説明

膵臓癌治療剤

本発明は、膵臓癌の治療のより有効な効果をもたらすことを目的とし、その手段を提供することを課題とする。
新免疫療法(NITC)が膵癌症例を対象にした場合、内因性IL-12の産生能によって予後に差があることを見出し、その内因性IL-12の産生能レベルの検査結果に基づき治療法を選択すれば極めて高い膵臓癌治療の効果があることを見出したことによる。すなわち本発明は、内因性IL-12の産生能を測定することを特徴とする膵臓癌の免疫治療における予後効果の予測のための検査方法及びそれを基礎とする膵臓癌治療剤を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膵臓癌治療の新たな領域を提供するものである。すなわち、新規な膵臓癌の予防治療方法のための手段を提供するものである。
【0002】
本出願は、参照によりここに援用されるところの、日本特許出願特願2004‐018203号からの優先権を請求する。
【背景技術】
【0003】
本発明者の医学博士八木田は、先にガン治療における画期的な手法として、インターロイキン12(IL-12)を生体内で誘発する物質の有用性に着目し、キノコ菌糸体加工物がその機能を有することを発見し、新免疫療法(Novel Immunotherapy for cancer)(NITC)ともいうべきガン治療法を確立した。従来IL-12は、抗ガン効果があるものの生体内にIL-12自体を直接投与した場合には副作用を生じるために患者が治療に耐えられないという事実があり、それ自体を抗ガン剤として使用できなかった。しかし、八木田が報告したキノコ菌糸体加工物を含む製剤は、ガンの治療において著しい治癒・延命効果を達成した。つまり八木田は、IL-12を生体内で誘発できる有効量のキノコ菌糸体加工物を投与することにより、ガンの治療目的を達成した(特許文献1)。
【0004】
IL-12は、TNFα→IFNγ→IL-12→CTL活性というルートでキラーT細胞の活性化効果と増強効果をもつ。つまりIL-12の産生増強は、キラーT細胞の活性化と増強により抗ガン効果が期待される。
【0005】
膵臓癌は、膵臓の頭部にも、体尾部にもできるが、多いのは頭部である。膵臓癌の診断は非常に難しく、血清中の腫瘍マーカーであるCA19‐9やCEAなどを測定し、さらに超音波検査、CT検査(コンピュータ断層撮影)や十二指腸内視鏡で見たり、さらに膵管造影をしてX線写真を撮る内視鏡的逆行性膵管造影をおこなうことによって行われる。膵液を集め、がん細胞を見つけたり、この中の腫瘍マーカーや遺伝子の異常を見つけて診断する。膵臓癌の治療は、手術で、病巣を含めて膵臓を切除することが一般的である。黄疸が強いときは、経皮経肝胆管ドレナージ(排膿法)という処置をおこなって、黄疸を軽くしてから切除手術をする。病巣がとれないときは、胆汁の流れる道だけをつくることもある。そして放射線の照射や抗がん薬の投与もおこなわれている。膵臓癌の治療薬として塩酸ゲムシタビン(商品名:ジェムザール)があり、これはイーライリリー社で開発された抗癌剤で、2001年4月に膵臓癌への保険適用が認められた。膵臓癌は悪性腫瘍のなかでももっとも予後不良と考えられている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−139670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、膵臓癌の治療のより有効な効果をもたらすことを目的とし、その手段を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、新免疫療法(NITC)が膵癌症例を対象にした場合、内因性IL-12の産生能によって予後に差があることを見出し、その内因性IL-12の産生能レベルの検査結果に基づき治療法を選択すれば極めて高い膵臓癌治療の効果があることを見出し本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、
「1.内因性IL-12の産生能を測定することを特徴とする膵臓癌の免疫治療における予後効果の予測のための検査方法。
2.IL-12の産生能を複数群にわけ、IL-12の産生能が50pg/ml以上、IL-12の産生能が7.8以上50pg/ml未満、及びIL-12の産生能が7.8pg/ml未満の少なくとも3群で予後効果の予測をする前項1の検査方法。
3.免疫療法がIL-12産生誘導剤である前項1又は2の検査方法。
4.IL-12産生誘導剤が、β1,3/1,6グルカン構造を有する物質である前項1〜3のいずれか一に記載の検査方法。
5.前項1〜4のいずれか一に記載の検査において、IL-12の産生能が7.8pg/ml未満である膵臓がん患者にIL-12産生誘導剤を投与することを特徴とするIL-12産生誘導剤。
6.少なくともIL-12産生誘導剤と併用することを特徴とする塩酸ゲムシタシンを主成分とする癌治療剤。
7.癌が膵臓癌である前項6の癌治療剤。
8.IL-12の産生能が7.8pg/ml未満である膵臓がん患者にIL-12産生誘導剤を投与することを特徴とする前項6又は7に記載の癌治療剤。」からなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、NITCにおける膵癌患者の予後はIL-12産生能力によって規定されており、IL-12の産生能力を増強することが免疫療法として重要であることを示唆している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】膵臓癌患者のIL-12レベルと生存率を示す。
【図2】膵臓癌におけるジェムザール単独投与群とジェムザールとNITC併用群の生存率を示す。
【図3】膵臓癌におけるジェムザール投与前後のTh1サイトカイン(IFNγ、IL-12及びTh1/Th2)の変化を示す。
【図4】膵臓癌におけるジェムザール投与前後のNK細胞、NKパーフォリン産生細胞、NKT細胞、NKTパーフォリン産生細胞の割合の変化を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明するが、本明細書中で使用されている技術的および科学的用語は、別途定義されていない限り、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者により普通に理解される意味を持つ。
【0013】
本発明者の医学博士八木田のガン新免疫療法(NITC)とは4つの異なる作用機序を組み合わせることからなる治療手段である。
第一の作用機序は、血管新生阻害物質(ベターシャーク)を投与してガンへの血流を障害してガン縮小をはかる方法である。これは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を測定することでその効果は判定が可能である。血管新生阻害作用はVEGF値のマイナス(負)値(-VEGF)で評価できる。このVEGF値の代わりにFGF、HGFなどのその他の血管増殖因子を用いることも血管新生阻害能を評価することが可能である。またVEGFの替わりに血管新生阻害因子の正数値でもその評価が可能である(例えばエンドスタチン値)。
【0014】
第二の作用機序は、β1,3グルカン構造を担持する化合物を投与してTh1サイトカイン(TNFα、IFNγ、IL-12)を誘導してCTLを活性化する方法である。CTL活性はCD8(+)パーフォリン産生能力で判定が可能であるが、このCD8(+)パーフォリン値には細胞障害性T細胞(CTL)と免疫抑制性T細胞(STC; Suppressor T cell)とがあり、前者はガン細胞を障害し、後者の活性化は結果的にガンの増殖につながる。したがってその絶体値では評価はできない。しかし、IFNγが10 IU/ml以上かもしくはIL-12値が7.8 pg/ml以上であればCTLであり、IFNγとIL-12が低値であればSTCと判定される。そこでCTL活性は、IFNγ産生能力(IFNγ値)もしくはIL-12産生能力(IL-12値)で評価が可能である。
【0015】
第三及び第四の作用機序であるα1,3グルカン構造を担持する化合物の投与によって活性化されるeffector細胞はNK細胞とNKT細胞である。このNKとNKT細胞とはNKR-P1(NK細胞受容体CD161(+))を共有しており、前者のNK細胞はCD3(-)CD161(+)の表面マーカーでその細胞数は測定可能であり、その活性化はCD3(-)CD161(+)パーフォリン産生能力で判定が可能である。一方後者のNKT細胞はCD3(+)CD161(+)でその細胞数は測定が可能となり、そのパーフォリン産生能力(NKTP(+)と記す)でNKT細胞の活性化は測定可能である。
【0016】
したがってガン治療における新免疫療法(NITC)であっても一般的な免疫療法であっても以下の測定項目でそれぞれのeffector細胞もしくは血管新生阻害作用を評価することが可能である。具体的には、CTL活性はIFNγあるいはIL-12の産生誘導能力で評価が可能である。NK細胞の活性化はCD3(-)CD161(+)もしくはCD3(-)CD161(+)パーフォリン値でも評価可能である。NKT細胞の活性化はCD3(+)CD161(+)もしくはCD3(+)CD161(+)パーフォリン値(NKTP値)でも評価が可能である。
【0017】
本発明で使用するIL-12産生誘導剤は、例えば、β1,3グルカン構造を持つ茸菌糸体組成物製剤(例えばILX(商品名):東西医薬研究所、ILY(商品名):セイシン企業)、或はβ1,3グルカン構造を持つ各種酵母(海洋性酵母、パン酵母、NBGTM)が利用できる。特に海洋性酵母が好ましい。本発明で使用するIL-12産生誘導剤はその産生誘導活性を誘導または増強し、さらに活性化を維持できる処方にて用いられる。すなわち、その活性化を誘導または増強し、さらに活性化を維持できる投与量、ならびに投与期間を選択して用いられる。具体的には、その投与量は、CTL活性化剤(IL-12産生誘導剤、INFγ産生誘導剤)であるβ-1,3グルカン構造を持つ化合物は1g〜10g/日程度、好ましくは3g〜6g/日程度である。また、投与期は一般的には10日間〜24ヶ月間、投与頻度は隔日又は1〜3回/日で、好ましくは連日投与である。当該IL-12産生誘導剤は、好適には経口摂取される。
【0018】
NITC治療による膵臓癌の治療効果
新免疫療法(NITC)が膵癌症例を対象にした場合、内因性IL-12の産生能によって予後に有意の差がある。最も予後が良好なグループはA群(15例)(IL-12産生能が50 pg/ml以上)であった。次いでB群(40例)(IL-12産生能が7.8以上50 pg/ml未満)、C群(14例)(IL-12産生能が7.8 pg/ml未満)であった。A群とC群ではその生存率にp<0.01で有意な差が認められ、B群とC群ではp<0.05で生存率に有意な差が認められた。この結果はNITCにおける膵癌患者の予後はIL-12産生能力によって規定されており、IL-12の産生能力を増強することが免疫療法として重要であることを示唆している。つまり、IL-12産生誘導剤の選択が重要であることを意味する。
【0019】
本発明では、癌免疫療法剤として、IL-12産生誘導剤に加えて、NK活性化剤又はNKT活性化剤の併用が可能である。ニゲロオリゴ糖、フコイダン等のα1,3グルカン構造を持つ化合物の組成物製剤がNK活性化剤又はNKT活性化剤として有用である。α1,3グルカン構造を持つ化合物は種々知られており、この既知構造とCD3(-)CD161(+)、CD3(-)CD161(+)パーフォリン産生能、CD3(+)CD161(+)、CD3(+)CD161(+)パーフォリン産生能の測定を組み合わせれば当業者は容易にNK活性化剤を特定可能である。なお、CD3(+)CD161(+)はNKT細胞の受容体NKR-P1に作用することを意味する。
【0020】
塩酸ゲムシタビンとNITCの併用効果
塩酸ゲムシタビン(ジェムザール:商品名)はイーライリリー社で開発された抗癌剤である。このジェムザールは2001年4月に膵癌に保険適応が認められた。図2にジェムザール単独投与群(63例)(B′群)とジェムザールとNITC併用群(23例)(A′群)の生存率を示した。この2群間における予後は明らかにA′群がB′群に比較して優れており、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月の3点におけるLog-rank検定での有意確率はp<0.001であった。また、ジェムザール投与(1000mg/mm2、3週連続投与1週休み)の前後における免疫能力に対する抑制効果を検討したところ、Th1サイトカインのIFNγ(8例)、IL-12(8例)及びTh1/Th2(8例)のいずれにおいてもジェムザール投与によるサイトカイン抑制作用は認められなかった(図3)。総リンパ球に対するNK細胞(8例)、NKパーフォリン産生細胞(8例)、NKT細胞(8例)、NKTパーフォリン産生細胞(8例)の割合についても抑制作用は認められなかった(図4)。他の抗癌剤での常用量投与ではTh1サイトカインの有意の抑制効果が認められていることから、膵臓癌、また胆管癌においてNITCとジェムザール併用による有効性が発揮できる理由の1つと考えられる。また、ジェムザールは非小細胞肺癌でも認可されているが、肺癌やその他の癌種でも同様のことが示唆される。
【0021】
一般的に、抗ガン(化学療法)剤、放射線、あるいはステロイド併用療法を、本発明の併用に加えて行う場合には、2種類の免疫系のうち、TNFα→IFNγ→IL-12→キラーT細胞の系統が著しく障害される。そのためジェムザール以外は、用いないことが好ましい。但し抗ガン剤を投与するとき、上記の免疫系を障害しない投与法である低濃度化学療法すなわち5FU、UFT、ミフロール、フルツロン、CDDP(5μg〜10μg)の低濃度やタキソテールあるいはタキソール、アドリアマイシン、マイトマイシン、CPT−11などの低濃度抗ガン剤の投与法等を適用することは有用である。また同様に放射線療法において低容量照射の適用、ステロイド療法においても低濃度投与等を選択する必要がある。
【0022】
細胞および各サイトカインの測定方法を以下に例示する。
(NKT細胞の測定)(NK細胞の測定)(CD8の測定)
NKR-P1を有するNKT細胞の測定は、NKT細胞の細胞表面に特異的に存在する細胞表面抗原(CD3およびCD161)の測定により行うことができる。具体的には、末梢血中のリンパ球について、CD3が陽性でかつCD161が陽性〔CD3(+)CD161(+)〕の細胞を検定する。つまり、NKT細胞の細胞表面抗原であるCD3およびCD161を、モノクローナル抗体を用いてフローサイトメトリーを使用するTwo Color検査により測定する。ここでNKT細胞が活性化されているとは、リンパ球の中でNKT〔CD3(+)CD161(+)〕細胞の割合が10%以上、より好ましくは16%以上であることをいう。NKT細胞活性化能とは、NKT細胞の割合を10%以上、より好ましくは16%以上に増加せしめる機能、またはある物質を投与する前のNKT細胞の割合より更に増強せしめる機能を意味する。同様に〔CD3(-)CD161(+)〕とはCD3が陰性でかつCD161が陽性の細胞を検定することである。この方法はNK細胞の測定に有用である。さらにCD8(+)とはCD8が陽性の細胞を検定することである。この方法はCTL活性の測定に有用である。
【0023】
実施例ではガン患者の血液を用いて、血中細胞について細胞表面抗原であるCD3、CD161、CD8について陽性・陰性で区別し、各細胞の割合を、フローサイトメトリーを用いたTwo Color検査により常法通り測定した。このときCD3、CD161、CD8に対するモノクローナル抗体は、それぞれコールター社製又はベクトンディッキンソン社製のものを使用した。
【0024】
(パーフォリン産生細胞の測定)
末梢血中のリンパ球について、細胞表面抗原であるCD3、CD161、CD8のうち2者とパーフォリンについてフローサイトメトリーを用いたThree Color検査により常法通り測定する。具体的には、採取した血液に固定液を加えて細胞を固定し、膜透過液を添加後抗パーフォリン抗体(Pharmingen社製)を添加して反応させ、さらにPRE-Cy5標識二次抗体(DAKO社性)を添加して反応させ、ついで抗CD3-PE(Coulter 6604627)抗体および抗CD161-FITC(B-D)抗体を添加して反応させ、その後フローサイトメトリーで測定する。図・表中での略語はP又はPERと表示した。
【0025】
(サイトカインを測定するための試料の調製)
まず、血液より単核球画分を分離調製する。ヘパリン加末梢血をリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate Buffered Saline)(PBS)で2倍に希釈して混和した後、Ficoll-Conray液(比重1.077)上に重層し、400Gで20分間遠沈後、単核球画分を採取する。洗浄後、10%牛胎児血清(FBS)を加えたRPMI-1640培地を加え、細胞数を1x106個となるように調製する。得られた細胞浮遊液200μlにフィトヘマグルチニン(Phytohemagglutinin)(DIFCO社製)を20μg/mlの濃度となるように加え、96穴マイクロプレートにて5%CO存在下、37℃で24時間培養し、該培養した細胞溶液中のサイトカインを測定する試料とする。
【0026】
(IL-12の測定)
IL-12量の測定は自体公知の臨床、生化学的検査を利用できるが、R&D SYSTEMS社やMBL社より入手することのできる酵素免疫測定法(ELISA)による測定キットが使用される。ここではR&D SYSTEMS社の測定キットを用いた。実際には96穴マイクロプレートの各穴に測定用希釈液Assay Diluent RD1Fを50μl、標準液(standard)または前記サイトカイン測定用試料の調製法で調製した試料を200μlずつ分注した後、室温にて静置して2時間反応させた。その後、西洋わさびパーオキシダーゼ(horse radish peroxidase)(HRP)標識抗IL-12抗体を200μlずつ分注し2時間室温で静置した。各穴の反応液を除去し3回洗浄後、発色基質溶液を200μlずつ分注し、20分間室温静置後、酵素反応停止溶液を50μlずつ分注した。550nmを対照として450nmにおける各穴の吸光度をEmax(和光純薬株式会社製)にて測定した。IL-12量は、pg/mlとして表される。ここでIL-12産生誘発能とは、末梢血単核球画分が刺激により産生するIL-12量を、7.8pg/ml以上に増強せしめる機能、またはIL-12産生量をある物質を投与する前の量より増強せしめる機能を意味する。
【0027】
(IFNγの測定)
IFNγの測定は、BioSource Europe S.社のIFNγ EASIAキットを用いて、酵素免疫測定法(EIA法)で測定した。実際には96穴マイクロプレートの各穴に標準液(standard)または上記調製した試料を2倍希釈したものを50μlずつ分注し、HRP標識抗IFN−γ抗体を50μlずつ分注し更に振盪しながら2時間室温で反応させた。各穴の反応液を除去し3回洗浄後、発色基質溶液を200μlずつ分注し、振盪しながら15分間室温で反応させ、酵素反応停止溶液を50μlずつ分注した。630nmを対照として450nmおよび490nmにおける各穴の吸光度をEmax(和光純薬株式会社製)にて測定した。IFNγ量は、IU/mlとして表される。
【0028】
(血管新生阻害能の測定)
(血管内皮細胞増殖因子/VEGFと塩基性繊維芽細胞増殖因子/bFGF及び血管新生阻害因子エンドスタチン/endostatinの測定) 市販キットの各酵素免疫固相法(ELISA:enzyme linked immuno sorbent assay)(ACCUCYTE Human VEGF, ACCUCYTE Human bFGF, ACCUCYTE Human Endostatin: CYTIMMUNE Sciences Inc.)で血清中濃度を測定した。
【0029】
なお、臨床検査に用いた各マーカーは何れも市販品を用い、各推奨の方法により測定値を示した。表示される略字は各一般的な表示方法によった。
【0030】
患者の効果判定は、次のCR(完全寛解)、PR(部分寛解)、LNC(長期不変)、SNC(短期不変)、PD(病状進行)の5段階判定を行った。また、各癌種での奏効率とは、各癌種の全症例中のCR、PR、LNC、SNC、PDの割合を示す。
【実施例】
【0031】
以下に、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
新免疫療法(NITC)として進行末期癌症例に対し治療を行ってきた。このNITCはβ-1,3グルカンの投与で内因性TNFα、IFNγ、IL-12を誘導してCTL(キラーT細胞)を活性化し、かつα-1,3グルカンの投与でNKおよびNKT細胞の活性化をはかると共にベターシャークの経口投与で血管新生阻害をはかるBRM療法である。患者には、癌免疫療法剤、IL-12産生誘発剤、サメ軟骨(セイシン企業)、及びα1,3構造をもつ糖類等を、各推奨処方により投与された。また、IL-12産生誘導剤として、ILX(東西医薬)、ILY(セイシン企業)、クレスチン(三共)、イミュトール(NBG)等を患者の症状により、単独又は併用して投与がなされた。
【0032】
実施例1
症例1 胆管癌 47y.o. Male NITC単独治療症例
NITC単独治療を施行しCR判定となった症例について述べる。本症例は平成1#年1月10日肝門部胆管癌の診断で肝門部切除を受けたが、切除断端に癌細胞が残存しているとの病理診断であった。平成1#年2月1日よりNITCが開始される。初診時に異常値を示した腫瘍マーカーはSLX-1が57 IU/ml(正常値38以下)、1CTPが13.7 ng/ml(正常値4.5以下)であった。この時の免疫能力はIFNγが3.1 IU/ml(活性化値は10以上)、IL-12値も7.8 pg/ml未満(活性化値7.8pg/ml以上)といずれも低下していた。しかしNITC開始2ヶ月後にはIFNγ値は57.4 IU/ml、IL-12値は58.4 pg/mlと活性化し、SLX-1は32 U/mlと正常化し、1CTPも11.3 ng/mlと低下した。その後IFNγとIL-12値は常時活性化が持続し続けていたが1CTPが平成14年5月24日までの1年3ヶ月を経て正常化し、"CR"と判定された。
【0033】
実施例2
症例2 胆管癌 66y.o. Male NITC・ジェムザール併用治療症例
NITCとジェムザール併用治療で効果の認められた症例について述べる。本症例は平成1#年2月に胆管癌及び多発肝転移が認められた。その後、肝転移巣に動注リザーバーを留置しCDDPと5Fuの投与を他院で施行したが効果が認められなかった。平成15年7月15日よりNITCを開始する。腫瘍マーカーのDupan‐2(正常値150 U/ml)は平成1#年8月21日に8900 U/ml、9月8日に8300 U/mlと、あまり改善が得られなかった。そこで、同年9月18日よりジェムザール1000mg/mm2を3回投与した。その結果、平成1#年10月2日のDupan‐2は6110 U/mlと著明な改善が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上説明したように、本発明の検査方法によれば、膵癌の免疫治療における予後効果を予測することができ、これに基づいて膵癌の治療を有効に行うことが可能となる。また、本発明の膵癌治療剤は、IL-12の産生能力を増強することにより膵臓癌患者に高い治療効果を与えることができることが示唆された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内因性IL-12の産生能を測定することを特徴とする膵臓癌の免疫治療における予後効果の予測のための検査方法。
【請求項2】
IL-12の産生能を複数群にわけ、IL-12の産生能が50pg/ml以上、IL-12の産生能が7.8以上50pg/ml未満、及びIL-12の産生能が7.8pg/ml未満の少なくとも3群で予後効果の予測をする請求の範囲第1項の検査方法。
【請求項3】
免疫療法がIL-12産生誘導剤である請求の範囲第1又は2項の検査方法。
【請求項4】
IL-12産生誘導剤が、β1,3/1,6グルカン構造を有する物質である請求の範囲第1〜3項のいずれか一に記載の検査方法。
【請求項5】
請求の範囲第1〜4項のいずれか一に記載の検査において、IL-12の産生能が7.8pg/ml未満である膵臓がん患者にIL-12産生誘導剤を投与することを特徴とするIL-12産生誘導剤。
【請求項6】
少なくともIL-12産生誘導剤と併用することを特徴とする塩酸ゲムシタシンを主成分とする癌治療剤。
【請求項7】
癌が膵臓癌である請求の範囲第6項の癌治療剤。
【請求項8】
IL-12の産生能が7.8pg/ml未満である膵臓がん患者にIL-12産生誘導剤を投与することを特徴とする請求の範囲第6又は7項に記載の癌治療剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【国際公開番号】WO2005/071409
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【発行日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517311(P2005−517311)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000964
【国際出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(300040380)株式会社オリエントキャンサーセラピー (6)
【Fターム(参考)】