説明

自動クリーニング親水性コーティングを持つ電気光学装置

【課題】エレクトロクロミックミラーで使用するのに適した親水性コーティングを提供する。
【解決手段】反射率が印加電圧に応じて変化するエレクトロクロミックミラーエレメント(124)を備えており、このエレクトロクロミックミラーエレメントは第1の透明な基材(112)を有しており、第1の透明な基材の前面はエレクトロクロミックミラーエレメントの前面として作用する。更に、エレクトロクロミックミラーエレメントの前面には光触媒層を有する親水性光学コーティング(130)が付着されている。第1の基材の表面には色補償及び色抑制コーティング(131)が配置されている。この色補償及び色抑制コーティングは、第1の基材の屈折率と光触媒層の屈折率との中間の平均屈折率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として電気光学装置に関し、更に詳細には車輛のバックミラーに関する。
【背景技術】
【0002】
車輛のウィンドウから水滴及びミストを容易に除去できるようにするため、ウィンドウは、代表的には、疎水性材料でコーティングされ、この材料により水滴をウィンドウ外面上でビード状に盛り上げる。次いで、これらの水ビードをフロントガラス用ワイパーで払拭するか或いは車輛の移動時にウィンドウから吹き飛ばす。
【0003】
外部バックミラーから水をなくすことが同様に望ましい。しかしながら、疎水性コーティングを外部ミラーに適用した場合、これらのミラーの表面上に形成された水ビードを効果的に吹き飛ばすことはできない。これは、このようなミラーが、車輛の移動により生じる直接的な気流から比較的シールドされているためである。かくして、ミラーの表面上に形成される水滴又はビードは、蒸発するまで或いは自重で落下する大きさになるまで、ミラー上に残る。これらの水滴は小レンズとして作用し、運転者に反射される画像を歪める。更に、水滴が蒸発すると、ミラーに水の跡が残り、これらの水跡は、跡を残した液滴とほぼ同様に乱す。霧が出ている場合や湿度が高い場合には、外部ミラーの表面上にミストが形成される。この様なミストは、ミラーを実際上使用不能にする程濃くなる場合がある。
【0004】
上述の問題点を解決する試みにおいて、ミラー製造者は、外部ミラーの外面上に親水性コーティングを設けた。米国特許第5,594,585号を参照されたい。一つのこのような親水性コーティングは、単一の二酸化珪素(SiO2 )層を含む。SiO2 層は、比較的多孔質である。ミラー上の水は、ミラーの表面に亘ってSiO2 層の穴内に均等に吸収された後、水跡を残すことなく蒸発する。このようなSiO2 の単層コーティングと関連した一つの問題点は、オイル、グリス、及び他の汚染物がSiO2 層の穴を塞いでしまうことがあるということである。多くのこのような汚染物、特にオイルやグリス等の炭化水素は容易には蒸発せず、及び従って、SiO2 層の穴を塞いでしまう。SiO2 層の穴がカーワックス、オイル、及びグリスで詰まると、ミラー表面が疎水性になり、及び従って、ミラー上の水は、上述の問題点を引き起こすビードになり易い。
【0005】
親水性層に関する上述の問題点に対する解決策は、二酸化チタニウム(TiO2 )の比較的厚い層(例えば約1000−3000Å又はそれ以上)のコーティングを形成することである。欧州特許出願第816 466 A1号を参照されたい。このコーティングは、紫外線(UV)に露呈したとき、光触媒特性を示す。更に詳細には、コーティングは、UV光子を吸収し、水が存在する状態で、穴内又は表面上の有機材料を酸化する高度に反応性のヒドロキシルラジカルを発生する。従って、ミラーに付着したオイルやグリス等の炭化水素を二酸化炭素(CO2 )に変換し、及び従って、最終的に、紫外線が当たるミラー表面から除去する。かくして、この特定のコーティングは、自動クリーニング親水性コーティングである。
【0006】
特定のコーティングの親水性を計測するための一つの方法は、水滴の側部がコーティングの表面と形成する接触角度を計測することである。接触角度が約30°以下の場合に十分なレベルの親水性が存在し、更に好ましくは約20°以下であり、最も好ましくは約10°以下である。上述の自動クリーニング親水性コーティングの接触角度は、紫外線に露呈されたとき、コーティングの自動クリーニング作用及び親水性効果によって減少する。しかしながら、このコーティングの親水性効果は、ミラーが紫外線に露呈されていないとき経時的に逆転する傾向がある。
【0007】
上述の自動クリーニング親水性コーティングは、約150Å乃至1000ÅのSiO2 の薄膜を比較的厚いTiO2 層の上に設けることによって改善できる。米国特許第5,854,708号を参照されたい。これは、必要な紫外線照射量を減少することによって、及びミラーの親水性を紫外線に露呈されなくなった後に長期間に亘って維持することによって、TiO2 層の自動クリーニング性を高めるものと考えられる。
【0008】
上述の親水性コーティングは、ガラス基材の後面にクロム層又は銀層を持つ従来のバックミラーで良好に作用するけれども、幾つかの理由により、エレクトロクロミックミラー等の可変反射率ミラーで使用することは考えられていない。第1の理由は、上述の親水性コーティングの多くは、色の付いた二重画像を導入し、可変反射率ミラーの低端(low−end)反射率を高めるということである。例えば、低端反射率が約10%で高端反射率が約50%乃至65%の商業的に入手可能な外側エレクトロクロミックミラーが存在する。屈折率が高いTiO2 等の材料を含む親水性コーティングをミラーのガラス面上に設けることによって、ミラーの反射率のレベルに拘わらず、ガラス/TiO2 層界面のところで大量の入射光が反射される。低端反射率がこれに従って増大する。このような高い低端反射率は、明らかに、ミラーが示す可変反射率の範囲を大幅に減少し、及びかくして後方の車輛のヘッドライトからの不快なぎらつきを減少する上でのミラーの有効性を減少する。
【0009】
高い低端反射率でよいか或いはこれが望ましい用途でも従来の親水性コーティングを多くの電気光学エレメントで使用することが考えられてこなかった別の理由は、これらの親水性コーティングが顕著な着色の問題を与えることである。1000ÅのTiO2 層を150ÅのSiO2 で覆ったコーティングは非常に紫の色合いを呈する。クロムや銀をガラスエレメントの後面に付けた従来のミラーで使用する場合、このような着色は、高反射率のクロム層や銀層によって効果的に減少できる。これは、高反射率層からのカラーニュートラル(color neutral)反射が低反射率の親水性コーティング層の着色を圧倒するためである。しかしながら、エレクトロクロミックエレメント上で使用する場合には、このような親水性コーティングは非常に不快な着色を加え、これは、色を導入するエレクトロクロミックエレメントの他の構成要素によって更に悪化する。
【0010】
多くの電気光学エレメントで従来技術のコーティングが使用されてこなかった別の理由は薄霧である。この薄霧は、SiO2 等の結合媒体にTiO2 を分散させることによって形成した親水性コーティングで特に明らかである。二酸化チタニウム粒子は屈折率が高く、散乱光で非常に有効である。このような第1表面親水性コーティングによって散乱される光の量は、従来のミラーで反射された光全体に対して小さい。しかしながら、低反射率状態の電気光学ミラーでは、光の大部分が第1表面から反射され、散乱光の全反射光に対する比は遙かに大きく、ひどく曇った少なくとも一つの明瞭でない反射画像を発生する。
【0011】
エレクトロクロミックミラー上にTiO2 製の親水性コーティングを設けることと関連した問題点のため、このようなミラーの製作者は、このような親水性コーティングを使用しないと決めた。その結果、エレクトロクロミックミラーには、水滴及びミストにより生じる上述の悪い結果が起こる。
【特許文献1】米国特許第5,594,585号明細書
【特許文献2】欧州特許出願第816 466 A1号明細書
【特許文献3】米国特許第5,854,708号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の特徴は、電気光学装置で使用するのに適した、特にエレクトロクロミックミラーで使用するのに適した親水性コーティングを提供することによって上述の問題点を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの及び他の特徴及び利点を得るため、本発明によるバックミラーは、少なくとも高反射率状態及び低反射率状態を示すように、反射率が印加電圧に応じて変化するエレクトロクロミックミラーエレメントを備えている。このエレクトロクロミックミラーエレメントは第1の透明な基材を有しており、第1の透明な基材の前面はエレクトロクロミックミラーエレメントの前面として作用する。更に、エレクトロクロミックミラーエレメントの前面には光触媒性の親水性光学コーティングであって光触媒層を有する親水性光学コーティングが付着されている。また、第1の基材の表面には色補償及び色抑制を行うコーティングが付着されている。この色補償及び色抑制を行うコーティングは、第1の基材の屈折率と光触媒層の屈折率との中間の平均屈折率を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるバックミラーは、好ましくは、低反射率状態で20%以下の反射率を示すことが可能であり、更に、高反射率状態及び前記低反射率状態の両方で実質的にカラーニュトラリティを示し且つ実質的に曇りがないように、高反射率状態及び前記低反射率状態の両方で約25以下のC*値を示すことができる。
【0015】
当業者は、以下の説明、特許請求の範囲、及び添付図面を参照することにより、本発明のこれらの及び他の特徴、利点、及び目的を更によく理解するであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の現在の好ましい実施例を詳細に参照する。これらの実施例の幾つかの例が添付図面に示してある。同じ又は同様の部品に言及する上で、添付図面に亘って可能な限り同じ参照番号を使用する。
【0017】
図1は、本発明に従って形成した外部バックミラーアッセンブリ10を示す。図示のように、ミラーアッセンブリ10は、全体として、ハウジング15及びこのハウジング15内に移動自在に取り付けられたミラー20を含む。ハウジング15は、アッセンブリ10を車輛外部に取り付けるのに適した任意の従来の構造を備えているのがよい。
【0018】
図2は、ミラー20の第1実施例の例示の構造を示す。本明細書中に広義で説明したように、ミラー20は、印加された電圧に応じて反射性が変化する反射エレメント100、及びこの反射エレメント100の前面112aに付着させた光学コーティング130を含む。反射エレメント100は、好ましくは、第1(前)エレメント112及び第2(後)エレメント114を含み、これらのエレメントは間隔が隔てられた関係で密封をなして結合されており、チャンバを画成する。前エレメント112は前面112a及び後面112bを有し、後エレメント114は前面114a及び後面114bを有する。更に参照する目的のため、前エレメント112の前面112aを反射エレメント100の第1表面と呼び、前エレメント112の後面112bを反射エレメント100の第2表面と呼び、前エレメント114の前面114aを反射エレメント100の第3表面と呼び、前エレメント114の後面114bを反射エレメント100の第4表面と呼ぶ。好ましくは、両エレメント112及び114は透明であり、シール部材116によって密封をなして結合されている。
【0019】
反射エレメント100は、更に、第2表面112b及び第3表面114aのうちの一方に設けられた透明な第1電極118、及び第2表面112b及び第3表面114aのうちの一方に設けられた透明な第2電極120を含む。第1電極118は一つ又はそれ以上の層を含むのがよく、色抑制コーティングとして機能するのがよい。第2電極120は、反射性又はトランスフレクティブであるのがよく、或いは別体の反射器122をミラー100の第4表面に設けるのがよい。この場合、電極120は透明である。しかしながら、好ましくは、第2電極が反射性又はトランスフレクティブであり、参照番号122を附した層が不透明な層であるか或いはこの層を完全になくす。好ましくは、反射エレメント100は、第1及び第2の電極118及び120と電気的に接触したチャンバ内にエレクトロクロミック媒体124を更に含む。
【0020】
エレクトロクロミック媒体124は、エレクトロクロミック陽極材料及びエレクトロクロミック陰極材料を含み、これらの材料は以下に列挙するカテゴリーにグループ分けできる。即ち、
(i)単層−エレクトロクロミック媒体は小さな非均質領域を含む単一の材料層であり、材料が溶液中にイオン電導性電解質の形態で含まれ、電気化学的に酸化又は還元された場合に溶液中に電解質の形態でとどまる溶液相装置を含む。溶液相電気活性材料が、「改良エレクトロクロミック層及びこれを含む装置」という標題の米国特許第5,928,572号、又は「エレクトロクロミック固体ポリマーフィルム、このような固体フィルムを使用するエレクトロクロミック装置の製造、及びこのような固体フィルムを製造するためのプロセス及び装置」という標題の国際特許出願第PCT/US98/05570の教示に従って架橋ポリマー母材の溶液分散相に含まれている。
【0021】
「予め選択された色を生じることができるエレクトロクロミック媒体」という標題の米国特許第6,020,987号に記載されているように、少なくとも二つがエレクトロクロミックである少なくとも三つの電気活性材料を組み合わせて予め選択された色を提供できる。
【0022】
陽極材料及び陰極材料は、「エレクトロクロミックシステム」という標題の国際特許出願第PCT/WO97/EP498に記載されているように、ブリッジングユニットによって組み合わせることができ、即ちリンクさせることができる。陽極材料又は陰極材料を同様の方法でリンクさせることもできる。これらの出願に記載された概念を組み合わせ、リンクした様々なエレクトロクロミック材料を提供できる。
【0023】
更に、単層媒体は、「エレクトロクロミックポリマーシステム」という標題の国際特許出願第PCT/WO98/EP3862又は「エレクトロクロミック固体ポリマーフィルム、このような固体フィルムを使用するエレクトロクロミック装置の製造、及びこのような固体フィルムを製造するためのプロセス及び装置」という標題の国際特許出願第PCT/US98/05570に記載されているように、陽極材料及び陰極材料をポリマー母材に組み込むことができる媒体を含む。
【0024】
例えば付着システム等の装置の作動中に一つ又はそれ以上の含有材料が相変化を受ける媒体もまた含まれ、この場合、材料は、電気化学的に酸化又は還元したときに導電性電極上に層又は部分層を形成するイオン電導性電解質の形態で溶液中に含まれる。
(ii)多層−媒体は多数の層をなして形成され、導電性電極に直接取り付けられているか或いはその直ぐ近くに拘束された少なくとも一つの材料を含む。材料は、電気化学的に酸化又は還元されたとき、取り付けられた又は拘束されたままである。この種のエレクトロクロミック媒体の例は、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化ニッケル、及び酸化バナジウム等の金属酸化物の薄膜である。電極に取り付けられたポリチオフェン、ポリアニリン、又はポリピロール等の一つ又はそれ以上の有機エレクトロクロミック層を含む媒体もまた多層媒体と考えられる。
【0025】
更に、エレクトロクロミック媒体には、光吸収材、光安定化剤、熱安定化剤、酸化防止剤、増粘剤、粘度調節剤等の他の材料もまた含まれる。
反射エレメント100は本質的にはどのような構造であってもよいため、このような構造の詳細はこれ以上説明しない。好ましいエレクトロクロミックミラー構造の例は、1990年2月20日にH.J.バイカーに賦与された「単室自動消去溶液相エレクトロクロミック装置、これに使用される溶液、及びその使用」という標題の米国特許第4,902,108号、1992年5月19日にベクテル等に賦与された「自動車用自動バックミラーシステム」という標題のカナダ特許第1,300,945号、1992年7月7日にH.J.バイカーに賦与された「自動車用可変反射率ミラー」という標題の米国特許第5,128,799号、1993年4月13日にH.J.バイカー等に賦与された「電気光学装置」という標題の米国特許第5,202,787号、1993年4月20日にJ.H.ベクテルに賦与された「自動車のバックミラー用制御システム」という標題の米国特許第5,204,777号、1994年1月11日にD.A.セイステ等に賦与された「色付き溶液相エレクトロクロミックミラー」という標題の米国特許第5,278,693号、1994年1月18日にH.J.バイカーに賦与された「紫外線安定化組成物及び方法」という標題の米国特許第5,280,380号、1994年1月25日にH.J.バイカーに賦与された「可変反射率ミラー」という標題の米国特許第5,282,077号、1994年3月15日にH.J.バイカーに賦与された「バイピリジニウム塩溶液」という標題の米国特許第5,294,376号、1994年8月9日にH.J.バイカーに賦与された「バイピリジニウム塩溶液を含むエレクトロクロミック装置」という標題の米国特許第5,336,448号、1995年1月18日にボイヤー等に賦与された「ライトパイプを組み込んだ自動バックミラー」という標題の米国特許第5,434,407号、1995年9月5日にW.L.トナーに賦与された「自動車用自動バックミラー」という標題の米国特許第5,448,397号、1995年9月19日にJ.H.ベクテル等に賦与された「電子式制御システム」という標題の米国特許第5,451,822号、ジェフリーA.フォゲット等に賦与された「第3表面金属製反射器を持つエレクトロクロミックバックミラー」という標題の米国特許第5,818,625号、及び1998年9月21日に出願された「エレクトロクロミック装置用改良シール」という標題の米国特許出願第09/158,423号に開示されている。
【0026】
ミラーアッセンブリが、反射エレメント100の反射電極又は反射層の後ろに信号燈、ディスプレー、又は他の印を含む場合、反射エレメント100は、好ましくは、「第3表面金属製反射器を含むエレクトロクロミックバックミラー」という標題の一般に譲渡された国際特許出願第PCT/US99/24682号(公開第WO00/23826号)に開示されているように形成される。反射エレメント100が、日本や欧州の自動車の助手席側並びに運転席側の外部バックミラーで一般的であるように凸状又は非球面である場合には、反射エレメント100は、薄いエレメント112及び114を使用して形成できる。この際、1997年4月2日に出願された一般に譲渡された「二枚のガラスエレメント及びゲル状エレクトロクロミック媒体を含むエレクトロクロミックミラー」という標題の米国特許第5,940,201号に開示されているように、これらのエレメント間に形成されたチャンバ内でポリマー母材を使用する。反射エレメント100の第3表面114aに複合反射器/電極120を追加することにより、二枚のガラスエレメントが平行でないことによる残留二重画像をなくす。
【0027】
本発明のエレクトロクロミックエレメントは、好ましくは、カラーニュートラルである。カラーニュートラルエレクトロクロミックエレメントでは、エレメントは、濃い灰色である。この色は、エレメントミラーで使用する場合に任意の他の色よりも美観上優れている。「予め決定された色を発生できるエレクトロクロミック媒体」という標題の米国特許第6,020,987号には、通常の作動範囲に亘って灰色であるように見えるエレクトロクロミック媒体が開示されている。「第3表面金属製反射器を含むエレクトロクロミックバックミラー」という標題の国際特許出願第PCT/US99/24682号(公開第WO00/23826号)には、カラーニュートラリティ(color neutraliry)が大きいがディスプレーをエレクトロクロミックミラーの反射面の後ろに位置決めできる追加のエレクトロクロミックミラーが開示されている。
【0028】
ミラー20は、反射エレメント100に加え、光学コーティング130を更に含む。光学コーティング130は、自動クリーニング親水性光学コーティングである。光学コーティング130は、好ましくは、反射エレメント100の第1表面112aのところで約20%以下の反射率を示す。第1表面112aのところでの反射率が約20%以上である場合には、顕著な二重画像が生じ、反射エレメント100の可変反射率の範囲が大幅に低下する。一体の可変反射率ミラーは、多くの場合、その最低反射状態での反射率が約20%以下、好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下でなければならない。
【0029】
更に、光学コーティング130は、好ましくは、コーティング130の前面に付いた水滴の接触角度が約30°以下、更に好ましくは約20°以下、最も好ましくは約10°以下であるように、十分に親水性である。接触角度が約30°以上である場合には、コーティング130は、水ビードが散らないようにするには不十分な親水性を呈する。光学コーティング130は、更に、紫外線に露呈した後に親水性を回復する自動クリーニング性を示さなければならない。以下に更に詳細に説明するように、光学コーティング130は、カラーニュートラルであるように、又はミラーをカラーニュートラルにするためにミラーエレメントの任意の色に対して相補的であるように、特定の色特性を備えていなければならない。これらの目的のため、コーティング130は、一つ又はそれ以上の光学層132及び134を含む色抑制コーティング131を含むのがよい。
【0030】
一実施例では、光学コーティング130は、高屈折率層及び低屈折率層が交互になった少なくとも4つの層を含む。詳細には、図2に示すように、光学コーティング130は、高屈折率の第1層132、低屈折率の第2層134、高屈折率の第3層136、及び低屈折率の第4層138をこの順で含む。好ましくは、第3層136は光触媒材料製であり、第4層138は、その表面上にヒドロキシル基を発生することによって光触媒層136の親水性を向上させる材料で形成されている。適当な親水性向上材料にはSiO2 及びAl2 3 が含まれ、SiO2 が最も好ましい。適当な光触媒材料には、TiO2 、ZnO、ZnO2 、SnO2 、ZnS、CdS、CdSe、Nb2 5 、KTaNbO3 、KTaO3 、SrTiO3 、WO3 、Bi23 、Fe23 、及びGaPが含まれ、TiO2 が最も好ましい。最外層TiO2 及びSiO2 をつくることによって、コーティング130は、一枚の前ガラスエレメントの後面に反射器を設けた従来のミラーに付着させた従来技術の親水性コーティングによって得られるのと同様の良好な自動クリーニング親水性を示す。好ましくは、SiO2 外層の厚さは約800Å以下、更に好ましくは300Å以下、最も好ましくは150Å以下である。SiO2 外層が厚過ぎる(例えば約1000Å以上)場合には、下側の光触媒層は親水性外SiO2 層の「クリーニング」を少なくとも短期間で行うことができない。第1実施例では、反射エレメント100の前面での望ましからぬ反射率レベルを減少するため、及びミラーの所望の色を提供するように任意の必要な色補償/抑制を提供するため、二つの追加の層(層132及び134)が設けられている。好ましくは、コーティングの親水性及び光触媒性に寄与するように、層132は光触媒材料で形成されており、第2層134は親水性向上材料で形成されている。かくして、層132は上文中に説明した光触媒材料のうちの任意の一つ又はこれらの材料の混合物で形成されているのがよく、層134は上文中に説明した親水性向上材料のうちの任意の材料又はこれらの材料の混合物で形成されているのがよい。好ましくは、層132はTiO2 でできており、層134はSiO2 でできている。
【0031】
主にシリカでできた上層の厚さを最小に維持しつつ全ての所望の特性を得るため、ガラスと主に光触媒金属酸化物でできた層(即ち層136)との間に高屈折率層及び低屈折率層を使用することに代わる技術は、一つ又はそれ以上の中間屈折率層を使用することである。この(これらの)層は、酸化錫等の単一の材料又はチタニア及びシリカの混合物等の材料混合物であるのがよい。潜在的に有用であるとモデル化された材料には、ゾル−ゲル付着法並びに他の手段によって得ることができるチタニアとシリカの混合物、錫酸化物、インヂウム錫酸化物、及びイットリウム酸化物が含まれる。ガラスと主に光触媒材料でできた層との間でもグレーデッド屈折率(graded index)を使用できる。
【0032】
おそらく、本発明のコーティングの一つの層として使用される最も好ましい混合酸化物は、アルミナ、シリカ、錫酸化物、又はプラセオジム酸化物と混合したチタニアであり、混合した酸化物を幾つかの又は全ての光触媒層に使用する場合、チタニアは約70%又はそれ以上の酸化物からなる。これにより、光触媒エネルギを層内で幾らか発生させることができ、こうしたエネルギを層を通して伝達する。
【0033】
更に、主にシリカを含む薄い上層とともにほぼ同じ色及び反射率を得ることができ、又は、例えばゾル−ゲル法によって付着させたチタニアとシリカの混合物の場合のように材料を混合することにより光触媒層の屈折率が幾分低下する場合には上層なしでほぼ同じ色及び反射率を得ることができる。チタニアとシリカの混合物の層の屈折率が低下すれば低下する程、反射率が低下し、光学的補償を必要とする度合いが低下し、及び従って上層を更に薄くすることができる。この更に薄い上層は、更に多くの光触媒効果が表面の汚染物に届くことができるようにしなければならない。
【0034】
第2及び第3の実施例に関して以下に説明するように、色抑制コーティング131は、ITO等の透明な導電体でできた層150を更に含むのがよい。
所与のコーティングシステムから得られたチタニアフィルムの屈折率は、コーティングの状態の選択に従って大幅に変化し、できる限り小さい屈折率を与えるように選択できる一方、フィルム内に十分な量のアナターゼ形又はルチル形を維持し、適当な耐摩耗性及び物理的な丈夫さを示す。このようにして屈折率小さくすると、チタニアを屈折率が低い材料と混合することによって屈折率を低下させるのと同様の利点が得られる。ロンウィリーは、マルセル・デッカ書店から1996年に発行された「光学薄膜の実際の設計及び製造」という彼の著書で、基材の温度、酸素分圧、及び付着速度により、付着させたチタニアの屈折率を約n=2.1乃至n=2.4で変化する実験を引用している。
【0035】
透明な第2表面導体に使用される材料は、代表的には、屈折率が約1.9又はそれ以上の材料であり、これらの材料の色は、半波厚さ倍数(half wave thickness multiples)を使用することによって、又は適用する上で可能な限り最小の厚さの層を使用することによって、又は幾つかの「非真珠光沢ガラス構造」のうちの一つを使用することによって最小にした。これらの非真珠光沢構造は、代表的には、高屈折率導電性コーティングの下で高屈折率層及び低屈折率層を使用する(ロイゴードンに賦与された米国特許第4,377,613号及び米国特許第4,419,386号を参照されたい)或いは中間屈折率層(ロイゴードンに賦与された米国特許第4,308,316号を参照されたい)、又はグレーデッド屈折率層(ロイゴードンに賦与された米国特許第4,440,822号を参照されたい)のいずれかを使用する。
【0036】
非真珠光沢構造を使用した、弗素でドーピングした錫酸化物は、リベイ−オウエンス−フォード社から商業的に入手でき、現在製造されている自動車のエレクトロクロミックミラーの最も内側で透明な第2表面導体として使用される。この第2表面コーティングスタックを使用する装置の暗状態(dark state)の色は、導電性第2表面コーティングとして使用する場合、光学半波厚さインジウム錫酸化物(ITO)を使用するエレメントよりも優れている。この非真珠光沢コーティングの欠点は、本明細書の別の場所に記載してある。親水性光触媒コーティングを約800Å以下のシリカ上層に重ね、例えば1000Åのチタニアを500Åのシリカに重ねても、反対側の表面上の親水性コーティングスタックの色を補償するように設計されていないこの非真珠光沢第2表面導体及び他の非真珠光沢第2表面構造と関連した第1表面コーティングスタックとして使用した場合、受け入れることのできない色及び/又は反射率が提供される。この実施例では、これらのコーティングを第2表面で使用する場合、暗状態でのシステムのC*を低下する技術を第1表面に適用する必要がある。
【0037】
代表的には第2表面導体として使用されるITO層は、非常に薄い(約200Å乃至250Å)か或いは半波光学厚さの倍数(約1400Å)であるかのいずれかである。非常に薄い場合には、多くのディスプレー装置について適当なシート抵抗(sheet resistances)を維持しながら材料をできるだけ薄くすることにより、材料の光学効果が最小になり、半波光学厚さの倍数である場合には、コーティングの全体としての反射性が最小になる。いずれの場合でも、前のパラグラフに従って光触媒親水性コーティングスタックを両面に重ねると、第2表面導体として使用されたITOのこれらの層の厚さの使用と関連して、受け入れることのできない色及び/又は反射率が生じる。この場合も、本実施例によれば、暗状態でのシステムのC*を低下する技術を第1表面に適用する必要がある。
【0038】
幾分同様の方法では、第1及び第2の表面コーティングの両方を含むシステムの色及び反射性を最適にするために第1表面コーティングスタックを変化させるため、システムの色を最適化するように第2表面コーティングスタックを変化させることができる。これは、システムの反射率を可視スペクトルに亘って更に均等にするため、全体としての反射率を比較的低い状態に維持しながら、第2表面のところに補償色を発生することによって行うことができる。例えば、本明細書の幾つかの場所で論じた1000Åチタニア−500Åシリカのスタックは、赤褐色−紫色である。これは、スペクトルの紫部分及び赤部分の両方の反射率が緑部分の反射率よりも幾分高いためである。3/4波光学厚さITO等の緑色の第2表面コーティングは、暗状態でのシステムについてのC*値を緑色でない半波光学厚さのITOの比較的標準的な厚さのシステム以下に低下させる。更に、補償色第2表面を同様に形成するため、上述の非真珠光沢構造において、層の厚さを変化させることができ、又は屈折率が幾分異なる材料を選択できる。
【0039】
これらの第2表面補償色層は、第1表面コーティングスタックに最小限の相対的反射性の反射率を付加する。所望であれば、これらの第2表面コーティングスタックは、第1表面コーティングなしで反射率を加えることができる。例えば、上述の3/4波光学厚さITO層は、反射率について相対的最大値にあり、第2表面上で使用した場合、追加の第1表面コーティングが設けられているか否かに拘わらず、半波構造厚さITOを第2表面に備えた同様の構造のエレメントよりも暗状態反射率が高いエレメントが提供される。
【0040】
第1表面の色を補償するための別の方法は、一般に譲渡された「予め選択された色を発生できるエレクトロクロミック媒体」という標題の米国特許第,6,020,987号の教示に従って暗状態のエレクトロクロミック媒体の色を予め選択することによって行われる。この場合も、一例として1000Åのチタニアコーティング及びこのコーティングに続く500Åのシリカコーティングを含む第1表面コーティングを使用することによって、以下の変更が、賦勢時のエレクトロクロミックミラーのC*値を低下するのを補助する。この場合、エレクトロクロミック媒体の色が、賦勢時に緑領域での吸光率が低いように選択される場合には、エレメントの第3又は第4の表面反射器から光の緑波長がより多く反射されることにより、暗状態でのユニットの反射のバランスをとるのが補助される。
【0041】
第1及び第2の表面についての及びエレクトロクロミック媒体についての上述の概念の組み合わせもまた、設計について潜在的に有利である。
場合によっては、特に凸面鏡又は非球面鏡の場合には、凸面又は非球面から反射された画像の低下した明度を補償するため、電気光学ミラーの低端反射率を約12%又はそれ以上に制限するのが望ましい。この上昇させた低端反射率の値を厳密な許容差に維持することは、印加電圧を減少させるか或いは電気光学媒体中の電気光学材料の濃度を変化させるかのいずれかによって行われる電気光学媒体のみの全暗吸光率(full dark absorption)を制御することによって、行うのは困難である。この上昇させた低端反射率についての許容差を、屈折率が高く従って第1表面反射率がガラス単独の場合よりも高い第1表面フィルムによって維持し制御する方が遙かに好ましい。上昇させた低端反射率を製造におけるバッチ毎に均等に維持することは、第1表面フィルムで行う方が、電気光学媒体を用いるよりも遙かに容易である。上述のように、二酸化チタニウム等の光触媒層は、このような高い屈折率を有する。暗状態反射率は、非光触媒性の第1表面コーティングを使用して高めることができる。例えば、四分の一波光学的厚さアルミニウム酸化物を第1表面上の唯一の層として使用することによって、エレメントの暗状態反射率を約3%乃至4%高めることができる。
【0042】
付着させたフィルムの光学的特性は、酸素ガスの分圧、基材の温度、付着速度、等を含む付着条件に応じて変化することが周知である。詳細には、特定のシステムについての特定のパラメータ組についての屈折率が、論じている光学的特性を得るための最適層厚に影響を及ぼす。
【0043】
チタニア及び同様の光触媒材料及びシリカ及び同様の親水性材料の光触媒性及び親水性に関する議論は、一般的には、混合物が光触媒活性及び/又は親水性という基本的特性を保持する限り、混合材料でできた層に適用できる。耐摩耗性もまた、最外層での主要な配慮である。欧州特許第0816466A1号には、シリカを混合したチタニアでできた耐摩耗性光触媒性親水性層並びに錫酸化物を混合したチタニアでできた同様の性質の層が記載されている。米国特許第5,755,867号には、これらの混合物を使用することによって得られたシリカ及びチタニアの光触媒混合物が記載されている。これらのコーティングは、エレクトロクロミック装置で使用するのに適した光学的特性を変化させるため、変更を必要とする。これらの光学的特性を本発明に合わせて変更することの潜在的利点を以下に詳細に論じる。
【0044】
本発明の幾つかの態様では、特に基材がソーダ石灰ガラスである場合、特にナトリウム滲出に対する障壁として役立つ一層の材料を基材と光触媒層との間に設けるのがよい。この層が、ソーダ石灰ガラス上のシリカのように、基材の屈折率に近い場合には、システムの光学的特性に大きく影響することはなく、層間の光学的特性を際立たせることに関して本発明の精神を迂回するものと考えられるべきではない。
【0045】
ミラーに付着した水の蒸発を促進するため、及び水の薄膜がミラー上で凍結しないようにするため、随意であるが、加熱エレメント122を反射エレメント100の第4表面114bに設けることができる。変形例では、以下に説明するように、透明な前面フィルムの一つを導電体で形成でき、及び従ってヒーターとして機能する。
【0046】
本発明の第2実施例を図3に示す。ここに例示されているように、エレクトロクロミックミラー100は図2に示すものと同様の構造を有する。しかしながら、光学コーティング130は、親水性層136の下に透明な導電性コーティング150を含む点で異なっている。適当な透明な導体は、ITO、ZnO、及びSnO2 (弗素をドーピングした)を含む。これらの透明導体の各々は、屈折率がエレメント112のガラス(1.45)と層136のTiO2 (〜2.3)との間であるため、親水性層136を付けることにより色及び反射性を減少することによって、優れた光学的下層を形成する。
【0047】
ミラーエレメント100の前面に透明導体150を使用することによって得られる追加の利点は、層150がヒーターとして機能するように層150に電流を通すことができるということである。親水性コーティングは、水をミラーの表面に亘って拡げて薄膜にする傾向があるため、水は迅速に凍結して視界を妨げる傾向がある。かくして、透明導電層150は、ヒーター及び色/反射抑制層の両方を持つように二重にできる。
【0048】
ミラーの前面にヒーター層150を設けることにより、幾つかの利点が得られる。第1の利点は、費用のかかるヒーターをミラーの後側に設ける必要をなくすことである。更に、ヒーター150は、ミラーから最も霜を除去する必要があるミラーの前面に熱を提供する。ミラーの後側に装着された現在のミラーは、ミラーの全質量を通して前面に付着した霜の膜に届くように加熱しなければならない。
【0049】
層150に亘って電圧を印加するため、導体118及び120を介してエレクトロクロミック媒体124に亘って電圧を加えるのに使用される別のバスクリップと干渉しないように、一対のバスクリップ152及び154をミラー100の頂部及び底部に、又は両側に固定するのがよい。
【0050】
別の態様では、図4に示すように、共通バスクリップ160を設けて電極118及びヒーター層150の一つの縁部を電気的に接地すると同時に、別体の電気バス接続部162及び164を設けてヒーター層150の他方の側及び電極120を夫々正極側に接続するのがよい。
【0051】
本発明の性質及び利点を例示するため、以下に例を提供する。以下の例示の例は、本発明の範囲を限定しようとするものではなく、その適用及び使用を例示しようとするものである。これらの例では、例で特定されたパラメータに従って形成されたエレクトロクロミックミラーのスペクトル特性を参照する。色を論じる上で、国際照明委員会(CIE)1976CIELAB色度図(一般にL*a*b*チャートと呼ばれる)、並びに三刺激値x、y、及びzを参照するのが有用である。色の技術は比較的複雑であるが、J.ワイリーアンドサンズ社のF.W.ビリメイヤー及びM.サルツマン著 「色技術の原理」第2版(1981年)で、かなり包括的な議論がなされている。本願は、色技術及び用語に関しては全体としてそのような議論に従っている。L*a*b*チャートでは、L*はライトネスを定義し、a*は赤/緑値を示し、b*は黄/青値を示す。各エレクトロクロミック媒体は、三数表示即ちL*a*b*値に変換できる各特定の電圧で吸収スペクトルを有する。スペクトラルトランスミッション又は分光反射率からL*a*b*値等の色座標の組を計算するため、二つの追加のアイテムが必要とされる。一つは、照光源のスペクトルパワー分布である。本開示は、CIE標準光源D65を使用する。必要とされる第2のアイテムは、オブザーバーのスペクトル感度である。本開示は、2度のCIE標準オブザーバーを使用する。使用される光源/オブザーバー組み合わせは、D65/2度と表される。以下の例の多くは、1931CIE標準からの値Yに関する。これは、L*よりも反射率に更に密接に対応するためである。以下に説明する値C*は、(a*)2 +(b*)2 の平方根に等しく、及び従って、カラーニュートラリティについての計測値を提供する。相対的カラーニュートラリティを持つエレクトロクロミックミラーを得るため、ミラーのC*値は25以下でなければならない。好ましくは、C*値は20以下、更に好ましくは15以下、更にもっと好ましくは約10以下である。
【0052】
例1
二つの同じエレクトロクロミックミラーを形成する。これらのミラーは、クロム層が前面に設けられた2.2mm厚のガラスでできた後エレメント及び真空蒸着を使用してクロム層の上に設けられたロジウム層を備えている。両ミラーは1.1mm厚のガラス製の透明な前エレメントを含み、このエレメントはその後面が1/2波光学的厚さの透明な導電性ITOコーティングでコーティングしてある。透明な前エレメントの前面は、200Å厚のTiO2 でできた第1層、250Å厚のSiO2 でできた第2層、1000Å厚のTiO2 でできた第3層、及び500Å厚のSiO2 でできた第4層を含むコーティングで覆われている。各ミラーについて、コーティングを施した二枚のガラス基材の周囲に亘って、セルをエレクトロクロミック溶液で真空充填するのに使用される小さなポートを除いて、エポキシシールが設けられている。シールは約137μmの厚さを有し、ガラス製スペーサビードによって維持される。ポリメチルメタクリレートを3重量%含有し、30Mmのチニュビン(Tinuvin)P(紫外線吸収剤)、38MmのN,N’−ジオクチル−4,4’バイピリジニウムビス(テトラフルオロボレート)、27Mmの5,10’−ジヒドロジメチルフェナジンを含有するプロピレンカーボネートを含むエレクトロクロミック溶液でエレメントを充填し、その後、紫外線硬化性接着剤でポートを塞ぐ。電気接続バスクリップを透明導体に電気的に接続する。
【0053】
高反射率状態(接触バスクリップに電位が加えられていない状態)では、エレクトロクロミックミラーは以下の平均値を有する。即ち、L*=78.26、a*=−2.96、b*=4.25、C*=5.18、及びY=53.7である。最低反射率状態(1.2Vの電位を加えた状態)では、エレクトロクロミックミラーは以下の平均値を有する。即ち、L*=36.86、a*=6.59、b*=−3.51、C*=7.5、及びY=9.46である。エレクトロクロミックミラーの表面上に形成された水滴を払拭した後の平均接触角度は7°である。
【0054】
比較の目的で、同様であるが第1表面コーティングを全く備えていない二つのエレクトロクロミックミラーを形成した。これらの二つのミラーは同じ構造を有する。高反射率状態では、エレクトロクロミックミラーは以下の平均値を有する。即ち、L*=78.93、a*=−2.37、b*=2.55、C*=3.48、及びY=54.81である。最低反射率状態では、エレクトロクロミックミラーは以下の平均値を有する。即ち、L*=29.46、a*=0.55、b*=−16.28、C*=16.29、及びY=6.02である。この比較により示されるように、本発明の親水性コーティングを持つエレクトロクロミックミラーは、予期せぬことに及び驚くべきことに、カラーニュートラリティが、このような親水性コーティングを備えていない同様の構造のエレクトロクロミックミラーよりも良好である。更に、この比較によれば、疎水性コーティングの追加によりミラーの低端反射率を大幅に上昇させることがないということが示される。
【0055】
例2
異なる第1表面コーティングスタックを付着させたことを除き、例1の説明に従ってエレクトロクロミックミラーを形成した。第1表面スタックは、約700Å厚のITOでできた第1層、2400Å厚のTiO2 でできた第2層、及び約100Å厚のSiO2 でできた第3層を含む。ITO層の物理的な厚さは、500nmで約1波光学的厚さと対応し、TiO2 層の物理的な厚さは、500nmで約1/4波光学的厚さと対応する。TiO2 層のアナターゼ形チタニアのルチル形チタニアに対する比は、同様のコーティングパラメータで同じ時間枠で製造されたガラスから取り出した同様のピースのX線回折分析により、アナターゼ形が約89%及びルチル形が11%であると確認された。
【0056】
高反射率状態では、エレクトロクロミックミラーは以下の平均値を有する。即ち、L*=80.37、a*=−2.49、b*=3.22、C*=4.07、及びY=57.35である。最低反射率状態(1.2Vの電位を加えた状態)では、エレクトロクロミックミラーは以下の平均値を有する。即ち、L*=48.46、a*=−6.23、b*=−4.64、C*=7.77、及びY=17.16である。エレクトロクロミックミラーの表面上の水滴の払拭後の接触角度は4°である。この例は、親水性層136及び138の下のITO色抑制層150の適切性を例示する。
【0057】
例3
商業的に入手できる薄膜モデリングソフトウェアを使用してエレクトロクロミックミラーをモデル化する。この例では、モデリングソフトウェアは、ニュージャージー州プリンストンのFTGソフトウェアアソシアーツ社から入手できるFILMSTARである。モデル化したエレクトロクロミックミラーは、ミラーの前面に適用された光学的コーティングの構造を除き、上掲の例1及び例2と同じ構造を有する。
【0058】
更に、ミラーは、屈折率が1.43の完全吸収エレクトロクロミック流体を仮定し、暗状態でのみモデル化される。光学的コーティングスタックは、厚さが720Åで550nmでの屈折率が1.90のSnO2 でできた第1層、厚さが1552Åで550nmでの屈折率が約2.43の稠密TiO2 でできた第2層、550nmでの屈折率が約2.31で波長依存屈折率が538Åの厚さで付着させたTiO2 と同様の材料でできた第3層、及び厚さが100Åで550nmでの屈折率が1.46のSiO2 でできた第4層を含む。このエレクトロクロミックミラーは、以下の平均値を有する。即ちL*=43.34、a*=8.84、b*=−12.86、C*=15.2、及びY=13.38である。
【0059】
第3層を構成する屈折率が2.31の材料は、組み合わせて又は単独で使用できる以下の方法を含む幾つかの方法で得ることができる。即ち(1)層中のチタニアの濃度を減少させる方法、(2)層中のアナターゼ形チタニアのルチル形チタニアに対する比を変化させる方法、及び/又は(3)チタニアと、Al2 3 、SiO2 、又はSnO2 等の少なくとも一つの他の低屈折率金属酸化物との酸化物混合物を形成する方法。上述の例1及び例2で使用したエレクトロクロミック材料は、電圧を加えたときに完全吸収層にならず、及び従って、完全吸収エレクトロクロミック層に基づくモデルは、予想視感反射率Yが実際の装置よりも僅かに低いということに着目すべきである。
【0060】
例4
例3におけるのと正確に同じパラメータを持つが、550nmでの屈折率が2.43のTiO2 でできた厚さが1552Åの第2層及び550nmでの屈折率が2.31の厚さが538Åの第3層に代えて550nmでの屈折率が2.31の厚さが2100Åの単一の層を使用するようにエレクトロクロミックミラーをモデル化する。このようにモデル化したエレクトロクロミックミラーは以下の予想平均値を有する。即ちL*=43.34、a*=0.53、b*=−6.21、C*=6.23、及びY=15.41である。
【0061】
例3と例4とを比較する上で、例3の屈折率2.43の層及び屈折率2.31の層は、同じスタックに屈折率2.31の層を持つ同じ厚さの材料よりもYが低いユニットを提供するということに着目されたい。それにも拘わらず、第4例では、カラーニュートラリティ値C*が低い。
【0062】
例5
例3におけるのと同じパラメータを使用してエレクトロクロミックミラーをモデル化した。このミラーは、以下の第1表面コーティングスタックを持つ。即ち、第1表面コーティングスタックは、Ta2 5 でできた厚さが161Åで550nmでの屈折率が約2.13の第1層、Al2 3 でできた厚さが442Åで550nmでの屈折率が約1.67の第2層、TiO2 でできた厚さが541Åで550nmでの屈折率が約2.43の第3層、TiO2 又は別の酸化物と混合したTiO2 でできた厚さが554Åで550nmでの屈折率が約2.31の第4層、及びSiO2 でできた厚さが100Åで550nmでの屈折率が約1.46の第5層を含む。このエレクトロクロミックミラーはモデリングソフトウェアによって予想された以下の平均値を有する。即ちL*=39.01、a*=9.39、b*=−10.14、C*=13.82、及びY=10.66である。
【0063】
例6
異なる第1表面コーティングスタックを付着させたことを除き、例に関して上文中に説明したのと同じ方法でエレクトロクロミックミラーを形成した。この第1表面スタックは、TiO2 でできた厚さが約1000Åの第1層及びSiO2 でできた厚さが200Åの第2層を含む。
【0064】
高反射率状態では、以下の平均値が計測された。即ちL*=79.47、a*=−0.34、b*=2.10、C*=2.13、及びY=55.74である。最低反射率状態(1.2Vの電位を加えた状態)では、エレクトロクロミックミラーは以下の平均値を有する。即ちL*=36.21、a*=−28.02、b*=−17.94、C*=33.27、及びY=9.12である。
【0065】
かくして、本発明は、エレクトロクロミック装置に適しているばかりでなく、装置のカラーニュートラリティを実際に改善する親水性コーティングを提供する。
本発明の親水性コーティングの自動クリーニング光触媒特性を実地説明するため、四つの異なる試料を製作し、コーティングの表面上の水滴の初期接触角度を計測する。次いで、75W90ギヤオイルの薄い層をこれらのコーティングの表面に亘って付着させ、余分のオイルを無溶剤クロスで払拭することによって除去する。次いで、表面上の水滴の接触角度を計測する。次いで試料を残りの試験時間に亘って紫外線(1mW/m2 )の下に置く。第1試料は、TiO2 でできた厚さが1200Åの単一の層を有する。第2試料は、TiO2 でできた厚さが2400Åの単一の層を有する。第3試料は、ITOでできた厚さが700Åの下層、TiO2 でできた厚さが2400Åの中間層、及びSiO2 でできた厚さが100Åの上層を有する。第4試料は、TiO2 でできた厚さが2400Åの下層、及びSiO2 でできた厚さが300Åの上層を有する。これらの試料は、全て、同じ日にスパッタ付着法によって製造されたものである。しかしながら、試料3では、ITOが予め決定された付着させてある。X線回折分析によれば、TiO2 層の結晶構造が、アナターゼ形TiO2 を74%及びルチル形TiO2 を26%含むことが示される。全ての試料は、ソーダ石灰ガラス基材上に形成される。試験結果を以下の表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
表1から明らかなように、下側のTiO2 層の光触媒効果を有効化できるように、SiO2 でできた任意の上層を比較的薄く維持しなければならない。TiO2 層の厚さを大きくすると、光触媒レート(rate)が高まる。
【0068】
上掲の例は、コーティングを付けるのに真空蒸着技術を使用するけれども、これらのコーティングは、従来のゾル−ゲル技術によっても付けることができる。この方法では、テトライソプロピルチタネート、テトラエチルオルソシリケート、等の先駆物質から形成した金属アルコキシドでガラスをコーティングする。これらの金属アルコキシドを様々な比率で混合し、部分的に加水分解し且つ凝縮して金属酸化物金属結合を形成することによって分子量を増大させた後、通常はアルコール溶液からガラスにコーティングできる。これらの金属アルコキシドのコーティング溶液は、浸漬コーティング、スピンコーティング、又はスプレーコーティング等の多くの手段でガラス基材に付けることができる。次いで、これらのコーティングを燃焼させ、代表的には450℃以上の温度で金属アルコキシドを金属酸化物に変換する。この方法を使用して非常に均等であり且つ丈夫な薄膜を形成できる。真空プロセスが含まれないため、これらのフィルムは製造に比較的費用がかからない。施与間にコーティング及び乾燥を行うことによって組成が異なる多数のフィルムを燃焼前に形成できる。この方法は、ミラー用ガラス上に、特に湾曲したガラスから製造された凸状の又は非球面のミラー上に、安価な親水性コーティングを製造する上で非常に有用である。ガラスを曲げるためには、ガラスを550℃以上の温度まで加熱しなければならない。ゾル−ゲルコーティングを平らなガラス基材(代表的には、乾燥性したミラーの凸状表面になる方の側に)に曲げる前に付着した場合には、曲げプロセス中にコーティングを燃焼させ、丈夫な金属酸化物を形成する。かくして、親水性コーティングを、追加の費用を最小にして、曲げガラス基材に付けることができる。今日、世界中で使用されている外側ミラーの大部分が曲げガラスから形成されているため、この方法は、主として価格について有利である。コーティングの幾つか又は全てをこのゾル−ゲルプロセスによって付けることができ、残りのコーティングはスパッタリングやE−ビーム付着等の真空プロセスによって付けられるということに着目しなければならない。例えば、TiO2 やSiO2 等でできた第1高屈折率層及び低屈折率層をゾル−ゲル技術で付けることができ、その後、上TiO2 及びSiO2 層をスパッタリングによって付着させる。これは、コーティング器具の必要条件を簡単にし、費用の節約をもたらす。ナトリウム等のイオンがソーダ石灰ガラス基材から光触媒層内に移動しないようにするのが望ましい。ナトリウムイオンの移動速度は温度で決まり、高いガラス曲げ温度で速度が更に高くなる。ナトリウムの移動を減少する上で、ゾル−ゲル形成シリカ又はドープトシリカ層、例えば燐ドープトシリカが有効である。この障壁下層は、ゾル−ゲルプロセスを使用して付けることができる。このシリカ層を最初にベースガラスに付けるのがよく、或いは親水性スタックの光触媒層とガラスとの間に組み込むのがよい。
【0069】
一般的には、本発明は、建設物の窓や明り取り、自動車のウィンドウ、バックミラー、及びサンルーフを含む任意のエレクトロクロミックエレメントに適用できる。バックミラーに関し、本発明は主に外部ミラー用である。これは、外部ミラーが曇ったり水滴で覆われたりし易いためである。ルームミラー及びバックミラーは形体が僅かに異なる。例えば、ルームミラーの前ガラスエレメントの形状は、バックミラーよりも全体に長く且つ狭幅である。更にルームミラーには、バックミラーと比較して或る程度異なる性能標準が課せられる。例えば、ルームミラーは、一般的には、完全にきれいにした場合の反射率の値が約70%乃至約85%又はそれ以上でなければならないのに対し、バックミラーの反射率は、多くの場合、約50%乃至約65%である。更に、米国では、(自動車製造者によって供給されるように)助手席側のミラーは、代表的には、非平面の球形に湾曲した即ち凸状形状であるのに対し、運転者側のミラー111a及びルームミラー110は、現在のところ、平坦でなければならない。欧州では、運転者側のミラー111aが一般に平らであるか或いは非球面であるのに対し、助手席側のミラー111bは、凸状形状である。日本では、両バックミラーが非平面凸状形状を有する。
【0070】
バックミラーが、多くの場合で非平面であるため、それらのミラーの設計には追加の制限が生じる。例えば、非平面前エレメントの後面に加えられた透明な導電性層は、代表的には、平らなミラーで一般的に使用されている弗素でドーピングした錫酸化物で形成されているのではない。これは、錫酸化物コーティングが曲げプロセスを込み入ったものにしてしまうためであり、2.3mmよりも薄いガラス上で商業的に入手できないためである。かくして、このような曲げミラーは、代表的には、前透明導体としてITOでできた層を使用する。しかしながら、ITOは僅かに色を有し、運転者が見る反射画像に青の色が入り込む悪影響をもたらす。エレメントの第2表面に付着させたITO層が導入する色は、エレクトロクロミックエレメントの第1表面上で光学的コーティングを使用することによって中和できる。この効果を例示するため、半波厚ITO層でコーティングしたガラスエレメントを、半波厚ITO層を一方の側にコーティングし且つ上掲の例1に説明した親水性コーティングを他方の側にコーティングしたガラスエレメントと同様に形成する。ITO層をコーティングした親水性コーティングを備えていないガラスは、以下の性質を有する。即ちL*=37.09、a*=8.52、b*=−21.12、C*=22.82、及び第1/第2表面分光反射率Y=9.58である。これとは対照的に、上文中に説明した例の本発明の親水性コーティングを備えた、ITOでコーティングしたガラスは、以下の性質を有する。即ちL*=42.02、a*=2.34、b*=−8.12、C*=8.51、及び第1/第2表面分光反射率Y=12.51である。C*値の大幅な減少から明らかなように、親水性コーティングは、ITOでコーティングしたガラスエレメントの色を大きく改善することによって、色抑制コーティングとして役立つ。外部バックミラーは、多くの場合、曲げられ、透明導体としてITOを含むため、前側にコーティングを施したエレメントの色を曲げガラスの反対側に色抑制コーティングを加えることによって改善する性能は、多くの製造上の利点を提供する。
【0071】
比較的厚い第1高屈折率層、次いで適当な厚さの低屈折率層、又は適当な厚さの中間屈折率層を持つ下層を組み込むことによって、第1透明電極118コーティングを更にカラーニュートラルにすることもできる。例えば、中間屈折率のアルミニウム酸化物(Al2 3 )でできた四分の一波下層を加えることによって、半波及び全波のITOフィルムを更にカラーニュートラルにできる。以下の表2は、Al2 3 でできた四分の一波厚下層をガラス上に備えた又は備えていない、半波及び全波のITOフィルムの、計測した反射色の値を列挙する。両フィルムは、反応性マグネトロンスパッタリングによってガラス基材に付けられる。
【0072】
【表2】

【0073】
散乱粒子ディスプレー(米国特許第5,650,872号、米国特許第5,325,220号、米国特許第4,131,334号、及び米国特許第4,078,856号に論じられたディスプレー)や液晶ディスプレー(米国特許第5,673,150号、米国特許第4,878,743号、米国特許第4,813,768号、米国特許第4,693,558号、及び米国特許第4,671,615号、及び米国特許第4,660,937号に論じられたディスプレー)等の他の光減衰装置は、これらの原理の適用により利点を得ることができる。光減衰層が二つのガラス又はプラスチック間に設けられている装置では、同じ基本的制限及びこれらの制限に対する解決策が適用される。第1表面親水性層又は層スタックの色及び反射率は、この第1表面層スタックが明状態(bright state)特性に大きく作用を及ぼさない場合でも、暗化状態(darkened state)で装置に実質的な色及び反射率を与えることができる。従って、エレクトロクロミック装置について論じたのと同様に第1表面層スタックを調節することにより、暗化装置の色及び/又は反射率に有利に影響を及ぼす。これと同じことが、装置の第2表面に、又は暗化層自体の色に対して行われる調節に適用される。
【0074】
これらの原理は、可変透過率絶縁ウィンドウ等の装置にも適用できる。図5は、可変透過率ウィンドウ200の一例を示す。図示のように、ウィンドウは、内ウィンドウペイン又は他の透明エレメント204、外ウィンドウペイン又は他の透明エレメント202、及びこれらのウィンドウペイン202及び204を平行に間隔が隔てられた関係に保持するウィンドウフレーム206を含む。可変透過率エレメントがウィンドウペイン202及び204間に位置決めされており、これは、ミラーの反射層が取り除いてあることを除き、エレクトロクロミックミラーの形態をとるのがよい。かくして、エレメントは、間隔が隔てられた透明な基材112及び114を含むのがよく、これらの基材はシール116によって互いに接合され、エレクトロクロミック媒体が注入されるチャンバを画成する。ウィンドウ200の構造を単に例示の目的で示したが、フレーム及び構成要素の互いに対する関係は変化させることができるということは当業者には理解されよう。
【0075】
図5に示すように、外ウィンドウペイン202の外面には光学コーティングが設けられている。特定的には、このコーティングは、ガラスウィンドウ202の屈折率の中間の屈折率を持つ第1層150及び二酸化チタニウム等の光触媒材料でできた第2層136を含む。随意であるが、第3層137が層136上に配置されているのがよく、この第3層は、二酸化チタニウム等の光触媒材料でできているのがよい。好ましくは、上述のように、このような層は、屈折率が層136よりも低いように変更される。コーティングは、SiO2 等の材料でできた随意の親水性層138を更に含むのがよい。一般的には、上文中に論じた親水性コーティングのうちの任意のものを使用できる。色抑制及びウィンドウ全体としてニュートラルカラーを得ることは、設計上の制限であってもよいし、なくてもよいということに着目すべきである。特定的には、ウィンドウによっては、建設上の目的のため、特定の色が意図的に付けられる。このような場合、特定の色を高めるように任意の色抑制層を選択できる。
【0076】
層の材料及び層の厚さを光学効果及び光触媒効果について最適化する上で、高屈折率の機能的コーティングの厚さを大きくすると、光触媒効果の強さが高まるということに着目すべきである。これは、上掲の表1の試料1及び2を比較することによって明らかになる。ドーパントを使用することによっても光触媒活性が高められ、おそらくは、これ以外の場合では減少させる層の厚さを特定レベルの光触媒効果を維持しながら、大きくすることができる。このようなドーパントには、プラチナ、グループメタルズ(group metals)銅、ニッケル、ランタン、コバルト、及びSnO2 が含まれる。一般的には、最外層については、コーティングの反射率を低下させるため、低屈折率が望ましい。これは、最外層の密度を小さくすることによって行うことができるが、これは、スクラッチ抵抗を低下させてしまう。更に、TiO2 層は、この層の屈折率を下げるため、シリカ、アルミナ、錫酸化物、亜鉛酸化物、ジルコニア、及びプラセオジムと混合するのがよい。例3で説明したような設計では、中間屈折率の材料(即ちSnO2 層)の大部分を保持でき、又は或る程度の光触媒活性を持つ別の材料と混合することによってスタック全体の光触媒活性を高めることができる。例えば、SnO2 を単独で又は別の酸化物と混合して使用できる。
【0077】
上述のように、SnO2 上層が厚ければ厚い程、比較的低いC*及びYを得るのが容易になるけれども、SnO2 上層が厚過ぎると、スタックの光触媒性に関して大きく且つ望ましからぬ断熱効果が生じる。
【0078】
以上の説明は単なる好ましい実施例であると考えられる。当業者及び本発明を案出し使用する者は、本発明の変更を思い付くであろう。従って、添付図面に示し上文中に説明した実施例は単に例示の目的であって、特許請求の範囲に定義された本発明の範囲を限定しようとするものではないということは理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に従って形成された外部バックミラーアッセンブリを前方から見た斜視図である。
【図2】図1に示す外部バックミラーアッセンブリの第1実施例の2−2線に沿った断面図である。
【図3】図1に示す外部バックミラーアッセンブリの第2実施例の3−3線に沿った断面図である。
【図4】図1に示す外部バックミラーアッセンブリの第3実施例の4−4線に沿った断面図である。
【図5】本発明に従って形成されたエレクトロクロミック絶縁ウィンドウの部分断面図である。
【符号の説明】
【0080】
10 ミラーアッセンブリ
15 ハウジング
20 ミラー
100 反射エレメント
112 第1の基材
114 第2の基材
118、120 電極
124 エレクトロクロミック媒体
130 親水性光学コーティング
131 色抑制コーティング
132、134 光学層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輛用バックミラーにおいて、
少なくとも高反射率状態及び低反射率状態を示すように、反射率が印加電圧に応じて変化するエレクトロクロミックミラーエレメントであって、第1の透明な基材を有し、前記第1の透明な基材の前面は前記エレクトロクロミックミラーエレメントの前面として作用する、前記エレクトロクロミックミラーエレメントと、
前記エレクトロクロミックミラーエレメントの前面に付着された光触媒性の親水性光学コーティングであって光触媒層を有する、前記親水性光学コーティングと、
前記第1の基材の表面に配置された色補償及び色抑制コーティングであって、前記第1の基材の屈折率と前記光触媒層の屈折率との中間の平均屈折率を有する前記色補償及び色抑制コーティングと、
を備えるバックミラー。
【請求項2】
車輛用バックミラーにおいて、
少なくとも高反射率状態及び低反射率状態を示すように、反射率が印加電圧に応じて変化するエレクトロクロミックミラーエレメントと、
前記エレクトロクロミックミラーエレメントの中もしくはその上に配置されていて、バックミラーが低反射率状態で約25以下のC*値を示すように色補償及び色抑制を行う、色補償及び色抑制手段と、
前記エレクトロクロミックミラーエレメントの前面に付着されていて光触媒特性を示す親水性光学コーティングと、
を備えるバックミラー。
【請求項3】
請求項2に記載の車輛用バックミラーにおいて、前記エレクトロクロミックミラーエレメントが、
前面及び後面を有する第1の透明な基材と、
前面及び後面を有する第2の透明な基材と、
前記第2の透明な基材の前面及び第1の透明な基材の後面の間に配置されたエレクトロクロミック媒体と、
を備えるバックミラー。
【請求項4】
請求項3に記載の車輛用バックミラーにおいて、前記色補償及び色抑制手段が前記第1の透明な基材の表面に付着された色補償及び色抑制コーティングを備えるバックミラー。
【請求項5】
請求項2に記載の車輛用バックミラーにおいて、前記色補償及び色抑制手段がエレクトロクロミック媒体を備え、前記エレクトロクロミック媒体が低反射率状態で表される色を有し、バックミラーが低反射率状態で約25以下のC*値を示すように低反射率状態で存在する色を補償し且つ抑制する、バックミラー。
【請求項6】
車輛用バックミラーにおいて、
少なくとも高反射率状態及び低反射率状態を示すように、反射率が印加電圧に応じて変化するエレクトロクロミックミラーエレメントであって、第1の透明な基材を有し、前記第1の透明な基材の前面は前記エレクトロクロミックミラーエレメントの前面として作用する、前記エレクトロクロミックミラーエレメントと、
前記エレクトロクロミックミラーエレメントの前面に付着された光触媒性の親水性光学コーティングと、
前記第1の基材の表面に配置されていて、バックミラーが低反射率状態で約25以下のC*値を示すように色補償及び色抑制を行う、色補償及び色抑制コーティングと、
を備えるバックミラー。
【請求項7】
車輛用バックミラーにおいて、
少なくとも高反射率状態及び低反射率状態を示すように、反射率が印加電圧に応じて変化するエレクトロクロミックミラーエレメントであって、第1の透明な基材を有し、前記第1の透明な基材の前面は前記エレクトロクロミックミラーエレメントの前面として作用する、前記エレクトロクロミックミラーエレメントと、
前記エレクトロクロミックミラーエレメントの前面に付着された親水性光学コーティングとを備え、
前記親水性光学コーティングは、バックミラーが低反射率状態で20%以下の分光反射率を示すように選択された複数の層を備える、バックミラー。
【請求項8】
請求項7に記載の車輛用バックミラーにおいて、前記第1の基材の表面に配置された色補償及び色抑制コーティングを更に備える、バックミラー。
【請求項9】
請求項1,2,6又は7に記載の車輛用バックミラーにおいて、前記親水性光学コーティングが、
親水性材料で形成された第1の層と、
前記第1の層の下に配置された光触媒材料で形成された第2の層と、
を備える、バックミラー。
【請求項10】
請求項1又は7に記載の車輛用バックミラーにおいて、前記バックミラーが低反射率状態で約25以下のC*値を示す、バックミラー。
【請求項11】
請求項1、2,6又は7に記載の車輛用バックミラーにおいて、前記バックミラーが低反射率状態で約20以下のC*値を示す、バックミラー。
【請求項12】
請求項1、2,6又は7に記載の車輛用バックミラーにおいて、前記親水性光学コーティングは、前記光学コーティングの前面の水滴が約30°以下の接触角度を示すのに十分親水性である、バックミラー。
【請求項13】
請求項1、2,6又は7に記載のバックミラーにおいて、前記親水性光学コーティングは、前記光学コーティングの前面の水滴が約20°以下の接触角度を示すのに十分親水性である、バックミラー。
【請求項14】
請求項1、2,6又は7に記載のバックミラーにおいて、前記親水性光学コーティングは、前記光学コーティングの前面の水滴が約10°以下の接触角度を示すのに十分親水性である、バックミラー。
【請求項15】
請求項1、2,6又は7に記載のバックミラーにおいて、前記親水性光学コーティングは、厚さが約800Å以下の第1の層を備える、バックミラー。
【請求項16】
請求項15に記載のバックミラーにおいて、前記第1の層は二酸化珪素でできている、バックミラー。
【請求項17】
請求項15に記載のバックミラーにおいて、前記親水性光学コーティングが、前記第1の層の真下にある第2の層を更に備える、バックミラー。
【請求項18】
請求項17に記載のバックミラーにおいて、前記第2の層が主として二酸化チタニウムでできている、バックミラー。
【請求項19】
請求項18に記載のバックミラーにおいて、前記第1の層が主として二酸化珪素でできている、バックミラー。
【請求項20】
請求項15に記載のバックミラーにおいて、前記親水性光学コーティングの第1層は、厚さが約500Å以下である、バックミラー。
【請求項21】
請求項17に記載のバックミラーにおいて、前記親水性光学コーティングの第1層は二酸化珪素で形成され、前記親水性光学コーティングの第2層は、二酸化チタニウムで形成される、バックミラー。
【請求項22】
請求項1、4,6及び8に記載のバックミラーにおいて、
前記色補償及び色抑制コーティングは、
低屈折率を有する第1層と、
前記エレクトロクロミックミラーエレメントの前面にある第1層の下に配置された高屈折率を有する第2層と、
を備え、
前記親水性光学コーティングの第2層は、二酸化チタニウムで形成されていて前記色補償及び色抑制コーティングの第1層の上に配置され、
前記親水性光学コーティングの第1層は、二酸化珪素で形成される、バックミラー。
【請求項23】
請求項22に記載のバックミラーにおいて、前記色補償及び色抑制コーティングの第1層は二酸化チタニウムを含む、バックミラー。
【請求項24】
請求項23に記載のバックミラーにおいて、前記色補償及び色抑制コーティングの第2層は二酸化珪素を含む、バックミラー。
【請求項25】
請求項22に記載のバックミラーにおいて、前記色補償及び色抑制コーティングの第2層は二酸化珪素を含む、バックミラー。
【請求項26】
請求項22に記載のバックミラーにおいて、前記親水性光学コーティングの第1層は約800Å以下の厚さを有する、バックミラー。
【請求項27】
請求項22に記載のバックミラーにおいて、前記親水性光学コーティングの第1層は約500Å以下の厚さを有する、バックミラー。
【請求項28】
請求項1,2,6又は7に記載のバックミラーにおいて、前記バックミラーは、低反射率状態で15%以下の分光反射率を示す、バックミラー。
【請求項29】
請求項1、2,6又は7に記載のバックミラーにおいて、前記親水性光学コーティングは、前記光学コーティングの前面の水滴が約20°以下の接触角度を示すのに十分親水性であり、前記バックミラーは、低反射率状態で約20以下のC*値を示す、バックミラー。
【請求項30】
請求項29に記載のバックミラーにおいて、前記バックミラーは、低反射率状態で15%以下の分光反射率を示す、バックミラー。
【請求項31】
請求項1、2,6又は8に記載のバックミラーにおいて、前記色補償及び色抑制コーティングは前記第1の透明な基材の前面に付着されている、バックミラー。
【請求項32】
請求項1、2,6又は8に記載のバックミラーにおいて、前記色補償及び色抑制コーティングは前記第1の透明な基材の後面に付着されている、バックミラー。
【請求項33】
車両用非平面バックミラーにおいて、
少なくとも一つの曲がったガラスを含む非平面ミラーエレメントと、
前記非平面ミラーエレメントに被覆された親水性ゾルーゲルコーティングであって、前記ガラスを曲げ加工する直前に付着され且つ前記ガラスの曲げ加工において焼成される前記親水性ゾルーゲルコーティングと、
を備える、非平面バックミラー。
【請求項34】
車両用非平面バックミラーを製造する方法において、
ガラスエレメントの上に親水性ゾルーゲルコーティングを付着することと、
前記ガラスエレメントを加熱して曲げ加工することと、
を備える、方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法を使用して製造された非平面バックミラー。
【請求項36】
エレクトロクロミックエレメントにおいて、
密封チャンバを間に形成するように間隔が隔てられており且つシールされた第1及び第2の基材であって、前記第1基材の前面は前記エレクトロクロミックエレメントの前面として役立ち、前記第2基材の後面は前記エレクトロクロミックエレメントの後面として役立つ、前記第1及び第2の基材と、
前記第1基材の前記後面に配置された第1電極と、
前記第1の基材の表面に配置された色補償層であって、前記第1の電極の屈折率および前記第1の基材の屈折率の中間の屈折率を有する、前記色補償層と、
前記第2の基材の前面に配置された第2電極と、
前記密封チャンバ内に配置されたエレクトロクロミック媒体と、
を備える、エレクトロクロミックエレメント。
【請求項37】
請求項36に記載のエレクトロクロミックエレメントにおいて、前記第1の電極がインジューム・錫酸化物で造られる、エレクトロクロミックエレメント。
【請求項38】
請求項36に記載のエレクトロクロミックエレメントにおいて、前記第1の電極が光学半波厚さを有する、エレクトロクロミックエレメント。
【請求項39】
請求項36に記載のエレクトロクロミックエレメントにおいて、前記第1の電極が光学全波厚さを有する、エレクトロクロミックエレメント。
【請求項40】
請求項36に記載のエレクトロクロミックエレメントにおいて、前記色補償層が光学4分の1波厚さを有する、エレクトロクロミックエレメント。
【請求項41】
請求項36に記載のエレクトロクロミックエレメントにおいて、前記色補償層がAlから成る、エレクトロクロミックエレメント。
【請求項42】
非平面エレクトロクロミックミラーにおいて、
密封チャンバを間に形成するように間隔が隔てられており且つシールされた第1及び第2の非平面基材であって、前記第1の非平面基材の前面は前記エレクトロクロミックエレメントの前面として役立ち、前記第2の非平面基材の後面は前記エレクトロクロミックエレメントの後面として役立つ、前記第1及び第2の非平面基材と、
前記第1の非平面基材の前記後面に配置された第1電極と、
前記第2の非平面基材の前面に配置された第2電極と、
前記密封チャンバ内に配置されたエレクトロクロミック媒体と、
前記第1の非平面基材の前面に配置された層であって、前記エレクトロクロミック媒体が付勢されたとき、前記非平面エレクトロクロミックミラーの反射率を高めるように前記第1の非平面基材の屈折率よりも大きな屈折率を有する、前記層と、
を備える、非平面エレクトロクロミックミラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−16001(P2006−16001A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235842(P2005−235842)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【分割の表示】特願2001−507140(P2001−507140)の分割
【原出願日】平成12年6月23日(2000.6.23)
【出願人】(500119684)ジェンテクス・コーポレーション (8)
【Fターム(参考)】