説明

自動検札システム及び自動検札に用いられる端末装置

【課題】
鉄道のチケット管理において、旅客端末による車内検札および不使用指定券の再販をおこなうシステムを安価に実現する。
【解決手段】
座席識別装置1100が、利用者の旅客端末1200からの要求に応答して座席識別装置1100が保持する座席IDを旅客端末1200へ送信し、旅客端末1200がその座席IDと旅客端末1200が保持する予約IDとを予約管理システム1300へ送信し、予約管理システム1300が、座席IDおよび現在時刻から定まる車両及び座席と予約IDに対応する車両及び座席とを照合し、その照合結果を検札情報として保持または転送または開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道やバスなどの交通機関のチケット管理システムおよび方法に関し、とくに指定券などの自動検札および不行使指定券の再販のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の鉄道予約システムでは、指定券を所持する旅客が前後の列車の自由席に乗ってしまう場合があり、実際には空席があるのに指定席を販売できないことが問題となっている。
【0003】
特許文献1では、自動改札機による不行使指定券の検出の方法が提案されている。
【0004】
特許文献2では、車掌端末による検札および不行使指定券の検出の技術が記載されている。
【0005】
特許文献3では、座席に設置されたチケットリーダに指定席券を通し、指定関番号を読み込ませ、集中管理端末にて、その指定関番号と座席番号を比較して、これが一致したときに乗客が指定席に着いたと判断することが記載されている。
【0006】
非特許文献1では、首都圏ではICカード乗車券を用いてグリーン車の自動検札が実現されている。
【0007】
【特許文献1】特開平10−172014号公報
【特許文献2】特開平5−101085号公報
【特許文献3】特開2003−77016号公報
【非特許文献1】http://www.jreast.co.jp/suica/etc/green/
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1は、改札時点で指定券の不行使を判定しようとするものであり、指定より早い列車に乗車したかどうかの確実な判定は困難である。特許文献2は車掌による検札を前提としており、車掌・旅客の双方にとって負担が大きい。特許文献3や非特許文献1は、車載サーバ・各座席用ICカードリーダ・それらの配線設備などを車内に埋め込む必要があり、多額の導入費用を必要とする。
【0009】
本発明は、指定券の自動検札および不行使指定券の再販のためのシステムを安価に提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、指定券の自動検札および不行使指定券の再販のためのシステムを複雑化せずに実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の自動検札システムは、車上の各座席に設置した座席識別装置、各旅客が所持する携帯端末、地上の予約管理システム、車上の係員用端末、の各部からなる構成とする。
【0012】
座席識別装置とは、車両・座席を一意に識別するID等の座席識別情報を携帯端末に提供するものであり、典型的には2次元バーコードやICタグを備えた紙片からなる。携帯端末とは、座席識別装置からの座席識別情報の読み取り・予約内容や旅客識別情報などの保持・左記の各種情報の予約管理システムへの通知をおこなうものであり、典型的にはICカードおよびカメラなどを備えた携帯電話からなる。予約管理システムとは、携帯端末から受け取った情報をもとに指定券の行使状況を判定し不行使の場合はキャンセル処理をおこなうものであり、典型的には運行情報・会員情報・予約情報などのデータベースおよび時計を備えたサーバ計算機からなる。係員用端末とは、予約管理システムから検札状況を受信して表示するものであり、典型的には無線でインターネット接続可能なPDAからなる。
【0013】
本発明では安価な座席識別デバイスと旅客保有端末とを活用することで、少ない設備投資で自動検札および自動キャンセルを実現できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、指定券の自動検札および不行使指定券の再販のためのシステムを安価に実現できる。本発明によれば、指定券の自動検札および不行使指定券の再販のためのシステムを複雑化せずに実現することができる。したがって、鉄道事業者は収益性を向上でき、車掌・旅客は検札作業の負担から解放される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明による自動検札システムの構成例を図1をもちいて説明する。
【0016】
自動検札システム1000は、各座席に設置された座席識別装置1100、各旅客が所持する携帯端末1200、地上に設置された予約管理システム1300、係員用端末1400の各部からなる。携帯端末1200及び係員用端末1400は、処理装置、通信装置、記憶装置、表示装置を備える。予約管理システム1300は、処理装置と記憶装置を備える。
【0017】
各座席識別装置1100は、車両及び座席を一意に識別できる後述の物理的座席IDを2次元バーコードに符号化して印刷した紙片である。これを、当該座席の前座席の背面などの認知しやすい場所に貼っておく。なおここでいう物理的座席IDとはハードウェアとしての椅子の識別子であり、これと時刻との組が与えられれば後述の運行情報データベースを介して「列車A号の10号車C10席」といった通常の意味での座席を一意に規定できる。
【0018】
携帯端末1200は、予約を一意に識別できる予約IDを格納するICカード1210および上記物理的座席IDを読み込むためのカメラ1220を備え、またこれらのデバイスを制御するセキュアな検札用アプリ1230をあらかじめ不揮発性の記憶領域にダウンロードしてある携帯電話である。
【0019】
予約管理システム1300は、運行情報・予約情報のデータベースおよび時計を備えたサーバ計算機1310である。運行情報のデータベース1320は、図3に示すとおり、各列車の停車駅・発着時刻の情報を含む時刻表と、各列車を構成する車両編成表とを保持する。予約情報のデータベース1330は、図4に示すとおり、予約IDとそれに対応する乗車区間・列車・座席位置などの組の一覧表を保持する。なお実際には上記に加え個人や端末を認証するための旅客データベースなども必要であるが、本発明の趣旨と関係ないので説明を省略する。
【0020】
係員用端末1400は、予約管理システムから検札状況を受信して表示するものである。
【0021】
車上の係員は、係員用端末140の画面と客室とを目視で比較し、検札未実施の座席にいる乗客のみに検札を実施する。
【0022】
次に自動検札の旅客操作イメージのフローを図2をもちいて説明する。
【0023】
ステップ2010:列車に乗車し、座席につく。
【0024】
ステップ2020:携帯端末1200にあらかじめダウンロードされた検札用アプリ1230を起動する。
【0025】
ステップ2030:携帯端末1200が備えるカメラで自席の物理的座席IDを取得する。
【0026】
ステップ2040:携帯端末1200のディスプレイにシステムからのメッセージおよび操作ボタンが表示される。
【0027】
ステップ2050:検札用アプリを終了する。
【0028】
ステップ2030では、物理的座席IDを符号化した2次元バーコードをカメラにて撮影し、検札用アプリ内の2次元バーコードリーダで復号するのである。物理的座席IDを取得し、またICカード1210内に保持された予約IDを取得した後、これを検札用アプリが所定の方法(たとえば上記IDを暗号化したものを引数として含む所定のURLにSSLで接続)により予約管理システム1300に通知する。ステップ2040では、予約管理システム1300の回答表示を待つ。予約システム1300側で当該座席の予約が確認された場合、検札完了のメッセージとOKボタンが表示される。そうでない場合は、座席指定の放棄の確認等のメッセージとOKボタンおよび中止ボタンなど(操作を許容する場合のみ)が表示される。ステップ2050では、表示されたボタン類から好ましいものを選択することで検札用アプリを終了する。
【0029】
次に自動検札のシステム処理フローを図3をもちいて説明する。
端末1200側の処理はつぎのとおりである。
【0030】
ステップ3110:物理的座席IDを取得する。
【0031】
ステップ3120:予約IDを取得する。
【0032】
ステップ3130:予約管理システムに上記データを送信する。
【0033】
ステップ3140:予約管理システムから回答を受信する。
【0034】
ステップ3150:確認操作をおこなう。
【0035】
ステップ3160:精算コマンドを受信した場合、相応額をICカードにチャージする。
【0036】
予約管理システム1300側の処理はつぎのとおりである。
【0037】
ステップ3210:旅客端末から随時、物理的座席IDおよび予約IDを取得する。
【0038】
ステップ3220:予約IDを予約情報データベース1330と照合し、予約上の列車・座席を取得する。
【0039】
ステップ3230:物理的座席IDと現在時刻とを運行情報データベース1320と照合し、旅客が乗車中の列車・座席を取得する。
【0040】
ステップ3240:上記の予約内容と使用内容との照合結果に応じて処理を変える。
【0041】
ステップ3250:予約内容と使用内容とが一致した場合、検札完了のメッセージを送信する。
【0042】
ステップ3260:予約内容と使用内容とが一致しない場合、指定席の予約解除のメッセージを送信する。
【0043】
ステップ3270:旅客端末での確認操作に応じて処理を変える。
【0044】
ステップ3280:必要に応じて、指定席の予約解除を実行し、所定額の精算コマンドを送信する。
【0045】
ステップ3110の物理的座席IDの取得は、先述のように旅客によるカメラ操作による。
【0046】
ステップ3120〜3140は検札アプリにより自動的におこなわれ、旅客の操作は必要ない。ステップ3150で中止ボタンなどにより旅客がシステム回答を承認しなかった場合、検札処理は全てキャンセルされ、システムはステップ3110およびステップ3210の開始前の状態に戻る。ステップ3160で精算をおこなう場合、2重返金などを防ぐ手立て(巾等性の保証)が必要である。そのためには、たとえば予約管理システム1300側で精算コマンドにシリアル番号および電子署名をつけ、これをセキュアな検札アプリ1230で監視することで容易に実現できる。ステップ3210では、処理の整合性を保つため、取得した予約IDに対応する予約情報データベース1330内の行の読み書きを処理終了までロックしておく。ステップ3230では、物理的座席IDに対応する車両を含む列車を車両編成表からリストアップし、その中から現在時刻に運行中のものを選ぶことで、旅客が乗車中の列車を算出できる。
【0047】
本発明の適用分野は交通分野に限らない。たとえば、行政サービス、病院の診療、イベント施設などの予約行使状況管理や待ち行列整理に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、列車の指定席券を検札するシステムに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】自動検札システムの構成を説明する図である。
【図2】旅客の自動検札操作のイメージを説明するフローチャートである。
【図3】自動検札システムの処理を説明するフローチャートである。
【図4】運行情報データベースの内容を説明する図である。
【図5】予約情報データベースの内容を説明する図である。
【図6】旅客携帯端末の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0050】
1000…自動検札システム、1100…座席識別装置、1200…携帯端末、1210…ICカード、1220…カメラ、1230…検札用アプリ、1300…予約管理システム、1310…予約管理サーバ、1320…運行情報データベース、1330…予約情報データベース、1340…時計、1400…係員用端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内で自動検札処理をおこなう自動検札システムにおいて、
車両内の座席ごとに設置された座席識別装置と、地上に設置された予約管理装置とを備え、
前記座席識別装置は、車両及び座席を一意に規定する座席IDを保持し、前記車両を利用する利用者の端末装置からの要求に応答して前記座席IDを前記端末装置へ送信し、
前記予約管理装置は、前記端末装置内に保持された日付と車両と乗車区間を含む予約内容を規定する予約IDと前記座席IDとを前記端末装置から受信し、前記座席IDおよび現在時刻から定まる車両及び座席と前記予約IDに対応する車両及び座席とを照合し、その照合結果を検札情報として保持または転送または開示することを特徴とする自動検札システム。
【請求項2】
請求項1の自動検札システムにおいて、
前記予約管理装置は、前記検札情報を前記車両の係員の係員用端末装置へ転送することを特徴とする自動検札システム。
【請求項3】
請求項1の自動検札システムにおいて、
前記車両内の座席は、自由席と指定席とを含み
前記予約管理装置は、前記予約IDに対応する座席が自由席であった場合に、前記予約IDに対応する座席の予約を解除することを特徴とする自動検札システム
【請求項4】
請求項3の自動検札システムにおいて、
前記予約管理装置は、前記予約IDに対応する座席の予約を解除した場合に前記端末装置に接続されたプリペイド式ICカードに払戻し金額をチャージすることを特徴とする自動検札システム
【請求項5】
請求項1〜4の自動検札システムにおいて、
前記座席識別装置は、前記座席IDを記録した2次元バーコードを含み、
前記2次元バーコードは、前記端末装置に備えられたカメラによって撮影されて前記座席IDを読み取られることを特徴とする自動検札システム。
【請求項6】
請求項1〜4の自動検札システムにおいて、
前記座席識別装置は、前記座席IDを記録したICタグを含み、
前記ICタグは、前記端末装置に備えられたリーダによって前記座席IDを読み取られることを特徴とする自動検札システム。
【請求項7】
請求項1〜4の自動検札システムにおいて、
前記座席ごとの座席識別装置の代りに前記車両内に近距離無線装置を備えたサーバを設置し、
前記サーバは、車両を一意に規定する車両IDを保持し、
前記端末装置は、前記座席IDの代りに前記サーバから車両IDを取得し、
前記予約管理装置は、前記座席IDのかわりに前記車両IDを前記端末装置から受信し、前記車両IDを用いて車両を照合することを特徴とする自動検札システム。
【請求項8】
車両の自動検札に用いられる前記車両の利用者の端末装置において、
日付と車両と乗車区間を含む予約内容を規定する予約IDを記憶する記憶装置と、
車両及び座席を一意に規定する座席IDを、車両内の座席ごとに設置された座席識別装置から取得し、前記座席IDと前記記憶装置内の前記予約IDを、前記座席IDおよび現在時刻から定まる車両及び座席と前記予約IDに対応する車両及び座席とを照合する予約管理装置へ送信することを特徴とする端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−156666(P2007−156666A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348627(P2005−348627)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】