説明

自動分析装置とその液面検知の正否判定方法

【課題】正常な液面検知を可能とした自動分析装置とその液面検知の正否判定方法を提供すること。
【解決手段】液面検知装置が検知した液面を基準として試薬を吸引し、吸引した試薬を反応容器へ吐出して分注を行う分注プローブ6cと、分注後の分注プローブの内外を洗浄する洗浄槽7とを有する分注装置6を備え、試薬と検体とを反応容器内で反応させ、反応液の光学的特性を測定して検体を分析する自動分析装置とその液面検知の正否判定方法。自動分析装置は、分注プローブが吐出した際の試薬に対応した物理量の変化を検出する検出装置20と、物理量の変化量をもとに液面検知装置による液面の検知が正常か否かを判定する判定部17bとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試薬液面の検知が正常か否かを判定する機能を備えた自動分析装置とその液面検知の正否判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動分析装置は、検体と試薬が反応した反応液の光学的特性を測定することによって検体を分析している。この場合、自動分析装置は、試薬量の正確な分注による高精度な分析と試薬残量管理を確保するため液面を検知する液面検知センサを使用している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3859555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、液面検知機能の低下や誤作動等、液面検知手段に異常が生じた場合、自動分析装置は、試薬分注に際して、試薬の吸引量や吐出量が不正確となって高精度な分析と試薬残量管理が阻害されるという重篤な問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、正常な液面検知を可能とした自動分析装置とその液面検知の正否判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置は、液面検知手段が検知した液面を基準として試薬を吸引し、吸引した試薬を反応容器へ吐出して分注を行う分注プローブと、分注後の前記分注プローブの内外を洗浄する洗浄槽とを有する分注装置を備え、前記試薬と検体とを反応容器内で反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記検体を分析する自動分析装置において、前記分注プローブが吐出した際の前記試薬に対応した物理量の変化を検出する検出手段と、前記物理量の変化量をもとに前記液面検知手段による液面の検知が正常か否かを判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記検出手段は、前記分注プローブが吸引した試薬を前記洗浄槽へ吐出した際の前記分注プローブと前記洗浄槽との間の静電容量を検出する静電容量検出手段であり、前記判定手段は、検出した前記静電容量の変化量が所定閾値以上の場合に前記液面の検知が正常であると判定することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記検出手段は、前記分注プローブが吸引した試薬を前記洗浄槽へ吐出した際の前記分注プローブと前記洗浄槽との間の電気抵抗を検出する抵抗検出手段であり、前記判定手段は、検出した前記電気抵抗の変化量が所定閾値以上の場合に前記液面の検知が正常であると判定することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記検出手段は、前記分注プローブが吸引した試薬を前記反応容器へ吐出した際に前記光学的特性を測定する光が前記反応容器を透過する透過光量を検出する光量検出手段であり、前記判定手段は、検出した前記透過光量の変化量が所定閾値以上の場合に前記液面の検知が正常であると判定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記液面の検知が正常か否かを判定する判定モードを選択し、或いは特定モードの選択によって前記判定モードも実行させる選択手段を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記液面検知手段が検知した前記液面の高さを前記分注プローブの駆動条件から演算し、試薬残量を算出する演算手段と、前記液面の高さ、試薬残量並びに各分注回における試薬の分注量を含む分注履歴を前記試薬毎に記憶する記憶手段と、前記試薬毎の分注履歴を前記記憶手段から読み出して試薬残量を計算し、前記試薬毎に試薬の残量管理を行う残量管理手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記残量管理手段が計算した前記液面の高さ又は試薬残量を出力する出力手段を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の自動分析装置は、上記の発明において、前記出力手段は、前記判定手段の判定結果を出力することを特徴とする。
【0014】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の自動分析装置の液面検知の正否判定方法は、液面検知手段が検知した液面を基準として試薬を吸引し、吸引した試薬を反応容器へ吐出して分注を行う分注プローブと、分注後の前記分注プローブの内外を洗浄する洗浄槽とを有する分注装置を備え、前記試薬と検体とを反応容器内で反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記検体を分析する自動分析装置における前記液面検知手段による液面の検知が正常か否かを判定する液面検知の正否判定方法において、前記分注プローブが吐出した際の前記試薬に対応した物理量の変化を検出する検出工程と、前記物理量の変化量をもとに前記液面検知手段による前記液面の検知が正常か否かを判定する判定工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の自動分析装置の液面検知の正否判定方法は、上記の発明において、前記検出工程は、前記分注プローブが吸引した試薬を前記洗浄槽へ吐出した際の前記分注プローブと前記洗浄槽との間の静電容量を検出し、前記判定工程は、検出した前記静電容量の変化量が所定閾値を越えている場合に前記液面の検知が正常であると判定することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の自動分析装置の液面検知の正否判定方法は、上記の発明において、前記検出工程は、前記分注プローブが吸引した試薬を前記洗浄槽へ吐出した際の前記分注プローブと前記洗浄槽との間の電気抵抗を検出し、前記判定工程は、検出した前記電気抵抗の変化量が所定閾値よりも小さい場合に前記液面の検知が正常であると判定することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の自動分析装置の液面検知の正否判定方法は、上記の発明において、前記検出工程は、前記分注プローブが吸引した試薬を前記反応容器へ吐出した際に前記光学的特性を測定する光が前記反応容器を透過する透過光量を検出し、前記判定工程は、検出した前記透過光量の変化量が所定閾値を越えている場合に前記液面の検知が正常であると判定することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の自動分析装置の液面検知の正否判定方法は、上記の発明において、前記液面検知手段による液面の検知が正常か否かを判定する判定モードを選択し、或いは特定モードの選択によって前記判定モードも実行させる選択工程を含むことを特徴とする。
【0019】
また、本発明の自動分析装置の液面検知の正否判定方法は、上記の発明において、前記液面検知手段が検知した前記液面の高さを前記分注プローブの駆動条件から演算し、試薬残量を算出する演算工程と、前記液面の高さ、試薬残量並びに各分注回における試薬の分注量を含む分注履歴を前記試薬毎に記憶する記憶工程と、を含み、前記液面の検知が正常である場合に、前記試薬毎の分注履歴を前記記憶手段から読み出して試薬残量を計算し、前記試薬毎に試薬の残量管理を行うことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の自動分析装置の液面検知の正否判定方法は、上記の発明において、前記試薬残量を出力する出力工程を含むことを特徴とする。
【0021】
また、本発明の自動分析装置の液面検知の正否判定方法は、上記の発明において、前記出力工程は、前記判定工程の判定結果を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の自動分析装置とその液面検知の正否判定方法は、分注プローブが吐出した際の試薬に対応した物理量の変化をもとに液面検知手段が液面を正常に検知したか否かを判定するので、正常な液面検知が可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、実施の形態1の自動分析装置の概略構成図である。
【図2】図2は、図1の自動分析装置で使用する静電容量検出装置の概略構成を洗浄槽及び試薬容器と共に示すブロック図である。
【図3】図3は、実施の形態1の自動分析装置の液面検知の正否判定方法を説明するフローチャートである。
【図4】図4は、試薬液面の検知が正常な場合に分注プローブから吐出される試薬を示す図である。
【図5】図5は、分注プローブが吐出する試薬によって分注プローブと洗浄槽との間の静電容量に対応して判定部へ出力される容量信号を示す模式図である。
【図6】図6は、試薬容器に保持された試薬の液面に存在する泡による試薬液面の誤検知を説明する図である。
【図7】図7は、試薬液面の検知が異常な場合に分注プローブから吐出される試薬を示す図である。
【図8】図8は、実施の形態2の自動分析装置で使用する抵抗検出部の概略構成を洗浄槽及び試薬容器と共に示すブロック図であり、試薬液面の検知が正常な場合を示す図である。
【図9】図9は、試薬液面の検知が異常な場合に分注プローブから吐出される試薬を示す図である。
【図10】図10は、実施の形態3の自動分析装置で使用する光学測定装置の概略構成を洗浄槽及び試薬容器と共に示すブロック図である。
【図11】図11は、試薬液面の検知が正常な場合に分注プローブから反応容器に吐出された試薬を示す図である。
【図12】図12は、試薬液面の検知が異常な場合に分注プローブから反応容器に吐出された試薬を示す図である。
【図13】図13は、実施の形態3の自動分析装置の液面検知の正否判定方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(実施の形態1)
以下、本発明の自動分析装置とその液面検知の正否判定方法にかかる実施の形態1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、実施の形態1の自動分析装置の概略構成図である。図2は、図1の自動分析装置で使用する静電容量検出装置の概略構成を洗浄槽及び試薬容器と共に示すブロック図である。
【0025】
自動分析装置1は、図1に示すように、ラック供給装置2、反応部4、第一試薬保冷庫9及び第二試薬保冷庫10、第一撹拌装置13、第二撹拌装置14、光学測定装置15、制御部17及び静電容量検出装置20(図2参照)を備えている。また、自動分析装置1は、ラック供給装置2と反応部4との間に検体分注装置3が設けられ、反応部4と第一試薬保冷庫9との間に第一試薬分注装置6が、反応部4と第二試薬保冷庫10との間に第二試薬分注装置8が、それぞれ設けられている。
【0026】
ラック供給装置2は、図1に示すように、複数のラック2aが配列され、各ラック2aには検体を保持した検体容器2bが搭載されている。ラック供給装置2は、矢印で示す経路に沿ってラック2aを順次搬送し、検体分注装置3のプローブ3aによって各検体容器2bに保持された検体が反応部4の反応容器5に分注される。
【0027】
反応部4は、図1に示すように、保温部材4aとキュベットホイール4bとを有している。保温部材4aは、キュベットホイール4bの半径方向内側及び外側に配置され、光学測定装置15と対応する位置に測光用の開口4cが形成されている。キュベットホイール4bは、複数の反応容器5を体温程度の温度に保持して回転し、例えば、一周期で時計方向に(1周−1キュベット)/4分回転し、四周期では時計方向に1キュベット分回転する。
【0028】
第一試薬分注装置6は、第一試薬を第一試薬保冷庫9から吸引してキュベットホイール4bの反応容器5に分注する装置であり、昇降、かつ、軸周りに回転自在な支柱6aの上端にアーム6bが設けられ、アーム6b先端下部に試薬を分注する分注プローブ6cが設けられている。第一試薬分注装置6は、支柱6aをステッピングモータによって駆動することによって分注プローブ6cがアーム6bと共に昇降される。また、第一試薬分注装置6は、分注プローブ6cが水平方向へ回動する移動軌跡上に洗浄槽7(図2参照)が設けられている。このとき、第一試薬分注装置6は、ステッピングモータの駆動パルス数を制御部17によって制御することによって昇降動作が制御されるが、制御部17は駆動パルス数を検出する検出信号を記憶部17dに記憶する。このため、分注プローブ6cは、支柱6aによって昇降させた際の所定の基準位置に対するの鉛直方向の下端位置を演算によって高精度に求めることができる。
【0029】
洗浄槽7は、第一試薬を分注した分注プローブ6cの内外を脱イオン水等の洗浄水によって洗浄する。洗浄槽7は、図2に示すように、洗浄水を吐出するノズル7a、洗浄の際に分注プローブ6cが吐出した第一試薬の残りや分注プローブ6cを洗浄後の洗浄水を排出する排出管7b及び排出管7bの上端外周に配置される洗浄槽電極7cを有している。
【0030】
第二試薬分注装置8は、第一試薬分注装置6と同様に構成され、第二試薬を第二試薬保冷庫10から吸引してキュベットホイール4bの反応容器5に分注する。このため、第二試薬分注装置8は、第一試薬分注装置6と対応する構成部材に対応する符号を付している。
【0031】
第一試薬保冷庫9及び第二試薬保冷庫10は、構成が同じであるので第一試薬保冷庫9について説明し、第二試薬保冷庫10については対応する構成部分に対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0032】
第一試薬保冷庫9は、図1に示すように、第一試薬を保持した複数の試薬容器9aが配置され、第一試薬分注装置6の分注プローブ6cによって所定の試薬が反応容器5に分注される。複数の試薬容器9aは、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、収容した試薬に関する情報を記録するバーコードラベル等の情報記録媒体(図示せず)が外面に貼付されている。ここで、第一試薬分注装置6の試薬容器9aの下部には、保冷庫電極9b(図2参照)が配置されている。第一試薬が分注された反応容器5は、第一撹拌装置13によって検体と第一試薬とが撹拌される。
【0033】
また、第一試薬保冷庫9の外周には、各試薬容器9aに貼付された前記情報記録媒体から試薬情報を読み取り、その情報を制御部17へ出力する読取装置11が設置されている。なお、読取装置12は、第二試薬保冷庫10内の各試薬容器10aに貼付された前記情報記録媒体から試薬情報を読み取り、その情報を制御部17へ出力する。
【0034】
第一撹拌装置13及び第二撹拌装置14は、反応容器5に分注された検体や試薬を撹拌棒13a,13bや撹拌棒14aによって撹拌し、検体と試薬を反応させる。ここで、第一撹拌装置13及び第二撹拌装置14は、ステッピングモータによって精密に昇降駆動される。また、検体分注装置3及び試薬分注装置6,8の各プローブ3a,6c,8c及び撹拌棒13a,14aは、分注及び撹拌終了後、洗浄水タンクから供給される洗浄水によって流水洗浄される。
【0035】
光学測定装置15は、図1に示すように、光源15aと測光センサ15bとを有している。光源15aは、試薬と検体とが反応した反応容器5内の反応液を分析するための分析光を出射する。測光センサ15bは、光源15aが出射し、開口4cを通って反応容器5内の反応液を透過した光束を測光する。このようにして反応液が測光された反応容器5は、洗浄・乾燥ユニット16において内部の反応液が吸引されて廃棄されると共に、洗浄水タンクから供給される洗浄水によって内部が洗浄された後、加圧空気を吹き込んで乾燥される。そして、反応容器5は、再び検体分注装置3のプローブ3aによって新たな検体が分注され、分析に使用される。
【0036】
制御部17は、例えば、分析結果を記憶する記憶機能を備えたマイクロコンピュータ等が使用され、上述した各部と接続されている。制御部17は、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、前記情報記録媒体から読み取った試薬情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設置範囲外の場合、分析作業を規制するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警告を発する。制御部17は、図1に示すように、分析部17a、判定部17b、演算部17c、記憶部17d、残量管理部17e及び処理制御部17fを有している。
【0037】
分析部17aは、測光センサ15bが測光した光量の信号に基づいて求められる反応容器5内の検体と試薬の反応液の吸光度から検体の成分濃度等を分析する。判定部17bは、静電容量検出装置20が検出した静電容量をもとに試薬容器9a,10aに関する試薬液面の検知が正常か否かを判定する判定手段であり、静電容量の変化量が予め設定しておいた所定閾値を越えている場合に試薬液面の検知が正常であると判定する。判定部17bは、分注プローブ6cが試薬容器9a側に位置する場合には、コンパレータ26から出力される信号の電圧をもとに液面を検知したと判定し、分注プローブ6cが洗浄槽7側の位置する場合には、コンパレータ26から出力される信号電圧の変化量が所定閾値を越えている場合に前記液面の検知が正常であると判定する。
【0038】
演算部17cは、静電容量検出装置20が検知した試薬液面の高さを分注プローブ6cの駆動条件から演算し、試薬残量を算出する。記憶部17dは、演算部17cが演算した試薬液面の高さ、試薬残量並びに各分注回における試薬の分注量を含む分注履歴を試薬容器9a,10a毎に記憶する。残量管理部17eは、試薬容器9a,10a毎の分注履歴を記憶部17dから読み出して試薬残量を計算し、次の試薬液面の正否判定が実行されるまでの間、試薬容器9a,10a毎に試薬残量を管理する。処理制御部17fは、自動分析装置1の各部の作動や処理動作を制御し、液面の検知が正常である場合に、選択された判定モードを終了して検体の分析処理に移行させる。
【0039】
入力部18は、制御部17へ検体数や検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。入力部18は、電源投入による自動分析装置1の初期化時や分析開始後の分析中に割り込み、試薬の精度管理的な手法に従って試薬液面の検知が正常か否かを判定する判定モードを含む種々の複数モードから所望のモードを選択するモード選択手段として選択ボタン18a(図1参照)を備えている。このとき、入力部18は、選択ボタン18aが複数モードのうち予め設定された特定のモードを選択すると、ユーザが選択操作をしなくとも判定モードを実行する。
【0040】
出力部19は、図1に示すように、表示部19aと告知部19bとを有している。表示部19aは、残量管理部17eが計算した試薬容器毎の試薬残量や分析結果を含む自動分析装置1に係る種々の情報を表示するディスプレイパネル等を使用した表示手段である。告知部19bは、スピーカ等によって撹拌の良否を含む自動分析装置1に係る種々の警報を音声又は警報音によって告知する。
【0041】
静電容量検出装置20は、第一試薬分注装置6と第二試薬分注装置8にそれぞれ設けられ、構成が同一であるので、第一試薬分注装置6に設けた静電容量検出装置20について説明し、第二試薬分注装置8に設けた静電容量検出装置20の説明は省略する。
【0042】
静電容量検出装置20は、分注プローブ6cが洗浄槽7へ試薬を吐出する際の分注プローブ6cと洗浄槽7との間の静電容量の変化を検出する検出手段であり、試薬容器9aに保持された第一試薬の液面を試薬分注時に検知する液面検知装置を兼ねている。静電容量検出装置20は、可動電極としての分注プローブ6cの他に、図2に示すように、発振器21,22、洗浄槽電極7c、保冷庫電極9b、増幅器23、ダイオード24及びコンパレータ26を有している。
【0043】
発振器21,22は、図2に示すように、洗浄槽電極7cと保冷庫電極9bに交流信号を印加する。このとき、分注プローブ6cは、発振器21,22が印加する交流信号によって固定電極である洗浄槽電極7cや保冷庫電極9bに誘導される発振信号を受信する可動電極となる。
【0044】
増幅器23は、図2に示すように、ダイオード24及びコンパレータ26を介して分注プローブ6cと制御部17とを接続している。増幅器23は、分注プローブ6cが吸引した第一試薬を洗浄槽7へ吐出する際の第一試薬の量に応じて、発振器21が洗浄槽電極7cに印加している発振信号が第一試薬及び分注プローブ6cを通じて導入され、発振信号を増幅する。同様に、増幅器23は、分注プローブ6cの下端が試薬容器9aに分注した第一試薬の液面に接すると、発振器22が保冷庫電極9bに印加している発振信号が第一試薬及び分注プローブ6cを通じて導入され、発振信号を増幅する。
【0045】
ダイオード24は、増幅器23で増幅された発振信号をコンデンサ25と協働して整流、平滑化し、平滑化信号をコンパレータ26に出力する。
【0046】
コンパレータ26は、ダイオード24から入力される平滑化信号(電圧)を別途入力される基準値信号(電圧)と比較することにより分注プローブ6cと洗浄槽7との間の静電容量に対応した容量信号又は液面の検知信号を判定部17bへ出力する。
【0047】
以上のように構成される自動分析装置1は、制御部17の制御の下に作動し、回転するキュベットホイール4bによって周方向に沿って搬送されてくる複数の反応容器5のそれぞれに第一試薬分注装置6によって試薬容器9aから第一試薬が順次分注された後、検体分注装置3によってラック2aに保持された複数の検体容器2bから検体が順次分注される。検体が分注された反応容器5には、第二試薬分注装置8が試薬容器10aから順次第二試薬が分注される。
【0048】
この間、試薬や検体が分注された反応容器5は、キュベットホイール4bが停止する都度、第一撹拌装置13や第二撹拌装置14によって試薬や検体が撹拌され、キュベットホイール4bが再び回転したときに光学測定装置15を通過する。このとき、反応容器5内の試薬と検体とが反応した反応液は、光学測定装置15において光学的特性が測定され、光学測定装置15から入力される光信号をもとに分析部17aによって成分濃度等が分析される。そして、反応液の測定が終了した反応容器5は、洗浄・乾燥ユニット16に移送されて洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0049】
このとき、自動分析装置1は、例えば、電源投入による初期化時、分析開始前或いは分析開始後の分析中に選択ボタン18aを押下して判定モードを選択すると、制御部17の制御のもとに第一試薬保冷庫9の複数の試薬容器9aや第二試薬保冷庫10の複数の試薬容器10aに対して試薬のダミー分注が行われる。そして、このダミー分注の際の試薬液面の検知が正常か否かの判定が、吸引した試薬を吐出する際の分注プローブ9cと洗浄槽7の洗浄槽電極7cとの間の静電容量の変化量をもとに実行される。
【0050】
この場合、初期化時には、総ての試薬容器に対して試薬液面の正否判定が実行されるが、分析中の場合、試薬液面の正否判定は、分析に伴う試薬の所定分注回数毎に1回、適宜の頻度で実行される。また、試薬液面の正否判定は、試薬容器を特定して実行させることも可能である。更に、判定モードは、選択ボタン18aの押下による選択に代えて、例えば、電源投入による初期化時、分析開始前或いは分析開始後の分析中にユーザが特定のモード、例えば、試薬チェックモード等を選択した場合に自動で実行されるように設定してもよい。
【0051】
以下、制御部17の制御のもとに第一試薬分注装置6がダミー分注をする際に実行される自動分析装置の液面検知の正否判定方法を図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0052】
先ず、第一試薬分注装置6を駆動し、分注プローブ6cの下降を開始する(ステップS100)。次に、試薬容器9aに保持された試薬液面への分注プローブ6c下端の接触、即ち、液面を検知する(ステップS102)。この液面検知は、静電容量検出装置20によって行われる。
【0053】
次いで、分注プローブ6cの下降を停止し(ステップS104)、試薬を吸引する(ステップS106)。その後、第一試薬分注装置6を駆動し、分注プローブ6cを洗浄槽7へ移動させる(ステップS108)。
【0054】
次に、吸引した試薬を分注プローブ6cから洗浄槽7へ吐出させる(ステップS110)。この試薬の吐出により、静電容量検出装置20が、分注プローブ6cと洗浄槽7の洗浄槽電極7cとの間の静電容量を検出し、分注プローブ6cと洗浄槽7との間の静電容量に対応した容量信号を判定部17bへ出力する。次いで、容量信号をもとに判定部17bが、静電容量の変化量が所定閾値を以上か否かを判定する(ステップS112)。
【0055】
ここで、分注プローブ6cによる試薬液面の検知が正常な場合、分注プローブ6cは予め設定された規定量の試薬を吸引する。このため、分注プローブ6cが洗浄槽7へ試薬を吐出すると、図4に示すように、試薬Rは、所定長さの液滴となって洗浄槽電極7cの内側を流下してゆく。この結果、静電容量に基づいて静電容量検出装置20のコンパレータ26から出力される信号電圧(V)は、時間の経過に伴って図5に曲線Cnで示すように変化し、変化量はΔCnとなる。
【0056】
一方、例えば、図6に示すように、試薬容器9aに保持された試薬Rの液面に泡Bが存在していると、泡Bによって試薬液面を誤検知する。このような誤検知や液面検知機能の低下や誤作動等、静電容量検出装置20の異常を含め、分注プローブ6cによる試薬液面の検知が異常の場合、分注プローブ6cは予め設定された規定量の試薬を吸引することができない。このため、分注プローブ6cが洗浄槽7へ試薬を吐出すると、図7に示すように、試薬Rは、小さな液滴となって洗浄槽電極7cの内側を流下してゆく。この結果、静電容量に基づく信号電圧(V)は、図5に曲線Ciで示すように変化し、変化量はΔCiとなる。
【0057】
従って、予め閾値Tsを設定しておけば、判定部17bは、信号電圧(=静電容量)の変化量が閾値Ts以上の場合に液面検知が正常であると判定し、閾値Ts未満の場合には液面検知は異常であると判定する。
【0058】
判定の結果、静電容量の変化量が所定閾値以上の場合(ステップS112,Yes)、判定部17bは、液面検知が正常であると判定する(ステップS114)。次に、制御部17は、分注プローブ6cを洗浄させる(ステップS116)。このとき、分注プローブ6cは、洗浄槽7内へ下降され、洗浄水を吐出して内部を洗浄すると共に、ノズル7aから吐出する洗浄水によって外部が洗浄される。洗浄終了後、分注プローブ6cは、初期位置へと戻される。
【0059】
次に、正常に検知された試薬液面の高さを演算する(ステップS118)。このとき、液面の高さは、第一試薬分注装置6の支柱6aを昇降駆動するステッピングモータの駆動パルス数をもとに演算部17cが計算する。次いで、求めた試薬液面の高さと試薬容器9aの容量をもとに、試薬残量を算出する(ステップS120)。この試薬残量も演算部17cが計算する。
【0060】
そして、試薬液面の高さ又は試薬残量を試薬容器9aの識別番号と共に記憶部17dに記憶する(ステップS122)。その後、算出した試薬液面の高さ又は試薬残量を表示部19aに表示する(ステップS124)。このとき、残量管理部17eは、上記のようにして算出した試薬残量と、これから開始する検体の分析依頼情報から抽出した各試薬の使用量とをもとに次回の判定モードが実行されるまでの間、試薬残量を管理する。
【0061】
一方、静電容量の変化量が所定閾値未満の場合(ステップS112,No)、判定部17bは、液面検知が異常であると判定する(ステップS126)。次に、制御部17は、分注プローブ6cを洗浄させ(ステップS128)、液面検知の異常を告知する(ステップS130)。この告知は、液面検知が異常であった旨の表示部19aへの表示、或いは告知部19bからの音声又は警報音による告知によって行われる。また、洗浄終了後、分注プローブ6cは、初期位置へと戻される。次いで、制御部17は、液面検知が異常であると判定された試薬容器9aの使用中止を決定する(ステップS132)。
【0062】
このとき、1つの試薬容器9aについてダミー分注を行った場合には、液面検知の異常原因が、試薬液面の泡の存在にあるのか静電容量検出装置20の異常にあるのかは区別できない。但し、通常は複数の試薬容器9aについてダミー分注を行うので、静電容量検出装置20に異常が発生した場合には、他の試薬容器9aにおいても液面検知の異常が連続して発生するので容易に区別することができる。なお、制御部17が使用中止とした試薬容器9aは、判定モードが終了した際、オペレータが検体の分析を開始する前に泡の有無をチェックし、泡が存在する場合には消泡処理を施す。
【0063】
その後、制御部17は、総ての試薬容器9aの正否判定が終了したか否かを判定する(ステップS134)。判定の結果、総ての試薬容器9aの液面検知の正否判定が終了していない場合(ステップS134,No)、制御部17は、第一試薬分注装置6のアーム6bを新たな試薬容器9aの位置へ移動し、ステップS100以降の工程を繰り返す。一方、総ての試薬容器9aの液面検知の正否判定が終了している場合(ステップS134,Yes)、制御部17は、前述の判定モードに係る自動分析装置の液面検知の正否判定方法を終了する。そして、制御部17は、検体の分析を開始し、或いは再開する。
【0064】
このように、実施の形態1は、分注プローブ6cが洗浄槽7へ試薬を吐出する際に検出した分注プローブ6cと洗浄槽7との間の静電容量の変化量が所定閾値を越えている場合には、この試薬を吸引する際の静電容量検出装置20による試薬液面の検知は正常であると判定し、所定閾値以下の場合には試薬液面の検知は異常であると判定する。このため、自動分析装置とその液面検知の正否判定方法によれば、正常な液面検知が可能となる。このため、自動分析装置1は、誤った分析データをユーザへ提供する頻度を低減し、又は回避することができる。
【0065】
実施の形態1によれば、液面検知異常の種々の原因に対する検出手段を設けるのに比べ、安価、かつ、簡易な構成よって対応することができ、液面検知手段の液面検知機能の低下や誤作動等にも対応することができる。また、実施の形態1は、判定モードの際、ダミー分注した試薬を吐出する際の静電容量を洗浄槽7で検出している。このため、自動分析装置1は、静電容量の検出部を新たに設ける必要がないので、省スペース化を図ることができるという利点がある。この場合、試薬のダミー分注は、検出の1回の分析毎に行うのではなく、判定モードの際に試薬容器毎に1回行うので、試薬の無駄を最小限に抑えることができる。
【0066】
更に、判定モードにおいては、試薬液面の正否判定は、分析に伴う試薬の所定分注回数毎に1回実施すれば試薬残量が算出・表示される。このため、試薬残量が不明の試薬容器を使用しても、試薬液面の正否判定の際に試薬残量が算出され、表示される。さらに適宣の頻度で実施すれば、より信頼性の高い試薬残量・表示が算出されることになる。このようにして、自動分析装置1は、ユーザによる試薬使用上の自由度を高め、検体の分析計画立案のうえで有益となる。
【0067】
(実施の形態2)
次に、本発明の自動分析装置とその液面検知の正否判定方法にかかる実施の形態2について、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態1は物理量として静電容量を検出したが、実施の形態2は物理量として電気抵抗を検出している。図8は、実施の形態2の自動分析装置で使用する抵抗検出部の概略構成を洗浄槽及び試薬容器と共に示すブロック図である。ここで、実施の形態2以降に説明する自動分析装置は基本構成が実施の形態1と同じである。このため、以下の説明においては、自動分析装置1と同一構成要素には同一の符号を使用している。
【0068】
抵抗検出部30は、図8に示すように、分注プローブ6cが吸引した試薬を洗浄槽7へ吐出した際の分注プローブ6cと洗浄槽7の洗浄槽電極7cとの間の電気抵抗の変化を検出する。このため、第一試薬分注装置6は、実施の形態1の静電容量検出装置20と同様に、分注プローブ6cと保冷庫電極9bとの間の静電容量から液面を検知する増幅器23、ダイオード24、及びコンパレータ26を有する液面検知手段を設ける。
【0069】
このとき、分注プローブ6cによる試薬液面の検知が正常な場合、分注プローブ6cは予め設定された規定量の試薬を吸引する。このため、分注プローブ6cが洗浄槽7へ試薬を吐出すると、図8に示すように、分注プローブ6cと洗浄槽7の洗浄槽電極7cとの間が吐出した試薬Rによって電気的に導通する。この結果、抵抗検出部30が検出する分注プローブ6cと洗浄槽電極7cとの間の電気抵抗は、試薬を吐出した際に抵抗値が大きく変化する。
【0070】
一方、泡による試薬液面の誤検知、液面検知機能の低下や誤作動等、静電容量検出装置20の異常を含め、分注プローブ6cによる試薬液面の検知が異常の場合、分注プローブ6cは予め設定された規定量の試薬を吸引することができない。このため、分注プローブ6cが洗浄槽7へ試薬を吐出すると、図9に示すように、試薬Rは、小さな液滴となって洗浄槽電極7cの内側を流下してゆく。このため、分注プローブ6cと洗浄槽7の洗浄槽電極7cとの間は、吐出した試薬によって電気的に導通されない。この結果、抵抗検出部30が検出する電気抵抗は、試薬を吐出しても大きい抵抗値を示し、殆ど変化しない。
【0071】
従って、判定部17bは、分注プローブ6cが試薬を吐出した際に抵抗検出部30が検出した電気抵抗値の変化量が所定閾値以上の場合に試薬液面の検知が正常であると判定し、所定閾値未満の場合には試薬液面の検知が異常であると判定する。このため、実施の形態2によれば、正常な液面検知が可能となる。
【0072】
また、実施の形態1で説明した効果に加え、実施の形態2によれば、電気抵抗をもとに試薬液面の検知が正常であるか否かを判定するので、洗浄槽電極7cに交流信号を印加する発振器21が不要になる。更に、電気抵抗は、静電容量に比べて静電気等の外来ノイズに対する耐性が強いため、実施の形態2によれば、実施の形態1よりも信頼性の高い検出が可能となる。
【0073】
(実施の形態3)
次に、本発明の自動分析装置とその液面検知の正否判定方法にかかる実施の形態3について、図面を参照して詳細に説明する。実施の形態2は物理量として電気抵抗を検出したが、実施の形態3は光量検出手段として光学測定装置を使用し、物理量として反応容器5を透過する透過光量を検出している。図10は、実施の形態3の自動分析装置で使用する光学測定装置の概略構成を洗浄槽及び試薬容器と共に示すブロック図である。実施の形態3の自動分析装置は、実施の形態1の静電容量検出装置20を用いて試薬液面を検知する。
【0074】
光学測定装置15は、分注プローブ6cが吸引した試薬を反応容器5へ吐出した際に光学的特性を測定する光が反応容器5を透過する透過光量の変化を検出する光量検出手段として使用されている。
【0075】
このとき、分注プローブ6cが正常に試薬液面を検知すると、分注プローブ6cは予め設定された規定量の試薬を吸引する。このため、分注プローブ6cが試薬を吐出した場合、図11に示すように、反応容器5は、規定量の試薬Rが分注される。この結果、反応容器5を透過して測光センサ15bが受光する透過光量は、反応容器5が空の場合と比較して大きな差が生じる。
【0076】
一方、泡による試薬液面の誤検知、液面検知機能の低下や誤作動等、静電容量検出装置20の異常を含め、分注プローブ6cによる試薬液面の検知が異常であった場合、分注プローブ6cは予め設定された規定量の試薬を吸引することができない。このため、分注プローブ6cが試薬を吐出しても、図12に示すように、反応容器5は、規定量の試薬Rが分注されることはなく、光源15aが出射した分析光は試薬Rに入射することなく透過してゆく。この結果、反応容器5を透過して測光センサ15bが受光する透過光量は、反応容器5が空の場合と比較して大きな差が生じない。
【0077】
従って、予め測光センサ15bが受光する透過光量に関し、反応容器5が空の場合の透過光量と反応容器5が規定量の試薬Rを保持した場合の透過光量との変化量に所定閾値を設定しておけば、判定部17bは、空の場合と比較した透過光量の変化量が所定閾値以上の場合に液面検知が正常であると判定し、所定閾値未満の場合には液面検知は異常であると判定する。
【0078】
以下、制御部17の制御のもとに実行される実施の形態3の自動分析装置の液面検知の正否判定方法を図13に示すフローチャートを参照して説明する。
【0079】
先ず、反応容器5を洗浄する(ステップS200)。次に、洗浄後の空の反応容器5の透過光量を測定する(ステップS202)。
【0080】
次いで、第一試薬分注装置6を駆動し、分注プローブ6cの下降を開始する(ステップS204)。その後、試薬容器9aに保持された試薬液面への分注プローブ6c下端の接触、即ち、液面を検知する(ステップS206)。この液面検知は、静電容量検出装置20によって行われる。
【0081】
次に、分注プローブ6cの下降を停止し(ステップS208)、試薬を吸引する(ステップS210)。次いで、第一試薬分注装置6を駆動し、分注プローブ6cを反応部4へ移動させる(ステップS212)。
【0082】
次に、吸引した試薬を分注プローブ6cから反応容器5へ吐出させる(ステップS214)。次いで、試薬が吐出された反応容器5の透過光量を測定する(ステップS216)。その後、空の場合と試薬吐出後の透過光量の変化量が所定閾値以上か否かを判定する(ステップS218)。
【0083】
判定の結果、透過光量の変化量が所定閾値以上の場合(ステップS218,Yes)、判定部17bは、液面検知が正常であると判定する(ステップS220)。次に、判定に使用した分注プローブ6c及び反応容器5を洗浄させる(ステップS222)。洗浄終了後、分注プローブ6cは、初期位置へと戻される。
【0084】
次いで、正常に検知された試薬液面の高さと試薬残量を算出する(ステップS224)。そして、試薬液面の高さ又は試薬残量を試薬容器9aの識別番号と共に記憶部17dに記憶する(ステップS226)。
【0085】
その後、算出した試薬液面の高さ又は試薬残量を表示部19aに表示する(ステップS228)。このとき、残量管理部17eは、実施の形態1で説明したように、算出した試薬残量と、これから開始する検体の分析依頼情報から抽出した各試薬の使用量とをもとに次回の判定モードが実行されるまでの間、試薬残量を管理する。
【0086】
一方、静電容量の変化量が所定閾値未満の場合(ステップS218,No)、判定部17bは、液面検知が異常であると判定する(ステップS230)。次に、判定に使用した分注プローブ6c及び反応容器5を洗浄させる(ステップS232)。洗浄終了後、分注プローブ6cは、初期位置へと戻される。
【0087】
次いで、液面検知の異常を告知し(ステップS234)、液面検知が異常であると判定された試薬容器9aの使用中止を決定する(ステップS236)。その後、制御部17は、総ての試薬容器9aの正否判定が終了したか否かを判定する(ステップS238)。
【0088】
判定の結果、総ての試薬容器9aの液面検知の正否判定が終了していない場合(ステップS238,No)、制御部17は、第一試薬分注装置6のアーム6bを新たな試薬容器9aの位置へ移動し、ステップS200以降の工程を繰り返す。一方、総ての試薬容器9aの液面検知の正否判定が終了している場合(ステップS238,Yes)、制御部17は、前述の判定モードに係る自動分析装置の液面検知の正否判定方法を終了する。そして、制御部17は、検体の分析を開始し、或いは再開する。
【0089】
以上のように、実施の形態3によれば、正常な液面検知が可能となる。また、実施の形態1で説明した効果に加え、実施の形態3によれば、反応容器5の透過光量をもとに試薬液面の検知が正常であるか否かを判定するので、洗浄槽電極7cや発振器21が不要になる。
【0090】
更に、実施の形態3は、透過光量を用いて液面検知が正常であるか否かを判定するので、静電容量から液面検知が正常であるか否かを判定する場合に比べて電気的ノイズによる影響を回避することができる。
【0091】
尚、上記各実施の形態は、第一試薬分注装置6がダミー分注をする際に実行される自動分析装置の液面検知の正否判定方法について説明したが、第二試薬分注装置8がダミー分注をする際にも同様にして液面検知の正否判定方法は実行される。
【0092】
また、上記各実施の形態の液面検知手段は、分注プローブによって静電容量を検出することで液面を検知する静電容量方式を使用した場合について説明した。しかし、液面検知手段は、静電容量方式の他に、例えば、分注プローブに電極を設け、この電極と試薬との電気的導通によって液面を検知する手段等、既存の手段を使用することができる。
【0093】
更に、実施の形態1〜3は、初期化時や分析開始前のような検体の分析とは別の監視モードの際に実行する場合について説明したが、より確実な試薬液面検知の異常判定を可能とするために、分析動作中の分注動作毎に行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
以上のように、本発明の自動分析装置とその液面検知の正否判定方法は、液面検知手段を備えた自動分析装置において液面検知手段が液面を正常に検知したか否かを判定するのに適している。
【符号の説明】
【0095】
1 自動分析装置
2 ラック供給装置
3 検体分注装置
4 反応部
5 反応容器
6 第一試薬分注装置
6c 分注プローブ
7 洗浄槽
7c 洗浄槽電極
8 第二試薬分注装置
9 第一試薬保冷庫
9a 試薬容器
9b 保冷庫電極
10 第二試薬保冷庫
10a 試薬容器
11,12 読取装置
13 第一撹拌装置
14 第二撹拌装置
15 光学測定装置
15a 光源
15b 測光センサ
16 洗浄・乾燥ユニット
17 制御部
17b 判定部
17c 演算部
17d 記憶部
17e 残量管理部
17f 処理制御部
18 入力部
18a 選択ボタン
19 出力部
19a 表示部
19b 告知部
20 静電容量検出装置
21,22 発振器
23 増幅器
24 ダイオード
25 コンデンサ
26 コンパレータ
30 抵抗検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液面検知手段が検知した液面を基準として試薬を吸引し、吸引した試薬を反応容器へ吐出して分注を行う分注プローブと、分注後の前記分注プローブの内外を洗浄する洗浄槽とを有する分注装置を備え、前記試薬と検体とを反応容器内で反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記検体を分析する自動分析装置において、
前記分注プローブが吐出した際の前記試薬に対応した物理量の変化を検出する検出手段と、
前記物理量の変化量をもとに前記液面検知手段による液面の検知が正常か否かを判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記検出手段は、前記分注プローブが吸引した試薬を前記洗浄槽へ吐出した際の前記分注プローブと前記洗浄槽との間の静電容量を検出する静電容量検出手段であり、
前記判定手段は、検出した前記静電容量の変化量が所定閾値以上の場合に前記液面の検知が正常であると判定することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記検出手段は、前記分注プローブが吸引した試薬を前記洗浄槽へ吐出した際の前記分注プローブと前記洗浄槽との間の電気抵抗を検出する抵抗検出手段であり、
前記判定手段は、検出した前記電気抵抗の変化量が所定閾値以上の場合に前記液面の検知が正常であると判定することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記分注プローブが吸引した試薬を前記反応容器へ吐出した際に前記光学的特性を測定する光が前記反応容器を透過する透過光量を検出する光量検出手段であり、
前記判定手段は、検出した前記透過光量の変化量が所定閾値以上の場合に前記液面の検知が正常であると判定することを特徴とする請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記液面の検知が正常か否かを判定する判定モードを選択し、或いは特定モードの選択によって前記判定モードも実行させる選択手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記液面検知手段が検知した前記液面の高さを前記分注プローブの駆動条件から演算し、試薬残量を算出する演算手段と、
前記液面の高さ、試薬残量並びに各分注回における試薬の分注量を含む分注履歴を前記試薬毎に記憶する記憶手段と、
前記試薬毎の分注履歴を前記記憶手段から読み出して試薬残量を計算し、前記試薬毎に試薬の残量管理を行う残量管理手段と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記残量管理手段が計算した前記液面の高さ又は試薬残量を出力する出力手段を備えることを特徴とする請求項6に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記出力手段は、前記判定手段の判定結果を出力することを特徴とする請求項7に記載の自動分析装置。
【請求項9】
液面検知手段が検知した液面を基準として試薬を吸引し、吸引した試薬を反応容器へ吐出して分注を行う分注プローブと、分注後の前記分注プローブの内外を洗浄する洗浄槽とを有する分注装置を備え、前記試薬と検体とを反応容器内で反応させ、反応液の光学的特性を測定して前記検体を分析する自動分析装置における前記液面検知手段による液面の検知が正常か否かを判定する液面検知の正否判定方法において、
前記分注プローブが吐出した際の前記試薬に対応した物理量の変化を検出する検出工程と、
前記物理量の変化量をもとに前記液面検知手段による前記液面の検知が正常か否かを判定する判定工程と、
を含むことを特徴とする液面検知の正否判定方法。
【請求項10】
前記検出工程は、前記分注プローブが吸引した試薬を前記洗浄槽へ吐出した際の前記分注プローブと前記洗浄槽との間の静電容量を検出し、
前記判定工程は、検出した前記静電容量の変化量が所定閾値を越えている場合に前記液面の検知が正常であると判定することを特徴とする請求項9に記載の液面検知の正否判定方法。
【請求項11】
前記検出工程は、前記分注プローブが吸引した試薬を前記洗浄槽へ吐出した際の前記分注プローブと前記洗浄槽との間の電気抵抗を検出し、
前記判定工程は、検出した前記電気抵抗の変化量が所定閾値よりも小さい場合に前記液面の検知が正常であると判定することを特徴とする請求項9に記載の液面検知の正否判定方法。
【請求項12】
前記検出工程は、前記分注プローブが吸引した試薬を前記反応容器へ吐出した際に前記光学的特性を測定する光が前記反応容器を透過する透過光量を検出し、
前記判定工程は、検出した前記透過光量の変化量が所定閾値を越えている場合に前記液面の検知が正常であると判定することを特徴とする請求項9に記載の液面検知の正否判定方法。
【請求項13】
前記液面検知手段による液面の検知が正常か否かを判定する判定モードを選択し、或いは特定モードの選択によって前記判定モードも実行させる選択工程を含むことを特徴とする請求項9〜12のいずれか一つに記載の液面検知の正否判定方法。
【請求項14】
前記液面検知手段が検知した前記液面の高さを前記分注プローブの駆動条件から演算し、試薬残量を算出する演算工程と、
前記液面の高さ、試薬残量並びに各分注回における試薬の分注量を含む分注履歴を前記試薬毎に記憶する記憶工程と、
を含み、前記液面の検知が正常である場合に、前記試薬毎の分注履歴を前記記憶手段から読み出して試薬残量を計算し、前記試薬毎に試薬の残量管理を行うことを特徴とする請求項13に記載の液面検知の正否判定方法。
【請求項15】
前記試薬残量を出力する出力工程を含むことを特徴とする請求項14に記載の液面検知の正否判定方法。
【請求項16】
前記出力工程は、前記判定工程の判定結果を出力することを特徴とする請求項15に記載の液面検知の正否判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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