説明

自動二輪車のフレーム、自動二輪車

【課題】メインチューブとボディチューブとの接合個所の強度の向上を図ることができる自動二輪車を提供する。
【解決手段】メインチューブ52には、後下がりに傾斜して延伸する前側傾斜部521と前側傾斜部521の後端から連続し略下方に向かって湾曲する湾曲部522とが形成され、左右のボディチューブ8には、メインチューブ52の前側傾斜部521と湾曲部522との境界近傍に接合される接合部85と、接合部85の後端近傍において車幅方向に曲り上下方向には曲がっていない第一の曲り部81と、前記第一の曲り部81から後方に離間した位置において上下方向に曲がっている第二の曲り部82とが形成され、側面視において接合部85と第二の曲り部82との間の中心線CBがメインチューブ52の前側傾斜部521の中心線CMに略平行である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車のフレームと自動二輪車に関する。詳しくは、複数の金属部材が接合されて構成される自動二輪車のフレームと、このフレームを備える自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車のフレームには、ヘッドパイプと、メインチューブと、ボディチューブと、ダウンチューブとを含むものがある。ヘッドパイプは後傾する管状の部分であり、前輪およびハンドルを含む操舵装置が回転可能に連結される部分である。メインチューブは、前端がヘッドパイプに接合されており、ヘッドパイプから後方斜め下に向かって伸びる部分である。ダウンチューブは、ヘッドパイプの後部から下方に向かって伸びる部分と、この部分の下端から後方に向かって伸びてメインチューブの結合する部分とを有する。ボディチューブは、メインチューブから略後方に向かって伸びる部分である。ボディチューブの上側には、シートレールを介して着座シートが取り付けられる。これらのヘッドパイプ、メインチューブ、ダウンチューブ、ボディチューブは、一般的には鉄鋼材料により形成されており、互いに溶接されてフレームを構成する。
【0003】
フレームを構成する各部材は、一般的にはパイプ状の部材である。パイプ状の部材の溶接する構成としては、たとえば、特許文献1に記載のように、一方の部材の端部を他方の部材に突き当てて溶接する構成がある。また、特許文献2に記載のように、一方の部材の端部を他方の部材の表面の形状に倣って潰し、当該潰した部分を他方の部材の表面に重ね合わせて溶接する構成がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−82033号公報
【特許文献2】特開2002−193173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの構成は、次のような問題を有する。一方の部材の端部を他方の部材の表面に突き当てて溶接する構成では、溶接長さを長くすることが困難である。このため、溶接部にかかる応力が大きくなる。また、溶接部の形状が複雑になりやすいため、溶接の作業性が低い。さらに、一方の部材の端部を他方の部材の表面に倣った形状に形成する必要がある。このため、一方の部材の端部に複雑な機械加工を要することから、自動二輪車のフレームの生産性が低くなる。また、一方の部材の端部を潰して溶接する構成では、潰される部分と潰されない部分との境界において、断面の寸法および形状が急激に変化する。このため、この境界近傍に応力が集中する。そうすると、潰された部材の強度の確保が困難になる。さらに、一方の部材の中心線と他方の部材の中心線とが平行でない場合には、潰される部分を他方の部材の表面に重ねるために、潰される部分と潰されない部分との境界において曲げられることがある。曲げられた部分には応力が集中するため、強度の確保が困難になる。
【0006】
さらに、特許文献2に記載のように、シートを支持するボディチューブが、メインチューブの上部に接合される構成が用いられることがある。このような構成においては、シートを低くして運転者が地面に足をつけ易くするためには、メインチューブを低くする必要がある。メインチューブが低くなると、エンジンユニットを配置する領域が狭くなるため、エンジンユニットの取付などの作業性が悪化する。このように、操作性や乗り心地と、エンジンユニットなどに対する作業性とを両立させることは困難である。
【0007】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、接合個所の強度の向上を図ることができる自動二輪車のフレームと、自動二輪車を提供することである。また、本発明が解決しようとする課題は、メインチューブとボディチューブとの溶接個所の強度の向上を図ることができる自動二輪車のフレームと、自動二輪車を提供することである。また、本発明が解決しようとする課題は、着座シートを低くして操作性の向上を図りつつ、メインチューブの高さを維持してエンジンユニットに対する作業性の向上を図ることができる自動二輪車のフレームと、自動二輪車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の自動二輪車のフレームは、後下がりに傾斜して延伸する前側傾斜部と、前記前側傾斜部の後端から連続し略下方に向かって湾曲する湾曲部とが形成されるメインチューブと、前記メインチューブの前記前側傾斜部と前記湾曲部との境界近傍に接合される接合部と、前記接合部の後端近傍において車幅方向に曲り上下方向には曲がっていない第一の曲り部と、前記第一の曲り部から後方に離間した位置において上下方向に曲がっている第二の曲り部とが形成され、側面視において前記接合部と前記第二の曲り部との間の中心線が前記メインチューブの前記前側傾斜部の中心線に略平行なボディチューブとを有することを特徴とする。
【0009】
前記ボディチューブの前記接合部は、パイプ状の部材からなり略偏平に潰されて形成されることを特徴とする。
【0010】
前記ボディチューブには、前記第二の曲り部から略後方に向かって延伸し、運転者が着座できる着座シートを支持する部分が形成され、前記着座シートを支持する部分は、前記接合部よりも低い位置に形成される部分を有することを特徴とする。
【0011】
前記ボディチューブは、前記第二の曲り部から略後方に向かって略水平に延伸する部分と、前記略水平に延伸する部分の後端から後上がりに傾斜する部分とを有し、前記略水平に延伸する部分は、前記接合部よりも低い位置に形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明の自動二輪車は、前記自動二輪車のフレームを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の自動二輪車は、前記自動二輪車のフレームと、運転者が着座する着座シートとを備え、前記着座シートのうちの前記運転者が着座する部分は、前記ボディチューブのうちの前記接合部よりも低い位置に形成される部分の上側に位置することを特徴とする。
【0014】
本発明の自動二輪車は、前記自動二輪車のフレームと、運転者が着座する着座シートとを備え、前記着座シートのうちの前記運転者が着座する部分は、前記第二の曲り部から略後方に向かって略水平に延伸する部分の上側に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ボディチューブは、接合部の後端およびその近傍においては、左右方向(=車幅方向)にのみ曲り、上下方向には曲がっていない。このため、接合部の後端およびその近傍において、断面寸法および形状の変化を緩やかにすることにより、応力が集中することを防止または抑制できる。さらに、接合部の後端およびその近傍においては上下方向には曲がっていないから、ボディチューブに上下方向の荷重がかかった場合であっても、当該部分に上下方向の応力が集中することを防止できる。このように、ボディチューブの接合部の後端およびその近傍に応力が集中することを防止できる。
【0016】
ボディチューブの接合部がパイプ状の部材からなり略偏平に潰されて形成される構成であれば、接合部をプレス加工などによって容易に形成できる。このため、生産性の向上を図ることができる。そして、中心線の方向に沿って直線的に溶接することができるため、溶接長さを長くして接合強度(=溶接強度)の向上を図ることが容易となるとともに、生産性の向上を図ることができる。
【0017】
ボディチューブの接合部よりも低い位置に着座シートを設けることができるから、車高を低くすることなく、着座シートを低くすることができる。そして、着座シートを低くすることによって、運転者が地面に足をつけ易くなるから、操作性や乗り心地が向上する。また、車高を低くしなくてよいから、エンジンユニットが搭載される領域を狭くしなくてもよい。このため、エンジンユニットや他の所定の機器のレイアウトの自由度の維持または向上を図ることができる。また、自動二輪車に搭載されたエンジンユニットや他の所定の機器に対する作業性の維持または向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかる自動二輪車の構成を模式的に示した側面図である。
【図2】図2(a)は、本フレームの構成を模式的に示す平面図であり、図2(b)は、本フレームの構成を模式的に示す側面図である。
【図3】図3は、ボディチューブとメインチューブとの接合部を斜め後ろ上方から見た斜視図である。
【図4】図4は、ボディチューブとメインチューブとの接合部の側面図である。
【図5】図5(a)は、ボディチューブとメインチューブとの接合部を上から見た平面図であり、図5(b)は、ボディチューブとメインチューブとの接合部を下から見た平面図である。
【図6】図6は、図5(a)のVI−VI線断面図である。
【図7】図7は、図6のVII−VII線断面図である。
【図8】図8は、本フレームにエンジンユニットおよび後輪懸架装置が組み付けられた状態を示した側面図である。
【図9】図9は、本フレームにエンジンユニットおよび後輪懸架装置が組み付けられた状態を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。説明の便宜上、本発明の実施形態にかかる自動二輪車のフレームを、「本フレーム」と称し、本フレームが適用される自動二輪車を、「本自動二輪車」と称する。また、以下の説明において、本フレームおよび本自動二輪車の「前」「後」「上」「下」「右」「左」の各向きは、本自動二輪車に搭乗する運転者の向きを基準とする。各図においては、「前」を矢印Frで示し、「後」を矢印Rrで示し、「上」を矢印Tpで示し、「下」を矢印Btで示し、「右」を矢印Rで示し、「左」を矢印Lで示す。
【0020】
まず、本自動二輪車1と本フレーム5の全体構成について、図1と図2を参照して説明する。図1は、本自動二輪車1の構成を模式的に示す側面図であり、左側から見た図である。図2(a)は、本フレーム5の構成を模式的に示す平面図であり、上側から見た図である。図2(b)は、本フレーム5の構成を模式的に示す側面図であり左側から見た図である。図1に示すように、本自動二輪車1は、本フレーム5と、操舵装置11と、エンジンユニット12と、後輪懸架装置13と、排気装置14(図1においては隠れて見えない。図9参照)と、燃料タンク15と、着座シート16と、その他所定の機器や部材とを有する。
【0021】
操舵装置11は、ステアリングシャフト(図1においては隠れて見えない)と、ハンドル111と、左右一対のフロントフォーク112と、前輪113とを含み、本フレーム5の前部に、本フレーム5に対して回転可能に配置される。ステアリングシャフトは、ヘッドパイプ51に回転可能に支持される。ハンドル111は、ステアリングシャフトの上端に設けられる。左右一対のフロントフォーク112は、それぞれステアリングシャフトの左右に配置される。前輪113は、フロントフォーク112の下端に回転可能に支持される。ハンドル111は、左右のハンドルグリップを有する。右側のハンドルグリップには、スロットルグリップと、前輪113のブレーキレバーとが設けられる。左側のハンドルグリップには、クラッチを操作するためのクラッチレバーが設けられる。ハンドル111には、このほか、灯火類やクラクションを操作するためのスイッチ類が設けられる。
【0022】
エンジンユニット12は、本フレーム5のメインチューブ52とダウンチューブ53とにより形成される領域(図2参照)に配置される。エンジンユニット12は、シリンダアセンブリ121と、クランクケースアセンブリ122と、クラッチとを含む。シリンダアセンブリ121は、シリンダブロックと、シリンダヘッドと、シリンダヘッドカバーとを含む。シリンダブロックの内部には、燃焼室が形成されるとともに、ピストンが往復動可能に配設される。シリンダヘッドは、シリンダブロックの上側に設けられる。シリンダヘッドには、燃焼室とシリンダブロックの外部とを連通するインテークポートおよびエグゾーストポートが形成される。さらに、シリンダヘッドの内部には、インテークポートの開閉を制御する吸気バルブと、エグゾーストポートの開閉を制御する排気バルブとが配置される。吸気バルブは吸気側カムにより駆動され、排気バルブは排気側カムにより駆動される。シリンダヘッドカバーは、シリンダヘッドの蓋となる部材であり、シリンダヘッドの上側に配設される。クランクケースアセンブリ122の内部には、前側にクランク室が形成され、後側にミッション室が形成される。クランク室の内部には、クランクシャフトが回転可能に配設される。ミッション室の内部には、カウンターシャフトとドリブンシャフトとが回転可能に配設されるとともに、変速機が設けられる。クランクケースの左側外部には、ドリブンシャフトの端部が突出している。そして、ドリブンシャフトの端部には、ドライブチェーンスプロケット123が設けられる(図1においては隠れて見えない。図8参照)。ドライブチェーンスプロケット123は、スプロケットカバー124により覆われる。このほか、クランクケースの右側には、クラッチが配設される。さらに、クランクケースの左側であって、ドライブチェーンスプロケット123の前方には、発電機であるマグネトと、エンジンを始動させる始動装置が設けられる。
【0023】
後輪懸架装置13は、スイングアーム131と、リアクッションユニット132と、後輪133とを含み、本フレーム5の後部に設けられる。スイングアーム131は、駆動輪としての後輪133を支持する部材である。スイングアーム131の前端部は、フレームピボット55に上下方向に揺動可能に結合される。スイングアーム131の後端部には、エンドピースが設けられる。エンドピースは、略平板状に形成されるブラケットであり、溶接などによってスイングアーム131の後端部に一体に結合される。後輪133は、エンドピースに回転可能に支持される。後輪133の左側には、後輪133と一体に回転するドリブンチェーンスプロケット135が設けられる。そして、エンジンユニット12のドライブチェーンスプロケット123と、後輪133のドリブンチェーンスプロケット135に跨って、ドライブチェーン134が巻き掛けられる(図1においては隠れて見えない。図8参照)。そして、ドライブチェーン134とドリブンチェーンスプロケット135は、チェーンケース136に収容される。チェーンケース136はスイングアーム131に取り付けられる。リアクッションユニット132は、後輪133からボディチューブ8に伝達する振動や衝撃を緩和や吸収する機能を有する。リアクッションユニット132の上端はリアクッションブラケット58に回転可能に連結され、下端はエンドピースに回転可能に連結される。
【0024】
排気装置14は、消音器141と排気管142とを含む(図8参照)。消音器141は、エンジンユニット12の右側後方であって、後輪133の側方に配置される。排気管142の一方の端部は、エンジンユニット12のシリンダアセンブリ121のエグゾーストポートに接続される。他方の端部は、消音器141の前側に接続される。そして、排気管142は、エンジンユニット12のシリンダアセンブリ121の前側から前方に向かい、シリンダアセンブリ121の前方で後方に向かって湾曲し、シリンダアセンブリ121の側方を通過し、消音器141の前側に到達する。
【0025】
メインチューブ52の前側傾斜部521の上側には、燃料タンク15が配置される。ボディチューブ8の上側には、シートレール(図略)を介して、運転者および同乗者が着座する着座シート16が配置される。さらに、本自動二輪車1の外部には、フロントサイドカバーやリアサイドカバーが取り付けられる。なお、ボディチューブ8と着座シート16との位置関係については後述する。
【0026】
なお、前記の操舵装置11、エンジンユニット12、排気装置14、後輪懸架装置13の構成は一例であり、本発明は前記構成に限定されるものではない。
【0027】
次に、本フレーム5の全体的な構成について、図1と図2を参照して説明する。図2(a)(b)に示すように、本フレーム5は、ヘッドパイプ51と、メインチューブ52と、ダウンチューブ53と、左右一対のボディチューブ8と、左右一対のサイドチューブ54とを含む。さらに本フレーム5には、フレームピボット55と、第一の補強部材56と、第二の補強部材57と、エンジン懸架チューブ59と、リアクッションブラケット58と、前部クロスメンバー60と、中間部クロスメンバー61と、後部クロスメンバー62とが設けられる。そして、これらの部材が溶接されることによって、本フレーム5が構成される。
【0028】
ヘッドパイプ51は、後傾する筒状の部材である。ヘッドパイプ51には、前記のとおり操舵装置11が回転可能に取付けられる。
【0029】
メインチューブ52は、パイプ状の部材であり、本フレーム5および本自動二輪車1の左右方向(=車幅方向)の略中心に設けられる。メインチューブ52の前端(=上端)は、ヘッドパイプ51の後側上部に接合される。そして、メインチューブ52は、全体として、前端から後端(=下端)に向かって後下がりに傾斜する。具体的には、図2に示すように、メインチューブ52は、前側傾斜部521と、湾曲部522と、後側傾斜部523とを有する。前側傾斜部521は、略直線に形成される部分であり、ヘッドパイプ51の後側上部から後方斜め下に向かって後下がりに傾斜する部分である。湾曲部522は、前側傾斜部521の後端(=下端)から連なる部分であり、略下方に向かって所定の曲率をもって湾曲する部分である。後側傾斜部523は、略直線に形成される部分であり、湾曲部522の後端(=下端)から後方斜め下に向かって後下がりに傾斜する部分である。なお、後側傾斜部523の傾斜角度は、前側傾斜部521の傾斜角度よりもきつい。このように、メインチューブ52は、所定の角度をもって傾斜する前側傾斜部521の後側に、略下方に向かって湾曲する湾曲部522が形成されるという構成を備える。
【0030】
ダウンチューブ53は、パイプ状の部材であり、本フレーム5および本自動二輪車1の左右方向(=車幅方向)の略中心に設けられる。ダウンチューブ53の前端(=上端)は、ヘッドパイプ51の後側傾斜部523に接合され、後端(=下端)はメインチューブ52の後側傾斜部523の後端(=下端)に接合される。ダウンチューブ53の前部(=上部)は、水平方向に対してメインチューブ52の前側傾斜部521よりもきつい傾斜角度をもって後下がりに傾斜する。ダウンチューブ53の後部(=下部)は略水平に延伸する。そして、後下がりに傾斜する部分と略水平に延伸する部分との間は、所定の曲率をもって湾曲している。
【0031】
ヘッドパイプ51と、メインチューブ52の前端部と、ダウンチューブ53の前端部とに跨って、第一の補強部材56が接合される。第一の補強部材56には、平板状の部材が適用される。この第一の補強部材56によって、ヘッドパイプ51と、メインチューブ52と、ダウンチューブ53との接合強度の向上を図っている。さらに、メインチューブ52の前側傾斜部521の後端近傍(=前側傾斜部521と湾曲部522との境界近傍)と第一の補強部材56との間に跨って、エンジン懸架チューブ59が設けられる。このエンジン懸架チューブ59には、たとえば、パイプ状の部材が適用される。そして、本フレーム5のメインチューブ52とダウンチューブ53との囲まれる領域に、エンジンユニット12を配設するスペースが形成される。
【0032】
また、メインチューブ52の後側傾斜部523の後端とダウンチューブ53の後端との接合部の近傍には、フレームピボット55が設けられる。フレームピボット55は、後輪懸架装置13のスイングアーム131の前端部が揺動可能に連結される部材である。
【0033】
左右のボディチューブ8は、パイプ状の部材である。左右のボディチューブ8は、運転者や同乗者が着座する着座シート16を支持する機能を有する。左右のボディチューブ8は、前端がメインチューブ52の前側傾斜部521と湾曲部522との境界近傍に接合され、略後方に向かって延伸する。図2(a)(b)に示すように、左右のボディチューブ8のそれぞれには、前側から順に、接合部85と、第一の曲り部81と、第二の曲り部82と、第三の曲り部83と、第四の曲り部84とが形成される。接合部85は、メインチューブ52の前側傾斜部521の後端部または湾曲部522の上部に接合される部分である。第一の曲り部81は、接合部85の後端近傍に形成される部分であり、左右方向(=車幅方向)の外側に曲がっている部分である。なお、第一の曲り部81は、上下方向には曲がっていない。第二の曲り部82は、第一の曲り部81の後方から離間した位置に形成される部分であり、上下方向に曲がっている部分である。なお、第二の曲り部82は、左右方向には曲がっていない。第三の曲り部83は、第二の曲り部82から後方に離間した位置に形成される部分であり、左右方向に曲がっている部分である。ただし、第三の曲り部83は、上下方向には曲がっていない。第四の曲り部84は、第三の曲り部83から後方に離間した位置に形成される部分であり、上下方向に曲がっている部分である。ただし、第四の曲り部84は、左右方向には曲がっていない。
【0034】
そして、図2(b)に示すように、側面視において、接合部85と第二の曲り部82との間(接合部85を含む)は、メインチューブ52の前側傾斜部521と同じ傾斜角度をもって後下がりに傾斜する。すなわち、メインチューブ52の前側傾斜部521の中心線CMと、接合部85と第二の曲り部82との間の中心線CBとは、側面視において略平行である(図6参照)。第二の曲り部82と第四の曲り部84との間は、略水平に延伸する。第四の曲り部84よりも後側の部分は、後上がりに傾斜する。このため、第二の曲り部82と第四の曲り部84の間の略水平に延伸する部分は、接合部85よりも低い位置に形成される。また、図2(a)に示すように、上面視において、左右のボディチューブ8は、第一の曲り部81から第三の曲り部83の間の部分は、後に向かうにしたがって左右の間隔が広がり、第三の曲り部83よりの後側の部分は略平行である。なお、左右のそれぞれのボディチューブ8は、接合部85と第二の曲り部82との間に形成される第一の曲り部81において曲がっている。しかしながら、第一の曲り部81は、左右方向には曲がっているが、上下方向には曲がっていない。このため、図2(b)に示すように側面視においては、接合部85と第二の曲り部82との間の部分は、第一の曲り部81において曲がっているようには見えず、略直線に見える。
【0035】
このように、ボディチューブ8には、第二の曲り部82から略後方に向かって略水平に延伸する部分(=第二の曲り部82と第四の曲り部84との間の部分)と、この略水平に延伸する部分の後端から後上がりに傾斜する部分(=第四の曲り部84よりも後の部分)とを有する。そして、第二の曲り部82から略後方に向かって略水平に延伸する部分は、接合部85よりも低い位置に形成される。
【0036】
また、左右のボディチューブ8のそれぞれとメインチューブ52との接合箇所の近傍には、第二の補強部材57が設けられる。第二の補強部材57は、左右のメインチューブ52のそれぞれとメインチューブ52との接合強度の確保や向上のために設けられる部材である。具体的には、第二の補強部材57は板状の部材であり、ある一辺(ここでは上辺)が左右のメインチューブ52のそれぞれの第一の曲り部81と第二の曲り部82との間に接合され、他のある一辺(ここでは下辺)がメインチューブ52の湾曲部522に接合される。さらに、左右のボディチューブ8に跨って、前部クロスメンバー60と、中間部クロスメンバー61と、後部クロスメンバー62とが設けられる。前部クロスメンバー60と、中間部クロスメンバー61と、後部クロスメンバー62とは、左右のボディチューブ8を結合することによって本フレーム5の強度を確保する機能や、着座シート16を支持する機能や、他の所定の部材などを固定する機能を有する。たとえば、前部クロスメンバー60は、板状の部材であり、左右のボディチューブ8の第一の曲り部81と第二の曲り部82の間どうしにまたがって設けられる。中間部クロスメンバー61は、板状の部材であり、第二の曲り部82と第三の曲り部83の間どうしに跨って設けられる。後部クロスメンバー62は、パイプ状の部材であり、後上がりに傾斜する部分どうしに跨って設けられる。
【0037】
左右のサイドチューブ54は、左右のボディチューブ8を支持する部材である。左右のサイドチューブ54は、パイプ状の部材であり、左右のボディチューブ8のそれぞれとメインチューブ52およびフレームピボット55に跨るように設けられる。具体的には、図2(b)に示すように、左右のサイドチューブ54のそれぞれの上端は、左右のボディチューブ8のそれぞれの後上がりに傾斜する部分およびリアクッションブラケット58に接合される。一方、左右のサイドチューブ54のそれぞれ下端は、メインチューブ52の後側傾斜部523とフレームピボット55に接合される。
【0038】
リアクッションブラケット58は、リアクッションユニット132の上端が揺動可能に連結されるブラケットである。リアクッションブラケット58は、平板状の部材であり、左右のボディチューブ8のそれぞれの後上がりに傾斜する部分と、左右のサイドチューブ54のそれぞれの上端部とに跨って接合される。
【0039】
次に、本フレーム5のボディチューブ8の構成と、ボディチューブ8とメインチューブ52との接合部85の構成について、図3〜図7を参照して説明する。図3は、メインチューブ52とボディチューブ8の接合部85を斜め後ろ上方から見た斜視図である。図4は、メインチューブ52とボディチューブ8の接合部85の側面図である。図5(a)は、メインチューブ52とボディチューブ8の接合部85を上から見た平面図である。図5(b)は、メインチューブ52とボディチューブ8の接合部85を下から見た平面図である。図6は、図5のVI−VI線断面図である。図7は、図6のVII−VII線断面図である。
【0040】
図3〜図7に示すように、ボディチューブ8は、内部が空洞のパイプ状の部材により形成される。ボディチューブ8の前端には、軸線方向に所定の長さを有する接合部85が形成される。接合部85は、メインチューブ52の外周面に重ね合わされて接合(ここでは溶接)される部分である。このため、接合部85は、ボディチューブ8の前端部を、メインチューブ52の外周面の形状に合わせて、略偏平に潰すことによって形成される。たとえば、メインチューブ52が断面略円形のパイプ状の部材により形成される構成であれば、ボディチューブ8の接合部85は、略扁平な断面円弧形状に形成される。なお、接合部85の形成方法は、プレス加工などによって略偏平に潰す方法が適用できる。そして、接合部85がメインチューブ52の外周面に重ね合わせられ、その状態で、接合部85がメインチューブ52に溶接される。このような構成であると、接合部85の中心線CBの方向の寸法を長くすることによって、接合部85とメインチューブ52の溶接長さを長くすることができる。したがって、ボディチューブ8とメインチューブ52の接合強度(=溶接強度)の向上を図ることが容易となる。さらに、接合部85とメインチューブ52とを略直線に溶接できるから、接合作業(=溶接作業)の単純化を図ることができる。したがって、生産性の向上を図ることができる。
【0041】
特に図4と図5(a)に示すように、接合部85の後端近傍には、第一の曲り部81が形成される。第一の曲り部81は、左右方向(=車幅方向)の外側に曲がっているが(特に図5(a)参照)、上下方向には曲がっていない(特に図4参照)部分である。第一の曲り部81から後方に離間した位置に、第二の曲り部82が形成される。第二の曲り部82は、上下方向には曲がっているが(特に、図4参照)、左右方向には曲がっていない(特に、図5(a)参照)部分である。このため、特に図4と図6に示すように、側面視において、接合部85から第二の曲り部82に掛けての中心線CBは、メインチューブ52の前側傾斜部521の中心線CMと略平行となり、後下がりに傾斜する。このような構成であると、接合部85の後端およびその近傍に応力が集中することを防止できる。この理由は次のとおりである。一般的に、部材の断面の寸法形状が変化する箇所には応力が集中しやすい。また、部材が曲がっている個所には、曲がり方向の応力が集中しやすい。そこで、ボディチューブ8の後端に形成される第一の曲り部81を、左右方向(=車幅方向)にのみ曲げ、上下方向には曲がっていない構成とすることにより、接合部85の後端近傍における断面の寸法および形状の変化を緩やかにすることができる。このため、断面の寸法および形状の変化に起因する応力の集中を緩和することができる。さらに、左右方向にのみ曲り、上下方向に曲がっていない構成とすることにより、上下方向の応力が第一の曲り部81に集中することを防止できる。したがって、全体として、接合部85の後端近傍に応力が集中することを防止または抑制できる。その結果、ボディチューブ8に要求される強度を低くすることができ、ボディチューブ8の軽量化や構造の簡素化を図ることができる。
【0042】
特に図4と図5(b)と図7に示すように、左右のボディチューブ8のそれぞれの第一の曲り部81と第二の曲り部82との間と、メインチューブ52の湾曲部522とに跨って、第二の補強部材57が接合される。具体的には、第二の補強部材57は板状の部材であり、ある一辺が左右のボディチューブ8のそれぞれの第一の曲り部81と第二の曲り部82との間に溶接され、他のある一辺がメインチューブ52の湾曲部522に溶接される。そして、第二の補強部材57によって、ボディチューブ8とメインチューブ52との接合強度の確保や向上を図ることができる。さらに、左右のボディチューブ8の第一の曲り部81と第二の曲り部82との間どうしに跨って、前部クロスメンバー60が設けられる。具体的には、前部クロスメンバー60は板状の部材であり、ある一辺が一方のボディチューブ8の第一の曲り部81と第二の曲り部82との間に溶接され、他のある一辺が、他方のボディチューブ8の第一の曲り部81と第二の曲り部82との間に溶接される。前部クロスメンバー60は、本フレーム5の剛性の確保や向上を図る機能を有するほか、他の所定の部材を取り付けるためのブラケットとしての機能を有する。
【0043】
第二の曲り部82においては、上下方向にのみ曲り、左右方向には曲がっていない。そして、第二の曲り部82から後方に離間した位置に、第三の曲り部83が形成され、さらに第三の曲り部83から後方に離間した位置に、第四の曲り部84が形成される。第三の曲り部83は、左右方向にのみ曲り、上下方向には曲がっていない部分である。第四の曲り部84は、上下方向に曲がっている部分である。そして、側面視において、第二の曲り部82から第四の曲り部84にかけての部分は、略水平に延伸する。第四の曲り部84よりも後側は、後上がりに傾斜する。このような構成によれば、第二の曲り部82と第四の曲り部84との間の部分(=略水平に延伸する部分)は、接合部85よりも低い位置に形成される。また、第一の曲り部81から第三の曲り部83にかけての部分は、後方に向かうにしたがって、左右のボディチューブ8の間隔が徐々に広がっていく。そして、第三の曲り部83において左右方向に曲がっており、第三の曲り部83よりも後側においては、左右のボディチューブ8が略平行になる。
【0044】
次に、本フレーム5と他の装置や部材との関係について、図8や図9などを参照して説明する。図8は、本フレーム5にエンジンユニット12および後輪懸架装置13が組み付けられた状態を示した側面図である。図9は、本フレーム5にエンジンユニット12および後輪懸架装置13が組み付けられた状態を示した平面図である。図8と図9に示すように、本フレーム5のメインチューブ52とダウンチューブ53とに囲まれる領域に、エンジンユニット12が配置される。具体的には、エンジンユニット12は、エンジン懸架チューブ59に取り付けられる上部ブラケット66と、ダウンチューブ53に取り付けられる下部ブラケット65と、フレームピボット55とを介して、ボルトやネジなどによって、本フレーム5に固定される。ボディチューブ8とメインチューブ52とサイドチューブ54とに囲まれる領域には、エアクリーナ17などの吸気に関する機器や部材が配置される。後輪懸架装置13のスイングアーム131の前端が、フレームピボット55に上下方向に揺動可能に連結される。さらに、後輪懸架装置13のリアクッションユニット132の上端が、リアクッションブラケット58に揺動可能に連結される。
【0045】
図8と図9に示すように、ボディチューブ8の上側には、シートレール(図略)を介して、運転者と同乗者が着座できる着座シート16が設けられる。特に図8に示すように、着座シート16における運転者が着座する部分161は、ボディチューブ8の第二の曲り部82と第四の曲り部84との間(=第二の曲り部82から略後方に向かって略水平に延伸する部分)の上側に位置する。換言すると、着座シート16における運転者が着座する部分161は、ボディチューブ8の接合部85よりも低い位置に設けられる部分の上側に位置する。このような構成によれば、着座シート16における運転者が着座する部分161を低くできるから、運転者は地面に足をつけ易くなる。したがって、本自動二輪車1の操作性や乗り心地の向上を図ることができる。
【0046】
本フレーム5および本自動二輪車1の作用効果をまとめると、次のとおりである。
【0047】
本フレーム5のボディチューブ8は、接合部85の後端およびその近傍においては、左右方向(=車幅方向)にのみ曲り、上下方向には曲がっていない。このため、接合部85の後端およびその近傍において、断面寸法および形状の変化を緩やかにできる。一般的には、断面寸法および形状が急激に変化する箇所には応力が集中しやすい。本フレーム5のボディチューブ8は、接合部85の後端およびその近傍の断面寸法および形状の変化が緩やかであるため、当該箇所に応力が集中することが防止または抑制される。さらに、接合部85の後端およびその近傍においては上下方向には曲がっていないから、ボディチューブ8に上下方向の荷重がかかった場合であっても、当該部分に上下方向の応力が集中することを防止または抑制できる。このように、本フレーム5によれば、ボディチューブ8の接合部85の後端およびその近傍に応力が集中することを防止または抑制できる。したがって、ボディチューブ8に要求される強度を低くすることができ、本フレーム5の軽量化や構造の簡素化を図ることができる。
【0048】
本フレーム5のボディチューブ8の接合部85は、パイプ状の部材を略偏平に潰すことによって形成される。このような構成であれば、プレス加工などによって、接合部85を容易に形成することができる。これに対して、たとえば、ボディチューブ8をメインチューブ52に突き合わせて溶接する構成では、ボディチューブ8の端部をメインチューブ52の外周面の寸法および形状に応じて加工する必要がある。このため、加工に手間を要する。本フレーム5においては、接合部85の形成が容易であるから、本フレーム5の生産性の向上を図ることができる。さらに、接合部85の軸線方向長さを長くすることにより、ボディチューブ8とメインチューブ52との溶接長さを容易に長くできる。このため、ボディチューブ8をメインチューブ52に突き合わせて溶接する構成と比較すると、接合強度の向上を図ることが容易である。さらに、接合部85の中心線CBの方向に沿って直線的に溶接できるため、溶接作業を単純化できる。したがって、生産性の向上を図ることができる。
【0049】
本フレーム5のボディチューブ8は、接合部85の後端で上下方向に曲がっておらず、そのまま後下がりに傾斜しており、後側に向かうにしたがって高さが低くなる。そして、略水平に延伸する部分の高さを、接合部85よりも低い位置に設けることができる。このため、メインチューブ52の高さを低くすることなく(または、高くしつつ)、着座シート16の高さ(厳密には、着座シート16における運転者が着座する部分161の高さ)を低くすることができる。メインチューブ52の前側傾斜部521の高さが低くならないから(または、高くなるから)エンジンユニット12が配置される領域の寸法が小さくならない(または大きくなる)。このため、エンジンユニット12や他の所定の機器のレイアウトの自由度が低下しない(または自由度の向上を図ることができる)。また、エンジンユニット12や他の所定の機器の取付けや、取り付けられたエンジンユニット12や他の所定の機器に対する作業性が悪化することを防止できる(または、作業性の向上を図ることができる)。そして、着座シート16を低くできるから、運転者は地面に足をつけ易くなる。このため、本自動二輪車1の操作性や乗り心地の向上を図ることができる。このように、本フレーム5は、エンジンユニット12などのレイアウトの自由度の維持または向上や作業性の維持または向上と、操作性や乗り心地の向上の両立を図ることができる。
【0050】
なお、メインチューブ52が低くならないようにしつつ、ボディチューブ8を低くする構成としては、たとえば、ボディチューブ8とメインチューブ52との接合箇所を、メインチューブ52の後端側(=下端側)の低い位置に移動させるという構成が考えられる。しかしながらこのような構成は、次のような問題を有する。メインチューブ52は、後端側に向かうにしたがって、傾斜が強くなる。このため、ボディチューブ8とメインチューブ52との接合箇所をメインチューブ52の後端側に移動させると、当該接合箇所におけるボディチューブ8の中心線CBとメインチューブ52の中心線CMがなす角度が大きくなる。このため、ボディチューブ8は、接合部85の後端およびその近傍において、上下方向に大きく曲がっている必要がある。そうすると、ボディチューブ8の接合部85の後端およびその近傍に、上下方向の応力が集中しやすくなる。この結果、この部分の強度の向上を図る必要が生じ、ボディチューブ8や、ボディチューブ8とメインチューブ52との接合箇所が、大型化したり構造が複雑になったりする。これに対して本フレーム5においては、ボディチューブ8とメインチューブ52との接合箇所が、メインチューブ52の前側傾斜部521の後端部または湾曲部522の上部に設けられる。このため、ボディチューブ8の接合部85の後端およびその近傍を上下方向に曲げる必要がなくなる。換言すると、ボディチューブ8は、メインチューブ52からなだらかに分岐する。したがって、接合部85およびその近傍に、特に上下方向の応力が集中することを防止できる。
【0051】
以上、本発明の実施形態(実施例)について詳細に説明したが、前記実施形態(実施例)は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したに過ぎない。本発明の技術的範囲は、前記実施形態(実施例)に限定されるものではない。本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0052】
前記実施形態においては、メインチューブ52およびボディチューブ8が、断面略円形のパイプ状の部材からなる構成を示したが、メインチューブ52およびボディチューブ8の断面形状は、略円形に限定されるものではない。メインチューブ52およびボディチューブ8の断面形状は、たとえば楕円や、四角形などの多角形であってもよい。要は、ボディチューブ8の接合部85が、メインチューブ52の外周面に重ね合わせることができる構成であればよい。たとえば、メインチューブ52が断面四角形の部材からなる構成であれば、ボディチューブ8の接合部85には、断面略直線または断面略「L」字形状に潰される構成が適用できる。
【0053】
また、前記実施形態においては、メインチューブ52が本自動二輪車1の左右方向(=車幅方向)の中心を通る一本のパイプ状の部材である構成を示したが、本発明はこのような構成に限定されない。たとえば、互いに略平行な左右一対のメインチューブ52を備える自動二輪車にも適用できる。この場合には、左右それぞれのメインチューブ52に、左右それぞれのボディチューブ8が接合される構成が適用できる。そして、左右のボディチューブ8は、左右のメインチューブ52からそれぞれ内側に向かって分岐するような構成であってもよく、外側に向かって分岐するような構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、自動二輪車のフレームと、自動二輪車に適用できる。そして、本発明によれば、接合部の後端およびその近傍において、断面寸法および形状の変化を緩やかにすることにより、応力が集中することを防止または抑制できる。さらに、接合部の後端およびその近傍においては上下方向には曲がっていないから、ボディチューブに上下方向の荷重がかかった場合であっても、当該部分に上下方向の応力が集中することを防止できる。このように、ボディチューブの接合部の後端およびその近傍に応力が集中することを防止できる。
【符号の説明】
【0055】
1:本発明の実施形態にかかる自動二輪車、5:本発明の実施形態にかかるフレーム、15:燃料タンク、8:ボディチューブ、16:着座シート、161:着座シートの運転者が着座する部分、51:ヘッドパイプ、52:メインチューブ、81:ボディチューブの第一の曲り部、82:ボディチューブの第二の曲り部、83:ボディチューブの第三の曲り部、84:ボディチューブの第四の曲り部、85:ボディチューブの接合部、521:メインチューブの前側傾斜部、522:メインチューブの湾曲部、CM:メインチューブの前側傾斜部の中心線、CB:ボディチューブの接合部から第二の曲り部にかけての部分の側面視における中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後下がりに傾斜して延伸する前側傾斜部と、前記前側傾斜部の後端から連なり略下方に向かって湾曲する湾曲部とが形成されるメインチューブと、
前記メインチューブの前記前側傾斜部の後端部または湾曲部の上部に接合される接合部と、前記接合部の後端近傍において車幅方向に曲り上下方向には曲がっていない第一の曲り部と、前記第一の曲り部から後方に離間した位置において上下方向に曲がっている第二の曲り部とが形成され、側面視において前記接合部と前記第二の曲り部との間の中心線が前記メインチューブの前記前側傾斜部の中心線に略平行なボディチューブと、
を有することを特徴とする自動二輪車のフレーム。
【請求項2】
前記ボディチューブの前記接合部は、パイプ状の部材からなり略偏平に潰されて形成されることを特徴とする請求項1に記載の自動二輪車のフレーム。
【請求項3】
前記ボディチューブには、前記第二の曲り部から略後方に向かって伸び、運転者が着座できる着座シートを支持する部分が形成され、前記着座シートを支持する部分は、前記接合部よりも低い位置に形成される部分を有することを特徴とする請求項1または2に記載の自動二輪車のフレーム。
【請求項4】
前記ボディチューブは、前記第二の曲り部から略後方に向かって略水平に延伸する部分と、前記略水平に延伸する部分の後端から後上がりに傾斜する部分とを有し、前記略水平に延伸する部分は、前記接合部よりも低い位置に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の自動二輪車のフレーム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の自動二輪車のフレームを備えることを特徴とする自動二輪車。
【請求項6】
請求項3に記載の自動二輪車のフレームと、
運転者が着座する着座シートと、
を備え、
前記着座シートのうちの前記運転者が着座する部分は、前記ボディチューブのうちの前記接合部よりも低い位置に形成される部分の上側に位置することを特徴とする自動二輪車。
【請求項7】
請求項4に記載の自動二輪車のフレームと、
運転者が着座する着座シートと、
を備え、
前記着座シートのうちの前記運転者が着座する部分は、前記第二の曲り部から略後方に向かって略水平に延伸する部分の上側に位置することを特徴とする自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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