説明

自動変速装置のシフト操作装置

【課題】 自動変速装置のシフト操作において、従来安全性の確保のために操作に2つの動作が必要であったが、これを前後の操作のみの1アクション・ストレート操作タイプとしてシフトレバーの素早い操作ができるようにする。
【解決手段】 シフトレバーの前後の操作のみでシフト操作するもので、Pレンジから他のレンジへの操作を拘止するPロックと、NレンジからRレンジへの操作を拘止するN−Rロックと、RレンジからPレンジへの操作を拘止するR−Pロックを、1個のソレノイド装置のオン,オフ作動で制御するロック機構9を設け、ソレノイド装置への通電を、イグニッションスイッチとPレンジのシフトを検出するPスイッチ7と、Rレンジのシフトを検出するRスイッチ8と、ブレーキペダル踏込みを検出するブレーキペダルスイッチと、車速が所定値以下であることを検出する車速スイッチとの各スイッチ信号によって制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用自動変速装置のシフト操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用自動変速装置のシフト操作装置において、シフト操作のパターンとしては、操作レバーを一度横(セレクト方向)に傾けてから前後(シフト方向)に操作するゲート操作タイプ(下記特許文献1〜4参照)と、操作レバーのグリップ部に設けた押しボタンと連動するピン(ロック部材)と操作レバー位置を規制するガイド溝との組合せよりなり、上記押しボタンを押圧操作することで上記ピンとガイド溝の係合を解除させた状態でシフトレバーを前後操作(シフト操作)するストレート操作タイプ(下記特許文献5参照)とがある。
【0003】
上記ゲート操作タイプのもの及びストレート操作タイプのものは、誤操作を防止するために、2つの操作(レバーを横に傾けて前後操作,グリップの押しボタンを押して前後操作)を行って目的のポジションまで操作レバーを動かす、という方法を採っているが、更なる誤操作の防止と盗難防止のために、他機能(イグニッションキーやブレーキペダル操作等)と連動してPレンジからDレンジ方向への操作をロック(Pロック)するロック機構(電気式・機械式)を備えたシフトレバーが現在主流である。また、安全性の更なる向上のために、上記Pロック機能に加え、NレンジからRレンジへの操作を設定車速以上の範囲でロックするN−Rロック機能を上記ロック機構に併せもたせたものもある。
【特許文献1】特開2000−213634号公報
【特許文献2】特開2002−192976号公報
【特許文献3】特開平8−334167号公報
【特許文献4】特開平9−196154号公報
【特許文献5】特開2004−67014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のゲート操作タイプのもの及びストレート操作タイプのものは、何れもシフト操作に2つの動作が必要である。このことは、上述したように、誤操作防止という目的は果たし得るものの、操作が2アクションであるために素早いシフト操作には不向きであるという課題を有している。
【0005】
シフトレバーの素早い操作には、前後のシフト操作のみの1アクション・ストレート操作タイプのものが望ましいが、そのためには安全性の確保のために、現在主流の上記ロック機構のPロック機能(PレンジからDレンジ方向への操作をロックする機能)及びN−Rロック機能(NレンジからRレンジ方向への操作をロックする機能)だけでなく、RレンジからPレンジへの操作をロックするR−Pロック機能を設けて誤操作を防止することが必要となる。
【0006】
ところが、現在Pロック機能とN−Rロック機能は1個のソレノイド装置よりなるロック機構で成立しているが、そこにRレンジからPレンジ方向へのシフトをロックする機能(R−Pロック機能)をいれようとすると、ロック部材の作動方向の関係で、更に新たにソレノイドを追加して別個に制御する必要がある。このように、ソレノイドを2個使用するのでは、重量・コスト・生産性のいずれの面でも不利となり、実用化は非常に困難となる。
【0007】
本発明は、1個のソレノイドでPロック,N−Rロック,R−Pロックの3ケ所のロックを行うことができるロック機構を提供することにより、前後のシフト操作のみの1アクション・ストレート操作タイプのシフト操作装置の実現をはかることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前後方向の直線上に、少なくとも、P(パーキング)レンジ、R(リバース)レンジ、N(ニュートラル)レンジ、D(ドライブ)レンジの複数のシフトレンジを有し、シフトレバーの前後方向にストレートなシフト操作で上記複数のシフトレンジの一つを選択することができる自動車用自動変速装置のシフト操作装置において、シフトレバーのシフト位置がPレンジであることを検出するPスイッチと、シフトレバーのシフト位置がRレンジであることを検出するRスイッチとを設け、Pレンジから他のレンジへのシフト操作をロックするPロックと、NレンジからRレンジへのシフト操作をロックするN−Rロックと、RレンジからPレンジへのシフト操作をロックするR−Pロックを、1個のソレノイド装置への通電,非通電の作動で制御するロック機構を設けると共に、該ソレノイド装置への通電,非通電を、イグニッションスイッチと上記PスイッチとRスイッチの3つのスイッチのオン,オフ信号と、ブレーキペダルを踏んでいるかどうかを検出するブレーキペダルスイッチの信号と、車速が設定された所定値以下であるかどうかを検出する車速スイッチの信号とによって制御することを特徴とするものである。
【0009】
そして、上記ロック機構は、1個のソレノイド装置と、第1ロックアームと、第2ロックアームと、上記ソレノイド装置の作動片と第1ロックアーム及び第2ロックアームとをそれぞれ連繋する第1リンクと第2リンクとからなり、ソレノイド装置への通電,非通電によって引っ込み,突出作動する上記作動片の作動により、第1リンクと第2リンクが互いに逆方向に作動し、第1ロックアームと第2ロックアームとは、一方がシフトレバーのシフト操作をロックするロック位置に作動すると、他方はシフトレバーのシフト操作をロックしない非ロック位置に作動する構成となっていることを特徴とするものである。
【0010】
また、シフトレバーのシフト位置がNレンジであるときロック位置にある第1ロックアームに係合してRレンジ方向へのシフト操作を拘止する第1係合部と、シフトレバーのシフト位置がRレンジであるときロック位置にある第2ロックアームに係合してPレンジ方向へのシフト操作を拘止する第2係合部と、シフトレバーのシフト位置がPレンジであるときロック位置にある第1ロックアームに係合して他のレンジへのシフト操作を拘止する第3係合部との3箇所の係合部を形成した係合突部を、上記シフトレバーに設けたことを特徴とするものである。
【0011】
更に、第1リンクと第1ロックアームとの連繋部、及び第2リンクと第2ロックアームとの連繋部は、第1ロックアームと第2ロックアームにそれぞれ設けた切欠きに第1リンクの先端部と第2リンクの先端部がそれぞれ係合した構造となっており、ソレノイド装置の作動片の作動による第1リンクと第2リンクの回動作動とそれぞれのロックアームを突出する方向に付勢するスプリングとにより第1ロックアームと第2ロックアームは軸方向に突出したロック位置と軸方向に引っ込んだ非ロック位置となるよう構成されることを特徴とするものである。
【0012】
更にまた、第1と第2のロックアームがそれぞれ突出方向に作動するとき、その突出作動に対向する位置に係合突部の側面がある場合は、突出しようとしたロックアームの先端が当ってロック位置まで突出できず、係合突部の側面がロックアームの先端に摺接してシフトレバーを自由にシフト操作できる空振り状態となるよう、第1と第2のリンクの先端部と第1と第2のロックアームとのそれぞれの連繋部に所定ストロークの遊びをもたせた構造となっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記のような構成を採用したことにより、PロックとN−RロックとR−Pロックとを、1個のソレノイド装置の通電(オン),非通電(オフ)の作動のみにて的確に行うことができ、シフトレバーの誤操作が防止され安全性が確保されることにより、従来の2アクションのシフト操作の必要がなくなり、前後のシフト操作のみの1アクション・ストレート操作タイプのシフト操作装置の実現が可能となり、安全性確保のために2アクションの操作が必要であった従来のシフト操作装置に比べて、より素早いシフト操作が可能となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態につき、付図の実施例を参照にて説明する。
【0015】
図1〜4において、1は変速操作装置の基台であり、該基台1は自動車の車体側部材例えばフロアのセンタトンネル部に装着される。該基台1の下部には基軸2が回転可能に支持され、基台1の上部は上蓋3で覆われる。
【0016】
上記基軸2にはシフトレバー5の下端部が取付けられ、該シフトレバー5は上蓋3のゲート穴4を貫通して上方に延び、その上端部にはグリップ5aが嵌着され、ドライバーが該グリップ5aを握ってシフトレバー5を前後に回動操作することにより、上記基軸2に連係支持されたセレクトアーム6が前後方向に回動して所定の変速操作が行われるようになっている。
【0017】
上記上蓋3に設けられるゲート穴4の形状は、シフト操作のパターンに一致するものであり、本実施例では、図2に示すように、前後方向にストレートに延びるATモード(自動変速モード)用のメインゲート41と、該メインゲート41の後端部位置(後述するDレンジ位置)の一側方に設けられた短い前後方向溝よりなるマニュアルモード用のサブゲート42と、上記メインゲート41の後端部(Dレンジ位置)とサブゲート42の前後方向ほぼ中央部とを連通する横向きの連通ゲート43とからなる例を示している。そして、メインゲート41には、通常の自動車用自動変速装置の変速ポジション、即ち前から後に向けてP(パーキング)・R(リバース)・N(ニュートラル)・D(ドライブ)の各レンジのポジションが設定され、シフトレバー5を該メインゲート41に沿って前後にストレートに回動操作することにより、上記各レンジのうちの一つを選択シフトすることができるようになっている。
【0018】
そして、シフトレバー5がDレンジ位置にある状態で、該シフトレバー5を横方向に操作し連通ゲート43を通ってサブゲート42の中央部に位置させると、該シフトレバー5とセレクトアーム6との連繋が外れてシフトレバー5の前後方向操作がセレクトアーム6に伝達されず変速ポジションがDレンジに固定された状態となり、その状態でシフトレバー5をサブゲート42に沿って前後に操作すると、サブゲート42の前後部にそれぞれ設けたシフトアップスイッチ42aとシフトダウンスイッチ42bの各作動信号によって、各作動信号毎に設定された変速パターンに従って段階的にシフトアップ,シフトダウンされる、というマニュアルモードとなる。
【0019】
このように、通常の自動変速装置の変速ポジション即ちP・R・N・Dの各レンジのポジションを設定したメインゲート41にマニュアルモード用のサブゲート42を並設した自動車用自動変速装置は、前掲の複数の特許文献にも記載されているように従来より公知であり、ATモードからマニュアルモードへの切換えの機構及び制御等も従来より種々公開され実用化されているものであるから、自動変速装置のマニュアルモード付きシフト操作装置についての上記以上の詳しい説明は省略する。
【0020】
また本発明は、ATモードのシフト操作を前後方向のみの1アクション・ストレートに行うようにするために、Pレンジのロック(Pロック)・NレンジからRレンジ方向への操作をロック(N−Rロック)・RレンジからPレンジ方向への操作をロック(R−Pロック)という3位置のロックを1個のソレノイド装置で成立させることを目的とするものであるから、図示のマニュアルモード用のシフト操作機構は本発明には直接的な関係はなく、サブゲート42及び連通ゲート43を省略して前後方向のメインゲート41のみのシフト操作パターンのものにも当然本発明は適用可能なるものである。従って以下の説明では、マニュアルモードの系統は省略し、メインゲート41に沿う前後方向のストレートなシフト操作パターンについてのみ行う。尚、メインゲート41のシフトポジションは、図示のP・R・N・Dの4ポジションに限らず、これら4ポジションのDレンジの後方にL(ロー)・EL(エキストラ・ロー)等のポジションをストレートに連続させたストレートシフト操作パターンのものにも本発明は適用可能である。
【0021】
図1〜4において、メインゲート41には、シフトレバー5のシフト位置がPレンジであることを検出してP信号を発するPスイッチ7と、シフト位置がRレンジであることを検出してR信号を発するRスイッチ8が設けられる。
【0022】
基台1には、1個のソレノイド装置10と該ソレノイド装置10のオン,オフで出没作動する2本のロックアーム11,12とを備えたロック機構9が取付けられる。
【0023】
シフトレバー5の下部には前方に向けて突出する係合突部51が一体的に設けられ、該係合突部51の下面には第1係合部52と第2係合部53とが段差をもって階段状に形成され、係合突部51の上面には第3係合部54が形成され、前記ロック機構9の2本のロックアーム11,12が係合突部51の第1〜第3の係合部に52,53,54に係合することにより、Pロック,N−Rロック,R−Pロックを行うようになっている。
【0024】
次に、上記ロック機構9の詳細を図5〜6を参照して説明する。
【0025】
ロック機構9は、図5〜6に示すように、1個のソレノイド装置10と、第1ロックアーム11と第2ロックアーム12と、上記ソレノイド装置10の作動片13と前記第1ロックアーム11,第2ロックアーム12とをそれぞれ連繋する第1リンク14と第2リンク15とをケース17内に組み込んでユニット化した構成となっている。
【0026】
第1と第2のロックアーム11と12は、突出したロック位置と引っ込んだ非ロック位置との間を軸方向に移動可能なるようケース16内に支持され、各ロックアーム11,12は突出する方向にそれぞれスプリング11aと12aにて付勢されている。
【0027】
上記第1と第2のリンク14と15は、双方共にソレノイド装置10の作動片13の作動中心線の延長上又はその近傍に設けた軸16に回動可能に支持され、先端部14a,15aが第1と第2のロックアーム11,12の切欠き11b,12bに係合している。この14a,15aと切欠き11b,12bの係合は、軸方向に所定ストロークの範囲は相対的にスライド可能なるよう、遊びをもたせた係合となっている。
【0028】
ソレノイド装置10の作動片13は先端が左右二股になっていて、該二股の一方13aは前記軸16よりロックアーム側で第1リンク14に連繋され、二股の他方13bは軸16よりロックアームの反対側で第2リンク15に連係され、ソレノイド装置10の通電(オン),非通電(オフ)による作動片13の引っ込み,突出の作動によって、第1リンク14と第2リンク15は互いに逆方向に回動するよう構成されている。
【0029】
即ち、ソレノイド装置10の非通電時は、図5に示すように、作動片13がソレノイド装置10内のリターンスプリング(図示省略)のばね力にて突出した位置にあり、この状態では第1ロックアーム11はスプリング11aのばね力で突出したロック位置となり、第2ロックアーム12はスプリング12aに抗して引っ込んだ非ロック位置となる。
【0030】
この状態からソレノイド装置10に通電すると、作動片13がソレノイド装置10の電磁力にて引き込まれる。すると、第1リンク14は平面視で反時計方向に、第2リンク15は平面視で時計方向にそれぞれ回動し、図6に示すように、第1ロックアーム11はスプリング11aのばね力に抗して引っ込められて非ロック位置となり、第2ロックアーム12はスプリング12aのばね力にて突出してロック位置となる。
【0031】
この通電状態からソレノイド装置10への通電を切り非通電状態とすると、作動片13は突出して、第1リンク14は平面視で時計方向に、第2リンク15は平面視で反時計方向にそれぞれ回動し、図5(A)(B)に示すように、第1ロックアーム11はロック位置、第2ロックアーム12は非ロック位置に戻る。
【0032】
非ロック位置にある第1か第2の何れかのロックアームの前端に対向する位置にシフトレバー5の係合突部51の側面がある場合は、そのロックアームが突出作動したとき該ロックアームの先端が係合突部51の側面に当って、例えば図5(C)に示すように、ロック位置まで突出することができないが、ロックアームの切欠き(11b,12b)とリンクの先端部(14a,15a)との係合部に所定ストロークの遊びがもたせてあるから、ロック位置まで突出できなかった該ロックアームは空振り状態となり、係合突部51は該ロックアームの先端に摺接して自由に移動できる。
【0033】
以上のように構成したロック機構9を基台1に取付ける。そして、図1〜4に示すように、シフトレバー5のNレンジ位置で第1ロックアーム11が係合突部51の第1係合部52に係合し、シフトレバー5のRレンジ位置で第2ロックアーム12が係合突部51の第2係合部53に係合し、シフトレバー5のPレンジ位置で第1ロックアーム11の下面に係合突部51上面の第3係合部54が係合し得るように位置を設定する。
【0034】
次に、ソレノイド装置10への通電制御について説明する。
【0035】
ソレノイド装置10への通電の制御は、イグニッションスイッチ,Pスイッチ7,Rスイッチ8の各スイッチの信号と、ブレーキペダルを踏んでいるかどうか(ブレーキ操作の有無)を検出するブレーキペダルスイッチの信号と、車速が設定された所定値(例えば10Km/h)以下かどうかを検出する車速スイッチの信号とによって行われる。これらのスイッチ類によるソレノイド装置10への通電制御及びそれに基づく第1と第2のロックアーム11,12の作動、ロックの状態等をまとめると、下掲の表1に示す通りである。
【0036】
【表1】

【0037】
先ず、自動車のパーキング時は、イグニッションスイッチはオフであり、シフトレバー5はPレンジ位置にあるからPスイッチはオン、Rスイッチはオフであり、ブレーキペダルは踏んでおらず、車速は0であるから所定車速以下であり、この状態ではソレノイド装置10は非通電であるから、図5(A)(B)に示すように、第1ロックアーム11はロック位置、第2ロックアーム12は非ロック位置となり、係合突部51の第3係合部54がロック位置にある第1ロックアーム11の下側に係合してPレンジからDレンジ方向へのシフトレバー5のシフト操作がロックされた状態、即ちPロック状態を保持している。
【0038】
このパーキング状態から、イグニッションスイッチをオンとし、ブレーキペダルを踏み込むと、ソレノイド装置10に通電され、第1ロックアーム11は引っ込んで非ロック位置となり、第3係合部54との係合は解除される。第2ロックアーム12は突出しようとするが、そのとき係合突部51の側面が第2ロックアーム12の先端に対向する位置にあるので、第2ロックアーム12は先端が係合突部51の側面に当って空振り状態となり、シフトレバー5は自由にDレンジ方向にシフト操作できる状態(Pロック解除状態)となる。
【0039】
Dレンジである程度以上の速度で走行しているときは、イグニッションスイッチはオンで、Pスイッチ7とRスイッチ8は共にオフであり、ブレーキペダルは踏んでおらず、車速は所定値(例えば10Km/h)以下ではないから、ソレノイド装置10は非通電であり、図5(A)(B)に示すように、第1ロックアーム11は突出したロック位置、第2ロックアーム12は非ロック位置となっている。この状態でシフトレバー5をNレンジ方向にシフト操作する場合、Nレンジ位置で係合突部51の第1係合部52がロック位置にある第1ロックアーム11に係合してRレンジ方向への操作をロック(N−Rロック)する。
【0040】
上記N−Rロックの状態で、車速が所定値(例えば10Km/h)以下になると、ソレノイド装置10に通電され、図6のように、第1ロックアーム11は引っ込んで非ロック位置、第2ロックアーム12は突出してロック位置となり、N−Rロックは解除され、NレンジからRレンジへのシフト操作が可能となる(N−Rロック解除)。この場合ブレーキペダルは踏んでおらず、Pスイッチ7とRスイッチ8はオフ、イグニッションスイッチは当然オンである。
【0041】
このN−Rロック解除状態にて、シフトレバー5をNレンジからRレンジへシフト操作すると、Rレンジ位置で係合突部51の第2係合部53がロック位置にある第2ロックアーム12に係合しPレンジ方向への操作をロック(R−Pロック)する。シフトレバー5をRレンジにシフトするとRスイッチはオンとなり、この状態では車速が上記所定値を越えてもソレノイド装置10への通電は維持され、R−Pロック状態は引き続き保持される。
【0042】
上記R−Pロック保持状態ではブレーキペダルは踏んでいないが、この状態からブレーキペダルを踏み、車速が上記所定値以下になると、ソレノイド装置10への通電が切られて非通電状態となり、第2ロックアーム12は引っ込んで非ロック位置となりR−Pロックは解除される。第1ロックアーム11は突出しようとするが、図5(C)に示すように、第1ロックアーム11はその先端が係合突部51の側面に当ってロック位置にならず空振り状態となり、シフトレバー5をPレンジにシフト操作することができる。
【0043】
Pレンジ位置にシフトが完了すると、係合突部51は第1ロックアーム11の先端より下方に外れ、その時点で第1ロックアーム11は突出してロック位置となり、係合突部51の第3係合部54がロック位置となった第1ロックアーム11の下側に係合してPロック状態となる。Pレンジにシフトされると、Pスイッチ7はオン、Rスイッチはオフとなり、その状態でイグニッションスイッチをオフとするとソレノイド装置10は非通電状態に維持され、Pロック状態は引き続き保持される。
【0044】
上記ロック機構9によって、PロックとN−RロックとR−Pロックとを、1個のソレノイド装置のオン,オフ作動のみにて的確に行うことができ、シフトレバーの誤操作が防止され安全性が確保されることにより、前後のシフト操作のみの1アクション・ストレート操作タイプのシフト操作装置の実現が可能となり、2アクションの操作が必要であった従来のシフト操作装置に比べて、より素早いシフト操作が可能となるものである。
【0045】
尚、シフトレバーの各レンジへのシフト位置の確認のための節度付与機構は、図示は省略しているが、従来同様に固定側(基台側の部材)とシフトレバー側との間に設けられるものとする。
【0046】
又、図示実施例では、Pスイッチ7やRスイッチ8等のシフト位置を検出するスイッチをシフトレバー5の変速操作を案内するゲート穴4に沿って設けた例を示しているが、本発明は上記に限らず、例えばトランスミッション側に設けたシフト位置検出スイッチをPスイッチ,Rスイッチとして用いてもよく、要するにシフト位置がPレンジ,Rレンジであることをそれぞれ検出できる任意の検出手段を採用することができる。
【0047】
更に又、図示の実施例では、ロック機構9をシフトレバー5の前方に取付け、ロック機構9のロックアームに係合する係合突部51をシフトレバー5から前方に向けて突設した例を示しているが、ロック機構の設置位置は上記に限らない。例えば、ロック機構をシフトレバー5の後方位置にて基台1に取付け、ロック機構のロックアームに係合する係合突部51をシフトレバー5から後方向きに突設した構成としても良い。この場合は、ロック機構の第1ロックアームと第2ロックアームとの上下関係を図示とは逆とし、第1係合部52と第2係合部53を係合突部51の上面に形成し、第3係合部54を係合突部51の下面に形成する、というように係合方向が逆になることに対処して具体的構造を少し変えることで容易に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施例を示すもので、(A)はNレンジにシフトしている状態の縦断側面図、(B)は平面図で上蓋を省略して示している。
【図2】図1のものにおいて,上蓋を装着した状態の要部平面図である。
【図3】図1のものにおいて、Rレンジにシフトした状態の縦断側面図である。
【図4】図1のものにおいて、Pレンジにシフトした状態の縦断側面図である。
【図5】図1に示すロック機構の構造例で非通電時を示すもので、(A)はケースの上面(カバー)を外して内部を示す平面図、(B)は(A)のロックアーム部の断面図、(C)は第1ロックアームの空振り状態を示す断面図、(D)は(A)のD−D断面図である。
【図6】図5のロック機構の通電時を示すもので、(A)はケースの上面(カバー)を外して内部を示す平面図、(B)は(A)のロックアーム部の断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 基台
2 基軸
3 上蓋
4 ゲート穴
5 シフトレバー
6 セレクトアーム
7 Pスイッチ
8 Rスイッチ
9 ロック機構
10 ソレノイド装置
11 第1ロックアーム
12 第2ロックアーム
13 作動片
14 第1リンク
15 第2リンク
16 軸
17 ケース
51 係合突部
52 第1係合部
52 第2係合部
53 第3係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向の直線上に、少なくとも、P(パーキング)レンジ、R(リバース)レンジ、N(ニュートラル)レンジ、D(ドライブ)レンジの複数のシフトレンジを有し、シフトレバーの前後方向にストレートなシフト操作で上記複数のシフトレンジの一つを選択することができる自動車用自動変速装置のシフト操作装置において、シフトレバーのシフト位置がPレンジであることを検出するPスイッチと、シフトレバーのシフト位置がRレンジであることを検出するRスイッチとを設け、Pレンジから他のレンジへのシフト操作をロックするPロックと、NレンジからRレンジへのシフト操作をロックするN−Rロックと、RレンジからPレンジへのシフト操作をロックするR−Pロックを、1個のソレノイド装置への通電,非通電の作動で制御するロック機構を設けると共に、該ソレノイド装置への通電,非通電を、イグニッションスイッチと上記PスイッチとRスイッチの3つのスイッチのオン,オフ信号と、ブレーキペダルを踏んでいるかどうかを検出するブレーキペダルスイッチの信号と、車速が設定された所定値以下であるかどうかを検出する車速スイッチの信号とによって制御することを特徴とする自動変速装置のシフト操作装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動変速装置のシフト操作装置において、ロック機構は、1個のソレノイド装置と、第1ロックアームと、第2ロックアームと、上記ソレノイド装置の作動片と第1ロックアーム及び第2ロックアームとをそれぞれ連繋する第1リンクと第2リンクとからなり、ソレノイド装置への通電,非通電によって引っ込み,突出作動する上記作動片の作動により、第1リンクと第2リンクが互いに逆方向に作動し、第1ロックアームと第2ロックアームとは、一方がシフトレバーのシフト操作をロックするロック位置に作動すると、他方はシフトレバーのシフト操作をロックしない非ロック位置に作動する構成となっていることを特徴とする自動変速装置のシフト操作装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自動変速操作装置のシフト操作装置において、シフトレバーのシフト位置がNレンジであるときロック位置にある第1ロックアームに係合してRレンジ方向へのシフト操作を拘止する第1係合部と、シフトレバーのシフト位置がRレンジであるときロック位置にある第2ロックアームに係合してPレンジ方向へのシフト操作を拘止する第2係合部と、シフトレバーのシフト位置がPレンジであるときロック位置にある第1ロックアームに係合して他のレンジへのシフト操作を拘止する第3係合部との3箇所の係合部を形成した係合突部を、上記シフトレバーに設けたことを特徴とする自動変速装置のシフト操作装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の自動変速操作装置のシフト操作装置において、第1リンクと第1ロックアームとの連繋部、及び第2リンクと第2ロックアームとの連繋部は、第1ロックアームと第2ロックアームにそれぞれ設けた切欠きに第1リンクの先端部と第2リンクの先端部がそれぞれ係合した構造となっており、ソレノイド装置の作動片の作動による第1リンクと第2リンクの回動作動とそれぞれのロックアームを突出する方向に付勢するスプリングとにより第1ロックアームと第2ロックアームは軸方向に突出したロック位置と軸方向に引っ込んだ非ロック位置となるよう構成されることを特徴とする自動変速操作装置のシフト操作装置。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れかに記載の自動変速装置のシフト操作装置において、第1と第2のロックアームがそれぞれ突出方向に作動するとき、その突出作動に対向する位置に係合突部の側面がある場合は、突出しようとしたロックアームの先端が当ってロック位置まで突出できず、係合突部の側面がロックアームの先端に摺接してシフトレバーを自由にシフト操作できる空振り状態となるよう、第1と第2のリンクの先端部と第1と第2のロックアームとのそれぞれの連繋部に所定ストロークの遊びをもたせた構造となっていることを特徴とする自動変速装置のシフト操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−103443(P2006−103443A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290962(P2004−290962)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(591185423)千代田工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】