説明

膜型メタン発酵処理装置およびメタン発酵処理方法

【課題】膜分離手段をメンテナンス等する際であってもメタン発酵槽内の攪拌を継続することができるとともに、ガス供給手段の損傷を防止することが可能である膜型メタン発酵処理装置を提供する。
【解決手段】膜分離手段18を内蔵した膜分離槽14と、メタン発酵槽12と膜分離槽14との間で消化汚泥を循環させる循環管15,16と、メタン発酵槽12内のバイオガスを膜分離手段18の下方から散気する散気手段19と、メタン発酵槽12内の消化汚泥中に開口する吐出口22から上記バイオガスを吐出する吐出手段23と、上記バイオガスを散気手段19と吐出手段23とに供給する共通のブロワ装置24と、ブロワ装置24によって供給されたバイオガスを散気手段19から散気する散気状態と上記バイオガスを吐出手段23から吐出する吐出状態とに切換える切換手段25とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、し尿、浄化槽汚泥、下水汚泥、生ごみ、食品系廃棄物等の有機性物質をメタン発酵して処理する膜型メタン発酵処理装置および膜型メタン発酵処理装置を用いたメタン発酵処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の膜型メタン発酵処理装置としては、図10に示すように、メタン発酵槽61に、槽の下部領域と上部領域とに連通する外部循環流路62が設けられ、外部循環流路62は、膜分離槽67と、膜分離槽67内に備えられた浸漬型の膜分離装置63と、膜分離槽67内に備えられて膜分離装置63の下方から散気を行なう散気装置64を備えている。また、メタン発酵槽61内で発生したバイオガスを散気装置64に供給するガス供給流路65が設けられ、ガス供給流路65にはブロア66が設けられている。
【0003】
これによると、原料をメタン発酵槽61に供給し、メタン発酵槽61内でメタン発酵させる。この際、発酵過程においてバイオガスがメタン発酵槽61内で生成され、ブロア66を駆動して、メタン発酵槽61内のバイオガスをガス供給流路65から散気装置64に供給する。これにより、散気装置64からバイオガスが散気され、エアリフト作用によって上向流が発生し、この上向流を駆動流としてメタン発酵槽61内の消化汚泥が外部循環流路62を循環するため、メタン発酵槽61内の消化汚泥が攪拌される。同時に、上記上向流が掃流として膜分離装置63の膜間の流路をクロスフローで流れるため、膜分離装置63の膜面が上記上向流によって洗浄される。
【0004】
尚、メタン発酵槽61内から外部循環流路62内へ流れ込んだ消化汚泥は膜分離装置63で吸引されて固液分離され、透過液が膜分離装置63から系外へ取り出される。これにより、メタン発酵槽61内の消化汚泥を高濃度に維持でき、高効率のメタン発酵処理が可能となる。
【0005】
このように、散気装置64からの散気によって、メタン発酵槽61内の消化汚泥の攪拌と膜分離装置63の膜面洗浄とを共に行なうことができ、このような構成を有する膜型メタン発酵処理装置については下記特許文献1に記載されている。
【0006】
また、図10に示した形式のもの以外では、外部循環流路内に膜分離槽を設け、ポンプ等によって、メタン発酵槽と膜分離槽との間で消化汚泥を強制的に循環させる形式のものがある。このような形式のものでは、膜分離装置の下方に配置した散気装置からのバイオガスの散気によって発生する上向流は膜面洗浄と膜分離槽内での消化汚泥の循環に寄与する。
【0007】
尚、下記特許文献2には、メタン発酵槽と膜分離槽との間での消化汚泥の循環をポンプによって行う膜型メタン発酵処理装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−170631
【特許文献2】特開平11−147098
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記の従来形式では、点検,交換,洗浄等のメンテナンス等の目的で膜分離装置63による消化汚泥の吸引を停止する場合、散気装置64およびブロア66を停止する必要がある。尚、バイオガスは、温度が約35〜60℃の範囲で、湿度が飽和状態である。このため、ブロア66の停止に伴ってブロア66の温度が低下すると、ブロア66内で結露が発生し、バイオガス中に含まれる硫化水素等の腐食性ガスとともにブロア66が損傷し、最悪の場合、ブロア66の再起動が困難になるという問題がある。
【0010】
また、膜分離装置63が大型になると、これに伴ってブロア66も大型化するため、仮にブロア66の起動および停止を頻繁に行なうと、ブロア66が損耗し易く、ブロア66のメンテナンス等の頻度が増大するといった問題もある。
【0011】
さらに、膜分離槽67内の沈降物が沈降して膜分離槽67の底部に堆積し、沈降物の高さが散気装置64を超えると、散気が偏って安定せず、膜分離装置63の膜面洗浄が不均一になるといった問題がある。
【0012】
本発明は、膜分離手段をメンテナンス等する際であってもメタン発酵槽内の攪拌を継続することができるとともに、ガス供給手段の損傷を防止することが可能であり、また、安定した散気を行なうことができる膜型メタン発酵処理装置およびメタン発酵処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本第1発明は、消化汚泥中で有機性物質のメタン発酵を行なうメタン発酵槽と、消化汚泥中の固形分を濃縮する浸漬型の膜分離手段が内部に備えられた膜分離槽と、メタン発酵槽と膜分離槽との間で消化汚泥を循環させる循環流路と、膜分離槽内に備えられ且つメタン発酵槽内で生成されるバイオガスを膜分離手段の下方から散気する散気手段とを有する膜型メタン発酵処理装置であって、
メタン発酵槽内の消化汚泥中に開口する吐出口からバイオガスを吐出する吐出手段と、
バイオガスを散気手段と吐出手段とに供給する共通のガス供給手段と、
ガス供給手段によって供給されたバイオガスを散気手段から膜分離槽内に散気する散気状態と上記バイオガスを吐出手段からメタン発酵槽内に吐出する吐出状態とに切換え可能な切換手段とが設けられているものである。
【0014】
これによると、消化汚泥を膜分離手段で固液分離する場合、ガス供給手段を駆動し、切換手段で散気状態に切換えることにより、メタン発酵槽内で生成されたバイオガスが散気手段から膜分離槽内に散気される。これにより、メタン発酵槽内の消化汚泥がメタン発酵槽と膜分離槽との間で循環流路を介して循環し、メタン発酵槽内の消化汚泥が攪拌されるとともに、膜分離手段の膜面が洗浄され、メタン発酵槽内から膜分離槽内へ流れ込んだ消化汚泥が膜分離手段で固液分離される。
【0015】
また、メンテナンス等の目的で上記膜分離手段による固液分離を停止する場合、ガス供給手段を停止せずに継続して駆動したまま、切換手段で吐出状態に切換えることにより、メタン発酵槽内で生成されたバイオガスが吐出手段の吐出口からメタン発酵槽内の消化汚泥中に吐出される。これにより、散気手段からの散気が停止し、メタン発酵槽内にエアリフト作用による攪拌流が発生し、この攪拌流によりメタン発酵槽内の消化汚泥が継続して攪拌される。
【0016】
このようにガス供給手段を駆動したままで、散気手段からの散気を停止するとともに、メタン発酵槽内を攪拌できるため、膜分離手段をメンテナンスする際であっても、ガス供給手段の駆動を停止する必要はない。したがって、メタン発酵槽内の攪拌を継続することができるとともに、ガス供給手段の温度低下を防止することができるため、ガス供給手段内で結露が発生してガス供給手段が損傷するのを防止することができる。
【0017】
また、固液分離停止中は、膜分離槽内に上向流が発生せず、膜分離手段の膜面が上向流にさらされることはない。これにより、メタン発酵槽内の攪拌を維持しながら膜へのダメージを軽減することができ、また、ガス供給手段の停止および起動を頻繁に行なう必要がなく、ガス供給手段の損耗を抑制することができる。
【0018】
本第2発明における膜型メタン発酵処理装置は、散気手段と吐出手段とがガス供給手段から分岐しているものである。
本第3発明における膜型メタン発酵処理装置は、吐出手段は、膜分離槽内の沈降物を吸引孔から吸引して膜分離槽外へ移送する沈降物移送手段を有し、
沈降物移送手段は散気手段よりも下位に配置され、
吐出口は沈降物移送手段を経由した下流側に位置しており、
吐出口に作用するメタン発酵槽内の水頭圧が沈降物移送手段に作用する膜分離槽内の水頭圧よりも低くなるように構成されているものである。
【0019】
これによると、消化汚泥を膜分離手段で固液分離しない場合、継続してガス供給手段を駆動したままで、切換手段で吐出状態に切換えることにより、メタン発酵槽内で生成されたバイオガスは、吐出手段の沈降物移送手段を経由して、吐出口からメタン発酵槽内の消化汚泥中に吐出され、メタン発酵槽内の消化汚泥が継続して攪拌される。
【0020】
この際、沈降物移送手段は、沈降物移送手段の吸引孔と吐出手段の吐出口との間の水頭圧差およびバイオガスの流れによって生じる吸引作用により、膜分離槽内の沈降物を吸引孔から吸引して膜分離槽外へ移送する。これにより、膜分離槽内の底部に沈降して堆積する沈降物の量を低減することができ、沈降物の高さが散気手段を超えるのを防止することができる。したがって、吐出状態から散気状態に切換えて散気手段から散気を行なう場合、散気が安定し、膜分離手段の膜面洗浄が均一に行なえる。
【0021】
本第4発明における膜型メタン発酵処理装置は、吐出口は散気手段を経由した下流側に位置しており、
吐出口に作用するメタン発酵槽内の水頭圧が散気手段に作用する膜分離槽内の水頭圧よりも低くなるように構成されているものである。
【0022】
これによると、消化汚泥を膜分離手段で固液分離する場合、ガス供給手段を駆動し、切換手段で散気状態に切換えることにより、メタン発酵槽内で生成されたバイオガスが散気手段から膜分離槽内に散気される。
【0023】
また、消化汚泥を膜分離手段で固液分離しない場合、継続してガス供給手段を駆動したままで、切換手段で吐出状態に切換えることにより、メタン発酵槽内で生成されたバイオガスが散気手段を経由して吐出口からメタン発酵槽内の消化汚泥中に吐出される。
【0024】
この際、吐出口に作用するメタン発酵槽内の水頭圧が散気手段に作用する膜分離槽内の水頭圧よりも低いため、バイオガスは、散気手段から散気されずに、吐出口から吐出される。また、上記吐出口と散気手段との間の水頭圧差および散気手段内を流れるバイオガスの流れによって生じる吸引作用により、散気手段に形成された散気孔から膜分離槽内の消化汚泥を吸引してバイオガスと共に吐出口からメタン発酵槽内の消化汚泥中に吐出することも可能となる。
【0025】
本第5発明における膜型メタン発酵処理装置は、散気状態において、散気手段から散気されるバイオガスにより膜分離槽内に上向流が発生し、この上向流を駆動流としてメタン発酵槽の消化汚泥が膜分離槽とメタン発酵槽との間で循環流路を介して循環し、
吐出状態において、吐出手段から吐出されるバイオガスによりメタン発酵槽内に攪拌流が発生するものである。
【0026】
これによると、散気状態において、散気手段から散気されるバイオガスにより膜分離槽内に上向流が発生し、この上向流を駆動流としてメタン発酵槽の消化汚泥が膜分離槽とメタン発酵槽との間で循環流路を介して循環することにより、メタン発酵槽内の消化汚泥が攪拌されるとともに、膜分離手段の膜面が洗浄される。
【0027】
また、吐出状態において、吐出手段から吐出されるバイオガスによりメタン発酵槽内に攪拌流が発生するため、メタン発酵槽内の消化汚泥が攪拌される。
本第6発明は、消化汚泥中で有機性物質のメタン発酵を行なうメタン発酵槽と、消化汚泥中の固形分を濃縮する浸漬型の膜分離手段が内部に備えられた膜分離槽と、メタン発酵槽と膜分離槽との間で消化汚泥を循環させる循環流路と、膜分離槽内に備えられ且つメタン発酵槽内で生成されるバイオガスを膜分離手段の下方から散気する散気手段とを有する膜型メタン発酵処理装置を用いたメタン発酵処理方法であって、
ガス供給手段を駆動した状態で、バイオガスを散気手段に供給して散気手段から膜分離槽内に散気する散気運転と、バイオガスを吐出手段に供給して吐出口からメタン発酵槽内の消化汚泥中に吐出する吐出運転とを切換えて行なうものである。
【0028】
これによると、ガス供給手段を駆動したままで、散気手段からの散気を停止するとともに、メタン発酵槽内を攪拌できるため、膜分離手段をメンテナンスする際であっても、ガス供給手段の駆動を停止する必要はない。したがって、メタン発酵槽内の攪拌を継続することができるとともに、ガス供給手段の温度低下を防止することができるため、ガス供給手段内で結露が発生してガス供給手段が損傷するのを防止することができる。また、ガス供給手段の停止および起動を頻繁に行なう必要がなく、ガス供給手段の損耗を抑制することができる。
【0029】
本第7発明におけるメタン発酵処理方法は、吐出運転において、バイオガスに加えて膜分離槽内の消化汚泥を吐出口からメタン発酵槽内の消化汚泥中に吐出するものである。
本第8発明におけるメタン発酵処理方法は、吐出運転において、散気手段を経由してバイオガスを吐出口からメタン発酵槽内の消化汚泥中に吐出し、
この際、散気手段に形成された散気孔から膜分離槽内の消化汚泥を吸引してバイオガスと共に吐出口からメタン発酵槽内の消化汚泥中に吐出するものである。
【0030】
本第9発明におけるメタン発酵処理方法は、散気運転において、散気手段から散気されるバイオガスにより膜分離槽内に上向流を発生させ、この上向流を駆動流としてメタン発酵槽の消化汚泥が膜分離槽とメタン発酵槽との間で循環流路を介して循環し、
吐出運転において、吐出手段から吐出されるバイオガスによりメタン発酵槽内に攪拌流を発生させるものである。
【発明の効果】
【0031】
以上のように本発明によると、膜分離手段をメンテナンス等する際であってもメタン発酵槽内の攪拌を継続することができるとともに、ガス供給手段の損傷を防止することが可能であり、また、安定した散気を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施の形態における膜型メタン発酵処理装置の図であり、散気運転を行なっているときのガスの流れを示す。
【図2】同、膜型メタン発酵処理装置の図であり、第1の吐出運転を行なっているときのガスの流れを示す。
【図3】同、膜型メタン発酵処理装置の図であり、第2の吐出運転を行なっているときのガスの流れを示す。
【図4】本発明の第2の実施の形態における膜型メタン発酵処理装置の図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態における膜型メタン発酵処理装置の図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態における膜型メタン発酵処理装置の図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態における膜型メタン発酵処理装置の図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態における膜型メタン発酵処理装置の図である。
【図9】本発明の第7の実施の形態における膜型メタン発酵処理装置の図である。
【図10】従来の膜型メタン発酵処理装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明における第1の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、11は有機性物質をメタン発酵して処理する膜型メタン発酵処理装置であり、消化汚泥中で有機性物質のメタン発酵を行なうメタン発酵槽12と、メタン発酵槽12内の消化汚泥を循環させることにより消化汚泥中の固形分を濃縮する濃縮流路13とを有している。
【0034】
濃縮流路13は、浸漬型の膜分離手段18が内部に備えられた膜分離槽14と、メタン発酵槽12と膜分離槽14の上部とに連通し且つ消化汚泥が膜分離槽14からメタン発酵槽12へ流入する上部循環管路15と、メタン発酵槽12と膜分離槽14の下部とに連通し且つ消化汚泥がメタン発酵槽12から膜分離槽14へ流出する下部循環管路16とを有している。尚、上部および下部循環管路15,16は、メタン発酵槽12と膜分離槽14との間で消化汚泥を循環させる循環流路の一例である。
【0035】
膜分離手段18は、所定間隔をあけて平行に配列された複数枚の平板状の膜カートリッジを鉛直方向に配置し、各膜カートリッジの相互間に流路を形成したものである。各膜カートリッジは、濾板の両面に濾過膜を配置し、透過液流路を集水部に連通しており、集水部は膜透過液を導出する透過液導出管に連通している。
【0036】
また、膜分離手段18は、膜分離槽14内の水頭圧を駆動圧として膜カートリッジにより重力濾過するものである。尚、重力濾過に限らず、透過液導出管に吸引ポンプを介装して吸引濾過してもよい。
【0037】
また、膜分離槽14内には、メタン発酵槽12内のバイオガスを膜分離手段18の下方から散気する散気手段19と、膜分離槽14内の底部に沈降した沈降物(汚泥等)を膜分離槽14の外部へ移送する沈降物吸引管20(沈降物移送手段の一例)とが設けられている。
【0038】
また、膜型メタン発酵処理装置11には、メタン発酵槽12内の消化汚泥中に開口する吐出口22からメタン発酵槽12内のバイオガスを吐出する吐出手段23と、メタン発酵槽12内のバイオガスを散気手段19と吐出手段23とに供給する共通のブロワ装置24(ガス供給手段の一例)と、ブロワ装置24によって供給されたバイオガスを散気手段19から膜分離槽14内に散気する散気状態と上記バイオガスを吐出手段23からメタン発酵槽12内に吐出する吐出状態とのいずれかの状態に切換える切換手段25とが設けられている。
【0039】
ブロワ装置24の吸入側とメタン発酵槽12の上部とは吸入側流通路34を介して連通し、ブロワ装置24の吐出側には吐出側流通路35が設けられている。
散気手段19は、複数の散気孔27が下部に形成された散気管28と、ブロワ装置24の吐出側流通路35から分岐して散気管28の上流側(入口側)に連通する流通路29とを有している。
【0040】
吐出手段23は、吐出口22を備えた下流端(一端)がメタン発酵槽12内に突入するとともに上流端(他端)が散気管28の下流側(出口側)に連通する吐出管30と、ブロワ装置24の吐出側流通路35から分岐して沈降物吸引管20の上流側(入口側)に連通する流通路32と、沈降物吸引管20の下流側(出口側)と吐出管30とに連通する流通路33とを有している。尚、吐出口22はメタン発酵槽12内の消化汚泥中に開口しており、また、上記各流通路29,32〜35は配管で構成されている。
【0041】
また、沈降物吸引管20は、その下部に複数の吸引孔36を有しており、散気管28よりも下位に配置されている。尚、吐出口22は、散気管28を経由した下流側に位置しているとともに、沈降物吸引管20を経由した下流側に位置している。メタン発酵槽12内の液面から吐出口22までの深さD1はメタン発酵槽12内の液面から散気管28までの深さD2よりも浅く形成され、これにより、吐出口22に作用するメタン発酵槽12内の水頭圧は、散気管28に作用する膜分離槽14内の水頭圧よりも低く、且つ、沈降物吸引管20に作用する膜分離槽14内の水頭圧よりも低い。
【0042】
また、沈降物吸引管20の吸引孔36から吸引された沈降物を膜型メタン発酵処理装置11の系外へ排出する外部排出管37が流通路33から分岐して設けられている。尚、外部排出管37の開口端37aに作用する圧力は沈降物吸引管20に作用する水頭圧よりも低いか又は大気開放されている。
【0043】
また、切換手段25は、流通路29に設けられた第1のバルブ25aと、流通路32に設けられた第2のバルブ25bと、吐出管30に設けられた第3および第4のバルブ25c,25dと、流通路33に設けられた第5のバルブ25eと、外部排出管37に設けられた第6のバルブ25fとからなる。尚、流通路33は第3のバルブ25cと第4のバルブ25dとの間で吐出管30に接続されている。
【0044】
また、膜分離槽14内の上部に溜まったバイオガスをメタン発酵槽12内の上部の気相部38へ戻すガス戻り管39が膜分離槽14とメタン発酵槽12とに連通して設けられている。
【0045】
以下、上記構成における作用を説明する。
散気運転を行なう場合、ブロワ装置24を駆動した状態で、第1のバルブ25aを開き、第2〜第6のバルブ25b〜25fを閉じる。これにより、図1に示すように、メタン発酵槽12内のバイオガスが、ブロワ装置24を経て流通路29を通り、散気管28の散気孔27から膜分離槽14内に吹き出す。これにより、エアリフト作用によって上向流41が発生し、この上向流41を駆動流として、膜分離槽14内の消化汚泥が上部循環管路15を通ってメタン発酵槽12内に流入するとともに、メタン発酵槽12内の消化汚泥が下部循環管路16を通って膜分離槽14内に流入し、メタン発酵槽12内の消化汚泥が膜分離槽14との間で濃縮流路13を循環する。このため、メタン発酵槽12内の消化汚泥が攪拌され、同時に、上記上向流41が掃流として膜分離手段18の膜間の流路をクロスフローで流れるため、膜分離手段18の膜面が上向流41によって洗浄される。
【0046】
尚、メタン発酵槽12内から膜分離槽14内へ流れ込んだ消化汚泥は膜分離手段18で吸引されて固液分離され、透過液が膜分離手段18から系外へ取り出される。
このように、散気運転時においては、散気管28からの散気によって、メタン発酵槽12内の消化汚泥の攪拌と膜分離槽14の膜面洗浄とを共に行なうことができる。
【0047】
また、メンテナンス等の目的で膜分離手段18による消化汚泥の吸引を停止して膜分離(固液分離)を停止する場合は、継続してブロワ装置24を駆動した状態で、切換手段25を操作して散気運転から第1又は第2の吐出運転に切換える。
【0048】
例えば、第1の吐出運転に切換える場合、第1のバルブ25aを開いた状態で、さらに、第3および第4のバルブ25c,25dを開き、第2および第5および第6のバルブ25b,25e,25fを閉じた状態にしておく。これにより、図2に示すように、メタン発酵槽12内のバイオガスが、ブロワ装置24を経て流通路29を通り、散気管28を経由(通過)して吐出管30を流れ、吐出口22からメタン発酵槽12内の消化汚泥中に吐出される。
【0049】
この際、吐出口22に作用するメタン発酵槽12内の水頭圧が散気管28に作用する膜分離槽14内の水頭圧よりも低いため、バイオガスは、散気管28の散気孔27からほとんど散気されずに、吐出口22から吐出される。このとき、上記両水頭圧の差と散気管28内を流れるバイオガスの流れによって生じる吸引作用(エゼクター効果)により、膜分離槽14内の消化汚泥が、散気孔27から散気管28内に吸引されて、バイオガスと共に吐出口22からメタン発酵槽12内の消化汚泥中に吐出される。
【0050】
これにより、バイオガスと消化汚泥とが混合された気液混相流が吐出口22からメタン発酵槽12内の消化汚泥中に吐出され、メタン発酵槽12内に、消化汚泥による吐出流40とエアリフト作用による上向流42とが発生し、これら吐出流40と上向流42とによりメタン発酵槽12内に攪拌流43が発生して、メタン発酵槽12内の消化汚泥が継続して攪拌される。尚、上記のように気液混相流とすることで気泡が小さくなるため、攪拌が均一化される。
【0051】
このようにブロワ装置24を駆動したままで、散気管28からの散気を停止するとともに、メタン発酵槽12内を攪拌できるため、膜分離手段18をメンテナンスする際であっても、ブロワ装置24の駆動を停止する必要はない。したがって、メタン発酵槽12内の攪拌を継続することができるとともに、ブロワ装置24の温度低下を防止することができるため、ブロワ装置24内で結露が発生してブロワ装置24が損傷するのを防止することができる。また、消化汚泥が散気管28内に吸引されることにより、散気管28内が洗浄される効果も得られる。
【0052】
また、膜分離(固液分離)停止中は、膜分離槽14内に上向流が発生せず、膜分離手段18の膜面が上向流にさらされることはない。これにより、メタン発酵槽12内の攪拌を維持しながら膜へのダメージを軽減することができ、また、ブロワ装置24の停止および起動を頻繁に行なう必要がなく、ブロワ装置24の損耗を抑制することができる。
【0053】
上記実施の形態では散気運転から第1の吐出運転に切換えた場合を説明したが、散気運転から第2の吐出運転に切換えてもよい。この場合、第1および第3および第6のバルブ25a,25c,25fを閉じ、第2および第4および第5のバルブ25b,25d,25eを開く。これにより、図3に示すように、メタン発酵槽12内に発生したバイオガスが、ブロワ装置24を経て流通路32を通り、沈降物吸引管20を経由(通過)して流通路33から吐出管30を流れ、吐出口22からメタン発酵槽12内の消化汚泥中に吐出される。
【0054】
この際、吐出口22に作用するメタン発酵槽12内の水頭圧が沈降物吸引管20に作用する膜分離槽14内の水頭圧よりも低いため、バイオガスは、沈降物吸引管20の吸引孔36からほとんど吹き出さずに、吐出口22から吐出される。このとき、上記両水頭圧の差と沈降物吸引管20内を流れるバイオガスの流れによって生じる吸引作用により、膜分離槽14内の沈降物(汚泥等)が、吸引孔36から沈降物吸引管20内に吸引されて、バイオガスと共に吐出口22からメタン発酵槽12内の消化汚泥中に吐出される。
【0055】
これにより、バイオガスと消化汚泥とが混合された気液混相流が吐出口22からメタン発酵槽12内の消化汚泥中に吐出され、メタン発酵槽12内に、沈降物による吐出流40とエアリフト作用による上向流42とが発生し、これら吐出流40と上向流42とによりメタン発酵槽12内に攪拌流43が発生して、メタン発酵槽12内の消化汚泥が継続して攪拌される。また、沈降物吸引管20が沈降物を吸引することにより、膜分離槽14内の底部に沈降して堆積する沈降物の量を低減することができ、沈降物の高さが散気管28を超えるのを防止することができる。したがって、第2の吐出運転から散気運転に切換えて散気管28から散気を行なう場合、散気が安定し、膜分離手段18の膜面洗浄がほぼ均一に行なえる。
【0056】
また、第1および第3および第4のバルブ25a,25c,25dを閉じ、第2および第5および第6のバルブ25b,25e,25fを開くことにより、沈降物吸引管20から吸引された沈降物が外部排出管37を通って開口端37aから系外へ排出される。これにより、汚泥中の比重の大きな物質を開口端37aから排出して回収することができる。
【0057】
尚、バルブ25c,25d,25eをまとめて1台の三方切換えバルブに置き換えることも可能である。
次に、本発明における第2の実施の形態を図4を参照して説明する。
【0058】
散気手段19は、散気管28と、ブロワ装置24の吐出側流通路35から分岐して散気管28の上流側(入口側)に連通する流通路29とを有している。
吐出手段23は、ブロワ装置24の吐出側流通路35から分岐してメタン発酵槽12内に突入する吐出管30を有している。吐出管30は、下流端に、メタン発酵槽12内の消化汚泥中に開口する吐出口22を有している。
【0059】
また、切換手段25は、流通路29に設けられた第1のバルブ25aと、吐出管30に設けられた第2のバルブ25bとからなる。
以下、上記構成における作用を説明する。
【0060】
散気運転を行なう場合、ブロワ装置24を駆動した状態で、第1のバルブ25aを開き、第2のバルブ25bを閉じる。これにより、メタン発酵槽12内のバイオガスが、ブロワ装置24を経て流通路35を通り、流通路29を流れて散気管28から膜分離槽14内に吹き出す。これにより、上向流41が発生し、メタン発酵槽12内の消化汚泥が膜分離槽14との間で濃縮流路13を循環する。
【0061】
また、膜分離手段18による消化汚泥の吸引を停止して膜分離(固液分離)を停止する場合は、継続してブロワ装置24を駆動した状態で、切換手段25を操作して散気運転から吐出運転に切換える。
【0062】
すなわち、吐出運転では、第1のバルブ25aを閉じ、第2のバルブ25bを開く。これにより、メタン発酵槽12内で生成されたバイオガスが、ブロワ装置24を経て流通路35を通り、吐出管30を流れて吐出口22からメタン発酵槽12内の消化汚泥中に吐出される。
【0063】
これにより、散気管28からの散気が停止し、バイオガスが吐出口22からメタン発酵槽12内の消化汚泥中に吐出され、メタン発酵槽12内の消化汚泥が継続して攪拌される。
【0064】
次に、本発明における第3の実施の形態を図5を参照して説明する。
散気手段19はブロワ装置24の吐出側流通路35に接続された散気管28を有している。吐出手段23は、上流端(一端)が散気管28の下流側(出口側)に接続されているとともに下流端(他端)がメタン発酵槽12内に突入する吐出管30からなる。吐出管30は、下流端に、メタン発酵槽12内の消化汚泥中に開口する吐出口22を有する。また、切換手段25は、吐出管30に設けられた第7のバルブ25gからなる。
【0065】
メタン発酵槽12内の液面から吐出口22までの深さD1はメタン発酵槽12内の液面から散気管28までの深さD2よりも浅く形成され、これにより、吐出口22に作用するメタン発酵槽12内の水頭圧は、散気管28に作用する膜分離槽14内の水頭圧よりも低い。
【0066】
以下、上記構成における作用を説明する。
散気運転を行なう場合、ブロワ装置24を駆動した状態で、第7のバルブ25gを閉じる。これにより、メタン発酵槽12内のバイオガスが、ブロワ装置24を経て吐出側流通路35を通り、散気管28から膜分離槽14内に吹き出す。これにより、上向流41が発生し、メタン発酵槽12内の消化汚泥が膜分離槽14との間で濃縮流路13を循環する。
【0067】
また、膜分離手段18による消化汚泥の吸引を停止して膜分離(固液分離)を停止する場合は、継続してブロワ装置24を駆動した状態で、切換手段25を操作して散気運転から吐出運転に切換える。
【0068】
すなわち、吐出運転では、第7のバルブ25gを開く。これにより、メタン発酵槽12内で生成されたバイオガスが、散気管28を経由(通過)して吐出管30を流れ、吐出口22からメタン発酵槽12内の消化汚泥中に吐出される。
【0069】
この際、吐出口22に作用するメタン発酵槽12内の水頭圧が散気管28に作用する膜分離槽14内の水頭圧よりも低いため、バイオガスは、散気管28の散気孔27からほとんど散気されずに、吐出口22から吐出される。このとき、上記両水頭圧の差と散気管28内を流れるバイオガスの流れによって生じる吸引作用により、膜分離槽14内の消化汚泥が、散気孔27から散気管28内に吸引されて、バイオガスと共に吐出口22からメタン発酵槽12内の消化汚泥中に吐出される。
【0070】
これにより、バイオガスと消化汚泥とが混合された気液混相流が吐出口22からメタン発酵槽12内の消化汚泥中に吐出され、メタン発酵槽12内に攪拌流43が発生して、メタン発酵槽12内の消化汚泥が継続して攪拌される。
【0071】
このようにブロワ装置24を駆動したままで、散気管28からの散気を停止するとともに、メタン発酵槽12内を攪拌できる。
次に、本発明における第4の実施の形態を図6を参照して説明する。
【0072】
散気手段19は、散気管28と、ブロワ装置24の吐出側流通路35から分岐して散気管28の上流側(入口側)に連通する流通路29とを有している。
吐出手段23は、ブロワ装置24の吐出側流通路35から分岐して沈降物吸引管20の上流側(入口側)に連通する流通路32と、上流端(一端)が沈降物吸引管20の下流側(出口側)に連通するとともに下流端(他端)がメタン発酵槽12内に突入する吐出管30とを有している。尚、吐出管30は、下流端に、メタン発酵槽12内の消化汚泥中に開口する吐出口22を有している。
【0073】
また、切換手段25は、流通路29に設けられた第1のバルブ25aと、流通路32に設けられた第2のバルブ25bとからなる。メタン発酵槽12内の液面から吐出口22までの深さD1はメタン発酵槽12内の液面から沈降物吸引管20までの深さD3よりも浅く形成され、これにより、吐出口22に作用するメタン発酵槽12内の水頭圧は、沈降物吸引管20に作用する膜分離槽14内の水頭圧よりも低い。
【0074】
以下、上記構成における作用を説明する。
散気運転を行なう場合、ブロワ装置24を駆動した状態で、第1のバルブ25aを開き、第2のバルブ25bを閉じる。これにより、メタン発酵槽12内で生成されたバイオガスが、ブロワ装置24を経て吐出側流通路35を通り、流通路29を流れて散気管28から膜分離槽14内に吹き出す。これにより、上向流41が発生し、メタン発酵槽12内の消化汚泥が膜分離槽14との間で濃縮流路13を循環する。
【0075】
また、膜分離手段18による消化汚泥の吸引を停止して膜分離(固液分離)を停止する場合は、継続してブロワ装置24を駆動した状態で、切換手段25を操作して散気運転から吐出運転に切換える。
【0076】
すなわち、吐出運転では、第2のバルブ25bを開き、第1のバルブ25aを閉じる。これにより、メタン発酵槽12内で生成されたバイオガスが、ブロワ装置24を経て吐出側流通路35を通り、流通路32から沈降物吸引管20を経由(通過)して吐出管30を流れ、吐出口22からメタン発酵槽12内の消化汚泥中に吐出される。
【0077】
この際、吐出口22に作用するメタン発酵槽12内の水頭圧が沈降物吸引管20に作用する膜分離槽14内の水頭圧よりも低いため、バイオガスは、沈降物吸引管20の吸引孔36からほとんど吹き出さずに、吐出口22から吐出される。このとき、上記両水頭圧の差と沈降物吸引管20内を流れるバイオガスの流れによって生じる吸引作用により、膜分離槽14内の沈降物(汚泥等)が、吸引孔36から沈降物吸引管20内に吸引されて、バイオガスと共に吐出口22からメタン発酵槽12内の消化汚泥中に吐出される。
【0078】
これにより、バイオガスと消化汚泥とが混合された気液混相流が吐出口22からメタン発酵槽12内の消化汚泥中に吐出され、メタン発酵槽12内の消化汚泥が継続して攪拌される。
【0079】
次に、本発明における第5の実施の形態を図7を参照して説明する。
メタン発酵槽12の下部と膜分離槽14の上部との間には、メタン発酵槽12内の消化汚泥をポンプ52で強制的に膜分離槽14内へ送り出す送出用流通路50が設けられている。また、メタン発酵槽12の上部と膜分離槽14の下部との間には、膜分離槽14内の消化汚泥をポンプ53で強制的にメタン発酵槽12内へ戻す返送用流通路51が設けられている。尚、送出用流通路50と返送用流通路51と膜分離槽14とで濃縮流路13が形成されており、送出用および返送用流通路50,51は、メタン発酵槽12と膜分離槽14との間で消化汚泥を循環させる循環流路の一例である。
【0080】
散気手段19はブロワ装置24の吐出側流通路35に接続された散気管28を有している。
吐出手段23は、上流端が散気管28の下流側(出口側)に接続されているとともに下流端がメタン発酵槽12内に突入する吐出管30からなる。吐出管30は、下流端に、メタン発酵槽12内の消化汚泥中に開口する吐出口22を有する。また、切換手段25は、吐出管30に設けられた第7のバルブ25gからなる。
【0081】
メタン発酵槽12内の液面から吐出口22までの深さD1は膜分離槽14内の液面から散気管28までの深さD2よりも浅く形成され、これにより、吐出口22に作用するメタン発酵槽12内の水頭圧は、散気管28に作用する膜分離槽14内の水頭圧よりも低い。
【0082】
以下、上記構成における作用を説明する。
散気運転を行なう場合、ポンプ52,53とブロワ装置24とを駆動した状態で、第7のバルブ25gを閉じる。これにより、メタン発酵槽12内で生成されたバイオガスが、ブロワ装置24を経て吐出側流通路35を通り、散気管28から膜分離槽14内に吹き出す。これにより、上向流41が発生して膜分離手段18の膜面が洗浄される。この際、ポンプ52,53の駆動により、メタン発酵槽12内の消化汚泥が、強制的に送出用流通路50を通って膜分離槽14内へ送り出され、膜分離手段18で固液分離され、膜分離槽14内の消化汚泥が強制的に返送用流通路51を通ってメタン発酵槽12内へ戻される。これにより、メタン発酵槽12内の消化汚泥が送出用および返送用流通路50,51を介して膜分離槽14との間で循環し、メタン発酵槽12内が攪拌される。
【0083】
また、膜分離手段18による消化汚泥の吸引を停止して膜分離(固液分離)を停止する場合は、継続してブロワ装置24を駆動した状態で、両ポンプ52,53を停止し、送出用流通路50に設けられたバルブ54を閉じ、切換手段25を操作して散気運転から吐出運転に切換える。
【0084】
すなわち、吐出運転では、第7のバルブ25gを開く。これにより、メタン発酵槽12内で生成されたバイオガスが、散気管28を経由(通過)して吐出管30を流れ、吐出口22からメタン発酵槽12内の消化汚泥中に吐出される。
【0085】
この際、吐出口22に作用するメタン発酵槽12内の水頭圧が散気管28に作用する膜分離槽14内の水頭圧よりも低いため、バイオガスは、散気管28からほとんど散気されずに、吐出口22から吐出される。このとき、上記両水頭圧の差と散気管28内を流れるバイオガスの流れによって生じる吸引作用により、膜分離槽14内の消化汚泥が、散気管28内に吸引されて、バイオガスと共に吐出口22からメタン発酵槽12内の消化汚泥中に吐出され、メタン発酵槽12内の攪拌が継続される。
【0086】
また、膜分離槽14内の底部に沈降して堆積する沈降物の量を低減することができ、吐出運転から散気運転に切換えて散気管28から散気を行なう場合、散気が安定し、膜分離手段18の膜面洗浄がほぼ均一に行なえる。
【0087】
次に、本発明における第6の実施の形態を図8を参照して説明する。
本第6の実施の形態は、先述した第5の実施の形態の変形例であり、1台の共通のメタン発酵槽12に対して複数の膜分離槽14が設けられている。各膜分離槽14内には複数の膜分離手段18が設けられている。また、各膜分離槽14毎にブロワ装置24と散気手段19と吐出手段23と切換手段25とが設けられている。また、散気手段19は複数の散気管28からなる集合管を有し、吐出手段23は沈降物吸引管20からなる集合管を有する。尚、散気管28と沈降物吸引管20とはそれぞれ、複数の膜分離手段18の下方にわたって設けられている。また、複数の吐出手段23の吐出管30が放射状に配設されてメタン発酵槽12内に突入している。
【0088】
尚、上記第6の実施の形態では、図8(a)に示すように複数の膜分離槽14を並列に配置したが、図9に示した第7の実施の形態では、複数の膜分離槽14をメタン発酵槽12に対して放射状に配置してもよい。
【0089】
上記各実施の形態では、膜分離手段18に平板状の膜カートリッジを用いたが、円筒(円管)状の膜カートリッジ等であってもよく、また、平膜以外の膜、例えば中空糸膜等を用いてもよい。このとき、平板又はシート状の膜支持材の表面に濾過膜を配置し、濾過膜の周縁で膜支持材に接合した平板状の膜カートリッジの場合、濾過を停止した状態での下方からの散気を防ぐことが可能である。このため、散気に伴う上向流による濾過膜の振動や揺動によって濾過膜の接合部が損傷を受けるのを回避することができるので、特に上記のような平板状の膜カートリッジに対して有効である。
【0090】
上記各実施の形態では、吐出口22に作用する水頭圧を散気管28にかかる水頭圧よりも低くしたが、同じであってもよい。
上記各実施の形態では、メタン発酵槽12内の上部に貯留されたバイオガスをブロワ装置24に供給しているが、ブロワ装置24に供給するバイオガスはメタン発酵槽12にて生成されたものであればよく、例えば、膜分離槽14内の上部に貯留されたバイオガス又はガスホルダーに貯留されたバイオガス等をブロワ装置24に供給してもよい。
【符号の説明】
【0091】
11 膜型メタン発酵処理装置
12 メタン発酵槽
14 膜分離槽
15,16 循環管路(循環流路)
18 膜分離手段
19 散気手段
20 沈降物吸引管(沈降物移送手段)
22 吐出口
23 吐出手段
24 ブロワ装置(ガス供給手段)
25 切換手段
27 散気孔
36 吸引孔
41,42 上向流
43 攪拌流
50 送出用流通路(循環流路)
51 返送用流通路(循環流路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消化汚泥中で有機性物質のメタン発酵を行なうメタン発酵槽と、消化汚泥中の固形分を濃縮する浸漬型の膜分離手段が内部に備えられた膜分離槽と、メタン発酵槽と膜分離槽との間で消化汚泥を循環させる循環流路と、膜分離槽内に備えられ且つメタン発酵槽内で生成されるバイオガスを膜分離手段の下方から散気する散気手段とを有する膜型メタン発酵処理装置であって、
メタン発酵槽内の消化汚泥中に開口する吐出口からバイオガスを吐出する吐出手段と、
バイオガスを散気手段と吐出手段とに供給する共通のガス供給手段と、
ガス供給手段によって供給されたバイオガスを散気手段から膜分離槽内に散気する散気状態と上記バイオガスを吐出手段からメタン発酵槽内に吐出する吐出状態とに切換え可能な切換手段とが設けられていることを特徴とする膜型メタン発酵処理装置。
【請求項2】
散気手段と吐出手段とがガス供給手段から分岐していることを特徴とする請求項1記載の膜型メタン発酵処理装置。
【請求項3】
吐出手段は、膜分離槽内の沈降物を吸引孔から吸引して膜分離槽外へ移送する沈降物移送手段を有し、
沈降物移送手段は散気手段よりも下位に配置され、
吐出口は沈降物移送手段を経由した下流側に位置しており、
吐出口に作用するメタン発酵槽内の水頭圧が沈降物移送手段に作用する膜分離槽内の水頭圧よりも低くなるように構成されていることを特徴とする請求項2記載の膜型メタン発酵処理装置。
【請求項4】
吐出口は散気手段を経由した下流側に位置しており、
吐出口に作用するメタン発酵槽内の水頭圧が散気手段に作用する膜分離槽内の水頭圧よりも低くなるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の膜型メタン発酵処理装置。
【請求項5】
散気状態において、散気手段から散気されるバイオガスにより膜分離槽内に上向流が発生し、この上向流を駆動流としてメタン発酵槽の消化汚泥が膜分離槽とメタン発酵槽との間で循環流路を介して循環し、
吐出状態において、吐出手段から吐出されるバイオガスによりメタン発酵槽内に攪拌流が発生することをことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の膜型メタン発酵処理装置。
【請求項6】
消化汚泥中で有機性物質のメタン発酵を行なうメタン発酵槽と、消化汚泥中の固形分を濃縮する浸漬型の膜分離手段が内部に備えられた膜分離槽と、メタン発酵槽と膜分離槽との間で消化汚泥を循環させる循環流路と、膜分離槽内に備えられ且つメタン発酵槽内で生成されるバイオガスを膜分離手段の下方から散気する散気手段とを有する膜型メタン発酵処理装置を用いたメタン発酵処理方法であって、
ガス供給手段を駆動した状態で、バイオガスを散気手段に供給して散気手段から膜分離槽内に散気する散気運転と、バイオガスを吐出手段に供給して吐出口からメタン発酵槽内の消化汚泥中に吐出する吐出運転とを切換えて行なうことを特徴とするメタン発酵処理方法。
【請求項7】
吐出運転において、バイオガスに加えて膜分離槽内の消化汚泥を吐出口からメタン発酵槽内の消化汚泥中に吐出することを特徴とする請求項6記載のメタン発酵処理方法。
【請求項8】
吐出運転において、散気手段を経由してバイオガスを吐出口からメタン発酵槽内の消化汚泥中に吐出し、
この際、散気手段に形成された散気孔から膜分離槽内の消化汚泥を吸引してバイオガスと共に吐出口からメタン発酵槽内の消化汚泥中に吐出することを特徴とする請求項7記載のメタン発酵処理方法。
【請求項9】
散気運転において、散気手段から散気されるバイオガスにより膜分離槽内に上向流を発生させ、この上向流を駆動流としてメタン発酵槽の消化汚泥が膜分離槽とメタン発酵槽との間で循環流路を介して循環し、
吐出運転において、吐出手段から吐出されるバイオガスによりメタン発酵槽内に攪拌流を発生させることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれか1項に記載のメタン発酵処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−207762(P2010−207762A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58823(P2009−58823)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】