説明

自動焦点調節装置を備えたデジタルカメラ

【課題】コンバージョンレンズを装着したときは、歪みの少ない領域の被写体に対して合焦させることができる自動焦点調節装置を備えたデジタルカメラを得る。
【解決手段】撮影光学系によって形成された被写体像により焦点検出して焦点調節する自動焦点検出装置を備え、撮影レンズにコンバージョンレンズの着脱が可能なデジタルカメラであって、上記自動焦点調節装置は、撮影画面の中央領域及びその周辺領域を含む複数位置のいずれかの被写体に対して焦点検出及び焦点調節する機能を有し、上記撮影光学系にコンバージョンレンズが装着されているときは、上記撮影画面の中央領域に位置する被写体に対して焦点検出していずれかの被写体に対して焦点調節及び焦点調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ、より具体的には、コンバージョンレンズの着脱が可能な自動焦点調節装置を備えたデジタルカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるコンパクトタイプのデジタルカメラにおいて、カメラに搭載された撮影レンズの先端部にコンバージョンレンズを着脱できるものが知られている(特許文献1)。コンバージョンレンズのタイプとしては、撮影レンズの焦点距離を長く、画角を狭くする望遠タイプ、逆に焦点距離を短く、画角を広くする広角タイプ、あるいは最短撮影距離を短くするマクロタイプがある。
【0003】
また、従来のデジタルカメラの自動焦点装置は、いわゆる画像コントラスト法が一般的であって、撮影画面の中に複数のAFエリアを設定して焦点検出し、最も近側で合焦するAFエリアの被写体に対してピント合わせ(合焦)を行っている。
【特許文献1】特開平11-305115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来のコンバージョンレンズは、デジタルカメラに装着すると画面周辺部で歪みを生じ、画質が劣化してしまう。このようなコンバージョンレンズを装着した状態で撮影する場合、撮影画面の中心から外れ、コンバージョンレンズによる歪みが出ているAFエリアで最も近側のピント位置が得られると、そのAFエリアの被写体にピントがあった写真を撮影してしまう場合がある。通常、歪んだ画像を主要被写体にして写真を撮るようなことは少なく、歪みの少ない中央位置でピントを合わせることが大半であるにも関わらず、周辺部の歪んだAFエリアの被写体にピントが合った撮影をしてしまい、歪みの少ない中央領域の主要被写体がピンぼけになってしまうことがある。
【0005】
そこで本発明は、コンバージョンレンズを装着したときは、歪みの少ない領域の被写体に対して合焦させることができる自動焦点調節装置を備えたデジタルカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決する本発明は、撮影光学系によって形成された被写体像により焦点検出して焦点調節する自動焦点検出装置を備え、撮影レンズにコンバージョンレンズの着脱が可能なデジタルカメラであって、上記自動焦点調節装置は、撮影画面の中央領域及びその周辺領域を含む複数位置のいずれかの被写体に対して焦点検出及び焦点調節する機能を有し、上記撮影光学系にコンバージョンレンズが装着されているときは、上記撮影画面の中央領域に位置する被写体に対して焦点検出していずれかの被写体に対して焦点調節及び焦点調節することに特徴を有する。
【0007】
上記撮影光学系にコンバージョンレンズが装着されているときは、撮影画面中心を優先的に、または画面中心ほど優先して使用する構成としてもよい。
【0008】
さらに本発明の自動焦点調節装置を備えたデジタルカメラの上記自動焦点調節装置は、上記撮影光学系にコンバージョンレンズが装着されている場合に上記画面の中央領域に位置するいずれの被写体に対しても焦点検出できなかったときは、上記周辺領域に位置する被写体に対して焦点検出及び焦点調節する。
【0009】
より実際的には、上記デジタルカメラは上記コンバージョンレンズの着脱を検知する検知手段備え、上記自動焦点調節装置は、上記検知手段がコンバージョンレンズが装着されていると検知している場合に、上記コンバージョンレンズが装着されているときの上記焦点検出及び焦点調節をする構成とする。
【発明の効果】
【0010】
以上の通り本発明によれば、コンバージョンレンズを装着したときは、AFに使用する焦点検出エリアを歪みの少ない領域に絞るので、周辺の歪みが大きい領域の被写体に対して合焦することが無く、歪みの少ない中央領域の被写体にピントがあった撮影ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明について、添付図面に示した実施形態を参照して詳述する。図1は、本発明を適用した、コントラストAF方式の焦点調節装置を備えたデジタルカメラの要部構成をブロックで示す図である。
【0012】
このデジタルカメラ10は、焦点調節レンズ群L1を含む撮影レンズLにより被写体像を、撮像手段としての撮像素子(CCDイメージセンサ)11の受光面に形成する。撮像素子11は、所定間隔で縦横に配置された多数の画素(光電変換素子)を有し、受光した被写体像を各画素が電荷に変換し、蓄積(積分)する。露光が終了すると、蓄積した電荷を画素単位で画像信号として画像信号処理回路13に出力する。画像信号処理回路13は、入力した画像信号についてホワイトバランス調整等所定の画像信号処理、A/D変換処理を施してデジタル画像データをCPU15に出力する。つまり、画像信号処理回路13において所定の処理が施され、画素単位でデジタル変換された画像データが、CPU15に出力される。CPU15は、スルーモード(モニタモード)のときは入力した画像データをLCD(モニタ)17で表示可能な画像信号に変換してLCD17により表示し、コントラストAF処理のときは設定された焦点検出エリア内の画像データを取り込んで一時的に内部RAM(画像キャッシュメモリ)にメモリして処理し、記録モードのときは所定フォーマットの画像データに変換して画像メモリ制御回路19を介して画像メモリ21に書き込む。さらにこのデジタルカメラ10は、ストロボ29を内蔵している。
【0013】
CPU15には、メインスイッチSWM、第1のスイッチとしての測光スイッチSWS、第2のスイッチとしてのレリーズスイッチSWR及びコンバージョンレンズCLの着脱状態を検知するCレンズ検出スイッチSWCが接続されている。CPU15は、メインスイッチSWMがオンされると、図示しないバッテリからの電源を各部材に供給(電源ON)し、第1スイッチとしての測光スイッチSWSがオンされるとAF処理、測光処理等を実行し、第2スイッチとしてのレリーズスイッチSWRがオンされると撮像処理等を実行する。測光スイッチSWS及びレリーズスイッチSWRは周知の通り、図示しないレリーズボタンに連動していて、レリーズボタンの半押しで測光スイッチSWSがオンし、全押しで測光スイッチSWSはオン状態を維持してレリーズスイッチSWRがオンする。
【0014】
Cレンズ検出スイッチSWCは、撮影レンズLの鏡筒先端にコンバージョンレンズCLが装着されているか否かを検知するスイッチである。Cレンズ検出スイッチSWCとしては、レンズ鏡筒先端部に装着できるスイッチ、センサなどを利用できるが、撮影者が手動で設定するスイッチでもよい。
【0015】
このデジタルカメラ10のコントラストAF処理は、次の通りである。測光スイッチSWSがオンされるとCPU15は、モータドライバ27、AFモータ25及びレンズ駆動機構23を介して焦点調節レンズ群L1を、一方の移動限界位置となる近位置(至近合焦位置)又は遠位置(無限遠合焦位置)から他方の移動限界位置となる遠位置又は近位置方向にステップ駆動しながら撮像素子11により撮像し、撮像した画像信号を取り込んで内部RAM15aにメモリし、焦点検出エリア内の画像のコントラストを検出する。そうして各焦点検出エリアについてコントラスト値のピークを検出し、そのピークが得られるレンズ位置、つまり合焦レンズ位置を求める焦点サーチ処理を実行する。このようにして得られた合焦レンズ位置に焦点調節レンズ群L1を移動させる。この実施形態ではコントラスト値のピークを、コントラスト値が所定回連続して高くなり、その後連続して所定回低くなったか否かチェックして求める。コントラストAF処理中及び合焦後に撮像した画像信号は、スルーモードによりモニタ17に表示される。
【0016】
この実施形態では、焦点調節レンズ群L1の位置を、近位置(至近合焦位置)を原点センサ23aで検知し、各位置からの駆動パルス数としてカウントする。駆動パルスは、例えばAFモータ25の出力軸に装着されたフォトインタラプタ等のエンコーダ26が出力するパルスとして定義する。なお、通常は、焦点調節レンズ群L1を近位置から∞位置まで駆動するのに数百パルスあるいはそれ以上要するが、説明を簡単にするために本実施形態におけるコントラストAF処理では、数パルス又は数十パルス単位でステップ駆動するものとし、1ステップが1個の駆動パルス及び位置パルスに対応するものとする。そうしてこの実施形態では、駆動及び位置パルスをPN、初期位置(この実施形態では近位置)を0とし、∞位置方向に1ずつ加算する。近位置から∞位置方向にサーチする場合も、無限位置合焦位置から近位置方向にサーチする場合も、初期位置における位置パルスを0とし、初期位置から他の位置方向にステップ駆動するときは位置パルスを加算し、初期位置方向にステップ駆動するときは位置パルスを減算する。
【0017】
このデジタルカメラ10は、画像コントラストAFにおける測距モードとして、いわゆるマルチ測距モードを備えている。通常のマルチ測距モードでは、5箇所の焦点検出エリア内の被写体について測距(焦点検出)し、最短距離の被写体に対して合焦させる。撮影画面と焦点検出エリアとの関係を図2(A)に示した。この実施形態では、撮影画面30に対して、中央横方向に5個の第1乃至第5焦点検出エリア31乃至35が第1焦点検出エリア31を中心として左右に設定されている。この実施例では、第1の焦点検出エリア31が撮影画面20の中央領域にそれぞれの中心が一致した中心に位置し、第2、第3の焦点検出エリア32、33が第1の焦点検出エリア31の左右に位置し、さらに第2、第3の焦点検出エリア32、33の両横の周辺領域に第4、第5の焦点検出エリア34、35が位置している。これらの焦点検出エリア31乃至35内の被写体(被写体の画像データ)について画像コントラスト法によって測距する。つまり、焦点調節レンズ群L1を近位置から遠位置方向、又は逆に遠位置から近位置方向にステップ駆動しながら焦点検出エリア31乃至35内の画像のコントラストを検出するサーチ処理を実行して、最も近位置でコントラストのピークが得られた焦点検出エリア内の被写体に対してピント合わせ、つまり焦点調節レンズ群L1を移動させて合焦させる。
【0018】
ここで、デジタルカメラ10にコンバージョンレンズCLを装着すると、撮影レンズLの性能、結像特性が、設計性能、設計結像特性と異なってしまう。一般に、結像特性が劣化する。例えば、撮影画面30周辺になる程歪曲収差が大きくなり、けられを生じることもある。コンバージョンレンズCL装着前の画像を図2(A)に、コンバージョンレンズCL装着後の画像を図2(B)に示した。これらの図では、均一に塗られた壁を撮影したときの光量分布を示している。この実施例では、コンバージョンレズCを装着すると、両端の第4、第5焦点検出エリア34、35付近から歪曲収差が大きくなり、光量低下を生じているなど、画像が劣化していることが分かる。
【0019】
そこで本実施形態のデジタルカメラ10では、Cレンズ検出スイッチSWCによってコンバージョンレンズCLが装着されていることを検知したときは、コントラストAF処理において、周辺の焦点検出エリア34、35の使用を制限することに特徴を有する。
【0020】
次に、このデジタルカメラ10におけるコントラストAF動作について、図3乃至図5に示したフローチャートを参照してより詳細に説明する。図3は、このデジタルカメラのメインシーケンスをフローチャートで示す図である。このメインシーケンスには、バッテリ(図示せず)が装填されたときに入る。
【0021】
メインシーケンスに入ると、先ずステップS101において現在電源がONしているか否かをチェックする。現在電源がONしていない場合(S101:NO)はメインスイッチSWMがONであるかどうかをチェックし(S103)、ONでなければ(S103:NO)、ステップS101に戻る。つまり、メインスイッチSWMのチェック処理を繰り返す。メインスイッチSWMがONであれば(S103:YES)、内部RAM、ポート、変数などハード、ソフト的な初期化を実行し(S105)、電源をオンして各部材に電源を供給する電源ON処理を実行し(S107)、ステップS109に進む。現在電源がONしている場合(S101:YES)は、そのままステップS109に進む。
【0022】
ステップS109では、メインスイッチSWMがONであるかどうかをチェックし、ONでなければ(S109:NO)、電源OFF処理を実行して(S123)、ステップS101、S103のメインスイッチSWMのチェック処理に戻る。メインスイッチSWMがONであれば(S109:YES)、測光スイッチSWSがONしているかどうかチェックする(S111)。測光スイッチSWSがONしていなければ(S111:NO)、ステップS101に戻る。電源ON状態でS101に戻るので、現在電源ONと判定し(S101:YES)、S109に進む。つまり、電源ON状態の間は、メインスイッチSWMがOFFするか、測光スイッチSWSがONするまで、ステップS101、S109、S111のチェック処理を繰り返す。このチェック処理中にメインスイッチSWMがOFFすると(S109:YES)、電源OFF処理を実行して(S123)、ステップS101、S103のメインスイッチSWMチェック処理に入る。
【0023】
測光スイッチSWSがONすると(S111;YES)、コントラストAF処理を実行して焦点調節レンズ群L1を所定の被写体に対して合焦させ(S113)、合焦状態をモニタ17に表示する(S115)。合焦状態の表示は、例えば、合焦させた焦点検出エリアの枠を緑色で表示するなどである。なお、合焦させることができなかった場合は、焦点検出エリア31乃至35の枠を赤く表示するなど、合焦していないことが分かる表示を行う。
【0024】
合焦表示処理を実行した後に、測光スイッチSWSがONしているかどうかチェックし(S117)、測光スイッチSWSがONしていればレリーズスイッチSWRがONしているかどうかチェックし(S117;YES、S119)、レリーズスイッチSWRがONしていなければ(S119;NO)、ステップS117に戻って測光スイッチSWS、レリーズスイッチSWRがONしているかどうかのチェックを繰り返す(S117:YES、S119:NO、S117)。測光スイッチSWSがOFFすると(S117:NO)、そのままステップS101に戻る。
【0025】
レリーズスイッチSWRがONすると(S119:YES)、撮像処理を実行してから(S121)、ステップS101に戻る。
【0026】
次に、S113で実行されるコントラストAF処理の詳細について、さらに図4に示したフローチャートを参照して説明する。
【0027】
コントラストAF処理に入ると、まず各フラグ、変数等の初期化を実行する(S201)。この実施形態では、ステータスフラグのクリア(Status=0)、コントラスト値のクリア、コントラストの最大値、最小値を初期化(最小値=0、最小値=FFFFFFFF)、レンズ位置パルス数PNの初期化(PN=0)、途中停止OKフラグのクリア(StopOK=0)等を実行する。
【0028】
ここで、変数、フラグ等は次の通り定義される。
ステータスフラグ(Status)は、焦点検出エリア31乃至35についてピーク値が存在したか否かを焦点検出エリア31乃至35毎に識別するフラグであって、"1"は存在した場合を表し、"0"は存在しなかった場合を表している。
コントラスト値は、各焦点検出エリア内の画素から出力された画素データから得られた実際のコントラスト値である。
レンズ位置パルス数PNは、エンコーダ26から出力されるパルスをカウントする変数であって、焦点調節レンズ群L1が初期位置である近位置にあるときを0とし、AFモータ25を遠位置方向に駆動したときにエンコーダ26からパルスが1個出力される毎に1カウントアップする。CPU15は、これをレンズ位置パルスPNとして利用する。なお、AFモータ25を初期位置方向に駆動したときはエンコーダ26からパルスが1個出力される毎に1カウントダウンされる。
コントラストの最大値、最小値は、各焦点検出エリア毎の実際に得られたコントラスト値の最大値、最小値である。
途中停止OKフラグ(StopOK)は、焦点サーチ処理の途中で停止を許可するフラグであって、"0"は不可、"1"は許可である。この実施形態では、5個の焦点検出エリアについてコントラストのピークを検出したら、サーチ終了端まで達していなくてもサーチを終了させるように、途中停止OKフラグに"1"がセットされる構成である。
【0029】
次に、フォーカスイニシャライズ処理を実行する(S203)。フォーカスイニシャライズ処理は、焦点調節レンズ群L1をサーチ開始位置に移動する処理であって、この実施形態では焦点調節レンズ群L1を近位置をサーチ開始位置に設定してある。別の実施形態では、望遠のコンバージョンレンズCLが装着されているときに限り焦点調節レンズ群L1のサーチ開始位置を無限遠合焦位置にする。
【0030】
続いて、サーチ開始位置における画像データを撮像素子11から取得してコントラスト値算出処理を実行する(S205)。つまり、撮像素子11から入力した画像データに基づいて、サーチ開始位置(初期位置、PN=0)におけるコントラスト値P[0]を算出し、コントラスト値の最大値、最小値を更新する。そうして、AFモータ25をサーチ終了位置方向に1ステップ駆動して(S207)、レンズ位置パルスPNを1インクリメントする(S209)。
【0031】
撮像素子11から画像データを入力し、入力した画像データに基づいてコントラスト値P[PN]を算出し、コントラスト値の最大値、最小値を更新するコントラスト値算出処理を実行する(S211)。
【0032】
続いて、得られたコントラスト値P[PN]が設定条件を満足するピーク値であるか否かをチェックするピークチェック処理を実行する(S213
)。なお、コントラスト値算出処理(S211)及びピークチェック処理(S213)は、各焦点検出エリア31乃至35について実行する。
【0033】
そうして、途中停止OKフラグ(StopOKフラグ)が"1"であるか否かをチェックする(S215)。途中停止OKフラグが"1"でない場合(S215:NO)は、サーチ終了位置であるか否かをチェックする(S217)。サーチ終了位置でない場合(S217:NO)はステップS207に戻ってステップS207乃至S215、S217の処理を、焦点調節レンズ群L1をサーチ終了位置方向にステップ駆動しながら繰り返す。
【0034】
途中停止OKフラグに"1"がセットされるか(S215:YES)、焦点調節レンズ群L1がサーチ終了位置に達すると(S217:YES)、ループ処理を抜けてステップS219に進む。そうして、ステップS205及びステップS207からS219のループ処理で得た各焦点検出エリア31乃至35のピーク値が得られた5位置分のコントラストデータに基づいて、ピーク値を近似演算するピーク算出処理を実行する(S219)。ピーク算出処理は、ステップ駆動したレンズ位置単位で求めたコントラスト値のピーク値の前後に真のピーク値が存在する可能性があるので、近似演算によってより正確と推定されるピーク値及びそのピーク値が得られるレンズ位置を近似演算する処理である。
【0035】
続いて、焦点検出エリア31乃至35毎に得たピーク値に基づいて、最も近距離の値が得られた1個の焦点検出エリアを合焦エリアとして選択し、その焦点検出エリア及びレンズ位置を選択するエリア選択処理を実行する(S221)。そうして、選択したエリアのレンズ位置に焦点調節レンズ群L1を移動させる合焦駆動処理を実行してリターンする(S223、RETURN)。
【0036】
上記ステップS221で実行されるエリア選択処理について、図5に示したフローチャートを参照してより詳細に説明する。このエリア選択処理は、コンバージョンレンズCLが装着されていた場合は、周辺の2個の焦点検出エリア34、35を使用しないことに特徴を有する。以下詳細に説明する。
【0037】
エリア選択処理に入ると、先ず、コントラストピーク位置に対応する合焦レンズ位置パルスPeakXの最大値(合焦レンズ位置パルス最大値)の初期化(PeakMAX=FF)、エラーフラグのクリア(Error=1)、最大合焦レンズ位置パルスPeakMaxの初期化(PeakMax = FF)、エラーフラグErrorのクリア(Error = 1)を実行する(S301)。合焦レンズ位置パルス最大値PeakMAXは、ピーク算出処理(S219)で得られた、より正確なピーク値が得られるレンズ位置パルスPNのパルス値を表す変数である。合焦レンズ位置パルス最大値PeakMAXは、大きいほど遠距離に被写体が位置することを表している。エラーフラグ(Error=1)は、合焦レンズ位置パルス最大値PeakMAXが選択されたかどうかを識別するフラグであって、"1"は選択できなかったことを表し、"0"は選択できたことを表している。
【0038】
次に、Cレンズ有りか否かをチェックする(S303)。ここでは、Cレンズ検知スイッチSWCがオンしているか否かにより判定する。
【0039】
Cレンズ有りでなかった場合(S303:NO)は、焦点検出エリア31乃至35について、以下のステップS305乃至S315の最短合焦エリア選択ループ処理を実行する。ステータスフラグStatusが1であるかどうか(S307)、エラー無しであるかどうか(S309)、現焦点検出エリアの合焦レンズ位置パルスPeakXがこれまでの合焦レンズ位置パルス最大値PeakMax未満であるかどうか(S313)をチェックする。全て肯定であれば(S307:YES、S309:YES、S311:YES)、現焦点検出エリアの合焦レンズ位置パルスPeakXを合焦レンズ位置パルス最大値PeakMaxに上書きし、エラーフラグErrorをクリア("0"をセット)して(S313)、次の焦点検出エリアについての処理に移行する(S315)。いずれかが否定であれば(S307:NO、S309:NO、又はS311:NO)、何もせず次の焦点検出エリアについての処理に移行する(S305)。なお、ステップS309において「エラー無し」とは、その焦点検出エリアについて合焦レンズ位置パルスPeakXが得られていることと同義である。
【0040】
全ての焦点検出エリア31乃至35について最短合焦エリア選択ループ処理が終了したらリターンする(S305、S315、RETURN)。以上の処理により、最も近距離に相当する合焦焦点検出エリアの合焦レンズ位置パルスPeakXが合焦レンズ位置パルス最大値PeakMaxとして設定される。
【0041】
Cレンズ有りの場合(S303:YES)は、先ず、周辺の2個の焦点検出エリア34、35を除いた3個の焦点検出エリア31乃至33について、以下のステップS317乃至S327の最短合焦エリア選択ループ処理を実行する(S317乃至S327)。
【0042】
ステータスフラグStatusが1であるかどうか(S319)、エラー無しであるかどうか(S321)、合焦レンズ位置パルスPeakXがこれまでの合焦レンズ位置パルス最大値PeakMax未満であるかどうか(S323)をチェックする。全て肯定であれば(S319:YES、S321:YES、S323:YES)、現焦点検出エリアの合焦レンズ位置パルスPeakXを合焦レンズ位置パルス最大値PeakMaxに上書きし、エラーフラグErrorをクリア("0"をセット)して(S325)、次の焦点検出エリアについての処理に移行する(S327)。いずれかが否定であれば(S319:NO、S321:NO、又はS323:NO)、何もせず次の焦点検出エリアについての処理に進む(S317)。
【0043】
3個の焦点検出エリア31乃至33について合焦エリア選択ループ処理が終了したら、ステップS329に進む。いずれか1個の焦点検出エリアについて合焦レンズ位置パルス最大値PeakMaxが得られて、エラーフラグErrorに"0"がセットされていたら(S329)リターンする(RETURN)。
【0044】
以上のステップS303、S317乃至S327、S329:NO、RETURN処理により、コンバージョンレンズLCが装着されていた場合は、画像劣化の少ない中央の3個の焦点検出エリア31乃至33を使用してピークチェック処理を実行し、焦点検出エリアを選択するので、画像品質の良好な領域の被写体に対して合焦させることが可能になる。
【0045】
何れの焦点検出エリアからも合焦レンズ位置パルス最大値PeakMaxが得られず、エラーフラグErrorに"1"がセットされたままの場合(S329:YES)は、周辺の2個の焦点検出エリア34、35についても、上記同様の最短合焦位置選択ループ処理を実行する。
【0046】
ステータスフラグ1かどうか(S333)、エラー無しかどうか(S335)、現焦点検出エリアの合焦レンズ位置パルスPeakXが合焦レンズ位置パルス最大値PeakMax未満であるかどうか(S337)をチェックする。全て肯定であれば(S333:YES、S335:YES、S337:YES)、現焦点検出エリアの合焦レンズ位置パルスPeakXを合焦レンズ位置パルス最大値PeakMaxに上書きし、エラーフラグErrorをクリア("0"をセット)して(S339)、次の焦点検出エリアについての処理に移行する(S341)。いずれかが否定であれば(S307:NO、S309:NO、又はS311:NO)、何もせず次の焦点検出エリアについての処理に移行する(S305)。
【0047】
そうして2個の焦点検出エリア34、35について最短合焦エリア選択ループ処理が終了したらリターンする(S331、S341、RETURN)。
【0048】
コンバージョンレンズCLを装着している場合に、中央の3個の焦点検出エリア31乃至33から合焦レンズ位置パルス最大値PeakMaxが得られなかった場合は、ステップS329:YES、S331乃至S341の処理によって、残りの焦点検出エリア34、35についてもピークチェック処理を実行するので、いずれかの焦点検出エリアから合焦レンズ位置パルス最大値PeakMaxが得られる可能性が高くなる。
【0049】
以上、本発明について画像コントラスト法による自動焦点調節装置を備えたデジタルカメラに適用した実施形態につき説明したが、本発明は、TTL方式の焦点調節装置を備え、コンバージョンレンズを着脱可能なデジタルカメラ一般に適用可能である。
この実施形態では、コンバージョンレンズCLが装着された場合は画面周辺の焦点検出エリアを除く焦点検出エリアを優先する構成としたが、他の実施形態ででは、光軸を含む中央の1個の焦点検出エリアを優先する構成とする。
この実施形態では焦点検出エリアを固定位置の5個としたが、位置、数はこれに限定されず、また焦点検出エリアは固定せずに、例えば顔検出して検出した顔領域を焦点検出エリアとしてもよい。この場合も、コンバージョンレンズCLが装着された場合は、周辺領域の顔領域は焦点検出エリアとして使用しない構成にする。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の焦点検出方法を適用したデジタルカメラの実施形態の主要構成をブロックで示す図である。
【図2】同デジタルカメラにおけるマルチ焦点検出エリアの位置と画像劣化状態との関係を示す図であって、(A)はコンバージョンレンズを装着していない場合を示す図、(B)はコンバージョンレンズを装着した場合を示す図であって、白い程歪みが大きいことを表している。
【図3】本発明を適用したデジタルカメラのメインシーケンスの実施形態をフローチャートで示す図である。
【図4】同メインシーケンス中で実行される、本実施形態の焦点検出方装置におけるコントラストAF処理をフローチャートで示す図である。
【図5】同コントラストAF処理中のエリア選択処理をフローチャートで示す図である。
【符号の説明】
【0051】
10 デジタルカメラ
11 撮像素子(撮像手段)
13 画像信号処理回路
15 CPU(焦点調節装置)
17 LCD
19 メモリ制御回路
21 画像メモリ
23 レンズ駆動機構
23a 原点センサ
25 AFモータ
26 エンコーダ
27 モータドライバ
29 ストロボ
CL コンバージョンレンズ
L 撮影レンズ
L1 焦点調節レンズ群
SWC Cレンズ検知スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系によって形成された被写体像により焦点検出して焦点調節する自動焦点検出装置を備え、撮影レンズにコンバージョンレンズの着脱が可能なデジタルカメラであって、
上記自動焦点調節装置は、撮影画面の中央領域及びその周辺領域を含む複数位置のいずれかの被写体に対して焦点検出及び焦点調節する機能を有し、上記撮影光学系にコンバージョンレンズが装着されているときは、上記撮影画面の中央領域に位置する被写体に対して焦点検出していずれかの被写体に対して焦点調節及び焦点調節すること、を特徴とする自動焦点調節装置を備えたデジタルカメラ。
【請求項2】
請求項1記載の自動焦点調節装置を備えたデジタルカメラの自動焦点調節装置は、上記撮影光学系にコンバージョンレンズが装着されている場合に上記画面の中央領域に位置するいずれの被写体に対しても焦点検出できなかったときは、上記周辺領域に位置する被写体に対して焦点検出及び焦点調節する自動焦点調節装置を備えたデジタルカメラ。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動焦点調節装置を備えたデジタルカメラにおいて、上記デジタルカメラは上記コンバージョンレンズの着脱を検知する検知手段備え、上記自動焦点調節装置は、上記検知手段がコンバージョンレンズが装着されていると検知している場合に、上記コンバージョンレンズが装着されているときの上記焦点検出及び焦点調節をする自動焦点調節装置を備えたデジタルカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−102165(P2010−102165A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274176(P2008−274176)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】