説明

膨張ガスバッグを備えた車両乗員拘束システム

本発明は、外側継ぎ目(2)により縁部(5)に沿って互いに接続された少なくとも1つの第1布地層及び第2布地層を含み、ガスによって膨張可能なガスバッグ(1)と、前記ガスバッグ(1)からガスが流出可能な少なくとも1つの流出開口(2)と、を備え、前記流出開口(3)は、前記外側継ぎ目(2)が中断されることで形成された車両乗員拘束システムに関する。前記流出開口(3)の領域に少なくとも一部が前記流出開口(3)を閉鎖する少なくとも1つの付加的な継ぎ目(4)が設けられ、膨張過程の間に前記付加的な継ぎ目が開放されるように構成される。また前記外側継ぎ目(2)は、流出開口(3)を形成するために、当該外側継ぎ目が前記流出開口(3)の両側に隣接する前記ガスバッグ(1)の縁部(51)に対して実質的に垂直に延在する部位(21,22)を形成するように中断され、前記部位がそれぞれ前記ガスバッグ(1)の前記縁部(51)で終わるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部分にかかる、膨張ガスバッグを備えた車両乗員拘束システムに関するものである。
【0002】
通常の車両乗員拘束システムでは、内圧が過剰に高くなるのを抑えるべくガスバッグからガスを放出可能な1又は複数の流出開口を備えたガスバッグを設けることが知られている。複数の流出開口を備えたガスバッグは、例えばWO2007/009427A1から公知である。
【0003】
US5,536,038Aには、2つ布地層からなるガスバッグの継ぎ目の領域に、相当に高価なガスバッグ構造によって円形の複数の流出開口が形成されたガスバッグが開示されている。各布地層は、円形の流出開口を形成する半円状の切り欠き領域を含む。複数の流出開口の領域では、布地層を接続する継ぎ目が中断される。更に、中断された継ぎ目によって構成された流出開口がJP09011845Aから公知である。
【0004】
DE19934232A1には、外側継ぎ目の中断によって流出開口が設けられたガスバッグが開示されている。更に、流出開口の領域に継ぎ目が設けられており、当該継ぎ目は外側継ぎ目の糸よりも弱い糸で形成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、1又は複数の流出開口が設けられた膨張ガスバッグを備える、有利な構造を特徴とする車両乗員拘束システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この課題は、請求項1の特徴部分を有する車両乗員拘束装置によって解決される。本発明の複数の態様が従属項に示されている。
【0007】
従って、本発明の解決策は、ガスバッグの第1布地層と第2布地層をその縁部に沿って接続する外側継ぎ目を中断させる(「途切れさせる」或いは「遮断する」ともいう)ことによって形成される少なくとも1つの流出開口を備えたガスバッグによって特徴付けられる。流出開口が形成された中断領域には、別の付加的な継ぎ目が設けられ、当該付加的な継ぎ目は少なくとも一部が流出開口を閉鎖する。付加的な継ぎ目は、当該継ぎ目が膨張過程の間に開裂し(開放され)、従って流出開口を完全に開放するように構成される。特には、膨張過程の間に、ガスバッグが特定の内圧に達した状態、或いはガスバッグが特定の内部温度に達した状態になると、付加的な継ぎ目が開裂する(開放される)。内圧がガスバッグ布地層の相対的な動作を生じさせる。
【0008】
更に、流出開口を形成するべく外縁継ぎ目が中断されるように構成され、当該継ぎ目は、流出開口の両端部にてガスバッグのうち隣接する縁部に実質的に垂直に延在し、ガスバッグの縁部で終わる(縁部まで延在する)部位を形成する。その結果、流出開口は、膨張状態において管状又は円筒状の領域を形成する。従って、流出開口の両側にて同様に延在する外側継ぎ目が一種の流路を形成する。このため、ガスは外側継ぎ目の中断点において過度の乱流を生じることなく流出開口から効果的に流出可能である。流出開口の管状或いは円筒状の領域の断面は、例えば円形或いは楕円形として構成される。
【0009】
本発明における解決策によれば、例えばガスバッグ内が特定の内圧になるまで、ガスバッグからのガスの流出を遅らせる。本発明によれば、流出開口の一時的な閉鎖によって早期のガスロスが防止されるため、流出開口が最初から開放されている場合よりも内圧を迅速に高めることが可能である。同時に、ガスバッグの外側継ぎ目に流出開口を設けることで、車両乗員によって流出開口が押し潰され、或いは車両構成要素が侵入する危険を最小限にすることができる解決策が実現される。そのような押し潰しによって、乗員に対して希望しないような過剰な拘束を生じることとなる。
【0010】
本発明の趣旨では、外側継ぎ目は、如何なる接合部でもよく、接着による接合部でもよく、当該接合部は、少なくとも1つの第1布地層及び第2布地層をその縁部に沿って接続し、従ってガスバッグの縁部又は外郭に対し実質的に平行に延在し、或いは縁部又は外郭に対し所定距離を隔てて延在する。外側継ぎ目を、平行に及び/又は連続して延在する異なる別個の継ぎ目によって構成することができる。更に、ガスバッグが2つ以上の布地層を含むことができる。例えば、1つの前側ガスバッグ包体と1つの後側ガスバッグ包体がそれぞれ二重の布地層によって形成され、これにより合計で4つの布地層が設けられる。これらの布地層を如何なるガスバッグ材料によっても製造することができる。
【0011】
本発明によれば、付加的な継ぎ目は少なくとも一部が流出開口を閉鎖し、即ち流出開口は、全部又は一部が閉鎖可能とされる。一部のみが閉鎖される場合には、付加的な継ぎ目が開放されるまで、ガス流出は阻止されずに単に抑制される(減少する)。これにより、ガスバッグ内部の圧力も加速的に増加し、従って車両乗員に対する拘束力がより迅速に生じる。
【0012】
付加的な継ぎ目の「開放」には、付加的な継ぎ目の如何なる種類の分離或いは除去も含まれると解される。付加的な継ぎ目の「開放」には、例えば付加的な継ぎ目が開裂する形態や、ガスバッグ内部が特定の温度になるとプラスチック製の付加的な継ぎ目が溶解する形態が包含される。付加的な継ぎ目を形成するべく、原則的には公知の全ての継ぎ目材料や継ぎ目形状を使用することができる。
【0013】
本発明の1つの態様では、付加的な継ぎ目は、通常位置に着座した拘束される車両乗員がガスバッグに接触して拘束される前に当該付加的な継ぎ目が開放されるように構成される。従って、展開過程の開始後で、且つ負荷が最大に達する前に比較的に短時間で付加的な継ぎ目が開放される。このため、流出開口によって生じる利点、即ち内圧の過剰な上昇の防止が、従って乗員拘束の過度の拘束の防止が、拘束される車両乗員がガスバッグに接触したときに既に発生しているという利点がある。
【0014】
更なる別の態様では、拘束される車両乗員に、或いは侵入する車両構成要素に接触することができないように、流出開口がガスバッグの外側継ぎ目に配置される。この目的のために、サイドガスバッグとして構成されたガスバッグの流出開口は、例えば車両方向に関しガスバッグの前側領域に形成される。このようにして、流出開口が車両乗員によって押し潰され、従って流出開口からのガスの流出が阻止されるのが回避される。
【0015】
ガスバッグの開放動作を拘束要請に適合させるために、流出開口の領域に適用される付加的な継ぎ目を異なる方法によって変更することが可能である。この目的のために、一方では、付加的な継ぎ目を異なる形状にすることができる。例えば、少なくとも1つの付加的な継ぎ目が、流出開口の領域においてガスバッグの外郭に対して実質的に平行或いは垂直に延在することができる。更に、付加的な継ぎ目は、流出開口を完全に或いは部分的にのみ閉鎖することができる。当該付加的な継ぎ目は、直線状又は曲線状に延在することができ、及び/又はその縁部が円形に構成される。他方では、継ぎ目領域の継ぎ目幅(縫い目幅)、及び/又は開裂継ぎ目を形成する縫い糸のパラメータを変更することができ、或いは別の適合パラメータとして設定される。
【0016】
別の変更例の構造では、付加的な継ぎ目が少なくとも1回外側継ぎ目と交差する。従って、付加的な継ぎ目が存在する間は、付加的な継ぎ目と外側継ぎ目との間でガスの流通及び流出が生じない。
【0017】
本発明の別の態様によれば、ガスバッグの外郭は、流出開口の領域において、実質的に連続して延在し、例えば直線状に延在する。このため、ガスバッグが流出開口の領域にUS5,536,038Aにおいて設けられるような如何なる凹部又は窪み(刻み目)を備えることなく、ガスバッグの外縁は、流出開口の領域においても外郭に続く。流出開口を形成するために、ガスバッグの個別の布地層に刻み目(窪み)や切り欠きが設けられない。拡張状態では、複数の布地層は、流出開口の領域では共通の縁部領域によって互いに平行に配置され、当該縁部領域はガスバッグの外郭に続いて、例えば直線状に形成される。
【0018】
ガスバッグの膨張及び展開の間で、且つ付加的な継ぎ目の開放後には、流出開口は、流出開口に隣接する外側継ぎ目の構造にしたがって円形又は円筒状に形成される。
【0019】
第1及び第2の布地層は、ガスバッグを形成する外側継ぎ目によってそれらの縁部にて互いに接続され、当該布地層を単一の(1つの)布地部分、或いは異なる布地部分から構成することができる。本発明の1つの態様では、単一の対称形状の布地部分が互いに折り重ねられた2つの領域によって2つの布地層が構成される。そのような対称形状の布地部分は、「蝶形構造(バタフライ構造)」とも称呼される。切断部品が対称形状であるため、ガスバッグは折り畳みに至るまで左側及び右側が同様に製造され、即ちガスバッグを車両の右側と左側の両方に使用することができ、これにより製造過程が簡素化される。
【0020】
変更例の態様では、2つの布地層が2つの別個の布地部分によって構成され、当該布地部分は互いの上部に位置し、外側継ぎ目によって互いに接続される。この態様では、縁部領域が折り目によって形成されず、2つの布地層は、(本発明によれば、ガスジェネレータ又は補給孔のための開口から離間して、或いは流出開口から離間して)全周に沿って互いに接続される。
【0021】
更なる別の態様によれば、付加的な継ぎ目の強度がOOP状況(OOPとは、アウト・オブ・ポジションの状態(「乗員が適切な着座位置を外れた位置にある状態」ともいう)に適合され、ガスバッグの内圧がOOP臨界(OOPの状況に対応した「基準圧力」ともいう)に達する前に、付加的な継ぎ目が開放される。従って、付加的な継ぎ目は、OOP状況でガスバッグ圧力が車両乗員に都合の悪い値に達する前に当該継ぎ目が開放されるように構成される。
【0022】
ガスバッグは、複数のチャンバーを含むことができ、ここで本発明によれば、付加的な継ぎ目とともに設けられた1つの流出開口が複数のチャンバーのうちの少なくとも1つに適用される。
【0023】
本発明は、図面が参照される複数の実施形態によって、以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、ガスバッグの流出開口の領域に付加的な継ぎ目が設けられた、第1の実施形態のサイドガスバッグを示す図である。
【図2】図2は、図1に示すようなガスバッグを製造するためのガスバッグ部品を示す図である。
【図3】図3は、ガスバッグの流出開口の領域に付加的な継ぎ目が設けられた、第2の実施形態のサイドガスバッグを示す図である。
【図4A】図4Aは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4B】図4Bは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4C】図4Cは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4D】図4Dは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4E】図4Eは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4F】図4Fは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4G】図4Gは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4H】図4Hは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4I】図4Iは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4J】図4Jは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4K】図4Kは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4L】図4Lは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4M】図4Mは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4N】図4Nは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4O】図4Oは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4P】図4Pは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4Q】図4Qは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4R】図4Rは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4S】図4Sは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【図4T】図4Tは、ガスバッグの流出開口の領域において、付加的な継ぎ目の考えられる継ぎ目経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面は、車両乗員拘束システムのガスバッグ(「エアバッグ」ともいう)に関するものである。乗員拘束システムは、図示されたガスバッグに加えて、特にはガスジェネレータ(「ガス発生器」ともいう)、エアバッグセンサ及び制御装置のような、車両乗員拘束システムの更なる典型的な複数の要素を含んでいる。この拘束システムは更に、具体的な実施形態に応じて、1つの拡散器(ディフューザ)、1つのガスランス(ガス流通管)、及び/又は1つのハウジング或いは幾つかの別のケーシングのような要素を含む。そのような要素は、当業者に公知であるので図面に個別には示されていない。
【0026】
更に、以下に示す複数のガスバッグは、サイドエアバッグとして構成されている点が明確である。一方で、他の如何なるエアバッグにおいても、対応する複数の流出開口を適用することができる。
【0027】
図1には、車両乗員拘束システムのガスバッグ(「エアバッグ」ともいう)1が平坦に広げられた状態で示されており、当該ガスバッグは、外側継ぎ目(「外縁継ぎ目」ないし「外側縫い目」ともいう)2によって互いに接続された2つの布地層(「織物層」ともいう)を含むように構成されている。「蝶形(バタフライ)構造」としても称呼されるように、例えば図2に示されるような軸対称構造のガスバッグ部品10を使用することで、そのようなガスバッグを製造するのに有効である。図2に示されるこのガスバッグ部品10は、所定の中間軸11に関して対称な2つの半割部12,13を含むように構成されている。ガスバッグは中間軸11に沿って一回折り畳まれ、ここでは軸対称構造により、ガスバッグ部品10のうち縁部を含む2つの半割部12,13が互いに重なりあい、共通の外縁部を形成し、従って外郭(「縁部」ないし「外縁」ともいう)5を形成する(図1参照)。ガスバッグ部品10のうち互いの上部に配置された2つの布地層12,13が、外側継ぎ目2を介してそれらの布地層の縁部に沿って互いに接続される。
【0028】
図2のガスバッグ部品10は更に、ガスジェネレータ又はガスジェネレータ部分をガスバッグ1内へと導入するための開口14を含むように構成されている。ガスバッグ1へのガスジェネレータの取り付けは、例えば公報であるWO2008/129031A2の図7Aから図7Eに対応するように成り得る。開口14は本発明の本質部分ではないため、図1の記載では当該開口は図示されていない。
【0029】
所定の流出開口を形成するために、外側継ぎ目2が領域3にて中断される(「途切れる」或いは「遮断される」ともいう)ことによって形成されており、即ち外側継ぎ目2の中断によって流出開口3が形成されている。流出開口3を形成するために、縁部継ぎ目2が流出開口3に隣接して局部的に誘導され、当該継ぎ目は、ガスバッグ1の外縁5に実質的に平行な方向から、ガスバッグ1の外縁に実質的に垂直な方向へと向かい、且つガスバッグの外縁5で実質的に直角を形成して終わるような継ぎ目経路を形成する。外側継ぎ目2のうち実質的に平行な2つの部位21,22が形成され、当該部位は流出開口3を定義(規定)し、且つ外縁5で終わる(外縁5まで延在している)。外側継ぎ目2の両部位21,22が平行な経路であるため、流出開口3は、膨張状態では管状或いは円筒状の部位として構成され、その長さは互いに平行な継ぎ目領域21,22の長さに依存している。このようにして、外側継ぎ目2の中断点においては、過度の乱流を生じることなく流出開口3からガスが効果的に流出することができる。
【0030】
実質的に平行な両部位21,22は、例えば2mmから50mmまでの範囲の長さ、特には5mmから35mmまでの範囲の長さを有する。
【0031】
図1中の流出開口3を形成する方法は、単に一例として解されるべきである点が言及される。例えば、外側継ぎ目2は、ガスバッグ1の外郭5に実質的に平行な経路(方向)から外れることなく、単に流出開口3に隣接して中断される構成も考えられる。外側継ぎ目2は、流出開口3からのガス流出の際に安全に開放防止されるように、流出開口3を形成するために終わる点が局部的に補強された構成を採り得る。
【0032】
平坦状に広げられたガスバッグ1の外郭5は、流出開口3の領域において直線領域51を形成している。これは、膨張したガスバッグにおいて流出開口3が実質的に円筒形状となる要因にもなる。
【0033】
流出開口3が付加的な継ぎ目(「付加的な縫い目」ともいう)4によって閉鎖されるように構成されている。この付加的な継ぎ目4は、少なくとも一部が流出開口3の領域においてガスバッグ1の2つの布地層を接続している。これにより、ガス流出開口3を一時的ないし部分的に閉鎖する作用が生じる。従って、作動時にガスバッグ1がガスジェネレータのガスで充填される際、早期のガスロスが回避される。このようにして、ガスバッグ内の圧力を迅速に高めることが可能となる。同時に、付加的な継ぎ目4は、膨張過程の間に、特にはガスバッグが特定の内圧及び/又は特定の内部温度に達したときに、当該継ぎ目が開放されるように構成されている。
【0034】
膨張過程の間における付加的な継ぎ目の開放強度(「開裂強度」ともいう)、或いは付加的な継ぎ目の開放時間(「開裂時間」ともいう)は、所定の適合パラメータによって設定可能である。そのような調整は、例えば継ぎ目の形態によって達成可能である。異なる継ぎ目の形状が、図4Aから図4Tを参照しつつ以下に説明される。各継ぎ目の形態に対し、更なる適合パラメータとして、継ぎ目ないし縫い目の幅、縫い糸の太さ及び縫い糸の材質を追加で調整することもできる。
【0035】
ガス流通による継ぎ目領域の開放、また同様に縫い糸の溶融による継ぎ目領域の開放を開放パラメータとして使用することができる。付加的な継ぎ目は、当該継ぎ目が流出開口を完全には密閉(シール)しないように構成され、これによりガスバッグの高温の内部ガスが付加的な継ぎ目を介して加圧される。同時に、付加的な継ぎ目が可溶性の縫い糸によって形成される。付加的な継ぎ目の縫い糸の溶融温度よりもガス温度が高いため、縫い糸の溶融が生じ、従って付加的な継ぎ目が開放される。縫い糸の溶融温度及び太さによって、また継ぎ目を通じたガス流量によって、膨張過程の間での付加的な継ぎ目の開放間を調整することができる。
【0036】
膨張ガスバッグの流出開口によって形成された絞り(スロットル)により達成可能な抑制効果は、有効的にガス量に比例する。
【0037】
好ましくは、付加的な継ぎ目は、ガスバッグが乗員に接触する前に当該継ぎ目が開放されて展開ガスバッグからガスが流出するように構成される。その結果、拘束される乗員がガスバッグに過度に激しく衝突しないようにすることができる。最大限の抑制効果が弱められる。
【0038】
図3には、ガスバッグが図1の「蝶形」構造のような単一の(1つの)ガスバッグ部品によって構成されるのではなく、2つの個別のガスバッグ部品によって構成されたガスバッグ構造が示されている。従って、ガスバッグ1の外周全体に沿って外側継ぎ目2が延在している。ガスバッグ内へガスジェネレータを導入するための開口は図示されていない。流出開口3及び付加的な継ぎ目4の構造に関しては、図1の構造とは相違しておらず、これにより対応する説明が参照される。
【0039】
図4Aから図4Tには、付加的な継ぎ目4の経路(方向)及び形状について互いに異なる変更例が示されている。
【0040】
図4Aでは、付加的な継ぎ目4aが流出開口3の全幅を横切って延在している。当該継ぎ目は、流出開口3の領域において、実質的にガスバッグの外郭51に平行に延在している。付加的な継ぎ目4aの両端部は、ガスバッグ内部の方向へ曲がっている。
【0041】
図4Bの実施形態では、付加的な継ぎ目4bは、その全長に沿って直線状に延在しており、また流出開口3の領域において、ガスバッグの外郭51に平行に延在している。流出開口3は、図4Aの場合と同様に付加的な継ぎ目4bによって完全に閉鎖されている。
【0042】
図4Cでは、付加的な継ぎ目4cが再び流出開口3を完全に閉鎖している。一方で、付加的な継ぎ目4cは、ガスバッグの外縁51からより大きく離間している。付加的な継ぎ目4cの両端部は、ガスバッグ内部とは反対方向に曲がっている。図4Dには、付加的な継ぎ目4dが示されており、当該継ぎ目は、図4Bの場合と同様に、全体が完全に直線状に延在しており、一方ではガスバッグの外郭51からより大きく離間している。
【0043】
図4Aから図4Dの構造では、付加的な継ぎ目4a,4b,4c,4dはそれぞれ外側継ぎ目2と交差している。これにより付加的な継ぎ目が設けられている場合には、流出開口3のガス密閉構造(「気密構造」ともいう)が確保される。
【0044】
図4Eには、流出開口3の領域において、付加的な継ぎ目4eがガスバッグの外縁51に対して垂直に延在する実施形態が示されている。従って、流出開口3は完全には閉鎖されておらず、単に大きさが小さくなっている。
【0045】
図4F、図4G及び図4Hでは、付加的な継ぎ目4f,4g,4hが設けられており、当該継ぎ目は、図4Bの場合と同様に、ガスバッグの外縁51に隣接して直線状に配置されており、また当該外縁に対して平行に延在している。一方で、流出開口3は完全には閉鎖されておらず、部分的にのみ閉鎖されている。従って、外側継ぎ目2に対する付加的な継ぎ目の交差は、上側点のみにおいて生じ(図4F)、下側点のみにおいて生じ(図4G)、或いは全く生じない(図4H)。
【0046】
図4Iでは、直線状に延在する付加的な継ぎ目4iがガスバッグの外縁51からより大きく離間している。ここでは更に、付加的な継ぎ目4iの両端部と外側継ぎ目2との間に所定の離間距離が形成されており、これにより流出開口3は一部分のみが閉鎖されている。
【0047】
図4J、図4K、図4L及び図4Mでは、継ぎ目4j,4k,4l,4mがそれぞれ直線部及び湾曲部によって構成されており、ここでは直線部が外側継ぎ目2と一点で交差し、湾曲部が流出開口3の領域で終了している。このため、流出開口3は再び一部分のみが閉鎖されている。湾曲部の配置によって、流出ガスに対する付加的な継ぎ目の抵抗力を調整することができ、従って付加的な継ぎ目が開放される(開裂する)時間に影響を与えることもできる。
【0048】
図4N、図4O、図4P及び図4Qでは、継ぎ目4n,4o,4p及び4qが設けられており、当該継ぎ目はU字形状或いはV字形状となるように構成されており、ここでは「V」或いは「U」の中間領域は、ガスバッグ内部の方に向いており(図4M、図4O)、或いはガスバッグ内部とは反対の方を向いている(図4P、図4Q)。この種の配置が再び開放パラメータを構成する。
【0049】
図4R及び図4Sでは、付加的な継ぎ目4r,4sは直線状に形成されており、流出開口3を完全に閉鎖する一方で、この構造ではガスバッグの外縁51に対して平行ではなく、当該外縁に対して所定の角度を形成して延在している。
【0050】
図4Tでは、互いに交差して直線状に延在する2つの付加的な継ぎ目4t,4tが設けられており、当該継ぎ目は図4R、図4Sの継ぎ目4r,4sに合致して延在している。
【0051】
図4Aから図4Tに示す付加的な継ぎ目は、図4Tが参照される実施例によって示されるように、如何なる組み合わせによっても実現可能である。
【0052】
本発明は、その構造が上述の実施形態に限定されるものではなく、単なる実施例として解されるべきである。例えば、流出開口を形成するための付加的な継ぎ目のこの種の中断を幾つかの別の方法で行うことができる。更に、本発明は、特定の種類のガスバッグに限定されるものではない。本発明にかかる解決策を、1チャンバー型の胸部用サイドエアバッグ、1チャンバー型の骨盤部及び胸部用サイドエアバッグ、1チャンバー型の頭部及び胸部用サイドエアバッグ、2チャンバー型の骨盤部及び胸部用サイドエアバッグ、2チャンバー型の頭部及び胸部用サイドエアバッグ、多チャンバー型の頭部、胸部及び骨盤部サイドエアバッグ、頭部用エアバッグ、運転者用エアバッグ、乗員エアバッグ、膝用エアバッグに使用することができ、また一般的には側面衝突において衝突面から離間して反対側に着座する乗員を保護するエアバッグ(いわゆる、「反対側エアバッグ」)に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両乗員拘束システムであって、外側継ぎ目(2)により縁部(2)に沿って互いに接続された少なくとも1つの第1布地層及び第2布地層を含み、ガスによって膨張可能なガスバッグ(1)と、前記ガスバッグ(1)からガスが流出可能な少なくとも1つの流出開口(2)と、
を備え、
前記流出開口(3)は、前記外側継ぎ目(2)が中断されることで形成され、
前記流出開口(3)の領域に少なくとも一部が前記流出開口(3)を閉鎖する少なくとも1つの付加的な継ぎ目(4;4a−4t)が設けられ、膨張過程の間に前記付加的な継ぎ目が開放されるように構成され、
前記外側継ぎ目(2)は、流出開口(3)を形成するために、当該外側継ぎ目が前記流出開口(3)の両側に隣接する前記ガスバッグ(1)の縁部(51)に対して実質的に垂直に延在する部位(21,22)を形成するように中断され、前記部位がそれぞれ前記ガスバッグ(1)の前記縁部(51)で終わるように構成されていることを特徴とする車両乗員拘束システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両乗員拘束システムであって、前記付加的な継ぎ目(4;4a−4t)は、膨張過程の間に所定の状態に達するまで当該付加的な継ぎ目が前記流出開口(3)を閉鎖する構成であることを特徴とする車両乗員拘束システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両乗員拘束システムであって、前記付加的な継ぎ目(4;4a−4t)は、拘束される車両乗員が前記ガスバッグと接触する前に当該付加的な継ぎ目が開放されるように構成されていることを特徴とする車両乗員拘束システム。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれか一項に記載の車両乗員拘束システムであって、前記流出開口(3)は、前記ガスバッグが拘束される車両乗員と、或いは侵入する車両構成要素と接触することで当該流出開口が閉鎖されないように、前記ガスバッグの前記付加的な継ぎ目(4;4a−4t)に配置されていることを特徴とする車両乗員拘束システム。
【請求項5】
請求項4に記載の車両乗員拘束システムであって、サイドガスバッグとして構成されたガスバッグにおいて、車両方向に関し前記ガスバッグの前側領域に前記流出開口(3)が形成されていることを特徴とする車両乗員拘束システム。
【請求項6】
請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の車両乗員拘束システムであって、前記流出開口(3)の領域に少なくとも1つの付加的な継ぎ目(4;4a−4t)が配置され、当該付加的な継ぎ目は、前記流出開口(5)の領域にて前記ガスバッグの外郭(51)に対して実質的に平行に延在していることを特徴とする車両乗員拘束システム。
【請求項7】
請求項1から6のうちのいずれか一項に記載の車両乗員拘束システムであって、前記流出開口(3)の領域に少なくとも1つの付加的な継ぎ目(4e)が配置され、当該付加的な継ぎ目は、前記流出開口(3)の領域にて前記ガスバッグの外郭(51)に対して実質的に垂直に延在していることを特徴とする車両乗員拘束システム。
【請求項8】
請求項1から7のうちのいずれか一項に記載の車両乗員拘束システムであって、前記付加的な継ぎ目(4;4a−4d,4n,4o,4r−4t)が前記流出開口(3)を完全に閉鎖していることを特徴とする車両乗員拘束システム。
【請求項9】
請求項1から8のうちのいずれか一項に記載の車両乗員拘束システムであって、前記付加的な継ぎ目(4e−4m,4p,4q)が前記流出開口(3)を部分的に閉鎖していることを特徴とする車両乗員拘束システム。
【請求項10】
請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の車両乗員拘束システムであって、前記付加的な継ぎ目(4;4a−4d,4f,4g,4j−4o,4r−4t)は、前記外側継ぎ目(2)と少なくとも一回交差していることを特徴とする車両乗員拘束システム。
【請求項11】
請求項1から10のうちのいずれか一項に記載の車両乗員拘束システムであって、前記ガスバッグの外郭(5,51)は、前記流出開口(3)の領域にて実質的に連続していることを特徴とする車両乗員拘束システム。
【請求項12】
請求項1から11のうちのいずれか一項に記載の車両乗員拘束システムであって、前記ガスバッグの外郭(5,51)は、前記流出開口(3)の領域にて実質的に直線状に構成されていることを特徴とする車両乗員拘束システム。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の車両乗員拘束システムであって、前記ガスバッグの外縁(51)は、前記流出開口(3)の領域に凹部又は窪みを備えていないことを特徴とする車両乗員拘束システム。
【請求項14】
請求項1から13のうちのいずれか一項に記載の車両乗員拘束システムであって、前記流出開口(3)は、前記ガスバッグの膨張状態において、実質的に円筒状の領域を形成することを特徴とする車両乗員拘束システム。
【請求項15】
請求項1から14のうちのいずれか一項に記載の車両乗員拘束システムであって、前記ガスバッグの内圧がOOP臨界になる前に前記付加的な継ぎ目(4;4a−4t)が開放されるように、前記付加的な継ぎ目(4;4a−4t)の強度が所定のOOP状況に適合されていることを特徴とする車両乗員拘束システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図4J】
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【図4K】
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【図4L】
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【図4M】
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【図4N】
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【図4O】
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【図4P】
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【図4Q】
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【図4R】
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【図4S】
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【図4T】
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【公表番号】特表2012−515113(P2012−515113A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545762(P2011−545762)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050567
【国際公開番号】WO2010/081909
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(594101503)タカタ・ペトリ アーゲー (146)
【Fターム(参考)】