説明

自動二輪車

【課題】本発明は、車体フレームのたわみをチューニングすることができる技術を提供することを課題とする。
【解決手段】車体フレーム11は、ヘッドパイプ12から車体後方へ延びる左右一対のメインフレーム41L、41Rと、これらのメインフレーム41L、41Rの後端から下方へ延びてスイングアーム17を軸支する左右一対のピボットプレート43L、43Rと、ヘッドパイプ12から下方へ延びた後に車両後方へ延びる左右一対のダウンチューブ45L、45Rと、これらのダウンチューブ45L、45Rとメインフレーム41L、41Rを結ぶ左右一対のサブフレーム46L、46Rとからなる。サブフレーム46L、46Rに取付けられるエンジンハンガー52L、52Rに、シリンダ式緩衝器67が掛け渡されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体フレームのたわみをチューニングすることができる自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
動力源からの駆動反力や路面からの反力によって車体フレームに低周波振動が発生する。この低周波振動を低減する技術が知られている(例えば、特許文献1(図3)参照。)。
【0003】
特許文献1の図3に示されるように、自動二輪車の車体フレーム(30)(括弧付き数字は、特許文献1記載の符号を示す。以下同じ。)は、ヘッドパイプ(31)と、このヘッドパイプ(31)から車両後方に延ばされる左右のメインフレーム(32L、32R)とを有する。これらの左右のメインフレーム(32L、32R)の車幅方向内方に左右の取付部(34L、34R)が設けられ、これらの左右の取付部(34L、34R)の間にダンパー装置としての緩衝器(100C)が渡される。
【0004】
特許文献1の技術は、メインフレーム(32L、32R)の間に緩衝器(100C)が渡されており、車体に生ずる低周波振動を低減するものである。
特許文献1の技術では、車体フレーム(30)に重量の嵩むエンジン等の動力源が懸架されているが、特に、オフロード走行時等において、車体フレーム(30)へ大きな路面反力がかかる場合には、動力源の慣性力がエンジンハンガを介して車体フレーム(30)に入力され、たわみが発生するため、車体フレームやエンジンハンガの剛性を確保するため、それらの厚さを厚くしなければならない。
車体フレームやエンジンハンガを厚くすることなくたわみをチューニングすることができる技術が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−190454公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、車体フレームのたわみをチューニングすることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体フレームに、複数の動力源ハンガーを介して動力源が支持されている自動二輪車において、動力源ハンガーの間に、緩衝器が掛け渡されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明では、車体フレームは、ヘッドパイプから車体後方へ延びる左右一対のメインフレームと、これらの左右のメインフレームの後端から下方へ延びてスイングアームを軸支する左右のピボットプレートと、ヘッドパイプから下方へ延びた後に車両後方へ延びるダウンチューブと、このダウンチューブと左右のメインフレームを結ぶ左右のサブフレームとからなり、左右一対の動力源ハンガーは、左右のメインフレーム、左右のピボットプレート、左右のサブフレームの少なくとも1つに、左右一対で垂下するように取付けられ、左右一対の動力源ハンガー間に緩衝器を渡したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明では、緩衝器は、車両正面視でV字形を呈するように配置される左右の動力源ハンガーに掛け渡されると共に、左右の動力源ハンガーの上部同士に渡されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明では、動力源ハンガーは、メインフレームにサブフレームが結合される結合点の近傍に連結され、緩衝器は、車両側面視で、結合点にほぼ重なる部位に配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、車体フレームの車体中心側の面に、動力源ハンガーを当て、車体フレームを貫通する締結具にて車体フレームに動力源ハンガーが締結され、動力源ハンガーは、車体中心側へ延びて緩衝器を連結させる緩衝器連結腕部を備え、動力源ハンガーの下端に動力源が取付けられ、緩衝器連結腕部は、締結具よりも上方に配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明では、動力源はエンジンであり、このエンジンのヘッドカバーは、車両前下方に傾いている傾斜部を有し、緩衝器は、傾斜部の上方で、且つ、車体フレームに備えられている燃料タンクの下方に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、路面反力により、重量物である動力源に慣性力が発生する。この慣性力が動力源ハンガーを通じて車体フレームに入力され、車体フレームにたわみが発生する。本発明では動力源ハンガーに、シリンダ式緩衝器を渡したので、この緩衝器で車体フレームのたわみをチューニングすることができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、シリンダ式緩衝器が掛け渡される動力源ハンガーは、メインフレーム、ピボットプレート、サブフレームの少なくとも1つに、取付けられる。
動力源に発生する上下方向の慣性力により、メインフレーム、ピボットプレート、サブフレームの少なくとも1つが車幅方向に撓むが、このたわみを緩衝器でチューニングすることができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、V字型を呈する左右の動力源ハンガーの上部同士に緩衝器を掛け渡す。すなわち、車幅方向で広い部位に緩衝器を渡す。結果、緩衝器のストロークをかせぐことができ、緩衝器のチューニングに関わる自由度を高めることができる。
【0016】
請求項4に係る発明では、路面反力が前輪からヘッドパイプを介してメインフレーム又はサブフレームに入力される。また、路面反力が後輪からリヤクッションを介してメインフレーム又はサブフレームに入力される。結果、入力により、メインフレーム又はサブフレームは車幅方向へ撓む。このたわみを緩衝器でチューニングすることができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、車体フレームに動力源ハンガーを当て、車両側方からボルトなどの締結具を取付けることで、車体フレームに動力源ハンガーを固定する。結果、締結具の取付作業が容易になる。
また、動力源ハンガーは、車体中心側へ延びて緩衝器を連結させる緩衝器連結腕部を備えている。車体中心側へ延びる緩衝器連結腕部に緩衝器の端部を載せ、上方からボルトなどの締結具で締結することができる。結果、取付作業が容易になる。
【0018】
請求項6に係る発明では、緩衝器は、ヘッドカバーの傾斜部の上方で、且つ、燃料タンクの下方に配置されている。限られた車両スペースに、緩衝器をコンパクトに配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】エンジンが懸架される車体フレームの要部左側面図である。
【図3】図2の3矢視図である。
【図4】エンジンハンガ及びその周辺部の構造を説明する側面図である。
【図5】エンジンが懸架される車体フレームの分解斜視図である。
【図6】エンジンハンガ及びその周辺部の構造を説明する正面図である。
【図7】図6の作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図中及び実施例において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」は、各々、自動二輪車に乗車する運転者から見た方向を示す。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0021】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動二輪車10は、車体フレーム11と、この車体フレーム11の前端に設けられ前輪13を支えるフロントフォーク15と、このフロントフォーク15の上端に取付けられる操向ハンドル16と、車体フレーム11から車両後方へ延び後輪14を支えるリヤスイングアーム17と、このリヤスイングアーム17と車体フレーム11の間に介在されスイングアーム17を揺動自在に支持するリンク機構18及びリヤクッション19と、前輪13と後輪の間にて車体フレーム11に取付けられる動力源としてのエンジン21とを主要素とし、オフロードでの走行に適合させた鞍乗り型車両である。
なお、フロントフォーク15は、車体フレーム11の前端に設けたヘッドパイプ12に操向可能に設けられている。また、後輪14はリヤスイングアーム17の車両後端に回転自在に取付けられている。
【0022】
エンジン21は、クランクケース22と、このクランクケース22から上方に延びているシリンダ部23と、このシリンダ部23の車両後方に配置されると共にシリンダ部23の車両後方側に面する後面23bへ接続される吸気系24と、このシリンダ部23の車両前方側に面する前面23aから延びている排気系25と、シリンダ部23の車両前方に配置されるラジエータ26とからなる水冷式エンジンである。
【0023】
シリンダ部23は、シリンダボデイ31と、シリンダヘッド32と、ヘッドカバー33とからなる。クランクケースの上面22aに、シリンダボデイ31とシリンダヘッド32とヘッドカバー33とがこの順に載置されると共に、クランクケース22に締結されている。
【0024】
ヘッドパイプ12の車両後方にて車体フレーム11には、燃料タンク35が取付けられ、この燃料タンク35から車両後方へ乗員が座るシート36が延びている。
なお、本実施例では、動力源はエンジンとしたが、エンジンとモータを組み合わせたハイブリッドユニットやモータユニットに変更することは差し支えない。
【0025】
フロントフォーク15に前輪13がはね上げた泥の飛散を防止するフロントフェンダ27が設けられている。エンジン21の上方にて車体フレーム11の側方にサイドカバー29a、29bが配置され、サイドカバー29bの車両後方に後輪14がはね上げた泥の飛散を防止するリヤフェンダ28が設けられている。このリヤフェンダ28は、サイドカバー29bと一体的に設けられている。
【0026】
図2に示すように、車体フレーム11は、ヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12から車体後方で且つ下方へ延びる左右一対のメインフレーム41L、41R(図手前側の符号41Lのみ示す。)と、これらのメインフレームの後端41Lb、41Lb(図手前側の符号41Lbのみ示す。)から下方へ延びてスイングアーム(図1、符号17)を軸支するピボットプレート43L、43R(図手前側の符号43Lのみ示す。)と、ヘッドパイプ12から下方へ延び、その後に車両後方へ延びてピボットプレート43L、43Rに各々連結されるダウンチューブ45L、45Rと、このダウンチューブ45L、45Rとメインフレーム41L、41Rを各々結ぶサブフレーム46L、46R(図手前側の符号46Lのみ示す。)とからなる。
【0027】
ピボットプレート43L、43Rの間に車幅方向水平にピボット軸49が渡され、このピボット軸49にスイングアーム17が揺動自在に軸支されている。
なお、左右のメインフレーム41L、41Rにサブフレーム46L、46Rが結合される点を、各々、左右の結合点55L、55R(図手前側の符号55Lのみ示す。)と云うこととする。
【0028】
次に、エンジンの懸架構造について説明する。
エンジン21は、左右のサブハンガー51L、51Rを介してダウンチューブ45L、45Rに設けた中間部44へ締結される第1締結部56と、動力源ハンガーを構成する左右のエンジンハンガー52L、52R(図手前側の符号52Lのみ示す。)を介して左右のサブフレーム46L、46Rへ各々締結される第2締結部57と、左右のピボットプレート43L、43Rへ各々締結される第3締結部58とによって各々車体フレーム11へ締結されている。
【0029】
詳細には、クランクケースの前端に第1締結ボルト61、61(図手前側の符号61のみ示す。)によって左右のサブハンガー51L、51R(図手前側の符号51Lのみ示す。)が締結され、左右のサブハンガー51L、51Rの前端が第2締結ボルト62、62(図手前側の符号62、62のみ示す。)を介して中間部44へ締結される。
【0030】
また、シリンダ部23の構成要素であるシリンダヘッド32の側面左右に第3締結ボルト63、63(図手前側の符号63のみ示す。)によって動力源ハンガーを構成する左右のエンジンハンガー52L、52R(図手前側の符号52Lのみ示す。)が締結され、これらの左右のエンジンハンガー52L、52Rは、上方に延びており、これらの上端部が第4締結ボルト64、64(図手前側の符号64、64のみ示す。)を介して左右のサブフレーム46L、46Rへ締結される。また、クランクケース22の車両後端は、第5締結ボルト65、65(図手前側の符号65のみ示す。)を介して左右のピボットプレート43L、43Rへ締結される。
【0031】
図3に示すように、左右のメインフレーム41L、41Rの車幅方向内方にその両端が納まるようにシリンダ式緩衝器67が配置されている。
シリンダ式緩衝器67は、エンジン21の上方に配置されると共に、エンジンハンガー52L、52Rに取付けられている。
【0032】
シリンダ式緩衝器67は、ピストン71から延びるロッド72と、ピストン71を摺動可能に支持しケースを兼ねる筒体73と、この筒体73に付設されるサブタンク74と、このサブタンク74と反対側に設けられダンピング作用を調整するアジャスタ部75とからなり、筒体73及びサブタンク74にオイルが満たされている。
【0033】
図2を併せて参照して、動力源ハンガーとしての左右のエンジンハンガー52L、52Rは、各々、上下方向に延びる本腕部53L、53Rと、これらの本腕部の上端53La、53Raから車幅方向内方に延びる左右の緩衝器連結腕部54L、54Rとからなる。左右のエンジンハンガー52L、52Rは、左右のサブフレーム46L、46Rへ各々第4締結ボルト64、64を介して締結される。
【0034】
なお、本実施例では、左右のエンジンハンガー52L、52Rは、左右のサブフレーム46L、46Rへ各々取付けられているが、左右のエンジンハンガー52L、52Rを、左右のメインフレーム41L、41R又は左右のピボットプレート43L、43Rの一方又は双方に取付けることは差し支えない。
【0035】
次に、サブフレームとメインフレームとの結合点と緩衝器との位置関係を説明する。
図4に示すように、エンジンハンガー52L、52Rは、左右の結合点55L、55Rの近傍にて各々連結され、緩衝器67は、車両側面視で、左右の結合点55L、55Rにほぼ重なる部位に配置される。
【0036】
エンジン21のヘッドカバー33は、車両前下方に傾いている傾斜部80を有し、緩衝器67は、傾斜部80の上方で、且つ、車体フレーム11に備えられている燃料タンク(図1、符号35)の下方に配置されている。
従って、限られた車両スペースに、緩衝器67をコンパクトに配置することができる。
【0037】
次に、エンジンハンガー等によるエンジン懸架構造等について説明する。
図5に示すように、自動二輪車10の車体フレーム11に、左右のエンジンハンガー52L、52Rを介してエンジン21が支持される。
【0038】
ここで、ダウンチューブ45の詳細について補足する。
ダウンチューブ45は、ヘッドパイプ12から下方へ一本延びているシングルフレーム部45sと、前記第1締結部56を有する中間部44から車幅方向左右に枝分かれして延びている左右のダウンチューブ45L、45Rとからなる。
【0039】
車体フレーム11に設けられるサブフレーム46L、46Rの車体中心側の面47L、47R(図奥側の符号47Rのみ示す。)に、左右のエンジンハンガー52L、52Rの本腕部53L、53Rを当て、車体フレーム11を貫通する締結具としての第4締結ボルト64、64にて車体フレーム11にエンジンハンガー52L、52Rが締結されている。左右のエンジンハンガー52L、52Rに設けた左右の連結腕部54L、54Rに、シリンダ式緩衝器67が掛け渡されている。
【0040】
緩衝器の両端67a、67bは、各々、球面軸受68、69を介して左右のエンジンハンガー52L、52Rに締結されるので、左右の連結腕部54L、54Rに加わった緩衝器67のロッド軸方向以外の力が解放され、緩衝器67に過大な力がかかる心配はない。
【0041】
エンジンハンガー52L、52Rを組付ける際は、車体フレーム11にエンジンハンガー52L、52Rを当て、車両側方からボルトなどの締結具(第4締結ボルト64)を取付けることで、車体フレーム11にエンジンハンガー52L、52Rを固定する。結果、第4締結ボルト64の取付作業が容易になる。
【0042】
エンジンハンガー52L、52Rは、車体中心側へ延びて緩衝器67を連結させる緩衝器連結腕部54L、54Rを備えている。車体中心側へ延びる緩衝器連結腕部54L、54Rに緩衝器の両端部67a、67bを載せ、上方からボルトなどの締結具79、79で締結することができる。結果、取付作業が容易になる。
【0043】
図6に示すように、エンジンハンガー52L、52Rは、車体中心側へ延びて緩衝器67を連結させる緩衝器連結腕部54L、54Rを備えている。
緩衝器67は、左右のエンジンハンガー52L、52Rに掛け渡されると共に、左右のエンジンハンガー52L、52Rの上部同士に渡される。左右のエンジンハンガー52L、52Rは、車両正面視でV字形を呈するように配置される。
【0044】
以上に述べた自動二輪車の車体フレームの作用を次に述べる。
図7(a)に示すように、路面反力がヘッドパイプから左右のメインフレーム41L、41Rに入力したとき又は路面着地時にリヤクッションからの突き上げ力がメインフレーム41L、41Rに入力する際には、図矢印a2、a3方向で左右のメインフレーム41L、41Rへ入力され、左右のメインフレーム41L、41Rにたわみが発生する。これらの左右のメインフレーム41L、41Rに入力された力は、V字形を呈するように配置されるエンジンハンガー52L、52Rを通じて緩衝器67にかかる。
【0045】
緩衝器67の両端に引張力がかかり、この引張力が緩衝器67に作用することにより左右のメインフレーム41L、41Rがたわむ(左右のメインフレーム41L、41R間が広くなる)速度を遅くすることができる。
【0046】
図7(b)に示すように、路面から自動二輪車10がジャンプした(飛び上がった)とき及び着地したとき、重量物であるエンジン21に図矢印a6方向への慣性力が発生する。この慣性力がV字形を呈するように配置されるエンジンハンガー52L、52Rを通じて図矢印a7、a8方向にて車体フレーム11を構成する左右のメインフレーム41L、41Rへ入力され、左右のメインフレーム41L、41Rにたわみが発生する。
【0047】
このとき、緩衝器67の両端に圧縮力がかかり、この圧縮力が緩衝器67に作用することにより左右のメインフレーム41L、41Rがたわむ(左右のメインフレーム41L、41R間が狭くなる)速度を遅くすることができる。
【0048】
このように、本発明では、エンジンハンガー52L、52Rに、シリンダ式緩衝器67を渡したので、この緩衝器67で車体フレーム11のたわみに対する感受性を下げるチューニングを施すことができる。また、比較的フレーム剛性への影響度が高いメインフレーム41L、41Rにサブフレームが結合される結合点55L、55Rの近傍に緩衝器67を取付けたので、緩衝器67(ダンパー装置67)の特性を変化させることで、従来に較べて車体フレーム11のチューニング作業の効率を飛躍的に高めることが可能になる。
【0049】
動力源としてのエンジン21に発生する上下方向の慣性力により、メインフレーム41L、41R、ピボットプレート43L、43R、サブフレーム46L、46Rの少なくとも1つが車幅方向に撓むが、このたわみを緩衝器67でチューニングすることができる。
【0050】
なお、本実施例では、シリンダ式緩衝器67が掛け渡されるエンジンハンガー52L、52Rは、サブフレーム46L、46Rに取付けたものであるが、このエンジンハンガー52L、52Rをメインフレーム41L、41Rやピボットプレート(図5、符号43L、43R)に設けると共にエンジンハンガー52L、52Rの間に緩衝器を取付けることは差し支えない。
【0051】
図6に戻って、緩衝器67は、V字型を呈する左右のエンジンハンガー52L、52Rの上部同士に掛け渡されるようにした。すなわち、車幅方向で広い部位に緩衝器67を渡した。結果、緩衝器67のストロークをかせぐことができ、緩衝器67のチューニングに関わる自由度を高めることができる。
【0052】
図1を併せて参照して、路面反力が前輪13からヘッドパイプ12を介してメインフレーム41L、41R又はサブフレーム46L、46Rに入力される。また、路面反力が後輪14からリヤクッション19を介してメインフレーム41L、41R又はサブフレーム46L、46Rに入力されたとき、これらの入力により、メインフレーム41L、41R又はサブフレーム46L、46Rは車幅方向へ撓む。このたわみを緩衝器67でチューニングすることができる。
【0053】
尚、本発明は、実施の形態では自動二輪車に適用したが、三輪車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、動力源を支持するエンジンハンガーを備えた自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0055】
10…自動二輪車、11…車体フレーム、12…ヘッドパイプ、17…スイングアーム(リヤスイングアーム)、21…動力源(エンジン)、41L、41R…メインフレーム、43L、43R…ピボットプレート、45L、45R…ダウンチューブ、46L、46R…サブフレーム、52L、52R…エンジンハンガー、54L、54R…緩衝器連結腕部、55L、55R…結合点、64…締結具(第4締結ボルト)、67…緩衝器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(11)に、複数の動力源ハンガー(52L、52R)を介して動力源(21)が支持されている自動二輪車において、
前記動力源ハンガー(52L、52R)の間に、緩衝器(67)が掛け渡されていることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記車体フレーム(11)は、ヘッドパイプ(12)から車体後方へ延びる左右一対のメインフレーム(41L、41R)と、これらの左右のメインフレーム(41L、41R)の後端から下方へ延びてスイングアーム(17)を軸支する左右のピボットプレート(43L、43R)と、前記ヘッドパイプ(12)から下方へ延びた後に車両後方へ延びるダウンチューブ(45L、45R)と、このダウンチューブ(45L、45R)と前記左右のメインフレーム(41L、41R)を結ぶ左右のサブフレーム(46L、46R)とからなり、
前記左右一対の動力源ハンガー(52L、52R)は、前記左右のメインフレーム(41L、41R)、前記左右のピボットプレート(43L、43R)、前記左右のサブフレーム(46L、46R)の少なくとも1つに、左右一対で垂下するように取付けられ、前記左右一対の動力源ハンガー(52L、52R)間に前記緩衝器(67)を渡したことを特徴とする請求項1記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記緩衝器(67)は、車両正面視でV字形を呈するように配置される左右の動力源ハンガー(52L、52R)に掛け渡されると共に、前記左右の動力源ハンガー(52L、52R)の上部同士に渡されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記動力源ハンガー(52L、52R)は、前記メインフレーム(41L、41R)に前記サブフレーム(46L、46R)が結合される結合点(55L、55R)の近傍に連結され、
前記緩衝器(67)は、車両側面視で、前記結合点(55L、55R)にほぼ重なる部位に配置されることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記車体フレーム(11)の車体中心側の面に、前記動力源ハンガー(52L、52R)を当て、前記車体フレーム(11)を貫通する締結具(64、64)にて前記車体フレーム(11)に前記動力源ハンガー(52L、52R)が締結され、
前記動力源ハンガー(52L、52R)は、車体中心側へ延びて前記緩衝器(67)を連結させる緩衝器連結腕部(54L、54R)を備え、
前記動力源ハンガー(52L、52R)の下端に前記動力源(21)が取付けられ、前記緩衝器連結腕部(54L、54R)は、前記締結具(64、64)よりも上方に配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の自動二輪車。
【請求項6】
前記動力源(21)はエンジンであり、このエンジンのヘッドカバー(33)は、車両前下方に傾いている傾斜部(80)を有し、
前記緩衝器(67)は、前記傾斜部(80)の上方で、且つ、前記車体フレーム(11)に備えられている燃料タンク(35)の下方に配置されていることを特徴とする請求項5記載の自動二輪車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−236467(P2012−236467A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105700(P2011−105700)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】