説明

自動車のステアリングホイールの構成要素に電流を伝達するための伝達装置および伝達方法

【課題】本発明は、自動車のステアリングホイールの構成要素に電流を伝達する伝達装置に関する。
【解決手段】本発明の伝達装置は、ステアリングホイールとともに回転可能であるようにステアリングホイールに設けられているローター(2)と、ステアリングホイールの回転運動に比べて静止している自動車の構成要素に配置されているステーター(3)と、ローター(2)とステーター(3)を電気的に接続する少なくとも1つの導電要素(4)と、導電要素(4)または導電要素(4)の領域の温度を判別する温度判別装置を備えている。また、本発明は、自動車のステアリングホイールの構成要素に電流を伝達する伝達方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その開示が全て本明細書において参照により組み込まれている、2011年5月10日に出願された独国特許出願102011075593.4および2011年10月2日に出願された米国特許出願13/224918の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、請求項1に対応する自動車のステアリングホイールの構成要素に電流を伝達する(transmitting)ための伝達装置(transmission device)、請求項11に対応する伝達装置および請求項12に対応するステアリングホイールの構成要素に電流を伝達するための伝達方法(transmission method)に関する。
【背景技術】
【0003】
先行技術から、特に、自動車ボディに静止して設けられている電気または電子構成要素(例えば、制御ユニットおよび/または電力ソース)が、ステアリングホイールの回転と共に移動するステアリングホイールの構成要素に電気的に接続されている伝達装置が知られている。特に、このような伝達装置を備えていると、ステアリングホイールに設けられている電気または電子構成要素(例えば、エアバッグモジュールのイグニッションユニット、重ね合わせ駆動の電気モーターおよび/または電気スイッチ)は、電流が供給される。このような伝達装置の一例は、独国特許第411699号明細書に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許第411699号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の根底にある問題は、ステアリングホイール内に設けられている構成要素へのより安全な電流伝達を可能とする伝達装置および伝達方法を創作することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題は、請求項1および11に対応する特徴を有する伝達装置によって、また、請求項12に対応する特徴を有する方法によって解決される。本発明の展開は、従属請求項に示されている。
【0007】
したがって、自動車のステアリングホイールの構成要素に電流を伝達する伝達装置であって、
ステアリングホイールとともに回転可能であるようにステアリングホイールに設けられているローターと、
ステアリングホイールの回転運動に比べて静止している自動車の構成要素に設けられているステーターと、
ローターとステーターを電気的に接続する少なくとも1つの導電要素と、
導電要素または導電要素の領域の温度を判別(determine)するための温度判別装置
(temperature determination device)を備えている伝達装置が提供される。
【0008】
ローターは、−伝達装置の装着状態に基づいて−ステアリングホイールが回転する時に、ほぼステアリングホイールのステアリング軸回りに回転するように、ステアリングホイールに固定される。一方、ステーターは、ステアリングホイールの回転と共に回転しないように、自動車の固定のアセンブリーに固定される。例えば、ステーターは、自動車のステアリングコラム(ハンドル)カバー(覆い)に取り付けられる。
【0009】
導電要素は、特に、導電テープ、すなわち、少なくとも1つの導電通路が設けられている(例えば、印刷されている)平らな、可撓性を有する基板である。特に、複数の導電通路が、可撓性基板に、すなわち、表側および裏側に設けられる。ステーターおよびローターを有し、このような可撓性導電通路によって互いに接続されている伝達装置は、例えば、欧州特許第1257438号明細書に記載されている。これに対する参照は、ここに明確になされている。勿論、他の種類の導電要素、例えば、導電線あるいは複数の別々の線を使用することもできる。
【0010】
温度判別装置は、例えば、導電要素に設けられている少なくとも1つの温度センサーにより構成されている。例えば、導電要素に固定されている、例えば、導電要素に接着されている熱電対が温度センサーとして用いられる。勿論、温度センサーとして他の種類のセンサー、例えば、抵抗要素あるいは水晶発振器を有する発熱センサーを用いることができる。勿論、本発明は、所定の形式の温度センサーに限定されず、原理的には、任意の形式の温度センサー、例えば、光ファイバー温度センサー等の非接触式センサーを用いることもできる。
【0011】
特に、温度判別装置の少なくとも1つの温度センサーは、導電要素のローター端部に設けられ、および/または、少なくとも1つの温度センサーは、導電要素のステーター側端部に設けられる。導電要素が導電テープとして形成されている場合には、遷移要素(トランジションエレメント:transition element)(例えば、スタンプシート(stamped
sheet)の形式で)が、導電テープのローター側端部および/またはステーター側端部に設けられる。導電テープは、遷移要素を介して、プラグ要素(plug element)に接続される。温度センサー(あるいは、複数の温度センサー)は、遷移要素自身においてあるいは遷移要素の領域内において、導電テープに設けられる(特に、固定される)。加えて、少なくとも1つの温度センサーが、ローターに設けられ、および/または、少なくとも1つの温度センサーが、ステーターに設けられることが考えられる。
【0012】
導電要素は、特に、巻き付け可能である。そのために、ローターは、例えば、導電要素が巻き付け可能な巻き付け表面を形成する。温度センサー(あるいは複数の温度センサー)は、特に、導電テープの温度が、導電要素が、少なくともほぼ完全にローターの巻き付け表面に巻き付けられている場合、および、導電要素が、ローターの巻き付け表面から完全に巻き戻され、また、例えば、ステーターの表面に置かれている場合の両方に対し、導電テープの温度が判別可能であるように設けられている。この目的のために、例えば、少なくとも一つの温度センサーがローターに設けられ、また、少なくとも一つの温度センサーがステーターに設けられている。
【0013】
本発明のさらなる形態では、伝達装置は、導電要素を通って流れる電流の電流密度、導電要素による電圧降下および/または伝達装置を介する電力伝達(電力電送)の間に生じる電力損失を判別するモニター装置(監視装置)を備えている。
【0014】
特に、温度判別装置は、伝達装置に対する(数値)温度モデルを用いることによって、判別された電流密度、電圧および/または電力損失に関するモニター装置の情報を参照して導電要素の温度を判別するように形成されると考えられる。このことは、温度判別が、測定された電流(すなわち、測定された電流密度),
電圧および/または電力損失を参照して間接的に行われることを意味している。特に、このような温度判別は、温度センサーを用いないで行うことができる。勿論、電流密度、電圧降下および/または電力損失は、直接の温度測定以外で判別することができる。
【0015】
加えて、伝達装置は、判別された導電要素の温度、導電要素を通って流れる電流の電流密度、導電要素による電圧降下および/または電力損失に基づいて、導電要素を通る電流を制御する制御ユニットを包含可能である。例えば、この制御ユニットは、自動車のステアリングホイール内に一体化可能に形成される。
【0016】
さらに、制御ユニットは、導電要素を通る電流が指定可能な温度制限値を超える場合に、導電用を通る電流を減少あるいは遮断するように形成可能である。この測定によって、高すぎる温度による導電要素の破壊に対抗することができる。電流の減少あるいは遮断は、例えば、制御ユニットが、ステアリングホイール内の構成要素(負荷)の少なくともいくつかに、伝達装置を介して供給される、対応する制御信号を送信することによって達成可能である。この目的のために、制御ユニットは、特に、バスシステム(例えば、ローカルインターコネクトネットワーク(LIN)あるいはコントローラーエリアネットワーク(CAN))を介して、ステアリングホイール内の負荷に接続される。制御ユニットは、導電要素を通る電流の流れを遮断可能なスイッチを制御するように構成することも可能である。
【0017】
さらに、制御ユニットは、伝達装置の温度モデルを用いることによって、温度の任意の時間プロファイル(時間特性)を推定することが考えられる。これにより、例えば、温度が許容可能な最大温度を超えるか否か、超える場合には、いつ超えるかを判別することができる。例えば、制御ユニットは、推定された温度プロファイルが指定可能な制限値を超える時に、導電要素を通って流れる電流の流れを減少あるいは遮断するように形成される。言い換えれば、制御ユニットは、将来の温度プロファイルを判別し、そして、将来の温度プロファイルが指定可能な制限値を超える時(例えば、指定可能な期間内に)に、導電要素を通って流れる電流を減少させる。
【0018】
温度モデルのパラメータは、導電要素を通って流れる電流の電流密度に対する測定値、導電要素による電圧降下に対する測定値および/または導電要素を通って流れる電流の電力損失に対する測定値を用いることによって判別され、それによって、導電要素に対する温度プロファイルがシミュレートされることが考えられる。このシミュレートされた温度プロファイルが指定可能な制限値を超えると、制御ユニットが、伝達装置を介する電流を減少あるいは遮断するように構成すべきである。
【0019】
第2のアスペクトでは、本発明は、自動車のステアリングホイールの構成要素に電流を伝達するための伝達装置に関し、
ステアリングホイールと共に回転可能であるように、ステアリングホイールに設けられているローターと、
ステアリングホイールの回転運動に比べて静止している自動車の構成要素に設けられているステーターと、
ローターとステーターを電気的に接続する少なくとも一つの導電要素と、
導電要素の少なくとも一つの部分による電圧降下を判別する電圧判別手段を備えている。
【0020】
電圧判別手段(voltage determination means)は、特に、導電要素の障害(例えば、導電遮断)を検出するように作用する。さらに、電圧判別手段によって判別された電圧に基づいて、導電要素を介する電流を制御する。例えば、電圧判別手段によって測定された電圧が導電要素の損傷を示している時に、電流を減少あるいは遮断する制御ユニットを設けることができる。
【0021】
伝達装置は、導電要素あるいは導電要素の領域内の温度を判別するための前述した温度判別装置を包含可能である。これにより、電圧降下の判別は、温度測定と結合可能である。特に、制御部は、温度判別装置によって判別された温度および/または電圧判別手段によって判別された電圧に基づいて、導電要素を通る電流を制御するように形成される。
【0022】
電圧判別手段、例えば、ステアリングホイール内の構成要素に供給される電流が流れる、導電要素の第1の部分による電圧降下、および/または、ステアリングホイール内の構成要素から放散される電流が流れる、導電要素の第2の部分による電圧降下を判別するように形成される。特に、導電要素の第1の部分は、入力端子から構成要素に接続されている出力に延びている。導電要素の第2の部分は、例えば、構成要素に接続されている導電要素の入力端子と出力との間に延びている。例えば、構成要素は、例えば、ステアリングホイールのさらなる電子あるいは電気構成要素(負荷)が接続されている制御手段である。
【0023】
導電要素を通る電流を制御する制御ユニットは、導電要素の第1および第2の部分を介して測定した電圧降下を互いに比較し、そして、例えば、電圧降下に対する測定値が異なる時に、導電要素を通る電流を減少あるいは遮断するように構成可能である。例えば、第1の部分による電圧降下が第2の(電流放散)部分による電圧降下より大きい時に、導電要素の第1の(電流供給)部分の検出が検出可能となるように構成可能である。
【0024】
また、本発明は、前述したように形成される伝達装置を備えるステアリングホイールに関する。
【0025】
さらに、本発明は、特に、前述した装置を用いることによって、自動車のステアリングホイールの構成要素に電流を伝達する方法に関し、
ステアリングホイールと共に回転するように、ステアリングホイールに配置されているローターを提供するステップと、
ステアリングホイールの回転運動に比べて静止している自動車の構成要素に設けられているステーターを提供するステップと、
ローターとステーターを電気的に接続する少なくとも一つの導電要素を提供するステップと、
導電要素の温度を判別するステップを備えている。
【0026】
特に、すでに前述したように、導電要素の温度の時間プロファイルは、温度モデルを用いることによってシミュレート可能であり、あるいは、測定された温度プロファイルを推定することによって判別可能である。このような方法で判別された温度プロファイルは、指定可能な温度制限値と比較され、そして、温度プロファイルが制限値を超える場合に、導電要素を通る電流が減少あるいは遮断される。
【0027】
代わりにあるいは追加して、空間温度の推定が行なわれることが考えられる。すなわち、伝達配置の第1の部分における温度が知られることに続けて、第1の部分から離れている伝達配置の第2の部分に対する温度が、伝達装置に対する温度モデルを用いることによって判別される。第1および/または第2の部分は、例えば、導電要素の部分である。この方法では、例えば、温度センサーは、導電要素に直接に取り付けられないで、間隔を開けて取り付けられており、それにもかかわらず、導電要素の温度を判別可能である。
【0028】
本発明は、後に、図を参照しながら実施の形態を用いて詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に対応する伝達装置を示す図である。
【図2】伝達装置の異なる箇所における温度のプロファイルおよび電力損失の時間プロファイルを示す図である。
【図3】測定された温度プロファイルと計算された温度プロファイルを示している図である。
【図4】本発明に対応する伝達装置のブロック回路図である。
【図5】電圧判別手段を有する本発明に対応する伝達装置を模式的に示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に示されているように、本発明に対応する伝達装置1(コンタクトユニット)は、ステアリングホイール(図示省略)に取り付けられるローター2を有している。ローター2は、フレキシブル(可撓性を有し)でフラット(平ら)な導電テープ4の形式の導電要素を介してステーター3に電気的に接続されている。ステーター3は、自動車の静止している構成要素(図示省略)に固定されている。これにより、ステーター3は、ローター2と対照的に、ステアリングホイールの回転とともに回転しない。導電テープ4は、ローターの巻き付け表面21に巻き付け可能である。図1には、巻き付け表面21にほぼ完全に巻き付けられている状態の導電テープ4が示されている。
【0031】
さらに、伝達装置1は、温度センサー5(例えば、抵抗要素あるいは熱電対の形式)を含む温度判別装置により構成されている。図示されている実施の形態では、温度センサー5は、ローター2に取り付けられ、そして、特に、巻き付け状態にある導電テープ4(少なくとも、導電テープ4の領域)の温度を判別するように作用する。図1では、温度センサー5への電気導線が模式的に示されている。勿論、導線は、他の方法で延びていてもよい。例えば、温度センサー5の電気接続は、導電テープ4の導電通路を介してなされてもよい。
【0032】
加えて、温度判別装置は、さらなる温度センサーにより構成することが考えられる。例えば、少なくとも一つの温度センサーがステーター3に配設可能であれ、それにより、導電テープ4の温度は、導電テープが巻き付け表面21から完全に巻き戻され、また、例えば、ステーター3の表面に置かれている時に判別可能である。
【0033】
伝達装置は、特に、導電要素4を通って流れる電流の電流密度を判別するためのモニター装置(監視装置)を含んでいる。例えば、導電テープの導電通路の一つを通って流れる電流の電流密度が測定される。勿論、モニター装置は、導電テープの導電通路のいくつかあるいは全部を通って流れる電流の電流密度を判別するように形成されることが考えられる。さらに、モニター装置は、導電テープによる電圧降下および/または導電テープを介するエネルギーの伝達中に得られる電力損失を判別するように構成することができる。
【0034】
モニター装置は、特に、例えば、ステアリングホイール上あるいはステアリングホイール内に(少なくとも部分的に)配置され、あるいは、ローターおよび/またはステーターに配置されている電気回路として形成される。また、ローターおよび/またはステーターは、伝達装置のハウジングを形成し、そして、電気回路は、このハウジング内に配置されることが考えられる。
【0035】
また、伝達装置1は、導電要素の温度、導電要素を通って流れる電流の電流密度、導電テープによる電圧降下および/または電力損失に基づいて、導電テープを通る(あるいは、導電テープの導電通路のいくつかのみを通る)電流を制御する制御ユニット(例えば、電子制御ユニット(ECU)のような電子回路の形式)を包含可能である。
【0036】
モニター装置のように、制御ユニットは、例えば、ローターおよび/またはステーターあるいはステアリングホイール内のいくつかの他の箇所に配設可能である。モニター装置および制御ユニットは、共通の電子構成要素の形式で設けられることが考えられる。勿論、制御ユニットは、ステアリングホイール内ではなく、自動車内のいくつかの他の箇所に(例えば、オンボードの電子機器と共に)配設可能である。
【0037】
制御ユニットは、特に、センサー5によって測定された温度と、例えば、前述した電力損失あるいは導電テープを通って流れる電流あるいは導電要素により生じる電圧降下等のさらなる特性を用いることによって、導電テープの温度の時間プロファイルをシミュレートあるいは推定するように構成される。特に、制御ユニットは、シミュレートあるいは推測されたプロファイルが指定可能な制限値を超える時に、導電テープを通る電流を減少あるいは遮断するように構成される。勿論、制御ユニットは、センサーによって測定された温度が制限値を超える時に、温度プロファイルをシミュレートあるいは推定することなく、導電要素を通る電流を減少あるいは遮断するように構成することも考えられる。
【0038】
図2は、伝達装置の異なる箇所に配設されている温度センサーで測定された異なる温度プロファイルを示している。曲線Aは、ローターの領域内に配設された温度センサーによって判別(測定)された温度に関し、曲線Bは、ステーターの領域内に配設されたセンサーで測定された温度に関する。さらに、センサーは、ローター内の、空気で充填された容積中(曲線C)、ローターとステーターの間(曲線D)、伝達装置のカバーの外側(例えば、ローターあるいはステーターによって形成される)(曲線E)および伝達装置の外側に間隔を開けて(曲線F)配置された。
【0039】
さらに、図2は、導電テープを通って電流が流れている間に生じる電力損失(曲線G)を示している。なお、導電テープの断面積は、2×1.73mmであり、導電テープに20Aの電流密度を有する電流を流した。
【0040】
図3は、図2の曲線AおよびBに対応する温度プロファイル(連続線)を示している。加えて、伝達装置に対する数値温度モデルが開発され、それを用いて導電テープ内の温度の時間プロファイルが計算可能(破線)である。前述したように、測定された電流密度、電圧降下および/または電力損失等の電気特性は、モデル内に包含可能である。また、測定された温度プロファイルが、モデル内に包含されることが考えられる。このモデルのパラメータは、測定された温度プロファイルを推測するために、測定された温度プロファイルに適合(フィット)される。
【0041】
したがって、例えば、任意の期間に対して判別された温度プロファイルに基づいて、後者の温度プロファイルあるいは後日の温度を推測することができる。特に、推測あるいはシミュレートされた温度プロファイルは、導電テープ内の温度が、後日において、指定可能な温度制限値を超えるか否かを調べるために使用可能である。この場合、制御ユニットは、高温による導電テープの損傷を防止するために、特に、制限値の超過が、伝達装置が作動状態とされてから指定可能な期間内に生じる時に、導電テープを通る電流の流れを減少あるいは遮断してもよい。
【0042】
図4には、伝達装置の一実施の形態が、ブロック回路図で示されている。したがって、ローター、ステーター、導電テープ、温度判別装置(“ローター−ステーター温度”出力を有している)および電圧降下を判別するためのモニター手段(“電圧降下”出力を有している)のユニット6は、導電テープを介して制御ユニット7に接続されている。
【0043】
前述したように、制御ユニット7は、入力変数“導電テープにおける温度”および“導電テープによる電圧降下”に基づいて、導電テープを通って流れる電流を抑制するように形成される。この目的のために、制御ユニット7は、制御ユニット7の制御信号に応答して、導電テープを介して流れる電流を遮断するオフ位置に切り換わるスイッチ8に接続されている。
【0044】
ユニット6および制御ユニット7は、自動車の電力ソース(電力源)9に接続されている。制御ユニット7は、ステアリングホイール内に収められているとともにECU10を介して制御される構成要素の電力消費が減少するように配置するために、ステアリングホイール内に収容されているさらなる制御ユニット10(ステアリングホイールECU)に、導電テープを介して制御信号を送信可能である。例えば、ECU10は、制御ユニット7の対応する制御信号に応答して、ステアリングホイールの個々の電気あるいは電子構成要素をスイッチオフする。制御ユニット7とECU10は、共通ユニットに結合可能である。
【0045】
図5は、導電テープ4(平導体)として形成されている導電要素の第1の部分41による電圧降下Uおよび導電テープ4の第2の部分による電圧降下Uを判別するための電圧判別手段11が設けられている、本発明に対応する伝達装置を示している。
【0046】
導電テープの第1の部分41を介して、電流4が、制御手段10(ステアリングホイールCPU)の形式の構成要素に供給され(供給導体に矢印で示されている電流方向)、また、第2の部分42を介して、電流が、制御手段10から放散される(dissipate)(放散導体に矢印で示されている電流方向)。第1の部分41は、例えば、入力端子から制御手段10に接続されている導電テープ4の出力に延びており、また、第2の部分42は、制御手段10に接続されている入力から導電テープ4の出力端子に延びている。例えば、両部分41、42は、導電テープ4の第1および第2のプラグ端子の間に延びている。
【0047】
伝達装置は、さらに、第1および第2の部分41、42を介して電圧判別手段11によって測定された電圧に基づいて、導電テープ4を通る電流を制御する制御ユニット7を有している。例えば、制御ユニット7は、第1あるいは第2の部分41、42による電圧降下U、Uが指定可能な制限値を超える時に、導電テープを通る電流を減少あるいは遮断するように形成される。制限値は、制限値を超える電圧降下が、導電テープの少なくとも部分領域の瑕疵(導電テープ4の第1の部分41内に×印で示されている)を示すように選択される。
【0048】
制御ユニット7は、第1の部分41による電圧降下Uを第2の部分42による電圧降下Uと比較し、そして、電圧降下Uが電圧降下Uと異なる場合、例えば、第1の部分41内の瑕疵によって、電圧Uが電圧Uより場合に、導電テープ4を通る電流を減少あるいは遮断する。例えば、瑕疵がない第2の部分42による電圧降下Uは、電流密度10Aで150mVであり、一方、損傷した第1の部分41による電圧降下は、例えば、200mV以上である。
【0049】
勿論、図5の伝達手段は、例えば、図1および図4に示されている温度判別装置と結合可能である。この場合、制御ユニット7は、特に、温度判別装置で判別された温度および/または電圧判別手段で判別された電圧(すなわち、電圧降下UあるいはU)に基づいて、導電テープ4を通る電流を制御するように形成される。
【符号の説明】
【0050】
1 伝達装置
2 ローター
3 ステーター
4 導電テープ
5 温度センサー
6 ユニット
7 制御ユニット
8 スイッチ
9 電力ソース(電力源)
10 ステアリングホイール制御ユニット
11 電圧判別手段
41 第1の部分
42 第2の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のステアリングホイールの少なくとも一つ構成要素に電流を伝達する伝達装置であって、
ステアリングホイールと共に回転可能であるように、前記ステアリングホイールに設けられているローター(2)と、
前記ステアリングホイールの回転運動に比べて静止している自動車の構成要素に設けられているステーター(3)と、
前記ローター(2)と前記ステーター(3)を電気的に接続する少なくとも一つの導電要素(4)と、
前記導電要素(4)あるいは前記導電要素(4)の領域の温度を判別する温度判別装置を備えていることを特徴とする伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の伝達装置であって、
前記温度判別装置は、前記導電要素(4)に設けられている少なくとも一つの温度センサーにより構成されていることを特徴とする伝達装置。
【請求項3】
請求項2に記載の伝達装置であって、
少なくとも一つの温度センサーが、前記導電要素(4)のローター側端部に設けられ、および/または、少なくとも一つの温度センサーが、前記導電要素(4)のステーター側端部に設けられていることを特徴とする伝達装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の伝達装置であって、
少なくとも一つの温度センサー(5)が、前記ローター(2)に設けられ、および/または、少なくとも一つの温度センサーが、前記ステーター(3)に設けられていることを特徴とする伝達装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の伝達装置であって、
前記導電要素(4)を通って流れる電流の電流密度、前記導電要素(4)による電圧降下および/または電力損失を判別するモニター装置を備えていることを特徴とする伝達装置。
【請求項6】
請求項5に記載の伝達装置であって、
判別された前記導電要素(4)の温度、前記導電要素(4)を通って流れる電流の電流密度、前記導電要素(4)による電圧降下および/または前記電力損失に基づいて、前記導電要素(4)を通る電流を制御する制御ユニット(7)を備えていることを特徴とする伝達装置。
【請求項7】
請求項6に記載の伝達装置であって、
前記制御ユニット(7)は、温度が指定された制限値を超えた時に、前記導電要素(4)を通る電流を減少あるいは遮断することを特徴とする伝達装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の伝達装置であって、
前記温度判別装置は、前記導電要素(4)の温度の時間プロファイルを判別し、
前記制御ユニット(7)は、温度プロファイルを推定し、また、前記推定された温度プロファイルが指定された制限値を超える時に、前記導電要素(4)を通る電流を減少あるいは遮断することを特徴とする伝達装置。
【請求項9】
請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載の伝達装置であって、
バスシステムを備え、
前記制御ユニット(7)は、伝達装置を介して電流が供給されるステアリングホイールの構成要素に、前記バスシステムを介して接続可能であることを特徴とする伝達装置。
【請求項10】
請求項1〜9のうちのいずれか一項に記載の伝達装置であって、
前記導電要素は、少なくとも一つの導電通路が設けられている可撓性基板により構成されていることを特徴とする伝達装置。
【請求項11】
自動車のステアリングホイールの少なくとも一つの構成要素に電流を伝達する伝達装置であり、特に、請求項1〜10のうちのいずれか一項に対応する伝達装置であって、
ステアリングホイールと共に回転可能であるように、前記ステアリングホイールに設けられているローター(2)と、
前記ステアリングホイールの回転運動に比べて静止している自動車の構成要素に設けられているステーター(3)と、
前記ローター(2)と前記ステーター(3)を電気的に接続する少なくとも一つの導電要素(4)と、
前記導電要素(4)の少なくとも一つの部分(41,42)による電圧降下(U,U)を判別する電圧判別手段(11)を備えていることを特徴とする伝達装置。
【請求項12】
自動車のステアリングホイールの構成要素に電流を伝達する伝達方法であり、特に、請求項1〜10のうちのいずれか一項に対応する伝達装置を用いる伝達方法であって、
ステアリングホイールと共に回転可能であるように前記ステアリングホイールに設けられているローター(2)を提供するステップと、
前記ステアリングホイールの回転運動に比べて静止している自動車の構成要素に設けられているステーター(3)を提供するステップと、
前記ローター(2)と前記ステーター(3)を電気的に接続する少なくとも一つの導電要素(4)を提供するステップと、
前記導電要素(4)あるいは前記導電要素(4)の領域の温度を判別するステップを備えていることを特徴とする伝達方法。
【請求項13】
請求項12に記載の伝達方法であって、
温度の時間プロファイルが判別され、また、推定されるステップと、
前記推定された温度プロファイルが、指定された温度制限値と比較されるステップと、
前記推定された温度プロファイルが前記指定された温度制限値を超える場合に、前記導電要素(4)を通る電流が減少あるいは遮断されるステップを備えていることを特徴とする伝達方法。
【請求項14】
請求項13に記載の伝達方法であって、
前記導電要素(4)を通って流れる電流の電流密度、前記導電要素(4)による電圧降下および/または電力損失が判別され、そして、前記温度プロファイルの超過が、これらの変数のうちの少なくとも一つによってもたらされることを特徴とする伝達方法。
【請求項15】
請求項12〜14のうちのいずれか一項に記載の伝達方法であって、
温度は、伝達装置(1)の第1の部分に対して判別され、また、温度は、温度モデルを用いることによって、伝達装置(1)の第2の部分に対して判別されることを特徴とする伝達方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−236590(P2012−236590A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−105865(P2012−105865)
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【出願人】(594101503)タカタ・ペトリ アーゲー (146)
【Fターム(参考)】