説明

自動車のルーフクロスメンバーと上部中柱補強材の間の接続構造

中柱補強材(2)の上部とルーフクロスメンバー(1)の間の接続により、特に車両への横方向の衝撃に対する高度の機械的抵抗力を車体に提供することができる。これには、中柱補強材(2)の上部の背後に配置された間柱(3)ライナーが主に利用される。実際には、前記ライナーは、接合領域(2C)で前記補強材と重なり、且つルーフクロスメンバー(1)の端部で覆われるタブ(30)を備えている。このクロスメンバーと間柱ライナー(3)の間の溶接点の第一の組(6)は、これらの二つの部品間を接続し、溶接点の第二の組(8)は、上部の中柱補強材(2)と間柱ライナー(3)とを接続する。間柱ライナーは、効率の高い溶接点の製造を可能にするために、他の二つの部品を形成するものとは異なる材料から作製される。本発明は自動車に適用される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本発明は、屋根の中央に少なくとも一つのルーフクロスメンバーを有し、この屋根が車両の両側のドアの間で二つの中柱頂部の梁に接合されている車体構造を持つような、乗用車の種類の自動車に関する。
【0002】
本発明は特に、車体構造の機械的強度に関し、間接的に車両の乗員の安全性に関する。
【0003】
先行技術とその問題点
自家用車として設計された、セダン等の通常の種類の車両の車体構造、又はボディーシェルは、通常、車両のいずれかの側の、前部ドアと後部ドアの間に、直立の中心ボディーシェル側面を備える。この要素は、複数のルーフ要素を接合し、特に車両の両側の二つのドアの上方に位置するルーフクロスメンバーと上部構造とを接合するものであり、必要に応じて「サイドルーフレール」と呼ばれる。
【0004】
但し
図1は、これらの主要な要素とそれらの接合部を示している。従って、ルーフクロスメンバー1の一方は、ボディーシェルの直立側面に、具体的には中柱頂部の梁2とサイドルーフレール3とに、取り付けられている。それに加えて、図1には図示しないが、主に中柱頂部の梁2の背後に位置し、一部がサイドルーフレール3の背後に位置する間柱ライナーが存在することに注意されたい。
【0005】
自動車の車体構造の製造者が常に考慮することの一つは、車体構造に、衝撃、特に車両の同一側面の前部及び後部の二つのドアの間の直立側面において車体構造が受ける側突に対し、最適な機械的強度を提供することである。このために、ルーフクロスメンバー1と、両側の柱の各々との接続、特に付随する中柱頂部の梁の各々との接続は、側突に対する強度のこれら特徴に関して非常に重要である。具体的には、この機械的ノードは、大きな力、約二トンを、中柱頂部の梁2からルーフクロスメンバー1に伝達できなければならず、よって特に溶接部に関して、完璧な接続品質を提供しなければならない。従って、このような接続が形成する機械的ノードは、多くの機械的強度研究の課題となっている。
【0006】
更に、大半のケースで、ルーフクロスメンバー1と中柱頂部の梁2とをそれぞれ構成する材料は、同じ、又は実質的に同じであることが多く、例えば、22MMB5のようなスチールであり、つまり高い弾性限度を備えている。具体的には、これら二つの部品は、1200MPaのオーダーの非常に高い弾性限度を有さなければならず、且つ溶接等によって非常に堅固に取り付けられなければならない。自動車の製造者にとって、このような非常に高い弾性限度のスチールから製造された二つの部品を互いに溶接することは、非常に困難である。
【0007】
従って、本発明の目的は、同一の高い機械的強度を有する金属から製造されたこれら二つの部品を互いに取り付けることができる種類の接続を提案することにより、この欠点を克服することである。
【0008】
従って、本発明の主な課題は、セダン型自動車のボディーシェルのルーフクロスメンバーと中柱頂部の梁の間の接続であり、この接続は、
− ボディーシェルの側面に実質的に垂直に配置された、第一の所定の材料からなる中柱頂部の梁、
− ボディーシェルの頂部に実質的に水平に且つ横方向に配置された、同じ第二の所定の材料からなり、両側で、中柱頂部の梁の各々の上部に堅固に取り付けられるルーフクロスメンバー、及び
− 中柱頂部の梁の内側に配置される、第三の所定の材料からなる間柱ライナー
を具備する。
【0009】
本発明によれば、中柱頂部の梁に対するルーフクロスメンバーの締め付けは、ルーフクロスメンバーと間柱ライナーの間の溶接部の第一の組と、間柱ライナーと中柱頂部の梁の間の溶接部の第二の組とによって行われる。
【0010】
本発明の実施形態では、第一及び第二の所定の材料は、22MMB5と類似の種類の非常に高い弾性限度を有するスチールである。
【0011】
本発明のこの同じ好ましい実施形態では、第三の所定の材料は、高い弾性限度を有する別のスチールであり、第一及び第二の所定の材料とは異なっている。
【0012】
本発明による接続の好ましい実施形態では、この接続は、中柱頂部の梁の接続領域を部分的に覆い、且つルーフクロスメンバーで覆われる舌部を有する。
【0013】
この場合、溶接部の第一の組は舌部のいずれかの側に位置し、間柱ライナーは中柱頂部の梁の背後に位置している。
【0014】
好ましくは、溶接部の第二の組は、舌部が中柱頂部の梁を覆う場所に作られる。
【0015】
好ましくは、間柱ライナーが、その舌部を介してルーフクロスメンバーと中柱頂部の梁の間に挿入可能となるように、中柱頂部の梁に凹みが設けられる。
【実施例】
【0016】
本発明とその様々な技術的な特徴は、添付する四つの図面を伴う下記の説明により更に理解できる。
図2は、間柱ライナー3を用いた、ルーフクロスメンバー1と中柱頂部の梁2との接続からなる機械的ノードを詳細に示している。
【0017】
図示の中柱頂部の梁2は、サイドルーフレールに沿って車両の軸に対して長手方向に延びる水平部2Aを備えている。その基部2Bはほぼ垂直で、車両の同じ側の二つのドアの間に位置する。これら二つの部分の接続部は、ルーフクロスメンバー1と接続される接合領域2Cを構成している。
【0018】
このルーフクロスメンバー1は、中柱頂部の梁2の二つの部分、即ち水平部2Aと垂直部2Bの接合領域2Cの頂部を覆うように図示されている。更に、間柱ライナー3が、直線状の側面部3Aで図示されており、これは中柱頂部の梁2の下に位置するので、図2にはあまり明瞭に示されていない。それでも、接合領域2Cと中柱頂部の梁2の頂部を覆う舌部30は、ルーフクロスメンバー1の端部と重なっている。実際に、この舌部30は、ルーフクロスメンバー1と中柱頂部の梁2の間に配置される。従って、この舌部は、間柱ライナーを形成する金属シートから分離された部分である。
【0019】
溶接部の第一の組6、この場合は本図に示す三つの溶接部は、間柱ライナー3と中柱頂部の梁2のこの接合領域2Cとの間の、接合領域2Cの周縁部に位置する舌部30のいずれかの側面に形成されている。図2では、これらの第一の溶接部6のうちの二つは、ルーフクロスメンバー1上に示されているが、実際には中柱頂部の梁2と間柱ライナー3の間の溶接部を形成している。具体的には、舌部30以外の間柱ライナーは、中柱頂部の梁2の背後にあるので、図2では見えない。一方、これら第一の溶接部6のうちの二つは、ルーフクロスメンバー1の端部で覆われている。従って、この溶接部の第一の組6は、中柱頂部の梁2と間柱ライナー3とを機械的に接続している。
【0020】
この場合図2に示す六つの溶接部である溶接部の第二の組8は、ルーフクロスメンバー1と間柱ライナー3の間に形成されている。それらは、舌部30が中柱頂部の梁2の接合領域2Cの頂部を覆う位置に集まっている。従ってそれらは、ルーフクロスメンバー1、間柱ライナー3、及びこの中柱頂部の梁2を機械的に接続する。
【0021】
従って、間柱ライナー3、及び具体的にはその舌部30を用いることで、ルーフクロスメンバー1及び中柱頂部の梁2を形成する材料とは異なる材料からなる中間部が使用されることにより、二つの異なる材料、即ち、本発明による接続の好適な実施形態では22MMB5の種類の非常に高い弾性限度を有するスチールと、高い弾性限度を有する別のスチールとが使用され、よって満足のゆく品質の溶接部6及び8を介して力が伝達される。具体的には、間柱ライナーは、高い弾性限度を有する別のスチールから作製されるが、このスチールが、他の二つの部品に使用されて当該二つの部品を構成するものとは実質的に異なることにより、効果的な溶接部が生成される。
【0022】
従って、溶接部6及び8は、衝撃を受けても破損しないという条件を満たす。加えて、「剥離」現象が限定され、この現象が第二の溶接部8のうちの二つにのみ関係するようにすることができる。従って、このような接続は、最も好ましくない側突の場合も堅固である。
【0023】
図3は、ここに記載する実施形態では二つの部品、即ち頂部の水平間柱ライナー3Aと垂直間柱ライナー3Bからなる間柱ライナー3を詳細に示す。頂部の水平間柱ライナー3Aは、車両の基本的な頂部の長手方向のストリンガー、即ちサイドルーフレールの背後に位置し、これに対し垂直部3Bは中柱の背後に位置する。水平部3Aの中心部は、この水平方向の間柱ライナーの水平部3A全体に対して僅かに突出する舌部30を具備している。このように、舌部30は僅かに突出して、図2に2Cで示す中柱頂部の梁2の接合領域を部分的に覆うことができる。この舌部がこの接合領域の上に収容されるように、中柱頂部の梁2が僅かな凹みを有さなければならないことに注目されたい。二つの側方ノッチ31によって間柱ライナー3の水平部3A全体に舌部30を構成することができる。
【0024】
図4は、製造後の全体の接続を示す。図4では、間柱ライナー3は、水平部3Aと垂直部3Bからなり、舌部30以外の部分は、当該ライナーを覆っている中柱頂部の梁2と重なり合っている。ルーフクロスメンバー1は、中柱2の主梁の接合領域30を部分的に覆っている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による自動車のボディーシェルの接続位置を示す。
【図2】本発明による接続の詳細を示す。
【図3】本発明による接続に用いられる間柱ライナーを示す。
【図4】本発明による接続に組み込まれている様々な部品全てを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のボディーシェルのルーフクロスメンバー(1)と中柱頂部の梁(2)の間の接続構造であって、
− 車両のボディーシェルの側面に実質的に垂直に配置された、第一の所定の材料からなる中柱頂部の梁(2)、
− 車両のボディーシェルの頂部に実質的に水平に且つ横方向に配置された、第二の所定の材料からなる、中柱頂部の梁(2)の頂部に堅固に取り付けられたルーフクロスメンバー、及び
− 中柱頂部の梁(2)の内側に配置された、第三の所定の材料からなる間柱ライナー(3)
から構成されており、
中柱頂部の梁(2)に対するルーフクロスメンバー(1)の締め付けが、中柱頂部の梁(2)と間柱ライナー(3)の間の溶接部の第一の組(6)と、間柱ライナー(3)とルーフクロスメンバー(1)の間の溶接部の第二の組(8)とによって行われることを特徴とする接続構造。
【請求項2】
第一と第二の所定の材料が、非常に高い弾性限度及び22MMB5の種類の第二弾性を有するスチールである、請求項1に記載の接続構造。
【請求項3】
第三の所定の材料が、使用される第一及び第二の材料とは異なる高い弾性限度を有するスチールであることを特徴とする、請求項2に記載の接続構造。
【請求項4】
間柱ライナー(3)が、中柱頂部の梁(2)を部分的に覆い且つルーフクロスメンバー(1)の端部によって覆われるように設計された舌部(30)を有することを特徴とする、請求項3に記載の接続構造。
【請求項5】
溶接部の第一の組(6)が舌部(30)のいずれかの側面に形成されており、溶接部の第二の組(8)が作製されるように、間柱ライナー(3)が中柱頂部の梁(2)の背後に位置することを特徴とする、請求項4に記載の接続構造。
【請求項6】
舌部(30)が中柱頂部の梁(2)を覆う位置に溶接部の第二の組(8)が形成されていることを特徴とする、請求項5に記載の接続構造。
【請求項7】
中柱頂部の梁(2)が凹みを有することにより、間柱ライナー(3)が、その舌部(30)によって、中柱頂部の梁(2)とルーフクロスメンバー(1)の間に収容可能となっていることを特徴とする、請求項4に記載の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−537373(P2009−537373A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510502(P2009−510502)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【国際出願番号】PCT/FR2007/050936
【国際公開番号】WO2007/135302
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(508042973)
【Fターム(参考)】