説明

自動二輪車

【課題】車体フレームに制約されないで、収納部の大型化を図ることができる自動二輪車を提供することを課題とする。
【解決手段】パワーユニット22はシート32の下方に配置され、ステップ25Rは下方延出フレーム21に取付けられつつシート32の下方に配置され、主収納部30は、下方延出フレーム21より車両前方で且つメインフレーム19の下方に配置される。
【効果】収納部30はステップ25Rの車両前方に配置されるため、乗員の足が収納部30に干渉する心配がない。収納部30はメインフレーム19の下方に配置されるため、メインフレーム19で車幅方向の寸法制限を受ける心配がない。乗員の足に制約される心配が無く、且つ車体フレーム15に制約されないで収納部30の大型化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を収納する収納部を備える自動二輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を収納することができる収納部を備える自動二輪車が各種提案されている(例えば、特許文献1(第2図)参照。)。
【0003】
特許文献1の第2図に示すように、左右の車体フレーム(2、2)(括弧付き番号は特許文献1に記載されている符号を示す。以下同じ)の間で且つ燃料タンク(10)の上方に、収納箱(13)が配置される。
車体フレーム(2、2)は、カウリングの左右部(1a、1a)で覆われる。
【0004】
運転者は左右部(1a、1a)を膝で挟むような乗車姿勢を取る。いわゆる、ニーグリップがなされるため、左右部(1a、1a)の車幅方向間隔は必然的に所定値に定められる。結果、収納箱(13)の車幅寸法も限定される。
【0005】
しかし、物品の積載性を高める要求がある中、左右の車体フレーム(2、2)の車幅間隔に制約されないで、収納箱(13)の大型化を図ることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−81779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、車体フレームに制約されないで、収納部の大型化を図ることができる自動二輪車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、車体フレームが、ヘッドパイプから車両後方へ側面視で直線的に延びるメインフレームと、このメインフレームの後部から下方へ延びる下方延出フレームからなり、前記車体フレームに、乗員が座るシートと、乗員が足を載せるステップと、後輪を駆動するパワーユニットと、物品を収納する主収納部とを支持する自動二輪車であって、前記パワーユニットは前記シートの下方に配置され、前記ステップは前記下方延出フレームに取付けられつつ前記シートの下方に配置され、前記主収納部は、前記下方延出フレームより車両前方で且つ前記メインフレームの下方に配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明では、パワーユニットは電動モータであり、メインフレームはヘッドパイプから延びる左右一対のメインフレームであり、これらのメインフレームの上方に前記電動モータへ給電するバッテリが取付けられ、前記左右一対のメインフレームから左右一対の下方延出フレームが延ばされ、これらの下方延出フレームに前記電動モータが取付けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明では、電動モータは、モータハウジングがモータ軸に沿った長さより、前記モータ軸に直交する外径が大きな形態を呈し、前記モータ軸が車幅方向へ延びるようにして左右一対の下方延出フレームの間に配置されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明では、電動モータは、少なくとも車幅中心線から車幅方向左右のいずれか一方にオフセットして配置され、シートの下にシート下収納部が配置され、このシート下収納部と主収納部とが前記電動モータの車幅方向内側にて連通することを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明では、電動モータは、モータハウジングがモータ軸に沿った長さより、前記モータ軸に直交する外径が大きな形態を呈し、前記モータ軸が車両後方へ延びるようにして左右一対のメインフレームの間に配置され、前記電動モータの前方に主収納部が配置されることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明では、電動モータは、モータハウジングがモータ軸に沿った長さより、前記モータ軸に直交する外径が大きな形態を呈し、前記モータ軸が車両後方へ延びるようにして左右一対のメインフレームの間に配置され、前記電動モータの下方に主収納部とは別の副収納部が配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明では、電動モータは車体中心に配置され、前記電動モータが発生する動力は、シャフトドライブ機構で後輪に伝達され、このシャフトドライブ機構の主要素であるドライブシャフトは車体前後方向へ延ばされ、このドライブシャフトとモータ軸は平行軸歯車で連結されていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に係る発明では、車体フレームの後部から車両後方に斜め上へシートを支えるシートレールが延ばされ、車両側面視でこのシートレールとメインフレームとでV字を呈するようにし、V字の谷部に電動モータ又はバッテリを制御する制御ユニットが配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、主収納部はステップの車両前方に配置されるため、乗員の足が主収納部に干渉する心配がない。主収納部はメインフレームの下方に配置されるため、メインフレームで車幅方向の寸法制限を受ける心配がない。乗員の足に制約される心配が無く、且つ車体フレームに制約されないで主収納部の大型化を図ることができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、左右2本のメインフレームで重いバッテリを支え、左右2本の下方延出フレームで重い電動モータを支えるようにした。2本のメインフレームの各々に下方延出フレームが繋がっており、車体フレームは立体的であって剛性に富む。このような車体フレームでバッテリと電動モータを全体的に支える。すなわち、車体フレームに局部的に負荷がかかる心配はない。車体フレームは立体であるため、左右の部材を小径化、薄肉化しても所望の剛性が確保され、車体フレームの軽量化が容易に図れる。
【0018】
請求項3に係る発明では、モータハウジングがモータ軸に沿った長さが短いため、電動モータを容易に左右2本の下方延出フレームの間に配置することができる。下方延出フレームが電動モータの車幅方向外側に存在するため、下方延出フレームが電動モータの保護材の役割をも果たす。
加えて、電動モータは、下方延出フレームの間に配置され、モータハウジングがモータ軸に沿った長さより、モータ軸に直交する外径が大きな形態を呈するため、車幅寸法が抑えられる。乗員がステップに足を載せたとき、電動モータは乗員の足の内側に配置されるので、足つき性を良好に保つことができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、長尺物を車両前部から後部に渡って収納することができるため、長尺物の収納性を向上させることができる。
【0020】
請求項5に係る発明では、モータハウジングは外径が長さより大きく、モータハウジングの長さ方向が車体前後方向に一致するように電動モータを配置した。モータハウジングの車体前後方向長さが短いため、主収納部の車体前後方向の長さを大きくすることができる。
【0021】
請求項6に係る発明では、メインフレームは下方延出フレームより高い位置に配置される。メインフレーム間に配置される電動モータも必然的に高い位置に配置される。車体下方の車幅方向を狭くすることで容易にバンク角を確保することができる。さらには、主収納部の下方へ副収納部を延ばすようにすれば、副収納部は電動モータに主収納部を加えた長さとすることができ、副収納部に長尺物を収納することが可能となる。したがって、バンク角を確保でき、且つ長尺物を良好に収納できる自動二輪車が提供される。
【0022】
請求項7に係る発明では、平行軸歯車であれば、ドライブシャフトとモータ軸は、駆動側ギヤの半径と従動側ギヤの半径の和だけ離間される。この離間距離を巧みに利用してドライブシャフトを後輪の側方へ配置することができる。駆動側ギヤと従動側ギヤで減速させることができる。
平行軸歯車は、平歯車に代表され、傘歯車に比較して安価であるからシャフトドライブ機構のコストダウンを図ることができる。
【0023】
請求項8に係る発明では、デッドスペースになりやすいV字の谷部に、制御ユニットを置くことで、スペースの有効利用を図ることができる。V字の谷部に近い部位に電動モータやバッテリが配置されるため、V字の谷部に、制御ユニットを置くことで、ハーネスを短くすることができる。
加えて、制御ユニットが車体フレームに囲まれた位置に配置されるため、車体フレームは制御ユニットの保護材の役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る自動二輪車の右側面図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】主収納ケースの斜視図である。
【図4】自動二輪車後部の右側面図である。
【図5】図4の5矢視図である。
【図6】図4の変更例を示す図である。
【図7】図6の7−7線断面図である。
【図8】別の自動二輪車の右側面図である。
【図9】図8の9−9線断面図である。
【図10】別の自動二輪車後部の右側面図である。
【図11】図10の11矢視図である。
【図12】別の自動二輪車に設けられるシャフトドライブ機構の駆動系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。以下の説明で用いる前後、左右、上下は乗員シートに座った乗員を基準に定める。
【実施例】
【0026】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動二輪車10Aは、ヘッドパイプ11に転舵自在に取付けられるフロントフォーク12と、このフロントフォーク12の下端に回転自在に取付けられる前輪13と、フロントフォーク12の上端に取付けられるステアリングハンドル14と、車体フレーム15の下端部にピボット軸16で上下揺動自在に取付けられるリヤスイングアーム17と、このリヤスイングアーム17の後端に回転可能に取付けられる後輪18とを備える。
【0027】
車体フレーム15は、ヘッドパイプ11と、このヘッドパイプ11から車両後方へ側面視で直線的に延びるメインフレーム19と、このメインフレーム19の後部から下方へ延びる下方延出フレーム21とからなる。
【0028】
下方延出フレーム21にパワーユニットとしての電動モータ22が取付けられ、メインフレーム19の上方に電動モータ22へ給電するバッテリ23が取付けられる。電動モータ22で発生した動力をチェーン駆動機構24を介して後輪18に伝達して、後輪18を駆動させる。
【0029】
下方延出フレーム21の下端に、乗員が足を載せるステップ25R(Rは右を示す添え字。以下同様)が設けられる。
ステップ25Rより車両前方で、且つメインフレーム19の下方に、物品を収納する主収納部30(詳細後述)が配置される。この主収納部30は、メインフレーム19に取付けられる。
【0030】
車体フレーム15の後部から車両後方に斜め上へシートレール31Rが延ばされ、このシートレール31Rに乗員が座るシート32が取付けられる。このシート32の後方にピリオンシート117が設けられる。リヤスイングアーム17とシートレール31Rとにリヤクッション33が取付けられ、シートレール31Rにピリオンステップステー34Rを介して同乗者用ステップ35Rが取付けられる。
【0031】
電動モータ22はシート32の下方に配置され、ステップ25Rはシート32の下方に配置される。
メインフレーム19の後部とシートレール31Rにサブフレーム36Rが渡され、このサブフレーム36Rに、電動モータ22の運転を制御する制御ユニット37が取付けられる。この制御ユニット37の後方で、且つシート32の下に位置するようにして、シートレール31Rにシート下収納部38(詳細後述)が設けられる。シート下収納部38の内部には長尺物を収納できる。
【0032】
フロントフォーク12の上部に、フロントフォーク12上部の前方、メインフレーム19、主収納部30、電動モータ22の前部を覆うフロントカバー39が取付けられ、フロントフォーク12の下部に前輪13の上部を覆うフロントフェンダ41が取付けられる。
側面視でメインフレーム19に沿ってバッテリ23を配置し、バッテリ23を覆うバッテリカバー42がメインフレーム19に取付けられる。
【0033】
メインフレーム19及びシートレール31Rに、電動モータ22及び制御ユニット37を覆うサイドカバー44Rが取付けられる。
シートレール31Rに、シート下収納部38を覆うリヤカバー45が取付けられると共に、後輪18の後上方を覆うリヤフェンダ46が取付けられる。
【0034】
リヤカバー45の後端に、シート下収納部38の開口を塞ぐキャップ部材118が取外し可能に設けられ、キャップ部材118を取外してから、シート下収納部38内に長尺物を収納する。キャップ部材118はテールライト119を備えた部材である。
【0035】
バッテリ23の支持構造及び主収納部30の構造を図2に基づいて説明する。
図2に示すように、メインフレーム19は、ヘッドパイプ(図1、符号11)から延びる左右一対のメインフレーム47L(Lは左を示す添え字。以下同様)、47Rで構成される。メインフレーム47Lに受け座48Lが設けられ、メインフレーム47Rに受け座48Rが設けられる。これら受け座48L、48Rに、バッテリ23の左右両側部に設けられるバッテリ取付部49L、49Rを取付けることで、バッテリ23がメインフレーム47L、47Rに支持される。
【0036】
加えて、メインフレーム47Lから下方に収納部ステー51Lが延ばされ、メインフレーム47Rから下方に収納部ステー51Rが延ばされる。これら収納部ステー51L、51Rに、主収納部30の上端左右に設けられる収納取付部52L、52Rを、ボルト53で取付けることにより、主収納部30がメインフレーム47L、47Rに支持される。
【0037】
主収納部30は、メインフレーム47L、47Rに支持される部位である主収納ケース134と、下端が主収納ケース134の下壁部56の右端にねじ59で止められると共に上部が主収納ケース134の上壁部54の右端にねじ58で止められるフロントカバー39と、下端が下壁部56の左端にピン61で回転自在に止められると共に上部が上壁部54の左端に主収納ロック機構62を介して連結される主収納カバー43Lとを有する。
【0038】
主収納ロック機構62は、上壁部54左端に設けられる固定部材63と、主収納カバー43L上部に取付けられキー64の先端が差込まれる穴を有するキー差込み部材65と、このキー差込み部材65に差込んだキー64を回すと同時に回転する回転部材66と、この回転部材66の先端に回転部材66の径方向に延びるように設けられ固定部材63に掛けられる爪部材67とからなる。
【0039】
キー差込み部材65にキー64を差込み、キー64を回すことにより、上壁部54の左端と主収納カバー43Lの上端との連結が解かれるため、主収納カバー43Lを想像線で示すように車幅方向左側に開くことができる。
【0040】
バッテリ23の上方に位置するバッテリカバー42の上部内面に、エンジン音に近い擬音を発する接近通報装置68が取付けられる。そのため、音がフロントカバー(図1、符号39)のくびれから、車両の左右方向及び前方に拡散する。
【0041】
加えて、フロントカバー39の内面に接近通報装置69が取付けられ、主収納カバー43Lの内面に接近通報装置71が取付けられる。なお、フロントカバー39及び主収納カバー43Lの傾斜面(特に前方が内側に傾斜した面)に、接近通報装置69、71を取付けることで、音が車両の左右方向及び前方に拡がり、効率良く音を外部に伝えることができる。
【0042】
電動モータ(図1、符号22)の発生音は、内燃機関(エンジン)の発生音より小さいことが多く、この場合、歩行者が電動式自動二輪車(図1、符号10)の接近に気づかぬことがある。そこで、接近通報装置68、69、71でエンジン音に近い擬音を発生し、歩行者への注意を促すようにしている。
【0043】
主収納ケース134の構造を図3に基づいて説明する。
図3に示すように、主収納ケース134は、上壁部54と、この上壁部54に連続して形成され車体前後方向前側に配置される前壁部73と、この前壁部73に連続して形成される下壁部56と、この下壁部56に連続して形成され車体前後方向後側に配置される後壁部74とからなる。また、主収納ケース134は、左側収納口75と右側収納口76を有する。
【0044】
シート下収納部(図1、符号38)の構成を図4に基づいて説明する。
図4に示すように、シート下収納部38は、シートレール31Rに取付けられシートレール31Rの長手方向に沿って延びると共に前端に底を有する有底筒状部材である。
シート下収納部38の後端に設けられる開口93から、シート下収納部38の内部に長尺物を収納できる。
【0045】
電動モータ22は、下方延出フレーム21に設ける3つのモータステー96、107、108で支持される。電動モータ22のモータ軸98に駆動スプロケット26が取付けられ、後輪18に、後輪18と一体に回転する従動スプロケット28が設けられる。駆動スプロケット26と従動スプロケット28にチェーン27が掛け渡される。
【0046】
車両右側面視でシートレール31Rとメインフレーム47RとでV字を呈するようにし、V字の谷部29に電動モータ22又はバッテリ(図1、符号23)を制御する制御ユニット37が配置される。
【0047】
電動モータ22、制御ユニット37、シート下収納部38の支持構造を図5に基づいて説明する。
図5に示すように、メインフレーム47Lから下方延出フレーム95Lが延ばされ、メインフレーム47Rから下方延出フレーム95Rが延ばされている。下方延出フレーム95Lと下方延出フレーム95Rとにモータステー96が渡され、このモータステー96にボルト102で電動モータ22が取付けられる。
【0048】
電動モータ22は、モータハウジング97がモータ軸98に沿った長さL1より、モータ軸98に直交する外径D1が大きな形態を呈し、モータ軸98が車幅方向左側へ延びるようにして左右一対の下方延出フレーム95L、95Rの間に配置されている。なお、電動モータ22のモータ軸98は、実施例では車幅方向左側に延ばしたが、車幅方向右側に延ばしてもよい。
【0049】
制御ユニット37は、4つのユニット取付部99を備える。これらユニット取付部99をサブフレーム36L、36Rに取付けることにより、制御ユニット37がサブフレーム36L、36Rに支持される。
【0050】
シート下収納部38は、4つの収納取付部101を備える。これら収納取付部101をシートレール31L、31Rに取付けることにより、シートレール31L、31Rにシート下収納部38が支持される。なお、シート下収納部38は、実施例では角筒状に形成したが、円筒や楕円筒を適用してもよい。
【0051】
これまでに説明した自動二輪車10Aは、1つのモータハウジング97と1本のモータ軸98を有する電動モータ22を備えていた。ところで、電動モータ1台分の動力を2台で賄うようにすると、モータハウジング97の薄型化が期待できるため、下方延出フレーム95L、95R間にスペースが形成し易くなる。そこで、次に車幅方向に2台の電動モータを設け、2本のモータ軸を一体化した例を説明する。
【0052】
図6において、図4と共通の構造は符号を流用して詳細な説明を省略する。主たる変更点は、電動モータを車幅方向に2つ設け、2本のモータ軸を一体化したことである。
電動モータ109R、109Lは下方延出フレーム95R、95Lの間に配置される。 加えて、電動モータ109Rは、下方延出フレーム95Rに設けられるモータステー111R、112R、113Rで支持され、電動モータ109Lは、下方延出フレーム95Lに設けられるモータステー111L、112L、113Lで支持される。
【0053】
シート(図1、符号32)の下に配置されるシート下収納部120は、2ヶ所の収納取付部121、122を備える。これら収納取付部121、122をシートレール31R、31Lに取付けることにより、シート下収納部120はシートレール31R、31Lに支持される。
【0054】
加えて、シート下収納部120は、シートレール31R、31Lに沿うように車体前後方向に延ばされ、長尺物を収納する筒状部材である。シート下収納部120の前端は、主収納部30の主収納ケース134に連結(詳細後述)され、シート下収納部120の後端には、長尺物を入れる口となる開口123が設けられる。
【0055】
電動モータ109L、109Rの構成、主収納部30とシート下収納部120の連結構造を図7に基づいて説明する。
図7に示すように、電動モータ109Lは、車幅中心線128から車幅方向左に距離L2だけオフセットして配置され、電動モータ109Rは、車幅中心線128から車幅方向右に距離L3だけオフセットして配置され、電動モータ109Lのモータ軸126と電動モータ109Rのモータ軸127が一体化される。
【0056】
なお、実施例では、2つの電動モータ109L、109Rを一体化させたが、電動モータ109Lのみを設け、電動モータ109Lのみを車幅中心線128から車幅方向左にオフセットさせてもよい。また、電動モータ109Rのみを設け、電動モータ109Rのみを車幅中心線128から車幅方向右にオフセットさせてもよい。
【0057】
主収納ケース134の後壁部74に、開口124を形成するようにして車体後方へ突出する主収納側突出部125が設けられる。一方、シート下収納部120の前壁部135に、開口136を形成するようにして車体前方へ突出するシート下側突出部137が設けられる。
主収納側突出部125とシート下側突出部137とは連結されている。すなわち、シート下収納部120と主収納部30とが電動モータ109L、109Rの車幅方向内側にて連通している。
【0058】
これまでに説明した自動二輪車10A、10Bは、バッテリ23を備えていたが、バッテリ23とは別にバックアップバッテリを備えていると、非常時に対応できる自動二輪車となる。その例を次に説明する。
【0059】
図8において、図1と共通の構造は符号を流用して詳細な説明を省略する。自動二輪車140は、フロントフォーク12の下端に回転自在に取付けられる前輪13と、車体フレーム15の下端部にピボット軸16で上下揺動自在に取付けられるリヤスイングアーム141と、このリヤスイングアーム141の後端に回転可能に取付けられる後輪18とを備える。
【0060】
車体フレーム15の下方延出フレーム21にパワーユニットとしての電動モータ142が取付けられ、メインフレーム19の上に電動モータ142へ給電するバッテリ143が取付けられる。加えて、電動モータ142の後方にギヤボックス144が配置され、ギヤボックス144は下方延出フレーム21に支持される。後輪18の駆動系統は後述する。
【0061】
ステップ25Rより車両前方で、且つメインフレーム19の下方に、物品を収納する主収納部30が配置される。加えて、主収納部30は、電動モータ142の前方に配置されると共にメインフレーム19に取付けられる。
電動モータ142の下方に、主収納部30とは別の副収納部160が配置される。副収納部160は、主収納部30と一体(詳細後述)であり、副収納部160の後端は、下方延出フレーム21に設けた収納部ステー145で支持される。
電動モータ142はシート32の下方に配置され、ステップ25Rはシート32の下方に配置される。
【0062】
サブフレーム36Rに、電動モータ142の運転を制御する制御ユニット37が取付けられる。この制御ユニット37の後方で、且つシート32の下に位置するようにして、シートレール31Rに車載充電器161が設けられる。この車載充電器161の後方にバックアップバッテリ162が設けられる。
【0063】
加えて、制御ユニット37の下方にスイッチ部163が配置される。スイッチ部163は、非常時に電動モータ142への給電を、バッテリ143からバックアップバッテリ162に切換える機器である。
【0064】
バッテリ143及び主収納部30の支持構造及び副収納部160の構造を図9に基づいて説明する。
図9に示すように、バッテリ143がメインフレーム47L、47Rに支持されると共に、主収納部30がメインフレーム47L、47Rに支持される。
【0065】
副収納部160は、主収納部30の下壁部56に平行になるように下壁部56と一体に形成される最下壁部164と、下壁部56の右端にねじ165で止められ最下壁部164の右端にねじ166で止められると共に車幅方向内側に向けて斜め下に延びる副収納カバー167Rと、最下壁部164の左端にピン168で開閉自在に止められる副収納カバー167Lとからなる。
【0066】
下壁部56の左端と副収納カバー167Lの上端は、副収納ロック機構169で連結されている。副収納ロック機構169は、下壁部56左端に設けられる固定部材171と、副収納カバー167L上端に取付けられキー64の先端が差込まれる穴を有するキー差込み部材172と、このキー差込み部材172に差込んだキー64を回すと同時に回転する回転部材173と、この回転部材173の先端に回転部材173の径方向に延びるように設けられ固定部材171に掛けられる爪部材174とからなる。
【0067】
キー差込み部材172にキー64を差込み、キー64を回すことにより、下壁部56の左端と副収納カバー167Lの上端との連結が解かれるため、副収納カバー167Lを想像線で示すように車幅方向左側に開くことができる。
【0068】
電動モータ142及びスイッチ部163の支持構造を図10に基づいて説明する。
図10に示すように、電動モータ142は、下方延出フレーム21に設ける2つのモータステー175、176で支持される。電動モータ142に連結されたギヤボックス144もモータステー175、176で支持される。
【0069】
車両右側面視でシートレール31Rとメインフレーム47RとでV字を呈するようにし、V字の谷部29に制御ユニット37及びスイッチ部163が配置される。スイッチ部163は、シートレール31R、31Lの前端にボルト177で取付けられる。
【0070】
制御ユニット37、車載充電器161、バックアップバッテリ162の取付構造を図11に基づいて説明する。
図11に示すように、制御ユニット37は、2つのユニット取付部178を備える。これらユニット取付部178をサブフレーム36L、36Rに取付けることにより、制御ユニット37がサブフレーム36L、36Rに支持される。
【0071】
車載充電器161は、2つの接続器取付部179を備え、バックアップバッテリ162は、2つのバッテリ取付部181を備える。取付部179、181をシートレール31L、31Rに取付けることにより、車載充電器161及びバックアップバッテリ162がシートレール31L、31Rに支持される。
電動モータ142は、メインフレーム47L、47Rの間に配置される。
【0072】
電動モータ142から後輪までの駆動系統を図12に基づいて説明する。
図12に示すように、電動モータ142のモータ軸185の中心線は、車体中心線186上に配置され、電動モータ142が発生する動力は、シャフトドライブ機構187で後輪18に伝達される。なお、シャフトドライブ機構187は、実施例では車体中心線186に対して左側に配置したが、右側に配置してもよい。
【0073】
シャフトドライブ機構187は、ギヤボックス144内に設けられモータ軸185に取付けられる駆動歯車188と、ギヤボックス144に回転自在に支持された第1中間軸189に取付けられ駆動歯車188に噛合う第1中間歯車191と、第1中間軸189に自在継手192を介して連結されリヤスイングアーム141に回転自在に支持される第2中間軸193と、この第2中間軸193の後端に取付けられる第2中間歯車194と、第2中間軸193に対し直交して配置されリヤスイングアーム141に回転自在に支持されると共に後輪18のホイール195が取付けられる後車軸196と、この後車軸196に取付けられ第2中間歯車194に噛合う従動歯車197とからなる。第2中間歯車194と従動歯車197は傘歯車である。
【0074】
シャフトドライブ機構187の主要素であるドライブシャフト198は、第1中間軸189と自在継手192と第2中間軸193で構成され、ドライブシャフト198は車体前後方向へ延ばされる。
ドライブシャフト198とモータ軸185は、駆動歯車188と第1中間歯車191からなる平行軸歯車199で連結されている。なお、平行軸歯車199は、実施例では一対の平歯車188、191で構成したが、この他に、一対のはすば歯車、一対のやまば歯車等で構成してもよい。
【0075】
電動モータ142は、モータハウジング201がモータ軸185に沿った長さL4より、モータ軸185に直交する外径D2が大きな形態を呈している。モータ軸185は車両後方へ延ばされる。
【0076】
以上に述べた自動二輪車10A、10B、140の作用効果を以下に記載する。
図1に示す構成により、主収納部30はステップ25Rの車両前方に配置されるため、乗員の足が主収納部30に干渉する心配がない。主収納部30はメインフレーム19の下方に配置されるため、メインフレーム19で車幅方向の寸法制限を受ける心配がない。乗員の足に制約される心配が無く、且つ車体フレーム15に制約されないで主収納部30の大型化を図ることができる。
【0077】
図2に示すように、メインフレーム47L、47Rで重いバッテリ23を支え、図5に示すように、下方延出フレーム95L、95Rで重い電動モータ22を支えるようにした。メインフレーム47Lに下方延出フレーム95Lが繋がって、メインフレーム47Rに下方延出フレーム95Rが繋がっており、車体フレーム15は立体的であって剛性に富む。図1に示すように、剛性に富む車体フレーム15でバッテリ23と電動モータ22を全体的に支える。すなわち、車体フレーム15に局部的に負荷がかかる心配はない。車体フレーム15は立体であるため、左右の部材を小径化、薄肉化しても所望の剛性が確保され、車体フレーム15の軽量化が容易に図れる。
【0078】
図5に示すように、モータハウジング97がモータ軸98に沿った長さL1が短いため、電動モータ22を容易に2本の下方延出フレーム95L、95Rの間に配置することができる。下方延出フレーム95L、95Rが電動モータ22の車幅方向外側に存在するため、下方延出フレーム95L、95Rが電動モータ22の保護材の役割をも果たす。
【0079】
加えて、電動モータ22は、下方延出フレーム95L、95Rの間に配置され、モータハウジング97がモータ軸98に沿った長さL1より、モータ軸98に直交する外径D1が大きな形態を呈するため、車幅寸法が抑えられる。乗員がステップ25L、25Rに足を載せたとき、電動モータ22は乗員の足の内側に配置されるので、足つき性を良好に保つことができる。
【0080】
図7に示す構成により、長尺物を車両前部から後部に渡って収納することができるため、長尺物の収納性を向上させることができる。
【0081】
図12に示すように、モータハウジング201は外径D2が長さL4より大きく、モータハウジング201の長さ方向が車体前後方向に一致するように電動モータ142を配置した。図8に示すように、モータハウジングの車体前後方向長さが短いため、主収納部30の車体前後方向の長さを大きくすることができる。
【0082】
図8に示すように、メインフレーム19は下方延出フレーム21より高い位置に配置される。図11に示すように、2本のメインフレーム47L、47Rの間に配置される電動モータ142も必然的に高い位置に配置される。車体下方の車幅方向を狭くすることで容易にバンク角を確保することができる。さらには、図8に示すように、主収納部30の下方へ副収納部160を延ばすようにすれば、副収納部160は電動モータ142に主収納部30を加えた長さとすることができ、副収納部160に長尺物を収納することが可能となる。したがって、バンク角を確保でき、且つ長尺物を良好に収納できる自動二輪車140が提供される。
【0083】
図12に示すように、平行軸歯車199であれば、ドライブシャフト198とモータ軸185は、駆動側ギヤ188の半径R1と従動側ギヤ191の半径R2の和だけ離間される。この離間距離(R1+R2)を巧みに利用してドライブシャフト198を後輪18の側方へ配置することができる。駆動側ギヤ188と従動側ギヤ191で減速させることができる。
平行軸歯車199は、平歯車に代表され、傘歯車に比較して安価であるからシャフトドライブ機構187のコストダウンを図ることができる。
【0084】
図4に示す構成により、デッドスペースになりやすいV字の谷部29に、制御ユニット37を置くことで、スペースの有効利用を図ることができる。V字の谷部29に近い部位に電動モータ22やバッテリが配置されるため、V字の谷部29に、制御ユニット37を置くことで、ハーネスを短くすることができる。
加えて、制御ユニット37が車体フレーム15に囲まれた位置に配置されるため、車体フレーム15は制御ユニット37の保護材の役割を果たす。
【0085】
尚、本発明に係る電動モータから後輪への動力伝達手段は、実施の形態ではチェーン駆動式又はシャフトドライブ式を採用したが、これらの他にベルト駆動式を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の自動二輪車は、電動式自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0087】
10A、10B、140…自動二輪車、11…ヘッドパイプ、15…車体フレーム、18…後輪、19…メインフレーム、21…下方延出フレーム、22、142…電動モータ(パワーユニット)、23…バッテリ、25L、25R…ステップ、29…谷部、30…主収納部、31L、31R…シートレール、32…シート、37…制御ユニット、47L、47R…左右一対のメインフレーム、95L、95R…左右一対の下方延出フレーム、97、129L、129R、201…モータハウジング、98、127、185…モータ軸、109L…左の電動モータ、109R…右の電動モータ、120…シート下収納部、128…車幅中心線、160…副収納部、186…車体中心(車体中心線)、187…シャフトドライブ機構、198…ドライブシャフト、199…平行軸歯車、L1、L4…長さ、D1、D2…外径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム(15)が、ヘッドパイプ(11)から車両後方へ側面視で直線的に延びるメインフレーム(19)と、このメインフレーム(19)の後部から下方へ延びる下方延出フレーム(21)からなり、
前記車体フレーム(15)に、乗員が座るシート(32)と、乗員が足を載せるステップ(25L、25R)と、後輪(18)を駆動するパワーユニット(22)と、物品を収納する主収納部(30)とを支持する自動二輪車(10A、10B、140)であって、
前記パワーユニット(22)は前記シート(32)の下方に配置され、前記ステップ(25L、25R)は前記下方延出フレーム(21)に取付けられつつ前記シート(32)の下方に配置され、前記主収納部(30)は、前記下方延出フレーム(21)より車両前方で且つ前記メインフレーム(19)の下方に配置されることを特徴とする自動二輪車。
【請求項2】
前記パワーユニット(22)は電動モータ(22)であり、前記メインフレーム(19)は前記ヘッドパイプ(11)から延びる左右一対のメインフレーム(47L、47R)であり、これらのメインフレーム(47L、47R)の上方に前記電動モータ(22)へ給電するバッテリ(23)が取付けられ、前記左右一対のメインフレーム(47L、47R)から左右一対の前記下方延出フレーム(95L、95R)が延ばされ、これらの下方延出フレーム(95L、95R)に前記電動モータ(22)が取付けられていることを特徴とする請求項1記載の自動二輪車。
【請求項3】
前記電動モータ(22)は、モータハウジング(97)がモータ軸(98)に沿った長さ(L1)より、前記モータ軸(98)に直交する外径(D1)が大きな形態を呈し、前記モータ軸(98)が車幅方向へ延びるようにして前記左右一対の下方延出フレーム(95L、95R)の間に配置されていることを特徴とする請求項2記載の自動二輪車。
【請求項4】
前記電動モータ(109L、109R)は、少なくとも車幅中心線(128)から車幅方向左右のいずれか一方にオフセットして配置され、前記シート(32)の下にシート下収納部(120)が配置され、このシート下収納部(120)と前記主収納部(30)とが前記電動モータ(109L、109R)の車幅方向内側にて連通することを特徴とする請求項3記載の自動二輪車。
【請求項5】
前記電動モータ(142)は、モータハウジング(201)がモータ軸(185)に沿った長さ(L4)より、前記モータ軸(185)に直交する外径(D2)が大きな形態を呈し、前記モータ軸(185)が車両後方へ延びるようにして前記左右一対のメインフレーム(47L、47R)の間に配置され、前記電動モータ(142)の前方に前記主収納部(30)が配置されることを特徴とする請求項2記載の自動二輪車。
【請求項6】
前記電動モータ(142)は、モータハウジング(201)がモータ軸(185)に沿った長さ(L4)より、前記モータ軸(185)に直交する外径(D2)が大きな形態を呈し、前記モータ軸(185)が車両後方へ延びるようにして前記左右一対のメインフレーム(47L、47R)の間に配置され、前記電動モータ(142)の下方に前記主収納部(30)とは別の副収納部(160)が配置されていることを特徴とする請求項2記載の自動二輪車。
【請求項7】
前記電動モータ(142)は車体中心(186)に配置され、前記電動モータ(142)が発生する動力は、シャフトドライブ機構(187)で前記後輪(18)に伝達され、このシャフトドライブ機構(187)の主要素であるドライブシャフト(198)は車体前後方向へ延ばされ、このドライブシャフト(198)と前記モータ軸(185)は平行軸歯車(199)で連結されていることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の自動二輪車。
【請求項8】
前記車体フレーム(15)の後部から車両後方に斜め上へ前記シート(32)を支えるシートレール(31L、31R)が延ばされ、車両側面視でこのシートレール(31L、31R)と前記メインフレーム(47L、47R)とでV字を呈するようにし、V字の谷部(29)に前記電動モータ(22)又は前記バッテリ(23)を制御する制御ユニット(37)が配置されることを特徴とする請求項2又は請求項3又は請求項5又は請求項6又は請求項7記載の自動二輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−56595(P2013−56595A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195358(P2011−195358)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】