説明

膵臓癌に関連する抗原、それらに対する抗体、及び診断方法及び処置方法

【課題】本発明は、ラット及びヒトの膵臓癌細胞の表面上に見いだされる抗原に関し、この抗原に対して高い特異性及び選択性を有する抗体、及び主題の抗体を分泌するハイブリドーマを提供する。膵臓癌の診断及び処置のための方法もさらに提供する。
【解決手段】膵臓悪性線腫の組織マーカーであるPaCa−Aglと命名された約43.5kDの表面膜タンパク質は、通常の膵臓では全く発現しないが、膵臓癌腫細胞中では豊富に発現する。さらに、主題の抗体を用いて、膵臓癌患者の血清及び他の体液中で容易に同定される分子量約36〜約38kDaを有するPaCa−Aglの可溶性形態が存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膵臓癌腫細胞の表面上に見出される特定の抗原の発見、及び高い特異性及び抗原に対する選択性を有するモノクローナル抗体に関する。抗原及びその抗原に対する抗体は、動物、特にヒトにおける膵臓癌の診断及び処置において使用されてもよい。
【背景技術】
【0002】
膵臓癌は、疾患を有すると診断された患者の平均生存期間がたった80〜90日である、ほぼ常に致命的な疾患である。膵臓癌は、アメリカ合衆国において死亡した多くの患者数にとってより致死率の高い癌の1つである。診断時から5年生存できるのは患者の4%未満であり、約7年後には確実に死に至る。現在では、体液又は分泌物中の膵臓癌に特異的な抗原を同定する膵臓癌に特異的なマーカー、膵臓癌に特異的な抗体、膵臓癌に特異的なアッセイは存在しない。
【0003】
膵臓癌(PaCa)がアメリカ合衆国だけで毎年29,000人の新しい生命を奪い、それ故に、癌に関連する死亡数において4番目の位置を占める1つの理由は、初期の診断ツールがないからである。効果的な初期の診断ツールは、PaCaに特異的で、治療的介入が首尾よく致死疾患の進行を抑えると同時に同定可能なマーカーを必要とする。
【0004】
膵臓癌腫を初期の治癒可能な段階で検出するためのコスト的に有効な非侵襲性試験が緊急で必要とされる。患者の8%のみが局所的疾患を有するのに対して、診断時に51%が遠位の疾患を有する(非特許文献1);前者の5年生存率は17〜30%であるのに対して、後者は2%である(非特許文献2)(非特許文献3)。特に高い死亡率、臨床的症状が現れた時には膵臓損害の85%が切除不可能であること、効果的な治療法がないこと、及び2cm以下の損害でさえ(通常は偶然発見される)すでに転移しているか、又はすでに高い死亡率を有している場合があることから、膵臓悪性腫瘍の初期検出のために有用な試験の開発は気力を失わせるほどの挑戦である(非特許文献4);(非特許文献5);(非特許文献6);(非特許文献7)。膵臓悪性線腫のために社会にかかるコストは、処置のみで1年あたり26億ドルであると概算されている(非特許文献8);この数字はこの疾患の罹患率及び死亡率によって影響を受ける逸失利益及び他の因子は考慮されていない。
【0005】
【非特許文献1】Jemal A, Murray T,San2uels A, Ghafoor A, Ward E, Thun MJ Cancer statistics 2003. Ca Cancer J Clin, 53:5−26,2003.
【非特許文献2】Jemal A, Murray T,San2uels A, Ghafoor A, Ward F, Thun MJ Cancer statistics 2003. Ca Cancer J Cliin, 53:5−26,2003.
【非特許文献3】Yeo, C.J. (1995). “Management of complications following pancreaticoduodenectoniy.” SurgCljn North Am 75(5): 913−24.
【非特許文献4】Birkmeyer JD, Warshaw AL, Finlayson SRG et al. Relationship between hospital volume and late survival after pancreaticoduodenectomy. Surgery 126: 178−83, 1999.
【非特許文献5】Russell RCG.Surgical resection for cancer of the pancreas. Baillieres Clin Gastroenterol 4:889−916,1990.
【非特許文献6】Nix GAJJ,Dubbelman C,Wilson JHP et al.Prognostic implications of tumor diameter in carcinoma of the head of the pancreas. Cancer 67:529−535,1991.
【非特許文献7】Tsuchiya R, Tomioka T, Izawa K et al. Collective review of small carcinomas of the pancreas. Ann Surg, 203:77−81,1986.
【非特許文献8】Elixhauser A, Halpern MT. Economic evaluations of gastric and pancreatic cancer. Hepatogastro−enterol, 46:1206−1213, 1999.
【0006】
現在、膵臓癌腫を診断し、疾患の進行をモニターし、治療に対する応答をモニターするために唯一広く使用されている臨床的な血清試験は、炭水化物抗原19−9(CA19−9)のELISAアッセイである。直腸癌腫細胞系抗原に対して製造されるモノクローナル抗体によって検出されるCA19−9(非特許文献9)は、多くの膵臓悪性線腫において高濃度で発現するが、正常な膵臓、胆管及び胃腸管中の細胞にも存在するガングリオシドシアリル−ラクト−N−フコペンタオース(非特許文献10)である(非特許文献11);(非特許文献12)。従って、これらの組織に対する炎症又は障害は、血液流内にCA19−9の流出を生じ、膵炎、肝硬変及び閉塞性胆管炎のような通常の非腫瘍性疾患における偽陽性上昇を導く(非特許文献13)。CAI9−9ELISAの偽陽性は、2〜54%の範囲で報告されており(非特許文献14);(非特許文献15)、膵臓悪性線腫の初期検出のためのスクリーニングとしてのCA19−9アッセイを有用性のないものにしている。さらに、CA19−9はさらに、胆管癌腫、肝細胞癌腫、胃腸管の癌腫(直腸、胃、食道)及びいくつかの他の癌を含む非膵臓の悪性腫瘍のスペクトルも高める(非特許文献16);(非特許文献17);(非特許文献18)。
【0007】
【非特許文献9】Koprowski H,Steplewski Z, Mitchell K,et al.Colorectal carcinoma antigens detected by hybridoma antibodies.Somat Cell Genet 5:957−072,1979.
【非特許文献10】Magnani J, Nilsson B, Brocklians M, et al. Amonclonal antibody−defined antigen associated with intestinal cancer is a ganglioside containing sialylated lacto−N−fucopentaose II. J Biol Chern 257:14365−14369,1982.
【非特許文献11】Arends JW. Distribution of monoclonal antibody−defined monosialoganglioside in normal and cancerous human tissues: an immunoperoxidase study. Hybridoma 2:219−229,1982
【非特許文献12】Rollhauser,C, Steinberg,W.Tumor antigens in pancreatic canber.In: Pancreatic Cancer: Pathogenesis,Diagnosis and Treatment. Edt.:H A Reber, Humana Press,Totowa,NJ,USA.pp137−156.1998.
【非特許文献13】Rollhauser,C,Steinberg,W.Tumor antigens in pancreatic canber. In: Pancreatic Cancer: Pathogenesis, Diagnosis and Treatment.Edt.:H A Reber, Humana Press,Totowa,NJ,USA.pp137−156.1998.
【非特許文献14】Jalanko,H.,P.Kausela, et al(1984).”Comparison of a new tumour marker, CA 19−9, with alpha−fetoprotein and carcinoembryonic antigen in patients with upper gastrointestinal diseases.”J Clin Pathol 37(2): 218−22.
【非特許文献15】Eskelinen M,Haglund U. Developments in serologic detection of human pancreatic adenocarcinoma. Scand J Gastroenterol, 34:833−844, 1999.
【非特許文献16】Steinberg, W. Clinical Utility of the CA 19−9 tumor associated antigen. Am J Gastroenterol,85:359−355,1990.
【非特許文献17】Maestranzi s, Przemioslo R, Mitchell H, Sherwood R.A. The effect of benign and malignant liver disease on the tumour markers CA 19−9 and CEA. Ann Clin Biochern,35:99−103,1998.
【非特許文献18】Carpalan−Holmstrom M, Louh.im J, Steirnan UH, Alfthan H, Haglund C.CEA,CA 19−9 and CA72−4 improve the diagnostic accuracy in gastrointestinal cancers. Anticancer Res,22:2311−2316,2002.
【0008】
CA19−9の感受性は、37U/mlの推奨されたカットオフ値を用いて68〜93%の範囲であると報告されている(非特許文献19);(非特許文献20);(非特許文献21)。感受性は、切除可能な損害対切除可能でない損害の検出のために顕著に低下する;1つの代表的な研究では、後者の感受性は90%であり、切除可能な損害の検出については74%に低下する(非特許文献22)。CA19−9オリゴ糖鎖はさらに、Lewis血液グループ抗原を規定する(非特許文献23)。集合の約10〜15%は、この抗原を発現せず(非特許文献24)、このサブ集合において初期検出だけではなく、治療に対する応答及びCA19−9の減少及び増加を介する再発をモニターするためにもCA19−9を有用でないものにする(例外は、CA19−9抗原の膵臓癌発現を有する少数のLewis陰性患者である(非特許文献25);(非特許文献26);(非特許文献27)。
【0009】
【非特許文献19】Steinberg, W. Clinical Utility of the CA 19−9 tumor associated antigen. Am J Gastroenterol, 85:359−355,1990.
【非特許文献20】Jalanko,H.,P.Kuusela, et al (1984). “Comparison of a new tumour marker, CA 19−9, with alpha−fetoprotein and carcinoembryonic antigen in patients with upper gastrointestinal diseases.” J Clin Pathol 37(2): 218−22.
【非特許文献21】Eskelinen M, Haglund U. Developments in serologic detection of human pancreatic adenocarcinoma. Scand J Gastroenterol,34:833−844,1999.
【非特許文献22】Safi F, Schiosser W, Falkenreck S, Beger HG. Prognostic value of CA 19−9 serum course in pancreatic cancer. Hepatogastroenterology. 45:253−9,1998.
【非特許文献23】Magnani J, Nilsson B, Brocklians M, et al. Amonclonal antibody−defmed antigen associated with intestinal cancer is a ganglioside containing sialylated lacto−N−fucopentaose II.J Biol Cherm 257:14365−14369,1982.
【非特許文献24】Tempero, M.A.,E. Uchida, et al. (1987).“Relationship of carbohydrate antigen 19−9 and Lewis antigens in pancreatic cancer. “Cancer Res 47(20): 5501−3.
【非特許文献25】Yazawa,S.,T.Asao,et al. (l988).“The presence of CA19−9 in serum and saliva from Lewis blood−group negative cancer patients.” Jpn J Cancer Res 79(4): 538−43.
【非特許文献26】Takasaki H, Uchida B, Tempero M et al. Correlative study on expression of CA 19−9 and DUPAN−2 in tumor tissue and in serum of pancreatic cancer patients. Cancer Res.48:1435−1438, 1988.
【非特許文献27】Von Rosen A, Linder S, Harmenberg U, Pegert S. Serum levels of CA 19−9 and CA 50 in relation to Lewis blood cell status in patients with malignant and benign pancreatic disease.Pancreas 8:160−165,1993.
【0010】
膵臓癌腫細胞について別のさらに最近開発された、血清マーカーとして臨床的な診断能力を有する分子標識は、ホスファチジルイノシトールに結合した表面タンパク質メソセリン(mesothelin)であり(非特許文献28)、これは、膵臓悪性線腫の大多数において過剰発現する(非特許文献29)。メソセリンは、正常な中皮細胞で発現し、中皮腫中の卵巣悪性線腫(卵巣表面上の改質された中皮細胞から誘導される腫瘍)、有意な数の非小細胞肺癌腫、乳癌腫、子宮内膜癌腫、頚部癌腫、子宮内膜癌腫、腸癌腫、及び直腸癌腫の95%中に存在する(非特許文献30);(非特許文献31)。
【0011】
【非特許文献28】Chang K,Pai LI−I, Batra JK, Pastan I, Willingham MC. Characterization of the antigen (CAK2) recognized by monoclonal antibody Kl present on ovarian caxicers and normal inesothelium. Cancer Res 52:181−186, 1992.
【非特許文献29】Argani P,Iacobuzio−Donahue C, Ryu B, Hruban RH et al. Mesothelin is overexpressed in the vast majority of ductal adenocarcinomas of the pancreas: identification of a new paacreatic cancer marker by serial ana1ysi of gene expression. Cli.n Cancer Res 7:3862−68,2001.
【非特許文献30】Chang K, Pastan I. Molecular cloning and expression of a cDNA encoding a protein detected by the Kl antibody from an ovarian carcinoma (OVCAR−3) cell line. Int JCancer 57:90−97, 1994.
【非特許文献31】Scholler N, Fu N, Ye Z, Goodman GE, Hellstrom KE, Helistrom I. Soluble member(s) of the mesothelin/megakaryocyte potentiating factor are detectable in sera from patients with ovarian adenocarcinoma. Proc Nati Acad Sci USA 96:11531−11536,1999.
【0012】
膵臓癌腫の初期検出のために提案された1つの技術は、便サンプルからの異常DNAの検出を含む。この方法は、直腸の悪性線腫の初期検出のために促進され、少数の研究において膵臓悪性線腫において示された(非特許文献32)。正常な膵臓中では全く発現しないが、他の組織中では見いだされない(又は微量でのみ見出される)膵臓がん細胞に特異的な抗原を検出する血清診断アッセイは、CA19−9免疫学的検定法又はメソセリンマーカーよりもかなり有効であることがわかった。
【0013】
【非特許文献32】Caldas C, Hahn SA, Hruban RH et al Detection of K−ras mutations in the stool of patients with pancreatic adenocarcinoma and pancreatic ductal hyperplasia. Cancer Res 54:3568−3573,1994.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、3C4−Ag(又はPaCa−Agl)と命名される膵臓癌腫に特異的な抗原の発見に関する。この抗原は、ラット及びヒトの膵臓癌細胞の表面に主に局在化し、現在まで試験されるように、通常の卵巣において痕跡量検出される以外は、通常の形質転換されていない細胞において検出されない。従って、本発明は、膵臓癌検出及び処置の領域において切望される改良を表す。PaCa−Agl抗原はさらに、膵臓癌腫患者の血清及び他の体液中にも存在する。それに加えて、本発明はさらに、PaCa−Agl抗原に特異的に結合する抗体に関する。主題の抗原及び抗体は、膵臓癌の診断方法及び処置方法の両方において有用であり、本明細書中で提供される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に従って、実質的に精製形態での膵臓癌腫に特異的な抗原3C4−Ag(PaCa−Agl)が提供される。3C4−Agは、SDS−PAGEによって決定される、約43又は43.5kDaの分子量;等電点電気泳動法でのpIが約4.5〜約5.0;及び顕著なグリコシル化の非存在によって特徴付けられてもよい。3C4−Agは、ラット及びヒトの膵臓癌細胞の表面上に主に局在化しており、正常な非増殖性細胞においては検出されない。PaCa−Agl抗原はさらに、膵臓癌患者の血清及び他の体液中に存在するが、健康な固体の血液又は血清中には存在しない。3C4−Agの免疫的に活性なフラグメントはさらに本発明に包含される。
【0016】
膵臓癌腫に特異的な抗原3C4−Agに対する結合特異性を有する抗体又はそれらの結合部分がさらに提供され、上記抗原はSDS−PAGEによって決定される、約43又は43.5kDaの分子量;等電点電気泳動法でのpIが約4.5〜約5.0;及び顕著なグリコシル化の非存在;及びラット及びヒトの膵臓癌細胞の表面上及び膵臓癌患者の血清中に主に局在化しており、正常な非増殖性細胞又は健康な個体の血清においては検出されないことによって特徴付けられる。主題の抗体は、ポリクローナル又はモノクローナルであってもよく、さらにヒト化形態であってもよい。それに加えて、主題の抗体は、蛍光体、ケミロフォア、化学発光剤、光増感剤、懸濁粒子、同位体元素又は酵素で標識されてもよい。別の実施形態では、主題の抗体は、診断薬物、治療薬物又は毒素に接合又は結合してもよい。
【0017】
本発明はさらに、3C4−Agに特異的に免疫反応性のモノクローナル抗体を産生する抗原マウスハイブリドーマ細胞系を提供する。
【0018】
本発明の別の態様では、動物被検体において膵臓癌を検出する方法が提供される。この方法は、以下の工程を含む:(a)前記被検体由来の細胞、組織又は液体サンプルと、3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントに特異的に結合する抗体又はそれらの結合部分;モノクローナル抗体mAb34C;又はモノクローナル抗体mAb34Cによって結合されるエピトープに結合する抗体の少なくとも1つとを、前記抗体が前記サンプル中の抗原に特異的に結合可能な条件下で接触させ、抗体−抗原複合体を形成する工程;(b)前記サンプル中の抗体−抗原複合体を検出する工程;及び(c)前記サンプル中の抗体−抗原複合体の増加レベルの検出と膵臓癌の存在を示す対照サンプルとを関係付ける工程とを含む。
【0019】
本発明のなお別の実施形態では、患者由来の細胞、組織又は液体サンプルにおける3C4−Agを検出するのに好適な診断キットが提供される。このキットは、:(a)3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントに特異的に結合する抗体又はそれらの結合部分、(b)前記抗体又はそれらの結合部分のための特異的な結合パートナーの接合体;及び(c)前記結合した抗体を検出するための標識などの様々な構成要素を備える。
【0020】
本発明の別の態様では、患者において膵臓癌を処置する方法が提供される。この方法は、3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントに特異的に結合する有効量の抗体又はそれらの結合部分を前記患者に投与する工程を含み、前記抗体又はそれらの結合部分が治療薬物又は毒素に接合又は結合する。
【0021】
薬学的に許容可能なキャリアと混合される、3C4−Agに特異的に結合する抗体又はそれらの結合部分を含む薬学的組成物も提供される。3C4−Agに特異的に結合するこの抗体又はそれらの結合部分は、薬学的組成物中の治療薬物又は毒素に接合又は結合されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、膵臓癌腫に特異的な抗原及びそれらに特異的に結合する抗体に関する。膵臓癌腫に特異的な抗原(膵臓癌に関連する抗原)はさらに、本明細書中で以下、3C4−Ag又はPaCa−Aglと互換可能に称され、SDSポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)によって決定される約43又は43.5kDaの分子量を有し、ラット及びヒトの膵臓癌細胞の表面上に主に局在化している。3C4−Agは、正常な非増殖性細胞においては検出されず、腎臓、前立腺及び可能な場合直腸癌腫において非常に低レベルでしか検出されない。
【0023】
本発明はさらに、膵臓癌患者の血清又は他の体液に存在し、約35kDaの分子量を有する3C4−Ag(PaCa−Agl)の可溶性形態、それらから単離可能な形態に関する。
【0024】
3C4−Agは、インタクトな生存膵臓癌細胞及びインタクトな固定された膵臓癌細胞(ラット及びヒトの細胞系)で、マウスモノクローナル抗体mAbC4を一次抗体として用いた後、フルオレセイン標識されたヒツジ又はウサギ抗マウスIgG(FITC−S又はR抗−M IgG)及び蛍光顕微鏡による、間接免疫蛍光(IF)によって最初に細胞表面抗原として同定された。免疫減算−過剰免疫化プロトコル(ISHIP)を用いてモノクローナル抗体mAb3C4を産生し、このプロトコルは、出願人の仮特許出願、名称「寛容誘発標的化抗体産生(TITAP)」、(特許文献1)に完全に記載されており、これらの開示は本明細書中に完全に記載されているものとして組み込まれる。ISHIPプロトコルに従って、形質転換されていないラット膵臓細胞(BMRP1細胞)上に存在するマウスにおけるシクロホスファミドで誘発される抗原に対する耐性の後、既知の発癌物質4−(メチル−ニトロソアミノ)−1−(3−ピリジル)−1−ブタノンで新生物的に形質転換されたBMRPA1細胞で続けて過剰免疫化されたもの(以下、BMRP1.NNK細胞)は、BMRPA1.NNK細胞に対する抗体を分泌する血漿細胞のマウスの脾臓内への移動を高める。P3U1骨髄腫細胞を用いた免疫化されたマウスからの脾細胞の後に続く融合は、BMRPA1.NNKの表面上で膵臓癌に関連する抗原(3C4−Ag)と特異的に反応する抗体を分泌するハイブリドーマを製造するが、形質転換されていない細胞上では製造しない。
【0025】
【特許文献1】米国出願番号60/413,703(2003年1月29日出願)
【0026】
本発明に従って、実質的に精製形態の膵臓癌腫特異的な抗原3C4−Agが提供される。3C4−Agは以下:SDS−PAGEによって決定される約43又は43.5kDaの分子量;等電点電気泳動法でのpI約4.5〜約5.0;及び顕著なグリコシル化の非存在によって特徴付けられ、50mM Tris−HCl、1%NP40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、5mM EDTA、1μg/mLペプスタチン、2ug/mLアプロチニン、1mM PMSF、及び5mMヨードアセトアミドに可溶性であり;ラット及びヒトの膵臓癌細胞の表面上に主に局在化しているが、正常な形質転換されていない細胞においては検出されない。
【0027】
さらに本発明に従って、膵臓癌腫特異的な抗原3C4−Agに対する結合特異性を有する抗体が提供され、ここで、この抗原は、SDS−PAGEによって決定される約43又は43.5kDaの分子量;等電点電気泳動法でのpI約4.5〜約5.0;及び50mM Tris−HCl、1%NP40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、5mM EDTA、1μg/mLペプスタチン、2ug/mLアプロチニン、1mM PMSF、及び5mMヨードアセトアミドに可溶性であり;ラット及びヒトの膵臓癌細胞の表面上に主に局在化しているが、正常な形質転換されていない細胞においては検出されないことによって特徴付けられる。3C4−Agに対して特異的に結合する主題の抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であってもよい。好ましくは、抗体はモノクローナル抗体(mAb)である。なおさらに好ましくは、mAbは3C4である。
【0028】
上記の抗体はさらに、膵臓癌腫特異的な抗原3C4−Agに対する結合特異性を有し、ここで、上記抗原は可溶性形態であり、膵臓癌患者の血清又は他の体液から単離可能である。
【0029】
3C4−Agに特異的に免疫反応性のモノクローナル抗体を産生するマウスハイブリドーマ細胞系がさらに提供される。好ましくは、マウスハイブリドーマ細胞系はmAb3C4を産生する。
【0030】
膵臓癌に関連する抗原3C4−Agは、多くの周知の方法を用いて調製されてもよい。3C4−Agは同定されてもよく、その遺伝子配列は、免疫減算ハイブリダイゼーション又は差次RNAディスプレイ方法論を用いて得られる。特定の宿主細胞において機能するプロモーターの制御下で3C4−Agをコードする遺伝子は、抗原を発現するために、このような宿主細胞をトランスフェクトするために使用されてもよい。あるいは、3C4−Agは、周知の方法を用いて化学合成されてもよい。
【0031】
膵臓癌に関連する抗原3C4−Agは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE;例えば、(非特許文献33)を参照、及びサイズ排除クロマトグラフィーのような当該技術分野で周知の方法を用いて精製されてもよい。他の精製技術、例えば、3C4−Ag(例えばmAb3C4)に結合する抗体を用いた免疫親和性クロマトグラフィーもさらに行われてもよい。このような方法は、実施例8に例示される。SDS PAGEの後、約43kDaの3C4−Agバンドをゲルから切除し、適切な緩衝液に溶出させた。3C4−Agのさらなる精製を、ゲルろ過、イオン交換クロマトグラフィー及び/又は高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を含んで行ってもよい。HPLCは好ましい精製方法である。
【0032】
【非特許文献33】Harrington,M.G.(1990) Methods Enzymol.,182:488−495.
【0033】
精製された3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントは、3C4−Agと反応するポリクローナル抗体を産生する目的で、動物に接種するために使用されてもよい。「免疫的に活性なフラグメント」とは、3C4−Agが膵臓癌細胞の表面上に暴露される際に、3C4−Ag上で暴露されたエピトープと特異的に反応する抗体の産生、又は膵臓癌患者の血清又は他の体液から単離可能な3C4−Agの可溶性形態と反応する抗体の産生を刺激するのに十分な約43又は43.5kDaの3C4−Agタンパク質のフラグメントを意味する。従って、mAb3C4に加えて、本発明は、3C4−Agと特異的に反応する他の抗体、ポリクローナル又はモノクローナル、又はそれらの免疫的に活性なフラグメントを意図し、抗体はmAb3C4と同様に、3C4−Ag上で同じエピトープに結合してもよいし、結合しなくてもよい。
【0034】
動物、例えば、マウス、ヤギ、ラット、ヒツジ又はウサギなどの哺乳動物、又は他の動物、例えば、ニワトリなどの家禽は、3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントを用いて接種され、好ましくは、ポリクローナル抗体を産生する好適なキャリアタンパク質と接合される。このような免疫化は、十分な滴定量の抗体を得るために、数週間までの間隔で必要に応じて繰り返されてもよい。血液は、抗体が産生されるか否かを決定するために動物から集められ、抗血清は3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントに対する応答について試験され、必要な場合、再ブーストが行われる。いくつかの場合では、最後の抗原ブーストの後、動物を殺し、脾臓細胞を除去する。免疫グロブリンは、免疫化動物から得られた血清から精製される。次いで、これらの免疫グロブリンは、サンプル中の抗原の存在を検出するために、又は治療的適用において、診断用免疫学的検定法に使用することができる。
【0035】
好ましくは、3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントに対して特異的に反応するモノクローナル抗体が調製される。モノクローナル抗体を産生する方法は、例えば、(非特許文献34)(本明細書中で完全に記載されているものとして組み込まれる)に記載されるように当該技術分野で周知である。例えば、動物は、3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントで免疫化されてもよく、免疫化動物から脾臓細胞を得てもよい。次いで、抗体を分泌するリンパ球は、細胞培養物において無制限に複製可能な骨髄腫細胞又は形質転換された細胞と融合される。得られたハイブリドーマを培養してもよく、得られたコロニーは、所望のモノクローナル抗体を産生するためにスクリーニングされてもよい。抗体を産生するコロニーは、多量の抗体を産生する目的で、インビボ又はインビトロのいずれかで増殖されてもよい。
【0036】
【非特許文献34】Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495−497.
【0037】
ハイブリドーマ細胞系は、インビトロで繁殖させてもよく、高濃度のmAb(例えばmAb3C4)を含有する培地をデカンテーション、ろ過、又は遠心分離によって得てもよい。あるいは、mAb3C4のような主題の抗体のサンプルを、元の融合のための体細胞及び骨髄腫細胞を提供するために組織適合性の種類の動物、例えばマウスを使用して注射してもよい。mAbを分泌する腫瘍は、注射された動物において成長し、動物の体液、例えば腹水、液、又は血清は高濃度でmAbを産生する。
【0038】
細胞培養物中で無制限に複製可能な哺乳動物の骨髄腫細胞、又は他の融合パートナーとの融合は、標準的及び周知の技術によって、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)又は(非特許文献35);(非特許文献36);(非特許文献37)及び(非特許文献38)(これらの開示は本明細書中に完全に記載されているものとして組み込まれる)に記載されるような他の融合薬剤を用いることによって影響を受ける。このような不死化細胞系は好ましくはマウスであるが、ラット及びヒトのような他の哺乳動物種の細胞から誘導してもよい。好ましくは、細胞系は、特定の栄養の利用のために必要な酵素が欠乏しており、迅速に増殖可能であり、良好な融合能力を有する。このような細胞系は当業者に公知である。
【0039】
【非特許文献35】Milstein and Kohler(1976)Eur.J.Immunol.6:511.
【非特許文献36】Brown et al(1981)J.Immunol.127(2):539−46.
【非特許文献37】Brown et al(1980)J.Biol.Chem.,255:4980−83.
【非特許文献38】Yeh et al,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)76(6):2927−31.
【0040】
モノクローナル抗体を精製するための方法としては、硫酸アンモニウム沈降、イオン交換クロマトグラフィー、及びZolaら、(非特許文献39)(この開示は本明細書中に完全に記載されているものとして組み込まれる)に記載されるような親和性クロマトグラフィーが挙げられる。本出願の実施例7において記載されるようにマウスに3C4ハイブリドーマ細胞を注射した後、腹水を集めてもよい。mAb3C4は、G−タンパク質親和性ビーズを用いて腹水から精製してもよい。ビーズを適切な緩衝液で洗浄した後、結合したmAb3C4を溶出緩衝液を用いてビーズから溶出させ、簡単な遠心分離によってビーズから分離してもよい。
【0041】
【非特許文献39】Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Applications,Hurell(ed)pp.5−52(CRC Press 1982).
【0042】
抗体全体を利用することに加えて、本発明の方法は、3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントに特異的に結合する抗体の結合部分の使用を含む。このような結合部分としては、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、及びFcフラグメントが挙げられる。これらの抗体フラグメントは、従来の手順、例えば、(非特許文献40)(これは本明細書中に完全に記載されているものとして組み込まれる)に記載されるようなタンパク質分解フラグメント化手順によって製造されてもよい。
【0043】
【非特許文献40】Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.98−118,New.York,Academic Press(1983).
【0044】
本発明はさらに、患者における膵臓癌を検出するための診断方法を提供する。診断用方法は、3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントに特異的に結合する主題の抗体と反応させることによって患者由来のサンプルにおいて膵臓癌腫に特異的な抗原(3C4−Ag)の存在を検出する免疫学的検定法に基づく。患者サンプル源の例としては、細胞、組織、組織溶解物、組織抽出物、又は血液から誘導されるサンプル(例えば、血液、血清、又は血漿)、尿、又は大便が挙げられる。好ましくは、サンプルは液体である。液体サンプルは、好ましくは血液血清であるが、胸膜液又は腹水液のような他の液体も可能である。サンプル中の3C4−Agの濃度増加の検出は、患者における膵臓癌の診断と関係付けられる。
【0045】
本発明の方法において使用されてもよい多くの異なる種類の免疫学的検定法が存在する。患者の血清サンプル又は他のサンプルにおいて、3C4−Agと特異的に結合する抗体と反応する3C4−Agの濃度を検出するために任意の周知の免疫学的検定法、例えば、酵素免疫定量アッセイ(ELISA)、蛍光免疫定量アッセイ(FIA)、化学免疫定量アッセイ(CLIA)、放射能免疫アッセイ(RIA)、及びイムノブロッティング法(IB)を適用してもよい。使用してもよい異なる免疫学的検定法の総説として以下を参照:(非特許文献41);(非特許文献42)。
【0046】
【非特許文献41】The Immunoassay Handbook,David Wild,ed.,Stockton Press,New York,1994.
【非特許文献42】Sikora et al(eds.),Monoclonal antibodies,pp.32−52,Blackwell Scientific Publications(1984).
【0047】
例えば、患者において膵臓癌を検出するための免疫学的検定法は、患者由来のサンプルと第1の抗体又はそれらの結合部分(例えば、mAb3C4)を接触させる工程を含み、好ましくは、第1の抗体又はそれらの結合部分は、サンプル中で3C4−Agと抗体−抗原複合体を形成するために可溶性及び検出可能である。複合体は、第1の抗体の重鎖の一定領域を認識する第2の抗体と接触される。例えば、第2の抗体は、mAb3C4と反応するマウス免疫グロブリン(抗マウス抗体)の重鎖の一定領域を認識する抗体であってもよい。第2の抗体は、蛍光体、ケミロフォア、化学発光剤、光増感剤、懸濁粒子、又は同位体元素で標識される。遊離の標識された第2の抗体は結合した抗体から分離される。次いで、サンプルによって発生する信号は、使用される信号発生系に依存して測定される。増加した光学密度又は放射能活性は、正常患者由来のサンプルと比較した場合、患者における膵臓癌の診断と関係付けられる。
【0048】
あるいは、例えば、β−ガラクトシダーゼ標識された抗体のような酵素標識された抗体が使用され、酵素標識が反応する適切な基質が添加され、インキュベートされる。酵素は、周知の接合方法を用いて本発明の方法において使用するための3C4−Ag反応性抗体に共有結合してもよい。例えば、アルカリホスファターゼ及びセイヨウワサビペルオキシダーゼをグルタルアルデヒドを用いて抗体に接合してもよい。セイヨウワサビペルオキシダーゼを過ヨウ素酸塩方法を用いて接合してもよい。酵素を接合する抗体のための市販のキットは広く入手可能である。酵素に接合した抗ヒト及び抗マウス免疫グロブリンに特異的な抗体は、複数の販売元から入手可能である。
【0049】
酵素標識された抗体は、基質に依存して、異なる信号源を生成する。信号生成は、反応混合物に対する基質の添加を含む。通常のペルオキシダーゼ基質としては、ABTS(登録商標)(2,2’−アジノビス(エチルベンゾチアゾリン−6−スルホネート))、OPD(O−フェニレンジアミン)及びTMB(3,3’,5,5’−テトラエチルベンジジン)が挙げられる。これらの基質は、過酸化水素の存在を必要とする。p−ニトロフェニルホスフェートは、通常使用されるアルカリホスファターゼ基質である。インキュベーション時間中に、酵素は徐々に基質の一部分をその最終生成物に変換する。インキュベーション時間の終了時に、停止試薬を添加して酵素活性を止める。信号強度は、通常は分光光度計を介して、光学密度を測定することによって決定される。
【0050】
アルカリホスファターゼ標識された抗体を、蛍光測定法によって測定してもよい。従って、本発明の免疫学的検定法において、基質4−メチルウンベリフェリルホスフェート(4−UMP)を使用してもよい。アルカリホスファターゼは4−UMPを脱ホスホリル化して蛍光体である4−メチルウンベリフェロン(4−MU)を形成する。入射光は365nmであり、放射光は448nmである。
【0051】
酵素標識された抗体の代替として、蛍光化合物、例えば、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリセリン(phycoerytherin)、インドシアニン、ビオチン、フィコシアニン、シアニン5、シアニン5.5、シアニン7、シアニン3、アミノメチルクマリン(AMCA)、ペリジニンクロロフィル、Spectralレッド、又はTexasレッドをそれらの結合能力を変えることなく抗体に化学的に結合させてもよい。特定の波長の光を照射することによって活性化される場合、蛍光色素標識された抗体は光エネルギーを吸収し、分子の励起状態を誘発し、特徴的な視覚的に光学顕微鏡で検出可能な光を放射す。EIAにおける場合、蛍光標識された抗体は、第1の抗体−ハプテン複合体に結合する。結合していない試薬を洗い流した後、残った3元複合体を適切な波長の光に露光する。観察された蛍光は、目的のハプテン、この場合には3C4−Agの存在を示す。免疫蛍光及びEIA技術は両方とも当該技術分野で十分に確立されており、本方法のために特に好ましい。しかし、他のリポーター分子、例えば、同位体元素、化学発光分子又は生体発光分子もまた使用されてもよい。必要とされる目的にあわせて手段を変動させる方法は当業者には容易に明らかである。
【0052】
主題の抗体はさらに、抗体に結合可能な二次標識されたリガンドのグループを用いて検出されてもよい。例えば、従来の技術を用いて、ビオチンを本発明に従って産生された抗体に結合してもよい。次いで、ビオチン化した抗体を3C4−Agに接触させ、結合させる。次いで、公知の標識で標識されたストレプトアビジン又はアビジンを抗体/3C4−Ag複合体と接触させ、次いで、ビオチン化抗体のビオチン部分に対する標識されたストレプトアビジン又はアビジンの結合を導く。さらなるビオチンを添加した後、さらに標識されたストレプトアビジン又はアビジンを添加してもよい。各ストレプトアビジン又はアビジン分子が4つのビオチン分子と結合可能なため、従来の蛍光顕微鏡又は放射能写真技術によって検出されてもよい多くの標識を含む比較的大きな三次元ネットワークが作られる。
【0053】
他の免疫学的検定法技術は、(特許文献2);(特許文献3)及び(特許文献4)によって示されるように、本発明において利用するために入手可能である。これはもちろん、非競争型のシングルサイト及び2サイト(すなわち「サンドイッチ」)アッセイ、及び上述の従来の競争結合アッセイの両方を含む。サンドイッチアッセイ技術の多くの変形が存在し、全ては本発明によって包含されることが意図される。
【0054】
【特許文献2】米国特許第4,016,043号
【特許文献3】米国特許第4,424,279号
【特許文献4】米国特許第4,018,653号
【0055】
典型的な順方向サンドイッチアッセイにおいて、3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントに対する特異性を有する第1の抗体は、固体表面に共有結合又は受動的に結合する。固体表面は、典型的には、ガラス又はポリマーであり、最もよく使用されるポリマーは、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンである。固体支持体は、管、ビーズ、ディスク又はマイクロプレート、又は免疫学的検定法を行うために好適な任意の他の表面の形態であってもよい。結合プロセスは当該技術分野で周知であり、一般的に、架橋結合、共有結合、又は不溶性のキャリアに分子を物理的に吸着させることからなる。結合後、ポリマー−抗体複合体を試験サンプルのための調製物中で洗浄する。次いで、試験されるサンプルのアリコートを固体相複合体に添加し、抗体に結合させるのに十分な時間インキュベートする。インキュベーション時間は変動するが、一般的に約2〜40分の範囲である。インキュベーション時間の後、抗体サブユニット固体相を洗浄し、乾燥し、ハプテンの一部分に特異的な第2の抗体とともにインキュベートする。ハプテンに対する第2の抗体の結合を示すために使用されるリポーター分子に第2の抗体を結合する。
【0056】
順方向アッセイの変形としては、サンプル及び標識された抗体の両方を同時に添加して抗体に結合させる同時アッセイ、又は標識された抗体及び試験されるサンプルを最初に混合し、インキュベートし、次いで標識されていない表面に結合した抗体を添加する逆方向アッセイが挙げられる。これらの技術は当業者に周知であり、小さな変形の可能性は当業者に容易に明らかである。
【0057】
抗体に対して標識を結合させるために使用するのに好適な架橋剤は周知である。ホモ官能及びヘテロ二官能架橋剤は全て好適である。架橋剤と架橋結合可能な反応基としては、一級アミン、スルホヒドリル、カルボニル、炭水化物及びカルボン酸が挙げられる。架橋剤は、種々の長さのスペーサーアーム又はブリッジを有するものが入手可能である。一級アミンと反応するのに好適な架橋剤としては、ホモ二官能架橋剤、例えば、イミドエステル及びN−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステルが挙げられる。
【0058】
2以上の異なる反応基を有するヘテロ二官能架橋剤が本明細書中で使用するのに好適である。例としては、一端でアミン反応性であり、他端でスルホヒドリル反応性である架橋剤が挙げられ、例えば、4−スクシンイミジル−オキシカルボニル−α−(2−ピリジルジチオ)−トルエン、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオネート及びマレイミド架橋剤が挙げられる。
【0059】
本反応において存在する色、蛍光、発光又は放射能活性の量(使用される信号生成システムに依存する)は、mAb3C4のような主題の抗体と反応する患者のサンプルにおける3C4−Agの量に比例する。光学強度の定量は、分光光度計を用いた方法によって行われてもよい。放射能標識信号の定量は、シンチレーション計測を用いて行われてもよい。mAb3C4のような主題の抗体と反応する3C4−Agの濃度が正常サンプルの濃度よりも増加していることは、患者における膵臓癌の診断と関係付けられる。
【0060】
本発明はさらに、上述の方法を行うための診断キットを提供する。1つの実施形態では、この診断キットは以下を含む:(i)3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントに特異的に結合する抗体又はそれらの結合部分、(ii)抗体のための特異的な結合パートナーの接合体、及び(iii)結合した抗体を検出するための標識。好ましい実施形態では、3C4−Agに特異的に結合する抗体はmAb3C4である。mAb3C4のための特異的な結合パートナーの接合体の例は、mAb3C4に特異的に結合する抗体である。標識が酵素である場合、酵素のための基質を含有する第3の容器が提供されてもよい。
【0061】
このキットはさらに、緩衝剤及びタンパク質安定化剤、例えば、多糖類等のような他の成分を含んでもよい。それに加えて、主題のキットは、バックグラウンド干渉を減少させるための薬剤、対照薬剤、及び診断試験を行うのに好適な組成物のような信号生成システムの他の薬剤を含んでもよい。このような組成物は、例えば、ガラス又はポリマー、例えば、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンのような固体表面に含まれてもよい。固体支持体は、管、ビーズ、ディスク又はマイクロプレート、又は免疫学的検定法を行うために好適な任意の他の表面の形態であってもよい。
【0062】
本発明の抗体はさらに、膵臓腫瘍を検出するためのインビボ診断適用、好ましくはヒトへの適用のために有用である。例えば、膵臓腫瘍は、検出可能な信号を発生する適切な撮像薬剤で標識されたmAb34Cを用いて腫瘍撮像技術によって検出されてもよい。このような試薬を用いて抗体を標識するための撮像薬剤及び手順は周知である。例えば、(非特許文献43);(非特許文献44)を参照。次いで、例えば、(非特許文献45);(非特許文献46)において記載される放射性原子スキャニングによって、標識された抗体を検出してもよい。
【0063】
【非特許文献43】Wensel and Meares,Radio Immunoimaging and Radioimmunotherapy,Esevier,New York(1983).
【非特許文献44】Colcher at al ,Meula.Enzymol.121:802−816(1986).
【非特許文献45】Bradwellら Monoclonal Antbodies for Cancer Detection and Therapy
【非特許文献46】Baldwin at al(eds),pp.65−85,Academic Press(1985).
【0064】
本発明に従って、膵臓癌を患う患者を処置するための治療方法も提供される。例えば、mAb3C4を単独で使用して腫瘍細胞を標的化するか、又は適切な治療薬剤と組み合わせて膵臓癌を処置してもよい。3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントに結合する主題の抗体が単独で使用される場合、このような処置は、相補体で媒介される細胞毒性又は抗体依存性の細胞毒性(ADCC)のような内因性宿主免疫機能を開始することによって行うことができる。ADCCは、ヒトリンパ球又はマクロファージの存在下で癌細胞を死滅可能であるか、又はヒト相補体の存在下で腫瘍細胞に対して細胞毒性を有する抗体を伴う。3C4−Agと特異的に反応する本発明の抗体は、(非特許文献47)及び(非特許文献48)に記載されるようなキメラ抗体を産生するために開発された技術を用いて、ADCCのために改変されてもよい。
【0065】
【非特許文献47】Oi et al,(1986)Biotechnologies 4(3):214−221.
【非特許文献48】Fell et al,(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:8507−8511.
【0066】
好ましい実施形態では、3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントに特異的に結合する主題の抗体は、癌の部位に治療薬剤を送達するために治療薬物又は毒素に接合又は結合されてもよい。酵素的に活性な毒素及びそれらのフラグメントとしては、限定されないが、以下が挙げられる:例えば、ジフテリア毒素Aフラグメント、ジフテリア毒素の非結合性活性フラグメント、Pseudomonas aeruginosa由来の外毒素A、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サクリン、特定のAleurites fordiiタンパク質、特定のDianthinタンパク質、Phytolacca americanaタンパク質(PAP、PAPII及びPAP−S)、Morodica charantiaインヒビター、クルシン、クロチン、Saponaria officinalisインヒビター、ゲロニン、ミトジリン(mitogillin)、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びタキソールの誘導体(合成品を含む)。(特許文献5)及び(特許文献6)(本明細書中に完全に記載されるものとして組み込まれる)は、このような免疫毒素の酵素的に活性なポリペプチドを調製するための手順を記載する。
【0067】
【特許文献5】国際特許出願WO84/03508
【特許文献6】国際特許出願WO85/03508
【0068】
他の細胞毒性部分としては、限定されないが、アドリアマイシン、クロラムブシル、ダウノマイシン、メトトレキサート、ネオカルジノスタチン、及び白金から誘導されるものが挙げられる。クロラムブシルと抗体とを接合させるための手順は、(非特許文献49);(非特許文献50)及び(非特許文献51)(これらは本明細書中に完全に記載されているものとして組み込まれる)に記載される。ダウノマイシンとアドリアマイシンを抗体に接合させるための手順は、(非特許文献52)及び(非特許文献53)(これらの開示は本明細書中に完全に記載されているものとして組み込まれる)に記載される。抗体−リシン接合体を調製するための手順は、例えば、(特許文献7)及び(非特許文献54)及びそれらに引用される参考文献(これらは本明細書中に完全に記載されているものとして組み込まれる)中に記載される。(特許文献8)はさらに、カップリング手順を記載し、これは本明細書中に参考として組み込まれる。
【0069】
【非特許文献49】Flechner (1973) European J Cancer 9:741−745.
【非特許文献50】Ghose et al、(1972)British Medical J 3: 495−499.
【非特許文献51】Szekerke et al,(1972)Neoplasms 19:211−215.
【非特許文献52】Hurwitz et al,(1975)Cancer Research 35:1175−1181.
【非特許文献53】Arnon et al,(1982) Cancer Surveys 1:429−449.
【非特許文献54】Osawa et al,(1982) Cancer Surveys 1:373−388.
【特許文献7】米国特許第4,414,148号
【特許文献8】欧州特許出願第86309516.2号
【0070】
あるグループのペプチドは、近年、特に膵臓癌細胞に対して細胞毒性があることが発見された。同時係属中の(特許文献9)及びこれに引用される(特許文献10);(特許文献11)及び(特許文献12)(これらの開示は本明細書中に完全に記載されているものとして組み込まれる)を参照。これらの毒素ペプチドは、p53タンパク質内にアミノ酸配列を含む。p53タンパク質は、393アミノ酸のタンパク質であり、細胞サイクルの生体制御剤である。p53タンパク質の非存在は細胞の形質転換及び悪性疾患に関連する。(非特許文献55)。
【0071】
【特許文献9】米国特許出願番号第10/386,737号(2003年3月12日出願)
【特許文献10】米国特許出願番号第60/363,785(2002年3月12日出願)
【特許文献11】米国出願番号第09/827,683号(2001年4月5日出願)
【特許文献12】米国出願番号第60/195,102(2000年4月5日出願)
【非特許文献55】Haffner,R & Oren,M.(1995)Curr.Opin.Genet.Dev.5:84−90.
【0072】
(特許文献13)及びこれに引用される特許出願に記載されるように、膵臓癌細胞に毒性のペプチドは、以下のアミノ酸配列を有するペプチドから誘導されてもよい:PPLSQETFSDLWKLL(配列番号:1)。好ましくは、このペプチドは、配列番号:1に記載されるアミノ酸配列の少なくとも約6連続するアミノ酸またはそれらの類似体又は誘導体を含む。このようなペプチドの例としては、PPLSQETFSDLWKLL(配列番号:1)又はそれらの類似体又は誘導体、PPLSQETFS(配列番号:2)又はそれらの類似体又は誘導体、及びETFSDLWKLL(配列番号:3)又はそれらの類似体又は誘導体が挙げられる。
【0073】
【特許文献13】米国出願番号第10/386,737号
【0074】
従って、本発明に従って、PaCa−Aglに特異的に結合する抗体又はそれらの免疫的に活性なフラグメントが提供される。ここで、この抗体は、上に記載されるペプチド(配列番号:1−3、又はそれらの類似体又は誘導体)のうち少なくとも1つに接合又は結合される。新生物性細胞膜を通る移動を高めるために、リーダー配列は、好ましくは、ペプチド、それらの類似体又は誘導体のカルボキシル末端に位置する。好ましくは、リーダー配列は、優先的に正に帯電したアミノ酸残基を含む。本発明と組み合わせて使用されてもよいリーダー配列の例としては、限定されないが、ペネトラチン、Arg、HIV1のTAT、D−TAT、R−TAT、SV40−NLS、ヌクレオプラスミン−NLS、HIV REV(34−50)、FHVコート(35−49)、BMV GAG(7−25)、HTLV−IIREX(4−16)、CCMV GAG(7−25)、P22N(14−30)、Lambda N(1−22)、Delta N(12−29)、酵母PRP6、ヒトU2AF、ヒトC−FOS(139−164)、ヒトC−JUN(252−279)、酵母GCN4、及びp−vecが挙げられる。好ましくは、リーダー配列は、アミノ酸配列KKWKMRRNQFWVKVQRG(配列番号:4)を有するアンテナペディアタンパク質由来のペネトラチン配列である。
【0075】
好ましい実施形態では、抗体又はそれらの結合部分を含み、上に記載されるような膵臓癌腫特異的な抗原3C4−Ag(PaCa−Agl)に対する結合特異性を有する、膵臓癌を処置するための治療組成物が提供される。ここで、抗体又はそれらの結合部分は、配列番号:3に記載されるアミノ酸配列を有するペプチドに接合又は結合され、配列番号:3に記載されるアミノ酸配列を有するペプチドのカルボキシル末端は、配列番号:4に記載されるようなアミノ酸配列を有するペネトラチンリーダー配列に結合される。
【0076】
3C4−Ag及びそれらの結合部分に対する抗体はさらに、薬物/プロドラッグ処置法において使用されてもよい。例えば、本発明に従う第1の抗体又はそれらの結合部分は、プロドラッグ活性剤と近接する場合にのみ活性化するプロドラッグと接合される。プロドラッグ活性剤は、第2の抗体又はそれらの結合部分と接合され、好ましくは、膵臓癌細胞又は膵臓癌細胞に関連する他の生物学的物質、例えば、罹患した膵臓細胞によって産生される別のタンパク質に結合するものである。例えば、(非特許文献56)及び(非特許文献57)(これらは両方、本明細書中に完全に記載されているものとして組み込まれる)を参照。
【0077】
【非特許文献56】Senter et al,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)85:4842−46.
【非特許文献57】Blakely et al,(1996)Cancer Res.56:3287−3292.
【0078】
あるいは、抗体又はそれらの結合部分は、高エネルギー照射エミッター、例えば、131Iのような同位体元素、腫瘍部位に局在化する場合にいくつかの細胞直径を殺すγエミッターに結合してもよい。例えば、(非特許文献58)を参照。67Cuもさらに有効であり、抗体に結合する適切な金属キレート剤を介して主題の抗体に結合してもよい。他の好適な同位体元素としては、α−エミッター、例えば、212Bi、213Bi、及び211At及びβ−エミッター、例えば、186Re及び90Yが挙げられる。
【0079】
【非特許文献58】Order,Monoclonal Antibodies for Cancer Detection and Therapy,Baldwin et al (eds.)pp.303−16,Academic Press,(1985)
【0080】
治療適用のために、マウス抗体で処置されたヒト被検体は抗マウス抗体を生成する傾向があるため、キメラ(マウス−ヒト)ヒト化モノクローナル抗体がマウス抗体に対して好ましい場合がある。抗体は、ヒト抗体可変領域のフレームワーク領域(FR)に組み込まれるマウス相補性決定領域(CDR)のアミノ酸を含有するコンポジット可変領域を設計及び合成することによって「ヒト化」されてもよい。得られた抗体は元のマウス抗体の特異性及び結合親和性を保持しているが、患者の免疫システムがこの抗体が外来ではないと認識するのに十分ヒト化されている。マウスモノクローナル抗体をヒト化するための技術としては、例えば、(非特許文献59)及びStudnickaらに対する(特許文献14)(これらの開示は本明細書中に完全に記載されているものとして組み込まれる)に記載されるものが挙げられる。
【0081】
【非特許文献59】Vaswanit et al,(1998) Alla.Allergy Asthma Immunol.81:105−119.
【特許文献14】米国特許第5,766,886号
【0082】
本発明のなお別の態様では、ヒトコクサッキーアデノウイルスレセプターの血漿外領域及び上述のPaCa−Aglに特異的な抗体の可変領域を含む真核細胞発現ベクターが提供される。この発現ベクターは、組織特異的な感染を増やすために、Adベクターのようなウイルスベクターを再標的化するために有用である。二重特異性接合の使用に基づく免疫的再標的化法、又はウイルス表面に示される単一鎖抗体の使用に基づく免疫的再標的化法、すなわち、ウイルスの成分に対して指向する抗体と抗体又はリガンドを標的化する抗体との間の接合は当該技術分野で公知である。例えば、(非特許文献60);(非特許文献61);(非特許文献62)(これらの開示は本明細書中に完全に記載されているものとして組み込まれる)を参照。
【0083】
【非特許文献60】Douglas, J.T., Rogers, BE., Rosenfeld, M.E., Michael, S.I., Feng, M. and Curiel, D.T.; Nat. Biotech.nol. 1996, 14: 1574−1578: Targeted gene delivery by tropism−modified adenoviral vectors.
【非特許文献61】Weitmami, S.D., Lark, RH., Coney, L.R., Fort, D.W., Frasca V., Zurawski, V.R., Jr. and Kamen, B.A.; Cancer Res. 1992, 52: 3396−3401: Distribution of the folate receptor GP38 in normal and malignant cell lines and tissues.
【非特許文献62】Hammond, AL, RK Plemper. I Zhang, U Schneider, SJ Russell and R Cattaneo. 2001. Single−chain antibody displayed on a recoipbinant measles virus confers entry through the tumor−associated Carcinoembryonic−Antigen.J.Virol., 75:2087−2096.
【0084】
本発明はさらに、上述の治療方法において使用されてもよい薬学的組成物を提供する。薬学的組成物は、3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントを特異的に認識し、特異的に結合する薬学的に有効量の抗体又はそれらの結合部分と、薬学的に許容可能なキャリアとを含む。薬学的に許容可能なキャリアの例としては、滅菌液、例えば、水及び油が挙げられ、これらは、界面活性剤及びアジュバント、賦形剤、又は安定剤を含む他の薬学的及び生理学的に受容可能なキャリアを含んでも含んでいなくもよい。例示的な油は、石油由来、動物由来、植物由来、又は合成起源、例えば、ピーナッツ油、大豆油、又は鉱物油である。概して、水、食塩水、水性デキストロース及び関連する糖溶液、及びグリコール、例えば、プロピレングリコール又はポリエチレングリコールは、特に注射可能な溶液のために好ましい液体キャリアである。ヒト血清アルブミン、イオン交換剤、アルミナ、レシチン、緩衝液基質、例えば、ホスフェート、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、及び塩及び電解質、例えば、プロトアミンサルフェートもまた使用されてもよい。
【0085】
それ故に、主題の薬学的組成物は、3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントに特異的に結合する抗体又はそれらの結合部分を、改変されていないか、治療薬剤(例えば、薬物、毒素、酵素、又は上述の第2の抗体)に接合した状態、又はキメラAbのような組み換え形態のいずれかで含む。薬学的組成物は、膵臓癌を処置するための他の抗体又は接合体、例えば抗体カクテルをさらに含んでもよい。
【0086】
本発明の抗体又はそれらの結合部分が膵臓癌の処置又はインビボ検出のために使用されるか否かにかかわらず、これらは、経口、非経口、皮下、静脈内、リンパ節内、筋肉内、腹腔内、鼻腔滴下によって、腔内又は膀胱内滴下によって、動脈内、病変内に投与することができるか、又は外科処置において組織表面(腫瘍表面又は直接腫瘍内を含む)に塗布することができる。本発明の抗体は、単独又は上述のような薬学的若しくは生理学的に受容可能なキャリア、賦形剤、又は安定剤と共に投与されてもよい。主題の抗体は、固体又は液体形態、例えば、錠剤、カプセル、粉末、溶液、懸濁物、エマルション、ポリマー性マイクロカプセル又はマイクロベシクル、リポソーム、及び注射可能な溶液又は吸入可能な溶液の形態であってもよい。
【0087】
本発明の抗体組成物のための効果的な投与法及び投薬量は、患者の年齢、体重、疾患の進行度にほとんど依存する。それ故に、投薬量は個々の患者に合わせて調整される。一般的に言うと、本発明の抗体組成物の有効投与量は、約1〜約5000mg/mの範囲である。
【0088】
以下の実施例は本発明をさらに説明し、本発明の範囲を限定することを意味するものではない。
【実施例1】
【0089】
膵臓細胞系BMRPA.430の悪性転換を介する細胞系BMRPA.430.NNK(BMRPA1.NNK)の発生
物質:
1640RPMI培地、ペニシリン−ストレプトマイシンストック溶液(10,000U/10,000mg/mL)(P/S)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)緩衝液、2mM エチレンジアミン四酢酸(トリプシン−EDTA)を含む0.2%トリプシン、及びトリパンブルーは全てGIBCO(ニューヨーク)から入手した。胎児ウシ血清(FBS)は、Atlanta Biologicals(アトランタ、GA)から入手した。Ca2+及びMg2+を含まないDulbeccoのリン酸緩衝化食塩水(PBS)、及び完全培地のための全ての微量元素はSigma Chemical Company(セントルイス、MO)から購入した。組織培養フラスコ(TCF)はFalcon−Becton Dickinson(マウンテンビュー、C.A.)から入手し、組織培養皿(TCD)はCorning(コーニング、NY)から得て、24−ウェル組織培養プレート(TCP)、及び96−ウェルTCPはCostar(ケンブリッジ、MA)から入手した。フィルター(0.22、0.45μm)はNalgene(ロッチェスター、NY)から入手した。
【0090】
複合RPMI(cRPMI)細胞培地の調製:
RPMI、グルタミン(0.02M)、HEPES−緩衝液(0.02M)、酢酸に溶解したウシインスリン(0.02mg/mL酢酸/培地1L)、ヒドロコルチゾン(0.1μg/mL)、ZnSO(5×10−7M)、NiSO 6HO(5×10−10M)、CuSO(10−8M)、FeSO(10−6M)、MnSO(10−9M)、(NHMn24(10−7M)、NaSeO(0.5mg/培地1L)、SnCl2HO(5×10−10M)を含む痕跡量の元素及びカルバミルコリン(10−5M)を用いてcRPMIを調製し、pHを7.3に調整した。培地を滅菌ろ過した。
【0091】
細胞及び培地:
BMRPA.430(BMRPA1)は、正常なラット膵臓から確立された自然に不死化された細胞系である(Baoら,1994)。TUC3(BMRPA1.K−rasval12)は、コドン12(Gly−>Val)で癌性変異をもつ活性化されたヒトK−rasを含有するプラスミドで形質転換することによって形質転換されたBMRPA1細胞である(Dr.M.Perucho,California Institute for Biological Research,La Jolla)。全ての細胞系は、95%空気−5%COインキュベーター(Forma Scientific)中、37℃でcRPMI(10%FBS)中で定常的に維持される。細胞にトリプシン−EDTAを通す。50%使用済培地及び10%FBS及び10%DMSOを含む新鮮なcRPMIを含有する50%凍結培地で作成される混合物中で細胞を凍結して保存する。細胞生存度をトリパンブルー排除法によって評価した。
【0092】
NNK暴露:
発癌物質を含有する培地の全ての調製を、定められた保護測定を用いてNCI−設計され証明された化学フード内で別個の実験で製造した。4−(N−ニトロソメチルアミノ)−1−(3−ピリジル)−1−ブタノン(NNK,American Health Foundation,N.Y.)を、PBS中の10mgNNKストック溶液として調製し、FBSを含まないcRPMIを添加して最終濃度を100、50、10、5及び1μg/mlにした。パッセージ36(p36)でBMRPA1細胞を10/60mmTCDに接種し、6日間増殖させた。この時に培地を除去し、細胞をあらかじめ加温した(37℃)FBSを含まないcRPMIで2回洗浄した後、異なる濃度のNNKを含有するFBSを含まないcRPMI(4mL/TCD)で処理した。BMRPA1細胞を含有するTCDの6番目のセットを、NNKを含まないFBSを含まないcRPMI中でインキュベートし、対照として使用した。6セットの異なる培養条件のそれぞれについて8個のTCHを使用して、37℃の95%空気−5%COインキュベーターに戻した。16時間後、NNKを含有する培地を全てのTCDから除去し、細胞をPBSで3回洗浄した後、新鮮なcRPMI−10%FBS(4ml/TCD)を添加し、インキュベーションを継続した。NNKを含まない対照培地を並行して処理した。使用済培地の半分を新鮮なcRPMI−10%FBSと交換することによって細胞を2日ごとに供給した。完全に密集したら、細胞を全てのTCDから収集し、各グループの細胞をプールし、新鮮なTCD内で2×10でパッセージした。
【0093】
コロニーの単離:
形質転換された細胞の個々のコロニーから細胞を取り出すのを容易にするために、コロニーを含有する細胞培養物を10細胞/100mmTCDで再接種し、7日間増殖させた。滅菌パスツールピペットの細い方の末端を炎であぶり、すぐに伸ばし、最も細い点で壊して、細胞リッチなコロニーのコアのみを取り出すのに十分細い精密に伸ばしたガラス針を作成した。NNKのみで処理した細胞は細胞リッチな球状のコロニーを含有していた。8個の主要なコロニーの中心コアを取り出し、80〜200の密に充填された細胞からなる各コアを24ウェル皿のそれぞれの別個の皿に入れた。このようにして移した4コロニーの細胞は生存し、拡大した。
【0094】
細胞増殖アッセイ:
10%FBSでの細胞増殖を測定するために、細胞をcRPMI−10%FBS4mlを含有する5×10細胞/60mmTCDで接種した。3日ごとに、3つ組のTCDを試験中の各細胞系について除去し、細胞をトリプシン−EDTAで離し、トリパンブルーの存在下で計測した。減少したFBS濃度を含有するcRPMIの細胞増殖に対する効果を評価するために、同じ数の(1.5×10細胞/ml/ウェル)のNNKで処理されたBMRPA1細胞及び未処理のBMRPA1細胞を24ウェルTCDの3つ組に接種した。細胞をcRPMI10%FBS中で一晩接着させ、PBSで洗浄し、指定の%のFBSを含有するcRPMIで再インキュベートした。クリスタルバイオレット相対増殖アッセイの改変によって細胞増殖を評価した(Serrano,1997)。手短に言えば、細胞をPBSで洗浄し、10%緩衝化ホルマリンで固定した後、蒸留水ですすいだ。次いで、細胞を0.1%クリスタルバイオレットで室温(RT)で30分間染色し、dHOで洗浄し、乾燥した。細胞に関連する染料を1mlの10%酢酸で抽出し、アリコートをdHOで1:2に希釈し、OD600nm測定のために96ウェルマイクロタイタープレートに移した。24時間でのOD600nmと比較して細胞増殖を計算した。
【0095】
BrdU組み込み:
細胞(5×10)を60mmTCDに撒き、cRPMI−10%FBS中で増殖させた。3日後、BrdU(10uM)を含む新鮮な培地を3時間で添加し、細胞を洗浄し、トリプシン−EDTAで離し、製造業者(Bectom Dickinson)によって示唆されるようなFACS分析によって、組み込まれたBrdUをFITCに接合された抗−BrdU抗体(Becton Dickinson)を用いて検出した。手短に言えば、10トリプシン−EDTAで離された細胞をPBS−1%BSAで2回洗浄し、70%エタノールで30分固定し、RNAaseA(0.1mg/mL)中で37℃で30分、再懸濁させた。細胞を洗浄した後、それらのDNAを2N HCl/トリトンX−100で30分変性させ、0.1M Na 10HO、pH8.5で中和した。次いで、細胞を0.5% Tween20を含むPBS−1%BSAで洗浄し、FITC−抗BrdU抗体20uLを含むPBS−1%BSA溶液中の0.5%Tween50uLに再懸濁させた。37℃で45分後、細胞を洗浄し、ヨウ化プロピジウム(0.005mg/mL)及びRNAase A(0.1mg/mL)を含有するクエン酸Na緩衝液1mLに再懸濁させた。組み込まれたBrdU及びPI染色を検出するための蛍光活性化細胞分類又はフローサイトメトリー(FACS)分析を、励起波長488nmを用いたアルゴンイオンレーザーを備えるBecton Dickinson CoからのFACScanアナライザーを用いて行った。データ分析をLYSYSIIプログラムを用いて行った。
【0096】
個々のサンプルのt−試験を用いて、BrdUを組み込む形質転換されていない細胞と形質転換された細胞の割合の統計的な有意差(p<0.05)を示した。形質転換されたBMMRPA1細胞におけるG0/G1ピークでのPI染色測定値を形質転換されていないBMMRPA1細胞におけるG0/G1ピークでのPI染色測定値で割った比としてDNAヒストグラムから、DNAインデックスを以前に記載されているように計算した(Barlogieら,1983;Alanenら,1990)。
【0097】
足場非依存性増殖:
0.5%寒天−培地混合物(寒天をHO64mL中でオートクレーブにかけ、水浴で50℃まで冷却し、15mL 5×cRPMI、19mLのFBS及び1mLのP/Sに添加する)4mlのアリコートを25cmのTCFに注ぎ、4℃で一晩固めた。細胞を撒種する前に、フラスコをCO−空気インキュベーターに37℃で5時間入れ、pH及び温度を平衡化させた。細胞をトリプシン−EDTAによって集め、細胞懸濁物0.1mL(cRPMI中に40000/mL細胞)を各フラスコの寒天表面上に注意深く広げ、培養物を95%O−5%COの37℃のインキュベーターに戻した。24時間後、寒天コーティングされたTCFをひっくり返し過剰の培地を捨てた。Zeiss逆顕微鏡を用いてコロニーの増殖について、9日後及び14日後に培養物を顕微鏡で観察した。
【0098】
Nu/Nuマウスにおける腫瘍原性:
Nu/Nu マウス(7週齢)をHarle’n Laboratories(インディアナポリス,IN)から得た。注射のために使用される細胞をトリプシン−EDTAによって離し、cRPMI中で洗浄し、10細胞/mLでPBS中に再懸濁させた。試験される各マウスにこの細胞懸濁物0.1mLを用いて皮下(s.c.)注射した。最初の4週間は毎日腫瘍の成長について動物を観察し、その後は1週間ごとに観察した。腫瘍の小片(1〜2mm)を腫瘍中心から切断し、4%パラホルムアルデヒド中に4℃で一晩置いた。次いで、組織をPBS中で洗浄し、30%ショ糖中にさらに24時間置いた。Lipshawで包んだマトリックス中で凍結させた腫瘍組織部分(ピッツバーグ,PA)をJung低温保持装置(Leica)を用いて作成し、ゼラチンでコーティングされたスライドの上に置き、−20℃で保存した。H&E染色を標準的な手順に従って行った。
【0099】
切除したNu/Nuマウス腫瘍からのTUNNK細胞系の形成:
Nu/Nuマウスに皮下で移植したBMRPA1.NNK細胞から増殖させた腫瘍由来の細胞の単離を、(非特許文献63)によって記載される方法と類似の、いくつかの手順を変更した方法によって行った。腫瘍を有するNu/NuマウスをCO窒息によって殺し、氷で冷却した床の上に置き、腫瘍の上の皮膚を開き、腫瘍を迅速に外科的に滅菌して取り出し、すぐに処理するために氷上のL−15培地(GIBCO,Grand Island,NY)に置いた。氷冷したL−15培地中に置きながら、組織を小片に刻み、酵素による消化及び機械的破壊を2サイクル行った。L−15培地中の消化混合物は、コラゲナーゼ(1.5mg/ml)(136U/mg;WorthingtonBiochem.Corp.)、大豆トリプシンインヒビター(SBTI)(0.2mg/ml)(Sigma Chem.Comp.)、及びウシ血清アルブミン(BSA;結晶化)(2mg/ml)(Sigma)からなっていた。最初の消化サイクル(25分、37℃)の後、細胞及び組織フラグメントを250gずつにペレット化し、SBTI(0.2mg/ml)、BSA(2mg/ml)、EDTA(0.002M)及びHEPES(0.02M)(Boehringer MannheimBiochem.,インディアナポリス)(S−緩衝液)を含有する氷冷したCa++及びMg++を含まないリン酸緩衝化食塩水(PD)中で1回洗浄した。細胞を再びペレット化し、消化混合物中に再懸濁させ、第2の消化サイクル(50分、37℃)に供した。なお消化混合物中に存在する状態で、細胞懸濁物をピペットを用いて繰り返し取り出し、サイズの小さな針をつけたシリンジで繰り返し取り出すことによって残りの細胞の塊を破壊した。次いで、細胞懸濁物を滅菌200μ−メッシュ及び20μ−メッシュのナイロンNytex格子(TetkoInc.,Elmsford,NY)を連続的に通してせん断し、S−緩衝液中で洗浄し、2〜3mlのL−15培地中に再懸濁させ、50×g、4℃で5分間遠心分離した。細胞ペレットを集め、PBS中で洗浄し、cRPMI中に再懸濁させた。フラクションのサンプルをトリパンブルー(Fisher Sci.)排除(非特許文献64)によって生菌数計測及び細胞化学的な分析のために処理した。細胞を撒種し、6−ウェルTCDの10細胞/35mmウェルでcRPMI中で増殖させた。
【0100】
【非特許文献63】Amsterdam,A.及びJamieson,J.D.,1974,J.Cell Biol.63:1037−1056.
【非特許文献64】Michl J.ら,1976,J.Exp.Med.144(6),1484−93).
【0101】
顕微鏡撮影:
フェーズオプティクス(phase optics)及びLeitzカメラを取り付けたLeitz Inverted Microscopeで細胞培養物の全ての観察及び撮影を行った。観察結果をTMX ASA100 Black and Whiteフィルムで記録した。
【実施例2】
【0102】
結果
BMRPA1形態に対するNNKの影響:NNK及び他のニトロソアミンに繰り返し暴露すると、インビトロの膵臓癌実験モデルにおいて、種々のげっ歯類及びヒトにおける細胞毒性及び新生物性形態変化の両方を誘発することが観察された(非特許文献65)。このような変化が単にNNKの暴露によって誘発されるのか否か、及び比較的低濃度のNNKの暴露によって誘発されるのか否かを決定する目的で、BMRPA1細胞を100、50、10、5、及び1μgのNNK/mLを含有する血清を含まない培地に16時間暴露した。膵臓細胞を用いた以前の研究で観察されたように、NNKの濃度が高いと、接着性が低く、変性し、死滅する細胞、及び細胞増殖の低下からなる細胞毒性の変化を生じたが、このような変化は、5及び1μLのNNK/mLに暴露した細胞においてはほとんど見られなかった。100、50、10μgのNNK/mlを用いた処理の変性変化は、紡錘状の形態及び集中的な過密状態のような悪性転換を含む形質変化の概観によって1週間以内に見られた。1μg/mlのNNKで処理したBMRPA1細胞はさらに、悪質変換の形質変化の特徴は示したが、その変化の速度は小さく、数週間かかった。他の突然変異誘発因子について示唆されるように(非特許文献66)、低用量で観察された変化は、ヒト環境において直面するものに近い用量でNNKで誘発される障害の特異的な優先分子部位を反映しているように思われる。さらに、1μg/mLでのこれらの変化のゆっくりとした速度は、NNKで誘発される形質転換のプロセスにおいて初期事象及び後期事象の両方の経過研究による道を与えることができる。従って、以下に示される結果は、1μgNNK/FBSを含まない培地1mLに対して16時間暴露したBMRPA1細胞を用いて得た。
【0103】
【非特許文献65】Jones,1981,Parsa,1985,Curphey,1987,Baskaran et al 1994).
【非特許文献66】Srivastava, P K, and L. J. Old. (1988). Individually distinct transplantation antigens of chemically induced mouse tumors. Jnimun. Today, 9(3), 78−83.
【0104】
35パッセージについて培地中で連続的に増殖したBMRPA1細胞は、単一層の、形質転換されていない接触阻害された上皮細胞の典型的な丸石状のパターンに組織化した(図1A)。1μgのNNK/mlに暴露した2週間後、BMRPA1細胞は少し形態変化を示した:数個の別個の領域中の細胞は多角形形状を失い始めており、細胞質がほとんどなくさらに暗い色の核を持つ紡錘形状の細胞からなる細胞の島が形成され始めた(図1B、パッセージ2又はp2)。p6の始まりには、丸型の細胞の数が表面上及びさらに高い密度で充填された紡錘細胞の鎖の中に増加していることが観察でき(p6〜8)、これは接触阻害を失っていることを示唆する(図1C)。
【0105】
密集した細胞(病巣)の島状領域はp7で顕著となり(図1D、矢印)、細胞の球状の凝集が始まり、これらの病巣の上部にコロニーとして形成された(p7〜11)。最初の明確に識別可能なコロニーはp8〜9で見られ、これはNNK暴露から約3ヶ月後であった。初期にはコロニーは小さく(図1D、矢印)少数であるが、それらのコロニーは、NNKで処理されたBMRPA1細胞が継代された6TCF全てに存在した。コロニーは、コンパクトな塊として水平及び垂直に成長し続けた(図1E)が、接着性はかなり減少しており、例えば、密集した細胞はトリプシン化及びピペットで吸うことによって容易に分離し、このことは、このような培養物が新生物性細胞を含むであろうことを示す。このようなコロニーのトリプシン化による迅速な破壊は、形質転換されていないBMRP430(BMRPA1)細胞と直接的に比較される。NNKを含まずFBSを含まないcRPMIに暴露した16時間後に並行して連続的に培養した対照BMRPA1細胞は、なんらの変化を示さず、BMRPA1細胞のもとの単一層と変わりなかった。
【0106】
コロニーを形成する細胞の形質変化特性及び分子特性の研究を容易にするために、微細に伸ばしたガラス針を用いていくつかのコロニーの中心を単離し、各単離物の80〜200細胞を「クローン化BMRPA1.NNK」と称する細胞系として別個に増殖させた。単離された細胞は、紡錘形〜三角形の形状を示し、1つ以上の顕著な核を含有するしばしば異なるサイズの核を有する多核であった。新しいフラスコに再撒種すると、これらの細胞は病巣及びコロニーを形成する能力を維持していた(図1F)。興味深いことに、NNKで形質転換されたBMRPA1において見られるNNKで誘発された形質変化は、ヒト発癌性K−rasval12によるBMRPA1の形質転換中に観察されるものと同じとは断言できないが類似していた。H&E染色後に巨視的及び微視的に容易に観察可能なNNKで誘発される好塩基性病巣はさらに、発癌性K−rasval12を用いたトランスフェクションによって形質転換されたBMRPA1細胞によって形成される病巣と類似していた。対照的に、未処理のBMRPA1細胞の増殖中には病巣もコロニーも形成されなかった。BMRPA1細胞中でNNKによって誘発される形態変化はさらに、インビトロで培養された他の形質転換された細胞の十分に確立された特徴と類似していた:低い細胞密度での紡錘形及び三角形の細胞形状、高い細胞密度でのハロ状の外観を有する丸形、及び病巣及び隣接する細胞の上部における増殖によって示されるような接触阻害の喪失(非特許文献67)。
【0107】
【非特許文献67】Chung,S.E.,(1986) In vitro transformation of human epithelial cells. Biochemica and Biophysica Acta 823,161−194.
【0108】
NNKで誘発された過剰増殖:BMRPA1細胞の増殖に対するNNKの長期的な永久的な効果は、10%FBSを追加した複合培地(cRPMI)中で培養されたNNKで処理された細胞及び未処理の細胞の細胞増殖を比較することによって最初に評価した。BMRPA1(クローン化されていないNNKで処理されたBMRPA1細胞)、及び「クローン化」BMRPA.1NNK細胞(すなわち、この例では上に記載されるように産生され単離された細胞)を、TCD中に同じ密度で撒種した。所定の日数で、TCD中の細胞をトリプシン−EDTAによって離し、集め、トリパンブルーの存在下で計測した。パッセージ46(p46)での未処理のBMRPA1細胞は、ほぼ9日で接触阻害された増殖を含む平衡に達した。対照的に、NNK処理の11パッセージ後に、平衡して増殖させたNNKで処理された細胞は、最初の9日間でより素早い増殖を示し、その後、おそらくNNKによって影響を受けていない形質転換されていないBMRPA1細胞の存在下での継続に起因して増殖が遅くなった。NNKで誘発されたコロニーの中心から単離されたクローン化されたBMRPA.1NNK細胞(図1F)は、非常に密度の濃い過密状態を生じる未処理のBMRPA1細胞よりもかなり早い速度で培養12日間に増殖し続けた。
【0109】
細胞増殖曲線がNNKで処理されたBMRPA1細胞と未処理のBMRPA1細胞との間の顕著な増殖の差を示したことから、高い細胞密度で接触阻害された増殖及び細胞死が観察された細胞増殖に有意に関係するだけでなく、NNKで処理された細胞が低い細胞密度で増殖する本質的な能力の増加を、これらの細胞がBrdUを組み込む能力を測定することによってさらに評価した。RNAase処理された細胞においてBrdU組み込みの測定は、増殖する細胞のS段階の間、DNA合成を評価するために通常使用される(非特許文献68)。形質転換されていないBMRPA.p58、形質転換されたクローン化されていないBMRPA.NNK.p11、及び形質転換されたクローン化されたBMRPA.NNK.p23細胞におけるBrdU組み込みのFACS分析によって得られた結果は、NNK処理がBMRPA1における永久的な過剰増殖を生じるというさらなる証拠を与える。これらの観察結果は、接触阻害の局所的喪失及び過剰増殖の両方を誘発することによって、BMRPA1細胞を形質転換し得るという実験的な証拠を与える。
【0110】
【非特許文献68】Alberts B.,Johnson, A.,Lewis,J.,Raff,M.,Roberts,K.,Walter,P.,2002, Molecular Biology of the Cell,Garland Science,Taylor and Francis,4th ed.,NY
【0111】
形質転換されていないBMRPA1細胞及びNNK−形質転換されたBMRPA1細胞に対する血清喪失の効果:
形質転換された細胞の1つの頻繁に引用される特性は、低濃度の増殖因子及び血清での選択的な増殖の利点、一次細胞及び形質転換されていない細胞の増殖をほとんど支持しない状態である(非特許文献69);(非特許文献70);(非特許文献71)。 形質転換されていないBMRPA1及びNNK−形質転換されたBMRPA1の血清依存を確立するために、細胞を1%、5%、及び10%FBSを追加したcRPMI培地に移し、24−ウェルTCPのウェル内に同じ数の細胞を撒種し、12日間増殖させた。クリスタルバイオレットアッセイを使用して相対的な細胞増殖を評価した(非特許文献71)Serrano,1997)。このアッセイは、低濃度の血清でTCDに対する強い細胞接着に起因して生じる細胞の損失(不完全な放出及び細胞死)を排除するため、トリプシン−EDTAによって話された細胞の計測について顕著な利点を提供する。
【0112】
【非特許文献69】Chung,S.E.,(1986) In vitro transformation of human epithelial cells. Biochemica and Biophysica Acta 823, 161−194.
【非特許文献70】Friess, H., Berberat, P., Schilling, M., Kunz, J., Korc, M, Buehler, M.W. (1996). Pancreatic cancer: the potential clinical relevance of alterations in growth factors and their receptors.J.Mol.Mod,74:35−42.
【非特許文献71】Katz, M.E., and Mc Cormick, F.(1997) Signal transduction from multiple Ras effectors. Curt Op. in Genet. and Dev., 7: 75−79, 1997.
【非特許文献72】Serrano,M.,A.W.Lin,M.E. McCurrach,D.Beach,and S.W.Lowe. 1997.Oncogenic ras provokes premature cell senescence associated with accumulation of p53 and p16INK4a.Cell,88:5:593−602.
【0113】
形質転換されたBMRPA.1NNK細胞は、試験された全てのFBS濃度で、未処理の細胞よりも選択的な増殖の利点を有することがわかった。1%FBSを含有するcRPMI培地中でさえ、NNKで形質転換された細胞は、10%を有するcRPMI中で培養された未処理のBMRPA1細胞よりも良好に増殖した。血清の少ない厳しい条件下でdBMRPA1.NNK細胞が細胞増殖を維持する観察された能力は、NNKの暴露によるBMRPA1細胞の形質転換をさらに支持する。
【0114】
足場非依存性細胞増殖:
多くの細胞の悪性転換は、固定依存条件下で、寒天上で増殖する新規に獲得した能力を生じることが示された(非特許文献73)。クローン化されたBMRPA.1NNK及び未処理のBMRPA1細胞が寒天上で増殖する能力を、軟質寒天上で低密度で細胞を分散させることによって試験した(実施例1を参照)。これらの細胞が14日間にコロニーを形成する能力は表1に示される。
【0115】
【非特許文献73】Chung,S.E.,(1986) In vitro transformation of human epithelial cells. Biochemica and Biophysica Acta 823,161−194.
【0116】
【表1】

【0117】
以前の観察(非特許文献74)を確認すると、BMRPA1細胞は寒天上で増殖することができず、死滅した。対照的に、BMRPA1.NNK細胞は、強力な増殖能力及びコロニー形成能力を示した。実際に、撒種した4個のBMRPA1.NNK細胞の約1個が50細胞よりも多いコロニーを形成した。寒天上の増殖は悪性転換を示す。
【0118】
【非特許文献74】Bao,LY,WL Thelmo, S Somnay,C Madahar,J Michl.Characterization of an acinar cell line, BMJPA.43O, derived from adult rat pancreas. FASEB Journal,8:64A,1994.
【0119】
Nu/Nuマウスにおける腫瘍原性:
寒天上で増殖する細胞は、しばしばNu/Nuマウスにおいて腫瘍として増殖する能力を有する(非特許文献75);(非特許文献76)。細胞がNu/Nuマウスにおいて腫瘍として増殖する能力は、悪性形質転換の強力な示唆であると考えられている(非特許文献77)。結果として、Nu/Nuマウスの後フランク領域において10個のクローン化した生存BMRPA1.NNK細胞を皮下(s.c.)注射した。マウスの別のグループを、形質転換されていないBMRPA1細胞を用いて同様の条件下でs.c.注射した。Nu/Nuマウスの第3のグループに陽性対照の目的で、BMRPA1.K−rasval12細胞を用いて注射した。というのは、これらの細胞はNu/Nuマウスにおいて腫瘍を形成することが以前に示されているからである。
【0120】
【非特許文献75】Shin, S.I., V.H. Freedman, R. Risser, and R.Pollack.1975. Tuinorigenicity of virustransformed cells in Nu/Nu mice is correlated specifically with anchorage independent growth in vitro. Proc. Nati. Acad. Sci. USA 72: 11:4435−39.
【非特許文献76】Colbum, N.H., W.F. Vorder Bruegge,, J.R. Bates, RH. Gray, J.D. Rossen, W.H. Kelsey, and T. Shimada. 1978. Correlation of anchorage−independent growth with turnorigeuicity of chemically transformed mouse epidennal cells, Cancer Res., 38:624−634.
【非特許文献77】S.E.,(1986)In vitro transformation of human epithelial cells. Biochemica and Biophysica Acta 823, 161−194.
【0121】
【表2】

【0122】
BMRPA1細胞は、注射された5匹のNu/Nuマウスにおいて腫瘍を形成することができなかったが、BMRPA1.K−rasval12細胞は迅速に増殖する結節(<0.5cm)を形成し、この結節は接種後4週間以内に腫瘍(>1cm)になった。顕著な違いは、クローン化されたBMRPA1.NNK細胞を注射したNu/Nuマウスにおける腫瘍形成の過程であった。クローン化されたBMRPA1.NNK細胞を注射した後1週間以内に、6匹全てのマウスの注射部位で2〜3mmの結節が形成された。結節は2ヶ月以内に3匹の動物において消失した。それにもかかわらず、4ヶ月までの休止期間後に、残りの3匹の動物における結節は次の12〜16週以内に直径1cmを超える腫瘍に成長した。成長した大きな腫瘍の塊を有するこれらのマウスのうち1匹はさらに腹水症を発症し、このことは、転移性の腫瘍細胞の存在を示す。TUNNKと呼ばれる細胞系は、機械的破壊及びコラゲナーゼ消化を組み合わせた方法によってBMPRA1.NNKを注射したNu/Nuマウスにおいて増殖する腫瘍の1つから確立された。TUNNKは、Nu/Nuマウスに注射されクローン化されたBMRPA1.NNK細胞と類似の形質転換された形態学的特性を有する。今までのところ、上記2つの間のたった1つの顕著な区別できる形質変化特性は、インビトロで細胞凝集物として浮遊するTUNNKの傾向であり、このことは、インビボにおける選択的な増殖プロセスの間に起こる細胞の接着性に顕著な変化を与えることが示唆される。
【実施例3】
【0123】
寛容誘発標的化抗体産生(TITAP)
物質及び方法:
物質:RPMI1640、5.5mMグルコースを含有するDMEM(DMEM−G+)、ペニシリン−ストレプトマイシン、HEPES緩衝液、2mM EDTAを含む0.2%トリプシン、ウシ血清アルブミン(BSA)、ヤギ血清、及びトリパンブルーはGIBCO(ニューヨーク)から入手した。胎児ウシ血清(FBS)は、Atlanta Biologicals(アトランタ、GA)から入手した。選択的なHAT及びHT培地のためのヒポキサンチン(H)、アミノプテリン(A)、及びチミジン(T)、及びPEG1500をBoehringer Mannheim(ドイツ)から購入した。ジアミノベンジジン(DAB)をBioGenex(ダブリン,CA)から入手した。PBS及びヤギ抗−マウスIgG[F(ab’)HRP−GαM IgG]標識されたセイヨウワサビペルオキシダーゼをCappel Laboratories(Cochranville,Pa)から得た。アプロチニン、ペプスタチン、PMSF、デオキシコール酸ナトリウム、ヨードアセトアミド、パラホルムアルデヒド、トリトンX−100、トリズマ塩基、OPD、HRP−GαM IgG、及び完全培地のための全ての微量元素をSigma(セントルイス,MO)から購入した。過硫酸アンモニウム、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ジチオスレイトール(DTT)、尿素、CHAPS、低分子量マーカー、及びあらかじめ染色した(Kaleidoscope)マーカーをBIORAD(リッチモンド,CA)から得た。高められた化学発光(ECL)キットをAmersham(Arlington Heights,IL)から入手した。メルカプトエタノール(2−ME)及びフィルムをEastman Kodak(ロッチェスター,N.Y.)から入手した。組織培養フラスコ(TCF)をFalcon(マウンテインビュー,CA)から入手し、組織培養皿(TCD)をComing(Corning,NY)から入手し、24−ウェルTCプレート(TCP)及び96−ウェルTCPをCostar (ケンブリッジ,MA)から入手した。組織培養チャンバー/スライド(各8チャンバー)をMiles(Naperville,IL)から入手した。
【0124】
細胞及び培地:全てのラット膵臓細胞系を10%FBSを含有するcRPMI中で培養した。Dr.M.DelPiano(Max Planck Institute,Dortmund,Germany)から入手したラット毛細内皮細胞(E49)以外の他の細胞系を米国微生物系統保存機関(ATCC)から得た。白血球細胞を健康な志願者ドナーから得て、ヒト膵臓組織(マッチしていない移植組織)をDownstate Medical CenterでOrgan Transplantation DivisionからDr.Sommersによって得た。細胞生存度をトリパンブルー排除によって評価した。
【0125】
免疫減算過剰免疫化(Immunosubtractive Hyperimmunization)プロトコル(ISHIP):ISHIPプロトコルは、係属出願番号第60/443,703号(完全に記載されるものとして参考としてこれらの開示が組み込まれる)に詳細に記載される。生存細胞(10)及びパラホルムアルデヒド固定し洗浄した(10)細胞の混合物をそれぞれ腹腔内(ip)で固定化するために使用した。6匹の雌Balb/cマウス(12週齢)を使用した:2匹のマウスをBMRPA1細胞を用いて標準的に固定化する間4回注射した。他の4匹のマウスにBMRPA1細胞を用いて同様に3回注射し、最後の注射の5時間後に、60μgシクロホスファミド/日/体重gを用いて次の5日間ip注射した。これらの免疫抑制されたマウスのうち2匹に、最後のCy注射の後にBMRPA1細胞を用いて再注射した。他の2匹の免疫抑制されたマウスを形質転換されたBMRPA1.NNK細胞を用いて週に3回以上注射し、1週間後、7日でさらに5回注射した後に融合してマウスを過剰免疫化した(ISHIPマウス)。所定の免疫化後1週間以内に、血清を全てのマウスから得た。
【0126】
ハイブリドーマ及びmAb精製:最も免疫抑制されたISHIPマウス由来の脾細胞とP3U1骨髄腫細胞を融合することによってハイブリドーマを以前に記載されるように得た(非特許文献78);(非特許文献79)。ハイブリドーマ細胞を24−ウェルTCPの288ウェル中で培養した。ハイブリドーマを最初にHAT DMEM−G+(20%FBS)培地中で10日間増殖し、その後、HTを含有する培地で8日間増殖し、次いでDMEM−G+(20%FBS)中で増殖した。ハイブリドーマ上清を、免疫蛍光顕微鏡観察及び免疫組織化学によるさらなる分析のために特異的なmAbsの選択を行う前に、Cell−EIAによる特異的な反応性の存在について、融合開始3週間後に細胞−酵素免疫学的検定法(Cell−EIA)によって3回試験した。
【0127】
【非特許文献78】Kohier G.,and Milstein C. (1975). Continuous culture of fused cells secreting antibody of pre−destiixed specificity. Nature 256, 495−497.
【非特許文献79】Pytowski B., Baston T.G., Valinski J.E., Calderon, T., Sun, T., Christman, J.K., Wright, S.D., and Michi, J. (1988). A monoclonal antibody to human neutrophil−specific plasma membrane antigen. J. Exp. Med. 167, 42 1−439.
【実施例4】
【0128】
NNKで形質転換されたBMRPA1細胞と形質転換されていないBMRPA1細胞との間の抗原性の差異の検出:乾燥したNNKで形質転換されたBMRPA1細胞及び形質転換されていないBMRPA1細胞と反応するIgG抗体の存在について、288ウェルから集めたハイブリドーマ上清を細胞−酵素免疫学的検定法(Cell−EIA)によって試験した。BMPRA1及びBMPRA1.NNK細胞を3×10/ウェルで0.1mLのcRPMI−10%FBSを用いてTCP(96−ウェル)に撒種した。細胞を24時間接着させ、風乾し、RT真空下で保存した。次いで、細胞をPBS−1%BSAで再水和させた後、ハイブリドーマ上清又はマウス血清の2倍連続希釈物のいずれかを各ウェルに室温(RT)で45分間添加した。PBS−BSAで洗浄した後、HRP−GαMIgG(PBS−1%BSA中1:100)を各ウェルにRTで45分間添加した。結合していない抗体を洗い流し、OPD基質をRTで45分間添加した。マイクロプレートリーダー(Bio−Rad3550)を用いて基質の着色をOD490nmで評価した。ハイブリドーマ上清について、0.20(反応性血清を用いて得られた陰性対照のOD490nm値の5倍)より大きいOD490nm値を陽性であるとみなした。融合の18日〜21日後の評価は、試験した288ウェルの265(92%)が1つ以上の増殖するハイブリドーマを含有することを確立した。Cell−EIAによって、ウェルの73(すなわち23.5%)由来の上清は、形質転換されたBMRPA1.NNK細胞と反応する抗体を含有していた。対照的に、47(すなわち16.3%)の上清のみがBMRPA1細胞と反応し、これはBMRPA1.NNK細胞が形質転換されていないBMRPA1細胞によって発現されない抗原を発現することを示す。さらに、BMRPA1細胞と反応する47の全てのハイブリドーマ上清が、形質転換されたBMRPA1.NNK細胞と相互反応性を示した。
【実施例5】
【0129】
インタクトな形質転換されていないBMRPA1細胞及び形質転換されたBMRPA1細胞と選択されたハイブリドーマ上清との免疫反応性
Cell−EIA試験が乾燥し破壊された細胞で行われた場合、上清中の抗体は、細胞内及び血漿膜Agの両方に接近し近づく。Cell−EIAによって、これらの上清は一貫してBMRPA1.NNK細胞のみ(上清3A2;3C4;3D4)と、又はBMRPA1.NNK及びBMRPA1細胞の両方(上清4AB1;2B5)とのいずれかと強力な反応性を示すため、認識されたAgの細胞内位置に関する最初の情報を得るために、インタクトな細胞での間接免疫蛍光アッセイ(IFA)によるさらなる試験のために5つのハイブリドーマ上清を最初に選択した。Cell−EIAの結果と一致して、上清3C4、4AB1、及び2B5はインタクトな細胞の細胞表面を染色した。
【0130】
PBS中の0.02M EDTAでインキュベーションすることによって細胞を離し、PBS−1%BSAで洗浄し、免疫蛍光分析のために氷冷温度で生きたまま加工した。ハイブリドーマ上清または血清と懸濁させて細胞を1時間インキュベートし、PBS−1%BSA中で3回洗浄し、PBS−1%BSAで1:40に希釈したFITC−GαM IgGに暴露した。45分後、結合していない抗体を洗い流し、細胞を共焦点顕微鏡によって試験した。
【0131】
驚くべきことに、3C4はBMRPA1.NNK(図2B)及び環状パターンにおけるBMRPAl.K−rasVal12細胞(同時係属中の仮特許(特許文献14)を参照)を染色したが、形質転換されていないBMRPA1細胞の細胞表面を染色しなかった(図2C)。このことは、形質転換された細胞の表面膜上にのみ3C4−Agが存在することを示す。
【0132】
【特許文献14】米国特許出願番号第60/443,703号
【実施例6】
【0133】
透過性細胞及び組織部分のイムノペルオキシダーゼ染色
細胞及び組織の調製:形質転換されたBMRPA1細胞及び形質転換されていないBMRPA1細胞を組織培養チャンバーに1×10細胞/cRPMI0.3mL/チャンバーで撒種した。2日後、細胞をBS中の4%パラホルムアルデヒドで4℃で一晩固定した。次いで、細胞をPBS−1%BSAで2回洗浄し、免疫組織化学染色のために使用した。0.1Mリン酸緩衝液(pH7.2)中の4%パラホルムアルデヒドをかん流させて免疫組織化学染色のための膵臓組織を成ラットから調製した。固定した脾臓を固定したラットから取り出し4%緩衝化パラホルムアルデヒド中で4℃で一晩保存した。次いで、脾臓を洗浄し、30%ショ糖中に一晩置いた。凍結した組織部分(10μm)をJung低温保持装置(Leica)を用いて作成し、ゼラチンでコーティングされたスライドの上に置き、−20℃で保存した。細胞系又は組織部分を4%緩衝化パラホルムアルデヒド中で1分間後固定し、Tris緩衝液(TrisB)(0.1M,pH7.6)中で洗浄し、トリトンX−100(TrisB中0.25%)中にRTで15分間置いた。次いで、免疫組織化学を以前に記載されたように行った(Guzら,1995)。
【0134】
生きたげっ歯類及びヒトPaCa細胞のmAb3C4を用いた染色は、インタクトな細胞の結晶膜に対して3C4−Agを局在化させた(図6A〜6J)。IFA及びFACSによって検出された3C4染色(実施例7)は、EDTAのみの代わりにトリプシン/EDTAが使用され細胞を離す場合完全に阻止され、このことは、3C4Agが形質転換されたBMRPA1細胞の外側膜上に見られるトリプシン−感受性のタンパク質であることを示す。
【実施例7】
【0135】
形質転換された及び形質転換されていないげっ歯類及びヒトの膵臓癌腫細胞の蛍光活性化細胞分類分析(FACS)
生きた細胞を氷上に置き、mAb3C4及びウサギ−αM IgG(FITC−RαM IgG)で標識したフルオレセインイソチオシアネート(FITC−)と順に反応させ、2%緩衝化パラホルムアルデヒド中で一晩固定し、洗浄し、BD FACS IVアナライザーで分析した。
【0136】
染色したBMRPA1.TUC3細胞のFACS分析は、細胞表面上の抗原の存在の半定量的評価を提供し、細胞の99%超での蛍光を確認し、このことは、PaCa細胞集合のそれぞれにおける細胞の99%超が3C4−Agを発現したことを示す。これらの結果を図7の散布図及び蛍光強度グラフに示す。
【実施例8】
【0137】
mAb3C4の精製
マウスに3C4ハイブリドーマ細胞(10/マウス)を注射した。腹水を集め、mAb3C4 IgG1をGタンパク質親和性ビーズを用いて腹水から精製した。mAb3C4を産生するハイブリドーマ細胞を腹腔(i.p.)に注射したマウスから抽出した腹水とともに注射したタンパク質Gビーズを一定速度の回転下で4℃で一晩インキュベートした。次いで、タンパク質Gビーズを遠心分離し、上清を除去し、ビーズを緩衝液A(10mM Tris、2mM EDTA、100mM NaCl、pH7.5)、緩衝液B(10mM Tris HCl、200mM NaCl、2mMのEDTA、0.2%トリトンX−100、0.25mM PMSF、pH7.5)、及び緩衝液C(10mM TrisHCl、0.25mM PMSF、pH7.5)で順に洗浄して、非特異的に吸着したタンパク質を除去した。ビーズの2倍の体積の溶出緩衝液(0.1M グリシン、pH2.7)を用いて結合したmAb3C4をビーズから溶出させ、ビーズから分離したものを簡単に遠心分離した後、1M Tris−HCl、pH9.0で溶出液を中和した。
【0138】
mAb3C4 IgGの精製は、SDS−PAGE及びイムノブロッティング法(IB)によって確認した。
mAb3C4のSDS PAGE及びイムノブロッティング法(IB):
タンパク質Gビーズカラムから溶出し分離したmAb3C4を、還元条件及び非還元条件下でのSDS PAGE及びイムノブロッティング法(IB)に供した。mAb3C4サンプル及び以下に記載される他のサンプルを非還元性サンプル緩衝液(125mM Tris−HCl、2%SDS、0.1%ブロモフェノールブルー、20%v/vグリセロール、pH6.8)及び還元性サンプル緩衝液(125mM Tris−HCl、2%(v/v)2−メルカプトエタノール、2%SDS、0.1%ブロモフェノールブルー、20%v/vグリセロール、pH6.8)の同体積と混合した。各サンプル(20μg/ウェル)からのタンパク質を以前に記載されるようにSDS−PAGEによって分離し(Laemmli,1970)、ニトロセルロース膜に電気的に移した。ゲルレーンを以下のようにした:
【0139】
レーン サンプル
1 = ハイブリドーマを注射したマウス腹水
2 = 腹水でインキュベートしたタンパク質Gビーズからのタンパク質の低pH緩衝液溶出液
3 = 還元後のレーン2のタンパク質
1B = レーン1のIB
2B = レーン2のIB
【0140】
膜をTBS−T中の5%(w/v)乾燥ミルクで1時間インキュベートした後、HRP−GαM IgG抗体を製造業者によって示唆されるように使用した(ECLキット,Amersham)。試験した各サンプル中のECLによるmAb3C4タンパク質の存在は、X−OMATフィルム(Kodak)に露光することによって検出した。
【0141】
図3のレーン1〜3は、複数からGタンパク質親和性精製したmAb3C4と共にクマシンブルー染色したSDS−PAゲルの写真である。レーン1は、約150〜160kD領域付近に見られるように、かなりの量のmAb3C4が腹水内に放出されたことを示す。レーン2:ビーズからIgGが定量的に放出された低pH溶出液。レーン3は、レーン2を還元した約160kDタンパク質(IgG)を示す。約160kDタンパク質の消失及びIgGに典型的な約55kDの重鎖及び約28kDの軽鎖の出現は、抽出した160kDタンパク質が実際はIgGであることの証拠である。レーン1B及び2Bは、HRP−SaM IgG及びECL反応キットを用いたレーン1及び3におけるIgGのイムノブロット及び放射線写真を示し、これにより約160kDタンパク質がIgGであることが確認された。この精製により、腹水中に存在する抗体の約2/3を抽出し、汚染物の98%超の除去に成功した。アイソタイプ特異性についてのELISA分析により、mAb3C4がκ軽鎖を有するマウスIgGのIgG1サブクラスに属することを同定した。
【実施例9】
【0142】
3C4抗原(PaCa−Agl)の同定
げっ歯類及びヒトの膵臓癌腫細胞由来の細胞溶解タンパク質のSDS PAGEの後、mAb3C4を含むIBを使用してタンパク質の性質及び3C4−Agの分子量(MW)を同定した(図4及び5)。細胞を25cmTCD中で増殖して密集させ、氷冷却したPBSで洗浄し、氷上で、50mM Tris−HCl、1% NP40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS、5mM EDTA、1μg/mLペプスタチン、2ug/mLアプロチニン、1mM PMSF、及び5mM ヨードアセトアミドからなる0.5mL RIPA溶解緩衝液(pH8)中でインキュベートした。30分後、残りの細胞片を溶解溶液内でこすり、細胞溶解物を11,500×gで15分間遠心分離して不溶解片を除去した。各溶解液のタンパク質濃度をBradfordのアッセイ(BioRad)によって決定した。細胞抽出物を非還元性緩衝液(125mM Tris−HCl、2%SDS、0.1%ブロモフェノールブルー、20%v/vグリセロール、pH6.8)又は還元性緩衝液(125mM Tris−HCl、2%(v/v)2−メルカプトエタノール、2%SDS、0.1%ブロモフェノールブルー、20%v/vグリセロール、pH6.8)の同体積と混合した。各サンプル(20μg/ウェル)からのタンパク質を以前に記載されるようにSDS−PAGEによって分離し(Laemmli,1970)、ニトロセルロース膜に電気的に移した。図4におけるゲルレーンを以下のようにした:
【0143】
レーン サンプル
1 = BMRPA1.NNK+mAb3C4;HRP−GαMIgGを含む
2 = BMRPA1+mAb3C4、HRP−GαMIgGを含む
3 = BMRPA1.NNK、mAb3C4なし、HRP−GαMIgGを含む;
4 = BMRPA1.TUC3、mAb3C4とHRP−GαMIgGとを含む
5 = 非還元性ヒトMIA−PaCa−2、mAb3c4なし、HRP−GαMIgGを含む
6 = 還元性MIA−PaCa−2、mAb3C4なし、HRP−GαMIgGを含む;
7 = 還元性MIA−PaCa−2、mAb3C4とHRP−GαMIgGとを含む
8 = 非還元性MIA−PaCa−2、mAb3C4とHRP−GαMIgGとを含む
HRP−GαMIgGを含むECL増幅
水平線は分離ゲルの上部及び底部を示す。
【0144】
膜をTBS−T中の5%(w/v)乾燥ミルクで1時間インキュベートした後、mAb3C4(1:200)及びHRP−GαM IgG抗体を製造業者によって示唆されるように使用した(ECLキット、Amersham)。試験した各サンプル中のECLによる目的のタンパク質の存在は、X−OMATフィルム(Kodak)に露光することによって検出した。
【0145】
図4に示されるイムノブロットにおいて示されるように、mAb3C4は、非還元性条件下(レーン1〜5、8)及び還元性条件下(レーン6及び7)の両方で、3C4−Agがげっ歯類及びヒトの膵臓癌腫細胞の両方の細胞溶解物中の約43〜43.5kDタンパク質であることが明らかに同定された。上記タンパク質は、正常な形質転換されていないBMRPA1細胞の溶解物中には存在せず、NNK形質転換された細胞及びヒトPaCa細胞系MIA−PaCa−2中に存在する。還元が3C4−Agの移動パターンを変えないという事実は、抗原がサブユニットを含有しないことを示す。
【0146】
図5は、mAb3C4及びタンパク質G免疫親和性ビーズを含むBMRPA1.NNK細胞からの3C4抗原の免疫沈降を示す。Aにおいて、タンパク質ゲルの銀染色は、レーン1(タンパク質Gのみで処理)には存在するが、レーン2(mAb3C4及びタンパク質Gビーズで処理)には存在しない約43kDaのポリペプチドバンドの除去を示す。抽出されたバンドは、約43kDaの単一のバンドとしてmAb3C4を用いたイムノブロッティング法によって図5Bのレーン2において同定された。
【実施例10】
【0147】
2D等電集束/SDS−デュラシルゲル電気泳動ポリペプチド分離
プロテアーゼインヒビターの存在下でBMRPA1.NNK細胞を系中で溶解させ、それらの核を遠心分離によって除去し、細胞溶解物のタンパク質濃度をBradfordのアッセイ(BioRad)によって確立した。細胞タンパク質(0.4mg)を、dHO(1.65ml)中の尿素−/NP−40−溶液(8.15ml)及び2−メルカプトエタノール(0.2ml)[尿素−/NP−40ストック溶液:24g尿素を0.84mlのNP−40(Nonidet)を含有するdHO 18mlに溶解した]で作成された等電集束サンプル緩衝液に移した。次いで、サンプル緩衝液中の溶解物を、アクリルアミド/ビス−アクリルアミド(0.5ml)、尿素−/NP−40溶液(3.76ml)、生物分解物の混合物(0.25ml)、硫酸アンモニウム(10%w/v溶液0.015ml)及びTEMED(0.004ml)からなるIEFキャピラリー管ゲルの上部に置いた。アクリルアミド/ビス−アクリルアミド混合物は、9gのアクリルアミド及び0.54gのビス−アクリルアミドを30mlのdHOに溶解して調製した。生物分解物(ampholine)混合物は、3〜10(0.4ml)及び5〜7(0.1ml)の範囲をカバーする生物分解物を混合することによって製造した。タンパク質をIEFゲルで200Vで2時間分離した後、500Vで5時間、800Vで16時間分離した。分離したタンパク質の分子量を規定する第2の寸法は、12%SDS−PAGEゲル(BioRad)中で20mA/ゲルで操作した。同一の条件でいくつかのIF及びSDS−PAGEゲルを平衡して操作し、銀染色のために加工し(Genomic Solutions Inc.)(図11)、mAb3C4を用いたイムノブロッティング法(図12)のためにPVDF膜(Schleicher及びScholl)に電気泳動的に移し、タンパク質配列決定のための3C4−Agスポットの単離のためのイモビロン膜に移した。あらかじめ染色した分子マーカーを使用して、IFゲルから膜へのタンパク質の適切な移動を照合した。図11における銀染色は、それらのPI値に従って、IFゲル内で、細胞溶解物中及びそれらの適切な分離物中の大量の個々のタンパク質の存在を示す。図12に図示されるイムノブロットは、X線フィルムのECL−化学蛍光手順を用いて作られた。mAb3C4ブロットの化学発光分析は、発光の単一のスポット(矢印の先)のみが3C4−Agが4.6〜4.8のpIを有する約43kDポリペプチドとして同定されることを示す。
【0148】
分離したポリペプチドは、半乾燥条件下で1時間、1.25mA/cm(484mA)でPVDF(Schleicher及びScholl)膜に迅速に移されるか、又は製造業者(Genomics Solutions,MA)の指示に従って銀キットで染色されるかのいずれかであった。PVDF膜をウェスタンブロット分析によって3D4−Agを検出するために使用し、Rev Pro(Genomic Solutions,MA)、又はアミドBlackのいずれかでその後に染色した。最初の寸法におけるpH勾配を以前に記載されるように1.0cm部分から決定した(非特許文献80)。2D分離したポリペプチドの銀染色をゲルのコンピュータースキャンによって記録した。
【0149】
【非特許文献80】O’Farrell,PH.High resolution two−dimensional electrophoresis of proteins. J.Biol Chen,250:4007−4021(1975).
【実施例11】
【0150】
3C4 Agの発現は、膵臓癌細胞に極めて限定され、正常組織には見られない
正常なラット、ヒト組織及び形質転換されたヒト組織内で3C4−Agの分布を試験するために、mAb3C4を用いた組織抽出物のイムノブロットを行った。種々の組織(甲状腺、卵巣、脳、心臓、肺、肝臓、睾丸、図9を参照)からの組織抽出物由来の減少したタンパク質、及びヒト腺房膵臓細胞、白血球血液細胞、及び腺管膵臓細胞(図9Bを参照)を12% SDS PAGEで分離し、電気泳動的にニトロセルロースに移し、mAb3C4存在下又は非存在下で処理した後、ECL化学発光増幅を行った。MIA−PaCa及びマウスIgGを対照として供した。減少したタンパク質の抽出物(0.05mg/レーン)を12% SDS PAGEで分離し、電気泳動的にニトロセルロースに移し、mAb3C4存在下又は非存在下で処理した後、ECL化学発光増幅を行った(Amersham Pharmacia)。それぞれヒト膵臓腺房(PA)及び腺管組織(PD)の10倍及び4倍を超えるタンパク質が、Agの発現の少量の存在をも排除するために追加された。MIA−PaCa−2細胞溶解物及びIgGを対照として使用した。図9に記載されるような結果は、3C4 Agが正常組織には存在しないが膵臓癌細胞には存在することを示す。
【0151】
次いで、mAb3C4を用いた種々のヒト癌性組織(神経グリア芽細胞腫、肺癌、表皮癌、結腸ACA、乳癌ACA、表皮ACA、腎臓ACA、MIA−PaCa)のイムノブロットを行い、結果を図10に示した。この結果より、約43.5kDの抗原についてmAb3C4が非常に選択的な反応性を示し、3C4−AgはヒトPaCa、MIA−PaCa−2細胞において非常に発現することを示す。この反応性の特異性は、mAb3C4がIB中では除外されるか、又は非特異的なIgGに交換される場合、全ての組織サンプルにおける任意のタンパク質バンドの非存在によってさらに示される。これらのことから、腎臓、前立腺及び可能ならば直腸癌腫において少量の3C4−Agが存在するが、その量は、PaCa細胞によって発現される量と比較して十分ではないと考えられ、示されているレーンにおいてたった0.02mgのタンパク質が分離されたのみである。ひとまとめにして考えると、IB及びICによって得られた結果は、ラット及びヒトPaCa細胞中で優先的に発現する抗原、3C4−Agに対するmAb3C4の特異性を非常に支持する。
【0152】
正常なヒト膵臓組織(n=2)及び精製したヒト腺房及び導管細胞は、ウェスタンブロットによって、mAb3C4と反応性ではないことがわかった。さらにmAb3C4とのウェスタンブロッティングによって、舌、食道、胃、十二指腸、回腸、空腸、盲腸、直腸、脳、心臓、気管、肺、肝臓、腎臓、乳腺及び前立腺組織及び抹消白血球細胞由来の最適に保存されたヒト組織抽出物(Becton Dickensonから)はmAb3C4に対して非反応性であった。しかし、ラット卵巣と同様に、mAb3C4とのウェスタンブロットによって、かすかに陽性の43.5kDaバンドが正常なヒト卵巣組織で観察された。
【実施例12】
【0153】
PaCa−Agの特性決定、組織分布、及び相対発現レベルのさらなる試験
パラホルムアルデヒド又はメタノール/アセトンのいずれかで固定された形質転換された細胞の免疫組織化学及び間接的な免疫蛍光(IIF)(図14A、C〜F)(形質転換されていない細胞(図14B)は除く)は、膜の強調した染色を示した(図14)。細胞を氷で冷却した後、mAb3C4と反応させ、FITC−GaMIgGと反応させ、緩衝化2%パラホルムアルデヒドで固定した。A、B、C及びD×40オブジェクティブ;E、F×64オブジェクティブ;Fuji 400 ASAフィルム。
【0154】
PaCa−Aglタンパク質の変性を生じさせた細胞全体のトリプシン消化は、血漿膜上の位置と一致した(図15)。しかし、エキソグリコシダーゼ及びエンドグリコシダーゼ(Prozyme)(非特許文献81);(非特許文献82);(非特許文献83)に対する暴露は、抗原性を排除もせず、電気泳動挙動を相当程度変化させもせず(図16B)、このことは、PaCa−Aglがグリコシル化されていないか、最小限しかグリコシル化されておらず、モノクローナルmAb3C4によって認識されるPaCa−Agl上のエピトープが炭水化物含有領域ではなくて純粋なペプチドであると考えられることを示す。これにより、ペプチドエピトープと比較して、炭水化物含有エピトープがより影響を受ける交差反応性の可能性を減少させている。
【0155】
【非特許文献81】Iwase H, Hotta K. Release of 0−linked glycoprotein glycans by endo−alpha−N−acetyl−D−galactosa−minidase. Methods Mol Biol 14: 151−159, 1993
【非特許文献82】Altmann F, Schweiszer S, Weber C. Kinetic comparison of peptide:N−glycosidases F and A reveals several, differences in substrate specifity. Glycoconj J 12:84−93,1995
【非特許文献83】Lee, JY,TN Pack. Enzymatic in vitro glycosylation using peptide−N−Glycosidase F.Enzyme Microbial Technol 30:716−720,2002
【0156】
PaCa−Aglは、豊富なタンパク質であることがわかった:フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識されたmAb3C4及び標準量の蛍光体を有するビーズ存在下でのサイトフルオリメトリー(FACS)(QuickCal Quantum−26,Bangs Lab)(非特許文献84);(非特許文献85);(非特許文献86)を用いて、形質転換されたBMRPA1細胞が細胞あたり2〜4.4×10のコピーを発現することが決定された。mAb3C4に対するPaCa−Aglの反応性は、免疫蛍光及びイムノブロットによって形質転換されていないBMRPA1細胞においてはゼロであり、イムノブロットによる正常なラット膵臓においてゼロであった(図9及び10)。さらに、mAb3C4と反応性であるタンパク質は、正常なラット卵巣上皮、食道、胃、小腸、大腸、肝臓(肝細胞及び胆管上皮を含む)、肺、心臓、甲状腺、睾丸、脳及び抹消血液細胞において検出不可であった。
【0157】
【非特許文献84】Zagursky et al,1995.
【非特許文献85】Borowitz MJ,J Shuster, AJ Caroll, M Nash, AT Look, B Camitta, D Mahoney, SJ Lauer, DI Puilen. Prognostic significance of fluorescence intenity of surface marker expression in childhood B−precursor acute lymphoblastic leukemia, Blood 89:3960−3966,1997.
【非特許文献86】Schwartz A,GE Marti,R Poon,JW Gratama, E Femandez−Repollet. Standardizing flow cytornetry: A classification system of fluorescence standards used for flow cytometry. Cytometry 33:106−114,1998.
【0158】
Ab3C4との反応性を有する正常なラット組織は、約43.5kDタンパク質がわずかな反応性を示した成長した卵巣のみであった。
【0159】
【表3】

【実施例13】
【0160】
PaCa細胞に対するmAb3C4の相補的に媒介される細胞毒性の立証
mAb3C4の細胞毒性を以下のように決定した:ヒトMIA−PaCa−2細胞を4℃でmAb3C4と共にインキュベートし、相補源(C)として新鮮なウサギ血清中で37℃でインキュベートした。結果を図8に示すが、mAb3C4一定濃度で、Cの濃度の増加につれて、細胞溶解の数が増えた。対照的に、より高い濃度でさえ、HI−C(HI−C=熱不活性化したウサギ血清、56℃、45分)は、mAb3C4非存在下でのCと同様に、MIA PaCa−2細胞に対する細胞毒性を示すのと同程度に有効でなかった。同様の結果がBMRPA1.NNK及びBMRPAIについて得られた。Tuc3細胞をこのアッセイに使用した。全ての希釈物及び反応物はCa++及びMg++を含有するPBS中で作成した。
【実施例14】
【0161】
インビボでの腫瘍増殖に対するmAb3C4の影響
Nu/Nuマウス(n=10)をBMRPA1.TUC3細胞(5×10細胞/マウス)に皮下で異種移植した。腫瘍は、直径10〜14mmになるまで成長し、増殖した。この時に、mAb3C4を分泌する3C4ハイブリドーマ細胞をマウスあたり10細胞で腹腔内(ip)注射し、2日ごとに腫瘍の成長を観察し、腫瘍の直径を測定した。4日以内で腫瘍増殖は抑えられ、16日以内に腫瘍の大きさが直径4〜6mmまで減少した(すなわち、3C4ハイブリドーマをIP注射した時に最初に測定した大きさよりも顕著に小さくなっていた)。図13を参照。腫瘍抑制の有意値は、混合モデル分析を用いて決定される0.00066未満である。
【実施例15】
【0162】
3C4−Agが存在する細胞について高い特異性を有するアデノウイルスベクターの構築
(非特許文献87)によって公開されたペプチド配列に対応するDNA配列を用いたInvitrogenによって2個の一本鎖DNAフラグメントを合成した。このペプチド配列に加えて、そのフラグメントは、開始コドン、Kozakモチーフ、停止コドン及びNotl及びKpn1についての2個の制限部位及びそれぞれの末端に制限酵素が適切に結合可能なさらなる4塩基対を含有していた。
【0163】
【非特許文献87】Kanovsky M, Raffo A, Drew L, Rosal R, Do T, Friedman FK, Rubinstein P, Visser J, Robinson R, Brandt−RaufPW, Michl J, Fine RL, Pincus MR.; Proc Nati Acad Sci US A. 2001 Oct 23;98(22):12438−43: Peptides from the amino terminal mdm−2−binding domain of p53, designed from conformational analysis, are selectively cytotoxic to transformed cells.
【0164】
配列を以下に示す:
−5’−ATCCGGTACCAAATG’GAGACCTTTTCTGACC
TCTGGAAACTCCTC’TAGAAGCDDCCDCACTC−3’
5’酵素:Kpn1;3’酵素:Notl1
−3’−TAGGCCATGGTTTAC’CTCTGGAAAAGACTG
GAGACCTTTGAGGAG’ATCTTCGCCGGCGTGAG−5’
【0165】
3μgのGOI−frw及び3μgのGOI−revを2.5μlの10×PCR緩衝液(Qiagen)と混合し、0.5μlのdNTP(各10mM,Qiagen)、0.5μlのTaqポリメラーゼ(Qiagen)及び19.5μlの滅菌水で全反応体積25μlにした。サンプルを94℃で5分間変性させ、50℃で1分間アニーリングし、72℃で10分間インキュベートした。
【0166】
微生物のクローニング及びトランスフェクション;
上述の反応物4ulをTA−クローニング反応のために取り、化学的に有能なTOP−10ワンショットE.coli(Invitrogen)に添加し、微生物を42℃で30秒維持し、SOC(Invitrogen)培地(Invitrogen)で37℃で1時間インキュベートした。微生物をカナマイシン(50μg/ml)を含有する選択的なLB寒天プレートに撒種し、37℃で一晩インキュベートした。
【0167】
微生物クローンの分析:12コロニーをランダムに選択し、液体培地(50μg/mlのカナマイシンを含有するLB培地)中で一晩増殖させた。3ml培地から微生物を採取し、QiagenのMiniprepプラスミド単離キットを用いてプラスミド単離を行った。各単離されたプラスミド10μlを10ユニット(U)のEcoR1制限酵素で37℃で1時間消化し、それぞれの消化したプラスミドの半分を2%アガロースゲルで分析した。予想された大きさの挿入物を示すプラスミドをGenewiz Inc.,NJに対して配列決定するために送った。
【0168】
エントリーベクターの構築:
予想された配列を含有するプラスミド40μgを50ul反応体積中で、40UのNot1(NEB)を用いて37℃で1時間消化した。次いで、その半分に、フェノール:クロロホルム=1:1を添加し、サンプルを攪拌し、最大速度3’で遠心分離した。上層を新しい管に移し、3M酢酸ナトリウム溶液及び100%エタノールで沈殿させた(Sambrookら,1989)。プラスミドを再溶出させ、50ul反応体積中で40UのKpn1(NEB)で37℃で1時間消化した。ベクターpENTR11(Invitrogen)40gを並行して加工した。両方の反応を2%寒天ゲル上で分析し、次いで、混合物全体を1%アガロースゲル上で処理した。適切なバンドを切断し、QiagenからのGel Extraction Kitを用いてゲルから抽出した。キット中に含まれる1つのカラムの最大結合能力はDNA10ugであるため、消化されたpENTR11反応物を3つのフラクションに分け、別個に加工し、次いで再びプールした。サンプルのODを測定し、適切な濃度の5’末端とのT4−DNAリガーゼ(NEB)を用いた結紮反応物を16℃で4時間インキュベートした(非特許文献88)。結さつ反応物4ulを使用して上に記載されるようにE.coliをトランスフェクトした。GOIの存在について12コロニーを分析し、陽性クローンを次の実験のために選択した。
【0169】
【非特許文献88】Sambrook,J.,Fritsch, E.F. and Maniatis, T.; Molecular cloning. A laboratory manual. 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press 1989, Cold Spring Harbor, NY.
【0170】
PNC−28を含有するアデノウイルスベクターの構築(Ad/CMV/V5/PNC−28):
300ngのpENTR11−PNC−28及び同量のAd/CMV/V5ベクターを製造業者のプロトコルに記載されるようにラムダ組み換え反応において使用し、25℃で2時間インキュベートした(Invitrogen,Carlsbad,CA)。
【0171】
293A細胞における(Ad/CMV/V5/PNC−28)の繁殖:
Ad/CMV/V5/PNC−28を含有する上記反応混合物1ulをTOP−10の化学的に有能なE.coliにトランスフェクトし、アンピシリンプレート中で増殖させた(100ug/ml)。コロニーを選択し、LB−クロラムフェニコール(30ug/ml)中で増殖を試みた。増殖がうまくいかない場合、真に陽性のクローンであるため、微生物をLB−アンピシリン(100ug/ml)中で繁殖させ、上述のように単離した。10個の293A細胞をトランスフェクトするために、1トランスフェクションあたり1ウェルあたり、6ウェル皿中の2ml通常増殖培地に撒種し、ベクター4ugを50ul反応体積中で4UのPac1(NEB)で37℃で1時間消化し、フェノールはクロロホルム抽出し、上述のように沈殿させ、1ug/ulの濃度で溶出させた。撒種18時間後、細胞培地を抗生物質を含まない通常増殖培地と置換した。撒種24時間後、細胞をAd/CMV/V5/PNC−28−リポフェクタミン2000(Invitrogen)で、抗生物質及びFBSを含まないOPTI−MEM培地(Invitrogen)0.5ml中で、DNA:リポフェクタミン2000比2:5でトランスフェクトした。トランスフェクション24時間後、培地を抗生物質及びFBSを含有する通常増殖培地で交換した。トランスフェクション48時間後、細胞を10cm皿に移し、60%細胞変性効果(CPE)が観測されるまで2日ごとに供給し、80%CPEに到達したら、ウイルスを製造業者のプロトコルに従って収穫した。
【0172】
293A及び3C4−ハイブリドーマ細胞からのcDNA合成:
3×10細胞を各細胞系で集めた。全RNAをRneasyミニキット(Qiagen)を用いて単離し、ポリ−AmRNAをClontechのNucleotrap mRNA精製キットを用いて単離した。各細胞系の精製mRNA1ugを使用し、SMART PCR cDNA合成キット(Clontech)を用いてDNAを合成した。cDNAを1%アガロースゲル上で分析し、その整合性を確認した。
【0173】
CARの外形質領域のPCR増幅:
ヒトCARの配列をwww.ncbi.nih.govで検証し、外形質領域及びSfil(5’)及びNot1(3’)制限部位に隣接するプライマーを合成した(Invitrogen)。配列を以下に示す:
−5’−atcc’ggcccagccggcc’gcgctcctgctgtgcttcgtg−3’ Sfil CAR−frw
−5’−atcc’gcggccgc’agcgcgatttgaaggagggac−3’ Not1 CAR−rev
【0174】
PCRを以下のように行った。各プライマー10pmolを10×PCR緩衝液2.5ul(Qiagen)、dNTP0.5ul(各10mM、Qiagen)、Taqポリメラーゼ0.5ul(Qiagen)及び滅菌水19.5μlと混合し、全反応体積を25ulにした(非特許文献89)Saikiら,1985)。サイクル条件は、95℃、5分、(95℃、1分;60℃、1分;72℃、2分)×30、72℃、10分であった。PCR生成物をTAクローニング(TA クローニングキット、Invitrogen)に供し、クローンを分析し、上述のように配列決定した。
mAb−3C4の重鎖(V−3C4)及び軽鎖(V−3C4)の可変領域のPCR増幅:
【0175】
【非特許文献89】Saiki, R. K., Scharf, S. J., Faloona, F., Mullis, K. B., Horn, G. T., Erlich, H. A. and Arnheim, N. (1985) Science,230,1350.
【0176】
重鎖及び軽鎖の可変領域の一定隣接領域からなるプライマーをNovagenから購入した。Advantaqポリメラーゼミックス(Clontech)を用いる企業によって示唆されるようにV−3C4及びV−3C4を増幅するためのPCRを行った。PCR生成物をTAクローニング(TA クローニングキット、Invitrogen)に供し、クローンを分析し、上述のように配列決定した。発現ベクターに適切に挿入可能なさらなる制限部位を含有する得られた配列とマッチする新しいプライマーを設計した。プライマーをInvitrogen(Carlsbad,CA)によって合成した。プライマー配列を以下に示した:

frw:−5’−atcc’gcggccgc’−3’Not1
rev:−5’−atcc’cctagg’−3’BamH1

frw:−5’−atcc’ggatcc’t’ggt’atggagacagacacactc−3’BamH1
rev:−5’−atcc’ctcgag’c’tttccagcttggtccccc−3’Xho1
【0177】
PCRを以下のように行った。各プライマー10pmolを10×PCR緩衝液2.5μl(Clontech)、dNTP0.5ul(各10mM、Clontech)、Taqポリメラーゼ0.5ul(Clontech)及び滅菌水19.5μlと混合し、全反応体積を25ulにした。サイクル条件は、95℃、5分、(95℃、1分;55℃、1分;72℃、2分)×30、72℃、10分であった。PCR生成物をTAクローニング(TA クローニングキット、Invitrogen)に供し、クローンを分析し、上述のように配列決定した。所望の配列を含有するクローンを発現ベクターの構築のために選択した。
【0178】
CAR、V−3C4及びV−3C4を含有する真核細胞発現ベクターの構築:
CARについて予想される配列を含有するプラスミド40μgを50ul反応体積中で、40UのNot1(NEB)を用いて37℃で1時間消化した。次いで、その半分に、フェノール:クロロホルム=1:1を添加し、サンプルを攪拌し、最大速度3’で遠心分離した。上層を新しい管に移し、3M酢酸ナトリウム溶液及び100%エタノールで沈殿させた。プラスミドを再溶出させ、50ul反応体積中で40UのSfil(NEB)で50℃で1時間消化した。選択した真核細胞発現ベクターpSecTag2A(Invitrogen)40μgを並行して加工した。両方の反応を2%アガロースゲル上で分析し、次いで、混合物全体を1%アガロースゲル上で処理した。適切なバンドを切断し、QiagenからのGel Extraction Kitを用いてゲルから抽出した。キット中に含まれる1つのカラムの最大結合能力はDNA10ugであるため、消化されたpENTR11反応物を3つのフラクションに分け、別個に加工し、次いで再びプールした。サンプルのODを測定し、適切な濃度の5’末端とのT4−DNAリガーゼ(NEB)を用いた結紮反応物を16℃で4時間インキュベートした。結紮反応物4ulを使用して上に記載されるようにE.coliをトランスフェクトし、ここで、抗生物質はアンピシリン(100ug/ml)のみであった。PCRスクリーニングを介してCARの存在について20コロニーを分析した。この実験のために、テンプレートを含有しない以外は上述のCARのPCR増幅のために記載されるように、コロニー1個あたり1個の反応管を調製した。サイクル条件は上述のとおりであった。PCR生成物を2%アガロースゲル上で分析し、陽性のものは以下pSecTag2A−CARと称され、次の実験のために選択された。
【0179】
上に示されるような制限酵素を用いてこの手順をV−3C4について繰り返し、プラスミドをpSecTag2A−V−3C4と命名した。
【0180】
最終構築物を調製するために、V−3C4を含有するTOPO−TAベクター40ugをBamHl及びNotlで消化し、各ベクター40ug(pSecTag2−CAR2及びpSecTag2A−V−3C4)をそれぞれ以前に記載されるようにNotl及びBamHlで消化し、V−3C4を2つの遺伝子間に結紮することによって、直鎖化pSecTag2Aベクターによって一方の端が隣接された中間体構築物を得た。この構築物をXho1で消化し、ゲル精製し、上に記載されるように発現ベクターに結紮し、pSecTag2A−CAR−V−3C4−V−3C4と命名した。
【実施例16】
【0181】
げっ歯類及びヒトサンプルにおけるPaCa−Agの可溶性形態の検出
無胸腺マウスにおいてras−形質転換された亜系BMRA1.TUC3細胞(n=3)の腹腔内(i.p.)インプラントから集めた腹水、及びこれらの細胞(n=2)をs.c.で移植した無胸腺マウスにおいて形成された腹水は、分子量36〜38kDaのPaCa−Agl:mAb3C4−反応性タンパク質の可溶性形態を示した。対照的に、P3U−1マウス骨髄腫細胞のi.p.移植によって誘発される対照腹水は、mAb3C4−反応性タンパク質を含有していなかった。
【0182】
同様に、BMRPA1.TUC3をs.c.で異種移植され、腫瘍が256〜1220mgに成長したマウスからの血清及び腹水は、血清タンパク質が吸着される96−ウェルプレートのウェルに対するmAb3C4の結合についての1−抗体抗原−吸着ELISAによって陽性であることがわかった(図17C)。1−抗体抗原−吸着ELISAは、ウェル中に存在するPaCa−Aglを見つけて結合するmAb3C4を使用し、第2のHRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)標識されたヒツジ抗マウスIgG(HRP−S IMIgG)に結合した後、HRP基質TMB(テトラメチルベンジジン)に結合し、OD450nmで吸収を測定した。
【0183】
図17Aは、半純粋なPaCa−AglのmAb3C4濃度の滴定を示す。挿入物は、電気溶出されたPaCa−Ag(n=2)を示す。図17Bにおいて、PaCaAglは使用済の(18時間)膵臓癌細胞(BMRPA.NNK)の細胞培地中に存在する(濃くはない)。赤色の四角は、可溶性のPaCa−Agl(n=2)による、吸着したPaCa−Aglに対するmAb3C4結合の最大の半分の結合での有効な競合を示す。図17Cは、膵臓癌腫BMRPA.TUC3細胞(n=5)を異種移植されたマウスの腹水におけるPaCa−Aglの存在を示すが、P3U1移植後の対照腹水におけるPaCa−Aglの存在は示さない(図示せず)(n=2)。図17Dは、膵臓癌患者(n=1)の膵臓管汁(ERCP)におけるPaCa−Aglを示す。対照ウェルのバックグラウンド測定値を引き算した。
【0184】
形質転換されたBMRPA1及びヒトMiaPaca−2細胞の組織培養液におけるPaCa−Aglの測定可能な量の存在は、1−抗体抗原−吸着ELISAによって示された(図17B)。細胞生存度は98%超であり、ELISAの陽性が、生存細胞によるPaCa−Agl又はそのフラグメントの放出よりも細胞の分解によって生じるという可能性は非常に小さい。
【0185】
膵臓悪性線腫をもつ3人の患者由来の血清サンプルをmAb3C4に対する反応性についてウェスタンブロットによって試験した。3種全ての血清は、mAb3C4に対する強固な反応性を示し、マウスの腹水において見出されるPaCa−Aglの可溶性形態と本質的に同じ分子量(MW)であるMW36〜38kDaの単一タンパク質からなる(図18,レーン2〜4)。健康なヒト対照由来の血清サンプルは、mAb3C4と反応性を示さなかった。既知の膵臓悪性線腫を有する患者における視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)中に得た膵臓管分泌サンプルによってさらに、mAb3C4と反応性のタンパク質の存在が明らかになった。このことは、1−抗体抗原−接着ELISAを用いて示され:PaCa−Aglはウェル中に存在し、ERCP液中のタンパク質を規定の時間で吸着可能にする(図17D)。
【実施例17】
【0186】
PaCa−Aglの分離及び精製
他の発見と一致して、新生物的に形質転換されたラットBMRPA1細胞及びヒトMIAPaCa−2膵臓癌細胞の細胞フラクションにより、膜/可溶性フラクション中に排他的に見出されるPaCa−Aglが、粒子状又は核フラクションにはないことがわかった。PaCa−Ag−1はさらに、非変性電気泳動及び等電点ゲルにおいて、mAb3C4を用いて同定された。電気的に溶出された43.5kDPaCa−Aglは、さらに大きな分子サイズのタンパク質でもさらに小さな分子サイズのタンパク質でもなく、膵臓癌腫細胞におけるPaCa−Agl及び1−抗体(mAb3C4)抗原(PaCa−Agl)−吸着ELISAにおける抗原タンパク質に結合するmAb3C4と有効に用量依存的に競合することが示された。これらの発見に基づいて、ヒトMiaPaCa−2膵臓癌腫から誘導される細胞の血漿膜フラクション由来のPaCa−Aglを免疫沈降させてもよく、PaCa−Aglタンパク質を任意の汚染物から電気泳動的に分離してもよく、そのアミノ酸(AA)配列の質量分析的同定のために電気溶出させてもよい。
【0187】
方法:PaCa−Agl−特異的なmAb3C4が入手可能なことにより、43.5kDaポリペプチドを単離するための直接的なアプローチとして、細胞溶解物由来のPaCA−Aglの免疫親和性抽出が容易になる。Mia−PaCa−2細胞は、PaCa−Aglタンパク質を単離するために使用されてもよい。これらのヒト膵臓癌腫から誘導される細胞は、げっ歯類膵臓癌腫細胞BMRPA1.NNK及びBMRPA.TUC3によって発現されるものよりも血漿膜において10倍のPaCa−Aglを発現する。細胞フラクション及び膜タンパク質の単離のための実際的な親和性アプローチのために、以前に(非特許文献90)及び(非特許文献91)によって記載された手順を使用してもよい。
【0188】
【非特許文献90】Schneider C, RA Newman, DR Sutherland, U Asser, MF Greaves. A one−step purification of membrane proteins using a high efficiency immunomatrix. J Biol Chem, 257:10766− 10769, 1982
【非特許文献91】Dissler H, F Lottspeich, MF Rajewsicy. Affinity purification and eDNA cloning of rat neural differentiation and tumor cell surface antigen gp 130RB13−6 reveals relationship to human and murin PC−i.J Biol Chem,270:9849−9855,1995
【0189】
可溶化膜フラクション由来のPaCa−Aglの免疫親和性抽出のための調製において、親和性精製されたmAb3C4 4〜8mgを、ホウ酸ナトリウム緩衝液(0.1M、pH8.2)中のジメチルピメルイミデート(DMP,0.1M)の存在下でタンパク質Gビーズ1ml(Amersham−Pharmacia)に架橋してもよい(非特許文献92)。mAb3C4で誘導体化されたビーズのサンプルを不可逆的に結合する抗体についてSDS−PAGEによって分析してもよい。使用準備のできたmAb3C4−タンパク質Gビーズを、使用直前に可溶化緩衝液(以下を参照)中の50%懸濁物に再懸濁させてもよい。平らなタンパク質Gビーズを任意のmAbの非存在下で並行して処理する。
【0190】
【非特許文献92】Schneider C, RA Newman, DR Sutherland, U Asser, MF Greaves. A one−step purification of membrane proteins using a high efficiency immunomatrix. J Biol Chem, 257:10766−10769,1982
【0191】
MIA PaCa−2(約10細胞、30〜40の大きな組織培養フラスコ)の大量培養から、80〜90%密度での細胞を集め、洗浄し、250gずつペレット化し、均質化緩衝液[NaPO(0.02M)(pH7.4)、ショ糖(0.25M)、プロテアーゼインヒビターカクテル1:100(Invitrogen)]中で再懸濁し(10×細胞体積)、Omniホモジナイザー(Omni)中で氷中30,000rpmで2分間均質化してもよい。均質物を遠心分離(1000×g)後(沈降物1=P1、及び上清1=S1)、S1を集め、可溶性タンパク質(S2)のフラクションからペレット(P2)(PaCa−Aglを含有する)における不溶性膜フラクションを分離するために140,000×gで1時間超遠心分離してもよい。PaCa−Aglの免疫親和性抽出のために、ペレットを超遠心分離(30,000×g、30分)によって洗浄し、可溶化緩衝液[Tris−HCl(0.04M)pH7.5、NaCl(0.2M)、CaCl(0.001M)、MgCl(0.001M)、n−オクチル−b−d−グルコシド(0.05M、デオキシコレート(0.14%)、プロテアーゼインヒビターカクテル1:100]中で直接再懸濁する。細胞均質化中に集めたステップP1、S1、S2及びP2からのタンパク質サンプル(0.05mgタンパク質)を、効果的な細胞フラクション化を示す異なるタンパク質パターンのために、SDS−PAGE(非特許文献93)によって試験することができる(非特許文献94)。
【0192】
【非特許文献93】Laemmli, HU. Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4. Nature 227:680−685.1970.
【非特許文献94】Beaufay H, Amar−Costesec A. Methods in Membrane Biology, vol 6. Ed. Korn ED, Plenum Press, 1976.
【0193】
タンパク質は、Tris−HCl(0.04M、pH7.5)、0.2M NaCl、CaCl(0.01M)、MgCl(0.001M)、デオキシコレート(0.14%)、及びプロテアーゼインヒビターカクテル中のn−オクチル−b−d−グルコシド(0.05M)を含有する可溶化緩衝液を頻繁に攪拌しつつ1.5時間インキュベーションすることによって、膜から放出されてもよい。特定のタンパク質可溶化緩衝液の使用を決めるための予備試験により、n−オクチル−b−d−グルコシドが、トリトンX−100による同じ処理時間で放出される腫瘍細胞からのPaCa−Aglの約2倍量を放出することが示された。1.5時間の放出時間の後、100,000×gで超遠心分離することによって、可溶化タンパク質を含有する可溶性フラクションを不溶性物質から分離することができる。回収されたタンパク質の量は、OD280nmの読みによって測定するか、又は比色アッセイBioRadタンパク質アッセイを用いて測定する。少量の定量がSDS−PAGEのために及びタンパク質含量の確認のためになされてもよく、ウェスタンブロットによるPaCa−Aglの存在の確認のためになされてもよい。実際の抽出は、タンパク質抽出物0.2mlに対してmAb−3C4 0.05mlを添加し、1時間までインキュベーションを続けることによって行われてもよい。対照ビーズは、同量の細胞タンパク質とともに処理されてもよい。ビーズを可溶化緩衝液でさらに洗浄した後、結合したタンパク質を低pH放出緩衝液(グリシン0.01M、pH2.8)でインキュベーションすることによって放出することができる。このとき、集めた各フラクションは正確な量の塩基性ホスフェート緩衝液(NaHPO 0.1M,pH12)を添加することによってすぐに中和する必要がある。各サンプルのタンパク質含量が測定され、SDS―PAGEによってフラクション分析された後、銀染色及び/又はウェスタンブロットによって測定されてもよい。低pH放出の代替として、親和性結合したPaCa−AglをpH12で塩基性トリエタノールアミンによって放出することもできる(非特許文献95)。
【0194】
【非特許文献95】Dissler H, F Lottspeich, MF Rajewsicy. Affinity purification and cDNA cloning of rat neural differentiation and tumor cell surface antigen gp 130RB13−6 reveals relationship to human and murin PC−i. J Biol Chem, 270:9849−9855,1995.
【0195】
一旦PaCa−Aglが放出されると、減圧遠心分離によって濃縮することができ、その純度が質量分析によるAA分析のために処理されるのに十分であることを確認するために、濃縮物をSDS−PAGEによって試験することができる。タンパク質の純度がまだ低い場合、PaCa−Aglを2Dゲル分離によってさらに精製することができ、ここで、等電点による分離の別の工程が加えられる(非特許文献96)。ゲル中のPaCa−Aglタンパク質スポットの位置は、6ッ組のゲルの1つについてmAb3C4を用いたウェスタンブロットによって同定してもよい。
【0196】
【非特許文献96】O’Farrell PH. High resolution two−dimensional electrophoresis of proteins. J Biol Chern,250:4007−4021(1975).
【実施例18】
【0197】
サンドイッチELISAの開発
1−Ab Ag−吸着アッセイと対照的に、2抗体すなわち「サンドイッチ」ELISAは、一度に精密に規定された条件下で、PaCa−Aglに特異的な公知の量のAbがウェル表面に結合する大量の96−ウェルELISAプレートを可能にする。ウェルあたりの抗−PaCa−Agl Ab結合量を測定することができるため、膵臓癌腫を有する患者の血清においてピコモル量のPaCa−Aglタンパク質の測定を可能にするPaCa−Aglの反応条件を確立するために、精製されたPaCa−Aglを用いて抗体PaCa−Agl(捕捉Ab)の最適量を滴定することができる。PaCa−Aglの「サンドイッチ」ELISAにおける測定を完全にするために、血清からPaCa−Aglを捕捉するウェル中のAbがマウス由来ではなく別の種由来である場合、既存の十分に規定されたmAb3C4を第2のHRP−SaMIgGと組み合わせて使用することができる(非特許文献97)(非特許文献98)。
【0198】
【非特許文献97】Ito O, Sako Y, Yamasaki H, Mamuti W, Naaya K, Nakao M, Ishikawa Y. Development of Eml8−immunoblot and Eml8−ELISA for specific diagnosis of alveolar echinococcosis. ActaTrop 85:173−182,2003.
【非特許文献98】Plested JS, Coull PA, Gidney MA.(2003).ELISA. Methods Mol Med 71:243−261.
【0199】
BMRPA1.NNK及びBMRPA1.TUC3細胞と反応するが、形質転換されていないBMRPA1細胞とは反応しないさらなるハイブリドーマを、ウェスタンブロッティングによって精製されたPaCa−Aglと反応性のmAbの存在について分析してもよい(上記を参照)。次いで、PaCa−Aglと反応性として同定されたものをmAb3C4が結合するエピトープに対する可能な結合について試験してもよい。ウェスタンブロットにおけるPaCa−Aglに対するmAb3C4を用いた新規に同定されたmAbの競争アッセイは、PaCa−Aglに対するmAb3C4の結合を阻害するためにmAb3C4エピトープに対して直接又は十分に密接して結合するmAbの同定を可能にする。これらのmAbは、「サンドイッチ」ELISAアッセイにおいて有用ではない。PaCa−Aglに対するmAb3C4の結合と競争しないMAbは、それらがmAb3C4とは異なるアイソタイプを有する場合、「サンドイッチ」アッセイのために潜在的に有用である(IgGl,κ)。新規なmAbは、IgM又はIgAアイソタイプのいずれかを有するべきである。これは第2の(指示薬)Ab HRP−SαMigGと補足mAb及びmAb3C4との交差反応性を避けるために必要である。第2のHRP−SαMIgGは、Abを捕捉することによってPaCa−Aglのウェルにおける遅延を示すアッセイの最終ステップにおいて結合したmAb3C4、すなわち、新規に同定されたPaCa−Aglに対するmAbを同定するために使用される。各96−ウェルプレートは、陽性(精製PaCa−Agl)及び(Ovalbumin)陰性反応及びバックグラウンド結合を同定するためにプレート全体に広がる対照ェルを含有してもよい。1セットの対照ェルを、完全なmAb3C4及びHRP−SαMIgG及びTMBで処理し、他の対照ェルを第2のAb、HRP−SαMIgGのみで処理してバックグラウンド測定を確立してもよい。患者サンプルをPaCa−Aglタンパク質保持のために1ウェルあたり0.05〜0.1mlの血清、腹水、ERCP液、又は尿を用いて3ッ組で試験してもよい。
【0200】
第2のHRP−標識されたAbをアッセイ中で使用可能にするため、異なるアイソタイプ及びサブタイプのPaCa−Aglに特異的なmAbが同定できないことがあり得る。この場合には、商業的な企業がmAb3C4をHRPに直接的に誘導体化してもよい。この様式では、捕捉されたPaCa−Aglのウェル中での直接測定においてHRPA−mAb3C4を使用することができる。あるいは、FITC−mAb3C4はPaCA−Agl−陽性の膵臓癌腫細胞の細胞表面に未標識のmAb3C4と同様に結合するため、蛍光に基づくアッセイにおけるFITC−mAb3C4を使用してもよい。実際に、FITC−mAb3C4は、FACSによって確立するPaCa−Agl部位の定量に使用された(上記参照)。
【0201】
上に引用されるアプローチの代わりに、精製PaCa−Aglタンパク質[キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に誘導体化、又は優先的には、免疫学的に不活性なキャリア、例えば、MW Ficoll MW400,000に誘導体化(非特許文献99)を使用して別の動物(ウサギ、ヤギ)中でポリクローナルPaCa−Agl−特異的なAbs(pαPaCa−AgAb)を生成してもよい。pαPaCa−Agl Abの使用は、ウェルに添加される血清タンパク質の混合物からPaCa−Aglを保持するために組み合わせてもよい種々〜多くの抗−PaCa−Agl Absにおいて、抗原−捕捉アッセイにおいて有利である場合がある。しかし、異なる動物におけるpαPaCa−Aglの調製において、動物のPaCa−Aglタンパク質に対する免疫応答によって低から高親和性pαPaCa−Agl Absへの再分布が生じる場合があることが指摘されるべきである。pαPaCa−Agl−IgGの精製は、この状況に影響を与えない。異なる動物から得られたpαPaCa−Agl−IgGを用いて調製されたPaCa−AglのためのELISAプレートは、同じサンプルについて異なる読みを与える場合がある。従って、pαPaCa−Agl IgGでコーティングされたELISAプレートの調製は、pαPaCa−Agl−IgGにおけるバッチ間の差異を較正するために厳しい質制御が必要となる。このような差異は、この研究のためにELISAプレートを調整するために大量のpαPaCa−Agl−IgGプールが生成される場合、減らすことができる。pαPaCa−Agl Abを用いた96ウェルELISAプレートにおける陽性対照及び陰性対照の配置は、上述のものとほとんど同じである。MAb3C4後にHRP−SαMIgGをAbとして使用して、陽性血清からPaCa−Aglの残留を示す。
【0202】
【非特許文献99】Schneider, CH, J Michl, AL de Weck. Antigenicity of hapten−polysaccharides (Zur Antigenitaaet von Hapten−Polysacchariden. Eur I In3niunol,1:98−106,1971.
【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1】BMRPA1細胞におけるNNKによって誘発される形態変化の顕微鏡写真である。図1Aは、未処理のBMRPA1細胞の正常な外観を示す。図1B〜1Fは、NNKでBMRPA1を1回16時間処理した後の連続的な細胞パッセージ(1〜12)を示す。
【図2】(2A)ISHIPマウス血清を有する、(2B)3C4ハイブリドーマ使用済培地を有する、及び(2C)3C4ハイブリドーマ使用済培地を含む正常な形質転換されていないBMRPA1細胞の、生きたBMRPA1.NNK細胞を免疫蛍光(IF)染色した細胞顕微鏡写真である。BMRPA1.NNK細胞上での3C4−Agの表面発現は、線形の環状蛍光画像において図2Bに明らかに現れており、MRPA1細胞は染色を完全に消している。
【図3】レーン1〜4は、腹水からG−タンパク質親和性精製したmAb3C4と共に処理した染色したSDS−PAゲルの写真である。レーン1:ハイブリドーマを注射したマウスの腹水;レーン2:IgGがビーズから定量的に放出されている低pH溶出。レーン3は、レーン2の減少した約160kDaタンパク質(IgG)を示す。レーン1B及び2Bは、約160kDaがIgGであることを確認する、HRP−SaM IgG及びECL反応キットを用いた、レーン1及び2におけるIgGのイムノブロット及び放射能写真(化学発光写真)を示す。
【図4】げっ歯類及びヒト膵臓癌腫細胞由来の細胞溶解タンパク質のSDS PAGEの後に、mAb3C4でイムノブロットした、放射能写真である。
【図5−A】mAb3C4非存在下(レーン1)及びmAb3C4及びタンパク質Gビーズ存在下(レーン2)で処理した、BMRPA1.NNK細胞の銀染色した溶解物を示すゲル写真である。
【図5−B】図5A(BMRPA1.NNK細胞)における溶解物からの免疫沈降物における3C4−Agに関するイムノブロットである。(レーン1)mAb3C4非存在下、mAb3C4及びHRP−SaM IgGを含むIB;(レーン2)mAb3C4存在下、mAb3C4及びHRP−SaM IgGを含むIB、3C4−Agを43kDポリペプチドとして同定;(レーン3)mAb3C4存在下、mAb3C4は含まないがHRP−SoM IgGを含むIBから得られた免疫沈降物。
【図6】6A、6C、6E、6G、及び6IはmAb3C4で染色した生きたげっ歯類及びヒト膵臓癌腫細胞のフェーズコントラスト可視光顕微鏡写真である。 6B、6D、6F、6H、及び6Jは同じものを処理したUV光顕微鏡写真であり、膜蛍光を示す。図6A及び6B:BMRPA1.NNK細胞;図6C及び6D:BMRPA1.TUC3細胞;図6E及び6F:CAPAN−1細胞;図6G及び6H:CAPA2−2細胞;6I及び6Jは、BxPC3細胞である。6A〜6Dは、げっ歯類膵臓癌腫細胞である。6E〜6Jはヒト膵臓癌腫細胞である。
【図7】形質転換されたげっ歯類及びヒトPaCa細胞及び形質転換されていないげっ歯類及びヒトPaCa細胞の蛍光活性化細胞分類(FACS)分析を示す。(A)BMRPAl.Tuc3;(B)BMRPA1.NNK;(C)ヒトMIAPaCa。左側のパネルは、mAb3C4の結合について試験した細胞集合を同定する分布図である。右側パネルは、選択された細胞集合の蛍光強度を示す。標識されたピーク(1)は、FITC−RoMIgGのみ(一次抗体ではない)で細胞を処理することによるバックグラウンド蛍光を示し(バックグラウンド対照);(2)は、mAb3C4及びFITC−RoMIgGと反応した細胞の蛍光を示す。
【図8】活性成分存在下でのMaB3C4の細胞毒性を模式的に示す。X軸:ウサギ血清(相補型)希釈率;Y軸:mAb3C4及びウサギ相補体に暴露後の生存細胞の割合。各グループの第1の棒は、新鮮なウサギ血清(活性相補源)のみを用いて37℃で45分処理した細胞を示す。各グループの第2の棒はmAb3C4及び新鮮なウサギ血清(活性相補源)を用いて37℃で45分処理した細胞を示す。各グループの第3の棒は、mAb3C4で処理した後、熱不活性化した(56℃で30〜45分)ウサギ血清(不活性化相補体)で処理した細胞を表す。
【図9】9A及び9BはmAb3C4を用いた組織抽出物のイムノブロットである;図9A:ラット;図9B:ヒト。種々の組織(甲状腺、卵巣、脳、心臓、肺、肝臓、睾丸、図9A)からの組織抽出物由来の減少したタンパク質、及びヒト腺房膵臓細胞、白血球血液細胞、及び腺管膵臓細胞を12%SDS PAGEで分離し、電気泳動的にニトロセルロースに移し、mAb3C4存在下及び非存在下で処理した後、ECL化学発光増殖を行った。MIA−PaCa及びマウスIgGを対照として供した。「+」は、一次mAbと反応性であることを意味する。「−」は、一次mAbと反応性でないことを意味する。MIA−PaCa及びマウスIgGを陽性対照として供した。「*」は、組織抽出物が溶解緩衝液を含有するトリトンX−100の存在下でのDounze均質化によって得られたことを示す。「#」は、組織抽出物が溶解緩衝液を含有するトリトンX−100の存在下での高周波パルス音波処理によって得られたことを示す。
【図10】mAb3C4を用いた種々の癌性ヒト組織のイムノブロットの放射能写真を示す。
【図11】サイズ及びpIに従って二次元ゲル(2D−ゲル)電気泳動によって分離し、銀染色によって同定したBMRPA1.NNK細胞溶解物のタンパク質のゲル写真である。
【図12】図11に記載されるような二次元ゲル(2D−ゲル)電気泳動によって分離し、電気泳動的にPVDF膜に移し、mAb3C4でブロットしたBMRPA1.NNK細胞溶解物のタンパク質の化学発光写真である。矢印は、3C4抗原の位置を示す。
【図13】腫瘍増殖に対するmAbC4のインビボ投与の効果を示すグラフである。
【図14】14A〜14FはmAb34Cを用いた直接的な免疫蛍光染色を示すUV光写真である;14Aは、げっ歯類の肝臓のBMRPA1.NNK細胞であり;14Bは、通常の形質転換されていないBMRPA1細胞であり;14CはBMRPA1.TUC3細胞であり;14DはCAPAN−1であり;14EはCAPAN−2であり;14FはBxPC3細胞であり;14A〜C(げっ歯類)及び14D〜F(ヒト)膵臓癌腫細胞。これらの図は、膜に限定されたPaCa−AGI−mAb3C4の複合体形成を明らかに示す。A、B、D、Eは懸濁物中で染色した細胞であり;C、Fは接着性細胞である。
【図15】15A及び15BはBMRPA1.TUC3細胞上でPaCa−Aglに結合するmAb34CのFACS分析である。(A)トリプシン処理あり、及び(B)トリプシン処理なしのTUC3細胞。Aにおける白色のピーク=非特異的IgG染色(バックグラウンド)。
【図16】16A及び16BはそれぞれSDS pageゲル及びイムノブロットの写真であり、PaCa−Aglの酵素的脱グリコシル化によってポリペプチドの分子量が変化しないことを示す(図16B)。図16Aは、フェチュイン(約51kDa)の並行して行った脱グリコシル化により43〜45kDaのさらに小さなポリペプチドを生じたことを示す対照であり、インキュベーション条件中のインタクトな酵素活性がPaCa−Aglタンパク質の脱グリコシル化について並行して使用されたことを示す。
【図17】17A〜17DはPaCa−Aglについての1抗体−抗原吸着ELISAを示すグラフである。
【図18】膵臓癌が確認された患者由来及び健康な志願者由来の血清タンパク質のmAB3C4を用いたイムノブロットである。レーン2、3、及び4は3人の膵臓癌患者の個々の血清サンプルを用いて行われた。これらのレーン中の矢印は、約36〜38kDのポリペプチドとmAb3C4との反応生成物を指し示す。レーン5は、健康な志願者由来の血清サンプルを用いて行われた。レーン6は、健康な志願者と等量のレーン3の患者のPaCa−Agl陽性血清とを混合して行われた。レーン6中の矢印は、36〜38kDの生成物を指し示す。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
SDS−PAGEによって決定される分子量が約43.5kDa;
等電点電気泳動法でのpIが約4.5〜約5.0;
グリコシル化されていないか、又は最小限グリコシル化されており;及び
正常な非増殖性細胞においては検出されないが、ラット及びヒトの膵臓癌細胞の表面上に主に局在化していることを特徴とする、実質的に精製された形態における膵臓癌腫特異的な抗原3C4−Ag。
【請求項2】
SDS−PAGEによって決定される分子量約36〜約38kDを有し、膵臓癌患者の血清及び他の体液から単離可能な、膵臓癌腫特異的な抗原3C4−Ag。
【請求項3】
請求項1に記載の膵臓癌腫特異的な抗原3C4−Agの免疫的に活性なフラグメント。
【請求項4】
膵臓癌腫特異的な抗原3C4−Agに対する結合特異性を有し、前記抗原が
SDS−PAGEによって決定される分子量が約43.5kDa;
等電点電気泳動法でのpIが約4.5〜約5.0;
グリコシル化されていないか、又は最小限グリコシル化されており;及び
正常な非増殖性細胞においては検出されないが、ラット及びヒトの膵臓癌細胞の表面上に主に局在化していることを特徴とする、抗体又はそれらの結合部分。
【請求項5】
SDS−PAGEによって決定される分子量約36〜約38kDを有し、膵臓癌患者の血清及び他の体液から単離可能な可溶性の膵臓癌腫特異的な抗原にも結合する、請求項4に記載の抗体又はそれらの結合部分。
【請求項6】
ポリクローナル抗体である、請求項4又は5に記載の抗体。
【請求項7】
モノクローナル抗体である、請求項4又は5に記載の抗体。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の3C4−Ag抗原と特異的に免疫活性なモノクローナル抗体を産生するマウスハイブリドーマ細胞系。
【請求項9】
請求項4に記載のモノクローナル抗体を産生するマウスハイブリドーマ細胞系。
【請求項10】
請求項9に記載のハイブリドーマ細胞系によって分泌されるモノクローナル抗体mAb34C。
【請求項11】
ヒト化形態における請求項7又は10に記載のモノクローナル抗体mAb3C4。
【請求項12】
前記抗体が、蛍光体、ケミロフォア、化学発光剤、光増感剤、懸濁粒子、同位体元素又は酵素で標識される、請求項4又は5に記載の抗体。
【請求項13】
前記抗体が、蛍光体、ケミロフォア、化学発光剤、光増感剤、懸濁粒子、同位体元素又は酵素で標識される、請求項10に記載の抗体。
【請求項14】
前記抗体が治療薬物又は毒素に接合又は結合する、請求項4又は5に記載の抗体。
【請求項15】
前記治療薬物又は毒素が、SEQPPLSQETFSDLWKLL(配列番号:1)において記載されるアミノ配列の少なくとも約6連続するアミノ酸配列のペプチド、又はそれらの類似体もしくは誘導体である、請求項14に記載の抗体。
【請求項16】
アミノ酸配列KKWKMRRNQFWVKVQRG(配列番号:4)を有するアンテナペディアタンパク質由来のペネトラチン配列が、前記ペプチドのカルボキシ末端に位置する、請求項15に記載の抗体。
【請求項17】
前記抗体が治療薬物又は毒素に接合又は結合する、請求項10に記載の抗体。
【請求項18】
動物被検体において膵臓癌を検出する方法であって、
(a)前記被検体由来の細胞、組織又は液体サンプルと、3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントに特異的に結合する抗体又はそれらの結合部分;モノクローナル抗体mAb34C;又はモノクローナル抗体mAb34Cによって結合されるエピトープに結合する抗体の少なくとも1つとを、前記抗体が前記サンプル中の抗原に特異的に結合可能な条件下で接触させ、抗体−抗原複合体を形成する工程;
(b)前記サンプル中の抗体−抗原複合体を検出する工程;及び
(c)前記サンプル中の抗体−抗原複合体の増加レベルの検出と膵臓癌の存在とを関係付ける工程とを含む、方法。
【請求項19】
患者由来の細胞、組織又は液体サンプルにおける3C4−Agを検出するのに好適な診断キットであって、
(a)3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントに特異的に結合する抗体又はそれらの結合部分、
(b)前記抗体又はそれらの結合部分のための特異的な結合パートナーの接合体;及び
(c)前記結合した抗体を検出するための標識を含む、キット。
【請求項20】
膵臓癌を患う患者において膵臓癌を処置する方法であって、3C4−Ag又はそれらの免疫的に活性なフラグメントに特異的に結合する有効量の抗体又はそれらの結合部分を前記患者に投与する工程を含み、前記抗体又はそれらの結合部分が治療薬物又は毒素に接合又は結合する、方法。
【請求項21】
前記抗体がmAb3C4である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記治療薬物又は毒素が、SEQPPLSQETFSDLWKLL(配列番号:1)において記載されるアミノ配列の少なくとも約6連続するアミノ酸配列のペプチド、又はそれらの類似体もしくは誘導体である、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
薬学的に許容可能なキャリアと混合される、3C4−Agに特異的に結合する抗体又はそれらの結合部分を含む薬学的組成物。
【請求項24】
前記3C4−Agに特異的に結合する抗体またはそれらの結合部分が治療薬物又は毒素に接合又は結合する、請求項23に記載の薬学的組成物。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図18】
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【公表番号】特表2007−525410(P2007−525410A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500997(P2006−500997)
【出願日】平成16年1月16日(2004.1.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/001196
【国際公開番号】WO2004/065547
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(504344842)ザ リサーチ ファンデーション オブ ステイト ユニバーシティ オブ ニューヨーク (8)
【Fターム(参考)】