膜電極の作製方法
【課題】プロトン交換膜燃料電池、電解槽、塩素アルカリ分離膜などを含む電気化学的装置への使用に適した膜電極を提供する。
【解決手段】多孔質膜にイオン伝導性電解質を部分的に充填して部分充填膜を作製し、次に部分充填膜から空隙体積をなくし、部分充填膜に電極粒子を埋め込むように部分充填膜を電極粒子と圧縮することによる、多孔質膜およびイオン伝導性電解質の両方を含む複合膜を使用した膜電極の作製方法を提供する。
【解決手段】多孔質膜にイオン伝導性電解質を部分的に充填して部分充填膜を作製し、次に部分充填膜から空隙体積をなくし、部分充填膜に電極粒子を埋め込むように部分充填膜を電極粒子と圧縮することによる、多孔質膜およびイオン伝導性電解質の両方を含む複合膜を使用した膜電極の作製方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合膜を含む膜電極アセンブリの作製方法に関し、プロトン交換膜燃料電池、電解槽、塩素アルカリ分離膜、センサーなどの電気化学的装置への使用に適している。
【背景技術】
【0002】
プロトン交換膜燃料電池、電解槽、塩素アルカリ分離膜などの電気化学的装置は、膜電極アセンブリ(MEA)から作られてきた。このようなMEAは、1つ以上の電極部分を含み、これらはイオン伝導膜と接触するPtまたはPdなどの触媒的電極材料を含む。イオン伝導膜(ICM)は、電気化学電池において固体電解質として使用される。代表的な電気化学電池では、ICMは、カソード電極およびアノード電極と接触しており、アノードで生成するプロトンなどのイオンをカソードに移送し、電極と接続した外部回路に電子流を流す。
【0003】
MEAは水素/酸素燃料電池に使用される。水素/酸素燃料電池に使用される代表的なMEAは、第1Pt電極部分と、プロトン交換電解質を含むICMと、第2Pt電極部分とを含むことができる。このようなMEAは、次の反応に示すように、水素ガスの酸化による電気の発生に利用することができる:
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,547,551号公報
【特許文献2】米国特許第4,812,352号公報
【特許文献3】米国特許第5,039,561号公報
【特許文献4】米国特許第5,176,786号公報
【特許文献5】米国特許第5,336,558号公報
【特許文献6】米国特許第5,338,430号公報
【特許文献7】米国特許第5,238,729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
代表的な水素/酸素燃料電池では、膜によって伝導するイオンはプロトンである。重要なことは、ICMは電子/電流を伝達しないということであり、これは電子/電流が伝達すると燃料電池が実用的でなくなるからであり、これらは水素や酸素などの燃料ガスに対して実質的に不浸透性でなければならない。MEA全体における反応で使用されるガスのもれが、反応物質の浪費および電池の非効率化につながる。このためイオン交換膜は、反応に使用するガスに対して低浸透性または不浸透性でなければならない。
【0006】
またICMは塩素アルカリ電池への使用も見いだされており、ここではブライン混合物を分離して塩素ガスと水酸化ナトリウムが生成する。この膜は、ナトリウムイオンを選択的に輸送するが、塩化物イオンは通さない。ICMは、拡散透析、電気透析、ならびに浸透気化および気相浸透分離などの用途にも有用となりうる。大部分のICMは陽イオンまたはプロトンを輸送するが、OH-などの陰イオンを輸送できる膜も公知であり市販されている。
【0007】
市販のICMは、燃料電池に要求される性能を完全に満たしているとは言えない。例えば、SO3-陰イオンを有するペルフルオロカーボン材料であるNafionTM膜(DuPont Chemicals,Inc.,Wilmington,DE)は本質的に弱い。一般にNafionTM膜は50μm未満の厚さで使用される。理由の1つは、このような薄さのNafionTM膜は補強が必要となり、そのため全体の厚さが増加しまた膜の電気抵抗も増加することによって薄膜の効果が損なわれることである。NafionTM膜をより低い当量で使用するとより低い電気抵抗が得られるが、より低い当量の膜は構造的に弱く、さらに補強の必要性もなくならない。
【0008】
補強した膜を作製するための1つの手段は、イオン伝導性材料を多孔質不活性補強膜に吸収または注入することによって複合膜を作製することである。例えば、Gore−SelectTM膜(W.L.Gore & Associates,Inc.,Elkton,MD)は、イオン伝導性またはイオン交換液体を含浸させたポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)膜を含む。米国特許第5,547,551号では、NafionTM溶液を全体に含浸させた燃料電池用のPTFE膜について記載されている。ポリオレフィン類およびポリ(フッ化ビニリデン)などの他の不活性膜が、イオン伝導電解質に適した担体であると触れられている。
【0009】
多孔質ウエブに固定させた電解質を含む複合プロトン交換膜が、燃料電池に使用した場合に1構成成分膜を上回る性質を有するものとして現れた。この複合膜は、より薄くより強靭に作製することができ、同時により少ない電解質で同等の伝導性が得られ、水に飽和させた後でもより優れた寸法安定性を示す。しかしながら、使用される膜が最初に多孔質であるため、最終的な膜のガス透過性は、膜に電解質を満たす度合にある程度依存する。
【0010】
これらの複合膜は、Pt微粉または炭素に担持されたPt触媒のいずれかの分散体の塗布された形態の従来型触媒電極を使用した燃料電池MEAに使用される。これらの従来型触媒は、複合膜、あるいは膜近傍に配置した電極バッキング層に、インクまたはペーストのコーティング層として設けられる。通常このインクまたはペーストはアイオノマーの形態の電解質を含む。
【0011】
カソードやアノードなどの電極を形成するために、触媒を、電解質にコーティングするあるいは他の方法で電解質と接触させるために種々の構造または手段が使用されている。これらの「膜電極アセンブリ」(MEA)は:(a)ICM表面に付着させた多孔質金属皮膜あるいは金属粒子または触媒粒子担持炭素の平面状分散体;(b)ICMに付着させるか埋め込ませた金属グリッドまたはメッシュ;または(c)ICM表面に組み込んだ触媒活性を有するナノ構造複合要素を含むことができる。
【0012】
ナノ構造複合物品はすでに開示されている。例えば、米国特許第4,812,352号、第5,039,561号、第5,176,786号、第5,336,558号、第5,338,430号、および第5,238,729号を参照にされたい。米国特許第5,338,430号は、固体ポリマー電解質に組み込まれたナノ構造電極が金属微粉または金属触媒担持炭素を使用した従来型電極よりも優れた特性を示し、例えば組み込まれた電極材料の保護、電極材料のより効率的な使用、および向上した触媒活性を備えることを開示している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
簡潔に言うと、本発明は、多孔質膜にイオン伝導性電解質を部分的に充填することで部分充填膜を作製し、次にこの部分充填膜と電極粒子を互いに圧縮することで部分充填膜から空隙体積をなくし、電極粒子を部分充填膜に埋め込むことによる、多孔質膜とイオン伝導性電解質の両方を含んだ複合膜を含む膜電極アセンブリの作製方法を提供する。本発明の膜電極アセンブリは、プロトン交換膜燃料電池、電解槽、塩素アルカリ分離膜、センサーなどの電気化学的装置への使用に適している。
【0014】
別の態様では、本発明は、式CH2=CH−Ar−SO2−N-−SO2(C1+nF3+2n)(式中nは0〜11、好ましくは0〜3、最も好ましくは0であり、Arは任意の置換または未置換アリール基であり、好ましくは分子量が400未満であり、最も好ましくは2価のフェニル基である)を有する1種類以上のモノマーを含む重合生成物を含む複合膜を提供する。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、上述の膜電極アセンブリを少なくとも1つ含む燃料電池アセンブリを提供する。
【0016】
さらに別の態様では、本発明は前述のMEAを少なくとも1つ含む電気化学的装置を提供する。
【0017】
本発明の方法では、多孔質膜にイオン伝導性電解質を部分的に充填して部分充填膜を作製する。次にこの部分充填膜を電極粒子に押し付けて、電極粒子を部分充填膜中に埋め込む。この加圧工程では充填工程で残った空隙体積の排除も行われ、このため従来検討されたものよりも薄く多孔性の低い複合膜が得られることが分かった。好ましい実施例では、本発明は、ナノ構造触媒粒子であってもよい電極粒子を埋め込み複合膜も含む膜電極アセンブリの作製方法を提供する。
【0018】
さらに、ある状況では、充填された多孔質膜の空隙だけでなく、膜の多孔質自体も消滅することが観察された。走査型電子顕微鏡によると、得られた膜は10,000倍の倍率でさえ均一に見えた。従って、別の好ましい実施例では、本発明は、均一で一様な構造となった、すなわち最初の多孔質膜の多孔質構造が消滅した複合膜を含む膜電極アセンブリの作製方法を提供する。
【0019】
さらに、得られたMEAは電気化学電池として優れた機能を示した。
【0020】
本明細書において: 「複合膜」は、1種類以上の材料で構成され、多孔質膜材料とイオン伝導性電解質材料の両方を含む膜を意味し;
「膜電極アセンブリ」は、電解質と、膜と隣接する少なくとも1つだが好ましくは2つ以上の電極とを含む膜を含む構造体を意味し;
「置換した」とは、化学種にとって、希望する生成物に干渉しない従来の置換基を有することを意味し;
「ナノ構造要素」は、その表面の少なくとも一部に導電性材料を含む針状で不連続な超微細構造を意味し;
「針状」は、長さと断面の幅の平均との比が3以上であることを意味し;
「不連続」は、独立したものの別々の要素であるが、要素が互いに接触していることを除外せず;
「超微細」は、約1μmよりも小さい寸法を少なくとも1つ有することを意味し;
「Gurley数」は、ガスの通過に対する膜の抵抗性の尺度を意味し、ASTM D726−58,Method Aに規定され後に詳述する規格条件下で膜の規格面積を所与の体積のガスが通過するために必要な時間として表現され;
「孔径」は、ASTM F−316−80に規定され後に詳述するように、膜の最も大きい孔の大きさを意味する。
【0021】
電極アセンブリに使用するための、強靭で薄くガス不浸透性のより高い膜電極の作製方法を提供することが本発明の利点である。特に、より薄くより徹底的にナノ構造電極が充填された複合膜を含む膜電極の作製方法を提供することが本発明の利点である。さらに、可視の多孔質構造がなくナノ構造電極を有する薄い非多孔質複合膜を含む膜電極の作製方法を提供することが本発明の利点である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による、電解質溶液への浸漬および乾燥の工程を、3つの膜試料のそれぞれで繰り返した後の平均質量のグラフである。
【図2】本発明による、電解質溶液への浸漬および乾燥の工程を、3つの膜試料のそれぞれで繰り返した後の平均質量のグラフである。
【図3】本発明の方法において有用な膜の表面を2,000倍に拡大して撮影した走査電子顕微鏡写真である。
【図4】本発明のMEAの断面を1,000倍に拡大して撮影した走査電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明のMEAの断面を5,000倍に拡大して撮影した走査電子顕微鏡写真である。
【図6】電解質を加えなかった比較例のMEAの断面を4,000倍に拡大して撮影した走査電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明の2つの燃料電池アセンブリによって生成した電圧対電流密度の分極曲線のグラフである。
【図8】本発明の燃料電池アセンブリによって生成した電圧対電流密度の分極曲線のグラフである。
【図9】本発明の方法に有用な膜の表面を1,000倍に拡大して撮影した走査電子顕微鏡写真である。
【図10】本発明のMEAの断面を1,000倍に拡大して撮影した走査顕微鏡写真である。
【図11】本発明のMEAの断面を1,000倍に拡大して撮影した走査顕微鏡写真である。
【図12】本発明のMEAの断面を2,520倍に拡大して撮影した走査顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の方法では、多孔質膜にイオン伝導性電解質を部分的に充填して部分充填複合膜を形成する。次にこの部分充填膜に電極粒子を加えて圧縮して、膜からさらに空隙体積をなくし、電極粒子を膜に埋め込む。
【0024】
任意の好適な多孔質膜を使用することができる。本発明の補強膜として有用な多孔質膜は、少なくとも1つの固化可能なICMを注入または埋め込み可能である十分な多孔度を有し、かつ電気化学電池の操作条件に耐える十分な強度を有する任意の構造のものであってよい。好ましくは、本発明で有用な多孔質膜には、ポリオレフィン、またはハロゲン化、好ましくはフッ素化したポリ(ビニル)樹脂などの、電池内の条件に不活性なポリマーが含まれる。発泡PTFE膜も使用することができ、例えば住友電工(東京)製のPoreflonTMや、Tetratec,Inc.(Feasterville,PA)製のTetratexTMを使用できる。
【0025】
より好ましくは、本発明の多孔質膜は、米国特許第4,539,256号、第4,726,989号、第4,867,881号、第5,120,594号、および第5,260,360号などに記載される熱誘発相分離(TIPS)法で作製された微孔質フィルムを含む。TIPSフィルムは、フィルム、膜、またはシート材料の形態の熱可塑性ポリマー粒子において、空間があきランダムに分散し等軸で不均一な形状という多様性を示す。粒子によって定まる微孔は、ICMが組み込まれるために十分な大きさであることが好ましい。図3および9は、2種類のこのようなTIPS膜の多孔質表面のそれぞれ倍率2000倍および1000倍の走査電子顕微鏡写真である。
【0026】
TIPS法によるフィルムの作製に適したポリマーとしては、熱可塑性ポリマー、感熱性ポリマー、および混合するポリマーが相溶性である限りはこれらのポリマーの混合物が挙げられる。超高分子量ポリウレタン(UHMWPE)などの感熱性ポリマーは、直接溶融加工することはできないが、溶融加工に十分な粘度まで低下させる希釈剤の存在下では溶融加工が可能である。
【0027】
好適なポリマーとしては、例えば、結晶性ビニル重合体、縮合重合体、および酸化重合体が挙げられる。代表的な結晶性ビニル重合体としては、例えば、高密度および低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ(メタクリル酸メチル)などのポリアクリレート類、ポリ(フッ化ビニリデン)などのフッ素含有ポリマーなどが挙げられる。有用な縮合重合体としては、例えば、ぽり(エチレンテレフタレート)やポリ(ブチレンテレフタレート)などのポリエステル類、NylonTM系の多くの種類を含むポリアミド類、ポリカーボネート類、およびポリスルホン類が挙げられる。有用な酸化重合体としては、例えば、ポリ(フェニレンオキシド)とポリ(エーテルケトン)が挙げられる。ポリマーおよびコポリマーの混合物も、本発明において有用となりうる。本発明の補強膜として有用なポリマーとしては、加水分解および酸化に対して抵抗性であるので、ポリオレフィンおよびフッ素含有ポリマーなどの結晶性ポリマーが挙げられる。好ましいポリオレフィンとしては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、およびポリ(フッ化ビニリデン)が挙げられる。
【0028】
任意の好適なイオン交換を使用することができる。電解質は、電気化学電池の操作条件下で固体またはゲルであることが好ましい。本発明において有用な電解質としては、ポリマー電解質、およびイオン交換樹脂などのイオン伝導性材料を挙げることができる。電解質は、プロトン交換膜燃料電池への使用に適したプロトン伝導性アイオノマーが好ましい。
【0029】
本発明で有用なイオン伝導性材料は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩あるいはプロトニック酸と、ポリエーテル、ポリエステル、またはポリイミドなどの極性ポリマー1種類以上との複合体、あるいはアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩あるいはプロトニック酸と、上記極性ポリマーをセグメントとして含む網状ポリマーまたは架橋ポリマーとの複合体であってもよい。有用なポリエーテルとしては:ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリエチレングリコールジエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールモノエーテル、およびポリプロピレングリコールジエーテルなどのポリオキシアルキレン類;これらのポリエーテル類のコポリマー、例えばポリ(オキシエチレン−コ−オキシプロピレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン−コ−オキシプロピレン)グリコールモノエーテル、およびポリ(オキシエチレン−コ−オキシプロピレン)グリコールジエーテル;エチレンジアミンと上記ポリオキシアルキレン類との縮合生成物;上記ポリオキシアルキレン類のリン酸エステル、脂肪族カルボン酸エステル、または芳香族カルボン酸エステルなどのエステル類が挙げられる。ポリエチレングリコールとジアルキルシロキサン、ポリエチレングリコールと無水マレイン酸、あるいはポリエチレングリコールモノエチルエーテルとメタクリル酸などのコポリマーは、十分なイオン伝導性を示すことが当技術分野において公知であり、本発明のICMに有用となりうる。有用な複合体形成試薬としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ならびにプロトニック酸およびプロトニック酸を挙げることができる。上記塩の有用な対イオンとしては、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、フッ化ホウ酸イオンなどを挙げることができる。限定するものではないが、これらの塩の代表例としては、フッ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウム、過塩素酸リチウム、チオシアン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、フッ化ホウ酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、リン酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、テトラフルオロエチレンスルホン酸、ヘキサフルオロブタンスルホン酸などが挙げられる。
【0030】
本発明における電解質として有用なイオン交換樹脂としては、炭化水素型およびフルオロカーボン型樹脂が挙げられる。炭化水素型イオン交換樹脂としては、フェノールまたはスルホン酸型樹脂;フェノール−ホルムアルデヒド、ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー類、スチレン−ブタジエンコポリマー類、スチレン−ジビニルベンゼン−塩化ビニルターポリマー類、などの縮合樹脂を挙げることができ、スルホン化によって陽イオン交換能が付与されるか、あるいはクロロメチル化の後対応する第4級アミンに転化させることで陰イオン交換能が付与される。
【0031】
フルオロカーボン型イオン交換樹脂としては、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロスルホニル=エトキシビニルエーテルまたはテトラフルオロエチレン−ヒドロキシル化(ペルフルオロビニルエーテル)コポリマーの水和物を挙げることができる。酸化および/または酸に対する耐性が望まれる、例えば燃料電池のカソードのような場合は、スルホン酸、カルボン酸および/またはリン酸の官能基を有するフルオロカーボン型樹脂が好ましい。通常、フルオロカーボン型樹脂は、ハロゲン、強酸および強塩基による酸化に対して優れた抵抗性を示し、本発明で有用な複合電解質膜に好ましい場合もある。スルホン酸官能基を有するフルオロカーボン型樹脂の種類の1つとして、NafionTM樹脂(DuPont Chemicals(Wilmington,DE)製、ElectroChem,Inc.(Woburn,MA)とAldrich Chemical Co.,Inc.(Milwaukee,WI)とから入手できる)が挙げられる。本発明において有用となりうる他のフルオロカーボン型イオン交換樹脂としては、アリールペルフルオロアルキルスルホニルイミド陽イオン交換基を含み、一般式(I):CH2=CH−Ar−SO2−N-−SO2(C1+nF3+2n)(式中、nは0〜11、好ましくは0〜3、最も好ましくは0であり、Arは任意の置換または未置換アリール基であり、好ましくは単環式であり、最も好ましくは二価のフェニル基であり、ここではフェニルと呼ぶ)を有するオレフィン類の(コ)ポリマーが含まれる。Arは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン、フルオレン、シクロペンタジエン、およびピレンなどの任意の置換または未置換芳香族部分を含むことができ、ここでこの芳香族部分は分子量が好ましくは400以下、より好ましくは100以下である。このような樹脂の1つにp−STSIがあり、これは式(II):スチレニル−SO2N-−SO2CF3を有するスチレントリフルオロメチルスルホニルイミド(STSI)のフリーラジカル重合より誘導されるイオン伝導性材料である。式中n=0でArが未置換フェニルであるこの例が、式Iによる最も好ましい例である。
【0032】
好ましくは、電解質はポリマー樹脂である。実施例の1つでは、最も好ましい電解質はNafionTMである。複合膜の多孔質構造をなくした場合の別の実施例では、好ましい電解質は上記式(I)によるアリールペルフルオロアルキルスルホニルイミド基を含有するポリオレフィン類であり、最も好ましい電解質はp−STSIである。
【0033】
多孔質膜に電解質を部分的に充填するためには任意の適切な手順を使用することができる。実施例で説明する「複数回浸漬」法では、多孔質膜を比較的低濃度の電解質溶液に短時間浸漬し、乾燥する、という工程を複数回繰り返す。浸漬は、膜の重量が安定状態となりもはや電解質を取り込まなくなるまで繰り返すことができる。好ましくは、浸漬は少なくともこの時点まで繰り返すが、この時点よりも前に終了することもできる。任意の濃度の電解質溶液を使用することができるが、非常に低濃度であることと浸漬の反復回数の増加が必要となるか、または電解質があまり充填されない結果となることがある。約5重量%の溶液が好ましい。膜は、任意の手段で乾燥させることができ、エアオーブン中などの高温下で行うことが好ましい。乾燥温度は40℃〜60℃の間が好ましい。何らかの理論に制限されるものではないが、電解質ポリマーの多孔質マトリックス微小繊維への吸着は、溶媒蒸発工程中に溶液の濃度が上昇することが主な原因となって起こり、このような濃度上昇過程の数が増えることで充填量が増加すると考えられる。
【0034】
実施例で説明する「長時間浸漬」法では、電解質溶液に多孔質膜を長時間、好ましくは20分間を超えて浸漬し、次に乾燥させる。任意の濃度の電解質溶液を使用することができるが、非常に低濃度であると浸漬時間を増大させる必要性が生じたり、あるいは充填される電解質量が少なくなってしまうことがある。約5重量%の溶液が好ましい。膜は任意の手段によって乾燥させることができ、好ましくはエアオーブンなどの高温において行われる。乾燥温度は40℃〜60℃の間が好ましい。
【0035】
実施例で説明する「減圧」法では、任意の適当な手段を用いて大気圧より低い空気圧を多孔質膜の裏面からかけて、膜の上面から加えた電解質溶液を膜を通して吸い込み、次に膜を乾燥させる。大気圧より低い空気圧を発生させるためにVenturiポンプを使用することができる。減圧は、膜が部分的に充填される限りにおいて、十分な溶液を膜に吸いこませるために必要である時間かけられ、好ましくは1秒〜10分間の間である。任意の濃度の電解質溶液を使用することができるが、高濃度であるほど電解質に取り込まれる量も増加すると思われ、また高粘度であるほど膜に溶液が取り込まれるまでに必要な時間が増加する。約10重量%を超える溶液が好ましく、約20重量%の溶液が最も好ましい。膜は任意の手段で乾燥させることができるが、好ましくはエアオーブン中などの高温で行われる。乾燥温度は40℃〜60℃の間が好ましい。
【0036】
実施例で説明する「液圧プレス」法では、室温機械プレスを使用して、強制的に高濃度粘稠電解質溶液を多孔質膜に通過させる。好ましくは、膜材料は、電解質を充填する領域でマスキング穴が切り取られた不浸透性フィルム層の間にはさまれる。このマスキング層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムから作製することができ、好ましくは厚さが約100μmである。電解質溶液は、膜表面に滴下して加えられる。膜をプレス内に配置する前に、別の層またはシムを取り付けることができる。使用する圧力は2トン/cm2を上限とすることができ、好ましくは0.1〜1.0トン/cm2、より好ましくは0.4〜0.6トン/cm2である。任意の加圧手段を使用することができ、例えばニップローラーや平台プレスを使用することができる。連続的な方法が好ましい。圧力は膜を部的に充填するために必要である時間かけられ、通常は1秒〜10分間の間である。加圧後、過剰の溶液は膜表面からふき取って、膜を乾燥させる。膜は任意の手段によって乾燥させることができ、好ましくはエアオーブン中などの高温で行われる。乾燥温度は40℃〜60℃の間が好ましい。
【0037】
「蒸発」法では、多孔質膜をわずかな体積の溶液の上に置いて、毛管現象によって膜の下側から溶液を部分的に充填する。溶剤は膜の上面から蒸発させる。この方法は溶剤が蒸発する任意の温度で行うことができ、好ましくは室温またはそれより高温である。
【0038】
好ましくは、液圧プレス法、減圧法、または複数回浸漬法が使用される。最も好ましくは、液圧プレス法が使用される。
【0039】
充填工程で使用する電解質溶液の量は、希望する充填度を達成するために十分であるべきだが、膜に充填される理論的な量よりも過剰であることが好ましい。部分的に充填された後の膜の孔に取り込まれるか微小繊維に吸着した電解質の量は、有効孔隙体積の10%〜90%の間を充填するために十分であるべきである。好ましくは、有効孔隙体積の15%を超えて充填される。最も好ましくは、有効孔隙体積の35%〜65%の間が充填される。電解質多孔質膜の構造微小繊維上にコーティングされて存在してもよいし、あるいは一部の孔隙の全断面に充填されるように膜をぬらしてもよい。部分的充填後の膜の密度の増加は、少なくとも0.01g/cm3であるべきだが、少なくとも0.1g/cm3であり1.2g/cm3未満であることが好ましい。
【0040】
任意の好適な電極粒子を使用することができる。好適な電極粒子の表面の少なくとも一部は、触媒材料で構成される。好ましくは、後述のようにナノ構造要素が使用される。しかし、他の電極粒子を使用することもでき、例えば金属微粉または金属コーティング層を担持した炭素粒子などの粒子を使用できる。触媒材料は、MEAの意図する用途に適切となるべきである。好ましくは触媒材料は、VII族金属またはそれらの合金であり、最も好ましくはPtまたはその合金である。
【0041】
本発明での使用に適したナノ構造要素としては、有機顔料、最も好ましくはC.I.PIGMENT RED 149(ペリレンレッド)の金属コーティングしたウィスカーを含むことができる。結晶性ウィスカーは、実質的に均一であるが、断面および高さと幅の比は同一ではない。ナノ構造ウィスカーは、触媒に適した材料が相似的にコーティングされ、これによって複数の触媒部位として作用することができる微細ナノ構造表面構造がウィスカーに形成される。
【0042】
米国特許第4,812,352号および第5,039,561号は、ウィスカーの有機系微細構造層を作製するための好ましい方法を開示しており、この方法は本発明での使用に適したナノ構造ウィスカーを形成するためのナノ構造表面層のコーティングに適している。これらの開示内容では、ウィスカーの微細構造層を作製する方法は、 i)有機材料の蒸気を薄く、連続的または非連続的な層として基材上に付着または凝縮させる工程と、 ii)付着した有機層の物理的変化を誘発して不連続な微細構造またはウィスカーが密集した微細構造層を形成させるために十分であるが、有機層を蒸発させたり昇華させたりするためには不十分である時間および温度で、付着させた有機層を減圧下で焼きなます工程とを含む。
【0043】
ウィスカーの層は、全体的な乾燥工程によって希望する任意のサイズの基材上に付着させることができ、例えば高解像度(乾燥)レーザーアブレーション手段を使用して好都合かつ迅速に模様を付けることができる。
【0044】
ウィスカーの方向は、基材表面に関してほぼ均一である。通常、ウィスカーは元の基材表面に対して法線方向に向いており、この面の法線方向はウィスカーの土台が基材表面と接触する点の局所的な基材面と接する架空の面と垂直な線の方向として定義される。面の法線方向は、基材面の輪郭に沿って見られる。ウィスカーの長軸は、互いに平行または非平行になりうる。
【0045】
あるいは、ウィスカーは、不均一な形状、大きさ、および向きであってもよい。例えば、ウィスカーの先端が曲がったり丸まったり湾曲してもよいし、あるいは、ウィスカーがその長さ全体で曲がったり丸まったり湾曲してもよい。
【0046】
好ましくは、ウィスカーは長さおよび形状が均一であり、長軸に沿った断面の大きさが均一である。各ウィスカーの好ましい長さは約50μm未満である。より好ましくは、各ウィスカーの長さは約0.1〜5μmの範囲内であり、最も好ましくは0.1〜3μmの範囲内である。あらゆるウィスカー層内で、ウィスカーの長さが均一であることが好ましい。好ましくは、各ウィスカーの平均断面サイズは約1μm未満、より好ましくは0.01〜0.5μmである。最も好ましくは、各ウィスカーの平均断面サイズは0.03〜0.3μmの範囲内である。
【0047】
好ましくはウィスカーの面数密度は、1cm2当りで約107個〜約1011個である。より好ましくは、ウィスカーの面密度は、1cm2当りで約108〜約1010個である。
【0048】
ウィスカーは種々の方向を向くことができ、直線または曲線の形状となることができる。どの1層も、複数種の方向および形状の組み合わせで構成させてもよい。ウィスカーの縦横比(すなわち、長さと直径の比)は約3:1〜約100:1の範囲内が好ましい。
【0049】
基材として有用な材料としては、蒸気付着および焼きなまし工程の間にさらされる温度および減圧においてその保全性が維持される材料が挙げられる。基材は可撓性でも剛直でもよく、平面状でも非平面上でもよく、凸面、凹面、しぼ付き、またはそれらの組み合わせであってもよい。好ましい基材材料としては、有機材料および無機材料(例えば、ガラス、セラミックス、金属、および半導体など)が挙げられる。好ましい無機基材材料は、ガラスまたは金属である。好ましい有機基材材料はポリイミドである。代表的な有機基材としては、焼きなまし温度で安定な材料が挙げられ、例えば、ポリイミドフィルム(市販されており、例えば、DuPont Electronics(Wilmington,DE)の商品名KAPTON)、高温安定性ポリイミド類、ポリエステル類、ポリアミド類、およびポリアラミド類などのポリマーが挙げられる。基材として有用な金属としては、例えば、アルミニウム、コバルト、銅、モリブデン、ニッケル、白金、タンタル、またはそれらの組み合わせが挙げられる。基材材料として有用なセラミックスとしては例えば、アルミナやシリカなどの金属酸化物または非金属酸化物が挙げられる。有用な無機非金属はケイ素である。
【0050】
ウィスカーを形成することができる有機材料は、有機材料層を基材上に設けるための当技術分野において公知の技術を使用して基材上にコーティングすることができ、例えば、気相蒸着(例えば、真空蒸着、昇華蒸着、および化学蒸着)、および溶液コーティングまたは分散液コーティング(例えば、ディップコーティング、吹き付けコーティング、スピンコーティング、ブレードまたはナイフコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、および注入コーティング(すなわち、液体を表面に注ぎ込んで、液体を表面に流動させる))によってコーティングすることができる。好ましくは、有機層は物理真空蒸着(すなわち、減圧下で有機材料を昇華させる)によって設けられる。
【0051】
コーティング後にプラズマエッチングを行うことなどでウィスカーを生成するために有用な有機材料としては、例えば、ポリマーおよびそれらのプレポリマー(例えば、アルキド、メラミン、尿素ホルムアルデヒド、フタル酸ジアリル、エポキシ、フェノール樹脂、およびシリコーンなどの熱可塑性ポリマー;熱硬化性ポリマー、例えばアクリルニトリル−ブタジエン−スチレン、アセタール、アクリル樹脂、セルロース誘導体、塩素化ポリエーテル、エチレン−酢酸ビニル、フルオロカーボン、アイオノマー、ナイロン、パリレン、フェノキシ樹脂、ポリアロマ−、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド−イミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド、ポリスチレン、ポリスルホン、ビニル類);および有機金属類(例えば、ビス(η5−シクロペンタジエニル)鉄(II)、鉄ペンタカルボニル、ルテニウムペンタカルボニル、オスミウムペンタカルボニル、クロムヘキサカルボニル、モリブデンヘキサカルボニル、タングステンヘキサカルボニル、およびトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムクロリド)を挙げることができる。
【0052】
好ましくは、有機系ウィスカー層の化学組成は、出発有機材料の化学組成と同一である。ウィスカー層を形成するために好ましい有機材料としては、例えば、π電子密度が広範囲にわたり非局在化した鎖または環を含む平面状分子が挙げられる。一般にこれらの有機材料は、ヘリングボーン型配置で結晶化する。好ましい有機材料は、多環式芳香族炭化水素類および複素環式芳香族化合物類に大まかに分類することができる。
【0053】
多環式芳香族炭化水素類は、Morrison and Boyd,Organic Chemistry,Third Edition,Allyn and Bacon,Inc.(Boston:1974),Chapter 30に記載されている。複素環式芳香族化合物類は、上記のMorrison and Boyd,Chapter 31に記載されている。
【0054】
市販されている好ましい多環式芳香族炭化水素としては、例えば、ナフタレン類、フェナントレン類、ペリレン類、アントラセン類、コロネン類、およびピレン類が挙げられる。好ましい多環式芳香族炭化水素は、N,N’−ジ(3,5−キシリル)ペリレン−3,4,9,10ビス(ジカルボキシイミド)(商品名C.I.PIGMENT RED 149でAmerican Hoechst Corp.(Somerset,NJ)より市販されている)であり、本明細書では「ペリレンレッド」と呼ぶ。
【0055】
市販されている好ましい複素環式芳香族化合物としては、例えば、フタロシアニン類、ポルフィリン類、カルバゾール類、プリン類、およびプテリン類が挙げられる。複素環式芳香族化合物の代表例としては、例えば、金属を含まないフタロシアニン(例えば、二水素フタロシアニン)およびその金属錯体(例えば、銅フタロシアニン)が挙げられる。
【0056】
有機材料は、基材上に付着させた時に連続層を形成できることが好ましい。好ましくは、この連続層の厚さは、1nm〜約1000nmの範囲内である。
【0057】
ウィスカーの向きは、有機層の付着の間の基材温度、付着速度、および入射角に影響されうる。有機材料の付着の間の基材温度が十分高い(すなわち、有機材料の沸点(K)の3分の1の値として当技術分野において関連づけられている臨界基材温度より高温)場合は、付着時または後の焼きなましの工程で付着した有機材料がランダムに配向したウィスカーを形成する。付着の間の基材温度が比較的低い(すなわち、臨界基材温度より低温)場合は、付着した有機材料は焼きなましをすると均一に配向したウィスカーを形成する傾向にある。例えば、ペリレンレッドを含む均一に配向したウィスカーを希望する場合は、ペリレンレッドの付着時の基材温度が約0〜約30℃であることが好ましい。DCマグネトロンスパッタリングやカソードアーク減圧法などのある相似被覆を後で行うと、曲線状ウィスカーを形成することができる。
【0058】
付着した層をウィスカーへと完全に転化させるための、異なる皮膜厚さにおける最適な最高焼きなまし温度が存在しうる。完全に転化すると、各ウィスカーのより大きい方のサイズは、最初に付着させた有機層の厚さに正比例する。ウィスカーは不連続であり、それらの断面の大きさ程度の距離で分離しており、好ましくは断面の大きさが均一であり、すべての最初の有機皮膜がウィスカーに転化したので、質量が保存されることはウィスカーの長さは採取に付着した層の厚さに比例することを意味する。最初の有機層の厚さとウィスカーの長さのこの関係と、断面の大きさが長さと独立であることから、ウィスカーの長さと縦横比は、その断面の大きさおよび面密度とは独立に変動させることができる。例えば、蒸着させたペリレンレッド層の厚さが約0.05〜約0.2μmである場合にはウィスカーの長さがほぼその10〜15倍となることを発見した。ウィスカー層の表面積(すなわち、個々のウィスカーの表面積の合計)は、基材に付着させた最初の有機層よりもはるかに大きい。好ましくは、最初に付着させた層の厚さは約0.03〜約0.25μmの範囲内である。
【0059】
一つ一つのウィスカーは、アモルファスよりも、単結晶または多結晶になる可能性がある。ウィスカー層は、結晶の性質とウィスカ−の一様な配向のために高い異方性を有することがある。
【0060】
ウィスカーが不連続に分布することが望ましい場合は、基材の特定の場所または領域に選択的にコーティングさせるために、有機層付着工程でマスクを使用することができる。基材の特定の場所または領域に選択的に有機層を付着させるための当技術分野において公知の他の方法も有用となりうる。
【0061】
焼きなまし工程では、有機層が表面にコーティングされた基材を、コーティングされた有機層の物理変化が起こるまでに十分な時間および温度で減圧下において加熱し、これによって有機層が成長し、不連続で配向した単結晶または多結晶のウィスカーの密集した配列を形成する。ウィスカーの一様な配向は、付着時の基材温度が十分に低い場合での焼きなまし工程の本来の結果である。コーティングした基材を焼きなまし工程の前に大気にさらしても、得られるウィスカーの形成に対する悪影響は見られない。
【0062】
例えば、コーティングした有機材料がペリレンレッドまたは銅フタロシアニンである場合は、焼きなましは減圧下(すなわち、約0.13Pa未満)で約160〜約270℃の範囲の温度において行うことが好ましい。最初の有機層をウィスカー層に転化させるために必要な焼きなまし時間は、焼きなまし温度に依存する。一般的には、焼きなまし時間は約10分間〜約6時間の範囲内で十分である。好ましくは、焼きなまし時間は約20分間〜約4時間の範囲内である。さらに、ペリレンレッドの場合、元の有機層をウィスカー層に転化させるが昇華は起こらない最適な焼きなまし温度は、付着させた層の厚さによって変動することが観察される。一般的に、元の有機層の厚さが0.05〜0.15μmであれば、焼きなまし温度は245〜270℃の範囲内である。
【0063】
蒸着工程と焼きなまし工程の間の時間間隔は、数分間〜数か月まで変動させることができ、コーティングした複合体が汚染(例えば、ほこり)を最小限にする覆い付き容器に保管される限りは大きな悪影響はない。ウィスカーが成長すると、有機赤外帯域強度が変化し、レーザー鏡面反射率が低下するので、例えば、表面赤外分光法によってその場で注意深く転化を観察することができる。ウィスカーが希望する大きさまで成長した後で得られる、基材とウィスカーを含む層状構造は、大気圧に戻すまでに冷却することができる。
【0064】
ウィスカーの分布にパターンが形成されることを希望する場合は、例えば、機械的手段、減圧加工手段、化学的手段、気圧または粒体手段、輻射線手段、およびそれらの組み合わせによって基材からウィスカーを選択的に除去することができる。有用な機械的手段としては、例えば、鋭利な器具(例えば、かみそりの刃)で基材からウィスカーをこすり落とすことや、ポリマーで包み込んだ後に層間剥離させることが挙げられる。有用な輻射線手段としては、レーザーまたは光アブレーションが挙げられる。このようなアブレーションによって電極にパターンを形成することができる。有用な化学的手段としては、例えば、ウィスカー層の選択した部分または領域の酸エッチングが挙げられる。有用な減圧手段としては、例えば、イオンスパッタリングおよび反応性イオンエッチングが挙げられる。有用な空気圧手段としては、例えば、気体(例えば、空気)または流体流で基材からウィスカーを吹き飛ばす方法が挙げられる。上述の手段の組み合わせも可能であり、例えばフォトレジストとフォトリソグラフィーを利用することができる。
【0065】
ウィスカーは、ICMに移行できる限りは、基材または基材と同じ材料の延長部分であってもよく、例えば、不連続な金属の微小な島のマスクをポリマー表面に蒸着し、次にプラズマまたは反応性イオンエッチングによって金属微小島でマスクされていないポリマー材料を除去して、表面に突出したポリマー基材の柱を残すことによって延長部分を形成できる。
【0066】
ウィスカーまたはナノ構造要素の微細構造層を形成するための他の方法も公知である。例えば、ウィスカーの有機微細構造層を形成するための方法は、Materials Science and Engineering,A158(1992),pp.1−6;J.Vac.Sci.Technol.A,5,(4),July/August,1987,pp.1914−16;J.Vac.Sci.Technol.A,6,(3),May/August,1988,pp.1907−11;Thin Solid Films,186,1990,pp.327−47;J.Mat.Sci.25,1990,pp.5257−68;Rapidly Quenched Metals,Proc.of the Fifth Int.Conf.on Rapidly Quenched Metals,Wurzburg,Germany(Sept.3−7,1984),S.Steeb et al.,eds.,Elsevier Science Publishers B.V.,New York,(1985),pp.1117−24;Photo.Sci.and Eng.,24,(4),July/August,1980,pp.211−16;および米国特許第4,568,598号および第4,340,276号に記載されている。ウィスカーの無機系微細構造層を形成する方法は、例えば、J.Vac.Sci.Tech.A,1,(3),July/Sept.,1983,pp.1398−1402および米国特許第3,969,545号;米国特許第4,252,865号、第4,396,643号、第4,148,294号、第4,252,843号、第4,155,781号、第4,209,008号、および第5,138,220号に開示されている。
【0067】
ウィスカーを生成するための有用な無機材料としては、例えば、炭素、ダイヤモンド様炭素、セラミクス(例えば、アルミナ、シリカ、酸化鉄、および酸化銅などの金属または非金属の酸化物;窒化ケイ素や窒化チタンなどの金属または非金属の窒化物;および炭化ケイ素などの金属または非金属の炭化物;ホウ化チタンなどの金属または非金属のホウ化物);硫化カドミウムや硫化亜鉛などの金属または非金属の硫化物;ケイ化マグネシウム、ケイ化カルシウム、およびケイ化鉄などの金属ケイ化物;金属(例えば、金、銀、白金、オスミウム、イリジウム、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、およびそれらの組み合わせなどの貴金属;スカンジウム、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、およびそれらの組み合わせなどの遷移金属;ビスマス、鉛、インジウム、アンチモン、スズ、亜鉛、およびアルミニウムなどの低融点金属;タングステン、レニウム、タンタル、モリブデン、およびそれらの組み合わせなどの耐火金属);および半導体材料(例えば、ダイヤモンド、ゲルマニウム、セレン、ヒ素、ケイ素、テルル、ヒ化ガリウム、アンチモン化ガリウム、リン化ガリウム、アンチモン化アルミニウム、アンチモン化インジウム、インジウムスズ酸化物、アンチモン化亜鉛、リン化インジウム、ヒ化アルミニウムガリウム、テルル化亜鉛、およびそれらの組み合わせ)が挙げられる。
【0068】
好ましい実施例のウィスカーは、前述したように、最初のPR149層の付着の間に基材温度を調節することによってランダムに配向させることができる。相似被覆工程の条件によって、ウィスカーを曲線状の形状にすることもできる。L.Aleksandrov,”GROWTH OF CRYSTALLINE SEMICONDUCTOR MATERIALS ON CRYSTAL SURFACES(結晶表面上での結晶性半導体材料の成長)”(Elsevier,New York,1984)Chapter 1のFIG.6で議論されているように、例えば、熱蒸発蒸着、イオン蒸着、スパッタリングおよび注入などの異なるコーティング方法によって到着する原子にかかるエネルギーは、5つのオーダーにわたる範囲となりうる。
【0069】
不連続な分布のウィスカーを形成するための、ウィスカーの微細構造層の形成方法の修正は本発明の範囲内である。
【0070】
好ましくは、1層以上の相似被覆材料を取り付ける場合、この層は、希望する触媒特性、ならびに電気伝導性および機械特性(例えば、ウィスカー層を構成するウィスカーを補強および/または保護する)、および的蒸気圧特性を付与する機能性層としての働きをする。
【0071】
好ましくは相似被覆材料は無機材料を使用することができ、ポリマー材料などの有機材料も使用することができる。有用な無機相似被覆材料としては、例えば、ウィスカーについて前に説明した材料が挙げられる。有用な有機材料としては、例えば、導電性ポリマー(例えば、ポリアセチレン)、ポリ−p−キシレンから誘導されるポリマー、および自己集合層を形成できる材料が挙げられる。
【0072】
相似被覆層の好ましい厚さは、通常約0.2〜約50nmの範囲内である。相似被覆層は、例えば、米国特許第4,812,352号および第5,039,561号に記載されるような従来技術を使用してウィスカー層状に付着させることができる。機械的な力によるウィスカーの妨害を避けられる任意の方法を相似被覆層の付着に使用することができる。好適な方法としては、例えば、気相蒸着(例えば、減圧蒸発、スパッターコーティング、および化学蒸着)、溶液コーティングまたは分散液コーティング(例えば、ディップコーティング、吹き付けコーティング、スピンコーティング、注入コーティング(すなわち、液体を表面に注ぎ込んで、ウィスカー層状に液体が流れるようして、続いて溶剤を除去する))、浸漬コーティング(すなわち、溶液の分子、または分散液のコロイドあるいは他の粒子をウィスカー層に吸着させるために十分な時間、溶液のウィスカー層を浸漬する)、電気めっき、および無電極めっきが挙げられる。より好ましくは、相似被覆は、例えば、イオンスパッター蒸着、カソードアーク蒸着、蒸気凝縮、減圧昇華、物理蒸気輸送、化学蒸気輸送、および有機金属化学蒸着などの気相付着法で付着させる。好ましくは、相似被覆材料は触媒金属または合金である。
【0073】
相似被覆をパターンをつけて付着させるためには、不連続コーティングなどを形成するための当技術分野で公知のように付着方法を修正する。公知の修正方法としては、例えば、マスク、シャッター、有向イオンビーム、および付着源のビームの使用が挙げられる。
【0074】
電極粒子は、熱および機械的圧力をかけた後、粒子を支持するもとの基材を除去することによって部分充填膜に埋め込むことができる。任意の好適な圧力源を使用することができる。液圧プレスを使用することが好ましい。あるいは、1つまたは一連のニップローラーで圧力をかけることができる。この方法は、平台プレスの繰返し運転またはローラーの連続的運転のいずれかを使用して連続的工程に適合させることもできる。シム、スペーサー、および他の介在させる機械的機器を使用することができる。電極粒子は好ましくは基材上に支持して、粒子が膜表面と接触するように基材を膜表面に取り付ける。加圧後に基材を除去すると、膜に埋め込まれた電極粒子が残る。あるいは、基材を使用せず、別のアイオノマーも含まないで直接膜表面に電極粒子を付着させ、続いて表面内部に押込むこともできる。ある実施例では、部分充填膜ディスクを、部分充填膜と向かい合うように配置したポリイミド支持ナノ構造要素のナノ構造フィルム2枚の間に置くことができる。コーティングしていないポリイミドおよびPTFEのシートのさらなる層を、さらに両側から重ねて、圧力を均一に分布させ、最後に1組のステンレス鋼製シムをこの組立品の外側に配置する。
【0075】
圧力、温度、および加圧時間は、空隙体積を膜からなくし電極粒子を膜に埋め込むために十分となる任意の組み合わせであってよい。最適条件は、多孔質膜の性質に依存する。好ましくは、0.05〜10トン/cm2の間の圧力がかけられ、より好ましくは0.1〜1.0トン/cm2の間の圧力がかけられる。最も好ましくは、0.10〜0.20トン/cm2の圧力がかけられる。好ましくは、プレス温度は20℃〜300℃の間であり、最も好ましくは80℃〜250℃の間である。加圧時間は、1秒間を超えることが好ましく、最も好ましくは約1分間を超える。プレスに載せた後で、加圧前に低圧力または圧力をかけずに、MEA成分が加圧温度と平衡状態となるようにすることができる。あるいは、オーブンまたは目的に適合した他の装置でMEA成分を予備加熱することができる。好ましくは、加圧前にMEA成分を1〜10分間予備加熱する。プレスから取り出す前または後でMEAを冷却することができる。プレスの圧盤は、水冷することができるし、あるいは他の適当な手段で冷却することができる。好ましくは、プレスでまだ加圧している間にMEAを1〜10分間冷却する。
【0076】
図4は、本発明の方法で作製したMEAの断面の1000倍でのSEM写真である。
【0077】
実施例の1つでは、p−STSIを電解質として使用する。得られるMEAでは、複合膜の多孔質構造は明らかになくなる。得られるMEAのイオン伝導性膜部分は、膜材料と電解質が均一に組み合わさった状態に見える。膜は最初の多孔質構造を失い、特に膜を横断する孔は残留しない。この実施例では、前述したように膜に部分的に充填するために任意の方法を利用することができる。前述のように任意の加圧条件で行うことができる。任意の多孔質膜を使用することができるが、ポリプロピレン膜とTIPS膜が好ましく、ポリプロピレンTIPS膜が最も好ましい。
【0078】
本発明は、燃料電池、電解槽、電池、またはガス、気相または液体センサーなどの直接目的に最適化させた膜電極を使用した電気化学的装置に有用である。
【0079】
本発明の目的および利点は、以下の実施例によってさらに説明するが、これらの実施例で列挙する個々の材料およびそれらの量、ならびにその他の条件および細部は、本発明を不当に制限するために構成されるものではない。
【実施例】
【0080】
以下の実施例1〜19では、数種類の異なる方法による、種々の多孔質ポリマー膜の種々のイオン伝導性電解質による部分的充填を説明する。以下の実施例20〜25では、膜の部分的充填と、引き続く部分充填膜と電極粒子との加圧を説明する。
実施例で使用した材料
【0081】
以下の実施例では次のような多孔質膜を使用する:
TIPSTM膜Aは、Gurley4.3sec/50cc、孔径0.84μm(泡立ち点)、空隙率約70%、厚さ3.5ミル(89μm)のポリプロピレンTIPSTM(Thermally Induced Phase Separation media(熱誘発性分離媒体))である。この膜は以下のようにして作製した:メルトフローインデックス0.65dg/min(ASTM D1238,Condition I)のポリプロピレン樹脂(DS 5D45,Shell Chemicals Co.,Houston,TX)を40mm二軸スクリュー押出機(Berstorff Corp.,Charlotte,NC)のホッパーに装入した。粘度60センチストークス(ASTM D445、40℃)のAmoco White Mineral Oil #31(AMOCO,Chicago, IL)を、ポリマーが31重量%で鉱油が69重量%の組成となるような比率で、注入口から押出機に装入した。またこの組成には0.24重量%のジベンジリデンソルビタール(MilladTM3905,Milliken Chemical Corp.,Spartanburg,NC)を核剤として含んだ。全体の供給速度は16.80kg/hrであった。押出機内でポリマーを266℃まで加熱して融解させ、油と混合した後、押出しの間は温度を166℃に維持した。溶融物を側面38.1cmのコートハンガースリットダイから押出して、66℃に維持したキャスティングホイール上にキャストした。このキャストフィルムをジクロロトリフルオロエタン(CHCl2CF3、VertrelTM 423として、DuPont Chemical Co.(Wilmington,DE)より入手できる)で抽出して鉱油を除去し、次に、88℃縦方向で2.1対1で延伸し、140℃横方向で2.8対1に延伸した。
【0082】
TIPSTM膜Bは、Gurley68sec/50cc、孔径0.1μm、空隙率58%、厚さ29μm(1.13ミル)のポリプロピレン TIPSTMである。この膜は以下のようにして作製した:メルトフローインデックス0.65dg/min(ASTM D1238,Condition I)のポリプロピレン樹脂(DS 5D45,Shell Chemicals Co.,Houston,TX)を、40mm二軸スクリュー押出機(Berstorff Corp.,Charlotte,NC)のホッパーに装入した。粘度が60センチストークス(ASTM D445、40℃)のAmoco White Mineral Oil #31(AMOCO,Chicago,IL)を、ポリマーが55重量%で鉱油が45重量%の組成となるような比率で、注入口から押出機に投入した。またこの組成には0.28%のジベンジリジンソルビタール(MilladTM 3905,Milliken Chemical Corp.,Spartanburg,NC)を核剤として含んだ。全体の供給速度は11.35kg/hrであった。押出機内でポリマーを271℃まで加熱して融解させ、油と混合した後、押出しの間には温度を177℃に維持した。この溶融物を38.1cm幅コートハンガースリットダイから押出して、60℃に維持したキャスティングホイール上にキャストした。このキャストフィルムをジクロロトリフルオロエタン(CHCl2CF3、VertrelTM 423として、DuPont Chemical Co.(Wilmington,DE)より入手できる)で抽出して鉱油を除去し、次に90℃で縦方向に3.25対1に延伸し、138℃で横方向に1.5対1で延伸した。
【0083】
TIPSTM膜Cは、Gurley数366sec/50cc、孔径0.07μm、空隙体積44%、厚さ69μm(2.7ミル)のポリフッ化ビニリデンTIPSTMである。この膜は以下のようにして作製した:SolefTM1010ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)樹脂(Solvay America Inc.,Houston,TX)を40mm二軸スクリュー押出機(Berstorff Corp.,Charlotte,NC)のホッパーに装入した。フタル酸ジブチル(Aldrich Chemical Co.,Inc.,Milwaukee,WI)を、ポリマーが60重量%でフタル酸ジブチルが40重量%の組成となるような割合で、注入口から押出機に投入した。全体の供給速度は14.8kg/hrであった。この溶融物を204℃において30.5cm幅コートハンガースリットダイから押出して、28℃に維持した水浴で急冷した。このキャストフィルムを1,1,1−トリクロロエタン(Aldrich)で抽出してフタル酸ジブチルを除去し、次に、32℃で縦方向に1.3対1で延伸し、121℃で横方向に1.5対1で延伸した。
【0084】
第4の膜のPoreflonTMは、住友電工(東京)製の発泡ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、これはGurley数が17.5±0.5sec/100ccである。
【0085】
上述の説明において、Gurley数は、膜の気流に抵抗する尺度を意味し、ASTM D726−58,Method Aに規定されるように、規格条件下で所与の体積のガスを規格面積の膜に通過させるために必要な時間として表現される。Gurley数は、空気100cc、または他の指定の体積が6.35cm2(1平方インチ)のフィルムを水124mmの圧力で通過する秒で表した時間である。フィルム試料は、円筒型リングの間にはさみ、その最上部にはピストンと規定の体積の空気が含まれる。ピストンを離すと、ピストン自身の重量によって、上部円筒部内の空気に圧力がかかり、規定の体積の空気が膜を通過するのにかかる時間を測定する。
【0086】
上述の説明において、孔径は、ASTM F−316−80で規定される膜の最も大きな孔の大きさの測定値を意味する。フィルムの孔を満たすために液体が使用される。フィルム中の最大の通路を空気が通過して泡が発生するまで空気圧をかける。泡が発生した時点の圧力は、最大孔の大きさと試験液体の表面張力と関係がある。試験液体としてエタノールを使用すると、μmを単位とした泡立ち点は、1.34×10-3を、パスカル(Pa)を単位とした泡が発生したときの圧力で割ったものに等しい。
次のようなポリマー電解質を以下の実施例で使用する:
【0087】
NafionTM 1100溶液:DuPontで製造されElectroChem,Inc.(Woburn,MA)とAldrichから入手できる、SO3−アニオンが結合したペルフルオロ化イオン交換ポリマーの1100当量の溶液。低級脂肪族アルコール類と水(水15〜20%)の混合物中の5重量%溶液。
【0088】
p−STSI:スチレニルチルフルオロメチルスルホニルイミド(STSI);スチレニル−SO2N−(SO2CF3)のフリーラジカル重合から誘導されるイオン伝導性材料。
【0089】
実施例1および2
実施例1および2では、複数回浸漬および乾燥工程をもちいた多孔質膜への電解質の部分的充填を説明する。この方法では、多孔質膜を低濃度電解質溶液に短時間浸漬し、エアオーブンで乾燥する、という工程を複数回繰返し、両工程の間で増加する充填物重量を測定する。
【0090】
実施例1では、直径3.81cmのTIPS膜Bの試料ディスク3枚を、5重量%のNafion 1100溶液に浸漬し、取り出し、乾燥し、秤量して、各試料ディスクの重量変化を記録した。この手順を全部で16回繰り返した。浸漬時間は、最長20分間から最短2分間まで変動させた。乾燥は約50℃のエアオーブン中で行った。乾燥時間も変動させ、通常は15〜20分間の間としたが、1つの例では最長2時間までとした。第6回および第11回の浸漬の後では、新しい溶液を使用した。溶液から取り出した後、乾燥の前にディスクから過剰分を滴り落とした。各浸漬および乾燥手順後の試料重量をまとめたものを図1に示す。第15回の浸漬および乾燥の後、ぬれた布を使用して過剰の溶液をさらにふき取り、試料を再び秤量した(図1のデータ点16)。光沢のあるコーティングのように見える表面の蓄積物は、ふき取るとなくなった。測定値は、3つすべての試料の質量増加は同様であり、浸漬回数と共に平均的には単調に増加し、第1回で増加はより急激であり、その後は横ばいとなった。浸漬時間の長さは、有意差のある要因とは思われず、また新しい溶液の使用も有効な効果は見られない。最後に、全体の重量増加に対してふき取りによる重量減は無視できるので、質量増加は表面の蓄積物によるものではないと思われる。
【0091】
全体質量増加の平均は、16回の浸漬/乾燥サイクルで約20mg、言い換えると1.75mg/cm2または0.61g/cm3である。Nafion 1100電解質の密度は約2g/cm3であり、これはNafion 1100溶液に含まれるポリマー電解質材料Nafion 117(1.97g/cm3)から計算している。密度増加0.61g/cm3は、膜の体積の約30%が充填されたことに対応する。従って、最初の膜の空隙体積58%の約半分が複数回浸漬/乾燥手順によって充填された。
【0092】
この方法は、連続的ウエブ充填工程に容易に適合させることができ、その方法では、膜を曲がりくねった一連のローラーに通して、電解質溶液槽と、その間の乾燥装置とに膜を送り込み、送り出す。あるいはウエブを、電解質溶液に浸漬して、乾燥装置(例えば、強制空気または加熱ランプ)を通過させ、再び溶液に通す、を希望の回数繰り返す。
【0093】
実施例2では、実施例1の複数回浸漬および乾燥手順を、TIPS膜C媒体の3つの試料ディスクで繰り返した。サイクル数は11とした。浸漬時間は、4分間〜20分間まで変動させ、乾燥時間は18分間〜90分間まで変動させた。図2は、各サイクル後の質量変化をまとめたものである。今回も、測定値は、3つすべての試料の質量増加が同様であり、浸漬時間の長さは有意差のある要因であるとは思われず、新しい溶液の使用が有意の効果が見られないことを示している。質量増加は、3つすべての試料で同様であり、第4サイクル後には横ばいとなっている。全体重量増加の平均は、約12mg、または1mg/cm2、または0.15g/cm3である。TIPS膜C媒体は、TIPS膜B媒体よりも孔径および空隙体積(44%)が小さく、このことが実施例1における後者の媒体の密度増加よりも大きいことの原因である考えることができる。最大可能密度増加は、TIPS膜C媒体においてNafionで0.88g/cm3であると計算される。密度増加0.15g/cm3は、膜体積の約7.5%の充填に対応する最初の膜の空隙体積44%の約6分の1が、複数回浸漬/乾燥手順によって充填された。
【0094】
実施例3〜5
実施例3、4、および5では、長時間浸漬法による多孔質膜への電解質の部分充填を説明する。この方法では、多孔質膜を電解質溶液に20分間を超える超時間浸漬して、次にエアオーブンで乾燥する。
【0095】
実施例3では、2つの直径3.15cmのTIPS膜Bのディスクの充填を、5重量%Nafion溶液に30分間浸漬し、次に50℃のエアオーブンで50分間乾燥することで行った。密度増加はそれぞれ0.31g/cm3と0.26g/cm3であり、平均は0.29g/cm3であった。
【0096】
実施例4では、1つの直径3.81cmのTIPS膜Bのディスクを5重量%溶液に5時間浸漬した。容器はふたをしなかったので、時間がたつに連れて濃度は増加したと思われる。約50℃のエアオーブンで45分間乾燥後、密度増加は0.44g/cm3であった。
【0097】
実施例5では、2つの直径2.5cmのTIPS膜Aのディスクを、20重量%p−STSIをDI水に溶解した溶液に20分間浸漬した。過剰分は流れ落ちるようにし、ディスクを終夜乾燥した。どちらの試料も、密度増加は0.16g/cm3であった。
【0098】
実施例6〜12 実施例6〜12では、減圧手順による多孔質膜への電解質の部分充填を説明する。この方法では、ろ過フラスコ支持体で支持した多孔質膜の下側から弱く減圧して、種々の電解質濃度の溶液を膜に通した。
【0099】
実施例6〜8では、5重量%Nafion溶液の一部を乾燥させて10重量%および20重量%の溶液を調製した。それぞれの溶液について、それぞれ直径3.81cmのTIPS膜Aのディスク1つずつを、Venturi空気装置のVarian model 952−5096(Varian(Lexington,MA)で販売される)を吸気のためにゴムホースで接続した250ml真空フラスコの上部に取り付けたCoors D37セラミックろ過用漏斗の平らな底面の穴の上に置いた。次に、溶液0.5mlを膜表面に広げ、減圧して溶液を膜を通して吸い込んだ。粘稠溶液の大部分はすべてではないが膜を通過したが、膜表面にも残った。試料を約50℃で35分間乾燥させ、秤量した。電解質の取り込みによる質量増加は、溶液濃度が5重量%で0.20g/cm3から、10重量%で0.36g/cm3、20重量%で0.71g/cm3と単調増加が見られた。20重量%の試料については表面に残留した過剰分を除去しなかったので、密度増加の一部は表面を覆って残留した乾燥フィルムによるものである。
【0100】
実施例9では、実施例6に記載のものと同じ機器でTIPS膜BをNafionの5重量%溶液で充填した。試料の直径は3.15cmであった。溶液15滴を第1のディスクに加えた。溶液がTIPSをぬらすまで2分間かけてから、10秒間減圧した。第2のディスクは、17的を3分間かけて加え、50秒間減圧した。乾燥後、密度増加を測定すると、それぞれ0.26g/cm3および0.35g/cm3であった。
【0101】
実施例10では、TIPS膜Cの直径3.81cmの2つのディスクに5重量%Nafion溶液を吸いこませた。15滴を各面に加え、1分間かけて表面をぬらし、次に第1の試料では17秒間減圧し、第2の試料は50秒間減圧した。試料を50℃で25分間乾燥させた。密度増加はそれぞれ0.06g/cm3および0.054g/cm3であった。
【0102】
実施例11では、TIPS膜Aのそれぞれ直径3.51cmのディスク3枚について、5重量%溶液と実施例6の減圧吸引方法を用いて、Nafionを部分的に充填した。最初のディスクは、15滴ずつ2回に分けて全量1mlの溶液を通過させた。第2のディスクは2mlの溶液を通過させ、第3のディスクでは3ml使用した。乾燥後、それぞれの密度増加は0.298g/cm3、0.301g/cm3、および0.303g/cm3であった。実施例11は、減圧法を用いて密度が増加し、その結果吸着したアイオノマー量は膜を通過させる電解質溶液の全体積とは無関係となることを示している。
【0103】
実施例12では、実施例6と同じ手順を使用して、TIPS膜Aの2枚の2.5cmディスクに、20重量%溶液からp−STSIを充填した。表面に溶液6滴を加え、2分間減圧した。乾燥後、密度の変化は0.17g/cm3および0.13g/cm3であり、平均は0.15g/cm3であった。
【0104】
実施例13〜19
実施例13〜19では、液圧プレスによる正圧を使用した多孔質膜への電解質の部分的充填を説明する。液圧プレス法では、室温機械プレスを使用して、高粘度(粘稠)電解質溶液を多孔質膜に液圧により強制的に通す。
【0105】
以下の実施例では、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム2枚の中央に直径3.7cmの穴を切り取ってマスクを作製した。多孔質膜材料をこれら2枚のPETマスクの間にはさんだ。こうして得たサンドイッチ構造を、PETマスクの穴で定まる体積(約0.1ml)の中に電解質溶液を加えた後で、厚さ0.025cmのPTFEシート2枚の間にさらにはさんだ。このサンドイッチ構造をステンレス鋼シムストックの間に置いた。この組立品全体を液圧プレス(Fred S.Carver,Inc.(Wabash,IN)製造)の圧盤の間に置き、室温で3〜5分間3.2トンの力をかけた。加圧後、過剰の溶液を膜表面からふき取り、膜を約48℃のエアオーブンで12分間乾燥した。直径を測定したEディスクを部分充填膜試料の中央部から打抜き、充填された電解質の質量を秤量して求めた。
【0106】
実施例13では、5重量%溶液と上記手順によって、TIPS膜Bの2つの試料にNafionを充填し、得られた膜から直径3.15cmのディスクを打抜いた。乾燥後の密度増加は0.11g/cm3および0.076g/cm3であり、平均は0.093g/cm3であった。
【0107】
実施例14では、5重量%溶液と実施例13と同じ手順によって、TIPS膜Cの2つの試料にNafionを充填し、得られた膜から直径3.81cmのディスクを打抜いた。乾燥後の密度増加は0.037g/cm3および0.045g/cm3、平均は0.041g/cm3であった。
【0108】
実施例15では、実施例13に記載の液圧プレス法を使用して、20重量%を70/30のメタノール−水混合物に溶解した溶液よりp−STSIをTIPS膜Bの3試料に充填した。溶液3〜4滴を各側に加え、3分間3トンの力をかけて、次に表面から過剰の電解質をふき取った後で、約50℃で20分間乾燥した。得られた膜から、直径3.25cmのディスク3枚を打抜いた。密度増加は、0.049g/cm3、0.014g/cm3、および0.060g/cm3であり、平均増加量は0.041g/cm3であった。
【0109】
実施例16では、20重量%のp−STSIを水のみに溶解した溶液を各側に4滴ずつしようして実施例15の手順を繰り返した。過剰分をふき取って、試料を55〜60℃で23分間乾燥し、得られた膜から直径3.81cmのディスクを切り出した。密度増加は、0.028g/cm3および0.19g/cm3であり、平均増加量は0.11g/cm3であった。
【0110】
実施例17および18は、実施例17ではTIPS膜Cの3つの試料ディスクに20重量%のp−STSIを70/30MeOH/H2Oに溶解した溶液を使用し、実施例18では2つの試料ディスクにp−STSIを純水に溶解した溶液を使用して実施例15および16の手順を繰り返した。最初の3つのディスクの密度増加は0.098g/cm3、0.091g/cm3、および0.149g/cm3であり、平均は0.113g/cm3であった。次の2つの試料の増加は、0.25g/cm3および0.088g/cm3であり、平均は0.17g/cm3であった。
【0111】
実施例19では、厚さ50μmのPoreflonTMの直径3.85のディスクを実施例13の手順を用いて充填した。入手した時のPoreflonの多孔度をGurley測定によって求めると、17.5±0.5sec/100ccの値を得た。Nafion 1100の14重量%溶液15滴を膜の一面(厚さ100μmのPETマスクの開口部で定まる体積内)に加え、室温で4分間2トンの力をかけた。過剰のNafionはふき取り、膜を49℃で15分間乾燥させた。密度増加は0.22g/cm3であった。充填した試料のGurley数を測定すると900sec/4ccを超えたが、これは22,500sec/100ccに対応する。
【0112】
密度増加データのまとめ
実施例1〜19では、4つの充填手順によって種々の多孔質膜に組み込まれた電解質により密度が増加することを示している。以下の表Iに、Nafion電解質に4種類の異なる多孔質膜と4種類の異なる方法を使用した実施例(後述の実施例20を含む)の平均の結果をまとめる。以下の表IIに、pSTSI電解質に3種類の異なる多孔質膜と3種類の異なる方法を使用した実施例(後述の実施例24を含む)の平均の結果をまとめる。
【表1】
【表2】
【0113】
実施例20〜25
以下の実施例20〜25では、膜の部分充填の後に、部分充填膜に電極粒子を押し付けることによる膜電極の形成を説明する。実施例20〜25で使用した電極粒子は、前述したようなナノメートルサイズのウィスカー様支持体上に相似被覆したPtなどの触媒材料からなるナノ構造触媒粒子であり、米国特許第5,338,430号やその他の特許に記載されており、その記載内容を本明細書に引用する。ここで使用したウィスカーは、ポリイミドなどの基材上に先に真空コーティングしたペリレンレッド(PR149、前述の通り)の薄膜(約1000〜1500オングストローム)の減圧焼きなましによって作製した。長さ約1〜2μmのウィスカー様支持体は成長によって、均一な断面の大きさ約30〜60nm、末端は基材上に配向して密集した土台(約30〜40/μm2)からなる密集したフィルムを形成し、ポリマー電解質表面に移動して後述のように触媒電極を形成した。このナノ構造触媒電極は非常に大きな表面積を有し、そのため燃料および酸化体ガスと容易に接近できる。
【0114】
実施例20
実施例20では、7.6×7.6cmの正方形の厚さ100μmのPETフィルム2枚の中央から直径3.7cmの穴を切り取ってマスクを作製した。7.6cm×7.6cmのTIPS膜A多孔質膜材料を、2枚のPETマスクの間にはさんだ。25重量%のNafion 1100溶液6〜7滴をPETマスク穴で定められる容積(約0.1ml)に加えた後で、このサンドイッチ構造を厚さ0.025cmのTeflonシート2枚の間にさらにはさんだ。25重量%のNafion溶液は、購入した5重量%溶液の溶媒を蒸発させて得た。このサンドイッチ構造をステンレススチール製シムストックの間に置いた。この組立品全体をCarverプレスの圧盤の間において、室温で5.0分間3.2トンの力をかけた。約30滴/mlであると仮定して、すべての空隙に入ることができるのであれば、6〜7滴で膜の空隙体積の70%を充填するために必要な量の約2倍を超えるはずである。加圧後、過剰のNafion溶液を撒く表面からふき取り、膜を約48Cのエアオーブンで12分間乾燥した。直径3.5cmのディスクを充填した膜の中央から打抜いて、取り込まれたNafion質量を秤量して求めると2.88mg/cm2または0.32g/cm3であった。
【0115】
入手した状態でのTIPS膜AのGurley数を測定すると、8sec/100ccであった。充填した膜のGurley数を測定するために、Carverプレスト14%Nafion溶液を使用し上記手順と同様にして部分的にTIPS膜Aの第2の試料を部分的に充填した。電極を取り付けなかったこの試料のGurley数を測定すると、900sec/3ccを超え、30,000sec/100ccに対応する値となった。
【0116】
次に、電極層と、ICMと、第2電極層とを含む3層膜電極アセンブリを、熱および圧力を利用してポリイミド基材のナノ構造電極粒子を部分充填膜の両面に移動させることによって作製した。充填した膜ディスクを、ポリイミドに支持されたナノ構造要素のナノ構造フィルムの2枚のシートの間に置いた。これらの要素は、PR149ウィスカー上に、質量から計算して3000オングストロームの厚さになるNiを最初に、1000オングストロームの厚さになるPtを次にコーティングしたものであり、部分充填膜と接触するように配置させる。コーティングしていないポリイミドとPTFEシートのさらなる層を、サンドイッチ構造のどちらかの側にもさらに重ねて、圧力が均等に分布するようにして、最後に1組のステンレススチール製シムをこの組立品の外側に配置する。得られた組立品を低圧力の機械プレス(Carver 6” press)の加熱した圧盤のあいだに置き、数分間かけて99℃と平衡状態となるようにして、15.1MPa(0.17トン/cm2)の圧力を90秒間かけて、圧力をかけたまま圧盤を数分間水冷して、次に取り出した。次に、最初のポリイミド基材を膜から剥離した。触媒粒子の移動は完全で非常に均一であった。
【0117】
図3は、実施例20で使用した入手した状態のTIPS膜A材料の表面を表面から見た状態で2000倍で撮影した走査電子顕微鏡写真であり、多孔度が大きいことが分かる。
【0118】
図4は、MEAの断面を1000倍で撮影した走査電子顕微鏡写真であり、膜電極アセンブリの厚さは約33μmとなり、最初の膜厚さ約89μmよりも薄くなったことが分かる。
【0119】
図5は、電極の片側を5000倍で撮影した走査電子顕微鏡写真であり、電極粒子が膜に埋め込まれているのがわかる膜の破損した端から、最初のポリプロピレンマトリックスの微小繊維の特性の形跡の一部が見られる。
【0120】
比較のため、Nafionを充填しなかった膜の一部に電極粒子を充填した。図6は、4000倍で撮影した走査電子顕微鏡写真であり、この部分の厚さは約15μmに減少し、最初の厚さの約1/6となった。対照的に、部分充填工程後には膜は最初の厚さの約1/3にしか圧縮されなかった。
【0121】
実施例21
実施例21では、7.6×7.6cmの正方形で厚さ50μmポリイミドフィルム2枚について、2.23cm×2.23cmの正方形の穴(面積5cm2)をそれぞれの中央から切り取ってマスクを作製した。7.6×7.6cmのTIPS膜A多孔質膜材料をこれら2枚のポリイミドマスクの間にはさんだ。正方形の穴で定められる体積に14重量%のNafion 1100溶液6〜7滴を加えた後、このサンドイッチ構造をポリイミドの切り取っていないシート2枚の間にさらにはさみ、最後に厚さ0.025cmのTeflonシート2枚の間にはさんだ。このサンドイッチ構造を、ステンレススチール製シムストックの間に置き、この組立品全体をCarverプレスの圧盤の間に置いた。3.2トンの力を室温で3分間かけた。加圧後、外側のポリイミド層を取り外して、正方形の穴で定められた領域のTIPS膜表面の過剰のNafion溶液をふき取り、このTIPSは最初のポリイミドマスクにはさんだままにした。この組立品を約48Cのエアオーブンで25分間乾燥した。
【0122】
ポリイミド基材上に支持された電極粒子で構成されるナノ構造フィルムを使用してMEAを作製した。実施例21で使用したナノ構造電極粒子は、実施例20の場合のようにポリイミド基材に支持されたものであったが、質量から計算して1000オングストロームであるPtをNiの代わりにコーティングし、継ぎもPtをコーティングした。面積5cm2の正方形のポリイミドに支持されたナノ構造フィルムを、各マスクの正方形の穴の中に置いた。この組立品を210〜215℃に予備加熱し、14.2MPa(0.12トン/cm2)で1分間加圧し、加圧のまま冷却した。充填した膜の5cm2の領域のPtコーティングナノ構造が残るようにウィスカーを支持するポリイミド基材を剥離して除去した。SEM顕微鏡写真から、圧縮した3層構造MEAの厚さは31μmであることが分かり、加圧工程によりナノ構造電極粒子が充填膜に表面に埋め込まれていることが実証された。
【0123】
このMEAから燃料電池を作製するために、3層MEAの各5cm2電極領域を、燃料電池電極バッキング材料としてEtek,Inc.(Natick,MA)より入手できる炭素のみのELATTM材料の同じ大きさの正方形で覆った。ELATは、炭素織布とカーボンブラック/Teflonコーティングで作られた複合材料である。得られた5層のセルを、Fuel Cell Technologies,Inc.(Albuquerque,NM)より供給されMEAの大きさおよび形状に合うように作られた燃料電池試験取付具に取り付けた。Fuel Cell Technologies,Inc.の燃料電池試験装置を使用して、それぞれの電極にH2/酸素気流を当ててこの5層MEAを試験した。
【0124】
図7の曲線Aは、水素圧および酸素圧がそれぞれ63絶対kPa(9psig)および327絶対kPa(18psig)、セル温度40℃、流速200sccmにおいてこの実施例の燃料電池アセンブリが発生した電圧対電流密度の初期分極曲線を示している。
【0125】
実施例22
実施例22では、実施例21の記載と同じNafion部分充填TIPS膜A膜と、同じ種類のナノ構造電極と、同じ手順を使用して3層MEAを作製した。しかし、ナノ構造電極を取り付ける前に、ポリイミドマスクの5cm2の正方形の穴から露出した充填膜の各領域に5重量%のNafion溶液をさらに1滴ずつ加えて、40℃で15分間乾燥させた。実施例21のようにしてPtをコーティングした電極粒子を取り付けた。この場合、Ptをコーティングした電極粒子は、充填膜の表面に残った溶液キャストNafionの薄い表層に埋め込まれる。1mlが30滴であると仮定すると、キャストNafion層の乾燥厚さは約3μmとなる。ナノ構造電極粒子は、長さ約1〜2μmで幅約30〜60nmである。
【0126】
この3層MEAについて、ELAT電極バッキングを取り付けた燃料電池MEAとして、実施例21に記載のように試験した。図7の曲線Bは、水素/酸素圧が170/205絶対kPa(10/15psig)、セル温度70℃、流速200sccmにおける分極曲線の例を示している。試験終了後、この実施例のMEAを完全に乾燥させた。その厚さは25μmであり、実施例21の膜よりもさらに圧縮されていることを示している。
【0127】
実施例23〜25
実施例23〜25では、2種類の異なる充填方法でp−STSI電解質を充填したTIPS膜Aを用いてMEAを作製し、そのMEAを燃料電池で評価した。これらの実施例では、膜の形態の予想外の変化が示される。
【0128】
実施例23では、20重量%のp−STSIをMeOHおよび水の70/30v/v混合物に溶解した溶液を調製した。吸引のためのVenturi空気装置をゴムホースで接続した250ml真空フラスコの上部に挿入したCoors D37セラミックろ過用漏斗の平らな底部の穴を覆うようにTIPS膜Aの直径2.5cmのディスクを載せた。TIPSディスクに溶液6滴を加え、Venturi装置に十分な空気圧をかけることで溶液を吸引して膜を通過させると、この工程は約8秒かかった。乾燥後ディスクの中央の厚さは約75μmであった。図9は、膜の上面を1000倍に拡大して撮影した走査電子顕微鏡写真である。p−STSIの部分的充填の後で、なお開放された間隙が膜にかなりの量で存在することが分かる。
【0129】
110℃で1分間予備加熱の後、1分間加圧し、加圧状態で4分間冷却することで18.9MPa(0.16トン/cm2)の圧力を用いて、実施例21に記載のものと同様のPtをコーティングした電極粒子を部分充填膜に押込んだ。図10は1000倍に拡大して撮影した断面の走査電子顕微鏡写真であり、MEAの厚さが初期の89μmから59μmに減少していることを示している。驚くべきことに、もはや膜は均一であり、最初の孔隙はまったく見られない。この均一性は10,000倍の図11でもなお観察できる。図11では、膜表面に埋め込まれたナノ構造電極粒子も見られる。ナノ構造電極粒子を埋め込んでMEAを作製する方法が膜内部の形態を大きく変化させたということは予想外であった。NafionTM溶液からコーティングされたTIPS膜は多孔質膜の微小繊維上にコーティングされたアイオノマーを有するものとしてSEMで観察されるが、p−STSIの場合は孔隙を優先的に充填し、また孔壁の表面も濡らしていると思われる。
【0130】
実施例24では、実施例11に記載の液圧プレス法およびPETマスクを使用したことを除けば実施例4に記載のようにして、TIPS膜A膜の2.5cmのディスクにp−STSI溶液を部分的に充填した。PETマスクの2.5cm開口部の両側に溶液5滴を加えて露出された膜をぬらし、室温で3トンの圧力を3分間かけた。表面の過剰分をふき取り、試料を50℃のエアオーブンで30分間乾燥した。充填されたp−STSIの質量を求めると、1.1mg/cm2または0.15g/cm3であった、実施例23と同様の条件で84MPa(0.71トン/cm2)を使用し、実施例23と同様のPtをコーティングしたナノ構造フィルムを埋め込むことでMEAを作製した。図12は、断面を撮影した走査電子顕微鏡写真であり、圧縮されたMEAの厚さが28μmであることを示している。図12は、図10のように内部膜構造が外部層に沿って実質的に均一であるように見えるが、多孔質構造の一部が中央部分に明らかに存在し、これは電解質の浸透が不十分であるためと思われる。しかし、膜を横断する孔は図12には見られない。
【0131】
実施例25では、実施例24と同じ充填手順と、実施例24と類似の電極取り付け手順を実施した。電極の取り付けは、5分間の予備加熱の後、106.5MPa(0.9トン/cm2)の圧力を230°Fで1分間かけ、加圧下で5分間冷却することで行った。燃料電池MEA試料は、のポリイミドマスクの面積5cm2の開口部の中にはさんで作製した。燃料電池MEA試料について実施例20に記載の試験を行った。図8は、50℃および5psigのH2/O2圧で得た分極曲線を示している。
【0132】
当業者であれば本発明の種々の修正および変更は、本発明の範囲および原理から逸脱することなしに明らかになるであろうし、本発明が上述の説明的実施例によって不当に制限されるものではないことを理解できるであろう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合膜を含む膜電極アセンブリの作製方法に関し、プロトン交換膜燃料電池、電解槽、塩素アルカリ分離膜、センサーなどの電気化学的装置への使用に適している。
【背景技術】
【0002】
プロトン交換膜燃料電池、電解槽、塩素アルカリ分離膜などの電気化学的装置は、膜電極アセンブリ(MEA)から作られてきた。このようなMEAは、1つ以上の電極部分を含み、これらはイオン伝導膜と接触するPtまたはPdなどの触媒的電極材料を含む。イオン伝導膜(ICM)は、電気化学電池において固体電解質として使用される。代表的な電気化学電池では、ICMは、カソード電極およびアノード電極と接触しており、アノードで生成するプロトンなどのイオンをカソードに移送し、電極と接続した外部回路に電子流を流す。
【0003】
MEAは水素/酸素燃料電池に使用される。水素/酸素燃料電池に使用される代表的なMEAは、第1Pt電極部分と、プロトン交換電解質を含むICMと、第2Pt電極部分とを含むことができる。このようなMEAは、次の反応に示すように、水素ガスの酸化による電気の発生に利用することができる:
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,547,551号公報
【特許文献2】米国特許第4,812,352号公報
【特許文献3】米国特許第5,039,561号公報
【特許文献4】米国特許第5,176,786号公報
【特許文献5】米国特許第5,336,558号公報
【特許文献6】米国特許第5,338,430号公報
【特許文献7】米国特許第5,238,729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
代表的な水素/酸素燃料電池では、膜によって伝導するイオンはプロトンである。重要なことは、ICMは電子/電流を伝達しないということであり、これは電子/電流が伝達すると燃料電池が実用的でなくなるからであり、これらは水素や酸素などの燃料ガスに対して実質的に不浸透性でなければならない。MEA全体における反応で使用されるガスのもれが、反応物質の浪費および電池の非効率化につながる。このためイオン交換膜は、反応に使用するガスに対して低浸透性または不浸透性でなければならない。
【0006】
またICMは塩素アルカリ電池への使用も見いだされており、ここではブライン混合物を分離して塩素ガスと水酸化ナトリウムが生成する。この膜は、ナトリウムイオンを選択的に輸送するが、塩化物イオンは通さない。ICMは、拡散透析、電気透析、ならびに浸透気化および気相浸透分離などの用途にも有用となりうる。大部分のICMは陽イオンまたはプロトンを輸送するが、OH-などの陰イオンを輸送できる膜も公知であり市販されている。
【0007】
市販のICMは、燃料電池に要求される性能を完全に満たしているとは言えない。例えば、SO3-陰イオンを有するペルフルオロカーボン材料であるNafionTM膜(DuPont Chemicals,Inc.,Wilmington,DE)は本質的に弱い。一般にNafionTM膜は50μm未満の厚さで使用される。理由の1つは、このような薄さのNafionTM膜は補強が必要となり、そのため全体の厚さが増加しまた膜の電気抵抗も増加することによって薄膜の効果が損なわれることである。NafionTM膜をより低い当量で使用するとより低い電気抵抗が得られるが、より低い当量の膜は構造的に弱く、さらに補強の必要性もなくならない。
【0008】
補強した膜を作製するための1つの手段は、イオン伝導性材料を多孔質不活性補強膜に吸収または注入することによって複合膜を作製することである。例えば、Gore−SelectTM膜(W.L.Gore & Associates,Inc.,Elkton,MD)は、イオン伝導性またはイオン交換液体を含浸させたポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)膜を含む。米国特許第5,547,551号では、NafionTM溶液を全体に含浸させた燃料電池用のPTFE膜について記載されている。ポリオレフィン類およびポリ(フッ化ビニリデン)などの他の不活性膜が、イオン伝導電解質に適した担体であると触れられている。
【0009】
多孔質ウエブに固定させた電解質を含む複合プロトン交換膜が、燃料電池に使用した場合に1構成成分膜を上回る性質を有するものとして現れた。この複合膜は、より薄くより強靭に作製することができ、同時により少ない電解質で同等の伝導性が得られ、水に飽和させた後でもより優れた寸法安定性を示す。しかしながら、使用される膜が最初に多孔質であるため、最終的な膜のガス透過性は、膜に電解質を満たす度合にある程度依存する。
【0010】
これらの複合膜は、Pt微粉または炭素に担持されたPt触媒のいずれかの分散体の塗布された形態の従来型触媒電極を使用した燃料電池MEAに使用される。これらの従来型触媒は、複合膜、あるいは膜近傍に配置した電極バッキング層に、インクまたはペーストのコーティング層として設けられる。通常このインクまたはペーストはアイオノマーの形態の電解質を含む。
【0011】
カソードやアノードなどの電極を形成するために、触媒を、電解質にコーティングするあるいは他の方法で電解質と接触させるために種々の構造または手段が使用されている。これらの「膜電極アセンブリ」(MEA)は:(a)ICM表面に付着させた多孔質金属皮膜あるいは金属粒子または触媒粒子担持炭素の平面状分散体;(b)ICMに付着させるか埋め込ませた金属グリッドまたはメッシュ;または(c)ICM表面に組み込んだ触媒活性を有するナノ構造複合要素を含むことができる。
【0012】
ナノ構造複合物品はすでに開示されている。例えば、米国特許第4,812,352号、第5,039,561号、第5,176,786号、第5,336,558号、第5,338,430号、および第5,238,729号を参照にされたい。米国特許第5,338,430号は、固体ポリマー電解質に組み込まれたナノ構造電極が金属微粉または金属触媒担持炭素を使用した従来型電極よりも優れた特性を示し、例えば組み込まれた電極材料の保護、電極材料のより効率的な使用、および向上した触媒活性を備えることを開示している。
【課題を解決するための手段】
【0013】
簡潔に言うと、本発明は、多孔質膜にイオン伝導性電解質を部分的に充填することで部分充填膜を作製し、次にこの部分充填膜と電極粒子を互いに圧縮することで部分充填膜から空隙体積をなくし、電極粒子を部分充填膜に埋め込むことによる、多孔質膜とイオン伝導性電解質の両方を含んだ複合膜を含む膜電極アセンブリの作製方法を提供する。本発明の膜電極アセンブリは、プロトン交換膜燃料電池、電解槽、塩素アルカリ分離膜、センサーなどの電気化学的装置への使用に適している。
【0014】
別の態様では、本発明は、式CH2=CH−Ar−SO2−N-−SO2(C1+nF3+2n)(式中nは0〜11、好ましくは0〜3、最も好ましくは0であり、Arは任意の置換または未置換アリール基であり、好ましくは分子量が400未満であり、最も好ましくは2価のフェニル基である)を有する1種類以上のモノマーを含む重合生成物を含む複合膜を提供する。
【0015】
さらなる態様では、本発明は、上述の膜電極アセンブリを少なくとも1つ含む燃料電池アセンブリを提供する。
【0016】
さらに別の態様では、本発明は前述のMEAを少なくとも1つ含む電気化学的装置を提供する。
【0017】
本発明の方法では、多孔質膜にイオン伝導性電解質を部分的に充填して部分充填膜を作製する。次にこの部分充填膜を電極粒子に押し付けて、電極粒子を部分充填膜中に埋め込む。この加圧工程では充填工程で残った空隙体積の排除も行われ、このため従来検討されたものよりも薄く多孔性の低い複合膜が得られることが分かった。好ましい実施例では、本発明は、ナノ構造触媒粒子であってもよい電極粒子を埋め込み複合膜も含む膜電極アセンブリの作製方法を提供する。
【0018】
さらに、ある状況では、充填された多孔質膜の空隙だけでなく、膜の多孔質自体も消滅することが観察された。走査型電子顕微鏡によると、得られた膜は10,000倍の倍率でさえ均一に見えた。従って、別の好ましい実施例では、本発明は、均一で一様な構造となった、すなわち最初の多孔質膜の多孔質構造が消滅した複合膜を含む膜電極アセンブリの作製方法を提供する。
【0019】
さらに、得られたMEAは電気化学電池として優れた機能を示した。
【0020】
本明細書において: 「複合膜」は、1種類以上の材料で構成され、多孔質膜材料とイオン伝導性電解質材料の両方を含む膜を意味し;
「膜電極アセンブリ」は、電解質と、膜と隣接する少なくとも1つだが好ましくは2つ以上の電極とを含む膜を含む構造体を意味し;
「置換した」とは、化学種にとって、希望する生成物に干渉しない従来の置換基を有することを意味し;
「ナノ構造要素」は、その表面の少なくとも一部に導電性材料を含む針状で不連続な超微細構造を意味し;
「針状」は、長さと断面の幅の平均との比が3以上であることを意味し;
「不連続」は、独立したものの別々の要素であるが、要素が互いに接触していることを除外せず;
「超微細」は、約1μmよりも小さい寸法を少なくとも1つ有することを意味し;
「Gurley数」は、ガスの通過に対する膜の抵抗性の尺度を意味し、ASTM D726−58,Method Aに規定され後に詳述する規格条件下で膜の規格面積を所与の体積のガスが通過するために必要な時間として表現され;
「孔径」は、ASTM F−316−80に規定され後に詳述するように、膜の最も大きい孔の大きさを意味する。
【0021】
電極アセンブリに使用するための、強靭で薄くガス不浸透性のより高い膜電極の作製方法を提供することが本発明の利点である。特に、より薄くより徹底的にナノ構造電極が充填された複合膜を含む膜電極の作製方法を提供することが本発明の利点である。さらに、可視の多孔質構造がなくナノ構造電極を有する薄い非多孔質複合膜を含む膜電極の作製方法を提供することが本発明の利点である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による、電解質溶液への浸漬および乾燥の工程を、3つの膜試料のそれぞれで繰り返した後の平均質量のグラフである。
【図2】本発明による、電解質溶液への浸漬および乾燥の工程を、3つの膜試料のそれぞれで繰り返した後の平均質量のグラフである。
【図3】本発明の方法において有用な膜の表面を2,000倍に拡大して撮影した走査電子顕微鏡写真である。
【図4】本発明のMEAの断面を1,000倍に拡大して撮影した走査電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明のMEAの断面を5,000倍に拡大して撮影した走査電子顕微鏡写真である。
【図6】電解質を加えなかった比較例のMEAの断面を4,000倍に拡大して撮影した走査電子顕微鏡写真である。
【図7】本発明の2つの燃料電池アセンブリによって生成した電圧対電流密度の分極曲線のグラフである。
【図8】本発明の燃料電池アセンブリによって生成した電圧対電流密度の分極曲線のグラフである。
【図9】本発明の方法に有用な膜の表面を1,000倍に拡大して撮影した走査電子顕微鏡写真である。
【図10】本発明のMEAの断面を1,000倍に拡大して撮影した走査顕微鏡写真である。
【図11】本発明のMEAの断面を1,000倍に拡大して撮影した走査顕微鏡写真である。
【図12】本発明のMEAの断面を2,520倍に拡大して撮影した走査顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の方法では、多孔質膜にイオン伝導性電解質を部分的に充填して部分充填複合膜を形成する。次にこの部分充填膜に電極粒子を加えて圧縮して、膜からさらに空隙体積をなくし、電極粒子を膜に埋め込む。
【0024】
任意の好適な多孔質膜を使用することができる。本発明の補強膜として有用な多孔質膜は、少なくとも1つの固化可能なICMを注入または埋め込み可能である十分な多孔度を有し、かつ電気化学電池の操作条件に耐える十分な強度を有する任意の構造のものであってよい。好ましくは、本発明で有用な多孔質膜には、ポリオレフィン、またはハロゲン化、好ましくはフッ素化したポリ(ビニル)樹脂などの、電池内の条件に不活性なポリマーが含まれる。発泡PTFE膜も使用することができ、例えば住友電工(東京)製のPoreflonTMや、Tetratec,Inc.(Feasterville,PA)製のTetratexTMを使用できる。
【0025】
より好ましくは、本発明の多孔質膜は、米国特許第4,539,256号、第4,726,989号、第4,867,881号、第5,120,594号、および第5,260,360号などに記載される熱誘発相分離(TIPS)法で作製された微孔質フィルムを含む。TIPSフィルムは、フィルム、膜、またはシート材料の形態の熱可塑性ポリマー粒子において、空間があきランダムに分散し等軸で不均一な形状という多様性を示す。粒子によって定まる微孔は、ICMが組み込まれるために十分な大きさであることが好ましい。図3および9は、2種類のこのようなTIPS膜の多孔質表面のそれぞれ倍率2000倍および1000倍の走査電子顕微鏡写真である。
【0026】
TIPS法によるフィルムの作製に適したポリマーとしては、熱可塑性ポリマー、感熱性ポリマー、および混合するポリマーが相溶性である限りはこれらのポリマーの混合物が挙げられる。超高分子量ポリウレタン(UHMWPE)などの感熱性ポリマーは、直接溶融加工することはできないが、溶融加工に十分な粘度まで低下させる希釈剤の存在下では溶融加工が可能である。
【0027】
好適なポリマーとしては、例えば、結晶性ビニル重合体、縮合重合体、および酸化重合体が挙げられる。代表的な結晶性ビニル重合体としては、例えば、高密度および低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ(メタクリル酸メチル)などのポリアクリレート類、ポリ(フッ化ビニリデン)などのフッ素含有ポリマーなどが挙げられる。有用な縮合重合体としては、例えば、ぽり(エチレンテレフタレート)やポリ(ブチレンテレフタレート)などのポリエステル類、NylonTM系の多くの種類を含むポリアミド類、ポリカーボネート類、およびポリスルホン類が挙げられる。有用な酸化重合体としては、例えば、ポリ(フェニレンオキシド)とポリ(エーテルケトン)が挙げられる。ポリマーおよびコポリマーの混合物も、本発明において有用となりうる。本発明の補強膜として有用なポリマーとしては、加水分解および酸化に対して抵抗性であるので、ポリオレフィンおよびフッ素含有ポリマーなどの結晶性ポリマーが挙げられる。好ましいポリオレフィンとしては、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー、およびポリ(フッ化ビニリデン)が挙げられる。
【0028】
任意の好適なイオン交換を使用することができる。電解質は、電気化学電池の操作条件下で固体またはゲルであることが好ましい。本発明において有用な電解質としては、ポリマー電解質、およびイオン交換樹脂などのイオン伝導性材料を挙げることができる。電解質は、プロトン交換膜燃料電池への使用に適したプロトン伝導性アイオノマーが好ましい。
【0029】
本発明で有用なイオン伝導性材料は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩あるいはプロトニック酸と、ポリエーテル、ポリエステル、またはポリイミドなどの極性ポリマー1種類以上との複合体、あるいはアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩あるいはプロトニック酸と、上記極性ポリマーをセグメントとして含む網状ポリマーまたは架橋ポリマーとの複合体であってもよい。有用なポリエーテルとしては:ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリエチレングリコールジエーテル、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールモノエーテル、およびポリプロピレングリコールジエーテルなどのポリオキシアルキレン類;これらのポリエーテル類のコポリマー、例えばポリ(オキシエチレン−コ−オキシプロピレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン−コ−オキシプロピレン)グリコールモノエーテル、およびポリ(オキシエチレン−コ−オキシプロピレン)グリコールジエーテル;エチレンジアミンと上記ポリオキシアルキレン類との縮合生成物;上記ポリオキシアルキレン類のリン酸エステル、脂肪族カルボン酸エステル、または芳香族カルボン酸エステルなどのエステル類が挙げられる。ポリエチレングリコールとジアルキルシロキサン、ポリエチレングリコールと無水マレイン酸、あるいはポリエチレングリコールモノエチルエーテルとメタクリル酸などのコポリマーは、十分なイオン伝導性を示すことが当技術分野において公知であり、本発明のICMに有用となりうる。有用な複合体形成試薬としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ならびにプロトニック酸およびプロトニック酸を挙げることができる。上記塩の有用な対イオンとしては、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、フッ化ホウ酸イオンなどを挙げることができる。限定するものではないが、これらの塩の代表例としては、フッ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウム、過塩素酸リチウム、チオシアン酸ナトリウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、フッ化ホウ酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、リン酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、テトラフルオロエチレンスルホン酸、ヘキサフルオロブタンスルホン酸などが挙げられる。
【0030】
本発明における電解質として有用なイオン交換樹脂としては、炭化水素型およびフルオロカーボン型樹脂が挙げられる。炭化水素型イオン交換樹脂としては、フェノールまたはスルホン酸型樹脂;フェノール−ホルムアルデヒド、ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー類、スチレン−ブタジエンコポリマー類、スチレン−ジビニルベンゼン−塩化ビニルターポリマー類、などの縮合樹脂を挙げることができ、スルホン化によって陽イオン交換能が付与されるか、あるいはクロロメチル化の後対応する第4級アミンに転化させることで陰イオン交換能が付与される。
【0031】
フルオロカーボン型イオン交換樹脂としては、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロスルホニル=エトキシビニルエーテルまたはテトラフルオロエチレン−ヒドロキシル化(ペルフルオロビニルエーテル)コポリマーの水和物を挙げることができる。酸化および/または酸に対する耐性が望まれる、例えば燃料電池のカソードのような場合は、スルホン酸、カルボン酸および/またはリン酸の官能基を有するフルオロカーボン型樹脂が好ましい。通常、フルオロカーボン型樹脂は、ハロゲン、強酸および強塩基による酸化に対して優れた抵抗性を示し、本発明で有用な複合電解質膜に好ましい場合もある。スルホン酸官能基を有するフルオロカーボン型樹脂の種類の1つとして、NafionTM樹脂(DuPont Chemicals(Wilmington,DE)製、ElectroChem,Inc.(Woburn,MA)とAldrich Chemical Co.,Inc.(Milwaukee,WI)とから入手できる)が挙げられる。本発明において有用となりうる他のフルオロカーボン型イオン交換樹脂としては、アリールペルフルオロアルキルスルホニルイミド陽イオン交換基を含み、一般式(I):CH2=CH−Ar−SO2−N-−SO2(C1+nF3+2n)(式中、nは0〜11、好ましくは0〜3、最も好ましくは0であり、Arは任意の置換または未置換アリール基であり、好ましくは単環式であり、最も好ましくは二価のフェニル基であり、ここではフェニルと呼ぶ)を有するオレフィン類の(コ)ポリマーが含まれる。Arは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン、フルオレン、シクロペンタジエン、およびピレンなどの任意の置換または未置換芳香族部分を含むことができ、ここでこの芳香族部分は分子量が好ましくは400以下、より好ましくは100以下である。このような樹脂の1つにp−STSIがあり、これは式(II):スチレニル−SO2N-−SO2CF3を有するスチレントリフルオロメチルスルホニルイミド(STSI)のフリーラジカル重合より誘導されるイオン伝導性材料である。式中n=0でArが未置換フェニルであるこの例が、式Iによる最も好ましい例である。
【0032】
好ましくは、電解質はポリマー樹脂である。実施例の1つでは、最も好ましい電解質はNafionTMである。複合膜の多孔質構造をなくした場合の別の実施例では、好ましい電解質は上記式(I)によるアリールペルフルオロアルキルスルホニルイミド基を含有するポリオレフィン類であり、最も好ましい電解質はp−STSIである。
【0033】
多孔質膜に電解質を部分的に充填するためには任意の適切な手順を使用することができる。実施例で説明する「複数回浸漬」法では、多孔質膜を比較的低濃度の電解質溶液に短時間浸漬し、乾燥する、という工程を複数回繰り返す。浸漬は、膜の重量が安定状態となりもはや電解質を取り込まなくなるまで繰り返すことができる。好ましくは、浸漬は少なくともこの時点まで繰り返すが、この時点よりも前に終了することもできる。任意の濃度の電解質溶液を使用することができるが、非常に低濃度であることと浸漬の反復回数の増加が必要となるか、または電解質があまり充填されない結果となることがある。約5重量%の溶液が好ましい。膜は、任意の手段で乾燥させることができ、エアオーブン中などの高温下で行うことが好ましい。乾燥温度は40℃〜60℃の間が好ましい。何らかの理論に制限されるものではないが、電解質ポリマーの多孔質マトリックス微小繊維への吸着は、溶媒蒸発工程中に溶液の濃度が上昇することが主な原因となって起こり、このような濃度上昇過程の数が増えることで充填量が増加すると考えられる。
【0034】
実施例で説明する「長時間浸漬」法では、電解質溶液に多孔質膜を長時間、好ましくは20分間を超えて浸漬し、次に乾燥させる。任意の濃度の電解質溶液を使用することができるが、非常に低濃度であると浸漬時間を増大させる必要性が生じたり、あるいは充填される電解質量が少なくなってしまうことがある。約5重量%の溶液が好ましい。膜は任意の手段によって乾燥させることができ、好ましくはエアオーブンなどの高温において行われる。乾燥温度は40℃〜60℃の間が好ましい。
【0035】
実施例で説明する「減圧」法では、任意の適当な手段を用いて大気圧より低い空気圧を多孔質膜の裏面からかけて、膜の上面から加えた電解質溶液を膜を通して吸い込み、次に膜を乾燥させる。大気圧より低い空気圧を発生させるためにVenturiポンプを使用することができる。減圧は、膜が部分的に充填される限りにおいて、十分な溶液を膜に吸いこませるために必要である時間かけられ、好ましくは1秒〜10分間の間である。任意の濃度の電解質溶液を使用することができるが、高濃度であるほど電解質に取り込まれる量も増加すると思われ、また高粘度であるほど膜に溶液が取り込まれるまでに必要な時間が増加する。約10重量%を超える溶液が好ましく、約20重量%の溶液が最も好ましい。膜は任意の手段で乾燥させることができるが、好ましくはエアオーブン中などの高温で行われる。乾燥温度は40℃〜60℃の間が好ましい。
【0036】
実施例で説明する「液圧プレス」法では、室温機械プレスを使用して、強制的に高濃度粘稠電解質溶液を多孔質膜に通過させる。好ましくは、膜材料は、電解質を充填する領域でマスキング穴が切り取られた不浸透性フィルム層の間にはさまれる。このマスキング層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムから作製することができ、好ましくは厚さが約100μmである。電解質溶液は、膜表面に滴下して加えられる。膜をプレス内に配置する前に、別の層またはシムを取り付けることができる。使用する圧力は2トン/cm2を上限とすることができ、好ましくは0.1〜1.0トン/cm2、より好ましくは0.4〜0.6トン/cm2である。任意の加圧手段を使用することができ、例えばニップローラーや平台プレスを使用することができる。連続的な方法が好ましい。圧力は膜を部的に充填するために必要である時間かけられ、通常は1秒〜10分間の間である。加圧後、過剰の溶液は膜表面からふき取って、膜を乾燥させる。膜は任意の手段によって乾燥させることができ、好ましくはエアオーブン中などの高温で行われる。乾燥温度は40℃〜60℃の間が好ましい。
【0037】
「蒸発」法では、多孔質膜をわずかな体積の溶液の上に置いて、毛管現象によって膜の下側から溶液を部分的に充填する。溶剤は膜の上面から蒸発させる。この方法は溶剤が蒸発する任意の温度で行うことができ、好ましくは室温またはそれより高温である。
【0038】
好ましくは、液圧プレス法、減圧法、または複数回浸漬法が使用される。最も好ましくは、液圧プレス法が使用される。
【0039】
充填工程で使用する電解質溶液の量は、希望する充填度を達成するために十分であるべきだが、膜に充填される理論的な量よりも過剰であることが好ましい。部分的に充填された後の膜の孔に取り込まれるか微小繊維に吸着した電解質の量は、有効孔隙体積の10%〜90%の間を充填するために十分であるべきである。好ましくは、有効孔隙体積の15%を超えて充填される。最も好ましくは、有効孔隙体積の35%〜65%の間が充填される。電解質多孔質膜の構造微小繊維上にコーティングされて存在してもよいし、あるいは一部の孔隙の全断面に充填されるように膜をぬらしてもよい。部分的充填後の膜の密度の増加は、少なくとも0.01g/cm3であるべきだが、少なくとも0.1g/cm3であり1.2g/cm3未満であることが好ましい。
【0040】
任意の好適な電極粒子を使用することができる。好適な電極粒子の表面の少なくとも一部は、触媒材料で構成される。好ましくは、後述のようにナノ構造要素が使用される。しかし、他の電極粒子を使用することもでき、例えば金属微粉または金属コーティング層を担持した炭素粒子などの粒子を使用できる。触媒材料は、MEAの意図する用途に適切となるべきである。好ましくは触媒材料は、VII族金属またはそれらの合金であり、最も好ましくはPtまたはその合金である。
【0041】
本発明での使用に適したナノ構造要素としては、有機顔料、最も好ましくはC.I.PIGMENT RED 149(ペリレンレッド)の金属コーティングしたウィスカーを含むことができる。結晶性ウィスカーは、実質的に均一であるが、断面および高さと幅の比は同一ではない。ナノ構造ウィスカーは、触媒に適した材料が相似的にコーティングされ、これによって複数の触媒部位として作用することができる微細ナノ構造表面構造がウィスカーに形成される。
【0042】
米国特許第4,812,352号および第5,039,561号は、ウィスカーの有機系微細構造層を作製するための好ましい方法を開示しており、この方法は本発明での使用に適したナノ構造ウィスカーを形成するためのナノ構造表面層のコーティングに適している。これらの開示内容では、ウィスカーの微細構造層を作製する方法は、 i)有機材料の蒸気を薄く、連続的または非連続的な層として基材上に付着または凝縮させる工程と、 ii)付着した有機層の物理的変化を誘発して不連続な微細構造またはウィスカーが密集した微細構造層を形成させるために十分であるが、有機層を蒸発させたり昇華させたりするためには不十分である時間および温度で、付着させた有機層を減圧下で焼きなます工程とを含む。
【0043】
ウィスカーの層は、全体的な乾燥工程によって希望する任意のサイズの基材上に付着させることができ、例えば高解像度(乾燥)レーザーアブレーション手段を使用して好都合かつ迅速に模様を付けることができる。
【0044】
ウィスカーの方向は、基材表面に関してほぼ均一である。通常、ウィスカーは元の基材表面に対して法線方向に向いており、この面の法線方向はウィスカーの土台が基材表面と接触する点の局所的な基材面と接する架空の面と垂直な線の方向として定義される。面の法線方向は、基材面の輪郭に沿って見られる。ウィスカーの長軸は、互いに平行または非平行になりうる。
【0045】
あるいは、ウィスカーは、不均一な形状、大きさ、および向きであってもよい。例えば、ウィスカーの先端が曲がったり丸まったり湾曲してもよいし、あるいは、ウィスカーがその長さ全体で曲がったり丸まったり湾曲してもよい。
【0046】
好ましくは、ウィスカーは長さおよび形状が均一であり、長軸に沿った断面の大きさが均一である。各ウィスカーの好ましい長さは約50μm未満である。より好ましくは、各ウィスカーの長さは約0.1〜5μmの範囲内であり、最も好ましくは0.1〜3μmの範囲内である。あらゆるウィスカー層内で、ウィスカーの長さが均一であることが好ましい。好ましくは、各ウィスカーの平均断面サイズは約1μm未満、より好ましくは0.01〜0.5μmである。最も好ましくは、各ウィスカーの平均断面サイズは0.03〜0.3μmの範囲内である。
【0047】
好ましくはウィスカーの面数密度は、1cm2当りで約107個〜約1011個である。より好ましくは、ウィスカーの面密度は、1cm2当りで約108〜約1010個である。
【0048】
ウィスカーは種々の方向を向くことができ、直線または曲線の形状となることができる。どの1層も、複数種の方向および形状の組み合わせで構成させてもよい。ウィスカーの縦横比(すなわち、長さと直径の比)は約3:1〜約100:1の範囲内が好ましい。
【0049】
基材として有用な材料としては、蒸気付着および焼きなまし工程の間にさらされる温度および減圧においてその保全性が維持される材料が挙げられる。基材は可撓性でも剛直でもよく、平面状でも非平面上でもよく、凸面、凹面、しぼ付き、またはそれらの組み合わせであってもよい。好ましい基材材料としては、有機材料および無機材料(例えば、ガラス、セラミックス、金属、および半導体など)が挙げられる。好ましい無機基材材料は、ガラスまたは金属である。好ましい有機基材材料はポリイミドである。代表的な有機基材としては、焼きなまし温度で安定な材料が挙げられ、例えば、ポリイミドフィルム(市販されており、例えば、DuPont Electronics(Wilmington,DE)の商品名KAPTON)、高温安定性ポリイミド類、ポリエステル類、ポリアミド類、およびポリアラミド類などのポリマーが挙げられる。基材として有用な金属としては、例えば、アルミニウム、コバルト、銅、モリブデン、ニッケル、白金、タンタル、またはそれらの組み合わせが挙げられる。基材材料として有用なセラミックスとしては例えば、アルミナやシリカなどの金属酸化物または非金属酸化物が挙げられる。有用な無機非金属はケイ素である。
【0050】
ウィスカーを形成することができる有機材料は、有機材料層を基材上に設けるための当技術分野において公知の技術を使用して基材上にコーティングすることができ、例えば、気相蒸着(例えば、真空蒸着、昇華蒸着、および化学蒸着)、および溶液コーティングまたは分散液コーティング(例えば、ディップコーティング、吹き付けコーティング、スピンコーティング、ブレードまたはナイフコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、および注入コーティング(すなわち、液体を表面に注ぎ込んで、液体を表面に流動させる))によってコーティングすることができる。好ましくは、有機層は物理真空蒸着(すなわち、減圧下で有機材料を昇華させる)によって設けられる。
【0051】
コーティング後にプラズマエッチングを行うことなどでウィスカーを生成するために有用な有機材料としては、例えば、ポリマーおよびそれらのプレポリマー(例えば、アルキド、メラミン、尿素ホルムアルデヒド、フタル酸ジアリル、エポキシ、フェノール樹脂、およびシリコーンなどの熱可塑性ポリマー;熱硬化性ポリマー、例えばアクリルニトリル−ブタジエン−スチレン、アセタール、アクリル樹脂、セルロース誘導体、塩素化ポリエーテル、エチレン−酢酸ビニル、フルオロカーボン、アイオノマー、ナイロン、パリレン、フェノキシ樹脂、ポリアロマ−、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド−イミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンオキシド、ポリスチレン、ポリスルホン、ビニル類);および有機金属類(例えば、ビス(η5−シクロペンタジエニル)鉄(II)、鉄ペンタカルボニル、ルテニウムペンタカルボニル、オスミウムペンタカルボニル、クロムヘキサカルボニル、モリブデンヘキサカルボニル、タングステンヘキサカルボニル、およびトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウムクロリド)を挙げることができる。
【0052】
好ましくは、有機系ウィスカー層の化学組成は、出発有機材料の化学組成と同一である。ウィスカー層を形成するために好ましい有機材料としては、例えば、π電子密度が広範囲にわたり非局在化した鎖または環を含む平面状分子が挙げられる。一般にこれらの有機材料は、ヘリングボーン型配置で結晶化する。好ましい有機材料は、多環式芳香族炭化水素類および複素環式芳香族化合物類に大まかに分類することができる。
【0053】
多環式芳香族炭化水素類は、Morrison and Boyd,Organic Chemistry,Third Edition,Allyn and Bacon,Inc.(Boston:1974),Chapter 30に記載されている。複素環式芳香族化合物類は、上記のMorrison and Boyd,Chapter 31に記載されている。
【0054】
市販されている好ましい多環式芳香族炭化水素としては、例えば、ナフタレン類、フェナントレン類、ペリレン類、アントラセン類、コロネン類、およびピレン類が挙げられる。好ましい多環式芳香族炭化水素は、N,N’−ジ(3,5−キシリル)ペリレン−3,4,9,10ビス(ジカルボキシイミド)(商品名C.I.PIGMENT RED 149でAmerican Hoechst Corp.(Somerset,NJ)より市販されている)であり、本明細書では「ペリレンレッド」と呼ぶ。
【0055】
市販されている好ましい複素環式芳香族化合物としては、例えば、フタロシアニン類、ポルフィリン類、カルバゾール類、プリン類、およびプテリン類が挙げられる。複素環式芳香族化合物の代表例としては、例えば、金属を含まないフタロシアニン(例えば、二水素フタロシアニン)およびその金属錯体(例えば、銅フタロシアニン)が挙げられる。
【0056】
有機材料は、基材上に付着させた時に連続層を形成できることが好ましい。好ましくは、この連続層の厚さは、1nm〜約1000nmの範囲内である。
【0057】
ウィスカーの向きは、有機層の付着の間の基材温度、付着速度、および入射角に影響されうる。有機材料の付着の間の基材温度が十分高い(すなわち、有機材料の沸点(K)の3分の1の値として当技術分野において関連づけられている臨界基材温度より高温)場合は、付着時または後の焼きなましの工程で付着した有機材料がランダムに配向したウィスカーを形成する。付着の間の基材温度が比較的低い(すなわち、臨界基材温度より低温)場合は、付着した有機材料は焼きなましをすると均一に配向したウィスカーを形成する傾向にある。例えば、ペリレンレッドを含む均一に配向したウィスカーを希望する場合は、ペリレンレッドの付着時の基材温度が約0〜約30℃であることが好ましい。DCマグネトロンスパッタリングやカソードアーク減圧法などのある相似被覆を後で行うと、曲線状ウィスカーを形成することができる。
【0058】
付着した層をウィスカーへと完全に転化させるための、異なる皮膜厚さにおける最適な最高焼きなまし温度が存在しうる。完全に転化すると、各ウィスカーのより大きい方のサイズは、最初に付着させた有機層の厚さに正比例する。ウィスカーは不連続であり、それらの断面の大きさ程度の距離で分離しており、好ましくは断面の大きさが均一であり、すべての最初の有機皮膜がウィスカーに転化したので、質量が保存されることはウィスカーの長さは採取に付着した層の厚さに比例することを意味する。最初の有機層の厚さとウィスカーの長さのこの関係と、断面の大きさが長さと独立であることから、ウィスカーの長さと縦横比は、その断面の大きさおよび面密度とは独立に変動させることができる。例えば、蒸着させたペリレンレッド層の厚さが約0.05〜約0.2μmである場合にはウィスカーの長さがほぼその10〜15倍となることを発見した。ウィスカー層の表面積(すなわち、個々のウィスカーの表面積の合計)は、基材に付着させた最初の有機層よりもはるかに大きい。好ましくは、最初に付着させた層の厚さは約0.03〜約0.25μmの範囲内である。
【0059】
一つ一つのウィスカーは、アモルファスよりも、単結晶または多結晶になる可能性がある。ウィスカー層は、結晶の性質とウィスカ−の一様な配向のために高い異方性を有することがある。
【0060】
ウィスカーが不連続に分布することが望ましい場合は、基材の特定の場所または領域に選択的にコーティングさせるために、有機層付着工程でマスクを使用することができる。基材の特定の場所または領域に選択的に有機層を付着させるための当技術分野において公知の他の方法も有用となりうる。
【0061】
焼きなまし工程では、有機層が表面にコーティングされた基材を、コーティングされた有機層の物理変化が起こるまでに十分な時間および温度で減圧下において加熱し、これによって有機層が成長し、不連続で配向した単結晶または多結晶のウィスカーの密集した配列を形成する。ウィスカーの一様な配向は、付着時の基材温度が十分に低い場合での焼きなまし工程の本来の結果である。コーティングした基材を焼きなまし工程の前に大気にさらしても、得られるウィスカーの形成に対する悪影響は見られない。
【0062】
例えば、コーティングした有機材料がペリレンレッドまたは銅フタロシアニンである場合は、焼きなましは減圧下(すなわち、約0.13Pa未満)で約160〜約270℃の範囲の温度において行うことが好ましい。最初の有機層をウィスカー層に転化させるために必要な焼きなまし時間は、焼きなまし温度に依存する。一般的には、焼きなまし時間は約10分間〜約6時間の範囲内で十分である。好ましくは、焼きなまし時間は約20分間〜約4時間の範囲内である。さらに、ペリレンレッドの場合、元の有機層をウィスカー層に転化させるが昇華は起こらない最適な焼きなまし温度は、付着させた層の厚さによって変動することが観察される。一般的に、元の有機層の厚さが0.05〜0.15μmであれば、焼きなまし温度は245〜270℃の範囲内である。
【0063】
蒸着工程と焼きなまし工程の間の時間間隔は、数分間〜数か月まで変動させることができ、コーティングした複合体が汚染(例えば、ほこり)を最小限にする覆い付き容器に保管される限りは大きな悪影響はない。ウィスカーが成長すると、有機赤外帯域強度が変化し、レーザー鏡面反射率が低下するので、例えば、表面赤外分光法によってその場で注意深く転化を観察することができる。ウィスカーが希望する大きさまで成長した後で得られる、基材とウィスカーを含む層状構造は、大気圧に戻すまでに冷却することができる。
【0064】
ウィスカーの分布にパターンが形成されることを希望する場合は、例えば、機械的手段、減圧加工手段、化学的手段、気圧または粒体手段、輻射線手段、およびそれらの組み合わせによって基材からウィスカーを選択的に除去することができる。有用な機械的手段としては、例えば、鋭利な器具(例えば、かみそりの刃)で基材からウィスカーをこすり落とすことや、ポリマーで包み込んだ後に層間剥離させることが挙げられる。有用な輻射線手段としては、レーザーまたは光アブレーションが挙げられる。このようなアブレーションによって電極にパターンを形成することができる。有用な化学的手段としては、例えば、ウィスカー層の選択した部分または領域の酸エッチングが挙げられる。有用な減圧手段としては、例えば、イオンスパッタリングおよび反応性イオンエッチングが挙げられる。有用な空気圧手段としては、例えば、気体(例えば、空気)または流体流で基材からウィスカーを吹き飛ばす方法が挙げられる。上述の手段の組み合わせも可能であり、例えばフォトレジストとフォトリソグラフィーを利用することができる。
【0065】
ウィスカーは、ICMに移行できる限りは、基材または基材と同じ材料の延長部分であってもよく、例えば、不連続な金属の微小な島のマスクをポリマー表面に蒸着し、次にプラズマまたは反応性イオンエッチングによって金属微小島でマスクされていないポリマー材料を除去して、表面に突出したポリマー基材の柱を残すことによって延長部分を形成できる。
【0066】
ウィスカーまたはナノ構造要素の微細構造層を形成するための他の方法も公知である。例えば、ウィスカーの有機微細構造層を形成するための方法は、Materials Science and Engineering,A158(1992),pp.1−6;J.Vac.Sci.Technol.A,5,(4),July/August,1987,pp.1914−16;J.Vac.Sci.Technol.A,6,(3),May/August,1988,pp.1907−11;Thin Solid Films,186,1990,pp.327−47;J.Mat.Sci.25,1990,pp.5257−68;Rapidly Quenched Metals,Proc.of the Fifth Int.Conf.on Rapidly Quenched Metals,Wurzburg,Germany(Sept.3−7,1984),S.Steeb et al.,eds.,Elsevier Science Publishers B.V.,New York,(1985),pp.1117−24;Photo.Sci.and Eng.,24,(4),July/August,1980,pp.211−16;および米国特許第4,568,598号および第4,340,276号に記載されている。ウィスカーの無機系微細構造層を形成する方法は、例えば、J.Vac.Sci.Tech.A,1,(3),July/Sept.,1983,pp.1398−1402および米国特許第3,969,545号;米国特許第4,252,865号、第4,396,643号、第4,148,294号、第4,252,843号、第4,155,781号、第4,209,008号、および第5,138,220号に開示されている。
【0067】
ウィスカーを生成するための有用な無機材料としては、例えば、炭素、ダイヤモンド様炭素、セラミクス(例えば、アルミナ、シリカ、酸化鉄、および酸化銅などの金属または非金属の酸化物;窒化ケイ素や窒化チタンなどの金属または非金属の窒化物;および炭化ケイ素などの金属または非金属の炭化物;ホウ化チタンなどの金属または非金属のホウ化物);硫化カドミウムや硫化亜鉛などの金属または非金属の硫化物;ケイ化マグネシウム、ケイ化カルシウム、およびケイ化鉄などの金属ケイ化物;金属(例えば、金、銀、白金、オスミウム、イリジウム、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、およびそれらの組み合わせなどの貴金属;スカンジウム、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、銅、ジルコニウム、およびそれらの組み合わせなどの遷移金属;ビスマス、鉛、インジウム、アンチモン、スズ、亜鉛、およびアルミニウムなどの低融点金属;タングステン、レニウム、タンタル、モリブデン、およびそれらの組み合わせなどの耐火金属);および半導体材料(例えば、ダイヤモンド、ゲルマニウム、セレン、ヒ素、ケイ素、テルル、ヒ化ガリウム、アンチモン化ガリウム、リン化ガリウム、アンチモン化アルミニウム、アンチモン化インジウム、インジウムスズ酸化物、アンチモン化亜鉛、リン化インジウム、ヒ化アルミニウムガリウム、テルル化亜鉛、およびそれらの組み合わせ)が挙げられる。
【0068】
好ましい実施例のウィスカーは、前述したように、最初のPR149層の付着の間に基材温度を調節することによってランダムに配向させることができる。相似被覆工程の条件によって、ウィスカーを曲線状の形状にすることもできる。L.Aleksandrov,”GROWTH OF CRYSTALLINE SEMICONDUCTOR MATERIALS ON CRYSTAL SURFACES(結晶表面上での結晶性半導体材料の成長)”(Elsevier,New York,1984)Chapter 1のFIG.6で議論されているように、例えば、熱蒸発蒸着、イオン蒸着、スパッタリングおよび注入などの異なるコーティング方法によって到着する原子にかかるエネルギーは、5つのオーダーにわたる範囲となりうる。
【0069】
不連続な分布のウィスカーを形成するための、ウィスカーの微細構造層の形成方法の修正は本発明の範囲内である。
【0070】
好ましくは、1層以上の相似被覆材料を取り付ける場合、この層は、希望する触媒特性、ならびに電気伝導性および機械特性(例えば、ウィスカー層を構成するウィスカーを補強および/または保護する)、および的蒸気圧特性を付与する機能性層としての働きをする。
【0071】
好ましくは相似被覆材料は無機材料を使用することができ、ポリマー材料などの有機材料も使用することができる。有用な無機相似被覆材料としては、例えば、ウィスカーについて前に説明した材料が挙げられる。有用な有機材料としては、例えば、導電性ポリマー(例えば、ポリアセチレン)、ポリ−p−キシレンから誘導されるポリマー、および自己集合層を形成できる材料が挙げられる。
【0072】
相似被覆層の好ましい厚さは、通常約0.2〜約50nmの範囲内である。相似被覆層は、例えば、米国特許第4,812,352号および第5,039,561号に記載されるような従来技術を使用してウィスカー層状に付着させることができる。機械的な力によるウィスカーの妨害を避けられる任意の方法を相似被覆層の付着に使用することができる。好適な方法としては、例えば、気相蒸着(例えば、減圧蒸発、スパッターコーティング、および化学蒸着)、溶液コーティングまたは分散液コーティング(例えば、ディップコーティング、吹き付けコーティング、スピンコーティング、注入コーティング(すなわち、液体を表面に注ぎ込んで、ウィスカー層状に液体が流れるようして、続いて溶剤を除去する))、浸漬コーティング(すなわち、溶液の分子、または分散液のコロイドあるいは他の粒子をウィスカー層に吸着させるために十分な時間、溶液のウィスカー層を浸漬する)、電気めっき、および無電極めっきが挙げられる。より好ましくは、相似被覆は、例えば、イオンスパッター蒸着、カソードアーク蒸着、蒸気凝縮、減圧昇華、物理蒸気輸送、化学蒸気輸送、および有機金属化学蒸着などの気相付着法で付着させる。好ましくは、相似被覆材料は触媒金属または合金である。
【0073】
相似被覆をパターンをつけて付着させるためには、不連続コーティングなどを形成するための当技術分野で公知のように付着方法を修正する。公知の修正方法としては、例えば、マスク、シャッター、有向イオンビーム、および付着源のビームの使用が挙げられる。
【0074】
電極粒子は、熱および機械的圧力をかけた後、粒子を支持するもとの基材を除去することによって部分充填膜に埋め込むことができる。任意の好適な圧力源を使用することができる。液圧プレスを使用することが好ましい。あるいは、1つまたは一連のニップローラーで圧力をかけることができる。この方法は、平台プレスの繰返し運転またはローラーの連続的運転のいずれかを使用して連続的工程に適合させることもできる。シム、スペーサー、および他の介在させる機械的機器を使用することができる。電極粒子は好ましくは基材上に支持して、粒子が膜表面と接触するように基材を膜表面に取り付ける。加圧後に基材を除去すると、膜に埋め込まれた電極粒子が残る。あるいは、基材を使用せず、別のアイオノマーも含まないで直接膜表面に電極粒子を付着させ、続いて表面内部に押込むこともできる。ある実施例では、部分充填膜ディスクを、部分充填膜と向かい合うように配置したポリイミド支持ナノ構造要素のナノ構造フィルム2枚の間に置くことができる。コーティングしていないポリイミドおよびPTFEのシートのさらなる層を、さらに両側から重ねて、圧力を均一に分布させ、最後に1組のステンレス鋼製シムをこの組立品の外側に配置する。
【0075】
圧力、温度、および加圧時間は、空隙体積を膜からなくし電極粒子を膜に埋め込むために十分となる任意の組み合わせであってよい。最適条件は、多孔質膜の性質に依存する。好ましくは、0.05〜10トン/cm2の間の圧力がかけられ、より好ましくは0.1〜1.0トン/cm2の間の圧力がかけられる。最も好ましくは、0.10〜0.20トン/cm2の圧力がかけられる。好ましくは、プレス温度は20℃〜300℃の間であり、最も好ましくは80℃〜250℃の間である。加圧時間は、1秒間を超えることが好ましく、最も好ましくは約1分間を超える。プレスに載せた後で、加圧前に低圧力または圧力をかけずに、MEA成分が加圧温度と平衡状態となるようにすることができる。あるいは、オーブンまたは目的に適合した他の装置でMEA成分を予備加熱することができる。好ましくは、加圧前にMEA成分を1〜10分間予備加熱する。プレスから取り出す前または後でMEAを冷却することができる。プレスの圧盤は、水冷することができるし、あるいは他の適当な手段で冷却することができる。好ましくは、プレスでまだ加圧している間にMEAを1〜10分間冷却する。
【0076】
図4は、本発明の方法で作製したMEAの断面の1000倍でのSEM写真である。
【0077】
実施例の1つでは、p−STSIを電解質として使用する。得られるMEAでは、複合膜の多孔質構造は明らかになくなる。得られるMEAのイオン伝導性膜部分は、膜材料と電解質が均一に組み合わさった状態に見える。膜は最初の多孔質構造を失い、特に膜を横断する孔は残留しない。この実施例では、前述したように膜に部分的に充填するために任意の方法を利用することができる。前述のように任意の加圧条件で行うことができる。任意の多孔質膜を使用することができるが、ポリプロピレン膜とTIPS膜が好ましく、ポリプロピレンTIPS膜が最も好ましい。
【0078】
本発明は、燃料電池、電解槽、電池、またはガス、気相または液体センサーなどの直接目的に最適化させた膜電極を使用した電気化学的装置に有用である。
【0079】
本発明の目的および利点は、以下の実施例によってさらに説明するが、これらの実施例で列挙する個々の材料およびそれらの量、ならびにその他の条件および細部は、本発明を不当に制限するために構成されるものではない。
【実施例】
【0080】
以下の実施例1〜19では、数種類の異なる方法による、種々の多孔質ポリマー膜の種々のイオン伝導性電解質による部分的充填を説明する。以下の実施例20〜25では、膜の部分的充填と、引き続く部分充填膜と電極粒子との加圧を説明する。
実施例で使用した材料
【0081】
以下の実施例では次のような多孔質膜を使用する:
TIPSTM膜Aは、Gurley4.3sec/50cc、孔径0.84μm(泡立ち点)、空隙率約70%、厚さ3.5ミル(89μm)のポリプロピレンTIPSTM(Thermally Induced Phase Separation media(熱誘発性分離媒体))である。この膜は以下のようにして作製した:メルトフローインデックス0.65dg/min(ASTM D1238,Condition I)のポリプロピレン樹脂(DS 5D45,Shell Chemicals Co.,Houston,TX)を40mm二軸スクリュー押出機(Berstorff Corp.,Charlotte,NC)のホッパーに装入した。粘度60センチストークス(ASTM D445、40℃)のAmoco White Mineral Oil #31(AMOCO,Chicago, IL)を、ポリマーが31重量%で鉱油が69重量%の組成となるような比率で、注入口から押出機に装入した。またこの組成には0.24重量%のジベンジリデンソルビタール(MilladTM3905,Milliken Chemical Corp.,Spartanburg,NC)を核剤として含んだ。全体の供給速度は16.80kg/hrであった。押出機内でポリマーを266℃まで加熱して融解させ、油と混合した後、押出しの間は温度を166℃に維持した。溶融物を側面38.1cmのコートハンガースリットダイから押出して、66℃に維持したキャスティングホイール上にキャストした。このキャストフィルムをジクロロトリフルオロエタン(CHCl2CF3、VertrelTM 423として、DuPont Chemical Co.(Wilmington,DE)より入手できる)で抽出して鉱油を除去し、次に、88℃縦方向で2.1対1で延伸し、140℃横方向で2.8対1に延伸した。
【0082】
TIPSTM膜Bは、Gurley68sec/50cc、孔径0.1μm、空隙率58%、厚さ29μm(1.13ミル)のポリプロピレン TIPSTMである。この膜は以下のようにして作製した:メルトフローインデックス0.65dg/min(ASTM D1238,Condition I)のポリプロピレン樹脂(DS 5D45,Shell Chemicals Co.,Houston,TX)を、40mm二軸スクリュー押出機(Berstorff Corp.,Charlotte,NC)のホッパーに装入した。粘度が60センチストークス(ASTM D445、40℃)のAmoco White Mineral Oil #31(AMOCO,Chicago,IL)を、ポリマーが55重量%で鉱油が45重量%の組成となるような比率で、注入口から押出機に投入した。またこの組成には0.28%のジベンジリジンソルビタール(MilladTM 3905,Milliken Chemical Corp.,Spartanburg,NC)を核剤として含んだ。全体の供給速度は11.35kg/hrであった。押出機内でポリマーを271℃まで加熱して融解させ、油と混合した後、押出しの間には温度を177℃に維持した。この溶融物を38.1cm幅コートハンガースリットダイから押出して、60℃に維持したキャスティングホイール上にキャストした。このキャストフィルムをジクロロトリフルオロエタン(CHCl2CF3、VertrelTM 423として、DuPont Chemical Co.(Wilmington,DE)より入手できる)で抽出して鉱油を除去し、次に90℃で縦方向に3.25対1に延伸し、138℃で横方向に1.5対1で延伸した。
【0083】
TIPSTM膜Cは、Gurley数366sec/50cc、孔径0.07μm、空隙体積44%、厚さ69μm(2.7ミル)のポリフッ化ビニリデンTIPSTMである。この膜は以下のようにして作製した:SolefTM1010ポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)樹脂(Solvay America Inc.,Houston,TX)を40mm二軸スクリュー押出機(Berstorff Corp.,Charlotte,NC)のホッパーに装入した。フタル酸ジブチル(Aldrich Chemical Co.,Inc.,Milwaukee,WI)を、ポリマーが60重量%でフタル酸ジブチルが40重量%の組成となるような割合で、注入口から押出機に投入した。全体の供給速度は14.8kg/hrであった。この溶融物を204℃において30.5cm幅コートハンガースリットダイから押出して、28℃に維持した水浴で急冷した。このキャストフィルムを1,1,1−トリクロロエタン(Aldrich)で抽出してフタル酸ジブチルを除去し、次に、32℃で縦方向に1.3対1で延伸し、121℃で横方向に1.5対1で延伸した。
【0084】
第4の膜のPoreflonTMは、住友電工(東京)製の発泡ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、これはGurley数が17.5±0.5sec/100ccである。
【0085】
上述の説明において、Gurley数は、膜の気流に抵抗する尺度を意味し、ASTM D726−58,Method Aに規定されるように、規格条件下で所与の体積のガスを規格面積の膜に通過させるために必要な時間として表現される。Gurley数は、空気100cc、または他の指定の体積が6.35cm2(1平方インチ)のフィルムを水124mmの圧力で通過する秒で表した時間である。フィルム試料は、円筒型リングの間にはさみ、その最上部にはピストンと規定の体積の空気が含まれる。ピストンを離すと、ピストン自身の重量によって、上部円筒部内の空気に圧力がかかり、規定の体積の空気が膜を通過するのにかかる時間を測定する。
【0086】
上述の説明において、孔径は、ASTM F−316−80で規定される膜の最も大きな孔の大きさの測定値を意味する。フィルムの孔を満たすために液体が使用される。フィルム中の最大の通路を空気が通過して泡が発生するまで空気圧をかける。泡が発生した時点の圧力は、最大孔の大きさと試験液体の表面張力と関係がある。試験液体としてエタノールを使用すると、μmを単位とした泡立ち点は、1.34×10-3を、パスカル(Pa)を単位とした泡が発生したときの圧力で割ったものに等しい。
次のようなポリマー電解質を以下の実施例で使用する:
【0087】
NafionTM 1100溶液:DuPontで製造されElectroChem,Inc.(Woburn,MA)とAldrichから入手できる、SO3−アニオンが結合したペルフルオロ化イオン交換ポリマーの1100当量の溶液。低級脂肪族アルコール類と水(水15〜20%)の混合物中の5重量%溶液。
【0088】
p−STSI:スチレニルチルフルオロメチルスルホニルイミド(STSI);スチレニル−SO2N−(SO2CF3)のフリーラジカル重合から誘導されるイオン伝導性材料。
【0089】
実施例1および2
実施例1および2では、複数回浸漬および乾燥工程をもちいた多孔質膜への電解質の部分的充填を説明する。この方法では、多孔質膜を低濃度電解質溶液に短時間浸漬し、エアオーブンで乾燥する、という工程を複数回繰返し、両工程の間で増加する充填物重量を測定する。
【0090】
実施例1では、直径3.81cmのTIPS膜Bの試料ディスク3枚を、5重量%のNafion 1100溶液に浸漬し、取り出し、乾燥し、秤量して、各試料ディスクの重量変化を記録した。この手順を全部で16回繰り返した。浸漬時間は、最長20分間から最短2分間まで変動させた。乾燥は約50℃のエアオーブン中で行った。乾燥時間も変動させ、通常は15〜20分間の間としたが、1つの例では最長2時間までとした。第6回および第11回の浸漬の後では、新しい溶液を使用した。溶液から取り出した後、乾燥の前にディスクから過剰分を滴り落とした。各浸漬および乾燥手順後の試料重量をまとめたものを図1に示す。第15回の浸漬および乾燥の後、ぬれた布を使用して過剰の溶液をさらにふき取り、試料を再び秤量した(図1のデータ点16)。光沢のあるコーティングのように見える表面の蓄積物は、ふき取るとなくなった。測定値は、3つすべての試料の質量増加は同様であり、浸漬回数と共に平均的には単調に増加し、第1回で増加はより急激であり、その後は横ばいとなった。浸漬時間の長さは、有意差のある要因とは思われず、また新しい溶液の使用も有効な効果は見られない。最後に、全体の重量増加に対してふき取りによる重量減は無視できるので、質量増加は表面の蓄積物によるものではないと思われる。
【0091】
全体質量増加の平均は、16回の浸漬/乾燥サイクルで約20mg、言い換えると1.75mg/cm2または0.61g/cm3である。Nafion 1100電解質の密度は約2g/cm3であり、これはNafion 1100溶液に含まれるポリマー電解質材料Nafion 117(1.97g/cm3)から計算している。密度増加0.61g/cm3は、膜の体積の約30%が充填されたことに対応する。従って、最初の膜の空隙体積58%の約半分が複数回浸漬/乾燥手順によって充填された。
【0092】
この方法は、連続的ウエブ充填工程に容易に適合させることができ、その方法では、膜を曲がりくねった一連のローラーに通して、電解質溶液槽と、その間の乾燥装置とに膜を送り込み、送り出す。あるいはウエブを、電解質溶液に浸漬して、乾燥装置(例えば、強制空気または加熱ランプ)を通過させ、再び溶液に通す、を希望の回数繰り返す。
【0093】
実施例2では、実施例1の複数回浸漬および乾燥手順を、TIPS膜C媒体の3つの試料ディスクで繰り返した。サイクル数は11とした。浸漬時間は、4分間〜20分間まで変動させ、乾燥時間は18分間〜90分間まで変動させた。図2は、各サイクル後の質量変化をまとめたものである。今回も、測定値は、3つすべての試料の質量増加が同様であり、浸漬時間の長さは有意差のある要因であるとは思われず、新しい溶液の使用が有意の効果が見られないことを示している。質量増加は、3つすべての試料で同様であり、第4サイクル後には横ばいとなっている。全体重量増加の平均は、約12mg、または1mg/cm2、または0.15g/cm3である。TIPS膜C媒体は、TIPS膜B媒体よりも孔径および空隙体積(44%)が小さく、このことが実施例1における後者の媒体の密度増加よりも大きいことの原因である考えることができる。最大可能密度増加は、TIPS膜C媒体においてNafionで0.88g/cm3であると計算される。密度増加0.15g/cm3は、膜体積の約7.5%の充填に対応する最初の膜の空隙体積44%の約6分の1が、複数回浸漬/乾燥手順によって充填された。
【0094】
実施例3〜5
実施例3、4、および5では、長時間浸漬法による多孔質膜への電解質の部分充填を説明する。この方法では、多孔質膜を電解質溶液に20分間を超える超時間浸漬して、次にエアオーブンで乾燥する。
【0095】
実施例3では、2つの直径3.15cmのTIPS膜Bのディスクの充填を、5重量%Nafion溶液に30分間浸漬し、次に50℃のエアオーブンで50分間乾燥することで行った。密度増加はそれぞれ0.31g/cm3と0.26g/cm3であり、平均は0.29g/cm3であった。
【0096】
実施例4では、1つの直径3.81cmのTIPS膜Bのディスクを5重量%溶液に5時間浸漬した。容器はふたをしなかったので、時間がたつに連れて濃度は増加したと思われる。約50℃のエアオーブンで45分間乾燥後、密度増加は0.44g/cm3であった。
【0097】
実施例5では、2つの直径2.5cmのTIPS膜Aのディスクを、20重量%p−STSIをDI水に溶解した溶液に20分間浸漬した。過剰分は流れ落ちるようにし、ディスクを終夜乾燥した。どちらの試料も、密度増加は0.16g/cm3であった。
【0098】
実施例6〜12 実施例6〜12では、減圧手順による多孔質膜への電解質の部分充填を説明する。この方法では、ろ過フラスコ支持体で支持した多孔質膜の下側から弱く減圧して、種々の電解質濃度の溶液を膜に通した。
【0099】
実施例6〜8では、5重量%Nafion溶液の一部を乾燥させて10重量%および20重量%の溶液を調製した。それぞれの溶液について、それぞれ直径3.81cmのTIPS膜Aのディスク1つずつを、Venturi空気装置のVarian model 952−5096(Varian(Lexington,MA)で販売される)を吸気のためにゴムホースで接続した250ml真空フラスコの上部に取り付けたCoors D37セラミックろ過用漏斗の平らな底面の穴の上に置いた。次に、溶液0.5mlを膜表面に広げ、減圧して溶液を膜を通して吸い込んだ。粘稠溶液の大部分はすべてではないが膜を通過したが、膜表面にも残った。試料を約50℃で35分間乾燥させ、秤量した。電解質の取り込みによる質量増加は、溶液濃度が5重量%で0.20g/cm3から、10重量%で0.36g/cm3、20重量%で0.71g/cm3と単調増加が見られた。20重量%の試料については表面に残留した過剰分を除去しなかったので、密度増加の一部は表面を覆って残留した乾燥フィルムによるものである。
【0100】
実施例9では、実施例6に記載のものと同じ機器でTIPS膜BをNafionの5重量%溶液で充填した。試料の直径は3.15cmであった。溶液15滴を第1のディスクに加えた。溶液がTIPSをぬらすまで2分間かけてから、10秒間減圧した。第2のディスクは、17的を3分間かけて加え、50秒間減圧した。乾燥後、密度増加を測定すると、それぞれ0.26g/cm3および0.35g/cm3であった。
【0101】
実施例10では、TIPS膜Cの直径3.81cmの2つのディスクに5重量%Nafion溶液を吸いこませた。15滴を各面に加え、1分間かけて表面をぬらし、次に第1の試料では17秒間減圧し、第2の試料は50秒間減圧した。試料を50℃で25分間乾燥させた。密度増加はそれぞれ0.06g/cm3および0.054g/cm3であった。
【0102】
実施例11では、TIPS膜Aのそれぞれ直径3.51cmのディスク3枚について、5重量%溶液と実施例6の減圧吸引方法を用いて、Nafionを部分的に充填した。最初のディスクは、15滴ずつ2回に分けて全量1mlの溶液を通過させた。第2のディスクは2mlの溶液を通過させ、第3のディスクでは3ml使用した。乾燥後、それぞれの密度増加は0.298g/cm3、0.301g/cm3、および0.303g/cm3であった。実施例11は、減圧法を用いて密度が増加し、その結果吸着したアイオノマー量は膜を通過させる電解質溶液の全体積とは無関係となることを示している。
【0103】
実施例12では、実施例6と同じ手順を使用して、TIPS膜Aの2枚の2.5cmディスクに、20重量%溶液からp−STSIを充填した。表面に溶液6滴を加え、2分間減圧した。乾燥後、密度の変化は0.17g/cm3および0.13g/cm3であり、平均は0.15g/cm3であった。
【0104】
実施例13〜19
実施例13〜19では、液圧プレスによる正圧を使用した多孔質膜への電解質の部分的充填を説明する。液圧プレス法では、室温機械プレスを使用して、高粘度(粘稠)電解質溶液を多孔質膜に液圧により強制的に通す。
【0105】
以下の実施例では、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム2枚の中央に直径3.7cmの穴を切り取ってマスクを作製した。多孔質膜材料をこれら2枚のPETマスクの間にはさんだ。こうして得たサンドイッチ構造を、PETマスクの穴で定まる体積(約0.1ml)の中に電解質溶液を加えた後で、厚さ0.025cmのPTFEシート2枚の間にさらにはさんだ。このサンドイッチ構造をステンレス鋼シムストックの間に置いた。この組立品全体を液圧プレス(Fred S.Carver,Inc.(Wabash,IN)製造)の圧盤の間に置き、室温で3〜5分間3.2トンの力をかけた。加圧後、過剰の溶液を膜表面からふき取り、膜を約48℃のエアオーブンで12分間乾燥した。直径を測定したEディスクを部分充填膜試料の中央部から打抜き、充填された電解質の質量を秤量して求めた。
【0106】
実施例13では、5重量%溶液と上記手順によって、TIPS膜Bの2つの試料にNafionを充填し、得られた膜から直径3.15cmのディスクを打抜いた。乾燥後の密度増加は0.11g/cm3および0.076g/cm3であり、平均は0.093g/cm3であった。
【0107】
実施例14では、5重量%溶液と実施例13と同じ手順によって、TIPS膜Cの2つの試料にNafionを充填し、得られた膜から直径3.81cmのディスクを打抜いた。乾燥後の密度増加は0.037g/cm3および0.045g/cm3、平均は0.041g/cm3であった。
【0108】
実施例15では、実施例13に記載の液圧プレス法を使用して、20重量%を70/30のメタノール−水混合物に溶解した溶液よりp−STSIをTIPS膜Bの3試料に充填した。溶液3〜4滴を各側に加え、3分間3トンの力をかけて、次に表面から過剰の電解質をふき取った後で、約50℃で20分間乾燥した。得られた膜から、直径3.25cmのディスク3枚を打抜いた。密度増加は、0.049g/cm3、0.014g/cm3、および0.060g/cm3であり、平均増加量は0.041g/cm3であった。
【0109】
実施例16では、20重量%のp−STSIを水のみに溶解した溶液を各側に4滴ずつしようして実施例15の手順を繰り返した。過剰分をふき取って、試料を55〜60℃で23分間乾燥し、得られた膜から直径3.81cmのディスクを切り出した。密度増加は、0.028g/cm3および0.19g/cm3であり、平均増加量は0.11g/cm3であった。
【0110】
実施例17および18は、実施例17ではTIPS膜Cの3つの試料ディスクに20重量%のp−STSIを70/30MeOH/H2Oに溶解した溶液を使用し、実施例18では2つの試料ディスクにp−STSIを純水に溶解した溶液を使用して実施例15および16の手順を繰り返した。最初の3つのディスクの密度増加は0.098g/cm3、0.091g/cm3、および0.149g/cm3であり、平均は0.113g/cm3であった。次の2つの試料の増加は、0.25g/cm3および0.088g/cm3であり、平均は0.17g/cm3であった。
【0111】
実施例19では、厚さ50μmのPoreflonTMの直径3.85のディスクを実施例13の手順を用いて充填した。入手した時のPoreflonの多孔度をGurley測定によって求めると、17.5±0.5sec/100ccの値を得た。Nafion 1100の14重量%溶液15滴を膜の一面(厚さ100μmのPETマスクの開口部で定まる体積内)に加え、室温で4分間2トンの力をかけた。過剰のNafionはふき取り、膜を49℃で15分間乾燥させた。密度増加は0.22g/cm3であった。充填した試料のGurley数を測定すると900sec/4ccを超えたが、これは22,500sec/100ccに対応する。
【0112】
密度増加データのまとめ
実施例1〜19では、4つの充填手順によって種々の多孔質膜に組み込まれた電解質により密度が増加することを示している。以下の表Iに、Nafion電解質に4種類の異なる多孔質膜と4種類の異なる方法を使用した実施例(後述の実施例20を含む)の平均の結果をまとめる。以下の表IIに、pSTSI電解質に3種類の異なる多孔質膜と3種類の異なる方法を使用した実施例(後述の実施例24を含む)の平均の結果をまとめる。
【表1】
【表2】
【0113】
実施例20〜25
以下の実施例20〜25では、膜の部分充填の後に、部分充填膜に電極粒子を押し付けることによる膜電極の形成を説明する。実施例20〜25で使用した電極粒子は、前述したようなナノメートルサイズのウィスカー様支持体上に相似被覆したPtなどの触媒材料からなるナノ構造触媒粒子であり、米国特許第5,338,430号やその他の特許に記載されており、その記載内容を本明細書に引用する。ここで使用したウィスカーは、ポリイミドなどの基材上に先に真空コーティングしたペリレンレッド(PR149、前述の通り)の薄膜(約1000〜1500オングストローム)の減圧焼きなましによって作製した。長さ約1〜2μmのウィスカー様支持体は成長によって、均一な断面の大きさ約30〜60nm、末端は基材上に配向して密集した土台(約30〜40/μm2)からなる密集したフィルムを形成し、ポリマー電解質表面に移動して後述のように触媒電極を形成した。このナノ構造触媒電極は非常に大きな表面積を有し、そのため燃料および酸化体ガスと容易に接近できる。
【0114】
実施例20
実施例20では、7.6×7.6cmの正方形の厚さ100μmのPETフィルム2枚の中央から直径3.7cmの穴を切り取ってマスクを作製した。7.6cm×7.6cmのTIPS膜A多孔質膜材料を、2枚のPETマスクの間にはさんだ。25重量%のNafion 1100溶液6〜7滴をPETマスク穴で定められる容積(約0.1ml)に加えた後で、このサンドイッチ構造を厚さ0.025cmのTeflonシート2枚の間にさらにはさんだ。25重量%のNafion溶液は、購入した5重量%溶液の溶媒を蒸発させて得た。このサンドイッチ構造をステンレススチール製シムストックの間に置いた。この組立品全体をCarverプレスの圧盤の間において、室温で5.0分間3.2トンの力をかけた。約30滴/mlであると仮定して、すべての空隙に入ることができるのであれば、6〜7滴で膜の空隙体積の70%を充填するために必要な量の約2倍を超えるはずである。加圧後、過剰のNafion溶液を撒く表面からふき取り、膜を約48Cのエアオーブンで12分間乾燥した。直径3.5cmのディスクを充填した膜の中央から打抜いて、取り込まれたNafion質量を秤量して求めると2.88mg/cm2または0.32g/cm3であった。
【0115】
入手した状態でのTIPS膜AのGurley数を測定すると、8sec/100ccであった。充填した膜のGurley数を測定するために、Carverプレスト14%Nafion溶液を使用し上記手順と同様にして部分的にTIPS膜Aの第2の試料を部分的に充填した。電極を取り付けなかったこの試料のGurley数を測定すると、900sec/3ccを超え、30,000sec/100ccに対応する値となった。
【0116】
次に、電極層と、ICMと、第2電極層とを含む3層膜電極アセンブリを、熱および圧力を利用してポリイミド基材のナノ構造電極粒子を部分充填膜の両面に移動させることによって作製した。充填した膜ディスクを、ポリイミドに支持されたナノ構造要素のナノ構造フィルムの2枚のシートの間に置いた。これらの要素は、PR149ウィスカー上に、質量から計算して3000オングストロームの厚さになるNiを最初に、1000オングストロームの厚さになるPtを次にコーティングしたものであり、部分充填膜と接触するように配置させる。コーティングしていないポリイミドとPTFEシートのさらなる層を、サンドイッチ構造のどちらかの側にもさらに重ねて、圧力が均等に分布するようにして、最後に1組のステンレススチール製シムをこの組立品の外側に配置する。得られた組立品を低圧力の機械プレス(Carver 6” press)の加熱した圧盤のあいだに置き、数分間かけて99℃と平衡状態となるようにして、15.1MPa(0.17トン/cm2)の圧力を90秒間かけて、圧力をかけたまま圧盤を数分間水冷して、次に取り出した。次に、最初のポリイミド基材を膜から剥離した。触媒粒子の移動は完全で非常に均一であった。
【0117】
図3は、実施例20で使用した入手した状態のTIPS膜A材料の表面を表面から見た状態で2000倍で撮影した走査電子顕微鏡写真であり、多孔度が大きいことが分かる。
【0118】
図4は、MEAの断面を1000倍で撮影した走査電子顕微鏡写真であり、膜電極アセンブリの厚さは約33μmとなり、最初の膜厚さ約89μmよりも薄くなったことが分かる。
【0119】
図5は、電極の片側を5000倍で撮影した走査電子顕微鏡写真であり、電極粒子が膜に埋め込まれているのがわかる膜の破損した端から、最初のポリプロピレンマトリックスの微小繊維の特性の形跡の一部が見られる。
【0120】
比較のため、Nafionを充填しなかった膜の一部に電極粒子を充填した。図6は、4000倍で撮影した走査電子顕微鏡写真であり、この部分の厚さは約15μmに減少し、最初の厚さの約1/6となった。対照的に、部分充填工程後には膜は最初の厚さの約1/3にしか圧縮されなかった。
【0121】
実施例21
実施例21では、7.6×7.6cmの正方形で厚さ50μmポリイミドフィルム2枚について、2.23cm×2.23cmの正方形の穴(面積5cm2)をそれぞれの中央から切り取ってマスクを作製した。7.6×7.6cmのTIPS膜A多孔質膜材料をこれら2枚のポリイミドマスクの間にはさんだ。正方形の穴で定められる体積に14重量%のNafion 1100溶液6〜7滴を加えた後、このサンドイッチ構造をポリイミドの切り取っていないシート2枚の間にさらにはさみ、最後に厚さ0.025cmのTeflonシート2枚の間にはさんだ。このサンドイッチ構造を、ステンレススチール製シムストックの間に置き、この組立品全体をCarverプレスの圧盤の間に置いた。3.2トンの力を室温で3分間かけた。加圧後、外側のポリイミド層を取り外して、正方形の穴で定められた領域のTIPS膜表面の過剰のNafion溶液をふき取り、このTIPSは最初のポリイミドマスクにはさんだままにした。この組立品を約48Cのエアオーブンで25分間乾燥した。
【0122】
ポリイミド基材上に支持された電極粒子で構成されるナノ構造フィルムを使用してMEAを作製した。実施例21で使用したナノ構造電極粒子は、実施例20の場合のようにポリイミド基材に支持されたものであったが、質量から計算して1000オングストロームであるPtをNiの代わりにコーティングし、継ぎもPtをコーティングした。面積5cm2の正方形のポリイミドに支持されたナノ構造フィルムを、各マスクの正方形の穴の中に置いた。この組立品を210〜215℃に予備加熱し、14.2MPa(0.12トン/cm2)で1分間加圧し、加圧のまま冷却した。充填した膜の5cm2の領域のPtコーティングナノ構造が残るようにウィスカーを支持するポリイミド基材を剥離して除去した。SEM顕微鏡写真から、圧縮した3層構造MEAの厚さは31μmであることが分かり、加圧工程によりナノ構造電極粒子が充填膜に表面に埋め込まれていることが実証された。
【0123】
このMEAから燃料電池を作製するために、3層MEAの各5cm2電極領域を、燃料電池電極バッキング材料としてEtek,Inc.(Natick,MA)より入手できる炭素のみのELATTM材料の同じ大きさの正方形で覆った。ELATは、炭素織布とカーボンブラック/Teflonコーティングで作られた複合材料である。得られた5層のセルを、Fuel Cell Technologies,Inc.(Albuquerque,NM)より供給されMEAの大きさおよび形状に合うように作られた燃料電池試験取付具に取り付けた。Fuel Cell Technologies,Inc.の燃料電池試験装置を使用して、それぞれの電極にH2/酸素気流を当ててこの5層MEAを試験した。
【0124】
図7の曲線Aは、水素圧および酸素圧がそれぞれ63絶対kPa(9psig)および327絶対kPa(18psig)、セル温度40℃、流速200sccmにおいてこの実施例の燃料電池アセンブリが発生した電圧対電流密度の初期分極曲線を示している。
【0125】
実施例22
実施例22では、実施例21の記載と同じNafion部分充填TIPS膜A膜と、同じ種類のナノ構造電極と、同じ手順を使用して3層MEAを作製した。しかし、ナノ構造電極を取り付ける前に、ポリイミドマスクの5cm2の正方形の穴から露出した充填膜の各領域に5重量%のNafion溶液をさらに1滴ずつ加えて、40℃で15分間乾燥させた。実施例21のようにしてPtをコーティングした電極粒子を取り付けた。この場合、Ptをコーティングした電極粒子は、充填膜の表面に残った溶液キャストNafionの薄い表層に埋め込まれる。1mlが30滴であると仮定すると、キャストNafion層の乾燥厚さは約3μmとなる。ナノ構造電極粒子は、長さ約1〜2μmで幅約30〜60nmである。
【0126】
この3層MEAについて、ELAT電極バッキングを取り付けた燃料電池MEAとして、実施例21に記載のように試験した。図7の曲線Bは、水素/酸素圧が170/205絶対kPa(10/15psig)、セル温度70℃、流速200sccmにおける分極曲線の例を示している。試験終了後、この実施例のMEAを完全に乾燥させた。その厚さは25μmであり、実施例21の膜よりもさらに圧縮されていることを示している。
【0127】
実施例23〜25
実施例23〜25では、2種類の異なる充填方法でp−STSI電解質を充填したTIPS膜Aを用いてMEAを作製し、そのMEAを燃料電池で評価した。これらの実施例では、膜の形態の予想外の変化が示される。
【0128】
実施例23では、20重量%のp−STSIをMeOHおよび水の70/30v/v混合物に溶解した溶液を調製した。吸引のためのVenturi空気装置をゴムホースで接続した250ml真空フラスコの上部に挿入したCoors D37セラミックろ過用漏斗の平らな底部の穴を覆うようにTIPS膜Aの直径2.5cmのディスクを載せた。TIPSディスクに溶液6滴を加え、Venturi装置に十分な空気圧をかけることで溶液を吸引して膜を通過させると、この工程は約8秒かかった。乾燥後ディスクの中央の厚さは約75μmであった。図9は、膜の上面を1000倍に拡大して撮影した走査電子顕微鏡写真である。p−STSIの部分的充填の後で、なお開放された間隙が膜にかなりの量で存在することが分かる。
【0129】
110℃で1分間予備加熱の後、1分間加圧し、加圧状態で4分間冷却することで18.9MPa(0.16トン/cm2)の圧力を用いて、実施例21に記載のものと同様のPtをコーティングした電極粒子を部分充填膜に押込んだ。図10は1000倍に拡大して撮影した断面の走査電子顕微鏡写真であり、MEAの厚さが初期の89μmから59μmに減少していることを示している。驚くべきことに、もはや膜は均一であり、最初の孔隙はまったく見られない。この均一性は10,000倍の図11でもなお観察できる。図11では、膜表面に埋め込まれたナノ構造電極粒子も見られる。ナノ構造電極粒子を埋め込んでMEAを作製する方法が膜内部の形態を大きく変化させたということは予想外であった。NafionTM溶液からコーティングされたTIPS膜は多孔質膜の微小繊維上にコーティングされたアイオノマーを有するものとしてSEMで観察されるが、p−STSIの場合は孔隙を優先的に充填し、また孔壁の表面も濡らしていると思われる。
【0130】
実施例24では、実施例11に記載の液圧プレス法およびPETマスクを使用したことを除けば実施例4に記載のようにして、TIPS膜A膜の2.5cmのディスクにp−STSI溶液を部分的に充填した。PETマスクの2.5cm開口部の両側に溶液5滴を加えて露出された膜をぬらし、室温で3トンの圧力を3分間かけた。表面の過剰分をふき取り、試料を50℃のエアオーブンで30分間乾燥した。充填されたp−STSIの質量を求めると、1.1mg/cm2または0.15g/cm3であった、実施例23と同様の条件で84MPa(0.71トン/cm2)を使用し、実施例23と同様のPtをコーティングしたナノ構造フィルムを埋め込むことでMEAを作製した。図12は、断面を撮影した走査電子顕微鏡写真であり、圧縮されたMEAの厚さが28μmであることを示している。図12は、図10のように内部膜構造が外部層に沿って実質的に均一であるように見えるが、多孔質構造の一部が中央部分に明らかに存在し、これは電解質の浸透が不十分であるためと思われる。しかし、膜を横断する孔は図12には見られない。
【0131】
実施例25では、実施例24と同じ充填手順と、実施例24と類似の電極取り付け手順を実施した。電極の取り付けは、5分間の予備加熱の後、106.5MPa(0.9トン/cm2)の圧力を230°Fで1分間かけ、加圧下で5分間冷却することで行った。燃料電池MEA試料は、のポリイミドマスクの面積5cm2の開口部の中にはさんで作製した。燃料電池MEA試料について実施例20に記載の試験を行った。図8は、50℃および5psigのH2/O2圧で得た分極曲線を示している。
【0132】
当業者であれば本発明の種々の修正および変更は、本発明の範囲および原理から逸脱することなしに明らかになるであろうし、本発明が上述の説明的実施例によって不当に制限されるものではないことを理解できるであろう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)多孔質膜にイオン伝導性電解質を部分的に充填して部分充填膜を作製する工程と;
b)前記部分充填膜から空隙体積をなくし、前記電極粒子を前記部分充填膜に埋め込むように前記部分充填膜と電極粒子を互いに圧縮する工程とを含む膜電極アセンブリの作製方法。
【請求項2】
前記電極粒子がナノ構造要素である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多孔質膜がポリプロピレンであり、熱誘発性相分離(TIPS)によって作製される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔質膜を部分的に充填する前記工程が、a)多孔質膜をイオン伝導性電解質の溶液に浸漬し、次にb)前記膜を乾燥することを含む少なくとも1つの浸漬工程を含む請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記多孔質膜を部分的に充填する前記工程が、多孔質膜とイオン伝導性電解質の溶液とを互いに機械的に圧縮することを含む請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記多孔質膜を部分的に充填する前記工程が、空気圧差によってイオン伝導性電解質の溶液を多孔質膜に強制的に送り込むことを含む請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
構造式CH2=CH−Ar−SO2−N-−SO2(C1+nF3+2n)を有し、式中nが0〜11であり、式中のArが任意の置換または未置換アリール基であるモノマーを含むモノマーの重合生成物を含むポリマーを含む請求項1から6のいずれか1項に記載の方法に従って作製した複合膜。
【請求項8】
ポリスチレニルトリフルオロメチルスルホニルイミド(p−STSI)を含む請求項7に記載の複合膜。
【請求項9】
多孔質膜とポリマーイオン伝導性電解質を含み、前記ポリマーイオン伝導性電解質が、10,000倍を上限とする倍率の走査電子顕微鏡で多孔質構造を確認できない程度に孔隙を充填している請求項1から6のいずれか1項に記載の方法に従って作製した複合膜。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の膜電極アセンブリを含む電気化学的装置。
【請求項1】
a)多孔質膜にイオン伝導性電解質を部分的に充填して部分充填膜を作製する工程と;
b)前記部分充填膜から空隙体積をなくし、前記電極粒子を前記部分充填膜に埋め込むように前記部分充填膜と電極粒子を互いに圧縮する工程とを含む膜電極アセンブリの作製方法。
【請求項2】
前記電極粒子がナノ構造要素である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多孔質膜がポリプロピレンであり、熱誘発性相分離(TIPS)によって作製される請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔質膜を部分的に充填する前記工程が、a)多孔質膜をイオン伝導性電解質の溶液に浸漬し、次にb)前記膜を乾燥することを含む少なくとも1つの浸漬工程を含む請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記多孔質膜を部分的に充填する前記工程が、多孔質膜とイオン伝導性電解質の溶液とを互いに機械的に圧縮することを含む請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記多孔質膜を部分的に充填する前記工程が、空気圧差によってイオン伝導性電解質の溶液を多孔質膜に強制的に送り込むことを含む請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
構造式CH2=CH−Ar−SO2−N-−SO2(C1+nF3+2n)を有し、式中nが0〜11であり、式中のArが任意の置換または未置換アリール基であるモノマーを含むモノマーの重合生成物を含むポリマーを含む請求項1から6のいずれか1項に記載の方法に従って作製した複合膜。
【請求項8】
ポリスチレニルトリフルオロメチルスルホニルイミド(p−STSI)を含む請求項7に記載の複合膜。
【請求項9】
多孔質膜とポリマーイオン伝導性電解質を含み、前記ポリマーイオン伝導性電解質が、10,000倍を上限とする倍率の走査電子顕微鏡で多孔質構造を確認できない程度に孔隙を充填している請求項1から6のいずれか1項に記載の方法に従って作製した複合膜。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の膜電極アセンブリを含む電気化学的装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−108658(P2011−108658A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−11156(P2011−11156)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【分割の表示】特願2000−516391(P2000−516391)の分割
【原出願日】平成10年9月4日(1998.9.4)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11156(P2011−11156)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【分割の表示】特願2000−516391(P2000−516391)の分割
【原出願日】平成10年9月4日(1998.9.4)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】
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