説明

膝蓋大腿装具

着用者の膝蓋を支持するための支持部を含む膝蓋大腿装具を提供する。膝蓋大腿装具は、着用者の脚への取り外しがしやすい弾性スリーブを含む。スリーブは、端のバンドが実質的に中央のバンドとは別に回転するような材料からなる別個のバンドを含む。端のバンドは、着用者の脚に沿った動きおよび着用者の脚の周りにおける回転を抑える。装具は、さらに、支持部および着用者の膝蓋をさらに支持するように支持部を横切る引っ張りストラップを含む。引っ張りストラップの一部分は、熱可塑性エラストマーからなり、その結果、ストラップが、織布ストラップよりもしっかりと支持部を支持することができるが、硬質な非弾性ストラップよりも快適で均一な支持を支持部に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整形外科装具に関する。さらに詳細には、本膝蓋大腿装具は、膝蓋骨の亜脱臼を予防し他の膝の病気を軽減させる助けとなるように、膝に着用し得る軟質スリーブを提供する。
【背景技術】
【0002】
多くの整形外科装具で人の膝蓋を支持することができる。例えば、Palumboへの米国特許第4,296,744号明細書は、膝蓋骨の亜脱臼の診断および治療のための動的膝蓋装具を開示している。装具は、膝蓋に対して横向きに配置されるように適合された膝蓋装具パッドを含む。パッドは、亜脱臼を妨げることに役立つように膝蓋へ内側の圧力をかける。ストラップにより、着用者の脚の周りに装具が留められる。ストラップは、着用者の脚に巻き付けられ、次いで、ストラップが始まる、装具の同じ部分に留められる。したがって、この装具は、膝蓋の一方の側に圧力をかけるが、ストラップを装具に留める方法によって、実際、装具に逆向きの力がかかる。この意図しない力によって、装具の効果が低減してしまう。
【0003】
カリフォルニア州ヴィスタのdj Orthopedics, LLC は、膝蓋の亜脱臼を治療するためのいくつかの異なる膝装具を販売している。一般に、これらの各装具は、着用者の膝にぴったり取り付けられる弾性スリーブを含む。スリーブは、1つの連続した長さの弾性材料からなる。着用者の膝蓋は、スリーブ前部の開口部から若干突出する。高密度の支持部が、開口部の少なくとも一部分を囲み、膝蓋を支持する。支持部は、ドーナツ状、C字、J字、H字、または他の適切な形状にしてもよい。織布ストラップを装具の片側に留めることができる。ストラップは、開口部を横切って引き伸ばされ、反対側において装具に留められる。ストラップは、支持部に圧力をかけ、さらに支持部により膝蓋に与えられる支持を補強する。しかしながら、ストラップは、スリーブに留めることができ、スリーブは、1つの連続した長さの弾性材料からなる。したがって、ストラップに張力がかかることによって、支持部から圧力を取り除く方向にスリーブがねじれてしまう。
【0004】
カリフォルニア州ヴィスタのBreg, Inc.製造の装具は、着用者の膝にぴったり装着される弾性スリーブを含む。着用者の膝蓋は、スリーブの前部の開口部から若干突出する。三日月形の支持部が、開口部に隣接し膝蓋を支持する。非弾性で、硬質な、プラスチックの三日月形の補強部材を、支持部に隣接するスリーブに留め、支持部に重ねる。補強部材の端部は、ストラップを受け取る開口部を含む。ストラップは、支持部に対向する装具の側部から延びる。ストラップは、補強部材の端部の開口部に差し込まれ、次に、折り返される。面ファスナーにより、ストラップの自由端部をそれ自体へ留める。装具の着用者がストラップをぴんと引っ張ると、補強部材は、支持部に支持力をかける。しかしながら、補強部材は、非弾性で、硬質なプラスチックからなるので、補強部材は、着用者の動きに応じて撓まない。したがって、補強部材は、支持部の全ての部分に圧力さえかけない。その上、補強部材によって、装具の装着感がいくらか悪くなる場合がある。
【0005】
Fulkersonへの米国特許第5,873,848号明細書は、第1のストラップ、第2のストラップ、および支持部材を含む整形外科装具を開示している。第1のストラップは、面ファスナーのループ材料で一方の側を覆われる。フック材料の一部分は、第1のストラップの反対側に留められる。同様に、第2のストラップは、その一方の側に留められたループ材料と、反対側に留められたフック部分とを有する。第2のストラップは、第1のストラップよりも短い。支持部材は、取り外し可能に支持パッドが留められた本体部を含む。一対の支持ストラップが、その本体から延びる。各支持ストラップの一方の側は、ループ材料と、それに留められるフック材料の一部分とを含む。支持ストラップの面ファスナー用材料と反対側の本体側は、同様にループ材料で覆われ、2つのフック材料部分を含む。使用時には、第1のストラップは、関節上方の脚の一部分に巻き付けられ、第2のストラップは、関節下方の脚の別の部分に巻き付けられる。支持部材は、次いで、支持パッドが関節に隣接して配置され、1つの支持ストラップが関節上方の第1のストラップに留められ、かつ他方の支持ストラップが関節下方の第2のストラップに留められるように、脚に巻き付けられる。
【0006】
Fulkersonの装具は、膝への取り付けが面倒である。装具は、着用者の脚へ別々に取り付けられる3つの別個の部品を含む。着用者は、まず、ストラップ10、20を自分の脚の膝の上下にそれぞれ取り付ける。次に、着用者は、支持部材30を自分の膝に配置し、片手で支持部材を所定位置に保持しながら、もう片方の手で支持ストラップ50を自分の脚の周りに巻き付け、第2の面54のループ材料と本体40のフック材料43とを係合させる。最後に、着用者は、さらに、支持ストラップを自分の脚に螺旋状に巻き付けて、一方のフック部分57が、第1のストラップ10の第2の面 15のループ材料と係合し、そして、他方のフック部分57が、第2のストラップ20の第2の面25のループ材料と係合する。この方法は、時間を浪費し、所望の結果を得るためには、多大な調整と練習が必要である。したがって、Fulkersonの利点を得られ、膝への取り付けがしやすい膝装具であれば、膝蓋大腿亜脱臼および他の膝の疾患になった人達に大いに役立つことになるだろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本膝蓋大腿装具の好ましい実施形態には、いつくかの特徴があり、それらの1つだけでは、望ましい特性が得られない。後に続く特許請求の範囲により示される本膝蓋大腿装具の範囲を限定せずに、ここで、さらに顕著な特徴を簡単に説明する。この説明を考察した後、また特に「発明を実施するための最良の形態」の項を読んだ後、発明を実施するための最良の形態の特徴からいかに利点が得られるかを理解するだろう。これらの利点には、膝蓋支持用の支持部を支持する引っ張りストラップにおいて適切かつ均一な張力を維持し得ること、支持部により硬質な材料を使用することによって支持部をさらにしっかりと支持し得ること、および着用者の脚から装具を容易に取り外し得ることが含まれる。
【0008】
本膝蓋大腿装具の好ましい実施形態は、実質的に円筒形のバンドに分かれる実質的に円筒形のスリーブを含む。バンドは、膝を包み込むバンドと、膝を包み込むバンドの近位縁に留められる近位スペーサーバンドと、膝を包み込むバンドの遠位縁に留められる遠位スペーサーバンドと、近位スペーサーバンドの近位縁に留められる近位固定バンドと、遠位スペーサーバンドの遠位縁に留められる遠位固定バンドと、を含む。
【0009】
本膝蓋大腿装具の好ましい実施形態は、着用者の膝を包み込むように適合されたスリーブを含む。スリーブは、前部に支持部を含む。自由端を有する引っ張りストラップが、第1の端部において、支持部に隣接したスリーブに留められる。引っ張りストラップの少なくとも一部分は、熱可塑性エラストマーからなり、熱可塑性エラストマーは、ストラップの自由端が、支持部に延ばされスリーブに留められると、支持部を横切り支持部に圧力をかける。
【0010】
ここで、その特徴を示す、本膝蓋大腿装具の好ましい実施形態を以下に詳細に説明する。これらの実施形態は、添付の図面において新規で非自明な膝蓋大腿装具を示し、これらの図面は、図示することのみが目的である。これらの図面は、以下の図面を含み、当該図面において、同様の番号は、同様の部分を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1〜図6に、本膝蓋大腿装具10の好ましい実施形態を示し、また、図7〜図10に、本膝蓋大腿装具100の別の好ましい実施形態を示す。膝蓋大腿装具10は、膝を伸展させている間の膝蓋骨の亜脱臼または転位を抑制し、膝蓋不全軌道(patellar mal tracking)を抑制することによって痛みを和らげる。装具10はまた、膝蓋の腱炎を軽くし、前膝全体の痛みを軽減し得る。説明しやすいように、左の膝蓋骨が外側に亜脱臼する着用者について本装具10を説明する。したがって、着用者は、自分の左脚に装具10を着用することになる。ここに示した装具10を右脚に着用して右の膝蓋骨の内側への亜脱臼を治療し得ることを、当業者は理解するだろう。装具10は、左の膝蓋骨の内側への亜脱臼を治療するために、上下を逆さまにして左脚に着用するか、または右の膝蓋骨の外側への亜脱臼を治療するために、上下を逆さまにして右脚に着用してもよいことを、当業者はさらに理解するだろう。したがって、どんな方向を示す用語も、限定するものと解釈すべきでない。
【0012】
装具10は、引っ張りストラップ14が取り付けられ、脚を包み込むスリーブ12を備える(図2)。スリーブは、近位または上の端部16から遠位または底の端部18へ、人の脚が自然に細くなるのに合わせて徐々に幅を狭くすることが好ましい。さらに、スリーブ12は、近位端部16から遠位端部18へ、異なる材料から作製し得る別個のバンドを含むことが好ましい。着用者の膝を包み込むように適合された中央バンド20は、可撓性および伸縮性があって、ネオプレンまたは織布などの好ましくは軽量な材料、あるいは通気性があり伸縮可能なメッシュ生地から作製することが好ましい。中央バンド20は、前部に前方開口部22を含み、後部に後方開口部24(図5)を含んでいる。前方開口部22は、着用者の膝蓋を包み込むように適合される。後方開口部24によって、着用者において通気性がよくなり、装具10の嵩が減少して、着用者が、材料をはさまずに、さらに自分の膝を曲げやすくなる。前方開口部22も後方開口部24も、本装具10の利点を得るのに必ずしも必要ではないことを、当業者は理解するだろう。
【0013】
中央バンド20の前部は、不規則な形状のパネル26を含んでいる(図2)。パネル26は、各々実質的に真っ直ぐな近位縁28および遠位縁30を含んでいる。凸状弓形の外側縁32は、近位縁28および遠位縁30の外側端部と相互に接続されており、また、凹状弓形の内側縁34は、近位端部28および遠位端部30の内側端部と相互に接続されている。パネル縁28、30、32、34は、縫い目36で中央バンド20の前部に留められることが好ましい。
【0014】
後述するように、パネル26は、着用者の膝蓋を支持するように適合され実質的にC字形の支持部38(buttress)を含んでいる。支持部38は、高密度だが可撓性のある材料、例えば、フォーム、ネオプレン、フェルト、エチル−酢酸ビニルまたはPoron(登録商標)から作製される。支持部38は、実質的に、C字を形成するように長手方向軸線に沿って曲げられた円筒体として形成される。支持部38は、縫い目36でパネル26のC字形のポケット内に留めることが好ましい。ポケットは、支持部38を、容易に取り外して、厚さの異なる支持部など別の支持部と交換し得るように開口部(図示せず)を含み得る。
【0015】
C字形部には、パネルの近位縁28および遠位縁30に沿って、真っ直ぐな脚部があり、また、パネルの外側縁32に沿って、湾曲した基部がある。支持部38を、C字形の代わりにいくつかの形状のどんな形状にしてもよいことを、当業者は理解するだろう。例えば、支持部38を、ドーナツ形、J字形、または着用者の必要を満たす他の適切な形状に形成してもよい。
【0016】
装具10を(図2に)示した方向で左脚に着用した場合、支持部38は、着用者の左の膝蓋の近位縁、外側縁および遠位縁に接する。中央バンド20の材料に弾性があることによって、支持部38は、膝蓋と隣接して接触した状態に維持される。したがって、着用者が自分の膝を真っすぐにすると、支持部38は、膝蓋骨が外側に亜脱臼するのを妨げる。左の膝蓋骨が内側に亜脱臼するのを妨げるために、中央バンド20に対する支持部38の向きを逆にすることができ、あるいは、ドーナツ状の支持部を設けることができる。
【0017】
近位スペーサーバンド40が、中央バンド20の近位縁42に留められ、また、遠位スペーサーバンド40が、中央バンド20の遠位縁44に留められる(図1)。各スペーサーバンド40は、平坦なストリップを含み、このストリップは、両端部を留め合わせて実質的に円筒体を形成する材料からなる。縫い目36によって、各スペーサーバンド40の端部を相互に留めることが好ましく(図5)、また、縫い目36によって、スペーサーバンド40の縁を、中央バンド20の縁42、44に留めることが好ましい。スペーサーバンド40は、通気性があり伸縮自在のメッシュ生地から作製されることが好ましい。
【0018】
近位固定バンド46が、近位スペーサーバンド40の近位端部48に留められ、また、遠位固定バンド46が、遠位スペーサーバンド40の遠位端部50に留められる(図1)。各固定バンド46は、平坦なストリップを含み、このストリップは、両端部を留めてともに実質的に円筒体を形成する材料からなる。縫い目36によって、各固定バンド46の端部が相互に留められることが好ましく(図5)、また、縫い目36によって、固定バンド46の縁が、スペーサーバンド40の縁48、50へ留められることが好ましい。固定バンド46は、可撓性があり伸縮自在で、人の皮膚に接するとしっかり把持する材料から作製されることが好ましい。固定バンド46の好ましい材料には、高摩擦シリコンドットを内側の面にシルクスクリーン印刷したネオプレンおよび弾性材料が含まれる。
【0019】
両方の固定バンド46は、装具10の長手方向軸線周りを少し回転し得る。中央バンド20に対していずれかの固定バンド46が部分的に回転しても、中央バンド20にあまり影響しないことが好ましい。例えば、中央バンド20は、固定状態に保持され、近位固定バンド46が、中央バンド20に対して長手方向軸線周りに回転した場合、近位スペーサーバンド40は、わずかに巻き付くことになる。近位固定バンド46が回転しても、近位スペーサーバンド40には可撓性および伸縮性があるので、中央バンド20がねじれることにはならない。
【0020】
各固定バンド46の内面52は、摩擦係数が高いことが好ましい(図6)。例えば、固定バンド46の片側をネオプレンから作製し、または各固定バンド46の内面52にゴムで覆われた材料を含ませ、あるいは各固定バンド46の内面52に高摩擦シリコンドットをシルクスクリーン印刷してもよい。固定バンド46の内面52は、このように、装具10が着用者の脚を上下に滑りにくくさせる。固定バンド46の内面52はまた、固定バンド46が着用者の脚周りを回転しにくくさせる。各固定バンド46の外面54が、面ファスナーのループ部分を含むことが好ましい(図3および図4)。後述するように、固定バンド46の外面54は、引っ張りストラップ14の端部の取り付け部を提供する。
【0021】
引っ張りストラップ14は、中央バンド20の側面部から延びる(図2)。引っ張りストラップ14は、実質的にV字形のベース部56を備える(図1および図2)。ベース部56は、可撓性のある熱可塑性エラストマーから作製されることが好ましい。熱可塑性エラストマーは、スリーブ12のバンド20、40、46を作製するのに使用した材料よりも厚くそれほど伸縮性がないことが好ましい。熱可塑性エラストマーは、熱可塑性ウレタンおよび熱可塑性シリコンを含むことが好ましい。ベース部56を、ゴムなどの、可撓性および伸縮性について所望の特性を有する種々の天然材料から作製し得る。簡略化のために、たとえ非熱可塑性材料からベース部56を作製することができたとしても、ベース部56を説明するために全体を通じて熱可塑性エラストマーという用語を使用する。
【0022】
V字形部56の基底部58は、好ましくは縫い目36で、中央バンド20の側部に留められる。V字形部56は、中央バンド20の前部を横切って延びて、V字形部56の基底部58が、支持部38の丸い基部に重なる(図1)。V字形部56の近位分岐部60は、支持部38の近位部に重なり、また、V字形部56の遠位分岐部62は、支持部38の遠位部に重なる(図1)。近位分岐部60および遠位分岐部62は、中央バンド20の前方開口部22を覆わないことが好ましい。
【0023】
細長い近位アーム64が、V字形の近位分岐部60の端部に留められ、近位分岐部60の端部へ延びる(図1および図2)。細長い遠位アーム66が、V字形の遠位分岐部62の端部に留められ、遠位分岐部62の端部へ延びる。アーム64、66は、可撓性のある織布から作製されることが好ましく、縫い目36でV字形分岐部60、62に留められることが好ましい。アーム64、66は、低摩擦の内面68と、外面70に面ファスナーのループ部分とを有することが好ましい(図2)。例えば、アーム64、66は、内面68に、ナイロンまたはLYCRA(登録商標)などの低摩擦材料を具えて、両面をネオプレンから作製し得る。あるいは、アーム64、66は、片面をネオプレンから作製してもよい。ここに示した実施形態では、アーム64、66は、固定バンド46と同じ材料から作製される。しかしながら、必ずしも固定バンド46と同じ材料からアーム64、66を作製する必要はないことを、当業者は理解するだろう。
【0024】
図1、図3、図4および図5に示すように、アーム64、66は、スリーブ12の周りに巻き付けられるように適合される。図1および図3に示すように、近位アーム64は、近位スペーサーバンド40の周りに巻き付けられ、近位固定バンド46に留め得る。図1および図3に示すように、遠位アームは、遠位スペーサーバンド40の周りに巻き付けられ、遠位固定バンド46に留め得る。アーム64、66の端部72は、内面74に面ファスナーのフック部を含むことが好ましい(図2)。よって、端部72は、固定バンド46の外面54に留めることができ、固定バンド46は、面ファスナーのループ部を含むことが好ましい。端部72を固定バンド46へ留めるために、スナップまたはボタンなどの、他のファスナーを使用し得ることを、当業者は理解するだろう。
【0025】
着用者は、自分の左膝に装具10を付けるために、近位固定バンド46を把持し、中央バンド20が自分の膝の周りに配置されるまで、自分の脚の上方に自分の左脚に沿ってスリーブ12を引っ張り上げる。着用者の膝蓋は、中央バンド20の前部の開口部22の中央に配置され、開口部22から少し突出する。近位固定バンド46は、着用者の大腿を包み、また、遠位固定バンド46は、着用者の脹脛を包む。
【0026】
着用者は、スリーブ12を着用者の膝の周りに適切に配置して、次に、引っ張りストラップ14のアーム64、66を把持し、自分の脚を各々で包む。図1および図3に示すように、近位アーム64は、近位スペーサーバンド40の周りに巻き付けられ、近位固定バンド46へ取り付けられる。図1および図3に示すように、遠位アーム66は、遠位スペーサーバンド40の周りに巻き付けられ、遠位固定バンド46へ取り付けられる。着用者は、各アーム64、66を適量引っ張って、ストラップ14が所要量引っ張られる。アーム64、66を引っ張ることによって、ベース部56が引っ張られて、それによって、後ろ方向および内側方向の力が支持部38にかけられる。それによって、ベース部56が、支持部38により提供される膝蓋支持を補強する。
【0027】
比較的厚い熱可塑性エラストマーベース部56を支持部38に重ねることによって、比較的弾性のある織布よりもしっかりとした支持を行うことができる。先行技術の装具では、支持部は、織布で囲まれており、ストラップを設けた場合、ストラップ全体は、上述のように織布から作製される。これらの織布は、概ね可撓性があり薄いので、したがって、支持部によりかけられる荷重に応じてさらに撓みやすい。したがって、着用者が、自分の膝を曲げ、自分の膝蓋骨を亜脱臼した場合、支持部を支持する材料が薄いと、所定位置に支持部を維持するための適切な支持ができない場合がある。支持部の位置が変わると、それによって、着用者の膝蓋に適切な支持をすることができなくなる。熱可塑性エラストマーベース部56をより硬質な材料にすることによって、着用者が自分の膝を曲げた場合に、支持部38の位置が変わることを妨げるのに必要なさらにしっかりした支持が行われる。
【0028】
その上、熱可塑性エラストマーベース部56は、非弾性プラスチック材料よりもさらに多くの圧力を支持部38に与える。例えば、上述したBreg,Inc.により製造された装具は、支持部に圧力をかける非弾性プラスチック補強材を含んでいる。この部材が非弾性であることによって、支持部に不均一な圧力がかけられ、着用者の動きに応じた「撓み」が全く与えられない。圧力が不均一に分布することによって、着用者の膝の領域に局所的に高圧がかかってしまい、着用者の不快感に結びつく。本装具10の熱可塑性エラストマーベース部56は、これらの高圧領域を排除し、着用者の装着感を向上させる。
【0029】
アーム64、66の端部72は、固定バンド46に留められ、この固定バンド46は、中央バンド20に対してある程度自由に回転し得る。したがって、アーム64、66内の張力によって、固定バンド46が、引っ張られ(上から見て)反時計回りに回転することになる。しかしながら、固定バンド46の高摩擦内面52(図6)と着用者の脚との間の摩擦によって、この回転が抑えられる。したがって、固定バンド46は、ストラップ14内に張力を維持する。ストラップ14内の張力は、次に支持部38への圧力を維持し、支持部38が、膝蓋を支持する。
【0030】
アーム64、66を、ストラップ14自体または中央バンド20にではなく、実質的に別々に回転する固定バンド46に留めることによって、ストラップ14が中央バンド20へ逆効果を招く力をかけることを妨げる。中央バンド20がアーム端部72の影響を受けないので、中央バンド20は、望ましくない方向に回転せず、それによって、支持部38から圧力が取り除かれる。上述のようにアームがねじれる影響が支持部に及ぶことが、いくつかの先行技術の装具に存在する問題である。
【0031】
さらに、固定バンド46が別々に回転することによって、固定バンド46は、中央バンド20の位置または支持部38の位置に影響せずに、着用者の脚周りを回転し得る。したがって、着用者が動き回った時に、固定バンド46がどんなにねじれても、支持部38により与えられる膝蓋の支持はゆるがない。
【0032】
中央バンド20に固定バンド46を一体化させると、スリーブ12を着用者の脚に付けやすくなる。着用者は、上述のように、スリーブ12を把持し自分の膝に引き上げるだけでよい。したがって、装具10は、上述の、Fulkersonへの米国特許第5,873,848号明細書に開示された装具に比べてずっと手間がかからない。
【0033】
図7〜図10に、本膝蓋大腿装具100の別の好ましい実施形態を示す。装具100は、上述の装具10と同じ機能を果たし、装具10と実質的に同一である。しかしながら、装具100には、中央バンド106のパネル104(図7および図8)内へ縫いつけられない支持部102(図9)が含まれる。さらに、パネル104は、装具10について上述したような形状ではなく、実質的にドーナツ状である。パネル104は、実質的にどんな形状にもすることができることを、当業者は理解するだろう。パネル104は、縫い目36で中央バンド106に留められることが好ましいが(図7)、パネル104は、高周波溶接など他のタイプのファスナーまたは接続手段で中央バンド106に留めてもよい。
【0034】
図9に示した支持部102は、高密度材料からなるC字形部分を含む。支持部102の好ましい材料には、支持部38用の上記材料、さらに中間密度のフォーム、および同様の特性を有する他の材料が含まれる。支持部102は、少なくとも1つの面108に面ファスナーのフック部分を含むことが、好ましい。パネル104の内面110(図8および図10)に、面ファスナーのループ部分を含むことが好ましい。したがって、図10に示すように、支持部102を、パネル104の内面110に取り外し可能に留め得る。面ファスナーのループ部分を支持部102に留め、面ファスナーのフック部分を内面110に留めてもよいことを、当業者は理解するだろう。スナップなど他のファスナーで内面110に支持部102を留めてもよいことを、当業者はさらに理解するだろう。
【0035】
支持部102は、取り外して再度内面110へ留め得ることが好ましい。したがって、支持部102は、特定の患者の膝蓋を支持する必要を満たすのに最も適したどんな方向にも配置し得る。さらに、特定の厚さの支持部102は、厚さが異なる他の多くの支持部102の1つと容易に交換し得る。支持部102を、厚さが異なるかまたは厚さが徐々に薄くなった支持部102と交換してもよい。したがって、製造業者は、膝蓋骨の亜脱臼の様々な状態を治療するために特に設計された複数の装具を生産する必要があるというよりは、非常に様々な患者を治療するために1つの(当然様々なサイズの)装具100を生産することができる。
【0036】
支持部102は、パネル110の材料を通してではなく、着用者の膝蓋に直接接することが好ましい。支持部102は、直角の縁112(図9)を含むことが好ましい。縁112によって、着用者の膝蓋をしっかり把持することができる。しかしながら、支持部102を作製するために使用される材料が圧縮され得るために、支持部102は、着用者の膝蓋に従い、装着感をよくする。支持部102は、直角の縁112を必ずしも具える必要はないことを、当業者は理解するだろう。例えば、支持部102に丸い縁を具えてもよい。
【0037】
発明の範囲
上記は、本膝蓋大腿装具を実施するために考案されたベストモード、ならびにそれを作製し使用する方法およびプロセスを、いかなる当業者も本膝蓋大腿装具を作製し使用し得るのに適するような、略式でなく、明確、簡潔で正確な用語による説明である。しかしながら、この膝蓋大腿装具は、完全に等価である、上述の膝蓋大腿装具を変更し代替構造にすることができる。したがって、この膝蓋大腿装具は、ここに開示された特定の実施形態に限定されない。一方、この膝蓋大腿装具は、次の特許請求の範囲により全体を示す膝蓋大腿装具の精神および範囲内におけるあらゆる変更および代替構造をカバーし、この特許請求の範囲は、膝蓋大腿装具の主題を特に指摘し明確にクレームする。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】スリーブの周りに留めた膝蓋大腿装具の引っ張りストラップを示す、本膝蓋大腿装具の好ましい実施形態の正面図である。
【図2】スリーブから引っ張りストラップを解いた様子を示す、図1の膝蓋大腿装具の正面図である。
【図3】図1の膝蓋大腿装具の右側面図である。
【図4】図1の膝蓋大腿装具の左側面図である。
【図5】図1の膝蓋大腿装具の後面図である。
【図6】装具の前部の内面を示す、図1の膝蓋大腿装具の後部断面図である。
【図7】スリーブから引っ張りストラップを解いた様子を示す、本膝蓋大腿装具の別の好ましい実施形態の正面図である。
【図8】装具の前部の内面を示す、図7の膝蓋大腿装具の後部断面図である。
【図9】図7の膝蓋大腿装具とともに使用するための支持部の好ましい実施形態の斜視図である。
【図10】図9の支持部が装具の所定位置にある様子を示す、図7の膝蓋大腿装具の後部断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の膝蓋を支持するための膝蓋大腿装具であって、さらに複数のバンドに分かれる実質的に円筒形のスリーブを備えており、前記複数のバンドは、
膝を包み込むバンドと、
前記膝を包み込むバンドの近位縁に留められた近位スペーサーバンドと、
前記膝を包み込むバンドの遠位縁に留められた遠位スペーサーバンドと、
前記近位スペーサーバンドの近位縁に留められた近位固定バンドと、
前記遠位スペーサーバンドの遠位縁に留められた遠位固定バンドと、
を含む膝蓋大腿装具。
【請求項2】
前記複数のバンドは、実質的に円筒形である請求項1に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項3】
前記スペーサーバンドは、両方の前記固定バンドまたは前記膝を包み込むバンドを作製するために使用される材料とは異なる材料から作製される請求項1に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項4】
前記スペーサーバンドは、伸縮性および通気性のあるメッシュ織布から作製される請求項1に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項5】
前記膝を包み込むバンドは、弾性材料から作製される請求項1に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項6】
前記固定バンドは、弾性材料から作製される請求項1に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項7】
前記固定バンドの内面は、人の皮膚に対して容易に滑動しない材料から作製される請求項1に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項8】
前記スペーサーバンドは、前記複数のバンドの少なくとも1つの他のバンドを作製するために使用する材料よりも弾性が高い材料から作製される請求項1に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項9】
前記膝を包み込むバンドは、後部に開口部を含み、前記開口部は、着用者の膝蓋を取り囲むように適合される請求項1に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項10】
前記膝を包み込むバンドは、さらに、開口部の少なくとも一部分と隣接する支持部を含む請求項9に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項11】
前記支持部は、高密度材料からなる細長いストリップを含む請求項10に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項12】
前記支持部は、フェルトを含む請求項11に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項13】
前記支持部は、ネオプレンフォームを含む請求項11に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項14】
前記支持部は、エチル−酢酸ビニルを含む請求項11に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項15】
前記支持部は、前記開口部を少なくとも部分的に囲む請求項11に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項16】
前記支持部は、実質的にU字形である請求項11に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項17】
前記スリーブに留められる引っ張りストラップをさらに含む請求項10に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項18】
前記引っ張りストラップは、前記支持部に隣接した前記膝を包み込むバンドに留められる請求項17に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項19】
前記引っ張りストラップは、実質的にV字形のベース部と、当該ベース部の分岐部から延びる細長いアームと、を含む請求項17に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項20】
前記アームが実質的に前記スリーブに巻き付けられ前記アームの端部が前記固定バンドに留められ得るような螺旋状に、前記アームを前記スリーブの周りに留め得る請求項19に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項21】
前記固定バンドの外面は、面ファスナーのループ部分を含み、前記アームの端部は、面ファスナーのフック部分を含む請求項20に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項22】
前記固定バンドの外面は、面ファスナーのフック部分を含み、前記アームの端部は、面ファスナーのループ部分を含む請求項20に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項23】
前記ベース部は、熱可塑性エラストマーから作製される請求項19に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項24】
前記ベース部は、熱可塑性ウレタンから作製される請求項23に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項25】
前記アームを前記スリーブに巻き付けると、前記ベース部は、前記支持部に重なり、前記ストラップ内の張力の強さによって異なる強さの圧力を前記支持部にかける請求項23に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項26】
前記装具の面に取り外し可能に留め得る支持部をさらに含む請求項1に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項27】
前記支持部は、中間の密度のフォームから作製される請求項1に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項28】
前記支持部は、少なくとも1つの面に面ファスナーのフック部分を含む請求項1に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項29】
前記フック部分は、前記装具に前記支持部を留めるように、前記装具上の面ファスナーのループ部分と噛み合う請求項28に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項30】
着用者の膝蓋を支持する膝蓋大腿装具であって、
着用者の膝を包み込むように適合され、前部に支持部を含むスリーブと、
第1の端部において、前記支持部と隣接した前記スリーブに留められ、自由端部を有する引っ張りストラップと、
を備え、
前記引っ張りストラップの少なくとも一部分は、熱可塑性エラストマーから作製され、当該熱可塑性エラストマーは、前記ストラップの自由端部が前記支持部上に延ばされ前記スリーブに留められると、前記支持部を横切り前記支持部に圧力をかける膝蓋大腿装具。
【請求項31】
前記引っ張りストラップは、熱可塑性ウレタンから作製される請求項30に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項32】
前記支持部は、高密度材料からなる細長いストリップを含む請求項30に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項33】
前記支持部は、実質的にU字形である請求項32に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項34】
前記ストラップは、熱可塑性エラストマーから作製されるベース部を含む請求項26に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項35】
前記ベース部は、実質的にV字形であり、V字の基底部分は、前記スリーブに、V字形部の分岐部が前記スリーブから自由に延びるように留められる請求項33に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項36】
アームが、前記分岐部から延びる請求項35に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項37】
前記アームは、前記スリーブに巻き付けられるように適合され留められて、その結果、前記ストラップ内の張力によって、前記ストラップのベース部が、前記支持部に圧力をかけ得る請求項36に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項38】
前記スリーブは、
前記着用者の膝の直近の中央バンドと、
前記中央バンドの近位縁に留められた近位スペーサーバンドと、
前記中央バンドの遠位縁に留められた遠位スペーサーバンドと、
前記近位スペーサーバンドの近位縁に留められた近位固定バンドと、
前記遠位スペーサーバンドの遠位縁に留められた遠位固定バンドと、
を含む請求項37に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項39】
前記アームは、前記固定バンドに留められる請求項38に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項40】
前記固定バンドの外面は、面ファスナーのループ部分を含み、前記アームの端部は、面ファスナーのフック部分を含む請求項39に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項41】
前記固定バンドの外面は、面ファスナーのフック部分を含み、前記アームの端部は、面ファスナーのループ部分を含む請求項39に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項42】
着用者の膝蓋を支持する膝蓋大腿装具であって、
複数の連続したバンドを備えており、
当該複数のバンドの少なくとも1つの第1のバンドが、前記複数のバンドの第2のバンドと、前記複数のバンドの第3のバンドとの間の緩衝部を形成し、その結果、前記第2のバンド及び第3のバンドは、実質的に相互に別々に回転する前記複数の連続したバンドを含む膝蓋大腿装具。
【請求項43】
着用者の膝蓋を支持するための膝蓋大腿装具であって、
少なくとも1つの第1のバンドと、
第2のバンドと、
第3のバンドと、
を備え、
前記第1のバンドは、前記第2のバンドの第1の縁に留められ、前記第3のバンドは、前記第2のバンドの第2の縁に留められ、前記第2のバンドの第2の縁は、前記第1の縁に対向しており、その結果、前記第1のバンドが部分的に回転しても、前記第3のバンドには全く応力が生じない膝蓋大腿装具。
【請求項44】
前記部分的な回転は、20度未満である請求項43に記載の膝蓋大腿装具。
【請求項45】
着用者の膝蓋を支持するための膝蓋大腿装具であって、
着用者の脚をぴったり包むように適合され、着用者の膝蓋に接するように適合された支持部を含むスリーブと、
第1の端部において、前記支持部に隣接した前記スリーブに留められた引っ張りストラップであって、前記第1の端部は、弾性のある熱可塑性エラストマーから作製され実質的にV字形に形成されている前記引っ張りストラップと、
を備え、
前記V字形部の各分岐部から延びるアームは、前記装具の周りに螺旋状に延ばされ、端部が前記スリーブに留められて、その結果、前記アーム内の張力によって、前記ストラップの第1の端部と前記支持部との間の圧力が維持される膝蓋大腿装具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−500586(P2007−500586A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536538(P2006−536538)
【出願日】平成16年1月12日(2004.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/000802
【国際公開番号】WO2004/069109
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(500009868)ディージェイ オーソペディクス,リミテッド ライアビリティー カンパニー (8)
【Fターム(参考)】