説明

自動二輪車のウィンカ装置

【課題】フロントフォークに固定されたウィンカ装置から引き出されるウィンカコードを見栄え良く配線する。
【解決手段】ウィンカ装置15は、ランプを収容するベース20とベース20に連結されるステー19とからなり、ステー19はフロントフォーク7の周囲にはめ込まれる環状部32を有する。環状部32の外周の一部にウィンカコード収容溝37を形成し、ベース20側からアーム33を貫通して環状部32に引き出されるウィンカコード27を溝37を介して外部に引き出す。溝37はカバー36で覆われる。カバー36にはトップブリッジ5のすり割り部281に係合する係止部材365がステーの周り止めとして一体形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車のウィンカ装置に関し、特に、ウィンカランプに接続されるウィンカコードをウィンカランプ支持部材であるステーに収納することができる構造を有する自動二輪車のウィンカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動二輪車において、車体前部のステアリングハンドルやフロントフォークに取り付けられるウィンカ装置やコーナリングライト等の灯火装置が知られている。例えば、特許文献1にはフロントフォークに固定した環状部材から延長された部材に灯体を取り付けてなる自動二輪車のコーナリングライトが開示されている。また、特許文献2には、フロントフォークの外周形状に適合する環状のホルダを2分割された一対のホルダ部材で構成し、該ホルダ部材にウィンカ支持基部を介してウィンカを支持するようにした自動二輪車のウィンカ装置が開示されている。
【0003】
これら灯火装置には、灯体に電力を供給するための電線(コード)が必要である。特許文献2に開示されたウィンカ装置では、前記ホルダ部材のうち、一方のホルダ部材内にウィンカコードを収納可能な溝を設けており、ウィンカからウィンカ支持基部内を通して延長されたウィンカコードを該溝内に延長している。ウィンカコードをホルダ内に収容できるこのウィンカ装置では、ウィンカコードの外部露出部分を少なくして外からの見栄えを良くしている。
【特許文献1】実公昭62−46626号公報
【特許文献2】特開2003−89381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2に開示されているウィンカ装置は、ホルダ内にウィンカコードを収容するため、ホルダを2分割しているので、部品数が多くなるし、組み付け工数も多くなる。また、フロントフォークの形状に適合した環状のホルダは、フロントフォークに対して廻りやすいので、周り止めを施すためにはさらに追加部品が必要であったり、構造が複雑化したりすることがある。
【0005】
本発明の目的は、部品数や組み付け工数を増やさず、ウィンカコードをホルダに保持させるとともに、円柱状部材へ取り付けられたホルダの回転止め構造を簡素化するのに好適な自動二輪車のウィンカ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、ウィンカランプを収容するベースと、ベースをフロントフォークに取り付けるため前記ベースに連結されたステーとからなる自動二輪車のウィンカ装置において、前記ステーがゴム状弾性体からなるとともに、フロントフォークの外周に適合し、一部にすり割り部を有する環状部と、該環状部から延長されて前記ベースに連結されるアーム部とからなり、前記環状部に形成されたすり割り部のギャップを縮めて、フロントフォークに該環状部を締め付け固定するための締結部品を具備するとともに、前記環状部の外周には周方向に沿って形成され、ウィンカランプに接続されるウィンカコードを前記環状部の外側に引き出すためのウィンカコード収容溝が形成されており、前記締結部品に共締めされ、前記ウィンカコード収容溝を覆うカバーをさらに具備した点に第1の特徴がある。
【0007】
また、本発明は、前記カバーが、前記環状部に固定されているとともに、該環状部に対する固定部から上方に延長されて、フロントフォーク上部のトップブリッジに係合する係止部材を含んでいる点に第2の特徴がある。
【0008】
また、本発明は、前記環状部のすり割り部から延長された張り出し部分に前記締結部品の一部としてのボルトを貫通させるボルト通し孔を具備し、前記ボルトのカラーとして前記ボルト通し孔に挿入されるカラーが前記カバーと一体に形成されている点に第3の特徴がある。
【発明の効果】
【0009】
上記第1の特徴を有する発明によれば、ステーにすり割り部を設け、該すり割り部のギャップを縮めることでフロントフォークとの結合力を得るようにし、かつ、カバーを締結部品に共締めしたので、部品数が削減できるとともに、環状部の締め付けとカバーの締め付けを1箇所で行えるので、工数が削減できる。ウィンカコード収容溝をカバーで覆うようにしたので、ウィンカコードの外部露出を少なくでき、外観が良好になる。
【0010】
第2の特徴を有する本発明によれば、ステーの環状部がフロントフォークに対して回転した状態で組み付けられるのを防止することができるし、この回転止めとしての係止部材をカバーと一体形成できる。
【0011】
第3の特徴を有する本発明によれば、すり割り部を緊縮する締結部品としてのボルトによって、ステーをフロントフォークに固定すると同時にカバーでウィンカコード収容溝を覆うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図2は本発明の一実施形態に係るウィンカ装置を備えた自動二輪車の前部構造を示す斜視図である。自動二輪車1は、車体フレームを構成するメインフレーム(図示せず)の前端に接合されるヘッドパイプ2を有しており、このヘッドパイプ2によって、操舵装置3が支持されている。操舵装置3は、ヘッドパイプ2に回動自在に支持されたステアリングステム4aと、ステアリングステム4aの下部に設けられたアンダーブリッジ4bおよび上部に設けられたトップブリッジ5と、アンダーブリッジ4bおよびトップブリッジ5で支持された左右のフロントフォーク6、7と、トップブリッジ5に下部が取り付けられて上部が左右上方に延びている左右のステアリングハンドル8、9とからなる。フロントフォーク6、7には、下端部に前輪を支持するフロントアクスル(図示せず)が取り付けられる。
【0013】
ステアリングハンドル8、9の間にはクロスパイプ10が架け渡されており、クロスパイプ10の上には計器パネル11が設置されている。アンダーブリッジ4bには、1組のステー12が取り付けられ、このステー12によって支持されるヘッドライト13が設けられる。
【0014】
左右のフロントフォーク6、7の上部、つまりトップブリッジ5の下方には、それぞれ左右のウィンカ装置14、15が取り付けられている。ウィンカ装置14は、フロントフォーク6の円柱状外形に適合する形状の内径部を有するステー17とステー17に嵌合されたベース18とを有する。同様にウィンカ装置15は、フロントフォーク7の円柱状外形に適合する形状の内径部を有するステー19とステー19に嵌合されたベース20とを有する。ステー17、19はゴム状弾性体材料(熱可塑性オレフィンエラストマ等のポリマー素材)で形成するのが望ましい。ウィンカ装置14、15はそれぞれホルダ21、22に支持されたウィンカランプ(電球)23、24を有する。
【0015】
計器パネル11から引き出されたハーネス25は、ヘッドライト13に延長されるヘッドライトコード26とウィンカ装置14に延長されるウィンカコード27とを含んでいる。
【0016】
次に、ウィンカ装置を詳細に説明する。ウィンカ装置14、15は左右対称の構造であるので、車体右側に設けられるウィンカ装置15に関して説明する。図1は、ウィンカ装置の要部を示す後方からの斜視図であり、一部を分解して示した図である。図1において、トップブリッジ5はフロントフォーク7の上端に形成された小径部(フォークトップ)の外周が嵌る環状部28を有しており、この環状部28に下方から嵌入されたフロントフォーク7のフォークトップの上部からワッシャ29を介してボルト30がねじ込まれる。環状部28はフロントフォーク7の軸方向に切ったすり割り部281を有している。すり割り部281を形成した環状部28の部分には、すり割り部281の手前側(図1において)のボルト通し孔282と、このボルト通し孔282の延長上ですり割り部281の向こう側に形成されたねじ孔283とが設けられている。このねじ孔283にボルト31をねじ込んで、すり割り部281のギャップを縮めることにより、環状部28がフロントフォーク7に固定される。
【0017】
ウィンカ装置15のステー19は、フロントフォーク7の外周に嵌入される環状部32と、ベース20に連結される延長部つまりアーム部33とからなる。環状部32は、該環状部32の半径方向に延びた張り出し部分321を有しており、この張り出し部分321にはトップブリッジ5に設けられたのと同様のすり割り部322が環状部32の内径部に至る長さで形成されている。
【0018】
張り出し部分321にはボルト通し孔323が設けられており、ボルト34をボルト通し孔323に通し、ナット35にねじ込むことによってすり割り部322のギャップを縮め、これにより、環状部32がフロントフォーク7に締め付けられて固定される。ボルト34とナット35は、すり割り部322のギャップを縮める締結部品である。なお、ボルト34による締め付けと同時に後述のカバー36を取り付けることができる。
【0019】
環状部32には、外周側から切り込んだ溝37が形成されている。この溝37は前記張り出し部分321の付け根からアーム部33に至る範囲に形成されており、アーム部33がベース20に連結されたときに、ベース20の内部につながる。したがって、ベース20に固定されたバルブ24に電力を供給するウィンカコード27をベース20側からステー19のアーム部33を通して環状部32の外周に沿って引き出せる。
【0020】
前記溝37は環状部32の外周に開放されているので、ウィンカコード27が外部に露出していて見栄えがよくない。したがって、ウィンカコード27を収容した溝37を覆うカバーを取り付けるのがよい。図1に溝37を覆うカバー36を併せて示している。カバー36は、環状部32の外形に沿った形状を有するカバー本体部361と、カバー36を前記ボルト34によって張り出し部分321に取り付けるときに共締めされるベース(固定部)362とを備える。
【0021】
ベース362は、カバー本体部361から延長されたフランジ部363と、フランジ部363から該フランジ部363の面に直交する方向に延長されたカラー364と、フランジ部363から上方に延長された掛け金(係止部材)365とからなる。カラー364はボルト通し孔323に挿入されてボルト34の周囲を覆う管状部品であり、カバー36のベース362に溶接等によって接合される。掛け金365は、一旦フランジ部363から上方に延び、そこから水平方向に屈曲し、さらに上方に屈曲する形状を有する。
ボルト34によって、カバー36を張り出し部分321に固定する際、まず、カラー364をボルト通し孔323に挿入する。そして掛け金365の上部をトップブリッジ5のすり割り部281に係止させる。そうしておいて、ボルト34をベース362の孔366とカラー364に通し、ナット35をねじ込んで張り出し部分321を締め付け、これによってすり割り部322ののギャップを縮める。こうして、カバー36が張り出し部分321に固定されて溝37がカバーされると共に、ウィンカ装置15がフロントフォーク7の周りで変位回転されるのを防止することができる。
【0022】
図3は、カバー36を取り付けた状態のウィンカ装置の要部斜視図である。図3に示すように、ウィンカコード27は覆われ、掛け金365はトップブリッジ5に係合している。
【0023】
続いて、ウィンカ装置15の構造を詳細に説明する。図4は、ウィンカ装置15の一部断面斜視図である。ベース20のボス201には、アーム部33の先端部分331が挿入される孔202が設けられていて、先端部分331が孔202に嵌合されている。先端部分331は筒状であり、ウィンカコード27(中心線で示す)を先端部分331に固定するためのグロメット38が挿入されている。 電球24を支持するホルダ22はアーム部33の先端部分331とボス201との間に挟まれてボス201に固定されている。ベース20には、給電用接点39を電球24のプラス端子に押圧するばね装置40が設けられるとともに、接地用接点41が接合されている。
【0024】
ベース20の前面開口には電球24の光を指向させるレンズ42がはめ込まれている。給電用接点39と接地用接点41とがまとめられたウィンカコード27はグロメット38を通って環状部32側まで延び、溝37に引き出される。
【0025】
図5は、ステー19の断面図であり、図6は、図6のA−A位置での断面図である。図5、図6において、ステー19の環状部32にはカバー36がはめ込まれる領域371とウィンカコード27が収容される領域372とを形成するために段差を有する溝37が設けられている。アーム部33には、ウィンカコード27が通される孔(ウィンカコード通し孔)43が設けられている。図5に示すように、カバー36のカラー364は環状部32の張り出し部分321の孔323にはめ込まれ、カバー36のカバー本体部361は、溝37の領域371にはめ込まれて、溝37の領域372に収容されるウィンカコード27をカバーする。
【0026】
図7は、ウィンカ収容溝37の正面形状を示すスター19の要部正面図である。図7において、溝37は張り出し部分321側の幅b1よりアーム33側での幅b2が狭くなっており、この狭くなっている側の端部はアーム部33のウィンカ通し孔43に領域44で連通している。2点鎖線で示すようにウィンカコード27は領域44を通って溝37に引き出され、幅b1を有する広い側でカバー36の下方からカバー36の外に案内される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るウィンカ装置の要部を示す後方からの斜視図であり、一部を分解して示した図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るウィンカ装置を備えた自動二輪車の前部構造を示す斜視図である。
【図3】ウィンカ装置の要部斜視図である。
【図4】ウィンカ装置の一部断面斜視図である。
【図5】ステーの断面図である。
【図6】図5のA−A位置での断面図である。
【図7】ステーの要部正面図である。
【符号の説明】
【0028】
1…自動二輪車、 2…ヘッドパイプ、 5…トップブリッジ、 6、7…フロントフォーク、 14、15…ウィンカ装置、 17、19…ステー、 18、20…ベース、 23、24…ウィンカランプ、 27…ウィンカコード、 32…環状部、 33…アーム部、 34、35…ボルト・ナット(締結部品)、 36…カバー、 37…ウィンカコード収容溝、 321…張り出し部分、 322…すり割り部、 364…カラー、 365…係止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンカランプを収容するベースと、ベースをフロントフォークに取り付けるため前記ベースに連結されたステーとからなる自動二輪車のウィンカ装置において、
前記ステーがゴム状弾性体からなるとともに、フロントフォークの外周に適合し、一部にすり割り部を有する環状部と、該環状部から延長されて前記ベースに連結されるアーム部とからなり、
前記環状部に形成されたすり割り部のギャップを縮めて、フロントフォークに該環状部を締め付け固定するための締結部品を具備するとともに、
前記環状部の外周には周方向に沿って形成され、ウィンカランプに接続されるウィンカコードを前記環状部の外側に引き出すためのウィンカコード収容溝が形成されており、
前記締結部品に共締めされ、前記ウィンカコード収容溝を覆うカバーをさらに具備したことを特徴とする自動二輪車のウィンカ装置。
【請求項2】
前記カバーが、前記環状部に固定されているとともに、該環状部に対する固定部から上方に延長されて、フロントフォーク上部のトップブリッジに係合する係止部材を含んでいることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車のウィンカ装置。
【請求項3】
前記環状部のすり割り部から延長された張り出し部分に前記締結部品の一部としてのボルトを貫通させるボルト通し孔を具備し、
前記ボルトのカラーとして前記ボルト通し孔に挿入されるカラーが前記カバーと一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車のウィンカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−226965(P2009−226965A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71334(P2008−71334)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】