膜電極アセンブリ
【課題】イオン伝導性膜を具備する膜電極アセンブリを提供する。
【解決手段】アセンブリ100において触媒がイオン伝導性膜102の主面に隣接し、多孔質粒子充填ポリマー膜がイオン伝導性膜に隣接している。触媒をイオン伝導性膜102の主面上に配置することができる。触媒をナノ構造内に配置することが好ましい。電極支持層108、110として利用できるポリマーフィルムを、粒子装填多孔質フィルムをそのポリマーの融点の約20℃以内の温度で加熱処理して、ガーレー値および電気抵抗率を低下することが好ましい。MEA100を連続ロール処理において製造することができる。このMEA100を用いて燃料電池、電解槽および電気化学反応炉を製造することができる。
【解決手段】アセンブリ100において触媒がイオン伝導性膜102の主面に隣接し、多孔質粒子充填ポリマー膜がイオン伝導性膜に隣接している。触媒をイオン伝導性膜102の主面上に配置することができる。触媒をナノ構造内に配置することが好ましい。電極支持層108、110として利用できるポリマーフィルムを、粒子装填多孔質フィルムをそのポリマーの融点の約20℃以内の温度で加熱処理して、ガーレー値および電気抵抗率を低下することが好ましい。MEA100を連続ロール処理において製造することができる。このMEA100を用いて燃料電池、電解槽および電気化学反応炉を製造することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、電解槽および電気化学反応炉などの膜電極アセンブリおよび電気化学電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料の電気化学的な酸化と、酸化剤による還元とにより電流を発生するものである。この2つの化学反応物、すなわち燃料および酸化剤は、それぞれ触媒を電解質に接触させて含有する2つの隔離された電極においてレドックス反応を起こす。イオン伝導素子はその電極間に位置して、2つの反応物が直接反応することを防ぎ、イオンを導通する。集電装置が電極間を接合する。反応物質が触媒領域に到達できるように、この集電装置を多孔質とする。
【0003】
燃料および酸化剤の供給が継続する限り、燃料電池は電流を発生しつづける。H2が燃料であれば、燃料電池のレドックス反応における副生品は熱および水だけである。発電が必要な場所のどこにも燃料電池を適用することができる。その上、燃料電池は環境的にやさしい。
【0004】
電解槽では、電気により水を水素と酸素とに分解する。同様に、塩素アルカリ電池などの電気化学反応炉も電気を利用してアルカリブラインから塩素を生成する。電解槽と電気化学反応炉とは基本的に逆の燃料電池の作動にかかわる。例えば、装置に電流を流して水から水素および酸素を生成する電解槽に対して、燃料電池での使用に適した対応イオン伝導素子を触媒槽と集電子層との間に配置してもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本発明は、
第1および第2の主面を有するイオン伝導性膜と、
その第1および第2の主面に隣接する触媒と、
ポリマーマトリックスおよび、そのポリマーマトリックスに埋設した約45〜約98重量%の導電性粒子を具備してイオン伝導性膜に隣接する、多孔質導電性ポリマーフィルムと、
を具備する電気化学MEAを特徴とする。
【0006】
一好適実施態様において、ポリマーフィルムのガーレー値は約50s/50cc未満である。このポリマーマトリックスに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル))およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含有することができる。エチレン系導電性粒子にカーボンを含有することができる。この多孔質ポリマーフィルムが約20オーム−cm未満の電気抵抗を有することが好ましい。
【0007】
触媒材料をイオン伝導性膜と多孔質導電性ポリマーフィルムとの間の界面に配置することができる。この触媒材料をイオン伝導性膜の表面上に配置することもできる。好適実施態様において、触媒材料をナノ構造素子内に配置する。
【0008】
別の態様において、本発明は、
第1および第2の主面を有するイオン伝導性膜と、
その第1および第2の主面に隣接する触媒と、
導電性粒子およびフィブリル化されたPTFEフィブリルの多孔質マトリックスを具備してイオン伝導性膜に隣接する、多孔質導電性ポリマーフィルムと、
を具備する電気化学MEAを特徴とする。
【0009】
触媒材料をイオン交換膜と多孔質導電性ポリマーフィルムとの間の界面に配置することができる。この触媒材料を多孔質導電性ポリマーフィルムの少なくとも1主面上に配置することができる。導電性粒子にカーボンを含有することができる。この多孔質ポリマーフィルムのガーレー値は50s/50cc未満であり、電気抵抗は20オーム−cm未満であることが好ましい。
【0010】
別の態様において、本発明は、ポリマーマトリックスおよび約45〜約98重量%の導電性粒子を含む多孔質ポリマーフィルムを、フィルムを冷却してもフィルムの物理的一体性および機械的特性を実質的に保持しつつ、ガーレー値が少なくとも約25%低下し、フィルムの電気抵抗が少なくとも約25%低下するまで充分な時間をかけてポリマーマトリックスの融点の20°以内で加熱するステップを含む導電性ポリマーフィルムの製造方法を特徴とする。このポリマーマトリックスに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル))およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含有することができる。導電性粒子にカーボンおよび/または1種類あるいは2種類以上の導体金属を含有することができる。この多孔質ポリマーフィルムが約20オームcm未満の電気抵抗を有することが好ましい。多孔質フィルムは約80〜約98重量%の導電性粒子を含有することが好ましい。温度は、融点を約5〜約20℃超えた範囲をとることができる。加熱後、フィルムのガーレー値が50秒/50cc未満であることが好ましい。この方法に、押出されたフィルムを急冷する差動冷却を用いて、一方の面の密度を高くして孔を小さくし、他方の面の密度を下げて孔を大きくすることにより非対称なフィルムを製造するステップをさらに具備することができる。この差動冷却は、調節した温度において注型ホイールを用いて実施することができる。
【0011】
別の態様において、本発明は、
(a)結晶化性ポリオレフィンポリマーマトリックス、導電性粒子および、ポリマー希釈剤を含むポリマーフィルムを形成するステップと、
(b)表面構造をポリマーフィルムに適用するステップと、
(c)表面構造の適用前あるいは適用後にオイルを除去するステップと、
を具備する電気化学MEA用電極支持層の形成方法を特徴とする。
【0012】
別の態様において、本発明は、前段落にて説明したように準備したガス透過性かつ導電性多孔質フィルムをそれぞれ備える複数の電極支持層をイオン伝導性ポリマー膜の両面に配置し、触媒層をそのイオン伝導性膜および電極支持層の各間に配置するステップを含む電気化学MEAの形成方法を特徴とする。
【0013】
別の態様において、本発明は、ガスに透過性かつ導電性でありフィブリル化された多孔質PTFEフィルムと、そのフィルムに埋設された導電性粒子とをそれぞれ含む複数の電極支持層をイオン伝導性ポリマー膜の両面に配置し、触媒層をイオン伝導性膜および電極支持層の各間に配置するステップを含む電気化学MEAの形成方法を特徴とする。
【0014】
別の態様において、本発明は複数の5層MEAの製造方法を特徴とし、この方法は、複数の5層MEAをイオン伝導性膜のウェブから切断できるように、イオン伝導性膜のウェブ沿いの適した位置に触媒層および電極支持層を適用するステップを含む。
【0015】
別の態様において、本発明は、約45重量%を超える導電性粒子を含有し、水との接触下において90°を超える後退および前進接触角を呈し、前進接触角が後退接触角を超える量が50°以下だけである表面を有するフィルムを特徴とする。前進接触角は、後退接触角を30°以下だけの差で上回ることが好ましく、20°以下だけの差であればより好ましい。
【0016】
別の態様において、本発明は、1種類のポリマーおよび約45重量%を超える導電性粒子を含有するフィルムの製造方法であって、融点付近から融点を約20℃超える温度まで加熱して、フィルムを元の長さの約25%〜約150%を伸張するステップを含む製造方法を特徴とする。
【0017】
別の態様において、本発明は、複数のMEA素子を含むポリマーウェブを特徴とする。このMEA素子を、イオン伝導性ポリマー材料の連続ウェブに沿って配置することができる。このポリマーウェブに、ナノ構造触媒層および/または適切に配置されたシール材料をさらに具備することができる。
【0018】
本明細書内において説明するような電極支持層は、高導電性、高ガス透過性、良好な水管理特性および重要な製造有利点を有する。所与の燃料電池電圧において生成される電流が特定するように、膜電極アセンブリ(MEA)にこの電極支持層を備えることにより性能を改良することができる。有利なことに、本発明のフィルムは、適切な疎水性を有して水管理を効率的に実施することができるため、効率的な水管理に適した疎水性を呈しており、使用するとフィルムの性能が変化する恐れのあるフルオロポリマーコーティングへの出費あるいはその必要性が生じない。この多孔質ポリマー性電極支持層を、連続ロール加工などの多層MEAの能率的商用製造方法において用いることが可能である。連続ロール加工により、比較的速い速度で何百もの電気化学電池構成要素の低コストの組立が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】5層MEAの略断面図である。
【図2】燃料電池積層物を示す略断面図である。
【図2A】燃料電池積層物を示す略断面図である。
【図3】MEAの連続ロールを示す斜視図である。
【図3A】MEAの連続ロールを示す斜視図である。
【図4】3セルを備えたMEA積層物の分解斜視図である。
【図5】TIPT処理における適切な条件の評価に有用な、結晶質熱可塑性ポリマーの相挙動を示すグラフである。
【図6】TIPT処理により得られるカーボン装填電極支持材料の高電流密度における抵抗率を得るための電池電圧と電流密度との関係を示すグラフである。
【図7】TIPT処理により製造された電極支持層を組み入れた2つの5層MEAおよび、比較用に商用電極支持材料を用いて製造した電池における電池電圧と電流密度との関係を示すグラフである。
【図8】TIPT処理により得られるカーボン装填電極支持材料を用いて製造した付加電池および、比較用に商用電極支持材料を用いて製造した電池における電池電圧と電流密度との関係を示すグラフである。
【図9】PF処理により製造された電極支持層および、比較用に商用電極支持材料のガーレー値を示す棒グラフである。
【図10】燃料電池試験アセンブリにおいて測定された、PF処理により製造された電極支持層および商用電極支持材料の関数として印可された電圧を示すグラフである。
【図11】PF処理により製造した電極支持層を組み入れた燃料電池MEAの電池電圧と電流密度との関係を、商用電極支持層を用いて製造した燃料電池MEAに比較したグラフである。
【図12】それぞれを当量の触媒をコーティングしたイオン伝導性膜を用いて試験して、TIPT処理により製造した電極支持層を組み入れた燃料電池MEAの電池電圧と電流密度との関係を、商業的材料を組み入れた対照と共に示したグラフである。
【図13】平滑注型ホイールを用いてTIPT処理により製造した電極支持層を組み入れた燃料電池の電池電圧と電流密度との関係を示すグラフであり、これにより、電池内における面対面配置に対する電極支持フィルムの配向に依存する電池内の非対称な電極支持層の電池性能の差異を示す。
【図14A】熱処理を施していない例16Aのカーボン充填HDPEフィルムの注型ホイール側を示すSEM顕微鏡写真である。
【図14B】熱処理を施していない例16Aのカーボン充填HDPEフィルムの空気側を示すSEM顕微鏡写真である。
【図14C】熱処理を施していない例16Aのカーボン充填HDPEフィルムの断面を示すSEM顕微鏡写真である。
【図15A】130℃にて熱処理を施した例16Bのカーボン充填HDPEフィルムの注型ホイール側を示すSEM顕微鏡写真である。
【図15B】130℃にて熱処理を施した例16Bのカーボン充填HDPEフィルムの空気側を示すSEM顕微鏡写真である。
【図15C】130℃にて熱処理を施した例16Bのカーボン充填HDPEフィルムの断面を示すSEM顕微鏡写真である。
【図16A】熱処理を施していない例14のカーボン充填UHMWPEフィルムの断面を示すSEM顕微鏡写真である。
【図16B】熱処理を施した例14のカーボン充填UHMWPEフィルムの断面を示すSEM顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.電気化学電池構造
図1を参照すると、5層実施態様内の膜電極アセンブリ(MEA)100は、電流を発生するために燃料を電気化学的に酸化し、酸化剤を還元するためのさまざまな層を有する。イオン伝導性膜102により、MEA100の陰極104および陽極106が分離されている。イオン伝導性膜102の各側面が触媒層、すなわち陰極104および陽極106に接する。触媒層104、106はそれぞれ電極支持層108、110に接する。電極支持層108、110はそれぞれ両極板112、114に接する。電気化学電池をなす構成部分の形状および寸法は、具体的な設計により広範囲にわたって変化することができる。図1は、燃料電池における反応物質の流れを示す。電解槽および電気化学反応炉において、MEAに電圧を印可して、例えばCl2を形成するために電極に流れてきた組成物を分解する。以下の説明は燃料電池に焦点を当てるが、電解槽および電気化学反応炉に類似した点があることは明瞭である。
【0021】
イオン伝導性膜により、陽極および陰極間にイオン伝導性が得られ、反応物質に対するガス遮蔽遮断流を形成する。実施態様によっては、イオン伝導性膜を、陽電荷あるいは陰電荷のどちらかのイオンにのみ導電性である、すなわち陽イオン交換膜あるいは陰イオン交換膜にしても、あるいはプロトン交換膜などの1種類のイオンにのみ導電性である膜にしてもよい。
【0022】
幾種類かのイオンとは導電性であっても、イオン伝導性膜は電子およびガス反応物質に対して導電性であってはならない。ガス反応物質の通過を防止するため、イオン伝導性膜の厚さを充分にして機械安定性を保持し、完全に不透過性としなくてはならない。ガス反応物質がイオン伝導性膜を通過して導通してしまうと、反応物質が直接反応して好ましくない結果となる可能性がある。同様に、電子がイオン伝導性膜を通過して導通してしまうと、電池の短絡が起きて好ましくない結果となる可能性がある。したがって、イオン伝導性膜の製造に用いる材料は電子を導通するものであってはならない。反応物質の直接反応あるいは短絡が起こった場合、燃料および酸化剤の反応により放出されたエネルギを電気の生成に使用することはできない。
【0023】
イオン伝導性膜にポリマー電解質を含有することができる。このポリマーは化学的で安定であり、触媒を汚染しないように触媒と相溶性でなくてはならない。ポリマー電解質は、例えば酸化ポリエチレン、ポリ(コハク酸エチレン)、ポリ(β−プロピオラクトン)およびNafionTM(デラウェア州ウィルミントンのDupont Chemicalsから商業的に入手可能)などのフルオロポリマーなどのさまざまなポリマーから製造することができる。NafionTMは、ポリテトラフルオロエチレンをペルフルオロスルホニルエトキシビニルエーテルで加水分解し、スルホニル基をスルホン基に変換することにより製造する。適した陽イオン交換膜は米国特許第5,399,184号に説明されている。
【0024】
別の方法として、イオン伝導性膜を、イオン交換材料が膜に含浸して膜の内部容積をうまく充填している多孔質ミクロ構造を具備した膨張膜にすることができる。米国特許第5,635,041号には、膨張したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から形成されたこのような膜について説明されている。膨張したPTFE膜は、フィブリルにより相互連結された節のミクロ構造を有する。同様の構造が米国特許第4,849,311号に説明されている。
【0025】
燃料および酸化剤の電池反応は、別々の触媒面で半分ずつ起こる。反応物質ガス、すなわち燃料および酸化剤は、その各々の触媒層まで透過可能でなくてはならない。触媒は一般に粒子の形態にして、イオン伝導性膜および電極支持層に密接し、イオノマあるいは電解質を含有する層として配置する。この触媒層をイオン伝導性膜あるいは電極支持層に適用する方法はさまざまである。言いかえれば、この触媒をイオン伝導性膜および/または電極支持層の表面に適用することができる。他の方法として、触媒層をイオン伝導性膜の表面内に密封あるいは埋設することができる。
【0026】
例えば、イオン伝導性膜に、米国特許第5,338,430号に説明されている膜などのナノ構造触媒層を含むことができる。このナノ構造フィルムは、接触活性物質によりコーティングした2成分ウィスカあるいは接触活性物質を含む1成分構造である複数のナノ構造素子を有する。このナノ構造素子を、固体電解質、イオン交換膜あるいは他のポリマーマトリックスなどのカプセル材料内に埋め込むことができる。ナノ構造膜の製造は米国特許第5,238,729号に説明されている。
【0027】
燃料電池に適した触媒は一般に、選択した反応物質に依存する。水素あるいはメタノール燃料の酸化に適した触媒材料の例として、たとえばPd、Pt、Ru、Rhおよびこれらの合金などの金属を挙げられる。酸素削減用に一般に使用する触媒の例として、カーボン粒子上で支持されているプラチナを挙げられる。電解槽および電気化学反応炉にて使用する触媒は異種であることが好ましい場合がある。例えば、電解槽における酸素発生用には、酸化Ruおよび酸化Irの混合物が一般に、Ptよりも良好な性能を示す。
【0028】
電極支持層は集電装置として機能する。この電極支持層を多孔質にしてガス反応物質を透過させる。電気導電性を付与するため、この電極支持層に導電性粒子を含有する。所望により、電極支持層に表面構造を持たせることができる。この電極支持層の詳細な特徴については後述する。
【0029】
両極板は通常、その表面にチャネルおよび/または溝を有して、燃料および酸化剤をそれぞれの触媒電極に送る。通常、両極板は高導電性であり、グラファイトおよび金属から製造することができる。本発明による電極および電極支持層は一般に、H2、およびメタノールおよびガソリンなどの改質された炭化水素および、大気中あるいは純粋なO2を含む標準酸化剤を含む標準燃料のいずれと併用することも可能である。
【0030】
一般に、複数の燃料電池あるいはMEA150を組み合わせて、図2に示すような燃料電池積層152を形成する。積層内の電池は、各燃料電池の電圧が追加式になるように両極板により連続して接続されている。燃料電池積層の形成に関する詳細をさらに以下に説明する。
【0031】
B.電極支持層/電極
電極支持層は、ポリマーバインダおよび導電性粒子を含有する多孔質ポリマーフィルムを具備する。一般に、このフィルムは、ポリマーマトリックスの比較的小部分により互いに保持されている導電性粒子をかなり装填していなければならない。このフィルムの導電性粒子量は一般に、約45容量%を超え、約65〜約96容量%であればより好ましい。導電性粒子だけでなく、触媒層(電極)を電極支持層の表面上にコーティングすることができる。
【0032】
電極支持層を形成するポリマーフィルムを多孔質にして、電極支持層およびイオン伝導性膜の界面において反応物質を触媒粒子に向かって流動させる。フィルムの適度な電気的導電性および機械的強度を維持しつつ、反応物質の均等な流れをもたらすのに適した多孔度を有するフィルムが好適である。また、ポリマーフィルムを多孔質にすることにより、電池内の水管理も可能となる。電極支持層の多孔度を充分に高くして、水が凝結してフィルムの孔を遮蔽し、蒸気の通過を遮ることになる領域を発生させることなく、燃料ガスおよび水蒸気を通過させることが好ましい。平均孔径は一般に、約0.01ミクロメータ〜約10.0ミクロメータの範囲である。他の方法として、ウェブの多孔度をウェブのガーレー値で、すなわち以下に説明するように、所与量のガスが予め定められたウェブ領域を特定圧力損失下で通過するのに必要な時間量で表すこともできる。ガーレー値が約100秒/10cc未満であれば、一般に適したウェブである。
【0033】
水管理性能を補強するため、非対称に多孔質である電極支持層を用いることができる。水が生成される陰極に隣接する電極支持層により小さな孔を設け、両極板に隣接するMEAの外側により大きな孔を設けることが好ましい。小さな孔内の圧力が高いほど、水を陰極から押し出すことになる。非対称な多孔度を有する電極支持層の形成については後述する。
【0034】
導電性粒子に、金属およびカーボンなどのさまざまな導電性材料を含有することができる。その形状および寸法も多岐であってよい。好適導電性粒子の例として導電性カーボンを挙げられる。導電性粒子の直径は約10ミクロン未満であることが好ましく、約1ミクロン未満であればより好ましい。適したカーボン粒子の例として、カーボンブラック、グラファイト、カーボン繊維、フラーレンおよびナノ細管を挙げられる。好適カーボン粒子の例としてカーボンブラックを挙げられる。商業的に入手可能なカーボンブラックの例として、Vulcan XC72RTM(マサチューセッツ州BilericaのCabot Corp.)、Shawinigan C−55TM 50%圧縮アセチレンブラック(テキサス州ヒューストンのChevron Chemical Co.)、Norit型SX1TM(ジョージア州アトランタのNorit Americas Inc.)、Corax LTMおよびCorax PTM(ニュージャージー州Ridgefield ParkのDegussa Corp.)、Conductex 975TM(ジョージア州アトランタのColombian Chemical Co.)、Super STMおよびSuper PTM(ベルギー、ブリュッセルのMMM nv、MMM Carbon Div.)、KetJen Black EC 600JDTM(イリノイ州シカゴのAkzo Nobel Chemicals,Inc.)を挙げられる。有用なグラファイト粒径は最大約50μmの範囲であり、約1〜約15μmであれば好ましい。適した商業的グラファイトの例として、例えばMCMB 6−28TM(日本、大阪のOsaka Gas Chemical Co.)およびSFG 15TM(ニュージャージー州Fair LawnのAlusuisse Lonze America Inc.現在のTimcal)を挙げられる。導電性カーボンブラックの主要粒子の寸法は約10nm〜約15nmの小ささが可能であるが、販売されているように数ミリにおよぶ塊状であってもよい。分散後、それらの塊も約0.1ミクロン(100nm)未満の粒子に分解することが好ましい。グラファイトとより導電性の強いカーボンブラックとの混合物も有用である。本発明による電極支持材料内において有用な導電性カーボン繊維の例として、例えば、マサチューセッツ州NewberyportのSTREM Chemicals,Inc.から入手可能なカタログ番号06−0140の、およそ6mm長さで0.001cm直径の繊維を挙げられる。
【0035】
一般に、ポリマーマトリックスは、粒子を装填した多孔質フィルムに適切に処理できるポリマーであればいずれのポリマーも含有することができる。適したポリマーの種類として、例えば熱可塑性ポリマー、感熱性ポリマーおよびフルオロポリマーを挙げられる。2種類の好適処理方法を以下に説明する。これらの好適処理方法により、対応ポリマーの特性に制約を付加することができる。
【0036】
導電性粒子に加え、充填剤を用いて本発明に有用なポリマーフィルムの物性特性を変更することができる。適した充填剤の例として、例えばケイ素(SiO2)、ポリテトラフルオロエチレン粉末およびフッ化グラファイト(CFn)を挙げられる。ポリマーフィルムに最大約20重量%の充填剤を含有できることが好ましく、約2〜約10重量%であれば尚好ましい。この充填剤は一般に粒子形態である。
【0037】
電極支持層の電気抵抗率は約20オーム−cm未満であることが好ましく、約10オーム−cm未満であればより好ましく、約0.5オーム−cm未満であれば最も好ましい。また、本発明において電極として有用なフィルムが呈する水に対する前進および後退接触角は約90°を超えることが好ましく、約110°を超えればより好ましい。この時、前進接触角が後退接触角を超える差は約50°未満であり、約30°未満であれば好ましく、約20°未満であればより好ましい。前進および後退接触角の測定については後述する。水に対する後退および前進接触角はフィルム表面の疎水性および、燃料電池の水管理において有効に機能するフィルムの性能を示す重要な手がかりである。電極支持層の2表面上では接触角が異なる可能性がある。同様に、陰極および陽極でも接触角は異なる可能性がある。
【0038】
ポリマーフィルムのガスフローに対する抵抗をガーレー値として表すことができる。このガーレー値は、後述するように、ASTM D726−58、Method Aに説明されているように、制御された圧力条件下においてフィルムの標準領域を通過するガスの流速値である。電極支持層のガーレー値は約100秒/50cc大気未満であることが好ましく、約50秒/50cc大気未満であればより好ましい。
【0039】
電極支持層の表面に微小構造を設けることにより、界面の電気導電性、水管理および流動領域性能を改良することができる場合がある。例えば、材料を、構造を設けた注型ホイールに射込む、あるいは片方のロールに構造を設けたニップロールによりエンボス加工することができる。電極支持層の表面に構造を設けることにより、ガス(例えば燃料、酸素および/または水蒸気)を輸送して燃料電池に出入りさせ、液状となった水を陰極から遠ざかる方向に流すことができる。
【0040】
好適ポリマーフィルムの製造に用いる2種類の方法について、次に説明する。
【0041】
1.TITP処理
多孔質電極支持層の製造に用いる第1の好適処理は、熱誘導相転移(TITP)に関る。このTITP処理は、高温にて希釈剤に可溶であり、比較的低温にて希釈剤に不溶であるポリマーの使用を基本とする。「相転移」に固体−液体相分離、液体−液体相分離、あるいは液体からゲルへの相転移を含むことができる。この「相転移」に熱力学変数における不連続を含める必要はない。
【0042】
TITP処理に適したポリマーの例として、熱可塑性ポリマー、感熱性ポリマーおよび、相溶性であるこれらの種類のポリマーの混合物を挙げられる。超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を直接溶融処理することはできないが、溶融処理向けに粘度を充分に低下させる希釈剤あるいは可塑剤を伴えば溶融処理することは可能である。適したポリマーは結晶化性であっても非晶質であってもよい。
【0043】
適したポリマーの例として、例えば結晶化性ビニルポリマー、縮合ポリマーおよび酸化ポリマーを挙げられる。結晶化性ビニルポリマーの代表例として、例えば高密度および低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリレート、ポリビニリデンなどのフッ素含有ポリマーおよび、対応コポリマーを挙げられる。縮合ポリマーの例として、例えばポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロンなどのポリアミド、ポリカーボネ-トおよびポリスルホンを挙げられる。酸化ポリマーの例として、例えばポリフェニレン酸化物およびポリエーテルケトンを挙げられる。適したポリマーとして他にはそのコポリマーである、TeflonTM PFA(デラウェア州ウィルミントンのE.I.DuPont de Nemours Chemical Corp.)として販売されているポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロ−(プロピルビニルエーテル))を挙げられる。ポリマーおよびコポリマーの配合物を使用してもよい。電極支持層向け好適結晶化性ポリマーの例として、その加水分解および酸化への耐性からポリオレフィンおよびフルオロポリマーを挙げられる。
【0044】
室温にて液体あるいは固体であり、ポリマーの融点にて液体である希釈剤が適している。ポリマー量希釈剤より抽出が容易であるため、低分子量希釈剤が好適である。しかしながら、希釈剤ポリマーおよびマトリックスポリマーが溶融状態において混和性であるならば、低分子量から中分子量ポリマーも希釈剤として使用可能である。充分な超大気圧を利用してポリマー融点において液体を生成することにより、ポリマーの融点より低い沸点を有する化合物を希釈剤として使用することができる。
【0045】
希釈剤のポリマーに対する相溶性は、一般に透明な均質溶液であることを見て取れる液体単相になるかどうかを特定するまで加熱しながらポリマーを混合することにより判定できる。適したポリマーは、融点において希釈剤に溶けるあるいは希釈剤と単相を形成するが、ポリマーの融点を下回る温度に冷却されると、連続した網状組織を形成する。この連続した網状組織は希釈剤から分離した相であるか、希釈剤がポリマー組織を膨潤する可塑剤として機能しているゲルであるかのいずれかである。このゲル状態を単相と考えることもできる。
【0046】
無極性ポリマーには、無極性有機液体が一般に希釈剤として好適である。同様に極性有機液体は一般に極性ポリマーに好適である。ポリマーの配合物を使用する場合、各ポリマーに相溶性である希釈剤が好適である。ポリマーがブロックポリマーである場合、希釈剤が各ポリマーブロックと相溶性であることが好ましい。2種類以上の液体の配合物も、ポリマーがポリマーの融点においてその液体配合物に可溶であり、冷却されるとポリマーの網状組織が形成される相転移が起こるならば、希釈剤として使用可能である。
【0047】
さまざまな有機化合物が希釈剤として有用であり、その例として以下の広範囲の分類からの化合物を挙げられる。すなわち、脂肪族系酸;芳香族系酸;脂肪族アルコール;芳香族アルコール;環状アルコール;アルデヒド;第一級アミン;第二級アミン;芳香族アミン;エトキシル化アミン;ジアミン;アミド;セバシン酸、フタル酸、ステアリン酸、アジピン酸およびクエン酸などのエステルおよびジエステル;エーテル;ケトン;エポキシ化植物油などのエポキシ化合物;リン酸トリクレシルなどのリン酸エステル;エイコサン、クマロンインデン樹脂およびテルペン樹脂、トール油、アマニ油および、潤滑油および燃料油を含む石油などの配合物、炭化水素樹脂およびアスファルトなどの炭化水素;および、さまざまな複素環式化合物である。
【0048】
適した多孔質材料の準備に有用なポリマーおよび希釈剤の特定配合物の例として、鉱油およびミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素、フタル酸ジオクチルおよびフタル酸ジブチルなどのエステル、あるいはジベンジルエーテルなどのエーテルを含むポリプロピレン;鉱油あるいはワックスを含む超高分子量ポリエチレン;鉱油などの脂肪族炭化水素、メチルノニルケトンなどの脂肪族ケトン、あるいはフタル酸ジオクチルなどのエステルを含む高密度ポリエチレン;デカン酸およびオレイン酸などの脂肪族系酸、あるいはデシルアルコールなどの第一級アルコールを含む低密度ポリエチレン;鉱油を含むポリプロピレンポリエチレンコポリマー;フタル酸ジブチルを含むポリフッ化ビニリデンを挙げられる。
【0049】
ポリマーおよび希釈剤の具体的な組み合わせには、1種類以上のポリマーおよび/または1種類以上の希釈剤を含有してもよい。鉱油およびミネラルスピリットはそれぞれ、通常炭化水素液の配合物であるため、化合物の混合物である希釈剤の例である。同様に、液体および固体の配合物を希釈剤として利用することもできる。
【0050】
熱可塑性ポリマーについて、溶融配合物が、約10重量部〜約80重量部の熱可塑性ポリマーおよび約90重量部〜約20重量部の希釈剤を含有することが好ましい。熱可塑性ポリマーおよび希釈剤の適切な相対量は各組み合わせで変化する。感熱性ポリマーの一例であるUHMWPEポリマーについて、溶融配合物が、約2重量部〜約50重量部のポリマーおよび約98重量部〜約50重量部の希釈剤を含有することが好ましい。
【0051】
結晶ポリマーについて、所与システムにおいて固体−液体あるいは液体−液体相分離に使用可能なポリマー濃度を、ポリマー−希釈剤システムについての温度−組成物グラフを参照して特定することができる。このグラフの1例を図5に示す。このようなグラフは、Smolders,van AartsenおよびSteenbergen著「Kolloid−Zu Z.Polymere」243:14−20(1971年)に説明されているように容易に展開することができる。システムをほぼ平衡点に留めるように充分に低速で冷却しながら、一連の組成物について曇り点を特定することにより相転移を見つけることができる。
【0052】
図5を参照すると、ガンマからαにかけてのグラフ部分が、熱力学的平衡点液体−液体相分離を示している。TUCSTはシステムの上方臨界温度を示す。アルファからベータにかけてのグラフ部分は、平衡点液体−固体相分離を示す。希釈剤を、結晶化性ポリマーおよび希釈剤システムが組成物の全範囲にわたり液体−固体相分離あるいは液体−液体相分離を呈するように選択することができる。
【0053】
ΦUCSTは、臨界組成物を表す。所望の多孔質ポリマーを形成するため、特定システムに使用するポリマー濃度はΦUCSTを超えることが好ましい。ポリマー濃度が臨界濃度(ΦUCST)を下回る場合、これらの相分離は冷却されると一般に、希釈剤を分散したあるいはポリマー粒子に弱く付着した連続相となり、得られるポリマー組成物は通常、充分な強度に欠けるため使用に耐えない。
【0054】
所与の冷却速度において、希釈剤−ポリマー配合物の温度−濃度曲線を、例えば冷却の1速度を図5において破線で示したように示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry)(DSC)により特定することができる。得られたポリマー濃度と融点との関係を示す曲線により、固体−液体(破線グラフの傾斜部分)および液体−液体(破線グラフの水平部分)相分離となる濃度範囲がわかる。このグラフから、ポリマーおよび所望の多孔質構造を得られる液体の濃度範囲を推定することができる。DSCによる融点−濃度グラフの特定は、結晶ポリマーの平衡温度−組成物曲線の特定に代わるものである。
【0055】
位相線図にかかわる上記の論議は、液体−液体相分離のみが見られる点を除き、無定形ポリマーにもあてはまる。この場合、曇り点は一般に、具体的な相転移を示す。同様に、ゲル形成ポリマーについて、関連する相転移は、均質な溶液からゲルへの転移を含む。ゲル形成ポリマーについて、粘度を急激に増加すると溶融物からゲルへの相転移を示すが、場合によって曇り点が発生する可能性もある。
【0056】
多くの希釈剤−ポリマーシステムについて、液体−ポリマー溶液の冷却速度が遅い場合、液体−液体相分離は、実質的に寸法が均一である液体の複数の液滴が生成されるのと実質的に同時に起こる。液滴が形成できるほど冷却速度が遅い場合、得られる多孔質ポリマーは細胞状ミクロ構造を有する。これとは対照的に、液体−ポリマー溶液の冷却速度が速い場合、この溶液はスピノーダル分解と呼ばれる自然転移を起こし、得られる多孔質ポリマーは、冷却速度が遅い場合に得られる液滴形成とは質的に異なる形態学特性および物性特性を有する、微細なレース構造を有する。この微細な多孔質構造はレース構造と呼ばれる。
【0057】
液体−固体相分離が起こると、その材料は、複数のポリマー粒子が空間をあけて無作為に配置され、不均一な形状であることを特徴とする内部構造を有する。材料全体に渡って隣接するポリマー粒子は互いに間隔をおいて位置して、その材料にミクロ細孔を相互連結した網状組織を提供し、ポリマーからなる複数のフィブリルにより互いに連結する。このフィブリルが整合されて伸長することにより、ポリマー粒子間に長い空間ができ、孔隙率も上昇する。充填剤粒子は、このように形成された構造の熱可塑性ポリマー内に位置する、あるいはポリマーに装着する。
【0058】
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の場合、冷却により得られる粒子はゲル状態で存在する可能性がある。構成するポリマー網状組織の性質は、冷却速度により左右される。冷却が速いとゲル形成が促進されやすく、冷却が遅いと多くの結晶が起こりやすくなる。希釈剤/UHMWPE重量比が80:20を超える組成物の場合はゲル形成が起こりやすく、希釈剤/UHMWPE重量比が80:20を下回る場合はますます結晶が起こりやすくなる。SEMにより特定したようにかなりの粒子が充填されたUHMWPEの場合のポリマー網状組織は、希釈剤の抽出後、微細孔を有するかなり緻密な構造物となる傾向にある。網状組織の構造は抽出処理により変更することができる。かなりの粒子を充填したUHMWPEフィルムは、抽出あるいは延伸中に拘束せずとも、抽出後も多孔質である。
【0059】
所望により、ポリマーを、そのポリマーに可溶であるあるいはポリマー内に分散可能である特定添加剤を配合することができる。使用に際し、その添加剤はポリマー化合物の約10重量%未満であることが好ましく、約2重量%未満であれば尚好ましい。一般の添加剤の例として、例えば酸化防止剤および粘度調整剤を挙げられる。
【0060】
溶融配合物は、電極に組み入れるための微粒子をさらに含有する。充填した組成物を得るため、フィルムの抽出あるいは延伸中に拘束することなく希釈剤を抽出して多孔質ポリマーフィルムを得ることができる。抽出中にフィルムを拘束すると、拘束せずに抽出したフィルムに比べ、泡立ち点が上昇し、ガーレー値が低下する可能性がある。電極支持層製造用粒子に導電性粒子を含有することができる。この粒子を複数材料の混合物にすることもできる。この粒子が希釈剤内において分散し、ポリマーおよび希釈剤の溶融配合物内において不溶であることが好ましい。この材料に適した種類は、上述したように、ポリマーおよび希釈剤に対して適切な相溶性を備えていなければならない。
【0061】
微粒子のいくつか、特に寸法の小さなカーボン粒子を核生成剤として利用することができる。この核生成剤はポリマーの結晶温度において固体であってもゲルであってもよい。寸法、結晶形および他の物性パラメータに依存して、広範囲の固体材料を核生成剤として使用することができる。例えばサブミクロン範囲の小さい固体粒子が核生成剤として良好に機能する。核生成剤の寸法は約0.01〜約0.1μmであることが好ましく、約0.01〜約0.05μmであればより好ましい。ポリプロピレンなどの特定ポリマーは核生成剤を併用するとTITP処理において良い性能を示す。
【0062】
核生成剤を含むと、結晶が開始される領域数が、含まない場合の数に比較して増加し、得られるポリマー粒子の寸法は小さくなる。さらに、単位容量あたりでポリマー粒子を結合するフィブリル数も増加する。材料の引張強さが、核生成剤を用いずに製造した多孔質フィルムに比較して向上する。
【0063】
多孔質網状組織において、粒子がポリマーマトリックス内に均一に分散し、引き続き溶媒を用いて希釈剤の抽出を行っても、洗い流されないようにポリマーマトリックス内にしっかり保持されていることが好ましい。粒子間の平均距離はポリマー内に装填された粒子量に依存するが、導電性粒子の場合、粒子は充分に密接して導電性を保持することが好ましい。混合が不充分であるとうまく分散せず粒子のたま(例えばカーボンの結節)ができてしまい、混合しすぎると塊がポリマー全体に分散する可能性があるため、ポリマーマトリックス内の粒子、特に導電性カーボン粒子の処理には注意が必要である。導電性粒子間の近接度は導電性を高レベルに保つために重要である。したがって、どちらのへの過度な片寄りも混合物の導電性特性のために好ましくない。
【0064】
この溶融配合物に対して、約40〜約50容量%までの分散粒子を含有することができる。高い希釈濃度に高い粒子の容量%を組み合わせれば、x相分離したポリマー組成物から希釈剤を抽出した後の粒子の重量%は高くなる。抽出および乾燥後のポリマー材料が約50〜約98重量%の粒子を含有することが好ましく、約70〜約98重量%であればより好ましい。
【0065】
希釈剤を最終的に材料から除去して、粒子を充填した実質的に液体を含まない多孔質かつ導電性ポリマー材料を得る。希釈剤を除去する方法は例えば、溶媒抽出、昇華、揮発あるいは他の従来方法のいずれであってもよい。希釈剤を除去後も、粒子相は多孔質構造内に少なくとも約90%のレベルで封じ込められたままであることが好ましく、約95%であればより好ましく、約99%であれば最も好ましい。言いかえれば、溶剤洗浄容器に微粒子が存在しないことからわかるように、希釈剤の除去に際してほとんどの粒子は除去されない。
【0066】
処理の概略を以下に説明するが、この処理は本明細書内の教示に基づいて変更することができる。TITP処理の一実施態様において、粒子を希釈剤表面下に分散し、封入された空気をその混合物から除去する。このステップの実行には、数分から約60分間にわたり数百RPMから数千RPMで動作する標準高速剪断混練機を使用することができる。例えばペンシルバニア州ReadingのPremier Mill Corp.製およびインディアナ州Fort WayneのShar Inc.製の高速剪断混練機が適切である。
【0067】
この第1の混合ステップ後にさらに分散する必要がある場合、その分散物を押出機内に注入する前に分散物を粉砕する、あるいは分散している要素を押出機内に投入することにより実行することができる。UHMWPEなどの剪断により破損しやすいポリマーについて、分散物を押出機に注入する前に大半の微粒子分散を行い、押出機内にて必要となる剪断を最小限にすることが好ましい。要望によって、第2のステップに、粒子を希釈剤内に分散することを含め、粒子塊をより小さな塊に分断して希釈剤内の大きなたまを排除することを含めてもよい。導電性は一般に、導通する粒子間の接触あるいは近接度により促進されるため、ほぼ最初の粒子まで完全に分散する必要はない、あるいは望ましくない。
【0068】
好適な分散程度は、最終的な電極フィルムの表面粗さの検査、およびその導電性の特定により決定することができる。表面は、目で確認できる範囲の表面全体にわたり、突出部がなくほぼ平滑かつ一様でなければならない。微粒子の分散が不充分であると、表面にさまざまな粗さの紙やすりのきめを持つフィルムが仕上がる可能性がある。特定例によっては、微粒子を湿潤するためのみに剪断を使用しても充分な分散が起こるため、粉砕が必要のない場合もある。希釈剤および初期粒子などの成分を適切に選択することにより、分散ステップの大幅な簡易化を図ることができる。
【0069】
分散をさらに必要とするあるいは所望する場合、微粒子物質を含有する希釈剤をミルにかけることができる。粒子/希釈剤の粉砕を比較的高速で行うことが好ましい。これにより粉砕処理がより効果的となる。有用なミルの例として、例えば磨砕機、横型ビーズミル、サンドミルを挙げられる。通常、横型ビーズミルを中程度のスループット速度(すなわちミルの最高スループット速度に対して中程度)で1度通せば充分である。相当量の分散が必要である場合、ミル内に分散物を1時間未満だけ循環されれば充分な場合も、約4〜約8時間の粉砕時間が必要な場合もある。
【0070】
少ない分量の処理に適切な装置の1例として、日本、東京のIgarachi Kikai Seizo Co.Ltd.製磨砕機Model 6TSG−1−4がある。この磨砕機は、約1リットル容積の水冷却システムを有し、約500ccの材料を処理できる性能を備えて約1500RPMで動作する。分量が多い場合、例えばペンシルバニア州ReadingのPremier Mill Corp.から販売されているさまざまな寸法の横型ミルを適した装置として挙げられる。
【0071】
粉砕により、塊をより小さな塊にするあるいは初期粒子に戻すことができるが、一般には初期粒子よりさらに小さな粒子に分解することはない。大きな粒子数が不当に多く存在する場合、任意に、粉砕した分散物を濾過してもよい。適した濾過器の例として、例えば塊状粒子あるいは3ミクロンを超える粒子の除去にはBrunswick Technitics(メリーランド州Timonium)製型番号C3B4U、3ミクロンロープ巻付け型濾過器などがある。
【0072】
濾過することにより、より均質な物品が得られ、抽出過程中に大型粒子がポンプを目詰まりして頻繁に故障することなく、狭い公差の歯車ポンプによる圧力下において分散物を計量供給することができる。濾過後、例えばニュージャージー州HightstownのMettler−Toledo,Inc.により製造されているModel DMA−4S Mettler/Paar比重計を用いて粒子密度を特定することができる。
【0073】
分散剤を希釈剤および粒子の混合物に添加して、希釈剤内における粒子の分散状態を安定させ、粒子を塊にせずに維持する補助とすることができる。分散剤を使用する場合、希釈剤−粒子混合物に、粒子の重量に対して約1重量%〜約100重量%の分散剤を含有することが好ましい。
【0074】
アニオン性、カチオン性および非イオン性分散剤が使用可能である。有用な分散材の例として、テキサス州ヒューストンのChevron Chemical Co.から入手可能なスクシニミド潤滑油添加剤であるOLOA1200TM、あるいはデラウェア州ウィルミントンのICI Americasから入手可能なHypermerTMシリーズ分散剤を挙げられる。
【0075】
希釈剤−粒子混合物を一般に、約150℃に加熱して、この混合物を押出機に注入する前に脱気する。室温までの冷却の有無にかかわらず、この混合物を押出機に注入することができる。このポリマーを通常、重量測定式給送機あるいは容量測定式給送機により押出機の給送領域に給送する。(別の実施態様において、少なくともカーボンの幾らかをこのポリマーとともに押出機に給送する。)熱可塑性ポリマーについて、希釈剤に接触する前にポリマーが少なくとも部分的に溶融するように、給送および溶融領域の温度を選択することが好ましい。粒子が容易に分散する場合、粒子を押出機に制御速度において給送し、希釈剤を別個に押出機内に計量給送することができる。粒子および液体の流れから、連続したインライン方式で微粒子を分散させるためのさまざまなインライン混練機が入手可能である。別の方法として、押出機内において適切に分散可能な場合、ポリマー、希釈剤および導電性粒子を別々の流れとして押出機に直接給送することができる。
【0076】
次いで、希釈剤−粒子混合物の溶融配合物を押出機内にてポリマーを用いて形成する。押出機内において充分に攪拌した後、その溶融配合物を所望の型に射込む。通常フィルム形状が所望であるため、溶融配合物をドロップダイを用いて温度制御した注型ホイール上に押出す。二軸スクリュー押出機が好適である。
【0077】
材料を所望形状に形成した後、この材料を、好適には急速に、冷却して相転移を誘導する。急冷条件はフィルムの厚さ、押出速度、ポリマー組成物、ポリマーの希釈物に対する比率、および所望のフィルム特性に依存する。特定フィルムに対する好適条件を特定するのは容易である。急冷温度が高いと、低い急冷温度で形成されたフィルムに比べてフィルム強度が低減する場合がある。例えば、充分に冷えた大気中で冷却する、温度制御されている注型ホイールに片面あるいは両面を接触させて冷却する、あるいは温度制御された液体内に材料を浸漬することにより急速な冷却を実行することができる。急冷後、希釈剤を除去する。希釈剤の除去に溶媒を使用する場合、残留した溶媒は蒸発させて除去する。
【0078】
所与のポリマー−希釈剤の組み合わせに対して、注型ホイール、特に平滑な注型ホイールを使用することにより、非対称なフィルムが得られる。注型ホイールの温度が低いほど、得られるフィルムの非対称性は高まりやすい。通常、注型ホイールに向いたフィルムの側面は高密度な「表皮」を有し、細孔も細かい。他の方法として、大気温度に対して注型ホイール温度を高くすることにより、大気側に高密度表面層を得ることができる。一般に、注型ホイールの温度が低いと、注型ホイール側の強度および密度が高く、泡立ち点が小さくかつガーレー値が高いフィルムを得ることができる。非対称フィルムは他の非対称急冷方法によっても製造することができる。
【0079】
2.ポリマー−フィブリル化(PF)処理
多孔質電極支持層の形成に好適な第2の処理は、フィブリル形成ポリマーに絡まったカーボンおよび金属などの導電性粒子を含む多孔質ウェブを準備することに関る。この処理は、フィブリル形成ポリマー、潤滑剤、および導電性カーボン粒子などの不溶性非膨潤性粒子の混合物を形成することを含む。この粒子はほぼ均等に複合材料内に分散され、フィブリル形成ポリマー内に絡まる。この処理は、米国特許第4,1533,661号、同第4,460,642号、同第5,071,610号、同第5,113,860号および同第5,147,539号に概略を説明されている処理を適合したものである。
【0080】
好適なフィブリル形成ポリマーの例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのハロゲン化ビニルポリマーを挙げられる。TeflonTM6CなどのPTFE乾燥粉末を開始物質として使用することができる。他の方法として、この処理を、Teflon30TM、Teflon30bTM、Teflon42TM(デラウェア州ウィルミントンのE.I.DuPont de Nemours Chemical Corp.)などの商業的に入手可能なPTFE粒子の水性分散物により開始して行うこともできる。この場合、水が引き続く処理の潤滑剤となる。商業的に入手可能なPTFE水性分散物には界面活性剤および安定剤などの他の成分が含有されている場合があり、これらによりPTFE粒子の懸濁状態の継続が助長される。用途によって、界面活性剤が含まれていれば、処理中の所望時にそれを抽出して除去することが有利な場合もある。
【0081】
潤滑剤は、ポリマーがその潤滑剤に可溶にならないように選択しなければならない。好適潤滑剤の例として、水、有機溶剤および、水と混和性有機溶剤との混合物を挙げられ、これらは洗浄あるいは乾燥により適宜除去することができるものである。状況によって、水が添加した粒子に対して有害になる(すなわち、許容範囲を超える膨潤あるいは塊の原因となる)あるいは粒子の拡散を妨げることがある。適した有機潤滑剤の例として、例えばアルコール、ケトン、エステル、エーテルおよび、フッ素化流体を挙げられる。フッ素化流体の例として、例えばFluorinertTM(ミネソタ州セントポール、3M)あるいは他の競合パーフッ素組成物などのペルフッ素化化合物を挙げられる。「ペルフッ素化化合物」とは、実質的にすべての水素原子がフッ素原子に置き換えられていることを示すために使用する用語である。カーボン粒子を含む電極支持層を、ペルフッ素化された液体潤滑剤を用いて準備することが好ましい。使用する液体にはFluorinertFC−40TMが好適であるが、他のFluorinertFC−5312TMなどの液体も使用可能である。他の例として、GaldenTMおよびFomblinTMペルフッ素化流体(ニュージャージー州ThorofareのAusimont USA;イタリア、MilanのAusimont S.p.A、Montedison Group)を挙げられる。
【0082】
混練温度における潤滑剤100g内にて約1.0g未満の可溶性を有する非ポリマー粒子が好適である。この粒子は吸収剤であるあるいは潤滑剤に対して吸収性であってもよいが、これは要件ではない。この粒子の潤滑剤に対する吸収作用あるいは吸収性能は約10重量%未満であることが好ましく、約1重量%未満であればより好ましい。この粒子の平均直径は約200ミクロン未満であることが好ましく、約0.01ミクロン〜約100.0ミクロンの範囲であればより好ましく、約0.1ミクロン〜約10.0ミクロンの範囲であればさらに好ましい。一般に、非ポリマー粒子は本来あるいは完全に導電性カーボン粒子などの導電性粒子のみである。導電性カーボン粒子を含む特定粒子に膨潤特性があるため、この粒子を大量に使用する場合は水性ではない有機潤滑剤が好適である。
【0083】
さまざまな微粒子表面特性調整剤などの少量の添加剤を添加することができる。付加するいずれの添加剤も、燃料電池の操作条件下において不活性でなければならない。適した添加剤の例として、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどの合成および天然ポリマーを挙げられる。
【0084】
FP処理により形成される電極支持層について、粒子のポリマーに対する重量比には約40:1〜約1:4の範囲が可能であり、約25:1〜約1:1であれば好ましく、約20:1〜約10:1であればさらに好ましい。潤滑剤の添加量は、粒子の吸収作用および吸収性能を少なくとも約3重量%超え、ポリマーがその形質一体性を損なう量より少ないことが好ましく、少なくとも約5重量%超えて約200重量%未満であればより好ましく、少なくとも約25重量%を超えて約200重量%未満であればさらに好ましく、少なくとも40重量%超えて約150重量%未満であればさらに好ましい。一好適実施態様において、導電性粒子の約95重量部が約5重量部のPTFEと併用され、不活性流体の固体分(導電性粒子およびPTFE)に対する重量比は約8:1となっている。
【0085】
少量の潤滑剤が潤滑剤の分離を起こさずにそのパテ状形質内に組み入れられることができなくなると、粒子の吸収性能を超えていることになる。ペーストからスラリへの転移に対応して、粘性に著しい変化が起こる。粒子の吸収作用および吸収性能を超える潤滑剤量を、混合操作全体を通して維持しなければならない。空隙量および多孔度を潤滑剤の使用量により調節しているため、潤滑剤量を変化して、所望の多孔度および空隙量を有する電極支持層を得ることができる。一般に、潤滑剤量が増加すると、空隙量および平均細孔寸法は増大する。
【0086】
最終物品の平均細孔径は一般に約0.01ミクロメータ〜約10.0ミクロメータの範囲であり、約0.1ミクロメータ〜約1.0ミクロメータであればより好ましい。細孔径の分布について、細孔のうち少なくとも約90%の寸法が1ミクロメータ未満であれば好ましい。Mercury Intrusion Porosityにより測定した空隙量が約10%〜約50%であれば好ましく、約25%〜約35%であればより好ましい。本発明によるウェブの通常のガーレー値は約2秒/10cc〜約100秒/10ccである。本発明に有用なウェブのガーレー値には約50秒/10cc未満が好ましく、約40秒/10cc未満であればより好ましい。
【0087】
最終物品の抵抗率は一般に約0.01オーム−cm〜約10オーム−cmであり、約0.1オーム−cm〜約2.0オーム−cmであればより好ましい。
【0088】
PF処理の実施にあたり、材料を一緒に配合して軟質なパン生地状の混合物を形成する。固体粉末ポリマーを使用する場合、上述のような低表面エネルギ溶剤を使用してポリマーを混合物内に拡散することができる。この配合物を、PTFE粒子の初期フィブリル化が発生するまで充分な時間をかけて室温で混合する。混練温度は、溶剤を液体形態に保つように選択する。この温度は約0℃〜約100℃であることが好ましく、約20℃〜約60℃であれば好ましい。
【0089】
初期フィブリル化は、成分の初期混合と同時に起きる可能性がある。さらに混合する必要がある場合、フィブリル形成ポリマーの初期フィブリル化を得るまでの混合時間は一般に、約0.2分から約2分である。初期フィブリル化は一般に、すべての成分がパテ状粘度物に完全に組み入れられた時点から90秒内に最適となる。混合がこれより短くても長くても、複合材料シートの性能は劣化する可能性がある。粘度最大値を通過後、あるいは到達後に混合を終了することが好ましい。この初期混合では、部分的に配向度が低下したフィブリル形成ポリマー粒子のフィブリル化が起こる。
【0090】
インテンシブミキサとなる有用な装置の例として、密閉型ミキサ、混練ミキサ、2枚刃バッチミキサ、インテンシブミキサおよび二軸押出化合ミキサと呼ばれることもある商業的に入手可能な混練装置を挙げられる。この種類の好適ミキサにはシグマ型刃ミキサおよびシグマ型アームミキサを挙げられる。この種類の商業的に入手可能なミキサの例として、BanburyTMミキサ(コネチカット州AnsoniaのFarrel Corp.)、MogulTMミキサ(ケンタッキー州FlorenceのLittelford Day Inc.)、Brabender PrepTMミキサおよびBrabenderTMシグマ型刃ミキサ(ニュージャージー州South HackensakのC.W.Brabender Instruments,Inc.)およびRossTMミキサ(コネチカット州ChesaireのAlling−Lander Co.)の商標名で販売されているミキサを挙げられる。
【0091】
混連後、そのパテ状の塊をカレンダー処理装置に移す。この配合物にカレンダーロール間の二軸カレンダー掛けを反復し、ポリマーのフィブリル化を付加する。通常の潤滑剤/ポリマーの組み合わせに対し、カレンダーロールの温度は約125℃未満に保つことが好ましく、約0℃から約100℃であればより好ましく、約20℃から約60℃であればさらに好ましい。蒸発してなくなった潤滑剤をカレンダーを通過する通路間で取り替えることができる。カレンダー掛け中、充分なフィブリル化が起こり、所望の空隙量および多孔度が得られるまで、潤滑剤量を、少なくとも固体分の吸収性を少なくとも約3重量%を超えるレベルに保つ。
【0092】
カレンダー掛けを反復して、自己支持型引裂抵抗シートを形成する。カレンダーロール間の隙間は一般に連続パス毎に減少する。材料は一般に、カレンダーを通過するパスの間に折り畳まれて90°回転されるが、必ずしもそうでない場合もある。折り畳みおよび隙間設定の回数を調節して、得られるシートに所望の特性を施すことができる。カレンダー掛けを反復するにつれ、引張強さは最高値に達し、これを超えるカレンダー掛けは有害となる。カレンダー掛けは一般に、最大引張強さに達した後、およびその引張強さが許容範囲内の最低引張強さを下回って低下する前に終了する。一般に、約10〜約20回のカレンダーロール内パスが適切である。所望厚さのウェブが得られた後、余分な不活性流体を除去するため、これを室温にて大気乾燥させる、あるいは適切な温度に設定した対流式オーブン内に配置することができる。ウェブの最終厚さは0.1〜1.0mmであることが好ましく、0.2〜0.5mmであればより好ましく、0.25〜0.4mmであれば尚好ましい。
【0093】
得られた電極支持層の引張強さは、少なくとも約1メガパスカルであることが好ましく、少なくとも約3メガパスカルであればより好ましい。シートは、粒子がほぼ均一にポリマーフィブリルマトリックス内に分散され、実質的に均一に多孔質である。ほぼすべての粒子が互いに距離をおいて離れていながら、充分に至近距離にあるため、良好な電気導電性が得られる。
【0094】
C.付加処理
粒子を装填した電極支持層、特にTITP処理により製造した電極支持層の性能特性が、一旦ポリマーフィルムが形成された後に付加処理を加えることにより大幅に改良されることがわかっている。まず、ポリマー電極支持層をポリマーマトリックスの融点付近の温度まで加熱することができる。この温度はポリマーマトリックスの融点を約20℃上回る温度からその融点を約20℃下回る温度範囲であることが好ましく、融点から融点より10℃上回る温度範囲であればより好ましい。
【0095】
ポリマー電極が目標温度に到達してポリマー流が起こるまでの時間をかけて、加熱することが好ましい。検査評価では、フィルムがオーブンの温度において平衡状態となりポリマー流が発生するまでに約10分あれば充分である。この時間には、オーブンからの熱の損失および、設定値にオーブンが平衡となるまでの時間の損失がどうしても伴う。連続したインライン処理においては、大幅に短縮された滞留時間でも、目標温度までの加熱およびポリマー流の発生までに充分な時間となる可能性がある。驚くべきことに、このように加熱して、加熱中にフィルムに何らかの制御を行わずともフィルムの多孔性は損なわれない。この加熱ステップにより、電極支持層の電気抵抗が大幅に低下するとともにガーレー値も低下し、泡立ち点が上昇する。
【0096】
さらに、電極支持層を延伸することができる。ポリマーに依存して、DSCにより特定されたように一般に、室温からポリマーの融点を約20℃下回る温度までの温度にて効率良く延伸することができる。かなり粒子を充填したフィルムでは、希釈剤の抽出後、DSCにより特定されたようにポリマーの融点から20℃前後内の温度で延伸することが好ましい。希釈剤を抽出した未充填フィルムでは、この範囲の温度により通常、多孔性が失われてしまう。通常は希釈剤を抽出した後にフィルムを延伸し、希釈剤を含有したままフィルムを延伸することも可能であるが、この場合多孔性の形成は保証されない。
【0097】
尺度が細かい評価作業には、例えばT.M.Long Co.(ニュージャージー州Sommervill)により製造された機械を使用することができる。所望温度に設定した機械にフィルムを挿入し、フィルムを両方向(二軸)のうち1方向(短軸)に延伸できるように4つの縁部すべてをしっかり押さえる。二軸延伸を続けて行っても同時に行ってもよい。インライン処理において、速度を上げながら回転するように設定可能な一連のローラを有する装置により、フィルムを縦方向に延伸することができる。横方向の延伸はテンターと呼ばれる装置により実施することができる。テンターは所望の温度に加熱できる領域をいくつか備えることができる。テンターを通るレール上の移動グリップによりフィルムの縁部を把持する。フィルムがテンター内を移動するに連れて、テンターの各側上に位置する2セットのグリップ間の距離が広がることにより、所望程度の延伸を行うことができるようになっている。入手可能なインライン装置により同時に二軸延伸を行うこともできる。
【0098】
一般に、延伸比率(初期フィルム寸法に対する最終フィルム寸法の比率)が増加すると、泡立ち点は上昇してガーレー値は減少するが、延伸比率が上がると泡立ち点が下がり、ガーレー値が上がるような極値となることも多い。延伸するとフィルムの厚さは一般に減少する。導電性カーボン粒子を充填した多孔質フィルムの場合、泡立ち点およびガーレー値については充填していないフィルムと同様の結果であるが、フィルムの抵抗率は高くなる傾向にある。泡立ち点、ガーレー値、および抵抗率を注意深く最適化して、適切に均衡させる必要がある。これとは対照的に、タングステンなどの金属粒子を装填した多孔質フィルムの抵抗率は延伸により減少しやすい。タングステンをかなり装填したフィルムでは、延伸前の抵抗率は高いが延伸比率が上昇するにつれて減少する。
【0099】
D.MEA形成
触媒電極層は一般に、イオン伝導性膜あるいは電極支持層の一体部分として形成される。どちらの場合も、触媒層を各電極支持層およびイオン伝導性膜の間に入れながら、電極支持層をイオン伝導性膜の各側上に配置して、5層MEAを形成する。この各電極支持層およびイオン伝導性膜を密着して保持することにより、これらの要素間のイオンおよび/または電気流に対する抵抗を削減する。
【0100】
一般に容器が最終的に圧力をかけて、これらの要素を堆積圧により互いに保持する。これらの要素を互いに積層することが好ましい。積層すれば、堆積圧の代替として物理的近接性が得られる。驚くべきことに、要素の多孔質特性あるいは構造の一体性を損なわずに、粒子を充填した多孔質ポリマー構成要素を積層することができる。
【0101】
積層により、MEAの5層間に凝集関係を形成しなければならない。使用する具体的材料を基に、積層に適した条件を選択する。具体的な例については以下の実施例内にて説明する。積層条件は、多孔性、表面湿潤および電気抵抗などの膜特性を損なうものであってはならない。
【0102】
積層する目的は、層間の物理的な隙間を排除することである。接触する総面積を広くすることにより、異層間におけるポリマーの凝集力あるいは自己粘着性を促進し、これにより接触領域においてポリマー連鎖が拡散して絡み合う確率を上昇することができる。上述した幾つかの好適ポリマー構成要素は一般のポリマーフィルムより圧縮性に優れている。圧縮性が高いほど、増加する接触面積における圧力がより有効になる。明らかに、ポリマー電極支持層内の微粒子充填剤の作用により、積層中、細孔の崩壊を免れている。
【0103】
さまざまな方法により積層を行うことができる。その手法の例として、熱積層、加圧積層、溶剤積層の利用を挙げられる。熱積層および溶剤積層においても圧力を付加することができる。材料により適した積層方法は異なる。
【0104】
MEAを連続ロールで処理することにより、燃料電池製造の効率は大幅に向上する。例えば、5層MEAを、同一のMEA202を反復した連続ウェブ200として、すなわち図3に示すように製造する。MEAの連続ウェブ200上にて、触媒層206および電極支持層208を含む触媒電極領域204を、ロール形態で供給されるイオン伝導性膜210の各側ウエハにパッチ状あるいは連続状に適用することができる。同様に、両極板の嵌合面が規定する適切なシールあるいはガスケット212を、触媒電極領域204に隣接するロール膜210上の適した場所に適用することができる。シールあるいはガスケット216の中央の適した位置に穴214をあける。隣接するMEA間の境界線を表示して切断する、あるいは部分的に穿孔をあけて積層アセンブリ処理中の分離を迅速かつ容易にすることができる。さらに、レジストレーションマークを適切な地点に適用して、積層アセンブリ処理中、ロボットによる集配および位置合わせを可能にすることもできる。
【0105】
触媒層206に電極支持層208を具備する場合、このように組み合わせた層をイオン伝導性膜210に装着あるいは積層することができる。別の方法として、触媒層206および電極支持層208に引き続いて膜210を具備することができる。触媒層206をイオン伝導性膜210に装着あるいは適用するための適した方法は、触媒層206の種類に依存する。カーボン粒子を担持する触媒の分散には、例えば米国特許第5,211,984号に教示されている、熱および圧力を用いる方法を使用することができる。米国特許第5,338,430号に教示されているナノ構造触媒層をニップロールカレンダー掛けにより膜210の表面内に埋設する、あるいは連続ロール供給の急速静圧プレスによりナノ構造触媒を膜210の連続ロール供給内に埋設することができる。触媒を、触媒を保持する連続ロール担持体から所望のパターンでパッチ状に適用することができる。
【0106】
次いで、電極支持層208を、イオン伝導性膜210の触媒電極領域204とパッチ状に位置合わせして適用することができる。電極支持層208および触媒層206を、パッチ状ではなく連続ロール供給として適用することも可能である。アセンブリを積み重ねる前に、電極支持層208を固定するためにさまざまな装着方法を用いることができる。電極支持層208の適した装着方法の例として、加圧積層、加熱されたニップロール積層、制限領域の接着剤装着(すべての細孔を接着剤で遮断することを防ぐため)、超音波溶接、微小構造表面機械装着などを挙げられる。電極支持層208を膜210に確実に接合して、それらの間の界面を横切る電気抵抗および/またはイオン抵抗を最小限に抑える、あるいは界面、特に陰極の界面における水管理を可能にすることが一般に望ましい。装着処理のパラメータを調節して接合程度を好適にすることができる。触媒層206を最初に電極支持層208に適用する場合、より確実な接合が特に望ましい。電極支持層208のガス輸送特性に悪影響を与えないこと、触媒層206を損なわないこと、および膜210のイオン導通特性を劣化しないことが装着方法に重要な要件となる。
【0107】
シールおよびガスケット212、216を、The Furon Co.、CHR Division(コネチカット州New Haven)から入手可能なTeflonTMシート材あるいはTeflonTMコーティング済繊維ガラスシート材などの適した薄板ウェブ材料あるいは他のフルオロエラストマから製造あるいはダイカットすることができる。シール材料をMEAロール200の周囲シール地点212あるいはガス口縁部216に適用することができる。これらの地点におけるシールおよびガスケットの膜への装着を、電極支持層の装着に説明した上述の方法と同様の装着方法により行うことができる。非粘着性薄板ウェブシール材料のほかに、適したトランスファー接着剤であればいずれも使用可能である。そのトランスファー接着剤の例に、3M Co.(ミネソタ州セントポール)から入手可能な#9485PC接着剤がある。
【0108】
このシールおよびガスケット材料および対応する接着剤には、イオン伝導性膜が抽出してその導電性を低下させる、あるいは触媒を損なう可能性のある特定化学物質を含有してはならない。また、このシールおよびガスケット材料を化学的および熱的に不活性にすることにより、酸環境(プロトン交換燃料電池用)および何千時間にも及ぶ燃料電池の動作温度に対する耐性を持たせなければならない。さらに、シールおよびガスケット112、116に適切な機械特性を持たせて、シール領域に対して垂直方向にその積層物にかかる圧搾力および、内圧によりシール面に作用する力がかかった状態で積層物を最高動作温度にしても変形および押出に対して高い抵抗力を備えているようにしなければならない。
【0109】
E.積層形成
有用な電圧を得るためには、通常の燃料電池積層であれば1000個以上の電池をつなげて組み立てなければならない可能性がある。各々が通常0.7ボルトで動作する電池を100個つなげると70ボルトの積層物となる。すべての付随ガスケットおよびシールと併せてMEAおよび双極/冷却板を組み立て、漏出のない、任意に圧縮した燃料電池積層を製造することは、積層のコスト削減に重要な課題となる可能性がある。MEAの提供にあたり、積層物をコスト安で組立てられるようにシールおよびガスケットを製造準備のできた形態にすることは重要なポイントである。例えば、年間製造ライン毎のシフトあたりで10000個の燃料電池積層物を組み立てるためには、およそ10分おきに何百もの関連電池構成要素を伴った1積層物を組み立てなければならない。それぞれ採寸、切断、配向および適切に整合した状態でこのように大量の構成要素を短時間で製造および取扱えるようにすることは重要な要件である。
【0110】
図4に示すように、燃料電池積層物300において、各別個の電池は、両極板304に挟まれた5層MEA302からなる。端板306により、燃料電池積層物300からの燃料および酸化剤のフローの往復が行われる。両極板の機能は、a)MEAにより生成される全電流を隣接する電池に導通して最終的に端板に伝達することにより、電池間を連続的に接続すること、b)隣接する電池間におけるガス輸送をいずれも防止すること、c)組み立てた積層物に機械的剛性を提供して、その圧搾力が有効に働くことによりMEAの周辺を通過するガスの漏出を最小限に抑えること、d)MEA触媒電極に燃料および酸化剤を供給し、水などの副産物を除去するための流路溝およびガスマニホールドを設けること、およびe)電池電極領域から余分な熱を除去するための冷却流体との接触部分を設けることである。
【0111】
燃料電池の積層には数多くの構造および形状が可能であるが、一般に直線状あるいは円筒形状にして、各電池内のそれぞれ平坦なMEAおよび両極板に、対応する長方形あるいは円形形状を持たせる。米国特許第5,252,410号には、触媒を電極支持層に適用する場合の具体的な態様を含め、両極板および積層アセンブリに対する数多くの態様が教示されている。各MEAの触媒された活性領域は一般に膜領域より狭く、これをMEAの中央に配置することができる。電極領域を限定する膜の周辺領域は一般に、MEAを両極板にシールするために使用し、燃料および酸化剤が電池の加圧された内部から漏出することを防ぐ。この積層物の端板からかける圧搾力を充分にして、最大内圧によってもガスケットあるいはシールが剥離しないようにしなければならない。電極領域に隣接するMEA領域にも、各ガス供給マニホールドからセルへの燃料および酸化剤の輸送を行う穴を設けてもよい。これらの穴(すなわちガス口)にも漏出を防止するためのシールあるいはガスケットが必要となる場合もある。
【0112】
以上、MEAの製造および、適したシールおよびガスケットを備えたMEAの連続ウェブ形式による供給するための処理について説明した。この連続ウェブ形式は、燃料電池を低コストで製造するために用いるMEA要素を数多く製造し、取扱うためにとりわけ適している。この連続ウェブは、両極板へに比較的迅速は適用だけではなく、MEAに対する正確な位置合わせにも適している。したがって、本明細書内で説明した電極支持層を連続ロール形式における5層MEAの製造に適合すれば、燃料電池の加工に劇的な進歩をもたらすことができる。
【実施例】
【0113】
以下の実施例において製造するさまざまな電極支持層について、幾つかの特性を測定する。ASTM F−316−80により特定されるように、泡立ち点はフィルム内の最大細孔径とする。試験液としてエタノールを使用した。この液体を用いてフィルムの細孔を充填した。泡としてフローがフィルム内の最大通路を流れるまで圧力を加えた。試験電池の低圧力側に接続され、水中に隠れている管から泡が観測される。必要な圧力は、試験液の表面張力および最大通路の寸法に依存する。試験液としてエタノールを使用したミクロン単位の泡立ち点は貫流時の9.25/psi圧力に匹敵する。
【0114】
ガーレー値は、フィルムを通過する空気流に対する抵抗の大きさである。特に、ASTM D−726−58 MehodAによる、100cc(あるいは他の容量)の大気が1平方インチのフィルムを124mmの水圧で透過するためにかかる秒単位の時間の測定値である。フィルム試料を2枚のプレート間に固定する。次いで、シリンダを放出し、特定圧力にて試料に向けて空気を供給する。電子的に読み取られるシリンダ上の印から、所与量の大気流にかかる時間を特定する。以下の実施例において、報告するガーレー値は50ccあるいは10ccの大気通過に関するものである。
【0115】
フィルムの表面上にて互いに平行に配置した1.5cm幅のアルミニウム棒を用いて、面内電気抵抗を測定する。錘をこれらの棒の頂部に配置し、圧力を300g/cm2とする。結果は一般に圧力に依存する。2本のアルミニウム棒缶の抵抗を標準オーム計により測定した。他の方法として、以下の例6において説明するように、高電流密度におけるZ軸電気抵抗を測定した。オーム−cmを単位とする抵抗率を以下の式により算出した。
【0116】
抵抗率=(Z軸抵抗率×フィルム面積/フィルム厚さ)
あるいは
抵抗率=(面内抵抗×フィルム幅×フィルム厚さ)/棒間距離
【0117】
後述する水接触角の測定は、本質的に国際特許出願第WO96/344697号に説明されているように実施した。要約すると、商用装置(Rame’−Hart Contact Angle Goniometer、Model 100)を用いて、およそ1ミクロリットルの液滴を滲出した。試料表面を注意深く持ち上げて注射器からまだ吊下がっている液滴にうまく接触させることにより「平衡接触角」を定めた。次いで、この液滴を拡大あるいは収縮しながら接触角を測定して、前進および後退接触角をそれぞれ得た。複数回の測定を繰返し、表面上の複数地点における両種類の接触角に対する平均およびrms偏差値を得た。後退接触角が大きいと、その膜は、低い後退接触角を示す膜に比べて水をはじく力が大きいことになる。理論によらずとも、水をはじく力が大きい膜の方が、燃料電池の動作中に冠水する可能性が低く、膜/触媒界面への燃料および酸化剤の流れが良好になると考えられる。
【0118】
実施例中、
「室温」あるいは「周囲温度」とはおよそ22℃とする。
Vertrel 423TMは、デラウェア州ウィルミントンのDuPont Chemicals,Inc.からのジクロロトリフルオロエタン(CHCl2CF3)であり、
他の化学物質および試薬はすべて、特に記載のない限り、ウィスコンシン州ミルウォーキーのAldrich Chemical Co.から入手した。
【0119】
実施例を通して共通する数多くの基本処理および材料がある。これらの例として、ナノ構造担体の準備、この触媒の担体への適用、触媒装填の特定、膜−電極アセンブリの製造、燃料電池装置および試験台の種類、燃料電池試験パラメータ、および使用するプロトン交換膜の種類を挙げられる。これらを概して以下のように定義する。
【0120】
a)ナノ構造触媒担体の製造および触媒の堆積。以下の実施例において、ナノ構造触媒電極およびこれらの製造処理を、その内容を本明細書に引用したものとする米国特許第5,338,430号および他の特許に説明されているものと同様にする。このナノ構造触媒は、ナノメートル寸法のウィスカ状担体の外面にコーティングしたPtなどの触媒材料を含む。このウィスカは、予めポリイミドなどの基材上に真空コーティングした有機顔料材料(C.I.Pigment Red149あるいはPR149)の薄いフィルム(1000〜1500オングストローム)を真空アニ−ル処理することにより製造する。長さが1〜2ミクロメートルのウィスカ状担体は、30〜60ナノメートルの均一な断面寸法で成長し、端部配向を基材上にして密集した担体(30〜40個/ミクロメートル平方)の緻密フィルムを形成し、これをポリマー電解質表面に移して触媒電極を形成することができる。このナノ構造触媒電極の表面積は非常に広いため、燃料および酸化剤ガスの到達が容易である。
b)触媒の装填測定は、真空コーティングの技術において周知であるように、真空コーティング中に石英圧電結晶発振器により付着されるPt層の厚さを監視すること、および単に重力測定法の双方により行う。後者の場合、ポリイミド担持ナノ構造フィルム層の試料を、デジタル天秤を用いて正確に1ミクログラム質量に分け、その面積を測定する。次いで、そのナノ構造層からポリイミド基材をティッシュペーパーあるいはリネンで拭き取り、その基材の質量を再度測定する。担体の好適特性の1つが簡便かつ完全なイオン交換膜への移行であることから、布で一拭きするだけで簡単に除去することができる。Ptを具備しない担体粒子の単位面積あたりの質量もこのように測定することができる。
c)使用したイオン交換膜はすべてペルフルオロ化スルホン酸型であった。デラウェア州ウィルミントンのDuPont Corp.からNafionTM117あるいは115膜を入手した。
d)触媒をコーティングした担体粒子をPEMあるいはDCC表面に移行する処理は、静圧あるいは連続ニップロール方法であった。例えば触媒をPEM上に具備した、5cm2の活領域を有するMEAを静圧方法により準備するため、金属めっきを施したポリイミド基材上にコーティングしたナノ構造触媒の5cm2片2枚を、1枚は陽極用、もう1枚は陰極用に、7.6cm×7.6cmのプロトン交換膜中央の各側上に配置する。PEMと同寸法の、少なくとも25あるいは50ミクロメートル厚さのポリイミドシート1枚をPEMの各側およびナノ構造基材材料上に配置し、積層を形成する。静圧用に、PEMと同寸法の50ミクロメータ厚さのシートTeflonTM1枚をPEM、ナノ構造基材およびポリイミド積層の各側上に配置する。
静圧するため、このアセンブリを2枚のスチールシム板の間に配置し、9インチのCarverTMプレスにより130℃付近の温度かつおよそ10トン/cm2の圧力で最長2分間加圧する。最大圧力をかける直前に、低真空状態にして積層物から部分的に空気(2Torr)を除去する。積層物の圧力を解除する前に、積層物を通常5分間以下で室温付近まで冷却することができる。触媒をPEM表面に装着したまま、元の5cm2ポリイミド基材をPEMから剥離する。(別の方法として、上述の連続あるいは半連続シート形態のサンドイッチアセンブリを1ミルのニップ内にカレンダー処理あるいは積層加工として通過させることなどの連続ロール処理により担体粒子をPEMあるいは電極支持体に移行する。2本のミルロールの双方がスチール製、あるいはスチールおよびゴムなどの軟質材料製とし、これらを加熱することができ、その隙間を調節して有する、あるいは調整したライン圧(kg/cm)を用いてニップの隙間を特定する。)
e)ステップd)によるMEAを、ニューメキシコ州AlbuquerqueのFuel Cell Technologies,Inc.から購入した通常5cm2であるが最大50cm2のセルである燃料電池試験セルに装着した。マサチューセッツ州NatickのE−tek,Inc.から入手した0.015in厚さのELAT電極支持材料2片を対照電極支持材料として使用した。CHR Industriesから購入した通常250ミクロメートル厚さのTeflonコーティング繊維ガラスガスケットの中央に10cm2の穴を開けて(10cm2の触媒領域用)使用し、セルをシールした。ELAT電極支持材料をカーボンのみとする、すなわちこれに触媒を含有しない。
f)例9〜14および例28の燃料電池分極曲線用試験パラメータを、セル温度を80℃、フロー速度をおよそ1標準リットル/分として、207kPa H2および414kPa酸素ゲージ圧の条件下で得た。水素および酸素用にそれぞれ115℃および80℃に維持した散布瓶にガスを通過させて、ガス流を加湿した。
【0121】
例15〜17について、電極支持材料の低圧空気性能を試験するため、分極曲線を得た。図12の曲線は、207kPa H2および34.5kPa空気ゲージ圧の条件下で得たものである。H2/空気フロー速度は10cm2MEAに対して400/400sccm(標準cm3/分)および、50cm2MEAに対して1標準リットル/分(slm)/2slmであった。水素および空気用にそれぞれ約115℃および65℃に維持した散布瓶にガスを通過させて、ガス流を加湿した。セル温度は75℃であった。以下の例12に説明する手順により製造した膜もこれらの燃料電池条件下にて動作させた。この結果を例12(空気)として図12の曲線に示す。
【0122】
例1
高密度ポリエチレンにおける導電性カーボン
鉱油内における導電性カーボンの分散物を、ConductexTM975導電性カーボン(ジョージア州アトランタのColombian Chemicals Co.)1032gを、鉱油(イリノイ州シカゴのAMOCO製Superla(登録商標) White Mineral Oil No.31)2054gおよび分散剤OLOA1200TM(カリフォルニア州サンフランシスコのChevron Oil Co.)1032gの混合物内に2500HV型分散器(ペンシルバニア州ReadingのPremier Mill Corp.)を用いて浸して調製した。カーボンおよびOLOA1200を一部ずつ交互に鉱油に添加した。カーボンを添加すると粘度が増加したため、それに応じて拡散器rpmを上昇して、すべてのカーボンおよびOLOA1200の添加後、最大約5000rpmとなった。
【0123】
得られた分散物は粘性で塊が多かった。次いで、分散器により混合を続けて脱気しながら、約150℃に加熱した。温度の上昇と共に粘度は低下し、温度の上昇と共に分散器速度を1100rpmまで減速した。この混合物を20分間、約150℃に保持した。混合および加熱を続けたところ、分散物は滑らかになった。次いで、混合を続けながら、これを約60℃に冷却した。得られた混合物を、1.3mm直径のクロム−スチールビーズを80容量%充填した1.5L横型ミル(Premier Mill Corp.)に通過させた。この横型ミルを1800fpmの周辺速度(54.9メートル/分)および約0.5L/分のスループット速度にて操作した。
【0124】
横型ミルから取り出した分散物を約60℃にてBerstorffTM同時回転二軸押出機(ノースカロライナ州CharlotteのBerstorff Corp.、25mm×825mm)の第3領域上の注入口内に注入した。HDPE(高密度ポリエチレン、品質等級1285、テキサス州ヒューストンのFina Oil&Chemical Co.)を給送領域(領域1)内に0.55kg(1.20lb.)/時間の速度で計量供給し、上述の分散物を歯車ポンプにより69.1cc/分の名目速度で注入した。給送領域から始まる押出機の温度線は193、254、254、204、166、160、166℃であり、ダイ温度は166℃であり、スクリュー速度は120rpmであった。
【0125】
フィルムを20.32cm(8in)ダイを介して、52℃に加熱されパターンを施された注型ホイール上に押出した。このホイールパターンは、45℃の4面ピラミッドであり、密度が100/6.45cm2(1in2)にて0.125mm(5mil)の高さを有した。得られたフィルムは0.25mm(10mil)厚さで実験的に特定された総フィルムスループット率は4.53kg(10.0lb)/時間であった。したがって、実際の分散物供給速度は3.99kg(8.8lb)/時間であった。この結果および周知の分散組成物より、オイル抽出後のフィルム内の合計カーボン含有量は64.7重量%と算出された。
【0126】
例2
Vertrel 423TMを用いた抽出
約18cm×30cm寸法のフィルム部分を洗浄ごとに約1LのVertrel423TM溶剤に1洗浄につき10分間浸漬し、この洗浄を3回繰返して、オイルおよびOLOA1200を例1のフィルムから抽出した。室温にて乾燥したところ、フィルム厚さは0.0241cmであった。このフィルムの物性特性を表1に示す。
【0127】
例3
トルエン/キシレンを用いた抽出
オイルおよびOLOA1200を、トルエン/キシレンの1:1容積比混合物を用いて例2に説明したように例1のフィルム部分から抽出した。乾燥後のフィルム厚さは0.023cmであった。このフィルムの物性特性を表1に示す。
【0128】
例4
抽出後の加熱、Vertrel 423TM抽出
例2において説明したように準備したフィルムの1部分を、対流式オーブン内に130℃で10分間吊り下げた。これを冷却したところ、フィルム厚さは0.23mmとなった。このフィルムを「例4A」とし、この物性特性を表1に示す。このフィルムの前進および後退接触角(水)はそれぞれ158°および107°であった。
【0129】
同様に、例2によるフィルムの1部分を対流式オーブン内で10分間150℃に加熱した。このフィルムを「例4B」とし、この物性特性を表1に示す。
【0130】
例5
抽出後の加熱、トルエン/キシレン抽出
例3において説明したように準備したフィルムを、対流式オーブン内に130℃で10分間吊り下げた。これを冷却したところ、フィルム厚さは0.23mmとなった。このフィルムを「例5A」とし、この物性特性を表1に示す。
【0131】
同様に、例3によるフィルムの1部分を対流式オーブン内で10分間150℃に加熱した。このフィルムを「例5B」とし、この物性特性を表1に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
表1に示すように、HDPEバインダの融点を超えてフィルムを加熱したところ(126℃、DSCによる最高温度)、ガーレー値の大幅な低下、泡立ち点の大幅な上昇および抵抗率の大幅な低下が見られた。
【0134】
例6
フィルムインピーダンス
燃料電池に適する、本発明によるカーボン装填フィルムの高電流密度を担持する性能を実証する。例4Aによる5cm2正方形フィルム試料2枚(Vertrel 423TM抽出、130℃の加熱)を向かい合わせに互いに直接接触させた平行状態で、燃料電池試験取付具(2.24cm×2.24cm、ニューメキシコ州サンタフェのFuel Cell Technologies,Inc.)に据付けた。すなわち、試料間にイオン伝導性膜を介在させなかった。0.015cm厚さのTeflonTM含浸繊維ガラスによるマスク枠を、実際の燃料電池試験で通常使用するように、試験半セル間に用いて、検査対象であるフィルムの粉砕を防止した。セルボルトを12.4N−m(110in−lbs)に締付けた。電圧を変えて高電流をセル内に通過させ、高電流密度条件下でのフィルムのインピーダンスを測定した。これらの測定結果を図6のグラフAに示す。測定後、フィルムを組み合わせた厚さは0.042cmであった。フィルムの抵抗率は表1に示した値と同様の0.57オーム−cmであった。
【0135】
例7
フィルムインピーダンス
例5Aにおいて準備したフィルム(トルエン/キシレン抽出、130℃の加熱)を例6で説明したように調べ、そのインピーダンスを測定した。その結果を図6のグラフBに示す。これらのフィルムを組み合わせた厚さは0.042cmであり、その抵抗率は0.52オーム−cmであった。
【0136】
例8(比較)
フィルムインピーダンス
ELATTMとして商業的に入手可能なカーボンのみの材料(カーボンブラック/PTFEで含浸/コーティングしたグラファイト織布)の抵抗率を例6に説明したように調べた。結果を図6のグラフCに示す。ELATTMフィルムを組み合わせた厚さは0.094cmであり、有効バルク抵抗率は0.28オーム−cmであった。ELATTM材料のガーレー値は7.5秒/50ccと測定され、このフィルムの前進および後退接触角はそれぞれ155°および133°であった。
【0137】
例9
膜電極アセンブリ
プロトン交換膜電極アセンブリ(MEA)を、7.6cm×7.6cm平方のNafionTM117イオン交換膜(デラウェア州ウィルミントンのDuPont Chemicals Co.)の中央部分に配置するように教示する米国特許第5,338,430号に説明されているように、プラチナコーティングを施したナノ構造担体を具備する電極層を適用して準備した。このプラチナコーティングを施したナノ構造担体を、イオン交換膜の両面に、ホットプラテンプレスを用いて上記に引用した第´430号特許の例5に説明されているように適用した。中央の電極面積は5cm2であった。上記例5Aにおいて説明したように形成したカーボン充填電極支持層5cm2(トルエン/キシレン抽出、130℃加熱)2枚をこの電極アセンブリの両側に配置して5層MEAを形成した。このアセンブリを5cm2試験セル内に搭載し、燃料電子試験台上にて水素/酸素ガス流をアセンブリの各側に適用して試験した。図7のグラフAは、電圧とこのアセンブリが生成した電流密度との関係を示す分極曲線である。
【0138】
例10
膜電極アセンブリ
膜電極アセンブリを、例3において説明した電極支持層(トルエン/キシレン抽出、加熱なし)を使用した点を除き、例9に説明したように準備した。さらに、アセンブリ全体を、5cm2ではなく50cm2の電極および電極支持膜で形成した。図7のグラフCは、電圧とこのアセンブリが生成した電流密度との関係を示す分極曲線である。このセルの性能が改良された原因の一つは広い電極面積によるものである。
【0139】
例11(比較)
膜電極アセンブリ
例8において説明したELATTM材料を電極支持層として使用した点を除き、例9に説明したように膜電極アセンブリを準備した。図7のグラフBは、電圧とこのアセンブリが生成した電流密度との関係を示す分極曲線である。
【0140】
例9〜例11により、本発明による有効な電極支持層をTITP方法により準備できることがわかる。商業的に入手可能な高級膜は、おそらく一部には低ガーレー値および高後退接触角により、良好な燃料電池性能を示したものと思われる。ガーレー値が低く後退接触角が高ければ、触媒/電解質界面への水素および酸素の拡散が大きく、起こればさらに酸素輸送を制限する可能性がある、陰極にて生成される水による浸水感受率が低くなる。
【0141】
例12
超高分子量ポリエチレン(TIPT)におけるグラファイト/導電性カーボン(95/5)
MCMB6−28グラファイト37.11g(通常6μ平均直径、日本、大阪のOsaka Gas Chemical Co.)と、Super P導電性カーボン1.91g(ベルギー、ブルッセルのMMM Carbon Div.、 MMM nv)との乾燥配合物をへらで混合して調製した。この混合物の一部および鉱油(Superla(登録商標) White Mineral Oil )32.2gの一部を交互に、ローラ羽根を装備したHaake RheocordTM System9000(ニュージャージー州ParamusのHaake(米国))の混合チャンバに添加した。この混合チャンバは60℃であり、50rpmで攪拌した。次いで、150℃の設定温度まで加熱を開始した。
【0142】
攪拌温度が120℃に達した時点で、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE、品質等級GUR4132、テキサス州ヒューストンのHoechst Celanese Corp.)2.06gを少量ずつ、添加と添加の間に、前に投入した材料が同化するまでの時間をとりながら添加した。UHMWPE/オイルの比率は6/94であった。この添加を完了した後、チャンバの温度を150℃まで上昇し、攪拌速度を80rpmとした。UHMWPEの添加を完了後、10分間混合を続けた。この混合物を熱いうちにミキサから除去した。
【0143】
冷却後、固化した混合物の15gを0.175mm(7mil)ポリエステルシート間に配置し、このポリエステルシート間に0.25mm(10mil)シムを配置して160℃のModel2518CarverTMプレス(イリノイ州WabashのFred S.Carver Co.)内に配置した。プレス内で圧力をかけずに3分間の加熱後、この混合物を690kPa(100psi)で10秒間プレスした。得られたフィルムをポリエステルシートを装着したまま、周囲温度で水に浸して急冷した。このフィルムから例2に説明したようにオイルを抽出した。フィルムの1部を、例4において説明したように対流式オーブン内にて130℃で10分間加熱した。このフィルムの物性特性を表2に示す。このフィルムの前進および後退接触角(水)はそれぞれ154°±10および101°±5であった。
【0144】
【表2】
【0145】
図8の曲線Aは、本例において説明したように、加熱後の50cm2陰極支持層を用いた燃料電池試験による代表的分極曲線を示す。同じ触媒をコーティングしたイオン伝導性膜を使用して、例12〜例14およびELATTM対照例(図8の曲線「D」)の異なる電極支持層を用いた5層MEAについての燃料電池分極曲線を得た。1試料電極支持層を試験した後、そのテストセルを開けて、その電極支持層を陰極上で次の層と取り替えた。ELATTM陰極支持層は交換しなかった。
【0146】
例13
ポリプロピレン(TIPT)内のグラファイト/導電性カーボン(95/5)
MCMB6−28グラファイトおよび鉱油(Superla(登録商標) White Mineral Oil No.31)の混合物を、分散器を用いてグラファイト83.3gを鉱油91.9g内に混合して調製した。Super P導電性カーボン1.53gを100℃にて、ローラ羽根を装備したHaake RheocordTM System 9000の混合チャンバに投入した。次いで、50rpmで混合しながら、このグラファイト/鉱油混合物59.73gを混合チャンバ内に投入した。このグラファイト/鉱油混合物を添加中、粘度が増加するにつれて混合速度を100rpmまで上昇した。次いで、ポリプロピレン(テキサス州ヒューストンのShell Chemicalsからの品質等級DS5D45)7.66gを添加した。この混合物を、約10分間以上230℃まで加熱した。ポリプロピレンの添加後の合計混合時間は約33分であった。得られた混合物を暑いうちにミキサから除去した。
【0147】
冷却後、固化した混合物の14.2gを、鉱油の薄いコーティングを施して剥離を容易にした0.175mm(7mil)ポリエステルシート間に配置し、このポリエステルシート間に0.25mm(10mil)シムを配置して160℃のCarverプレス内に配置した。プレス内で圧力をかけずに3分間の加熱後、この混合物を345kPa(50psi)で10秒間プレスした。得られたフィルムをポリエステルシートを装着したまま、周囲温度で水に浸して急冷した。このフィルムから例2に説明したようにオイルを抽出した。フィルムの1部を、例4において説明したように対流式オーブン内にて180℃で10分間を超えた時間をかけて加熱した。このフィルムの加熱前後の物性特性を表3に示す。この加熱処理の後、フィルムはやや脆くなったことがわかった。このフィルムの前進および後退接触角(水)はそれぞれ155°±5および100°±5であった。
【0148】
【表3】
【0149】
図8のグラフBは、加熱フィルムから製造された陰極電極支持層を用いた代表的分極曲線を示す。これにより、例12による試料に対して性能が改良されたことがわかる。
【0150】
例14
超高分子量ポリエチレン(TIPT)におけるグラファイト/導電性カーボン(95/5)
MCMB6−28グラファイト27.89gと、Super P導電性カーボン1.47gとの乾燥配合物をへらで混合して調製した。この混合物の一部および鉱油(SuperlaTM White Mineral Oil No.31)37.1gの一部を交互に、40℃で50rpmにて混合しながら、ローラ羽根を装備したHaake RheocordTM System 9000の混合チャンバに添加した。次いで、UHMWPE(品質等級GUR4132、Hoechst Celanese Corp.)1.55gを添加した。UHMWPE/オイルの比率は4/96であった。ポリマーの添加を完了した後、チャンバの温度を150℃まで上昇し、混合速度を80rpmとした。UHMWPEの添加を完了後、10分間混合を続けた。この混合物を熱いうちにミキサから除去した。
【0151】
冷却後、固化した混合物の13.1gを0.175mm(7mil)ポリエステルシート間に配置し、このポリエステルシート間に10milシムを配置して160℃のCarverプレス内に配置した。プレス内で圧力をかけずに3分間の加熱後、この混合物を345kPa(50psi)で10秒間プレスした。得られたフィルムをポリエステルシートを装着したまま、周囲温度で水に浸して急冷した。このフィルムから例2に説明したようにオイルを抽出した。フィルムの1部を、例4において説明したように対流式オーブン内にて130℃で10分間加熱した。DSCにより特定されたようにUHMWPEの最高融点は138℃であった。このフィルムの物性特性を表4に示す。このフィルムの前進および後退接触角(水)はそれぞれ139°±10および79°±9であった。
【0152】
【表4】
【0153】
図8のグラフCは、加熱フィルムから製造された陰極電極支持層を用いた代表的分極曲線を示す。これにより、例13に対して性能がさらに改良されたことがわかる。グラフDはELATTM対照例を示す。
【0154】
以下の例15A、15B、16A、16B、17B、17C、17D、17Eおよび17Fにおいて、同じ触媒コーティングを施したイオン伝導性膜を使用して、異なる型の陰極支持層について試験した。それぞれの場合に、陽極支持層として商用ELATTMを用いた。これらの例における燃料電池分極曲線を図12に要約し、低圧力空気操作下においてパラメータを変えて試験した結果を示す。陰極支持層としてELATTMを用いた比較対照曲線も図12に示す。図12を参照すると、0.6ボルト以上の有用な電圧範囲において、例15Aの電極支持層はELATTM膜の性能を超えている。
【0155】
例15
ポリフッ化ビニリデンにおけるグラファイト/導電性カーボン
MCMB6−28グラファイト91.37gと、プロピレンカーボネート96.18gとの混合物を分散器で調製した。次いで、このグラファイト−プロピレンカーボネート混合物63.0gの添加に引き続き、Super P導電性カーボン1.60gを50rpmおよび50℃にて、Haake RheocordTM System 9000の混合チャンバに添加した。得られた混合物を150℃に加熱しながら、Solef 1010TMポリフッ化ビニリデン(PVDF、テキサス州ヒューストンのSolvay America Inc.)12.47gを、添加したポリマーが混合物に同化するように少量ずつ添加した。安定したトルク形成後(ポリマー添加開始後およそ6分)、温度設定を120℃に変えて冷却を開始した。およそ4分間の冷却後、混合を止め、熱いうちに得られた混合物を除去した。
【0156】
冷却後、固化した混合物の12gを、0.25mm(10mil)シムを挟んだポリイミド間に配置し、150℃のCarverプレス内に配置した。プレス内で圧力をかけずに90秒間の加熱後、この混合物を1035kPa(150psi)で5秒間プレスした。得られたフィルムをポリイミドシートを装着したまま、20℃の15mm厚のスチール板の間に配置して冷却した後、除去した。得られたPVDFフィルムを洗浄して、3×1Lイソプロピルアルコール洗浄剤によりプロピレンカーボネートを抽出して試料15Aを得た点を除き、例2に説明したように乾燥した。フィルムの1部を、例4において説明したように対流式オーブン内にて160℃で10分間加熱して、試料15Bを得た。このフィルムの物性特性を表5に示す。燃料電池分極結果は図12に示す。
【0157】
【表5】
【0158】
例16
高密度ポリエチレン(TIPT)におけるグラファイト/SuperS導電性カーボン(95/5)
本例は、カーボン装填量を大幅に低くした際の有用な性能を実証する。このフィルムを、例1に説明した押出機により製造し、平滑な注型ホイール上で成型した(設定温度32℃)。このように製造したフィルムは通常、空気側よりホイール側により細かい細孔を有する。
【0159】
SFG15グラファイト(ニュージャージー州Fair LawnのAlusuisse Lonze America Inc.現在のTimcal)の分散物を、Premier Mill Corp.のModel89分散器を使用してSFG15の1090gを鉱油(SuperlaTM White Mineral OilNo.31)3030gおよび分散剤OLOA1200の57.4gの混合物に少しずつ添加して調製した。次いで、Super S導電性カーボン(ベルギー、ブリュッセルのMMM nv、MMM Carbon Div.)57.4gをこのグラファイト分散物に混合した。このカーボン/オイル混合物を150℃まで加熱し、分散器で混合を続けながら(温度の上昇と共に速度は低下)30分間150℃に保持した。この混合物を、押出機の給送タンクに移す前に70℃まで冷却した。
【0160】
このカーボン/オイル混合物を、BerstorffTM同時回転二軸押出機(25mm×825mm)の第3領域上の注入口内に注入した。高密度ポリエチレン(HDPE、品質等級1285、Fina Oil&Chemical Co.)を給送領域(領域1)内に0.61kg(1.35lb.)/時間の速度で計量供給し、上述の混合物を歯車ポンプにより77cc/分の名目速度で注入した。給送領域から始まる押出機の温度線は199、271、271、188、188、188、188℃であり、ダイ温度は188℃であり、スクリュー速度は125rpmであった。
【0161】
フィルムを、32℃の平滑注型ホイール上に20.32cm(8in)のダイを介して押出した。このフィルムを注型ホイール上に載せたまま急冷した後、フィルム上に50ミクロメートルのポリエステルフィルムを付着して、フィルム取扱中にホイール上で滑らないようにした。得られた押出フィルムは0.3mm(12mil)厚さであり、実験的に特定した総フィルムスループット率は5.39kg(11.9lb)/時間であった。したがって、実際のカーボン/オイル混合物給送率は4.80kg(10.6lb)/時間であった。これと周知の組成物とから、オイル抽出後のフィルム内合計カーボン含有量は68.0重量%と算出された。
【0162】
Vertrel 423による15分洗浄を3回繰返して、フィルムからオイルおよびOLOA1200を抽出した。縦30.5cm(12in)、横約17.8cm(7in)のフィルム片に対し、洗浄毎に約1Lの溶剤を使用した。次いでこのフィルムを排気フード内に吊り下げて乾燥させ、これを試料16Aとした。このフィルム片を130℃の対流式オーブン内に10分間吊り下げて、これを試料16Bとした。以下の表6に示すように、フィルムを使用したHDPEの融点126℃を超えて加熱したところ、ガーレー値の大幅な低下、泡立ち点の大幅な上昇および抵抗率の大幅な低下が見られた。このフィルムの物性特性を表6に示す。これらの膜を使用した燃料電池の分極曲線を図12に示す。16Aおよび16Bにどちらについても、フィルムの注型ホイール側をMEAに向けた。フィルム16Aおよび16Bについて、注型ホイール側、空気側および断面の顕微鏡写真を図14および図15にそれぞれ示す。このSEMから、説明したように、フィルムの注型ホイール側および空気側において孔径の違いがあり、フィルム16B全体の孔径が加熱により拡大されていることがわかる。
【0163】
【表6】
【0164】
以下の例17および例18により得られる結果から、
1.フィルムをHDPEの融点を超えて加熱した後、多孔質HDPEに対する通常の延伸温度(通常約180〜220°F)で延伸しても、
2.通常は膜に存在する未充填HDPEの多孔度を損なうことになる高温で延伸しても、
同様の物性特性が得られることがわかる。
【0165】
例17
TITP膜に対する延伸および加熱の効果
例2で説明したように製造したフィルムの試料を、表7に示すように変化させて加熱および延伸した。フィルムは、ニュージャージー州SomervilleのT.M.Long Co.からのフィルム延伸機を使用して延伸した。指定温度に設定した延伸機内にフィルムを挿入後、延伸する前にフィルムを約30秒間加熱した。約2,54cm/秒の割合で、一方向あるいは続けて両方向に延伸した。延伸後、約2分間延伸温度にてフィルムにアニ−ル処理を施してから、延伸グリップを解除して延伸したフィルムを除去した。表中の延伸度は最終寸法を初期寸法で割った比率で示しており、延伸比率が1.25×1であれば、このフィルムは単軸方向に25%(最終長さが12.7cm、初期長さが10.2cm)延伸されたことを意味し、1.25×1.25であれば、フィルムが続けて両方向に25%延伸されたことを意味する。同時に両方向に二軸延伸することも可能である。
【0166】
【表7】
【0167】
表中、例17Aは例2にて準備されたフィルムに相当し、例17Bは例3にて準備されたフィルムに相当する。例17Cは、例17Bによるフィルムを延伸前に130℃から室温まで冷却し、T.M.Long Co.延伸機内で延伸前に93℃に加熱したものである。例17D、17Eおよび17Fは、例2のように準備したフィルムを表7に示す温度までT.M.Long Co.フィルム延伸機内で加熱し、加熱のみの方法と同様に、最初に130℃まで加熱せずに延伸したものである。
【0168】
概して、延伸により、未処理フィルムに対して(例17A)、泡立ち点は上昇、ガーレー値は低下、抵抗率は上昇した。低抵抗率が望ましいが、例17C〜例Fにより、抵抗率が過度に上昇せずともフィルム内のガスフローの向上が可能であることが分かる。例17Cにより、予め130℃に加熱されたフィルム(例17B)をわずかに延伸するだけでも、抵抗率はさほど増加しないが、泡立ち点は大幅に上昇し、ガーレー値は大幅に低下することがわかる。例17D〜例17Fは、例17によるフィルムをポリマーの融点を超える温度で延伸する1ステップのみ処理による効果を示している。高温で延伸することにより、泡立ち点はさらに大きく上昇し、ガーレー値はさらに大きく低下した。延伸量を変えたところ、抵抗率の変化はほとんど変化の無いものから(例17D)中程度の変化(例17E)およびやや大きな変化(例17F)まで多様であった。フィルムの前進および後退接触角(水)はそれぞれ、(17D)148°±6°および95°±5°、(17E)153°±4°および98°±5°、(17F)156°±8°および104°±4°であった。これらの結果は、融点に、あるいは融点近くまで加熱した充填していない多孔質フィルムが一般に潰れて、緻密な非多孔質フィルムになるという点において予想外である。例17の分極曲線を図12に示す。
【0169】
以下の例18に示すように、金属粒子を多く装填したHDPE容積に対して20容量%カーボンだけで、130℃に膜を加熱してもその緻密化を防止することができる。DSCにより特定したところ、HDPEの最高融点は126℃であった。例18により、導電性金属粒子を導電性カーボン粒子と組み合わせて使用することにより有用なTITPフィルムを製造できることもわかる。
【0170】
例18
カーボン導電性粒子以外を装填したTIPTフィルム
例18A:2in鋸歯ディスクヘッドを有する分散器(Premier Mill Corp.)を使用して、0.5μmの初期粒径を有するタングステン粉末(アラバマ州HuntsvilleのTeledyne Wah Chang)11.574gを鉱油(SuperlaTM White Mineral Oil No.31)2576gおよびOLOA1200の359g内に浸して、分散物を調整した。次いで、得られた混合物を、1.3mmスチールビーズを50容量%充填した0.25L横型ミル(Premier Mill Corp.)で再循環させて2時間粉砕した。得られた分散物を、オイルで予め湿潤しておいた20ミクロンロープ巻き取りフィルタで濾過した。オイル添加後の対話式密度チェックを繰返して、所望の目標密度3.6358に到達するまで密度を調節した。
【0171】
例1において説明したように、この分散物を、90rpmで動作する25mmニ軸の中間領域に59.6ml/分で注入し、HDPE(Hoechst Celanese Corp.からの品質等級GM 9255、現在品質等級1285としてFina Oil & Chemical Co.から入手可能)を押出機スロート内に0.54kg(1.2lb)/時間で計量分注した。フィルムを32℃に維持した平滑注型ホイール上に約0.225mm厚さで成型した。Vertrel423TMによる15分洗浄を3回繰返してオイルを抽出し、排気フード内に吊り下げて乾燥した。得られたフィルムを、洗浄/乾燥および130℃における10分間の加熱後に評価した。この結果を表8に示す。この乾燥フィルムにおけるタングステンの重量%を算出したところ、95.0となった。
【0172】
例18B:総微粒子が73容量%のタングステンと27容量%の導電性カーボンを含有した点を除き、同等の48.3容量%の微粒子を装填した、例18Aと同様の膜を準備した。仕上がった膜における微粒子の総重量%は、タングステンおよびConductex 975TM導電性カーボン(Colombian Chemicals Co.)の混合物重量96.29/3.71の重量比で93.5%であった。
【0173】
鉱油(0.863g/cc)2400gおよびOLOA1200(0.92g/cc)300gを組み合わせて分散物を調製した。次いで、タングステン(19.35g/cc)8880gを、2in鋸歯ディスクヘッドを装備した分散器(Premier Mill Corp.)を使用して、この混合物内に浸した。Conductex975(2.0g/cc)341g質量を少量ずつ添加した。加熱を開始して分散物粘度を低下させ、カーボンを濡らせるようにした。次いで、この分散物を20分間150℃に加熱した。この熱い分散物を1時間、3500rpmで動作する0.25L横型ミルにかけて再循環した。このミルは1.3mmスチールビーズを80容量%充填していた。この分散物濃度をさらに鉱油を添加することにより調節して、最終濃度を25℃にて2.8922g/ccとした。
【0174】
例1において説明したように、分散物を59.6ml/分にて、90rpmで動作する25mmニ軸の中間領域に注入し、HDPE(Hoechst Celanese Corp.からの品質等級GM 9255、現在品質等級1285としてFina Oil & Chemical Co.から入手可能)を押出機スロート内に0.54kg(1.2lb)/時間で重量的に計量分注した。フィルムを32℃に維持した平滑注型ホイール上に約0.225mm厚さで成型した。Vertrel 423TMによる15分洗浄を3回繰返してオイルを抽出し、排気フード内で乾燥した。得られたフィルムを、洗浄/乾燥後および130℃における10分間の加熱後に評価した。この結果を表8に示す。
【0175】
【表8】
【0176】
表8に示すデータにより、フィルムを加熱することにより許容範囲までに抵抗率を低下し、ガーレー値を低下し、泡立ち点が上昇するために、少なくとも少量のカーボンを含有していれば、カーボン以外の導電性粒子を用いて本発明に有用なTITPフィルムを準備できることがわかる。
【0177】
例19〜例27
カーボン装填多孔質PTFE膜−PF処理
例19〜例27において、カーボン装填Teflon(登録商標)(PTFE)媒体を、例えば米国特許第5,071,610号において教示されている一般処理を用いて準備した。要約すると、多孔質導電性Teflon(登録商標)基膜を、カーボン粒子、液体分散剤およびPTFE粉末を手動で攪拌してパテ状の塊を形成することにより準備した。この材料を加熱したミル(ニュージャージー州North BergenのReliable Rubber and Plastic Machinery Co. Inc.、Model 4037)内を、試料の折り曲げおよび回転を繰返し、ミル内の通路間の粉砕隙間を狭めながら複数回通過させた。最終的に得られた膜シートを、ベント式オーブン内において分散剤の融点を超える温度で加熱して、分散剤を除去した。
【0178】
すべての例において使用した分散剤は、ミネソタ州セントポールの3Mから入手可能なFluorinertTM、FC−40(b.p.=155℃)高フッ素化電子液体であった。PF処理においてフッ素化分散剤を使用することは米国特許第5,113,860号に記載されている。
【0179】
乾燥形態で提供されているTeflon(登録商標)バインダはPTFE型6−C(デラウェア州ウィルミントンのDuPont Chemical Co.)であった。カーボン粒子は、カーボンブラック物質および/またはカーボン繊維を含有した。この同じカーボンブラック物質を各例において使用した。
【0180】
カーボン繊維は、マサチューセッツ州NewburyportのStrem Chemicals Inc.から得たカタログ番号06−0140であった。およそ6mm長さで0.001cm直径の繊維が無作為に結束されていたため、使用前に物理的に分散させなければならなかった。これを、繊維束を真鍮刷毛ブラシでブラシして繊維を分離してUSA Standard Testing Sieve(オハイオ州MentorのW.S.Tyler Inc.)内に落下させ、篩(100メッシュ)攪拌機(オハイオ州MentorのW.S.Tyler Inc.)で1時間攪拌して行った。次いで、各カーボン繊維をカーボンブラックと配合して、Teflon(登録商標)およびFluorinert混合物に添加した。
【0181】
以下の例において、幾つかのカーボン/PTFE複合材料膜におけるガーレー値、抵抗率、接触角および燃料電池性能を、上記例において説明したELATTM PTFE/カーボン材料と比較する。
【0182】
例19
PTFE/カーボンブラック(95%)膜
カーボンブラック(マサチューセッツ州WalthamのCabot Corp.、Vulcan XC72R、平均粒径30nm)5gを、PTFE0.263gおよびFlurinertTMFC−40の40gと混合した。この混合物を手動により練った後、上述したように0.38mm厚さの多孔質導電性膜に形成した。この膜をベント式オーブン内にて1時間180℃で乾燥した。得られた膜はおよそ37.5cm×30cmと測定され、およそ95重量%がカーボンであった。
【0183】
この膜のガーレー値は37秒/10ccと測定された(図9)。
【0184】
例20
PTFEおよびカーボンブラック/カーボン繊維(89/6)混合物を含有する膜
Vulcan XC72R型カーボンブラック4.7gおよびカーボン繊維(Strem Chemicals Inc.)0.3gを、PTFE0.263gおよびFlurinertTMFC−40の40gと混合した。この混合物を手動により練った後、0.38mm厚さの多孔質導電性膜に形成した。この膜をベント式オーブン内にて1時間160℃で乾燥した。これを半分に折り曲げてミルロール内を通過させ、厚さを0.30mmとした。得られた膜はおよそ37.5cm×30cmと測定され、およそ95重量%の合計カーボンを含み、そのうちカーボンブラックが89%およびカーボン繊維が6%を占めた。
【0185】
ガーレー値を測定したところ、21.5秒/10ccであった(図9)。0.51cm厚さに圧縮した膜5cm2片2枚の抵抗率を、例6において説明したように燃料電池試験セル内で測定したところ、4.0ミリオームであった。これに対して同様の寸法を有するELATTM参考材料の抵抗率は5.7ミリオームであった。(図10)これはバルク抵抗率0.94オーム−cmに相当する。
【0186】
例21
PTFEおよびカーボンブラック/カーボン粒子混合物を含有する膜
Vulcan XC72R型カーボンブラック3.0gおよび、平均粒径が32〜75μmであるNorit SX1カーボン粒子(ジョージア州アトランタのAmerican Norit Co.Inc.)2.0gを、PTFE0.263gおよびFlurinertTMFC−40の40gと混合した。この混合物を手動により練った後、上述のように0.36mm厚さの多孔質導電性膜に形成した。この膜をベント式オーブン内にて乾燥した。得られた膜のおよそ95重量%が合計カーボンであり、そのうちカーボンブラックが57%およびカーボン粒子が38%を占めた。
【0187】
ガーレー値を測定したところ、35秒/10ccであった(図9)。0.076cm厚さに圧縮した膜の5cm2片2枚の抵抗率は4.0ミリオームであった(図10)。これはバルク抵抗率0.26オーム−cmに相当する。前進および後退接触角を測定したところ、それぞれ153±4°および113.7±1.6°であった。
【0188】
例22、23、26および27について、同じ触媒をコーティングしたイオン伝導性膜を使用して、異なる電極支持材料試料に対する燃料電池分極曲線を得た。1つの試験の完了後にセルを開け、電極支持層を除去して次の電極支持層と置き換えるようにして試験を行った。図11において、特定例の符号をつけて試料を試験した順序は、例22、例23、例26、例27、ELAT対照例の順である。ELAT対照例を用いた最後の試料では、触媒されたNafion115イオン伝導性膜の完全な性能を得られたため、電極支持層を交換しても触媒された膜を損なうことはなかった。図9および図10におけるこれらの例に対する抵抗率およびガーレー値からわかるように、燃料電池性能における重要な差異が抵抗率あるいは単なる多孔度によるものであるという可能性はない。陰極浸水層を通過する酸素の拡散が制限されている例26による試料の電流制限のある性能が、他の一連の例に比べて、低多孔質度(高ガーレー値)および大幅に小さい後退接触角(107.5°)を伴いやすい。これらの例により、使用するカーボン粒子の種類の含浸特性が後退接触角を左右することから、その特性が非常に重要であることがわかる。
【0189】
例22
PTFEおよびカーボンブラック/カーボン繊維(87/8)を含有する膜
Vulcan XC72Rカーボンブラック4.6gおよびカーボン繊維(Strem Chemicals Inc.)0.4gを、PTFE0.263gおよびFlurinertTMFC−40の40gと混合した。この混合物を手動により練った後、0.28mm厚さの多孔質導電性膜に形成した。この膜をベント式オーブン内にて165℃で2時間乾燥した。得られた膜のおよそ95重量%が合計カーボンであり、そのうちカーボンブラックが87%およびカーボン繊維が8%を占めた。
【0190】
ガーレー値を測定したところ、2.1秒/10ccであった(図9)。0.058cm厚さに圧縮した5cm2膜片2枚の抵抗率は9.6ミリオームであった(図10)。これはバルク抵抗率0.82オーム−cmに相当する。前進および後退接触角を測定したところ、それぞれ154±7°および132±4°であった。
【0191】
本例において準備した電極支持層の燃料電池性能を、例9に説明したように、ナノ構造電極を具備したNafionTM 115膜基材3層MEAを用いて測定した。図11に、この層および本発明による他の5層MEAの性能、さらにELATTM参考材料により準備した電極支持層の性能についても示す。0.5ボルトにおける本例の膜による電流密度が0.7A/cm2であることがわかる。図11に示した燃料電池分極曲線を得るため、温度を80℃、水素圧を207Kpa、酸素圧を414Kpa、フロー速度を1標準L/分、および陽極/陰極加湿温度をそれぞれ115℃および80℃にして燃料電池を操作した。
【0192】
例23
PTFEおよびカーボンブラック/カーボン繊維(78/7)を含有する膜
Shawinigan C−55カーボンブラック4.6gおよびカーボン繊維(Strem Chemicals Inc.)0.4gを、PTFE0.90gおよびFlurinertTMFC−40の45gと混合した。この混合物を手動により練った後、0.41mm厚さの多孔質導電性膜に形成した。この膜をベント式オーブン内にて乾燥後、得られた膜のおよそ85重量%がカーボンであり、そのうちカーボンブラックが78%およびカーボン繊維がおよそ7%を占めた。
【0193】
ガーレー値を測定したところ、6.2秒/10ccであった(図9)。0.058cm厚さの5cm2膜片2枚の抵抗率は10.6ミリオームであった(図10)。これはバルク抵抗率0.90オーム−cmに相当する。前進および後退接触角を測定したところ、それぞれ157±5°および137±9°であった。
【0194】
本例により準備した電極支持層による燃料電池性能を上述のように測定した。0.5ボルトにおける電流密度は0.95A/cm2であった。
【0195】
例24
PTFEおよびカーボンブラック(92%)を含有する膜
総カーボン装填量をVulcan XC72Rの92重量%とした点を除き、例19において説明したように本膜を準備した。膜の厚さは0.25mmであった。
【0196】
ガーレー値を測定したところ、24秒/10ccであり(図9)、膜の抵抗率は20.5ミリオームであった(図10)。これはバルク抵抗率1.92オーム−cmに相当する。前進および後退接触角を測定したところ、それぞれ156±8°および96±5°であった。
【0197】
例25
PTFEおよびカーボンブラック(95%)を含有する膜
膜の厚さが異なる点を除き、例19において説明したものと同じ成分により本膜を準備した。得られた膜のおよそ95重量%がカーボンブラックであり、その厚さは0.32mmであった。
【0198】
ガーレー値を測定したところ、73秒/10ccであり(図9)、膜の抵抗率は5.0ミリオームであった(図10)。これはバルク抵抗率0.39オーム−cmに相当する。
【0199】
例26
PTFEおよびカーボンブラック(90%)を含有する膜
KetJen−600Jカーボンブラックを使用して、例19において説明したように90重量%カーボン含有膜を準備した。この多孔質導電性膜の厚さは0.28mmであった。
【0200】
ガーレー値を測定したところ、27秒/10ccであり(図9)、5cm2膜2枚の抵抗率は5.0ミリオームであった(図10)。これはバルク抵抗率0.48オーム−cmに相当する。前進および後退接触角を測定したところ、それぞれ161±8.5°および107.5±5°であった。
【0201】
本例において準備した電極支持層による燃料電池性能を上述のように測定して、図11に示した。0.5ボルトにおける電流密度は0.28A/cm2であった。
【0202】
例27
PTFEおよびカーボンブラック(85%)を含有する膜
Shawinigan C−55カーボンブラックを使用して、例19において説明したように85重量%カーボン含有膜を準備した。この多孔質導電性膜の厚さは0.39mmであった。
【0203】
ガーレー値を測定したところ、4.4秒/10ccであり(図9)、5cm2膜2枚の抵抗率は13.4ミリオームであった(図10)。これはバルク抵抗率0.88オーム−cmに相当する。前進および後退接触角を測定したところ、それぞれ157±7°および141±12°であった。
【0204】
本例において準備した電極支持層による燃料電池性能を上述のように測定して、図11に示した。
【0205】
例28
TITPフィルム非対称性の効果
例16Bにおいて説明したカーボン充填HDPE膜を、NafionTM 115をイオン伝導性膜として使用し、電極支持層をVertrel 423により抽出した点を除き、例9〜例14について上記に説明した条件と同条件下において燃料電池で評価した。例28Aにおいて、フィルムを、急冷中に平滑注型ホイールに対向したフィルム側を触媒された膜とは反対向きにして配置した。例28Bにおいて、同じフィルムを、フィルムの注型ホイール側を触媒された膜に向けて配置した。例16Bによるフィルムの注型ホイールおよび空気側のSEM顕微鏡写真を図15に示し、熱処理を施していない比較フィルムを図14に示す。燃料電池の結果は図13に示す。この結果から、フィルムの注型ホイール側を触媒された膜に対向して配置した例28Bの性能が格段に良好であることがわかる。図15のSEM結果からわかるように、細孔が細かく、より密度の高い表面層を有する、触媒された膜に隣接するフィルム層において良好な結果が得られる。図16は、熱処理を施した、および施していない例14に対応するUHMWPEフィルムのSEM顕微鏡写真を示す。
【0206】
上述の実施態様は例証を目的としており、制限を目的とするものではない。請求の範囲内であれば本発明に対する他の実施態様も可能である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池、電解槽および電気化学反応炉などの膜電極アセンブリおよび電気化学電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料の電気化学的な酸化と、酸化剤による還元とにより電流を発生するものである。この2つの化学反応物、すなわち燃料および酸化剤は、それぞれ触媒を電解質に接触させて含有する2つの隔離された電極においてレドックス反応を起こす。イオン伝導素子はその電極間に位置して、2つの反応物が直接反応することを防ぎ、イオンを導通する。集電装置が電極間を接合する。反応物質が触媒領域に到達できるように、この集電装置を多孔質とする。
【0003】
燃料および酸化剤の供給が継続する限り、燃料電池は電流を発生しつづける。H2が燃料であれば、燃料電池のレドックス反応における副生品は熱および水だけである。発電が必要な場所のどこにも燃料電池を適用することができる。その上、燃料電池は環境的にやさしい。
【0004】
電解槽では、電気により水を水素と酸素とに分解する。同様に、塩素アルカリ電池などの電気化学反応炉も電気を利用してアルカリブラインから塩素を生成する。電解槽と電気化学反応炉とは基本的に逆の燃料電池の作動にかかわる。例えば、装置に電流を流して水から水素および酸素を生成する電解槽に対して、燃料電池での使用に適した対応イオン伝導素子を触媒槽と集電子層との間に配置してもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本発明は、
第1および第2の主面を有するイオン伝導性膜と、
その第1および第2の主面に隣接する触媒と、
ポリマーマトリックスおよび、そのポリマーマトリックスに埋設した約45〜約98重量%の導電性粒子を具備してイオン伝導性膜に隣接する、多孔質導電性ポリマーフィルムと、
を具備する電気化学MEAを特徴とする。
【0006】
一好適実施態様において、ポリマーフィルムのガーレー値は約50s/50cc未満である。このポリマーマトリックスに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル))およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含有することができる。エチレン系導電性粒子にカーボンを含有することができる。この多孔質ポリマーフィルムが約20オーム−cm未満の電気抵抗を有することが好ましい。
【0007】
触媒材料をイオン伝導性膜と多孔質導電性ポリマーフィルムとの間の界面に配置することができる。この触媒材料をイオン伝導性膜の表面上に配置することもできる。好適実施態様において、触媒材料をナノ構造素子内に配置する。
【0008】
別の態様において、本発明は、
第1および第2の主面を有するイオン伝導性膜と、
その第1および第2の主面に隣接する触媒と、
導電性粒子およびフィブリル化されたPTFEフィブリルの多孔質マトリックスを具備してイオン伝導性膜に隣接する、多孔質導電性ポリマーフィルムと、
を具備する電気化学MEAを特徴とする。
【0009】
触媒材料をイオン交換膜と多孔質導電性ポリマーフィルムとの間の界面に配置することができる。この触媒材料を多孔質導電性ポリマーフィルムの少なくとも1主面上に配置することができる。導電性粒子にカーボンを含有することができる。この多孔質ポリマーフィルムのガーレー値は50s/50cc未満であり、電気抵抗は20オーム−cm未満であることが好ましい。
【0010】
別の態様において、本発明は、ポリマーマトリックスおよび約45〜約98重量%の導電性粒子を含む多孔質ポリマーフィルムを、フィルムを冷却してもフィルムの物理的一体性および機械的特性を実質的に保持しつつ、ガーレー値が少なくとも約25%低下し、フィルムの電気抵抗が少なくとも約25%低下するまで充分な時間をかけてポリマーマトリックスの融点の20°以内で加熱するステップを含む導電性ポリマーフィルムの製造方法を特徴とする。このポリマーマトリックスに、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル))およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含有することができる。導電性粒子にカーボンおよび/または1種類あるいは2種類以上の導体金属を含有することができる。この多孔質ポリマーフィルムが約20オームcm未満の電気抵抗を有することが好ましい。多孔質フィルムは約80〜約98重量%の導電性粒子を含有することが好ましい。温度は、融点を約5〜約20℃超えた範囲をとることができる。加熱後、フィルムのガーレー値が50秒/50cc未満であることが好ましい。この方法に、押出されたフィルムを急冷する差動冷却を用いて、一方の面の密度を高くして孔を小さくし、他方の面の密度を下げて孔を大きくすることにより非対称なフィルムを製造するステップをさらに具備することができる。この差動冷却は、調節した温度において注型ホイールを用いて実施することができる。
【0011】
別の態様において、本発明は、
(a)結晶化性ポリオレフィンポリマーマトリックス、導電性粒子および、ポリマー希釈剤を含むポリマーフィルムを形成するステップと、
(b)表面構造をポリマーフィルムに適用するステップと、
(c)表面構造の適用前あるいは適用後にオイルを除去するステップと、
を具備する電気化学MEA用電極支持層の形成方法を特徴とする。
【0012】
別の態様において、本発明は、前段落にて説明したように準備したガス透過性かつ導電性多孔質フィルムをそれぞれ備える複数の電極支持層をイオン伝導性ポリマー膜の両面に配置し、触媒層をそのイオン伝導性膜および電極支持層の各間に配置するステップを含む電気化学MEAの形成方法を特徴とする。
【0013】
別の態様において、本発明は、ガスに透過性かつ導電性でありフィブリル化された多孔質PTFEフィルムと、そのフィルムに埋設された導電性粒子とをそれぞれ含む複数の電極支持層をイオン伝導性ポリマー膜の両面に配置し、触媒層をイオン伝導性膜および電極支持層の各間に配置するステップを含む電気化学MEAの形成方法を特徴とする。
【0014】
別の態様において、本発明は複数の5層MEAの製造方法を特徴とし、この方法は、複数の5層MEAをイオン伝導性膜のウェブから切断できるように、イオン伝導性膜のウェブ沿いの適した位置に触媒層および電極支持層を適用するステップを含む。
【0015】
別の態様において、本発明は、約45重量%を超える導電性粒子を含有し、水との接触下において90°を超える後退および前進接触角を呈し、前進接触角が後退接触角を超える量が50°以下だけである表面を有するフィルムを特徴とする。前進接触角は、後退接触角を30°以下だけの差で上回ることが好ましく、20°以下だけの差であればより好ましい。
【0016】
別の態様において、本発明は、1種類のポリマーおよび約45重量%を超える導電性粒子を含有するフィルムの製造方法であって、融点付近から融点を約20℃超える温度まで加熱して、フィルムを元の長さの約25%〜約150%を伸張するステップを含む製造方法を特徴とする。
【0017】
別の態様において、本発明は、複数のMEA素子を含むポリマーウェブを特徴とする。このMEA素子を、イオン伝導性ポリマー材料の連続ウェブに沿って配置することができる。このポリマーウェブに、ナノ構造触媒層および/または適切に配置されたシール材料をさらに具備することができる。
【0018】
本明細書内において説明するような電極支持層は、高導電性、高ガス透過性、良好な水管理特性および重要な製造有利点を有する。所与の燃料電池電圧において生成される電流が特定するように、膜電極アセンブリ(MEA)にこの電極支持層を備えることにより性能を改良することができる。有利なことに、本発明のフィルムは、適切な疎水性を有して水管理を効率的に実施することができるため、効率的な水管理に適した疎水性を呈しており、使用するとフィルムの性能が変化する恐れのあるフルオロポリマーコーティングへの出費あるいはその必要性が生じない。この多孔質ポリマー性電極支持層を、連続ロール加工などの多層MEAの能率的商用製造方法において用いることが可能である。連続ロール加工により、比較的速い速度で何百もの電気化学電池構成要素の低コストの組立が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】5層MEAの略断面図である。
【図2】燃料電池積層物を示す略断面図である。
【図2A】燃料電池積層物を示す略断面図である。
【図3】MEAの連続ロールを示す斜視図である。
【図3A】MEAの連続ロールを示す斜視図である。
【図4】3セルを備えたMEA積層物の分解斜視図である。
【図5】TIPT処理における適切な条件の評価に有用な、結晶質熱可塑性ポリマーの相挙動を示すグラフである。
【図6】TIPT処理により得られるカーボン装填電極支持材料の高電流密度における抵抗率を得るための電池電圧と電流密度との関係を示すグラフである。
【図7】TIPT処理により製造された電極支持層を組み入れた2つの5層MEAおよび、比較用に商用電極支持材料を用いて製造した電池における電池電圧と電流密度との関係を示すグラフである。
【図8】TIPT処理により得られるカーボン装填電極支持材料を用いて製造した付加電池および、比較用に商用電極支持材料を用いて製造した電池における電池電圧と電流密度との関係を示すグラフである。
【図9】PF処理により製造された電極支持層および、比較用に商用電極支持材料のガーレー値を示す棒グラフである。
【図10】燃料電池試験アセンブリにおいて測定された、PF処理により製造された電極支持層および商用電極支持材料の関数として印可された電圧を示すグラフである。
【図11】PF処理により製造した電極支持層を組み入れた燃料電池MEAの電池電圧と電流密度との関係を、商用電極支持層を用いて製造した燃料電池MEAに比較したグラフである。
【図12】それぞれを当量の触媒をコーティングしたイオン伝導性膜を用いて試験して、TIPT処理により製造した電極支持層を組み入れた燃料電池MEAの電池電圧と電流密度との関係を、商業的材料を組み入れた対照と共に示したグラフである。
【図13】平滑注型ホイールを用いてTIPT処理により製造した電極支持層を組み入れた燃料電池の電池電圧と電流密度との関係を示すグラフであり、これにより、電池内における面対面配置に対する電極支持フィルムの配向に依存する電池内の非対称な電極支持層の電池性能の差異を示す。
【図14A】熱処理を施していない例16Aのカーボン充填HDPEフィルムの注型ホイール側を示すSEM顕微鏡写真である。
【図14B】熱処理を施していない例16Aのカーボン充填HDPEフィルムの空気側を示すSEM顕微鏡写真である。
【図14C】熱処理を施していない例16Aのカーボン充填HDPEフィルムの断面を示すSEM顕微鏡写真である。
【図15A】130℃にて熱処理を施した例16Bのカーボン充填HDPEフィルムの注型ホイール側を示すSEM顕微鏡写真である。
【図15B】130℃にて熱処理を施した例16Bのカーボン充填HDPEフィルムの空気側を示すSEM顕微鏡写真である。
【図15C】130℃にて熱処理を施した例16Bのカーボン充填HDPEフィルムの断面を示すSEM顕微鏡写真である。
【図16A】熱処理を施していない例14のカーボン充填UHMWPEフィルムの断面を示すSEM顕微鏡写真である。
【図16B】熱処理を施した例14のカーボン充填UHMWPEフィルムの断面を示すSEM顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
A.電気化学電池構造
図1を参照すると、5層実施態様内の膜電極アセンブリ(MEA)100は、電流を発生するために燃料を電気化学的に酸化し、酸化剤を還元するためのさまざまな層を有する。イオン伝導性膜102により、MEA100の陰極104および陽極106が分離されている。イオン伝導性膜102の各側面が触媒層、すなわち陰極104および陽極106に接する。触媒層104、106はそれぞれ電極支持層108、110に接する。電極支持層108、110はそれぞれ両極板112、114に接する。電気化学電池をなす構成部分の形状および寸法は、具体的な設計により広範囲にわたって変化することができる。図1は、燃料電池における反応物質の流れを示す。電解槽および電気化学反応炉において、MEAに電圧を印可して、例えばCl2を形成するために電極に流れてきた組成物を分解する。以下の説明は燃料電池に焦点を当てるが、電解槽および電気化学反応炉に類似した点があることは明瞭である。
【0021】
イオン伝導性膜により、陽極および陰極間にイオン伝導性が得られ、反応物質に対するガス遮蔽遮断流を形成する。実施態様によっては、イオン伝導性膜を、陽電荷あるいは陰電荷のどちらかのイオンにのみ導電性である、すなわち陽イオン交換膜あるいは陰イオン交換膜にしても、あるいはプロトン交換膜などの1種類のイオンにのみ導電性である膜にしてもよい。
【0022】
幾種類かのイオンとは導電性であっても、イオン伝導性膜は電子およびガス反応物質に対して導電性であってはならない。ガス反応物質の通過を防止するため、イオン伝導性膜の厚さを充分にして機械安定性を保持し、完全に不透過性としなくてはならない。ガス反応物質がイオン伝導性膜を通過して導通してしまうと、反応物質が直接反応して好ましくない結果となる可能性がある。同様に、電子がイオン伝導性膜を通過して導通してしまうと、電池の短絡が起きて好ましくない結果となる可能性がある。したがって、イオン伝導性膜の製造に用いる材料は電子を導通するものであってはならない。反応物質の直接反応あるいは短絡が起こった場合、燃料および酸化剤の反応により放出されたエネルギを電気の生成に使用することはできない。
【0023】
イオン伝導性膜にポリマー電解質を含有することができる。このポリマーは化学的で安定であり、触媒を汚染しないように触媒と相溶性でなくてはならない。ポリマー電解質は、例えば酸化ポリエチレン、ポリ(コハク酸エチレン)、ポリ(β−プロピオラクトン)およびNafionTM(デラウェア州ウィルミントンのDupont Chemicalsから商業的に入手可能)などのフルオロポリマーなどのさまざまなポリマーから製造することができる。NafionTMは、ポリテトラフルオロエチレンをペルフルオロスルホニルエトキシビニルエーテルで加水分解し、スルホニル基をスルホン基に変換することにより製造する。適した陽イオン交換膜は米国特許第5,399,184号に説明されている。
【0024】
別の方法として、イオン伝導性膜を、イオン交換材料が膜に含浸して膜の内部容積をうまく充填している多孔質ミクロ構造を具備した膨張膜にすることができる。米国特許第5,635,041号には、膨張したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から形成されたこのような膜について説明されている。膨張したPTFE膜は、フィブリルにより相互連結された節のミクロ構造を有する。同様の構造が米国特許第4,849,311号に説明されている。
【0025】
燃料および酸化剤の電池反応は、別々の触媒面で半分ずつ起こる。反応物質ガス、すなわち燃料および酸化剤は、その各々の触媒層まで透過可能でなくてはならない。触媒は一般に粒子の形態にして、イオン伝導性膜および電極支持層に密接し、イオノマあるいは電解質を含有する層として配置する。この触媒層をイオン伝導性膜あるいは電極支持層に適用する方法はさまざまである。言いかえれば、この触媒をイオン伝導性膜および/または電極支持層の表面に適用することができる。他の方法として、触媒層をイオン伝導性膜の表面内に密封あるいは埋設することができる。
【0026】
例えば、イオン伝導性膜に、米国特許第5,338,430号に説明されている膜などのナノ構造触媒層を含むことができる。このナノ構造フィルムは、接触活性物質によりコーティングした2成分ウィスカあるいは接触活性物質を含む1成分構造である複数のナノ構造素子を有する。このナノ構造素子を、固体電解質、イオン交換膜あるいは他のポリマーマトリックスなどのカプセル材料内に埋め込むことができる。ナノ構造膜の製造は米国特許第5,238,729号に説明されている。
【0027】
燃料電池に適した触媒は一般に、選択した反応物質に依存する。水素あるいはメタノール燃料の酸化に適した触媒材料の例として、たとえばPd、Pt、Ru、Rhおよびこれらの合金などの金属を挙げられる。酸素削減用に一般に使用する触媒の例として、カーボン粒子上で支持されているプラチナを挙げられる。電解槽および電気化学反応炉にて使用する触媒は異種であることが好ましい場合がある。例えば、電解槽における酸素発生用には、酸化Ruおよび酸化Irの混合物が一般に、Ptよりも良好な性能を示す。
【0028】
電極支持層は集電装置として機能する。この電極支持層を多孔質にしてガス反応物質を透過させる。電気導電性を付与するため、この電極支持層に導電性粒子を含有する。所望により、電極支持層に表面構造を持たせることができる。この電極支持層の詳細な特徴については後述する。
【0029】
両極板は通常、その表面にチャネルおよび/または溝を有して、燃料および酸化剤をそれぞれの触媒電極に送る。通常、両極板は高導電性であり、グラファイトおよび金属から製造することができる。本発明による電極および電極支持層は一般に、H2、およびメタノールおよびガソリンなどの改質された炭化水素および、大気中あるいは純粋なO2を含む標準酸化剤を含む標準燃料のいずれと併用することも可能である。
【0030】
一般に、複数の燃料電池あるいはMEA150を組み合わせて、図2に示すような燃料電池積層152を形成する。積層内の電池は、各燃料電池の電圧が追加式になるように両極板により連続して接続されている。燃料電池積層の形成に関する詳細をさらに以下に説明する。
【0031】
B.電極支持層/電極
電極支持層は、ポリマーバインダおよび導電性粒子を含有する多孔質ポリマーフィルムを具備する。一般に、このフィルムは、ポリマーマトリックスの比較的小部分により互いに保持されている導電性粒子をかなり装填していなければならない。このフィルムの導電性粒子量は一般に、約45容量%を超え、約65〜約96容量%であればより好ましい。導電性粒子だけでなく、触媒層(電極)を電極支持層の表面上にコーティングすることができる。
【0032】
電極支持層を形成するポリマーフィルムを多孔質にして、電極支持層およびイオン伝導性膜の界面において反応物質を触媒粒子に向かって流動させる。フィルムの適度な電気的導電性および機械的強度を維持しつつ、反応物質の均等な流れをもたらすのに適した多孔度を有するフィルムが好適である。また、ポリマーフィルムを多孔質にすることにより、電池内の水管理も可能となる。電極支持層の多孔度を充分に高くして、水が凝結してフィルムの孔を遮蔽し、蒸気の通過を遮ることになる領域を発生させることなく、燃料ガスおよび水蒸気を通過させることが好ましい。平均孔径は一般に、約0.01ミクロメータ〜約10.0ミクロメータの範囲である。他の方法として、ウェブの多孔度をウェブのガーレー値で、すなわち以下に説明するように、所与量のガスが予め定められたウェブ領域を特定圧力損失下で通過するのに必要な時間量で表すこともできる。ガーレー値が約100秒/10cc未満であれば、一般に適したウェブである。
【0033】
水管理性能を補強するため、非対称に多孔質である電極支持層を用いることができる。水が生成される陰極に隣接する電極支持層により小さな孔を設け、両極板に隣接するMEAの外側により大きな孔を設けることが好ましい。小さな孔内の圧力が高いほど、水を陰極から押し出すことになる。非対称な多孔度を有する電極支持層の形成については後述する。
【0034】
導電性粒子に、金属およびカーボンなどのさまざまな導電性材料を含有することができる。その形状および寸法も多岐であってよい。好適導電性粒子の例として導電性カーボンを挙げられる。導電性粒子の直径は約10ミクロン未満であることが好ましく、約1ミクロン未満であればより好ましい。適したカーボン粒子の例として、カーボンブラック、グラファイト、カーボン繊維、フラーレンおよびナノ細管を挙げられる。好適カーボン粒子の例としてカーボンブラックを挙げられる。商業的に入手可能なカーボンブラックの例として、Vulcan XC72RTM(マサチューセッツ州BilericaのCabot Corp.)、Shawinigan C−55TM 50%圧縮アセチレンブラック(テキサス州ヒューストンのChevron Chemical Co.)、Norit型SX1TM(ジョージア州アトランタのNorit Americas Inc.)、Corax LTMおよびCorax PTM(ニュージャージー州Ridgefield ParkのDegussa Corp.)、Conductex 975TM(ジョージア州アトランタのColombian Chemical Co.)、Super STMおよびSuper PTM(ベルギー、ブリュッセルのMMM nv、MMM Carbon Div.)、KetJen Black EC 600JDTM(イリノイ州シカゴのAkzo Nobel Chemicals,Inc.)を挙げられる。有用なグラファイト粒径は最大約50μmの範囲であり、約1〜約15μmであれば好ましい。適した商業的グラファイトの例として、例えばMCMB 6−28TM(日本、大阪のOsaka Gas Chemical Co.)およびSFG 15TM(ニュージャージー州Fair LawnのAlusuisse Lonze America Inc.現在のTimcal)を挙げられる。導電性カーボンブラックの主要粒子の寸法は約10nm〜約15nmの小ささが可能であるが、販売されているように数ミリにおよぶ塊状であってもよい。分散後、それらの塊も約0.1ミクロン(100nm)未満の粒子に分解することが好ましい。グラファイトとより導電性の強いカーボンブラックとの混合物も有用である。本発明による電極支持材料内において有用な導電性カーボン繊維の例として、例えば、マサチューセッツ州NewberyportのSTREM Chemicals,Inc.から入手可能なカタログ番号06−0140の、およそ6mm長さで0.001cm直径の繊維を挙げられる。
【0035】
一般に、ポリマーマトリックスは、粒子を装填した多孔質フィルムに適切に処理できるポリマーであればいずれのポリマーも含有することができる。適したポリマーの種類として、例えば熱可塑性ポリマー、感熱性ポリマーおよびフルオロポリマーを挙げられる。2種類の好適処理方法を以下に説明する。これらの好適処理方法により、対応ポリマーの特性に制約を付加することができる。
【0036】
導電性粒子に加え、充填剤を用いて本発明に有用なポリマーフィルムの物性特性を変更することができる。適した充填剤の例として、例えばケイ素(SiO2)、ポリテトラフルオロエチレン粉末およびフッ化グラファイト(CFn)を挙げられる。ポリマーフィルムに最大約20重量%の充填剤を含有できることが好ましく、約2〜約10重量%であれば尚好ましい。この充填剤は一般に粒子形態である。
【0037】
電極支持層の電気抵抗率は約20オーム−cm未満であることが好ましく、約10オーム−cm未満であればより好ましく、約0.5オーム−cm未満であれば最も好ましい。また、本発明において電極として有用なフィルムが呈する水に対する前進および後退接触角は約90°を超えることが好ましく、約110°を超えればより好ましい。この時、前進接触角が後退接触角を超える差は約50°未満であり、約30°未満であれば好ましく、約20°未満であればより好ましい。前進および後退接触角の測定については後述する。水に対する後退および前進接触角はフィルム表面の疎水性および、燃料電池の水管理において有効に機能するフィルムの性能を示す重要な手がかりである。電極支持層の2表面上では接触角が異なる可能性がある。同様に、陰極および陽極でも接触角は異なる可能性がある。
【0038】
ポリマーフィルムのガスフローに対する抵抗をガーレー値として表すことができる。このガーレー値は、後述するように、ASTM D726−58、Method Aに説明されているように、制御された圧力条件下においてフィルムの標準領域を通過するガスの流速値である。電極支持層のガーレー値は約100秒/50cc大気未満であることが好ましく、約50秒/50cc大気未満であればより好ましい。
【0039】
電極支持層の表面に微小構造を設けることにより、界面の電気導電性、水管理および流動領域性能を改良することができる場合がある。例えば、材料を、構造を設けた注型ホイールに射込む、あるいは片方のロールに構造を設けたニップロールによりエンボス加工することができる。電極支持層の表面に構造を設けることにより、ガス(例えば燃料、酸素および/または水蒸気)を輸送して燃料電池に出入りさせ、液状となった水を陰極から遠ざかる方向に流すことができる。
【0040】
好適ポリマーフィルムの製造に用いる2種類の方法について、次に説明する。
【0041】
1.TITP処理
多孔質電極支持層の製造に用いる第1の好適処理は、熱誘導相転移(TITP)に関る。このTITP処理は、高温にて希釈剤に可溶であり、比較的低温にて希釈剤に不溶であるポリマーの使用を基本とする。「相転移」に固体−液体相分離、液体−液体相分離、あるいは液体からゲルへの相転移を含むことができる。この「相転移」に熱力学変数における不連続を含める必要はない。
【0042】
TITP処理に適したポリマーの例として、熱可塑性ポリマー、感熱性ポリマーおよび、相溶性であるこれらの種類のポリマーの混合物を挙げられる。超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を直接溶融処理することはできないが、溶融処理向けに粘度を充分に低下させる希釈剤あるいは可塑剤を伴えば溶融処理することは可能である。適したポリマーは結晶化性であっても非晶質であってもよい。
【0043】
適したポリマーの例として、例えば結晶化性ビニルポリマー、縮合ポリマーおよび酸化ポリマーを挙げられる。結晶化性ビニルポリマーの代表例として、例えば高密度および低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリレート、ポリビニリデンなどのフッ素含有ポリマーおよび、対応コポリマーを挙げられる。縮合ポリマーの例として、例えばポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ナイロンなどのポリアミド、ポリカーボネ-トおよびポリスルホンを挙げられる。酸化ポリマーの例として、例えばポリフェニレン酸化物およびポリエーテルケトンを挙げられる。適したポリマーとして他にはそのコポリマーである、TeflonTM PFA(デラウェア州ウィルミントンのE.I.DuPont de Nemours Chemical Corp.)として販売されているポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロ−(プロピルビニルエーテル))を挙げられる。ポリマーおよびコポリマーの配合物を使用してもよい。電極支持層向け好適結晶化性ポリマーの例として、その加水分解および酸化への耐性からポリオレフィンおよびフルオロポリマーを挙げられる。
【0044】
室温にて液体あるいは固体であり、ポリマーの融点にて液体である希釈剤が適している。ポリマー量希釈剤より抽出が容易であるため、低分子量希釈剤が好適である。しかしながら、希釈剤ポリマーおよびマトリックスポリマーが溶融状態において混和性であるならば、低分子量から中分子量ポリマーも希釈剤として使用可能である。充分な超大気圧を利用してポリマー融点において液体を生成することにより、ポリマーの融点より低い沸点を有する化合物を希釈剤として使用することができる。
【0045】
希釈剤のポリマーに対する相溶性は、一般に透明な均質溶液であることを見て取れる液体単相になるかどうかを特定するまで加熱しながらポリマーを混合することにより判定できる。適したポリマーは、融点において希釈剤に溶けるあるいは希釈剤と単相を形成するが、ポリマーの融点を下回る温度に冷却されると、連続した網状組織を形成する。この連続した網状組織は希釈剤から分離した相であるか、希釈剤がポリマー組織を膨潤する可塑剤として機能しているゲルであるかのいずれかである。このゲル状態を単相と考えることもできる。
【0046】
無極性ポリマーには、無極性有機液体が一般に希釈剤として好適である。同様に極性有機液体は一般に極性ポリマーに好適である。ポリマーの配合物を使用する場合、各ポリマーに相溶性である希釈剤が好適である。ポリマーがブロックポリマーである場合、希釈剤が各ポリマーブロックと相溶性であることが好ましい。2種類以上の液体の配合物も、ポリマーがポリマーの融点においてその液体配合物に可溶であり、冷却されるとポリマーの網状組織が形成される相転移が起こるならば、希釈剤として使用可能である。
【0047】
さまざまな有機化合物が希釈剤として有用であり、その例として以下の広範囲の分類からの化合物を挙げられる。すなわち、脂肪族系酸;芳香族系酸;脂肪族アルコール;芳香族アルコール;環状アルコール;アルデヒド;第一級アミン;第二級アミン;芳香族アミン;エトキシル化アミン;ジアミン;アミド;セバシン酸、フタル酸、ステアリン酸、アジピン酸およびクエン酸などのエステルおよびジエステル;エーテル;ケトン;エポキシ化植物油などのエポキシ化合物;リン酸トリクレシルなどのリン酸エステル;エイコサン、クマロンインデン樹脂およびテルペン樹脂、トール油、アマニ油および、潤滑油および燃料油を含む石油などの配合物、炭化水素樹脂およびアスファルトなどの炭化水素;および、さまざまな複素環式化合物である。
【0048】
適した多孔質材料の準備に有用なポリマーおよび希釈剤の特定配合物の例として、鉱油およびミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素、フタル酸ジオクチルおよびフタル酸ジブチルなどのエステル、あるいはジベンジルエーテルなどのエーテルを含むポリプロピレン;鉱油あるいはワックスを含む超高分子量ポリエチレン;鉱油などの脂肪族炭化水素、メチルノニルケトンなどの脂肪族ケトン、あるいはフタル酸ジオクチルなどのエステルを含む高密度ポリエチレン;デカン酸およびオレイン酸などの脂肪族系酸、あるいはデシルアルコールなどの第一級アルコールを含む低密度ポリエチレン;鉱油を含むポリプロピレンポリエチレンコポリマー;フタル酸ジブチルを含むポリフッ化ビニリデンを挙げられる。
【0049】
ポリマーおよび希釈剤の具体的な組み合わせには、1種類以上のポリマーおよび/または1種類以上の希釈剤を含有してもよい。鉱油およびミネラルスピリットはそれぞれ、通常炭化水素液の配合物であるため、化合物の混合物である希釈剤の例である。同様に、液体および固体の配合物を希釈剤として利用することもできる。
【0050】
熱可塑性ポリマーについて、溶融配合物が、約10重量部〜約80重量部の熱可塑性ポリマーおよび約90重量部〜約20重量部の希釈剤を含有することが好ましい。熱可塑性ポリマーおよび希釈剤の適切な相対量は各組み合わせで変化する。感熱性ポリマーの一例であるUHMWPEポリマーについて、溶融配合物が、約2重量部〜約50重量部のポリマーおよび約98重量部〜約50重量部の希釈剤を含有することが好ましい。
【0051】
結晶ポリマーについて、所与システムにおいて固体−液体あるいは液体−液体相分離に使用可能なポリマー濃度を、ポリマー−希釈剤システムについての温度−組成物グラフを参照して特定することができる。このグラフの1例を図5に示す。このようなグラフは、Smolders,van AartsenおよびSteenbergen著「Kolloid−Zu Z.Polymere」243:14−20(1971年)に説明されているように容易に展開することができる。システムをほぼ平衡点に留めるように充分に低速で冷却しながら、一連の組成物について曇り点を特定することにより相転移を見つけることができる。
【0052】
図5を参照すると、ガンマからαにかけてのグラフ部分が、熱力学的平衡点液体−液体相分離を示している。TUCSTはシステムの上方臨界温度を示す。アルファからベータにかけてのグラフ部分は、平衡点液体−固体相分離を示す。希釈剤を、結晶化性ポリマーおよび希釈剤システムが組成物の全範囲にわたり液体−固体相分離あるいは液体−液体相分離を呈するように選択することができる。
【0053】
ΦUCSTは、臨界組成物を表す。所望の多孔質ポリマーを形成するため、特定システムに使用するポリマー濃度はΦUCSTを超えることが好ましい。ポリマー濃度が臨界濃度(ΦUCST)を下回る場合、これらの相分離は冷却されると一般に、希釈剤を分散したあるいはポリマー粒子に弱く付着した連続相となり、得られるポリマー組成物は通常、充分な強度に欠けるため使用に耐えない。
【0054】
所与の冷却速度において、希釈剤−ポリマー配合物の温度−濃度曲線を、例えば冷却の1速度を図5において破線で示したように示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry)(DSC)により特定することができる。得られたポリマー濃度と融点との関係を示す曲線により、固体−液体(破線グラフの傾斜部分)および液体−液体(破線グラフの水平部分)相分離となる濃度範囲がわかる。このグラフから、ポリマーおよび所望の多孔質構造を得られる液体の濃度範囲を推定することができる。DSCによる融点−濃度グラフの特定は、結晶ポリマーの平衡温度−組成物曲線の特定に代わるものである。
【0055】
位相線図にかかわる上記の論議は、液体−液体相分離のみが見られる点を除き、無定形ポリマーにもあてはまる。この場合、曇り点は一般に、具体的な相転移を示す。同様に、ゲル形成ポリマーについて、関連する相転移は、均質な溶液からゲルへの転移を含む。ゲル形成ポリマーについて、粘度を急激に増加すると溶融物からゲルへの相転移を示すが、場合によって曇り点が発生する可能性もある。
【0056】
多くの希釈剤−ポリマーシステムについて、液体−ポリマー溶液の冷却速度が遅い場合、液体−液体相分離は、実質的に寸法が均一である液体の複数の液滴が生成されるのと実質的に同時に起こる。液滴が形成できるほど冷却速度が遅い場合、得られる多孔質ポリマーは細胞状ミクロ構造を有する。これとは対照的に、液体−ポリマー溶液の冷却速度が速い場合、この溶液はスピノーダル分解と呼ばれる自然転移を起こし、得られる多孔質ポリマーは、冷却速度が遅い場合に得られる液滴形成とは質的に異なる形態学特性および物性特性を有する、微細なレース構造を有する。この微細な多孔質構造はレース構造と呼ばれる。
【0057】
液体−固体相分離が起こると、その材料は、複数のポリマー粒子が空間をあけて無作為に配置され、不均一な形状であることを特徴とする内部構造を有する。材料全体に渡って隣接するポリマー粒子は互いに間隔をおいて位置して、その材料にミクロ細孔を相互連結した網状組織を提供し、ポリマーからなる複数のフィブリルにより互いに連結する。このフィブリルが整合されて伸長することにより、ポリマー粒子間に長い空間ができ、孔隙率も上昇する。充填剤粒子は、このように形成された構造の熱可塑性ポリマー内に位置する、あるいはポリマーに装着する。
【0058】
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の場合、冷却により得られる粒子はゲル状態で存在する可能性がある。構成するポリマー網状組織の性質は、冷却速度により左右される。冷却が速いとゲル形成が促進されやすく、冷却が遅いと多くの結晶が起こりやすくなる。希釈剤/UHMWPE重量比が80:20を超える組成物の場合はゲル形成が起こりやすく、希釈剤/UHMWPE重量比が80:20を下回る場合はますます結晶が起こりやすくなる。SEMにより特定したようにかなりの粒子が充填されたUHMWPEの場合のポリマー網状組織は、希釈剤の抽出後、微細孔を有するかなり緻密な構造物となる傾向にある。網状組織の構造は抽出処理により変更することができる。かなりの粒子を充填したUHMWPEフィルムは、抽出あるいは延伸中に拘束せずとも、抽出後も多孔質である。
【0059】
所望により、ポリマーを、そのポリマーに可溶であるあるいはポリマー内に分散可能である特定添加剤を配合することができる。使用に際し、その添加剤はポリマー化合物の約10重量%未満であることが好ましく、約2重量%未満であれば尚好ましい。一般の添加剤の例として、例えば酸化防止剤および粘度調整剤を挙げられる。
【0060】
溶融配合物は、電極に組み入れるための微粒子をさらに含有する。充填した組成物を得るため、フィルムの抽出あるいは延伸中に拘束することなく希釈剤を抽出して多孔質ポリマーフィルムを得ることができる。抽出中にフィルムを拘束すると、拘束せずに抽出したフィルムに比べ、泡立ち点が上昇し、ガーレー値が低下する可能性がある。電極支持層製造用粒子に導電性粒子を含有することができる。この粒子を複数材料の混合物にすることもできる。この粒子が希釈剤内において分散し、ポリマーおよび希釈剤の溶融配合物内において不溶であることが好ましい。この材料に適した種類は、上述したように、ポリマーおよび希釈剤に対して適切な相溶性を備えていなければならない。
【0061】
微粒子のいくつか、特に寸法の小さなカーボン粒子を核生成剤として利用することができる。この核生成剤はポリマーの結晶温度において固体であってもゲルであってもよい。寸法、結晶形および他の物性パラメータに依存して、広範囲の固体材料を核生成剤として使用することができる。例えばサブミクロン範囲の小さい固体粒子が核生成剤として良好に機能する。核生成剤の寸法は約0.01〜約0.1μmであることが好ましく、約0.01〜約0.05μmであればより好ましい。ポリプロピレンなどの特定ポリマーは核生成剤を併用するとTITP処理において良い性能を示す。
【0062】
核生成剤を含むと、結晶が開始される領域数が、含まない場合の数に比較して増加し、得られるポリマー粒子の寸法は小さくなる。さらに、単位容量あたりでポリマー粒子を結合するフィブリル数も増加する。材料の引張強さが、核生成剤を用いずに製造した多孔質フィルムに比較して向上する。
【0063】
多孔質網状組織において、粒子がポリマーマトリックス内に均一に分散し、引き続き溶媒を用いて希釈剤の抽出を行っても、洗い流されないようにポリマーマトリックス内にしっかり保持されていることが好ましい。粒子間の平均距離はポリマー内に装填された粒子量に依存するが、導電性粒子の場合、粒子は充分に密接して導電性を保持することが好ましい。混合が不充分であるとうまく分散せず粒子のたま(例えばカーボンの結節)ができてしまい、混合しすぎると塊がポリマー全体に分散する可能性があるため、ポリマーマトリックス内の粒子、特に導電性カーボン粒子の処理には注意が必要である。導電性粒子間の近接度は導電性を高レベルに保つために重要である。したがって、どちらのへの過度な片寄りも混合物の導電性特性のために好ましくない。
【0064】
この溶融配合物に対して、約40〜約50容量%までの分散粒子を含有することができる。高い希釈濃度に高い粒子の容量%を組み合わせれば、x相分離したポリマー組成物から希釈剤を抽出した後の粒子の重量%は高くなる。抽出および乾燥後のポリマー材料が約50〜約98重量%の粒子を含有することが好ましく、約70〜約98重量%であればより好ましい。
【0065】
希釈剤を最終的に材料から除去して、粒子を充填した実質的に液体を含まない多孔質かつ導電性ポリマー材料を得る。希釈剤を除去する方法は例えば、溶媒抽出、昇華、揮発あるいは他の従来方法のいずれであってもよい。希釈剤を除去後も、粒子相は多孔質構造内に少なくとも約90%のレベルで封じ込められたままであることが好ましく、約95%であればより好ましく、約99%であれば最も好ましい。言いかえれば、溶剤洗浄容器に微粒子が存在しないことからわかるように、希釈剤の除去に際してほとんどの粒子は除去されない。
【0066】
処理の概略を以下に説明するが、この処理は本明細書内の教示に基づいて変更することができる。TITP処理の一実施態様において、粒子を希釈剤表面下に分散し、封入された空気をその混合物から除去する。このステップの実行には、数分から約60分間にわたり数百RPMから数千RPMで動作する標準高速剪断混練機を使用することができる。例えばペンシルバニア州ReadingのPremier Mill Corp.製およびインディアナ州Fort WayneのShar Inc.製の高速剪断混練機が適切である。
【0067】
この第1の混合ステップ後にさらに分散する必要がある場合、その分散物を押出機内に注入する前に分散物を粉砕する、あるいは分散している要素を押出機内に投入することにより実行することができる。UHMWPEなどの剪断により破損しやすいポリマーについて、分散物を押出機に注入する前に大半の微粒子分散を行い、押出機内にて必要となる剪断を最小限にすることが好ましい。要望によって、第2のステップに、粒子を希釈剤内に分散することを含め、粒子塊をより小さな塊に分断して希釈剤内の大きなたまを排除することを含めてもよい。導電性は一般に、導通する粒子間の接触あるいは近接度により促進されるため、ほぼ最初の粒子まで完全に分散する必要はない、あるいは望ましくない。
【0068】
好適な分散程度は、最終的な電極フィルムの表面粗さの検査、およびその導電性の特定により決定することができる。表面は、目で確認できる範囲の表面全体にわたり、突出部がなくほぼ平滑かつ一様でなければならない。微粒子の分散が不充分であると、表面にさまざまな粗さの紙やすりのきめを持つフィルムが仕上がる可能性がある。特定例によっては、微粒子を湿潤するためのみに剪断を使用しても充分な分散が起こるため、粉砕が必要のない場合もある。希釈剤および初期粒子などの成分を適切に選択することにより、分散ステップの大幅な簡易化を図ることができる。
【0069】
分散をさらに必要とするあるいは所望する場合、微粒子物質を含有する希釈剤をミルにかけることができる。粒子/希釈剤の粉砕を比較的高速で行うことが好ましい。これにより粉砕処理がより効果的となる。有用なミルの例として、例えば磨砕機、横型ビーズミル、サンドミルを挙げられる。通常、横型ビーズミルを中程度のスループット速度(すなわちミルの最高スループット速度に対して中程度)で1度通せば充分である。相当量の分散が必要である場合、ミル内に分散物を1時間未満だけ循環されれば充分な場合も、約4〜約8時間の粉砕時間が必要な場合もある。
【0070】
少ない分量の処理に適切な装置の1例として、日本、東京のIgarachi Kikai Seizo Co.Ltd.製磨砕機Model 6TSG−1−4がある。この磨砕機は、約1リットル容積の水冷却システムを有し、約500ccの材料を処理できる性能を備えて約1500RPMで動作する。分量が多い場合、例えばペンシルバニア州ReadingのPremier Mill Corp.から販売されているさまざまな寸法の横型ミルを適した装置として挙げられる。
【0071】
粉砕により、塊をより小さな塊にするあるいは初期粒子に戻すことができるが、一般には初期粒子よりさらに小さな粒子に分解することはない。大きな粒子数が不当に多く存在する場合、任意に、粉砕した分散物を濾過してもよい。適した濾過器の例として、例えば塊状粒子あるいは3ミクロンを超える粒子の除去にはBrunswick Technitics(メリーランド州Timonium)製型番号C3B4U、3ミクロンロープ巻付け型濾過器などがある。
【0072】
濾過することにより、より均質な物品が得られ、抽出過程中に大型粒子がポンプを目詰まりして頻繁に故障することなく、狭い公差の歯車ポンプによる圧力下において分散物を計量供給することができる。濾過後、例えばニュージャージー州HightstownのMettler−Toledo,Inc.により製造されているModel DMA−4S Mettler/Paar比重計を用いて粒子密度を特定することができる。
【0073】
分散剤を希釈剤および粒子の混合物に添加して、希釈剤内における粒子の分散状態を安定させ、粒子を塊にせずに維持する補助とすることができる。分散剤を使用する場合、希釈剤−粒子混合物に、粒子の重量に対して約1重量%〜約100重量%の分散剤を含有することが好ましい。
【0074】
アニオン性、カチオン性および非イオン性分散剤が使用可能である。有用な分散材の例として、テキサス州ヒューストンのChevron Chemical Co.から入手可能なスクシニミド潤滑油添加剤であるOLOA1200TM、あるいはデラウェア州ウィルミントンのICI Americasから入手可能なHypermerTMシリーズ分散剤を挙げられる。
【0075】
希釈剤−粒子混合物を一般に、約150℃に加熱して、この混合物を押出機に注入する前に脱気する。室温までの冷却の有無にかかわらず、この混合物を押出機に注入することができる。このポリマーを通常、重量測定式給送機あるいは容量測定式給送機により押出機の給送領域に給送する。(別の実施態様において、少なくともカーボンの幾らかをこのポリマーとともに押出機に給送する。)熱可塑性ポリマーについて、希釈剤に接触する前にポリマーが少なくとも部分的に溶融するように、給送および溶融領域の温度を選択することが好ましい。粒子が容易に分散する場合、粒子を押出機に制御速度において給送し、希釈剤を別個に押出機内に計量給送することができる。粒子および液体の流れから、連続したインライン方式で微粒子を分散させるためのさまざまなインライン混練機が入手可能である。別の方法として、押出機内において適切に分散可能な場合、ポリマー、希釈剤および導電性粒子を別々の流れとして押出機に直接給送することができる。
【0076】
次いで、希釈剤−粒子混合物の溶融配合物を押出機内にてポリマーを用いて形成する。押出機内において充分に攪拌した後、その溶融配合物を所望の型に射込む。通常フィルム形状が所望であるため、溶融配合物をドロップダイを用いて温度制御した注型ホイール上に押出す。二軸スクリュー押出機が好適である。
【0077】
材料を所望形状に形成した後、この材料を、好適には急速に、冷却して相転移を誘導する。急冷条件はフィルムの厚さ、押出速度、ポリマー組成物、ポリマーの希釈物に対する比率、および所望のフィルム特性に依存する。特定フィルムに対する好適条件を特定するのは容易である。急冷温度が高いと、低い急冷温度で形成されたフィルムに比べてフィルム強度が低減する場合がある。例えば、充分に冷えた大気中で冷却する、温度制御されている注型ホイールに片面あるいは両面を接触させて冷却する、あるいは温度制御された液体内に材料を浸漬することにより急速な冷却を実行することができる。急冷後、希釈剤を除去する。希釈剤の除去に溶媒を使用する場合、残留した溶媒は蒸発させて除去する。
【0078】
所与のポリマー−希釈剤の組み合わせに対して、注型ホイール、特に平滑な注型ホイールを使用することにより、非対称なフィルムが得られる。注型ホイールの温度が低いほど、得られるフィルムの非対称性は高まりやすい。通常、注型ホイールに向いたフィルムの側面は高密度な「表皮」を有し、細孔も細かい。他の方法として、大気温度に対して注型ホイール温度を高くすることにより、大気側に高密度表面層を得ることができる。一般に、注型ホイールの温度が低いと、注型ホイール側の強度および密度が高く、泡立ち点が小さくかつガーレー値が高いフィルムを得ることができる。非対称フィルムは他の非対称急冷方法によっても製造することができる。
【0079】
2.ポリマー−フィブリル化(PF)処理
多孔質電極支持層の形成に好適な第2の処理は、フィブリル形成ポリマーに絡まったカーボンおよび金属などの導電性粒子を含む多孔質ウェブを準備することに関る。この処理は、フィブリル形成ポリマー、潤滑剤、および導電性カーボン粒子などの不溶性非膨潤性粒子の混合物を形成することを含む。この粒子はほぼ均等に複合材料内に分散され、フィブリル形成ポリマー内に絡まる。この処理は、米国特許第4,1533,661号、同第4,460,642号、同第5,071,610号、同第5,113,860号および同第5,147,539号に概略を説明されている処理を適合したものである。
【0080】
好適なフィブリル形成ポリマーの例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのハロゲン化ビニルポリマーを挙げられる。TeflonTM6CなどのPTFE乾燥粉末を開始物質として使用することができる。他の方法として、この処理を、Teflon30TM、Teflon30bTM、Teflon42TM(デラウェア州ウィルミントンのE.I.DuPont de Nemours Chemical Corp.)などの商業的に入手可能なPTFE粒子の水性分散物により開始して行うこともできる。この場合、水が引き続く処理の潤滑剤となる。商業的に入手可能なPTFE水性分散物には界面活性剤および安定剤などの他の成分が含有されている場合があり、これらによりPTFE粒子の懸濁状態の継続が助長される。用途によって、界面活性剤が含まれていれば、処理中の所望時にそれを抽出して除去することが有利な場合もある。
【0081】
潤滑剤は、ポリマーがその潤滑剤に可溶にならないように選択しなければならない。好適潤滑剤の例として、水、有機溶剤および、水と混和性有機溶剤との混合物を挙げられ、これらは洗浄あるいは乾燥により適宜除去することができるものである。状況によって、水が添加した粒子に対して有害になる(すなわち、許容範囲を超える膨潤あるいは塊の原因となる)あるいは粒子の拡散を妨げることがある。適した有機潤滑剤の例として、例えばアルコール、ケトン、エステル、エーテルおよび、フッ素化流体を挙げられる。フッ素化流体の例として、例えばFluorinertTM(ミネソタ州セントポール、3M)あるいは他の競合パーフッ素組成物などのペルフッ素化化合物を挙げられる。「ペルフッ素化化合物」とは、実質的にすべての水素原子がフッ素原子に置き換えられていることを示すために使用する用語である。カーボン粒子を含む電極支持層を、ペルフッ素化された液体潤滑剤を用いて準備することが好ましい。使用する液体にはFluorinertFC−40TMが好適であるが、他のFluorinertFC−5312TMなどの液体も使用可能である。他の例として、GaldenTMおよびFomblinTMペルフッ素化流体(ニュージャージー州ThorofareのAusimont USA;イタリア、MilanのAusimont S.p.A、Montedison Group)を挙げられる。
【0082】
混練温度における潤滑剤100g内にて約1.0g未満の可溶性を有する非ポリマー粒子が好適である。この粒子は吸収剤であるあるいは潤滑剤に対して吸収性であってもよいが、これは要件ではない。この粒子の潤滑剤に対する吸収作用あるいは吸収性能は約10重量%未満であることが好ましく、約1重量%未満であればより好ましい。この粒子の平均直径は約200ミクロン未満であることが好ましく、約0.01ミクロン〜約100.0ミクロンの範囲であればより好ましく、約0.1ミクロン〜約10.0ミクロンの範囲であればさらに好ましい。一般に、非ポリマー粒子は本来あるいは完全に導電性カーボン粒子などの導電性粒子のみである。導電性カーボン粒子を含む特定粒子に膨潤特性があるため、この粒子を大量に使用する場合は水性ではない有機潤滑剤が好適である。
【0083】
さまざまな微粒子表面特性調整剤などの少量の添加剤を添加することができる。付加するいずれの添加剤も、燃料電池の操作条件下において不活性でなければならない。適した添加剤の例として、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどの合成および天然ポリマーを挙げられる。
【0084】
FP処理により形成される電極支持層について、粒子のポリマーに対する重量比には約40:1〜約1:4の範囲が可能であり、約25:1〜約1:1であれば好ましく、約20:1〜約10:1であればさらに好ましい。潤滑剤の添加量は、粒子の吸収作用および吸収性能を少なくとも約3重量%超え、ポリマーがその形質一体性を損なう量より少ないことが好ましく、少なくとも約5重量%超えて約200重量%未満であればより好ましく、少なくとも約25重量%を超えて約200重量%未満であればさらに好ましく、少なくとも40重量%超えて約150重量%未満であればさらに好ましい。一好適実施態様において、導電性粒子の約95重量部が約5重量部のPTFEと併用され、不活性流体の固体分(導電性粒子およびPTFE)に対する重量比は約8:1となっている。
【0085】
少量の潤滑剤が潤滑剤の分離を起こさずにそのパテ状形質内に組み入れられることができなくなると、粒子の吸収性能を超えていることになる。ペーストからスラリへの転移に対応して、粘性に著しい変化が起こる。粒子の吸収作用および吸収性能を超える潤滑剤量を、混合操作全体を通して維持しなければならない。空隙量および多孔度を潤滑剤の使用量により調節しているため、潤滑剤量を変化して、所望の多孔度および空隙量を有する電極支持層を得ることができる。一般に、潤滑剤量が増加すると、空隙量および平均細孔寸法は増大する。
【0086】
最終物品の平均細孔径は一般に約0.01ミクロメータ〜約10.0ミクロメータの範囲であり、約0.1ミクロメータ〜約1.0ミクロメータであればより好ましい。細孔径の分布について、細孔のうち少なくとも約90%の寸法が1ミクロメータ未満であれば好ましい。Mercury Intrusion Porosityにより測定した空隙量が約10%〜約50%であれば好ましく、約25%〜約35%であればより好ましい。本発明によるウェブの通常のガーレー値は約2秒/10cc〜約100秒/10ccである。本発明に有用なウェブのガーレー値には約50秒/10cc未満が好ましく、約40秒/10cc未満であればより好ましい。
【0087】
最終物品の抵抗率は一般に約0.01オーム−cm〜約10オーム−cmであり、約0.1オーム−cm〜約2.0オーム−cmであればより好ましい。
【0088】
PF処理の実施にあたり、材料を一緒に配合して軟質なパン生地状の混合物を形成する。固体粉末ポリマーを使用する場合、上述のような低表面エネルギ溶剤を使用してポリマーを混合物内に拡散することができる。この配合物を、PTFE粒子の初期フィブリル化が発生するまで充分な時間をかけて室温で混合する。混練温度は、溶剤を液体形態に保つように選択する。この温度は約0℃〜約100℃であることが好ましく、約20℃〜約60℃であれば好ましい。
【0089】
初期フィブリル化は、成分の初期混合と同時に起きる可能性がある。さらに混合する必要がある場合、フィブリル形成ポリマーの初期フィブリル化を得るまでの混合時間は一般に、約0.2分から約2分である。初期フィブリル化は一般に、すべての成分がパテ状粘度物に完全に組み入れられた時点から90秒内に最適となる。混合がこれより短くても長くても、複合材料シートの性能は劣化する可能性がある。粘度最大値を通過後、あるいは到達後に混合を終了することが好ましい。この初期混合では、部分的に配向度が低下したフィブリル形成ポリマー粒子のフィブリル化が起こる。
【0090】
インテンシブミキサとなる有用な装置の例として、密閉型ミキサ、混練ミキサ、2枚刃バッチミキサ、インテンシブミキサおよび二軸押出化合ミキサと呼ばれることもある商業的に入手可能な混練装置を挙げられる。この種類の好適ミキサにはシグマ型刃ミキサおよびシグマ型アームミキサを挙げられる。この種類の商業的に入手可能なミキサの例として、BanburyTMミキサ(コネチカット州AnsoniaのFarrel Corp.)、MogulTMミキサ(ケンタッキー州FlorenceのLittelford Day Inc.)、Brabender PrepTMミキサおよびBrabenderTMシグマ型刃ミキサ(ニュージャージー州South HackensakのC.W.Brabender Instruments,Inc.)およびRossTMミキサ(コネチカット州ChesaireのAlling−Lander Co.)の商標名で販売されているミキサを挙げられる。
【0091】
混連後、そのパテ状の塊をカレンダー処理装置に移す。この配合物にカレンダーロール間の二軸カレンダー掛けを反復し、ポリマーのフィブリル化を付加する。通常の潤滑剤/ポリマーの組み合わせに対し、カレンダーロールの温度は約125℃未満に保つことが好ましく、約0℃から約100℃であればより好ましく、約20℃から約60℃であればさらに好ましい。蒸発してなくなった潤滑剤をカレンダーを通過する通路間で取り替えることができる。カレンダー掛け中、充分なフィブリル化が起こり、所望の空隙量および多孔度が得られるまで、潤滑剤量を、少なくとも固体分の吸収性を少なくとも約3重量%を超えるレベルに保つ。
【0092】
カレンダー掛けを反復して、自己支持型引裂抵抗シートを形成する。カレンダーロール間の隙間は一般に連続パス毎に減少する。材料は一般に、カレンダーを通過するパスの間に折り畳まれて90°回転されるが、必ずしもそうでない場合もある。折り畳みおよび隙間設定の回数を調節して、得られるシートに所望の特性を施すことができる。カレンダー掛けを反復するにつれ、引張強さは最高値に達し、これを超えるカレンダー掛けは有害となる。カレンダー掛けは一般に、最大引張強さに達した後、およびその引張強さが許容範囲内の最低引張強さを下回って低下する前に終了する。一般に、約10〜約20回のカレンダーロール内パスが適切である。所望厚さのウェブが得られた後、余分な不活性流体を除去するため、これを室温にて大気乾燥させる、あるいは適切な温度に設定した対流式オーブン内に配置することができる。ウェブの最終厚さは0.1〜1.0mmであることが好ましく、0.2〜0.5mmであればより好ましく、0.25〜0.4mmであれば尚好ましい。
【0093】
得られた電極支持層の引張強さは、少なくとも約1メガパスカルであることが好ましく、少なくとも約3メガパスカルであればより好ましい。シートは、粒子がほぼ均一にポリマーフィブリルマトリックス内に分散され、実質的に均一に多孔質である。ほぼすべての粒子が互いに距離をおいて離れていながら、充分に至近距離にあるため、良好な電気導電性が得られる。
【0094】
C.付加処理
粒子を装填した電極支持層、特にTITP処理により製造した電極支持層の性能特性が、一旦ポリマーフィルムが形成された後に付加処理を加えることにより大幅に改良されることがわかっている。まず、ポリマー電極支持層をポリマーマトリックスの融点付近の温度まで加熱することができる。この温度はポリマーマトリックスの融点を約20℃上回る温度からその融点を約20℃下回る温度範囲であることが好ましく、融点から融点より10℃上回る温度範囲であればより好ましい。
【0095】
ポリマー電極が目標温度に到達してポリマー流が起こるまでの時間をかけて、加熱することが好ましい。検査評価では、フィルムがオーブンの温度において平衡状態となりポリマー流が発生するまでに約10分あれば充分である。この時間には、オーブンからの熱の損失および、設定値にオーブンが平衡となるまでの時間の損失がどうしても伴う。連続したインライン処理においては、大幅に短縮された滞留時間でも、目標温度までの加熱およびポリマー流の発生までに充分な時間となる可能性がある。驚くべきことに、このように加熱して、加熱中にフィルムに何らかの制御を行わずともフィルムの多孔性は損なわれない。この加熱ステップにより、電極支持層の電気抵抗が大幅に低下するとともにガーレー値も低下し、泡立ち点が上昇する。
【0096】
さらに、電極支持層を延伸することができる。ポリマーに依存して、DSCにより特定されたように一般に、室温からポリマーの融点を約20℃下回る温度までの温度にて効率良く延伸することができる。かなり粒子を充填したフィルムでは、希釈剤の抽出後、DSCにより特定されたようにポリマーの融点から20℃前後内の温度で延伸することが好ましい。希釈剤を抽出した未充填フィルムでは、この範囲の温度により通常、多孔性が失われてしまう。通常は希釈剤を抽出した後にフィルムを延伸し、希釈剤を含有したままフィルムを延伸することも可能であるが、この場合多孔性の形成は保証されない。
【0097】
尺度が細かい評価作業には、例えばT.M.Long Co.(ニュージャージー州Sommervill)により製造された機械を使用することができる。所望温度に設定した機械にフィルムを挿入し、フィルムを両方向(二軸)のうち1方向(短軸)に延伸できるように4つの縁部すべてをしっかり押さえる。二軸延伸を続けて行っても同時に行ってもよい。インライン処理において、速度を上げながら回転するように設定可能な一連のローラを有する装置により、フィルムを縦方向に延伸することができる。横方向の延伸はテンターと呼ばれる装置により実施することができる。テンターは所望の温度に加熱できる領域をいくつか備えることができる。テンターを通るレール上の移動グリップによりフィルムの縁部を把持する。フィルムがテンター内を移動するに連れて、テンターの各側上に位置する2セットのグリップ間の距離が広がることにより、所望程度の延伸を行うことができるようになっている。入手可能なインライン装置により同時に二軸延伸を行うこともできる。
【0098】
一般に、延伸比率(初期フィルム寸法に対する最終フィルム寸法の比率)が増加すると、泡立ち点は上昇してガーレー値は減少するが、延伸比率が上がると泡立ち点が下がり、ガーレー値が上がるような極値となることも多い。延伸するとフィルムの厚さは一般に減少する。導電性カーボン粒子を充填した多孔質フィルムの場合、泡立ち点およびガーレー値については充填していないフィルムと同様の結果であるが、フィルムの抵抗率は高くなる傾向にある。泡立ち点、ガーレー値、および抵抗率を注意深く最適化して、適切に均衡させる必要がある。これとは対照的に、タングステンなどの金属粒子を装填した多孔質フィルムの抵抗率は延伸により減少しやすい。タングステンをかなり装填したフィルムでは、延伸前の抵抗率は高いが延伸比率が上昇するにつれて減少する。
【0099】
D.MEA形成
触媒電極層は一般に、イオン伝導性膜あるいは電極支持層の一体部分として形成される。どちらの場合も、触媒層を各電極支持層およびイオン伝導性膜の間に入れながら、電極支持層をイオン伝導性膜の各側上に配置して、5層MEAを形成する。この各電極支持層およびイオン伝導性膜を密着して保持することにより、これらの要素間のイオンおよび/または電気流に対する抵抗を削減する。
【0100】
一般に容器が最終的に圧力をかけて、これらの要素を堆積圧により互いに保持する。これらの要素を互いに積層することが好ましい。積層すれば、堆積圧の代替として物理的近接性が得られる。驚くべきことに、要素の多孔質特性あるいは構造の一体性を損なわずに、粒子を充填した多孔質ポリマー構成要素を積層することができる。
【0101】
積層により、MEAの5層間に凝集関係を形成しなければならない。使用する具体的材料を基に、積層に適した条件を選択する。具体的な例については以下の実施例内にて説明する。積層条件は、多孔性、表面湿潤および電気抵抗などの膜特性を損なうものであってはならない。
【0102】
積層する目的は、層間の物理的な隙間を排除することである。接触する総面積を広くすることにより、異層間におけるポリマーの凝集力あるいは自己粘着性を促進し、これにより接触領域においてポリマー連鎖が拡散して絡み合う確率を上昇することができる。上述した幾つかの好適ポリマー構成要素は一般のポリマーフィルムより圧縮性に優れている。圧縮性が高いほど、増加する接触面積における圧力がより有効になる。明らかに、ポリマー電極支持層内の微粒子充填剤の作用により、積層中、細孔の崩壊を免れている。
【0103】
さまざまな方法により積層を行うことができる。その手法の例として、熱積層、加圧積層、溶剤積層の利用を挙げられる。熱積層および溶剤積層においても圧力を付加することができる。材料により適した積層方法は異なる。
【0104】
MEAを連続ロールで処理することにより、燃料電池製造の効率は大幅に向上する。例えば、5層MEAを、同一のMEA202を反復した連続ウェブ200として、すなわち図3に示すように製造する。MEAの連続ウェブ200上にて、触媒層206および電極支持層208を含む触媒電極領域204を、ロール形態で供給されるイオン伝導性膜210の各側ウエハにパッチ状あるいは連続状に適用することができる。同様に、両極板の嵌合面が規定する適切なシールあるいはガスケット212を、触媒電極領域204に隣接するロール膜210上の適した場所に適用することができる。シールあるいはガスケット216の中央の適した位置に穴214をあける。隣接するMEA間の境界線を表示して切断する、あるいは部分的に穿孔をあけて積層アセンブリ処理中の分離を迅速かつ容易にすることができる。さらに、レジストレーションマークを適切な地点に適用して、積層アセンブリ処理中、ロボットによる集配および位置合わせを可能にすることもできる。
【0105】
触媒層206に電極支持層208を具備する場合、このように組み合わせた層をイオン伝導性膜210に装着あるいは積層することができる。別の方法として、触媒層206および電極支持層208に引き続いて膜210を具備することができる。触媒層206をイオン伝導性膜210に装着あるいは適用するための適した方法は、触媒層206の種類に依存する。カーボン粒子を担持する触媒の分散には、例えば米国特許第5,211,984号に教示されている、熱および圧力を用いる方法を使用することができる。米国特許第5,338,430号に教示されているナノ構造触媒層をニップロールカレンダー掛けにより膜210の表面内に埋設する、あるいは連続ロール供給の急速静圧プレスによりナノ構造触媒を膜210の連続ロール供給内に埋設することができる。触媒を、触媒を保持する連続ロール担持体から所望のパターンでパッチ状に適用することができる。
【0106】
次いで、電極支持層208を、イオン伝導性膜210の触媒電極領域204とパッチ状に位置合わせして適用することができる。電極支持層208および触媒層206を、パッチ状ではなく連続ロール供給として適用することも可能である。アセンブリを積み重ねる前に、電極支持層208を固定するためにさまざまな装着方法を用いることができる。電極支持層208の適した装着方法の例として、加圧積層、加熱されたニップロール積層、制限領域の接着剤装着(すべての細孔を接着剤で遮断することを防ぐため)、超音波溶接、微小構造表面機械装着などを挙げられる。電極支持層208を膜210に確実に接合して、それらの間の界面を横切る電気抵抗および/またはイオン抵抗を最小限に抑える、あるいは界面、特に陰極の界面における水管理を可能にすることが一般に望ましい。装着処理のパラメータを調節して接合程度を好適にすることができる。触媒層206を最初に電極支持層208に適用する場合、より確実な接合が特に望ましい。電極支持層208のガス輸送特性に悪影響を与えないこと、触媒層206を損なわないこと、および膜210のイオン導通特性を劣化しないことが装着方法に重要な要件となる。
【0107】
シールおよびガスケット212、216を、The Furon Co.、CHR Division(コネチカット州New Haven)から入手可能なTeflonTMシート材あるいはTeflonTMコーティング済繊維ガラスシート材などの適した薄板ウェブ材料あるいは他のフルオロエラストマから製造あるいはダイカットすることができる。シール材料をMEAロール200の周囲シール地点212あるいはガス口縁部216に適用することができる。これらの地点におけるシールおよびガスケットの膜への装着を、電極支持層の装着に説明した上述の方法と同様の装着方法により行うことができる。非粘着性薄板ウェブシール材料のほかに、適したトランスファー接着剤であればいずれも使用可能である。そのトランスファー接着剤の例に、3M Co.(ミネソタ州セントポール)から入手可能な#9485PC接着剤がある。
【0108】
このシールおよびガスケット材料および対応する接着剤には、イオン伝導性膜が抽出してその導電性を低下させる、あるいは触媒を損なう可能性のある特定化学物質を含有してはならない。また、このシールおよびガスケット材料を化学的および熱的に不活性にすることにより、酸環境(プロトン交換燃料電池用)および何千時間にも及ぶ燃料電池の動作温度に対する耐性を持たせなければならない。さらに、シールおよびガスケット112、116に適切な機械特性を持たせて、シール領域に対して垂直方向にその積層物にかかる圧搾力および、内圧によりシール面に作用する力がかかった状態で積層物を最高動作温度にしても変形および押出に対して高い抵抗力を備えているようにしなければならない。
【0109】
E.積層形成
有用な電圧を得るためには、通常の燃料電池積層であれば1000個以上の電池をつなげて組み立てなければならない可能性がある。各々が通常0.7ボルトで動作する電池を100個つなげると70ボルトの積層物となる。すべての付随ガスケットおよびシールと併せてMEAおよび双極/冷却板を組み立て、漏出のない、任意に圧縮した燃料電池積層を製造することは、積層のコスト削減に重要な課題となる可能性がある。MEAの提供にあたり、積層物をコスト安で組立てられるようにシールおよびガスケットを製造準備のできた形態にすることは重要なポイントである。例えば、年間製造ライン毎のシフトあたりで10000個の燃料電池積層物を組み立てるためには、およそ10分おきに何百もの関連電池構成要素を伴った1積層物を組み立てなければならない。それぞれ採寸、切断、配向および適切に整合した状態でこのように大量の構成要素を短時間で製造および取扱えるようにすることは重要な要件である。
【0110】
図4に示すように、燃料電池積層物300において、各別個の電池は、両極板304に挟まれた5層MEA302からなる。端板306により、燃料電池積層物300からの燃料および酸化剤のフローの往復が行われる。両極板の機能は、a)MEAにより生成される全電流を隣接する電池に導通して最終的に端板に伝達することにより、電池間を連続的に接続すること、b)隣接する電池間におけるガス輸送をいずれも防止すること、c)組み立てた積層物に機械的剛性を提供して、その圧搾力が有効に働くことによりMEAの周辺を通過するガスの漏出を最小限に抑えること、d)MEA触媒電極に燃料および酸化剤を供給し、水などの副産物を除去するための流路溝およびガスマニホールドを設けること、およびe)電池電極領域から余分な熱を除去するための冷却流体との接触部分を設けることである。
【0111】
燃料電池の積層には数多くの構造および形状が可能であるが、一般に直線状あるいは円筒形状にして、各電池内のそれぞれ平坦なMEAおよび両極板に、対応する長方形あるいは円形形状を持たせる。米国特許第5,252,410号には、触媒を電極支持層に適用する場合の具体的な態様を含め、両極板および積層アセンブリに対する数多くの態様が教示されている。各MEAの触媒された活性領域は一般に膜領域より狭く、これをMEAの中央に配置することができる。電極領域を限定する膜の周辺領域は一般に、MEAを両極板にシールするために使用し、燃料および酸化剤が電池の加圧された内部から漏出することを防ぐ。この積層物の端板からかける圧搾力を充分にして、最大内圧によってもガスケットあるいはシールが剥離しないようにしなければならない。電極領域に隣接するMEA領域にも、各ガス供給マニホールドからセルへの燃料および酸化剤の輸送を行う穴を設けてもよい。これらの穴(すなわちガス口)にも漏出を防止するためのシールあるいはガスケットが必要となる場合もある。
【0112】
以上、MEAの製造および、適したシールおよびガスケットを備えたMEAの連続ウェブ形式による供給するための処理について説明した。この連続ウェブ形式は、燃料電池を低コストで製造するために用いるMEA要素を数多く製造し、取扱うためにとりわけ適している。この連続ウェブは、両極板へに比較的迅速は適用だけではなく、MEAに対する正確な位置合わせにも適している。したがって、本明細書内で説明した電極支持層を連続ロール形式における5層MEAの製造に適合すれば、燃料電池の加工に劇的な進歩をもたらすことができる。
【実施例】
【0113】
以下の実施例において製造するさまざまな電極支持層について、幾つかの特性を測定する。ASTM F−316−80により特定されるように、泡立ち点はフィルム内の最大細孔径とする。試験液としてエタノールを使用した。この液体を用いてフィルムの細孔を充填した。泡としてフローがフィルム内の最大通路を流れるまで圧力を加えた。試験電池の低圧力側に接続され、水中に隠れている管から泡が観測される。必要な圧力は、試験液の表面張力および最大通路の寸法に依存する。試験液としてエタノールを使用したミクロン単位の泡立ち点は貫流時の9.25/psi圧力に匹敵する。
【0114】
ガーレー値は、フィルムを通過する空気流に対する抵抗の大きさである。特に、ASTM D−726−58 MehodAによる、100cc(あるいは他の容量)の大気が1平方インチのフィルムを124mmの水圧で透過するためにかかる秒単位の時間の測定値である。フィルム試料を2枚のプレート間に固定する。次いで、シリンダを放出し、特定圧力にて試料に向けて空気を供給する。電子的に読み取られるシリンダ上の印から、所与量の大気流にかかる時間を特定する。以下の実施例において、報告するガーレー値は50ccあるいは10ccの大気通過に関するものである。
【0115】
フィルムの表面上にて互いに平行に配置した1.5cm幅のアルミニウム棒を用いて、面内電気抵抗を測定する。錘をこれらの棒の頂部に配置し、圧力を300g/cm2とする。結果は一般に圧力に依存する。2本のアルミニウム棒缶の抵抗を標準オーム計により測定した。他の方法として、以下の例6において説明するように、高電流密度におけるZ軸電気抵抗を測定した。オーム−cmを単位とする抵抗率を以下の式により算出した。
【0116】
抵抗率=(Z軸抵抗率×フィルム面積/フィルム厚さ)
あるいは
抵抗率=(面内抵抗×フィルム幅×フィルム厚さ)/棒間距離
【0117】
後述する水接触角の測定は、本質的に国際特許出願第WO96/344697号に説明されているように実施した。要約すると、商用装置(Rame’−Hart Contact Angle Goniometer、Model 100)を用いて、およそ1ミクロリットルの液滴を滲出した。試料表面を注意深く持ち上げて注射器からまだ吊下がっている液滴にうまく接触させることにより「平衡接触角」を定めた。次いで、この液滴を拡大あるいは収縮しながら接触角を測定して、前進および後退接触角をそれぞれ得た。複数回の測定を繰返し、表面上の複数地点における両種類の接触角に対する平均およびrms偏差値を得た。後退接触角が大きいと、その膜は、低い後退接触角を示す膜に比べて水をはじく力が大きいことになる。理論によらずとも、水をはじく力が大きい膜の方が、燃料電池の動作中に冠水する可能性が低く、膜/触媒界面への燃料および酸化剤の流れが良好になると考えられる。
【0118】
実施例中、
「室温」あるいは「周囲温度」とはおよそ22℃とする。
Vertrel 423TMは、デラウェア州ウィルミントンのDuPont Chemicals,Inc.からのジクロロトリフルオロエタン(CHCl2CF3)であり、
他の化学物質および試薬はすべて、特に記載のない限り、ウィスコンシン州ミルウォーキーのAldrich Chemical Co.から入手した。
【0119】
実施例を通して共通する数多くの基本処理および材料がある。これらの例として、ナノ構造担体の準備、この触媒の担体への適用、触媒装填の特定、膜−電極アセンブリの製造、燃料電池装置および試験台の種類、燃料電池試験パラメータ、および使用するプロトン交換膜の種類を挙げられる。これらを概して以下のように定義する。
【0120】
a)ナノ構造触媒担体の製造および触媒の堆積。以下の実施例において、ナノ構造触媒電極およびこれらの製造処理を、その内容を本明細書に引用したものとする米国特許第5,338,430号および他の特許に説明されているものと同様にする。このナノ構造触媒は、ナノメートル寸法のウィスカ状担体の外面にコーティングしたPtなどの触媒材料を含む。このウィスカは、予めポリイミドなどの基材上に真空コーティングした有機顔料材料(C.I.Pigment Red149あるいはPR149)の薄いフィルム(1000〜1500オングストローム)を真空アニ−ル処理することにより製造する。長さが1〜2ミクロメートルのウィスカ状担体は、30〜60ナノメートルの均一な断面寸法で成長し、端部配向を基材上にして密集した担体(30〜40個/ミクロメートル平方)の緻密フィルムを形成し、これをポリマー電解質表面に移して触媒電極を形成することができる。このナノ構造触媒電極の表面積は非常に広いため、燃料および酸化剤ガスの到達が容易である。
b)触媒の装填測定は、真空コーティングの技術において周知であるように、真空コーティング中に石英圧電結晶発振器により付着されるPt層の厚さを監視すること、および単に重力測定法の双方により行う。後者の場合、ポリイミド担持ナノ構造フィルム層の試料を、デジタル天秤を用いて正確に1ミクログラム質量に分け、その面積を測定する。次いで、そのナノ構造層からポリイミド基材をティッシュペーパーあるいはリネンで拭き取り、その基材の質量を再度測定する。担体の好適特性の1つが簡便かつ完全なイオン交換膜への移行であることから、布で一拭きするだけで簡単に除去することができる。Ptを具備しない担体粒子の単位面積あたりの質量もこのように測定することができる。
c)使用したイオン交換膜はすべてペルフルオロ化スルホン酸型であった。デラウェア州ウィルミントンのDuPont Corp.からNafionTM117あるいは115膜を入手した。
d)触媒をコーティングした担体粒子をPEMあるいはDCC表面に移行する処理は、静圧あるいは連続ニップロール方法であった。例えば触媒をPEM上に具備した、5cm2の活領域を有するMEAを静圧方法により準備するため、金属めっきを施したポリイミド基材上にコーティングしたナノ構造触媒の5cm2片2枚を、1枚は陽極用、もう1枚は陰極用に、7.6cm×7.6cmのプロトン交換膜中央の各側上に配置する。PEMと同寸法の、少なくとも25あるいは50ミクロメートル厚さのポリイミドシート1枚をPEMの各側およびナノ構造基材材料上に配置し、積層を形成する。静圧用に、PEMと同寸法の50ミクロメータ厚さのシートTeflonTM1枚をPEM、ナノ構造基材およびポリイミド積層の各側上に配置する。
静圧するため、このアセンブリを2枚のスチールシム板の間に配置し、9インチのCarverTMプレスにより130℃付近の温度かつおよそ10トン/cm2の圧力で最長2分間加圧する。最大圧力をかける直前に、低真空状態にして積層物から部分的に空気(2Torr)を除去する。積層物の圧力を解除する前に、積層物を通常5分間以下で室温付近まで冷却することができる。触媒をPEM表面に装着したまま、元の5cm2ポリイミド基材をPEMから剥離する。(別の方法として、上述の連続あるいは半連続シート形態のサンドイッチアセンブリを1ミルのニップ内にカレンダー処理あるいは積層加工として通過させることなどの連続ロール処理により担体粒子をPEMあるいは電極支持体に移行する。2本のミルロールの双方がスチール製、あるいはスチールおよびゴムなどの軟質材料製とし、これらを加熱することができ、その隙間を調節して有する、あるいは調整したライン圧(kg/cm)を用いてニップの隙間を特定する。)
e)ステップd)によるMEAを、ニューメキシコ州AlbuquerqueのFuel Cell Technologies,Inc.から購入した通常5cm2であるが最大50cm2のセルである燃料電池試験セルに装着した。マサチューセッツ州NatickのE−tek,Inc.から入手した0.015in厚さのELAT電極支持材料2片を対照電極支持材料として使用した。CHR Industriesから購入した通常250ミクロメートル厚さのTeflonコーティング繊維ガラスガスケットの中央に10cm2の穴を開けて(10cm2の触媒領域用)使用し、セルをシールした。ELAT電極支持材料をカーボンのみとする、すなわちこれに触媒を含有しない。
f)例9〜14および例28の燃料電池分極曲線用試験パラメータを、セル温度を80℃、フロー速度をおよそ1標準リットル/分として、207kPa H2および414kPa酸素ゲージ圧の条件下で得た。水素および酸素用にそれぞれ115℃および80℃に維持した散布瓶にガスを通過させて、ガス流を加湿した。
【0121】
例15〜17について、電極支持材料の低圧空気性能を試験するため、分極曲線を得た。図12の曲線は、207kPa H2および34.5kPa空気ゲージ圧の条件下で得たものである。H2/空気フロー速度は10cm2MEAに対して400/400sccm(標準cm3/分)および、50cm2MEAに対して1標準リットル/分(slm)/2slmであった。水素および空気用にそれぞれ約115℃および65℃に維持した散布瓶にガスを通過させて、ガス流を加湿した。セル温度は75℃であった。以下の例12に説明する手順により製造した膜もこれらの燃料電池条件下にて動作させた。この結果を例12(空気)として図12の曲線に示す。
【0122】
例1
高密度ポリエチレンにおける導電性カーボン
鉱油内における導電性カーボンの分散物を、ConductexTM975導電性カーボン(ジョージア州アトランタのColombian Chemicals Co.)1032gを、鉱油(イリノイ州シカゴのAMOCO製Superla(登録商標) White Mineral Oil No.31)2054gおよび分散剤OLOA1200TM(カリフォルニア州サンフランシスコのChevron Oil Co.)1032gの混合物内に2500HV型分散器(ペンシルバニア州ReadingのPremier Mill Corp.)を用いて浸して調製した。カーボンおよびOLOA1200を一部ずつ交互に鉱油に添加した。カーボンを添加すると粘度が増加したため、それに応じて拡散器rpmを上昇して、すべてのカーボンおよびOLOA1200の添加後、最大約5000rpmとなった。
【0123】
得られた分散物は粘性で塊が多かった。次いで、分散器により混合を続けて脱気しながら、約150℃に加熱した。温度の上昇と共に粘度は低下し、温度の上昇と共に分散器速度を1100rpmまで減速した。この混合物を20分間、約150℃に保持した。混合および加熱を続けたところ、分散物は滑らかになった。次いで、混合を続けながら、これを約60℃に冷却した。得られた混合物を、1.3mm直径のクロム−スチールビーズを80容量%充填した1.5L横型ミル(Premier Mill Corp.)に通過させた。この横型ミルを1800fpmの周辺速度(54.9メートル/分)および約0.5L/分のスループット速度にて操作した。
【0124】
横型ミルから取り出した分散物を約60℃にてBerstorffTM同時回転二軸押出機(ノースカロライナ州CharlotteのBerstorff Corp.、25mm×825mm)の第3領域上の注入口内に注入した。HDPE(高密度ポリエチレン、品質等級1285、テキサス州ヒューストンのFina Oil&Chemical Co.)を給送領域(領域1)内に0.55kg(1.20lb.)/時間の速度で計量供給し、上述の分散物を歯車ポンプにより69.1cc/分の名目速度で注入した。給送領域から始まる押出機の温度線は193、254、254、204、166、160、166℃であり、ダイ温度は166℃であり、スクリュー速度は120rpmであった。
【0125】
フィルムを20.32cm(8in)ダイを介して、52℃に加熱されパターンを施された注型ホイール上に押出した。このホイールパターンは、45℃の4面ピラミッドであり、密度が100/6.45cm2(1in2)にて0.125mm(5mil)の高さを有した。得られたフィルムは0.25mm(10mil)厚さで実験的に特定された総フィルムスループット率は4.53kg(10.0lb)/時間であった。したがって、実際の分散物供給速度は3.99kg(8.8lb)/時間であった。この結果および周知の分散組成物より、オイル抽出後のフィルム内の合計カーボン含有量は64.7重量%と算出された。
【0126】
例2
Vertrel 423TMを用いた抽出
約18cm×30cm寸法のフィルム部分を洗浄ごとに約1LのVertrel423TM溶剤に1洗浄につき10分間浸漬し、この洗浄を3回繰返して、オイルおよびOLOA1200を例1のフィルムから抽出した。室温にて乾燥したところ、フィルム厚さは0.0241cmであった。このフィルムの物性特性を表1に示す。
【0127】
例3
トルエン/キシレンを用いた抽出
オイルおよびOLOA1200を、トルエン/キシレンの1:1容積比混合物を用いて例2に説明したように例1のフィルム部分から抽出した。乾燥後のフィルム厚さは0.023cmであった。このフィルムの物性特性を表1に示す。
【0128】
例4
抽出後の加熱、Vertrel 423TM抽出
例2において説明したように準備したフィルムの1部分を、対流式オーブン内に130℃で10分間吊り下げた。これを冷却したところ、フィルム厚さは0.23mmとなった。このフィルムを「例4A」とし、この物性特性を表1に示す。このフィルムの前進および後退接触角(水)はそれぞれ158°および107°であった。
【0129】
同様に、例2によるフィルムの1部分を対流式オーブン内で10分間150℃に加熱した。このフィルムを「例4B」とし、この物性特性を表1に示す。
【0130】
例5
抽出後の加熱、トルエン/キシレン抽出
例3において説明したように準備したフィルムを、対流式オーブン内に130℃で10分間吊り下げた。これを冷却したところ、フィルム厚さは0.23mmとなった。このフィルムを「例5A」とし、この物性特性を表1に示す。
【0131】
同様に、例3によるフィルムの1部分を対流式オーブン内で10分間150℃に加熱した。このフィルムを「例5B」とし、この物性特性を表1に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
表1に示すように、HDPEバインダの融点を超えてフィルムを加熱したところ(126℃、DSCによる最高温度)、ガーレー値の大幅な低下、泡立ち点の大幅な上昇および抵抗率の大幅な低下が見られた。
【0134】
例6
フィルムインピーダンス
燃料電池に適する、本発明によるカーボン装填フィルムの高電流密度を担持する性能を実証する。例4Aによる5cm2正方形フィルム試料2枚(Vertrel 423TM抽出、130℃の加熱)を向かい合わせに互いに直接接触させた平行状態で、燃料電池試験取付具(2.24cm×2.24cm、ニューメキシコ州サンタフェのFuel Cell Technologies,Inc.)に据付けた。すなわち、試料間にイオン伝導性膜を介在させなかった。0.015cm厚さのTeflonTM含浸繊維ガラスによるマスク枠を、実際の燃料電池試験で通常使用するように、試験半セル間に用いて、検査対象であるフィルムの粉砕を防止した。セルボルトを12.4N−m(110in−lbs)に締付けた。電圧を変えて高電流をセル内に通過させ、高電流密度条件下でのフィルムのインピーダンスを測定した。これらの測定結果を図6のグラフAに示す。測定後、フィルムを組み合わせた厚さは0.042cmであった。フィルムの抵抗率は表1に示した値と同様の0.57オーム−cmであった。
【0135】
例7
フィルムインピーダンス
例5Aにおいて準備したフィルム(トルエン/キシレン抽出、130℃の加熱)を例6で説明したように調べ、そのインピーダンスを測定した。その結果を図6のグラフBに示す。これらのフィルムを組み合わせた厚さは0.042cmであり、その抵抗率は0.52オーム−cmであった。
【0136】
例8(比較)
フィルムインピーダンス
ELATTMとして商業的に入手可能なカーボンのみの材料(カーボンブラック/PTFEで含浸/コーティングしたグラファイト織布)の抵抗率を例6に説明したように調べた。結果を図6のグラフCに示す。ELATTMフィルムを組み合わせた厚さは0.094cmであり、有効バルク抵抗率は0.28オーム−cmであった。ELATTM材料のガーレー値は7.5秒/50ccと測定され、このフィルムの前進および後退接触角はそれぞれ155°および133°であった。
【0137】
例9
膜電極アセンブリ
プロトン交換膜電極アセンブリ(MEA)を、7.6cm×7.6cm平方のNafionTM117イオン交換膜(デラウェア州ウィルミントンのDuPont Chemicals Co.)の中央部分に配置するように教示する米国特許第5,338,430号に説明されているように、プラチナコーティングを施したナノ構造担体を具備する電極層を適用して準備した。このプラチナコーティングを施したナノ構造担体を、イオン交換膜の両面に、ホットプラテンプレスを用いて上記に引用した第´430号特許の例5に説明されているように適用した。中央の電極面積は5cm2であった。上記例5Aにおいて説明したように形成したカーボン充填電極支持層5cm2(トルエン/キシレン抽出、130℃加熱)2枚をこの電極アセンブリの両側に配置して5層MEAを形成した。このアセンブリを5cm2試験セル内に搭載し、燃料電子試験台上にて水素/酸素ガス流をアセンブリの各側に適用して試験した。図7のグラフAは、電圧とこのアセンブリが生成した電流密度との関係を示す分極曲線である。
【0138】
例10
膜電極アセンブリ
膜電極アセンブリを、例3において説明した電極支持層(トルエン/キシレン抽出、加熱なし)を使用した点を除き、例9に説明したように準備した。さらに、アセンブリ全体を、5cm2ではなく50cm2の電極および電極支持膜で形成した。図7のグラフCは、電圧とこのアセンブリが生成した電流密度との関係を示す分極曲線である。このセルの性能が改良された原因の一つは広い電極面積によるものである。
【0139】
例11(比較)
膜電極アセンブリ
例8において説明したELATTM材料を電極支持層として使用した点を除き、例9に説明したように膜電極アセンブリを準備した。図7のグラフBは、電圧とこのアセンブリが生成した電流密度との関係を示す分極曲線である。
【0140】
例9〜例11により、本発明による有効な電極支持層をTITP方法により準備できることがわかる。商業的に入手可能な高級膜は、おそらく一部には低ガーレー値および高後退接触角により、良好な燃料電池性能を示したものと思われる。ガーレー値が低く後退接触角が高ければ、触媒/電解質界面への水素および酸素の拡散が大きく、起こればさらに酸素輸送を制限する可能性がある、陰極にて生成される水による浸水感受率が低くなる。
【0141】
例12
超高分子量ポリエチレン(TIPT)におけるグラファイト/導電性カーボン(95/5)
MCMB6−28グラファイト37.11g(通常6μ平均直径、日本、大阪のOsaka Gas Chemical Co.)と、Super P導電性カーボン1.91g(ベルギー、ブルッセルのMMM Carbon Div.、 MMM nv)との乾燥配合物をへらで混合して調製した。この混合物の一部および鉱油(Superla(登録商標) White Mineral Oil )32.2gの一部を交互に、ローラ羽根を装備したHaake RheocordTM System9000(ニュージャージー州ParamusのHaake(米国))の混合チャンバに添加した。この混合チャンバは60℃であり、50rpmで攪拌した。次いで、150℃の設定温度まで加熱を開始した。
【0142】
攪拌温度が120℃に達した時点で、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE、品質等級GUR4132、テキサス州ヒューストンのHoechst Celanese Corp.)2.06gを少量ずつ、添加と添加の間に、前に投入した材料が同化するまでの時間をとりながら添加した。UHMWPE/オイルの比率は6/94であった。この添加を完了した後、チャンバの温度を150℃まで上昇し、攪拌速度を80rpmとした。UHMWPEの添加を完了後、10分間混合を続けた。この混合物を熱いうちにミキサから除去した。
【0143】
冷却後、固化した混合物の15gを0.175mm(7mil)ポリエステルシート間に配置し、このポリエステルシート間に0.25mm(10mil)シムを配置して160℃のModel2518CarverTMプレス(イリノイ州WabashのFred S.Carver Co.)内に配置した。プレス内で圧力をかけずに3分間の加熱後、この混合物を690kPa(100psi)で10秒間プレスした。得られたフィルムをポリエステルシートを装着したまま、周囲温度で水に浸して急冷した。このフィルムから例2に説明したようにオイルを抽出した。フィルムの1部を、例4において説明したように対流式オーブン内にて130℃で10分間加熱した。このフィルムの物性特性を表2に示す。このフィルムの前進および後退接触角(水)はそれぞれ154°±10および101°±5であった。
【0144】
【表2】
【0145】
図8の曲線Aは、本例において説明したように、加熱後の50cm2陰極支持層を用いた燃料電池試験による代表的分極曲線を示す。同じ触媒をコーティングしたイオン伝導性膜を使用して、例12〜例14およびELATTM対照例(図8の曲線「D」)の異なる電極支持層を用いた5層MEAについての燃料電池分極曲線を得た。1試料電極支持層を試験した後、そのテストセルを開けて、その電極支持層を陰極上で次の層と取り替えた。ELATTM陰極支持層は交換しなかった。
【0146】
例13
ポリプロピレン(TIPT)内のグラファイト/導電性カーボン(95/5)
MCMB6−28グラファイトおよび鉱油(Superla(登録商標) White Mineral Oil No.31)の混合物を、分散器を用いてグラファイト83.3gを鉱油91.9g内に混合して調製した。Super P導電性カーボン1.53gを100℃にて、ローラ羽根を装備したHaake RheocordTM System 9000の混合チャンバに投入した。次いで、50rpmで混合しながら、このグラファイト/鉱油混合物59.73gを混合チャンバ内に投入した。このグラファイト/鉱油混合物を添加中、粘度が増加するにつれて混合速度を100rpmまで上昇した。次いで、ポリプロピレン(テキサス州ヒューストンのShell Chemicalsからの品質等級DS5D45)7.66gを添加した。この混合物を、約10分間以上230℃まで加熱した。ポリプロピレンの添加後の合計混合時間は約33分であった。得られた混合物を暑いうちにミキサから除去した。
【0147】
冷却後、固化した混合物の14.2gを、鉱油の薄いコーティングを施して剥離を容易にした0.175mm(7mil)ポリエステルシート間に配置し、このポリエステルシート間に0.25mm(10mil)シムを配置して160℃のCarverプレス内に配置した。プレス内で圧力をかけずに3分間の加熱後、この混合物を345kPa(50psi)で10秒間プレスした。得られたフィルムをポリエステルシートを装着したまま、周囲温度で水に浸して急冷した。このフィルムから例2に説明したようにオイルを抽出した。フィルムの1部を、例4において説明したように対流式オーブン内にて180℃で10分間を超えた時間をかけて加熱した。このフィルムの加熱前後の物性特性を表3に示す。この加熱処理の後、フィルムはやや脆くなったことがわかった。このフィルムの前進および後退接触角(水)はそれぞれ155°±5および100°±5であった。
【0148】
【表3】
【0149】
図8のグラフBは、加熱フィルムから製造された陰極電極支持層を用いた代表的分極曲線を示す。これにより、例12による試料に対して性能が改良されたことがわかる。
【0150】
例14
超高分子量ポリエチレン(TIPT)におけるグラファイト/導電性カーボン(95/5)
MCMB6−28グラファイト27.89gと、Super P導電性カーボン1.47gとの乾燥配合物をへらで混合して調製した。この混合物の一部および鉱油(SuperlaTM White Mineral Oil No.31)37.1gの一部を交互に、40℃で50rpmにて混合しながら、ローラ羽根を装備したHaake RheocordTM System 9000の混合チャンバに添加した。次いで、UHMWPE(品質等級GUR4132、Hoechst Celanese Corp.)1.55gを添加した。UHMWPE/オイルの比率は4/96であった。ポリマーの添加を完了した後、チャンバの温度を150℃まで上昇し、混合速度を80rpmとした。UHMWPEの添加を完了後、10分間混合を続けた。この混合物を熱いうちにミキサから除去した。
【0151】
冷却後、固化した混合物の13.1gを0.175mm(7mil)ポリエステルシート間に配置し、このポリエステルシート間に10milシムを配置して160℃のCarverプレス内に配置した。プレス内で圧力をかけずに3分間の加熱後、この混合物を345kPa(50psi)で10秒間プレスした。得られたフィルムをポリエステルシートを装着したまま、周囲温度で水に浸して急冷した。このフィルムから例2に説明したようにオイルを抽出した。フィルムの1部を、例4において説明したように対流式オーブン内にて130℃で10分間加熱した。DSCにより特定されたようにUHMWPEの最高融点は138℃であった。このフィルムの物性特性を表4に示す。このフィルムの前進および後退接触角(水)はそれぞれ139°±10および79°±9であった。
【0152】
【表4】
【0153】
図8のグラフCは、加熱フィルムから製造された陰極電極支持層を用いた代表的分極曲線を示す。これにより、例13に対して性能がさらに改良されたことがわかる。グラフDはELATTM対照例を示す。
【0154】
以下の例15A、15B、16A、16B、17B、17C、17D、17Eおよび17Fにおいて、同じ触媒コーティングを施したイオン伝導性膜を使用して、異なる型の陰極支持層について試験した。それぞれの場合に、陽極支持層として商用ELATTMを用いた。これらの例における燃料電池分極曲線を図12に要約し、低圧力空気操作下においてパラメータを変えて試験した結果を示す。陰極支持層としてELATTMを用いた比較対照曲線も図12に示す。図12を参照すると、0.6ボルト以上の有用な電圧範囲において、例15Aの電極支持層はELATTM膜の性能を超えている。
【0155】
例15
ポリフッ化ビニリデンにおけるグラファイト/導電性カーボン
MCMB6−28グラファイト91.37gと、プロピレンカーボネート96.18gとの混合物を分散器で調製した。次いで、このグラファイト−プロピレンカーボネート混合物63.0gの添加に引き続き、Super P導電性カーボン1.60gを50rpmおよび50℃にて、Haake RheocordTM System 9000の混合チャンバに添加した。得られた混合物を150℃に加熱しながら、Solef 1010TMポリフッ化ビニリデン(PVDF、テキサス州ヒューストンのSolvay America Inc.)12.47gを、添加したポリマーが混合物に同化するように少量ずつ添加した。安定したトルク形成後(ポリマー添加開始後およそ6分)、温度設定を120℃に変えて冷却を開始した。およそ4分間の冷却後、混合を止め、熱いうちに得られた混合物を除去した。
【0156】
冷却後、固化した混合物の12gを、0.25mm(10mil)シムを挟んだポリイミド間に配置し、150℃のCarverプレス内に配置した。プレス内で圧力をかけずに90秒間の加熱後、この混合物を1035kPa(150psi)で5秒間プレスした。得られたフィルムをポリイミドシートを装着したまま、20℃の15mm厚のスチール板の間に配置して冷却した後、除去した。得られたPVDFフィルムを洗浄して、3×1Lイソプロピルアルコール洗浄剤によりプロピレンカーボネートを抽出して試料15Aを得た点を除き、例2に説明したように乾燥した。フィルムの1部を、例4において説明したように対流式オーブン内にて160℃で10分間加熱して、試料15Bを得た。このフィルムの物性特性を表5に示す。燃料電池分極結果は図12に示す。
【0157】
【表5】
【0158】
例16
高密度ポリエチレン(TIPT)におけるグラファイト/SuperS導電性カーボン(95/5)
本例は、カーボン装填量を大幅に低くした際の有用な性能を実証する。このフィルムを、例1に説明した押出機により製造し、平滑な注型ホイール上で成型した(設定温度32℃)。このように製造したフィルムは通常、空気側よりホイール側により細かい細孔を有する。
【0159】
SFG15グラファイト(ニュージャージー州Fair LawnのAlusuisse Lonze America Inc.現在のTimcal)の分散物を、Premier Mill Corp.のModel89分散器を使用してSFG15の1090gを鉱油(SuperlaTM White Mineral OilNo.31)3030gおよび分散剤OLOA1200の57.4gの混合物に少しずつ添加して調製した。次いで、Super S導電性カーボン(ベルギー、ブリュッセルのMMM nv、MMM Carbon Div.)57.4gをこのグラファイト分散物に混合した。このカーボン/オイル混合物を150℃まで加熱し、分散器で混合を続けながら(温度の上昇と共に速度は低下)30分間150℃に保持した。この混合物を、押出機の給送タンクに移す前に70℃まで冷却した。
【0160】
このカーボン/オイル混合物を、BerstorffTM同時回転二軸押出機(25mm×825mm)の第3領域上の注入口内に注入した。高密度ポリエチレン(HDPE、品質等級1285、Fina Oil&Chemical Co.)を給送領域(領域1)内に0.61kg(1.35lb.)/時間の速度で計量供給し、上述の混合物を歯車ポンプにより77cc/分の名目速度で注入した。給送領域から始まる押出機の温度線は199、271、271、188、188、188、188℃であり、ダイ温度は188℃であり、スクリュー速度は125rpmであった。
【0161】
フィルムを、32℃の平滑注型ホイール上に20.32cm(8in)のダイを介して押出した。このフィルムを注型ホイール上に載せたまま急冷した後、フィルム上に50ミクロメートルのポリエステルフィルムを付着して、フィルム取扱中にホイール上で滑らないようにした。得られた押出フィルムは0.3mm(12mil)厚さであり、実験的に特定した総フィルムスループット率は5.39kg(11.9lb)/時間であった。したがって、実際のカーボン/オイル混合物給送率は4.80kg(10.6lb)/時間であった。これと周知の組成物とから、オイル抽出後のフィルム内合計カーボン含有量は68.0重量%と算出された。
【0162】
Vertrel 423による15分洗浄を3回繰返して、フィルムからオイルおよびOLOA1200を抽出した。縦30.5cm(12in)、横約17.8cm(7in)のフィルム片に対し、洗浄毎に約1Lの溶剤を使用した。次いでこのフィルムを排気フード内に吊り下げて乾燥させ、これを試料16Aとした。このフィルム片を130℃の対流式オーブン内に10分間吊り下げて、これを試料16Bとした。以下の表6に示すように、フィルムを使用したHDPEの融点126℃を超えて加熱したところ、ガーレー値の大幅な低下、泡立ち点の大幅な上昇および抵抗率の大幅な低下が見られた。このフィルムの物性特性を表6に示す。これらの膜を使用した燃料電池の分極曲線を図12に示す。16Aおよび16Bにどちらについても、フィルムの注型ホイール側をMEAに向けた。フィルム16Aおよび16Bについて、注型ホイール側、空気側および断面の顕微鏡写真を図14および図15にそれぞれ示す。このSEMから、説明したように、フィルムの注型ホイール側および空気側において孔径の違いがあり、フィルム16B全体の孔径が加熱により拡大されていることがわかる。
【0163】
【表6】
【0164】
以下の例17および例18により得られる結果から、
1.フィルムをHDPEの融点を超えて加熱した後、多孔質HDPEに対する通常の延伸温度(通常約180〜220°F)で延伸しても、
2.通常は膜に存在する未充填HDPEの多孔度を損なうことになる高温で延伸しても、
同様の物性特性が得られることがわかる。
【0165】
例17
TITP膜に対する延伸および加熱の効果
例2で説明したように製造したフィルムの試料を、表7に示すように変化させて加熱および延伸した。フィルムは、ニュージャージー州SomervilleのT.M.Long Co.からのフィルム延伸機を使用して延伸した。指定温度に設定した延伸機内にフィルムを挿入後、延伸する前にフィルムを約30秒間加熱した。約2,54cm/秒の割合で、一方向あるいは続けて両方向に延伸した。延伸後、約2分間延伸温度にてフィルムにアニ−ル処理を施してから、延伸グリップを解除して延伸したフィルムを除去した。表中の延伸度は最終寸法を初期寸法で割った比率で示しており、延伸比率が1.25×1であれば、このフィルムは単軸方向に25%(最終長さが12.7cm、初期長さが10.2cm)延伸されたことを意味し、1.25×1.25であれば、フィルムが続けて両方向に25%延伸されたことを意味する。同時に両方向に二軸延伸することも可能である。
【0166】
【表7】
【0167】
表中、例17Aは例2にて準備されたフィルムに相当し、例17Bは例3にて準備されたフィルムに相当する。例17Cは、例17Bによるフィルムを延伸前に130℃から室温まで冷却し、T.M.Long Co.延伸機内で延伸前に93℃に加熱したものである。例17D、17Eおよび17Fは、例2のように準備したフィルムを表7に示す温度までT.M.Long Co.フィルム延伸機内で加熱し、加熱のみの方法と同様に、最初に130℃まで加熱せずに延伸したものである。
【0168】
概して、延伸により、未処理フィルムに対して(例17A)、泡立ち点は上昇、ガーレー値は低下、抵抗率は上昇した。低抵抗率が望ましいが、例17C〜例Fにより、抵抗率が過度に上昇せずともフィルム内のガスフローの向上が可能であることが分かる。例17Cにより、予め130℃に加熱されたフィルム(例17B)をわずかに延伸するだけでも、抵抗率はさほど増加しないが、泡立ち点は大幅に上昇し、ガーレー値は大幅に低下することがわかる。例17D〜例17Fは、例17によるフィルムをポリマーの融点を超える温度で延伸する1ステップのみ処理による効果を示している。高温で延伸することにより、泡立ち点はさらに大きく上昇し、ガーレー値はさらに大きく低下した。延伸量を変えたところ、抵抗率の変化はほとんど変化の無いものから(例17D)中程度の変化(例17E)およびやや大きな変化(例17F)まで多様であった。フィルムの前進および後退接触角(水)はそれぞれ、(17D)148°±6°および95°±5°、(17E)153°±4°および98°±5°、(17F)156°±8°および104°±4°であった。これらの結果は、融点に、あるいは融点近くまで加熱した充填していない多孔質フィルムが一般に潰れて、緻密な非多孔質フィルムになるという点において予想外である。例17の分極曲線を図12に示す。
【0169】
以下の例18に示すように、金属粒子を多く装填したHDPE容積に対して20容量%カーボンだけで、130℃に膜を加熱してもその緻密化を防止することができる。DSCにより特定したところ、HDPEの最高融点は126℃であった。例18により、導電性金属粒子を導電性カーボン粒子と組み合わせて使用することにより有用なTITPフィルムを製造できることもわかる。
【0170】
例18
カーボン導電性粒子以外を装填したTIPTフィルム
例18A:2in鋸歯ディスクヘッドを有する分散器(Premier Mill Corp.)を使用して、0.5μmの初期粒径を有するタングステン粉末(アラバマ州HuntsvilleのTeledyne Wah Chang)11.574gを鉱油(SuperlaTM White Mineral Oil No.31)2576gおよびOLOA1200の359g内に浸して、分散物を調整した。次いで、得られた混合物を、1.3mmスチールビーズを50容量%充填した0.25L横型ミル(Premier Mill Corp.)で再循環させて2時間粉砕した。得られた分散物を、オイルで予め湿潤しておいた20ミクロンロープ巻き取りフィルタで濾過した。オイル添加後の対話式密度チェックを繰返して、所望の目標密度3.6358に到達するまで密度を調節した。
【0171】
例1において説明したように、この分散物を、90rpmで動作する25mmニ軸の中間領域に59.6ml/分で注入し、HDPE(Hoechst Celanese Corp.からの品質等級GM 9255、現在品質等級1285としてFina Oil & Chemical Co.から入手可能)を押出機スロート内に0.54kg(1.2lb)/時間で計量分注した。フィルムを32℃に維持した平滑注型ホイール上に約0.225mm厚さで成型した。Vertrel423TMによる15分洗浄を3回繰返してオイルを抽出し、排気フード内に吊り下げて乾燥した。得られたフィルムを、洗浄/乾燥および130℃における10分間の加熱後に評価した。この結果を表8に示す。この乾燥フィルムにおけるタングステンの重量%を算出したところ、95.0となった。
【0172】
例18B:総微粒子が73容量%のタングステンと27容量%の導電性カーボンを含有した点を除き、同等の48.3容量%の微粒子を装填した、例18Aと同様の膜を準備した。仕上がった膜における微粒子の総重量%は、タングステンおよびConductex 975TM導電性カーボン(Colombian Chemicals Co.)の混合物重量96.29/3.71の重量比で93.5%であった。
【0173】
鉱油(0.863g/cc)2400gおよびOLOA1200(0.92g/cc)300gを組み合わせて分散物を調製した。次いで、タングステン(19.35g/cc)8880gを、2in鋸歯ディスクヘッドを装備した分散器(Premier Mill Corp.)を使用して、この混合物内に浸した。Conductex975(2.0g/cc)341g質量を少量ずつ添加した。加熱を開始して分散物粘度を低下させ、カーボンを濡らせるようにした。次いで、この分散物を20分間150℃に加熱した。この熱い分散物を1時間、3500rpmで動作する0.25L横型ミルにかけて再循環した。このミルは1.3mmスチールビーズを80容量%充填していた。この分散物濃度をさらに鉱油を添加することにより調節して、最終濃度を25℃にて2.8922g/ccとした。
【0174】
例1において説明したように、分散物を59.6ml/分にて、90rpmで動作する25mmニ軸の中間領域に注入し、HDPE(Hoechst Celanese Corp.からの品質等級GM 9255、現在品質等級1285としてFina Oil & Chemical Co.から入手可能)を押出機スロート内に0.54kg(1.2lb)/時間で重量的に計量分注した。フィルムを32℃に維持した平滑注型ホイール上に約0.225mm厚さで成型した。Vertrel 423TMによる15分洗浄を3回繰返してオイルを抽出し、排気フード内で乾燥した。得られたフィルムを、洗浄/乾燥後および130℃における10分間の加熱後に評価した。この結果を表8に示す。
【0175】
【表8】
【0176】
表8に示すデータにより、フィルムを加熱することにより許容範囲までに抵抗率を低下し、ガーレー値を低下し、泡立ち点が上昇するために、少なくとも少量のカーボンを含有していれば、カーボン以外の導電性粒子を用いて本発明に有用なTITPフィルムを準備できることがわかる。
【0177】
例19〜例27
カーボン装填多孔質PTFE膜−PF処理
例19〜例27において、カーボン装填Teflon(登録商標)(PTFE)媒体を、例えば米国特許第5,071,610号において教示されている一般処理を用いて準備した。要約すると、多孔質導電性Teflon(登録商標)基膜を、カーボン粒子、液体分散剤およびPTFE粉末を手動で攪拌してパテ状の塊を形成することにより準備した。この材料を加熱したミル(ニュージャージー州North BergenのReliable Rubber and Plastic Machinery Co. Inc.、Model 4037)内を、試料の折り曲げおよび回転を繰返し、ミル内の通路間の粉砕隙間を狭めながら複数回通過させた。最終的に得られた膜シートを、ベント式オーブン内において分散剤の融点を超える温度で加熱して、分散剤を除去した。
【0178】
すべての例において使用した分散剤は、ミネソタ州セントポールの3Mから入手可能なFluorinertTM、FC−40(b.p.=155℃)高フッ素化電子液体であった。PF処理においてフッ素化分散剤を使用することは米国特許第5,113,860号に記載されている。
【0179】
乾燥形態で提供されているTeflon(登録商標)バインダはPTFE型6−C(デラウェア州ウィルミントンのDuPont Chemical Co.)であった。カーボン粒子は、カーボンブラック物質および/またはカーボン繊維を含有した。この同じカーボンブラック物質を各例において使用した。
【0180】
カーボン繊維は、マサチューセッツ州NewburyportのStrem Chemicals Inc.から得たカタログ番号06−0140であった。およそ6mm長さで0.001cm直径の繊維が無作為に結束されていたため、使用前に物理的に分散させなければならなかった。これを、繊維束を真鍮刷毛ブラシでブラシして繊維を分離してUSA Standard Testing Sieve(オハイオ州MentorのW.S.Tyler Inc.)内に落下させ、篩(100メッシュ)攪拌機(オハイオ州MentorのW.S.Tyler Inc.)で1時間攪拌して行った。次いで、各カーボン繊維をカーボンブラックと配合して、Teflon(登録商標)およびFluorinert混合物に添加した。
【0181】
以下の例において、幾つかのカーボン/PTFE複合材料膜におけるガーレー値、抵抗率、接触角および燃料電池性能を、上記例において説明したELATTM PTFE/カーボン材料と比較する。
【0182】
例19
PTFE/カーボンブラック(95%)膜
カーボンブラック(マサチューセッツ州WalthamのCabot Corp.、Vulcan XC72R、平均粒径30nm)5gを、PTFE0.263gおよびFlurinertTMFC−40の40gと混合した。この混合物を手動により練った後、上述したように0.38mm厚さの多孔質導電性膜に形成した。この膜をベント式オーブン内にて1時間180℃で乾燥した。得られた膜はおよそ37.5cm×30cmと測定され、およそ95重量%がカーボンであった。
【0183】
この膜のガーレー値は37秒/10ccと測定された(図9)。
【0184】
例20
PTFEおよびカーボンブラック/カーボン繊維(89/6)混合物を含有する膜
Vulcan XC72R型カーボンブラック4.7gおよびカーボン繊維(Strem Chemicals Inc.)0.3gを、PTFE0.263gおよびFlurinertTMFC−40の40gと混合した。この混合物を手動により練った後、0.38mm厚さの多孔質導電性膜に形成した。この膜をベント式オーブン内にて1時間160℃で乾燥した。これを半分に折り曲げてミルロール内を通過させ、厚さを0.30mmとした。得られた膜はおよそ37.5cm×30cmと測定され、およそ95重量%の合計カーボンを含み、そのうちカーボンブラックが89%およびカーボン繊維が6%を占めた。
【0185】
ガーレー値を測定したところ、21.5秒/10ccであった(図9)。0.51cm厚さに圧縮した膜5cm2片2枚の抵抗率を、例6において説明したように燃料電池試験セル内で測定したところ、4.0ミリオームであった。これに対して同様の寸法を有するELATTM参考材料の抵抗率は5.7ミリオームであった。(図10)これはバルク抵抗率0.94オーム−cmに相当する。
【0186】
例21
PTFEおよびカーボンブラック/カーボン粒子混合物を含有する膜
Vulcan XC72R型カーボンブラック3.0gおよび、平均粒径が32〜75μmであるNorit SX1カーボン粒子(ジョージア州アトランタのAmerican Norit Co.Inc.)2.0gを、PTFE0.263gおよびFlurinertTMFC−40の40gと混合した。この混合物を手動により練った後、上述のように0.36mm厚さの多孔質導電性膜に形成した。この膜をベント式オーブン内にて乾燥した。得られた膜のおよそ95重量%が合計カーボンであり、そのうちカーボンブラックが57%およびカーボン粒子が38%を占めた。
【0187】
ガーレー値を測定したところ、35秒/10ccであった(図9)。0.076cm厚さに圧縮した膜の5cm2片2枚の抵抗率は4.0ミリオームであった(図10)。これはバルク抵抗率0.26オーム−cmに相当する。前進および後退接触角を測定したところ、それぞれ153±4°および113.7±1.6°であった。
【0188】
例22、23、26および27について、同じ触媒をコーティングしたイオン伝導性膜を使用して、異なる電極支持材料試料に対する燃料電池分極曲線を得た。1つの試験の完了後にセルを開け、電極支持層を除去して次の電極支持層と置き換えるようにして試験を行った。図11において、特定例の符号をつけて試料を試験した順序は、例22、例23、例26、例27、ELAT対照例の順である。ELAT対照例を用いた最後の試料では、触媒されたNafion115イオン伝導性膜の完全な性能を得られたため、電極支持層を交換しても触媒された膜を損なうことはなかった。図9および図10におけるこれらの例に対する抵抗率およびガーレー値からわかるように、燃料電池性能における重要な差異が抵抗率あるいは単なる多孔度によるものであるという可能性はない。陰極浸水層を通過する酸素の拡散が制限されている例26による試料の電流制限のある性能が、他の一連の例に比べて、低多孔質度(高ガーレー値)および大幅に小さい後退接触角(107.5°)を伴いやすい。これらの例により、使用するカーボン粒子の種類の含浸特性が後退接触角を左右することから、その特性が非常に重要であることがわかる。
【0189】
例22
PTFEおよびカーボンブラック/カーボン繊維(87/8)を含有する膜
Vulcan XC72Rカーボンブラック4.6gおよびカーボン繊維(Strem Chemicals Inc.)0.4gを、PTFE0.263gおよびFlurinertTMFC−40の40gと混合した。この混合物を手動により練った後、0.28mm厚さの多孔質導電性膜に形成した。この膜をベント式オーブン内にて165℃で2時間乾燥した。得られた膜のおよそ95重量%が合計カーボンであり、そのうちカーボンブラックが87%およびカーボン繊維が8%を占めた。
【0190】
ガーレー値を測定したところ、2.1秒/10ccであった(図9)。0.058cm厚さに圧縮した5cm2膜片2枚の抵抗率は9.6ミリオームであった(図10)。これはバルク抵抗率0.82オーム−cmに相当する。前進および後退接触角を測定したところ、それぞれ154±7°および132±4°であった。
【0191】
本例において準備した電極支持層の燃料電池性能を、例9に説明したように、ナノ構造電極を具備したNafionTM 115膜基材3層MEAを用いて測定した。図11に、この層および本発明による他の5層MEAの性能、さらにELATTM参考材料により準備した電極支持層の性能についても示す。0.5ボルトにおける本例の膜による電流密度が0.7A/cm2であることがわかる。図11に示した燃料電池分極曲線を得るため、温度を80℃、水素圧を207Kpa、酸素圧を414Kpa、フロー速度を1標準L/分、および陽極/陰極加湿温度をそれぞれ115℃および80℃にして燃料電池を操作した。
【0192】
例23
PTFEおよびカーボンブラック/カーボン繊維(78/7)を含有する膜
Shawinigan C−55カーボンブラック4.6gおよびカーボン繊維(Strem Chemicals Inc.)0.4gを、PTFE0.90gおよびFlurinertTMFC−40の45gと混合した。この混合物を手動により練った後、0.41mm厚さの多孔質導電性膜に形成した。この膜をベント式オーブン内にて乾燥後、得られた膜のおよそ85重量%がカーボンであり、そのうちカーボンブラックが78%およびカーボン繊維がおよそ7%を占めた。
【0193】
ガーレー値を測定したところ、6.2秒/10ccであった(図9)。0.058cm厚さの5cm2膜片2枚の抵抗率は10.6ミリオームであった(図10)。これはバルク抵抗率0.90オーム−cmに相当する。前進および後退接触角を測定したところ、それぞれ157±5°および137±9°であった。
【0194】
本例により準備した電極支持層による燃料電池性能を上述のように測定した。0.5ボルトにおける電流密度は0.95A/cm2であった。
【0195】
例24
PTFEおよびカーボンブラック(92%)を含有する膜
総カーボン装填量をVulcan XC72Rの92重量%とした点を除き、例19において説明したように本膜を準備した。膜の厚さは0.25mmであった。
【0196】
ガーレー値を測定したところ、24秒/10ccであり(図9)、膜の抵抗率は20.5ミリオームであった(図10)。これはバルク抵抗率1.92オーム−cmに相当する。前進および後退接触角を測定したところ、それぞれ156±8°および96±5°であった。
【0197】
例25
PTFEおよびカーボンブラック(95%)を含有する膜
膜の厚さが異なる点を除き、例19において説明したものと同じ成分により本膜を準備した。得られた膜のおよそ95重量%がカーボンブラックであり、その厚さは0.32mmであった。
【0198】
ガーレー値を測定したところ、73秒/10ccであり(図9)、膜の抵抗率は5.0ミリオームであった(図10)。これはバルク抵抗率0.39オーム−cmに相当する。
【0199】
例26
PTFEおよびカーボンブラック(90%)を含有する膜
KetJen−600Jカーボンブラックを使用して、例19において説明したように90重量%カーボン含有膜を準備した。この多孔質導電性膜の厚さは0.28mmであった。
【0200】
ガーレー値を測定したところ、27秒/10ccであり(図9)、5cm2膜2枚の抵抗率は5.0ミリオームであった(図10)。これはバルク抵抗率0.48オーム−cmに相当する。前進および後退接触角を測定したところ、それぞれ161±8.5°および107.5±5°であった。
【0201】
本例において準備した電極支持層による燃料電池性能を上述のように測定して、図11に示した。0.5ボルトにおける電流密度は0.28A/cm2であった。
【0202】
例27
PTFEおよびカーボンブラック(85%)を含有する膜
Shawinigan C−55カーボンブラックを使用して、例19において説明したように85重量%カーボン含有膜を準備した。この多孔質導電性膜の厚さは0.39mmであった。
【0203】
ガーレー値を測定したところ、4.4秒/10ccであり(図9)、5cm2膜2枚の抵抗率は13.4ミリオームであった(図10)。これはバルク抵抗率0.88オーム−cmに相当する。前進および後退接触角を測定したところ、それぞれ157±7°および141±12°であった。
【0204】
本例において準備した電極支持層による燃料電池性能を上述のように測定して、図11に示した。
【0205】
例28
TITPフィルム非対称性の効果
例16Bにおいて説明したカーボン充填HDPE膜を、NafionTM 115をイオン伝導性膜として使用し、電極支持層をVertrel 423により抽出した点を除き、例9〜例14について上記に説明した条件と同条件下において燃料電池で評価した。例28Aにおいて、フィルムを、急冷中に平滑注型ホイールに対向したフィルム側を触媒された膜とは反対向きにして配置した。例28Bにおいて、同じフィルムを、フィルムの注型ホイール側を触媒された膜に向けて配置した。例16Bによるフィルムの注型ホイールおよび空気側のSEM顕微鏡写真を図15に示し、熱処理を施していない比較フィルムを図14に示す。燃料電池の結果は図13に示す。この結果から、フィルムの注型ホイール側を触媒された膜に対向して配置した例28Bの性能が格段に良好であることがわかる。図15のSEM結果からわかるように、細孔が細かく、より密度の高い表面層を有する、触媒された膜に隣接するフィルム層において良好な結果が得られる。図16は、熱処理を施した、および施していない例14に対応するUHMWPEフィルムのSEM顕微鏡写真を示す。
【0206】
上述の実施態様は例証を目的としており、制限を目的とするものではない。請求の範囲内であれば本発明に対する他の実施態様も可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の主面を有するイオン伝導性膜と、
該第1および第2の主面に隣接する触媒と、
ポリマーマトリックスと、該ポリマーマトリックス内に埋設された約45〜約98重量%の導電性粒子とを含有している、前記イオン伝導性膜に隣接する多孔質導電性ポリマーフィルムと、
を具備する電気化学MEA。
【請求項2】
前記ポリマーフィルムのガーレー値が約50秒/50cc未満であり、前記ポリマーマトリックスが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル))およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含有する請求項1に記載の電気化学MEA。
【請求項3】
前記導電性粒子がカーボンを含有し、前記多孔質ポリマーフィルムの電気抵抗率が約20オーム/cm未満である請求項1または2に記載の電気化学MEA。
【請求項4】
前記触媒材料が、前記イオン伝導性膜と前記多孔質導電性ポリマーフィルムとの間の界面にナノ構造要素として配置される請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学MEA。
【請求項5】
第1および第2の主面を有するイオン伝導性膜と、
該第1および第2の主面に隣接する触媒と、
導電性粒子とフィブリル化されたPTFEフィブリルの多孔質マトリックスとを含有している、前記イオン伝導性膜に隣接する多孔質導電性ポリマーフィルムと、
を具備する電気化学MEA。
【請求項6】
前記触媒材料が、前記イオン伝導性膜と前記多孔質導電性ポリマーフィルムとの間の界面に配置される請求項5に記載の電気化学MEA。
【請求項7】
前記導電性粒子がカーボンを含有し、前記多孔質ポリマーフィルムのガーレー値が50秒/50cc未満であり、該多孔質ポリマーフィルムの電気抵抗率が20オーム/cm未満である請求項5または6に記載の電気化学MEA。
【請求項8】
ポリマーマトリックスおよび約45〜約98重量%の導電性粒子を含有する多孔質ポリマーフィルムを、該ポリマーマトリックスの融点から20℃以内の温度に充分な時間をかけて加熱して、該フィルムのガーレー値を少なくとも約25%低下させ、該フィルムの電気抵抗率を少なくとも約25%低下させ、尚且つ冷却した際に該フィルムの物理的一体性と機械的特性とを実質的に維持できるようにするステップを含む、導電性ポリマーフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記ポリマーマトリックスが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル))およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含有し、前記導電性粒子が、カーボンおよび導電性金属からなる群から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記温度が前記融点を約5〜約20℃上回り、加熱後の前記フィルムの前記ガーレー値が50秒/50cc未満である請求項8に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法により製造されたガス透過性かつ導電性である多孔質フィルムをそれぞれ含む電極支持層をポリマーイオン伝導性膜の両面に配置するステップを含み、触媒層が、該イオン伝導性膜と該電極支持層との間のそれぞれに配置される電気化学MEAの形成方法。
【請求項12】
水との接触下において後退および前進接触角が90°を超える表面を有し、約45重量%を超える導電性粒子を含有するフィルムであって、該前進接触角が該後退接触角を50°以下だけ上回るフィルム。
【請求項13】
前記前進接触角が前記後退接触角を30°以下だけ上回る請求項12に記載のフィルム。
【請求項1】
第1および第2の主面を有するイオン伝導性膜と、
該第1および第2の主面に隣接する触媒と、
ポリマーマトリックスと、該ポリマーマトリックス内に埋設された約45〜約98重量%の導電性粒子とを含有している、前記イオン伝導性膜に隣接する多孔質導電性ポリマーフィルムと、
を具備する電気化学MEA。
【請求項2】
前記ポリマーフィルムのガーレー値が約50秒/50cc未満であり、前記ポリマーマトリックスが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル))およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含有する請求項1に記載の電気化学MEA。
【請求項3】
前記導電性粒子がカーボンを含有し、前記多孔質ポリマーフィルムの電気抵抗率が約20オーム/cm未満である請求項1または2に記載の電気化学MEA。
【請求項4】
前記触媒材料が、前記イオン伝導性膜と前記多孔質導電性ポリマーフィルムとの間の界面にナノ構造要素として配置される請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気化学MEA。
【請求項5】
第1および第2の主面を有するイオン伝導性膜と、
該第1および第2の主面に隣接する触媒と、
導電性粒子とフィブリル化されたPTFEフィブリルの多孔質マトリックスとを含有している、前記イオン伝導性膜に隣接する多孔質導電性ポリマーフィルムと、
を具備する電気化学MEA。
【請求項6】
前記触媒材料が、前記イオン伝導性膜と前記多孔質導電性ポリマーフィルムとの間の界面に配置される請求項5に記載の電気化学MEA。
【請求項7】
前記導電性粒子がカーボンを含有し、前記多孔質ポリマーフィルムのガーレー値が50秒/50cc未満であり、該多孔質ポリマーフィルムの電気抵抗率が20オーム/cm未満である請求項5または6に記載の電気化学MEA。
【請求項8】
ポリマーマトリックスおよび約45〜約98重量%の導電性粒子を含有する多孔質ポリマーフィルムを、該ポリマーマトリックスの融点から20℃以内の温度に充分な時間をかけて加熱して、該フィルムのガーレー値を少なくとも約25%低下させ、該フィルムの電気抵抗率を少なくとも約25%低下させ、尚且つ冷却した際に該フィルムの物理的一体性と機械的特性とを実質的に維持できるようにするステップを含む、導電性ポリマーフィルムの製造方法。
【請求項9】
前記ポリマーマトリックスが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル))およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを含有し、前記導電性粒子が、カーボンおよび導電性金属からなる群から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記温度が前記融点を約5〜約20℃上回り、加熱後の前記フィルムの前記ガーレー値が50秒/50cc未満である請求項8に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法により製造されたガス透過性かつ導電性である多孔質フィルムをそれぞれ含む電極支持層をポリマーイオン伝導性膜の両面に配置するステップを含み、触媒層が、該イオン伝導性膜と該電極支持層との間のそれぞれに配置される電気化学MEAの形成方法。
【請求項12】
水との接触下において後退および前進接触角が90°を超える表面を有し、約45重量%を超える導電性粒子を含有するフィルムであって、該前進接触角が該後退接触角を50°以下だけ上回るフィルム。
【請求項13】
前記前進接触角が前記後退接触角を30°以下だけ上回る請求項12に記載のフィルム。
【図1】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図3A】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図3A】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【公開番号】特開2011−71122(P2011−71122A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−232942(P2010−232942)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【分割の表示】特願2000−516390(P2000−516390)の分割
【原出願日】平成10年9月2日(1998.9.2)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232942(P2010−232942)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【分割の表示】特願2000−516390(P2000−516390)の分割
【原出願日】平成10年9月2日(1998.9.2)
【出願人】(590000422)スリーエム カンパニー (144)
【Fターム(参考)】
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