自動変速機用オイルフィルタ
【課題】部品点数を削減でき且つ厚さ方向に小型化できると共に、オイル導入管の吸込口からのエアの吸い込みを防止できる自動変速機用オイルフィルタを提供する
【解決手段】本フィルタ1A〜1Cは、オイルパン2内に貯留されたオイルに浸されるようにオイルパン2内に設けられる自動変速機用オイルフィルタであって、オイルを濾過する濾過エレメント3,18と、濾過エレメントで濾過されたオイルが通過するクリーン側の濾過室Sを濾過エレメントとの間で形成する濾過室形成部(ロアケース4、オイルパンの内壁部14、塞ぎ板19a,19b)と、濾過エレメント及び/又は濾過室形成部に設けられ且つ濾過室の内部に開口する吸込口11及び濾過室の外部に開口する流出口12を有するオイル導出管5と、を備え、濾過エレメントは、その上面又は外側面からオイルを導入して濾過するように配置されており、オイル導出管の吸込口は、濾過エレメントの少なくとも一部より下方で開口するように配置されている。
【解決手段】本フィルタ1A〜1Cは、オイルパン2内に貯留されたオイルに浸されるようにオイルパン2内に設けられる自動変速機用オイルフィルタであって、オイルを濾過する濾過エレメント3,18と、濾過エレメントで濾過されたオイルが通過するクリーン側の濾過室Sを濾過エレメントとの間で形成する濾過室形成部(ロアケース4、オイルパンの内壁部14、塞ぎ板19a,19b)と、濾過エレメント及び/又は濾過室形成部に設けられ且つ濾過室の内部に開口する吸込口11及び濾過室の外部に開口する流出口12を有するオイル導出管5と、を備え、濾過エレメントは、その上面又は外側面からオイルを導入して濾過するように配置されており、オイル導出管の吸込口は、濾過エレメントの少なくとも一部より下方で開口するように配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機用オイルフィルタに関し、さらに詳しくは、部品点数を削減でき且つ厚さ方向に小型化できると共に、オイル導入管の吸込口からのエアの吸い込みを防止できる自動変速機用オイルフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動変速機用オイルフィルタとしては、例えば、図14に示すように、アウトレットパイプ102を有するアッパケース103とインレットパイプ104を有するロアケース105との間に濾過エレメント106を配設してなるオイルフィルタ101が一般に多く知られている。そして、このオイルフィルタ101は、自動変速機のオイルパン内に配設され、オイルパン内に貯留されるオイル中に浸漬される。また、インレット108(吸込口)は、車両旋回時や坂路走行時等にオイルパン内で油面変動が生じた場合(図14中に仮想線で示す。)にエアを吸わないように、その開口が常にオイル中に浸る位置に配設される。また、アウトレット109(流出口)は、バルブボディ110の形状やオイルポンプの位置等により決定される位置に配設される。なお、エアの吸込みが生じると油圧制御等に問題が発生してしまう。
【0003】
ここで、上記オイルフィルタでは、平板状又は2枚の折り袋状の濾過エレメント(濾材)を用いることが多いが、圧力損失の低減及び小型化のために、ひだ折り状の濾材を樹脂枠にインサート成形してなる濾過エレメントを採用することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この濾過エレメントでは、インサート成形のための成形型及び樹脂が必要となり、部品点数の増加及び生産工数の増加といった問題がある。また、アッパケース、ロアケース及び濾過エレメントからなるオイルフィルタでは、その厚さ方向(上下方向)の寸法が比較的大きなものとなってしまう。
【0004】
そこで、上記問題を解決する従来の自動変速機用オイルフィルタとして、ロアケースを省略してなるものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
上記特許文献2には、ボデー11に、濾過室の内部に開口する入口部13a及び濾過室の外部に開口する出口部13bを有するパイプ13を設けてなるオイルストレーナが開示されている。
【0005】
しかし、上記特許文献2では、ろ過体12を、その下面からオイルを導入して濾過するように設けると共に、パイプ13の入口部13aを、ろ過体12より上方に位置するように設けているので、入口部13aがオイルパンの底壁から比較的離れた位置に配設されることとなり、車両旋回時や板路走行時等にオイルパン内で油面変動が生じた場合にエアを吸込んでしまう恐れがある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−273116号公報
【特許文献2】特開平10−85523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、部品点数を削減でき且つ厚さ方向に小型化できると共に、オイル導入管の吸込口からのエアの吸い込みを防止できる自動変速機用オイルフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の通りである。
1.オイルパン内に貯留されたオイルに浸されるように該オイルパン内に設けられる自動変速機用オイルフィルタであって、
オイルを濾過する濾過エレメントと、
前記濾過エレメントで濾過されたオイルが通過するクリーン側の濾過室を該濾過エレメントとの間で形成する濾過室形成部と、
前記濾過エレメント及び/又は前記濾過室形成部に設けられ、且つ、前記濾過室の内部に開口する吸込口及び該濾過室の外部に開口する流出口を有するオイル導出管と、を備え、
前記濾過エレメントは、その上面又は外側面からオイルを導入して濾過するように配置されており、前記オイル導出管の前記吸込口は、前記濾過エレメントの少なくとも一部より下方で開口するように配置されていることを特徴とする自動変速機用オイルフィルタ。
2.前記濾過エレメントは、濾材と、該濾材を支持する樹脂枠と、を有し、前記オイル導出管は、該樹脂枠と一体に成形されている上記1.記載の自動変速機用オイルフィルタ。
3.前記濾過エレメントは、濾材と、該濾材を支持する樹脂枠と、を有し、該樹脂枠は、前記濾過室形成部としての前記オイルパンの内壁部に固着されている上記1.又は2.に記載の自動変速機用オイルフィルタ。
4.前記オイル導出管の下部は、鉛直方向に傾斜して延びている上記1.乃至3.のいずれか一項に記載の自動変速機用オイルフィルタ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自動変速機用オイルフィルタによると、オイルパン内に戻されるオイルは、オイルパン内に露出する濾過エレメントの上面又は外側面から濾過室内に導入されて濾過される。その濾過後のオイルは、オイル導出管を介してオイルフィルタの外部に流れ出る。このオイルフィルタでは、濾過エレメントを、その上面又は外側面からオイルを導入して濾過するように配置すると共に、濾過エレメント及び/又は濾過室形成部にオイル導出管を設けたので、アッパケースを省略できて、部品点数を削減でき且つ厚さ方向に小型化できる。また、オイル導出管の吸込口を、濾過エレメントの少なくとも一部より下方で開口するように配置したので、吸込口がオイルパンの底壁から比較的近い位置に配設されることとなり、オイルパン内で油面変動が生じてもオイル導出管の吸込口からエアを吸い込んでしまうことを防止できる。
また、前記濾過エレメントが、濾材と、該濾材を支持する樹脂枠と、を有し、前記オイル導出管が、該樹脂枠と一体に成形されている場合は、更に部品点数を削減することができる。
また、前記濾過エレメントが、濾材と、該濾材を支持する樹脂枠と、を有し、該樹脂枠が、前記濾過室形成部としての前記オイルパンの内壁部に固着されている場合は、濾過室形成部をオイルパンの内壁部で構成できるので、アッパケースに加えてロアケースを省略でき、更に部品点数を削減することができる。
さらに、前記オイル導出管の下部が、鉛直方向に傾斜して延びている場合は、オイル導出管の吸込口を、エアの吸い込みをより確実に防止できる位置に設定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
1.自動変速機用オイルフィルタ
本実施形態に係る自動変速機用オイルフィルタは、オイルパン内に貯留されたオイルに浸されるようにオイルパン内に設けられるオイルフィルタであって、以下に述べる濾過エレメント、濾過室形成部及びオイル導出管を備えている。
【0011】
上記「濾過エレメント」は、オイルを濾過する限り、その構成、形状、材質等は特に問わない。この濾過エレメントは、その上面又は外側面からオイルを導入して濾過するように配置されている。即ち、この濾過エレメントは、その上面又は外側面がオイルパン内に露出するように配置されている。
なお、上記「上面」とは、濾過エレメントが水平配置又は傾斜配置される場合の鉛直方向の上側の面を意図する。また、上記「外側面」とは、筒状の濾過エレメントが垂直配置される場合の外周側の面を意図する。
【0012】
上記濾過エレメントとしては、例えば、(1)濾材と、この濾材を支持する樹脂枠とからなる形態、(2)濾材のみからなる形態等を挙げることができる。
上記濾材の形状としては、例えば、ひだ折り状、シート状、波状、袋状、椀状、傘筒状、菊花筒状、円筒状等を挙げることができる。また、上記濾過の材質としては、例えば、不織布、織物、紙等を挙げることができる。
上記(1)形態では、例えば、ひだ折り状の濾材が樹脂枠に一体にインサート成形されていることができる。これにより、必要な濾過面積を確保しつつ濾過エレメントを小型化できる。
上記(1)形態では、例えば、上記樹脂枠は、上記濾材を支持する枠状の濾材支持部と、この濾材支持部の一側方に設けられ且つ後述のオイル導出管が一体に形成される管支持部と、を有することができる。これにより、濾材とオイル導出管とを併設でき、オイル導出管の吸込口を、濾過エレメントより下方で開口するように更に簡易に配置できる。
【0013】
上記「濾過室形成部」は、上記濾過エレメントで濾過されたオイルが通過するクリーン側の濾過室を濾過エレメントとの間で形成する限り、その構成、形状、材質等は特に問わない。
上記濾過室形成部は、フィルタ内をクリーン側及びダスティ側に仕切る仕切りであればよく、例えば、樹脂部材、鉄板等の金属部材、濾材部材、目の細かい金網メッシュ等を採用できる。
上記濾過室形成部としては、例えば、上記濾過エレメント3の樹脂枠8と接合されるロアケース4(図5参照)、上記濾過エレメント3の樹脂枠8と接合されるオイルパン2の内壁部14(図8参照)等をあげることができる。この濾過室形成部と樹脂枠との接合形態(固着形態)は、その接合部材の材質等に応じて適宜選択できるが、例えば、振動溶着、超音波溶着、熱板溶着、レーザ溶着、かしめ、螺合、接着剤による接着等を挙げることができる。
上記濾過室形成部は、例えば、筒状の上記濾過エレメント18の中心穴の上下開口を塞ぐ上下側の塞ぎ板19a,19bであることができる(図9参照)。
【0014】
上記「オイル導出管」は、上記濾過エレメント及び/又は上記濾過室形成部に設けられ且つ濾過室の内部に開口する吸込口及び濾過室の外部に開口する流出口を有する限り、その構成、形状、材質等は特に問わない。
上記オイル導出管の吸込口は、濾過エレメントの少なくとも一部より下方で開口するように配置されている。特に、上記オイル導出管の配設形態としては、例えば、(1)その吸込口が上記濾過エレメントを構成する濾材より下方で開口する形態(図3参照)、(2)その吸込口が上記濾過エレメントを構成する濾材の上側部より下方で開口する形態(図9参照)等を挙げることができる。
なお、上記「濾過エレメントの少なくとも一部より下方で開口する」とは、濾過エレメントの少なくとも一部が吸込口の鉛直方向の上方に位置している状態を意図する。
【0015】
上記オイル導出管は、例えば、濾過エレメントの樹脂枠と一体に成形されていることができる。
上記オイル導出管の下部は、例えば、鉛直方向に傾斜して延びていることができる。
【実施例】
【0016】
以下、図面を用いて実施例1〜3により本発明を具体的に説明する。
【0017】
(実施例1)
本実施例1に係る自動変速機用オイルフィルタ1A(以下、単に「オイルフィルタ」とも略記する。)は、図1〜4に示すように、濾過エレメント3、ロアケース4(本発明に係る「濾過室形成部」として例示する。)及びオイル導出管5を備えて構成されている。
なお、このオイルフィルタ1Aは、図5に示すように、取付けステー等によってバルブボディ6又はオイルパン2に固定されてオイルパン2内に配設され、オイルパン2内に貯留されたオイル中に浸されるようになっている。
【0018】
上記濾過エレメント3は、不織布からなるひだ折り状の濾材7と、この濾材7が一体にインサート成形される樹脂枠8とからなっている。この樹脂枠8には、濾材7を支持する枠状の濾材支持部8aと、この濾材支持部8aの一側方に配置されオイル導出管5を支持する下方を開口した箱状の管支持部8bと、が形成されている。この濾材支持部8aには、濾材7のひだの稜線方向の両端側を支持する一対の対向壁9a,9bが設けられている。
なお、本オイルフィルタ1Aをオイルパン2内に配設した際に、濾材7の上面からリターンオイルを導入して濾過するように濾過エレメント3は水平配置又は傾斜配置される(図5参照)。
【0019】
上記ロアケース4は、樹脂製であり且つ上方を開放した箱状に形成されている。このロアケース4の上側周縁部4aと樹脂枠8の下側周縁部8cとは、互いに突き合わされ振動溶着等によって接合されている。そして、これらロアケース4及び濾過エレメント3の間には、濾材7で濾過されたオイルが通過するクリーン側の濾過室Sが形成されている。この濾過室Sの一部は、濾材7の鉛直方向の下方に位置している。また、この濾過室Sの一部は、上記管支持部8bの内部空間10によって構成されている。
【0020】
上記オイル導出管5は、樹脂製であり且つ樹脂枠8の管支持部8bに一体に成形されている。このオイル導出管5は、濾過室Sの内部に開口する下端側の吸込口11及び濾過室Sの外部に開口する上端側の流出口12を有している。この吸込口11は、濾過エレメント3の濾材7より下方で開口するように配置されている。また、このオイル導出管5の下部は、鉛直方向に傾斜して濾材7の長尺方向の中央部に向って延びており(図3参照)、その吸込口11は、車両旋回時や坂路走行時等にオイルパン2内で油面変動が生じた場合にエアを吸わないように、その開口が常にオイル中に浸る位置に配設されている。また、流出口12は、バルブボディ6の形状やオイルポンプの位置等により決定される位置に配設されている。
【0021】
次に、上記オイルフィルタ1Aの作用・効果について説明する。
図5に示すように、オイルパン2内に戻されるリターンオイルは、オイルパン2内で露出する濾材7の上面7aから濾過室S内に導入される。このように、オイルが濾材7を通過する際に、オイル中に含有される異物、不純物等は濾材7によって除去される。この異物等の除去されたオイルは、吸込口11からオイル導出管5内に流入して流出口12からオイルフィルタ1Aの外部に流れ出る。
【0022】
以上より、本実施例1のオイルフィルタ1Aでは、濾過エレメント3を、濾材7の上面7aからオイルを導入して濾過するように水平配置又は傾斜配置すると共に、オイル導出管5を、濾過エレメント3を構成する樹脂枠8の管支持部8bに一体に成形したので、アッパケースを省略できて、部品点数を削減でき且つ厚さ方向に小型化できる。また、オイル導出管5の吸込口11を、濾材7より下方で開口するように配置したので、吸込口11がオイルパン2の底壁から比較的近い位置に配設されることとなり、オイルパン2内で油面変動が生じてもオイル導出管5の吸込口11からエアを吸い込んでしまうことを防止できる。
さらに、本実施例1のオイルフィルタ1Aでは、オイル導出管5の下部を、鉛直方向に傾斜して延びるように構成したので、オイル導出管5の吸込口11を、エアの吸い込みをより確実に防止できる位置に設定できる。
【0023】
(実施例2)
次に、本実施例2に係る自動変速機用オイルフィルタ1B(以下、単に「オイルフィルタ」とも略記する。)について説明する。なお、本実施例2では、上記実施例1のオイルフィルタ1Aと略同じ構成部位には同じ符号を付け詳説を省略し、以下に実施例1との主な相違点について説明する。
【0024】
上記オイルフィルタ1Bは、図8に示すように、濾過エレメント3、樹脂製のオイルパン2の内壁部14(本発明に係る「濾過室形成部」として例示する。)及びオイル導出管5を備えて構成されている。このオイルパン2の内壁部14は、図6及び7に示すように、底壁部15と、この底壁部15から立ち上がり上記樹脂枠8の下側周縁部8cと略同じ形状の周状の突起部16とからなっている。このオイルパン2の突起部16と樹脂枠8の下側周縁部8cとは、互いに突き合わされて振動溶着等によって接合されている。そして、これらオイルパン2の内壁部14及び濾過エレメント3の間には、濾材7で濾過されたオイルが通過するクリーン側の濾過室Sが形成されている。
【0025】
以上より、本実施例2のオイルフィルタ1Bでは、上記実施例1のオイルフィルタ1Aと略同様の作用・効果を発揮し得ると共に、濾過室形成部をオイルパン2の内壁部14で構成しているので、アッパケースに加えてロアケースを省略でき、更に部品点数を削減でき且つ厚さ方向に小型化できる。
【0026】
(実施例3)
次に、本実施例3に係る自動変速機用オイルフィルタ1C(以下、単に「オイルフィルタ」とも略記する。)について説明する。なお、本実施例3では、上記実施例1のオイルフィルタ1Aと略同じ構成部位には同じ符号を付け詳説を省略し、以下に実施例1との主な相違点について説明する。
【0027】
上記オイルフィルタ1Cは、図9に示すように、濾過エレメント18、上下側の塞ぎ板19a,19b(本発明に係る「濾過室形成部」として例示する。)及びオイル導出管5を備えて構成されている。
【0028】
上記濾過エレメント18は、不織布からなるひだ折り状の濾材20を末広がりの傘筒状に形成してなされている。この濾過エレメント18の上下端部には、その中心穴を塞ぐように樹脂製であり円盤状の上下側の塞ぎ板19a,19bが接着剤等で接合されている。そして、上下側の塞ぎ板19a,19b及び濾材20の間には、濾材20で濾過されたオイルが通過するクリーン側の濾過室Sが形成されている。
なお、本オイルフィルタ1Cをオイルパン2内に配設した際に、濾材20の外側面20aからリターンオイルを導入して濾過するように筒状の濾過エレメント18は垂直配置される。
【0029】
上記上側の塞ぎ板19aの中心部には、樹脂製のオイル導出管5が一体に成形されている。このオイル導出管5は、濾過室Sの内部に開口する下端側の吸込口11及び濾過室Sの外部に開口する上端側の流出口12を有している。この吸込口11は、濾過エレメント18の濾材20の上側部より下方で開口するように配置されている。また、このオイル導出管5の下部は、鉛直方向に傾斜して延びており、その吸込口11は、車両旋回時や坂路走行時等のオイルパン2内の油面変動が生じた場合にエアを吸わないように、その開口が常にオイル中に浸る位置に配設されている。また、オイル導出管5の流出口12は、バルブボディの形状やオイルポンプの位置等により決定される位置に配設されている。
【0030】
次に、上記オイルフィルタ1Cの作用・効果について説明する。
オイルパン2内に戻されるリターンオイルは、オイルパン2内に露出する濾材20の外側面20aから濾過室S内に導入される。このように、オイルが濾材20を通過する際に、オイル中に含有される異物、不純物等は濾材20によって除去される。この異物等の除去されたオイルは、吸込口11からオイル導出管5内に流入して流出口12からオイルフィルタ1Aの外部に流れ出る。
【0031】
以上より、本実施例3のオイルフィルタ1Cでは、筒状の濾過エレメント18を、濾材20の外側面20aからオイルを導入して濾過するように垂直配置すると共に、オイル導出管5を、濾過室形成部を構成する塞ぎ板19aに一体に成形したので、アッパケース及びロアケースを省略できて、部品点数を削減でき且つ厚さ方向に小型化できる。
また、本実施例3のオイルフィルタ1Cでは、オイル導出管5の吸込口11を、濾材20の上側部(一部)より下方で開口するように配置したので、吸込口11がオイルパン2の底壁から比較的近い位置に配設されることとなり、オイルパン2内で油面変動が生じてもオイル導出管5の吸込口11からエアを吸い込んでしまうことを防止できる。
さらに、本実施例3のオイルフィルタ1Cでは、オイル導出管5の下部を、鉛直方向に傾斜して延びるように構成したので、オイル導出管5の吸込口11を、エアの吸い込みをより確実に防止できる位置に設けることができる。
【0032】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例1では、濾過エレメント3として、樹脂枠8を構成する濾材支持部8aの一側方に設けた箱状の管支持部8bにオイル導出管5を一体に成形してなるものを例示したが、これに限定されず、例えば、図10及び11に示すように、樹脂枠8の濾材支持部8bの対向片の間に掛け渡される補強用の中間壁23に、オイル導出管5を一体に成形してなる濾過エレメントとしてもよい。
また、上記実施例1では、オイル導出管5の吸込口11が濾材7の下面より下方で開口する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、オイル導出管5の吸込口11が濾材7の下面より上方であり且つ濾材7の上端側(一部)より下方で開口するようにしてもよい。
【0033】
また、上記実施例2では、樹脂製のオイルパン2の突起部16と樹脂枠8とを溶着する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、図12に示すように、鉄板等の金属製のオイルパン2の底壁部に、樹脂枠8の下側周縁部8cと略同じ形状の周状の凹部25を設け、この凹部25に樹脂枠8の下側周縁部8cを挿入して、その下側周縁部8cをエポキシ系接着剤等で接着するようにしてもよい。また、例えば、図13に示すように、鉄板等の金属製のオイルパン2の底壁部に、樹脂枠8の下側周縁部8cと略同じ形状の周状の凸部26を設け、この凸部26の上面にゴム等からなる周状のシール部材27を設け、このシール部材27に樹脂枠8の下側周縁部8cが圧接するように、その下側周縁部8cの適宜箇所をボルト固定28するようにしてもよい。
【0034】
また、上記実施例3では、濾過エレメント18として、不織布からなるひだ折り状の濾材20を末広がりの傘筒状に形成してなるものを例示したが、これに限定されず、例えば、不織布からなるひだ折り状の濾材を菊花筒状に形成してなる濾過エレメントとしてもよい。
また、上記実施例3では、樹脂製の上側の塞ぎ板19aにオイル導出管5を一体に成形するようにしたが、これに限定されず、例えば、濾紙製、樹脂製、鉄板等の金属製等の上側の塞ぎ板にオイル導出管を接着剤により接着するようにしてもよい。
また、上記実施例3において、オイル導出管5の外周面に、濾材のひだ折り形状に相当するガイド片を設けるようにしてもよい。これにより、容易に均等なひだを配置できる。
さらに、上記実施例3において、オイル導出管5の外周面に、オイルパン2及び/又はバルブボディ6に形成された被係止部に係止する係止部29(図9参照)や取付けステーを設けるようにしてもよい。これにより、容易にオイル導出管5の位置決めを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
車両等の自動変速機用オイルを濾過するフィルタとして利用される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1に係るオイルフィルタの分解斜視図である。
【図2】実施例1に係るオイルフィルタの平面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】実施例1に係るオイルフィルタの作用説明図である。
【図6】実施例2に係るオイルパンの平面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】実施例2に係るオイルフィルタの作用説明図である。
【図9】実施例3に係るオイルフィルタの斜視図である。
【図10】その他の形態のオイルフィルタの平面図である。
【図11】図10のXI−XI線断面図である。
【図12】更にその他の形態のオイルフィルタの要部縦断面図である。
【図13】更にその他の形態のオイルフィルタの要部縦断面図である。
【図14】従来のオイルフィルタの縦断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1A〜1C;オイルフィルタ、2;オイルパン、3,18;濾過エレメント、4;ロアケース、5;オイル導出管、7,20;濾材、8;樹脂枠、11;吸込口、12;流出口、14;オイルパンの内壁部、19a,19b;塞ぎ板、S;濾過室。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機用オイルフィルタに関し、さらに詳しくは、部品点数を削減でき且つ厚さ方向に小型化できると共に、オイル導入管の吸込口からのエアの吸い込みを防止できる自動変速機用オイルフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動変速機用オイルフィルタとしては、例えば、図14に示すように、アウトレットパイプ102を有するアッパケース103とインレットパイプ104を有するロアケース105との間に濾過エレメント106を配設してなるオイルフィルタ101が一般に多く知られている。そして、このオイルフィルタ101は、自動変速機のオイルパン内に配設され、オイルパン内に貯留されるオイル中に浸漬される。また、インレット108(吸込口)は、車両旋回時や坂路走行時等にオイルパン内で油面変動が生じた場合(図14中に仮想線で示す。)にエアを吸わないように、その開口が常にオイル中に浸る位置に配設される。また、アウトレット109(流出口)は、バルブボディ110の形状やオイルポンプの位置等により決定される位置に配設される。なお、エアの吸込みが生じると油圧制御等に問題が発生してしまう。
【0003】
ここで、上記オイルフィルタでは、平板状又は2枚の折り袋状の濾過エレメント(濾材)を用いることが多いが、圧力損失の低減及び小型化のために、ひだ折り状の濾材を樹脂枠にインサート成形してなる濾過エレメントを採用することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、この濾過エレメントでは、インサート成形のための成形型及び樹脂が必要となり、部品点数の増加及び生産工数の増加といった問題がある。また、アッパケース、ロアケース及び濾過エレメントからなるオイルフィルタでは、その厚さ方向(上下方向)の寸法が比較的大きなものとなってしまう。
【0004】
そこで、上記問題を解決する従来の自動変速機用オイルフィルタとして、ロアケースを省略してなるものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
上記特許文献2には、ボデー11に、濾過室の内部に開口する入口部13a及び濾過室の外部に開口する出口部13bを有するパイプ13を設けてなるオイルストレーナが開示されている。
【0005】
しかし、上記特許文献2では、ろ過体12を、その下面からオイルを導入して濾過するように設けると共に、パイプ13の入口部13aを、ろ過体12より上方に位置するように設けているので、入口部13aがオイルパンの底壁から比較的離れた位置に配設されることとなり、車両旋回時や板路走行時等にオイルパン内で油面変動が生じた場合にエアを吸込んでしまう恐れがある。
【0006】
【特許文献1】特開2002−273116号公報
【特許文献2】特開平10−85523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、部品点数を削減でき且つ厚さ方向に小型化できると共に、オイル導入管の吸込口からのエアの吸い込みを防止できる自動変速機用オイルフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の通りである。
1.オイルパン内に貯留されたオイルに浸されるように該オイルパン内に設けられる自動変速機用オイルフィルタであって、
オイルを濾過する濾過エレメントと、
前記濾過エレメントで濾過されたオイルが通過するクリーン側の濾過室を該濾過エレメントとの間で形成する濾過室形成部と、
前記濾過エレメント及び/又は前記濾過室形成部に設けられ、且つ、前記濾過室の内部に開口する吸込口及び該濾過室の外部に開口する流出口を有するオイル導出管と、を備え、
前記濾過エレメントは、その上面又は外側面からオイルを導入して濾過するように配置されており、前記オイル導出管の前記吸込口は、前記濾過エレメントの少なくとも一部より下方で開口するように配置されていることを特徴とする自動変速機用オイルフィルタ。
2.前記濾過エレメントは、濾材と、該濾材を支持する樹脂枠と、を有し、前記オイル導出管は、該樹脂枠と一体に成形されている上記1.記載の自動変速機用オイルフィルタ。
3.前記濾過エレメントは、濾材と、該濾材を支持する樹脂枠と、を有し、該樹脂枠は、前記濾過室形成部としての前記オイルパンの内壁部に固着されている上記1.又は2.に記載の自動変速機用オイルフィルタ。
4.前記オイル導出管の下部は、鉛直方向に傾斜して延びている上記1.乃至3.のいずれか一項に記載の自動変速機用オイルフィルタ。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自動変速機用オイルフィルタによると、オイルパン内に戻されるオイルは、オイルパン内に露出する濾過エレメントの上面又は外側面から濾過室内に導入されて濾過される。その濾過後のオイルは、オイル導出管を介してオイルフィルタの外部に流れ出る。このオイルフィルタでは、濾過エレメントを、その上面又は外側面からオイルを導入して濾過するように配置すると共に、濾過エレメント及び/又は濾過室形成部にオイル導出管を設けたので、アッパケースを省略できて、部品点数を削減でき且つ厚さ方向に小型化できる。また、オイル導出管の吸込口を、濾過エレメントの少なくとも一部より下方で開口するように配置したので、吸込口がオイルパンの底壁から比較的近い位置に配設されることとなり、オイルパン内で油面変動が生じてもオイル導出管の吸込口からエアを吸い込んでしまうことを防止できる。
また、前記濾過エレメントが、濾材と、該濾材を支持する樹脂枠と、を有し、前記オイル導出管が、該樹脂枠と一体に成形されている場合は、更に部品点数を削減することができる。
また、前記濾過エレメントが、濾材と、該濾材を支持する樹脂枠と、を有し、該樹脂枠が、前記濾過室形成部としての前記オイルパンの内壁部に固着されている場合は、濾過室形成部をオイルパンの内壁部で構成できるので、アッパケースに加えてロアケースを省略でき、更に部品点数を削減することができる。
さらに、前記オイル導出管の下部が、鉛直方向に傾斜して延びている場合は、オイル導出管の吸込口を、エアの吸い込みをより確実に防止できる位置に設定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
1.自動変速機用オイルフィルタ
本実施形態に係る自動変速機用オイルフィルタは、オイルパン内に貯留されたオイルに浸されるようにオイルパン内に設けられるオイルフィルタであって、以下に述べる濾過エレメント、濾過室形成部及びオイル導出管を備えている。
【0011】
上記「濾過エレメント」は、オイルを濾過する限り、その構成、形状、材質等は特に問わない。この濾過エレメントは、その上面又は外側面からオイルを導入して濾過するように配置されている。即ち、この濾過エレメントは、その上面又は外側面がオイルパン内に露出するように配置されている。
なお、上記「上面」とは、濾過エレメントが水平配置又は傾斜配置される場合の鉛直方向の上側の面を意図する。また、上記「外側面」とは、筒状の濾過エレメントが垂直配置される場合の外周側の面を意図する。
【0012】
上記濾過エレメントとしては、例えば、(1)濾材と、この濾材を支持する樹脂枠とからなる形態、(2)濾材のみからなる形態等を挙げることができる。
上記濾材の形状としては、例えば、ひだ折り状、シート状、波状、袋状、椀状、傘筒状、菊花筒状、円筒状等を挙げることができる。また、上記濾過の材質としては、例えば、不織布、織物、紙等を挙げることができる。
上記(1)形態では、例えば、ひだ折り状の濾材が樹脂枠に一体にインサート成形されていることができる。これにより、必要な濾過面積を確保しつつ濾過エレメントを小型化できる。
上記(1)形態では、例えば、上記樹脂枠は、上記濾材を支持する枠状の濾材支持部と、この濾材支持部の一側方に設けられ且つ後述のオイル導出管が一体に形成される管支持部と、を有することができる。これにより、濾材とオイル導出管とを併設でき、オイル導出管の吸込口を、濾過エレメントより下方で開口するように更に簡易に配置できる。
【0013】
上記「濾過室形成部」は、上記濾過エレメントで濾過されたオイルが通過するクリーン側の濾過室を濾過エレメントとの間で形成する限り、その構成、形状、材質等は特に問わない。
上記濾過室形成部は、フィルタ内をクリーン側及びダスティ側に仕切る仕切りであればよく、例えば、樹脂部材、鉄板等の金属部材、濾材部材、目の細かい金網メッシュ等を採用できる。
上記濾過室形成部としては、例えば、上記濾過エレメント3の樹脂枠8と接合されるロアケース4(図5参照)、上記濾過エレメント3の樹脂枠8と接合されるオイルパン2の内壁部14(図8参照)等をあげることができる。この濾過室形成部と樹脂枠との接合形態(固着形態)は、その接合部材の材質等に応じて適宜選択できるが、例えば、振動溶着、超音波溶着、熱板溶着、レーザ溶着、かしめ、螺合、接着剤による接着等を挙げることができる。
上記濾過室形成部は、例えば、筒状の上記濾過エレメント18の中心穴の上下開口を塞ぐ上下側の塞ぎ板19a,19bであることができる(図9参照)。
【0014】
上記「オイル導出管」は、上記濾過エレメント及び/又は上記濾過室形成部に設けられ且つ濾過室の内部に開口する吸込口及び濾過室の外部に開口する流出口を有する限り、その構成、形状、材質等は特に問わない。
上記オイル導出管の吸込口は、濾過エレメントの少なくとも一部より下方で開口するように配置されている。特に、上記オイル導出管の配設形態としては、例えば、(1)その吸込口が上記濾過エレメントを構成する濾材より下方で開口する形態(図3参照)、(2)その吸込口が上記濾過エレメントを構成する濾材の上側部より下方で開口する形態(図9参照)等を挙げることができる。
なお、上記「濾過エレメントの少なくとも一部より下方で開口する」とは、濾過エレメントの少なくとも一部が吸込口の鉛直方向の上方に位置している状態を意図する。
【0015】
上記オイル導出管は、例えば、濾過エレメントの樹脂枠と一体に成形されていることができる。
上記オイル導出管の下部は、例えば、鉛直方向に傾斜して延びていることができる。
【実施例】
【0016】
以下、図面を用いて実施例1〜3により本発明を具体的に説明する。
【0017】
(実施例1)
本実施例1に係る自動変速機用オイルフィルタ1A(以下、単に「オイルフィルタ」とも略記する。)は、図1〜4に示すように、濾過エレメント3、ロアケース4(本発明に係る「濾過室形成部」として例示する。)及びオイル導出管5を備えて構成されている。
なお、このオイルフィルタ1Aは、図5に示すように、取付けステー等によってバルブボディ6又はオイルパン2に固定されてオイルパン2内に配設され、オイルパン2内に貯留されたオイル中に浸されるようになっている。
【0018】
上記濾過エレメント3は、不織布からなるひだ折り状の濾材7と、この濾材7が一体にインサート成形される樹脂枠8とからなっている。この樹脂枠8には、濾材7を支持する枠状の濾材支持部8aと、この濾材支持部8aの一側方に配置されオイル導出管5を支持する下方を開口した箱状の管支持部8bと、が形成されている。この濾材支持部8aには、濾材7のひだの稜線方向の両端側を支持する一対の対向壁9a,9bが設けられている。
なお、本オイルフィルタ1Aをオイルパン2内に配設した際に、濾材7の上面からリターンオイルを導入して濾過するように濾過エレメント3は水平配置又は傾斜配置される(図5参照)。
【0019】
上記ロアケース4は、樹脂製であり且つ上方を開放した箱状に形成されている。このロアケース4の上側周縁部4aと樹脂枠8の下側周縁部8cとは、互いに突き合わされ振動溶着等によって接合されている。そして、これらロアケース4及び濾過エレメント3の間には、濾材7で濾過されたオイルが通過するクリーン側の濾過室Sが形成されている。この濾過室Sの一部は、濾材7の鉛直方向の下方に位置している。また、この濾過室Sの一部は、上記管支持部8bの内部空間10によって構成されている。
【0020】
上記オイル導出管5は、樹脂製であり且つ樹脂枠8の管支持部8bに一体に成形されている。このオイル導出管5は、濾過室Sの内部に開口する下端側の吸込口11及び濾過室Sの外部に開口する上端側の流出口12を有している。この吸込口11は、濾過エレメント3の濾材7より下方で開口するように配置されている。また、このオイル導出管5の下部は、鉛直方向に傾斜して濾材7の長尺方向の中央部に向って延びており(図3参照)、その吸込口11は、車両旋回時や坂路走行時等にオイルパン2内で油面変動が生じた場合にエアを吸わないように、その開口が常にオイル中に浸る位置に配設されている。また、流出口12は、バルブボディ6の形状やオイルポンプの位置等により決定される位置に配設されている。
【0021】
次に、上記オイルフィルタ1Aの作用・効果について説明する。
図5に示すように、オイルパン2内に戻されるリターンオイルは、オイルパン2内で露出する濾材7の上面7aから濾過室S内に導入される。このように、オイルが濾材7を通過する際に、オイル中に含有される異物、不純物等は濾材7によって除去される。この異物等の除去されたオイルは、吸込口11からオイル導出管5内に流入して流出口12からオイルフィルタ1Aの外部に流れ出る。
【0022】
以上より、本実施例1のオイルフィルタ1Aでは、濾過エレメント3を、濾材7の上面7aからオイルを導入して濾過するように水平配置又は傾斜配置すると共に、オイル導出管5を、濾過エレメント3を構成する樹脂枠8の管支持部8bに一体に成形したので、アッパケースを省略できて、部品点数を削減でき且つ厚さ方向に小型化できる。また、オイル導出管5の吸込口11を、濾材7より下方で開口するように配置したので、吸込口11がオイルパン2の底壁から比較的近い位置に配設されることとなり、オイルパン2内で油面変動が生じてもオイル導出管5の吸込口11からエアを吸い込んでしまうことを防止できる。
さらに、本実施例1のオイルフィルタ1Aでは、オイル導出管5の下部を、鉛直方向に傾斜して延びるように構成したので、オイル導出管5の吸込口11を、エアの吸い込みをより確実に防止できる位置に設定できる。
【0023】
(実施例2)
次に、本実施例2に係る自動変速機用オイルフィルタ1B(以下、単に「オイルフィルタ」とも略記する。)について説明する。なお、本実施例2では、上記実施例1のオイルフィルタ1Aと略同じ構成部位には同じ符号を付け詳説を省略し、以下に実施例1との主な相違点について説明する。
【0024】
上記オイルフィルタ1Bは、図8に示すように、濾過エレメント3、樹脂製のオイルパン2の内壁部14(本発明に係る「濾過室形成部」として例示する。)及びオイル導出管5を備えて構成されている。このオイルパン2の内壁部14は、図6及び7に示すように、底壁部15と、この底壁部15から立ち上がり上記樹脂枠8の下側周縁部8cと略同じ形状の周状の突起部16とからなっている。このオイルパン2の突起部16と樹脂枠8の下側周縁部8cとは、互いに突き合わされて振動溶着等によって接合されている。そして、これらオイルパン2の内壁部14及び濾過エレメント3の間には、濾材7で濾過されたオイルが通過するクリーン側の濾過室Sが形成されている。
【0025】
以上より、本実施例2のオイルフィルタ1Bでは、上記実施例1のオイルフィルタ1Aと略同様の作用・効果を発揮し得ると共に、濾過室形成部をオイルパン2の内壁部14で構成しているので、アッパケースに加えてロアケースを省略でき、更に部品点数を削減でき且つ厚さ方向に小型化できる。
【0026】
(実施例3)
次に、本実施例3に係る自動変速機用オイルフィルタ1C(以下、単に「オイルフィルタ」とも略記する。)について説明する。なお、本実施例3では、上記実施例1のオイルフィルタ1Aと略同じ構成部位には同じ符号を付け詳説を省略し、以下に実施例1との主な相違点について説明する。
【0027】
上記オイルフィルタ1Cは、図9に示すように、濾過エレメント18、上下側の塞ぎ板19a,19b(本発明に係る「濾過室形成部」として例示する。)及びオイル導出管5を備えて構成されている。
【0028】
上記濾過エレメント18は、不織布からなるひだ折り状の濾材20を末広がりの傘筒状に形成してなされている。この濾過エレメント18の上下端部には、その中心穴を塞ぐように樹脂製であり円盤状の上下側の塞ぎ板19a,19bが接着剤等で接合されている。そして、上下側の塞ぎ板19a,19b及び濾材20の間には、濾材20で濾過されたオイルが通過するクリーン側の濾過室Sが形成されている。
なお、本オイルフィルタ1Cをオイルパン2内に配設した際に、濾材20の外側面20aからリターンオイルを導入して濾過するように筒状の濾過エレメント18は垂直配置される。
【0029】
上記上側の塞ぎ板19aの中心部には、樹脂製のオイル導出管5が一体に成形されている。このオイル導出管5は、濾過室Sの内部に開口する下端側の吸込口11及び濾過室Sの外部に開口する上端側の流出口12を有している。この吸込口11は、濾過エレメント18の濾材20の上側部より下方で開口するように配置されている。また、このオイル導出管5の下部は、鉛直方向に傾斜して延びており、その吸込口11は、車両旋回時や坂路走行時等のオイルパン2内の油面変動が生じた場合にエアを吸わないように、その開口が常にオイル中に浸る位置に配設されている。また、オイル導出管5の流出口12は、バルブボディの形状やオイルポンプの位置等により決定される位置に配設されている。
【0030】
次に、上記オイルフィルタ1Cの作用・効果について説明する。
オイルパン2内に戻されるリターンオイルは、オイルパン2内に露出する濾材20の外側面20aから濾過室S内に導入される。このように、オイルが濾材20を通過する際に、オイル中に含有される異物、不純物等は濾材20によって除去される。この異物等の除去されたオイルは、吸込口11からオイル導出管5内に流入して流出口12からオイルフィルタ1Aの外部に流れ出る。
【0031】
以上より、本実施例3のオイルフィルタ1Cでは、筒状の濾過エレメント18を、濾材20の外側面20aからオイルを導入して濾過するように垂直配置すると共に、オイル導出管5を、濾過室形成部を構成する塞ぎ板19aに一体に成形したので、アッパケース及びロアケースを省略できて、部品点数を削減でき且つ厚さ方向に小型化できる。
また、本実施例3のオイルフィルタ1Cでは、オイル導出管5の吸込口11を、濾材20の上側部(一部)より下方で開口するように配置したので、吸込口11がオイルパン2の底壁から比較的近い位置に配設されることとなり、オイルパン2内で油面変動が生じてもオイル導出管5の吸込口11からエアを吸い込んでしまうことを防止できる。
さらに、本実施例3のオイルフィルタ1Cでは、オイル導出管5の下部を、鉛直方向に傾斜して延びるように構成したので、オイル導出管5の吸込口11を、エアの吸い込みをより確実に防止できる位置に設けることができる。
【0032】
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例1では、濾過エレメント3として、樹脂枠8を構成する濾材支持部8aの一側方に設けた箱状の管支持部8bにオイル導出管5を一体に成形してなるものを例示したが、これに限定されず、例えば、図10及び11に示すように、樹脂枠8の濾材支持部8bの対向片の間に掛け渡される補強用の中間壁23に、オイル導出管5を一体に成形してなる濾過エレメントとしてもよい。
また、上記実施例1では、オイル導出管5の吸込口11が濾材7の下面より下方で開口する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、オイル導出管5の吸込口11が濾材7の下面より上方であり且つ濾材7の上端側(一部)より下方で開口するようにしてもよい。
【0033】
また、上記実施例2では、樹脂製のオイルパン2の突起部16と樹脂枠8とを溶着する形態を例示したが、これに限定されず、例えば、図12に示すように、鉄板等の金属製のオイルパン2の底壁部に、樹脂枠8の下側周縁部8cと略同じ形状の周状の凹部25を設け、この凹部25に樹脂枠8の下側周縁部8cを挿入して、その下側周縁部8cをエポキシ系接着剤等で接着するようにしてもよい。また、例えば、図13に示すように、鉄板等の金属製のオイルパン2の底壁部に、樹脂枠8の下側周縁部8cと略同じ形状の周状の凸部26を設け、この凸部26の上面にゴム等からなる周状のシール部材27を設け、このシール部材27に樹脂枠8の下側周縁部8cが圧接するように、その下側周縁部8cの適宜箇所をボルト固定28するようにしてもよい。
【0034】
また、上記実施例3では、濾過エレメント18として、不織布からなるひだ折り状の濾材20を末広がりの傘筒状に形成してなるものを例示したが、これに限定されず、例えば、不織布からなるひだ折り状の濾材を菊花筒状に形成してなる濾過エレメントとしてもよい。
また、上記実施例3では、樹脂製の上側の塞ぎ板19aにオイル導出管5を一体に成形するようにしたが、これに限定されず、例えば、濾紙製、樹脂製、鉄板等の金属製等の上側の塞ぎ板にオイル導出管を接着剤により接着するようにしてもよい。
また、上記実施例3において、オイル導出管5の外周面に、濾材のひだ折り形状に相当するガイド片を設けるようにしてもよい。これにより、容易に均等なひだを配置できる。
さらに、上記実施例3において、オイル導出管5の外周面に、オイルパン2及び/又はバルブボディ6に形成された被係止部に係止する係止部29(図9参照)や取付けステーを設けるようにしてもよい。これにより、容易にオイル導出管5の位置決めを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
車両等の自動変速機用オイルを濾過するフィルタとして利用される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1に係るオイルフィルタの分解斜視図である。
【図2】実施例1に係るオイルフィルタの平面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】実施例1に係るオイルフィルタの作用説明図である。
【図6】実施例2に係るオイルパンの平面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】実施例2に係るオイルフィルタの作用説明図である。
【図9】実施例3に係るオイルフィルタの斜視図である。
【図10】その他の形態のオイルフィルタの平面図である。
【図11】図10のXI−XI線断面図である。
【図12】更にその他の形態のオイルフィルタの要部縦断面図である。
【図13】更にその他の形態のオイルフィルタの要部縦断面図である。
【図14】従来のオイルフィルタの縦断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1A〜1C;オイルフィルタ、2;オイルパン、3,18;濾過エレメント、4;ロアケース、5;オイル導出管、7,20;濾材、8;樹脂枠、11;吸込口、12;流出口、14;オイルパンの内壁部、19a,19b;塞ぎ板、S;濾過室。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルパン内に貯留されたオイルに浸されるように該オイルパン内に設けられる自動変速機用オイルフィルタであって、
オイルを濾過する濾過エレメントと、
前記濾過エレメントで濾過されたオイルが通過するクリーン側の濾過室を該濾過エレメントとの間で形成する濾過室形成部と、
前記濾過エレメント及び/又は前記濾過室形成部に設けられ、且つ、前記濾過室の内部に開口する吸込口及び該濾過室の外部に開口する流出口を有するオイル導出管と、を備え、
前記濾過エレメントは、その上面又は外側面からオイルを導入して濾過するように配置されており、前記オイル導出管の前記吸込口は、前記濾過エレメントの少なくとも一部より下方で開口するように配置されていることを特徴とする自動変速機用オイルフィルタ。
【請求項2】
前記濾過エレメントは、濾材と、該濾材を支持する樹脂枠と、を有し、前記オイル導出管は、該樹脂枠と一体に成形されている請求項1記載の自動変速機用オイルフィルタ。
【請求項3】
前記濾過エレメントは、濾材と、該濾材を支持する樹脂枠と、を有し、該樹脂枠は、前記濾過室形成部としての前記オイルパンの内壁部に固着されている請求項1又は2に記載の自動変速機用オイルフィルタ。
【請求項4】
前記オイル導出管の下部は、鉛直方向に傾斜して延びている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自動変速機用オイルフィルタ。
【請求項1】
オイルパン内に貯留されたオイルに浸されるように該オイルパン内に設けられる自動変速機用オイルフィルタであって、
オイルを濾過する濾過エレメントと、
前記濾過エレメントで濾過されたオイルが通過するクリーン側の濾過室を該濾過エレメントとの間で形成する濾過室形成部と、
前記濾過エレメント及び/又は前記濾過室形成部に設けられ、且つ、前記濾過室の内部に開口する吸込口及び該濾過室の外部に開口する流出口を有するオイル導出管と、を備え、
前記濾過エレメントは、その上面又は外側面からオイルを導入して濾過するように配置されており、前記オイル導出管の前記吸込口は、前記濾過エレメントの少なくとも一部より下方で開口するように配置されていることを特徴とする自動変速機用オイルフィルタ。
【請求項2】
前記濾過エレメントは、濾材と、該濾材を支持する樹脂枠と、を有し、前記オイル導出管は、該樹脂枠と一体に成形されている請求項1記載の自動変速機用オイルフィルタ。
【請求項3】
前記濾過エレメントは、濾材と、該濾材を支持する樹脂枠と、を有し、該樹脂枠は、前記濾過室形成部としての前記オイルパンの内壁部に固着されている請求項1又は2に記載の自動変速機用オイルフィルタ。
【請求項4】
前記オイル導出管の下部は、鉛直方向に傾斜して延びている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自動変速機用オイルフィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−115969(P2008−115969A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300826(P2006−300826)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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