説明

臨界相アルキル化方法

セリウム助長ゼオライトベータを含んで成るモレキュラーシーブである芳香族アルキル化用触媒を用いてベンゼンにエチル化を臨界相中で受けさせることでエチルベンゼンを製造する方法。ベンゼン含有量が少なくとも90重量%の芳香族原料を反応ゾーンの中に供給してシリカ/アルミナのモル比が50−150の範囲内でセリウム−アルミニウム比が0.5−1.5のセリウム助長ゼオライトベータと接触させる。エチレンを前記アルキル化反応ゾーンにベンゼン/エチレンのモル比が1−15になる量で供給する。この反応ゾーンの操作をベンゼンが超臨界相中に存在する温度および圧力条件下で行うことでベンゼンにエチル化を前記セリウムゼオライトベータであるアルキル化用触媒の存在下で受けさせる。エチルベンゼンを主生成物として含有するアルキル化生成物が生じ、それに付随してエチルベンゼン量が60重量%以下の重質アルキル化副生成物が生じる。前記臨界相アルキル化反応に続いてポリアルキル化芳香族成分にアルキル交換を受けさせてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエチルベンゼンの製造、より詳細には、セリウム助長ベータであるアルキル化用触媒(cerium−promoted beta alkylation catalyst)を用いてベンゼンにエチル化をベンゼンが超臨界相中に存在する条件下で受けさせることに関する。
【背景技術】
【0002】
モレキュラーシーブ触媒を用いたエチレンによるベンゼンのアルキル化はエチルベンゼンの製造で良く知られた手順である。このアルキル化反応は典型的にエチレンとベンゼンを段間注入することを伴う多段式反応槽内で実施され、それによって、モノアルキルベンゼンとポリアルキルベンゼンの混合物を包含する産物が前記反応槽からもたらされる。主要なモノアルキルベンゼンは勿論所望のエチルベンゼン生成物である。ポリアルキルベンゼンにはジエチルベンゼン、トリエチルベンゼンおよびキシレンが含まれる。
【0003】
多くの場合、前記アルキル化反応槽の操作をアルキル交換反応槽の操作と協力させて行うことでポリエチルベンゼンとベンゼンのアルキル交換反応によって追加的エチルベンゼンを生じさせる方が望ましい。1段階以上の中間的分離段階を伴うフロースキームで前記アルキル化反応槽をアルキル交換反応槽と連結させることでエチレン、エチルベンゼンおよびポリエチルベンゼンの回収を行うことができる。
【0004】
また、アルキル交換を最初のアルキル化反応槽内で起こさせることも可能である。これに関して、アルキル化反応槽の中の段と段の間にエチレンとベンゼンを注入すると結果として追加的エチルベンゼンの生成がもたらされるばかりでなくまたアルキル化反応槽の中で起こるアルキル交換も助長され、このアルキル交換では、ベンゼンとジエチルベンゼンが不均化反応で反応してエチルベンゼンがもたらされる。
【0005】
そのようなアルキル化反応槽およびアルキル交換反応槽内で用いることができる相条件は様々である。アルキル交換反応槽の操作は典型的に液相条件、即ちベンゼンとポリエチルベンゼンが液相中に存在する条件下で行われ、そしてアルキル化反応槽は気相条件、即ちベンゼンが気相中に存在する圧力および温度条件下で操作される。しかしながら、アルキル化反応槽から望ましくない副生成物が生じる度合を最小限にすることが望まれる場合には液相条件を用いることも可能である。
(発明の要約)
本発明に従い、セリウム助長ゼオライトベータを含んで成るモレキュラーシーブである芳香族アルキル化用触媒を用いてベンゼンにエチル化を臨界相中で受けさせることでエチルベンゼンを製造する方法を提供する。本発明の1つの面では、ベンゼン含有量が少なくとも90重量%の芳香族供給原料を反応ゾーンの中に供給して前記セリウム助長ゼオライトベータと接触させる。このゼオライトベータが有するシリカ/アルミナのモル比を好適には20−500の範囲内、より好適には50−150の範囲内にしておく。前記アルキル化反応ゾーンにエチレンをベンゼン/エチレンのモル比が1−15になる量で供給する。前記反応ゾーンをベンゼンが超臨界相中に存在する温度および圧力条件で操作して前記ベンゼンにエチル化を前記アルキル化用ゼオライトベータ触媒の存在下で受けさせる。エチルベンゼンを主生成物として含有するアルキル化生成物が生じ、それに付随して、エチルベンゼン量が60重量%以下のより重質なアルキル化副生成物が生じる。前記アルキル化生成物を前記反応ゾーンから回収して、更に使用するか或は処理する。好適には、前記アルキル化反応ゾーンをプロピルベンゼンとブチルベンゼンの複合副生成物生成率(エチルベンゼンを基準)がランタンによる助長を受けているゼオライトベータを用いた場合の相当する副生成物生成率の半分以下になるような温度および圧力条件下で操作する。
【0006】
本発明のさらなる面では、エチルベンゼンを臨界相アルキル化反応ゾーン内で生じさせた後にポリアルキル化芳香族成分にアルキル交換を受けさせる方法を提供する。本発明のこの面では、セリウム助長ベータである芳香族アルキル化用触媒を入れておいたアルキル化反応ゾーンを準備する。ベンゼンを主成分として供給原料の芳香族含有量の少なくとも95重量%の量で含有しかつエチレンを主要でない成分として含有する供給原料を前記アルキル化反応ゾーンに供給する。前記アルキル化反応ゾーンをベンゼンが超臨界相中に存在する温度および圧力条件で操作して前記ベンゼンにエチル化をセリウム助長ゼオライトベータの存在下で受けさせることでベンゼンとエチルベンゼンとポリアルキル化芳香族(ジエチルベンゼンを包含)の混合物を含んで成るアルキル化生成物を生じさせる。そのアルキル化生成物を前記アルキル化反応ゾーンから回収して分離回収ゾーンに供給する。この回収ゾーンの中でエチルベンゼンを生成物から分離回収するばかりでなくポリアルキル化成分(ジエチルベンゼンを包含)も分離する。前記ポリアルキル化芳香族成分(ジエチルベンゼンを包含)の少なくとも一部をアルキル交換用モレキュラーシーブ触媒が入っているアルキル交換反応ゾーンに供給する。前記アルキル交換反応ゾーンにまたベンゼンも供給し、そして前記アルキル交換反応ゾーンを前記ポリアルキル化芳香族画分が不均化を起こすことでジエチルベンゼン含有量が低下しかつエチルベンゼン含有量が上昇した不均化生成物が生じるのを促す温度および圧力条件下で操作する。好適には、前記アルキル交換反応ゾーンにゼオライトY触媒を入れておきそしてそれを前記ポリアルキル化芳香族成分が液相中に保持される条件下で操作する。好適には、前記セリウム助長ゼオライトベータのシリカ/アルミナ比を50−150の範囲内にしかつセリウム/アルミニウム比を0.25−5.0、好適には0.5−1.5の範囲内にしておく。
【0007】
前記セリウム助長ゼオライトベータが失活を起こすのはほんの少しづつであり、その結果として、それの再生が必要になるまでに使用することができる期間は長期間である。その触媒の再生では、酸素を含有しない不活性な気体、例えば窒素などを触媒床の中に最初に注入することで再生手順を開始する。この初期の窒素注入段階を実施する時の温度は適切な如何なる温度であってもよく、通常は約300−310℃であり、これを床の中のベンゼンが激減しかつ触媒床が本質的に乾燥するまで継続する。その後、前記窒素流に酸素を添加する。典型的には、窒素の注入量を徐々に低くしながら空気添加量を徐々に多くして最終的に空気のみが注入されるようにすることでそれを達成する。その酸素がコークスを前記触媒から焼失させそして温度を発熱が測定されるまで徐々に高くする。次に、温度を低くしそして温度が通常は初期温度に近い値、例えば300−310℃にまで降下した時点で空気の注入を止めた後、熱窒素を適切な期間注入することで恐らくは50−100℃の増分的上昇を生じさせる。次に、窒素の注入を徐々に減らしながら空気の注入を開始し、そしてこの過程を発熱に到達しかつ触媒床内の温度が最大温度に到達するまで実施した後、温度を先の空気注入段階を停止した時の触媒床の温度値とほぼ等しい値になるまで降下させる。空気の注入を停止して熱窒素の注入を再開し、そしてこの手順を触媒床の中の温度が最終的に少なくとも500℃、好適には510℃を超えるレベルに到達するまで繰り返す。典型的には、この再生手順をこれの終点である最終的発熱で温度が約525−550℃の範囲内になるまで実施する。このような様式の操作で再生させた触媒が示す失活特徴は初期の新鮮なセリウム助長ゼオライトベータが示す特徴と同様に比較的徐々である。
(発明の詳細な説明)
本発明は、セリウム助長ゼオライトベータであるアルキル化用触媒を用いてベンゼンに臨界相アルキル化をアルキル化反応ゾーン内で生じる副生成物の生成が制御されかつ望ましくはその生成量が最小限になるような条件下で受けさせることに関する。前記アルキル化反応ゾーンに供給する供給原料はベンゼンとエチレンを含有して成る。典型的には、ベンゼンの流れとエチレンの流れを一緒にすることでベンゼン−エチレン混合物を生じさせて前記反応ゾーンの中に入れる。反応ゾーンに導入する前または後のいずれかのエチレンと一緒に混合するベンゼンの流れは、汚染物が入っていても非常に少量のみである比較的高純度の流れであるべきである。このベンゼン流のベンゼン含有量は少なくとも90重量%でなければならない。このベンゼン流は好適にはベンゼンが少なくとも98重量%であり、ベンゼンから容易には分離することができないトルエン、エチルベンゼンおよびC脂肪族化合物の如き材料の量は痕跡量のみである。前記アルキル化反応ゾーンを超臨界条件、即ちベンゼンの臨界圧力以上および臨界温度以上の圧力および温度条件下で操作する。具体的には、前記アルキル化ゾーンの中の温度を310℃またはそれ以上にし、そして圧力を550psiaまたはそれ以上にする。前記アルキル化反応槽の中の温度を好適には平均値で320−350℃の範囲内に維持しかつ圧力を550−850psiaの範囲内に維持する。望まれるならば、より高いアルキル化温度を用いることも可能である、と言うのは、前記セリウム助長ゼオライトベータは約530−540℃の温度でも構造的一体性を維持するからである。セリウムによる助長を受けさせていないゼオライトは温度が500℃に到達するにつれてそれの構造的一体性を失う傾向がある。そのような臨界相アルキル化反応は吸熱反応であり、この反応槽の入り口から出口に向かって正の温度勾配が存在し、約40℃±10℃の増分的温度上昇がもたらされる。
【0008】
そのようにアルキル化反応ゾーンを超臨界範囲で操作すると、そのアルキル化ゾーンの操作をベンゼン−エチレンのモル比を比較的低いレベル、通常は前記アルキル化反応ゾーンを液相条件下で操作する時に見られるベンゼン−エチレンモル比よりいくらか低いレベルに維持することができる条件下で行うことが可能になる。そのベンゼン−エチレンのモル比をほとんどの場合1−15の範囲内にする。そのベンゼンのモル比を、好適には、1サイクルの操作の少なくとも一部の間、前記範囲の下方末端の範囲内のレベルに維持し、具体的には、ベンゼン−エチレンのモル比を10未満に維持する。3−8の範囲内のベンゼン−エチレンモル比を用いることができる。従って、操作を超臨界相の状態で行うと、気相アルキル化でしばしば見られる副生成物の生成、特にキシレンの生成に関連した問題を伴うことなく、ベンゼン−エチレン比を低く保つことが可能な気相アルキル化の利点が得られる。それと同時に、操作を超臨界相の状態で行うと、副生成物の生成量が低いレベルに制御される液相アルキル化の利点も得られる。操作を超臨界相状態で行うに必要な圧力は液相アルキル化に必要な圧力に比べて実質的に高くなく、超臨界相中のベンゼンは、ゼオライトベータ触媒を奇麗な状態に保持しかつ触媒の失活をもたらすコークス化を遅らせる溶媒として機能する。
【0009】
以下に記述する実験研究で示すように、セリウム助長ベータを用いると超臨界相アルキル化を含有量が同様または高いランタン助長ゼオライトベータを用いて超臨界相アルキル化を行った時にもたらされる相当する副生成物の量に比べて副生成物量が実質的に少なくなるように実施することが可能になる。従って、アルキル化反応ゾーンを超臨界相温度および圧力条件下で操作することが可能になることで、プロピルベンゼンとブチルベンゼンの複合副生成物生成量が、ランタンによる助長を前記セリウム助長ゼオライトベータのセリウム/アルミニウム原子比と少なくとも同じほど高いランタン/ベータ原子比になるように受けている相当するゼオライトベータ触媒を用いた時のプロピレンとブチルベンゼンの相当する複合副生成物生成量より少なくなる。好適には、前記アルキル化反応ゾーンをプロピルベンゼンとブチルベンゼンの複合生成率がランタン助長ゼオライトベータを用いた時にもたらされるプロピルベンゼンとブチルベンゼンの相当する複合副生成物生成率の半分以下になるような温度および圧力条件下で操作する。
【0010】
ここに、図1を参照して、本発明を利用したアルキル化/アルキル交換工程の図式的ブロック図を示す。図1に示すように、エチレンに対するベンゼンのモル比が約1から15のエチレンとベンゼンの混合物を含んで成る生成物流れをライン1によって熱交換器2に通してアルキル化反応ゾーンに供給する。アルキル化ゾーン4は、好適には、本明細書に記述する如きセリウムゼオライトベータであるアルキル化用触媒を含有する直列に連結している多数の触媒床を有する多段式反応槽を1基以上含んで成る。前記アルキル化ゾーン4を超臨界相の状態のアルキル化反応が維持される、即ちベンゼンが超臨界状態にある温度および圧力条件下で操作しかつジエチルベンゼンの生成が向上すると同時に副生成物の生成速度が遅くなるような空間速度をもたらす供給速度で操作する。ベンゼン供給流れの空間速度を好適には1床当たり10−150時間−1LHSVの範囲内にする。
【0011】
前記アルキル化反応槽4の産物をライン5によって中間的ベンゼン分離ゾーン6に供給するが、前記ゾーン6に持たせる形態は1個以上の蒸留塔の形態であってもよい。ベンゼンをライン8に通して回収した後、ライン1に通してアルキル化反応槽に再循環させる。前記ベンゼン分離ゾーン6の釜残溜分(bottoms fraction)[これにはエチルベンゼンおよびポリアルキル化ベンゼン(ポリエチルベンゼンを包含)が入っている]をライン9によってエチルベンゼン分離ゾーン10に供給する。このエチルベンゼン分離ゾーンも同様に連続的に連結している1個以上の蒸留塔を含んで成っていてもよい。そのエチルベンゼンをライン12に通して回収した後、適切な任意目的、例えばビニルベンゼンの製造などの目的で供給する。前記エチルベンゼン分離ゾーン10の釜残溜分(これはポリエチルベンゼン、主にジエチルベンゼンを含んで成る)をライン14によってアルキル交換反応槽16に供給する。このアルキル交換反応ゾーンにベンゼンをライン18に通して供給する。このアルキル交換反応槽を好適には液相条件下で操作し、これにモレキュラーシーブ触媒、好適にはゼオライト−Yを入れておくが、それが有する孔径は前記アルキル化反応ゾーンで用いるセリウム修飾ゼオライトベータのそれよりもいくらか大きい。前記アルキル交換反応ゾーンの産物をライン20によってベンゼン分離ゾーン6に再循環させる。
【0012】
ここに、図2を参照して、前記臨界相アルキル化およびアルキル交換工程に関係した成分の分離および再循環を行うに適した多段式中間回収ゾーンを組み込んだ装置をより詳細に示す。図2に示すように、投入する供給流れを、ライン31を通って来る新鮮なエチレンおよびライン32を通って来る新鮮なベンゼンによって供給する。この上で述べたように、ライン32によって供給する新鮮なベンゼンの流れは好適には高純度であり、これのベンゼン含有量は少なくとも98重量%、好適には約99重量%で、他の成分の含有量は1重量%以下である。その新鮮なベンゼン流のベンゼン含有量は典型的に約99.5重量%であり、エチルベンゼン含有量は0.5%未満であることに加えて、非芳香族およびトルエンの量は痕跡量のみである。ライン32に予熱器34を取り付けておくことで、新鮮なベンゼンと再循環ベンゼンで構成させたベンゼン流を、超臨界アルキル化反応を起こさせるに適した所望の温度になるまで加熱する。その供給流れを二方三位弁36そして注入ライン30に通して各々に所望のアルキル化用モレキュラーシーブ触媒が入っている直列連結した複数の触媒床を含んで成る並列の臨界相アルキル化反応槽38および38Aの片方または両方の上部に供給する。これらの反応槽をベンゼンが臨界相中に保持されるように平均温度で注入温度が好適には300−350℃の範囲内で圧力が約650から800psiaの条件下で操作する。この上に述べたように、セリウム助長ゼオライトベータは高温でも構造的一体性を有することから、アルキル化反応ゾーンを約500℃に及ぶ温度で操作することができ、約540℃の温度を超える温度でさえ操作可能である。
【0013】
図2に示した装置の通常操作では、1サイクルの操作の大部分の間、反応ゾーン38および38Aの両方をこれらの両方が同時に稼働中である並行様式の操作で操作してもよい。この場合には、弁36の構造配置を、ライン30の中の注入流れがおおよそ2分割されて両方の反応槽にほぼ等しい量で流れ込むような構造配置にする。触媒を再生させる目的で一方の反応槽を定期的に稼働状態から外してもよい。その場合には、弁36の構造配置を、ライン30を通って来る供給流れの全部が反応槽38に供給され得るような構造配置にし、その間に、反応槽38Aの中の触媒床を再生させ、そしてそれを逆にすることも可能である。その再生手順を以下に詳細に記述するが、その再生手順に要する時間は、通常は、その反応槽を並行アルキル化様式で操作している間の時間に比べて比較的短い。この再生手順を好適にはゼオライトベータ型の触媒を再生させる時に通常用いられる温度より実質的に高い温度で実施する。反応槽38Aの中の触媒床の再生が完了したならば、その時点で、その触媒を稼働状態に戻してもよく、そして適切な時点で、反応槽38を再生の目的で稼働状態から外してもよい。この様式の操作は個々の反応槽の操作を比較的低い空間速度で長時間行うことを伴うが、定期的に一方の反応槽を稼働状態から外した時には操作を空間速度を相対的に高くした高速で相対的に短時間行うことを伴う。例として、反応槽38および38Aの両方が稼働状態である通常の装置操作中には供給流れを各反応槽に空間速度が約25−45時−1LHSVになるように供給する。反応槽38Aを稼働状態から外しそして供給速度を継続して遅くしない時には、反応槽38への空間速度は約2倍になって50−90時−1LHSVになるであろう。反応槽38Aの再生が完了したならば、それを稼働状態に戻し、そして各反応槽への供給流れ速度である空間速度は低下して再び25−45時−1になり、この速度を、反応槽38を稼働状態から外す時点まで継続させ、稼働状態から外した時の反応槽38Aへの流量は勿論高くなり、その結果として、反応槽38への過渡的空間速度は再び約50−90時−1LHSVになる。
【0014】
好適な反応槽の構造配置を図3に詳細に示す。図3に示すように、反応槽38は、床A、B、C、CおよびEとして表示する直列連結した5個の触媒床を含んで成る。ベンゼン−エチレン供給流れを前記反応槽の上部に供給して床Aの中に入らせる。エチレン供給流れをライン39によって供給しそして比例分配用弁(proportionating valve)39a、39bおよび39cによってエチレンを適切に段間注入する。ベンゼンもまた二次的ベンゼン供給ライン41a、41bおよび41cのそれぞれで触媒段間に導入してもよい。理解されるであろうように、並列の反応槽38Aの構造配置も反応槽38に関して図3に示した分岐管(manifolding)と同様な分岐管を伴う構造配置である。
【0015】
図2に戻って、アルキル化反応槽38および38Aの片方または両方から出る流出流れを出口用二方三位弁44そして流出ライン45に通して2段式ベンゼン回収ゾーンに供給するが、前記2段式ベンゼン回収ゾーンは予備分溜塔47を1番目の段階として含んで成る。塔47の操作をベンゼンを含有する塔頂の軽質溜分がライン48によって加熱器34の注入側に供給されるように行うが、それはライン32の中でベンゼンと混ざり合った後、アルキル化反応槽注入ライン30に向かう。より重質な液状溜分(これはベンゼン、エチルベンゼンおよびポリエチルベンゼンを含有する)はライン50によってベンゼン分離ゾーンの2番目の段階52に供給される。段階47および52に持たせる形態は適切な任意形態の蒸留塔、典型的にはトレイ数が約20−60の塔の形態であってもよい。塔52から出る塔頂溜分が残りのベンゼンを含有しており、それをライン54によってアルキル化反応槽入り口に再循環させる。このように、ライン48および54は図1の流出ライン8に相当する。塔52から出る重質釜残溜分はライン56によってエチルベンゼン回収用の2番目の分離ゾーン58に供給される。塔58から出る塔頂溜分は比較的高純度のエチルベンゼンを含んで成り、これをライン60によって貯蔵槽または適切な任意の製品目的地に供給する。例として、そのエチルベンゼンは、スチレンをエチルベンゼンの脱水素で生産するスチレンプラントへの供給流れとして使用可能である。釜残溜分(これはポリエチルベンゼン、より重質な芳香族、例えばクメンおよびブチルベンゼンなどを含有していて、エチルベンゼンの量は一般に少量のみである)をライン61に通して3番目のポリエチルベンゼン分離ゾーン62に供給する。以下に記述するように、ライン61に比例分配用弁63を取り付け、この弁を用いて釜残溜分の一部をアルキル交換反応槽に直接転送してもよい。塔62の釜残溜分は残留物を含んで成り、これをライン64によって工程から取り出して、適切な任意様式で更に用いてもよい。塔62から出る塔頂溜分はポリアルキル化芳香族成分(これはジエチルベンゼンを含有しかつトリエチルベンゼンをより少ない量で含有しかつエチルベンゼンを少量含有する)を含んで成り、これを稼働中のアルキル交換反応ゾーンに供給する。この上にアルキル化反応に関して記述したのと同様に、並列のアルキル交換反応槽65および66への供給も弁67および68を伴う注入および流出用分岐管を通して行う。反応槽65および66の両方が並列様式の操作で稼働状態であるようにそれらを同時に稼働状態に置いてもよい。別法として、アルキル交換反応槽の一方のみを稼働状態にして、もう一方に再生操作を受けさせることで触媒床からコークスを焼失させてもよい。塔58の下部から回収されるエチルベンゼンの量を最小限にすることによって、アルキル交換用供給流れに含まれるエチルベンゼンの含有量を低く保つことができ、それによって、アルキル交換反応をエチルベンゼンが生じる方向に押しやることができる。塔62の塔頂から取り出されたポリエチルベンゼン溜分はライン69を通して供給された後、ライン70によって供給されるベンゼンと混ざり合う。次に、この混合物をライン71によってオンラインのアルキル交換反応槽65に供給する。ライン70に通して供給するベンゼン供給材料の水含有量を好適には比較的低くし、約0.05重量%以下にする。この水含有量を好適には約0.02重量%以下、より好適には0.01重量%以下、0.002重量%以下の濃度にまで低くする。そのアルキル交換反応槽をこの上に記述したようにして操作することで、このアルキル交換反応槽内のベンゼンとアルキル化ベンゼンを液相の状態に維持する。このアルキル交換反応槽の操作を典型的にはこのアルキル交換反応槽内の平均温度が約65−290℃で平均圧力が約600psiであるように行ってもよい。このアルキル交換反応槽内で用いる好適な触媒はゼオライトYである。ベンゼンとポリエチルベンゼンの重量比を少なくとも1:1にすべきであり、好適には1:1から4:1の範囲内にする。
【0016】
前記アルキル交換反応槽1基または2基以上から出る産物はベンゼンおよびエチルベンゼンを含有していてポリエチルベンゼンの量が低下しており、それをライン72に通して回収する。典型的には、示すように、ライン72を注入ライン47aと連結することで、それを予備分溜塔47に再循環させる。しかしながら、液相アルキル交換反応槽から出る流出液を蒸留塔47および52のいずれかまたは両方に供給してもよい。
【0017】
分離装置の操作に戻り、1つの様式の操作では、エチルベンゼン分離塔58から出る釜残溜分の全体を3番目の分離塔62に向かわせることに加えてこのゾーンから出る塔頂溜分をアルキル交換反応槽に向かわせる。この様式の操作では、アルキル交換反応槽内の触媒が触媒活性向上のための触媒再生と触媒再生の間で示す触媒寿命が相対的に長いと言った利点が得られる。本発明の別の様式の操作では、エチルベンゼン分離塔58から出る産物の一部を弁63に通してアルキル交換反応槽に直接供給することで前記利点を達成する。
【0018】
図2に示すように、2番目の分離ゾーン58から出る釜残溜分の一部が塔62を迂回して弁63そしてライン88によってアルキル交換反応槽65に直接供給されるようにする。前記エチルベンゼン塔から出る釜残溜分の2番目の部分を弁63そしてライン90に通して3番目の分離塔62に供給する。塔62の塔頂から出る溜分はライン88の中でその迂回して来た流出液と混ざり合い、その結果として生じた混合物はライン67によってアルキル交換反応槽に送り込まれる。この様式の操作では、塔58から出る釜残生成物がポリエチルベンゼン塔62を迂回してアルキル交換反応槽に実質的な量で直接送り込まれるようにすることができる。ライン88によってアルキル交換反応槽に直接供給する1番目の部分とライン90によってポリエチルベンゼンに最初に供給する2番目の部分の重量比を一般に約1:2から約2:1の範囲内にする。しかしながら、その相対量は1番目の部分と2番目の部分の重量比が約1:3から3:1の比率の範囲内であるようにより幅広く多様であり得る。
【0019】
前記臨界相アルキル化反応槽で用いるモレキュラーシーブ触媒はゼオライトベータ触媒であり、これは、以下に記述するようにセリウムを含有させることによる修飾を受けさせておいた通常のゼオライトベータであってもよい。そのようなセリウム助長ゼオライトベータ触媒を通常は結合剤、例えばシリカまたはアルミナなどを用いて大きさが約1/8インチ以下の押出し加工ペレットの状態に成形する。好適な形態の結合剤はシリカであり、それを用いると、結果として、通常のアルミナである結合剤を用いてゼオライトベータを成形した時に比べて失活および再生特徴がいくらか向上した触媒がもたらされる。典型的な触媒配合は結合剤含有量が約20重量%でモレキュラーシーブ含有量が約80重量%の配合であり得る。前記アルキル交換反応槽で用いる触媒に持たせる形態は、通常、ゼオライトY触媒、例えばゼオライトYまたは超安定性ゼオライトYなどの形態であってもよい。Y型およびベータ型のいろいろなゼオライトは本質的に本技術分野で良く知られている。例えば、ゼオライトYはWardの米国特許第4,185,040号に開示されており、そしてゼオライトベータはWadlingerの米国特許第3,308,069号およびCalvert他の米国特許第4,642,226号に開示されている。
【0020】
前記臨界相アルキル化反応槽で用いるセリウム助長ゼオライトベータは、WadlingerまたはCalvertが記述した種類のゼオライトベータの結晶骨格の中にセリウムを入り込ませることによる修飾を受けさせておいたものであってもよい。本発明で用いるセリウム助長ゼオライトベータは、以下に詳細に記述するように、シリカ/アルミナ比が高いゼオライトベータまたはZSM−12による修飾を受けさせておいたゼオライトベータが基にしたものであってもよい。
【0021】
ゼオライトベータの基本的な製造手順は本分野の技術者に良く知られている。そのような手順は上述したWadlinger他の米国特許第3,308,069号およびCalvert他の米国特許第4,642,226号そしてReubenのヨーロッパ特許公開番号159,846に開示されており、それらの開示は引用することによって本明細書に組み入れられる。ナトリウム含有量が低く、即ちNaOとして表して0.2重量%未満のゼオライトベータを生じさせることができ、そしてそれにイオン交換処理を受けさせることでナトリウム含有量を更に低くして約0.02重量%の値にまですることができる。
【0022】
この上で引用したWadlinger他およびCalvert他の米国特許に開示されているように、シリカ、アルミナ、ナトリウムまたは他のアルカリ金属の酸化物および有機鋳型剤(templating agent)を含んで成る反応混合物に熱水分解(hydrothermal digestion)を受けさせることでゼオライトベータを生じさせることができる。典型的な分解条件には、水が大気圧下で示す沸点より若干低い温度から約170℃の範囲の温度において水がその必要な温度で示す蒸気圧に等しいか或はそれより高い圧力下が含まれる。その反応混合物に穏やかな撹拌を約1日から数カ月間の範囲の期間受けさせて所望度合の結晶度を達成することでゼオライトベータを生じさせる。アルミナ含有量を最小限にする段階を設けない限り、その結果として生じるゼオライトベータは一般にアルミナに対するシリカのモル比(SiO/Alとして表す)が約20から50の範囲であることを特徴とする。
【0023】
次に、そのゼオライトベータにアンモニウムイオンによるイオン交換をpHを制御しないで受けさせる。無機アンモニウム塩、例えば硝酸アンモニウムなどの水溶液をイオン交換用媒体として用いるのが好適である。そのアンモニウムによるイオン交換処理を受けさせた後のゼオライトベータを濾過し、洗浄し、乾燥させた後、それに焼成を約530℃から580℃の範囲の温度で2時間以上受けさせる。
【0024】
ゼオライトベータは、これの結晶構造が対称的であることとx線回折パターンで特徴付け可能である。ゼオライトベータは孔径中央値が約5−6オングストロームのモレキュラーシーブであり、これは12環経路システム(12−ring channel systems)を含有する。ゼオライトベータは正方対称P422、a=12.7、c=26.4Åを有し(W.M.MeierおよびD.H.Olson Butterworth、「Atlas of Zeolite Structure Types」、Heinemann、1992、58頁)、ZSM−12は一般に単斜対称を有することで特徴づけられる。ゼオライトベータが有する孔は、一般に、001面に沿って直径が約5.5オングストロームの円形でありかつ100面に沿って直径が約6.5および7.6オングストロームの楕円形である。ゼオライトベータは更にHiggins他、「The framework topology of zeolite beta」、Zeolites、1988、8巻、11月、446−452頁(これの開示は全体が引用することによって本明細書に組み入れられる)にも記述されている。
【0025】
本発明の実施で用いるセリウム助長ゼオライトベータは、通常のゼオライトベータ、例えば上述したCalvert他の特許に開示されている如き通常のゼオライトベータなどが基になったものであってもよい。本発明に従って用いるに有用なゼオライトベータを生じさせる手順のさらなる記述に関しては、上述したWadlingerの特許第3,308,069号、Calvert他の特許第4,642,226号およびGhoshの特許第5,907,073号そしてShamshoumのヨーロッパ特許公開番号507,761(これらの開示は全体が引用することによって本明細書に組み入れられる)を参照のこと。
【0026】
本発明は、また、シリカ/アルミナ比が通常見られる比率よりも高いゼオライトベータを用いることでも実施可能である。例えば、Kennedyのヨーロッパ特許公開番号186,447に開示されているように、焼成を受けさせておいたゼオライトベータに蒸気処理による脱アルミニウムを受けさせることでゼオライトのシリカ/アルミナ比を高くすることができる。従って、Kennedyが開示したように、焼成を受けさせておいたシリカ/アルミナ比が30:1のゼオライトベータに100%の蒸気を用いた蒸気処理を大気圧下650℃で24時間受けさせた。その結果としてシリカ/アルミナ比が約228:1の触媒がもたらされ、その後、それに酸洗浄工程を受けさせることで250:1のゼオライトベータを生じさせた。硝酸による抽出でアルミニウムをベータゼオライトの構造から抽出する目的でいろいろなゼオライトベータ、例えばこの上に記述した如きゼオライトベータに抽出手順を受けさせることができる。最初に、前記ゼオライトベータの酸洗浄を実施してシリカ/アルミナ比が高いゼオライトベータに到達させる。その後にイオン交換を実施してセリウムをゼオライト構造の中に入り込ませる。セリウムがゼオライトから取り除かれることがないように、その後に酸洗浄を実施すべきではない。
【0027】
本発明で用いるセリウム助長ゼオライトベータを製造する時、ランタンをゼオライトベータの中に取り込ませる目的でShamshoum他がEP 507,761に開示した手順を用いることができる。このように、ランタンをイオン交換によってゼオライトベータの中に取り込ませる目的で、EP 507,761に開示されたプロトコルに従い、硝酸セリウムを脱イオン水に溶解させた後、ゼオライトベータを脱イオン水に入れることで生じさせておいた懸濁液に加える。次に、イオン交換手順を実施した後、セリウムによる交換を受けたゼオライトベータを溶液から濾過し、脱イオン水で洗浄した後、110℃の温度で乾燥させてもよい。次に、そのセリウム交換ゼオライトベータを粉末状にしてアルミニウムまたはケイ素系の結合剤と一緒にして成形した後、押出し加工でペレット形態にしてもよい。
【0028】
本発明に関して実施した実験研究では、1段式アルキル化反応槽を用いてアルキル化反応槽実験を実施した。図3に示す種類の多段式反応槽の1段のみを実験室で模擬するとしてこの反応槽を操作した。この実験研究の実施では、シリカ/アルミナ比が150でセリウム/アルミニウム原子比が0.75のセリウム助長ゼオライトベータを用いた。シリカである結合剤を用いて、この触媒の成形を行った。比較実験研究の実施では、シリカ/アルミナ比がまた150でランタン/アルミニウム原子比が1.0のランタン助長ゼオライトベータ触媒をシリカである結合剤と一緒に配合したものを用いた。
【0029】
そのようなセリウム助長ゼオライトベータをアルキル化反応槽で140日を超える全累積時間の間にそれに5回の再生を受けさせることを通して用いた。この連続実験の全体に渡って、反応槽入り口の温度を約300℃±5℃にしそして反応槽出口の所の温度は約350℃±10℃であり、その結果として、この反応槽を横切る増分的温度上昇は約40−50℃であった。この反応槽を約600 PSIGの入り口圧力で操作し、この反応槽を横切る圧力勾配は1平方インチ当たり数ポンドのみであった。
【0030】
ランタン助長ゼオライトベータを約55日間の試験実験で用い、20日間が経過した時点で触媒に再生をオンラインで受けさせた。そのランタン助長ゼオライトベータのシリカ/アルミナ比は150でランタン/アルミニウム原子比は1.0であった。
【0031】
前記セリウムベータ触媒を用いて実施した実験研究の結果を図4−11に示す。最初に図4を参照して、接触作用反応で利用される床のパーセントを縦軸にプロットして、それを横軸にプロットした全累積稼働日数と対比させた。反応槽の入り口から出口に向かって間隔を置いて位置させた6個の温度検出器の使用によって床を横切って検出された最大温度を基にして触媒床のパーセントを計算した。床を横切る温度検出器の所で検出された最大温度を基にして床の利用パーセントを計算した。図4中の曲線101は、最初の約64日の期間に新鮮な触媒を用いている間に利用された床のパーセントを示している。曲線102、103、104、105および106は、当該触媒に逐次的再生を受けさせた後に得た結果を示している。曲線106は、図6に関して以下により詳細に記述する如き高温再生手順による再生を受けさせた後の触媒に関して得た結果を示している。
【0032】
図5に、触媒作用反応で利用された触媒床を稼働日数の関数として示し、曲線108で表す新鮮なセリウムベータ触媒の触媒床利用率(図4中の曲線101に相当する)を曲線109で表すランタンベータを用いた場合に得た結果と対比させた。曲線109は新鮮な触媒を用いた場合の結果(109a)そして逐次的に再生を受けさせたランタン助長ベータ触媒の場合の結果(曲線109b、109c、109c、109dおよび109eで示す)を示している。曲線108と109を比較することで分かるであろうように、セリウム助長ゼオライトベータが示す安定性の方がランタンベータが示すそれよりも一連の逐次的再生全体に関して長期間に渡ってずっと高かった。
【0033】
図6に、新鮮な触媒および各再生を受けさせた後の触媒に関する床の利用パーセント(縦軸にプロット)を実験時間および日数(横軸にプロット)に対比させて示す。各場合とも、新鮮な触媒を用いて開始した後に経過した日数そして各再生後に開始した後に経過した日数を示す。図6中の曲線111および112は、新鮮な触媒(曲線111)および最後の再生を高温条件下で実施することを伴う5回の再生を受けさせた後の触媒の場合の線形プロット(曲線112)である。図6に示したデータを見ることで明らかであろうように、最大温度が約475℃の通常の温度条件下で再生を受けさせた後のセリウム助長ゼオライトベータは非常に速く失活した。しかしながら、その触媒に再生を本発明に従って最大温度が約530℃である高温条件下で受けさせると、そのような触媒が示す失活速度は一般に新鮮な触媒の場合に観察した触媒失活速度に相当していた。
【0034】
図7に、前記セリウム助長ゼオライトベータを用いた場合のエチルベンゼン収率、即ちEB(変換パーセントで表す)(縦軸にプロット)を全累積稼働日数に対比させて示す。稼働日数と図4に示した再生データが相互に関係し得ることを認識することができるであろう。このように、新鮮な触媒は、この新鮮な触媒を用いて実施した64日間の実験に渡って、本質的に一定のエチルベンゼン変換率を示した。55日、56日および57日目のエチルベンゼン変換率が約9%であることを示す異常な結果は、不注意に反応槽を停止させたことと相互に関係している。
【0035】
図8に、最初の130日間の実験の間のプロピルベンゼン、ブチルベンゼンおよび重質成分である副生成物の生成量、即ちBP(エチルベンゼンを基準)[縦軸にプロットし、ppm(parts per million)でプロットした]を全累積稼働日数に対比させて示す。分かるであろうように、130日間の実験時間全体に渡ってブチルベンゼンの生成量は1000ppm未満であり、プロピルベンゼンの生成量は500ppm未満であった。重質物の生成量は約5000ppmから約2000ppmまたは若干少ない量に渡って多様であった。以下に考察するように、このような値はランタン助長ゼオライトベータを用いた時に実測した相当する値よりも実質的に良好であった。
【0036】
セリウム助長ベータを用いた時およびランタン助長ベータを用いた時のプロピルベンゼンおよびブチルベンゼンに関する累積結果を図9に示す。図9は、その示した副生成物(ppm)(エチルベンゼンを基準)(縦軸にプロット)を稼働日数(横軸にプロット)に対比させて示す図である。図10に、セリウムベータを用いた時およびランタンベータを用いた時の重質物に関する相当するデータを示す。図9および10に示したデータを見ることで明らかであろうように、セリウムベータであるアルキル化用触媒を用いた時の副生成物生成量は、ランタン助長ベータを用いた場合に比べて、3分類の各々に関して実質的に低いことが分かった。具体的には、セリウム助長ゼオライトベータを用いた超臨界相アルキル化中に生じるプロピルベンゼンとブチルベンゼンの複合副生成物生成量はランタン助長ゼオライトベータを用いた時に実測したプロピルベンゼンおよびブチルベンゼンの相当する副生成物生成量の半分以下であった。
【0037】
図11に、縦軸にプロットしたトリエチルベンゼン(TEB)生成量(ppm)(エチルベンゼンを基準)を横軸にプロットした稼働時間および日数に対比させて示す。セリウムベータ触媒を用いた時のデータを新鮮な触媒を用いて実施した最初の52日間の実験に関してプロットした。ランタンベータゼオライトに関するデータは、ランタンベータに一連の再生を受けさせた後の結果を示している。図9、10および11を見ることで明らかであろうように、セリウム助長ベータの方がランタン助長ベータよりも重質物副生成物生成量の意味で実質的に向上した特性を示すが、セリウムベータの場合にはトリエチルベンゼン生成量がある程度ではあるが高くなることが犠牲になる。
【0038】
本発明の具体的な態様を記述してきたが、それの修飾形が本分野の技術者に思い浮かぶ可能性がありそして添付請求の範囲の範囲内に入る如きそのような修飾形の全部を保護することを意図することは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明を具体化するアルキル化/アルキル交換方法の理想的図式ブロック図である。
【図2】図2は、並列に連結させた個別のアルキル化反応槽およびアルキル交換反応槽に成分の分離および再循環を行う目的で中間的多段式回収ゾーンを組み込んだ本発明の好適な態様の図式図である。
【図3】図3は、供給材料成分の段間注入を伴う直列連結した複数の触媒床を含んで成るアルキル化反応の図式図である。
【図4】図4は、セリウムによる修飾を受けさせたゼオライトベータを用いてアルキル化反応を実施した時の床の利用パーセントを稼働日数に対比させて示すグラフである。
【図5】図5は、セリウムによる修飾を受けさせたゼオライトベータおよびランタンによる修飾を受けさせたゼオライトベータの両方に関する床の利用パーセントを示すグラフである。
【図6】図6は、セリウムによる修飾を受けさせたゼオライトベータを新鮮な触媒として用いた時および再生触媒として用いた時の床の利用パーセントを示すグラフである。
【図7】図7は、セリウムによる修飾を受けさせたゼオライトベータを用いた時のエチルベンゼン収率を稼働日数に対比させて示すグラフである。
【図8】図8は、セリウムによる修飾を受けさせたゼオライトベータを用いた時の副生成物生成量を稼働日数に対比させて示すグラフである。
【図9】図9は、セリウムによる修飾を受けさせたゼオライトベータを用いた時およびランタンによる修飾を受けさせたゼオライトベータを用いた時の累積副生成物生成量を示すグラフである。
【図10】図10は、セリウムによる修飾を受けさせたゼオライトベータを用いた時およびランタンによる修飾を受けさせたゼオライトベータを用いた時の重質副生成物生成量を示すグラフである。
【図11】図11は、セリウムによる修飾を受けさせたゼオライトベータを用いた時およびランタンによる修飾を受けさせたゼオライトベータを用いた時のトリエチルベンゼンの生成量を稼働日数に対比させて示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチルベンゼンの製造方法であって、
(a)ベンゼンを含有する芳香族供給原料を反応ゾーンの中に供給して前記反応ゾーンの中に入っていてセリウムをセリウム/アルミニウムの原子比が0.25−5.0の範囲内になる量で含有するセリウム助長ゼオライトベータモレキュラーシーブであるアルキル化用触媒と接触させ、
(b)前記反応ゾーンにエチレンをベンゼン/エチレンのモル比が1−15の範囲内になる量で供給し、
(c)前記反応ゾーンをベンゼンが超臨界相中に存在する温度および圧力条件で操作して前記ベンゼンにエチル化を前記アルキル化用ゼオライトベータ触媒の存在下で受けさせることでエチルベンゼンを主生成物として含有するアルキル化生成物を生じさせるが、それに付随してより重質のアルキル化副生成物が主要でない量で生じ、
(d)前記アルキル化生成物を前記反応ゾーンから回収する、
ことを含んで成る方法。
【請求項2】
前記エチレンに対するベンゼンのモル比を10未満にする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記エチレンに対するベンゼンのモル比を3−8の範囲内にする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ゼオライトベータが50−150の範囲内のシリカ/アルミナモル比を有する請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記ゼオライトベータが0.5−1.5の範囲内のセリウム−アルミニウム原子比を有する請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記アルキル化ゾーンをプロピルベンゼンとブチルベンゼンの複合副生成物生成量がランタンによる助長を前記セリウム助長ゼオライトベータ触媒のセリウム/アルミニウム原子比と少なくとも等しいランタン/アルミニウム原子比になるように受けているゼオライトベータを同じ温度および圧力条件下で用いた場合のプロピルベンゼンとブチルベンゼンの相当する複合副生成物生成量より低くなるような温度および圧力条件下で操作する請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記アルキル化反応ゾーンをプロピルベンゼンとブチルベンゼンの複合副生成物生成量がランタンによる助長を前記触媒のセリウム/アルミニウム原子比と少なくとも等しいランタン/アルミニウム原子比になるように受けているゼオライトベータ触媒を同じ温度および圧力条件下で用いた場合のプロピルベンゼンとブチルベンゼンの相当する副生成物生成量の半分以下になるような温度および圧力条件下で操作する請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記反応ゾーンへの前記芳香族供給原料およびエチレンの供給を停止した後に酸素含有気体を前記反応ゾーンに前記反応ゾーン内の再生温度が少なくとも500℃になるように注入することを伴う再生手順によって前記セリウム助長ゼオライトベータを前記反応ゾーン内で再生させそしてその後に請求項1記載のエチルベンゼン製造で前記芳香族供給原料およびエチレンの供給を再開することを更に含んで成る請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記再生手順を最大温度が約515−550℃の範囲内になるように実施する請求項6記載の方法。
【請求項10】
失活したセリウム助長ゼオライトベータ触媒を再生させる方法であって、
(a)失活したセリウム助長ゼオライトベータが入っている触媒床に酸素を含有しない不活性な再生用気体を前記触媒床の中のベンゼンが激減するに充分な高温で注入し、
(b)酸素を前記再生用気体の中に混合して前記再生用気体の酸素含有量を徐々に高くすることで前記触媒床の温度を徐々に上昇させ、
(c)その後、酸素を含有しない不活性な再生用気体を前記触媒床の中にパラグラフ(a)に示した温度より高い温度で注入し、
(d)酸素を含有する前記再生用気体の導入を前記触媒床の中の触媒の温度が少なくとも500℃のレベルに到達するまで継続し、そして
(e)その後、前記触媒床の中の前記セリウム助長ゼオライトベータを冷却する、
ことを含んで成る方法。
【請求項11】
パラグラフ(c)が終了した時の増分的温度上昇がパラグラフ(a)に示した温度より少なくとも50−100℃高くなる増分的温度上昇である請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記再生手順を最大温度が515−550℃の範囲内になるように実施する請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記酸素を含有しない不活性な再生用気体を前記触媒床の中に途中に酸素を前記再生用気体の中に注入することを伴う少なくとも3サイクルの操作で導入する請求項10記載の方法。
【請求項14】
エチルベンゼンの製造方法であって、
(a)セリウム助長ゼオライトベータである芳香族アルキル化用触媒が入っているアルキル化反応ゾーンを準備し、
(b)ベンゼンを芳香族含有量の少なくとも90%の量で含有しかつエチレンを含有する供給原料を前記アルキル化反応ゾーンに供給し、
(c)前記アルキル化反応ゾーンをベンゼンが超臨界相中に存在する温度および圧力条件で操作して前記ベンゼンにエチル化を前記セリウム助長ゼオライトベータであるアルキル化用触媒の存在下で受けさせることでベンゼンとエチルベンゼンとポリエチルベンゼンの混合物を含んで成るアルキル化生成物を生じさせ、
(d)前記アルキル化生成物を前記アルキル化反応ゾーンから回収しそして前記生成物を前記アルキル化反応ゾーンから回収ゾーンに供給することでエチルベンゼンを前記アルキル化生成物から分離回収しかつジエチルベンゼンを包含するポリアルキル化芳香族成分を分離回収し、
(e)前記ポリアルキル化芳香族成分の中のジエチルベンゼンを包含する前記ポリアルキル化芳香族成分の少なくとも一部をアルキル交換用モレキュラーシーブ触媒が入っているアルキル交換反応ゾーンに供給し、
(f)前記アルキル交換反応ゾーンにベンゼンを供給し、そして
(g)前記アルキル交換反応ゾーンを前記ポリアルキル化芳香族画分が不均化を起こすことでジエチルベンゼン含有量が低下しかつエチルベンゼン含有量が上昇した不均化生成物が生じるのを促す温度および圧力条件下で操作する、
ことを含んで成る方法。
【請求項15】
前記セリウム助長ゼオライトベータであるアルキル化用触媒が50−150の範囲内のシリカ/アルミナモル比を有する請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記触媒が0.25−1.25の範囲内のセリウム/アルミニウム原子比を有する請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記アルキル交換反応ゾーンの中に入っている前記アルキル交換用モレキュラーシーブ触媒が前記アルキル化反応ゾーンの中に入っている前記セリウム助長ゼオライトベータが有する有効孔径に等しいか或はそれより大きい有効孔径を有する中間的孔径のモレキュラーシーブである請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記アルキル交換反応ゾーンにアルキル交換用ゼオライトY触媒を入れておきそしてそれを前記アルキル交換ゾーンに供給される前記ポリアルキル化芳香族成分が液相中に保持されるに有効な温度および圧力条件下で操作する請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記セリウム助長ゼオライトベータをシリカである結合剤と一緒にして成形しておく請求項14記載の方法。
【請求項20】
前記アルキル化ゾーンをプロピルベンゼンとブチルベンゼンの複合副生成物生成量がランタンによる助長を前記セリウム助長ゼオライトベータ触媒のセリウム/アルミニウム原子比と少なくとも等しいランタン/アルミニウム原子比になるように受けているゼオライトベータを同じ温度および圧力条件下で用いた場合のプロピルベンゼンとブチルベンゼンの相当する複合副生成物生成量より低くなるような温度および圧力条件下で操作する請求項14記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2006−502216(P2006−502216A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543027(P2004−543027)
【出願日】平成15年9月25日(2003.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2003/030401
【国際公開番号】WO2004/033395
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(505046112)フイナ・テクノロジー・インコーポレーテツド (9)
【Fターム(参考)】