説明

自動化装置の負論理出力の制御保護システム

【課題】起動・安定化のフェーズにおいて、トランジスタ形式の静的出力を、その出力を流れる電流の増加によって生じる強い電流から保護する。
【解決手段】システムは、負荷抵抗R10と、電気負荷Cが負荷抵抗R10と直列に給電される通電状態と遮断状態とのスイッチングができるMOSスイッチングトランジスタT10とを有するスイッチ装置10と、抵抗R10の端子電圧を所定の最大値に制限する制限装置20と、所定の時間経過にわたって負荷抵抗R10を通る電流が所定の閾値を越えるときに、スイッチングトランジスタT10を遮断状態にスイッチングできる遮断装置30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用プログラマブル論理制御装置(PLC、プログラマブル・ロジカル・コントローラとも言う)などの自動化装置の出力ライン、特に自動化装置からのデジタル制御信号にしたがって電気負荷を制御できる静的出力ラインの電子制御保護システムに関する。
【背景技術】
【0002】
プログラマブル制御装置は、特に工業、ビルや配電のプロセス制御において一つ以上のプロセスを制御および/または監視できる自動化装置である。プログラマブル制御装置は通常、中央処理部および複数の入力ラインと出力ラインを有する。プログラマブル論理制御装置がモジュール式組立品である場合、これらの入出力は、それぞれ例えば8、16、32本のラインを有する入出力モジュールに分けられる。
【0003】
入力によって、特に検知器により、プロセスに関する情報を受け取ることができる。中央処理部はまず入力を監視して、出力を制御するためにアプリケーション・プログラム(またはユーザー・プログラム)を実行することによって、出力は電磁スイッチング装置の励起コイルなどのプリアクチュエータタイプの電気負荷を制御できる。
【0004】
静的出力は、異常が生じた場合、出力を遮断できる電子保護システムによって過電流や短絡から保護される。一般的に遮断電流値は、規定の最大電流の約1.25倍から、すなわち100mAの公称出力電流では125mAから、500mAの公称出力電流では625mAから遮断するように設定される。
【0005】
ただし、場合によって、特に容量負荷形式のプリアクチュエータやフィラメント電球を制御する出力ラインの場合は、この遮断電流値では問題が生じることがある。つまり、例えばフィラメント電球の場合、電球の抵抗はフィラメントの温度によって大きく変化するので、電球を流れる電流もフィラメントの温度によって大きく変化する。フィラメントの温度が低いとき、例えば点灯時の周囲温度では、フィラメントの抵抗は低く、電球を流れる電流は非常に大きい。その後フィラメントの温度は急速に上昇してから安定するので、抵抗も急速に上昇して電流を低下させる。
【0006】
したがって、起動時に電球を流れる可能性のあるサージ電流の初期値は公称電流の5倍(例えば公称電流100mAの出力が24Vdcである場合は500mA)に達することがあり、電球を流れる電流が公称電流まで安定化するには約10msかかる。容量負荷の場合にも、起動時にこのような動作がみられる。このような場合、従来の出力ライン保護システム遮断してしまうことは明白である。
【0007】
US4,750,079文献にはすでに、負荷を制御するためのMOSトランジスタ用の制御保護回路が記載されている。しかし、この回路は負荷を流れる電流を直接測定せず、負荷を流れる電圧を制限する装置も備えておらず、電流が所定の時間にわたって所定の閾値を越える場合にMOSトランジスタを遮断できる遮断装置を備えていない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による出力ラインの電子制御保護システムの第一実施形態の略図を示す。
【図2】本発明の第二実施形態の略図を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1および図2を参照すると、プログラマブル論理制御装置などの自動化装置の出力ラインからのデジタル制御信号Sに基づいて外部電気負荷Cを制御できる。制御信号Sは、例えばアプリケーション・プログラムの実行に従うプログラマブル論理制御装置の中央処理部によって発生する。電子制御保護システムは、この制御信号Sに基づいて出力の電子回路を制御し、負荷Cの過電流および/または短絡から出力の電子回路を保護する。
【0021】
図1に示す第一実施形態において、電子制御保護システムは、制御信号Sを受信する制御装置40と、電気負荷Cを制御できる静的スイッチ装置10と、静的スイッチ装置10を流れる電流を制限できる制限装置20と、異常が生じた場合、静的スイッチ装置10の制御を遮断できる遮断装置30と、を備える。
【0022】
スイッチ装置10は、負荷抵抗R10およびN型MOSFETスイッチングトランジスタT10を備える。電気負荷Cは、24Vdcのプリアクチュエータ電圧などのプラス電圧源とスイッチングトランジスタT10のドレイン間に接続される。負荷抵抗R10は、アースまたはゼロの電圧点、つまりゼロ電圧に相当するマイナス電圧端子NとスイッチングトランジスタT10のソース間に接続される。このようにして、スイッチングトランジスタT10が通電状態であると、負荷Cおよび負荷抵抗R10はプラス電圧源とマイナス端子N間で直列に給電される。スイッチングトランジスタT10が遮断状態の場合、負荷Cは給電されない。
【0023】
制限装置20は負荷抵抗R10の端子電圧を所定の最大値に制限し、抵抗R10を流れる電流を制限することによってスイッチングトランジスタT10を流れる電流を制限するものである。制限装置20は主にNPNバイポーラトランジスタT21、PNPバイポーラトランジスタT22、電圧降下素子Eから構成される。
【0024】
トランジスタT22のエミッタはプラス電圧端子Pに接続される。トランジスタT22のコレクタは抵抗R23を介してマイナス端子Nに接続され、またスイッチングトランジスタT10のゲートにも接続されている。トランジスタT22のベースは、抵抗R22を介してトランジスタT21のコレクタに接続される。トランジスタT21のエミッタは、スイッチングトランジスタT10のソースに接続される。トランジスタT21のベースは、制御装置40の出力信号に接続される。トランジスタT21のベースは点Mになり、点Mは電圧降下素子Eを介してマイナス電圧端子Nに接続される。点Mは、遮断装置30で使用する電圧測定点に相当する。プラス端子Pとマイナス端子N間には例えば5Vdcの電圧Vがあって、電圧Vはプリアクチュエータの電圧(例えば24vdc)から発生される。
【0025】
第一実施形態では、電圧降下素子Eは点Mとマイナス端子N間に直列に接続された二つのダイオードD20およびD21から構成される。ダイオードD20およびD21の陽極は点Mへ向かい、陰極はマイナス端子Nへ向かう。
【0026】
遮断装置30はN型MOS遮断用トランジスタT30を設け、そのドレインは点Mに接続され、ソースはマイナス端子Nに接続される。遮断装置30はさらに、比較モジュール31およびタイマーモジュール32を備える。比較モジュール31は、抵抗R30を介して点Mに接続された第一入力および基準電圧Vrefを受ける第二入力を有する。比較モジュール31の出力はタイマーモジュール32の入力に接続され、タイマーモジュール32の出力はトランジスタT30のゲートに接続される。このように、比較モジュール31は点Mでの電圧(つまり、間接的には負荷抵抗R10の端子電圧)と基準電圧Vrefとを比較するものである。
【0027】
また、制御装置40は、N型MOSトランジスタT40を備える。トランジスタT40のゲートは制御信号Sに接続される。トランジスタT40のソースは電子回路のマイナス端子Nに接続される。トランジスタT40のドレインは、一方で抵抗R41を介してPNPのバイポーラトランジスタT41に接続され、また他方で抵抗R40を介してプラス端子Pに接続される。好ましくは、R41のドロップ電流がごくわずかになるようにR41の抵抗値は高いものとする。トランジスタT41のエミッタはプラス端子Pに接続され、トランジスタT41のコレクタは一方で抵抗R43を介してマイナス端子Nに接続され、また他方で抵抗R42を介して点Mに接続される。
【0028】
制御保護システムの正常な動作は下記のようになる。
【0029】
制御信号Sが0のときは、トランジスタT40は遮断状態(オフ)である。トランジスタT41のベースはR41およびR40を介してプラス端子Pに連結するのでトランジスタT41もオフである。トランジスタT21のベースはR42およびR43を介してマイナス端子Nに連結するので、トランジスタT21もオフである。結果として、トランジスタT22のベースは1の状態にあるので、T22はオフになる。この場合、T10のゲートはR22を介して端子Nに連結するので、スイッチングトランジスタT10はオフになり、負荷Cは制御されない。
【0030】
制御信号Sが1のとき、トランジスタT40は通電(オン)する。トランジスタT41のベースはR41を介して端子Nに連結するので、トランジスタT41もオンになる。トランジスタT21のベースはR42を介してプラス端子Pに連結するので、トランジスタT21はオンになる。結果として、トランジスタT22のベースはR21およびR10を介して端子Nに連結するので、T22はオンになる。この場合、T10のゲートはプラス端子Pに連結するので、スイッチングトランジスタT10はオンになり、負荷Cは制御される。
【0031】
素子Eの端子での電圧降下VEは、VE=VR10+VBET21となり、ここでVR10は抵抗R10の端子電圧を示し、VBET21はトランジスタT21のベース・エミッタ電圧を示す。本発明によれば、電圧降下素子Eは、出力が制御されるとき(負荷Cが供給されるとき)電圧VR10を常に最大値VR10max以下に制限できるように、一定の安定した電圧降下VEを得られるよう選択される。ここで、トランジスタT21がオンで飽和されているとき、すなわち出力が制御されているときは、T21のベースとエミッタ間の電圧降下VBET21は一定であって、約0.6Vになる。
【0032】
図1の実施形態では、素子Eは二つのダイオードD20およびD21から構成され、それぞれのダイオードは一定の約0.6Vの電圧降下VD20およびVD21を得るが、これはこのタイプのコンポーネントとしては一般的な電圧降下値である。したがって、素子Eの端子での電圧降下VEは設定された値であって、VD20+VD21に等しい。したがって、電圧VR10の制限は、VR10max=VE−VBET21=VD20+VD21−0.6V0=VD20=0.6Vになる。
【0033】
負荷抵抗R10を流れる最大電流は、IR10max=VR10max/R10=VD20/R10になる。
【0034】
D20およびR10は固定値なので、R10を通る電流IR10はある程度の時間にわたって制限でき、短絡時にもスイッチングトランジスタT10を通る電流を制限できる。したがって、トランジスタT10を過剰に大きく設計しなくてもよいので、熱分散の面や出力ラインをプログラマブル論理制御装置の入出力モジュールに設置できるという面で大きな利点があり、一つのモジュールに、例えば32本の出力ラインを設け、各ラインが本発明による電子制御保護システムを備えることができる。
【0035】
つまり、負荷Cが短絡すると、プラス電圧が24Vdcである場合は、トランジスタT10のソースとドレイン間の電圧VDST10は実質的にVDST10=24-VR10maxになる。したがって、トランジスタT10はタイマー時間にわたって下記の電流Pmaxに耐える必要がある。Pmax=VDST10*IR10max、すなわち:Pmax=(24-VR10max)*VD20/R10。
【0036】
出力ラインが短絡せずに正常に機能する場合は、点MはVM1の電位であり、これはVM1=VBET21+VR10となるが、負荷Cによって消費される電流は正常電流なので、VR10は低い値となる。これに対して、出力が短絡しているときは、点MはVM2であり、VM2=VBET21+VR10maxとなり、VR10max=VD20=0.6Vである。
【0037】
点Mは抵抗R30を介して、比較モジュール31の第一入力に接続される。抵抗R30の抵抗値は非常に低く、比較器31の入力でのインピーダンスが非常に高いので、抵抗R30を考慮に入れる必要はない。基準電圧Vrefは比較器31の第二入力に印加される。この基準値電圧Vrefは、比較モジュール31が出力での短絡を検知できるように、VM1とVM2の間で選択される。したがって、正常動作中、VM1値は基準電圧Vrefを下回るので、比較器の出力はゼロとなる。短絡した場合は、VM2値がVrefを超えるので、比較器の出力は1となる。遮断閾値の精度を向上させ、温度の影響を受けないようにするため、好ましくは基準電圧VrefはトランジスタT21と対になった他のバイポーラトランジスタのベース・エミッタ電圧によって得る。このように、比較モジュール31によって負荷抵抗R10の端子電圧と基準電圧Vrefとを比較できる。
【0038】
出力が1のとき、タイマーモジュール32は比較モジュール31の出力によって起動するが、タイマーモジュール32の時間は例えば約10msに設定し、ある出力を起動させる際に生じ得る一時的な短絡を許可するようにする。当該時間経過後も短絡がまだ続く場合、タイマーモジュール32はスイッチングを行い、トランジスタT30のゲートを制御して、点Mをマイナス端子Nに直接接続させる。このとき、T21のベースはマイナス端子Nに連結し、その結果トランジスタT21をオフにするのでトランジスタT10はオフ状態となる。負荷Cはもはや制御されなくなる。
【0039】
したがって、過電流または短絡時に負荷抵抗R10の端子での電圧が基準電圧Vrefで設定した閾値を越える場合、制御保護システムはタイマーモジュール32で設定された一定時間経過後、出力を遮断できる。また、前記システムは、設定された時間にわたり、スイッチングトランジスタT10および負荷抵抗R10を流れる電流を素子Eの電圧降下に基づいて算出した最大電流IR10maxに制限できる。
【0040】
また、素子Eの二つのダイオードD20およびD21の代わりに一つのツェナーダイオードを使用することもできる。その陰極は端子N側に配置し、この場合のツェナーダイオードの電圧降下は例えば約1.3Vであるが、ツェナーダイオードで得られる電圧降下の精度は劣る。
【0041】
図2は、本発明の第二実施形態を示す。この第二実施形態において、電子制御保護システムは、制御信号Sを受信する制御装置40’と、電気負荷Cを制御できる静的スイッチ装置10と、静的スイッチ装置10を流れる電流を制限できる制限装置20’と、異常が生じた場合、静的スイッチ装置10の制御を遮断できる遮断装置30’と、を備える。スイッチ装置10は図1のものと同一である。
【0042】
制限装置20’は、負荷抵抗R10の端子電圧を所定の最大値に制限して、抵抗R10を流れる電流を制限することによってスイッチングトランジスタT10を流れる電流を制限するものである。制限装置20’は主にNPNバイポーラトランジスタT25および電圧降下素子E’から構成される。
【0043】
トランジスタT25のエミッタは、マイナス電圧端子Nに接続される。トランジスタT25のコレクタは、スイッチングトランジスタT10のゲートに接続される。トランジスタT25のベースは、抵抗R25を介して測定点M’に接続される。また点M’は、非常に高い抵抗値の抵抗R26を介してトランジスタT10のソースにも接続される。点M’は、遮断装置30で使用する電圧測定点に相当する。トランジスタT10のゲートは、制御装置40’の出力信号に接続される。
【0044】
図2の実施形態では、電圧降下素子E’はトランジスタT25と背中合わせに設置されたNPNバイポーラトランジスタT20から構成される。したがって、トランジスタT20のエミッタはトランジスタT25のエミッタに接続され、また同様にトランジスタT20のコレクタはトランジスタT25のコレクタに接続されている。トランジスタT20のベースはトランジスタT10のソースに接続されている。したがって、素子E’のトランジスタT20のベース・エミッタ間の電圧降下VE'はVE'=VR10になる。
【0045】
遮断装置30’はP型MOS遮断用トランジスタT30’を設け、そのドレインは点M’に接続され、ソースはプラス端子Pに接続される。遮断装置30’はさらに、比較モジュール31およびタイマーモジュール32を備える。比較モジュール31は抵抗R30を介して点M’に接続された高インピーダンスの第一入力および基準電圧Vrefを受ける第二入力を有する。比較モジュール31の出力はタイマーモジュール32の入力に接続され、タイマーモジュール32の出力はトランジスタT30’のゲートに接続されている。このように、比較モジュール31は点M’での電圧と基準電圧Vrefとを比較するものである。
【0046】
また、制御装置40’はN型MOSトランジスタT40を備える。トランジスタT40のゲートは制御信号Sに接続される。トランジスタT40のソースはマイナス端子Nに接続される。トランジスタT40のドレインは、一方で抵抗R41を介してNPNのバイポーラトランジスタT45のベースに接続され、また他方で抵抗R40を介してプラス端子Pに接続される。R41のドロップ電流がごくわずかになるようにR41の抵抗値は非常に高いものとする。トランジスタT45のエミッタは、マイナス端子Nに接続される。トランジスタT45のコレクタは、一方で抵抗R45を介してプラス端子Pに接続され、他方で抵抗R46を介してトランジスタT10のゲートに接続される。
【0047】
制御保護システムの正常な動作は下記のようになる。
【0048】
制御信号Sが0のときは、トランジスタT40は遮断状態(オフ)である。トランジスタT45のベースはR41およびR40を介してプラス端子Pに連結するのでトランジスタT41もオンである。この場合、T10のゲートはR46を介してマイナス端子Nに連結するので、スイッチングトランジスタT10はオフになり、負荷Cは制御されない。
【0049】
制御信号Sが1のとき、トランジスタT40は通電(オン)する。トランジスタT45のベースはR41を介して端子Nに連結するので、トランジスタT45はオフになる。この場合、トランジスタT10のゲートはR45およびR46を介してプラス端子Pに連結するので、スイッチングトランジスタT10はオンになり、負荷Cは制御される。
【0050】
抵抗R10の端子での最大電圧VR10maxは、例えば約0.6Vの固定値であるトランジスタT20のベース・エミッタ電圧VBET20によって制限される。したがって、電圧VR10の制限は、VR10max=VBET20=0.6Vとなる。
【0051】
したがって、負荷抵抗R10を流れる最大電流は、IR10max=VR10max/R10=VBET20/R10になり、VBET20およびR10は予め設定されている。このように、第一実施形態と同様に、R10を通る電流IR10をある程度の時間にわたり制限できるので、短絡時にもスイッチングトランジスタT10を通る電流を制限できる。
【0052】
一例として、500mAの公称電流で24Vdcの電圧源によって給電される出力の場合は、電流IR10maxが1.8Aになるように、抵抗R10を0.33Ω(0R33)にすればよい。100mAの出力の場合は、抵抗R10を2.2RΩにすればよい。
【0053】
点M’の電位はVM'=VR10+VR26になる。実際には、R26はR10の端子電圧を伝達するためのものであるので抵抗値が高く、トランジスタT30’がオンになるときには、抵抗R10で電流を発生させなくてもよいので、その端子での電圧は無視してよい。負荷Cが短絡せずに正常に機能する場合は、点M’の電位はVM'1=VR10になるが、負荷によって消費される電流は公称電流であるので、VR10は比較的低い値である。これに対して、出力が短絡しているときは、点M’はVM'2=VR10maxになり、VR10max=VBET20=0.6Vである。
【0054】
このように、第一実施形態と同様に、比較モジュール31によって負荷抵抗R10の端子電圧(点M’は比較器31の第一入力に接続)と比較器31の第二入力に印加される基準電圧Vrefとを比較できる。この基準値電圧Vrefは、比較モジュール31が出力での短絡を検知できるように、VM'1とVM'2の間で選択される。したがって、正常動作中は、VM'1値は基準電圧Vrefを下回り、比較器の出力はゼロとなる。短絡時は、VM'2値はVrefを超え、比較器の出力は1となる。
【0055】
このとき、タイマーモジュール32は比較モジュール31の出力によって起動するが、タイマーモジュール32の時間は例えば約10msに設定され、ある出力を起動する際に生じ得る一時的な短絡を許可するようにする。当該タイマー時間経過後も短絡がまだ続く場合、タイマーモジュール32はスイッチングを行い、トランジスタT30’のゲートを制御して、点M’がプラス端子Pと直接接続するようにする。トランジスタT25のベースはプラス端子Pに接続されるので、トランジスタT25はオンになる。結果として、スイッチングトランジスタT10のゲートがマイナス端子Nに連結するので、スイッチングトランジスタT10がオフになる。このとき、負荷Cは制御されなくなる。
【0056】
したがって、過電流または短絡時、保護システムは、負荷抵抗R10の端子での電圧が基準電圧Vrefで設定した閾値を越えるとき、タイマーモジュール32で設定された時間経過後、出力を遮断できる。また、設定された時間にわたり、前記保護システムは、スイッチングトランジスタT10および負荷抵抗R10を流れる電流を、素子E’の電圧降下に基づいて算出した最大電流IR10maxに制限できる。
【0057】
好ましくは、上記のような出力ラインの制御保護システムは一つの集積回路に組み込むことができる。また、入出力モジュールの複数の出力ラインの制御保護システムは一つの集積回路に組み込むことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動化装置からの制御信号Sにしたがって電気負荷Cを制御するための前記自動化装置の出力ラインの制御保護システムであって、前記システムは、負荷抵抗R10と、前記負荷Cが前記負荷抵抗R10と直列に給電される通電状態と遮断状態とを前記制御信号SによってスイッチングできるMOSスイッチングトランジスタT10と、を有するスイッチ装置10を備え、前記負荷抵抗R10は、前記スイッチングトランジスタT10のソースとマイナス電圧端子Nとの間に接続される制御保護システムにおいて、
負荷抵抗R10の端子電圧を所定の最大値VR10maxに制限する制限装置20、20’と、
前記負荷抵抗R10の端子電圧と基準値電圧Vrefとを比較できる比較モジュール31を有し、所定の時間にわたって前記負荷抵抗R10を通る電流が所定の閾値を越えるときに、スイッチングトランジスタT10を遮断状態にスイッチングできる前記出力ラインの遮断装置30、30’と、
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記電気負荷Cは、前記スイッチングトランジスタT10のドレインとプラス電圧源との間に接続され、前記スイッチングトランジスタT10が遮断状態であるときは、前記負荷Cが制御されていないことを特徴とする請求項1に記載の制御保護システム。
【請求項3】
前記遮断装置30、30’は、入力が前記比較モジュール31の出力に接続されるタイマーモジュール32と、ゲートが前記タイマーモジュール32の出力に接続されるMOS遮断用トランジスタT30、T30’と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の制御保護システム。
【請求項4】
前記制限装置20、20’は、電圧降下素子E,E’を備え、前記電圧降下素子E,E’は、前記負荷抵抗R10の端子における所定の電圧降下によって前記負荷抵抗R10の端子電圧の最大値VR10maxを制限するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の制御保護システム。
【請求項5】
前記電圧降下素子Eは、陰極がマイナス電圧端子N側に配置される二つの直列のダイオードD20、D21を備えることを特徴とする請求項4に記載の制御保護システム。
【請求項6】
前記電圧降下素子Eは、陰極がマイナス電圧端子N側に配置されるツェナーダイオードを備えることを特徴とする請求項4に記載の制御保護システム。
【請求項7】
前記制限装置20は、エミッタが前記スイッチングトランジスタT10のソースに接続されたバイポーラトランジスタT21を備え、電圧降下素子Eは、マイナス電圧端子Nと前記バイポーラトランジスタT21のベースとの間に接続されており、前記遮断用トランジスタT30のドレインは、前記バイポーラトランジスタT21のベースに接続されており、前記遮断用トランジスタT30のソースは、前記マイナス端子Nに接続されていることを特徴とする請求項4に記載の制御保護システム。
【請求項8】
前記制限装置20の電圧降下素子E’は、ベースが前記スイッチングトランジスタT10のソースに接続され、エミッタがマイナス電圧端子Nに接続され、コレクタが前記スイッチングトランジスタT10のゲートに接続されるバイポーラトランジスタT20を備え、素子E’の端子での電圧降下は、前記バイポーラトランジスタT20のベース・エミッタ間の電圧によって設定されていることを特徴とする請求項4に記載の制御保護システム。
【請求項9】
前記制限装置20はさらに、ベースが前記遮断用トランジスタT30’のドレインに接続され、エミッタが前記マイナス電圧端子Nに接続され、コレクタが前記スイッチングトランジスタT10のゲートに接続される遮断用トランジスタT25を備え、前記遮断用トランジスタT30’のドレインは、前記スイッチングトランジスタT10のソースにも接続されており、前記遮断用トランジスタT30’のソースは、プラス端子Pに接続されていることを特徴とする請求項8に記載の制御保護システム。
【請求項10】
中央処理部と、少なくとも一つの出力ラインとを備え、電気負荷Cを制御するための自動化装置であって、前記中央処理部は、前記出力ラインをスイッチングするための制御および/または監視のプログラムを実行する間に制御信号Sを発生できる自動化装置において、請求項1から9のいずれか一項に記載の制御保護システムを備えることを特徴とする自動化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−201347(P2009−201347A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−26939(P2009−26939)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(594083128)シュネーデル、エレクトリック、インダストリーズ、エスアーエス (52)
【氏名又は名称原語表記】SCHNEIDER ELECTRIC INDUSTRIES SAS
【Fターム(参考)】