説明

自動分析装置

【課題】単色光源を使用した散乱光を測定する装置において、蛍光灯などの室内照明や、窓から差し込む太陽光などの外乱光に対し、反応容器の周囲を遮光することや、光源の点灯と消灯を行うロックインアンプを用いることをせずに、複数の反応容器を変えながら高速で安定な反応液の測定を行う自動分析装置を実現する。
【解決手段】自動分析装置の散乱光分析装置において、反応セル103内の被測定液体104にて散乱した光を検出する散乱光検出器106と、光源ランプ101以外の光を検出する外乱光検出器111と含む少なくとも2つ以上の検出器を持つ。そして、散乱光検出器106からの出力値から外乱光検出器111からの出力値を差し引いた値を被測定液体104にて散乱した光の検出値とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置の技術に関し、特に、測定対象に光を照射して、この測定対象にて散乱した散乱光を測定する分析装置において、測定対象である反応容器内の被測定液体にて散乱した光を検出する検出器を配置し、この検出器の出力を測定する自動分析装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
サンプルに含まれる成分量を分析するサンプル分析装置として、光源からの光を、サンプル、又はサンプルと試薬とが混合した反応液に照射し、その結果得られる単一又は複数の波長の透過光量を測定し吸光度を算出して、ランベルト・ベールの法則に従い、吸光度と濃度の関係から成分量を割り出す自動分析装置が広く用いられている(例えば特許文献1)。これらの自動分析装置においては、回転と停止を繰り返すセルディスクに、反応液を保持する多数のセルが円周状に並べられ、セルディスクの回転中に、予め配置された透過光測定部により、約10分間、一定の時間間隔で吸光度の経時変化が測定される。
【0003】
このようなサンプル分析装置において、例えば血液、尿等の生体サンプル中の特定成分の定性・定量分析を行う自動分析装置では、生体サンプル中の特定成分と反応し色が変るような試薬をサンプルに添加し、サンプルの色の変化(吸光度の変化)を測定するものが一般的である。
【0004】
一方で、測定対象に光を照射してその散乱光を測定する装置として、例えば免疫反応測定検査における抗原抗体試料からの散乱光を測定する装置に関する技術が特許文献2に開示されている。また、特許文献3に記載の技術では、透過光の分析に加えて、反応セルの周囲に散乱光を検出できる機能を有し、免疫項目の測定を可能とする機能を有している。
【0005】
上述した透過光量を測定し吸光度を算出する自動分析装置においては、光源から出た白色光をセル内の反応液に照射する白色光照明方式(ポリクロメータタイプ)が一般的であり、この場合、光源から出た光はレンズや窓を通り、専用の反応容器のひとつを通過し、スリットを通った後に凹面回折格子に入射する。光はここで分光され、ローランド円上に並んだ複数のシリコン検知器上にスリットの像を結ぶ。このように、反応液に照射されるのは白色光であり、その後に分光される構成においては、光源の光以外の外乱光の影響を受けにくく、反応容器の周囲を遮光せずに測定が行われている。
【0006】
一方で、上述した散乱光を測定する装置においては、光源から出た光を回折格子や干渉フィルタにより分光するか、LEDなどの単色光源を使用し、目的の波長域だけの単色光を反応容器内の反応液に照射する単色光照明方式(モノクロメータタイプ)が多く見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4451433号明細書
【特許文献2】特開昭60−40937号公報
【特許文献3】特開昭59−100862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した特許文献2や特許文献3を含む従来の散乱光を測定する装置においては、この散乱光を測定する装置で多く見られる単色光源を使用した場合、測定波長以外の蛍光灯などの室内照明や、窓から差し込む太陽光などの外乱光の影響を受けやすく、反応容器の周囲を遮光して測定が行われている。
【0009】
また、遮光せずに測定を行う場合は、単色光源を一定の周波数で点灯と消灯を繰り返し、特定の周波数の信号を検出して増幅させるロックインアンプを用いることで、外乱光ノイズに影響を受けずに検出したい信号だけを取り出す方法もあるが、自動分析装置においては複数の反応容器を変えながら高速で反応液の測定を行うため、短時間で光源の点灯と消灯を行う必要があり、ロックインアンプを用いることは現実的な方法ではない。さらに、ロックインアンプを用いた分析装置は、反応容器を測定ごとに停止させる必要があり、処理能力の向上が望めない。
【0010】
そこで、本発明は上述したような課題に鑑みてなされたものであり、その代表的な目的は、単色光源を使用した散乱光を測定する装置において、蛍光灯などの室内照明や、窓から差し込む太陽光などの外乱光に対し、反応容器の周囲を遮光することや、光源の点灯と消灯を行うロックインアンプを用いることをせずに、複数の反応容器を変えながら高速で安定な反応液の測定を行う自動分析装置を実現することにある。
【0011】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0013】
すなわち、代表的な自動分析装置は、単色光源を使用した散乱光を測定する装置において、測定対象の被測定液体を格納する反応容器と、前記反応容器に光を照射する光源部と、前記反応容器内の前記被測定液体にて散乱した光を検出する第1検出器と、前記光源部以外の光を検出する第2検出器と、前記第1検出器の出力を測定する第1検出回路部と、前記第2検出器の出力を測定する第2検出回路部と、前記第1検出回路部からの出力を信号処理する第1信号処理部と、前記第2検出回路部からの出力を信号処理する第2信号処理部と、前記第1信号処理部と前記第2信号処理部からの出力を処理する演算部と、前記演算部の結果を保存する記憶領域とを有する。特に、前記第1検出器と前記第2検出器とを含む少なくとも2つ以上の検出器を持つことを特徴とする。
【0014】
さらに好ましくは、前記第1検出器からの出力値から前記第2検出器からの出力値を差し引いた値を前記被測定液体にて散乱した光の検出値とすること、前記第2検出器には前記光源部から照射される光の波長範囲を吸収するフィルタが取り付けられていること、前記第1検出器と前記第2検出器との検出感度比を補正すること、前記第1検出器と前記第2検出器とに加え、前記反応容器内の前記被測定液体を透過した光を検出する第3検出器を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0016】
すなわち、代表的な効果は、単色光源を使用した散乱光を測定する装置において、蛍光灯などの室内照明や、窓から差し込む太陽光などの外乱光に対し、反応容器の周囲を遮光することや、光源の点灯と消灯を行うロックインアンプを用いることをせずに、複数の反応容器を変えながら高速で安定な反応液の測定を行う自動分析装置を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置の全体構成の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置に含まれる散乱光分析装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置に含まれる散乱光分析装置において、光源の相対発光強度とフィルタ透過率の一例を示す特性図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置に含まれる散乱光分析装置において、反応セル内の被測定液体を測定した時の散乱光検出信号の一例を示す特性図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る自動分析装置に含まれる散乱光分析装置の動作フローの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数の実施の形態またはセクションに分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0019】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
<本発明の実施の形態の概要>
本発明の実施の形態に係る自動分析装置(一例として、()内に図2の対応する構成要素を付記)は、測定対象の被測定液体を格納する反応容器(反応セル103)と、反応容器に光を照射する光源部(光源ランプ101)と、反応容器内の被測定液体にて散乱した光を検出する第1検出器(散乱光検出器106)と、光源部以外の光を検出する第2検出器(外乱光検出器111)と、第1検出器の出力を測定する第1検出回路部(散乱光検出回路部107)と、第2検出器の出力を測定する第2検出回路部(外乱光検出回路部112)と、第1検出回路部からの出力を信号処理する第1信号処理部(散乱光AD変換部108)と、第2検出回路部からの出力を信号処理する第2信号処理部(外乱光AD変換部113)と、第1信号処理部と第2信号処理部からの出力を処理する演算部(演算器114)と、演算部の結果を保存する記憶領域(記憶部115)とを有する。特に、第1検出器と第2検出器とを含む少なくとも2つ以上の検出器を持つことを特徴とする。
【0022】
以上説明した本発明の実施の形態の概要に基づいた実施の形態を、以下において具体的に説明する。以下に説明する実施の形態は本発明を用いた一例であり、本発明は以下の実施の形態により限定されるものではない。
【0023】
<実施の形態>
<<自動分析装置の全体構成および動作>>
図1を用いて、本実施の形態に係る自動分析装置の全体構成および動作について説明する。図1は、この自動分析装置の全体構成の一例を示す概略構成図である。ここでは、生化学自動分析装置を例に説明する。
【0024】
図1において、1はサンプルディスク、2は試薬ディスク、3は反応ディスク、4は反応槽、5はサンプリング機構、6はピペッティング機構、7は攪拌機構、8は測光機構、9は洗浄機構、10はコンピュータ(PC)、12は記憶装置、13は制御部、14は圧電素子ドライバ、15は攪拌機構コントローラ、16は試料容器、17は円形サンプルディスク、18は試薬ボトル、19は円形試薬ディスク、20は保冷庫、21は反応容器、22は反応容器ホルダ、23は駆動機構、24はサンプルプローブ、25はサンプルプローブ支承軸、26はサンプルプローブアーム、27は試薬プローブ、28は試薬プローブ支承軸、29は試薬プローブアーム、31は固定部、33はノズル、34は上下駆動機構である。
【0025】
本実施の形態に係る自動分析装置は、主に、複数の試料容器16が載置されるサンプルディスク1と、複数の試薬ボトル18が載置される試薬ディスク2と、複数の反応容器21が載置される反応ディスク3と、サンプルディスク1と反応ディスク3との近傍に設置されたサンプリング機構5と、試薬ディスク2と反応ディスク3との近傍に設置されたピペッティング機構6と、反応ディスク3の近傍に設置された攪拌機構7、測光機構8、および洗浄機構9等を有して構成される。
【0026】
サンプルディスク1は、円形サンプルディスク17上に、分析対象の試料(サンプル、検体等とも記す)を収容する複数の試料容器16が円周上に並んで載置されている。このサンプルディスク1の近傍には、サンプリング機構5が設置されている。このサンプリング機構5は、該当する試料容器16から試料を吸入し、この試料を該当する反応容器21に吐出するサンプルプローブ24がサンプルプローブ支承軸25に固定されたサンプルプローブアーム26に取り付けられている。
【0027】
試薬ディスク2は、円形試薬ディスク19上に、試薬を収納する複数の試薬ボトル18が円周上に並んで載置されている。この試薬ディスク2には、保冷庫20が設置されている。また、この試薬ディスク2の近傍には、ピペッティング機構6が設置されている。このピペッティング機構6は、該当する試薬ボトル18から試薬を吸入し、この試薬を該当する反応容器21に吐出する試薬プローブ27が試薬プローブ支承軸28に固定された試薬プローブアーム29に取り付けられている。
【0028】
反応ディスク3は、複数の反応容器21が保持される複数の反応容器ホルダ22が円周上に並んで載置されている。この反応ディスク3には、反応槽4が設置されている。この反応ディスク3は、駆動機構23により間欠回転可能となっている。また、この反応ディスク3の近傍には、攪拌機構7、測光機構8、洗浄機構9等が設置されている。
【0029】
攪拌機構7は、反応容器21内の内容物(試料と試薬)を攪拌するための機構であり、圧電素子ドライバ14、攪拌機構コントローラ15等から構成される。測光機構8は、反応容器21内の内容物を透過した透過光および内容物にて散乱した散乱光を測定するための機構であり、図2において後述する光源や検出器等から構成される。洗浄機構9は、反応容器21内を洗浄するための機構であり、ノズル33、上下駆動機構34等から構成される。
【0030】
これらのサンプルディスク1、試薬ディスク2、反応ディスク3、サンプリング機構5、ピペッティング機構6、攪拌機構7、測光機構8、および洗浄機構9は、それぞれ制御部13に接続され、さらにコンピュータ10に接続されて、各動作が制御されるようになっている。また、制御部13には、記憶装置12に接続されている。
【0031】
コンピュータ10は、例えば演算処理機能や記憶機能等を含む本体、キーボードやマウス等の入力部、液晶やCRT等の表示部から構成され、測定検体の情報や、測定項目の登録、分析パラメータ等を設定する。記憶装置12には、分析パラメータ、各試薬ボトルの分析可能回数、最大分析可能回数、キャリブレーション結果、分析結果等や、分注動作を評価する判定プロセス、また予め保持する判定に必要なデータなどを記憶保持している。なお、記憶装置12に記憶保持する情報は、コンピュータ10に付属する記憶媒体に記憶されても良いし、個別の記憶データベースとして記憶装置12のように単独で存在しても良い。
【0032】
以上のように構成される自動分析装置において、試料の分析は、以下のようにサンプリング、試薬分注、攪拌、測光、反応容器の洗浄、濃度換算等のデータ処理の順番に実施される。
【0033】
サンプルディスク1、試薬ディスク2、反応ディスク3、サンプリング機構5、ピペッティング機構6、攪拌機構7、測光機構8、および洗浄機構9は、制御部13によりコンピュータ10を介して制御される。
【0034】
まず、サンプルディスク1上には、分析される試料を収容した複数の試料容器16が円周上に並んで設置されており、この分析される試料の順番に従ってサンプリング機構5のサンプルプローブ24の下まで移動する。試料容器16中の試料である検体は、サンプリング機構5に連結された試料用ポンプ(図示せず)により、反応ディスク3上の反応容器21の中に所定量分注される。
【0035】
さらに、試料を分注された反応容器21は、反応槽4の中を第1試薬添加位置まで移動する。移動した反応容器21には、ピペッティング機構6の試薬プローブ27に連結された試薬用ポンプ(図示せず)により、試薬ディスク2上の試薬ボトル18から吸引された試薬が所定量加えられる。第1試薬添加後の反応容器21は、攪拌機構7の位置まで移動し、最初の攪拌が行われる。このような試薬の添加(分注)−攪拌が、例えば第1〜第4試薬について行われる。
【0036】
続いて、内容物が攪拌された反応容器21は、測光機構8において、光源から発した光束中を通過し、この時の反応容器21内の被測定液体を透過した透過光、または被測定液体にて散乱した散乱光が検知される。検知された前記透過光または前記散乱光の信号は制御部13に入り、検体の濃度に変換される。また、制御部13では同時に異常の判定を行う。
【0037】
そして、濃度変換されたデータは、記憶装置12に記憶され、コンピュータ10に付属する表示装置に表示される。測光の終了した前記反応容器21は、洗浄機構9の位置まで移動し、洗浄され、次の分析に供される。
【0038】
以上のように、本実施の形態に係る自動分析装置においては、サンプリング、試薬分注、攪拌、測光、反応容器の洗浄、濃度換算等のデータ処理を順番に実施して、試料の分析を行うことができる。
【0039】
<<散乱光分析装置の構成および動作>>
図2を用いて、前述した自動分析装置に含まれる散乱光分析装置(被測定液体にて散乱した散乱光を測定し、分析する装置の部分)の構成および動作について説明する。図2は、この散乱光分析装置の一例を示す概略構成図である。
【0040】
図2において、101は光源ランプ、102は単色光、103は反応セル、104は被測定液体、105は散乱光、106は散乱光検出器、107は散乱光検出回路部(AMP1)、108は散乱光AD変換部(ADC1)、109は外乱光、110はダイクロイックフィルタ、111は外乱光検出器、112は外乱光検出回路部(AMP2)、113は外乱光AD変換部(ADC2)、114は演算器、115は記憶部、116は制御部、117は表示部である。
【0041】
本実施の形態における散乱光分析装置は、光源ランプ101と、反応セル103と、散乱光検出器106と、散乱光検出回路部107と、散乱光AD変換部108と、外乱光検出器111と、外乱光検出回路部112と、外乱光AD変換部113と、演算器114と、記憶部115と、制御部116と、表示部117を有して構成される。
【0042】
この散乱光分析装置において、例えば、反応セル103は図1に示した反応容器21に対応する。さらに、これに限られるものではないが、光源ランプ101、散乱光検出器106、散乱光検出回路部107、散乱光AD変換部108、外乱光検出器111、外乱光検出回路部112、および外乱光AD変換部113等は図1に示した測光機構8に含まれ、また、演算器114、記憶部115、および表示部117等は図1に示したコンピュータ10の部分に対応し、制御部116は図1に示した制御部13の部分に対応する。
【0043】
光源ランプ101は、反応セル103に単色光102を照射する光源部である。反応セル103は、測定対象の被測定液体104を格納する反応容器である。
【0044】
散乱光検出器106は、反応セル103内の被測定液体104にて散乱した散乱光105を検出する第1検出器である。散乱光検出回路部107は、散乱光検出器106の出力を測定すると共に、測定した値を増幅する第1検出回路部である。散乱光AD変換部108は、散乱光検出回路部107からの出力を信号処理すると共に、アナログ信号をデジタル信号に変換する第1信号処理部である。
【0045】
外乱光検出器111は、光源ランプ101以外の外乱光109を検出する第2検出器であり、散乱光検出器106に隣接する位置に設置される。この外乱光検出器111には、光源ランプ101から照射される単色光102の波長範囲を吸収するダイクロイックフィルタ110が取り付けられている。外乱光検出回路部112は、外乱光検出器111の出力を測定すると共に、測定した値を増幅する第2検出回路部である。外乱光AD変換部113は、外乱光検出回路部112からの出力を信号処理すると共に、アナログ信号をデジタル信号に変換する第2信号処理部である。
【0046】
演算器114は、散乱光AD変換部108と外乱光AD変換部113からの出力を処理する演算部である。記憶部115は、演算器114の結果を保存する記憶領域である。制御部116は、記憶部115に保持された結果を出力する制御部である。表示部117は、記憶部115に保持された結果を出力する表示部である。
【0047】
以上のように構成される散乱光分析装置において、この動作は以下の通りである。まず、光源ランプ101を出た単色光102は反応セル103に入れられた被測定液体104に照射される。この被測定液体104から散乱した散乱光105は散乱光検出器106に照射され、電気信号に変換される。この際に、散乱光検出器106には、散乱光105とは別の外乱光109も照射され、散乱光105と外乱光109を加算し、電気信号に変換される。そして、電気信号に変換された加算光は、散乱光検出回路部107により増幅され、さらに、散乱光AD変換部108によりデジタル信号に変換される。
【0048】
一方、散乱光検出器106と隣接する位置に設置された外乱光検出器111の受光部には単色光102の波長範囲を吸収するダイクロイックフィルタ110を取り付け、外乱光109はダイクロイックフィルタ110を透過して外乱光検出器111に照射される。この際に、外乱光検出器111には、散乱光105も照射されるが、ダイクロイックフィルタ110により吸収されるため、外乱光109のみ外乱光検出器111に照射され、電気信号に変換される。そして、電気信号に変換された外乱光は、外乱光検出回路部112により増幅され、さらに、外乱光AD変換部113によりデジタル信号に変換される。
【0049】
続いて、演算器114において、デジタル信号に変換された散乱光、及び外乱光の変化は差し引き演算された後、記憶部115に格納される。この演算器114における演算では、散乱光検出器106からの出力値から外乱光検出器111からの出力値を差し引いた値を被測定液体104にて散乱した光の真の検出値とすると共に、散乱光検出器106と外乱光検出器111との検出感度比を補正する。そして、記憶部115に格納された演算結果は、制御部116により表示部117に表示され、これによって、オペレータに結果を報告することができる。
【0050】
<<光源の相対発光強度とフィルタ透過率>>
図3を用いて、前述した光源ランプ101とダイクロイックフィルタ110において、光源の相対発光強度とフィルタ透過率について説明する。図3は、この光源の相対発光強度とフィルタ透過率の一例を示す特性図である。図3において、横軸はピーク発光波長(nm)、縦軸は光源の相対発光強度(%)/フィルタ透過率(%)を示す。
【0051】
本実施の形態における散乱光分析装置では、光源ランプ101に対するダイクロイックフィルタ110として、光源ランプ101から照射される単色光102の相対発光強度特性200の発光波長幅を吸収するフィルタ透過率201のような特性のダイクロイックフィルタ110を選択することで実現する。この例では、光源ランプ101のピーク発光波長λpは550nmである。
【0052】
<<反応セル内の被測定液体を測定した時の散乱光検出信号>>
図4を用いて、前述した反応セル103内の被測定液体104を測定した時の散乱光検出信号について説明する。図4は、この散乱光検出信号の一例を示す特性図である。図4において、横軸は時間(s)、縦軸は検出電圧(V)を示す。
【0053】
本来、被測定液体104の反応傾斜信号は300(正常時の散乱光反応傾斜信号)に示すような信号であるべきであるが、外乱光信号301が加わることで、実際の反応傾斜信号は302(外乱光が加算された散乱光反応傾斜信号)に示すように外乱光信号301が加算された値となって出力される。反応傾斜信号上の2つの点を結ぶ反応傾斜を算出した場合は、303(異常時の散乱光反応傾斜信号)に示す反応傾斜と判断する場合が考えられ、本来の反応傾斜信号は、正常時の散乱光反応傾斜信号300から大きく乖離した値となってしまう。
【0054】
そこで、本実施の形態における散乱光分析装置によれば、第1に、前述した図3に示すような特性のダイクロイックフィルタ110を用いて、実際の反応傾斜信号は外乱光が加算された散乱光反応傾斜信号302から外乱光信号301を差し引くことで、本来の反応傾斜信号である正常時の散乱光反応傾斜信号300を得ることにある。
【0055】
しかしながら、前述した図3に示すように、ダイクロイックフィルタ110の吸収波長の透過率も100%ではなく、相対発光強度特性200と吸収するフィルタ透過率201の特性も正確に合わせることは困難である。すなわち、実際の散乱光分析装置においては、散乱光検出器106と外乱光検出器111の外乱光に対する感度比を補正する必要がある。
【0056】
そこで、本実施の形態における散乱光分析装置では、第2に、散乱光検出器106と外乱光検出器111の外乱光に対する感度比を補正することで、正常時の散乱光反応傾斜信号300を得ることができる。この外乱光に対する感度比の補正を含む動作は、図5を用いて後述する。
【0057】
<<散乱光分析装置の動作フロー>>
図5を用いて、前述した散乱光分析装置の動作フローについて説明する。図4は、この散乱光分析装置の動作フローの一例を示すフローチャートである。
【0058】
まず、ステップS1の光源OFFのデータ取得において、光源ランプ101を点灯しない状態で、散乱光測定データ(散乱光データ)と外乱光測定データ(外乱光データ)を各10回測定し、その平均値を記憶部115に格納する。さらに、ステップS2の外乱光補正データの算出において、記憶部115に格納された散乱光測定データの外乱光測定データに対する比を計算し、補正係数Kを算出する。すなわち、補正係数K=散乱光測定データ/外乱光測定データ、となる。
【0059】
次に、ステップS3の光源点灯において、光源ランプ101を点灯し、光源光量が安定する時間が経過するまで待つ。さらに、ステップS4の反応液データの測定において、光源光量が安定した後、散乱光度計の光軸上に配置した反応セル103に入れられた被測定液体104の散乱光測定を行うと同時に外乱光測定を行い、その結果を記憶部115に格納する。
【0060】
そして、ステップS5の外乱光の補正において、このようにして得られた測定データを基に、散乱光測定データを外乱光測定データ及び補正係数Kで補正計算を行う。すなわち、外乱光の補正は、散乱光測定データ−外乱光測定データ×補正係数K、となる。さらに、ステップS6の散乱光データの格納において、外乱光補正後の散乱光測定データと、測定経過時間も併せて、記憶部115に格納する。
【0061】
次に、ステップS7の「=10分経過?」判定において、上記ステップS4の反応液データの測定からステップS6の散乱光データの格納までの処理を10分間実施したか否かを判定する。この判定の結果、10分経過した場合(YES)は、ステップS8の反応傾斜量の算出において、経過時間あたりの反応傾斜量を算出する。最後に、ステップS9のデータ出力において、この算出した反応傾斜量の算出結果のデータを出力する。これにより、測定は終了となる。
【0062】
<<実施の形態の効果>>
以上説明した本実施の形態に係る自動分析装置に含まれる散乱光分析装置によれば、散乱光105を検出する散乱光検出器106と、外乱光109を検出する外乱光検出器111とを有し、散乱光検出器106、外乱光検出器111からの出力を各検出器に対応した散乱光検出回路部107、外乱光検出回路部112にて増幅し、さらに散乱光AD変換部108、外乱光AD変換部113にてデジタル信号に変換し、そして演算器114にて演算処理して、散乱光105、外乱光109の変化を観測すると共に一定間隔毎に記憶部115に保存することで、以下のような効果を得ることができる。
【0063】
(1)同一の被測定液体104において、散乱光105を測定すると同時に外乱光109を測定することで、反応セル103の周囲を遮光することや、光源の点灯と消灯を行うロックインアンプを用いることをせずに、室内照明や太陽光などの外乱光の影響を受けない散乱光測定が可能となる。
【0064】
(2)演算器114において、散乱光検出器106からの出力値から外乱光検出器111からの出力値を差し引いた値を真の散乱光の検出値とすることで、本来の反応傾斜信号である正常時の散乱光反応傾斜信号300を得ることができるので、より正確な被測定液体104の反応傾斜測定が可能となる。
【0065】
(3)外乱光検出器111の前に単色光102の波長範囲を吸収して透過しないダイクロイックフィルタ110を取り付け、外乱光109が加算された散乱光反応傾斜信号302から外乱光信号301を差し引くことで、上記(2)に対してさらに正確な被測定液体104の反応傾斜測定のために、光源の相対発光強度とフィルタ透過率とを考慮した正常時の散乱光反応傾斜信号300を得ることができる。
【0066】
(4)演算器114において、散乱光検出器106と外乱光検出器111との検出感度比を補正することで、上記(3)に対してさらに正確な被測定液体104の反応傾斜測定のために、散乱光検出器106と外乱光検出器111との外乱光109に対する感度比を補正した正常時の散乱光反応傾斜信号300を得ることができる。
【0067】
(5)上記(1)〜(4)により、散乱光分析装置において、蛍光灯などの室内照明や、窓から差し込む太陽光などの外乱光に対し、反応セル103の周囲を遮光することや、光源の点灯と消灯を行うロックインアンプを用いることをせずに、反応セル103を変えながら高速で安定な反応液の測定を行うことが可能となる。
【0068】
<<実施の形態の変形例>>
本実施の形態に係る自動分析装置に含まれる散乱光分析装置、あるいは自動分析装置においては、以下のような変形例が考えられる。
【0069】
(1)散乱光105を検出する散乱光検出器106と、外乱光109を検出する外乱光検出器111とをそれぞれ1個ずつ有する場合について説明したが、これに限らず、検出器を3つ以上有する構成とすることも可能である。例えば、散乱光検出器106を2個以上有する場合、外乱光検出器111を2個以上有する場合が考えられる。このような場合には、複数個の検出器の平均値を測定値とすることで、より一層、正確な被測定液体104の反応傾斜測定が可能となる。
【0070】
(2)散乱光105を検出する散乱光検出器106と、外乱光109を検出する外乱光検出器111とに加え、さらに、被測定液体104を透過した光を検出する透過光検出器を有し、各検出器からの出力を処理する回路部やAD変換部等を有する構成とすることも可能である。このように散乱光検出と透過光検出とを組み合わせた構成の場合には、散乱光の測定と共に透過光も測定して被測定液体の分析が可能な自動分析装置を実現することができる。
【0071】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の自動分析装置は、特に、単色光源を使用した散乱光を測定する装置において、測定対象である反応容器内の被測定液体にて散乱した光を検出する検出器を配置し、この検出器の出力を測定する自動分析装置に適用して有効である。さらに、被測定液体を透過した光を測定する装置を組み合わせた自動分析装置にも利用可能である。
【符号の説明】
【0073】
1:サンプルディスク、2:試薬ディスク、3:反応ディスク、4:反応槽、5:サンプリング機構、6:ピペッティング機構、7:攪拌機構、8:測光機構、9:洗浄機構、10:コンピュータ、12:記憶装置、13:制御部、14:圧電素子ドライバ、15:攪拌機構コントローラ、16:試料容器、17:円形サンプルディスク、18:試薬ボトル、19:円形試薬ディスク、20:保冷庫、21:反応容器、22:反応容器ホルダ、23:駆動機構、24:サンプルプローブ、25:サンプルプローブ支承軸、26:サンプルプローブアーム、27:試薬プローブ、28:試薬プローブ支承軸、29:試薬プローブアーム、31:固定部、33:ノズル、34:上下駆動機構、
101:光源ランプ、102:単色光、103:反応セル、104:被測定液体、105:散乱光、106:散乱光検出器、107:散乱光検出回路部、108:散乱光AD変換部、109:外乱光、110:ダイクロイックフィルタ、111:外乱光検出器、112:外乱光検出回路部、113:外乱光AD変換部、114:演算器、115:記憶部、116:制御部、117:表示部、
200:単色光の相対発光強度特性、201:ダイクロイックフィルタ透過率、
300:正常時の散乱光反応傾斜信号、301:外乱光信号、302:外乱光が加算された散乱光反応傾斜信号、303:異常時の散乱光反応傾斜信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の被測定液体を格納する反応容器と、
前記反応容器に光を照射する光源部と、
前記反応容器内の前記被測定液体にて散乱した光を検出する第1検出器と、
前記光源部以外の光を検出する第2検出器と、
前記第1検出器の出力を測定する第1検出回路部と、
前記第2検出器の出力を測定する第2検出回路部と、
前記第1検出回路部からの出力を信号処理する第1信号処理部と、
前記第2検出回路部からの出力を信号処理する第2信号処理部と、
前記第1信号処理部と前記第2信号処理部からの出力を処理する演算部と、
前記演算部の結果を保存する記憶領域とを有し、
前記第1検出器と前記第2検出器とを含む少なくとも2つ以上の検出器を持つことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記演算部は、前記第1検出器からの出力値を前記第1検出回路部および前記第1信号処理部を介して処理した出力信号と、前記第2検出器からの出力値を前記第2検出回路部および前記第2信号処理部を介して処理した出力信号とに基づいて演算し、前記第1検出器からの出力値から前記第2検出器からの出力値を差し引いた値を前記被測定液体にて散乱した光の検出値とすることを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項2記載の自動分析装置において、
前記第2検出器には、前記光源部から照射される光の波長範囲を吸収するフィルタが取り付けられていることを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の自動分析装置において、
前記演算部は、前記第1検出器からの出力値を前記第1検出回路部および前記第1信号処理部を介して処理した出力信号と、前記第2検出器から出力値を前記第2検出回路部および前記第2信号処理部を介して処理した出力信号とに基づいて、前記被測定液体にて散乱した光の検出値を演算する際に、前記第1検出器と前記第2検出器との検出感度比を補正することを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1記載の自動分析装置において、
前記第1検出器と前記第2検出器とに加え、さらに、前記反応容器内の前記被測定液体を透過した光を検出する第3検出器を有することを特徴とする自動分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−24746(P2013−24746A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160289(P2011−160289)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】