説明

自動二輪車用後部灯火器構造

【課題】視認性を確保しながら、後部灯火器の外観性、商品性を向上させることができる自動二輪車用後部灯火器構造を提供する。
【解決手段】リフレクタ102と、リフレクタ102に取付けられたテールランプバルブ82、テール・ストップランプバルブ83と、バルブ82,83の後方に配置されるとともにテールランプリフレクタ部103に取付けられたレンズ91とからリヤコンビネーションランプが構成され、リヤコンビネーションランプは、自動二輪車に取付けられた状態では、レンズ91が後斜め上方に傾斜して設けられ、レンズ91の上半部に、車幅方向に亘って凹凸加工が施された均一発光意匠面としてのカットレンズ部92が形成され、レンズ91の下半部に、カットレンズ部92の延長線132より車体前方に配置されたクリアレンズ面としてのクリアレンズ部93が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用後部灯火器構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の自動二輪車用後部灯火器構造として、方向指示ランプのレンズに、外部からバルブが見えるクリアレンズ部と、乱反射によってバルブを見えにくくするカット部とを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の図3、図4によれば、方向指示ランプ20は、レンズ30の中央部にバルブ21に臨む透明なクリアレンズ部31と、このクリアレンズ部31を囲むようにレンズ30の周縁部に乱反射を促す凹凸が形成されたカット部32とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3580516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、方向指示ランプ20をテールランプと一体にしてコンビネーションランプとし、車両後方から見たときに視認性が高まるように、方向指示ランプ20の発光面積を大きくした場合には、クリアレンズ部31とカット部32とで発光強さの差が大きくなることが考えられる。
【0006】
クリアレンズ部31は、図4に示すように、地面に対する鉛直方向上下に延在して位置しているため、方向指示ランプ20を自動二輪車の後方から人が斜め上方から見たときに、クリアレンズ部31とカット部32との両方が見え、上記したように、クリアレンズ部31を通してバルブ21の光が直接目に入るとともにクリアレンズ部31とカット部32との発光強さの差が認識されるので、一層発光強さの違いが視認されやすくなる場合が考えられる。
【0007】
更に、上記のような後部灯火器の商品性を向上させるために、例えば、自動二輪車の後方から人が見たときに、後部灯火器がスリムでシンプルに見えることにより、車両後部の軽快感をデザインすることも望まれる場合がある。
【0008】
本発明の目的は、前記の課題を解決することにより、視認性を確保しながら、後部灯火器の外観性、商品性を向上させることができる自動二輪車用後部灯火器構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、リフレクタと、このリフレクタに取付けられたバルブと、このバルブの後方に配置されるとともにリフレクタに取付けられたレンズとから構成された自動二輪車用後部灯火器構造において、後部灯火器が、自動二輪車に取付けられた状態では、レンズが後斜め上方に傾斜して設けられるとともに、レンズの上半部に、車幅方向に亘って凹凸加工が施された均一発光意匠面が形成され、レンズの下半部に、均一発光意匠面の延長線より車体前方に配置されたクリアレンズ面が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、バルブが、自動二輪車の後方から水平に見た場合に、クリアレンズ面を通して視認されることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、後部灯火器が、車体後部にテールランプと一体に設けられる左右一対のウインカを備え、均一発光意匠面が、車体側部から車体中心部に向かって次第に上下幅が増加するように形成され、バルブの基準軸が、車体後方にいくにつれて車体中心部側へ近づくように傾斜していることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、クリアレンズ面が、均一発光意匠面よりも緩やかに傾斜していることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、後部灯火器が、左右のウインカ間にテールランプを備え、左右のウインカに設けられた均一発光意匠面側から車体中心部に延びるようにテールランプに設けられた均一発光意匠面がレンズの上半部に形成され、このテールランプの均一発光意匠面が、その後方から水平に見たときに、上に凸に湾曲した帯状形状であってテールランプに設けられたストップランプ用バルブを兼ねるテール・ストップランプバルブの上方に設けられ、このテール・ストップランプバルブの後方にテールランプに設けられたクリアレンズ面が配置されることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、テールランプの均一発光意匠面における車体中心側の前方に且つテール・ストップランプバルブの上方にテールランプバルブが設けられ、テール・ストップランプバルブが、左右のウインカバルブを通って車幅方向に延びる水平線上に配置されることを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明は、テールランプのクリアレンズ面が、テールランプの均一発光意匠面の延長線よりも前方に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、後部灯火器が、自動二輪車に取付けられた状態では、レンズが後斜め上方に傾斜して設けられるとともに、レンズの上半部に、車幅方向に亘って凹凸加工が施された均一発光意匠面が形成され、レンズの下半部に、均一発光意匠面の延長線より車体前方に配置されたクリアレンズ面が形成されているので、自動二輪車の後方から人が後部灯火器を見たときに、後部灯火器を斜め上方から見ることになり、レンズ上半部の均一発光意匠面が見えやすくなるとともにレンズ下半部のクリアレンズ面が見えにくくなり、バルブの光の大部分が均一発光意匠面を通して均一に発光するように認識されるため、後部灯火器の外観性を向上させることができる。
【0017】
また、人が斜め上方から後部灯火器を見たときに、後部灯火器の上下幅が小さくなり、均一発光意匠面のみからなるスリムでシンプルな意匠として認識され、後部灯火器の商品性を向上させることができる。
【0018】
更に、自動二輪車の後方の車両に乗車した人が後部灯火器を見たときに、後部灯火器をほぼ水平に見ることになり、後部灯火器のレンズのクリアレンズ面を通してバルブの強い光を認識させることができ、後部灯火器の視認性を向上させることができる。
【0019】
請求項2に係る発明では、バルブが、自動二輪車の後方から水平に見た場合に、クリアレンズ面を通して視認されるので、車両走行中に、自車の後方の車両からは後部灯火器をほぼ水平に見ることになり、クリアレンズ面を通してバルブの発光を視認させることができ、後部灯火器の視認性を向上させることができる。
【0020】
請求項3に係る発明では、後部灯火器が、車体後部にテールランプと一体に設けられる左右一対のウインカを備え、均一発光意匠面が、車体側部から車体中心部に向かって次第に上下幅が増加するように形成され、バルブの基準軸が、車体後方にいくにつれて車体中心部側へ近づくように傾斜しているので、車幅方向に幅広い均一発光意匠面を形成しながらも、車体中心側で均一発光意匠面の面積を大きくするとともにバルブの光をより車体中心部側へ指向させることで、後方からのウインカの視認性を向上させることができる。
【0021】
請求項4に係る発明では、クリアレンズ面が、均一発光意匠面よりも緩やかに傾斜しているので、クリアレンズ面が、後方斜め上方から視認されにくくなり、レンズ上半部の均一発光意匠面を強調することができ、後部灯火器のスリム感を際立たせることができる。
【0022】
請求項5に係る発明では、後部灯火器が、左右のウインカ間にテールランプを備え、左右のウインカに設けられた均一発光意匠面側から車体中心部に延びるようにテールランプに設けられた均一発光意匠面がレンズの上半部に形成され、このテールランプの均一発光意匠面が、その後方から水平に見たときに、上に凸に湾曲した帯状形状であってテールランプに設けられたストップランプ用バルブを兼ねるテール・ストップランプバルブの上方に設けられ、このテール・ストップランプバルブの後方にテールランプに設けられたクリアレンズ面が配置されるので、左右のウインカの均一発光意匠面から車体中心部に延びるようにテールランプの均一発光意匠面がレンズの上半部に形成されることで、車体後部を斜め上方から見たときに、ウインカの均一発光意匠面とテールランプの均一発光意匠面とが左右に連続するように視認されるため、左右のウインカが車体側方に向かって上下幅が次第に狭くなるとともに左右のウインカ間が同様な上下幅で繋がれたコンビネーションランプの意匠を提供することができ、魅力ある外観性として商品性を高めることができる。
【0023】
請求項6に係る発明では、テールランプの均一発光意匠面における車体中心側の前方に且つテール・ストップランプバルブの上方にテールランプバルブが設けられ、テール・ストップランプバルブが、左右のウインカバルブを通って車幅方向に延びる水平線上に配置されるので、左右のウインカバルブとテール・ストップランプバルブが同時に点灯した際に同じ高さに認識されやすく、違和感なく認識させることができる。
【0024】
更に、左右のウインカバルブ側とテール・ストップランプバルブ側のそれぞれの均一発光意匠面の発光の強さを同じレベルに感じられるように調整して、より協調性のある発光にすることができる。
【0025】
請求項7に係る発明では、テールランプのクリアレンズ面が、テールランプの均一発光意匠面の延長線よりも前方に位置するので、テールランプの均一発光意匠面の視認性も左右のウインカと同様に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る後部灯火器構造を備える自動二輪車の側面図である。
【図2】本発明に係る自動二輪車の背面図である。
【図3】本発明に係る自動二輪車の後部平面図である。
【図4】本発明に係る自動二輪車の後部側面図である。
【図5】本発明に係る後部灯火器の背面図である。
【図6】本発明に係る後部灯火器からレンズを外した状態を示す背面図である。
【図7】図5の7−7線断面図である。
【図8】図5の8−8線断面図である。
【図9】図5の9−9線断面図である。
【図10】本発明に係る後部灯火器構造の作用を示す作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中の左、右、前、後は車両に乗車した運転者を基準にした向きを示している。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0028】
本発明の実施例を説明する。図中の矢印(FRONT)は車両前方を表している。
図1に示すように、自動二輪車10は、骨格となる車体フレーム11が主に、左右一対のメインフレーム12,12(手前側の符号12のみ図示)と、これらのメインフレーム12,12の後端部に連結された左右一対のピボットプレート13,13(手前側の符号13のみ図示)とから構成され、メインフレーム12,12の前端部に操舵自在にフロントフォーク14が支持され、メインフレーム12,12及びピボットプレート13,13に変速機一体型のエンジン16が支持され、ピボットプレート13,13にピボット軸17を介してスイングアーム18が上下スイング自在に支持された車両である。
【0029】
フロントフォーク14は、上部の前方及び両側方がカウリング21で覆われ、フロントフォーク14の上端部にバーハンドル22、下端部に前輪23及びブレーキキャリパ24が取付けられている。
【0030】
カウリング21は、ヘッドランプ26が取付けられたフロントカウル27と、このフロントカウル27の側方から後方及び下方に広がる左右一対のサイドカウル28,28(手前側の符号28のみ図示)とからなる。なお、符号31,31はフロントカウル27に取付けられた左右一対のフロントウインカ、32はフロントカウル27の上部から上方斜め後方に延びるウインドスクリーンである。
【0031】
前輪23は、上方がフロントフォーク14に取付けられたフロントフェンダ34で覆われている。
ブレーキキャリパ24は、前輪23に一体的に取付けられたブレーキディスク35とでフロントディスクブレーキ36を構成している。
【0032】
エンジン16は、そのクランクケース内に、車幅方向に延びるクランクシャフト41と、このクランクシャフト41の一端にロータ、他端にステータが取付けられたACゼネレータ42とが設けられている。
【0033】
スイングアーム18は、前端部がピボット軸17に取付けられ、後端部に後輪44が取付けられ、内部にエンジン16の後部に設けられた変速機45から後輪44に動力を伝達するドライブシャフト(不図示)が収納されている。なお、符号47はリヤディスクブレーキを構成するブレーキディスク、48はピボットプレート13の下端部に取付けられたメインスタンドである。
【0034】
ピボットプレート13,13は、後部上部に左右一対のシートレール51,51(手前側の符号51のみ図示)と左右一対のサブフレーム52,52(手前側の符号52のみ図示)とが取付けられ、これらのシートレール51,51とサブフレーム52,52との後端部同士が連結されている。
【0035】
シートレール51,51にはシート54及びこのシート54の後方に配置されたリヤコンビネーションランプ55が取付けられ、シートレール51,51及びサブフレーム52,52に後輪44の上方を覆うリヤフェンダ56が取付けられている。
【0036】
ここで、符号57は車体フレーム11の上部に取付けられた燃料タンク、58,58(手前側の符号58のみ図示)はシート54の側部下方を覆う左右一対のサイドカバー、59,59(手前側の符号59のみ図示)はシート54の後部に着座した同乗者が掴む左右一対のグラブレール、61はライセンスプレート、62はライセンスプレートランプ、63はリフレックスリフレクタである。
【0037】
左右のシートレール51,51間であってシート54の下方にACゼネレータ42の出力を制御するレギュレータ65が配置され、このレギュレータ65は、図示せぬバッテリに接続されている。
【0038】
図2に示すように、リヤコンビネーションランプ55は、中央部に配置されてブレーキランプを兼ねるテールランプ71と、このテールランプ71の両側に配置されたリヤウインカ72,73とが組み合わされた一体構造で大型の灯火装置である。
【0039】
リヤコンビネーションランプ55より下方には、リヤフェンダ56に取付けられたライセンスプレートランプ62、リフレックスリフレクタ63、ライセンスプレート61が上から順に配置され、ライセンスプレート61がライセンスプレートランプ62で照らされ、リフレックスリフレクタ63に入射した光がほぼその入射した方向に反射される。なお、符号75はエンジン16に接続された排気装置を構成するマフラである。
【0040】
図3に示すように、リヤコンビネーションランプ55は、後方にV字状に突出したテールランプ71と左右に突出したリヤウインカ72,73とが連結されて一体化されたものであり、シート54の後方で且つテールランプ71の上方はリヤセンタカバー77で覆われ、リヤウインカ72,73の上方はそれぞれリヤサイドカバー78,79で覆われている。
【0041】
図4では、リヤコンビネーションランプ55の露出している部分の輪郭を太い実線で示し、リヤフェンダ56、リヤセンタカバー77及びリヤサイドカバー78,79(手前側の符号78のみ図示)で覆われた部分の輪郭を太い破線で示している。
【0042】
テールランプ71は、露出している部分については、後方斜め上方に突出するように形成され、その背面71a(後述するカットレンズ部及びクリアレンズ部の背面)は後上がりに傾斜し、内部については、上部にテールランプバルブ82、下部にテールランプバルブとストップランプバルブを兼ねるテール・ストップランプバルブ83が取付けられている。
【0043】
また、リヤウインカ72,73(手前側の符号72のみ図示)は、露出している部分については、テールランプ71よりも前方斜め下方に配置され、テールランプ71と同様に、後方斜め上方に突出するように形成されるとともに背面72a,73a(手前側の符号72aのみ図示)は後上がりに傾斜し、内部については、テール・ストップランプバルブ83よりも前方にウインカバルブ85,86(手前側の符号85のみ図示)が取付けられている。
【0044】
図5に示すように、テールランプ71は、車体の車幅方向中央を通って鉛直に延びる車体中心線90に対して左右対照であり、車体中心線90上にテールランプバルブ82及びテール・ストップランプバルブ83が配置されている。
【0045】
テールランプ71を構成するレンズ91は、その上半部に乱反射を促す凹凸が内面に形成されたカットレンズ部92、下半部に透明なクリアレンズ部93が設けられ、カットレンズ部92の奥にテールランプバルブ82が配置され、クリアレンズ部93の奥にテール・ストップランプバルブ83が配置されている。
カットレンズ部92は、左右に長く、上に凸に湾曲した帯状の部分であり、クリアレンズ部93は、上に山形に突出した剣先状の部分である。
【0046】
リヤウインカ72,73は、車体中心線90に対して左右対照であり、テールランプ71のテール・ストップランプバルブ83の中心を通って水平に延びる水平線95上にウインカバルブ85,86が配置されている。
【0047】
リヤウインカ72,73を構成するレンズ96,96はそれぞれ、その上半部に、テールランプ71のカットレンズ部92に隣接する三角形状のクリアレンズ部97と、乱反射を促す凹凸が内面に形成されるとともにクリアレンズ部97から外側方へ次第に上下幅を小さくしながら延びる三角形状のカットレンズ部98とが設けられ、下半部にほぼ逆三角形状で車幅方向内側の端部がテールランプ71のクリアレンズ部93に連続するクリアレンズ部99が設けられている。
【0048】
クリアレンズ部97は、水平方向にレンズカットが施され、透明であるとともにウインカバルブ85,86の光をやや拡散させる機能を有する。
クリアレンズ部99は、クリアレンズ部97と同様に、透明で、ウインカバルブ85,86の光をやや拡散させるために水平方向に施されたレンズカットを有する。
クリアレンズ部99の内側にはウインカバルブ85,86が配置されている。
【0049】
図6に示すように、リヤコンビネーションランプ55を構成するリフレクタ102は、テールランプ71の一部を成すテールランプリフレクタ部103と、リヤウインカ72,73の一部を成すウインカリフレクタ部104,104と、テールランプリフレクタ部103及びウインカリフレクタ部104,104のそれぞれの間に設けられた中間リフレクタ部106,106とからなる。
【0050】
テールランプリフレクタ部103は更に、テールランプバルブ82の光を反射する上部リフレクタ部107と、テール・ストップランプバルブ83の光を反射する下部リフレクタ部108とからなる。
【0051】
図7に示すように、テールランプ71は、テールランプリフレクタ部103と、このテールランプリフレクタ部103に取付けられたテールランプバルブ82及びテール・ストップランプバルブ83と、これらのテールランプバルブ82及びテール・ストップランプバルブ83の後方に配置されるとともにテールランプリフレクタ部103(即ち、リフレクタ102(図6参照))に取付けられたレンズ91とからなる。
【0052】
テールランプバルブ82は、テールランプリフレクタ部103(詳しくは、上部リフレクタ部107)に着脱自在に取付けられたソケット110に支持されるガラス製の口金111と、この口金111に一体成形されたガラス球112と、このガラス球112内に設けられたフィラメント(不図示)とからなる。
テールランプバルブ82の口金111及びガラス球112の各中心を通る基準軸114は、車体前後方向に延びる水平線116に対して後上がりに角度θ1だけ傾いている。
【0053】
テール・ストップランプバルブ83は、テールランプリフレクタ部103(詳しくは、下部リフレクタ部108)に着脱自在に取付けられたソケット120に支持されるガラス製の口金121と、この口金121に一体成形されたガラス球122と、このガラス球122内に設けられたテールランプ用及びストップランプ用の2つのフィラメント(不図示)とからなる。
テール・ストップランプバルブ83の口金121及びガラス球122の各中心を通る基準軸124は、テールランプバルブ82の基準軸114に平行である。
【0054】
レンズ91は、カットレンズ部92及びクリアレンズ部93が共に後方斜め上方に傾斜している。なお、符号126はレンズ91の上部に形成された上部平坦部、127はレンズ91の下部に形成された下部平坦部である。
【0055】
カットレンズ部92は、わずかに後方に凸に湾曲しているが、その上端と下端とを繋ぐ直線131の鉛直線130に対する傾斜角度θ2をカットレンズ部92(詳しくは、カットレンズ部92の背面71a(図4参照))の傾斜角度とする。
【0056】
クリアレンズ部93は、カットレンズ部92の延長線、即ち、直線131の延長線132よりも前方に位置し、クリアレンズ部93(詳しくは、クリアレンズ部93の背面71a(図4参照))の鉛直線130に対する傾斜角度をθ3とすると、クリアレンズ部93の傾斜角度θ3の方が、カットレンズ部92の傾斜角度θ2より緩やかである(θ3<θ2)。なお、符号134はカットレンズ部92とクリアレンズ部93との境界を形成するようにクリアレンズ部93の上縁部に設けられた段差部である。
【0057】
図8に示すように、ウインカバルブ85,86はそれぞれ、ウインカリフレクタ部104,104に着脱自在に取付けられたソケット140に支持される口金141と、この口金141に取付けられたガラス球142と、このガラス球142内に設けられたフィラメント(不図示)とからなる。
【0058】
ウインカバルブ85,86の口金141及びガラス球142の各中心を通る基準軸144,144は、車両後方にいくにつれて互いに近づくように、車体前後方向に延びる直線146,146に対して角度θ4,θ4だけ傾いている。
【0059】
テールランプ71のレンズ91は、後方にV字状に突出し、リヤウインカ72,73のレンズ96,96は、レンズ91を左右に延長したように側方斜め前方に延びている。
レンズ91とレンズ96,96とは、レンズ91の両端部に形成された前方延出部91a,91aと、レンズ96の内側端部に形成された前方延出部96a,96aとで接合され、これらの左右の接合部の内側に近接してリフレクタ102に一体形成された後方延出部102a,102aが配置されている。
【0060】
図9に示すように、リヤウインカ72は、ウインカリフレクタ部104と、このウインカリフレクタ部104に取付けられたウインカバルブ85と、このウインカバルブ85の後方に配置されるとともにウインカリフレクタ部104に取付けられたレンズ96とからなる。
【0061】
ウインカバルブ85の基準軸144は、車体前後方向に延びる水平線116に対して後上がりに角度θ5だけ傾いている。
レンズ96は、カットレンズ部98及びクリアレンズ部99が共に後方斜め上方に傾斜している。なお、符号147はレンズ96の上部に一体成形された上部平坦部、148はレンズ96の下部に一体成形された下部平坦部であり、上部平坦部147及び下部平坦部148の内面にはそれぞれ乱反射を促す凹凸加工が施されている。
カットレンズ部98は、わずかに後方に凸に湾曲しているが、その背面の上端と下端とを繋ぐ直線151の鉛直線130に対する傾斜角度θ6をカットレンズ部98(即ち、カットレンズ部98の背面72a(図4参照))の傾斜角度とする。
【0062】
クリアレンズ部99は、カットレンズ部98の延長線、即ち、直線151の延長線152よりも前方に位置し、クリアレンズ部99(即ちクリアレンズ部99の背面72a(図4参照))の鉛直線130に対する傾斜角度をθ7とすると、クリアレンズ部99の傾斜角度θ7の方が、カットレンズ部98の傾斜角度θ6より緩やかである(θ7<θ6)。
なお、符号154はカットレンズ部98とクリアレンズ部99との境界を形成するようにクリアレンズ部99の上縁部に設けられた段差部である。
リヤウインカ73(図5参照)は、上記したリヤウインカ72の構造と同様である。
【0063】
以上に述べたリヤコンビネーションランプ55の作用を次に説明する。
図10(a)は図4のa矢視図であり、自動二輪車の後方(例えば、後方3m)に居る人の目で見たリヤコンビネーションランプ55を示している。
【0064】
即ち、リヤウインカ72,73を斜め上方から見ると、後上がりに傾斜したレンズ96,96を構成するカットレンズ部98,98及びクリアレンズ部99,99(図5参照)のうち、カットレンズ部98,98のみが見え、カットレンズ部98,98を通してウインカバルブ85,86が視認される。
【0065】
カットレンズ部98,98ではウインカバルブ85,86の光が乱反射されるから、光の強度は弱くなる。従って、人の目にはウインカバルブ85,86からの眩しさが抑えられ、外観性としては良好な印象を与える。
また、テールランプ71及びリヤウインカ72,73の上下幅が小さくなり、スリムでシンプルな印象となる。
【0066】
図10(b)は図4のb矢視図であり、自動二輪車の後方(例えば、後方5m)に居る人の目で見たリヤコンビネーションランプ55を示している。
図10(a)の場合よりはやや下方から斜めにリヤウインカ72,73を見ることになり、リヤウインカ72,73のウインカバルブ85,86の光は、カットレンズ部98及びクリアレンズ部99を通して視認される。
【0067】
リヤウインカ72,73の一部の光がクリアレンズ部99を通っても、リヤウインカ72,73から人の目までの距離は、図10(a)の場合よりも遠くなるから、ウインカバルブ85,86の光は眩しく感じられない。
【0068】
図10(c)は図4のc矢視図であり、自動二輪車10の後方の車両に乗車した運転者の目でほぼ水平に見たリヤコンビネーションランプ55を示している。
リヤウインカ72,73のウインカバルブ85,86の光は、クリアレンズ部99を通して視認されるから、後方に強く照射され、リヤウインカ72,73の視認性を向上させることができる。
【0069】
図1、図5、図7及び図9に示したように、リフレクタ102と、このリフレクタ102に取付けられたバルブ(テールランプバルブ82、テール・ストップランプバルブ83、ウインカバルブ85,86)と、これらのバルブ82,83,85,86の前方に配置されるとともにリフレクタ102に取付けられたレンズ91,96,96とから構成された自動二輪車用後部灯火器構造において、後部灯火器としてのリヤコンビネーションランプ55が、自動二輪車10に取付けられた状態では、レンズ91,96,96が後斜め上方に傾斜して設けられるとともに、レンズ91,96,96の上半部に、車幅方向に亘って凹凸加工が施された均一発光意匠面としてのカットレンズ部92,98,98が形成され、レンズ91,96,96の下半部に、カットレンズ部92,98,98の延長線132,152より車体前方に配置されたクリアレンズ面としてのクリアレンズ部93,99,99が形成されていることを特徴とする。
【0070】
上記構成により、自動二輪車10の後方から人がリヤコンビネーションランプ55を見たときに、リヤコンビネーションランプ55を斜め上方から見ることになり、レンズ91,96,96の上半部のカットレンズ部92,98,98が見えやすくなるとともにレンズ91,96,96の下半部のクリアレンズ部93,99,99が見えにくくなり、バルブ(テール・ストップランプバルブ83、ウインカバルブ85,86)の光の大部分がカットレンズ部92,98,98を通して均一に発光するように認識されるため、リヤコンビネーションランプ55の外観性を向上させることができる。
【0071】
また、人が斜め上方からリヤコンビネーションランプ55を見たときに、リヤコンビネーションランプ55の上下幅が小さくなり、カットレンズ部92,98,98のみからなるスリムでシンプルな意匠として認識され、リヤコンビネーションランプ55の商品性を向上させることができる。
【0072】
更に、自動二輪車10の後方の車両に乗車した人がリヤコンビネーションランプ55を見たときに、リヤコンビネーションランプ55をほぼ水平に見ることになり、リヤコンビネーションランプ55のレンズ91,96,96のクリアレンズ部93,99,99を通してバルブ(テール・ストップランプバルブ83、ウインカバルブ85,86)の強い光を認識することができ、リヤコンビネーションランプ55の視認性を向上させることができる。
【0073】
上記の図10(c)に示したように、バルブ(テール・ストップランプバルブ83、ウインカバルブ85,86)が、自動二輪車10の後方から水平に見た場合に、クリアレンズ部93,99,99を通して視認されるので、クリアレンズ部93,99,99を通してバルブの発光を視認することができ、リヤコンビネーションランプ55の視認性を向上させることができる。
【0074】
上記の図5、図8に示したように、リヤコンビネーションランプ55が、車体後部にテールランプ71と一体に設けられる左右一対のリヤウインカ72,73を備え、リヤウインカ72,73のカットレンズ部99,99が、車体側部から車体中心部に向かって次第に上下幅が増加するように形成され、バルブ(ウインカバルブ85,86)の基準軸144が、車体後方にいくにつれて車体中心部側へ近づくように傾斜しているので、車幅方向に幅広いカットレンズ部98,98を形成しながらも、車体中心側でカットレンズ部98,98の面積を大きくするとともにバルブ(ウインカバルブ85,86)の光をより車体中心部側へ指向させることで、後方からのリヤウインカ72,73の視認性を向上させることができる。
【0075】
上記の図7、図9に示したように、クリアレンズ部93,99,99が、カットレンズ部92,98,98よりも緩やかに傾斜しているので、クリアレンズ部93,99,99が、後方斜め上方から視認されにくくなり、レンズ91,96,96の上半部のカットレンズ部92,98,98を強調することができ、リヤコンビネーションランプ55のスリム感を際立たせることができる。
【0076】
上記の図5に示したように、リヤコンビネーションランプ55が、左右のリヤウインカ72,73間にテールランプ71を備え、左右のリヤウインカ72,73に設けられたカットレンズ部98,98側から車体中心部に延びるようにテールランプ71に設けられたカットレンズ部92がレンズ91の上半部に形成され、このテールランプ71のカットレンズ部92が、その後方から水平に見たときに、上に凸に湾曲した帯状形状であってテールランプ71に設けられたストップランプ用バルブを兼ねるテール・ストップランプバルブ83の上方に設けられ、このテール・ストップランプバルブ83の後方にテールランプ71に設けられたクリアレンズ部93が配置されることを特徴とする。
【0077】
上記構成により、左右のリヤウインカ72,73のカットレンズ部98,98から車体中心部に延びるようにテールランプ71のカットレンズ部92がレンズ91の上半部に形成されることで、車体後部を斜め上方から見たときに、リヤウインカ72,73のカットレンズ部98,98とテールランプ71のカットレンズ部92とが左右に連続するように視認されるため、左右のリヤウインカ72,73が車体側方に向かって上下幅が次第に狭くなるとともに左右のリヤウインカ72,73間が同様な上下幅で繋がれたコンビネーションランプ55の意匠を提供することができ、魅力ある外観性として商品性を高めることができる。
【0078】
上記の図5、図7に示したように、テールランプ71のカットレンズ部92における車体中心側の前方に且つテール・ストップランプバルブ83の上方にテールランプバルブ82が設けられ、テール・ストップランプバルブ83が、左右のウインカバルブ85,86を通って車幅方向に延びる水平線95上に配置されるので、左右のウインカバルブ85,86とテール・ストップランプバルブ83が同時に点灯した際に同じ高さに認識されやすく、違和感なく認識することができる。
【0079】
上記の図9に示したように、テールランプ71のクリアレンズ部93が、テールランプ71のカットレンズ部92の延長線152よりも前方に位置するので、テールランプ71を後方斜め上方から見たときに、テールランプ71のカットレンズ部92の視認性も左右のリヤウインカ72,73と同様に向上させることができる。
【0080】
尚、本実施例では、図5に示したように、リヤコンビネーションランプ55のカットレンズ部92とカットレンズ部98との間にクリアレンズ部97が設けられているが、これに限らず、クリアレンズ部97を設けずに、カットレンズ部92とカットレンズ部98とが連続するように設けられてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の後部灯火器構造は、自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0082】
10…自動二輪車、55…後部灯火器(リヤコンビネーションランプ)、71…テールランプ、72,73…リヤウインカ、82,83,85,86…バルブ(テールランプバルブ、テール・ストップランプバルブ、ウインカバルブ、ウインカバルブ)、91,96…レンズ、92,98…均一発光意匠面(カットレンズ部)、93,99…クリアレンズ面(クリアレンズ部)、95…水平線、102…リフレクタ、132,152…延長線、144…基準軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リフレクタと、このリフレクタに取付けられたバルブと、このバルブの後方に配置されるとともに前記リフレクタに取付けられたレンズとから構成された自動二輪車用後部灯火器構造において、
前記後部灯火器は、前記自動二輪車に取付けられた状態では、前記レンズが後斜め上方に傾斜して設けられるとともに、レンズの上半部に、車幅方向に亘って凹凸加工が施された均一発光意匠面が形成され、レンズの下半部に、前記均一発光意匠面の延長線より車体前方に配置されたクリアレンズ面が形成されていることを特徴とする自動二輪車用後部灯火器構造。
【請求項2】
前記バルブは、前記自動二輪車の後方から水平に見た場合に、前記クリアレンズ面を通して視認されることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車用後部灯火器構造。
【請求項3】
前記後部灯火器は、車体後部にテールランプと一体に設けられる左右一対のウインカを備え、前記均一発光意匠面は、車体側部から車体中心部に向かって次第に上下幅が増加するように形成され、前記バルブの基準軸は、車体後方にいくにつれて車体中心部側へ近づくように傾斜していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動二輪車用後部灯火器構造。
【請求項4】
前記クリアレンズ面は、前記均一発光意匠面よりも緩やかに傾斜していることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の自動二輪車用後部灯火器構造。
【請求項5】
前記後部灯火器は、前記左右のウインカ間に前記テールランプを備え、前記左右のウインカに設けられた前記均一発光意匠面側から車体中心部に延びるように前記テールランプに設けられた前記均一発光意匠面が前記レンズの上半部に形成され、このテールランプの均一発光意匠面は、その後方から水平に見たときに、上に凸に湾曲した帯状形状であって前記テールランプに設けられたストップランプ用バルブを兼ねるテール・ストップランプバルブの上方に設けられ、このテール・ストップランプバルブの後方に前記テールランプに設けられた前記クリアレンズ面が配置されることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の自動二輪車用後部灯火器構造。
【請求項6】
前記テールランプの前記均一発光意匠面における車体中心側の前方に且つ前記テール・ストップランプバルブの上方にテールランプバルブが設けられ、前記テール・ストップランプバルブは、前記左右のウインカバルブを通って車幅方向に延びる水平線上に配置されることを特徴とする請求項5記載の自動二輪車用後部灯火器構造。
【請求項7】
前記テールランプの前記クリアレンズ面は、前記テールランプの均一発光意匠面の延長線よりも前方に位置することを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれか1項記載の自動二輪車用後部灯火器構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−63109(P2011−63109A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−214997(P2009−214997)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】