説明

自動化設備システム

【課題】 工業用ロボットを中心に複数の周辺装置を組み合わせて構成される自動化設備を、より簡単且つ柔軟に行うことができるシステムを提供する。
【解決手段】 工業用ロボット11bを含む複数の装置12b〜15bを、夫々の架台11a〜15aに予め搭載し、それらの複数の架台11a〜15aを相互に結合することで自動化設備システムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの工業用ロボットを含む複数の装置を組み合わせて所定の作業を実行させるために構成される自動化設備システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工業製品等のライフサイクルは概して短命化する傾向にあり、製品を生産するために自動化される設備には、多様な製品の種類に対応することができる柔軟性と、必要なタイミングで生産を開始するためにセットアップ時間の短縮とが求められている。従来、工業用ロボットを使用する自動化設備においては、図12に示すように、1つの架台1の上に、ロボット2とその他必要な機能としてコンベア3や部品供給装置4などを統合することで構成されていた。
【0003】
そのため、設備の仕様毎に架台の大きさや形状は夫々専用の設計となり、専用の設計であるが故に架台を転用することができず不要となれば廃棄するしかなく、設備コストが低減できない一つの要素であった。また、各設備の製作時においても、架台上に配置される各装置の位置が決定してから電源線やエア配管、信号線などの引き回しを現品合わせで行なうケースが多く、そのような配線作業についても工数やコストが掛かっていた。更に、設備を制御するためのプログラムに関しても、設備に搭載される各装置が決定した段階から新規に作成する場合が殆どであり、プログラムの作成効率が非常に悪かった。
【0004】
例えば、特許文献1には、ロボット装置やストッカ装置を夫々独立したモジュールとして扱うと共に、ロボット装置が搭載される架台に複数のストッカ装置を取り付けるように組み付けの形態を標準化することで、組み付けや配線作業を簡易化し、制御プログラムを流用してプログラムの作成効率を向上させるようにした技術が開示されている。
【特許文献1】特開平6−214632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、1つの架台に複数の装置を組み付けるという点では、従来と相違するところはなく、架台の形状やサイズによって搭載できる装置の数やサイズ、組み合わせなどは大きな制約を受けることになる。そして、大きなサイズの架台を作成すれば工場内の設置面積を大きくとり且つ設置形態も限定されるため、架台の作成コスト及び維持コストのアップを招く。故に、特許文献1では、ロボット装置とストッカ装置とを組み合わせることしか想定しておらず、様々な装置をフレキシブルに組み合わせることが出来ないという問題がある。
【0006】
また、工業用ロボットを動作させるための制御プログラムは、一般に、架台上に複数の装置を組付けてロボットを基準とする相対関係が明確になった段階から、設備システムの動作フローに応じて作成するようになっている。それから、ロボットに各装置の位置を教示して当該ロボットを動作させる。このような作業は、新たな設備を構成するごとに必要であり、セットアップ時間が長くなるという問題もあった。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、工業用ロボットを中心に複数の周辺装置を組み合わせて構成される自動化設備を、より簡単且つ柔軟に行うことができるシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の自動化設備システムによれば、工業用ロボットを含む複数の装置は、夫々の架台に予め搭載されており、それらの複数の架台を相互に結合することで構成される。そして、工業用ロボットの制御プログラムは、各架台について設定されている基準位置に基づく動作としてプログラミングされ、記憶手段に記憶されている。即ち、複数の架台の組み合わせによって設備システムを柔軟に構成することが可能となる。
また、夫々の架台のサイズは予め把握されるので、システム全体のサイズがどの程度になるのかも容易に予測できる。そして、工業用ロボットに対しては、システムを構成した後各架台毎の基準位置を教示すれば、記憶手段に記憶されている制御プログラムに基づいて動作させることが可能となる。従って、システムを構成して稼動させるまでのセットアップ時間を大幅に短縮し、効率化を図ることができる。
【0008】
請求項2記載の自動化設備システムによれば、複数の架台の1つは工業用ロボットの1つが搭載されるベース架台であり、このベース架台を中心としてその他のユニット架台が結合されることでシステムが構成される。従って、工業用ロボットを中心とするシステム構成が容易となり、また、位置合わせ手段によってベース架台とユニット架台とを結合する際の位置合わせも容易に行うことができる。
【0009】
請求項3記載の自動化設備システムによれば、位置合わせ手段としてベース架台と各ユニット架台との夫々に設けられる係合部材を係合させれば両者の結合位置が定まるので、位置合わせを極めて簡単に行うことができる。
請求項4記載の自動化設備システムによれば、ベース架台側に設けられるガイドレールに沿ってユニット架台側の移動手段を移動させれば、ユニット架台をベース架台側の結合位置に容易に導くことができる。
【0010】
請求項5記載の自動化設備システムによれば、各ユニット架台が夫々備える記憶手段に、夫々の架台に搭載されている装置に対して工業用ロボットが行なう動作のプログラムファイルを記憶させる。従って、ベース架台側に配置されている読取り手段によって、ユニット架台側の記憶手段よりプログラムファイルを夫々読取れば、システム構成に応じて必要な工業用ロボットの制御プログラムを容易に統合することができる。即ち、各装置のハードウエアとそのハードウエアを制御するためのプログラムとが予め一体となっているので、両者マッチングさせる作業は不要となり、制御プログラムを作成したり或いは用意するためのセットアップ時間も短縮することができる。
【0011】
請求項6記載の自動化設備システムによれば、各ユニット架台側に配置されるIDタグに記憶されているプログラムファイルを、ベース架台側に備えるタグリーダによって読取るので、ファイルの記憶や読み出しを簡単に行うことができる。
請求項7記載の自動化設備システムによれば、各架台毎の記憶手段に、夫々の基準位置のティーチングデータも記憶する。即ち、設備システムを構成した場合には、工業用ロボットに対して少なくとも1回は各架台の基準位置をティーチングする必要がある。しかし、一旦設備システムを構成すれば、それ以降は各架台の基準位置が変動することは極めて稀である。従って、最初のティーチングにおいて取得されたデータも記憶手段に記憶させてそれを読み出すようにすれば、動作開始前に毎回ティーチングを行う必要はなく、作業をより効率的に行うことができる。
【0012】
請求項8記載の自動化設備システムによれば、各記憶手段には、自身に搭載されている装置を動作させるための制御プログラムも夫々記憶しておき、ベース架台側に、各ユニット架台に搭載されている装置も統括制御する制御装置を備える。従って、ユニット架台側に、夫々の搭載装置を制御するための装置を分散して配置する必要はなくなり、構成をより簡単にすることができる。
【0013】
請求項9記載の自動化設備システムによれば、ベース架台が有する視覚認識手段は、各ユニット架台に夫々設定されている複数の測定点の位置を読取り、距離測定手段は、前記複数の測定点についての垂直方向距離を読取る。すると、それらの読取り結果に基づき3次元座標値が得られるので、その座標データによって各ユニット架台の基準位置を原点とする座標系を認識することができる。
従って、各測定対象点のティーチングを工業用ロボットに一々行う必要はなく、視覚認識手段を、1つの架台上の全測定点を読取れる位置まで移動させれば自動的にそれらの3次元座標値を得ることができ、工業用ロボットに各ユニット架台の座標系を認識させる作業がより簡単になる。
【0014】
請求項10記載の自動化設備システムによれば、視覚認識手段を、工業用ロボットの可動部先端側に配置されるカメラとするので、測定点を平面的に撮像してそれらの2次元座標を視覚的に一括して認識することができる。
請求項11記載の自動化設備システムによれば、距離測定手段を、工業用ロボットの可動部先端側に配置された距離センサとするので、視覚認識手段によって認識された測定点の水平面的な2次元座標位置について、残りの垂直的な座標値を例えば光学的な手段によって測定することができる。
請求項12記載の自動化設備システムによれば、ユニット架台に測定点を3点設定するので、ベース架台上の工業用ロボットは、それら3点に基づいて、各課題の基準位置及びその基準位置を原点とする座標系の状態を把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例について図1乃至図7を参照して説明する。図1は、本発明の自動化設備システムの構成をイメージ的に示すものである。本発明のシステムでは、図1(a)に示すように、1つの架台に1つの機能を果す装置が搭載されており、また、その装置を動作させるための制御ソフトウエアとを組み合わせたものが、夫々単位モジュールを構成する。
【0016】
例えば、ロボットモジュール11は、架台11aと、その架台11aに搭載される工業用ロボット11bと、そのロボット11bの制御ソフト11c(制御プログラム)とで構成されている。同様に、ターンテーブルモジュール12は、架台12a,ターンテーブル12b,制御ソフト12cで構成され、部品供給モジュール13は、架台13a,部品供給装置13b,制御ソフト13cで構成され、コンベアモジュール14は、架台14a,ワーク搬送装置14b,制御ソフト14cで構成されている。
そして、図1(b)に示すように、これらの単位モジュールの集合であるモジュール群の中から、夫々のアプリケーションに応じて必要な機能備えたものを適宜選択し、例えばパターンA〜Cのように様々な組み合わせのシステムを構成する(図1(c)〜(e))。但し、それらの装置のうち少なくとも1つは、工業用ロボットを含むものとする。
【0017】
図2は、システムを構成した場合における各単位モジュール間の接続状態を概念的に示すものである。尚、計測モジュール15は、同様に架台15a,ワーク計測装置15b,制御ソフト15c(図3参照)で構成されている。また、ロボットモジュール11には、制御装置11dも搭載されている。
【0018】
図3は、制御装置11dの概略構成をソフトウエア的な構成を中心に概念的に示すものである。制御装置11dは、具体的には図示しないが、CPUやメモリ,ハードディスク,I/Oなどからなるハードウエア16及びマルチタスクOS(オペレーティングシステム)23を備えている。マルチタスクOS17は、ハードウエア16のCPUによって実行され、ユーザにより作成されるユーザプログラムとハードウエア16との間を仲介するように制御装置11dの資源管理を行う。
【0019】
そして、制御装置11dを製品として出荷するメーカは、マルチタスクOS17上で動作するシステムタスク群18を作成し、そのシステムタスク群18を予め搭載した状態で制御装置11dをユーザに供給する。システムタスク群18は、ユーザが制御装置11d上でユーザプログラムを動作させ、様々な制御対象機器を制御する場合に共通する基本的な制御内容(例えば、制御装置11dのマンマシンインターフェイス部分や外部機器との通信処理に関するものなど)を実行して処理させるために搭載される。
【0020】
ユーザは、ユーザプログラムとして、動作タスク群19,設備管理タスク群20を記述作成し、それらを制御装置11dのハードディスクなどにインストールすることで、マルチタスクOS17並びにシステムタスク群18上において、ユーザプログラムをハードウエア16のCPUに実行させる。動作タスク群19は、各制御対象機器に対応した動作タスクで構成され、制御ソフト11c(ロボット動作タスク),12c(テーブル動作タスク),13c(供給動作タスク),14c(モーション動作タスク),15c(計測動作タスク)などを備えて構成されている。
【0021】
また、設備管理タスク群20は、設備監視タスク21,設備全体制御タスク22などを備えて構成されている。設備監視タスク21は、カメラの画像信号をパターン認識したり、各種センサ(何れも図示せず)などより入力されるセンサ信号を参照することで、各制御対象機器の動作状態などを監視している。設備全体制御タスク22は、動作タスク群19の実行を制御し、生産ラインに人が近付いた場合や或いは設備の一部が破損する可能性がある状況が発生した場合は設備監視タスク21がその状態を検知し、設備全体制御タスク22が生産ラインの動作を安全側に移行させる(生産ラインの動作の一部若しくは全てを停止させたり動作速度を低減させること)ように制御する。
即ち、制御装置11dは、ロボット11bのみならず、その他の装置12b〜15bについても統括的に制御を行うものである。尚、図3に示すイメージは、制御装置11dに対する一連の設定作業が終了した段階であり、制御装置11dが各制御対象装置12b〜15bの制御が可能となっている状態を示している。
【0022】
再び、図2を参照する。制御装置11dには、マンマシンインターフェイスである設備用操作盤(ティーチングペンダント)23が接続されており、ユーザによる操作盤23の操作に応じてシステムの運転を制御したり、必要な情報を操作盤23に表示させるようになっている。そして、各単位モジュール11〜15は、互いの架台11a〜15aが結合された後、電源ケーブル24,データ通信ケーブル25及びエア配管26などが相互に接続されることで自動化設備システム27が構成され、全体が動作可能となる。
また、制御装置11dには、例えばLANなどの通信用ネットワークを介してサーバ(記憶手段)28が接続されており、当該サーバ28に用意されている単位モジュールデータベース(DB)29にアクセスが可能となっている。単位モジュールDB29には、各単位モジュールを特定する番号や、既にティーチング済みである場合はティーチングデータ、搭載されている装置の制御プログラムや、前記装置などに対してロボットが動作を行なうための制御プログラム(制御ソフト11c〜15c)などが記憶されている(図7参照)。
【0023】
図4及び図5は、本発明の自動化設備システムのより実体的な構成の一例を示すものである。図4(a)に示すように、この場合、工業用ロボット31は、直線状の走行軌道32に沿って移動可能に構成される架台33上に搭載されており、これらがベース架台34を構成している。そして、その他の装置が夫々1つずつ搭載されているユニット架台35〜41があり、それらの内の例えばユニット架台35〜39を選択して、ベース架台34における走行軌道32の両側に配置して結合した状態を、図4(b)に示す。
【0024】
図4(c)は、図4(b)の一部を拡大して示すものである。走行軌道32の下方側には、走行軌道32と平行に配置されるフレーム42があり、そのフレーム42と直交する2本のガイドレール43a,43bがある。これら2本のガイドレール43a,43bは、ユニット架台をベース架台34側の結合位置に導くためのレールであり、それらの配置間隔は、ユニット架台の幅寸法に等しく設定されている。そして、フレーム42には、ユニット架台を結合位置に連結するための位置決めピン(係合手段)44a,44bが配置されている。
【0025】
図5(a)は、ユニット架台39がベース架台34に結合された状態を示している。また、このように両者を連結する場合は、ベース架台34側に用意されている各種の接続用コネクタ45a〜45eの内、ユニット架台39に搭載されている装置を動作させるのに必要なものを適宜選択して(例えば、図2に示したような電源,データ,エアなど)、ユニット架台39のコネクタ46b〜46dを接続する。
図5(b)は、図5(a)の一部を拡大して示すものである。ユニット架台39の下端には移動用のホイール47が設けられており、ユニット架台39は、ホイール47によって床上を移動可能となっている。また、ユニット架台39の両側部には、ベース架台34側のガイドレール43a,43bの上面側に接して回転することでユニット架台39を移動させるためのローラ(移動手段)48が、支持板49に配置されている(図5では一方側のみ図示)。
【0026】
更に、ユニット架台39がガイドレール43a,43bに沿って導かれ、ベース架台34側のフレーム42に当接する部分には、位置決めピン44a,44bを受け入れて両者を係合し、位置決めするためのホール(係合手段)50a,50bが当接板51に形成されている。そして、ベース架台34側の固定金具52をユニット架台39側に装着することで、両者を結合した状態で固定するようになっている。
【0027】
次に、本実施例の作用について図6及び図7も参照して説明する。図6は、自動化設備システムを構成するプロセスを示すフローチャートである。また、図7には、システムの構成作業の一部を概念的なイメージで示している。先ず、システムの仕様に応じて必要となる装置が搭載されている単位モジュールを選択し、図4に示すように、各ユニット架台をベース架台側の各位置(ステーション)に移動させる(ステップS1)。そして、ユニット架台をガイドレールに乗せてベース架台側に押し込み(ステップS2)ベース側のピンとユニット側のホールとを係合させて位置決めすると(ステップS3)、固定金具によって各ユニット架台を固定する(ステップS4)。それから、各ユニット架台の電源線,通信データ線,エア配管などをベース架台に接続する(ステップS5)。以上でハードウエア的な設定作業は終了する。
【0028】
上記作業は、図7では(a)→(b)に対応しており、遊休場にプールされている単位モジュール(ユニット架台)より必要なもの(例えばM1〜M6)を選択し、ベース架台のステーションST1〜ST6に配置する。また、図7(c)には、単位モジュールデータの内部構造を示す。ここで、ST1〜ST6のワーク座標系とは、単位モジュールがステーションST1〜ST6の何れに配置された場合でも対応できるように、予めティーチングしておいた3点(P1〜P3)の座標データが記憶されているものである(ティーチングが1回も行われていない場合、これらはブランクとなっている)。
【0029】
また、単位モジュールデータとして記憶されている「プログラムデータ」は、各架台上の座標系であるワーク座標系において動作するようにプログラミングされた(1)各架台に搭載されている装置の制御プログラムと、(2)ロボットの制御プログラムとで構成されている。即ち、図1乃至図3に示す構成に対応させれば、(1)は制御ソフト12c〜15cの何れかに対応し、(2)はロボット11bの制御ソフト11cを、各単位モジュールの部分に分割したファイルの1つとなる。
【0030】
続いて、ソフトウエア的な設定作業を行う。先ず、制御装置11dは、作業者が操作盤23より入力して番号を指定した各単位モジュールについてのデータを単位モジュールDB29より取得すると(ステップS6)、取得したデータを設備プロジェクトにインポートする(ステップS7)。そして、その設備プロジェクト内においてデータリンクが構築される(ステップS8)。
上記作業は、図7では(a)→(d),(e)に対応しており、例えば、単位モジュールDB29より単位モジュールM1,M3,M5のデータを選択すると、それらは、上位処理に対して従属するように位置付けられる。ここで、「上位処理」とは、システム全体を統括的に制御するためのプログラムであり、図3に示す設備管理タスク群20の設備全体制御タスク22に相当する。
【0031】
次に、上位処理において、各単位モジュールが夫々配置されたステーションに応じた座標データをモジュールデータより取得し設定する(ステップS9)。即ち、ロボット11bの制御ソフト11cは、ローカルなワーク座標系によってプログラミングされているので、各単位モジュールの座標データを取得すれば、夫々のワーク座標系をロボット11bの座標系を基準としてグローバルに位置付けることができ、ロボット11bの動作が可能となる。それから、メインフロー(即ち、各単位モジュールに対応するロボットプログラムをどのような順序で起動するか、など)のプログラミングを行う(ステップS10)。そして、完成したメインフローに従い設備システムを動作させ、その確認を行う(ステップS11)。以上で、一連の設定作業が終了する。
【0032】
以上のように本実施例によれば、工業用ロボット11bを含む複数の装置12b〜15bを、夫々の架台11a〜15aに予め搭載し、それらの複数の架台11a〜15aを相互に結合することで自動化設備システムを構成するので、複数の架台11a〜15aの組み合わせによって設備システムを柔軟に構成することが可能となる。また、夫々の架台11a〜15aのサイズは予め把握されるので、システム全体のサイズがどの程度になるのかも容易に予測できる。
そして、工業用ロボット11bの制御プログラムを、各架台12a〜15aについて設定されている座標系(基準位置)に基づく動作としてプログラミングし、サーバ28の単位モジュールDB29に記憶するので、工業用ロボット11bに対しては、システムの構成後に各架台12a〜15aの座標系の情報を教示すれば、サーバ28に記憶されている制御ソフト11cに基づいて動作させることが可能となる。従って、システムを構成して稼動させるまでのセットアップ時間を大幅に短縮し、作業の効率化を図ることができる。
【0033】
また、本実施例によれば、架台の1つを工業用ロボット11bが搭載されるベース架台34とし、そのベース架台34を中心としてその他のユニット架台35〜39を結合するようにしたので、ロボット11bを中心とする自動化設備システムの構成が容易となる。加えて、電源線や通信線、エア配管などの接続も、予め定められた位置で用意に行うことができる。
そして、ベース架台34と各ユニット架台35〜39と夫々設けられる位置決めピン44a,44bとホール50a,50bとを係合させれば両者の結合位置が定まるので、位置合わせを極めて簡単に行うことができる。更に、ベース架台34側に設けられるガイドレール43a,43bに沿ってユニット架台側のローラ48を移動させることで、ユニット架台をベース架台34側の結合位置に容易に導くことができる。
【0034】
(第2実施例)
図8は本発明の第2実施例を示すものであり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分についてのみ説明する。図8は、第1実施例の図4(b)相当図である。第2実施例では、各ユニット架台35〜39にRFIDタグ(記憶手段)61〜65が配置されており、ベース架台34上のロボット31のアーム先端部には、タグリーダ(読取り手段)66が配置されている。
各IDタグ61〜65には、第1実施例では単位モジュールDB29に一括して記憶されていた単位モジュールデータが、各各ユニット架台35〜39毎に分割されて記憶されている。そして、タグリーダ66により電波信号を介して読取られたIDタグ61〜65のデータは、例えばシリアル通信によってベース架台34側に配置されている制御装置(図2における11dに相当,図示せず)に送信されるようになっている。
【0035】
即ち、第1実施例において図6に示した設定作業のプロセスでは、ステップS6において単位モジュールDB29にアクセスを行い各モジュールデータを得ることに替えて、ロボット31を順次移動させ、アーム先端のタグリーダ66によって各IDタグ61〜65のデータを読取ることになる。尚、この時点で各ユニット架台35〜39の正確な位置情報は得られていないが、タグリーダ66は電波信号を利用してデータを読取るので、概略的な位置情報があれば読み取りは可能である。
【0036】
以上のように第2実施例によれば、各ユニット架台35〜39にIDタグ61〜65を備え、それらのIDタグ61〜65に夫々記憶されている単位モジュールデータを、ベース架台34上のロボット31に取り付けられたタグリーダ66によって読取るようにした。即ち、各装置のハードウエアと、そのハードウエアを制御するためのプログラムとが予め一体となっているので、両者マッチングさせる作業は不要となり、制御プログラムを用意するためのセットアップ時間も短縮することができる。
そして、IDタグ61〜65には、制御プログラムだけでなく、夫々の座標系についてのティーチングデータも記憶するので、動作開始前に毎回ティーチングを行う必要はなく、作業をより効率的に行うことができる。また、IDタグ61〜65に、各架台35〜39に搭載されている装置を動作させるための制御プログラムも夫々記憶し、ベース架台34側に、各ユニット架台に搭載されている装置も統括制御する制御装置を備えるので、ユニット架台35〜39側に、夫々の搭載装置を制御するための制御装置を分散して配置する必要はなくなり、構成をより簡単にすることができる。
【0037】
(第3実施例)
図9乃至図11は本発明の第3実施例を示すものである。第3実施例では、ロボット31のアーム先端部に、CCDカメラ(視覚認識手段)67と、距離センサ(距離測定手段)68とを備える。尚、図9においては、図示の都合上それらの配置関係を概念的に示している。そして、それらを使用することで、ロボット31に対するティーチング作業を簡略化する。即ち、架台上面には、ティーチングを行うための測定点P1〜P3がマーキングされており、通常は、ロボット31のアーム先端を各測定点に接触させることでティーチングを行う。
【0038】
これに対して、第3実施例では、CCDカメラ67によって3つの測定点P1〜P3を一括して撮像することでそれらの2次元的な位置を把握し、また、距離センサ68によって測定点P1〜P3の垂直方向距離を取得する。距離センサ68は、例えば赤外線の反射光によって測定対象までの距離を測定するものである。そして、夫々取得されたデータは、第2実施例と同様に、シリアル通信線を介してベース架台34側の制御装置69に送信されるようになっている。
【0039】
図10には、第3実施例におけるティーチング(3次元座標取得処理)の手順をフローチャートで示す。先ず、ロボット31のアームを、CCDカメラ67が測定点P1〜P3を一括して撮像可能となる位置まで移動させ(ステップS21)、それらを撮像させる(ステップS22)。すると、制御装置69は、撮像された画像データをパターン認識することで測定点P1〜P3を特定して、それらの2次元座標値(x,y)を取得する(ステップS23)。尚、測定点P1は座標原点であり、測定点P2はP1を基準とするX軸方向を示し、測定点P3を得ることで、P1,P2とに基づきY軸方向が特定される。
【0040】
次に、制御装置69は、例えば測定点P1の2次元座標位置にロボット31のアームを移動させ(ステップS24)、測定点P1までの垂直方向距離を測定する(ステップS25)。即ち、当該距離から測定点P1のZ軸座標値が得られる。そして、測定点P2,P3についても同様の処理を繰り返し、全点の測定が終了すると(ステップS26,「YES」)、測定点P1〜P3について得られた3次元座標値より、ユニット架台の座標系を認識する(ステップS27)。
図11には、ロボット31の座標系と、ユニット架台の座標系(ワーク座標系)との関係を示す。即ち、ユニット架台の取り付け状態によっては、ワーク座標系がロボット座標系に対して平行になっておらず、傾きを生じている場合もある。しかし、CCDカメラ67及び距離センサ68により測定点P1〜P3の3次元座標値を取得すれば、ワーク座標の傾き状態も把握することができ、その状態に合わせてロボット31を動作させることが可能となる。
【0041】
以上のように第3実施例によれば、ベース架台34に搭載されるロボット31のアーム先端にCCDカメラ67及び距離センサ68を備え、それらを使用することで、ロボット31に対するユニット架台の座標情報をティーチングするようにした。従って、各測定対象点のティーチングを工業用ロボットに一々行う必要はなく、ロボット31のアームを、CCDカメラ67が1つの架台上の全測定点が読取れるように移動させれば、後は自動的にそれらの3次元座標値を得ることができるので、ロボット31に各ユニット架台の座標系を認識させる作業がより簡単になる。
また、3つの測定点P1〜P3について3次元座標値を得るので、最小限の測定点により、各ユニット架台の基準位置のみならず、ワーク座標系の傾きなどの情報も取得することができる。
【0042】
本発明は上記し又は図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形が可能である。
ベース架台34側に、ガイドレール43a,43bは必要に応じて設ければ良い。
係合手段は、位置決めピン44a,44b及びホール50a,50bに限ることなく、ベース架台とユニット架台とを係合させる構成であればどのようなものでも良い。
各単位モジュールに、夫々の制御装置が分散して配置されており、何れかの単位モジュールに配置される制御措置が、それらを統括的に制御する形態であっても良い。
例えば、ロボット座標系に対するワーク座標系の傾きが想定されないような場合は、測定点を2点,若しくは1点にしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施例であり、自動化設備システムの構成をイメージ的に示す図
【図2】自動化設備システムを構成した場合における各単位モジュール間の接続状態を示す図
【図3】制御装置の概略構成をソフトウエア的な構成を中心に示す図
【図4】自動化設備システムのより実体的な構成の一例を示す斜視図であり、(a)は結合前の状態、(b)は結合後の状態、(c)は(b)の一部を拡大して示す図
【図5】(a)はユニット架台がベース架台に結合された状態、(b)は(a)の一部を拡大して示す図
【図6】自動化設備システムを構成するプロセスを示すフローチャート
【図7】システムの構成作業の一部を概念的なイメージで示す図
【図8】本発明の第2実施例を示す図4(b)相当図
【図9】本発明の第3実施例であり、ロボットが各架台上の測定点の3次元座標を取得する状態を説明する図
【図10】ティーチングの手順を示すフローチャート
【図11】ロボットの座標系と、ユニット架台の座標系との関係を示す図
【図12】従来技術を示す図1相当図
【符号の説明】
【0044】
図面中、11はロボットモジュール、11aは架台、11bは工業用ロボット、11cは制御ソフト(制御プログラム)、11dは制御装置、12はターンテーブルモジュール、12aは架台、12bはターンテーブル、12cは制御ソフト、13は部品供給モジュール、13aは架台、13bは部品供給装置、13cは制御ソフト、14はコンベアモジュール、14aは架台、14bはワーク搬送装置、14cは制御ソフト、15は計測モジュール、15aは架台、15bはワーク計測装置、15cは制御ソフト、27は自動化設備システム、28はサーバ(記憶手段)、31は工業用ロボット、33は架台、34はベース架台、35〜41はユニット架台、43a,43bはガイドレール、44a,44bは位置決めピン(係合手段)、48はローラ(移動手段)、50a,50bはホール(係合手段)、61〜65はRFIDタグ(記憶手段)、66はタグリーダ(読取り手段)、67はCCDカメラ(視覚認識手段)、68は距離センサ(距離測定手段)、69は制御装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの工業用ロボットを含む複数の装置を組み合わせて所定の作業を実行させるために構成される自動化設備システムであって、
前記複数の装置の1つが夫々搭載される複数の架台と、
これら複数の架台に搭載されている装置に対して前記工業用ロボットが行なう動作を、前記各架台について設定されている基準位置に基づく動作としてプログラミングした制御プログラムが記憶されている記憶手段とを備え、
前記複数の架台を相互に結合することで構成されることを特徴とする自動化設備ステム。
【請求項2】
前記複数の架台の1つは、前記工業用ロボットの1つが搭載されており、その他の架台(ユニット架台)が結合可能に構成されるベース架台として構成され、
前記ベース架台に対して前記ユニット架台を結合する際に位置合わせを行うための位置合わせ手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の自動化設備システム。
【請求項3】
前記位置合わせ手段は、前記ベース架台と各ユニット架台との結合位置において両者を係合させるように、両者側に夫々設けられる係合部材で構成されていることを特徴とする請求項2記載の自動化設備システム。
【請求項4】
前記位置合わせ手段は、
前記ベース架台側に設けられ、各ユニット架台を前記結合位置へ導くためのガイドレールと、
前記ユニット架台側に設けられ、前記ガイドレールに沿って移動するための移動手段とを備えることを特徴とする請求項3記載の自動化設備システム。
【請求項5】
前記ユニット架台は、夫々前記記憶手段を備え、
前記記憶手段には、前記制御プログラムの内自身に搭載されている装置に対して前記工業用ロボットが行なう動作のプログラムファイルが夫々記憶されており、
前記ベース架台は、前記記憶手段に記憶されているプログラムファイルを読取るための読取り手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の自動化設備システム。
【請求項6】
前記記憶手段はIDタグで構成され、
前記読取り手段はタグリーダで構成されていることを特徴とする請求項5記載の自動化設備システム。
【請求項7】
前記記憶手段には、前記基準位置のティーチングデータも記憶されていることを特徴とする請求項5又は6記載の自動化設備システム。
【請求項8】
前記記憶手段には、自身に搭載されている装置を動作させるための制御プログラムも夫々記憶されており、
前記ベース架台は、前記読取り手段によって前記制御プログラムも読取ることで、各ユニット架台に搭載されている装置についても統括的に制御を行うための制御装置を備えていることを特徴とする請求項5乃至7の何れかに記載の自動化設備システム。
【請求項9】
前記ベース架台は、視覚認識手段と、距離測定手段とを備え、
前記視覚認識手段によって、各ユニット架台に夫々設定されている複数の測定点の位置を読取り、
前記距離測定手段によって、前記複数の測定点についての垂直方向距離を読取り、
前記視覚認識手段及び前記距離測定手段の読取り結果に基づき決定される3次元座標によって、各ユニット架台の基準位置を原点とする座標系を認識するように構成されていることを特徴とする請求項2乃至8の何れかに記載の自動化設備システム。
【請求項10】
前記視覚認識手段は、前記工業用ロボットの可動部先端側に配置されたカメラであることを特徴とする請求項9記載の自動化設備システム。
【請求項11】
前記距離測定手段は、前記工業用ロボットの可動部先端側に配置された距離センサであることを特徴とする請求項9又は10記載の自動化設備システム。
【請求項12】
前記ユニット架台には、前記測定点が3点設定されていることを特徴とする請求項9乃至11の何れかに記載の自動化設備システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−154924(P2006−154924A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340448(P2004−340448)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】