説明

自動二輪車

【課題】ABSモジュールの配置が容易で、設計の自由度を高められる自動二輪車の提供。
【解決手段】車両前部に向けられるヘッドパイプ2に回動可能に支持されるステアリングステム20と、ヘッドパイプ2の開口から突出するステアリングステム20の上端部が取り付けられるトップブリッジ22と、前輪24を回転可能に支持すると共にトップブリッジ22の左右端部のフォーク挿入孔にそれぞれ支持される左右一対のフロントフォーク23,23と、トップブリッジ22に取り付けられるハンドル25と、前輪24を含む車輪に制動力を付与する前輪制動手段50と、前輪制動手段50に接続されるABSモジュール60とを備える自動二輪車において、ABSモジュール60は、トップブリッジ22の上面よりも上方であってハンドル25の前又は後に、トップブリッジ22に支持されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アンチロックブレーキ用モジュールを備えた自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からアンチロックブレーキシステム(以下、ABSという)を備えた自動二輪車が知られている。ABSはマスタシリンダと車輪ブレーキとの間にABSモジュールを備え、このABSモジュールには弾性材を挟み込んで巻き付けた上下一対の取付板をボルトでトップブリッジ及びボトムブリッジに締め付けることにより、トップブリッジ及びボトムブリッジの前部空間に縦姿勢で取り付けられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−121964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の自動二輪車にABSモジュールを配置するにあたっては、回動しないヘッドパイプ及びこのヘッドパイプに取り付けられた部品との間に干渉しないように考慮して転舵のための空間を確保する等の対策が必要となるという課題がある。
【0005】
そこで、この発明は、ABSモジュールの配置が容易で、設計の自由度を高められる自動二輪車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、車両前部に設けられるヘッドパイプ(2)に回動可能に支持されるステアリングステム(20)と、前記ヘッドパイプ(2)の開口(2a)から突出する前記ステアリングステム(20)の上端部が取り付けられるトップブリッジ(22)と、前輪(24)を回転可能に支持すると共に前記トップブリッジ(22)の左右端部の取付孔(57,57)にそれぞれ支持される左右一対のフロントフォーク(23,23)と、前記トップブリッジ(22)に取り付けられるハンドル(25)と、前記前輪(24)を含む車輪に制動力を付与する制動手段(50)と、前記制動手段(50)に接続されるABSモジュール(60)とを備える自動二輪車において、前記ABSモジュール(60)は、前記トップブリッジ(22)の上面よりも上方であって前記ハンドル(25)の前又は後に、前記トップブリッジ(22)に支持されることを特徴とする。
請求項2に記載した発明は、前記ABSモジュール(60)とフロントキャリパ(41)とを接続する可撓性のホース(88)は、前記ABSモジュール(60)から上方に延びた後に湾曲して、下方に導かれるように配索されることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載した発明は、前記ABSモジュール(60)はモータ(82)を備え、前記モータ(82)の軸線(84)は車両の幅方向に指向していることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載した発明は、前記ABSモジュール(60)は前記トップブリッジ(22)に取付ステイ(67,67’、75,75’)を介して締結され、前記ABSモジュール(60)と前記取付ステイ(67,67’、75,75’)との間及び前記取付ステイ(67,67’、75,75’)と前記トップブリッジ(22)との間には、それぞれ弾性部材(61)が介装されて締結されることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載した発明は、前記ハンドル(25)は上方に向かって屈曲する左右の屈曲部(53,53)と、各屈曲部(53,53)間に渡って取り付けられる補助パイプ(54)と、前記補助パイプ(54)に取り付けられるクッション材(55)とを備え、前記ABSモジュール(60)は前記ステアリングステム(20)の回動軸線(20a)よりも前方かつ前記クッション材(55)よりも前方に配置されることを特徴とする。
請求項6に記載した発明は、前記フロントフォーク(23)の前側にゼッケンプレート(90)が設けられ、このゼッケンプレート(90)の上部が前記ABSモジュール(60)の上方まで延びていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載した発明によれば、トップブリッジの上面よりも上側にABSモジュールが位置しているため、トップブリッジより上側には、トップブリッジと共に回動する部材が多いため、操舵の影響を考慮してヘッドパイプの前方に空間を設ける必要がなくなり、ABSモジュールの配置が容易で設計の自由度が高められる。
請求項2に記載した発明によれば、フロントフォークのストロークが大きいオフロード系車両に適用した場合であっても、ホースは上方に湾曲する部分でこのストロークを吸収することができる。
請求項3に記載した発明によれば、ABSモジュールが幅方向に長くなるので前後に大きく突出しなくなる。
請求項4に記載した発明によれば、ABSモジュールをトップブリッジに取り付ける取付ステイとトップブリッジとの間に弾性部材を介装し、取付ステイとABSモジュールとの間に弾性部材を介装したため、ABSモジュールへの振動の影響をより一層小さくすることができる。
請求項5に記載した発明によれば、クッション材の前方にABSモジュールが位置するため、別途クッション材を設ける必要がなくなり、部品点数の増加を抑制できる。
請求項6に記載した発明によれば、ゼッケンプレートによってABSモジュールが飛び石等の影響を受けにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の第1実施形態の自動二輪車の左側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】この発明の第1実施形態の左斜め前の上から見た斜視図である。
【図5】この発明の第1実施形態の左斜め前の下から見た斜視図である。
【図6】この発明の第1実施形態の要部断面図である。
【図7】この発明の第1実施形態のトップブリッジの拡大平面図である。
【図8】この発明の第2実施形態の左斜め後の上から見た斜視図である。
【図9】この発明の第2実施形態の左斜め前の上から見た斜視図である。
【図10】この発明の第2実施形態の右斜め後の下から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1はオフロード系の自動二輪車の側面図、図2は平面図を示している。
図1、図2に示すように、自動二輪車Bの車体フレーム1は、車両前部に設けられるヘッドパイプ2、左右一対のメインフレーム3,3、ダウンフレーム5及び左右一対のロアフレーム6,6を備え、これらメインフレーム3,3とダウンフレーム5とロアフレーム6,6とをループ状に連結し、これらによって囲まれる領域の内側にエンジン7が配置されている。
ここで、メインフレーム3,3の後部はロアフレーム6,6に接続されるセンターフレーム部4,4となっている。エンジン7はシリンダ8とクランクケース9を備えている。ここで、ヘッドパイプ2及びダウンフレーム5は車体中心に沿って1本で設けられている。
【0013】
メインフレーム3,3はヘッドパイプ2の上部に取り付けられ、エンジン7の上方で左右に湾曲して斜め下後方へ延び、後部は燃料タンク13の後方であってエンジン7の後方を上下方向へ延びる左右一対のセンターフレーム部4,4として構成されている。ダウンフレーム5はヘッドパイプ2の下部に取り付けられ、エンジン7の前方で車体中心を直線状に斜めに下がり下方へ延び、その下端部で左右一対のロアフレーム6,6の前端部に連結されている。各ロアフレーム6はエンジン7の前側下部からエンジン7の下方へ湾曲して略直線状に後方へ延び、後端部が各センターフレーム部4の下端部に連結されている。
【0014】
エンジン7は水冷4サイクル式であり、シリンダ8は、そのシリンダ軸線が略垂直になる直立状態でクランクケース9の前部に設けられ、下から上へ順に、シリンダブロック10、シリンダヘッド11、ヘッドカバー12を備えている。シリンダ8を直立させることにより、エンジン7の前後方向を短くして、エンジン7をオフロード車に適した構成にしている。
【0015】
エンジン7の上方には、燃料タンク13が配置されメインフレーム3,3上に支持されている。燃料タンク13の直後にはシート14が配置され、センターフレーム部4,4の上部に前端が取り付けられ後方へ延びるシートフレーム15,15上に支持されている。シートフレーム15,15の下方には、前端部がセンターフレーム部4,4に接続されたリアフレーム16,16が上後方に延びて配置されている。シートフレーム15,15とリアフレーム16,16の後端部はブラケット32を介して連結されている。シートフレーム15,15とリアフレーム16,16との間には、エンジン7の後方にエアクリーナ17が設けられ、燃料供給装置18を介してシリンダヘッド11へ車体後方側から吸気を行う。
【0016】
ヘッドパイプ2にはステアリングステム20が回動可能に支持され、ステアリングステム20の上端部にトップブリッジ22が取り付けられている。トップブリッジ22の左右端部に左右一対のフロントフォーク23,23が支持され、フロントフォーク23,23の下端部に支持された前輪24がトップブリッジ22に取り付けられたハンドル25で操向される。尚、ハンドル25の左右の端部にはグリップ21が設けられている。センターフレーム部4,4にはピボット軸26によりリアスイングアーム27の前端部が揺動自在に支持されている。
【0017】
リアスイングアーム27の後端部には後輪28が支持され、エンジン7のドライブスプロケット7aと後輪28の従動スプロケット28aとに巻き掛けられた駆動チェーン19によって駆動される。この駆動チェーン19は、車体左側をリアスイングアーム27に沿って前後方向に掛け回されており、リアスイングアーム27がピボット軸26を中心に上下に揺動する動きに合わせて上下に移動する。また、リアスイングアーム27とセンターフレーム部4,4の後端部との間には、リアサスペンションのクッションユニット29が設けられている。
【0018】
エンジン7のシリンダ8の前部には、エンジン7の排気を排気マフラー30へ導くエキゾーストパイプ31が設けられている。このエキゾーストパイプ31は、シリンダヘッド11の前部左側からクランクケース9の前方へ延出し、ダウンフレーム5の前側で右側へ曲げられた後にエンジン7の一側方である車体右側を後方に向かって延び、排気マフラー30に接続されている。
【0019】
ダウンフレーム5の側方にはダウンフレーム5に沿ってラジエータ33が配置されている。ラジエータ33の側部には前側で外側に拡がるようにフロントサイドカバー34,34が設けられ、このフロントサイドカバー34,34に連続するように、シートフレーム15,15及びリアフレーム16,16の側面を覆うリアサイドカバー35,35が設けられ、リアサイドカバー35,35に連続して後方に延びるリアフェンダ36が設けられている。尚、37はフロントフェンダを示す。
【0020】
前輪24にはフロントブレーキディスク40及びフロントキャリパ41が設けられ、ハンドル25の右側のブレーキレバー42に連係したマスタシリンダ43に接続されている。また、後輪28にはリアブレーキディスク44及びリアキャリパ45が設けられ、車両の右側のブレーキペダル46に連係したマスタシリンダ47にホース48で接続されている。ブレーキレバー42、マスタシリンダ43、フロントキャリパ41及びフロントブレーキディスク40が前輪制動手段50を構成し、ブレーキペダル46、マスタシリンダ47、リアキャリパ45及びリアブレーキディスク44が後輪制動手段51を構成している。前輪制動手段50には、右側のブレーキレバー42を操作すると、前輪24をロックさせないように間欠的にフロントキャリパ41を駆動させるABSモジュール60が接続されている。
【0021】
ABSモジュール60は、左側から順に矩形のECU80とバルブユニット81と円筒状のモータ82とが一体化されたもので、ECU80には配線コネクタを接続するためのソケット83が右側を向いて設けられている。モータ82の軸線84は車両の幅方向に指向している。
ここで、フロントフォーク23,23の前側にゼッケンプレート90が設けられ、このゼッケンプレート90の上部が、平面視でABSモジュール60の前部が隠れるように、かつ側面視でABSモジュール60の上方まで延びている。
【0022】
図3〜図5に示すように、ABSモジュール60は、トップブリッジ22の上面よりも上方であってハンドル25の前に突出するように後述するフロント取付ステイ75、リア取付ステイ67、弾性部材61を介してトップブリッジ22に支持されている。ハンドル25は上方に向かって屈曲する左右の屈曲部53,53と、各屈曲部53,53間に渡って取り付けられる補助パイプ54と、補助パイプ54に取り付けられるクッション材55とを備え、ABSモジュール60はステアリングステム20の回動軸線20a(図3,図5参照)よりも前方かつクッション材55よりも前方に配置されている。
【0023】
図6、図7に示すように、下部にボトムブリッジ38を備えたステアリングステム20はヘッドパイプ2に回動可能に支持され、ステアリングステム20の上端部がヘッドパイプ2の開口2aから突出しトップブリッジ22を貫通してステムナット39によりトップブリッジ22に固定されている。トップブリッジ22には、車両幅方向中央部の後側にステアリングステム20のステム挿入孔56が設けられ、両端部にはフロントフォーク23,23が挿入支持されるフォーク挿入孔57,57が設けられている。
トップブリッジ22には、フォーク挿入孔57,57に隣接して、ハンドルパイプクッション58,58がねじ込まれている。ハンドルパイプクッション58,58にはハンドルホルダアンダー62,62がねじ込まれ、各ハンドルホルダアンダー62に固定ボルト64,64によって各々ハンドルホルダアッパー63が取り付けられ、両者の間に跨るようにハンドル25が挟み込まれて固定されている。
【0024】
トップブリッジ22のステム挿入孔56の前側にはL型のリア取付ステイ67のベース部68が締結ボルト69により取り付けられている。リア取付ステイ67のベース部68には取付孔が形成され、この取付孔に、両端にフランジ部を有するゴムなどの弾性部材61が装着され、弾性部材61内に金属製などのカラー66が挿入され、このカラー66内に挿通された締結ボルト69がトップブリッジ22の上面に固定されている。
リア取付ステイ67の立ち上がり部70も、締結ボルト69によりABSモジュール60のバルブユニット81の後壁に、前述した弾性部材61とカラー66を介して取り付けられている。
【0025】
トップブリッジ22の前壁には、クランク状に形成されたフロント取付ステイ75の下部76が締結ボルト69により取り付けられている。フロント取付ステイ75の下部76には取付孔に、前述と同様の構成の弾性部材61が装着され、弾性部材61内に前述と同様のカラー66が挿入され、このカラー66内に挿通された締結ボルト69がトップブリッジ22の前壁に固定されている。
フロント取付ステイ75の立ち上がり部77は、締結ボルト69によりABSモジュール60のECU80及びバルブユニット81の前壁に取り付けられている。フロント取付ステイ75の立ち上がり部77には取付孔が形成され、この取付孔に、前述と同様の構成の弾性部材61が装着され、弾性部材61内に前述と同様のカラー66が挿入され、このカラー66内に挿通された締結ボルト69がABSモジュール60のECU80及びバルブユニット81の前壁に締結固定されている。
【0026】
そして、図3〜図5に示すように、ABSモジュール60のバルブユニット81の上面に、フロントキャリパ41に連通するキャリパポート85と、ブレーキレバー42のマスタシリンダ43に連通するシリンダポート86が設けられている。ここで、キャリパポート85とシリンダポート86車体の幅方向中心(図3で鎖線で示す)に対してフロントキャリパ41とは反対側に設定され、後述する出力側ホース88と入力側ホース89の曲率半径を大きく取れるようになっている。
キャリパポート85とシリンダポート86にはニップル87,87が取り付けられ、これらニップル87,87を介して、各々出力側ホース88と入力側ホース89によってフロントキャリパ41とマスタシリンダ43とに接続されている。ここで、ABSモジュール60とフロントキャリパ41とを接続する出力側ホース88は、ゴム等の可撓性の部材で形成され、ABSモジュール60から上方に延びた後に湾曲して、下方に導かれるように配索されている。88aは出力側ホース88の湾曲部を示す。
【0027】
上記第1実施形態によれば、トップブリッジ22の上面よりも上側にABSモジュール60が位置しているため、操舵の影響を考慮してヘッドパイプ2の前方に空間を設ける必要がなくなり、ABSモジュール60の配置が容易で設計の自由度が高められる。
【0028】
また、ABSモジュール60は、締結ボルト69の取付部において弾性部材61を介装させてリア取付ステイ67により後部が支持され、締結ボルト69の取付部において弾性部材61を介装させてフロント取付ステイ75により前部が支持されているため、これら弾性部材61の緩衝作用によってABSモジュール60への振動、衝撃の影響をより一層小さくすることができる。
つまり、トップブリッジ22とリア取付ステイ67及びフロント取付ステイ75との間、リア取付ステイ67及びフロント取付ステイ75とABSモジュール60との間に弾性部材61の両フランジ部が介装されているため、二重に緩衝作用が機能して効果的に振動、衝撃の影響を小さくすることができる。
【0029】
ここで、フロントフォーク23,23のストロークが大きいオフロード系車両に適用した場合であっても、ABSモジュール60とフロントキャリパ41とを接続する出力側ホース88は、可撓性であって、ABSモジュール60から上方に延びた後に湾曲する湾曲部88aを備え、下方に導かれるように配索されているため、出力側ホース88は上方に湾曲する部分でこのストロークを吸収することができる。
そして、ABSモジュール60はモータ82を備え、モータ82の軸線84は車両の幅方向に指向しているため、ABSモジュール60が前後に大きく突出しなくなる。
更に、ABSモジュール60はステアリングステム20の回動軸線20aよりも前方かつクッション材55よりも前方に配置されるため、ABSモジュール60の後方に別途クッション材を設ける必要がなくなり、部品点数の増加を抑制できる。
そして、ゼッケンプレート90の上部がABSモジュール60の上方まで延びているため、ゼッケンプレート90によってABSモジュール60が飛び石等の影響を受けにくくなる。
【0030】
次に、この発明の第2実施形態を、図1、図2、図6及び図7を一部援用し図8〜図10に基づいて説明する。尚、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
この第2実施形態において、ハンドル25が上方に向かって屈曲する左右の屈曲部53,53と、各屈曲部53,53間に渡って取り付けられる補助パイプ54と、補助パイプ54に取り付けられるクッション材55(図9のみ表示)とを備えている点、下部にボトムブリッジ38を備えたステアリングステム20はヘッドパイプ2に回動可能に支持され、ステアリングステム20の上端部がヘッドパイプ2の開口2aから突出しトップブリッジ22を貫通してステムナット39によりトップブリッジ22に固定されている点、トップブリッジ22には、車両幅方向中央部の後側にステアリングステム20のステム挿入孔56が設けられ、両端部にはフロントフォーク23,23が挿入支持されるフォーク挿入孔57,57が設けられている点、トップブリッジ22に、フォーク挿入孔57,57に隣接して、ハンドルパイプクッション58,58がねじ込まれ、ハンドルパイプクッション58,58にハンドルホルダアンダー62,62がねじ込まれ、各ハンドルホルダアンダー62に固定ボルト64,64によって各々ハンドルホルダアッパー63が取り付けられ、両者の間に跨るようにハンドル25が挟み込まれて固定されている点等の基本的構造は前記第1実施形態と同様である。
【0031】
ここで、トップブリッジ22の上面よりも上側であって、ハンドル25の後に、後方に突出するようにABSモジュール60が配置されている。ハンドル25の後に配置されたABSモジュール60は左側から順に矩形のECU80とバルブユニット81と円筒状のモータ82とが一体化されたもので、ECU80には配線コネクタを接続するためのソケット83が右側を向いて設けられている。モータ82の軸線84は車両の幅方向に指向している。
【0032】
ABSモジュール60のバルブユニット81の上面に、フロントキャリパ41に連通するキャリパポート85と、ブレーキレバー42のマスタシリンダ43に連通するシリンダポート86が設けられ、キャリパポート85とシリンダポート86にはニップル87,87が取り付けられ、これらニップル87,87を介して、各々出力側ホース88と入力側ホース89によってフロントキャリパ41とマスタシリンダ43に接続されている。
【0033】
このABSモジュール60は、第1実施形態のフロント取付ステイ75と同様の形状のリア取付ステイ75’及び第1実施形態のリア取付ステイ67と同様の構成のフロント取付ステイ67’を介してトップブリッジ22に支持されている。図示はしないがフロント取付ステイ67’及びリア取付ステイ75’には第1実施形態の弾性部材61と同様の構成の弾性部材61、カラー66が用いられ、緩衝作用によってABSモジュール60を振動、衝撃から保護している。
【0034】
上記第2実施形態によれば、トップブリッジ22の上面よりも上側にABSモジュール60が位置しているため、操舵の影響を考慮してヘッドパイプ2の前方に空間を設ける必要がなくなり、ABSモジュール60の配置が容易で設計の自由度が高められる。
また、リア取付ステイ75’及びフロント取付ステイ67’によりABSモジュール60が弾性部材61を介してトップブリッジ22に取り付けられているため、弾性部材61の緩衝作用が機能して効果的に振動、衝撃の影響をより一層小さくすることができる。
そして、ABSモジュール60はモータ82を備え、モータ82の軸線84は車両の幅方向に指向しているため、ABSモジュール60が前後に大きく突出しなくなる。
【0035】
尚、この発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、ABSモジュール60をトップブリッジ22に取り付けるためのリア取付ステイ67、リア取付ステイ75’及びフロント取付ステイ75、フロント取付ステイ67’の取り付け態様は一例であって、弾性部材61により緩衝作用を機能させる構造であれば、様々な取付形態を採用できる。 また、モータ82の軸線84が車両の横方向に指向している場合について請求項3の記載に基づいて説明したが、それ以外の請求項における構成では必ずしもモータ82の軸線84が車両の横方向に指向していなくてもよい。
そして、第2実施形態においてフロントフォーク23,23の前側のゼッケンプレート90の上部をABSモジュール60の上方まで延出させて、ABSモジュール60を飛び石等から保護することができる。
【符号の説明】
【0036】
2 ヘッドパイプ
20 ステアリングステム
2a 開口
22 トップブリッジ
24 前輪
57 フォーク挿入孔(取付孔)
23 フロントフォーク
25 ハンドル
50 前輪制動手段
60 ABSモジュール
41 フロントキャリパ
88 出力側ホース
82 モータ
84 軸線
67,75’ リア取付ステイ
75,67’ フロント取付ステイ
53 屈曲部
54 補助パイプ
55 クッション材
90 ゼッケンプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部に設けられるヘッドパイプ(2)に回動可能に支持されるステアリングステム(20)と、前記ヘッドパイプ(2)の開口(2a)から突出する前記ステアリングステム(20)の上端部が取り付けられるトップブリッジ(22)と、前輪(24)を回転可能に支持すると共に前記トップブリッジ(22)の左右端部の取付孔(57,57)にそれぞれ支持される左右一対のフロントフォーク(23,23)と、前記トップブリッジ(22)に取り付けられるハンドル(25)と、前記前輪(24)を含む車輪に制動力を付与する制動手段(50)と、前記制動手段(50)に接続されるABSモジュール(60)とを備える自動二輪車において、前記ABSモジュール(60)は、前記トップブリッジ(22)の上面よりも上方であって前記ハンドル(25)の前又は後に、前記トップブリッジ(22)に支持されることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記ABSモジュール(60)とフロントキャリパ(41)とを接続する可撓性のホース(88)は、前記ABSモジュール(60)から上方に延びた後に湾曲して、下方に導かれるように配索されることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記ABSモジュール(60)はモータ(82)を備え、前記モータ(82)の軸線(84)は車両の幅方向に指向していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記ABSモジュール(60)は前記トップブリッジ(22)に取付ステイ(67,67’、75,75’)を介して締結され、前記ABSモジュール(60)と前記取付ステイ(67,67’、75,75’)との間及び前記取付ステイ(67,67’、75,75’)と前記トップブリッジ(22)との間には、それぞれ弾性部材(61)が介装されて締結されることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記ハンドル(25)は上方に向かって屈曲する左右の屈曲部(53,53)と、各屈曲部(53,53)間に渡って取り付けられる補助パイプ(54)と、前記補助パイプ(54)に取り付けられるクッション材(55)とを備え、前記ABSモジュール(60)は前記ステアリングステム(20)の回動軸線(20a)よりも前方かつ前記クッション材(55)よりも前方に配置されることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の自動二輪車。
【請求項6】
前記フロントフォーク(23,23)の前側にゼッケンプレート(90)が設けられ、このゼッケンプレート(90)の上部が前記ABSモジュール(60)の上方まで延びていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−210891(P2012−210891A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78266(P2011−78266)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】