説明

自動車のランプ固定構造

【課題】車両後方へランプがずれ落ちることを防止するための仮置き性能を持たせたランプ固定構造を提供する。
【解決手段】自動車ランプを車体に固定する構造であって、ランプ1のハウジング10の背面に受け部15を備え、車体がランプ取付面に受け部15と係合する係合部40を備え、受け部15が係合部40の離脱を規制する規制部を備えている。受け部15は、車両前後方向に沿ったスリット部を有し、規制部が、スリット部に形成した切欠部で成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のランプを固定する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のテールランプは、一般に、バルブと、このバルブからの光を反射させるリフレクタと、リフレクタの前方を覆うレンズと、リフレクタの後側に配設されるハウジングと、から構成されている。この種のランプは、通常、車体に形成されたボルト穴に、ハウジングに取り付けたスタッドボルトを差し込み螺着させることで、車体に取り付けられている。
【0003】
また、近年のテールランプは、複数のバルブを備えたリヤコンビネーションランプ100として構成されており、その外側の端部は、図7に示すように車両後面からコーナーを越えて車両側面まで延出している。
【0004】
具体的には、レンズ110は、車両の後方側に面する後面部111と、車幅方向外側に面する側面部112と、を備えている。同様に、レンズ110が被着されるハウジング120も、後面部121と、この後面部121の端部から屈曲した側面部122と、を備えている。
【0005】
この種のリヤコンビネーションランプ100は、次のように車体に固定される。
車体には、ハウジング120の側面部122と対向するパネル、即ち取付面131が在り、このパネルには、ランプを取り付ける際に使用するクリップ140を差し込む孔131Aが形成されている。このクリップ140は、例えば図8に示すように、孔131Aに嵌め込まれる嵌入部141と、この嵌入部141の先端部に設けられ取付面131に当接する当接部142と、この当接部142に軸状の連結部143を介して取り付けられた円盤状の頭部144と、から構成されている。このような構成によって、クリップ140は、頭部144を車両外側へ突出させた状態で車体に取り付けられる。
【0006】
一方、ランプのハウジング120の背面には、クリップ140の頭部144を受容する受け部125が形成されている。この受け部125は、図9に示すように、矩形状の樹脂パネル125Aにスリット部125Bを形成してコ字型に構成されており、この樹脂パネル125Aはその周縁から折れ曲がるようにパネル側に延出した周縁部125Cを介してハウジング120に取り付けられている。
【0007】
この受け部125のスリット部125Bに、車体のパネル表面から部分的に突出しているクリップ140の連結部143を挿入することで、受け部125を構成する樹脂パネル125Aとハウジング120の背面との間にクリップ140の頭部144が差し込まれる。そして、クリップ140の頭部144がスリット部周辺の樹脂パネル面に当接することで、クリップ140が受け部125と係合する。
【0008】
このように、クリップ140を受け部125に係合させて、車両側面に廻り込むリヤコンビネーションランプ100の端部が車両幅方向外側へ動くことを規制することで、リヤコンビネーションランプ端末が跳ね上がることを抑制できるので、建て付けの見栄えが確保される。
【特許文献1】特開平8−91115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のリヤコンビネーションランプ100は、サイズ・構造・機能配置などの違いが起因して重心や質量が異なるため、車両組付け時に様々な回転モーメントが加わり仮置きすることが出来ず、リヤコンビネーションランプ100が車両後方へずれて外れてしまう。
【0010】
本発明は上記問題を解決するために創作されたものであり、車両後方へランプがずれ落ちることを防止するための仮置き性能を持たせたランプ固定構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、自動車ランプを車体に固定する構造であって、ランプのハウジングの背面に受け部を備え、車体がランプ取付面に受け部と係合する係合部を備え、受け部が係合部の離脱を規制する規制部を備えていることを特徴としている。
【0012】
本発明のランプ固定構造において、受け部が車両前後方向に沿ったスリット部を有し、規制部がスリット部に形成した切欠部で成るか、又は、規制部はスリット部に形成した凸部で成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、組付時に、リヤコンビネーションランプの受け部が車体に取り付けたクリップから外れることが規制できる。これにより、組付時にリヤコンビネーションランプを車体に仮置きすることができることから、取付作業の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。図中のFrは車両前方を,Upは車両上方を,RHは車幅方向であって右方を示す。
図1は本発明の実施形態に係るリヤコンビネーションランプ1を示す概略断面図であり、リヤコンビネーションランプ1は、ハウジング10と、このハウジング10に被着したアウタレンズ20と、を備えており、これらのハウジング10とアウタレンズ20とで画成される空間S内に、図示省略するバルブ、リフレクタ等が配設されている。
【0015】
このリヤコンビネーションランプ1は、車体後面からコーナーを越えて車体側面まで亘る領域を覆おうように配設される。このため、リヤコンビネーションランプ1のハウジング10は、車両の後方側に面する後面部11と、車幅方向外側に面する側面部12と、を備えている。これらに対応して、アウタレンズ20も、後面部21と、側面部22とを備えている。
【0016】
リヤコンビネーションランプ1が取り付けられる車体側の取付部30は、車両の後方側に面する後面パネル部31と、この後面パネル部31の端から折れ曲がって車両前方側へ延出した側面パネル部32と、を備えている。
【0017】
車体側の取付部30における後面パネル部31には、後述するスタッドボルト13を取り付ける取付穴31Aが形成されており、側面パネル部32には、クリップ40を差し込む孔32Aが形成されている。この孔32Aに差し込まれるクリップ40は、孔32Aに嵌め込まれる嵌入部41と、この嵌入部41の先端部に設けられ側面パネル部32に当接する当接部42と、この当接部42と軸状の連結部43を介して繋がった円盤状の頭部44と、から構成されている。このような構成によって、クリップ40は、頭部44を車両外側へ突出させた状態で車体に取り付けられる。
【0018】
このような車体側の取付部30に対応してリヤコンビネーションランプ1には、図1及び図2に示すようにハウジング10の後面部11の裏面にスタッドボルト13が突出するように取り付けられており、ハウジング10の側面部12の裏面に前述のクリップ40と係合する受け部15が形成されている。なお、スタッドボルト13にはパッキン14(図1)が取り付けられている。
【0019】
この受け部15は、図3に示すように矩形状の樹脂パネル部151に筋状のスリット部152を形成してコ字型に構成されており、この樹脂パネル部151はその周縁から折れ曲がるようにハウジング10の側面部12側に延出した周縁部153を介してハウジング10に取り付けられている。
【0020】
本実施形態に係る受け部15は、クリップ40の離脱を規制する規制部を備えていることを特徴としている。即ち、受け部15は、スリット部152の縁に前述のクリップ40の連結部43の移動を規制する規制部を備えている。具体的には、図3に示すように、スリット部152は略平行に延出した一対のエッジ152A,152Bを備えていて、規制部は各エッジ152A,152Bに形成した切欠部154として形成されており、この切欠部154に後述するクリップ40の連結部43が係合する。なお、スリット部152は、車両前後方向に沿って形成されており、規制部は、この前後に延びるエッジの内、上側のエッジ152Aには上方へ切り欠いて、下側のエッジ152Bには下方へ切り欠いて形成されている。
【0021】
このように構成されたリヤコンビネーションランプ1を車体に組み付ける際、ハウジング10に取り付けたスタッドボルト13を取付穴31Aに差し込み、車体の側面パネル部32に取り付けたクリップ40の頭部44を、ハウジング10の受け部15の樹脂パネル部151とハウジング10の裏面との間に差し込む。
この際、図4に示すように、スタッドボルト13の根本部分で広がるパッキン14が車体の後面パネル部31に弾接して、スタッドボルト13を取付穴31Aから引き出す方向へ移動させる。これに対応して、リヤコンビネーションランプ自体が車両後方側へ移動しようとし、ハウジング10の受け部15がクリップ40から外れる方向へ移動しようとする。このとき、受け部15の移動に伴って、クリップ40の連結部43に受け部15の規制部が引っかかる。これにより、車体からリヤコンビネーションランプ1が外れることが防止される。
【0022】
このように、本発明の実施形態に係るランプ固定構造によれば、組付時に、リヤコンビネーションランプ1の受け部15が車体に取り付けたクリップ40から外れることが規制できる。これにより、組付時に、リヤコンビネーションランプ1を車体に仮置きすることができることから、取付作業の効率化を図ることができる。
特に、組付時に、リヤコンビネーションランプ1が後方へずれようとするときに、発生する回転モーメントによって、リヤコンビネーションランプ1の受け部周辺が下方へ移動しようとすると、図5(A)に示すように、上側のエッジ152Aの切欠部154にクリップ40の連結部43が衝接して、また、リヤコンビネーションランプ1の受け部周辺が上方へ移動しようとすると、図5(B)に示すように、下側のエッジ152Bの切欠部154にクリップ40の連結部43が衝突して、リヤコンビネーションランプ1が車体から脱落することを防止できる。
【0023】
以上説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施をすることができる。規制部の形状は、上記図示例に限定されるものではなく、例えば、図6に示すように構成することができる。図6に示す規制部は、各152A,152Bから対向エッジ側へ突出した突部155として形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係るランプ固定構造の断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るリヤコンビネーションランプの側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る受け部を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るリヤコンビネーションランプの組付を説明するための図である。
【図5】(A)及び(B)はそれぞれ本発明の実施形態に係るリヤコンビネーションランプの作用を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態に係るリヤコンビネーションランプにおける受け部の他の構成例を示す図である。
【図7】従来のランプ固定構造を示す図である。
【図8】従来のランプ固定構造に利用されるクリップの構成例を示す図である。
【図9】従来のランプ固定構造における受け部を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1 リヤコンビネーションランプ
10 ハウジング
11 後面部
12 側面部
13 スタッドボルト
14 パッキン
15 部
20 アウタレンズ
21 後面部
22 側面部
30 取付部
31 後面パネル部
31A 取付穴
32 側面パネル部
32A 孔
40 クリップ
41 嵌入部
42 当接部
43 連結部
44 頭部
100 リヤコンビネーションランプ
110 レンズ
111 後面部
112 側面部
120 ハウジング
121 後面部
122 側面部
125 部
125A 樹脂パネル
125B スリット部
125C 周縁部
131 取付面
131A 孔
140 クリップ
141 嵌入部
142 当接部
143 連結部
144 頭部
151 樹脂パネル部
151 樹脂パネル
152 スリット部
152 エッジ
152A エッジ
152B エッジ
153 周縁部
154 切欠部
155 突部
S 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車ランプを車体に固定する構造であって、
上記ランプのハウジングの背面に受け部を備え、
上記車体がランプ取付面に上記受け部と係合する係合部を備え、
上記受け部が上記係合部の離脱を規制する規制部を備えていることを特徴とする、ランプ固定構造。
【請求項2】
前記受け部が、車両前後方向に沿ったスリット部を有し、
前記規制部が、上記スリット部に形成した切欠部で成ることを特徴とする、請求項1に記載のランプ固定構造。
【請求項3】
前記受け部が、車両前後方向に沿ったスリット部を有し、
前記規制部が、上記スリット部に形成した凸部で成ることを特徴とする、請求項1に記載のランプ固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−173094(P2009−173094A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11986(P2008−11986)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】