説明

自動分析装置

【課題】
小型で試薬搭載数が多く、処理能力の高い自動分析装置を提供する。
【解決手段】
反応ディスクの中と外にそれぞれ試薬ディスクを設け、試薬プローブで両方の試薬ディスクからの共通の位置に吐出可能とし、それぞれの試薬ディスクにサイクルごとに複数の試薬プローブのうちの1本ずつが交互にアクセスするように構成する。また独立して回転可能な2つのアームで構成される試薬プローブにより、複数のポイントへのアクセスが可能であり、かつ複数の試薬プローブの干渉回避が可能である。
【効果】
第1試薬と第2試薬を両方の試薬ディスクに配置可能であり、装置サイズを大きくすることなく試薬搭載数を増やし、サイクルの時間を短くして処理能力が高い自動分析装置が実現可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液等の成分を自動的に分析する自動分析装置に係り、特により多くの試薬を搭載でき、かつ時間あたりの処理能力の高い自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血液等の生体試料を自動的に分析し、結果を出力する自動分析装置は、患者数の多い大病院,中小病院,医院から検査を請け負い検査を行う検査センターなどにおいて効率良く分析を行うのになくてはならない装置になっている。
【0003】
そのような自動分析装置は、コンパクトでより多種類の分析ができ、かつ処理速度の高いものが望まれており、従来種々のものが提案されている。例えば特許文献には同心円状に試薬を載置可能にした試薬ディスクを2つ設け、かつ同心円状の各試薬容器列に対応して独立して可動可能な試薬プローブを設けた自動分析装置が開示されている。すなわち、試薬ディスクを同心円状に配置することにより、試薬の搭載可能数を多くし、かつ試薬プローブを各試薬容器列に対応して独立して可動可能に設けることにより、処理速度の低下を防ごうというものである。
【0004】
しかしこの技術によれば、1つの試薬ディスク上の試薬容器列にアクセスする複数の試薬プローブは同一の回転軸を中心にして動作するため、同一試薬ディスク上の試薬容器からの試薬は反応ディスク上の同一の分注位置にある反応容器にしか分注することができない、また、異なる試薬ディスク上の試薬容器からの試薬は反応ディスク上の異なる位置にしか分注することができず、ランダムな組み合わせの分析を高速で処理できないという問題があった。
【0005】
この問題を解決するために、特許文献2では、複数の試薬ディスクの間を結ぶレールに沿って往復動が可能であり、更にレールに直交方向に往復動可能な移動機構を有する試薬分注プローブを備えた自動分析装置が開示されている。すなわち試薬分注プローブの可動範囲を広くすることにより、アクセスできる試薬容器、および反応容器の範囲を広くすることにより自由度を向上させている。またレールに沿って往復動が可能な試薬分注プローブを複数設ける、あるいは該レールを複数設けるなどにより、処理速度の向上を図っている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−10957号公報
【特許文献2】特開2004−45112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献に記載の技術では、試薬分注プローブの動作可能範囲にレールが必要であることから、レールを支持するフレームが必要となるが、フレームには高い機械的強度が要求される。
【0008】
特に高い処理速度が必要とされる場合には、複数の試薬分注プローブを設ける必要があるため、フレームには複数のレールを取り付けることとなり、これら複数の試薬分注プローブが同時に、かつ高速で動作することにより、特に動作の起動,停止時に発生する振動が該レールを介して他の試薬分注プローブに伝播し、試薬の飛散り,分注精度の低下などの問題が発生する。
【0009】
これを低減するためにフレームの機械的強度を上げる必要があるが、機械的強度を増すためにはフレームが大きくなるという問題が発生する。通常、片持ちの支持方法では強度が低く、フレーム同士をつないで箱型にすることにより強度が上がるが、フレームは複数の試薬ディスクと反応容器の間を結んでいるため試薬ディスクの上空を覆う形状となってしまい、試薬ディスク内に配置される試薬の交換作業が非常に困難となる。処理能力の高い装置では試薬の消費速度も速く、試薬交換の頻度は多くなるため、試薬交換作業が行いにくいことは大きな問題となる。
【0010】
また試薬分注プローブがレール上に配置される構造では、試薬分注プローブの可動範囲が広くなるのに比例してレールも長くする必要があり、コストアップの要因ともなる。
【0011】
更に、複数の試薬分注プローブを設けた場合、2本の試薬分注プローブが近接した場所に同時にアクセスしたい場合など、お互いのレールが障害物となり実際には1本の試薬分注プローブしか動作できなくなるなどの制限が生じるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の課題解決手段は次の通りである。
【0013】
複数の試薬容器を周上に配置する試薬ディスクと、複数の反応容器を周上に配置する反応ディスクと、を備え、前記試薬容器に収容された試薬と試料を前記反応容器中で反応させ、該反応を分析する機構を備えた自動分析装置において、前記試薬ディスクを複数備え、更に前記試薬容器から吸引した試薬を反応容器に吐出する試薬分注プローブを備え、前記試薬分注プローブは第1の回転軸を中心として回転動作する第1アームと前記第1アーム内に配置された第2の回転軸を中心として回転動作する第2アームで構成され、前記第1アームと前記第2アームは独立した回転動作が可能な機構を備えている。これにより、試薬分注プローブは広範囲にアクセスが可能であると同時に、試薬ディスク上空に支持構造体等の障害物が発生せず、試薬交換等のメンテナンス作業が容易に可能となる。更に、高処理能力化のためには、前記第1アームと前記第2アームが独立して回転動作が可能な試薬分注プローブは複数設けられていても良い。この場合、複数の試薬分注プローブは独立して装置に取り付け可能であるため、他の試薬分注プローブの動作により発生する振動による飛散りや分注性能の低下等の影響を受けず、安定した分注性能を確保できる。
【0014】
また、試薬分注プローブがアクセスできる範囲は、第1アーム内にある第2アーム回転中心の軌跡上を中心とした第2アームの回転半径内であり、この範囲は第1アームと第2アームの長さのみによって決定されるため、これらの長さを変更することにより用途に応じた可動範囲を容易に設定可能である。
【0015】
更に複数の試薬分注プローブが動作する場合において、近接する場所にアクセスする必要が生じた場合でも、第1アームと第2アームの動作タイミングをずらすことにより、お互いの干渉を避けることが可能であり、前述のレールを用いた例の場合のように、他の機構の動作に制限を受けずに性能を最大限に発揮することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上に示したように、本発明においては第1試薬と第2試薬を搭載する試薬ディスクを2つもち、1回のサイクル中にそれぞれの試薬ディスクから1本の試薬プローブでのみ試薬を吸引するので、多くの試薬を搭載し、また独立して回転可能な2つのアームで構成される試薬プローブにより、複数のポイントへのアクセスが可能であり、かつ複数の試薬プローブの干渉回避が可能であることから時間あたりの処理能力の高い自動分析装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第1実施例の斜視図であり、図2は上面図である。
【0018】
筐体62上の反応ディスク36には54個の反応容器35が円周上に並んでいる。反応ディスク36の内側に試薬ディスク42が、外側に試薬ディスク41が配置されている。試薬ディスク41,42にはそれぞれ複数の試薬容器40が円周上に載置可能である。1つの試薬容器40には2つの試薬が入る。反応ディスク36の近くにサンプル容器10を載せたラック11を移動する搬送機構12が設置されている。試薬ディスク41と試薬ディスク42の間には回転及び上下動可能な試薬プローブ20,21,22,23が設置されている。試薬分注プローブの構成については後述する。
【0019】
試薬プローブ20,21,22,23はそれぞれ試薬用ポンプ24と接続している。反応容器35と搬送機構12の間には、回転及び上下動可能なサンプルプローブ15,16が設置されている。サンプルプローブ15,16はそれぞれサンプル用ポンプ14に接続している。反応ディスク36の周囲には、攪拌装置30,31,光源50,検出光学装置51,容器洗浄機構45が配置されている。容器洗浄機構45は洗浄用ポンプ46に接続している。
【0020】
サンプルプローブ15,16,試薬プローブ20,21,22,23,攪拌装置30,31のそれぞれの動作範囲に洗浄ポート54が設置されている。
【0021】
サンプル用ポンプ14,試薬用ポンプ24,洗浄用ポンプ46,検出光学装置51,反応容器35,試薬ディスク41,試薬プローブ20,21,22,23,サンプルプローブ15,16はそれぞれコントローラ60に接続している。
【0022】
反応ディスク36には図3に示したようにサンプル分注位置,第1タイミング試薬分注位置,第2タイミング試薬分注位置,第3タイミング試薬分注位置,攪拌位置,測定位置,洗浄位置が決められている。また反応ディスクは定められたサイクル時間を単位として11ピッチずつ半時計回りに回転して停止する。すなわちあるサイクルで1の位置にあった反応容器は次のサイクルでは2の位置に進む。
【0023】
図4は本発明による試薬分注プローブの構成の一例である。
【0024】
試薬分注プローブは水平方向と上下方向の動作の組み合わせで動作する。水平方向の動作は、第1アーム74と第2アーム79の回転の組み合わせで動作する。
【0025】
第1アーム74は、第1アーム駆動用モータ70の回転駆動力がベルト71によりプーリ72に伝達され、プーリ72と結合された中空のシャフト73、及び第1アーム74に伝達されることで回転動作が行われる。
【0026】
第2アーム79は、第2アーム駆動用モータ75の回転駆動力がモータ75の軸に直結され、中空のシャフト73の中に配置されるシャフト76に伝達され、さらにベルト77を介して第1アーム内にあって第2アーム回転中心となるシャフト78に伝達されることで行われる。
【0027】
上下動作は、上下動作駆動用モータ80の回転をプーリおよびベルト81により直線運動に変換し、ベルト81にスライダ82を固定する。スライダ82はシャフト73に結合されており、これにより第1アームおよび第2アームが同時に上下することで実現される。
【0028】
試薬分注プローブのアクセスできる範囲は斜線部85の範囲である。
【0029】
図5は本発明による試薬分注プローブの別の構成の一例である。
【0030】
第1アーム74の回転は前述のとおりであるが、第2アーム79の回転では、第2アーム駆動用モータ75は第1アーム74の内部に配置されている点が異なる。また、上下動作は上下動作駆動用モータ80に直結されたボールネジ83により回転を直線運動に変換し、ボールネジのナットと結合されたスライダ82が上下することで行われる。なお本構成例ではシャフト73は中空である必要はないが、軽量化のためには中空であることが望ましい。
【0031】
図4の構成例では、モータ70,75,80全てが、装置のテーブルカバー上面84より下の位置に配置されるため、モータ70,75,80の配線がテーブルカバー上面84の下に収まり外観がすっきりするという利点がある。一方図5の構成例では、第1アーム74内に第2アーム駆動用モータ75が配置されるため、図4におけるシャフト76が不要となり、部品点数の削減と上下動作する部品の軽量化が図れることから上下動作駆動用モータ80の必要トルクを小さくすることができるという利点がある。
【0032】
また、図示しないが第2アーム駆動用モータ75は第2アーム回転中心となるシャフト78の上部に配置し、シャフト78と直結する構造でもよい。この場合はベルト77が不要となり更なる部品点数の削減が可能である。
【0033】
この装置を用いての分析は次の手順で行われる。
【0034】
サンプル容器10には血液等の検査対象の試料が入れられ、ラック11に載せられて搬送機構12によって運ばれる。まず、サンプルプローブ15が特定位置にあるサンプル容器10から1番目のテストに必要な量の試料を吸引する(図2)。1番目のサイクルで、反応ディスク上1の位置にある反応容器35にサンプルプローブ15から所定の量の試料を吐出する。その間に試薬プローブ20は試薬ディスク41上の1つの試薬容器40から、1番目のテストに対応する第1試薬を所定量吸引する(図6)。
【0035】
2番目のサイクルでは当該反応容器は反応ディスク上2の位置に進む。ここで、試薬プローブ20は第1試薬を所定量当該反応容器に吐出する。その間にサンプルプローブ15は洗浄される(図7)。
【0036】
3番目のサイクルでは、当該反応容器は反応ディスク上3の位置で、攪拌装置30により試薬と試料が攪拌される。その間に試薬プローブ20は洗浄される(図8)。
【0037】
4番目のサイクルでは、当該反応容器が反応ディスク上4の位置に回転する最中に光源50と検出光学装置51の間を通過し、光学的な測定が行われる。反応ディスクの回転中に攪拌装置30は洗浄ポート54で洗浄される(図9)。
【0038】
9番目,14番目,19番目,24番目,29番目,34番目,39番目のサイクルでも同様に光学的な検出が行われる。
【0039】
1番目のテストが第2試薬を第2タイミングで分注するものである場合は、16番目のサイクルで試薬プローブ22が試薬ディスク41上の試薬容器40から第2試薬を吸引し(図10)、17番目のサイクルで反応ディスク上17の位置にある当該反応容器に吐出する(図11)。18番目のサイクルで攪拌装置31により反応ディスク上18の位置にある当該反応容器内の液を攪拌する。その間に試薬プローブ22を洗浄する(図12)。
【0040】
1番目のテストが第2試薬を第3タイミングで分注するものである場合は、26番目のサイクルで試薬プローブ22が試薬ディスク41上の試薬容器40から第2試薬を吸引し、27番目のサイクルで反応ディスク上27の位置にある当該反応容器に吐出する。28番目のサイクルで攪拌装置31により反応ディスク上28の位置にある当該反応容器内の液を攪拌する。その間に試薬プローブ22を洗浄する。
【0041】
第2試薬を分注して攪拌してから光学的測定を繰り返した後、44番目のサイクルおよび49番目のサイクルで反応ディスク上44または49の位置で容器洗浄機構45により当該反応容器の液を吸引して洗浄液を注入する。また、54番目のサイクルで洗浄液を完全に吸引する。
【0042】
検出光学装置51で複数回行われた光学的測定結果はコントローラ60に送られて、1番目のテストの測定項目の濃度を計算される。
【0043】
2番目のテストは、まず1番目のサイクル中にサンプルプローブ16で特定位置にあるサンプル容器10から2番目のテストに必要な量の試料を吸引する(図6)。2番目のサイクルで、反応ディスク上1の位置にある反応容器35にサンプルプローブ16から所定の量の試料を吐出する。その間に試薬プローブ21は試薬ディスク42上の1つの試薬容器40から、2番目のテストに対応する第1試薬を所定量吸引する(図7)。
【0044】
3番目のサイクルでは当該反応容器は反応ディスク上2の位置に進む。ここで、試薬プローブ21は第1試薬を所定量当該反応容器に吐出する。その間にサンプルプローブ16は洗浄される(図8)。
【0045】
4番目のサイクルでは、当該反応容器は反応ディスク上3の位置で、攪拌装置30により試薬と試料が攪拌される。その間に試薬プローブ21は洗浄される(図9)。
【0046】
5番目のサイクルでは、当該反応容器が反応ディスク上4の位置に回転する最中に光源50と検出光学装置51の間を通過し、光学的な測定が行われる。反応ディスクの回転中に攪拌装置30は洗浄ポート54で洗浄される。
【0047】
10番目,15番目,20番目,25番目,30番目,35番目,40番目のサイクルでも同様に光学的な検出が行われる。
【0048】
2番目のテストが第2試薬を第2タイミングで分注するものである場合は、17番目のサイクルで試薬プローブ23が試薬ディスク42上の試薬容器40から第2試薬を吸引し(図11)、18番目のサイクルで反応ディスク上18の位置にある当該反応容器に吐出する(図12)。19番目のサイクルで攪拌装置31により反応ディスク上18の位置にある当該反応容器内の液を攪拌する。その間に試薬プローブ23を洗浄する(図9)。
【0049】
2番目のテストが第2試薬を第3タイミングで分注するものである場合は、27番目のサイクルで試薬プローブ23が試薬ディスク42上の試薬容器40から第2試薬を吸引し、28番目のサイクルで反応ディスク上27の位置にある当該反応容器に吐出する。29番目のサイクルで攪拌装置31により反応ディスク上28の位置にある当該反応容器内の液を攪拌する。その間に試薬プローブ23を洗浄する。
【0050】
第2試薬を分注して攪拌してから光学的測定を繰り返した後、45番目のサイクルおよび50番目のサイクルで反応ディスク上44または49の位置で容器洗浄機構45により当該反応容器の液を吸引して洗浄液を注入する。また、55番目のサイクルで洗浄液を完全に吸引する。
【0051】
検出光学装置51で複数回行われた光学的測定結果はコントローラ60に送られて、2番目のテストの測定項目の濃度を計算される。
【0052】
3番目のテストでは、1番目のテストを同じ工程を2サイクル遅れて繰り返す。4番目のテストでは、2番目のテストと同じ工程を2サイクル遅れて繰り返す。以下順次同様の工程が繰り返され、複数のテストにおいて試料中の測定項目の濃度が分析される。
【0053】
この実施例においては、奇数番目のサイクルにおいて試薬ディスク41からは奇数番目のサイクルに試薬プローブ20が、偶数番目のサイクルに試薬プローブ22がアクセスして試薬を吸引するので、同じサイクルに2つのプローブが同時にアクセスすることがない。同様に試薬ディスク42には奇数番目のサイクルには試薬プローブ23が、偶数番目のサイクルには試薬プローブ21がアクセスして試薬を吸引するので、同じサイクルに同時に2つのプローブがアクセスすることがない。従ってサイクルの時間を短くし、一定時間に分析できる数を増やすことができる。
【0054】
また、1回のサイクル中にそれぞれの試薬ディスクから1つの試薬プローブのみが試薬を吸引するため、試薬を吸引する時間や、プローブを移動する時間を長く取ることができ、安定して精度の高い試薬分注が可能である。
【0055】
また、2つの試薬ディスクは独立に回転可能であり、1回のサイクル中にそれぞれの試薬ディスクから1つの試薬プローブのみが試薬を吸引するため、同時に吸引する試薬の組み合わせが自由に選択でき、分析項目が不規則な組み合わせでも対応できる処理能力の高い分析が可能である。
【0056】
また、この実施例の場合は、奇数番目のテストに用いる試薬を第1試薬,第2試薬共に試薬ディスク41から吸引し、偶数番目のテストに用いる試薬を第1試薬,第2試薬共に試薬ディスク42から吸引するため、同じ検査項目に用いる第1試薬と第2試薬を同じ側の試薬ディスクに入れておくことができる。そのため、試薬交換を同じ側の試薬ディスクに対して行えばよく、試薬交換の手間が省け、間違いも少なくなる。
【0057】
また、この実施例の場合は、試薬容器40に2つの試薬を入れておけるので、1つの検査項目に対応する第1試薬と第2試薬を1つの試薬容器40に入れておくことができ、1度に第1試薬と第2試薬を交換できるので、試薬交換の手間が省け、間違いも少なくなる。
【0058】
また、この実施例の場合は、反応ディスク36上の第1タイミング試薬供給位置には偶数番目のサイクルに試薬プローブ20が、奇数番目のサイクルに試薬プローブ21がアクセスして第1試薬を吐出するので、1つのサイクル内に2つのプローブがアクセスすることがない。同様に、反応ディスク36上の第2タイミング試薬供給位置および第3タイミング試薬供給位置には、奇数番目のサイクルには試薬プローブ22、偶数番目のサイクルには試薬プローブ23がアクセスして第2試薬を吐出するので、1つのサイクル内に2つのプローブがアクセスすることがない。また、第1タイミング試薬吐出位置と第2タイミング試薬吐出位置および第3タイミング試薬吐出位置は離れているため、それぞれの位置へのプローブのアクセスを同時に行うことができる。したがって、サイクル内に試薬の吐出に要する時間を1回分のみ取ればよく、サイクル時間を短くして、一定時間内に分析できる数を増やすことができる。
【0059】
また、1回のサイクル内に試薬を同じ位置に1つのプローブのみが試薬を吐出するので、吐出にかけられる時間を長くでき、再現性が高く、精度の高い吐出ができる。したがって分注される試薬の量の精度が高く、精度の高い分析が可能である。
【0060】
また、この実施例の場合は、試薬プローブ20と試薬プローブ23は奇数番目のサイクルに試薬を吸引して偶数番目のサイクルに試薬を吐出し、試薬プローブ21と試薬プローブ22は偶数番目のサイクルに試薬を吸引して奇数番目のサイクルに試薬を吐出するので、それぞれのプローブは2回のサイクルの時間の中で試薬の吸引,吐出,洗浄を行えばよく、動作時間を余裕を持たせて安定した動作をさせることができる。
【0061】
また、それぞれの試薬プローブの動作時間を長く取れるので、プローブの移動範囲を長く取れ、その結果試薬ディスクを大きくすることができ、多くの種類の検査に必要な試薬を同時に試薬ディスクに搭載しておくことができる。
【0062】
また、この実施例の場合は、試薬プローブ20と試薬プローブ21の吐出位置が一致しているため、どちらのプローブで第1試薬を吐出した場合でも等価なタイミングでの分注が可能であり、等しい条件での反応仮定の分析が可能である。
【0063】
また、この実施例の場合は、試薬プローブ22と試薬プローブ23が共通の第2タイミング試薬位置および第3タイミング試薬位置にアクセスして第2試薬を吐出することができるので、第2試薬の混合タイミングが異なる複数の種類の反応を分析することができ、分析可能な項目の種類を増やすことができる。
【0064】
また、試薬プローブ22と試薬プローブ23の吐出位置が共通しているので、等価な条件での分析が可能である。
【0065】
また、試薬ディスク41と試薬ディスク42は、反応ディスク上の試薬吐出位置をはさんで、反応ディスク36の外側と内側にあるために、2つの試薬ディスク間の距離が短く設置でき、2つの反応ディスクと試薬吐出位置の上部に設置するレール25,26が短くてすみ、装置のコンパクト化が可能である。
【0066】
また、試薬ディスク41と試薬ディスク42が近接して設置してあるため、共通した試薬吐出位置までの距離が短く、試薬プローブの移動距離が短くてすみ、サイクル時間を短くして一定時間に分析できる数を増やすことができる。
【0067】
また、この実施例の場合は、サンプルプローブ15とサンプルプローブ16が交互に試料吸引と試料吐出を繰り返すために、1つのサイクルにはサンプル容器10と反応容器
35にそれぞれ1つのサンプルプローブしかアクセスしないため、サイクルの時間を短くし、一定時間に分析できる数を増やすことができる。
【0068】
また、サンプルプローブ15,サンプルプローブ16のそれぞれは2つのサイクルで試料の吸引と吐出と洗浄を行えばよいので、余裕を持った時間で分注とプローブ移動が行え、分注量の精度を高くすることができ、分析精度を高くすることが可能である。
【0069】
また、この実施例の場合には、サンプルプローブ15で分注を行ったテストに対しては、第1試薬は試薬ディスク41上から試薬プローブ20で分注し、第2試薬は試薬ディスク41から試薬プローブ22で分注される。サンプルプローブ16で分注を行ったテストに対しては、第1試薬は試薬ディスク42上から試薬プローブ21で分注し、第2試薬は試薬ディスク42から試薬プローブ23で分注される。したがってサンプルプローブ15,試薬ディスク41,試薬プローブ20,試薬プローブ22が第1のセット,サンプルプローブ16,試薬ディスク42,試薬プローブ21,試薬プローブ23が第2のセットとなり、別のセットと組み合わされることはない。したがって、試薬ディスク41に配置した試薬に対応する分析項目に対しては、サンプルプローブ15,試薬プローブ20,試薬プローブ22を用いたキャリブレーションのみが必要であり、試薬ディスク42に配置した試薬に対応する分析項目に対しては、サンプルプローブ16,試薬プローブ21,試薬プローブ23を用いたキャリブレーションのみが必要である。それぞれのセットでのキャリブレーションのみが必要なので、キャリブレーションの回数を少なくして試薬と時間の無駄を省くことができ、プローブ間の特性の違いによる分析結果の差の発生をなくすことができる。
【0070】
また、仮に試薬分注の第1タイミングと、第2または第3のタイミングが偶数サイクル分ずれていたら、第1試薬と第2試薬を1つのサイクル中に同じサイクルから吸引しなければならなくなるが、本実施例の場合は、試薬分注の第1タイミングと、第2または第3のタイミングが奇数サイクル分ずれているため、第1試薬と第2試薬を吸引する試薬ディスクが交互に繰り返される。
【0071】
本実施例の場合は、反応容器35数が54個であり1サイクルで反応容器が11ピッチ分回転するので、5サイクルで反応容器は1周プラス1ピッチ分回転する。したがって、反応ディスク上のある位置にある反応容器が、1ピッチ隣り合った位置に移動するのは5サイクル後になる。これがもし偶数サイクルで反応容器が1周プラス1ピッチ分回転するように構成されている場合は、1ピッチ隣り合った位置に移動するのが偶数サイクル後ということになる。その場合は、偶数サイクル分ずつの時間差で移動される位置が連続することになる。その場合、第1試薬を分注するタイミングと第2試薬を分注するタイミングを偶数サイクルと奇数サイクルとに分けようとすると、吐出位置が遠く離れてしまい、試薬プローブを離れた位置に設置する必要がある。本実施例では奇数サイクルで反応容器が1周プラス1ピッチ分回転するように構成している為、第1試薬と第2試薬の吐出位置を近くに設置でき、装置を小型に構成可能である。これは、奇数サイクルで反応容器が1周マイナス1ピッチ分回転するように構成しても同じ効果が得られる。
【0072】
また、本実施例の場合は、奇数サイクルで反応容器位置が1ピッチ分ずれるように構成されるため、検出光学装置51の測定位置を加速状態または減速状態で通過するために測定ができない反応容器の列が連続したタイミングとなる。この連続したタイミングを反応過程の測定に関係のない、反応容器洗浄のタイミングに合わせることができるので、反応過程には測定が欠如するタイミングがない連続した分析ができ、短時間で反応する項目から長時間で反応する項目まで広い種類の項目の分析が可能である。
【0073】
別の使用形態では、図1,図2,図3と同様な構成の装置において、1サイクルごとに反応ディスク36が時計回りに43ピッチ分回転する。この場合でも反応ディスク上1の位置にあった反応容器は次のサイクルでは反応ディスク上2の位置に移動する。この場合は、5サイクルのうち4回検出光学装置51の位置を通過するので、測定回数が多くなり、分析の精度を高くすることができる。
【0074】
図13は本発明の第2実施例の試薬ディスクである。この場合試薬ディスク41には試薬容器40が二重円周上に配置される。試薬ディスク42にも同様に配置される。この実施例の場合は、小さな試薬ディスクに多くの試薬を配置できるので、装置のサイズを大きくすることなく分析できる項目数を多くすることができる。
【0075】
次に試薬分注プローブ同士の干渉回避の動作の一例として図12の場合について説明する。図12では試薬プローブ20が第1試薬を、試薬プローブ23が第2試薬をそれぞれ当該反応容器に吐出した状態であり、次のサイクルでは、試薬プローブ20、及び試薬プローブ23は洗浄ポート54に戻り洗浄を行う。洗浄ポート54への移動は、第1アーム74と第2アーム79を同時に動作させて行うのが時間的に最短となるため理想的であるが、試薬プローブ20が洗浄ポート54に戻る動作軌跡近傍には試薬プローブ21があるため干渉の回避が必要となる。このような場合は試薬プローブ20の第1アーム74のみを第2アーム79を動作させても試薬プローブ21と干渉しない位置まで動作させ(図
13)、その後に第2アーム79を動作させ洗浄ポート54に移動させる(図14)。一方、試薬プローブ23は洗浄ポート54に戻る動作軌跡近傍に障害となるものがないため、第1アーム74と第2アーム79を同時に動作させ洗浄ポート54に戻ることが可能である(図14)。この例で示したように、本発明による試薬プローブでは第1アーム74と第2アーム79の動作が独立しているため、その動作タイミングについても自由に変えることができ、それによってプローブ移動の軌跡を変えて、近接したポイントへの移動の場合などに機構同士の干渉を回避することが可能である。
【0076】
また、動作タイミングをずらすことにプローブ先端の振動を抑制できるという別の効果も得ることができる。第1アーム74と第2アーム79を同時に動作させ、同時に停止させるような動作を行うと、停止時には第1アーム74の停止による振動と第2アーム79の停止による振動が加算され振動が大きくなるが、例えば上記の例のように第1アーム
74を先に動作させ、第2アーム79をタイミングを遅らせて動作させることにより、全体動作の終了時には第2アーム79の停止のみとなるため振動を小さくすることができ、試薬の飛散りを防止できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】第1実施例の分析装置の斜視図。
【図2】第1実施例の分析装置の上面図。
【図3】第1実施例の主要部分の説明図。
【図4】第1実施例の試薬分注プローブの構成図。
【図5】第2実施例の試薬分注プローブの構成図。
【図6】第1実施例の分析装置の動作の説明図。
【図7】第1実施例の分析装置の動作の説明図。
【図8】第1実施例の分析装置の動作の説明図。
【図9】第1実施例の分析装置の動作の説明図。
【図10】第1実施例の分析装置の動作の説明図。
【図11】第1実施例の分析装置の動作の説明図。
【図12】第1実施例の分析装置の動作の説明図。
【図13】第2実施例の試薬ディスクの構成図。
【図14】試薬プローブの干渉回避動作の説明図。
【図15】試薬プローブの干渉回避動作の説明図。
【符号の説明】
【0078】
10…サンプル容器、11…ラック、12…搬送機構、14…サンプル用ポンプ、15,16…サンプルプローブ、20,21,22,23…試薬プローブ、24…試薬用ポンプ、30,31…攪拌装置、35…反応容器、36…反応ディスク、40…試薬容器、
41,42…試薬ディスク、45…容器洗浄機構、46…洗浄用ポンプ、50…光源、
51…検出光学装置、54…洗浄ポート、60…コントローラ、62…筐体、70…第1アーム駆動用モータ、71,77,81…ベルト、72…プーリ、73,76,78…シャフト、74…第1アーム、75…第2アーム駆動用モータ、79…第2アーム、80…上下動作駆動用モータ、82…スライダ、83…ボールネジ、84…テーブルカバー上面、85…プローブのアクセス可能範囲。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試薬容器を周上に配置する試薬ディスクと、複数の反応容器を周上に配置する反応ディスクとを備え、前記試薬容器に収容された試薬と試料を前記反応容器中で反応させ、該反応を分析する機構を備えた自動分析装置において、
前記試薬ディスクを複数備え、更に前記試薬容器から吸引した試薬を反応容器に吐出する試薬分注プローブを備え、 前記試薬分注プローブは、第1の回転軸を中心として回転動作する第1アームと、該第1アームに配置された第2の回転軸を中心として回転動作する第2アームと、から構成され、前記第1アームと前記第2アームは独立して回転動作が可能であることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記第2の回転軸は前記第1アームのほぼ先端部に設けられていることを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−84365(P2006−84365A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270658(P2004−270658)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】