膵臓癌細胞または組織に特異的に結合できる核酸アプタマー及びその用途
本発明は膵臓癌細胞または組織を特異的に認識し、そして結合できる核酸アプタマー及びその用途に関する。本発明に係る核酸アプタマーは、正常すい臓組織には結合せず、膵臓癌細胞または組織にのみ特異的に結合して、膵臓癌診断及び治療用組成物として有用に用いられる。さらに、本発明に係る核酸アプタマーは、後期膵臓癌細胞株であるCaPan−1だけでなく、初期膵臓癌細胞株であるPanc−1も検出できるため、早期膵臓癌診断に利用でき、膵臓癌患者の生存率を高めるのに寄与できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膵臓癌細胞または組織を特異的に認識し、そして結合することによって膵臓癌の診断及び治療に利用できる核酸アプタマー及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、癌診断及び治療のために多数のバイオマーカーに関する研究が行われているが、そのうちで癌細胞特異的膜タンパク質は、検出可能な量で体液に頻繁に出ており、体液における臨床的提示は、生検サンプルの侵襲的な方法よりさらに好ましいため、最も適切なバイオマーカーとして考慮されている。また、癌イメージング(cancer imaging)とターゲット化治療戦略(targeted theraqeutic strategies)のため、タンパク質は魅力的なバイオマーカーと考えられている。
【0003】
ところが、バイオマーカー同定分野は、一次的に2Dゲル電気永動(2D−GE)質量分析器(Mass Spectroscopy)に依存するが、このような技術を用いた膜タンパク質の解明は非常に限られていた。全細胞タンパク質のほんの30%だけが膜から来ており、このうち5%だけが2D−GEを利用して検出できるからである。従って、代案として、結合されたターゲットを確認するためのツールとして用いられる膜タンパク質に関する特異的なプローブが開発された。
【0004】
過去十年間ターゲットタンパク質に高い親和性と特異性を持って結合できる核酸プローブアプタマー分野は盛んに研究されてきており、特にSELEX(Systemic Enrichment of Ligands using Exponential Enrichment)技術を利用して分離するアプタマーは、多数の疾病関連タンパク質と関連して開発されてきており、これらのうちの多くは、最近それの自体を治療剤として利用したり、イメージング化または薬品伝達体のツールとして利用するために臨床治験中である(Lee, J.F. et al., Curr Opin Chem Biol., 10(3):282, 2006; Gilbert, J.C. et al., Circulation., 116(23):2678, 2007)。
【0005】
アプタマーは、従来のSELEX法に加えて、複合ターゲット、即ち、生きている細胞及び組織に対してCell−SELEX法を利用して得られる(Guo et al. Int. J. Mol. Sci., 9(4):668, 2008)。このCell−SELEX法は、表面マーカーターゲットが知られていない場合でも、疾患細胞に対するアプタマーを開発することができるという長所がある。さらに、ターゲットタンパク質は、分離した状態では、その本来の特性を示すことができず、生理的状態にあるターゲットタンパク質の、選別過程における、さらに機能的な接近が可能になるため、Cell−SELEX法は、従来のSELEXプロセスに比べて長所を持っている。そこで、Cell−SELEXアプローチを用いて一番最初にテネイシン−C(tenascin-C)に対するssDNAアプタマーが開発され(Daniels et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 100(26):15416, 2003)、以後急性骨髄性細胞に対するPTK7(protein tyrosine kinase)アプタマー(Shangguan, D. et al., J. Proteome. Res., 7(5):2133, 2008)及び小細胞肺癌細胞に対するDNAアプタマー(Chen H.W. et al., Chem. Med. Chem., 3(6):991, 2008)がさらに開発された。サブトラクティブSELEXを利用して、分化したPC12細胞に結合できるが母細胞には結合されず、臨床診断に有用なDNAアプタマーが合成された(Brand, R. & Mahr, C., Curr. Gastroenterol. Rep., 7(2):122, 2005; Lee, M.X. & Saif, M.W., Jop., 10(2):104, 2009)。しかし、Cell−SELEX法は、細胞表面プロテアソームの複雑性のため、最適化され特異的な選別過程による限定的な調節を要する。従って、適切な陰性選別過程が、Cell−SELEXプロセスの成功のために必須である。
【0006】
一方、膵臓癌(Pancreatic adenocarcinoma)は、世界的に14番目に多発する癌として、米国だけ見ると、癌関連死亡者のうち4番目の死亡要因に該当する。このようなすい臓腫瘍の約90%は、PDAC(ductal adenocarcinomas、腺管癌)である(Bardeesy, N.& DePinho, R.A., Nat. Rev. Cancer, 2(12):897, 2002)。これは、非常に低い平均生存率を持つ非常に攻撃的な悪性癌である。高い死亡率との関連は、低い診断率と従来の化学療法的治療に対する高い耐性に起因する(Koliopanos, A. et al., Hepatobiliary Pancreat. Dis. Int., 7(4):345, 2008)。この腫瘍のただ15〜20%だけが切除可能であり、これに対する早期診断マーカーの限界が、適切な時期の検出における問題となっている(Brand, R. & Mahr, C., Curr. Gastroenterol. Rep., 7(2):122、2005; Lee, M.X. & Saif, M.W., Jop., 10(2):104, 2009)。従って、早期診断及び効果的な治療剤開発を助ける新規な膵臓癌バイオマーカーの開発が求められている。
【0007】
そこで、本発明者は早期膵臓癌診断及び膵臓癌治療に利用できる膵臓癌特異的なアプタマーを分離しようと鋭意努力した結果、Cell SELEX(Syetematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)工程を介して膵臓癌細胞株にのみ特異的に結合するアプタマーを選別した後、選別されたアプタマーが正常なすい臓組織には結合せず、膵臓癌細胞株にのみ特異的に結合することを確認して、本発明を完成した。
【発明の要約】
【0008】
本発明の第一の目的は、膵臓癌細胞または組織に特異的に結合する核酸アプタマーを提供することである。
本発明の第二の目的は、前記核酸アプタマーを含有する膵臓癌の検出方法を提供することである。
本発明の第三の目的は、前記核酸アプタマーを利用した膵臓癌の診断または治療用組成物を提供することである。
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は配列番号14、配列番号15及び配列番号35で表される核酸配列からなる群から選択されたある一つの核酸配列またはその断片を含み、膵臓癌細胞または組織に特異的に結合できる20〜100ntsの核酸アプタマー(ここで、前記核酸アプタマーがDNAである場合には、前記核酸配列においてUはTであることを特徴とする)を提供する。
【0010】
本発明の他の特徴及び具現例は、以下の詳細な説明及び添付された特許請求の範囲からより一層明白になる。
【0011】
本発明はまた、前記核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを利用することを特徴とする膵臓癌の検出方法を提供する。
本発明はまた、前記核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを含有する、膵臓癌の診断または治療用組成物を提供する。
本発明はまた、前記核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを投与することを特徴とする、膵臓癌の診断または治療方法を提供する。
本発明はまた、前記核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーの膵臓癌の診断または治療用用途を提供する。
本発明はまた、前記核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーが固定されている、膵臓癌診断用センサーを提供する。
本発明はまた、前記核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを含有する、膵臓癌診断用キットを提供する。
本発明はまた、前記膵臓癌診断用センサーまたは膵臓癌診断用キットを利用することを特徴とする、膵臓癌の検出方法を提供する。
本発明はまた、前記核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを含有する、膵臓癌特異的薬品伝達組成物を提供する。
本発明はまた、前記核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを利用した、膵臓癌細胞特異的表面バイオマーカーの検出方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る膵臓癌細胞または組織に特異的に結合するアプタマーの選別過程の概略図である。
【図2】前記図1の概略図に従ってCell−SELEXプロセスを行って取得した14番目ラウンドのアプタマープールの配列を分析した結果である。
【図3】Cell−SELEXを行った各段階のアプタマープールの膵臓癌細胞株に対する結合親和度をリアルタイムRT−PCRで測定した結果グラフである。
【図4】Cell−SELEXを行った14番目ラウンドのアプタマープールに対し蛍光検出方法を利用して結合親和度を確認した写真である。
【図5】Cell−SELEXを行った14番目ラウンドのアプタマープールの膵臓癌細胞株及びその他癌細胞株に対する結合親和度を定量的なリアルタイムRT−PCRで測定した結果のグラフである。
【図6】本発明に係るアプタマーの膵臓癌細胞株に対する結合親和度をリアルタイムRT−PCRで測定した結果のグラフである。
【図7】本発明に係るアプタマーのCaPan−1細胞株に対する結合親和度を示したグラフである。
【図8】本発明に係るアプタマーのPanc−1細胞株に対する結合親和度を示したグラフである。
【図9】本発明に係るアプタマーSQ1の膵臓癌細胞株及び正常細胞株に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図10】本発明に係るアプタマーSQ2の膵臓癌細胞株及び正常細胞株に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図11】本発明に係るアプタマーSQ6の膵臓癌細胞株及び正常細胞株に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図12】本発明に係るアプタマーSQ2、SQ4及びSQ8の膵臓癌細胞株CaPan−1に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図13】本発明に係るアプタマーSQ2、SQ4及びSQ8の膵臓癌細胞株Pan−1に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図14】本発明に係るアプタマーSQ2、SQ4及びSQ8の膵臓癌細胞株Aspc−1に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図15】本発明に係るアプタマーSQ2、SQ4及びSQ8の膵臓癌細胞株Bxpc−3に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図16】本発明に係るアプタマーSQ2、SQ4及びSQ8の膵臓癌細胞株Hapaf−IIに対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図17】本発明に係るアプタマーSQ2、SQ4及びSQ8の膵臓癌細胞株Miacapa−2に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図18】本発明に係るアプタマーSQ1乃至SQ8の膵臓癌細胞株CaPan−1に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図19】本発明に係るアプタマーSQ1乃至SQ8の膵臓癌細胞株Panc1に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図20】SQ2アプタマーの一部配列を切断したアプタマーの膵臓癌細胞株に対する結合親和度の相対的な比を示したグラフである。
【図21】SQ2アプタマーの二次構造(A)及びSQ2 6−30の二次構造(B)である。
【図22】SQ2 6−30の膵臓癌細胞株及び正常細胞株に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図23】SQ2 6−30の非膵臓癌細胞株であるSK−N−SH、T98G、A549及びBend−3細胞株に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図24】SQ2 6−30の非膵臓癌細胞株であるHela、Hep G2、LnCap及びSK−Br3、T98G、A549及びBend−3細胞株に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
他の方式で定義されない限り、本明細書において使用されたあらゆる技術的・科学的用語は、本発明が属する技術分野に熟練した専門家によって通常理解されるものと同じ意味を有する。通常、本明細書において使用された命名法は、本技術分野において周知であり、しかも汎用されるものである。
本発明の詳細な説明などにおいて使用される主な用語の定義は、下記の通りである。
【0014】
本願において「核酸アプタマー」とは、高い親和性でターゲット物質を特異的に認識できる小さい一本鎖オリゴ核酸をいう。
本願において「試料」とは、膵臓癌マーカーを含有していると推定されて分析が行われる組成物を意味し、すい臓組織、すい臓細胞、血液、血清、血漿、唾液、喀痰及び尿などが該当する。
本願において「90%以上100%未満の相同性を持つ核酸配列」とは、一個乃至数個のヌクレオチドが追加、欠失または置き換えられて90%以上100%未満のホモロジーを有する配列であって、類似の膵臓癌細胞株結合能を示す核酸配列を意味する。
【0015】
本発明は一観点において、AGCUUAUUCAAUURCCUGARDMBBB(RはGまたはA、DはA、UまたはG、MはAまたはC、BはG、CまたはUである;配列番号35)、次の配列番号14及び配列番号15で表される核酸配列からなる群から選択されたある一つの核酸配列またはその断片を含み、膵臓癌細胞または組織に特異的に結合できる核酸アプタマーに関する。
【0016】
本発明において、前記配列番号35で表される核酸配列は好ましくは、AGCUUAUUCAAUUGCCUGAAAAGCU(配列番号41)であることを特徴とし、前記配列番号35で表示される核酸配列を含む膵臓癌細胞または組織に特異的に結合できる核酸アプタマーは、次の配列番号1乃至13で表される核酸配列からなる群から選択されたある一つの核酸配列を含むことを特徴とする。
SQ1:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAUUAG CGGUAUCACG AUUACUUACC UUCGUUGCUG AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号1)
SQ2:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAG CUAUCGCCCA AUUCGCAGUG AUAUCCUUUA AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号2)
SQ3:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAC CUGGUCUCUC UGUCAGCAAA AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号3)
SQ4:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAGUAG CUGGGUCCGU CCCCACACAU UACCAUUUGU AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号4)
SQ5:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAC UGGUGUACCU CUUUGCCCUA UCUUAUCUGG AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号5)
SQ6:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAGAC UGGAUAUACU CUUAAGCAUU UCUAUAAUCG AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3'(配列番号6)
SQ7:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAACU GCUGCAUCGU CUCCCACGUA UUACACAUGA AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号7)
SQ8:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAG UUGAACUCCA AAUACGCGCU G AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号8)
S49:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAG UGGCCUCCCU ACAAAGAACU UAUAUCAUCC AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号9)
S20:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAG UUUAUCCCCC UUUUAGCGUU UACCAUAAUG AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号10)
S59:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU ACCUGAAAAC UGGUUUCCGG CAUCCCGUAU UGCGGCUUUA C AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号11)
S11:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAGAG CGAAGUAAAU CUCUCACUGC GUCACUACA AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号12)
S52:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU ACCUGAGUAG CGUUUCCCGG CAUUAUACUA UAAACUU AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3'(配列番号13)
S68:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU CCUGAAAGUU UGGAUAUCUU GGCGCUUGAC UAGAAAACUU GAAAUUUGU AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号14)
S3:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU CUUAUGUUCA UGCCAGCGCA AUUGCC AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号15)
【0017】
前記において、各アプタマーの5'末端と3'末端の下線の部分は、下記配列番号16で見られるように、PCR増幅とcDNA合成のために導入された部分である。
【0018】
この時、前記核酸アプタマーを構成する全ヌクレオチドの数は、20〜200ntsであり、好ましくは20〜100ntsであることを特徴とする。また、さらに好ましくは25nts以上であることを特徴とするか85nts以下であることを特徴とする。全ヌクレオチドの数が少ない場合、化学合成及び大量生産がより容易で、かつ費用面における長所も大きい。また、化学修飾も容易で生体内の安全性も高く、毒性も低くなる。さらに、前記核酸アプタマーに含まれる各ヌクレオチドは同一または異なる一つ以上の化学的変形を含むことができるが、例えば、リボースの2'の位置において、ヒドロキシル基が任意の原子または基で置き換えられているヌクレオチドであってもよい。このような任意の原子または基としては、例えば、水素原子、フッ素原子または−O−アルキル基(例:−O−CH3)、−O−アシル基(例:−O−CHO)、アミノ基(例:−NH2)で置き換えられているヌクレオチドが挙げられる。また、核酸アプタマーは、一本鎖RNAまたはDNAとして提供されるものであって、本発明において前記核酸がDNAである場合には、前記核酸配列においてUはTと表示され、このような配列が本発明の範囲に含まれることは本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者にとっては自明なことである。
【0019】
本発明の実施例では図1に示したように、前記配列番号1乃至15で表される核酸配列のアプタマーをSELEX工程を介して選別した後、リアルタイムPCR法、蛍光検出方法及び平衡ろ過法を介して親和度を測定して、前記配列番号1乃至15で表される核酸配列が膵臓癌細胞株に対し特異的に結合することを確認した。
【0020】
本発明に係る核酸アプタマーは、CCUGA、GCCUGAAA、またはAGCUUAUUCAAUURCCUGARDMBBB(配列番号35)等のように共通して保存される領域を持つことが明らかになるが、このような共通に保存される領域の存在は、前記配列番号1乃至15で表される核酸配列のうち選択されたある一つの核酸配列と90%以上100%未満の相同性を持つ核酸配列は膵臓癌細胞株に特異的に結合できる核酸アプタマーであることを意味する。本発明に係る核酸アプタマー同士の配列の類似性を見ると、前記配列番号1乃至15で表される核酸配列のうち選択されたある一つの核酸配列に対して一個乃至数個のヌクレオチドが追加、欠失または置き換えられて90%以上100%未満の配列に共通性があれば、本発明に係る核酸アプタマーと類似する膵臓癌細胞株結合能を示すことは自明なことである。特に、本発明の一実施例では5'末端の一部と3'末端の一部を切断した場合にも、膵臓癌細胞株に対する親和度を示すことを確認した。このような実験結果は、本発明に係るアプタマーにおいて一個乃至数個のヌクレオチドが追加、欠失または置き換えられて90%以上100%未満の配列に共通性があれば、本発明に係る核酸アプタマーと類似する膵臓癌細胞株結合能を示すことは自明であることを立証するものである。
【0021】
一方、本発明の他の実施例においては、前記配列番号1乃至15で表される核酸配列を含む14番目のラウンドのアプタマープールの場合、膵臓癌細胞株以外他のヒト癌細胞株に対しては殆ど結合せず特異的に膵臓癌細胞株を検出することを確認した。特に、分離したアプタマーSQ1、SQ2及びSQ6に対して、蛍光検出法を介して正常すい臓癌細胞株(HPEDE)との対照実験を行うことによって、膵臓癌細胞株である、各々膵臓癌末期段階と初期段階を示す膵臓癌細胞株のCaPan−1とPanc−1を全て特異的に検出することを提示して、本発明に係るアプタマーが膵臓癌マーカーを検出して膵臓癌診断に有用に用いられることを確認した。特に、本発明に係るアプタマーがPanc−1も検出できることは、本発明に係る核酸アプタマーが、膵臓癌の早期診断を可能にすることを意味する。また、本発明のまた他の実施例においては、本発明に係る核酸アプタマーが陽性選別過程において用いられた膵臓癌細胞株のみでなく、他の膵臓癌細胞株にも特異的に結合することが明らかになり、実際膵臓癌の診断に有用に利用される可能性があることを確認した。さらに、本発明の他の実施例においては、本発明に係る核酸アプタマーが膵臓癌以外他の癌細胞株は認識しないことを提示した。
【0022】
従って、他の観点において、本発明は前記核酸アプタマーを含有する膵臓癌診断用組成物に関する。
【0023】
本発明は、さらに他の観点において、前記核酸アプタマーを利用した膵臓癌の検出方法に関する。この時、前記方法は、前記核酸アプタマーとすい臓組織、すい臓細胞、血液、血清、血漿、唾液、喀痰及び尿の選択される試料と接触させる段階を含むことを特徴とする。前記試料は、ほ乳類、好ましくは人体から分離したものであって、最小侵襲で確保可能な試料または分泌体液、in vitro細胞培養液成分試料等膵臓癌マーカーを含む試料であれば、前記に限定されないことは自明である。
【0024】
前記核酸アプタマーを試料と接触させる場合、試料中に存在する膵臓癌マーカーと前記核酸アプタマーとの特異的な結合が起こる。従って、蛍光等で核酸アプタマーを標識して結合させた後、シグナルの存否を確認することによって、膵臓癌を検出できるようになる。
【0025】
また、試料中前記核酸アプタマーと結合した物質の分析を介して、膵臓癌バイオマーカーを分離できるが、本発明は他の観点において、前記核酸アプタマーを利用した膵臓癌細胞特異的表面バイオマーカーの検出方法に関する。例えば、前記核酸アプタマーの末端にビオチンを付着し、膵臓癌細胞株の細胞膜抽出タンパク質試料と結合させた後、ストレプトアビジンが付着した磁性粒子を介して沈殿させた後に質量分析器(Mass spectrometry)を利用してアプタマーに特異的に結合する膵臓癌特異的表面バイオマーカーを探索することができる。
【0026】
一方、前記膵臓癌細胞または組織に特異的に結合する核酸アプタマーは、ビーズ、粒子、ディップスティック(dipstick)、繊維、フィルター、膜及び硝子スライドのような通常の支持体及びシランまたはシリケート支持体等の固体支持体に固定され、検出センサーに提供されて、膵臓癌診断に利用されるが、本発明は、他の観点において、前記膵臓癌細胞または組織に特異的に結合する核酸アプタマーが固定されている膵臓癌診断用センサーに関する。
【0027】
前記固体支持体は、少なくとも一つの実質的に固い表面を含むが、その表面上に前記核酸アプタマードが動けないように固定される。この時、前記核酸アプタマーは全ての通常の化学的カップリング方法によって固定化される。例えば、前記核酸アプタマーの末端にビオチンを結合させて複合体を形成し、前記チップ等の基板表面にストレプトアビジンを固定化させて、前記ビオチンと基板表面に固定化されたストレプトアビジンの相互作用によって前記核酸アプタマーを基板表面に固定化することができる。
【0028】
一方、本発明に係る方法は、携帯性を高めるため、キット状で提供できる。即ち、本発明は、また他の観点において、前記膵臓癌細胞または組織に特異的に結合するアプタマーを含有する膵臓癌診断用キット(kit)に関する。この膵臓癌診断用キットは必要に応じて緩衝溶液及び検出と分析のための容器を含むことができる。この膵臓癌診断用キットは、瓶、筒(tub)、小さい袋(sachet)、封筒(envelope)、チューブ、アンプル(ampoule)等のような形態を有し、これらは部分的にまたは全体的にプラスチック、ガラス、紙、ホイル、ワックス等から形成してもよい。容器は、完全にまたは部分的に分離可能な栓を装着してもよく、この栓は最初から容器の一部であってもよく、または機械的に、接着により、またはその他の手段によって容器に付着できる。また、容器は、注射針によって内容物に接近できるストッパーを備えてもよい。前記キットは外部パッケージを含むことができ、外部パッケージは構成要素の使用に関する使用説明書を含んでもよい。
【0029】
また、癌細胞株に特異的に結合するアプタマーが癌細胞株に結合されることによって、癌の機構を阻害して該当癌の治療に利用できることは、本発明が属する技術分野において公知の事実であり、本発明に係るアプタマーが膵臓癌細胞または組織に特異的に結合して、膵臓癌の機構を阻害し、これを含有する組成物が膵臓癌治療のための組成物として提供できることは、本発明が属する技術分野において当業者には自明なことである。また、アプタマーをリポソームまたはナノ粒子の表面に付着することによって、リポソームまたはナノ粒子内部に含まれる抗ガン剤、トキシン、癌成長阻害遺伝子、siRNA(small interfering RNA)等を膵臓癌細胞に選択的に伝達できる。また、本発明に係るアプタマーに公知の膵臓癌特異的医薬、癌細胞の死滅を誘導するトキシン及び抗ガン剤、または単純ヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ(HSV−TK)、シトシンデアミナーゼ(cytosine deaminase、CD)等の公知の自殺遺伝子、または膵臓癌の成長及び転移に重要な役割を果たす遺伝子の発現を阻害するsiRNAを直接付着して、膵臓癌細胞株に伝達できる。従って、本発明は、前記核酸アプタマーを含有する膵臓癌特異的薬品伝達組成物の形態で提供できる。(aptamer-siRNA conjugate: Silence. 2010 Feb 1;1(1):4. "Aptamer-targeted cell-specific RNA interference." Zhou J, Rossi JJ.; aptamer-toxin conjugate: Cancer Res. 2006 Jun 15;66(12):5989-92. "Aptamer:toxin conjugates that specifically target prostate tumor cells." Chu TC, Marks JW 3rd, Lavery LA, Faulkner S, Rosenblum MG, Ellington AD, Levy M.; aptamer-liposome: Chem Commun (Camb). 2010 Jan 14;46(2):249-51. Epub 2009 Nov 23. "A liposome-based nanostructure for aptamer directed delivery." Kang H, O'Donoghue MB, Liu H, Tan W.)
【0030】
本発明の組成物におけるアプタマーは、これらの薬学的に許容可能な塩の形態で用いられてもよく、また単独で、または他の薬学的活性化合物との組み合わせで用いられてもよい。
本発明に係る医薬組成物は、各々通常の方法により剤形化できるが、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾール等の剤形、外用剤、座薬及び滅菌注射溶液の形態で剤形化して用いられる。組成物に含まれる担体、賦形剤及び希釈剤としてはラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニールピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。
【0031】
製剤化する場合には、通常用いる充鎮剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤等の希釈剤または賦形剤を用いて調剤される。非経口投与のための製剤には滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、油剤、凍結乾燥製剤、座薬が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステル等が用いられる。座薬の基剤としては、ウィテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチン等が用いられる。
【0032】
本発明の組成物の好ましい投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬品形態、投与経路及び期間により異なるが、当業者によって適宜選択される。本発明の組成物は、ラット、マウス、家畜、ヒト等のほ乳動物に多様な経路で投与でき、投与の全ての方式は予想され、例えば、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内、髄腔内または脳血管内の注射によって投与される。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当技術分野において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0034】
《実施例1:膵臓癌細胞株に特異的に結合するアプタマーの分離》
1−1:ssRNAライブラリー及びPCR増幅とcDNA合成のためのプライマーの準備
次の配列を持つランダムなssDNAライブラリーを化学的に合成して、PAGE(Genotech Inc.,Korea)で分離した。
5’−ATA CCA GCT TAT TCA ATT NNN NNN NNN NNN NNN NNN NNN NNN NNN NNN NNN NNN NNN NAG ATA GTA AGT GCA ATC T−3’(配列番号16)
【0035】
初期プールは、7×1013分子を含んでいた。配列番号17のN40アップストリームプライマー(upstream primer)と配列番号18のN40ダウンストリームプライマー(downstream primer)がPCR増幅とcDNA合成に用いられた。
アップストリームプライマー:5’−GGTAATACGACTCACTATAGGGAGATACCAGCTTATTCAATT−3’(配列番号17)
ダウンストリームプライマー:5’−AGATTGCACTTACTATCT−3’(配列番号18)
【0036】
増幅されたライブラリーをDurascribe T7 RNAポリメラーゼ(Eqicentre)を利用してRNAに変換した。この時、2’−F UTPと2’−F CTPを各々UTP、CTPの代わりに用いることによって作製したRNAは、UとCが2’−OHの代わりに2’−Fを持つようになり、これはRNA加水分解酵素に対する抵抗力を高めることによって生体応用が可能にするためである。
【0037】
1−2:Panc−1とCaPan−1に特異的に結合するアプタマーの選別
図1に示したように、ヒト膵臓癌細胞株であるPanc−1(American Tissue Culture Collection)とCaPan−1(American Tissue Culture Collection)に対し、陽性選別を行うが、各選別ラウンド毎に細胞株を変更して行った。
【0038】
即ち、前記実施例1−2のN40 RNAライブラリーを95℃で5分間結合緩衝溶液(4.5g/Lグルコース、5mM MgCl2、0.1mg/mL酵母tRNA、1mg/mL BSAを含むダルベッコPBS)で変成させた(denaturing)後、氷上で急冷させた。次に、単層で育てた5×106細胞株(Panc−1またはCaPan−1に対し交互に行う)に前記ライブラリー500nMを4℃で30分間処理した後、非結合の配列は、洗浄用緩衝溶液(4.5g/Lグルコース、5mM MgCl2を含むダルベッコPBS)で各5分間2回の連続洗浄を介して分画した。その後、洗浄用緩衝溶液を用いて前記細胞を回収した後、95℃で5分間加熱することによって細胞表面に結合された配列を溶出させて、PCI抽出(phenol: chloroform: isoamyl alcohol extraction;Bioneer,Korea)で分離した。得られたRNAは、ImProm−II(商品名) Reverse Transcription System(Promega,USA)を利用して逆転写し、PCR増幅した。分離したPCR産物は、T7ポリメラーゼ(Ambion,USA)を利用して、in vitro転写を行った。
【0039】
前記陽性選別過程を10回行った後、2回の中間陰性選別過程を正常すい臓細胞株であるHPEDE(Ontario Cancer Institute,University of Toronto)に対し行った。この時、図1のように陽性選別過程を共に交互に行い、結果的に陽性選別過程は全14回行われ、陰性選別過程は全2回行われた。
【0040】
高い親和度と特異性を持つアプタマーの選別のため、各ラウンドに用いられる細胞株の数は、段々減らして1×106まで減少させ、洗浄の持続時間は、段々増加させて15分まで増加させ、結果的に、緩衝溶液内の酵母tRNAの濃度は2倍になるようにした。
【0041】
結合アプタマーに対する濃縮は、リアルタイム定量PCR(real-time qPCR)を利用して定量化されたが、14番目ラウンドでこのような濃縮は飽和状態に達したため、14番目選別の産物をTAベクター(RBC,Korea)を利用してクローニングした。製造された50個のクローンは、Multialighnソフトウェア(http://bioinfo.genotoul.fr/multalin/multalin.html)を利用して配列分析し、クローン上での共通する配列を分析した。その結果、図2のように50個のクローンで次の15種の配列を取得され、これから得た本発明に係るRNAアプタマー配列は次の通りである。
SQ1:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAUUAG CGGUAUCACG AUUACUUACC UUCGUUGCUG AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号1)
SQ2:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAG CUAUCGCCCA AUUCGCAGUG AUAUCCUUUA AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号2)
SQ3:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAC CUGGUCUCUC UGUCAGCAAA AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号3)
SQ4:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAGUAG CUGGGUCCGU CCCCACACAU UACCAUUUGU AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号4)
SQ5:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAC UGGUGUACCU CUUUGCCCUA UCUUAUCUGG AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号5)
SQ6:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAGAC UGGAUAUACU CUUAAGCAUU UCUAUAAUCG AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3'(配列番号6)
SQ7:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAACU GCUGCAUCGU CUCCCACGUA UUACACAUGA AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号7)
SQ8:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAG UUGAACUCCA AAUACGCGCU G AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号8)
S49:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAG UGGCCUCCCU ACAAAGAACU UAUAUCAUCC AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号9)
S20:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAG UUUAUCCCCC UUUUAGCGUU UACCAUAAUG AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号10)
S59:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU ACCUGAAAAC UGGUUUCCGG CAUCCCGUAU UGCGGCUUUA C AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号11)
S11:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAGAG CGAAGUAAAU CUCUCACUGC GUCACUACA AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3'(配列番号12)
S52:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU ACCUGAGUAG CGUUUCCCGG CAUUAUACUA UAAACUU AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号13)
S68:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU CCUGAAAGUU UGGAUAUCUU GGCGCUUGAC UAGAAAACUU GAAAUUUGU AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号14)
S3:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU CUUAUGUUCA UGCCAGCGCA AUUGCC AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3'(配列番号15)
【0042】
前記で各アプタマーの5'末端と3'末端のアンダーライン部分は実施例1−1の配列番号16に示すように、PCR増幅とcDNA合成のために導入された部分で配列番号1乃至15の核酸配列は、共通してこれらの部分を含む。また、配列番号1乃至14の核酸配列は、共通してCCUGA配列を持つことが確認され、このうちSQ2(配列番号2)、SQ3(配列番号3)、SQ5(配列番号5)、SQ8(配列番号8)、S49(配列番号9)及びS20(配列番号10)の核酸アプタマーは、特にGCCUGAAAAの共通して保存される配列を持つことが明らかになった。
【0043】
即ち、本発明に係るアプタマーで5'側の配列が特に保存されていることを確認でき、特に配列番号1乃至13のアプタマーの場合、AGCUUAUUCAAUURCCUGARDMBBB(RはGまたはA、DはA、UまたはG、MはAまたはC、BはG、CまたはUである;配列番号35)のような保存された配列を持つことを確認した。
【0044】
《実施例2:Cell−SELEXを行ったアプタマープールの膵臓癌細胞株に対する検出活性測定》
2−1:リアルタイムPCR法を利用した膵臓癌細胞株に対する結合親和度測定
定量的なRT−PCR法を利用して、SELEX法を行う前の初期ssRNAプール(pool)、各5番目、10番目及び14番目選別ラウンドから分離して取得した溶出物に対し結合親和度を測定した。
【0045】
即ち、前記初期ライブラリー及び各ラウンドのRNAプールの100nMを1×106のCaPan−1細胞株及びPanc−1細胞株に対し各々処理した。この時、対照群として正常なヒトすい臓細胞株のHPEDE細胞株を利用した。
【0046】
結合前(in-put)アプタマープールと結合後(out-put)アプタマープール共にcDNA合成のための鋳型として用いられたが、各ラウンドの希釈されたcDNAは、Step−One real−time PCR machine(Applied Biosystems)を利用して、製造者のプロトコルにより定量リアルタイムPCRによって分析して、インプットに対するアウトプット信号の比を計算した。この時、前記PCRに用いられたプライマーは、前記配列番号17及び配列番号18のプライマーと同一である。
【0047】
その結果、図3に示したように、出発物質であるN40ライブラリーからSELEX選別ラウンドを経ることによって、各ラウンドから取得されたアプタマープールが濃縮されて、結合されるRNAの%が増加することを確認することができた。それに対して、正常すい臓管細胞株(HPEDE)の場合、陰性選別過程を経た後には、結合率が減少することを確認することができた。
【0048】
即ち、本発明に係るCell−SELEXプロセスを経ることによって、正常すい臓細胞株は認識せず、癌が誘発された膵臓癌細胞株のみを特異的に認識するアプタマープールに濃縮されることを確認することができた。
【0049】
2−2:蛍光検出を利用した膵臓癌細胞株に対する結合親和度測定
蛍光検出を介して結合親和度を測定するため、5'TMARA標識されたダウンストリームプライマーを利用した。TMARA−標識された3'プライマーでは、5’−TAMRA−AGATTGCACTTACTATCT−3’(配列番号19)を利用した。
【0050】
まず、接合(annealing)緩衝溶液(30mM HEPES−KOH pH7.4、100mM KCl、2mM MgCl2、50mM NH4Ac)上のTMARA標識されたプライマーを初期RNAライブラリーと14番目ラウンドのアプタマープールと各々同じ濃度で混合した後、熱変成に従って段々冷却させる過程を経て、37℃で20分間静置(incubation)する過程を経ながら、接合させた。ペトリ皿の底で育った細胞株を前記1μMの標識されたアプタマープールと結合緩衝溶液(4.5g/Lグルコース、5mM MgCl2、0.1mg/mL酵母tRNA、1mg/mL BSAを含むダルベッコPBS)上で、20分間37℃で培養した後、洗浄緩衝溶液(4.5g/Lグルコース、5mM MgCl2を含むダルベッコPBS)で素早く2回洗浄した後、蛍光顕微鏡(fluorescence microscope:Olympus)で蛍光を400×倍率で検出した。
【0051】
その結果、図4に示したように、前記実施例2−1の結果と類似して、Cell−SELEXプロセスを経ることによって正常すい臓細胞株は認識せず、癌が誘発された膵臓癌細胞株のみを特異的に認識するアプタマープールに濃縮されることを確認することができた。
【0052】
2−3:他の癌細胞株に対する結合親和度測定
本発明で最終的に得た14番目ラウンドを行ったアプタマープールの他のヒト癌細胞株に対する結合親和度を確認するため、膵臓癌細胞株であるCaPan−1と共にHela(子宮頸部癌、American Tissue Culture Collection)、T98G(膠芽腫、American Tissue Culture Collection)、MDAMB−231(乳癌、American Tissue Culture Collection)及びHuh7(肝癌、American Tissue Culture Collection)に対し、前記実施例2−1と同様の方法で定量的なRT−PCRを行った。
【0053】
その結果、図5に示したように、14番目ラウンドを行ったアプタマープールの場合、他の癌細胞株にはほとんど結合しないが、特異的に膵臓癌細胞株を検出することを確認することができた。
【0054】
《実施例3:分離した各アプタマーの膵臓癌細胞株に対する検出活性測定》
3−1:リアルタイムPCR法を利用した膵臓癌細胞株に対する結合親和度測定
実施例1で取得したアプタマーの膵臓癌細胞株に対する検出活性を測定するため、CaPan−1細胞株及びPanc−1細胞株に対し前記実施例3−1と同じ方法で定量的なRT−PCRを行った。
【0055】
その結果、図6に示したように、膵臓癌細胞株であるCaPan−1とpanc−1に対する検出活性を確認することができた。特に、分離したアプタマー中配列番号2のSQ2及び配列番号6のSQ6の場合、前記二つの細胞株共に非常に高い親和度を示すことを確認することができた。
【0056】
3−2:平衡ろ過法による膵臓癌細胞株に対する解離常数(Kd)の測定
前記SQ2、SQ4、SQ6及びSQ8アプタマー及び高いコピー数を示したSQ1アプタマーに対し、結合アッセイを平衡ろ過法によって行った。即ち、1nM乃至1μM濃度範囲で各アプタマーを0.5×106のPan1細胞株及びCaPan−1細胞株と培養した後、結合反応を前記実施例1同様に行い、結合された個体数を前記実施例2−1の定量的なRT−PCRを利用し定量した。
【0057】
解離常数を算出するため、Sigmaplot 10.0ソフトウェアを利用して、次の平衡式に結合された膵臓癌細胞株対ssRNA濃度のパーセント(%)をプロット化して、データポイントを非成形回帰分析によって固定した。
y=(Bmax・ssRNA)/(Kd+ssRNA)
この時、yは飽和度(saturation)の程度であり、Bmaxは最大結合ポイントの数であり、Kdは解離(dissociation)常数である。
【0058】
その結果、図7(CaPan−1)及び図8(Panc−1)に示したように、膵臓癌細胞株に対し強い結合力を示すことを確認することができたが、特に配列番号2のSQ2の場合、実験を行ったアプタマーのうち最も強い親和度を持つことが明らかになった。
【0059】
3−3:蛍光検出を利用した膵臓癌細胞株に対する結合親和度測定
それと共に、前記SQ2及びSQ6アプタマー及び高いコピー数を示したSQ1アプタマーの膵臓癌細胞株に対する結合親和度を確認するため、前記実施例2−2と同じ方法で5’TMARA標識されたダウンストリームプライマーを利用した蛍光検出を行った。
【0060】
その結果、図9乃至11に示したように、SQ1(図9)、SQ2(図10)及びSQ6(図11)の3個のアプタマー共に正常細胞株であるHPEDEではシグナルが確認されなかったが、膵臓癌細胞株であるCaPan−1とPanc−1の場合、シグナルが確認されることを確認することができた。そこで、本発明に係るアプタマーが膵臓癌細胞株を特異的に検出できるため、膵臓癌細胞株の診断用組成物として有用に用いられることが分かった。特に、初期段階を示す膵臓癌細胞株のPanc−1も検出できることが明らかになり、膵臓癌の早期診断に利用される可能性があることを確認した。
【0061】
《実施例4:分離した各アプタマーの種々の膵臓癌細胞株に対する検出活性測定(1)》
前記SQ2、SQ4及びSQ8アプタマーが、Panc−1及びCaPan−1の膵臓癌細胞株以外に他の膵臓癌細胞株も特異的に検出できるか否かを確認するため、さらにBxpc−3、Aspc−1、Miacapa−1及びHapaf−2の膵臓癌細胞株に対し前記実施例2−2と同じ方法で5'TMARA標識されたダウンストリームプライマーを利用した蛍光検出を行った。
【0062】
その結果、図12乃至17に示したように、陽性選別過程において用いられた膵臓癌細胞株であるCaPan−1(図12)とPan−1(図13)細胞株のみでなく、他の膵臓癌細胞株のAspc−1(図14)、Bxpc−3(図15)、Hapaf−II(図16)及びMiacapa−2(図17)に対してもシグナルを確認することができた。即ち、本発明に係るアプタマーが陽性選別過程において用いられた一部の膵臓癌細胞株のみでなく、他の膵臓癌細胞株も共通して検出するのに用いられることが明らかになり、このような検出過程によって膵臓癌診断に有用に用いられることが明らかになった。
【0063】
《実施例5:分離した各アプタマーの膵臓癌細胞株に対する検出活性測定(2)》
5−1:蛍光検出を利用した膵臓癌細胞株に対する結合親和度測定
蛍光検出を介して結合親和度を測定するため、前記配列番号19の5'TMARA標識されたダウンストリームプライマーを利用した。
【0064】
まず、接合緩衝溶液(30mM HEPES−KOH pH7.4、100mM KCl、2mM MgCl2、50mM NH4Ac)上のTMARA標識されたプライマーをSQ1乃至SQ8アプタマーと各々同じ濃度で混合した後、熱変成後に順次冷却させる過程を経て、37℃で20分間静置過程を経ながら、接合させた。ペトリ皿で育った細胞株CaPan−1またはPanc1を前記100nMの3−TAMRA標識されたアプタマーと結合緩衝溶液(4.5g/Lグルコース、5mM MgCl2、0.1mg/mL酵母tRNA、1mg/mL BSAを含むダルベッコPBS)上で、20分間37℃で培養した後、洗浄緩衝溶液(4.5g/Lグルコース、5mM MgCl2を含むダルベッコPBS)で素早く2度洗浄した後、蛍光顕微鏡(Olympus)で蛍光を400×倍率で検出した。
【0065】
その結果、図18及び図19に示したように、アプタマーSQ1乃至SQ8共に膵臓癌細胞株CaPan−1及びPanc1に対し結合親和力があると確認され、特にSQ2の結合親和度が最も高いと確認された。
【0066】
5−2:リアルタイムPCR法を利用した膵臓癌細胞株に対する結合親和度測定
それと共に、SQ1乃至SQ8アプタマーの膵臓癌細胞株に対する結合親和度を測定するため、実施例3−2と同じ方法で結合アッセイを平衡ろ過法によって行って解離常数を算出した。
【0067】
【表1】
【0068】
その結果、表1に示したように、実施例5−1と同様にアプタマーSQ1乃至SQ8共に結合親和度を示し、特に、SQ1、SQ2、SQ4、SQ6及びSQ8が膵臓癌細胞株Pan−1及びCaPan−1共に高い親和度を示すことを確認することができた。
【0069】
《実施例6:アプタマー変形体に対する結合親和度測定》
蛍光検出時に、最も親和度が高いことが明らかになったSQ2アプタマーの長さを下記のように変化させた後、膵臓癌細胞株であるCaPan−1に対する結合親和度を測定した。
【0070】
SQ2 down truncated(配列番号36)は、SQ2アプタマーの3'末端の18ntsを切断したものであり、SQ2 up truncated(配列番号37)は、SQ2アプタマーの5'末端を18nts切断したものであり、SQ2 6−58(配列番号38)はSQ2アプタマーの3'末端の18ntsと5'末端の5ntsを切断したものであり、SQ2 6−50(配列番号39)は、SQ2アプタマーの3'末端の26ntsと5'末端の5ntsを切断したものであり、SQ2 1−50(配列番号40)は、SQ2アプタマーの3'末端の26ntsを切断したものであり、SQ2 6−30(配列番号41)は、SQ2アプタマーの3'末端の51ntsと5'末端の5ntsを切断したものである。
SQ2 full length(配列番号2):
5'−AUACCAGCUUAUUCAAUUGCCUGAAAAGCUAUCGCCCAAUUCGCAGUGAUAUCCUUUAAGAUAGUAAGUGCAAUCU−3'(76nts)
SQ2 down truncated(配列番号36):
5'−AUACCAGCUUAUUCAAUUGCCUGAAAAGCUAUCGCCCAAUUCGCAGUGAUAUCCUUUA−3'(58nts)
SQ2 up truncated(配列番号37):
5'−GCCUGAAAAGCUAUCGCCCAAUUCGCAGUGAUAUCCUUUAAGAUAGUAAGUGCAAUCU−3'(58nts)
SQ2 6−58(配列番号38):
5'−AGCUUAUUCAAUUGCCUGAAAAGCUAUCGCCCAAUUCGCAGUGAUAUCCUUUA−3'(53nts)
SQ2 6−50(配列番号39):
5'−AGCUUAUUCAAUUGCCUGAAAAGCUAUCGCCCAAUUCGCAGUGAU−3'(45nts)
SQ2 1−50(配列番号40):
5'−AUACCAGCUUAUUCAAUUGCCUGAAAAGCUAUCGCCCAAUUCGCAGUGAU−3'(50nts)
SQ2 6−30(配列番号41):
5'−AGCUUAUUCAAUUGCCUGAAAAGCU−3'(25nts)
【0071】
この時、SQ2アプタマーは、T7プロモーターに対する結合部位を持っており、2−Fにより変形されて、前記の通り長さが短くなったアプタマーを得るため、DuraScribe T7転写キット(EPICENTRE Biotechnologies)を利用して、これらとT7プロモーターとのアニール及びin vitro転写を行った。その次に、前記実施例3−2と同じ方法でCaPan−1に対する結合親和度を測定した後、SQ2アプタマーの結合親和度と比較した。
【0072】
その結果、図20に示したように、SQ2アプタマーの配列を一部切断した場合にも依然として膵臓癌細胞株に対する親和性を持ち、特にSQ2アプタマーの3'末端を切断したSQ2 down truncated(配列番号36)はむしろSQ2アプタマーより結合親和度が高いことが示された。また、SQ2アプタマーの5'側末端を切断しないか、5nts程度だけ切断した場合、SQ2アプタマーとほぼ同じか、より高い結合親和度を示した。しかし、それに対して、SQ2アプタマーの5'末端を18nts切断したSQ2 up truncated(配列番号37)の場合、膵臓癌細胞株CaPan−1に対する結合親和度が相対的に低くなることが示された。それと共に、前記実験結果は、AGCUUAUUCAAUUGCCUGAAAAGCU(配列番号41)の25ntsの短い配列だけでも、膵臓癌細胞株に対して高い結合親和度を示すことを提示する。
【0073】
追加的に、図21に示したように、SQ2 full length(配列番号2)の2次構造(図21A)とSQ2 6−30(配列番号41)の2次構造(図21B)を比較すると、SQ2アプタマーの2次構造でステム(stem)1、2及びループ3部分が重要な役割を果たすことが分かる。本構造は、RNA draw 1.1ソフトを利用して予測したものであり、2Dラジカル構造及び自由エネルギーは、4℃及び37℃で計算され、配列の5'末端は同心円で表示した。
【0074】
このような結果は、本発明に係るアプタマーで5'側の保存された配列が重要であることを意味する。本発明で分離した配列番号1乃至15のアプタマーは、5'末端で保存された配列を持ち、特に配列番号1乃至13のアプタマーの場合、AGCUUAUUCAAUURCCUGARDMBBB(RはGまたはA、DはA、UまたはG、MはAまたはC、BはG、CまたはUである;配列番号35)のような保存された配列を持つ。
【0075】
従って、本発明の配列番号35で表される核酸配列からなる群から選択されたいずれか一つの核酸配列を含むアプタマーは、膵臓癌細胞または組織に特異的に結合できることが分かる。
【0076】
《実施例7:Truncated aptamerの膵臓癌細胞株及びその他癌細胞株に対する検出活性測定》
7−1:蛍光検出を利用した膵臓癌細胞株に対する蛍光活性測定
追加的に、前記25ntsの長さに過ぎないが、膵臓癌細胞株に対する結合親和度が優れていることが示されたSQ2 6−30(配列番号41)の膵臓癌細胞株CaPan−1、Panc−1及びHPAF−II(ATCC)に対する結合親和度を確認するため、前記実施例2−2と同じ方法で5'TMARA標識されたダウンストリームプライマーを利用した蛍光検出を行った。
【0077】
その結果、図22に示したように、SQ2 6−30(配列番号41)アプタマーは、正常細胞株であるHPEDEではシグナルが確認されないが、膵臓癌細胞株であるCaPan−1、Panc−1の場合、シグナルを確認することができた。
【0078】
従って、一部配列を切断したアプタマーも膵臓癌細胞株を特異的に検出でき、そこで膵臓癌細胞株の診断用組成物として有用に用いられることが分かった。特に、初期膵臓癌細胞株であるPanc−1も検出できることが示され、早期膵臓癌の診断に利用される可能性があることが確認された。
【0079】
7−2:蛍光検出を利用したその他癌細胞株に対する蛍光活性測定
さらに、本発明に係るアプタマーが膵臓癌のみを特異的に検出できるのか確認するため、他の癌細胞株であるSK−BR−3(Human Breast cancer、ATCC)、LnCap(Human Prostrate cancer、ATCC)、Hep G2(Human Liver carcinoma、ATCC)、Hela(ATCC)、A549(Human Lung Adenocarcinoma、ATCC)、SK−N−SH(Human Neuroblastoma、ATCC)、T98G(ATCC)及びBend−3(Mouse Endothelial cells、ATCC)細胞株に対し、前記実施例2−2と同じ方法で5'TMARA標識されたダウンストリームプライマーを利用した蛍光検出を行った。
【0080】
【表2】
【0081】
その結果、図23、24及び表2に示したように、SQ2 6−30(配列番号41)は、膵臓癌細胞株ではない他の癌細胞株は認識できないことが示された。従って、本発明に係るアプタマーは、特異的に膵臓癌診断及び治療に利用される可能性があることを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上説明したように、本発明に係る核酸アプタマーは、正常すい臓組織には結合せず、膵臓癌細胞または組織にのみ特異的に結合して、膵臓癌診断及び治療用組成物として有用に用いられる。さらに、本発明に係る核酸アプタマーは、後期膵臓癌細胞株であるCaPan−1だけでなく、初期膵臓癌細胞株であるPanc−1も検出できるため、早期膵臓癌診断に利用でき、膵臓癌患者の生存率を高めるのに寄与できる。
【0083】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。
【技術分野】
【0001】
本発明は、膵臓癌細胞または組織を特異的に認識し、そして結合することによって膵臓癌の診断及び治療に利用できる核酸アプタマー及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、癌診断及び治療のために多数のバイオマーカーに関する研究が行われているが、そのうちで癌細胞特異的膜タンパク質は、検出可能な量で体液に頻繁に出ており、体液における臨床的提示は、生検サンプルの侵襲的な方法よりさらに好ましいため、最も適切なバイオマーカーとして考慮されている。また、癌イメージング(cancer imaging)とターゲット化治療戦略(targeted theraqeutic strategies)のため、タンパク質は魅力的なバイオマーカーと考えられている。
【0003】
ところが、バイオマーカー同定分野は、一次的に2Dゲル電気永動(2D−GE)質量分析器(Mass Spectroscopy)に依存するが、このような技術を用いた膜タンパク質の解明は非常に限られていた。全細胞タンパク質のほんの30%だけが膜から来ており、このうち5%だけが2D−GEを利用して検出できるからである。従って、代案として、結合されたターゲットを確認するためのツールとして用いられる膜タンパク質に関する特異的なプローブが開発された。
【0004】
過去十年間ターゲットタンパク質に高い親和性と特異性を持って結合できる核酸プローブアプタマー分野は盛んに研究されてきており、特にSELEX(Systemic Enrichment of Ligands using Exponential Enrichment)技術を利用して分離するアプタマーは、多数の疾病関連タンパク質と関連して開発されてきており、これらのうちの多くは、最近それの自体を治療剤として利用したり、イメージング化または薬品伝達体のツールとして利用するために臨床治験中である(Lee, J.F. et al., Curr Opin Chem Biol., 10(3):282, 2006; Gilbert, J.C. et al., Circulation., 116(23):2678, 2007)。
【0005】
アプタマーは、従来のSELEX法に加えて、複合ターゲット、即ち、生きている細胞及び組織に対してCell−SELEX法を利用して得られる(Guo et al. Int. J. Mol. Sci., 9(4):668, 2008)。このCell−SELEX法は、表面マーカーターゲットが知られていない場合でも、疾患細胞に対するアプタマーを開発することができるという長所がある。さらに、ターゲットタンパク質は、分離した状態では、その本来の特性を示すことができず、生理的状態にあるターゲットタンパク質の、選別過程における、さらに機能的な接近が可能になるため、Cell−SELEX法は、従来のSELEXプロセスに比べて長所を持っている。そこで、Cell−SELEXアプローチを用いて一番最初にテネイシン−C(tenascin-C)に対するssDNAアプタマーが開発され(Daniels et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 100(26):15416, 2003)、以後急性骨髄性細胞に対するPTK7(protein tyrosine kinase)アプタマー(Shangguan, D. et al., J. Proteome. Res., 7(5):2133, 2008)及び小細胞肺癌細胞に対するDNAアプタマー(Chen H.W. et al., Chem. Med. Chem., 3(6):991, 2008)がさらに開発された。サブトラクティブSELEXを利用して、分化したPC12細胞に結合できるが母細胞には結合されず、臨床診断に有用なDNAアプタマーが合成された(Brand, R. & Mahr, C., Curr. Gastroenterol. Rep., 7(2):122, 2005; Lee, M.X. & Saif, M.W., Jop., 10(2):104, 2009)。しかし、Cell−SELEX法は、細胞表面プロテアソームの複雑性のため、最適化され特異的な選別過程による限定的な調節を要する。従って、適切な陰性選別過程が、Cell−SELEXプロセスの成功のために必須である。
【0006】
一方、膵臓癌(Pancreatic adenocarcinoma)は、世界的に14番目に多発する癌として、米国だけ見ると、癌関連死亡者のうち4番目の死亡要因に該当する。このようなすい臓腫瘍の約90%は、PDAC(ductal adenocarcinomas、腺管癌)である(Bardeesy, N.& DePinho, R.A., Nat. Rev. Cancer, 2(12):897, 2002)。これは、非常に低い平均生存率を持つ非常に攻撃的な悪性癌である。高い死亡率との関連は、低い診断率と従来の化学療法的治療に対する高い耐性に起因する(Koliopanos, A. et al., Hepatobiliary Pancreat. Dis. Int., 7(4):345, 2008)。この腫瘍のただ15〜20%だけが切除可能であり、これに対する早期診断マーカーの限界が、適切な時期の検出における問題となっている(Brand, R. & Mahr, C., Curr. Gastroenterol. Rep., 7(2):122、2005; Lee, M.X. & Saif, M.W., Jop., 10(2):104, 2009)。従って、早期診断及び効果的な治療剤開発を助ける新規な膵臓癌バイオマーカーの開発が求められている。
【0007】
そこで、本発明者は早期膵臓癌診断及び膵臓癌治療に利用できる膵臓癌特異的なアプタマーを分離しようと鋭意努力した結果、Cell SELEX(Syetematic Evolution of Ligands by EXponential enrichment)工程を介して膵臓癌細胞株にのみ特異的に結合するアプタマーを選別した後、選別されたアプタマーが正常なすい臓組織には結合せず、膵臓癌細胞株にのみ特異的に結合することを確認して、本発明を完成した。
【発明の要約】
【0008】
本発明の第一の目的は、膵臓癌細胞または組織に特異的に結合する核酸アプタマーを提供することである。
本発明の第二の目的は、前記核酸アプタマーを含有する膵臓癌の検出方法を提供することである。
本発明の第三の目的は、前記核酸アプタマーを利用した膵臓癌の診断または治療用組成物を提供することである。
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は配列番号14、配列番号15及び配列番号35で表される核酸配列からなる群から選択されたある一つの核酸配列またはその断片を含み、膵臓癌細胞または組織に特異的に結合できる20〜100ntsの核酸アプタマー(ここで、前記核酸アプタマーがDNAである場合には、前記核酸配列においてUはTであることを特徴とする)を提供する。
【0010】
本発明の他の特徴及び具現例は、以下の詳細な説明及び添付された特許請求の範囲からより一層明白になる。
【0011】
本発明はまた、前記核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを利用することを特徴とする膵臓癌の検出方法を提供する。
本発明はまた、前記核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを含有する、膵臓癌の診断または治療用組成物を提供する。
本発明はまた、前記核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを投与することを特徴とする、膵臓癌の診断または治療方法を提供する。
本発明はまた、前記核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーの膵臓癌の診断または治療用用途を提供する。
本発明はまた、前記核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーが固定されている、膵臓癌診断用センサーを提供する。
本発明はまた、前記核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを含有する、膵臓癌診断用キットを提供する。
本発明はまた、前記膵臓癌診断用センサーまたは膵臓癌診断用キットを利用することを特徴とする、膵臓癌の検出方法を提供する。
本発明はまた、前記核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを含有する、膵臓癌特異的薬品伝達組成物を提供する。
本発明はまた、前記核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを利用した、膵臓癌細胞特異的表面バイオマーカーの検出方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る膵臓癌細胞または組織に特異的に結合するアプタマーの選別過程の概略図である。
【図2】前記図1の概略図に従ってCell−SELEXプロセスを行って取得した14番目ラウンドのアプタマープールの配列を分析した結果である。
【図3】Cell−SELEXを行った各段階のアプタマープールの膵臓癌細胞株に対する結合親和度をリアルタイムRT−PCRで測定した結果グラフである。
【図4】Cell−SELEXを行った14番目ラウンドのアプタマープールに対し蛍光検出方法を利用して結合親和度を確認した写真である。
【図5】Cell−SELEXを行った14番目ラウンドのアプタマープールの膵臓癌細胞株及びその他癌細胞株に対する結合親和度を定量的なリアルタイムRT−PCRで測定した結果のグラフである。
【図6】本発明に係るアプタマーの膵臓癌細胞株に対する結合親和度をリアルタイムRT−PCRで測定した結果のグラフである。
【図7】本発明に係るアプタマーのCaPan−1細胞株に対する結合親和度を示したグラフである。
【図8】本発明に係るアプタマーのPanc−1細胞株に対する結合親和度を示したグラフである。
【図9】本発明に係るアプタマーSQ1の膵臓癌細胞株及び正常細胞株に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図10】本発明に係るアプタマーSQ2の膵臓癌細胞株及び正常細胞株に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図11】本発明に係るアプタマーSQ6の膵臓癌細胞株及び正常細胞株に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図12】本発明に係るアプタマーSQ2、SQ4及びSQ8の膵臓癌細胞株CaPan−1に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図13】本発明に係るアプタマーSQ2、SQ4及びSQ8の膵臓癌細胞株Pan−1に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図14】本発明に係るアプタマーSQ2、SQ4及びSQ8の膵臓癌細胞株Aspc−1に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図15】本発明に係るアプタマーSQ2、SQ4及びSQ8の膵臓癌細胞株Bxpc−3に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図16】本発明に係るアプタマーSQ2、SQ4及びSQ8の膵臓癌細胞株Hapaf−IIに対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図17】本発明に係るアプタマーSQ2、SQ4及びSQ8の膵臓癌細胞株Miacapa−2に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図18】本発明に係るアプタマーSQ1乃至SQ8の膵臓癌細胞株CaPan−1に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図19】本発明に係るアプタマーSQ1乃至SQ8の膵臓癌細胞株Panc1に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図20】SQ2アプタマーの一部配列を切断したアプタマーの膵臓癌細胞株に対する結合親和度の相対的な比を示したグラフである。
【図21】SQ2アプタマーの二次構造(A)及びSQ2 6−30の二次構造(B)である。
【図22】SQ2 6−30の膵臓癌細胞株及び正常細胞株に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図23】SQ2 6−30の非膵臓癌細胞株であるSK−N−SH、T98G、A549及びBend−3細胞株に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【図24】SQ2 6−30の非膵臓癌細胞株であるHela、Hep G2、LnCap及びSK−Br3、T98G、A549及びBend−3細胞株に対する結合親和度を蛍光検出法で確認した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
他の方式で定義されない限り、本明細書において使用されたあらゆる技術的・科学的用語は、本発明が属する技術分野に熟練した専門家によって通常理解されるものと同じ意味を有する。通常、本明細書において使用された命名法は、本技術分野において周知であり、しかも汎用されるものである。
本発明の詳細な説明などにおいて使用される主な用語の定義は、下記の通りである。
【0014】
本願において「核酸アプタマー」とは、高い親和性でターゲット物質を特異的に認識できる小さい一本鎖オリゴ核酸をいう。
本願において「試料」とは、膵臓癌マーカーを含有していると推定されて分析が行われる組成物を意味し、すい臓組織、すい臓細胞、血液、血清、血漿、唾液、喀痰及び尿などが該当する。
本願において「90%以上100%未満の相同性を持つ核酸配列」とは、一個乃至数個のヌクレオチドが追加、欠失または置き換えられて90%以上100%未満のホモロジーを有する配列であって、類似の膵臓癌細胞株結合能を示す核酸配列を意味する。
【0015】
本発明は一観点において、AGCUUAUUCAAUURCCUGARDMBBB(RはGまたはA、DはA、UまたはG、MはAまたはC、BはG、CまたはUである;配列番号35)、次の配列番号14及び配列番号15で表される核酸配列からなる群から選択されたある一つの核酸配列またはその断片を含み、膵臓癌細胞または組織に特異的に結合できる核酸アプタマーに関する。
【0016】
本発明において、前記配列番号35で表される核酸配列は好ましくは、AGCUUAUUCAAUUGCCUGAAAAGCU(配列番号41)であることを特徴とし、前記配列番号35で表示される核酸配列を含む膵臓癌細胞または組織に特異的に結合できる核酸アプタマーは、次の配列番号1乃至13で表される核酸配列からなる群から選択されたある一つの核酸配列を含むことを特徴とする。
SQ1:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAUUAG CGGUAUCACG AUUACUUACC UUCGUUGCUG AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号1)
SQ2:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAG CUAUCGCCCA AUUCGCAGUG AUAUCCUUUA AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号2)
SQ3:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAC CUGGUCUCUC UGUCAGCAAA AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号3)
SQ4:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAGUAG CUGGGUCCGU CCCCACACAU UACCAUUUGU AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号4)
SQ5:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAC UGGUGUACCU CUUUGCCCUA UCUUAUCUGG AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号5)
SQ6:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAGAC UGGAUAUACU CUUAAGCAUU UCUAUAAUCG AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3'(配列番号6)
SQ7:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAACU GCUGCAUCGU CUCCCACGUA UUACACAUGA AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号7)
SQ8:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAG UUGAACUCCA AAUACGCGCU G AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号8)
S49:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAG UGGCCUCCCU ACAAAGAACU UAUAUCAUCC AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号9)
S20:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAG UUUAUCCCCC UUUUAGCGUU UACCAUAAUG AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号10)
S59:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU ACCUGAAAAC UGGUUUCCGG CAUCCCGUAU UGCGGCUUUA C AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号11)
S11:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAGAG CGAAGUAAAU CUCUCACUGC GUCACUACA AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号12)
S52:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU ACCUGAGUAG CGUUUCCCGG CAUUAUACUA UAAACUU AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3'(配列番号13)
S68:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU CCUGAAAGUU UGGAUAUCUU GGCGCUUGAC UAGAAAACUU GAAAUUUGU AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号14)
S3:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU CUUAUGUUCA UGCCAGCGCA AUUGCC AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号15)
【0017】
前記において、各アプタマーの5'末端と3'末端の下線の部分は、下記配列番号16で見られるように、PCR増幅とcDNA合成のために導入された部分である。
【0018】
この時、前記核酸アプタマーを構成する全ヌクレオチドの数は、20〜200ntsであり、好ましくは20〜100ntsであることを特徴とする。また、さらに好ましくは25nts以上であることを特徴とするか85nts以下であることを特徴とする。全ヌクレオチドの数が少ない場合、化学合成及び大量生産がより容易で、かつ費用面における長所も大きい。また、化学修飾も容易で生体内の安全性も高く、毒性も低くなる。さらに、前記核酸アプタマーに含まれる各ヌクレオチドは同一または異なる一つ以上の化学的変形を含むことができるが、例えば、リボースの2'の位置において、ヒドロキシル基が任意の原子または基で置き換えられているヌクレオチドであってもよい。このような任意の原子または基としては、例えば、水素原子、フッ素原子または−O−アルキル基(例:−O−CH3)、−O−アシル基(例:−O−CHO)、アミノ基(例:−NH2)で置き換えられているヌクレオチドが挙げられる。また、核酸アプタマーは、一本鎖RNAまたはDNAとして提供されるものであって、本発明において前記核酸がDNAである場合には、前記核酸配列においてUはTと表示され、このような配列が本発明の範囲に含まれることは本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者にとっては自明なことである。
【0019】
本発明の実施例では図1に示したように、前記配列番号1乃至15で表される核酸配列のアプタマーをSELEX工程を介して選別した後、リアルタイムPCR法、蛍光検出方法及び平衡ろ過法を介して親和度を測定して、前記配列番号1乃至15で表される核酸配列が膵臓癌細胞株に対し特異的に結合することを確認した。
【0020】
本発明に係る核酸アプタマーは、CCUGA、GCCUGAAA、またはAGCUUAUUCAAUURCCUGARDMBBB(配列番号35)等のように共通して保存される領域を持つことが明らかになるが、このような共通に保存される領域の存在は、前記配列番号1乃至15で表される核酸配列のうち選択されたある一つの核酸配列と90%以上100%未満の相同性を持つ核酸配列は膵臓癌細胞株に特異的に結合できる核酸アプタマーであることを意味する。本発明に係る核酸アプタマー同士の配列の類似性を見ると、前記配列番号1乃至15で表される核酸配列のうち選択されたある一つの核酸配列に対して一個乃至数個のヌクレオチドが追加、欠失または置き換えられて90%以上100%未満の配列に共通性があれば、本発明に係る核酸アプタマーと類似する膵臓癌細胞株結合能を示すことは自明なことである。特に、本発明の一実施例では5'末端の一部と3'末端の一部を切断した場合にも、膵臓癌細胞株に対する親和度を示すことを確認した。このような実験結果は、本発明に係るアプタマーにおいて一個乃至数個のヌクレオチドが追加、欠失または置き換えられて90%以上100%未満の配列に共通性があれば、本発明に係る核酸アプタマーと類似する膵臓癌細胞株結合能を示すことは自明であることを立証するものである。
【0021】
一方、本発明の他の実施例においては、前記配列番号1乃至15で表される核酸配列を含む14番目のラウンドのアプタマープールの場合、膵臓癌細胞株以外他のヒト癌細胞株に対しては殆ど結合せず特異的に膵臓癌細胞株を検出することを確認した。特に、分離したアプタマーSQ1、SQ2及びSQ6に対して、蛍光検出法を介して正常すい臓癌細胞株(HPEDE)との対照実験を行うことによって、膵臓癌細胞株である、各々膵臓癌末期段階と初期段階を示す膵臓癌細胞株のCaPan−1とPanc−1を全て特異的に検出することを提示して、本発明に係るアプタマーが膵臓癌マーカーを検出して膵臓癌診断に有用に用いられることを確認した。特に、本発明に係るアプタマーがPanc−1も検出できることは、本発明に係る核酸アプタマーが、膵臓癌の早期診断を可能にすることを意味する。また、本発明のまた他の実施例においては、本発明に係る核酸アプタマーが陽性選別過程において用いられた膵臓癌細胞株のみでなく、他の膵臓癌細胞株にも特異的に結合することが明らかになり、実際膵臓癌の診断に有用に利用される可能性があることを確認した。さらに、本発明の他の実施例においては、本発明に係る核酸アプタマーが膵臓癌以外他の癌細胞株は認識しないことを提示した。
【0022】
従って、他の観点において、本発明は前記核酸アプタマーを含有する膵臓癌診断用組成物に関する。
【0023】
本発明は、さらに他の観点において、前記核酸アプタマーを利用した膵臓癌の検出方法に関する。この時、前記方法は、前記核酸アプタマーとすい臓組織、すい臓細胞、血液、血清、血漿、唾液、喀痰及び尿の選択される試料と接触させる段階を含むことを特徴とする。前記試料は、ほ乳類、好ましくは人体から分離したものであって、最小侵襲で確保可能な試料または分泌体液、in vitro細胞培養液成分試料等膵臓癌マーカーを含む試料であれば、前記に限定されないことは自明である。
【0024】
前記核酸アプタマーを試料と接触させる場合、試料中に存在する膵臓癌マーカーと前記核酸アプタマーとの特異的な結合が起こる。従って、蛍光等で核酸アプタマーを標識して結合させた後、シグナルの存否を確認することによって、膵臓癌を検出できるようになる。
【0025】
また、試料中前記核酸アプタマーと結合した物質の分析を介して、膵臓癌バイオマーカーを分離できるが、本発明は他の観点において、前記核酸アプタマーを利用した膵臓癌細胞特異的表面バイオマーカーの検出方法に関する。例えば、前記核酸アプタマーの末端にビオチンを付着し、膵臓癌細胞株の細胞膜抽出タンパク質試料と結合させた後、ストレプトアビジンが付着した磁性粒子を介して沈殿させた後に質量分析器(Mass spectrometry)を利用してアプタマーに特異的に結合する膵臓癌特異的表面バイオマーカーを探索することができる。
【0026】
一方、前記膵臓癌細胞または組織に特異的に結合する核酸アプタマーは、ビーズ、粒子、ディップスティック(dipstick)、繊維、フィルター、膜及び硝子スライドのような通常の支持体及びシランまたはシリケート支持体等の固体支持体に固定され、検出センサーに提供されて、膵臓癌診断に利用されるが、本発明は、他の観点において、前記膵臓癌細胞または組織に特異的に結合する核酸アプタマーが固定されている膵臓癌診断用センサーに関する。
【0027】
前記固体支持体は、少なくとも一つの実質的に固い表面を含むが、その表面上に前記核酸アプタマードが動けないように固定される。この時、前記核酸アプタマーは全ての通常の化学的カップリング方法によって固定化される。例えば、前記核酸アプタマーの末端にビオチンを結合させて複合体を形成し、前記チップ等の基板表面にストレプトアビジンを固定化させて、前記ビオチンと基板表面に固定化されたストレプトアビジンの相互作用によって前記核酸アプタマーを基板表面に固定化することができる。
【0028】
一方、本発明に係る方法は、携帯性を高めるため、キット状で提供できる。即ち、本発明は、また他の観点において、前記膵臓癌細胞または組織に特異的に結合するアプタマーを含有する膵臓癌診断用キット(kit)に関する。この膵臓癌診断用キットは必要に応じて緩衝溶液及び検出と分析のための容器を含むことができる。この膵臓癌診断用キットは、瓶、筒(tub)、小さい袋(sachet)、封筒(envelope)、チューブ、アンプル(ampoule)等のような形態を有し、これらは部分的にまたは全体的にプラスチック、ガラス、紙、ホイル、ワックス等から形成してもよい。容器は、完全にまたは部分的に分離可能な栓を装着してもよく、この栓は最初から容器の一部であってもよく、または機械的に、接着により、またはその他の手段によって容器に付着できる。また、容器は、注射針によって内容物に接近できるストッパーを備えてもよい。前記キットは外部パッケージを含むことができ、外部パッケージは構成要素の使用に関する使用説明書を含んでもよい。
【0029】
また、癌細胞株に特異的に結合するアプタマーが癌細胞株に結合されることによって、癌の機構を阻害して該当癌の治療に利用できることは、本発明が属する技術分野において公知の事実であり、本発明に係るアプタマーが膵臓癌細胞または組織に特異的に結合して、膵臓癌の機構を阻害し、これを含有する組成物が膵臓癌治療のための組成物として提供できることは、本発明が属する技術分野において当業者には自明なことである。また、アプタマーをリポソームまたはナノ粒子の表面に付着することによって、リポソームまたはナノ粒子内部に含まれる抗ガン剤、トキシン、癌成長阻害遺伝子、siRNA(small interfering RNA)等を膵臓癌細胞に選択的に伝達できる。また、本発明に係るアプタマーに公知の膵臓癌特異的医薬、癌細胞の死滅を誘導するトキシン及び抗ガン剤、または単純ヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ(HSV−TK)、シトシンデアミナーゼ(cytosine deaminase、CD)等の公知の自殺遺伝子、または膵臓癌の成長及び転移に重要な役割を果たす遺伝子の発現を阻害するsiRNAを直接付着して、膵臓癌細胞株に伝達できる。従って、本発明は、前記核酸アプタマーを含有する膵臓癌特異的薬品伝達組成物の形態で提供できる。(aptamer-siRNA conjugate: Silence. 2010 Feb 1;1(1):4. "Aptamer-targeted cell-specific RNA interference." Zhou J, Rossi JJ.; aptamer-toxin conjugate: Cancer Res. 2006 Jun 15;66(12):5989-92. "Aptamer:toxin conjugates that specifically target prostate tumor cells." Chu TC, Marks JW 3rd, Lavery LA, Faulkner S, Rosenblum MG, Ellington AD, Levy M.; aptamer-liposome: Chem Commun (Camb). 2010 Jan 14;46(2):249-51. Epub 2009 Nov 23. "A liposome-based nanostructure for aptamer directed delivery." Kang H, O'Donoghue MB, Liu H, Tan W.)
【0030】
本発明の組成物におけるアプタマーは、これらの薬学的に許容可能な塩の形態で用いられてもよく、また単独で、または他の薬学的活性化合物との組み合わせで用いられてもよい。
本発明に係る医薬組成物は、各々通常の方法により剤形化できるが、例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾール等の剤形、外用剤、座薬及び滅菌注射溶液の形態で剤形化して用いられる。組成物に含まれる担体、賦形剤及び希釈剤としてはラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、澱粉、アカシアゴム、アルギン酸塩、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニールピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、マグネシウムステアレート及び鉱物油が挙げられる。
【0031】
製剤化する場合には、通常用いる充鎮剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤等の希釈剤または賦形剤を用いて調剤される。非経口投与のための製剤には滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、油剤、凍結乾燥製剤、座薬が含まれる。非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物性油、エチルオレートのような注射可能なエステル等が用いられる。座薬の基剤としては、ウィテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチン等が用いられる。
【0032】
本発明の組成物の好ましい投与量は、患者の状態及び体重、疾病の程度、薬品形態、投与経路及び期間により異なるが、当業者によって適宜選択される。本発明の組成物は、ラット、マウス、家畜、ヒト等のほ乳動物に多様な経路で投与でき、投与の全ての方式は予想され、例えば、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内、髄腔内または脳血管内の注射によって投与される。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例を挙げて詳述する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないことは当技術分野において通常の知識を有する者にとって自明である。
【0034】
《実施例1:膵臓癌細胞株に特異的に結合するアプタマーの分離》
1−1:ssRNAライブラリー及びPCR増幅とcDNA合成のためのプライマーの準備
次の配列を持つランダムなssDNAライブラリーを化学的に合成して、PAGE(Genotech Inc.,Korea)で分離した。
5’−ATA CCA GCT TAT TCA ATT NNN NNN NNN NNN NNN NNN NNN NNN NNN NNN NNN NNN NNN NAG ATA GTA AGT GCA ATC T−3’(配列番号16)
【0035】
初期プールは、7×1013分子を含んでいた。配列番号17のN40アップストリームプライマー(upstream primer)と配列番号18のN40ダウンストリームプライマー(downstream primer)がPCR増幅とcDNA合成に用いられた。
アップストリームプライマー:5’−GGTAATACGACTCACTATAGGGAGATACCAGCTTATTCAATT−3’(配列番号17)
ダウンストリームプライマー:5’−AGATTGCACTTACTATCT−3’(配列番号18)
【0036】
増幅されたライブラリーをDurascribe T7 RNAポリメラーゼ(Eqicentre)を利用してRNAに変換した。この時、2’−F UTPと2’−F CTPを各々UTP、CTPの代わりに用いることによって作製したRNAは、UとCが2’−OHの代わりに2’−Fを持つようになり、これはRNA加水分解酵素に対する抵抗力を高めることによって生体応用が可能にするためである。
【0037】
1−2:Panc−1とCaPan−1に特異的に結合するアプタマーの選別
図1に示したように、ヒト膵臓癌細胞株であるPanc−1(American Tissue Culture Collection)とCaPan−1(American Tissue Culture Collection)に対し、陽性選別を行うが、各選別ラウンド毎に細胞株を変更して行った。
【0038】
即ち、前記実施例1−2のN40 RNAライブラリーを95℃で5分間結合緩衝溶液(4.5g/Lグルコース、5mM MgCl2、0.1mg/mL酵母tRNA、1mg/mL BSAを含むダルベッコPBS)で変成させた(denaturing)後、氷上で急冷させた。次に、単層で育てた5×106細胞株(Panc−1またはCaPan−1に対し交互に行う)に前記ライブラリー500nMを4℃で30分間処理した後、非結合の配列は、洗浄用緩衝溶液(4.5g/Lグルコース、5mM MgCl2を含むダルベッコPBS)で各5分間2回の連続洗浄を介して分画した。その後、洗浄用緩衝溶液を用いて前記細胞を回収した後、95℃で5分間加熱することによって細胞表面に結合された配列を溶出させて、PCI抽出(phenol: chloroform: isoamyl alcohol extraction;Bioneer,Korea)で分離した。得られたRNAは、ImProm−II(商品名) Reverse Transcription System(Promega,USA)を利用して逆転写し、PCR増幅した。分離したPCR産物は、T7ポリメラーゼ(Ambion,USA)を利用して、in vitro転写を行った。
【0039】
前記陽性選別過程を10回行った後、2回の中間陰性選別過程を正常すい臓細胞株であるHPEDE(Ontario Cancer Institute,University of Toronto)に対し行った。この時、図1のように陽性選別過程を共に交互に行い、結果的に陽性選別過程は全14回行われ、陰性選別過程は全2回行われた。
【0040】
高い親和度と特異性を持つアプタマーの選別のため、各ラウンドに用いられる細胞株の数は、段々減らして1×106まで減少させ、洗浄の持続時間は、段々増加させて15分まで増加させ、結果的に、緩衝溶液内の酵母tRNAの濃度は2倍になるようにした。
【0041】
結合アプタマーに対する濃縮は、リアルタイム定量PCR(real-time qPCR)を利用して定量化されたが、14番目ラウンドでこのような濃縮は飽和状態に達したため、14番目選別の産物をTAベクター(RBC,Korea)を利用してクローニングした。製造された50個のクローンは、Multialighnソフトウェア(http://bioinfo.genotoul.fr/multalin/multalin.html)を利用して配列分析し、クローン上での共通する配列を分析した。その結果、図2のように50個のクローンで次の15種の配列を取得され、これから得た本発明に係るRNAアプタマー配列は次の通りである。
SQ1:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAUUAG CGGUAUCACG AUUACUUACC UUCGUUGCUG AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号1)
SQ2:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAG CUAUCGCCCA AUUCGCAGUG AUAUCCUUUA AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号2)
SQ3:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAC CUGGUCUCUC UGUCAGCAAA AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号3)
SQ4:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAGUAG CUGGGUCCGU CCCCACACAU UACCAUUUGU AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号4)
SQ5:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAC UGGUGUACCU CUUUGCCCUA UCUUAUCUGG AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号5)
SQ6:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAGAC UGGAUAUACU CUUAAGCAUU UCUAUAAUCG AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3'(配列番号6)
SQ7:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAACU GCUGCAUCGU CUCCCACGUA UUACACAUGA AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号7)
SQ8:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAG UUGAACUCCA AAUACGCGCU G AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号8)
S49:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAG UGGCCUCCCU ACAAAGAACU UAUAUCAUCC AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号9)
S20:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAAAG UUUAUCCCCC UUUUAGCGUU UACCAUAAUG AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号10)
S59:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU ACCUGAAAAC UGGUUUCCGG CAUCCCGUAU UGCGGCUUUA C AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号11)
S11:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU GCCUGAAGAG CGAAGUAAAU CUCUCACUGC GUCACUACA AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3'(配列番号12)
S52:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU ACCUGAGUAG CGUUUCCCGG CAUUAUACUA UAAACUU AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号13)
S68:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU CCUGAAAGUU UGGAUAUCUU GGCGCUUGAC UAGAAAACUU GAAAUUUGU AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3’(配列番号14)
S3:5’−AUACCAGCUUAUUCAAUU CUUAUGUUCA UGCCAGCGCA AUUGCC AGAUAGUAAGUGCAAUCU−3'(配列番号15)
【0042】
前記で各アプタマーの5'末端と3'末端のアンダーライン部分は実施例1−1の配列番号16に示すように、PCR増幅とcDNA合成のために導入された部分で配列番号1乃至15の核酸配列は、共通してこれらの部分を含む。また、配列番号1乃至14の核酸配列は、共通してCCUGA配列を持つことが確認され、このうちSQ2(配列番号2)、SQ3(配列番号3)、SQ5(配列番号5)、SQ8(配列番号8)、S49(配列番号9)及びS20(配列番号10)の核酸アプタマーは、特にGCCUGAAAAの共通して保存される配列を持つことが明らかになった。
【0043】
即ち、本発明に係るアプタマーで5'側の配列が特に保存されていることを確認でき、特に配列番号1乃至13のアプタマーの場合、AGCUUAUUCAAUURCCUGARDMBBB(RはGまたはA、DはA、UまたはG、MはAまたはC、BはG、CまたはUである;配列番号35)のような保存された配列を持つことを確認した。
【0044】
《実施例2:Cell−SELEXを行ったアプタマープールの膵臓癌細胞株に対する検出活性測定》
2−1:リアルタイムPCR法を利用した膵臓癌細胞株に対する結合親和度測定
定量的なRT−PCR法を利用して、SELEX法を行う前の初期ssRNAプール(pool)、各5番目、10番目及び14番目選別ラウンドから分離して取得した溶出物に対し結合親和度を測定した。
【0045】
即ち、前記初期ライブラリー及び各ラウンドのRNAプールの100nMを1×106のCaPan−1細胞株及びPanc−1細胞株に対し各々処理した。この時、対照群として正常なヒトすい臓細胞株のHPEDE細胞株を利用した。
【0046】
結合前(in-put)アプタマープールと結合後(out-put)アプタマープール共にcDNA合成のための鋳型として用いられたが、各ラウンドの希釈されたcDNAは、Step−One real−time PCR machine(Applied Biosystems)を利用して、製造者のプロトコルにより定量リアルタイムPCRによって分析して、インプットに対するアウトプット信号の比を計算した。この時、前記PCRに用いられたプライマーは、前記配列番号17及び配列番号18のプライマーと同一である。
【0047】
その結果、図3に示したように、出発物質であるN40ライブラリーからSELEX選別ラウンドを経ることによって、各ラウンドから取得されたアプタマープールが濃縮されて、結合されるRNAの%が増加することを確認することができた。それに対して、正常すい臓管細胞株(HPEDE)の場合、陰性選別過程を経た後には、結合率が減少することを確認することができた。
【0048】
即ち、本発明に係るCell−SELEXプロセスを経ることによって、正常すい臓細胞株は認識せず、癌が誘発された膵臓癌細胞株のみを特異的に認識するアプタマープールに濃縮されることを確認することができた。
【0049】
2−2:蛍光検出を利用した膵臓癌細胞株に対する結合親和度測定
蛍光検出を介して結合親和度を測定するため、5'TMARA標識されたダウンストリームプライマーを利用した。TMARA−標識された3'プライマーでは、5’−TAMRA−AGATTGCACTTACTATCT−3’(配列番号19)を利用した。
【0050】
まず、接合(annealing)緩衝溶液(30mM HEPES−KOH pH7.4、100mM KCl、2mM MgCl2、50mM NH4Ac)上のTMARA標識されたプライマーを初期RNAライブラリーと14番目ラウンドのアプタマープールと各々同じ濃度で混合した後、熱変成に従って段々冷却させる過程を経て、37℃で20分間静置(incubation)する過程を経ながら、接合させた。ペトリ皿の底で育った細胞株を前記1μMの標識されたアプタマープールと結合緩衝溶液(4.5g/Lグルコース、5mM MgCl2、0.1mg/mL酵母tRNA、1mg/mL BSAを含むダルベッコPBS)上で、20分間37℃で培養した後、洗浄緩衝溶液(4.5g/Lグルコース、5mM MgCl2を含むダルベッコPBS)で素早く2回洗浄した後、蛍光顕微鏡(fluorescence microscope:Olympus)で蛍光を400×倍率で検出した。
【0051】
その結果、図4に示したように、前記実施例2−1の結果と類似して、Cell−SELEXプロセスを経ることによって正常すい臓細胞株は認識せず、癌が誘発された膵臓癌細胞株のみを特異的に認識するアプタマープールに濃縮されることを確認することができた。
【0052】
2−3:他の癌細胞株に対する結合親和度測定
本発明で最終的に得た14番目ラウンドを行ったアプタマープールの他のヒト癌細胞株に対する結合親和度を確認するため、膵臓癌細胞株であるCaPan−1と共にHela(子宮頸部癌、American Tissue Culture Collection)、T98G(膠芽腫、American Tissue Culture Collection)、MDAMB−231(乳癌、American Tissue Culture Collection)及びHuh7(肝癌、American Tissue Culture Collection)に対し、前記実施例2−1と同様の方法で定量的なRT−PCRを行った。
【0053】
その結果、図5に示したように、14番目ラウンドを行ったアプタマープールの場合、他の癌細胞株にはほとんど結合しないが、特異的に膵臓癌細胞株を検出することを確認することができた。
【0054】
《実施例3:分離した各アプタマーの膵臓癌細胞株に対する検出活性測定》
3−1:リアルタイムPCR法を利用した膵臓癌細胞株に対する結合親和度測定
実施例1で取得したアプタマーの膵臓癌細胞株に対する検出活性を測定するため、CaPan−1細胞株及びPanc−1細胞株に対し前記実施例3−1と同じ方法で定量的なRT−PCRを行った。
【0055】
その結果、図6に示したように、膵臓癌細胞株であるCaPan−1とpanc−1に対する検出活性を確認することができた。特に、分離したアプタマー中配列番号2のSQ2及び配列番号6のSQ6の場合、前記二つの細胞株共に非常に高い親和度を示すことを確認することができた。
【0056】
3−2:平衡ろ過法による膵臓癌細胞株に対する解離常数(Kd)の測定
前記SQ2、SQ4、SQ6及びSQ8アプタマー及び高いコピー数を示したSQ1アプタマーに対し、結合アッセイを平衡ろ過法によって行った。即ち、1nM乃至1μM濃度範囲で各アプタマーを0.5×106のPan1細胞株及びCaPan−1細胞株と培養した後、結合反応を前記実施例1同様に行い、結合された個体数を前記実施例2−1の定量的なRT−PCRを利用し定量した。
【0057】
解離常数を算出するため、Sigmaplot 10.0ソフトウェアを利用して、次の平衡式に結合された膵臓癌細胞株対ssRNA濃度のパーセント(%)をプロット化して、データポイントを非成形回帰分析によって固定した。
y=(Bmax・ssRNA)/(Kd+ssRNA)
この時、yは飽和度(saturation)の程度であり、Bmaxは最大結合ポイントの数であり、Kdは解離(dissociation)常数である。
【0058】
その結果、図7(CaPan−1)及び図8(Panc−1)に示したように、膵臓癌細胞株に対し強い結合力を示すことを確認することができたが、特に配列番号2のSQ2の場合、実験を行ったアプタマーのうち最も強い親和度を持つことが明らかになった。
【0059】
3−3:蛍光検出を利用した膵臓癌細胞株に対する結合親和度測定
それと共に、前記SQ2及びSQ6アプタマー及び高いコピー数を示したSQ1アプタマーの膵臓癌細胞株に対する結合親和度を確認するため、前記実施例2−2と同じ方法で5’TMARA標識されたダウンストリームプライマーを利用した蛍光検出を行った。
【0060】
その結果、図9乃至11に示したように、SQ1(図9)、SQ2(図10)及びSQ6(図11)の3個のアプタマー共に正常細胞株であるHPEDEではシグナルが確認されなかったが、膵臓癌細胞株であるCaPan−1とPanc−1の場合、シグナルが確認されることを確認することができた。そこで、本発明に係るアプタマーが膵臓癌細胞株を特異的に検出できるため、膵臓癌細胞株の診断用組成物として有用に用いられることが分かった。特に、初期段階を示す膵臓癌細胞株のPanc−1も検出できることが明らかになり、膵臓癌の早期診断に利用される可能性があることを確認した。
【0061】
《実施例4:分離した各アプタマーの種々の膵臓癌細胞株に対する検出活性測定(1)》
前記SQ2、SQ4及びSQ8アプタマーが、Panc−1及びCaPan−1の膵臓癌細胞株以外に他の膵臓癌細胞株も特異的に検出できるか否かを確認するため、さらにBxpc−3、Aspc−1、Miacapa−1及びHapaf−2の膵臓癌細胞株に対し前記実施例2−2と同じ方法で5'TMARA標識されたダウンストリームプライマーを利用した蛍光検出を行った。
【0062】
その結果、図12乃至17に示したように、陽性選別過程において用いられた膵臓癌細胞株であるCaPan−1(図12)とPan−1(図13)細胞株のみでなく、他の膵臓癌細胞株のAspc−1(図14)、Bxpc−3(図15)、Hapaf−II(図16)及びMiacapa−2(図17)に対してもシグナルを確認することができた。即ち、本発明に係るアプタマーが陽性選別過程において用いられた一部の膵臓癌細胞株のみでなく、他の膵臓癌細胞株も共通して検出するのに用いられることが明らかになり、このような検出過程によって膵臓癌診断に有用に用いられることが明らかになった。
【0063】
《実施例5:分離した各アプタマーの膵臓癌細胞株に対する検出活性測定(2)》
5−1:蛍光検出を利用した膵臓癌細胞株に対する結合親和度測定
蛍光検出を介して結合親和度を測定するため、前記配列番号19の5'TMARA標識されたダウンストリームプライマーを利用した。
【0064】
まず、接合緩衝溶液(30mM HEPES−KOH pH7.4、100mM KCl、2mM MgCl2、50mM NH4Ac)上のTMARA標識されたプライマーをSQ1乃至SQ8アプタマーと各々同じ濃度で混合した後、熱変成後に順次冷却させる過程を経て、37℃で20分間静置過程を経ながら、接合させた。ペトリ皿で育った細胞株CaPan−1またはPanc1を前記100nMの3−TAMRA標識されたアプタマーと結合緩衝溶液(4.5g/Lグルコース、5mM MgCl2、0.1mg/mL酵母tRNA、1mg/mL BSAを含むダルベッコPBS)上で、20分間37℃で培養した後、洗浄緩衝溶液(4.5g/Lグルコース、5mM MgCl2を含むダルベッコPBS)で素早く2度洗浄した後、蛍光顕微鏡(Olympus)で蛍光を400×倍率で検出した。
【0065】
その結果、図18及び図19に示したように、アプタマーSQ1乃至SQ8共に膵臓癌細胞株CaPan−1及びPanc1に対し結合親和力があると確認され、特にSQ2の結合親和度が最も高いと確認された。
【0066】
5−2:リアルタイムPCR法を利用した膵臓癌細胞株に対する結合親和度測定
それと共に、SQ1乃至SQ8アプタマーの膵臓癌細胞株に対する結合親和度を測定するため、実施例3−2と同じ方法で結合アッセイを平衡ろ過法によって行って解離常数を算出した。
【0067】
【表1】
【0068】
その結果、表1に示したように、実施例5−1と同様にアプタマーSQ1乃至SQ8共に結合親和度を示し、特に、SQ1、SQ2、SQ4、SQ6及びSQ8が膵臓癌細胞株Pan−1及びCaPan−1共に高い親和度を示すことを確認することができた。
【0069】
《実施例6:アプタマー変形体に対する結合親和度測定》
蛍光検出時に、最も親和度が高いことが明らかになったSQ2アプタマーの長さを下記のように変化させた後、膵臓癌細胞株であるCaPan−1に対する結合親和度を測定した。
【0070】
SQ2 down truncated(配列番号36)は、SQ2アプタマーの3'末端の18ntsを切断したものであり、SQ2 up truncated(配列番号37)は、SQ2アプタマーの5'末端を18nts切断したものであり、SQ2 6−58(配列番号38)はSQ2アプタマーの3'末端の18ntsと5'末端の5ntsを切断したものであり、SQ2 6−50(配列番号39)は、SQ2アプタマーの3'末端の26ntsと5'末端の5ntsを切断したものであり、SQ2 1−50(配列番号40)は、SQ2アプタマーの3'末端の26ntsを切断したものであり、SQ2 6−30(配列番号41)は、SQ2アプタマーの3'末端の51ntsと5'末端の5ntsを切断したものである。
SQ2 full length(配列番号2):
5'−AUACCAGCUUAUUCAAUUGCCUGAAAAGCUAUCGCCCAAUUCGCAGUGAUAUCCUUUAAGAUAGUAAGUGCAAUCU−3'(76nts)
SQ2 down truncated(配列番号36):
5'−AUACCAGCUUAUUCAAUUGCCUGAAAAGCUAUCGCCCAAUUCGCAGUGAUAUCCUUUA−3'(58nts)
SQ2 up truncated(配列番号37):
5'−GCCUGAAAAGCUAUCGCCCAAUUCGCAGUGAUAUCCUUUAAGAUAGUAAGUGCAAUCU−3'(58nts)
SQ2 6−58(配列番号38):
5'−AGCUUAUUCAAUUGCCUGAAAAGCUAUCGCCCAAUUCGCAGUGAUAUCCUUUA−3'(53nts)
SQ2 6−50(配列番号39):
5'−AGCUUAUUCAAUUGCCUGAAAAGCUAUCGCCCAAUUCGCAGUGAU−3'(45nts)
SQ2 1−50(配列番号40):
5'−AUACCAGCUUAUUCAAUUGCCUGAAAAGCUAUCGCCCAAUUCGCAGUGAU−3'(50nts)
SQ2 6−30(配列番号41):
5'−AGCUUAUUCAAUUGCCUGAAAAGCU−3'(25nts)
【0071】
この時、SQ2アプタマーは、T7プロモーターに対する結合部位を持っており、2−Fにより変形されて、前記の通り長さが短くなったアプタマーを得るため、DuraScribe T7転写キット(EPICENTRE Biotechnologies)を利用して、これらとT7プロモーターとのアニール及びin vitro転写を行った。その次に、前記実施例3−2と同じ方法でCaPan−1に対する結合親和度を測定した後、SQ2アプタマーの結合親和度と比較した。
【0072】
その結果、図20に示したように、SQ2アプタマーの配列を一部切断した場合にも依然として膵臓癌細胞株に対する親和性を持ち、特にSQ2アプタマーの3'末端を切断したSQ2 down truncated(配列番号36)はむしろSQ2アプタマーより結合親和度が高いことが示された。また、SQ2アプタマーの5'側末端を切断しないか、5nts程度だけ切断した場合、SQ2アプタマーとほぼ同じか、より高い結合親和度を示した。しかし、それに対して、SQ2アプタマーの5'末端を18nts切断したSQ2 up truncated(配列番号37)の場合、膵臓癌細胞株CaPan−1に対する結合親和度が相対的に低くなることが示された。それと共に、前記実験結果は、AGCUUAUUCAAUUGCCUGAAAAGCU(配列番号41)の25ntsの短い配列だけでも、膵臓癌細胞株に対して高い結合親和度を示すことを提示する。
【0073】
追加的に、図21に示したように、SQ2 full length(配列番号2)の2次構造(図21A)とSQ2 6−30(配列番号41)の2次構造(図21B)を比較すると、SQ2アプタマーの2次構造でステム(stem)1、2及びループ3部分が重要な役割を果たすことが分かる。本構造は、RNA draw 1.1ソフトを利用して予測したものであり、2Dラジカル構造及び自由エネルギーは、4℃及び37℃で計算され、配列の5'末端は同心円で表示した。
【0074】
このような結果は、本発明に係るアプタマーで5'側の保存された配列が重要であることを意味する。本発明で分離した配列番号1乃至15のアプタマーは、5'末端で保存された配列を持ち、特に配列番号1乃至13のアプタマーの場合、AGCUUAUUCAAUURCCUGARDMBBB(RはGまたはA、DはA、UまたはG、MはAまたはC、BはG、CまたはUである;配列番号35)のような保存された配列を持つ。
【0075】
従って、本発明の配列番号35で表される核酸配列からなる群から選択されたいずれか一つの核酸配列を含むアプタマーは、膵臓癌細胞または組織に特異的に結合できることが分かる。
【0076】
《実施例7:Truncated aptamerの膵臓癌細胞株及びその他癌細胞株に対する検出活性測定》
7−1:蛍光検出を利用した膵臓癌細胞株に対する蛍光活性測定
追加的に、前記25ntsの長さに過ぎないが、膵臓癌細胞株に対する結合親和度が優れていることが示されたSQ2 6−30(配列番号41)の膵臓癌細胞株CaPan−1、Panc−1及びHPAF−II(ATCC)に対する結合親和度を確認するため、前記実施例2−2と同じ方法で5'TMARA標識されたダウンストリームプライマーを利用した蛍光検出を行った。
【0077】
その結果、図22に示したように、SQ2 6−30(配列番号41)アプタマーは、正常細胞株であるHPEDEではシグナルが確認されないが、膵臓癌細胞株であるCaPan−1、Panc−1の場合、シグナルを確認することができた。
【0078】
従って、一部配列を切断したアプタマーも膵臓癌細胞株を特異的に検出でき、そこで膵臓癌細胞株の診断用組成物として有用に用いられることが分かった。特に、初期膵臓癌細胞株であるPanc−1も検出できることが示され、早期膵臓癌の診断に利用される可能性があることが確認された。
【0079】
7−2:蛍光検出を利用したその他癌細胞株に対する蛍光活性測定
さらに、本発明に係るアプタマーが膵臓癌のみを特異的に検出できるのか確認するため、他の癌細胞株であるSK−BR−3(Human Breast cancer、ATCC)、LnCap(Human Prostrate cancer、ATCC)、Hep G2(Human Liver carcinoma、ATCC)、Hela(ATCC)、A549(Human Lung Adenocarcinoma、ATCC)、SK−N−SH(Human Neuroblastoma、ATCC)、T98G(ATCC)及びBend−3(Mouse Endothelial cells、ATCC)細胞株に対し、前記実施例2−2と同じ方法で5'TMARA標識されたダウンストリームプライマーを利用した蛍光検出を行った。
【0080】
【表2】
【0081】
その結果、図23、24及び表2に示したように、SQ2 6−30(配列番号41)は、膵臓癌細胞株ではない他の癌細胞株は認識できないことが示された。従って、本発明に係るアプタマーは、特異的に膵臓癌診断及び治療に利用される可能性があることを確認することができた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上説明したように、本発明に係る核酸アプタマーは、正常すい臓組織には結合せず、膵臓癌細胞または組織にのみ特異的に結合して、膵臓癌診断及び治療用組成物として有用に用いられる。さらに、本発明に係る核酸アプタマーは、後期膵臓癌細胞株であるCaPan−1だけでなく、初期膵臓癌細胞株であるPanc−1も検出できるため、早期膵臓癌診断に利用でき、膵臓癌患者の生存率を高めるのに寄与できる。
【0083】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号14、配列番号15及び配列番号35で表される核酸配列からなる群から選択されたいずれか一つの核酸配列またはその断片を含み、膵臓癌細胞または組織に特異的に結合できる20〜100ntsの核酸アプタマーであって
前記核酸アプタマーがDNAである場合には、前記核酸配列においてUはTであることを特徴とする核酸アプタマー。
【請求項2】
前記核酸アプタマーの長さが、25〜85ntsであることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項3】
配列番号35で表される核酸配列は、配列番号41で表される核酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項4】
配列番号1〜13で表される核酸配列からなる群から選択されたいずれか一つの核酸配列を含むことを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項5】
配列番号1で表される核酸配列(SQ1)であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項6】
配列番号2で表される核酸配列(SQ2)であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項7】
配列番号4で表される核酸配列(SQ4)であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項8】
配列番号36で表される核酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項9】
配列番号38で表される核酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項10】
配列番号39で表される核酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項11】
配列番号40で表される核酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項12】
化学的変形を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸アプタマー。
【請求項13】
前記化学的変形は前記核酸アプタマーに含まれる少なくとも1種のヌクレオチドのリボースの2'の位置において、ヒドロキシル基が水素原子、フッ素原子、−O−アルキル基、−O−アシル基及びアミノ基のいずれか一つで置換されたものであることを特徴とする請求項12に記載の核酸アプタマー。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを利用することを特徴とする、膵臓癌の検出方法。
【請求項15】
前記核酸アプタマーはすい臓組織、すい臓細胞、血液、血清、血漿、唾液、喀痰及び尿の中から選ばれる試料と接触させる工程を含む請求項14に記載の検出方法。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを含有する、膵臓癌の診断用組成物。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーが固定されている膵臓癌診断用センサー。
【請求項18】
請求項17に記載の膵臓癌診断用センサーを利用することを特徴とする、膵臓癌の検出方法。
【請求項19】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを含有する、膵臓癌診断用キット。
【請求項20】
請求項19に記載の膵臓癌診断用キットを利用することを特徴とする、膵臓癌の検出方法。
【請求項21】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを含有する、膵臓癌の治療用組成物。
【請求項22】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを含有する、膵臓癌特異的薬品伝達組成物。
【請求項23】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを利用した膵臓癌細胞特異的表面バイオマーカーの検出方法。
【請求項1】
配列番号14、配列番号15及び配列番号35で表される核酸配列からなる群から選択されたいずれか一つの核酸配列またはその断片を含み、膵臓癌細胞または組織に特異的に結合できる20〜100ntsの核酸アプタマーであって
前記核酸アプタマーがDNAである場合には、前記核酸配列においてUはTであることを特徴とする核酸アプタマー。
【請求項2】
前記核酸アプタマーの長さが、25〜85ntsであることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項3】
配列番号35で表される核酸配列は、配列番号41で表される核酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項4】
配列番号1〜13で表される核酸配列からなる群から選択されたいずれか一つの核酸配列を含むことを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項5】
配列番号1で表される核酸配列(SQ1)であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項6】
配列番号2で表される核酸配列(SQ2)であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項7】
配列番号4で表される核酸配列(SQ4)であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項8】
配列番号36で表される核酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項9】
配列番号38で表される核酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項10】
配列番号39で表される核酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項11】
配列番号40で表される核酸配列であることを特徴とする請求項1に記載の核酸アプタマー。
【請求項12】
化学的変形を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸アプタマー。
【請求項13】
前記化学的変形は前記核酸アプタマーに含まれる少なくとも1種のヌクレオチドのリボースの2'の位置において、ヒドロキシル基が水素原子、フッ素原子、−O−アルキル基、−O−アシル基及びアミノ基のいずれか一つで置換されたものであることを特徴とする請求項12に記載の核酸アプタマー。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを利用することを特徴とする、膵臓癌の検出方法。
【請求項15】
前記核酸アプタマーはすい臓組織、すい臓細胞、血液、血清、血漿、唾液、喀痰及び尿の中から選ばれる試料と接触させる工程を含む請求項14に記載の検出方法。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを含有する、膵臓癌の診断用組成物。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーが固定されている膵臓癌診断用センサー。
【請求項18】
請求項17に記載の膵臓癌診断用センサーを利用することを特徴とする、膵臓癌の検出方法。
【請求項19】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを含有する、膵臓癌診断用キット。
【請求項20】
請求項19に記載の膵臓癌診断用キットを利用することを特徴とする、膵臓癌の検出方法。
【請求項21】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを含有する、膵臓癌の治療用組成物。
【請求項22】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを含有する、膵臓癌特異的薬品伝達組成物。
【請求項23】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の核酸アプタマーまたはその化学的変形を含む核酸アプタマーを利用した膵臓癌細胞特異的表面バイオマーカーの検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2012−528587(P2012−528587A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513867(P2012−513867)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/KR2010/003536
【国際公開番号】WO2010/140834
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(511185438)ソンギュングヮン ユニバーシティ ファウンデーション フォー コーポレート コラボレーション (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/KR2010/003536
【国際公開番号】WO2010/140834
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(511185438)ソンギュングヮン ユニバーシティ ファウンデーション フォー コーポレート コラボレーション (2)
【Fターム(参考)】
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