説明

自動取引処理装置、および自動取引処理システム

【課題】取引処理の実行中に障害が発生し、この取引処理を途中で中断した場合に、利用者と金融機関との間で無用なトラブルが発生するのを防止することができる自動取引処理装置を提供する。
【解決手段】ATM1は、利用者が紙幣入出金口12aに紙幣を投入した後に、一次側電源の供給停止等により、取引を途中で停止した場合、この時点で、投入紙幣について計数した金種毎の枚数とを含む障害発生時取引情報を記憶部に記憶する。また、ATM1は、この処理途中の取引に対して識別コード(障害取引コード)を作成し、これも障害発生時取引情報の1つとして記憶部に記憶させてもよい。さらに、ATM1は、一次側電源の供給が開始されたことを検知したとき、未計数であった投入紙幣を金種毎に計数し、装置本体の前回の停止時に実行中であった取引処理における投入紙幣の金種毎の枚数を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、入金口に投入された投入紙幣を金種毎に計数し、その計数結果に基づいて取引を処理する自動取引処理装置、取引途中に障害が発生し、途中で停止された取引を 継続処理する自動取引処理装置、および、これらの自動取引処理装置を適用した自動取引処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銀行等の金融機関は、利用者の入力操作に応じて、各種取引を処理する現金自動預け払い機(以下、ATMと言う。)を店舗等に設置している。ATMが処理する取引には、周知のように、紙幣を利用者が投入する取引(入金取引や振込取引)、紙幣を利用者に放出する取引(出金取引)、および紙幣の投入、放出をともなわない取引(残高照会取引や振替取引)が行える。
【0003】
ATMは、取引処理の実行中に障害が発生すると、本体の動作を停止する。これにより、実行中の取引は、最後まで処理されることなく、途中で停止される。ATMは、実行 中の取引を途中で停止した場合、本体内部に取り込んでいるキャッシュカード(以下、単にカードと言う。)や、投入紙幣を利用者に返却することができないことがある。そこで、取引処理の実行中に障害が発生すると、障害発生したことを示す証明書を発行するATMが提案されている(特許文献1、2等参照)。利用者は、ATMが発行した証明書を窓口へ提示することにより、ATMから返却されなかったカードや投入紙幣の返却を受けることができる。
【0004】
また、障害が発生したときに、
(1)その場で係員の到着を待ち、到着した係員からカードや投入紙幣の返却を受ける、
(2)係員の到着を待たず、後で、カードや投入紙幣の返却を窓口等で受ける、
のいずれかを利用者に選択させるATMが提案されている(特許文献3参照)。このATMでは、利用者が自身の都合に合わせて、上記(1)、または(2)の選択が行え、利便性の向上が図れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−132731号公報
【特許文献2】特開2008−217101号公報
【特許文献3】特開2009− 70115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ATMは、入金取引や振込取引等の利用者が紙幣を紙幣入出金口に投入する取引では、紙幣入出金口に投入された入金紙幣を金種毎に計数し、投入金額を確認している。ATMは、停電等で一次側電源の供給が停止すると、紙幣入出金口に投入された紙幣の計数途中であった場合、投入金額の確認ができていない状態で取引を停止することになる。
【0007】
また、このように、取引処理の実行中に障害が発生し、この取引処理を途中で停止した場合、係員が滞留している投入紙幣をATMから取り出す。このため、利用者が投入金額(紙幣入出金口に投入した紙幣の合計金額)を勘違いしていたり、係員がATMから取り出した紙幣を不正に抜き取った場合に、金額が一致せず、利用者と金融機関との間でトラブルが発生するという問題があった。
【0008】
この発明の目的は、取引処理の実行中に障害が発生し、この取引処理を途中で停止した場合に、利用者と金融機関との間における、無用なトラブルの発生が抑えられる自動取引処理装置を提供することにある。
【0009】
また、この発明は、取引処理の実行中に障害が発生し、途中で停止した取引を処理する自動取引処理装置を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、この発明は、上述の自動取引処理装置を適用した自動取引処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の自動取引処理装置は、上記課題を解決し、その目的を達するために、以下のように構成している。
【0012】
供給状態検知手段は、電源ラインを介して装置本体に供給される一次側電源(所謂、商用電源)の供給状態を検知する。停電時停止処理手段は、装置本体の運用時に、供給状態検知手段が一次側電源の供給が停止したことを検知すると、動作電源の供給をバッテリに切り換え、装置本体の停止処理を行う。バッテリは、装置本体の停止処理が行える容量であればよく、比較的小型のもので対応できる。このバッテリは、停電時に装置本体を故障させることなく、安全に停止させるためのものである。また、起動手段は、装置本体の停止時に、供給状態検知手段が一次側電源の供給が開始されたことを検知したとき、装置本体を起動する起動処理を実行する。
【0013】
また、停電時停止処理手段は、取引処理の実行中に、供給状態検知手段が一次側電源の供給停止を検知したタイミングが、入金口への投入紙幣の投入後のタイミングであれば、装置本体を停止したときの処理状況と、投入紙幣について計数した金種毎の枚数とを含む障害発生時取引情報を記憶部に記憶する。装置本体を停止したときの処理状況は、処理途中で停止した取引の種別や、停止時に実行していた処理ステップ等である。また、この処理途中の取引に対して識別コード(障害取引コード)を作成し、これも障害発生時取引情報の1つとして記憶部に記憶させてもよい。記憶部は、不揮発性のメモリを用いればよい。
【0014】
さらに、起動手段は、状態検知手段が一次側電源の供給が開始されたことを検知したとき、記憶部が障害発生時取引情報を記憶していれば、装置本体の前回の停止時に実行中であった取引処理を再開し、未計数であった投入紙幣を金種毎に計数し、装置本体の前回の停止時に実行中であった取引処理における投入紙幣の金種毎の枚数を得る。
【0015】
これにより、停電等による一次側電源の供給停止にともない、途中で停止した取引の投入紙幣を、人手をかけることなく計数し、その金額を確認することができる。したがって、係員の手間が削減できる。また、人手をかけずに、投入紙幣にかかる金額を確認するので、利用者と金融機関との間における、無用なトラブルの発生が抑えられる
また、起動手段が得た投入紙幣の計数結果を含む取引情報(障害取引情報)を上位装置に通知する機能を設けてもよい。
【0016】
この場合、上位装置からこの障害取引情報を取得し、取得した障害取引情報に基づく取引を利用者との間で処理させる構成としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、入金取引時に装置本体に動作電源を供給している一次側電源が停電等で供給停止する障害が発生したときに、利用者と金融機関との間における無用なトラブルの発生が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の実施形態である自動取引処理システムの構成を示す図である。
【図2】ATMの外観を示す概略図である。
【図3】ATMの主要部の構成を示す図である。
【図4】ホスト装置の主要部の構成を示す図である。
【図5】入金取引処理を示すフローチャートである。
【図6】停電時停止処理を示すフローチャートである。
【図7】停電時停止処理を示すフローチャートである。
【図8】起動処理を示すフローチャートである。
【図9】障害発生取引処理を示すフローチャートである。
【図10】表示画面例を示す図である。
【図11】表示画面例を示す図である。
【図12】表示画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態である自動取引処理システムについて説明する。
【0020】
図1は、この発明の実施形態である自動取引処理システムの構成を示す図である。この自動取引処理システムは、複数の現金自動預け払い機1(以下、ATM1と言う。)をホスト装置2に、専用回線等でデータ通信可能に接続している。ATM1は、金融機関の店舗や、コンビニエンスストア等に設置される。ATM1は、利用者の入力操作に応じて、入金取引や出金取引等の各種取引を処理するとともに、処理した取引にかかる取引内容をホスト装置2に通知する。ホスト装置2は、金融機関のセンタに設置される。ホスト装置2は、金融機関が開設した口座毎に、口座名義人の氏名、住所等の個人情報、その口座の残高や、取引履歴等を含む口座管理情報を記憶し、管理する。
【0021】
図2は、ATMの外観を示す概略図であり、図3はATMの主要部の構成を示す図である。ATM1は、主制御部10と、表示・操作部11と、紙幣処理部12と、硬貨処理部13と、カード・明細書処理部14と、通帳処理部15と、生体情報読取部16と、通信部17と、電源部18と、を備えている。主制御部10は、ATM1本体各部の動作を制御し、利用者が要求した取引を処理する。
【0022】
表示・操作部11は、本体正面に設けた表示器11a、およびこの表示器11aの画面上に貼付したタッチパネル11b等を有している。表示・操作部11は、利用者に対する操作案内画面を表示器11aに表示する。また、表示・操作部11は、タッチパネル11bの押下位置を検知することにより、暗証番号や取引内容(取引種別、入出金金額等)にかかる利用者の入力操作を検出する。
【0023】
紙幣処理部12は、入出金紙幣を処理する。本体正面には、入出金紙幣を収納する紙幣入出金口12aを設けている。この紙幣入出金口12aには、シャッタが設けられている。また、紙幣入出金口12aには、入金紙幣、出金紙幣、および返却紙幣の収納場所を区別する仕切り板が設けられている。紙幣処理部12は、このシャッタの開閉により、紙幣入出金口12aに対する紙幣の投入や取り出しを制限する。また、紙幣処理部12は、ATM1本体内部に設けられている紙幣搬送路に沿って紙幣を搬送する。紙幣搬送路は、ATM1本体に収納している、金種別カートリッジ、回収カートリッジ、一次保留部、紙幣入出金口12aとを結んでいる。また、紙幣搬送路の途中には、搬送している紙幣毎に、その紙幣の金種や真偽を識別する紙幣識別部(不図示)を有している。紙幣識別部は、紙幣から読み取った光学パターンや、磁気パターン等に基づいて、金種や真偽を識別する。
【0024】
硬貨処理部13は、本体正面に設けた硬貨入出金口13aと、本体内部に収納されている硬貨カートリッジと、の間に形成された硬貨搬送路に沿って硬貨を搬送する。また、硬貨処理部13は、硬貨搬送路に沿って搬送している硬貨毎に、金種、および真偽を識別する硬貨識別部を有している。
【0025】
カード・明細書処理部14は、本体正面に設けたカード挿入口14aに挿入されたキャッシュカード(以下、単にカードと言う。)を取り込み、このカードの磁気ストライプに記録されているカード情報(金融機関番号、店舗番号、口座番号等)の読み取りや、カード情報の書き換え等を行う。また、挿入されたカードがICカードである場合には、必要に応じて、そのカードのICチップに記録されているデータの読み取りや、書き換えも行う。ICチップには、このカードの所有者である利用者の生体情報(登録情報)等が記録されている。さらに、カード・明細書処理部14は、取引内容を帳票に印字する印字部(不図示)を有する。カード・明細書処理部14は、取引内容を印字した帳票を本体正面に設けた明細書放出口14bに放出する。
【0026】
通帳処理部15は、本体正面に設けた通帳挿入口15aに挿入された通帳を取り込み、この通帳に対して取引履歴を印字する印字部(不図示)を有している。また、通帳処理部15は、取り込んだ通帳のページを捲るページ捲り機構や、通帳に印刷されているページ番号を示すバーコードを読み取るバーコードリーダ、通帳に貼付されている磁気ストライプに記録されている通帳情報(金融機関番号、店舗番号、口座番号等)を読み取る磁気ヘッド等も有している。
【0027】
また、生体情報読取部16は、本体正面に設けた生体情報読取センサ16aを有している。この生体情報読取センサ16aは、利用者の指静脈パターンを読み取る。ここでは、生体情報読取センサ16aとして、指静脈パターンを読み取るセンサを例にしているが、掌静脈、虹彩、網膜等の他の種類の生体情報を読み取るセンサとしてもよい。生体情報読取部16は、生体情報読取センサ16aで読み取った利用者の生体情報(読取情報)と、カードのICチップに記録されている生体情報(登録情報)と、を照合し、その類似度から利用者とカードの所有者とが同一人物であるかどうかを認証する。通信部17は、専用回線等を介して、金融機関のホスト装置2との通信を制御する。
【0028】
さらに、電源部18は、ATM1本体各部に対して、動作電源を供給する。電源部18は、接続されている配電盤(不図示)から供給されている一次側電源(商用電源)により、ATM1本体各部に動作電源を供給する。電源部18は、一次側電源の供給が停止されたときに、装置本体を故障させることなく、安全に停止させるシャッタダウン処理を行うために、一時的にATM1本体各部に動作電源を供給するバッテリ18aを有している。さらに、電源部18は、一次側電源の供給状態を検知する供給状態検知機能を有している。
【0029】
図4は、ホスト装置の主要部の構成を示す図である。ホスト装置2は、制御部20と、通信部21と、記憶部22と、を有している。制御部20は、ホスト装置2本体各部を制御する。通信部21は、専用回線等を介して、ATM1との通信を制御する。記憶部22は、金融機関が開設した口座毎に、口座名義人の氏名、住所等の個人情報、その口座の残高や、取引履歴等を含む口座管理情報を記憶する。また、記憶部22は、後述する障害取引情報も記憶する。
【0030】
以下、この自動取引処理システムの動作について説明する。
【0031】
ATM1は、周知のように、利用者が紙幣を投入する取引(入金取引や振込取引)、紙幣を利用者に放出する取引(出金取引)、および紙幣の投入、放出をともなわない取引(残高照会取引や振替取引)が行える。
【0032】
利用者が紙幣を投入する取引として、入金取引を例にして、ATM1の動作を説明する。図5は、ATMにおける入金取引処理を示すフローチャートである。ATM1は、利用者により入金取引処理が選択されると、この図4に示す処理を実行する。ATM1は、今回の入金取引の対象になる口座の通帳、またはカードを受け付ける(s1)。ATM1は、受け付けた通帳、またはカードに記録されている口座情報により、今回の入金取引の対象になる口座を特定する。ATM1は、通帳、カードを受け付けると、紙幣入出金口12aのシャッタを開し、入金紙幣の投入を受け付ける(s2)。
【0033】
ATM1は、紙幣入出金口12aのシャッタを閉し、投入された入金紙幣を金種毎に計数する計数処理を行う(s3)。s3にかかる計数処理は、紙幣入出金口12aに投入された入金紙幣を紙幣搬送路に1枚ずつ繰り出し、紙幣識別部に搬送する。ATM1は、入金紙幣毎に、紙幣識別部で金種、および真偽を識別する。ATM1は、金種、および真券であることを識別した紙幣を一次保留部に搬送し、収納する。一方、金種、または真券であることの少なくとも一方が識別できなかった紙幣を、紙幣入出金口12aに戻す。ATM1は、一次保留部に収納した紙幣について、金種毎の枚数を計数しながら記憶する。
【0034】
なお、ATM1は、金種、または真券であることの少なくとも一方が識別できず、紙幣入出金口12aに戻した紙幣があれば、紙幣入出金口12aのシャッタを開し、利用者に返却する。
【0035】
ATM1は、s3にかかる計数処理で、入金紙幣の合計金額を入金金額として表示器11aに表示する(s4)。ATM1は、入金紙幣の追加投入、入金金額の確認入力、今回の入金取引の取消入力のいずれかが利用者により入力されるのを待つ(s5〜s7)。
【0036】
ATM1は、追加投入にかかる入力を受け付けると、s2に戻り、上述した処理を繰り返す。また、ATM1は、取消入力を受け付けると、一次保留部に収納している入金紙幣を紙幣搬送路に繰り出し、紙幣入出金口12aに搬送し、収納する返金処理を行う(s8)。ATM1は、一次保留部に保留していた紙幣を、全て紙幣入出金口12aに搬送すると、紙幣入出金口12aのシャッタを開し、利用者に返却する。また、s1で受け付けた通帳、またはカードを放出し、利用者に返却する(s9)。
【0037】
ATM1は、s6で入金金額の確認入力を受け付けると、入金金額を確定し、入金処理を行う(s10)。s10では、今回の入金取引の内容(取引口座の口座番号、入金金額等)をホスト装置2に通知する処理である。また、ATM1は、s1で受け付けた通帳、またはカードを放出し、利用者に返却する(s11)。このs11では、通帳を受け付けている場合、この通帳に今回の入金取引の取引内容を印字する。一方、通帳を受けていない場合、今回の入金取引の内容を帳票に印字し、その帳票を放出する(s12、s13)。
【0038】
その後、ATM1は、一次保留部に収納している紙幣を紙幣搬送路に1枚ずつ繰り出し、紙幣識別部で金種を識別し、該当する金種の金種別カートリッジに搬送し、収納する(s14)。
【0039】
ATM1は、運用時に、電源部18において一次側電源の供給停止を検知すると、停電時停止処理を行う。図6、および図7は、この停電時停止処理を示すフローチャートである。
【0040】
ATM1は、運用時に、電源部18において一次側電源の供給停止を検知すると、バッテリ18aによる動作電源の供給を開始する(s21)。ATM1は、現時点が何らかの取引処理の実行中であるかどうかを判定する(s22)。取引処理の実行中でなければ、ATM1本体の起動停止処理(シャットダウン処理)を実行し(s23)、本処理を終了する。
【0041】
ATM1は、取引処理の実行中であれば、実行中の取引の種別が紙幣の投入、放出をともなわない種別であるかどうかを判定する(s24)。ATM1は、紙幣の投入、放出をともなわない種別の取引であると判定すると、カードや通帳を受け付けているかどうかを判定する(s25)。ATM1は、カードや通帳を受け付けていれば、そのカードや通帳を放出し、利用者に返却する(s26)。その後、ATM1は、s23で本体の起動停止処理を実行し、本処理を終了する。
【0042】
この場合、今回実行していた取引処理は完了していないが、紙幣の投入、放出をともなわない種別の取引であるので、この取引処理を無効とみなすことにより、特に問題が生じることはない。また、このとき、「障害の発生により、取引が継続できません。申し訳ありません。」等のメッセージを表示器11aに一時的に表示し、その後、s23で起動停止処理を実行してもよい。
【0043】
ATM1は、実行中の取引の種別が紙幣の放出をともなう種別(出金取引)であれば(s27)、紙幣搬送路における紙幣の搬送を停止する(s28)。この種別の取引は、金種別カートリッジに収納している紙幣を紙幣入出金口12aに搬送し、収納する。そして、紙幣入出金口12aに収納した紙幣を利用者に対して放出する。s28では、紙幣搬送路における紙幣の搬送を実行していない場合もあるが、紙幣搬送路における紙幣の搬送に要する電力消費が大きいことから、バッテリ18aの電力消費を抑えるために、後述する処理に先立って実行している。
【0044】
ATM1は、紙幣入出金口12aのシャッタを開したかどうかを判定する(s29)。s29では、利用者に対して放出紙幣の取り出しを許可したかどうかを判定している。ATM1は、シャッタを開したと判定すると、紙幣入出金口12aに収納されている紙幣の取り出しを利用者に指示する(s30)。s30では、表示器11aに紙幣の抜き取りを促すメッセージを表示する。ATM1は、紙幣入出金口12aに収納されている紙幣が全て抜き取られると、紙幣入出金口12aのシャッタを閉する(s31、s32)。
【0045】
ATM1は、カードを利用者に返却する(s33)。また、通帳を受け付けていれば、通帳に取引内容印字し、利用者に返却する(s34、s35)。通帳を受けていなければ、取引内容を印字した帳票を発行する(s36)。ATM1は、今回の取引内容をホスト装置2に通知し(s37)、s23で本体の起動停止処理を実行し、本処理を終了する。
【0046】
このように、ATM1は、s29で紙幣入出金口12aのシャッタを開したと判定した場合は、すなわち利用者に対して出金紙幣の放出を行っていると判定した場合、今回の取引処理を無効にすることなく、この取引を完了させてから、装置本体を停止させる。
【0047】
ATM1は、s29で紙幣入出金口12aのシャッタを開していないと判定すると、カードや通帳を受け付けているかどうかを判定する(s38)。ATM1は、カードや通帳を受け付けていれば、そのカードや通帳を放出し、利用者に返却する(s39)。さらに、ATM1は、障害発生時取引情報を作成し、これを主制御部10が有する不揮発性のメモリに記憶し(s40)、s23で本体の起動停止処理を実行し、本処理を終了する。s40では、この時点で、実行中であった取引の種別や、実行を停止したときの状態(処理ステップ)等を含む障害発生時取引情報を作成する。
【0048】
なお、s40で障害発生時情報を作成した取引処理については、紙幣を放出していないので、無効な取引とみなしても問題はない。
【0049】
ATM1は、s27で紙幣の放出をともなう種別の取引でない、すなわち紙幣の投入をともなう種別の取引である、と判定すると、紙幣搬送路における紙幣の搬送を停止する(s41)。この種別の取引処理では、上述した入金取引処理でも説明したように、利用者が投入紙幣を紙幣入出金口12aに投入している。
【0050】
ATM1は、紙幣入出金口12aのシャッタを開したかどうかを判定する(s42)。s42では、利用者に対して紙幣の投入を許可したかどうかを判定している。ATM1は、シャッタを開していない、すなわち利用者が紙幣を投入していない、と判定するとカードや通帳を受け付けているかどうかを判定する(s43)。ATM1は、カードや通帳を受け付けていれば、そのカードや通帳を放出し、利用者に返却する(s44)。その後、ATM1は、s23で本体の起動停止処理を実行し、本処理を終了する。
【0051】
この場合、今回実行していた取引処理は完了していないが、利用者が投入紙幣を紙幣入出金口12aに投入していないので、この取引を無効とみなしても、特に問題が生じることはない。また、このとき、「障害の発生により、取引が継続できません。申し訳ありません。」等のメッセージを表示器11aに一時的に表示し、その後、s23で起動停止処理を実行してもよい。
【0052】
ATM1は、s42で紙幣入出金口12aのシャッタを開したと判定すると、この取引を識別する障害取引コードを生成する(s45)。ATM1は、障害発生時取引情報を作成し、これを主制御部10が有する不揮発性のメモリに記憶する(s46)。s46で作成する障害発生取引情報は、この時点で、実行中であった取引の種別、取引の実行を停止したときの状態(処理ステップ)、投入紙幣について、取引を停止したときに計数していた金種毎の枚数、s45で生成した障害取引コードを含んでいる。
【0053】
ATM1は、s45で作成した障害取引コードを印字した帳票を発行し(s47)、s43以降の処理を実行する。この障害取引コードを発行した取引については、ATM1内に利用者の紙幣(投入紙幣)を取り込んでいるので、無効な取引とみなすことはできない。
【0054】
次に、ATM1における起動処理について説明する。図8は、起動処理を示すフローチャートである。ATM1は、電源部18に対する一次側電源の供給が開始されると、この起動処理を実行する。ATM1は、本体各部を起動する(s51)。ATM1は、本体各部が立ち上がると、障害発生時取引情報を記憶しているかどうかを判定する(s52)。ATM1は、s52で障害発生時取引情報を記憶していなければ、運用モードに移行し(s53)、本処理を終了する。s52では、前回の停止時に、処理途中で停止した取引があるかどうかを判定している。
【0055】
ATM1は、障害発生時取引情報を記憶していると、その障害発生取引情報にかかる取引の種別が紙幣の放出をともなう種別の取引であるか、紙幣の投入をともなう種別の取引であるかを判定する(s54)。ATM1は、紙幣の放出をともなう取引であれば、紙幣搬送路上に紙幣があるかどうかを判定する(s55)。紙幣搬送路上に紙幣があれば、その紙幣を一旦紙幣入出金口12aに搬送し、収納する(s56)。
【0056】
ATM1は、紙幣入出金口12aに紙幣があるかどうかを判定する(s57)。紙幣入出金口12aに紙幣があれば、その紙幣を紙幣識別で識別し、金種別カートリッジに搬送し、収納する(s58)。これにより、一次側電源の供給が停止したときに実行していた取引において、金種別カートリッジから繰り出した紙幣を、その金種別カートリッジに戻すことができる。
【0057】
ATM1は、障害発生時取引情報をクリアし(s59)、s53で運用モードに移行し、本処理を終了する。
【0058】
また、ATM1は、s54で紙幣の投入をともなう取引であると判定すると、紙幣入出金口12aに紙幣があるかどうかを判定する(s60)。紙幣入出金口12aに紙幣がなければ、紙幣搬送路上に紙幣があるかどうかを判定する(s61)。紙幣入出金口12aに紙幣があれば、投入紙幣の計数途中に実行中の取引を停止しているので、紙幣搬送路上にも紙幣がある。s60、s61では、未計数の投入紙幣の有無を判定している。
【0059】
ATM1は、未計数の投入紙幣があると、それらの紙幣の搬送を再開し、金種毎に枚数を計数する計数処理を再開する(s62)。ATM1は、計数処理が完了すると、投入紙幣について、一次側電源の供給が停止した時点で計数していた、金種毎の枚数と、一次側電源の供給が再開され、今回s62で再開した計数処理で計数した金種毎の枚数と、を含む、障害取引情報を作成する(s63)。また、この障害取引情報には、s45で生成した障害取引コードも含まれている。
【0060】
なお、計数処理では、投入紙幣を一時収納部に収納するが、計数処理の完了後に、金種別カートリッジ、または回収カートリッジに搬送し、収納する。
【0061】
ATM1は、s63で作成した障害取引情報をホスト装置2に通知し(s64)、s59、s53にかかる処理を行う。
【0062】
ホスト装置2は、ATM1から通知された障害取引情報を記憶部22に記憶する。
【0063】
また、ATM1は、運用時に、s45で障害取引コードを生成した取引(障害発生取引)を処理する機能を有している。図9は、障害発生取引の処理を示すフローチャートである。ATM1は、表示・操作部11において、障害発生取引処理の選択にかかる入力操作が行われると、図9に示す処理を実行する。
【0064】
ATM1は、利用者による障害取引コードの入力を受け付ける(s71)。利用者には、障害取引コードを印字した帳票を、上述のs47で発行している。また、この操作を行う利用者を特定し、セキュリティを確保するために、利用者のカードを受け付けるようにしてもよい。
【0065】
ATM1は、障害取引コードが入力されると、ホスト装置2に対して、該当する障害取引情報の送信要求を行う(s72)。ホスト装置2は、この送信要求に応じて、記憶部22に記憶している該当する取引の障害取引情報を、ATM1に返信する。
【0066】
ATM1は、ホスト装置2から障害取引情報を受信する(s73)。ATM1は、受信した障害取引情報に基づいて、取引内容を表示器11aに確認画面を表示する(s74)。例えば、図10に示す確認画面を、表示器11aに表示する。図10に示すように、投入紙幣について、一時側電源の供給停止前に計数した金種毎の枚数、一時側電源の供給再開後に計数した金種毎の枚数、およびこれらの合計金額を表示する。また、この確認画面では、利用者に対して、取引の内容に間違いがないかどうかの確認入力を受け付けるための、メッセージや確認ボタン、およびキャンセルボタンを表示している。
【0067】
ATM1は、確認ボタン、またはキャンセルボタンが操作されるのを待つ(s75、s76)。ATM1は、確認ボタンが押されると、この取引を完了するか、中止するかを確認する完了確認画面を表示器11aに表示する(s77)。この完了確認画面は、例えば図11に示す画面である。ATM1は、完了ボタン、または返却ボタンが操作されるのを待つ(s78、s79)。ATM1は、完了ボタンが操作されると、この取引を処理し(s80)、そして、ATM1は、この障害発生取引を取り消す処理を行い(s81)、本処理を終了する。
【0068】
一方、返却ボタンが操作されると、投入紙幣の計数結果に応じて、利用者に投入紙幣に応じた紙幣を返却する返却処理を行う(s82)。s82は、金種別カートリッジ、または回収カートリッジから紙幣を繰り出し紙幣入出金口12aに搬送し、収納する。ATM1は、紙幣入出金口12aのシャッタを開し、利用者に投入紙幣に応じた紙幣を返却する。そして、ATM1は、S81で、この障害発生取引を取り消す処理を行い、本処理を終了する。
【0069】
なお、ATM1は、s81では、ホスト装置2に対して、記憶部22に記憶している該当する障害取引情報の削除を指示する。
【0070】
また、ATM1は、s76で利用者がキャンセルボタンを操作すると、図12に示す画面を表示し、窓口での対応をお願いする(s83)。この場合、利用者は、自分が投入した投入紙幣にかかる金額と、ATM1での計数処理の結果による合計金額と、が一致していないと思っている。金融機関は、人手を介することなく、投入紙幣を計数していることを利用者に説明し、係員の不正な抜き取り等がないこと、利用者の勘違いであることを納得させることができる。したがって、金融機関と、顧客との間における無用なトラブルの発生が抑えられる。
【0071】
また、一時側電源の供給停止による、ATM1の復旧作業にかかる係員の手間も大幅に削減できる。
【符号の説明】
【0072】
1…ATM(現金自動預け払い機)
2…ホスト装置
10…主制御部
11…操作部
12…紙幣処理部
12a…紙幣入出金口
13…硬貨処理部
14…明細書処理部
14b…明細書放出口
15…通帳処理部
16…生体情報読取部
17…通信部
18…電源部
18a…バッテリ
20…制御部
21…通信部
22…記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入金口に投入された投入紙幣を金種毎に計数し、その計数結果に基づいて取引を処理する自動取引処理装置において、
電源ラインを介して装置本体に供給される一次側電源の供給状態を検知する供給状態検知手段と、
装置本体の運用時に、前記供給状態検知手段が前記一次側電源の供給が停止したことを検知したとき、動作電源の供給をバッテリに切り換え、装置本体の停止処理を行う停電時停止処理手段と、
装置本体の停止時に、前記供給状態検知手段が前記一次側電源の供給が開始されたことを検知したとき、装置本体を起動する起動処理を実行する起動手段と、
前記停電時停止処理手段は、取引処理の実行中に、前記供給状態検知手段が前記一次側電源の供給停止を検知したタイミングが、前記入金口への投入紙幣の投入後のタイミングであれば、装置本体を停止したときの処理状況と、投入紙幣について計数した金種毎の枚数とを含む障害発生時取引情報を記憶部に記憶し、
前記起動手段は、前記状態検知手段が前記一次側電源の供給が開始されたことを検知したとき、前記記憶部が障害発生時取引情報を記憶していれば、装置本体の前回の停止時に実行中であった取引処理を再開し、未計数であった投入紙幣を金種毎に計数し、装置本体の前回の停止時に実行中であった取引処理における投入紙幣の金種毎の枚数を得る、自動取引処理装置。
【請求項2】
前記停電時停止処理手段は、実行中であった取引を識別する障害取引コードを作成し、この障害取引コードも前記障害発生時取引情報に含めて前記記憶部に記憶する請求項1に記載の自動取引処理装置。
【請求項3】
前記停電時停止処理手段が作成した障害取引コードを印字した帳票を発行する帳票発行手段を備えた、請求項2に記載の自動取引処理装置。
【請求項4】
前記起動手段は、装置本体の前回の停止時に実行中であった取引処理における投入紙幣の金種毎の枚数を含む障害取引情報を上位装置に通知する通知手段を備えた、請求項1〜3のいずれかに記載の自動取引処理装置。
【請求項5】
障害の発生により取引処理が途中で中止された取引を示す障害取引コードの入力を受け付ける障害取引コード受付手段と、
前記障害取引コード受付手段が受け付けた障害取引コードを上位装置に通知し、当該障害取引コードが示す取引の取引内容を取得する取引内容取得手段と、
前記取引内容取得手段が取得した取引内容を出力し、この取引にかかる確認入力を受け付けたときに、当該取引を処理する取引処理手段と、を備えた自動取引処理装置。
【請求項6】
請求項4に記載の自動取引処理装置を、上位装置にデータ通信可能に接続した自動取引処理システム。
【請求項7】
請求項4に記載の自動取引処理装置、および請求項5に記載の自動取引処理装置を、上位装置にデータ通信可能に接続した自動取引処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−118567(P2011−118567A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274210(P2009−274210)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】