいずれかの背面の膜厚が変化した場合でも、膜厚さだけを正確に測定する方法であって、
第1の物質と第2の物質を分離し、それらの間に空気層を形成させて、第2の物質に取り付けられる超音波探触子により、第1の物質と第2の物質の境界面における音圧反射率及び反射音圧振幅を求める第1ステップと、
第1の物質と第2の物質を結合した状態で測定される第1の物質の背面の膜部からの反射音圧振幅と、前記第1ステップに取得された音圧反射率及び反射音圧振幅とに基づいて、膜部における音圧反射率を求める第2ステップと、
を有することを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項4】
第1面もしくは第2面を有する第1の物質と、第2の物質とを超音波探触子と膜形成部の間に介在した状態で膜厚さを測定する方法であって、
第2の物質に対し取り外し可能な第3の物質を更に取り付け、この第3の物質に超音波探触子を取り付け、
第2の物質と第3の物質を分離し、それらの間に空気層を形成させて、第3の物質に取り付けられる超音波探触子により、荷重に伴い音波の透過する固体接触面積が変化する第2の物質と第3の物質の境界面における音圧反射率及び反射音圧振幅を求める第1ステップと、
第2の物質と第3の物質を結合した状態で測定される膜部からの反射音圧振幅と、前記第1ステップに取得された音圧反射率及び反射音圧振幅とに基づいて、膜部における音圧反射率を求める第2ステップと、
を有することを特徴とする膜厚測定方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の膜厚測定システム、もしくは、請求項3又は4に記載の膜厚測定方法において使用される超音波探触子の取付構造であって、
第1面もしくは第2面を有する第1物質の背面側に設けられる超音波探触子の取り付け面を備え、
取り付け面側に多数の振動素子からなるコンポジット素子の負極を配置すると共に、振動素子を挟んで負極と対抗する側に正極を配置し、正極の面積を負極の面積よりも小さくなるように設定するとともに、正極の少なくとも四隅を曲線状に形成したことを特徴とする超音波探触子の取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図13A】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図13A】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−212408(P2007−212408A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35454(P2006−35454)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(597154966)学校法人高知工科大学 (141)
【出願人】(392000110)オートマックス株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(597154966)学校法人高知工科大学 (141)
【出願人】(392000110)オートマックス株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
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