説明

膨張力の増加した低アミロースデンプンを合成する遺伝子改変植物

本発明は、デンプンが5重量%未満の見掛け上のアミロース含量、およびデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性増加、およびグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性増加を有する、遺伝子改変した単子葉の植物細胞および植物に関する。そのような植物は、熱水膨張力の増加したデンプンを合成する。これらの植物細胞、植物、デンプン、および粉末の生成/調製のための方法および工程は、同様に本発明の主題である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デンプンが5重量%未満の見掛け上のアミロース含量、およびデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性増加、およびグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性増加を有する、遺伝子改変した単子葉の植物細胞および植物に関する。そのような植物は、熱水膨張力(hot-water swelling power)の増加したデンプンを合成する。これらの植物細胞、植物、デンプン、および粉末の生成/調製のための方法および工程は、同様に本発明の主題である。
【0002】
油、脂肪、およびタンパク質の他、多糖類は植物からの最も重要な再生可能資源である。デンプンは、高等植物において最も重要な貯蔵物質の1つであり、セルロースの他、多糖類において中心的な役割を果たす。
【0003】
さらに、デンプンは、ヒトおよび動物の食物の栄養学的に必須の成分である。食料中の存在するデンプンの構造的特色は、機能特性(例えば、水結合能、膨張力)、栄養学的特徴(例えば、消化性、グリセミック指数に及ぼす食料の効果)または非常に広範囲の食料の構造的特徴(例えば、薄切り性(sliceability)、質感、粘着性、加工性)に影響を与えうる。食品は、したがって、問題になっている食料の所望の特徴をもたらす特定の構造的特色を伴うデンプンを含むことが多い。また、植物組織中に存在するデンプンは、デンプン貯蔵植物組織を含む食料(例えば、子実、果実、粉末)の特徴に影響を与えうる。
【0004】
多糖類デンプンは、化学的に均一の単位、グルコース分子で構成された重合体である。しかし、それは、重合度、グルコース鎖の分枝の発生、および鎖長に関して異なる、異なる形状の分子の高度な複合混合物を構成し、それらはさらに、改変、例えばリン酸化されうる。デンプンは、したがって、均一な原料物質を構成しない。特に、アミロースとアミロペクチンの間で区別する。産業的なデンプン産生のために、または、例えば、トウモロコシ、米、コムギ、もしくはジャガイモなどの食料として使用される典型的な植物において、アミロースが合成されたデンプンの約20%−25%、アミロペクチンが約70%−80%を占める。
【0005】
デンプンの機能的、栄養学的、または構造付与の特徴、例えば、可溶性、劣化挙動、水結合能、皮膜形成能、粘性、ゼラチン化特性、凍解安定性、酸に対する安定性、ゲル強度、膨張力、消化性、デンプンのデンプン粒径は、とりわけ、アミロース/アミロペクチン比、グルコース重合体の分子量、側鎖の分布パターン、イオン含量、脂質およびタンパク質の含量および/またはデンプン粒の形態などのデンプンの構造的特色の影響を受ける。
【0006】
植物育種に基づく方法を使用して、植物細胞においてデンプンの選択された構造的特徴ひいてはデンプンの機能的、栄養学的、または構造付与の特徴を改変できる。しかし、現在、これはデンプンの選択された構造的特色(例えば、アミロペクチン/アミロース含量、米国特許第5,300,145号)についてのみ可能である。例えば、植物育種方法だけで植物中のデンプンリン酸含量に影響を与えることは現在可能ではない。
植物育種方法の代替物は、組み換え方法によるデンプン産生植物の標的改変である。しかし、そうすることの必要条件は、デンプン合成および/またはデンプン改変に関与する酵素の同定および特性付け、ならびに、トランスジェニック植物におけるその後のそれらの機能解析である。
【0007】
異なる反応を特性付ける様々な酵素が、植物細胞におけるデンプン合成に関与する。デンプンシンターゼ(EC2.4.1.21、ADPグルコース:1,4−アルファ−D−グルカン4−アルファ−D−グルコシルトランスフェラーゼ)は、ADPグルコースからアルファ−1,4−グルカンにグルコシル残基を転移することによって重合反応に触媒し、ここで転移したグルコシル残基は、アルファ1,4結合を生成することによってアルファ−1,4−グルカンに連結される。デンプンシンターゼのいくつかのアイソフォームが、今日までに研究された各々の植物において同定されている。デンプンシンターゼの2つのクラスを識別できる:顆粒結合デンプンシンターゼ(GBSS)および可溶性デンプンシンターゼ(本明細書に関連して、「SS」とも略す)。顆粒結合デンプンシンターゼはアミロース合成を触媒し、可溶性デンプンシンターゼはアミロペクチン合成に関与する(Ball and Morell, 2003, Annu. Rev, Plant Biol. 54, 207-233; Teltow et al., 2004, J. Expt. Bot. 55(406), 2131-2145)。可溶性デンプンシンターゼの群は、専門文献でSSI、SSII、SSIII、SSIV、およびSSVと呼ばれるいくつかのアイソフォームを有する。デンプンシンターゼの個々のアイソフォーム(SSI、SSII、SSIII、SSIV、SSV)への結び付けは、問題になっている酵素の各タンパク質配列との配列相同性により作られる(Ball and Morell, 2003, Annu. Rev, Plant Biol. 54. 207-233)。可溶性デンプンシンターゼの各々の個々のアイソフォームは、現在の教示に従って、それにデンプン合成における特定の機能を割り当てた。SSIタンパク質の1つのアイソフォームのみが双子葉植物において検出されており、SSIIタンパク質の2つの異なるクラスが一部の単子葉植物(例えば、トウモロコシ)において検出されており、それらはそれぞれSSIIaおよびSSIIbと呼ばれる。単子葉植物において、SSIIaは胚乳において優先的に発現され、SSIIbは葉組織において優先的に発現される(Teltow et al., 2004, J. Expt. Bot. 55(406): 2131-2145)。デンプン合成における特に個々の可溶性デンプンシンターゼの特定の機能は、現在完全には説明されていない(Ball and Morell, 2003, Annu. Rev, Plant Biol. 54: 207-233)。
【0008】
デンプンの機能的、栄養学的、または構造付与の特徴は、リン酸含量、すなわち非炭素成分の影響も受ける。ここで、(本発明に関連してデンプンリン酸と呼ばれる)モノエステルの形状でデンプングルコース分子に共有結合するリン酸と、デンプン会合リン脂質の形状のリン酸の間で識別しなければならない。
【0009】
デンプンリン酸含量は植物品種によって変動する。このように、例えば、特定のトウモロコシ変異体は、デンプンリン酸含量の増加した(0.002%のワクシートウモロコシ(waxy maize)および0.013%の高アミローストウモロコシ)デンプンを合成し、従来のトウモロコシ変種は微量のデンプンリン酸を含むだけである。同様に、少量のデンプンリン酸がコムギにおいて見出され(0.001%)、デンプンリン酸はオート麦およびモロコシ(Sorghum)において検出されなかった。ワキシー米変異体において、従来の米変種(0.013%)よりも少量の(0.003%)デンプンリン酸が見いだされた。相当量のデンプンリン酸が、塊茎または根の貯蔵デンプンを合成する植物、例えば、タピオカ(0.008%)、サツマイモ(0.011%)、アロールート(0.021%)、またはジャガイモ(0.089%)などにおいて検出された。デンプンリン酸含量について上で引用した割合は、各々の場合におけるデンプンの乾燥重量を指し、Janeら(1996, Cereal Foods World 41(11): 827-832)により測定されている。
【0010】
デンプンリン酸は、重合化グルコース単量体のC2、C3、またはC6位でモノエステルの形状で存在しうる(Takeda and Hizukuri, 1971, Starch/Staerke 23: 267-272)。植物により合成されたデンプン中のリン酸のリン酸塩分布は、一般に、グルコース分子のC3位においてリン酸残基の約30%から40%が、C6位においてリン酸残基の約60%から70%が共有結合するという事実により識別される(Blennow et al., 2000, Int. J. of Biological Macromolecules 27: 211-218)。Blennowら(2000, Carbohydrate Polymers 41: 163-174)は、様々なデンプン、例えば、ジャガイモデンプン(変種に依存して、デンプン1mg当たり7.8nmolと33.5nmolの間)、様々なウコン種からのデンプン(デンプン1mg当たり1.8nmolと63nmolの間)、タピオカデンプン(デンプン1mg当たり2.5nmol)、米デンプン(デンプン1mg当たり1.0nmol)、マングビーンデンプン(デンプン1mg当たり3.5nmol)、およびモロコシデンプン(デンプン1mg当たり0.9nmol)について、グルコース分子のC6位において結合するデンプンリン酸含量を測定した。これらの著者は、オオムギデンプンやトウモロコシの様々なワキシー変異体からのデンプンにおいて、C6位において結合したデンプンリン酸を検出しなかった。植物の遺伝子型とデンプンリン酸含量の間の関係はまだ確立されていない(Jane et al., 1996, Cereal Foods World 41(11): 827-832)。
【0011】
今日までに、デンプンのグルコース分子に対するリン酸残基の共有結合の導入を媒介する2つのタンパク質が記載されている。第1のタンパク質はアルファ−グルカン、水ジキナーゼの酵素活性を有し(GWD, E.C.: 2.7.9.4)(Ritte et al., 2002, PNAS 99: 7166-7171)、特に以前の科学文献においてR1と呼ばれることが多く、ジャガイモ塊茎中の貯蔵デンプンのデンプン顆粒に結合する(Lorberth et al., 1998, Nature Biotechnology 16: 473-477)。デンプン中へのデンプンリン酸の導入を触媒する、文献において記載される第2のタンパク質は、リン−グルカン、水ジキナーゼの酵素活性を有する(PWD, E.C.: 2.7.9.5)(Koetting et al., 2005, Plant Physiol.137: 2424-252, Baunsgaard et al., 2005, Plant Journal 41: 595-605)。
【0012】
GWDとPWDの間の1つの本質的な違いは、GWDが非リン酸化デンプンをその基質として利用できる、すなわち、非リン酸化デンプンのデノボリン酸化がGWDにより触媒されるが、PWDは既にリン酸化したデンプンをその基質として必要とする、すなわち、既にリン酸化したデンプンに追加のリン酸を導入する(Koetting et al., 2005, Plant Physiol.137: 2424-252, Baunsgaard et al., 2005, Plant Journal 41: 595-605)。GWDとPWDの間のさらなる本質的な違いは、GWDはデンプンのグルコース分子のC6位においてもっぱらリン酸基を導入するが、PWDはデンプンのグルコース分子のC3位をもっぱらリン酸化することである(Ritte et al., 2006, FEBS Letters 580: 4872-4876)。
【0013】
GWDまたはPWDにより触媒される反応において、出発物質であるそれぞれアルファ−1,4グルカン(GWDの場合)およびリン酸化アルファ−1,4−グルカン(PWDの場合)、アデノシン三リン酸(ATP)および水は、グルカンリン酸(デンプンリン酸)、無機リン酸およびアデノシン一リン酸に変換される(Koetting et al., 2005, Plant Physiol. 137: 2424-252; Ritte et al., 2002, PNAS 99: 7166-7171)。
【0014】
ジャガイモからのGWDコード化遺伝子の発現の結果としてGWDタンパク質の活性が上昇したコムギ植物が、国際公開第02/34923号において記載される。デンプンリン酸を検出できなかった対応する野生型植物と比較し、これらの植物はグルコース分子のC6位において相当量のデンプンリン酸でデンプンを合成する。
国際公開第05/002359号は、トウモロコシ植物におけるコドン使用について最適化されているジャガイモGWDのトウモロコシ植物における発現を記載する。31P NMRにより、問題になっているトウモロコシデンプンの(グルコース分子のC6、C3、およびC2位において結合する)グルコース量に基づいて0.0736%リン酸の総リン酸含量が測定された。分子量98がリン酸(HPO)について仮定される場合、デンプン1mg当たりのリン酸約7.5nmolの総リン酸含量は、国際公開第05/002359号において測定されている、トランスジェニックトウモロコシ植物から分離されたデンプンについて0.0736%の総リン酸含量となる。
シロイヌナズナからのPWDコード化遺伝子の発現の結果としてPWDタンパク質の活性増加を示す植物が、国際公開第05/095617号において記載される。対応する非形質転換の野生型植物と比較し、これらの植物は増加したデンプンリン酸含量を有する。
【0015】
重要な機能的特徴は、例えば、食品産業においてデンプンを加工する場合、膨張力である。アミロース/アミロペクチン比、側鎖長、デンプン重合体の分子量分布、分枝数およびデンプンリン酸の量などのデンプンの様々な構造的特徴が、機能的特徴、特に、問題になっているデンプンの膨張力に及ぼす影響を有する(Narayana and Moorthy, 2002, Starch/Starke 54: 559-592)。
【0016】
アミロースは、長い間、α−1,4−グリコシド結合したα−D−グルコース単量体から成る線状重合体と見なされてきた。しかし、最近の研究によってα−1,6−グリコシド分枝部位(約0.1%)の存在が実証されている(Hizukuri and Takagi, 1984, Carbohydr. Res. 134: 1-10; Takeda et al., 1984, Carbohydr. Res. 132: 83-92)。
【0017】
アミロペクチンは異なる分枝パターンを伴うグルコース鎖の複合混合物を構成する。アミロースとは対照的に、アミロペクチンはより多くの分枝を含む。側鎖はα−1,6−グリコシド結合を介してα−D−グルコース単量体の主鎖に結合され、それはα−1,4−グリコシド結合される。文献によれば(Voet and Voet, 25 1990. Biochemistry, John Wiley & Sons)、α−1,6−分枝は平均24から30グルコース残基毎に起こる。これは約3%−4%の分枝度に対応する。分枝度に関するデータは変動し、問題になっているデンプンの由来(例えば、植物種、植物変種など)に依存する。デンプンの工業生産のために使用される典型的な植物、例えば、トウモロコシ、コムギ、またはジャガイモなどにおいて、アミロースデンプンが合成されたデンプンの約20%−30%を占め、アミロペクチンデンプンが約70%−80%を占める。
【0018】
アミロースとアミロペクチンの間の別の重要な違いは、それらの分子量である。アミロースは、デンプンの由来に依存して、5x10−10Daの分子量を有するが、アミロペクチンの分子量は10Daと10Daの間である。2つの高分子は、それらの分子量およびそれらの異なる物理化学的特徴に基づき識別でき、これを可視化する最も単純な方法はそれらの異なるヨウ素結合特徴を介してである。
【0019】
多くの技術的用途ではアミロペクチンのみが必要とされるが、それはアミロペクチンが増粘作用を有するためである。アミロースはゼリー化作用を有し、したがって、多くの使途については多少望ましくない。純粋なアミロペクチンデンプンによって、高い粘性、安定性、および透過性と合わせて、非常に均一な表面構造を可能にする。これらのデンプンについて可能な用途は、製紙、接着剤工業、繊維工業、建築工業、および化粧品工業においてである。さらに、アミロペクチンデンプンは、アミロース含有デンプンから調製されるマルトデキストリンと比較し、水中でのそれらの可溶性、溶解への安定性、および透過性の増加の結果としてマルトデキストリンの調製物のために好ましい出発物質である。
食品工業において、アミロペクチンデンプンは、安定剤、結合剤として、および、質感を改良するために用いられる。アミロペクチンデンプンは、大きな温度変動が加工や仕上げ中に起こる加工階段の場合において特に有利である(例えば、凍結融解安定性)。
食品工業におけるアミロペクチンデンプンの使途は、特に(半)最終製品について増加する需要を考慮に入れて、増大している。
【0020】
GBSSI(「顆粒結合デンプンシンターゼI」)はアミロース形成に関与する。今日までに、顆粒結合デンプンシンターゼGBSSIの活性が低下した植物が記載されている(Shure et al., 1983, Cell 35: 225-233; Hovenkamp-Hermelink et al., 1987, Theoretical and Applied Genetics 75: 217-221; Visser et al., 1991, Mol. Gen. Genet. 225: 289-296; Hergersberg, 1988, Thesis, University of Cologne; 国際公開第92/11376号)。さらに、機能的GBSSI遺伝子を欠き、したがって、アミロース不含(=アミロペクチン)デンプンを合成する公知の変異体が存在する(Kossmann and Lloyd 2000, Critical Reviews in Plant Sciences, 19(3): 171-226)。トウモロコシの対応するGBSSI変異体の胚乳は外観がワキシー(waxy)であり、そのために「ワキシー(waxy)」胚乳という用語がアミロース不含デンプンの別名として導入された。
【0021】
デンプンの膨張力を記載する場合、冷水(例えば、室温)中での膨張力と温水または熱水中での膨張力の間を識別しなくてはならない。冷水中での天然デンプンの膨張力は、存在しない場合には無視できるが、物理的に改変された(前ゲル化、乾燥)デンプンは冷水中でさえ膨張できる。冷水膨張デンプンのための調製物方法は、例えば、米国特許第4,280,851号において記載される。本発明に関連して、「膨張力」という用語は温/熱水懸濁液中でのデンプンの挙動を指す。膨張力は、通例、過剰の水の存在下でデンプン顆粒を温め、懸濁液の遠心後の非結合水を除去し、得られた残留物の重量および計量したデンプンの量から商を得ることによって測定する。この手法を実施する場合、デンプン懸濁液を温めることによってデンプン顆粒の結晶領域が溶解され、水分子がデンプン顆粒自体の構造を溶解することなくデンプン顆粒に挿入され、すなわち、個々のデンプン顆粒の膨張だけが起こる。
【0022】
穀物からのデンプンと比較し、塊茎または塊茎様組織から単離されたデンプンは、大幅に高い熱水膨張力を有する。
様々な変種から単離されたジャガイモデンプンについて、85℃での74.15g/gの最大膨張力(変種Kufri Jyoti)が、Leachらの方法(1959, Cereal Chemistry 36: 534-544)を使用して測定されている(Singh et al., 2002, Journal of the Science of Food and Agriculture 82: 1376-1383)。Takizawaら(2004, Brazilian Archives of Biology and Technology 47(6): 921-931)は、ジャガイモデンプンについて100g/g(90℃、上記のLeachらの方法を使用)の膨張力を測定した。様々な品種から単離されたコムギデンプンは、16.6g/gから26.0g/gの膨張力を有する(温度:沸騰中の0.1% AgNO水性懸濁液)(Yamamori and Quynh, 2000, Theor Appl Genet 100: 23-38)。様々な品種の殻無しオオムギから単離されたデンプンは、16.5g/gまたは19.3g/gの膨張力を有し、様々な品種の前記のオオムギのワキシー−またはアミロース不含のデンプンは36.0g/gから55.7g/gの膨張力を有する(温度:70℃、0.1%水性AgNO、Yasui et al., 2002, Starch/Starke 54: 179-184)。トウモロコシデンプンについては22.3g/gの膨張力が、高アミローストウモロコシデンプンについては9.6g/g(Hylon V)、6.1g/g(Hylon VII)、または3.9g/g(LAPS=低アミロペクチンデンプン)の膨張力が測定されている(90℃、Shi et al., 1998, J. Cereal Sci. 27: 289-299)。米国特許第6,299,907号では、ワクシートウモロコシデンプンについて35.4g/gの膨張力を述べている。様々な米品種から単離されたデンプンについて、26.0g/gから33.2g/gの膨張力が、Leachらの方法(上記)を使用して測定されている(Sodhi and Singh, 2003, Food Chemistry 80: 99-108)。Chenら(2003. Starch/Staerke 55: 203212)は、高アミロース米デンプンを伴うワキシー−米デンプンの様々な混合物について約25g/gから約49g/g(95℃、水性懸濁液)の膨張力を測定した。Yasuiら(2002, Starch/Staerke 54: 179-184)は、アミラーゼ不含の米デンプンについて55.7g/gの膨張力(0.1%硝酸銀水溶液中で沸騰水において測定)を測定した。
天然デンプンの派生物を産生することにより、デンプンの機能的特徴を改変することが可能である。架橋結合したコムギデンプンは、架橋度に応じて、6.8g/gから8.9g/gの膨張力を有し、アセチル化したコムギデンプンは最大10.3g/gの膨張力を有し、同時に架橋結合およびアセチル化したコムギデンプンは9.4g/gの膨張力を有し、対応する非誘導体化デンプンは8.8g/gの膨張力を有する(90℃で測定;Van Hung und Morita, 2005, Starch/Staerke 57: 413-420)。
アセチル化したワキシー−米デンプンについて、約30g/gの膨張力、架橋結合したワキシー−米デンプンについては約15g/gの膨張力が測定されており、対応する非誘導体化ワキシー−米デンプンは約41g/gの膨張力を有していた。
アセチル化した米デンプンは約20g/gの膨張力を有し、架橋結合した米デンプンは約13g/gの膨張力を有し、対応する非誘導体化米デンプンは約14g/gの膨張力を有していた(90℃で測定、Liu et al., 1999, Starch/Staerke 52: 249252)。米国特許第6,299,907号は架橋結合したデンプンを記載し、ここでは、架橋結合反応は、水酸化ナトリウム/硫酸溶液中で問題になっているデンプンを前もって膨張させた後に実施された。架橋度に応じて、コムギデンプンは6.8g/gから7.3g/gの膨張力(対応する非誘導体化コムギデンプンは14.7g/g)、コムギヒドロキシプロピルデンプンは9.7g/gの膨張力(対応する非誘導体化コムギデンプンは22.9g/g)、架橋結合したトウモロコシデンプンは5.9g/gの膨張力(対応する非誘導体化トウモロコシデンプンは16.7g/g)、架橋結合したワキシー−トウモロコシデンプンは8.3g/gの膨張力(対応する非誘導体化ワキシー−トウモロコシデンプンは35.4g/g)、架橋結合したジャガイモデンプンは6.7g/gの膨張力(対応する非誘導体化ジャガイモデンプンは詳細に特定されなかった)を有することが見出された(95℃での測定値)。これは、現在の誘導体化方法により、デンプンの膨張力は、仮にあったとしても、実質的に増加できないことを明らかにする。
【0023】
本発明の目的は、機能的特徴の変化を伴う改変ワキシー−デンプン、ならびに機能的特徴の変化を伴うワキシー−デンプンを合成する新規の植物細胞および植物、ならびに前記の植物および/または植物細胞を生成するための方法および手段を提供することである。
特に、機能的特徴の変化は、改変デンプンが増加した熱水膨張力を有するという事実にある。
【0024】
このように、本発明は、デンプンが5重量%未満の見掛け上のアミロース含量を有し、ならびに、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞または対応する遺伝子改変していない野生型植物と比較し、追加でデンプンシンターゼIIの酵素活性を伴うタンパク質の活性増加、および、追加でグルカン、水ジキナーゼの酵素活性を伴うタンパク質の活性増加を有する遺伝子改変した単子葉植物細胞または遺伝子改変した単子葉植物に関する。
【0025】
これに関連して、遺伝改変は、5重量%未満のアミロースを伴うデンプンの合成、および同時に、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞または野生型植物と比較し、遺伝子改変した野生型植物細胞または野生型植物においてデンプンシンターゼIIの活性を伴う少なくとも1つのタンパク質の活性における増加、および(同時に)、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴う少なくとも1つのタンパク質の活性における増加を導く任意の遺伝子改変でありうる。
【0026】
本発明に関連して、「野生型植物細胞」という用語は、本発明の植物細胞の生成のための出発物質として作用する、すなわち、その遺伝情報が、導入された遺伝子改変を例外として、本発明の植物細胞のそれに対応する植物細胞を意味する。
【0027】
本発明に関連して、「野生型植物」という用語は、本発明の植物の生成のための出発物質として作用した、すなわち、その遺伝情報が、導入された遺伝子改変を例外として、本発明の植物のそれに対応する植物を意味する。
【0028】
本発明に関連して、「対応する」という用語は、いくつかの対象を比較する場合、互いに比較される問題になっている対象が同一の条件下で維持されることを意味する。本発明に関連して、野生型植物細胞または野生型植物に関連する「対応する」という用語は、互いに比較される植物細胞または植物が同一の培養条件下で生育された、同一の(培養)齢を有することを意味する。
【0029】
「単子葉植物」という用語は単子葉類を指す。植物学的に、それらは3分類の被子植物(マグノリオフィタ(Magnoliophyta))の1つに属する。双子葉植物とは対照的に、単子葉植物は、胚子が典型的に1つだけ子葉原基(ギリシャ語:monos=「単一」およびkotyledon=「子葉」)を有するという事実によって識別される。さらに、それらは維管束を覆っており、すなわち、師部および木部は分裂組織により分離されておらず、そのために茎の二次肥大が可能ではない。この植物分類として、とりわけ、カヤツリグサ目(Cyperales)およびイネ目(Poales)を伴うイネ科草本および多数の他の科が挙げられる。
【0030】
本発明に関連して、「デンプンシンターゼIIの(酵素)活性を伴う少なくとも1つのタンパク質の増加した活性」という用語は、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する内因性遺伝子の発現における増加および/または細胞においてデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の量における増加および/または細胞においてデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性における増加を意味する。
【0031】
本発明に関連して、「グルカン、水ジキナーゼの(酵素)活性を伴うタンパク質の活性増加」という用語は、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する内因性遺伝子の発現における増加および/または細胞においてグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の量における増加および/または細胞においてグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性における増加を意味する。
【0032】
発現における増加は、例えば、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質またはグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する転写物の量を測定することにより決定できる。これは、例えば、ノーザンブロット解析またはQ−PCR(定量的転写ポリメラーゼ連鎖反応)により行える。
【0033】
グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の量における増加は、これに関連して、好ましくは、対応する遺伝子改変されていない細胞と比較し、問題になっているタンパク質の量における少なくとも50%、特に少なくとも70%、好ましくは少なくとも85%、特に好ましくは少なくとも100%の増加を意味する。
グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の量における増加は、検出可能な量のグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質を含まない植物または植物細胞が、本発明の遺伝子改変後に、検出可能な量のグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質を含むことも意味する。
【0034】
特定のタンパク質に対して特異的に反応する、すなわち、前記タンパク質に対して特異的に結合する抗体を作製するための方法は、当業者に公知である(例えば、Lottspeich and Zorbas(Eds.), 1998, Bioanalytik, Spektrum akad, Verlag, Heidelberg, Berlin, ISBN 3-8274-0041-4を参照)。そのような抗体の作製は、いくつかの企業(例えば、Eurogentec、ベルギー)に依頼できる。グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の量における増加を免疫学的方法により決定できる抗体が、Lorberthら(1998, Nature Biotechnology 16: 473-477)およびRitteら(2000, Plant Journal 21: 387-391)により記載される。デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の量における増加を免疫学的方法により決定できる抗体が、Walter("Untersuchungen der Expression und Funktion der Staerkesynthase II(SSII)aus Weizen(Triticum aestivum)[Studies into the expression and function of starch synthase II(SSII)from wheat(Triticum aestivum)]", 博士論文、Faculty of Biology, University of Hamburg, ISBN 38265-8212-8)により記載される。
グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性の量は、例えば、文献(Mikkelsen et al., 2004. Biochemical Journal 377: 525-532; Ritte et al., 2002, PNAS 99: 7166-7171)において記載される通りに検出できる。
【0035】
デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性の量は、例えば、文献(Nishi et al., 2001, Plant Physiology 127: 459-472)において記載される通りに測定できる。デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性の量を測定するための好ましい方法が、「一般的方法」に記載される。
【0036】
好ましくは、本発明の植物細胞または本発明の植物は、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性を有し、それは、対応する遺伝子非改変野生型植物細胞または野生型植物と比較し、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも6倍だけ増加する。
【0037】
シンターゼIIの活性を伴うタンパク質の構成(ADP−グルコース:1,4−アルファ−D−グルカン4−アルファ−D−グルコシルトランスフェラーゼ;EC2.4.1.21)は、一連の特定ドメインを示す。N末端では、それらはプラスチドへの輸送のためのシグナルペプチドを有する。N末端からC末端に向かって、N末端領域および触媒ドメインが続く(Li et al., 2003. Funct Integr Genomics 3, 7685)。
デンプンシンターゼIIの活性を伴う様々なタンパク質のアミノ酸配列アライメント(http://hits.isbsib.ch/cgi-bin/PFSCAN)に基づくさらなる解析によって、これらのタンパク質が3つの特定ドメインを有することが明らかになった。配列番号4と示されるアミノ酸配列において、アミノ酸322から351はドメイン1を、アミノ酸423から462はドメイン2を、アミノ酸641から705はドメイン3を表す。
ドメイン1は配列番号3と示されるヌクレオチド配列のヌクレオチド1190から1279により、ドメイン2はヌクレオチド1493から1612により、ドメイン3はヌクレオチド2147から2350によりコード化される。
【0038】
本発明に関連して、「デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質」という用語は、基質ADP−グルコースのグルコース残基をアルファ−1,4−結合グルカン鎖に転移するグルコシル化反応を触媒し、アルファ−1,4−結合(ADP−グルコース{(1,4)−アルファD−グルコシル}(N)<=>ADP+{(1,4)−アルファ−D−グルコシル}(N+1))の形成を伴うタンパク質を意味すると解釈され、ここで、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号4で示されるアミノ酸配列のアミノ酸322から351(ドメイン1)と少なくとも86%、好ましくは少なくとも93%、特に好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%の同一性、および配列番号4で示されるアミノ酸配列のアミノ酸423から462(ドメイン2)と少なくとも83%、好ましくは少なくとも86%、特に好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%の同一性、および配列番号4で示されるアミノ酸配列のアミノ酸641から705(ドメイン3)と少なくとも70%、好ましくは少なくとも82%、好ましくは86%、特に好ましくは少なくとも95%、特に好ましくは少なくとも98%の同一性を有する。
核酸配列およびドメイン1、2、および3と前記の同一性を有し、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する対応するアミノ酸配列は、当業者に公知であり、例えば、Accession No AY133249(ホルデウム・ウルガレ(Hordeum vulgare))、Accession No AY133248(タルホコムギ(Aegilops tauschii))、Accession Nos XP467757、AAK64284(オリザ・サティバ(Oryza sativa))、Accession No AAK81729(オリザ・サティバ(Oryza sativa))、Accession Nos AAD13341、AAS77569、No AAD13342(ゼア・メイズ(Zea mays))、Accession No AAF13168(マニホット・エスクレンタ(Manihot esculenta))、Accession No BAD18846(ファセオラス・バルガリス(Phaseolus vulgaris))、Accession No CAA61241(ソラナム・ツベロサム(Solanum tuberosum))、Accession No CAA61269(ピスム・サティブム(Pisum sativum))、Accession No AAC19119(イポメア・バタタス(Ipomea batatas))、Accession No AAF 26156(アラビトプシス・サリアナ(Arabidopsis thaliana))、Accession No AAP41030(コロカシア・エスクレンタ(Colocasia esculenta))、Accession No AAS88880(オストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri))、またはAccession No AAC17970(クラミドモナス・ラインハーディ(Chlamydomonas reinhardII))として公表される。上記の核酸配列およびデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化するアミノ酸配列は、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/)でアクセス可能であり、参照により本出願の記載に明確に組み入れられる。
【0039】
本発明の目的のために、「グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質」という用語は、ATPからデンプンにβ−リン酸残基を転移するタンパク質を意味すると解釈される。シロイヌナズナsex1−3変異体の葉から単離されたデンプンは、検出可能な量の共有結合したリン酸残基を含まないが、しかし、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質によりインビトロでリン酸化される。これは、例えば、シロイヌナズナsex1−3変異体の葉から単離された非リン酸化デンプンが、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質により触媒されるリン酸化反応において基質として使用されることを意味する。
グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質は、グルコースのC6位においてデンプンにATPのベータ−リン酸残基を、および、水にATPのガンマ−リン酸残基を転移する。生成される別の反応産物はAMP(アデノシン一リン酸)である。グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質は、したがって、[アルファ1,4−グルカン]、水ジキナーゼ、あるいは、デンプン:水ジキナーゼとも呼ばれる(E.C.: 2.7.9.4; Ritte et al., 2002, PNAS 99: 7166-7171)。
【0040】
グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質により触媒されるデンプンのリン酸化によって、グルコース分子のC6位において追加のリン酸モノエステル結合が生じる(Ritte et al., 2006, FEBS Letters 580: 4872-4876)。グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質によるデンプンのリン酸化反応の触媒によって、ATPのベータ−リン酸残基がグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質のアミノ酸に共有結合した中間体リン酸化タンパク質が生じる(Ritte et al., 2002, PNAS 99, 7166-7171)。中間体は、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の自己リン酸化により形成され、すなわち、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質自体が中間体を導く反応を触媒する。グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化するアミノ酸配列は、ホスホヒスチジンドメインを含む。
ホスホヒスチジンドメインは、例えば、Tien-Shin Yuら(2001, Plant Cell 13, 1907-1918)により記載される。グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の自己リン酸化において、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化するアミノ酸配列のホスホヒスチジンドメイン中のヒスチジン残基はリン酸化される(Mikkelsen et al., 2004, Biochemical Journal 377: 525-532)。ソラナム・ツベロサムからのグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の、例えば配列番号2と示されるタンパク質配列において、アミノ酸1064から1075はホスホヒスチジンドメインを構成する。別のアミノ酸をホスホヒスチジンドメインの保存ヒスチジン残基(例えば、配列番号2で示されるタンパク質の配列中のアミノ酸1069)の代わりにする場合、突然変異タンパク質によるグルカンの自己リン酸化、およびそれによるリン酸化はもはや起こらない(Mikkelsen et al., 2004, Biochemical Journal 377: 525532)。
さらに、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質は、それが、例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列においてアミノ酸1121から1464により含まれるC末端ヌクレオチド結合ドメインを有するという事実によって識別される。ヌクレオチド結合ドメインの欠失は、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の不活化を導く(Mikkelsen und Blennow, 2005.Biochemical Journal 385, 355-361)。グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質は、それらのN末端に、配列番号2で示されるアミノ酸配列におけるアミノ酸78から362により含まれる炭水化物結合ドメイン(CBM)を有する。炭水化物結合ドメインは、とりわけ、それらのアミノ酸配列が保存トリプトファン残基を含むという事実により識別される。他のアミノ酸をこれらの保存アミノ酸残基の代わりにする場合、炭水化物結合ドメインはそれらのグルカン結合能力を失う。このように、例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列中のアミノ酸W139またはW194の置換は、この炭水化物結合ドメインの機能の喪失を導く。しかし、グルカン、水ジキナーゼの炭水化物結合ドメインが欠失される場合(例えば、アミノ酸1から362の欠失で、ここで配列番号2で示されるアミノ酸配列中のアミノ酸1から77がプラスチドシグナルペプチドを構成する)、これは酵素のリン酸化活性の不活化を導かない(Mikkelsen et al., 2006, Biochemistry 45: 4674-4682)。
【0041】
核酸配列およびグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化するそれらの対応するアミノ酸配列は、例えば、ジャガイモ(国際公開第97/11188号、GenBank Acc.: AY027522、Y09533)、コムギ(国際公開第00/77229号、米国特許第6,462,256号、GenBank Acc.: AAN93923、GenBank Acc.: AR236165)、米(GenBank Acc.: AAR61445、GenBank Acc.: AR400814)、トウモロコシ(GenBank Acc.: AAR61444、GenBank Acc.: AR400813)、大豆(GenBank Acc.: AAR61446、GenBank Acc.: AR400815)、柑橘類(GenBank Acc.: AY094062)、シロイヌナズナ(GenBank Acc.: AF312027)、および緑藻類オストレオコッカス・タウリ(GenBank Acc.: AY570720.1)などの異なる種から記載される。上記の核酸配列およびグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化するアミノ酸配列は、とりわけ、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/)により公表され、参照により本出願の記載に明確に組み入れられる。
【0042】
本発明に関連して、「GBSSI」という用語は、アイソフォームIの顆粒結合デンプンシンターゼ(EC2.4.1.21)の群に属する任意の酵素を意味すると解釈できる。
【0043】
本発明に関連して、「GBSSI−Gen」という用語は、顆粒結合デンプンシンターゼI(GBSSI)をコード化する核酸分子またはポリヌクレオチド(cDNA、DNA)を意味すると解釈される。配列番号7−12は、各々の場合において、米、コムギ、およびトウモロコシからのGBSSIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列またはアミノ酸配列を含む。
GBSSIをコード化するポリヌクレオチドは、様々な単子葉植物種、例えば、トウモロコシ(Genbank Acc. Nos. AF079260、AF079261)、コムギ(Genbank Acc. Nos. AB019622、AB019623、AB019624)、米(Genbank Acc. Nos. AF092443、AF092444、AF031162)、オオムギ(Genbank Acc. Nos. X07931、X07932)、モロコシ(Genbank Acc. No U23945)およびマカロニコムギ(Genbank Acc. No AB029063)などについて記載される。GBSSIの活性を伴うタンパク質をコード化する上記の核酸配列およびアミノ酸配列は、とりわけ、NCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/)により公表され、参照により本出願の記載に明確に組み入れられる。
【0044】
機能的GBSSI遺伝子に欠く変異体は、アミロース不含デンプン(= ワキシーデンプン)を合成する。そのような変異体は、一連の作物、例えば、トウモロコシ(例えば、Sprague et al., 1943, J. Am. Soc. Agron. 35: 817-822; Shure et al., 1983, Cell 35: 225-233)、米(Sano 1984, Theor. Appl. Genet. 68: 467-473; Villareal and Juliano 1986, Starch/Staerke 38: 118-119)、オオムギ(Rohde et al., 1988, Nucleic Acids Res 16: 7185-7186)、コムギ(Nakamura et al., 1995, Mol. Gen. Genet. 248: 253-259)、ジャガイモ(Hovenkamp-Hermelink et al., 1987, Theor. Appl. Genet. 75: 217-221)およびキビ(Okuno and Sakaguchi 1982, J. Hered 73: 467)について記載される。「ワキシー変異体」という用語は、トウモロコシにおいて、胚乳がワキシーの外観を有するという事実のため、同意語として使用される。GBSSIタンパク質は「ワキシータンパク質」とも呼ばれることが多い(Kossmann and Lloyd 2000 "Understanding and Influencing Starch Biochemistry", Critical Reviews in Plant Sciences, 19(3): 171-226)。
【0045】
本発明の植物細胞および植物の生成のための適当な植物細胞または植物は、それらにより合成されるデンプン中の見掛け上のアミロース含量の5重量%未満への低下を示すものである。
【0046】
本発明の一態様において、本発明の植物細胞または本発明の植物の遺伝子改変は、1または複数のGBSSI遺伝子の突然変異誘発によりもたらされる。突然変異の性質は、それがGBSSI活性の低下、または完全な減少、およびそれによる本発明の植物において存在するデンプンの見掛け上のアミロース含量の5重量%未満への低下をもたらす限り、重要ではない。
【0047】
本発明の植物細胞および植物においてGBSSI活性の低下およびデンプンの見掛け上のアミロース含量の5重量%未満への減少を導く突然変異が自然発生的に生じうるが、問題になっている植物は以下に記載の方法を活用して選択および繁殖できる。
【0048】
本発明の目的のために、「ワキシー変異体」は、デンプンが5重量%未満の見掛け上のアミロース含量を有する植物を意味すると解釈される。同様に、「ワキシーデンプン」は、5重量%未満の見掛け上のアミロース含量を伴うデンプンを指す。
【0049】
本発明に関連して、「突然変異誘発」という用語は、例えば、欠失、点突然変異(ヌクレオチド置換)、挿入、逆位、遺伝子変換または染色体転座などの導入された任意の種類の突然変異を意味すると解釈される。
【0050】
化学誘発性突然変異、および問題になっている突然変異原の効果の結果として、それにより得られた種類の突然変異を生成するために用いることのできる薬剤は、例えば、Ehrenberg & Husain(1981, Mutation Research 86: 1-113)およびMuller(1972, Biologisches Zentralblatt 91(1): 31-48)により記載される。ガンマ線、エチルメタンスルホン酸(EMS)、N−メチル−N−ニトロソ尿素、またはアジ化ナトリウム(NaN)を使用した米変異体の生成は、例えば、Jauhar & Siddiq(1999, Indian Journal of Genetics, 59(1): 23-28)、Rao(1977, Cytologica 42: 443-450)、Gupta & Sharma(1990, Oryza 27: 217-219)およびSatoh & Omura(1981, Japanese Journal of Breeding 31(3): 316-326)により記載される。NaNまたは無水マレイン酸を使用したコムギ変異体の生成は、Aroraら(1992, Annals of Biology 8(1): 65-69)により記載される。様々な種類の高エネルギー放射線および化学薬剤を使用したコムギ変異体の生成に関する総説が、Scarascia-Mugnozzaら(1993, Mutation Breeding Review 10: 1-28)により記載される。Svecら(1998, Cereal Research Communications 26(4): 391-396)は、ライコムギにおける変異体の生成のためのN−エチル−N−ニトロソ尿素の使用について記載する。キビ変異体の生成のためのMMS(メチルメタンスルホン酸)およびガンマ線の使用は、Shashidharaら(1990, Journal of Maharashtra Agricultural Universities 15(1): 20-23)により記載される。
【0051】
5重量%未満(=ワキシー植物またはワキシー植物細胞)の見掛け上のアミロース含量を伴うデンプンを合成する単子葉の植物細胞および植物も、公知の挿入突然変異誘発を使用することにより生成できる(総説:Thorneycroft et al., 2001, Journal of Experimental Botany 52(361): 1593-1601)。「挿入突然変異誘発」は、特にトランスポゾン、または公知のトランスファーDNA(T−DNA)の遺伝子内への挿入を意味すると解釈される。
【0052】
トランスポゾンは、(野生型)植物細胞において自然に生じるトランスポゾン(内因性トランスポゾン)、あるいは、前記細胞において自然に生じないが、例えば、細胞の形質転換などの組み換え方法により細胞中に導入されたトランスポゾン(異種トランスポゾン)の形をとりうる。トランスポゾンにより遺伝子の発現を改変することは、当業者に公知である。植物バイオテクノロジーにおけるツールとしての内因性および異種のトランスポゾンの利用に関する総説は、Ramachandran & Sundaresan(2001, Plant Physiology and Biochemistry 39, 234-252)において見出せる。特定の遺伝子がトランスポゾン挿入突然変異誘発により不活化された変異体を同定する可能性は、Maesら(1999, Trends in Plant Science 4(3), 90-96)による総説において見出せる。内因性トランスポゾンを活用した米変異体の生成は、Hirochika(2001, Current Opinion in Plant Biology 4, 118-122)により記載される。内因性レトロトランスポゾンを活用したトウモロコシ遺伝子の同定は、例えば、Hanleyら(2000, The Plant Journal 22(4), 557-566)において示される。レトロトランスポゾンを活用して変異体を生成する可能性および変異体を同定するための方法は、Kumar& Hirochika(2001, Trends in Plant Science 6(3), 127-134)により記載される。異なる種における異種トランスポゾンの活性は、双子葉植物および単子葉植物のいずれについても、例えば、米(Greco et al., 2001, Plant Physiology 125, 1175-1177; Liu et al., 1999, Molecular and General Genetics 262, 413-420; Hiroyuki et al., 1999, The Plant Joumal 19(5), 605613; Jeon and Gynheung, 2001, Plant Science 161, 211-219)、オオムギ(Koprek et al., 2000, The Plant Journal 24(2), 253-263)、アラビトプシス・サリアナ(Aarts et al., 1993, Nature 363,715-717, Schmidt and Willmitzer, 1989, Molecular and General Genetics 220, 17-24; Altmann et al., 1992, Theoretical and Applied Gentics 84, 371-383; Tissier et al., 1999, The Plant Cell 11, 1841-1852)、トマト(Belzile and Yoder, 1992, The Plant Journal 2(2), 173-179)、およびジャガイモ(Frey et aL, 1989, Molecular and General Genetics 217,172-177; Knapp et al., 1988, Molecular and General Genetics 213, 285-290)について記載されている。
【0053】
原理的に、単子葉「ワキシー」植物細胞および植物は、同種および異種のトランスポゾンのいずれの活用でも、植物ゲノムにおいて既に自然に存在するそれらのトランスポゾンも含む同種のトランスポゾンの使用により生成できる。原理的に、T−DNA突然変異誘発は、「ワキシー」植物細胞および植物を産生するために同様に適する。
【0054】
T−DNA挿入突然変異誘発は、アグロバクテリウム属からのTiプラスミドの特定のセグメント(T−DNA)を植物細胞のゲノムに組み込むことができるという事実に基づく。植物染色体中への組み込み部位は、一定ではなく、任意の部位で起こりうる。T−DNAが遺伝子機能を構成する染色体のセグメント中に組み込まれる場合、これは遺伝子発現の改変を導き、およびそれによる問題になっている遺伝子によりコード化されるタンパク質の活性の変化も導きうる。特に、遺伝子のコード領域中へのT−DNAの組み込みは、問題になっているタンパク質が、問題になっている細胞により、活性型では、または全く、合成できないことを意味することが多い。変異体の生成のためのT−DNA挿入物の使用は、例えば、アラビトプシス・サリアナ(Krysan et al., 1999, The Plant Cell 11, 2283-2290; Atipiroz-Leehan and Feldmann, 1997, Trends in Genetics 13(4), 152-156; Parinov and Sundaresan, 2000, Current Opinion in Biotechnology 11, 157-161)および米(Jeon and An, 2001, Plant Science 161, 211-219; Jeon et al., 2000, The Plant Journal 22(6), 561-570)について記載される。T−DNA挿入突然変異誘発を活用して生成された変異体を同定するための方法は、とりわけ、Youngら(2001, Plant Physiology 125, 513-518)、Parinovら(1999, The Plant cell 11, 2263-2270)、Thomeycroftら(2001, Journal of Experimental Botany 52, 1593-1601)、およびMcKinneyら(1995, The Plant Journal 8(4), 613-622)により記載される。
【0055】
対応する遺伝子における突然変異は、当業者には周知の方法を活用して見出せる。例えば、プローブとのハイブリダイゼーション(「サザンブロット」)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅、適当なゲノム核酸断片のシークエンシング、および個々のヌクレオチド置換の探索に基づく分子解析を用いることが可能である。ハイブリダイゼーションパターンを活用した突然変異の同定方法の例は、制限断片長多型(RFLP)の探索である(Nam et al., 1989, The Plant Cell 1: 699-705; Leister and Dean, 1993, The Plant Journal 4(4): 745-750)。PCRを用いた方法は、例えば、増幅断片長多型(AFLP)の解析である(Castiglioni et al., 1998, Genetics 149: 2039-2056; Meksem et al., 2001, Molecular Genetics and Genomics 265: 207-214; Meyer et al., 1998, Molecular and General Genetics 259: 150-160)。制限エンドヌクレアーゼで切断された増幅断片(「切断増幅多型配列(cleaved amplified polymorphic sequences)」、CAPS)の使用は、突然変異を同定するさらなる可能性である(Konieczny and Ausubel, 1993, The Plant Journal 4: 403-410; Jarvis et al., 1994, Plant Mol. Biol. 24: 685-687; Bachem et al., 1996, The Plant Journal 9(5): 745-753)。SNPを決定する方法は、とりわけ、Qiら(2001, Nucleic Acids Research 29(22): 116)、Drenkardら(2000, Plant Physiology 124: 1483-1492)およびChoら(1999, Nature Genetics 23: 203-207)により記載されている。特に適当な方法は、短期間内に特定の遺伝子における突然変異について多数の植物を研究可能にするものである。そのような方法は、TILLING(「ゲノム誘導局所傷害標的化(targeting induced local lesions in genomes)」)として知られ、McCallumら(2000, Plant Physiology 123: 439-442)により記載されている。
【0056】
当業者は、上記の突然変異が、通例、劣性突然変異であることを知っている。ワキシー表現型を現すために、したがって、純粋種(ホモ接合)の植物細胞または植物を生成することが必要である。純粋種の植物を生成する方法は当業者に公知である。
【0057】
ホモ接合「ワキシー」変異体は、デンプンをヨウ素で染色することにより同定できる。この目的のために、デンプンを含む組織サンプル(例えば、胚乳、花粉)をヨウ素溶液で染色し、例えば、顕微鏡下で研究する。ワキシーデンプンは、(野生型の青色染色と比較して)茶色に染色される。
【0058】
本発明のさらなる態様において、1または複数の外来の核酸分子/ポリヌクレオチドの導入、1または複数の外来の核酸分子/ポリヌクレオチドのそれらの存在および/または発現は、GBSSIタンパク質をコード化する内因性遺伝子の発現の抑制、および本発明の植物細胞または本発明の植物において存在するデンプンの見掛け上のアミロース含量の5重量%未満への減少を導く。
【0059】
これは当業者に周知の様々な方法により行うことができる。これらの方法として、例えば、適当なアンチセンスRNA、または二本鎖RNAの発現、同時抑制効果を付与する分子またはベクターの供給、GBSSIをコード化する転写物を特異的に切断する適切に構築されたリボザイムの発現、または公知の「インビボ突然変異誘発」が挙げられる。さらに、植物細胞におけるGBSSI活性/活性群の低下および/またはGBSSI遺伝子の遺伝子発現の低下は、抑制される特定の標的遺伝子、好ましくはGBSSI遺伝子のセンスよびアンチセンスのRNA分子の同時発現によりもたらすこともできる。
これらの方法は当業者に公知である。
【0060】
また、トランスのプロモーター配列の二本鎖RNAの形成によって、植物体におけるこのプロモーターの相同コピーのメチル化および転写不活化がもたらされることは公知である(Mette et al., 2000, EMBO J. 19: 51945201)。
【0061】
アンチセンスまたは同時抑制技術により遺伝子発現を抑制するために、例えば、存在する任意の隣接配列を含むGBSSIコード配列のすべてを含むDNA分子、あるいはコード配列の一部のみを含むDNA分子を用いることが可能であり、ここで、これらの部分は細胞においてアンチセンス効果または同時抑制効果をもたらすために十分に長くなければならない。最小長15bp、好ましくは最小長20−30bp、特に好ましくは長さ100−500bpの配列、および、高効率なアンチセンスまたは同時抑制のためには、特に500bpを超える長さの配列が一般的に適切である。
植物細胞において存在し、GBSSIをコード化する内因性配列と高い程度の同一性を伴うポリヌクレオチドの使用もアンチセンスまたは同時抑制のアプローチのために適切である。最小同一性は約65%より高くなければならない。少なくとも90%、特に95%と100%の間の同一性を伴う配列の使用が好ましい。
アンチセンス効果または同時抑制効果を得るために、イントロン、すなわちGBSSIをコード化する遺伝子の非コード領域を使用することもさらに実現可能である。
【0062】
デンプン生合成タンパク質をコード化する遺伝子の発現を抑制するためのイントロン配列の使用は、国際公開第97/04112号、国際公開第97/04113号、国際公開第98/37213号、国際公開第98/37214号において記載されている。
【0063】
当業者は、いかにアンチセンス効果および同時抑制効果を得るのかを知っている。同時抑制の方法は、例えば、Jorgensen(1990, Trends Biotechnol. 8: 340-344)、Niebelら(1995, Top. Microbiol. Immunol. 197: 91-103)、Flavellら(1995, Curro Top. Microbiol. Immunol. 197: 4346)、Palauqui&Vaucheret(1995, Plant Mol. Biol. 29: 149-159)、Vaucheret ら(1995, Mol. Gen. Genet. 248: 311-317)、de Borne ら(1994, Mol. Gen. Genet. 243: 613-621)により記載されている。
【0064】
さらに、植物細胞におけるGBSSI活性の低下は、抑制される特定の標的遺伝子、好ましくはGBSSI遺伝子のセンスよびアンチセンスのRNA分子の同時発現によりもたらすこともできる。これは、例えば、問題になっている標的遺伝子または標的遺伝子の一部の「逆方向反復」を含むキメラコンストラクトを使用することにより達成できる。キメラコンストラクトは、問題になっている標的遺伝子のセンスおよびアンチセンスのRNA分子をコード化する。センスおよびアンチセンスのRNAは、1つのRNA分子として植物体において同時に合成され、センスおよびアンチセンスのRNAをスペーサーにより互いに分離し、二本鎖RNAを形成することが可能である(RNAi技術)。
【0065】
逆方向反復DNAコンストラクトの植物ゲノム中への導入は、逆方向反復DNAコンストラクトに対応する遺伝子を抑制するための高効率の方法であることが実証されてきた(Waterhouse et al., 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 13959-13964; Wang and Waterhouse, 2000, Plant Mol. Biol. 43, 67-82; Singh et al., 2000, Biochemical Society Transactions 28(6), 925- 927; Liu et al., 2000, Biochemical Society Transactions 28(6), 927-929; Smith et al., 2000, Nature 407, 319-320; 国際公開第99/53050号)。標的遺伝子、または標的遺伝子群のセンスおよびアンチセンスの配列は、同一の、または、異なるプロモーターにより互いに別々に発現することもできる(Nap et al., 6th International Congress of Plant Molecular Biology, 18-24 June 2000, Quebec, Poster 57-27, Lecture Session 57)。
【0066】
細胞において特定の酵素の活性を低下するためのリボザイムの発現も当業者に公知であり、例えば、欧州特許第B10321201号において記載される。植物細胞におけるリボザイムの発現は、例えば、Feyter ら(1996, Mol. Gen. Genet. 250: 329-338)により記載されている。
【0067】
その上、GBSSI活性の低下および/または植物細胞において存在するデンプンの見掛け上のアミロース含量の5重量%未満への低下は、公知の「インビボ」突然変異誘発により達成することもでき、ここで、RNA−DNAオリゴヌクレオチドハイブリッド(「キメラプラスト」)は形質転換細胞により細胞中に導入される(Kipp et al., Poster Session at the 5th International Congress of Plant Molecular Biology, 21-27 September 1997, Singapore; R. A. Dixon and C. J. Arntzen, Meeting report regarding Metabolic Engineering in Transgenic Plants, Keystone Symposia, Copper Mountain, CO, USA, 1997, TIBTECH 15: 441-447; 国際公開第95/15972号; Kren et al., 1997, Hepatology 25: 1462-1468; Cole-Strauss et al., 1996, Science 273: 1386-1389; Beetham et al., 1999, PNAS 96: 8774-8778)。
【0068】
RNA−DNAオリゴヌクレオチドのDNA成分の一部は、内因性GBSSI遺伝子のポリヌクレオチド配列と相同であるが、しかし、内因性GBSSI遺伝子のポリヌクレオチド核酸配列と比較した突然変異を含む、または、相同領域により囲まれた異種領域を含む。RNA−DNAオリゴヌクレオチドおよび内因性ポリヌクレオチドの相同領域の塩基対合、それに続く相同組み換えのため、RNA−DNAオリゴヌクレオチドのDNA成分において存在する突然変異または異種領域を植物細胞のゲノム中へ移行できる。
【0069】
このように、植物細胞におけるGBSSI活性の低下は、GBSSI遺伝子の二本鎖RNA分子を生成することにより達成することもできる。この目的のために、植物ゲノム中へ、GBSSI遺伝子により形成されるヌクレオチド配列またはそのような遺伝子により形成されるcDNAに由来するDNA分子の逆方向反復を導入することが好ましく、ここで、転写されるDNA分子は前記RNA分子の発現を支配するプロモーターの制御下にある。
【0070】
植物細胞または植物においてタンパク質の活性を低下するさらなる可能性は、公知の免疫調節方法である。植物タンパク質を特異的に認識する抗体の植物体における発現は、タンパク質/抗体複合体の形成の結果として、対応する植物細胞または植物における前記タンパク質の活性の低下を招く(Conrad and Manteufel, 2001, Trends in Plant Science 6: 399-402; De Jaeger et al., 2000, Plant Molecular Biology 43: 419-428; Jobling et al., 2003, Nature Biotechnology 21: 77-80)。
【0071】
すべての上記の方法は、1または複数の外来核酸分子の植物細胞または植物のゲノム中への導入に基づき、したがって、原理的に、本発明の植物細胞または本発明の植物の生成のために適する。
【0072】
発現の低下は、例えば、問題になっている酵素をコード化する転写物の量を、例えば、ノーザンブロット解析または定量的RT−PCRにより測定することにより決定できる。GBSSIタンパク質の量の低下は、例えば、ウェスタンブロット解析、ELISA(「酵素結合免疫測定法」)、またはRIA(「ラジオイムノアッセイ」)などの免疫学的方法により決定できる。
【0073】
本発明の植物細胞、または植物中のGBSSI活性における低下は、GBSSIタンパク質の反応産物であるアミロースの定量を経て間接的に検出することもできる。当業者は、植物デンプン中のアミロース含量を決定するための非常に多くの方法を知る。穀物、特に米について、見掛け上のアミロース含量は、好ましくは、「材料と方法」の章において以下でさらに記載する、Juliano(1971, Cereal Science Today 16(10): 334-340)の方法と同様の方法により測定される。
【0074】
本発明の植物細胞または本発明の植物を生成するためのさらなる態様において、野生型植物細胞または野生型植物の代わりに、見掛け上のアミロース含量が5重量%未満のデンプンを既に合成しており、および/または、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性増加、および/または、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性増加を有するという事実により識別される変異体を使用することが可能である。これらの変異体は、自然発生的に生じる変異体、あるいは突然変異原の標的使用により生成された変異体のいずれかでありうる。そのような変異体を生成する可能性が、以上に記載されている。
【0075】
本発明は、さらに、本発明の遺伝子改変した単子葉の植物細胞または植物を含み、その遺伝子改変は少なくとも1つの外来核酸分子の形質転換のために使用する植物のゲノム中への導入にある。
【0076】
外来核酸分子の導入の結果として、本発明の植物細胞または本発明の植物の遺伝情報が変化する。少なくとも1つの外来核酸分子の存在は、「表現型」の変化を導く。ここで、「表現型の変化」は、1または複数の細胞機能の測定可能な変化を意味する。例えば、本発明の遺伝子改変植物細胞および本発明の遺伝子改変植物は、導入されている外来核酸分子の存在の結果として、またはそれが発現する場合、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性における増加、および、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性における増加、および/または、GBSSIの活性を伴うタンパク質の活性における低下を示す。
【0077】
本発明に関連して、「外来核酸分子」という用語は、形質転換のために使用される植物細胞において自然に生じない、または、形質転換のために使用される植物細胞において特定の空間的配置において自然に生じない、または、自然に生じない形質転換のために使用される植物細胞のゲノム中の遺伝子座に位置する分子を意味すると解釈される。外来核酸分子は、好ましくは、様々なエレメントから成る組み換え分子であり、それらの組み換えまたは特定の空間的配置は植物細胞において自然に生じない。このように、組み換え核酸分子は、例えば、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質および/またはデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸分子、および/またはGBSSIの活性における低下をもたらす核酸の他、上記の核酸分子との組み合わせで自然に存在しない追加の核酸配列を有しうる。グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質および/またはデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸分子、および/または、GBSSIの活性を伴うタンパク質の活性における低下を媒介するために適切である核酸との組み合わせで組み換え核酸分子に存在する上記の追加の核酸配列は、任意の配列でありうる。それらは、例えば、ゲノムおよび/または植物核酸配列でありうる。好ましくは、これらの追加の核酸配列は、制御配列(プロモーター、終結シグナル、エンハンサー)、特に好ましくは植物細胞において活性である制御配列;特に好ましくは組織特異的制御配列である。
【0078】
組み換え核酸分子を生成する方法は、当業者に公知であり、例えば、ライゲーションによる核酸分子の結合、核酸分子の遺伝子組み換えまたはデノボ合成などの遺伝子操作方法を含む(例えば、Sambrok et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd edition(2001)Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring Harbour, NY, ISBN: 0879695773; Ausubel et al., Short Protocols in molecular Biology, John Wiley & Sons; 5th edition(2002), ISBN: 0471250929を参照)。
【0079】
本発明に関連して、「ゲノム」という用語は、植物細胞中に存在する遺伝物質全体を意味すると解釈される。当業者は、核のみならず、他のコンパートメント(例えば、プラスチド、ミトコンドリア)も遺伝物質を含むことを知る。
【0080】
原理的に、外来核酸分子は、植物細胞または植物において、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質およびデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性における増加、および、GBSSIの活性を伴うタンパク質の活性における低下をもたらす任意の核酸分子でよい。
【0081】
好ましい態様において、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する外来核酸分子は、様々な植物種からの既述の核酸分子の形をとり、その核酸分子は当業者に公知である。ジャガイモからのグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸分子がこれに関連して特に好ましく、配列番号2において示すアミノ酸配列を有するグルカン、水ジキナーゼの活性を伴う、または、配列番号1において示す核酸配列によりコード化されるタンパク質が特に好ましい。
【0082】
さらに好ましい態様において、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する外来核酸分子は、様々な植物種からの既述の核酸分子の形をとり、その核酸分子は当業者に公知である。コムギからのデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸分子がこれに関連して特に好ましく、配列番号4において示すアミノ酸配列を有するデンプンシンターゼIIの活性を伴う、または、配列番号3において示す核酸配列によりコード化されるタンパク質が特に好ましい。さらなる好ましい態様は、米からのデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質、特に好ましくは配列番号6において示すアミノ酸配列を有するデンプンシンターゼIIの活性を伴う、または、配列番号5において示す核酸配列によりコード化されるタンパク質をコード化する核酸分子の形をとる。
【0083】
さらに好ましい態様において、GBSSIの活性を伴うタンパク質をコード化する外来核酸分子は、様々な植物種からの既述の核酸分子の形をとり、その核酸分子は当業者に公知である。米からのGBSSIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸分子がこれに関連して特に好ましく、配列番号8において示すアミノ酸配列を有するGBSSIの活性を伴う、または、配列番号7において示す核酸配列によりコード化されるタンパク質が特に好ましい。
さらなる好ましい態様は、コムギからのGBSSIの活性を伴うタンパク質、特に好ましくは配列番号10において示すアミノ酸配列を有するGBSSIの活性を伴う、または、配列番号9において示す核酸配列によりコード化されるタンパク質をコード化する核酸分子の形をとる。
【0084】
さらなる好ましい態様は、トウモロコシからのGBSSIの活性を伴うタンパク質、特に好ましくは配列番号12において示すアミノ酸配列を有するGBSSIの活性を伴う、または、配列番号11において示す核酸配列によりコード化されるタンパク質をコード化する核酸分子の形をとる。
【0085】
さらなる態様において、本発明の植物細胞および植物は、ワキシー突然変異についてホモ接合であり、それにより見掛け上のアミロース含量が5重量%未満であるデンプンを合成する。
【0086】
本発明に関連して、「ワキシー突然変異についてホモ接合」という用語は、植物が非機能的GBSSI遺伝子の純種を育てることを意味すると解釈される。当業者には、ホモ接合性は細胞の遺伝物質内において特定の形質に関するすべての対立遺伝子が同一である、すなわち、特定の遺伝子の2またはそれ以上の同一コピーが染色体の2つのクロマチドに存在し、そのクロマチドが遺伝子を含むことを意味する。それらはこの遺伝子についてホモ接合であり(=純種を育てる)、自家受粉した場合、問題になっている形質をすべての子孫に伝える。当業者は、倍数植物、例えば、コムギが、特定の状況下で、ワキシー表現型を現すために、(サブゲノムA、B、およびDにおいて)ホモ接合型の3つの非機能的GBSSI対立遺伝子を必要としうることを知る。
【0087】
遺伝子改変の目的のために植物細胞または植物中に導入されたワキシー表現型を現す外来核酸分子は、単一の核酸分子または複数の核酸分子の形をとりうる。それらは、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列およびデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列を含む核酸分子の形をとりうるが、しかし、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列およびデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列も異なる核酸分子に存在する。例えば、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列およびデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列が、ベクター、プラスミド、または線状核酸分子において同時に存在しうる(「二重コンストラクト」)、あるいは、各々の場合において別々である2つのベクター、プラスミド、または線状核酸分子の成分でありうる。
【0088】
グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列およびデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列が2つの別々の核酸分子において存在する場合、それらは植物細胞または植物のゲノム中に同時に(「同時形質転換」)、あるいは、順々に、すなわち経時的な間隔を伴い(「超形質転換(supertransformation)」)導入できる。別々の核酸分子は、異なる個々の植物細胞種または植物種に導入することもできる。それによって、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴う少なくとも1つのタンパク質、あるいは、デンプンシンターゼIIの活性を伴う少なくとも1つのタンパク質のいずれかの活性が上昇した植物細胞または植物を生成することが可能である。次に、本発明の植物は、続いてグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性が上昇したそれらの植物をデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性が上昇したものと交雑することにより生成できる。問題になっている工程工程において使用される植物の選択のためのパラメーターを以下でさらに定義する。
【0089】
さらなる態様において、本発明の植物細胞または植物のワキシー表現型は、GBSSI活性を低下させるために適切な1または複数の組み換え核酸分子を導入することによりもたらされる。
【0090】
遺伝子改変の目的のために野生型の植物細胞または植物中に導入される外来核酸分子は、単一の核酸分子または複数の核酸分子の形をとりうる。それらは、したがって、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列およびデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列および追加でGBSSI活性の活性を抑制するために適切である核酸配列を含む核酸分子の形をとりうる(三重コンストラクト)。同様に、それらは、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列およびデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列が異なる核酸分子に存在し、ここで、これらの2つの核酸分子の1つまたはその他がGBSSI活性の活性を抑制するために適切である核酸配列を追加で含む、核酸分子の形もとりうる。あるいは、それらは、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列およびデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列が1つの核酸分子に存在し、および、GBSSI活性を抑制するために適切である核酸分子が異なる核酸分子に存在する、核酸分子の形もとりうる(1つの二重コンストラクトと1つの単純コンストラクトの3つの変種)。
【0091】
さらなる態様において、それらは、3つの異なる核酸分子の形もとりうるが、ここで、1つがグルカン、水ジキナーゼをコード化する核酸配列を含み、別の1つがデンプンシンターゼIIをコード化する核酸配列を含み、さらに1つがGBSSI活性を抑制するために適切である核酸配列を含む(3つの単純コンストラクト)。
本発明の植物細胞または植物を生成するために適切である核酸分子は、例えば、ベクター、プラスミド、または線状核酸分子において存在しうる。
【0092】
本発明の植物細胞または植物の生成のために使用されるコンストラクトが2または3の別々の核酸分子において存在する場合、それらは植物細胞または植物のゲノム中に同時に(「同時形質転換」)、あるいは、順々に、すなわち経時的な間隔を伴い(「超形質転換」)導入できる。別々の核酸分子は、異なる個々の植物細胞種または植物種に導入することもできる。それによって、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴う少なくとも1つのタンパク質および/またはデンプンシンターゼIIの活性を伴う少なくとも1つのタンパク質の活性が上昇し、および/または、GBSSI活性の活性を伴う少なくとも1つのタンパク質が、植物細胞または植物により合成されたデンプンが5重量%未満の見掛け上のアミロース含量を有する程度にまで低下する、植物細胞または植物を生成することができる。次に、本発明の植物は、続いて植物を交雑することにより生成できる。
【0093】
さらに、GBSSIの(酵素)活性を伴う少なくとも1つのタンパク質の活性は、植物細胞または植物により合成されたデンプンが5重量%未満の見掛け上のアミロース含量を有する程度にまで低下され、それは、さらなる工程において、デンプンシンターゼIIの活性を伴う少なくとも1つのタンパク質の活性が上昇した植物と交配することにより、本発明の植物細胞または植物を導く植物を生成することも可能である。
【0094】
植物細胞においてグルカン、水ジキナーゼおよび/またはデンプンシンターゼIIの活性を伴う少なくとも1つのタンパク質の活性を増加し、細胞により合成されたデンプンが5重量%未満の見掛け上のアミロース含量を有する程度にまで植物細胞においてGBSSIの活性を低下するために適切な核酸配列を含む1または複数の核酸分子が、1つの方法工程において/同時に植物細胞のゲノム中に導入される事象において、本発明の植物は形質転換が生じる植物の間で直接的に選択されうる。
【0095】
さらなる態様において、本発明の植物細胞および本発明の植物は、少なくとも1つの外来核酸分子がデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化し、第2の外来核酸分子がグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化することを含む。さらなる態様において、本発明の植物の本発明の植物細胞は、第1の外来核酸分子がグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化し、第2の外来核酸分子がデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化することを含む。
【0096】
非常に多くの技術が、DNAを植物宿主細胞に導入するために利用可能である。これらの技術は、形質転換剤としてアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を使用したT−DNAでの植物細胞の形質転換、プロトプラストの融合、インジェクション、DNAのエレクトロポレーション、遺伝子銃アプローチによるDNAの導入、および他の可能性を含む。植物細胞のアグロバクテリウム媒介性の形質転換の使用は、集中的に研究されており、とりわけ、欧州特許第120516号; Hoekema(The Binary Plant Vector System, Offsetdrukkerij Kanters B. V. Alblasserdam(1985), Chapter V);Fraley et al., Crit. Rev. Plant Sci. 4: 1-46)およびAnら(1985, EMBO J. 4: 277-287)において記載されている。
【0097】
アグロバクテリウム形質転換に基づくベクターによる単子葉植物の形質転換も記載されている(Chan et al. 1993, Plant Mol. Biol. 22: 491-506; Hiei et al., 1994, Plant J. 6, 271-282; Deng et al., 1990, Science in China 33: 28-34; Wilmink et al., 1992, Plant Cell Reports 11: 76-80; May et al., 1995, Bio/Technology 13: 486-492; Conner and Domisse, 1992, Int. J. Plant Sci. 153: 550-555; Ritchie et al., 1993, Transgenic Res. 2: 252-265)。単子葉植物の形質転換のための代替法は、遺伝子銃アプローチによる形質転換(Wan and Lemaux, 1994, Plant Physiol. 104: 37-48; Vasil et al., 1993, Bio/Technology 11 : 1553-1558; Ritala et al., 1994, Plant Mol. Biol. 24: 317325; Spencer et al., 1990, Thear. Appl. Genet. 79: 625-631)、プロトプラストの形質転換、部分的透過性細胞のエレクトロポレーション、またはガラス繊維によるDNAの導入である。特にトウモロコシの形質転換が文献において繰り返し記載される(例えば、国際公開第95/06128号、欧州特許第0513849号、欧州特許第0465875号、欧州特許第0292435号; Fromm et al., 1990, Biotechnology 8: 833-844; Gordon-Kamm et al., 1990, Plant Cell 2: 603-618; Koziel et al., 1993, Biotechnology 11: 194-200; Moroc et al.,1990, Thear. Appl. Genet. 80: 721-726を参照)。
他の穀物種の形質転換のこの成功も、例えば、オオムギ(Wan and Lemaux, s.o.; Ritala et al., s.o.; Krens et al., 1982, Nature 296: 72-74)およびコムギ(Nehra et al., 1994, Plant J. 5: 285-297; Becker et al., 1994, Plant Journal 5: 299-307)の場合において記載されている。すべての上記の方法が、本発明の範囲内において適切である。
【0098】
デンプンが5重量%未満のアミロース含量を有し、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する遺伝子および/またはデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する遺伝子の導入の結果として遺伝子改変した植物細胞および植物は、とりわけ、それらが野生型植物細胞または野生型植物において自然に生じない少なくとも1つの外来核酸分子を含むという事実により、または、そのような分子が、それが野生型植物細胞または野生型植物、すなわち、異なるゲノム環境において生じない、本発明の植物細胞のゲノムまたは本発明の植物のゲノムにおける位置に存在するという事実により識別できる。さらに、そのような本発明の植物細胞または本発明の植物は、それらに、それらのゲノムに安定的に組み込まれた少なくとも1コピーの外来核酸分子が、該当する場合に野生型植物細胞または野生型植物において自然に存在するそのような分子のコピーに加えて含まれるという事実により、野生型植物細胞または野生型植物から識別できる。本発明の植物細胞または本発明の植物に導入されている外来核酸分子が、野生型植物細胞または野生型植物において自然に生じる分子の他、追加コピーの形をとる場合、本発明の植物細胞および本発明の植物は、特に、この追加コピーまたはこれらの追加コピーが、野生型植物細胞または野生型植物においてそれが生じない、または、それらが生じないゲノム中の位置に位置するという事実により、野生型植物細胞または野生型植物から識別できる。これは、例えば、サザンブロット解析を活用して実証できる。
【0099】
本発明の植物細胞または本発明の植物は、さらに、好ましくは、以下の特徴の少なくとも1つにより野生型植物細胞または野生型植物から識別できる:導入されている外来核酸分子が植物細胞または植物に関して異種である場合、本発明の植物細胞または本発明の植物は、導入されている核酸分子の転写物を含む。これらの転写物は、例えば、ノーザンブロット解析またはRT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)により検出できる。
アンチセンス転写物および/またはRNAi転写物を発現する本発明の植物細胞または本発明の植物は、例えば、タンパク質をコード化する(および、植物細胞において自然に生じる)RNAに相補的である特異的な核酸プローブを活用して検出できる。好ましくは、本発明の植物細胞および本発明の植物は、導入されている核酸分子によりコード化されるタンパク質を含む。このタンパク質は、例えば、免疫学的方法により、特にウェスタンブロット解析により検出できる。
好ましくは、本発明の植物細胞または本発明の植物は、導入されている核酸分子によりコード化されるタンパク質を含む。このタンパク質は、例えば、免疫学的方法、特にウェスタンブロット解析により検出できる。
導入されている外来核酸分子が植物細胞または植物に関して同種である場合、本発明の植物細胞または本発明の植物は、例えば、導入されている外来核酸分子の追加発現に基づき、野生型植物細胞または野生型植物から識別できる。本発明の植物細胞および本発明の植物は、好ましくは、外来核酸分子の転写物を含む。これは、例えば、ノーザンブロット解析により、または、定量的PCRとして知られるものを活用して検出できる。
【0100】
本発明のさらなる主題は、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞から単離された、または、対応する遺伝子改変していない野生型植物から単離されたデンプンと比較し、改変デンプンを合成する遺伝子改変した単子葉植物細胞または遺伝子改変した単子葉植物に関する。
【0101】
本発明は、さらに、本発明の植物細胞を含む遺伝子改変した単子葉植物に関する。そのような植物は、再生により本発明の植物細胞から生成できる。
【0102】
本発明の植物は、原理的に、任意の単子葉植物の形をとりうる。好ましくは、それらは、単子葉作物植物、すなわち、栄養の目的のために、または技術的、特に産業的な目的のためにヒトにより生育される植物の形をとる。
【0103】
さらなる態様において、本発明の植物は、デンプン貯蔵単子葉植物の形をとり、または、本発明の植物はデンプン貯蔵植物に由来する。
【0104】
本発明に関連して、「デンプン貯蔵植物」という用語は、例えば、トウモロコシ、米、コムギ、ライ麦、オート麦、オオムギ、サゴ、タロイモ、およびキビ/モロコシなどの貯蔵デンプンを含む植物部分を伴うすべての植物を意味する。
【0105】
好ましい態様において、本発明は(系統的な)イネ科の単子葉植物に関する。これらの植物は、特に好ましくは、米、トウモロコシ、またはコムギ植物の形をとる。これらの植物は非常に特に好ましくはイネの形をとる。
【0106】
本発明に関連して、「コムギ植物」という用語は、コムギ属の植物種もしくはコムギ属の植物との交配から生じた植物、特に商業目的のために農業において生育されるコムギ属の植物種、またはコムギ属の植物との交配から生じた植物を意味し、トリチカム・エスチバムが特に好ましい。
【0107】
本発明に関連して、「トウモロコシ植物」という用語は、トウモロコシ属の植物種、特に商業目的のために農業において生育されるトウモロコシ属の植物種、特に好ましくはゼア・メイズを意味する。
【0108】
本発明に関連して、「米植物」という用語は、イネ属の植物種、特に商業目的のために農業において生育されるイネ属の植物種、特に好ましくはオリザ・サティバを意味する。
【0109】
本発明は、遺伝子改変した植物細胞を含む単子葉植物の繁殖物質にも関する。
【0110】
ここで、「繁殖物質」という用語は、栄養経路または生殖経路を介して子孫を生成するために適切である植物のそれらの部分を含む。栄養繁殖のために適切である例は、挿木、カルス培養物、根茎、または塊茎である。他の繁殖物質は、例えば、果実、種子、苗木、プロトプラスト、細胞培養物などを含む。
さらなる態様において、本発明は、果実、貯蔵根、根、花、芽、新芽、または茎、好ましくは種または穀粒などの本発明の植物から収穫できる植物部分に関し、収穫できるこれらの部分は本発明の植物細胞を含む。
【0111】
さらなる態様において、本発明の遺伝子改変した単子葉植物細胞は、それらが熱水膨張力(hot−water swelling power)が上昇し、アミロース含量が5重量%未満である(ワキシー)デンプンを合成するとの事実により識別される。
【0112】
好ましい態様において、遺伝子改変した単子葉植物細胞は、それが、熱水膨張力が60から100g/gの間に上昇したワキシーデンプンを含むとの事実により識別される。70から95g/gの間の熱水膨張力がこれに関連して特に好ましく、80から95g/gの間が非常に特に好ましく、80から90g/gの間が特別に好ましい。
【0113】
本発明のさらなる主題は、遺伝子改変した単子葉植物を生成する方法に関し、ここで、a)植物細胞を遺伝子改変し、遺伝子改変は以下の工程iからiiiを含む:
i)植物細胞への遺伝子改変の導入、ここで、遺伝子改変が、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性における増加を導く、
ii)植物細胞への遺伝子改変の導入、ここで、遺伝子改変が、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性における増加を導く、
iii)植物細胞への遺伝子改変の導入、ここで、遺伝子改変が、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、GBSSIの活性を伴うタンパク質の活性における低下を導く、
ここで、工程iからiiiは、工程iからiiiの任意の所望の組み合わせとして、任意の所望の順番で、個別に、または同時に実施でき、
b)植物が工程a)の植物細胞から再生され;
c)適宜、さらなる植物が、工程b)の植物を活用して生成され、ここで、適宜、植物細胞を工程b)またはc)に従って植物から単離し、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性が増加した、および、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性が増加した、および、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、GBSSIの活性を伴うタンパク質の活性が低下した植物が生成されるまで、方法工程a)からc)を繰り返す。
【0114】
本発明は、さらに、遺伝子改変植物を生成する方法に関し、ここで、デンプンが5重量%未満のアミロース含量を有する植物細胞が遺伝子改変され、ここで、遺伝子改変が任意の所望の順番で、個別に、または同時に以下の工程a)およびb)を含む;
a)植物細胞への遺伝子改変の導入、ここで、遺伝子改変が、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性における増加を導く、
b)植物細胞への遺伝子改変の導入、ここで、遺伝子改変が、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性における増加を導く、および
c)植物が工程a)およびb)の植物細胞から再生され;
d)適宜、さらなる植物が、工程a)およびb)からの植物を活用して生成され、ここで、適宜、植物細胞を工程a)またはb)に従って植物から単離し、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する外来核酸分子およびグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する外来核酸分子を含む植物が生成されるまで、方法工程a)からc)を繰り返す。
【0115】
本発明の好ましい主題は、単子葉植物を生成する方法に関し、ここで、
a)植物細胞は遺伝子改変し、遺伝子改変は任意の所望の順番で以下の工程iからiiiを含み、または、以下の工程iからiiiの任意の所望の組み合わせを、個別に、または、同時に実施し、
i)植物細胞への遺伝子改変の導入、ここで、遺伝子改変が、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性における増加を導く、
ii)植物細胞への遺伝子改変の導入、ここで、遺伝子改変が、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性における増加を導く、
iii)植物細胞への遺伝子改変の導入、ここで、遺伝子改変が、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、GBSSIの活性を伴うタンパク質の活性における低下を導く、
b)植物は、
i)工程a)i
ii)工程a)ii
iii)工程a)iii
iv)工程a)iおよびa)ii、
v)工程a)iおよびa)iii、
vi)工程a)iiおよびa)iii、または
vii)工程a)iおよびa)iiおよびa)iii
に従った遺伝子改変を含む植物細胞から再生され、
c)i)工程b)iに従った植物からの植物細胞に工程a)iiに従った遺伝子改変を、
ii)工程b)iに従った植物からの植物細胞に、工程a)iiiに従った遺伝子改変を、
iii)工程b)iに従った植物からの植物細胞に、工程a)iiに従った遺伝子改変、および同時に、工程a)iiiに従った遺伝子改変を、
iv)工程b)iiに従った植物からの植物細胞に、工程a)iに従った遺伝子改変を、
v)工程b)iiに従った植物からの植物細胞に、工程a)iiiに従った遺伝子改変を、
vi)工程b)iiに従った植物からの植物細胞に、工程a)iに従った遺伝子改変、および同時に、工程a)iiiに従った遺伝子改変を、
vii)工程b)iiiに従った植物からの植物細胞に、工程a)iに従った遺伝子改変を、
viii)工程b)iiiに従った植物からの植物細胞に、工程a)iiに従った遺伝子改変を、
ix)工程b)iiiに従った植物からの植物細胞に、工程a)iに従った遺伝子改変、および同時に、工程a)iiに従った遺伝子改変を、
x)工程b)ivに従った植物からの植物細胞に、工程a)iiiに従った遺伝子改変を、
xi)工程b)vに従った植物からの植物細胞に、工程a)iiに従った遺伝子改変を、または
xii)工程b)viに従った植物からの植物細胞に、工程a)iに従った遺伝子改変
を導入して、植物を再生し、
d)i)工程c)iに従った植物からの植物細胞に、工程a)iiiに従った遺伝子改変を、
ii)工程c)iiに従った植物からの植物細胞に、工程a)iiに従った遺伝子改変を、
iii)工程c)ivに従った植物からの植物細胞に、工程a)iiiに従った遺伝子改変を、
iv)工程c)vに従った植物からの植物細胞に、工程a)iiに従った遺伝子改変を、
v)工程c)viiに従った植物からの植物細胞に、工程a)iiに従った遺伝子改変を、
vi)工程c)viiに従った植物からの植物細胞に、工程a)iに従った遺伝子改変を、または
vii)工程c)ixに従った植物からの植物細胞に、工程a)iiに従った遺伝子改変
を導入して、植物を再生し、適宜、さらなる植物は、工程b)vii、c)iii、c)vi、c)x、c)xi、c)xiiの1つに従った、または、工程d)iからd)viiのいずれかに従った植物を活用して生成される。
【0116】
工程a)に従って植物細胞中に導入された遺伝子改変は、原理的に、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性における増加および/またはグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性における増加および/またはGBSSIの活性を伴うタンパク質の活性における低下を導く任意の種類の改変の形を取りうる。
本発明の方法の工程b)からe)に従った植物の再生は、当業者に公知の方法により達成できる(例えば、"Plant Cell Culture Protocols", 1999, ed. by R. D. Hall, Humana Press, ISBN 0-89603-549-2において記載)。
【0117】
本発明の方法のさらなる植物の生成は、例えば、栄養繁殖(例えば、挿木、塊茎、またはカルス培養物による、または完全な植物の再生)または生殖繁殖により達成できる。生殖繁殖は、好ましくは、制御された方法により起こり、すなわち、特定の特性を伴う選択された植物を互いに交配して、繁殖する。選択は、好ましくは、(工程c)または工程d)または工程e)に従った方法によって生成される)さらなる植物が先行する工程において導入された改変を有するように達成される。
【0118】
交配により、または、形質転換により生成できる本発明の植物細胞または植物の選択のためのパラメーターを以下で詳述する:もっぱら、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴う少なくとも1つのタンパク質が増加する場合、適切な植物または植物細胞は、デンプンのC6位においてデンプン1mg当たり少なくとも2.5nmolのリン酸含量を有するものである。もっぱら、デンプンシンターゼIIの活性を伴う少なくとも1つのタンパク質が増加する場合、適切な植物または植物細胞は、本発明の核酸分子を導入するために使用される、または、交配のために使用される植物細胞または植物中のSSII活性よりも少なくとも2倍だけ増加したSSII活性を有するものである。
グルカン、水ジキナーゼの活性を伴う少なくとも1つのタンパク質およびデンプンシンターゼIIの活性を伴う少なくとも1つのタンパク質が増加する場合、適切な植物または植物細胞は、デンプンのC6位においてデンプン1mg当たり少なくとも2.5nmolのリン酸含量、および追加で、本発明の核酸分子を導入するために使用される、または、交配のために使用される植物細胞または植物中のSSII活性よりも少なくとも2倍だけ増加したSSII活性を有するものである。
GBSSI活性が低下する、または、ワキシー変異体を用いる場合、適切な植物は、突然変異がホモ接合型で存在する場合に5重量%未満の見掛け上のアミロース含量を有するものである。
【0119】
別の適切な選択基準は、C6位におけるデンプンリン酸含量のレベルである。好ましく選択される植物は、工程a)およびb)に従った遺伝子改変を含み、デンプンリン酸含量が少なくとも2.5nmol C6P/mgデンプンであり、デンプンが5重量%未満の見掛け上のアミロース含量を有するものである。
【0120】
遺伝子改変植物の生成のための本発明の方法において、本発明の遺伝子改変植物を生成するための遺伝子改変は、同時に、または、連続工程においてもたらすことができる。これに関連して、同じ方法が、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性増加を導き連続的な遺伝子改変、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質における活性増加を導く遺伝子改変、および/または、GBSSIの活性を伴うタンパク質における活性増加を導く遺伝子改変のために使用されるか否かは重大ではない。
【0121】
本発明の植物、またはさらなる改変のために使用する植物を選択するために、様々な選択基準を選ぶことができる。
【0122】
遺伝子改変植物の生成のための本発明の方法のさらなる態様において、工程c)の後に方法工程c)−1が続き、ここで、デンプンが5重量%未満の見掛け上のアミロース含量および工程a)i)に従ったデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質における活性増加を有し、および/または、工程a)ii)に従ったグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性増加を有する植物が選択される。選択した植物を、次に、さらなる方法工程のために使用する。
【0123】
本発明の遺伝子改変植物の生成のための本発明の方法のさらなる態様において、少なくとも1つの外来核酸分子が、ジャガイモ、コムギ、米、トウモロコシ、大豆、柑橘類、ウコン、またはシロイヌナズナからのグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する。好ましくは、少なくとも1つの外来核酸分子は、ジャガイモからのグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質、特に好ましくは配列番号2において示されるアミノ酸配列を有する、または、配列番号1において示される核酸配列によりコード化されるタンパク質をコード化する。上記の植物からのグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列に関する参照は、既に上で詳述されている。
【0124】
本発明の遺伝子改変植物を生成するための本発明の方法のさらなる態様において、少なくとも1つの外来核酸分子は、コムギ、オオムギ、エジロプス、米、トウモロコシ、キャッサバ、豆、ジャガイモ、エンドウマメ、サツマイモ、シロイヌナズナ、タロイモ、オストレオコッカス、またはクラミドモナスからのデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する。好ましくは、少なくとも1つの外来核酸分子は、コムギからのデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化し、特に配列番号3である。上記の植物からのデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列に関する参照は、既に上で詳述されている。
【0125】
遺伝子改変の目的のために植物細胞または植物中に導入されている外来核酸分子について既に上で記載した通り、デンプンが5重量%未満のアミロース含量を有する遺伝子改変植物の生成のための本発明の方法の工程a)における核酸分子は、単一の核酸分子または複数の核酸分子の形を取りうる。このように、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する外来核酸分子、または、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する外来核酸分子は、単一の核酸分子上に一緒に存在しうる、あるいは、それらは別々の核酸分子において存在しうる。デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸分子、および、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸分子が、複数の核酸分子において存在する場合、これらの核酸分子は同時に、または、連続工程のいずれかで植物細胞中に導入できる。
【0126】
本発明の遺伝子改変植物の生成のための本発明の方法のさらなる態様において、少なくとも1つの外来核酸分子は、単子葉植物、好ましくは、米、コムギ、オオムギ、トウモロコシ、エジロプス、モロコシ、またはオート麦からのGBSSIの活性を伴うタンパク質をコード化する。
【0127】
上記の植物からのGBSSIの活性を伴うタンパク質をコード化する上記の核酸配列に関する参照は、既に上で詳述されている。
【0128】
好ましくは、少なくとも1つの外来核酸分子は、米からのGBSSIの活性を伴うタンパク質、および特に好ましくは、配列番号7において示す核酸配列により、または、配列番号8において示すアミノ酸配列によりコード化されるタンパク質をコード化する。
【0129】
さらなる好ましい態様において、少なくとも1つの外来核酸分子は、コムギからのGBSSIの活性を伴うタンパク質、および特に好ましくは、配列番号9において示す、または、配列番号10において示すアミノ酸配列によりコード化されるタンパク質をコード化する。
【0130】
さらなる好ましい態様において、少なくとも1つの外来核酸分子は、トウモロコシからのGBSSIの活性を伴うタンパク質、および特に好ましくは、配列番号11において示す核酸配列により、または、配列番号12において示すアミノ酸配列によりコード化されるタンパク質をコード化する。
ここで、外来核酸分子は、GBSSIの活性の阻害、およびそれによる5重量%未満のアミロース含量を伴うデンプンの合成をもたらす。本発明の植物細胞または植物の生成のための問題になっている核酸の使用に関して上で書いたことも、ここで同様に適用される。
【0131】
遺伝子改変のために使用する外来核酸分子は、別々の核酸コンストラクトの1つの併用の形、または、複数の形、特に公知の単純な二重または三重コンストラクトの形をとりうる。このように、外来核酸分子は、公知の「三重コンストラクト」でありうるが、それは、内因性GBSSI遺伝子の発現を阻害するための遺伝情報のみならず、1または複数のSSII遺伝子の過剰発現および1または複数のGWD遺伝子の過剰発現についての情報を含む植物の形質転換のための単一ベクターを意味すると解釈される。
【0132】
GBSSI活性を阻害するための外来核酸分子の構築における基礎原理は、アンチセンス、同時抑制、リボザイム、および二本鎖RNAコンストラクト、ならびに、センスコンストラクトの使用であり、その使用によって、GBSSIをコード化する内因性遺伝子の発現における低下が導かれ、SSIIおよび/またはGWDの活性を伴うタンパク質の活性における同時増加が導かれる。
【0133】
これに関連して、外来核酸分子は、植物細胞のゲノム中に同時に(「同時形質転換」)、あるいは、順々に、すなわち経時的に連続で(「超形質転換」)導入できる。
【0134】
外来核酸分子は1種類の異なる個々の植物中にも導入できる。このような方法で、GBSSIの活性を伴うタンパク質の活性が低下した、および/または、SSIIまたはGWDの活性を伴うタンパク質の活性が増加した植物を生成することが可能である。続いて、交配を次に行い、GBSSIの活性を伴うタンパク質の活性が低下し、SSIIおよびGWDの活性を伴うタンパク質の活性が増加した植物を生成できる。
【0135】
本発明に関連して、「同一性」という用語は、パーセントで表わされる、他のタンパク質/核酸と一致する(を同一する)アミノ酸/ヌクレオチドの数を意味すると解釈される。
好ましくは、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質に関する同一性は、配列番号4または配列番号6で詳述されるアミノ酸配列を比較することにより決定され、または、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸分子に関する同一性は、配列番号3または配列番号5で詳述される核酸配列を比較することにより、および、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質に関する同一性は、配列番号2において詳述されるアミノ酸配列を比較することにより、または、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸分子に関する同一性は、配列番号1において詳述される核酸配列を比較することにより、および、GBSSIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸分子に関する同一性は、配列番号7または配列番号9または配列番号11において詳述される核酸配列、もしくは、配列番号8または配列番号10または配列番号12において詳述されるアミノ酸配列を、コンピュータプログラムを活用して、他のタンパク質/核酸と比較することにより決定される。
【0136】
互いに比較される配列が長さにおいて異なる場合、同一性は、短配列が長配列と共有するアミノ酸/ヌクレオチドの数が同一性の百分率を決定するように測定される。同一性は、好ましくは、公表されている公知のコンピュータプログラム、例えば、ClustalW(Thompson et al., Nucleic Acids Research 22(1994), 4673-4680)により測定できる。ClustalWは、Julie Thompson(Thompson@EMBL-Heidelberg.DE)およびToby Gibson(Gibson@EMBL-Heidelberg.DE)、European molecular Biology Laboratory, Meyerh of strasse 1, D 69117 Heidelberg, germanyにより公表される。ClustalWは同様に様々なインターネットページ、とりわけ、IGBMC(Institut de Genetique et de Blologie Moeculaire et Cellulaire, B.P.163, 67404 III kirch Cedex, France: ftp://ftp-igbmc.u-strasbg.fr/pub/)およびEBI(ftp://ftp.ebi.ac.uk/pub/software/)および全てのミラードEBIインターネットページ(European Bloinformatics Institute, Wellcome Trust Genome Campus, Hinxton, Cambridge CB10 1SD, UK)からダウンロードできる。
【0137】
本発明の範囲内において記載するタンパク質と他のタンパク質の間の同一性を測定するために、ClustalWコンピュータプログラムバージョン1.8を用いることが好ましい。以下のパラメーターを設定する:KTUPLE=1、TOPDIAG=5、WINDOW=5、PAIRGAP=3、GAPOPEN=10、GAPEXTEND=0.05、GAPDIST=8、MAXDIV=40、MATRIX=GONNET、ENDGAPS(OFF)、NOPGAP、NOHGAP。
例えば、本発明の範囲内に記載される核酸分子のヌクレオチド配列と他の核酸分子のヌクレオチドの間の同一性を測定するために、ClustalWコンピュータプログラムバージョン1.8を用いることが好ましい。以下のパラメーターを設定する:KTUPLE=2、TOPDIAGS=4、PAIRGAP=5、DNAMATRIX:IUB、GAPOPEN=10、GAPEXT=5、MAXDIV=40、TRANSITIONS:unweighted。
【0138】
同一性は、さらに、問題になっている核酸分子またはそれらによりコード化されるタンパク質の間に存在する機能的および/または構造的な同等性を意味する。上記の分子と相同であり、これらの分子の派生物である核酸分子は、通例、同じ生物学的機能を伴う改変であるこれらの分子に対する変異の形をとる。それらは自然に生じる変異、例えば、他の種からの配列、あるいは、突然変異の形をとり、ここで、これらの突然変異は自然に生じている、あるいは、特異的突然変異により導入されていることが可能である。さらに、変異は、合成的に生成された配列の形をとりうる。対立遺伝子変種は、自然に生じる変種、あるいは合成的に生成された変種、または組み換えDNA技術により生成された変種の形をとりうる。特定の形の派生物は、例えば、遺伝暗号の縮重の結果としての、本発明の範囲内に記載される核酸分子から逸脱する核酸分子である。
【0139】
本発明の範囲内において、「ハイブリダイゼーション」という用語は、従来のハイブリダイゼーション条件下、好ましくは、例えばSambrookら(Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd edition(2001)Cold Spring Harbour Laboratory Press, Cold Spring Harbour, NY; ISBN: 0879695773)において記載されるストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションを意味する。特に好ましくは、「ハイブリダイズする」は、以下の条件下でのハイブリダイゼーションを意味する:
ハイブリダイゼーションバッファー:
2xSSC;10xデンハルト溶液(Ficoll 400+PEG+BSA;比 1:1:1);0.1% SDS;5mM EDTA;50mM NaHPO;250μg/ml 鰊精子DNA;50μg/ml tRNA;または25M リン酸ナトリウムバッファー pH7.2;1mM EDTA;7% SDS
ハイブリダイゼーション温度:
T=65から68℃
洗浄バッファー:0.1xSSC;0.1% SDS
洗浄温度:T=65から68℃
上記の分子とハイブリダイズする核酸分子は、例えば、ゲノムライブラリーから、または、cDNAライブラリーから単離できる。そのような核酸分子の同定および単離は、上記の核酸分子もしくはこれらの分子の一部を使用して、または、これらの分子の逆相補体を使用し、例えば、標準方法によるハイブリダイゼーションにより、または、PCRによる増幅により達成できる。
デンプンシンターゼIIの活性を伴う、または、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴う、または、GBSSIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列を単離するために使用できるハイブリダイゼーションプローブは、例えば、厳密にヌクレオチド配列、あるいは、配列番号3もしくは配列番号5(デンプンシンターゼII)または配列番号1(グルカン、水ジキナーゼ)または配列番号7、9、もしくは11(GBSSI)において詳述されるヌクレオチド配列、あるいは、これらの配列の一部を伴う核酸分子である。
ハイブリダイゼーションプローブとして使用される断片は、通常の合成技術を活用して生成されており、その配列が、本発明の範囲内において記載される核酸分子のそれと本質的に一致する合成の断片またはオリゴヌクレオチドの形もとりうる。
本発明の範囲内において記載される核酸配列とハイブリダイズする遺伝子が同定および単離されている場合、配列の決定およびこの配列によりコード化されるタンパク質の特性の分析を実施して、それらがそれぞれデンプンシンターゼIIの活性またはグルカン、水ジキナーゼの活性、またはGBSSIの活性を伴うタンパク質であることを実証する必要がある。本発明の範囲内において記載する核酸分子とハイブリダイズする分子は、特に上記の核酸分子の断片、派生物、および対立遺伝子変種を含む。本発明に関連して、「派生物」という用語は、これらの分子の配列が上記の核酸分子の配列と1または複数の位置で異なること、および、それらがこれらの配列と高度の同一性を有することを意味する。上記の核酸分子からの逸脱は、例えば、欠失、付加、置換、挿入、または組み換えにより生成されうる。
【0140】
デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質および/またはグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質および/またはGBSSIの活性を伴うタンパク質をコード化する本発明の核酸分子を発現するために、これらの分子は、好ましくは、植物細胞における転写を保証する制御DNA配列に連結する。これらは特にプロモーターを含む。一般に、植物細胞において活性である任意のプロモーターが発現のために適切である。
プロモーターは、発現が構成的に、あるいは、特定の組織においてのみ、植物発生の特定の時間点で、または、外因子により決定される時間点で起こるように選択できる。プロモーターは、植物および核酸分子のいずれに関しても同種または異種でありうる。
【0141】
適切なプロモーターの例は、構成的発現の目的のための、カリフラワー・モザイク・ウイルスの35S RNAプロモーターおよびトウモロコシユビキチンプロモーター、米ユビキチンプロモーター(Liu et al., Plant Science 165,(2003))、米アクチンプロモーター(Zhang, et al., Plant Cell 3: 1150-1160, 1991))、キャッサバ葉脈モザイクウイルス(CVMV)プロモーター(Verdaguer et. al., Plant Mol. Biol. 31; 1129-1139)、トウモロコシヒストンH3C4プロモーター(米国特許第6,750,378号)またはセストラム(Cestrum)YLCVプロモーター(Yellow Leaf Curling Virus;国際公開第01 73087号;Stavolone et al., 2003, Plant Mol. Biol. 53, 703-713)である。光合成活性組織においてのみ発現を保証するプロモーターは、例えば、胚乳特異的な発現のためのST−LS1プロモーター(Stockhaus et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1987, 84: 7943-7947; Stockhaus et al., EMBO J. 1989, 8: 2445-2451)、コムギHMWプロモーター、ソラマメ(Vicia faba)USPプロモーター(Fiedler et al., 1993, Plant Mol. Biol. 22: 669-679; Baeumlein et al., 1991, Mol. Gen. Genet. 225: 459-467)、豆ファゼオリンプロモーター、トウモロコシからのゼイン遺伝子のプロモーター(Pedersen et al., 1982, Cell 29: 1015-1026; Quatroccio at al., 1990, Plant Mol. Biol. 15: 81-93)、グルテリンプロモーター(Leisy et al., 1990, Plant Mol. Biol. 14: 41-50; Zheng et al., 1993, Plant J. 4: 357-366; Yoshihara et al., 1996, FEBS Lett. 383: 213-218)、グロブリンプロモーター(Nakase et al., 1996, Gene 170(2): 223-226)、プロラミンプロモーター(Qu and Takaiwa, 2004, Plant Biotechnology Journal 2(2): 113-125)も使用できる。しかし、外因子によって決定される時間点でのみ活性化されるプロモーターを使用することも可能である(例えば、国際公開第93/07279号を参照)。同様に対象となるプロモーターは、熱ショックタンパク質のプロモーターでありうるが、それらによって簡単な誘導が可能になる。さらに、種子特異的プロモーター、例えば、ソラマメUSPプロモーターなどを使用することが可能である(上記を参照)。
【0142】
終止配列(ポリアデニル化シグナル)も存在しうる;これは、転写物にポリAテールを付加する役割を果たす。ポリAテールは、転写物の安定化において機能を有すると推測される。そのようなエレメントは文献において記載され(Gielen et al., 1989, EMBO J. 8: 23-29を参照)、所望の通りに交換できる。
【0143】
イントロン配列がプロモーターとコード領域の間に存在することも可能である。そのようなイントロン配列は、植物における発現の安定化および発現増加を導きうる(Callis et al., 1987, Genes Devel. 1; 1183-1200; Luehrsen and Walbot 1991, Mol. Gen. Genet. 225: 81-93; Rethmeier et al.1997, Plant Journal. 12(4): 895-899; Rose and Beliakoff 2000, Plant Physiol. 122(2): 535-542; Vasil et al., 1989, Plant Physiol. 91: 1575-1579; Xu et al. 2003. Science in China Series C Vol. 46(6): 561-569)。適切なイントロン配列の例は、トウモロコシsh1遺伝子の第1イントロン、トウモロコシポリユビキチン遺伝子1の第1イントロン、米EPSPS遺伝子の第1イントロン、またはシロイヌナズナPAT1遺伝子の2つの第1イントロンの1つである。
【0144】
本発明のさらなる態様は、本発明の遺伝子改変した単子葉植物の生成方法に関し、ここで、デンプンの見掛け上のアミロース含量が5重量%未満である植物細胞が、
a)遺伝子改変され、ここで、遺伝子改変は、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性における増加を導き;
b)植物が工程a)の植物細胞から再生され;
c)適宜、さらなる植物が、工程b)の植物を活用して再生され、および
d)工程b)またはc)に従って得られる植物を、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較してグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性における増加を示す植物と交配する。
本発明のさらなる態様は、本発明の遺伝子改変した単子葉植物の生成方法に関し、ここで、デンプンの見掛け上のアミロース含量が5重量%未満である植物細胞が、
a)遺伝子改変され、ここで、遺伝子改変は、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、グルカン、水ジナーゼの活性を伴うタンパク質の活性における増加を導き;
b)植物が工程a)の植物細胞から再生され;
c)適宜、さらなる植物が、工程b)の植物を活用して再生され、および
d)工程b)またはc)に従って得られる植物を、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較してデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の酵素活性における増加を示す植物と交配する。
【0145】
本発明のさらなる態様は、本発明の遺伝子改変した単子葉植物の生成方法に関し、ここで、植物細胞は遺伝子改変され、ここで
a)i)遺伝子改変は、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、グルカン、水ジナーゼの活性を伴うタンパク質の活性における増加を導き;
a)ii)さらなる遺伝子改変が実施され、それによって、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性における増加を導き;ここで、工程a)i)及びii)は所望の順番で実施でき、
b)植物が工程a)i)およびii)の植物細胞から再生され;
c)適宜、さらなる植物が、工程b)の植物を活用して再生され、および
d)工程a)からc)に従って得られる植物を、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較してこのようにデンプンの見掛け上のアミロース含量が5重量%未満である植物と交配する。
【0146】
遺伝子改変植物を生成する3つの最後に述べた方法において、植物は、既に上で記載した通り、工程a)に従って遺伝子改変できる。工程b)に従った植物の再生および工程c)およびd)に従ったさらなる植物の生成も上でさらに詳述されている。
【0147】
最初の2つの態様の工程d)に従って工程b)またはc)から得られた植物または植物の子孫と交配される植物は、対応する野生型植物と比較し、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性における増加、または、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性における増加を示す任意の植物でありうる。デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質、または、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性における増加は、対応する植物における問題になっているタンパク質の活性の増加を導く任意の改変によりもたらされた可能性がある。これらの植物は、変異体の、または、組み換え方法により改変された植物の形をとりうる。変異体は、自然発生的に(自然に)生じる変異体、あるいは、突然変異原(例えば、化学剤、電離放射線など)の標的使用または組み換え方法(例えば、トランスポゾン活性化タギング、T−DNA活性化タギング、in vivo突然変異誘発)により生成されたものの形をとりうる。
【0148】
本発明の2つの最後に記載した方法における交配のために好ましく使用される植物は、対応する遺伝子改変していない野生型植物と比較し、少なくとも3倍、好ましくは6倍、好ましくは少なくとも8倍、特に好ましくは少なくとも10倍のデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性を伴うものである。グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性が増加した問題になっているそのような植物は、本発明の2つの最後に述べた方法において交配のために使用され、好ましくは、少なくとも2.5nmol C6P/mgデンプンのデンプンリン酸含量を伴うデンプンを合成する植物である。
【0149】
好ましい態様において、本発明の方法は、本発明の植物を生成するための遺伝子改変植物を生成するために、または、本発明の植物の特性を有する植物を生成するために使用される。
【0150】
本発明は、本発明の方法により入手可能な植物にも関する。
【0151】
驚くべきことに、デンプンの見掛け上のアミロース含量が5重量%未満であり、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性が増加し、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性が増加した本発明の植物細胞および本発明の植物は改変デンプンを合成することが見出されている。本発明の植物細胞または本発明の植物により合成されるデンプンの熱水膨張力が増加しているとの事実は特に驚くべきことである。本発明の植物細胞および本発明の植物から単離できるデンプンの熱水膨張力の増加は、本発明のデンプンに、それらを従来のデンプンよりも特定の用途に適切とするような特性を付与する。デンプンを例えば増粘剤として用いる場合、デンプンの熱水膨張力の増加は、同じ増粘力を達成するために大幅に少ないデンプンが必要とされることを意味する。
【0152】
本発明のさらなる主題は、見掛け上のアミロース含量が5重量%未満であり、熱水膨張力の増加した改変デンプンに関する。本発明の改変デンプンの熱水膨張力は、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞から単離された、または、対応する遺伝子改変していない野生型植物から単離されたデンプンと比較し、好ましくは少なくとも1.5倍、特に好ましくは2倍、特に好ましくは2.5倍、非常に特に好ましくは3倍増加する。
【0153】
熱水膨張力を決定するための方法は、当業者に周知であり、文献(例、Leach et al., 1959, Cereal Chemistry 36: 534-544)において記載される。熱水膨張力を測定するために本発明に関連して好んで使用する方法は、「一般的方法」において以下でさらに記載する。
【0154】
本発明のさらなる主題は、単子葉植物細胞から、または、単子葉植物から単離された、見掛け上のアミロース含量が5重量%であり、熱水膨張力が少なくとも60g/gから、好ましくは60から100g/g、特に好ましくは70から95g/g、特に好ましくは80から95g/g、特に好ましくは80から90g/gである改変デンプンに関する。
本発明のさらなる主題は、イネ細胞から、または、イネから単離された、見掛け上のアミロース含量が5重量%であり、熱水膨張力が少なくとも60g/gから、好ましくは60から100g/g、特に好ましくは70から95g/g、特に好ましくは80から95g/g、特に好ましくは80から90g/gである改変デンプンに関する。
【0155】
本発明の遺伝子改変した植物細胞または本発明の遺伝子改変した植物により合成されるデンプンは、好ましくは、デンプンのC6位においてリン酸含量が増加する。ここで、本発明の植物細胞および本発明の植物から単離されたデンプンのデンプンリン酸含量は、問題になっている親植物の総デンプンリン酸含量に基づく交配後に予測されうるデンプンリン酸含量より顕著に高い。
【0156】
グルコース分子のC6位において結合するデンプンリン酸の量は、当業者に公知の方法により、例えば、共役酵素反応による、または、31P NMRによる測光法、それに続くKasemusuwan & Jane(1996, Cereal Chemistry 73: 702-707)に記載の方法により測定できる。本発明に関連して、グルコース分子のC6位において結合するデンプンリン酸の量は、好ましくは、「一般的方法」において記載される通りに測定される。
【0157】
本発明のさらなる好ましい主題は、単子葉植物細胞から、または、単子葉植物から単離され、デンプンのグルコース分子のC6位において結合するデンプンリン酸含量が少なくとも1.5nmol/mgデンプン、特に好ましくは少なくとも2.5nmol/mgデンプンである本発明の改変デンプンに関する。本発明のこの改変デンプンは、特に好ましくは、トウモロコシ、米、またはコムギのデンプンの形をとる。
【0158】
本発明のさらなる態様において、本発明の改変デンプンは天然デンプンの形をとる。
【0159】
本発明に関連して、「天然デンプン」という用語は、当業者に公知の方法により、デンプンが、本発明の植物、本発明の収穫可能な植物部分、本発明のデンプン貯蔵部分、または本発明の植物繁殖物質から単離されることを意味する。
【0160】
本発明は、本発明の植物細胞もしくは本発明の植物から、本発明の繁殖物質から、または本発明の収穫可能な植物部分から入手可能な、または、遺伝子改変植物を生成するための本発明の方法を使用して生成された植物から入手可能な本発明の改変デンプンにも関する。
【0161】
本発明の改変デンプンを合成する植物細胞または植物は、同様に、本発明の主題である。
【0162】
本発明は、さらに、本発明の植物細胞または本発明の植物から、そのような植物の本発明の繁殖物質から、および/または、そのような植物の収穫可能な植物部分から、好ましくは、そのような植物の本発明のデンプン貯蔵部分から、デンプンを抽出する工程を含む、改変デンプンを生成する方法に関する。好ましくは、そのような方法は、デンプンを抽出する前に、生育した植物または植物部分および/またはこれらの植物の繁殖物質を収穫する工程、および特に好ましくはさらに収穫前に本発明の植物を生育する工程も含む。
【0163】
植物から、または、植物のデンプン貯蔵部分からデンプンを抽出するための方法は当業者に公知である。さらに、様々なデンプン貯蔵植物からデンプンを抽出するための方法が、例えば、Starch: Chemistry and Technology(Ed.: Whistler, BeMiller and Paschall(1994), 2nd edition, Academic Press Inc. London Ltd; ISBN 0-12-746270-8;例えばchapter XII, page 412-468: Mais and sorghum starches: production; by Watson; chapter XIII, page 469-479: Tapioca, Arrowroot and Sago starches: production; by Corbishley and Miller; chapter XIV, page 479-490: potato starch: production and uses; by Mitch; chapter XV, page 491 to 506: wheat starch: production, modification and uses; by Knight and Oson; およびchapter XVI, page 507 to 528: rice starch: production and uses; by Rohmer and Klem; maize starch: Eckhoff et al., 1996, Cereal Chern.73: 54-57, the extraction of maize starch on the industrial scale is generally accomplished by what is known as wet millingを参照)において記載されている。植物材料からデンプンを抽出するための工程において通常用いられる器具は、分離器、デカンター、ハイドロサイクロン、噴霧乾燥機、および流動層乾燥器である。
【0164】
本発明に関連して、「デンプン貯蔵部分」という用語は、デンプンが、葉の移動デンプンとは対照的に、より長期間生存するために蓄えとして貯蔵される植物の部分を意味すると解釈される。好ましいデンプン貯蔵植物の部分は、例えば、塊茎、貯蔵根、および子実であり、特に好ましくは胚乳を含む子実であり、特に好ましくはトウモロコシ、米、またはコムギ植物からの胚乳を含む子実である。
【0165】
好ましい態様において、改変デンプンを調製するための本発明の方法は、本発明のデンプンを調製するために使用される。
【0166】
改変デンプンを調製するための本発明の方法により入手可能な改変デンプンも本発明の主題である。
【0167】
改変デンプンを調製するための本発明の植物細胞または本発明の植物の使用も本発明の主題である。当業者は、デンプンの特性を、例えば、熱的、酵素的、または機械的な誘導体化により変化できることを知る。誘導体化デンプンは、食物および/または非食物部門における様々な使途のために特に適切である。本発明のデンプンは、従来のデンプンよりも、誘導体化デンプンの調製のための出発物質として良好に適するが、それらが、例えば、より高いデンプンリン酸含量の結果として、より高い割合の反応性官能基を含むためである。本発明のデンプンの熱水膨張力の増加の結果として、誘導体化の方法は、さらに、デンプンの顆粒構造を実質的な程度にまで損傷することなく、より高温で実施できる。
【0168】
本発明は、したがって、誘導体化デンプンを調製するための方法にも関し、ここで、本発明の改変デンプンは続いて誘導体化される。本発明は、さらに、公知の方法の1つにより調製される誘導体化デンプンに関する。
【0169】
本発明に関連して、「誘導体化デンプン」という用語は、デンプンを植物細胞から単離した後、特性が化学的、酵素的、熱的、または機械的な方法を活用して変化している本発明の改変デンプンを意味すると解釈される。
【0170】
本発明の別の態様において、本発明の誘導体化デンプンは熱および/または酸処理したデンプンである。
【0171】
さらなる態様において、誘導体化デンプンは、デンプンエーテル、特にデンプンアルキルエーテル、O−アリルエーテル、ヒドロキシルアルキルエーテル、O−カルボキシルメチルエーテル、窒素含有デンプンエーテル、リン酸含有デンプンエーテル、または硫黄含有デンプンエーテルの形をとる。
さらなる態様において、誘導体化デンプンは架橋デンプンの形をとる。
さらなる態様において、誘導体化デンプンはデンプングラフト重合体の形をとる。
さらなる態様において、誘導体化デンプンは酸化デンプンの形をとる。
【0172】
さらなる態様において、誘導体化デンプンは、デンプンエステル、特に有機酸を使用してデンプン中に導入されたデンプンエステルの形をとる。それらは、特に好ましくは、公知のリン酸デンプン、硝酸デンプン、硫酸デンプン、キサントゲン酸デンプン、酢酸デンプン、またはクエン酸デンプンの形をとる。
【0173】
本発明の誘導体化デンプンは、製薬工業、食品部門および/または非食品部門における様々な使途のために適切である。本発明の誘導体化デンプンを調製する方法は、当業者に公知であり、一般的な文献において広範囲に記載される。誘導体化デンプンの調製に関する総説は、例えば、Orthoefer(Corn, Chemistry and Technology, 1987, eds. Watson and Ramstad, Chapter 16: 479-499)において見出される。
【0174】
誘導体化デンプンを調製するための本発明の方法により入手可能な誘導体化デンプンは、同様に本発明の主題である。
【0175】
誘導体化デンプンの調製のための本発明の改変デンプンの使用は、さらに、本発明の主題である。
【0176】
本発明は、本発明のデンプンを含む製品も含む。
【0177】
本発明は、本発明のデンプンを含む混合物も含む。
【0178】
植物のデンプン貯蔵部分は、粉末に加工されることが多い。粉末が調製される植物の部分の例は、例えば、ジャガイモ植物の塊茎および穀物用植物の子実である。穀物用植物から粉末を調製するために、これらの植物の胚乳含有子実を製粉し、ふるいにかける。デンプンは胚乳の主成分である。胚乳を含まないが、しかし、他のデンプン貯蔵部分、例えば、塊茎または根などを含む他の植物において、粉末は、問題になっている貯蔵器官の粉砕、乾燥、および続いて製粉により調製することが多い。植物の胚乳またはデンプン貯蔵部分において存在するデンプンは、問題になっている植物部分から調製される粉末の相当な割合を占める。粉末の特性は、したがって、問題になっている粉末中に存在するデンプンによる影響も受ける。本発明の植物細胞および本発明の植物は、遺伝子改変していない野生型植物細胞、または遺伝子改変していない野生型植物と比較し、変化したデンプンを合成する。本発明の植物細胞、本発明の植物、本発明の繁殖物質、または本発明の収穫可能部分から調製される粉末は、したがって、変化した特性を有する。粉末の特性は、デンプンを粉末と混合することにより、または、異なる特性を伴う粉末を混合することによる影響も受けうる。
【0179】
本発明のさらなる主題は、したがって、本発明のデンプンを含む粉末に関する。
【0180】
本発明のさらなる主題は、本発明の植物細胞、本発明の植物、本発明の植物のデンプン貯蔵部分から、本発明の繁殖物質から、または本発明の収穫可能な植物部分から調製できる粉末に関する。粉末の調製のための本発明の植物の好ましいデンプン貯蔵部分は、塊茎、貯蔵根、および胚乳を含む子実である。本発明に関連して特に好ましくは、(系統的な)イネ科の植物からの子実であり;特に好ましくは、穀物はトウモロコシ、米、またはコムギの植物から得られる。
本発明に関連して、「粉末」という用語は、植物部分を製粉することにより得ることができる粉末を意味すると解釈される。適宜、製粉前に植物部分を乾燥し、ふるいにかける。
【0181】
それらにおいて存在する本発明のデンプンのために、本発明の粉末は、それらが増加した熱水膨張力を有するという事実により識別される。これは、例えば、複数の用途のための食品工業における粉末の加工において、特に焼商品の製造において望ましい。
【0182】
本発明の好ましい主題は、単子葉ワキシー植物の子実から調製される粉末に関し、その粉末は、少なくとも25g/g、好ましくは25から50g/g、特に好ましくは30から45g/g、および特に好ましくは35から45g/gの熱水膨張力を有する。
これに関連して、粉末の熱水膨張力の測定は、デンプンの熱水膨張力を測定するための上記の方法と同様にもたらされ、粉末がデンプンの代わりに用いられることが異なる。粉末の熱水膨張力を測定する好ましい方法が、「一般的方法」において記載される。
【0183】
本発明のさらなる主題は、本発明の植物細胞、本発明の植物、本発明の植物の部分、本発明の植物のデンプン貯蔵部分、本発明の繁殖物質、または本発明の収穫可能物質を製粉する工程を含む、粉末の調製のための方法である。
【0184】
粉末は、本発明の植物のデンプン貯蔵部分を製粉することにより産生できる。当業者は、いかに粉末を産生するかを知っている。好ましくは、粉末の産生のための工程は、製粉前に、生育した植物または植物細胞および/または繁殖物質および/またはこれらの植物のデンプン貯蔵部分を収穫する工程、および特に好ましくはさらに、収穫前に本発明の植物を生育する工程も含む。
【0185】
本発明の粉末を含む産物は、同様に、本発明の主題である。
【0186】
本発明のさらなる態様において、粉末の産生のための方法は、製粉前の、本発明の植物、本発明の植物のデンプン貯蔵部分、本発明の繁殖物質、または本発明の収穫可能材料の加工を含む。
【0187】
これに関連して、加工は、熱処理および/または乾燥工程でありうる。熱処理、それに続く熱処理済み材料の乾燥は、例えば、製粉する前に、貯蔵根または塊茎、例えば、ジャガイモ塊茎からの粉末の産生において用いられる。製粉前の本発明の植物、本発明の植物のデンプン貯蔵部分、本発明の繁殖物質、または本発明の収穫可能材料の粉砕は、同様に、本発明の意味において加工を構成しうる。製粉前の植物組織の除去、例えば、穀物の脱穀なども、本発明の意味において製粉前の加工を構成する。
【0188】
本発明のさらなる態様において、粉末の調製のための方法は、製粉後のミルベースの加工を含む。これに関連して、様々な種類の粉末を調製するために、製粉後にミルベースをふるいにかけてよい。
【0189】
本発明は、本発明の粉末を含む混合物も含む。
【0190】
本発明のさらなる主題は、粉末の調製のための、本発明の遺伝子改変植物、本発明の植物、本発明の植物の部分、本発明の植物のデンプン貯蔵部分、本発明の植物の繁殖物質、または本発明の収穫可能物質の使用である。
【0191】
特許出願において引用する全ての文書の開示は、本発明の記載の開示において組み入れることを意図する。
【0192】
配列の説明
配列番号1:ソラナム・ツベロサムからのグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列。
配列番号2:ソラナム・ツベロサムからのグルカン、水ジキナーゼの活性を伴う配列番号1によりコード化されるタンパク質のアミノ酸配列。
配列番号3:トリチカム・エスチバムからのデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列。
配列番号4:トリチカム・エスチバムからのデンプンシンターゼIIの活性を伴う配列番号3によりコード化されるタンパク質のアミノ酸配列。
配列番号5:オリザ・サティバからのデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列。
配列番号6:オリザ・サティバからのデンプンシンターゼIIの活性を伴う配列番号5によりコード化されるタンパク質のアミノ酸配列。
配列番号7:オリザ・サティバからのGBSSIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列。
配列番号8:オリザ・サティバからのGBSSIの活性を伴う配列番号7によりコード化されるタンパク質のアミノ酸配列。
配列番号9:トリチカム・エスチバムからのGBSSIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列。
配列番号10:トリチカム・エスチバムからのGBSSIの活性を伴う配列番号9によりコード化されるタンパク質のアミノ酸配列。
配列番号11:ゼア・メイズからのGBSSIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸配列。
配列番号12:ゼア・メイズからのGBSSIの活性を伴う配列番号11によりコード化されるタンパク質のアミノ酸配列。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】図1は、野生型と比較した、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性を測定するためのザイモグラムを示す。使用した材料は、野生型植物(WT)の、および、発現ベクターAH32−191での形質転換の結果である3つの独立した遺伝子改変植物(oe−SSII−O.s.−5、oe−SSII−O.s.−12、oe−SSII−O.s.−19)の未成熟な子実(開花後15日)からの総タンパク質抽出物であった。レーンWTおよびpurにおいて、各々の場合において、各抽出物の同量のタンパク質を適用した。遺伝子改変植物のタンパク質抽出物を連続希釈し(1:2、1:4、1:6、1:8、1:10、1:20、1:50、または1:100)、これらの希釈物を電気泳動により、また互いに別々に分離した。野生型植物と比較したデンプンシンターゼIIの活性における増加は、ルゴール溶液での染色後のザイモグラムにおいて存在し、野生型植物からのタンパク質抽出物のデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質(矢印により同定)により合成された特定の産物の強度を、遺伝子改変植物からのタンパク質抽出物の対応するバンドの強度と比較することにより決定できる。同等の強度は同等の活性を意味する。
【図2】図2は、遺伝子改変していない野生型植物(WT)と比較した、イネ株oe−SSII−O.s.−19、oe−SSII−O.s.−20、oe−SSII−O.s.−21、oe−SSII−O.s.−22、oe−SSII−O.s.−23の未成熟なT1種子のノーザンブロット解析でのオートラジオグラムを示す。この目的のために、各々の場合において、発現ベクターAH32−191での形質転換から独立して生じた株の3つの種子からRNAを抽出し、一般的方法、8項目において記載する方法に従って解析した。コムギからのデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する標識核酸プローブにハイブリダイズするバンドをSSIIとして同定する。
【図3】図3は、ルゴール溶液での染色後の遺伝子改変していない野生型植物(WT)の種子と比較した、イネ株oe−SSII−O.s.−8、oe−SSII−O.s.−19、oe−SSII−O.s.−23の未成熟なT1種子からのタンパク質抽出物のザイモグラムを示す。1レーン当たり2(oe−SSII−O.s.−8)または3(oe−SSII−O.s.−19、oe−SSII−O.s.−23)の異なる子実からのタンパク質抽出物を分析した。ザイモグラムによる分析は、一般的方法、項目9において記載する方法に従って実施した。デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質に特異的であるザイモグラムにおけるバンドは、SSIIとして同定する。
【0194】
一般的方法
以下の本文において、本発明の方法/工程を実施するために使用できる方法を記載する。これらの方法は本発明の特定の態様であるが、しかし、本発明はこれらの方法に限定されない。当業者は、記載の方法を改変することにより、および/または、方法の個々の部分を方法の代わりの部分により置き換えることにより同じ方法で本発明を実施できることを知る。すべての引用論文の内容が、参照により本願の記載に組み入れられる。
【0195】
1.イネの形質転換および再生
Hiei ら(1994, Plant Joumal 6(2). 271-282)により記載される方法によりイネを形質転換した。
温室におけるイネの栽培計画には以下の条件が含まれた:播種:基質:100%ミズゴケ泥炭および100 l砂/m2および粘土の混合物:1.6 lバラ鉢(製造者:H. Meyer, Germany)中に180 kg/m2、pH5.4−6.2;緑肥:Hakaphos(Compo, Germany)14%N −16%P −18%K + 2%Mg;2 kg/m2;施肥:開花まで3.5 g/植物:NHNO(1.75 g)およびFlory 2基礎混合物(製造者:Euflor, Germany):1.75 g;3%N −16%P −15%K + 5%Mg
温度:昼28℃/夜24℃(16時間/8時間);相対大気湿度:85−95%;
光:16時間、350 μEinstein/sxm2
【0196】
2.配列の由来および形質転換のために使用するコンストラクト
米の形質転換のためにコムギからの配列T.a.−SSIIaを使用した。それは、国際公開第97−45545号に(「pTaSS1」の名称で)記載の通りに単離およびクローニングした。
使用した形質転換ベクターAH32−191は実施例2において記載される。ジャガイモ(R1St)からのグルカン、水ジキナーゼの配列をさらに使用した。
それは、実施例5に記載の通りに単離およびクローニングした。使用した形質転換ベクターpML82は、国際公開第05/095619号において記載される。
ワキシー形質は、実施例1において説明される適切な変異体を介して導入した。
【0197】
3.ノーザンブロットによる遺伝子の発現レベルの解析
タンパク質をコード化する核酸の発現をノーザンブロット解析により研究した。この目的のために、3つの未成熟な米粒(開花後約15日)を、形質転換により得られた各々の個々の植物について収穫し、液体窒素中で凍結した。材料を均質化するために、凍結した米粒をRetschミル(モデルMM300)において96ウェルマイクロタイタープレート中で30 Hertzの振動数の4.5mM鋼球を使用して30秒間粉砕した。その後、Promega RNA抽出キット(SV 96 Total RNA Isolation System, Order No.Z3505, Promega, Mannheim)により、製造者の指示に従ってRNAを単離した。個々のサンプル中のRNAの濃度を、測光法で260nmの吸光度を測定することにより測定した。各々のサンプルについて、2μgのRNAを均一の容積に入れ、同じ容積のRNAサンプルバッファー(65%(v/v)ホルムアミド、8%ホルムアルデヒド、13%(v/v)ゲルバッファー(上記)、50μg/mlエチジウムブロマイド)で処理した。加熱(10分間、65℃)および氷上での急冷後、RNAを約2時間、1.2%(w/v)アガロースゲル(20mM MOPS pH8.0、5mM 酢酸ナトリウム、1mM EDTA、6%(v/v)ホルムアルデヒド)を使用し、RNA泳動バッファー(20mM MOPS pH8.0、5mM 酢酸ナトリウム、1mM EDTA)を使用し、50−80 mAの一定のアンペア数で分離した。
その後、RNAは、10xSSC(1.5M NaCl、150mM クエン酸ナトリウム pH7.0)を使用して拡散ブロットによりHybond Nメンブレンにトランファーし、UV照射によりメンブレン上に固定化した。
コムギからのデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質をコード化する核酸分子の発現を検出するためのノーザンブロットのハイブリダイゼーションでは、プラスミドAH32−191の約1 kbのSpeI/BspHI断片(4568−5686 bp)を用い、それはcDNAの5’領域を包含する。DNA断片を、Roche社からのRandom Primed DNA Labeling Kit(注文番号1004 760)により、32P−アルファ−dCTPを使用し、製造者の指示に従って放射標識した。トランスファーしたRNAを含むナイロンメンブレンを、ハイブリダイゼーションバッファー(250mM リン酸ナトリウムバッファー pH7.2、1mM EDTA、6%(w/v)SDS、1%(w/v)BSA)を伴う60℃の水浴中で4時間、穏やかに撹拌しながらインキュベートし、ここで放射標識DNAをハイブリダイゼーションバッファーに加えた。16時間のインキュベーション後、ハイブリダイゼーションバッファーを除去し、メンブレンを、穏やかに撹拌しながら、3xSSCで1回、2xSSCで1回(上記)、60℃で連続洗浄し、非特異的に結合したDNA分子を除去した。
標識RNAを検出するために、ナイロンメンブレンを1から3日間、−70℃で、X線フィルム上でオートラジオグラフィーにかけた。
【0198】
4.活性ゲル(ザイモグラム)によるデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性の測定
未成熟な米粒におけるデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性の検出は、活性ゲル(ザイモグラム)により実施したが、ここでタンパク質抽出物はポリアクリルアミドゲルにおいて未変性条件下で分離し、続いて適切な基質とインキュベートする。形成した反応産物(アルファーグルカン)を、ルゴール溶液を使用してゲル中で染色した。個々の未成熟な米粒(開花後約15日)を液体窒素中で凍結し、150−200μlの冷抽出バッファー(50mM Tris/HCl pH7.6、2.5mM EDTA、2mM DTT、4mM PMSF、0.1%(w/v)グリコーゲン、10%(v/v)グリセロール)中で均質化した。遠心(15分間、13000g、4℃)後、清澄な上精を新しい反応容器に移し、抽出物の一定分量を、Bradfordの方法(1976, Anal Biochem 72: 248-254)によりタンパク質含量を測定するために使用した。タンパク質抽出物を、連続7.5%強度ポリアクリルアミドゲル(7.5% アクリルアミド:ビスアクリルアミド 37.5:1;25mM Tris/HCl pH7.6、192mM グリシン、0.1%(w/v)APS、0.05%(v/v)TEMED)により、単一濃度の泳動バッファー(25mM Tris/HCl、192mM グリシン)を使用して分離した。各々のサンプルについて、15μgのタンパク質に対応する量を各々の場合において適用し、2から2.5時間、4℃で電気泳動を実行した。
その後、ゲルを一晩室温で15mlのインキュベーションバッファー(0.5mM クエン酸ナトリウム pH7.0、25mM 酢酸カリウム、2mM EDTA、2mM DTT、0.1%(w/v)アミロペクチン、50mM トリシン/NaOH pH8.5、1mM ADP−グルコース)中で、一定に撹拌しながらインキュベートした。形成したデンプンをルゴール溶液により染色した。
デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性が、対応する遺伝子改変していない野生型植物と比較して何倍増加しているかを決定するために、遺伝子改変株からのタンパク質抽出物を各々の場合において連続希釈し、上記の方法に従って電気泳動により分離した。残りの工程を、既に上で記載した通りに実施した。ザイモグラムをルゴール溶液で染色した後、遺伝子改変植物からのタンパク質抽出物の異なる希釈物について、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質により産生された染色産物の強度(図1において矢印で同定)を、未希釈の野生型タンパク質抽出物の関連産物と視覚的に比較した。産物の発色強度はデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性と直接相関しているため、同じ強度を伴う産物のバンドは同じ活性を有する。希釈タンパク質抽出物におけるデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の産物のバンドが、野生型植物からの対応する未希釈のタンパク質抽出物からの産物の対応するバンドと同じ強度を有する場合、希釈係数は対応する遺伝子改変植物における活性の増加の程度に対応する(比較については図1を参照)。
【0199】
5.単離したイネ胚からの植物の生成(胚救出)
種子を穂から除去し、外皮を除去する。外科刃を使用して胚乳を胚から解離し、適切な分析のために使用する。湿潤性を改善するために、胚を短時間70%エタノールで処理し、続いて20分間、2% NaOClおよび市販の洗浄液1滴を含む溶液中でインキュベートし、それを滅菌する。
その後、可能な限り多くの滅菌溶液を除去し、胚を滅菌脱塩水で1分間1回およびその後に各々の場合において10分間2回洗浄する。種子を、ペトリ皿中で、各々の場合においてMS培地(Murashige−Skoog培地)の4分の1の塩濃度および4%ショ糖を含む寒天固形培地上に播種する。その後、ペトリ皿はパラフィルムを使用して密封し、23℃の暗所でインキュベートする。発芽後(胚を播種して約5−7日後)、ペトリ皿を明所に移す。苗の胚軸が約2cmの長さに達した際、植物は2%ショ糖を伴う寒天固形MS培地を含む広口瓶に移す。十分な根が発生した後、植物を堆肥中に植えることができる。
【0200】
6.米粒の加工、および米粉の調製
十分量の被験物質を調製するために、イネを温室中で生育し、十分に成熟した際に収穫した。成熟した米粒を3−7日間、37℃で保存し、それらをさらに乾燥した。
その後、粒を殻むき機(Laboratory Paddy sheller, Grainman, Miami, Florida, USA)により殻から外し、得られた玄米を1分間の研磨により加工し(Pearlest Rice Polisher, Kett, Villa Park, CA, USA)、白米をもたらす。穀粒成分試験およびデンプン特性試験のために、実験室用ミル(Cyclotec, Sample mill, Foss, Denmark)により白穀粒を製粉し、米粉として知られるものをもたらす。
【0201】
7.米粉からの米デンプンの抽出
米デンプンは、Wang & Wang(2004; Journal of Cereal Science 39: 291-296)により記載の方法と同様の方法により米粉から抽出した。
約10gの米粉を40mlの0.05%(w/v)NaOHと16−18時間、室温で、撹拌器上でインキュベートした。その後、懸濁液をワーリングブレンダーに移し、消化を完了し、15秒間低速で、続いて45秒間高速で混合した。粗成分(例えば細胞壁)を除去するために、懸濁液を連続的にメッシュサイズ125μmおよび63μmのふるいを通じて注いだ。1500rpmで15分間の遠心後(Microfuge 3.0R; Heraeus)、上精を静かに移し、沈降物の最上部のタンパク質層はスパーテルを使用して除去した。沈降物の残りを0.05%(w/v)NaOH中に再懸濁し、上記の手順を繰り返した。その後、沈降物を水中に再懸濁し、懸濁液のpHはHClを使用して6.5から7にした。得られた米デンプンを計3回水で洗浄したが、ここで、各々の洗浄工程は沈降(1500rpmでの遠心、15分間、室温)を含み、上精を捨て、沈降物を新鮮水に再懸濁した。最終洗浄ステップ前に、pHを再チェックし、適宜、HClでpH7にした。最終洗浄ステップの沈降物をアセトン中に再懸濁し、沈降し、上精を捨てた。沈降物を再びアセトン中に再懸濁後、懸濁物をペトリ皿に注ぎ、ドラフトにおいて室温で少なくとも18時間乾燥した。
最終ステップにおいて、結果として得られた米デンプンを乳棒と乳鉢において粉砕することにより微粉末にし、この粉末をさらなる試験のために直接用いることができる。
【0202】
8.熱水膨張力(SP)の測定
100mgのサンプル(デンプンまたは粉末)を10mlの水に懸濁し、続いて20分間92.5℃で膨張する。92.5℃でのサンプルのインキュベーション中、サンプル容器を360度注意深く転倒することにより懸濁液を繰り返し(最初の2分間、次に3、4、5、10、15、および25分後に連続的に)混合する。92.5℃での計30分間のインキュベーション後、25℃で5分間のインキュベーションを実施する前に、懸濁液を約1分間氷水中で冷却する。遠心後(室温、1000xg、15分間)、得られた上精を注意深くゲル様沈降物から除去し、沈降物の重量を測定する。以下の公式を使用して熱水膨張力を計算する:
SP=(ゲル様沈降物の重量)/(計量したサンプル(粉末またはデンプン)の重量)
【0203】
9.グルコース分子のC6位におけるデンプンリン酸含量の測定
デンプンにおいて、グルコース単位のC2、C3、およびC6位がリン酸化されうる。デンプンまたは粉末のC6−P含量を測定するために(Nielsen et al., 1994, Plant Physiol. 105: 111-117の改変方法)、50mgの米粉または米デンプンを4時間、500μlの0.7M HClにおいて95℃で連続撹拌しながら加水分解した。その後、混合物を10分間、15,500xgで遠心し、懸濁物質から上精を取り除き、フィルターメンブレン(0.45μm)により混濁を取り除いた。20μlの清澄な加水分解物を180μlのイミダゾールバッファー(300mM イミダゾール、pH7.4;7.5mM MgCl、1mM EDTA、および0.4mM NADP)と混合し、サンプルを340nmの光度計において測定した。基礎吸収を記録した後、2単位のグルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼ(ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)由来、Boehringer Mannheim)の添加により酵素反応を開始した。測定する変化(OD)は、6−ホスホグルコン酸およびNADPHをもたらすグルコース6−リン酸およびNADPの等モル変換に基づき、ここでNADPHの形成を上記の波長で記録する。終点に達するまで反応をモニターした。この測定の結果は、加水分解物中のグルコース6−リン酸含量を計算するために使用できる:
【数1】


計量した物質(粉末またはデンプン)中でのデンプンの不完全な加水分解が原因となる誤った結果を避けるために、加水分解の程度を続いて測定した。この目的のために、各加水分解物から10μlの加水分解物を取り出し、それをグルコース6−リン酸含量により測定し、10μlの0.7M NaOHで中和し、水で最終容積2mlにした(1:200希釈)。この希釈物の4μlを196μlの測定バッファー(100mM イミダゾール pH6.9;5mM MgCl、1mM ATP、0.4mM NADP)で処理し、グルコース含量の光度定量のために使用した。340nmでの基礎吸収を測定した後、2μlの酵素混合物(測定バッファー中、へキソキナーゼ 1:10;酵母からのグルコース6−リン酸デヒドロゲナーゼ1:10)の添加により光度計(340nm)において終点に達するまで反応をモニターした。測定の原理は、最初の反応のそれに対応する。得られたデータを使用し、問題になっているサンプルについてグルコースの量を計算できる:
【数2】


個々のサンプルにおいて検出されるグルコースの量は、C6−リン酸の定量において利用可能なデンプンの量に対応する。さらなる計算を単純化するために、グルコース含量をデンプン含量に換算する。
【数3】


以下において、この方法で、加水分解されたデンプン1g当たりのグルコース6−リン酸含量を表すために、グルコース6−リン酸測定の結果は、問題になっているサンプルのデンプン含量に関連付ける:
【数4】


グルコース6−リン酸の量を計量したサンプル(粉末またはデンプン)の重量に関連付ける場合とは対照的に、この種類の計算では、グルコース6−リン酸の量のみを、完全に加水分解されて、グルコースをもたらすデンプンの量に関連付ける。
【0204】
10.見掛け上のアミロース含量の測定
見掛け上のアミロース含量の測定は、Juliano(1971, Cereal Science Today 16(10): 334-340)の方法と同様の方法により実施した。各々のサンプルについて、50mgの米粉の重さを2回、100ml三角フラスコ中で量り、1mlの95%強度エタノールおよび9mlの1M NaOHで連続的に湿らせた。並行して、較正曲線を作成するために、ジャガイモデンプンからの規定量の純粋アミロースを伴うフラスコを同じ方法で粉末サンプルとして処理する。フラスコを短時間回転させ、内容物を混合し、続いて20分間沸騰水浴中で穏やかに撹拌しながらインキュベートした。室温で5−10分間の冷却後、容積を水で100mlにした。100μlの一定分量を1mlの測定溶液(10mM 酢酸、0.004%(w/v)12:0.04%(w/v)Kl)で処理し、十分に混合し、適切なブランクに対して620nmで吸着を測定した。アミロース含量の計算は、較正曲線を確立するために使用したアミロースのスタンダードを活用して実施した。
【0205】
11.定量的PCR
個々の未成熟な米粒(開花後約10〜12日)からRNAを調製した。液体窒素中で凍結した種子を、4mm鋼球(Retschミル、30 Hz、45 sec)を使用して均質化した後、Promegaの「SV 96 Total RNA Isolation System」を使用し、プロトコールNo. 294(Promega)に従ってRNAを調製した。RNAは、各々の場合において、製造者の指示に従い、10μlの「RQ1 RNase−Free DNase」(Promega)で処理した。
各々の場合において1つの植物の4個の種子からの同量のRNAを合わせた。定量的RT−PCRは、Promegaの「Access RT−PCR System」の試薬で実施した。
RT−PCRのための反応条件は、55℃で30分間、94℃で2分間、40x(94℃15秒、60℃1分)であった。各々の場合において、合わせたアニーリング/伸長期中に、ABI Prism 7700装置(Applied Biosystems)を使用して蛍光シグナルを記録した。
このアプローチにおいて用いた対照は、各々の場合において、逆転写酵素なしの混合物であった。
相対発現は、M. W. Pfaffl(2001. A new mathematical model for relative quantification in real-time RT-PCR, Nucleic Acids Research 29, No 9 00)により記載される通りに計算した。
【0206】
実施例
1.ワキシー(GBSSIノックアウト)変異体の生成および選択
ワキシー変異体は、米のアグロバクテリア(agrobacteria)媒介性の形質転換から生じた。子孫の解析によって、米粒のワキシー表現型が、形質転換と共に導入されたフォスフィノトリシン(phosphinotricine)耐性とは独立して遺伝されることが明らかになった。GBSSI(ワキシー)遺伝子の配列解析によって、ワキシー表現型遺伝子の発現が2つのヌクレオチドの交換に起因する可能性があり、その結果として未成熟な終止コドンが生成され、それによって切断型の、恐らくは不活性型のタンパク質が導かれることが明らかになった。米粒中に存在するデンプンの見掛け上のアミロース含量のRFLP解析によって5重量%未満の値が確認されたが、それは同定された変異体が「ワキシー」変異体であることを意味する。結果として、「ワキシー表現型」という用語は、デンプンが5%未満の見掛け上のアミロース含量を有するワキシー変異体を意味すると解釈される。
738−104および738−106株は、上記の突然変異についてホモ接合性であり、トランスジェニックアプローチとの併用のために使用された。
【0207】
【数5】

【0208】
2.デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質のコード配列を含む、植物発現ベクターpAH32−191の調製
コムギ(T.a.−SSII)からのデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の完全コード配列をプラスミドpCF31(国際公開第97/45545号においてpTaSS1の名前で記載)から制限エンドヌクレアーゼEcl136iiおよびXho Iにより切り出し、制限エンドヌクレアーゼEco RVおよびXho Iで切断したプラスミドpIR103−123(国際公開第05/030941号において記載)にクローニングした。得られた発現ベクターをpAH32−191と名付けた。植物発現ベクターpIR103−123は、米からの胚乳特異的グロブリンプロモーター(Nakase ら(1996)Gene 170(2): 223-226)の制御下にある標的遺伝子の胚乳特異的発現に役立つ。加えて、植物発現ベクターpIR103−123は、CaMV 35Sプロモーターの制御下にあるbar遺伝子を含み、その遺伝子は植物の形質転換のための選択マーカーとして使用された。
【0209】
3.デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性が増加したイネの生成
イネ(変種M202)は、Hiei ら(1994, Plant Journal 6(2), 271-282)により記載される方法を使用して、プラスミドpAH32−191を含むアグロバクテリアにより形質転換した。結果として得られた植物をoe−SSII−O.s.−Xと名付けたが、ここでXは形質転換から得られる独立した植物を意味する。
【0210】
4.発現ベクターpAH32−191で形質転換したイネの解析
oe−SSII−O.s.−Xと名付けられた株の、発現ベクターpAH32−191での形質転換から生じたイネ(T0植物)を、温室において土壌中で生育した。RNAを様々な株の未成熟な粒(T1種子)から単離し、「一般的方法」において記載される方法に従って、SSII特異的プローブを使用してノーザンブロット解析を実施した。対応する遺伝子改変していない野生型植物と比較し、コムギデンプンシンターゼIIの転写物の量が増加した複数の株を同定した(例として、図2において示す図表を参照)。
加えて、上記の形質転換での異なる株からの未成熟なT1種子のタンパク質抽出物におけるデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性増加をザイモグラムにより測定した(例として、図1および2において示す図表を参照)。解析は「一般的方法」において記載するザイモグラムにより実施した。
記載した解析の結果に基づき、他のアプローチとの併用のために以下の株を選択した:
oe−SSII−O.s−01502
様々な解析に基づき、この株は、ベクターpAH32−191のT−DNAの挿入についてホモ接合性であることを実証可能であった。
【0211】
5.グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性が増加したイネの生成
イネ(変種M202)は、プラスミドpML82(国際公開第05/095619号において記載)を含むアグロバクテリアにより、Hiei ら(1994, Plant Journal 6(2), 271-282)により記載の方法を使用して形質転換した。結果として得られた植物をoe−GWD−O.s.−Xと名付けたが、ここでXは形質転換から得られる独立した植物を意味する。
【0212】
6.発現ベクターpML82で形質転換したイネの解析
oe−GWD−O.s.−Xと名付けられた株の、発現ベクターpML82での形質転換から生じたイネ(T0植物)を、温室において土壌中で生育した。異なる株からの個々の、未成熟な粒(T1種子)を粉末にした。この目的のために、個々の粒は、ボールミル(Retschから、MM300)において、30秒間、30 Hertzの振動数で、Eppendorf反応容器において、タングステンカーバイド球を使用して粉砕した。この後に、「一般的方法」において記載される通りに、粉末中に存在するデンプンのグルコース分子のC6位におけるデンプンリン酸含量の測定が続いた。
選択した植物について以下の結果が得られた:
【表1】


表1:変種M202の対応する遺伝子改変していない野生型植物(WT)の種子と比較した、oe−GWD−O.s.−Xという名称の付いた異なる株からの個々のT1種子のグルコース分子のC6位におけるデンプンリン酸含量
【0213】
表1から分かる通り、植物発現ベクターpML82での形質転換の結果であり、対応する遺伝子改変していない野生型植物と比較し、グルコース分子のC6位において増加したデンプンリン酸含量を有する独立した株を同定することが可能であった。グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の発現が増加した植物細胞は、対応する遺伝子改変していない野生型植物と比較し、デンプンリン酸含量のより高いデンプンを合成することが知られている(例えば、国際公開第02/34923号を参照)。
上記の解析に基づき、他のアプローチとの併用のために以下の株を選択した:
oe−GWD−O.s,−2
oe−GWD−O.s,−4
oe−GWD−O.s,−9
様々な解析に基づき、これら株は、ベクターpML82のT−DNAの挿入についてホモ接合性であることを実証可能であった。
【0214】
7.ワキシー表現型およびグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性増加を伴う植物の生成
以下の通りに交配した:
【表2】


表2:738−104/4(M202ワキシー)とoe−GWD−O.s.との組み合わせの交配
【0215】
グルコース分子のC6位におけるデンプンリン酸含量(C6P)について、交配の結果であるF1種子の胚乳を試験した。雌性親との比較でデンプンリン酸含量(C6P)が顕著に増加したそれらの粒の胚を、組織培養技術により発芽させた。十分な大きさが得られた後、F2種子を産生するために、関連する植物を温室に移した。
【0216】
成熟したF2種子から視覚採点(visual scoring)によりワキシー表現型を伴う粒を選択し、温室中に置いた。発芽後、植物にBasta(登録商標)(Bayer CropScience)を噴霧し、Basta(登録商標)耐性植物から葉サンプルを採取した。ベクターpML82のT−DNAの挿入についてホモ接合性である植物を、インベーダー技術(invader technology)(http://www.twt.com/invaderchemistry/invader chem.htm; Ledford et al.(2000, J. of Mol. Diagnostics 2(2): 97-104; Mein et al., 2000, Genome Res. 10: 330-343)を使用したbar遺伝子のコピー数の決定により同定した。このようにして選択した植物は、F3種子の産生のために温室中で生育した。
【0217】
潜在的な二重ホモ接合性植物のいくつかの成熟したF3種子のデンプンリン酸(C6P)含量について個々に研究した。すべての子実が予想通り高いデンプンリン酸(C6P)含量を有する、それらの植物を保持した。
【0218】
親の組み合わせのすべての二重ホモ接合性植物の種子をプールし、さらなる繁殖ならびに子実および粉末の特性分析のために使用した。
【0219】
oe−SSII−O.s株との組み合わせについて、ワキシー突然変異およびベクターpML82のT−DNAのいずれについてもホモ接合性である事象XPOS0001−05を選択した。
【0220】
8.ワキシー表現型およびグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性増加およびデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性増加を伴う植物の生成
以下の通りに交配した:
【表3】


表3:oe−SSII−O.s.とXPOS0001−05との組み合わせの交配
交配における成功事象は、F1胚乳のデンプンリン酸含量を測定することにより同定したが、それは、組み合わせのデンプンリン酸含量が親株のそれよりも顕著に高いためである。
【0221】
9.ワキシー表現型およびグルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性増加およびデンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性増加を伴う植物の分析
胚乳が5nmol C6P/mgデンプンを超えるデンプンリン酸含量を有し、したがって、両親のそれを顕著に超える(oe−GWD−O.s.では2.5nmol/mgデンプンおよびoe−SSII−O.s.では少なくとも0.8nmol/mgデンプン)F1種子の胚を、組織培養技術により発芽させ、問題になっている植物は、ひとたびそれらが適切な大きさに達したら、温室に移し、F2種子を産生した。
【0222】
両方の導入遺伝子およびワキシー突然変異についてホモ接合性である子孫を同定するために、胚救出を含む「ワキシー表現型」に関して視覚的に事前選択したF2種子について上記の手順を繰り返した。
【0223】
10.F2植物の選択および分析
デンプンリン酸測定の結果に基づき、F2種子を選択し(C6P>8nmol/mgデンプン)、それらの胚を発芽させ、問題になっているF2植物を温室において生育した。
ゲノムDNAをF2植物の葉材料から抽出し、2つの導入遺伝子およびbar遺伝子のコピー数(2つの導入遺伝子についての値の合計)を定量的PCRにより決定した。
ワキシー突然変異がホモ接合性であることの証明は、ワキシー突然変異のGBSSI遺伝子(定義および/または方法)におけるRFLP(Bam HI)を使用して実施した。2つの導入遺伝子について潜在的にホモ接合性であり、ワキシーRFLPについてホモ接合性であるF2植物を温室において生育し続け、F3種子の産生のために使用した。
【0224】
11.F3植物の選択/F3種子の分析
三重ホモ接合株を同定するために、適切に選択した植物のいくつかの個々の子実で、ワキシー表現型について視覚的に検証し、続いてそれらのデンプンリン酸含量について試験した。すべての子実がワキシー表現型を有する場合、および、1つの植物のすべての子実についてデンプンリン酸含量がほぼ同様に高いことが見出された場合、植物は、ワキシー突然変異について、および、pML82およびpAH32−191のT−DNAについてホモ接合性であると推測できる。
【0225】
12.F4材料の生成
以下の株が、上記の分析において三重ホモ接合であることが見出された:
XPOS002501−1−37
XPOS002501−1−13
XPOS002501−1−19
これらの株からの植物を温室において生育し、産生したF4種子を収穫および乾燥し、次にすべての子孫について1株としてプールした。
【0226】
13.F4材料の成分の機能性および分析
a)子実の組成
【表4】

【0227】
表4:単一遺伝子アプローチおよび三重組み合わせについての米粉および米デンプンにおける見掛け上のアミロース含量
組み合わせXPOS0025/6が、ワキシー変異体(738−104/6)のそれを超えるアミロース含量を有することが明らかになった。
【表5】

【0228】
表5:単一遺伝子アプローチおよび三重組み合わせについての米粉またはデンプンのC6位におけるデンプンリン酸含量
三重組み合わせのC6位におけるデンプンリン酸含量は、単一遺伝子アプローチのそれよりも顕著に高い。
b)米粉および米デンプンの機能性
【表6】

【0229】
表6:単一遺伝子アプローチおよび三重組み合わせの米粉または米デンプンの熱水膨張力
上記の株および野生型植物のF4種子から調製した粉末またはデンプンの熱水膨張力の測定は、「一般的方法」において記載する通りに達成した。
三重組み合わせの熱水膨張力は、単一遺伝子アプローチのそれを顕著に上回る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプンが5重量%未満の見掛け上のアミロース含量を有し、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、デンプンシンターゼIIの酵素活性を伴うタンパク質の活性増加およびグルカン、水ジキナーゼの酵素活性を伴うタンパク質の活性増加を追加で有する遺伝子改変した単子葉植物細胞。
【請求項2】
遺伝子改変が、少なくとも1つの外来核酸分子の、植物のゲノムへの導入にある、請求項1記載の遺伝子改変した単子葉植物細胞。
【請求項3】
対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞から単離したデンプンと比較し、改変したデンプンを合成する、請求項1または2のいずれかに記載の遺伝子改変した単子葉植物細胞。
【請求項4】
熱水膨張量の増加したデンプンを合成する、請求項1、2、または3のいずれか1項記載の遺伝子改変した単子葉植物細胞。
【請求項5】
デンプンが60から100g/gの間の増加した熱水膨張力を有する、請求項4記載の遺伝子改変した単子葉植物細胞。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の遺伝子改変した植物細胞を含む単子葉植物。
【請求項7】
米、トウモロコシ、およびコムギを含む群より選択される、請求項6記載の単子葉植物細胞。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項記載の遺伝子改変した植物細胞を含む、請求項6または7のいずれかに記載の単子葉植物の繁殖物質。
【請求項9】
遺伝子改変した単子葉植物の生成の方法であって、ここで
a)植物細胞を遺伝子改変し、遺伝子改変は以下の工程iからiii:
i)植物細胞への遺伝子改変の導入、ここで、遺伝子改変が、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性における増加を導く、
ii)植物細胞への遺伝子改変の導入、ここで、遺伝子改変が、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性における増加を導く、
iii)植物細胞への遺伝子改変の導入、ここで、遺伝子改変が、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、GBSSIの活性を伴うタンパク質の活性における低下を導く、
ここで、工程iからiiiは、工程iからiiiの任意の所望の組み合わせとして、任意の所望の順番で、個別に、または同時に実施できる、
を含み、
b)植物が工程a)の植物細胞から再生され;
c)適宜、さらなる植物が、工程b)の植物を活用して生成され、
ここで、適宜、植物細胞を工程b)またはc)に従って植物から単離し、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、デンプンシンターゼIIの活性を伴うタンパク質の活性が増加した、および、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、グルカン、水ジキナーゼの活性を伴うタンパク質の活性が増加した、および、対応する遺伝子改変していない野生型植物細胞と比較し、GBSSIの活性を伴うタンパク質の活性が低下した植物が生成されるまで、方法工程a)からc)を繰り返す、
方法。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか1項記載の遺伝子改変した植物細胞から、請求項6または7のいずれかに記載の植物から、請求項8記載の繁殖物質から、または請求項9記載の方法により入手可能な植物からデンプンを抽出する工程を含む、改変デンプンの調製のための方法。
【請求項11】
デンプンの調製のための、請求項6または7のいずれかに記載の植物の、請求項8記載の繁殖物質からの、または、請求項9記載の方法により入手可能な植物からの部分の使用。
【請求項12】
請求項10記載の方法により入手可能な改変デンプン。
【請求項13】
5重量%未満の見掛け上のアミロース含量、および、対応する遺伝子改変していない単子葉の野生型植物から単離したデンプンと比較し、60−100g/gの間の増加した熱水膨張力を有する、請求項12記載の改変デンプン。
【請求項14】
請求項12または13のいずれかに記載の改変デンプンが続いて誘導体化される、誘導体化デンプンの調製のための方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法により入手可能な誘導体化デンプン。
【請求項16】
誘導体化デンプンの調製のための請求項12または13のいずれかに記載の改変デンプンの使用。
【請求項17】
請求項10記載の方法により入手可能な改変デンプンを含む、または、請求項12または13のいずれかに記載の改変デンプンを含む、粉末。
【請求項18】
請求項6または7のいずれかに記載の植物、請求項8記載の繁殖物質、または請求項9記載の方法により入手可能な植物の部分を製粉する工程を含む、粉末の調製のための方法。
【請求項19】
粉末の産生のための、請求項1から5のいずれか1項記載の遺伝子改変した単子葉植物細胞、請求項6または7のいずれかに記載の単子葉植物、請求項8記載の繁殖物質、または請求項9記載の方法により入手可能な単子葉植物の使用。
【請求項20】
請求項10、12、13または15のいずれか1項記載のデンプンを含む産物。
【請求項21】
請求項17記載の粉末を含む産物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−516263(P2010−516263A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546697(P2009−546697)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000614
【国際公開番号】WO2008/090008
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(507203353)バイエル・クロップサイエンス・アーゲー (172)
【氏名又は名称原語表記】BAYER CROPSCIENCE AG
【Fターム(参考)】