説明

自動立体視表示装置

切り替え可能な自動立体視表示装置は、表示パネル60及び立体画像が観察されることを可能にするために異なるピクセルからの出力を異なる空間位置へと導くための画像形成配置620を有する。画像形成配置は、ブルー相LC材料を有する。制御装置は、ブルー相材料を2Dモードのための等方性状態に及び3Dモードのための複屈折状態に切り替える。この配置は、アライメント・レイヤなしで切り替え可能なレンズ配置が形成されることを可能にする。これは、角度性能が高く、薄い切り替え可能な配置を与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示を生成するピクセルのアレイを持つ表示パネル及び異なる空間位置に異なるビューを導くための画像形成装置を有するタイプの自動立体視表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既知の装置は、画像形成装置としてレンズ装置を用いる。例えば、細長いレンズ形素子のアレイが互いに平行して延在し、表示ピクセル・アレイの上に横たわって提供されることができ、そして表示ピクセルはこれらのレンズ形素子を通して観察される。
【0003】
レンズ形素子は、それぞれが細長い半円柱形のレンズ素子から成る素子のシートとして提供される。レンズ形素子は、表示パネルのカラム方向に延在し、各々のレンズ形素子は、表示ピクセルの2つ以上の隣接するカラムのそれぞれのグループの上に横たわる。
【0004】
例えば、それぞれのレンズが表示ピクセルの2つのカラムに関連付けられた配置において、各々のカラム中の表示ピクセルは、それぞれの二次元サブ画像の垂直スライスを形成する。レンチキュラ・シートは、ユーザが1つの立体画像を観察するように、シートの前に位置するユーザの左及び右目に、これらの2枚のスライス及び他のレンチキュラに関連付けられた表示ピクセル・カラムからの対応するスライスを導く。したがって、レンズ形素子のシートは、光出力指向機能を提供する。
【0005】
他の配置において、各々のレンチキュラは、ロウ方向の4つ以上の隣接する表示ピクセルのグループに関連付けられる。各々のグループ中の表示ピクセルの対応するカラムは、それぞれの二次元サブ画像からの垂直スライスを形成するように、適切に配置される。ユーザの頭部が左右に動くと、一連の連続した異なる立体視ビューが知覚されて、例えば、見回した印象を生じさせる。
【0006】
上記した装置は、有効な三次元表示装置を提供する。しかしながら、いうまでもなく、立体視を提供するために、装置の水平解像度における犠牲が必要である。解像度におけるこの犠牲は、近い距離からの観察のための小さいテキスト文字の表示のような特定のアプリケーションにとっては許容できない。この理由のために、二次元モードと三次元(立体視)モードとの間で切り替え可能である表示装置を提供することが提案された。
【0007】
これを実施する1つの態様は、電気的に切り替え可能なレンチキュラ・アレイを提供することである。二次元モードにおいて、切り替え可能な装置のレンチキュラ素子は、「通過」モードで動作し、すなわち、光学的に透明な材料の平面シートと同様の働きをする。結果として生じている表示は、ディスプレイ・パネルの本来の解像度に等しい高解像度を持ち、近い観察距離からの小さいテキスト文字の観察に適している。二次元表示モードは、もちろん、立体画像を提供することができない。
【0008】
三次元モードでは、切り替え可能な装置のレンチキュラ素子は、上述のように、光出力指向機能を提供する。結果として生じる表示は、立体画像を提供することが可能であるが、上で述べられた解像度の減少が不可避である。
【0009】
切り替え可能な表示モードを提供するために、切り替え可能な装置のレンチキュラ素子は、2つの値の間で切り替え可能である屈折率を持つ液晶材料のような電気光学材料で形成される。そして装置は、レンチキュラ素子の上下に設けられる平面電極に適切な電位を印加することによって、モード間で切り替えられる。電位は、隣接する光学的に透明なレイヤの屈折率に対して、レンチキュラ素子の屈折率を変化させる。切り替え可能な装置の構造及び動作のより詳細な記載は、米国特許番号6,069,650に見つけることができる。
【0010】
切り替え可能なLC材料を制御するための2つの異なるアプローチが存在する。上で概説された第1のアプローチは、レンズ素子として切り替え可能な材料を、そしてレプリカとして切り替え不可の材料を用いる。第2のアプローチは、複屈折レンズ・レプリカを伴う第1の受動セル及び第2の偏光切り替えセルの2つのセルを直列に用いる。1つのモードにおいて、第2セルは、入力光の偏光を回転させ、他のモードでは回転させない。このシステムは、US7,058,252にさらに詳細に記載される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
両方のこれらのアプローチは、2つのモードの少なくとも一方において、角度性能の低下を生じさせる。さらに、複数のセルを用いるアプローチは、標準的ではない複屈折レプリカ材料を必要として、直列セルが必要である結果として比較的厚くなる。それゆえ、モバイル装置アプリケーション用の薄いレンズシステムは達成し難い。これらのアプローチは、さらに、LCモードと表示の偏光方向との間の位置合せを必要とする。
【0012】
したがって、改善された切り替え可能な2D/3Dディスプレイ・システムの必要性が存在する。特に、切り替え可能な配置によって可能な限り影響を受けない2D性能、及び、可能な限り速いスイッチング速度に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の目的を実現することが本発明の目的である。本発明は、独立請求項によって定められる。従属請求項は、有益な実施の形態を定める。
【0014】
本発明の第1の態様によれば、2D及び3D動作モードを持つ切り替え可能な自動立体視表示装置が提供され、当該装置は、
- 表示を生成するためのロウ及びカラムで配置される表示ピクセルのアレイを持つ表示パネル、
及び
- 一方がブルー相LC材料で形成されて他方が切り替え不可の等方性材料で形成されるレンズ素子配置及びレプリカ構造を有するレンズ配置であって、自動立体視画像が観察されることを可能にするために異なるピクセルからの出力を異なる空間位置に導くためのレンズ配置、
を有し、当該装置は、ブルー相材料を2Dモードのための等方性状態に及び3Dモードのための複屈折状態に切り替えるように適応された制御装置を更に有し、2Dモードにおいて、ブルー相材料の屈折率は、切り替え不可の等方性材料の屈折率と一致する。
【0015】
これは、切り替え可能な画像形成装置のための単純化された構造を提供する。
【0016】
この装置は、レンズ又はレプリカ配置がブルー相LC材料で形成されることによって、単にレンズ配置、レプリカ配置及びスイッチング電極を用いて、位置合せレイヤなしで、切り替え可能なレンズ配置が形成されることを可能にする。これは、角度性能が高く、薄い切り替え可能な装置を与えることができる。
【0017】
2Dモードのために等方性状態が用いられるので、これは、既存の切り替え可能なレンズ配置において使用される電場整列モードと比べて、2Dモードを大幅に改善する。したがって、ブルー相材料の等方性モードを用いることにより2Dモードにおいて残留する回折が最小限に低減されるので、2D性能は、本発明の特定の配置によって改善される。ブルー相材料はさらに、大きなスイッチング速度を与える。
【0018】
等方性モードは、角度及び偏光に依存しない。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、2D及び3D動作モードを持つ切り替え可能な自動立体視表示装置が提供され、
- 表示を生成するためのロウとカラムで配置される表示ピクセルのアレイを持つ表示パネル、及び
- 自動立体視画像が観察されることを可能にするために異なるピクセルからの出力を異なる空間位置に導くための画像形成配置を有し、
画像形成配置はブルー相LC材料を有し、当該装置は、ブルー相材料を2D及び3Dモードの一方のための等方性状態に並びに2D及び3Dモードの他方のための複屈折状態に切り替えるように適応された制御装置をさらに有し、画像形成配置は、レンズ配置(62)及び切り替え可能な偏光変更装置を有し、切り替え可能な偏光変更装置は、ブルー相LC材料を有する。
【0020】
この例では、画像形成配置が、レンズ配置及び切り替え可能な偏光変更装置を有し、切り替え可能な偏光変更装置がブルー相LC材料を有する。
【0021】
本発明の第1の態様はさらに、2Dと3D動作モードとの間で切り替え可能な自動立体視表示を提供する方法を提供し、当該方法は、
- ロウとカラムで配置される表示ピクセルのアレイを持つ表示パネルからの表示を生成し、
- 一方がブルー相LC材料で形成されて他方が切り替え不可の等方性材料で形成されるレンズ素子配置(72)及びレプリカ構造(70)を有するレンズ配置を用いて、自動立体視画像が観察されることを可能にするために異なるピクセルからの出力を異なる空間位置に導き、
- 2Dモードのための等方性状態に及び3Dモードのための複屈折状態にブルー相材料を切り替え、2Dモードにおいて、ブルー相材料の屈折率は、切り替え不可の等方性材料の屈折率と一致する。
【0022】
本発明の第2の態様はさらに、2Dと3D動作モードとの間で切り替え可能な自動立体視表示を提供する方法を提供し、
- ロウとカラムで配置される表示ピクセル(5)のアレイを持つ表示パネルからの表示を生成し、
- レンズ配置及びブルー相LC材料を有する切り替え可能な偏光変更装置を有する画像形成配置を用いて、自動立体視画像が観察されることを可能にするために異なるピクセルからの出力を異なる空間位置へ導き、
- 2D及び3Dモードのうちの一方のための等方性状態に並びに2D及び3Dモードの他方のための複屈折状態にブルー相材料を切り替える。
【0023】
本発明の実施の形態は、純粋に一例として、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】既知の自動立体視表示装置の概略斜視図。
【図2】図1に示される表示装置のレンズアレイの動作原理を説明するために用いられる図。
【図3】図1に示される表示装置のレンズアレイの動作原理を説明するために用いられる図。
【図4】レンチキュラ・アレイが異なる空間位置に異なるビューをどのように提供するかを示す図。
【図5】本発明の自動立体視表示装置の例を示す図。
【図6】1つの考えられる偏光配置を説明するために用いられる図。
【図7】本発明の適応表示システムの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、立体画像が観察されることを可能にするために、レンズ配置が異なるピクセルからの出力を異なる空間位置へと導く切り替え可能な自動立体視表示装置を提供する。レンズ配置は、2Dモードと3Dモードとの間で電気的に切り替え可能で、ブルー相液晶材料を用いる。
【0026】
本発明を詳細に記載する前に、既知の切り替え可能な配置の例が最初に説明される。
【0027】
図1は、既知の直視型自動立体視表示装置1の概略斜視図である。既知の装置1は、表示を生成するための空間光変調器の働きをするアクティブ・マトリックス型の液晶表示パネル3を有する。
【0028】
表示パネル3は、ロウ及びカラムで配置される表示ピクセル5の直交するアレイを持つ。明確にするため、少数の表示ピクセル5のみが図に示される。実際には、表示パネル3は、表示ピクセル5の約千のロウ及び数千のカラムを有する。
【0029】
液晶表示パネル3の構造は完全に従来通りである。特に、パネル3は、一対の間隔を置いて配置された透明なガラス基板を有し、それらの間に、配向ツイステッド・ネマチック又はその他の液晶材料が提供される。基板は、それらの対向面上に透明なインジウム・スズ酸化物(ITO)電極のパターンを担持する。偏光レイヤがさらに基板の外側表面に提供される。
【0030】
各々の表示ピクセル5は、基板上に対向電極を有し、それらの間に液晶材料が介在する。表示ピクセル5の形状及びレイアウトは、電極の形状及びレイアウトによって決定される。表示ピクセル5は、ギャップによって互いから規則正しく間隔を置いて配置される。
【0031】
各々の表示ピクセル5は、薄膜トランジスタ(TFT)又は薄膜ダイオード(TFD)のようなスイッチング素子に結合される。表示ピクセルは、スイッチング素子にアドレス指定信号を提供することによって表示を生成するように動作し、そして適切なアドレス指定方法は当業者に知られている。
【0032】
表示パネル3は、この場合には、表示ピクセル・アレイの領域にわたって延在する平面バックライトからなる光源7によって照らされる。光源7からの光は表示パネル3を通して導かれ、個々の表示ピクセル5は、光を変調して表示を生成するように駆動される。
【0033】
表示装置1はさらに、表示パネル3の表示側に配置される、ビュー形成機能を実行するレンチキュラ・シート9を有する。レンチキュラ・シート9は、互いに平行に延在するレンチキュラ素子11のロウを有し、明確性のために、それらのうちの1つのみが誇張された大きさによって示される。
【0034】
レンチキュラ素子11は、凸形の円柱形レンズの形であり、それらは、表示パネル3からのそれぞれの画像又はビューを、表示装置1の前に位置するユーザの目に提供する光出力指向手段の働きをする。
【0035】
図1に示される自動立体視表示装置1は、異なる方向にいくつかの異なる投影ビューを提供することが可能である。特に、各々のレンチキュラ素子11は、各々のロウ中の表示ピクセル5の小さいグループの上に横たわる。レンチキュラ素子11は、いくつかの異なるビューを形成するように、異なる方向にグループの各々の表示ピクセル5を投射する。ユーザの頭部が左右に動くと、ユーザの目は、いくつかのビューのうちの異なるものを次々に受け取る。
【0036】
上述のように、電気的に切り替え可能なレンズ素子を提供することが提案された。これは、ディスプレイが2Dと3Dモードとの間で切り替えられることを可能にする。
【0037】
図2及び3は、図1に示される装置で用いられることができる電気的に切り替え可能なレンチキュラ素子35のアレイを概略的に示す。アレイは、一対の透明なガラス基板39, 41を有し、透明電極43, 45は、それらの対向面に設けられるインジウム・スズ酸化物(ITO)で形成される。複製技術を用いて形成される逆レンズ構造47が、基板39, 41の間に設けられ、基板のうちの上の1つ39に隣接する。液晶材料49がさらに基板39, 41の間に設けられて、基板のうちの下の1つ41に隣接する。
【0038】
図2及び3の断面図に示されるように、逆レンズ構造47によって、逆レンズ構造47と下側基板41との間で、液晶材料49は、平行で細長いレンチキュラ形状を呈する。液晶材料に接触する逆レンズ構造47及び下側基板41の表面には、さらに、液晶材料を整列させるための配向レイヤ(図示せず)が設けられている。
【0039】
図2は、電極43, 45に電位が印加されていないときのアレイを示す。この状態において、液晶材料49の屈折率は、逆レンズアレイ47のそれより大幅に高く、したがって、示されるように、レンチキュラ形状は光出力指向機能を提供する。
【0040】
図3は、約50〜100ボルトの交流電位が電極43, 45に印加されるときのアレイを示す。この状態では、液晶材料49の屈折率は、逆レンズアレイ47のそれと実質的に同一であり、示されるように、レンチキュラ形状の光出力指向機能はキャンセルされる。したがって、この状態では、アレイは実質的に「通過」モードで動作する。
【0041】
図1に示される表示装置に用いられるのに適した切り替え可能なレンチキュラ素子のアレイの構造及び動作のさらなる詳細は、米国特許番号6,069,650に見つけることができる。
【0042】
図4は、上述のレンチキュラ型画像形成配置の動作原理を示し、バックライト50、LCDのような表示装置54及びレンチキュラ・アレイ58を示す。図4は、レンチキュラ配置58がそれぞれのピクセル出力をそれぞれの空間位置にどのように導くかを示す。
【0043】
本発明は、切り替え可能なレンズ構造におけるブルー相液晶材料の使用に基づく。
【0044】
液晶材料のいわゆるブルー相の存在は、何十年もの間、認識されている。しかしながら、この相は、非常に狭い温度範囲を伴っていた。ブルー相は、立方格子を形成する三次元空間中で規則的な距離で生じる欠陥によって引き起こされる。したがって、ブルー相は、キラル液晶中の欠陥の規則的な三次元格子によって形成される。ブルー相の欠陥の間の間隔は光の波長(数百ナノメートル)の範囲であるので、格子から反射される光の特定の波長帯に対して、強め合う干渉が生じ(ブラッグ反射)、ブルー相は着色した光を反射する(実際にはいくつかのブルー相のみが青色光を反射する)。キラルLC材料がコレステリック相から暖められるか又は等方性相から冷却されるときに、ブルー相が生じる。
【0045】
2005年に、Nature, 436, pages 997-1000において出版されたように、ケンブリッジ大学のフォトニクス及びエレクトロニクス用分子材料センターの研究者は、摂氏16〜60度のような幅広い温度範囲にわたって安定したままであるブルー相液晶のクラスの発見を報告した。これらの超安定なブルー相は、電場を材料に印加することによって反射された光の色を切り替えるために用いられることができ、これは、フルカラー・ディスプレイのための三色(赤・緑・青)のピクセルを生成するために最終的に用いられることができることが示された。新たなブルー相は、2つの硬いロッドのようなセグメントが柔軟なチェーンによってリンクされている分子からできている。
【0046】
プロトタイプのブルー相液晶表示パネルが製造されて公表された。従来のTFT LCD技術(例えばツイステッド・ネマチック(TN)、面内スイッチング(IPS)又は垂直アライメント(VA))とは異なり、ブルー相モードは、LCアライメント・レイヤを必要としない。ブルー相モードはそれ自身のアライメント・レイヤを形成することができ、機械的アライメント及びラビング処理の必要性をなくす。これは必要な製造ステップの数を低減して、結果として生産コストが節約される。
【0047】
TVアプリケーションのためのブルー相ベースのLCディスプレイにおいて、視覚情報の表示のために用いられるのは、(ブラッグ反射の結果としての)格子ピッチによる選択的な光反射ではなく、外部電場がカー効果を介してLC中の複屈折を引き起こす。その電場誘導複屈折は、ブルー相モードLCレイヤが交差した偏光子間に配置されるときの透過率の変化として明らかになる。
【0048】
LCラビングの必要性と同様に、偏光アライメント・レイヤの必要性が回避される点において、上で概説される利点は、ブルー相LC材料を切り替え可能なレンズアレイに適用することによって得られることができる。したがって、構造及び製造プロセスが単純化される。
【0049】
図5は、本発明の自動立体視表示装置の第1の例を示す。
【0050】
この装置は、(偏光子を伴う)従来のLCパネル60を有し、その上に、切り替え可能なレンチキュラ・アレイ62が設けられている。透明なスペーサ64がLCパネルとレンチキュラ・アレイとの間に設けられ、そして、透明なカバー66がレンチキュラ・アレイの上に設けられている。
【0051】
レンチキュラ・アレイは、対向する透明電極(例えばITO)68、一定の屈折率を有する切り替え不可の材料で形成されるレンズ・レプリカ70及びブルー相LC材料72を有する。2D又は3Dモードは、3つの考えられる屈折率、すなわち、no(異方性の軸に対して垂直な常光線屈折率)、ne(異方性の軸と平行の異常光線屈折率)、nbf(等方性ブルー相屈折率)のうちの1つをレプリカが持つように選択することによって、及び、特定の光偏光を選択して、レプリカ材料の負の又は正の空気焦点距離を選択することによって、複屈折(異方性)ブルー相に関連付けられることができる。
【0052】
ブルー相LC材料は、no及びne値によって定められる。電場が無いとき、材料は、

によって定められる等方性屈折率を持つ。
【0053】
良好な角度が安定した2Dモードを得るために、この等方性値と同じ屈折率を有する等方性レプリカ材料が選択されるべきである(すなわちni(replica) =ne(replica) = no(replica)= niso)。
【0054】
この点で、数度(好ましくは数十度)の温度範囲にわたり安定したブルー相を有する任意のブルー相材料が用いられることができることが留意されるべきである。そのようなブルー相材料の非制限的な例は、例えば、前述のネイチャー刊行物と同様に、WO2005/075603及びWO2007/147516に見いだされることができる。そのようなブルー相材料は、一般的に1つ以上の(バイ)メソゲン・ネマチック化合物及びキラル添加物(例えばキラル・ネマチック化合物) の混合物から成る。例えばWO2007/147516に示されるように、ブルー相材料の屈折率値は、混合物の組成を変化させることによって調整されることができる。1.5545 - 1.6683の範囲のneの値及び0.0708 - 0.1637の範囲の光学異方性Δn= ne-noを有するブルー相材料のいくつかの例が与えられる。これは、当業者が、慣例技術としてそのそれぞれの屈折率を変更するためにブルー相材料の組成を変化させることが可能であることを示す。
【0055】
さらに、ブルー相材料の適当な屈折率(niso, no又はne)をレプリカ材料の屈折率と大体一致させることは慣例技術である。例えばUS 6,989,190等に開示されるように、多くの透明なポリマーが、例えば、(官能基化)ポリカーボネート(n = 1.58)、ポリイミド、日立製作所からのOPIシリーズ・ポリイミドのようなフッ化ポリイミド(n = 1.52-1.54)、フルオロカーボン(n = 1.36)、そのようなポリマーの混合物が、当業者にとって容易に利用可能である。
【0056】
一例として、WO2007/147516(この文献は参照によって本願明細書に組み込まれる)に開示されるブルー相LC混合物C-2は、1.5094の等方性屈折率を持つ。整合した屈折率を有する透明材料は、レプリカ構造として容易に利用可能である。1つの例は、1.500の屈折率を有する構造化ガラスである。1.5094の望ましい屈折率にさらにより近く整合するポリマー材料も利用可能である。さらに、いくつかのポリマーが、平均実効屈折率を達成するために混合されることができ、そしてこれは、望ましい屈折率が得られることを可能にするために用いられることができる。
【0057】
好ましくは、屈折率整合は、等方性屈折率とレプリカ構造屈折率との間の差(すなわち整合の誤差)が、LC材料の屈折率差の5%より小さいような整合である。C-2の例では、屈折率差は0.0930であり、したがって整合は0.0047より近いことが望ましい。より好ましくは、整合の誤差は、LC屈折率差の2%未満又は1%未満である。
【0058】
しかしながら、実際には、時には、望ましいようにレプリカ屈折率(ni(replica))をniso, no又はneの値と正確に一致させることは難しい場合がある。そして、小さい電場によるLCの屈折率の調整が、小さい量の異方性を可能にするために提供されることができ、それによって、ni(replica)との完全な一致が認識できるまで、可視屈折率を増加させることを可能にする。
【0059】
3Dモードのために、レプリカとブルー相LC材料の可視屈折率との間の屈折率の差を発生させることによって、レンズ効果が提供される。好ましくは、レンズ構造ができる限り薄く、ひいては、最小限の量のLC材料が必要とされるように、屈折率差は可能な限り大きくあるべきである。
【0060】
低い深さのレンズは、面内スイッチングを用いて達成されることができる。この場合のLC材料の異方性モードの軸は、光の偏光と平行に配列されることができ、そしてneが可視である。nisoと同じ屈折率を持つようにレプリカを選択することによって、結果として生じる屈折率差は、Δni(replica) - neによって形成される。屈折率差及び必要な焦点が、レンズの必要な形状を直接決定する。片面円柱レンズの場合、そのようなレンズの半径は、

として選択される。
【0061】
半径が小さくなるとレンズの断面深さが増加するので、より大きいΔnはより小さい深さを意味する。ni(replica) - neがni(replica) - noより大きいので、これはnr = nisoときに好ましい実施の形態である。
【0062】
光学異方性又は屈折率差は、二重面内スイッチングを用いることによりne - noにさらに増加されることができる。異方性モードの光学軸が、光の偏光に対して平行及び垂直の面内に回転されることができるように、電場は設定される。これは、例えば、各々が垂直な電場を発生させる垂直な構造化ITOパターンの2つのセットによって達成される。しかしながら、この実施の形態において、ブルー相の等方性相は利用されない。
【0063】
多くの他のバリエーションが考えられる。例えば、LC及びレンズ・レプリカ積層は、レプリカをブルー相材料として、そしてレンズ素子を等方性材料として、配置されることができる。レンズ素子の焦点距離は、負ではなく正であることができる。
【0064】
図6は、垂直に偏光した光線が用いられる配置を示し、ブルー相材料の等方性屈折率(niso)に整合されたレプリカ屈折率を示す。屈折率楕円体80が示されている。これは、複屈折媒質中の可視屈折率を示す既知の態様である。楕円体は複屈折を示し、そして球は等方性屈折率を表現する。屈折率差は、ni(replica) - noによって形成される。
【0065】
上の例において、ブルー相材料はレンズ構造の一部である。しかしながら、代替アプローチは、切り替え可能な偏光変更配置と組み合わせて、受動的レンズ配置を用いる。受動的レンズ配置は、複屈折レンズ及び非複屈折レンズ・レプリカ部分を持つ(又は、これらは、非複屈折レンズ及び複屈折レプリカ部分によって配置されることができる)。レプリカ部分は、複屈折レンズの屈折率のうちの1つ(例えば異常屈折率)に一致される屈折率を持つ。切り替え可能な偏光変更装置は、レンズとレプリカとの間に屈折率変化がある偏光状態と変化がない状態との間の選択を可能にする。したがって、受動的レンズに入射する光の偏光の方向は、レンズ機能が実施されるか又はレンズが通過装置として動作するかどうかを表す。
【0066】
このシステムはWO 03/015424において詳述される。
【0067】
そのような配置の切り替え可能な偏光変更装置は、本発明によれば、ブルー相LC材料を有することができる。ブルー相LC材料の複屈折のモードの複屈折は、ブルー相LC材料厚さと組み合わせて、望ましい偏光変更を生じさせる。例えば、複屈折セルは半波長板として機能することができ、複屈折モードにあるときにセルの入出力間の直交する偏光変化をもたらし、ブルー相LC材料の等方性モードにあるときに偏光の変化をもたらさない。
【0068】
したがって、スイッチング機能を提供するためにブルー相LC材料を利用することができる切り替え可能な2D/3D自動立体視表示装置のさまざまな例が存在し、本発明は上で詳細に説明された主要な例に制限されないことは明らかである。
【0069】
切り替え可能な配置は、図7に示されるように、適応3Dディスプレイの一部として用いられることができる。
【0070】
画像データは、記憶媒体140から又はライブでアンテナ142から受信され、画像/ビデオ復号器144によって処理される。従来のビデオ処理は、ブロック146において行われる。
【0071】
フォーマット検出ユニット148は、受信画像の3Dフォーマット(例えばビューの数)が検出されることを可能にして、表示フォーマット(例えば配向)が検出されることを可能にする。
【0072】
検出された画像フォーマット及びディスプレイ能力に基づいて、データフォーマット変換がブロック150において必要とされる場合があり、そして画像データは画像レンダリング・ユニット152において表示のために作成される。しかしながら、更に、3D画像形成配置は、表示パネルの制御が、表示パネルに提供されるデータの制御と同様に、レンズアレイ設定の制御を含むように、矢印154によって示されるように制御されることができる。これらは、望ましい3D効果を提供するために一緒に制御される。
【0073】
上で例は、一般的な画像フォーマットとして3D表示モードを議論した。ディスプレイの異なる領域を2D及び3Dモードに切り替えることも可能である。これは、もちろん、切り替え可能なレンズ配置を駆動するためのセグメント化された電極を必要とする。
【0074】
上で記載される例は、例えば、50μmから1000μmの範囲の表示ピクセル・ピッチを持つ液晶表示パネルを用いる。しかしながら、有機発光ダイオード(OLED)又は陰極線管(CRT)表示装置のような別の種類の表示パネルが用いられることができることは、当業者にとって明らかである。
【0075】
表示装置を製造するために使用される製造及び材料は、これらは従来通りであり当業者によく知られているので、詳細に説明されなかった。
【0076】
制御可能なレンズアレイの好ましい例は、セグメント化されたロウ及びカラム電極を持つが、セグメント化カラム電極だけが、複数の異なるビューに関する互換性を可能にするために必要とされる。
【0077】
開示された実施の形態に対する他のバリエーションは、図面、明細書及び添付の請求の範囲を研究することから、請求された発明を実施する際に、当業者によって理解され、遂行されることができる。請求の範囲において、「有する」「含む」などの用語は、他の要素又はステップを除外せず、単数の表現は複数を除外しない。シングルプロセッサ又はその他ユニットは、請求項中に列挙されるいくつかのアイテムの機能を実現することができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項中に列挙されているからといって、利益を得るためにこれらの手段の組み合わせが用いられることができないことを意味しない。コンピュータ・プログラムは、光記憶媒体又は他のハードウェアと共に若しくはそれの一部として供給される固体媒体のような適切な媒体上で、記憶/配信されることができるが、インターネット又は他の有線若しくは無線遠隔通信システムを介してのような他の形態で配信されることもできる。請求の範囲中のいかなる参照符号も、範囲を制限するものとして解釈されてはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2D及び3D動作モードを持つ切り替え可能な自動立体視表示装置であって、
表示を生成するための、ロウ及びカラムで配置された表示ピクセルのアレイを持つ表示パネル、並びに、
一方がブルー相LC材料で形成され他方が切り替え不可の等方性材料で形成されるレンズ素子配置及びレプリカ構造を有するレンズ配置であって、自動立体視画像が観察されることを可能にするために異なるピクセルからの出力を異なる空間位置に導くためのレンズ配置を有し、当該装置はさらに、
前記2Dモードのための等方性状態に及び前記3Dモードのための複屈折状態に前記ブルー相材料を切り替える制御装置を有し、
前記2Dモードにおいて、前記ブルー相材料の屈折率が、前記切り替え不可の等方性材料の屈折率に一致する、自動立体視表示装置。
【請求項2】
前記画像形成配置がアライメント・レイヤを持たない請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
2D及び3D動作モードを持つ切り替え可能な自動立体視表示装置であって、
表示を生成するための、ロウ及びカラムで配置された表示ピクセルのアレイを持つ表示パネル、並びに、
自動立体視画像が観察されることを可能にするために、異なるピクセルからの出力を異なる空間位置に導くための画像形成配置を有し、
前記画像形成配置はブルー相LC材料を有し、
当該装置はさらに、
前記2D及び3Dモードの一方のための等方性状態に並びに前記2D及び3Dモードの他方のための複屈折状態に前記ブルー相材料を切り替える制御装置を有し、
前記画像形成配置は、レンズ配置及び切り替え可能な偏光変更装置を有し、前記切り替え可能な偏光変更装置はブルー相LC材料を有する、自動立体視表示装置。
【請求項4】
前記ブルー相材料が、1つ以上の(バイ)メソゲン・ネマチック化合物及びキラル添加物の混合物からなる、請求項1又は請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記表示パネルが、個別にアドレス指定可能な放射型表示ピクセル、透過型表示ピクセル、屈折型表示ピクセル又は回折型表示ピクセルのアレイを有する、請求項1又は請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記表示パネルが、液晶表示パネルである、請求項1又は請求項3に記載の装置。
【請求項7】
前記制御装置が、画像データに依存して前記画像形成配置のモードを制御する、請求項1又は請求項3に記載の装置。
【請求項8】
2D動作モードと3D動作モードとの間で切り替え可能な自動立体視表示を提供する方法であって、
ロウ及びカラムで配置される表示ピクセルのアレイを持つ表示パネルから表示を生成し、
一方がブルー相LC材料で形成され他方が切り替え不可の等方性材料で形成されるレンズ素子配置及びレプリカ構造を有するレンズ配置を用いて、自動立体視画像が観察されることを可能にするために異なるピクセルからの出力を異なる空間位置に導き、
前記2Dモードのための等方性状態に及び前記3Dモードのための複屈折状態に前記ブルー相材料を切り替え、
前記2Dモードにおいて、前記ブルー相材料の屈折率が前記切り替え不可の等方性材料の屈折率に一致する、方法。
【請求項9】
前記ブルー相材料の切り替えが、前記画像形成配置のレンズ素子配置及びレプリカ構造のうちの1つを切り替えることを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
2D動作モードと3D動作モードとの間で切り替え可能な自動立体視表示を提供する方法であって、
ロウ及びカラムで配置される表示ピクセルのアレイを持つ表示パネルから表示を生成し、
レンズ配置及びブルー相LC材料を有する切り替え可能な偏光変更装置を有する画像形成配置を用いて、自動立体視画像が観察されることを可能にするために異なるピクセルからの出力を異なる空間位置に導き、
前記2Dモード及び前記3Dモードのうちの一方のための等方性状態に並びに前記2Dモード及び前記3Dモードのうちの他方のための複屈折状態に前記ブルー相材料を切り替える、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−528349(P2012−528349A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512499(P2012−512499)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052285
【国際公開番号】WO2010/136951
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】