自動車の可動フロア装置
【課題】 簡易な構成で、可動フロア部の位置ずれや撓みを許容しつつ、可動フロア部を円滑に昇降動させることができるとともにガタツキや隙間を防止できる自動車の可動フロア装置を提供する。
【解決手段】 車体前後方向に延びるフロアパネル4と、このフロアパネル4上に配設されたシート6と、フロアパネル4上であってシート6に着座する乗員の足部配置領域に配設されている可動フロアパネル8と、この可動フロアパネル8をフロアパネル4に対して昇降動させる昇降機構9とを備える。可動フロアパネル8とフロアパネル4との間に可動フロアパネル8の昇降動に伴ってこの可動フロアパネル8とフロアパネル4との間の相対変位に応じて伸縮するとともに少なくとも収縮時に所定の抵抗力を発生させる弾性ローラ支持部12aのローラ部121が設けられている。
【解決手段】 車体前後方向に延びるフロアパネル4と、このフロアパネル4上に配設されたシート6と、フロアパネル4上であってシート6に着座する乗員の足部配置領域に配設されている可動フロアパネル8と、この可動フロアパネル8をフロアパネル4に対して昇降動させる昇降機構9とを備える。可動フロアパネル8とフロアパネル4との間に可動フロアパネル8の昇降動に伴ってこの可動フロアパネル8とフロアパネル4との間の相対変位に応じて伸縮するとともに少なくとも収縮時に所定の抵抗力を発生させる弾性ローラ支持部12aのローラ部121が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のシートに着座する乗員の体格や体型に応じて当該乗員の足部が配置される足部配置領域のフロア高さを変更可能な可動フロア部を備えた自動車の可動フロア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のシートに着座する乗員、特に運転席に着座するドライバの運転姿勢は、該乗員の運転快適性や走行安全性などと密接に関係することが知られている。このような乗員の運転姿勢は、シートの前後位置や高さ等を調整するシート位置調整手段を始め、固定フロア部に対して昇降可能な可動フロア部の高さを調整する可動フロア装置によっても調整可能であることが知られている。このような可動フロア装置としては、従来、次のようなものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車体前後方向に延びる固定フロア部と、上記固定フロア部上であってブレーキペダルなどのペダル下方に位置してシートに着座する乗員の足部が配置される足部配置領域に配設される可動フロアパネルと、この可動フロアパネルを上記固定フロア部に対して昇降動させる昇降機構と、この昇降機構とは別に可動フロアパネルを固定フロア部に対して上下摺動可能に支持する複数本のステー部材とを備えた可動フロア装置が提案されている。この可動フロア装置は、ステー部材がガイドとしての役目を果たし、ラック機構によって構成された昇降機構によって、可動フロアパネルを昇降させるものとなされている。
【特許文献1】実開昭63−12217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の可動フロア装置では、ステー部材によって可動フロアパネルを上下摺動可能に支持させつつ昇降機構によって昇降させるので、例えば昇降機構や可動フロアパネルなどの各種部材の寸法誤差や組付誤差、或いは経年劣化による撓みに基づいて、可動フロアパネルの昇降動に伴って、ステー部材と固定フロア部との間でガタツキが生じて異音や隙間が発生するなど、使用感の悪化を招く等の不都合があった。
【0005】
このような場合に、昇降機構などの各種部材の寸法精度や組付精度を上げ、また可動フロアパネルの剛性を向上させることによって上記不都合を解消することも考えられるが、各種部材の寸法精度や組付精度を向上させた場合にはコスト高になるだけでなく、加工や組付が煩雑となり、一方可動フロアパネルについて剛性を向上させるとコスト高になることはもちろんのこと一般的に重量も増すことが多く、昇降に際して費やされるエネルギーの増大等を招くことになる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑み、簡易な構成で、ガタツキや隙間を防止できる自動車の可動フロア装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る自動車の可動フロア装置は、車体前後方向に延びる固定フロア部と、この固定フロア部上に配設されたシートと、上記固定フロア部上であって上記シートに着座する乗員の足部載置領域に配設されている可動フロア部と、この可動フロア部を上記固定フロア部に対して昇降動させる昇降機構とを備えた自動車の可動フロア装置において、上記可動フロア部と固定フロア部との間に上記可動フロア部の昇降動に伴うこの可動フロア部と上記固定フロア部との間の相対変位に応じて伸縮するとともに少なくとも収縮時に所定の抵抗力を発生させる抵抗伸縮部が設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
この発明によれば、上記可動フロア部と固定フロア部との間に上記可動フロア部の昇降動に伴ってこの可動フロア部と上記固定フロア部との間の相対変位に応じて伸縮する抵抗伸縮部が設けられているので、隙間の発生を有効に防止することができるとともに、この抵抗伸縮部は少なくとも収縮時に一定の抵抗力を発生させるので、可動フロア部の昇降動に伴う変位を抑制することができ、これにより昇降動に伴う可動フロア部のガタツキを効果的に抑制することができる。
【0009】
上記抵抗伸縮部は、単に可動フロア部と固定フロア部との間に介在されるものであってもよいが、上記昇降機構による可動フロア部の昇降動に伴って上記可動フロア部を固定フロア部に昇降可能に支持させる支持部がさらに設けられ、、当該支持部に上記抵抗伸縮部が設けられているのが好ましい(請求項2)。
【0010】
このように構成すれば、昇降機構とともに支持部によって可動フロア部を支持させることにより可動フロア部を安定して支持することができるとともに、当該支持部に抵抗伸縮部が設けられているので、上記昇降機構による可動フロア部の昇降動に伴うガタツキや隙間の発生を効果的に抑制することができる。
【0011】
上記抵抗伸縮部は、上記相対変位に応じて弾性変形し収縮時に抵抗力を発生させる弾性部材を含んで構成されたり(請求項3)、上記相対変位に応じて伸縮し伸縮時に抵抗力を発生させるダンパー部材を含んで構成されたりするのが好ましい(請求項4)。
【0012】
このように構成すれば、簡易な構成で抵抗伸縮部を構成することができる。
【0013】
上記可動フロア部は、その具体的構成は特に限定されるものではなく、例えば、特許文献1にも記載されているように、固定フロア部に対して水平に設けられたパネルからなり、当該パネルを固定フロア部に対して平行に上下昇降動させるものであってもよいが、可動フロア部がそのフロア面を固定フロア部のフロア面に連続的に設けられるもの、言い換えると、上記可動フロア部は、前端部および後端部のうち少なくとも後端部が上記固定フロア部に略連続するように配置されるとともに、前端縁および後端縁のうち少なくとも一方が上記昇降機構による可動フロア部の昇降動に応じて上記固定フロア部に沿って移動するように構成されるのが好ましい。このように構成すれば、可動フロア部をその後端部、すなわちシートに着座する乗員側の端部において固定フロア部に略連続させることができ、フロア上面の連続性を確保して見栄えを向上させることができるとともに、乗員の足部が可動フロア部の周辺に載置された場合の違和感を低減することができる。
【0014】
ここで、上記のように構成された場合には、可動フロア部の昇降に伴って可動フロア部の前端縁および後端縁のうち少なくとも一方が上記昇降機構による可動フロア部の昇降動に応じて上記固定フロア部に沿って移動することになるが、可動フロア部の寸法誤差や可動フロア部の昇降機構等に対する組付誤差等が存在すると、昇降動に伴って移動する端縁が車幅方向について一方が浮くなど歪みが生じる場合があり、このような状態で可動フロア部を昇降動させると、当該移動端縁がその車幅方向一端部において固定フロア部に引っ掛かるなどして可動フロア部の円滑な昇降動を阻害する場合も考えられる。
【0015】
従って、上記のように可動フロア部を固定フロア部に連続的に設ける場合には、この昇降動に伴って移動する端縁に、可動フロア部を支持する複数の支持部が設けられ、この支持部のうち少なくとも一つに上記抵抗伸縮部が設けられているのが好ましい(請求項5)。
【0016】
このように構成すれば、昇降動に伴って固定フロア部に沿って移動する可動フロア部の移動端縁の一方が変位許容支持部によって支持されて車幅方向の歪みを当該抵抗伸縮部によって吸収することができ、可動フロア部の円滑な昇降動でき、隙間やガタツキの発生を抑制しつつ確実に担保することができる。
【0017】
この場合、上記支持部のうち少なくとも一つは、上下方向の変位を規制しつつ上記可動フロア部を支持する変位規制支持部であるのが好ましい(請求項6)。
【0018】
このように構成すれば、変位規制支持部によって可動フロア部の上記移動端縁の高さ方向の位置決めを行うことができるとともに、可動フロア部上に乗員の足部が配置された時にこの変位規制支持部によってある程度しっかりと支持できるので、一定の剛性感を与えることができる。
【0019】
また、この場合、上記変位規制支持部は、上記固定フロア部上を車体前後方向に沿ってのみ移動するスライド機構(請求項7)や、磁力によって上記固定フロア部に吸着されることにより上記可動フロア部の上下方向への移動を規制するように構成されるもの(請求項8)を好ましく用いることができる。
【0020】
このように構成すれば、この変位規制支持部で可動フロア部の端部の上下方向の移動を確実に規制することができるとともに、可動フロア部の剛性感を向上させることができる。特に、磁力によって固定フロア部に吸着させることにより上記可動フロア部を上下方向への移動を規制するように構成されるものを採用した場合には、磁力に抗して上方に持ち上げることにより第2パネルの下側の空間を開放させることができ、従って清掃時等に便利なものとなる。
【0021】
可動フロア部を固定フロア部に対して連続的に設ける場合、上記可動フロア部は、固定フロア部に対して傾斜した状態で配設された一枚の傾斜パネルから構成されるものであってもよいが、上記可動フロア部は、上記昇降機構により昇降動される第1パネルと、前端部がこの第1パネルに枢支されるとともに後端縁がこの昇降動に伴って上記固定フロア部に沿って移動する第2パネルとを備えて構成されるのが好ましい(請求項9)。
【0022】
このように構成すれば、第1パネルをその上面に乗員の足部が配置されるように設定することにより、フロア面の連続性を担保しつつ、第1パネルの傾斜角度を比較的自由に設定することができるとともに、第1パネルに枢支された第2パネルを比較的円滑に移動させることができる。
【0023】
この場合、上記第1パネルはラック機構等により垂直に昇降させるように構成してもよいが、上記第1パネルは、その前端部が上記固定フロア部に枢支され、上記昇降機構によって揺動変位するのが好ましい(請求項10)。
【0024】
このように構成すれば、この可動フロア装置を上下に偏平に形成することができ、第1パネルを回動軸回りに揺動させることにより可動フロア部を昇降させるので、当該第1パネルを比較的円滑に昇降させることができる。
【0025】
上記抵抗伸縮部は、その具体的構成を特に限定するものではないが、例えば、上記抵抗伸縮部は、上記可動フロア部を上方に付勢するブッシュとして構成されるもの(請求項11)や、車体前後方向に沿って転動するゴムローラとして構成されるもの(請求項12)を採用することができる。
【0026】
このように構成すれば、簡易に抵抗伸縮部を構成することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明に係る自動車の可動フロア装置によれば、昇降機構および可動フロア部の各種寸法誤差や、相互間の組付誤差などを抵抗伸縮部で吸収させることができるとともに、当該抵抗伸縮部によって昇降動に伴う可動フロア部のガタツキ、異音、隙間の発生を効果的に抑制することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
図1は当実施形態に係る自動車の可動フロア装置の概略を示す斜視図であり、図2は同装置の断面図である。なお、当実施形態の可動フロア装置は、ドライバーズシートに適用する場合について説明するが、ナビシートや後列シートにも適用可能であり、この場合はシートに着座する乗員の着座姿勢を安楽にするため等に用いられる。
【0030】
この可動フロア装置1は、図1および図2に示すように、車体前後方向に延びるとともに車幅方向中央部が上方に膨出することによりトンネル部4aが形成されたフロアパネル4(固定フロア部の一例に相当する)と、このフロアパネル4の車幅方向外側(図1では右側)に接合されたサイドシル5と、フロアパネル4上であってサイドシル5とトンネル部4aとの間に配設されたドライバーズシート6(以下、単に「シート6」と称する)と、このシート6に着座する乗員の足部によって操作され車幅方向に複数個並設されたペダル7と、このペダル7の下方であってフロアパネル4の上面に配設された可動フロアパネル8(可動フロア部の一例に相当)と、この可動フロアパネル8をフロアパネル4に対して昇降動させる昇降機構9と、シート6に着座する乗員によって操作されるステアリング装置10とを備え、当実施形態では位置調整可能に構成されたシート6の位置調整に連動して可動フロアパネル8を昇降動させるものとなされている。
【0031】
具体的には、フロアパネル4は、鋼板から形成され、少なくともシート6よりも前方側は図2に示すように平坦に形成されている。そして、このフロアパネル4の前端部はペダル7の下方辺りから前上がりに傾斜して形成され、この傾斜パネル部4bの前端縁がエンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル11に連設されている。トンネル部4aは、上記したように、フロアパネル4の車幅方向中央部分が上方に膨出することにより形成されている。このトンネル部4aは、車体前後方向に細長く延び、このトンネル部4aの外側には図示していないがセンターコンソールが被覆され、トンネル部4aの上面とセンタコンソールとの間の空間に種々のワイヤーハーネスやダクト等が配設されるように構成されている。このフロアパネル4の車幅方向端縁に接合されたサイドシル5は、車体前後方向に延びる閉断面を有する高剛性部材であり、その上半部がフロアパネル4の上面よりも高くなるように形成されている。
【0032】
一方、シート6は、いわゆるセパレートタイプのシートであり、シートクッション61と、シートクッション61の後端部から上方に立ち上がるシートバック62と、シートバック62の上端部に取り付けられたヘッドレスト63とを備え、シート位置調整機構(図示せず)を介してフロアパネル4に固定されている。このシート位置調整機構は、シート6を前後スライド移動可能に支持するだけのものであってもよいが、例えばシートクッション61に対するシートバック62の傾斜角度を変更するためのリクライニング機構(図示せず)と、シート6の前後上下位置と座面角度とを同時変更可能なシート移動機構(図示せず)とを備え、これらを操作してシート6の位置や各角度を調整するものとなされている。特に、当実施形態では、シート6に着座する乗員の視線を体格、体型によらず一定に保つべくシート6をブレーキペダル7の回動中心軸を中心に回動させつつ前後移動可能に構成されている。従って、シート6が前方に移動するに伴い、シートクッション61が上方に持ち上げられつつ、その前端部が順次下方に下がるように構成されている。なお、シート6の回転中心はこれに限らずシート6より前方に離間して設けられていればよい。
【0033】
ペダル7は、車幅方向に沿って複数個並設されており、図1に示すように、例えば右側にアクセルペダルが、左側にブレーキペダルが配設される。なお、これらのペダル7に加えてブレーキペダルのさらに左側にクラッチペダルを設けるようにしてもよい。
【0034】
これらのペダル7は、図1および図2に示すように、ダッシュパネル11に取り付けられたペダルブラケット71と、このペダルブラケット71に軸支されたペダルレバー72と、ペダルレバー72の下端部に配設された踏面部73とを、基本構成としている。なお、このペダル7に、シート6の位置に連動してペダル7の傾斜調整および踏面高さの調整を行うペダル位置調整機構が設けられてもよい。このペダル位置調整機構の具体的構成は公知の機構であるため、ここではその詳細な説明を省略するが、上記シート位置調整機構と同様に、ブレーキペダル7の回動中心軸を中心に回動して位置調整し得るように構成される。
【0035】
可動フロアパネル8は、硬質合成樹脂板または鋼板等からなる矩形状のパネルであり、当実施形態ではヒンジにより連結された前後2枚のパネルから構成されている。この可動フロアパネル8は、ペダル7の下方からシート6の前端縁の若干前方位置に至るまで配設され、シート6に着座する乗員の足部、特に運転席に着座する乗員がペダル7を操作している場合にはこのペダル7を操作する足部が載置されるものであり、昇降機構9によって前側のパネルが揺動することによって全体的に昇降動可能に構成されている。
【0036】
具体的には、可動フロアパネル8は、図3および図4に明示するように、昇降機構9によって昇降される第1パネル81と、この第1パネル81に前端部が枢支されるとともに後端縁が第1パネル81の昇降に伴ってフロアパネル4に沿って移動する第2パネル82とを備えている。
【0037】
第1パネル81は、横長矩形状のパネルであり、この第1パネル81の大きさを特に限定するものではないが、シート6に着座する乗員の両足が載置し得る程度の大きさに設定されている。この第1パネル81は、前端部における車幅方向両端部が所定の寸法誤差や組付誤差などを許容するヒンジ弾性支持部13によってフロアパネル4の傾斜パネル部4bに枢支されている。このヒンジ弾性支持部13は、一端部が第1パネル81の前端部上面に締結具134によって締結された、いわゆる蝶番であるヒンジ支持本体131と、このヒンジ支持本体131の他端部とフロアパネル4との間に介在する弾性パッド132とを有し、この弾性パッド132で各種寸法誤差や組付誤差などを許容できるように構成されている。すなわち、弾性パッド132は、例えばゴムやエラストマー等の弾性部材によって板状に形成され、その厚みは特に限定されるものではなく、厚ければ厚いほど寸法誤差や組付誤差などの許容量も大きくなるが、厚すぎると可動フロアパネル8を一定の剛性感をもって支持できなくなる。従って、弾性パッド132は、その弾性力を考慮して適切な厚さに設定されるのが好ましい。そして、図3に示すように、このヒンジ支持本体131、弾性パッド132およびフロアパネル4を締結具135によって共締めすることにより、可動フロアパネル8をフロアパネル4の傾斜パネル部4bに対して寸法誤差や組付誤差などを許容しつつ揺動可能に支持させている。
【0038】
第2パネル82は、硬質合成樹脂板または鋼板等からなる横長矩形状のパネルであり、好ましくは第1パネル81と同様の材質から構成されている。この第2パネル82は、その前端部において、車幅方向左右両端部に配設されたヒンジ部83を介して第1パネル81の後端部に回動自在に接続されている。
【0039】
この第2パネルの後端部(可動フロアパネル8の後端部)は、図3および図4に示すように、複数個のローラ支持部12によってフロアパネル4上に支持されている。言い換えると、可動フロアパネル8は、昇降機構9とは別個にローラ支持部12によってフロアパネル4上に支持されている。このローラ支持部12は、図5(a)および(b)に示すように、フロアパネル4上を車体前後方向に沿って転動するローラ部121と、このローラ部121を車幅方向に沿った水平軸回りに回転自在に支持する軸部122と、この軸部122の両端を支持する保持アーム部123と、この保持アーム部123の上端に連設されビスなどの締結具125により第2パネル82の後端部下面に取着される取付プレート124とを備え、ローラ部121の材質によって弾性ローラ支持部12aと剛性ローラ支持部12bとに大別される。すなわち、このローラ支持部12は、当実施形態では、第2パネル82の後端部の下面に車幅方向に沿って3個並設されており、車幅方向両側部に配設されたローラ支持部12が弾性ローラ支持部12aとして構成されるとともに、車幅方向中央部に配設されたローラ支持部12が剛性ローラ支持部12bとして構成される。
【0040】
弾性ローラ支持部12aは、第2パネル82の後端部を弾性的に支持して当該第2パネル82の上下方向への変位を所定の範囲で許容するものであり、ローラ部121の少なくとも外周部がゴムやエラストマーなどの弾性部材から構成されている。当実施形態では、弾性ローラ支持部12aのローラ部121はその全体が弾性部材から構成され、可動フロアパネル8の昇降動に伴って第2パネル82の後端縁とフロアパネル4の上面との相対変位に応じて伸縮し、少なくとも収縮時に所定の抵抗力を発生させるものとなされている。従って、このローラ支持部12が支持部の一例に相当し、ローラ部121が抵抗伸縮部の一例に相当する。なお、ローラ部121をより一層円滑に回転させるべく、ローラ部121の内周に合成樹脂製のブッシュ部を配設してもよい。
【0041】
また、当実施形態では、弾性ローラ支持部12aが剛性ローラ支持部12bに比べて大径に形成されている。このように弾性ローラ支持部12aを剛性ローラ支持部12bよりも大径に形成することにより、車幅方向に並設されたローラ支持部12を各々確実にフロアパネル4に接地させ、これにより弾性ローラ支持部12aによって上下方向の変位を許容しつつ第2パネル82を弾性的に確実に支持することができる。
【0042】
一方、剛性ローラ支持部12bは、第2パネル82の上下方向への変位を規制しつつ当該第2パネル82を支持するものであり、ローラ部121の少なくとも外周部が硬質合成樹脂や金属などの高剛性部材から構成されている。当実施形態では、剛性ローラ支持部12bのローラ部121はその全体が剛性部材から構成されているが、例えばローラ部121と軸部122との間に弾性部材からなる振動吸収用のブッシュ部材を介在させるようにしてもよい。ただし、このように弾性部材からなるブッシュ部材を介在させた場合には、この剛性ローラ支持部12bは請求項にいう変位規制支持部ではなく、抵抗伸縮部に相当することとなる。
【0043】
次に昇降機構9について説明する。昇降機構9は、第1パネル81を昇降動させることができるものであればその具体的構成は特に限定されるものではないが、当実施形態では第1パネル81の所定部分を持ち上げ或いは引き下げることにより、第1パネル81をその前端縁を中心に揺動させることにより当該第1パネル81を実質的に昇降させる機構が採用されている。
【0044】
すなわち、昇降機構9は、図1に示すように、車幅方向に沿って延びる水平軸回りに正逆回転する回転軸部91と、この回転軸部91の長手方向両端部に取り付けられ当該回転軸部91と供回りする揺動アーム部92と、回転軸部91をその長手方向両端部で回転自在に支持する左右一対の軸ブラケット93と、これらの左右一対の軸ブラケット93の一方側に配設され回転軸部91に回転駆動力を伝達させる駆動機構94(図6および図7参照)とを備え、シート6の位置調整と連動して回転駆動する動力伝達ケーブル14からこの駆動機構94に回転駆動力が伝達されることにより回転軸部91および揺動アーム部92が正逆回転駆動し、この揺動アーム部92の先端部に当接する第1パネル81を上下に揺動させることにより可動フロアパネル8を昇降させるように構成されている。
【0045】
この昇降機構9を図6および図7(a)〜(c)を用いて具体的に説明する。図6は昇降装置を拡大して示す斜視図であり、図7(a)は昇降機構の平面図であり、図7(b),(c)は図(a)のb−b線、c−c線断面図である。
【0046】
回転軸部91は、図6および図7に示すように、車幅方向に沿って延び軸ブラケット93によってフロアパネル4の傾斜パネル部4bに回転自在に取り付けられている。
【0047】
揺動アーム部92は、図6および図7に示すように、平面視略コ字状形状を呈し、回転軸部91の長手方向両端部にそれぞれ固定されている(図1参照)。この揺動アーム部92は、図7(c)に明示するように、第1パネル81に当接して昇降動作に伴って第1パネル81の下面に沿って摺動する先端部に当接ローラ部921が回転自在に取り付けられている。従って、揺動アーム部92が上下に揺動すると、当接ローラ部921が第1パネル81の下面に沿って転動しつつ当該第1パネル81の下面を持ち上げ或いは下げることになり、これにより第1パネル81を含めた可動フロアパネル8を円滑に上下昇降動させることができるとともに、第1パネル81の昇降動作に伴って揺動アーム部92の先端部が第1パネル81の下面に沿って摺動するに伴って発生する異音を有効に防止することができる。なお、この当接ローラ部921は外周部が剛性部材によって構成されている。
【0048】
軸ブラケット93のうちトンネル部4a側に設けられた軸ブラケット93(図1では左側に配設されたブラケット93)は、車体前後方向に沿って配設された動力伝達ケーブル14が回転自在に保持されているとともに、この動力伝達ケーブル14により回転駆動される駆動機構94としてのウォームギヤが車幅方向に沿った軸回りに回転自在に保持されている。そして、動力伝達ケーブル14の先端部に設けられた、車体前後方向に長尺のウォームギヤ140が、回転軸部91に固着された駆動機構94としてのウォームギヤを回転させることにより回転軸部91を時計回りおよび反時計回りに回転させるようになっている。ここでは駆動機構94としてウォームギヤが用いられているが、このウォームギヤに代えて適宜動力を伝達し得る駆動機構を介在させるものであってもよい。また、この駆動機構94にはギヤ列等を含むものであってもよく、このギヤ列等によってギヤ比等を変更させるようにしてもよい。
【0049】
なお、当実施形態では、図2に二点鎖線で示すように、フロアパネル4および可動フロア装置1の上にフロアマット16を敷設して見栄えをさらに向上させるものとなされている。また、この構成に代えて、例えばフロアパネル4上にフロアマットを敷設して可動フロアパネル8を含めた可動フロア装置1を露出させるようにしてもよい。
【0050】
次に、この可動フロア装置1の動作や作用について説明する。
【0051】
この可動フロア装置1は、車体に組み付けられた状態で、可動フロアパネル8が乗員側においてフロアパネル4に対して連続的に設けられている、言い換えると可動フロアパネル8の第2パネル82はそのフロア面がフロアパネル4の上面に略連続するように設けられるので、見栄えを向上させることができるとともに、この可動フロアパネル8の周辺に乗員の足部を載置させても当該乗員が感じる違和感を軽減させることができる。
【0052】
このように第2パネル82をフロアパネル4に対して略連続するように構成した場合、可動フロアパネル8の昇降動作に伴って第2パネル82の後端部の引っ掛かりや、この後端部における車幅方向一端部側の浮き等が懸念される(図8参照)。すなわち、この可動フロア装置1では、組付状態で、例えば可動フロアパネル8の取付誤差や第1および第2パネル81,82の寸法誤差等に基づき、図8に示すように、可動フロアパネル8が車幅方向に傾いて第2パネル82の後端縁のフロアパネル4からの高さが一方側H1と他方側H2で異なる場合がある。このような傾き状態で可動フロアパネル8を昇降動作させると、この昇降動作に伴って第2パネル82がフロアパネル4に引っ掛かるなど昇降動作不良を招いたり、或いはガタツキを生じたり、見栄えが低下したりすることがあったが、この可動フロア装置1によれば、可動フロアパネル8、特に第2パネル82を支持する複数のローラ支持部12が設けられ、このローラ支持部12のうち車幅方向両端部に配設された二つのローラ支持部12がそのローラ部121が弾性部材によって構成された大径の弾性ローラ支持部12aとして構成されているので、図8に示すように、可動フロアパネル8(第1および第2パネル81,82)の各種寸法誤差や組付誤差などをこの弾性ローラ支持部12a、特にそのローラ部121で吸収させることができるとともに、当該弾性ローラ支持部12aで可動フロアパネル8を上方に付勢させることにより、可動フロアパネル8を安定姿勢で保持することができる。従って、上記寸法・組付誤差等に基づく可動フロアパネル8(特に第2パネル82)のガタツキ、異音、隙間の発生を効果的に抑制することができるとともに、可動フロアパネル8が傾いたり撓んだりしている場合でも可動フロアパネル8を安定姿勢で支持することができ、これにより可動フロアパネル8を円滑に昇降動させることができる。すなわち、可動フロアパネル8に傾き等の位置ずれや若干の撓みがある場合でも、弾性ローラ支持部12aを設けるという簡易な構成によってこれらの位置ずれや撓みなどを許容しつつ、可動フロアパネル8を円滑に昇降動させることができるとともにそのガタツキや隙間の発生を効果的に抑制することができる。
【0053】
しかも、この図8に示す状態から乗員が第1パネル81上に足部を載置させた場合には、車幅方向中央部に配設された剛性ローラ支持部12bを基準にして位置決めされて、図8に示す左側に配設された弾性ローラ支持部12aは弾性回復するとともに同図に示す右側に配設された弾性ローラ支持部12aは弾性力に抗して変形し、同図に二点鎖線で示すように第2パネル82の後端縁82aがフロアパネル4に対して略平行になった状態で位置決めされることになる。従って、剛性ローラ支持部12b(変位規制支持部の一例に相当する)によって可動フロアパネル8の後端縁の高さ方向の位置決めを行うことができるとともに、可動フロアパネル8上に乗員の足部が配置された時にこの剛性ローラ支持部12bによってある程度しっかりと支持できるので、一定の剛性感を与えることができる。
【0054】
さらに、この組付状態では、例えば図9に示すように、可動フロアパネル8の取付誤差や第1および第2パネル81,82の寸法誤差等に基づき、第1パネル81の前端縁81aからフロアパネル4の傾斜パネル部4bまでの距離が一方側L1と他方側L2とで異なっていることもあるが、このような場合でもこの可動フロア装置1では、昇降機構9とは別個のヒンジ弾性支持部13で第1パネル81を支持しているので、可動フロアパネル8の各種寸法誤差や、相互間の組付誤差などをこのヒンジ弾性支持部13、特に弾性パッド132で吸収させることができ、このヒンジ弾性支持部13で可動フロアパネル8を車体前後方向に付勢させることにより、可動フロアパネル8を安定姿勢で保持することができる。従って、上記寸法・組付誤差等に基づく可動フロアパネル8のガタツキ、異音、隙間の発生を効果的に抑制することができるとともに、可動フロアパネル8が歪んでいるような場合でも可動フロアパネル8を安定姿勢で支持することができ、これにより当該可動フロアパネル8を円滑に昇降動させることができるとともにこの昇降動に伴うガタツキや隙間の発生を効果的に抑制することができる。なお、図8および図9は、傾き等を強調するため、実際の傾き等に比べて誇張して表現している。
【0055】
従って、当実施形態の可動フロア装置1では、弾性ローラ支持部12aのローラ部121およびヒンジ弾性支持部13が請求項にいう抵抗伸縮部の一例に相当する。
【0056】
この可動フロア装置1は、当実施形態ではシート位置調整機構と連動するように構成されており、シート6の位置を調整すると自動的に可動フロアパネル8の高さ調整が実行されるようになっている。すなわち、シート位置調整機構によってシート6の前後上下位置調整を実行するとこのシート6の移動力が動力伝達ケーブル14を介して可動フロア装置1に伝達されるようになっている。
【0057】
シート6が中間位置、すなわち標準体型、体格の乗員にあわせて位置調整されると、可動フロアパネル8の第1パネル81はフロアパネル4に対して略平行な姿勢となるように位置設定されている。シート6がこの中間位置よりも前方に位置調整されると、このシート6の移動に伴って移動力が動力伝達ケーブル14を介して回転力として当該動力伝達ケーブル14の先端部のウォームギヤ140に伝達され、このウォームギヤ140が回転されることにより昇降機構9の駆動機構94としてのウォームギヤが揺動アーム部92を持ち上げる方向に回転する。この駆動機構94としてのウォームギヤが回転するとこのウォームギヤの回転中心軸でもある回転軸部91も同方向に回転し、これにより揺動アーム部92が上方に回転することになる。
【0058】
そして、揺動アーム部92が上方に回転すると、当該揺動アーム部92によって可動フロアパネル8の第1パネル81がその前端縁を中心に上方に持ち上げられ(図3に二点鎖線で示す)、第1パネル81は後上がりの状態に傾き、結果、可動フロアパネル8は上昇することになる。このとき、第2パネル82の後端部はフロアパネル4に沿って移動するが、この後端部は弾性ローラ支持部12aおよび剛性ローラ支持部12bによって支持されているので、円滑に移動させることができ、しかも弾性ローラ支持部12aによって上方に付勢されながら移動するので傾きやガタツキが抑制され、静粛に移動させることができる。しかも、揺動アーム部92の当接ローラ部921は第1パネル81の下面に沿って転動することから、可動フロアパネル8を円滑かつ比較的静粛に上下昇降させることができる。
【0059】
一方、シート6が中間位置よりも後方に位置調整されると、このシート6の移動に伴って移動力が動力伝達ケーブル14を介して当該動力伝達ケーブル14の先端部のウォームギヤ140に伝達されて当該ウォームギヤ140が回転されることになるが、この回転方向はシート6を前方に位置調整する場合の上記例と反対方向となっている。従って、昇降機構9の駆動機構94としてのウォームギヤも上記例と反対方向に回転し、これにより揺動アーム部92が下方に揺動回転する。これに伴って、第1パネル81は自重により後下がりの状態に引き下げられ、第1パネル81は後下がりの状態に傾き、結果、可動フロアパネル8は下降することになる。このときも、第2パネル82の後端部はフロアパネル4に沿って移動するが、この後端部は弾性ローラ支持部12aおよび剛性ローラ支持部12bによって支持されているので、円滑かつ静粛に移動させることができる。
【0060】
なお、以上に説明した可動フロア装置1は、本発明に係る装置の一実施形態であって、装置の具体的構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であり、変形例を以下に説明する。
【0061】
(1)上記実施形態では、弾性ローラ支持部12aは、ローラ部121が弾性部材で構成されることにより弾性を有するものとなされているが、抵抗伸縮部の具体的構成はこれに限定されるものではない。例えば、ローラ部は剛性部材によって構成される一方、保持アーム部123が、サスペンションのように、ガイド機構とつる巻きばね等の弾性部材を介在させて取付プレート124に弾性的に取り付けられているものであってもよい。また、この構成に加え、或いはこの構成に代えて、図13に示すような、伸縮に伴い所定の抵抗力を発生させるダンパー部材130を介在させてもよい。このダンパー部材130は、図13に示すように、公知のオイルダンパーであり、シリンダ131とこのシリンダ131内を移動するピストン132とからなり、ピストン132に設けられたオリフィス132aを通過するオイルの抵抗を利用してローラ部121の急激な変位に対して抵抗を発生させるように構成されている。このダンパー部材を介在させた場合には、可動フロアパネル8の昇降動に伴って可動フロアパネル8とフロアパネル4との相対変位に伴ってダンパー部材130が伸縮するとともにこの伸縮に伴って当該ダンパー部材130が所定の抵抗力を発生させるので、急激な変位を伴わず可動フロアパネルを昇降動させることができ、これによりガタツキや隙間の発生を効果的に抑制することができる。
【0062】
また、これらのローラ支持部12に加えて、図14に示すように、第1パネル81を昇降可能に支持する棒状ステー部材135を設けてもよい。この棒状ステー部材135は長尺のシリンダ136と同じく長尺のピストン137とを有するダンパー部材138が組み込まれ、可動フロアパネル8の昇降動に伴ってこの昇降動に対して抵抗を発生させるものとなされている。このように構成しても、可動フロアパネル8の昇降動に伴って可動フロアパネル8とフロアパネル4との相対変位に伴ってダンパー部材135が伸縮するとともにこの伸縮に伴って当該ダンパー部材135が所定の抵抗力を発生させるので、急激な変位を伴わず可動フロアパネルを昇降動させることができ、これによりガタツキや隙間の発生を効果的に抑制することができる。
【0063】
(2)上記実施形態では、抵抗伸縮部が設けられた支持部(変位許容支持部)および変位規制支持部として、弾性ローラ支持部12aおよび剛性ローラ支持部12bを例にとって説明したが、これらのローラ支持部12の配設個数や配設位置等具体的構成は特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0064】
また、変位規制支持部について上記実施形態における剛性ローラ支持部12bに代えてフロアパネル上を車体前後方向にのみスライド移動するスライド機構を設けるものであってもよい。すなわち、このスライド機構を採用した可動フロア装置を図10に示す。この図10に示す可動フロア装置は、ヒンジ弾性支持部13の下端部が第1パネル81の前端部下面に取着されている点、第2パネル82の後端部を変位を規制しつつ支持する支持部としてスライド機構112が設けられている点で、上記実施形態の装置と異なる。従って、ここではスライド機構について説明する。
【0065】
すなわち、スライド機構112は、車体前後方向に沿って延びフロアパネル(図示せず)に固定されたスライドレール112aと、スライドレール112aの前後端部に固定されたストッパー112bと、スライドレール112aに沿ってスライド移動するスライダー112cとを備える。このスライドレール112aは、公知のスライド機構に採用されるレール部材であり、例えば上面が開口した断面視略C字状の溝型鋼等からなり、その内部にスライダー112cの下端部が挿入されるとともに、このスライダー112cの下端部に設けられた水平軸回りに回転自在に支持された左右一対のスライドローラ(図示せず)が、スライドレール112aの底部に沿って転動すること等により、スライダー112cがスライド変位するように構成されている。スライダー112cは上下部からなりこれらがヒンジ連結されることによりスライド変位に伴う第2パネル82の傾斜角度に追随できるように構成されている。
【0066】
このように、変位規制支持部としてスライド機構を用いた場合には、第2パネル82の下端部の上下高さ方向の移動を確実に規制することができるとともに、可動フロアパネル8の剛性感を向上させることができる。
【0067】
(3)また、図11はさらに他の実施形態に係る可動フロア装置を示す斜視図であり、図12は図11のXII−XII線断面図である。
【0068】
この装置は、剛性ローラ支持部としてマグネットローラ支持部212bを備える点で上記実施形態と異なる。すなわち、この装置は、第2パネル82の後端部であって図例では車幅方向右側に配設された変位許容支持部としての弾性ローラ支持部212aと、第2パネル82の後端部であって図例では車幅方向左側に配設された変位規制支持部としてのマグネットローラ支持部212bと、このマグネットローラ支持部212bの軌道上であってフロアパネル(図示せず)上に配設されたレール部材212cとを備える。
【0069】
マグネットローラ支持部212bは、図12に示すように、車幅方向に沿った水平軸回りに回転する回転軸部213と、この回転軸部213の一端部に取着されたローラ部214と、回転軸部213の他端部に配設された軸受部215と、回転軸部213と軸受部215との間に介装されたブッシュ部216とを備え、回転軸部213がブッシュ部216を介して軸受部215に回転自在に支持されることによりローラ部214が回転するように構成されている。このローラ部214は、磁力を有する磁性部材によって構成されており、鉄板等に吸着するものとなされている。従って、ローラ部214は、レール部材212cを介してフロアパネル4に吸着され、これにより第2パネル82の上下方向への移動を規制する変位規制部として機能する。
【0070】
このように構成すれば、マグネットローラ支持部212bを磁力によってレール部材212cに吸着させることにより可動フロアパネル8の上下方向への移動を規制することができ、一方、磁力に抗して可動フロアパネル8を上方に持ち上げることにより第2パネル82の下側の空間を開放させることができ、従って清掃時等に便利なものとなる。
【0071】
また、上記ブッシュ部216を弾性部材により構成すれば、このマグネットローラ支持部212bによって第2パネル82を弾性的に支持でき、これにより可動フロアパネル8の各種寸法誤差や、組付誤差などをこのマグネットローラ支持部212bで吸収させることができ、各種寸法・組付誤差等に基づく可動フロアパネル8のガタツキ、異音、隙間の発生を有効に防止することができるとともに、可動フロアパネル8が傾いたり撓んだりしている場合でも可動フロアパネル8を安定姿勢で支持することができ、これにより当該可動フロアパネル8を円滑に昇降動させることができる。
【0072】
(4)昇降機構の具体的構成は特に限定するものではなく、例えば第1パネル81の下面に特許文献1に示されるようなジャッキ機構が取り付けられているものであってもよい。
【0073】
(5)上記実施形態では昇降機構9によって第1パネル81を上下揺動させるように構成されているが、この昇降機構9によって第2パネル82を揺動させるようにしてもよい。この場合は、第2パネル82の後端部がフロアパネル4に枢支されるとともに、当該第2パネル82の昇降動に伴って第1パネル81の前端縁がフロアパネル4上に沿って移動することになる。従って、この第1パネル81の前端縁にローラ支持部が配設されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る可動フロア装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同装置を示す側面図である。
【図3】同装置を拡大して示す側面図である。
【図4】同装置の可動フロアを示す斜視図である。
【図5】(a)は同装置の弾性ローラ支持部を示す斜視図であり、(b)は同装置の弾性ローラ支持部を示す正面図である。
【図6】同装置の昇降機構を示す斜視図である。
【図7】(a)は同装置の昇降機構の平面図、(b)、(c)は図(a)のb−b線、c−c線断面図である。
【図8】同装置の使用状態を示す背面図である。
【図9】同装置の使用状態を示す平面図である。
【図10】本発明に係る可動フロア装置の他の実施形態を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る可動フロア装置のさらに別の実施形態を示す斜視図である。
【図12】図11のXII−XII線断面図である。
【図13】本発明の抵抗伸縮部の別の実施形態を示す説明図である。
【図14】本発明に可動フロア装置のさらに別の実施形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0075】
1 可動フロア装置
4 フロアパネル(固定フロア部)
6 シート
7 ペダル
8 可動フロアパネル(可動フロア部)
9 昇降機構
12a 弾性ローラ支持部(変位許容支持部)
12b 剛性ローラ支持部(変位規制支持部)
13 ヒンジ弾性支持部(変位許容支持部)
81 第1パネル
81a 前端縁
82 第2パネル
82a 後端縁
212a 弾性ローラ支持部
212b マグネットローラ支持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のシートに着座する乗員の体格や体型に応じて当該乗員の足部が配置される足部配置領域のフロア高さを変更可能な可動フロア部を備えた自動車の可動フロア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のシートに着座する乗員、特に運転席に着座するドライバの運転姿勢は、該乗員の運転快適性や走行安全性などと密接に関係することが知られている。このような乗員の運転姿勢は、シートの前後位置や高さ等を調整するシート位置調整手段を始め、固定フロア部に対して昇降可能な可動フロア部の高さを調整する可動フロア装置によっても調整可能であることが知られている。このような可動フロア装置としては、従来、次のようなものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車体前後方向に延びる固定フロア部と、上記固定フロア部上であってブレーキペダルなどのペダル下方に位置してシートに着座する乗員の足部が配置される足部配置領域に配設される可動フロアパネルと、この可動フロアパネルを上記固定フロア部に対して昇降動させる昇降機構と、この昇降機構とは別に可動フロアパネルを固定フロア部に対して上下摺動可能に支持する複数本のステー部材とを備えた可動フロア装置が提案されている。この可動フロア装置は、ステー部材がガイドとしての役目を果たし、ラック機構によって構成された昇降機構によって、可動フロアパネルを昇降させるものとなされている。
【特許文献1】実開昭63−12217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の可動フロア装置では、ステー部材によって可動フロアパネルを上下摺動可能に支持させつつ昇降機構によって昇降させるので、例えば昇降機構や可動フロアパネルなどの各種部材の寸法誤差や組付誤差、或いは経年劣化による撓みに基づいて、可動フロアパネルの昇降動に伴って、ステー部材と固定フロア部との間でガタツキが生じて異音や隙間が発生するなど、使用感の悪化を招く等の不都合があった。
【0005】
このような場合に、昇降機構などの各種部材の寸法精度や組付精度を上げ、また可動フロアパネルの剛性を向上させることによって上記不都合を解消することも考えられるが、各種部材の寸法精度や組付精度を向上させた場合にはコスト高になるだけでなく、加工や組付が煩雑となり、一方可動フロアパネルについて剛性を向上させるとコスト高になることはもちろんのこと一般的に重量も増すことが多く、昇降に際して費やされるエネルギーの増大等を招くことになる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑み、簡易な構成で、ガタツキや隙間を防止できる自動車の可動フロア装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る自動車の可動フロア装置は、車体前後方向に延びる固定フロア部と、この固定フロア部上に配設されたシートと、上記固定フロア部上であって上記シートに着座する乗員の足部載置領域に配設されている可動フロア部と、この可動フロア部を上記固定フロア部に対して昇降動させる昇降機構とを備えた自動車の可動フロア装置において、上記可動フロア部と固定フロア部との間に上記可動フロア部の昇降動に伴うこの可動フロア部と上記固定フロア部との間の相対変位に応じて伸縮するとともに少なくとも収縮時に所定の抵抗力を発生させる抵抗伸縮部が設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
この発明によれば、上記可動フロア部と固定フロア部との間に上記可動フロア部の昇降動に伴ってこの可動フロア部と上記固定フロア部との間の相対変位に応じて伸縮する抵抗伸縮部が設けられているので、隙間の発生を有効に防止することができるとともに、この抵抗伸縮部は少なくとも収縮時に一定の抵抗力を発生させるので、可動フロア部の昇降動に伴う変位を抑制することができ、これにより昇降動に伴う可動フロア部のガタツキを効果的に抑制することができる。
【0009】
上記抵抗伸縮部は、単に可動フロア部と固定フロア部との間に介在されるものであってもよいが、上記昇降機構による可動フロア部の昇降動に伴って上記可動フロア部を固定フロア部に昇降可能に支持させる支持部がさらに設けられ、、当該支持部に上記抵抗伸縮部が設けられているのが好ましい(請求項2)。
【0010】
このように構成すれば、昇降機構とともに支持部によって可動フロア部を支持させることにより可動フロア部を安定して支持することができるとともに、当該支持部に抵抗伸縮部が設けられているので、上記昇降機構による可動フロア部の昇降動に伴うガタツキや隙間の発生を効果的に抑制することができる。
【0011】
上記抵抗伸縮部は、上記相対変位に応じて弾性変形し収縮時に抵抗力を発生させる弾性部材を含んで構成されたり(請求項3)、上記相対変位に応じて伸縮し伸縮時に抵抗力を発生させるダンパー部材を含んで構成されたりするのが好ましい(請求項4)。
【0012】
このように構成すれば、簡易な構成で抵抗伸縮部を構成することができる。
【0013】
上記可動フロア部は、その具体的構成は特に限定されるものではなく、例えば、特許文献1にも記載されているように、固定フロア部に対して水平に設けられたパネルからなり、当該パネルを固定フロア部に対して平行に上下昇降動させるものであってもよいが、可動フロア部がそのフロア面を固定フロア部のフロア面に連続的に設けられるもの、言い換えると、上記可動フロア部は、前端部および後端部のうち少なくとも後端部が上記固定フロア部に略連続するように配置されるとともに、前端縁および後端縁のうち少なくとも一方が上記昇降機構による可動フロア部の昇降動に応じて上記固定フロア部に沿って移動するように構成されるのが好ましい。このように構成すれば、可動フロア部をその後端部、すなわちシートに着座する乗員側の端部において固定フロア部に略連続させることができ、フロア上面の連続性を確保して見栄えを向上させることができるとともに、乗員の足部が可動フロア部の周辺に載置された場合の違和感を低減することができる。
【0014】
ここで、上記のように構成された場合には、可動フロア部の昇降に伴って可動フロア部の前端縁および後端縁のうち少なくとも一方が上記昇降機構による可動フロア部の昇降動に応じて上記固定フロア部に沿って移動することになるが、可動フロア部の寸法誤差や可動フロア部の昇降機構等に対する組付誤差等が存在すると、昇降動に伴って移動する端縁が車幅方向について一方が浮くなど歪みが生じる場合があり、このような状態で可動フロア部を昇降動させると、当該移動端縁がその車幅方向一端部において固定フロア部に引っ掛かるなどして可動フロア部の円滑な昇降動を阻害する場合も考えられる。
【0015】
従って、上記のように可動フロア部を固定フロア部に連続的に設ける場合には、この昇降動に伴って移動する端縁に、可動フロア部を支持する複数の支持部が設けられ、この支持部のうち少なくとも一つに上記抵抗伸縮部が設けられているのが好ましい(請求項5)。
【0016】
このように構成すれば、昇降動に伴って固定フロア部に沿って移動する可動フロア部の移動端縁の一方が変位許容支持部によって支持されて車幅方向の歪みを当該抵抗伸縮部によって吸収することができ、可動フロア部の円滑な昇降動でき、隙間やガタツキの発生を抑制しつつ確実に担保することができる。
【0017】
この場合、上記支持部のうち少なくとも一つは、上下方向の変位を規制しつつ上記可動フロア部を支持する変位規制支持部であるのが好ましい(請求項6)。
【0018】
このように構成すれば、変位規制支持部によって可動フロア部の上記移動端縁の高さ方向の位置決めを行うことができるとともに、可動フロア部上に乗員の足部が配置された時にこの変位規制支持部によってある程度しっかりと支持できるので、一定の剛性感を与えることができる。
【0019】
また、この場合、上記変位規制支持部は、上記固定フロア部上を車体前後方向に沿ってのみ移動するスライド機構(請求項7)や、磁力によって上記固定フロア部に吸着されることにより上記可動フロア部の上下方向への移動を規制するように構成されるもの(請求項8)を好ましく用いることができる。
【0020】
このように構成すれば、この変位規制支持部で可動フロア部の端部の上下方向の移動を確実に規制することができるとともに、可動フロア部の剛性感を向上させることができる。特に、磁力によって固定フロア部に吸着させることにより上記可動フロア部を上下方向への移動を規制するように構成されるものを採用した場合には、磁力に抗して上方に持ち上げることにより第2パネルの下側の空間を開放させることができ、従って清掃時等に便利なものとなる。
【0021】
可動フロア部を固定フロア部に対して連続的に設ける場合、上記可動フロア部は、固定フロア部に対して傾斜した状態で配設された一枚の傾斜パネルから構成されるものであってもよいが、上記可動フロア部は、上記昇降機構により昇降動される第1パネルと、前端部がこの第1パネルに枢支されるとともに後端縁がこの昇降動に伴って上記固定フロア部に沿って移動する第2パネルとを備えて構成されるのが好ましい(請求項9)。
【0022】
このように構成すれば、第1パネルをその上面に乗員の足部が配置されるように設定することにより、フロア面の連続性を担保しつつ、第1パネルの傾斜角度を比較的自由に設定することができるとともに、第1パネルに枢支された第2パネルを比較的円滑に移動させることができる。
【0023】
この場合、上記第1パネルはラック機構等により垂直に昇降させるように構成してもよいが、上記第1パネルは、その前端部が上記固定フロア部に枢支され、上記昇降機構によって揺動変位するのが好ましい(請求項10)。
【0024】
このように構成すれば、この可動フロア装置を上下に偏平に形成することができ、第1パネルを回動軸回りに揺動させることにより可動フロア部を昇降させるので、当該第1パネルを比較的円滑に昇降させることができる。
【0025】
上記抵抗伸縮部は、その具体的構成を特に限定するものではないが、例えば、上記抵抗伸縮部は、上記可動フロア部を上方に付勢するブッシュとして構成されるもの(請求項11)や、車体前後方向に沿って転動するゴムローラとして構成されるもの(請求項12)を採用することができる。
【0026】
このように構成すれば、簡易に抵抗伸縮部を構成することができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明に係る自動車の可動フロア装置によれば、昇降機構および可動フロア部の各種寸法誤差や、相互間の組付誤差などを抵抗伸縮部で吸収させることができるとともに、当該抵抗伸縮部によって昇降動に伴う可動フロア部のガタツキ、異音、隙間の発生を効果的に抑制することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
図1は当実施形態に係る自動車の可動フロア装置の概略を示す斜視図であり、図2は同装置の断面図である。なお、当実施形態の可動フロア装置は、ドライバーズシートに適用する場合について説明するが、ナビシートや後列シートにも適用可能であり、この場合はシートに着座する乗員の着座姿勢を安楽にするため等に用いられる。
【0030】
この可動フロア装置1は、図1および図2に示すように、車体前後方向に延びるとともに車幅方向中央部が上方に膨出することによりトンネル部4aが形成されたフロアパネル4(固定フロア部の一例に相当する)と、このフロアパネル4の車幅方向外側(図1では右側)に接合されたサイドシル5と、フロアパネル4上であってサイドシル5とトンネル部4aとの間に配設されたドライバーズシート6(以下、単に「シート6」と称する)と、このシート6に着座する乗員の足部によって操作され車幅方向に複数個並設されたペダル7と、このペダル7の下方であってフロアパネル4の上面に配設された可動フロアパネル8(可動フロア部の一例に相当)と、この可動フロアパネル8をフロアパネル4に対して昇降動させる昇降機構9と、シート6に着座する乗員によって操作されるステアリング装置10とを備え、当実施形態では位置調整可能に構成されたシート6の位置調整に連動して可動フロアパネル8を昇降動させるものとなされている。
【0031】
具体的には、フロアパネル4は、鋼板から形成され、少なくともシート6よりも前方側は図2に示すように平坦に形成されている。そして、このフロアパネル4の前端部はペダル7の下方辺りから前上がりに傾斜して形成され、この傾斜パネル部4bの前端縁がエンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネル11に連設されている。トンネル部4aは、上記したように、フロアパネル4の車幅方向中央部分が上方に膨出することにより形成されている。このトンネル部4aは、車体前後方向に細長く延び、このトンネル部4aの外側には図示していないがセンターコンソールが被覆され、トンネル部4aの上面とセンタコンソールとの間の空間に種々のワイヤーハーネスやダクト等が配設されるように構成されている。このフロアパネル4の車幅方向端縁に接合されたサイドシル5は、車体前後方向に延びる閉断面を有する高剛性部材であり、その上半部がフロアパネル4の上面よりも高くなるように形成されている。
【0032】
一方、シート6は、いわゆるセパレートタイプのシートであり、シートクッション61と、シートクッション61の後端部から上方に立ち上がるシートバック62と、シートバック62の上端部に取り付けられたヘッドレスト63とを備え、シート位置調整機構(図示せず)を介してフロアパネル4に固定されている。このシート位置調整機構は、シート6を前後スライド移動可能に支持するだけのものであってもよいが、例えばシートクッション61に対するシートバック62の傾斜角度を変更するためのリクライニング機構(図示せず)と、シート6の前後上下位置と座面角度とを同時変更可能なシート移動機構(図示せず)とを備え、これらを操作してシート6の位置や各角度を調整するものとなされている。特に、当実施形態では、シート6に着座する乗員の視線を体格、体型によらず一定に保つべくシート6をブレーキペダル7の回動中心軸を中心に回動させつつ前後移動可能に構成されている。従って、シート6が前方に移動するに伴い、シートクッション61が上方に持ち上げられつつ、その前端部が順次下方に下がるように構成されている。なお、シート6の回転中心はこれに限らずシート6より前方に離間して設けられていればよい。
【0033】
ペダル7は、車幅方向に沿って複数個並設されており、図1に示すように、例えば右側にアクセルペダルが、左側にブレーキペダルが配設される。なお、これらのペダル7に加えてブレーキペダルのさらに左側にクラッチペダルを設けるようにしてもよい。
【0034】
これらのペダル7は、図1および図2に示すように、ダッシュパネル11に取り付けられたペダルブラケット71と、このペダルブラケット71に軸支されたペダルレバー72と、ペダルレバー72の下端部に配設された踏面部73とを、基本構成としている。なお、このペダル7に、シート6の位置に連動してペダル7の傾斜調整および踏面高さの調整を行うペダル位置調整機構が設けられてもよい。このペダル位置調整機構の具体的構成は公知の機構であるため、ここではその詳細な説明を省略するが、上記シート位置調整機構と同様に、ブレーキペダル7の回動中心軸を中心に回動して位置調整し得るように構成される。
【0035】
可動フロアパネル8は、硬質合成樹脂板または鋼板等からなる矩形状のパネルであり、当実施形態ではヒンジにより連結された前後2枚のパネルから構成されている。この可動フロアパネル8は、ペダル7の下方からシート6の前端縁の若干前方位置に至るまで配設され、シート6に着座する乗員の足部、特に運転席に着座する乗員がペダル7を操作している場合にはこのペダル7を操作する足部が載置されるものであり、昇降機構9によって前側のパネルが揺動することによって全体的に昇降動可能に構成されている。
【0036】
具体的には、可動フロアパネル8は、図3および図4に明示するように、昇降機構9によって昇降される第1パネル81と、この第1パネル81に前端部が枢支されるとともに後端縁が第1パネル81の昇降に伴ってフロアパネル4に沿って移動する第2パネル82とを備えている。
【0037】
第1パネル81は、横長矩形状のパネルであり、この第1パネル81の大きさを特に限定するものではないが、シート6に着座する乗員の両足が載置し得る程度の大きさに設定されている。この第1パネル81は、前端部における車幅方向両端部が所定の寸法誤差や組付誤差などを許容するヒンジ弾性支持部13によってフロアパネル4の傾斜パネル部4bに枢支されている。このヒンジ弾性支持部13は、一端部が第1パネル81の前端部上面に締結具134によって締結された、いわゆる蝶番であるヒンジ支持本体131と、このヒンジ支持本体131の他端部とフロアパネル4との間に介在する弾性パッド132とを有し、この弾性パッド132で各種寸法誤差や組付誤差などを許容できるように構成されている。すなわち、弾性パッド132は、例えばゴムやエラストマー等の弾性部材によって板状に形成され、その厚みは特に限定されるものではなく、厚ければ厚いほど寸法誤差や組付誤差などの許容量も大きくなるが、厚すぎると可動フロアパネル8を一定の剛性感をもって支持できなくなる。従って、弾性パッド132は、その弾性力を考慮して適切な厚さに設定されるのが好ましい。そして、図3に示すように、このヒンジ支持本体131、弾性パッド132およびフロアパネル4を締結具135によって共締めすることにより、可動フロアパネル8をフロアパネル4の傾斜パネル部4bに対して寸法誤差や組付誤差などを許容しつつ揺動可能に支持させている。
【0038】
第2パネル82は、硬質合成樹脂板または鋼板等からなる横長矩形状のパネルであり、好ましくは第1パネル81と同様の材質から構成されている。この第2パネル82は、その前端部において、車幅方向左右両端部に配設されたヒンジ部83を介して第1パネル81の後端部に回動自在に接続されている。
【0039】
この第2パネルの後端部(可動フロアパネル8の後端部)は、図3および図4に示すように、複数個のローラ支持部12によってフロアパネル4上に支持されている。言い換えると、可動フロアパネル8は、昇降機構9とは別個にローラ支持部12によってフロアパネル4上に支持されている。このローラ支持部12は、図5(a)および(b)に示すように、フロアパネル4上を車体前後方向に沿って転動するローラ部121と、このローラ部121を車幅方向に沿った水平軸回りに回転自在に支持する軸部122と、この軸部122の両端を支持する保持アーム部123と、この保持アーム部123の上端に連設されビスなどの締結具125により第2パネル82の後端部下面に取着される取付プレート124とを備え、ローラ部121の材質によって弾性ローラ支持部12aと剛性ローラ支持部12bとに大別される。すなわち、このローラ支持部12は、当実施形態では、第2パネル82の後端部の下面に車幅方向に沿って3個並設されており、車幅方向両側部に配設されたローラ支持部12が弾性ローラ支持部12aとして構成されるとともに、車幅方向中央部に配設されたローラ支持部12が剛性ローラ支持部12bとして構成される。
【0040】
弾性ローラ支持部12aは、第2パネル82の後端部を弾性的に支持して当該第2パネル82の上下方向への変位を所定の範囲で許容するものであり、ローラ部121の少なくとも外周部がゴムやエラストマーなどの弾性部材から構成されている。当実施形態では、弾性ローラ支持部12aのローラ部121はその全体が弾性部材から構成され、可動フロアパネル8の昇降動に伴って第2パネル82の後端縁とフロアパネル4の上面との相対変位に応じて伸縮し、少なくとも収縮時に所定の抵抗力を発生させるものとなされている。従って、このローラ支持部12が支持部の一例に相当し、ローラ部121が抵抗伸縮部の一例に相当する。なお、ローラ部121をより一層円滑に回転させるべく、ローラ部121の内周に合成樹脂製のブッシュ部を配設してもよい。
【0041】
また、当実施形態では、弾性ローラ支持部12aが剛性ローラ支持部12bに比べて大径に形成されている。このように弾性ローラ支持部12aを剛性ローラ支持部12bよりも大径に形成することにより、車幅方向に並設されたローラ支持部12を各々確実にフロアパネル4に接地させ、これにより弾性ローラ支持部12aによって上下方向の変位を許容しつつ第2パネル82を弾性的に確実に支持することができる。
【0042】
一方、剛性ローラ支持部12bは、第2パネル82の上下方向への変位を規制しつつ当該第2パネル82を支持するものであり、ローラ部121の少なくとも外周部が硬質合成樹脂や金属などの高剛性部材から構成されている。当実施形態では、剛性ローラ支持部12bのローラ部121はその全体が剛性部材から構成されているが、例えばローラ部121と軸部122との間に弾性部材からなる振動吸収用のブッシュ部材を介在させるようにしてもよい。ただし、このように弾性部材からなるブッシュ部材を介在させた場合には、この剛性ローラ支持部12bは請求項にいう変位規制支持部ではなく、抵抗伸縮部に相当することとなる。
【0043】
次に昇降機構9について説明する。昇降機構9は、第1パネル81を昇降動させることができるものであればその具体的構成は特に限定されるものではないが、当実施形態では第1パネル81の所定部分を持ち上げ或いは引き下げることにより、第1パネル81をその前端縁を中心に揺動させることにより当該第1パネル81を実質的に昇降させる機構が採用されている。
【0044】
すなわち、昇降機構9は、図1に示すように、車幅方向に沿って延びる水平軸回りに正逆回転する回転軸部91と、この回転軸部91の長手方向両端部に取り付けられ当該回転軸部91と供回りする揺動アーム部92と、回転軸部91をその長手方向両端部で回転自在に支持する左右一対の軸ブラケット93と、これらの左右一対の軸ブラケット93の一方側に配設され回転軸部91に回転駆動力を伝達させる駆動機構94(図6および図7参照)とを備え、シート6の位置調整と連動して回転駆動する動力伝達ケーブル14からこの駆動機構94に回転駆動力が伝達されることにより回転軸部91および揺動アーム部92が正逆回転駆動し、この揺動アーム部92の先端部に当接する第1パネル81を上下に揺動させることにより可動フロアパネル8を昇降させるように構成されている。
【0045】
この昇降機構9を図6および図7(a)〜(c)を用いて具体的に説明する。図6は昇降装置を拡大して示す斜視図であり、図7(a)は昇降機構の平面図であり、図7(b),(c)は図(a)のb−b線、c−c線断面図である。
【0046】
回転軸部91は、図6および図7に示すように、車幅方向に沿って延び軸ブラケット93によってフロアパネル4の傾斜パネル部4bに回転自在に取り付けられている。
【0047】
揺動アーム部92は、図6および図7に示すように、平面視略コ字状形状を呈し、回転軸部91の長手方向両端部にそれぞれ固定されている(図1参照)。この揺動アーム部92は、図7(c)に明示するように、第1パネル81に当接して昇降動作に伴って第1パネル81の下面に沿って摺動する先端部に当接ローラ部921が回転自在に取り付けられている。従って、揺動アーム部92が上下に揺動すると、当接ローラ部921が第1パネル81の下面に沿って転動しつつ当該第1パネル81の下面を持ち上げ或いは下げることになり、これにより第1パネル81を含めた可動フロアパネル8を円滑に上下昇降動させることができるとともに、第1パネル81の昇降動作に伴って揺動アーム部92の先端部が第1パネル81の下面に沿って摺動するに伴って発生する異音を有効に防止することができる。なお、この当接ローラ部921は外周部が剛性部材によって構成されている。
【0048】
軸ブラケット93のうちトンネル部4a側に設けられた軸ブラケット93(図1では左側に配設されたブラケット93)は、車体前後方向に沿って配設された動力伝達ケーブル14が回転自在に保持されているとともに、この動力伝達ケーブル14により回転駆動される駆動機構94としてのウォームギヤが車幅方向に沿った軸回りに回転自在に保持されている。そして、動力伝達ケーブル14の先端部に設けられた、車体前後方向に長尺のウォームギヤ140が、回転軸部91に固着された駆動機構94としてのウォームギヤを回転させることにより回転軸部91を時計回りおよび反時計回りに回転させるようになっている。ここでは駆動機構94としてウォームギヤが用いられているが、このウォームギヤに代えて適宜動力を伝達し得る駆動機構を介在させるものであってもよい。また、この駆動機構94にはギヤ列等を含むものであってもよく、このギヤ列等によってギヤ比等を変更させるようにしてもよい。
【0049】
なお、当実施形態では、図2に二点鎖線で示すように、フロアパネル4および可動フロア装置1の上にフロアマット16を敷設して見栄えをさらに向上させるものとなされている。また、この構成に代えて、例えばフロアパネル4上にフロアマットを敷設して可動フロアパネル8を含めた可動フロア装置1を露出させるようにしてもよい。
【0050】
次に、この可動フロア装置1の動作や作用について説明する。
【0051】
この可動フロア装置1は、車体に組み付けられた状態で、可動フロアパネル8が乗員側においてフロアパネル4に対して連続的に設けられている、言い換えると可動フロアパネル8の第2パネル82はそのフロア面がフロアパネル4の上面に略連続するように設けられるので、見栄えを向上させることができるとともに、この可動フロアパネル8の周辺に乗員の足部を載置させても当該乗員が感じる違和感を軽減させることができる。
【0052】
このように第2パネル82をフロアパネル4に対して略連続するように構成した場合、可動フロアパネル8の昇降動作に伴って第2パネル82の後端部の引っ掛かりや、この後端部における車幅方向一端部側の浮き等が懸念される(図8参照)。すなわち、この可動フロア装置1では、組付状態で、例えば可動フロアパネル8の取付誤差や第1および第2パネル81,82の寸法誤差等に基づき、図8に示すように、可動フロアパネル8が車幅方向に傾いて第2パネル82の後端縁のフロアパネル4からの高さが一方側H1と他方側H2で異なる場合がある。このような傾き状態で可動フロアパネル8を昇降動作させると、この昇降動作に伴って第2パネル82がフロアパネル4に引っ掛かるなど昇降動作不良を招いたり、或いはガタツキを生じたり、見栄えが低下したりすることがあったが、この可動フロア装置1によれば、可動フロアパネル8、特に第2パネル82を支持する複数のローラ支持部12が設けられ、このローラ支持部12のうち車幅方向両端部に配設された二つのローラ支持部12がそのローラ部121が弾性部材によって構成された大径の弾性ローラ支持部12aとして構成されているので、図8に示すように、可動フロアパネル8(第1および第2パネル81,82)の各種寸法誤差や組付誤差などをこの弾性ローラ支持部12a、特にそのローラ部121で吸収させることができるとともに、当該弾性ローラ支持部12aで可動フロアパネル8を上方に付勢させることにより、可動フロアパネル8を安定姿勢で保持することができる。従って、上記寸法・組付誤差等に基づく可動フロアパネル8(特に第2パネル82)のガタツキ、異音、隙間の発生を効果的に抑制することができるとともに、可動フロアパネル8が傾いたり撓んだりしている場合でも可動フロアパネル8を安定姿勢で支持することができ、これにより可動フロアパネル8を円滑に昇降動させることができる。すなわち、可動フロアパネル8に傾き等の位置ずれや若干の撓みがある場合でも、弾性ローラ支持部12aを設けるという簡易な構成によってこれらの位置ずれや撓みなどを許容しつつ、可動フロアパネル8を円滑に昇降動させることができるとともにそのガタツキや隙間の発生を効果的に抑制することができる。
【0053】
しかも、この図8に示す状態から乗員が第1パネル81上に足部を載置させた場合には、車幅方向中央部に配設された剛性ローラ支持部12bを基準にして位置決めされて、図8に示す左側に配設された弾性ローラ支持部12aは弾性回復するとともに同図に示す右側に配設された弾性ローラ支持部12aは弾性力に抗して変形し、同図に二点鎖線で示すように第2パネル82の後端縁82aがフロアパネル4に対して略平行になった状態で位置決めされることになる。従って、剛性ローラ支持部12b(変位規制支持部の一例に相当する)によって可動フロアパネル8の後端縁の高さ方向の位置決めを行うことができるとともに、可動フロアパネル8上に乗員の足部が配置された時にこの剛性ローラ支持部12bによってある程度しっかりと支持できるので、一定の剛性感を与えることができる。
【0054】
さらに、この組付状態では、例えば図9に示すように、可動フロアパネル8の取付誤差や第1および第2パネル81,82の寸法誤差等に基づき、第1パネル81の前端縁81aからフロアパネル4の傾斜パネル部4bまでの距離が一方側L1と他方側L2とで異なっていることもあるが、このような場合でもこの可動フロア装置1では、昇降機構9とは別個のヒンジ弾性支持部13で第1パネル81を支持しているので、可動フロアパネル8の各種寸法誤差や、相互間の組付誤差などをこのヒンジ弾性支持部13、特に弾性パッド132で吸収させることができ、このヒンジ弾性支持部13で可動フロアパネル8を車体前後方向に付勢させることにより、可動フロアパネル8を安定姿勢で保持することができる。従って、上記寸法・組付誤差等に基づく可動フロアパネル8のガタツキ、異音、隙間の発生を効果的に抑制することができるとともに、可動フロアパネル8が歪んでいるような場合でも可動フロアパネル8を安定姿勢で支持することができ、これにより当該可動フロアパネル8を円滑に昇降動させることができるとともにこの昇降動に伴うガタツキや隙間の発生を効果的に抑制することができる。なお、図8および図9は、傾き等を強調するため、実際の傾き等に比べて誇張して表現している。
【0055】
従って、当実施形態の可動フロア装置1では、弾性ローラ支持部12aのローラ部121およびヒンジ弾性支持部13が請求項にいう抵抗伸縮部の一例に相当する。
【0056】
この可動フロア装置1は、当実施形態ではシート位置調整機構と連動するように構成されており、シート6の位置を調整すると自動的に可動フロアパネル8の高さ調整が実行されるようになっている。すなわち、シート位置調整機構によってシート6の前後上下位置調整を実行するとこのシート6の移動力が動力伝達ケーブル14を介して可動フロア装置1に伝達されるようになっている。
【0057】
シート6が中間位置、すなわち標準体型、体格の乗員にあわせて位置調整されると、可動フロアパネル8の第1パネル81はフロアパネル4に対して略平行な姿勢となるように位置設定されている。シート6がこの中間位置よりも前方に位置調整されると、このシート6の移動に伴って移動力が動力伝達ケーブル14を介して回転力として当該動力伝達ケーブル14の先端部のウォームギヤ140に伝達され、このウォームギヤ140が回転されることにより昇降機構9の駆動機構94としてのウォームギヤが揺動アーム部92を持ち上げる方向に回転する。この駆動機構94としてのウォームギヤが回転するとこのウォームギヤの回転中心軸でもある回転軸部91も同方向に回転し、これにより揺動アーム部92が上方に回転することになる。
【0058】
そして、揺動アーム部92が上方に回転すると、当該揺動アーム部92によって可動フロアパネル8の第1パネル81がその前端縁を中心に上方に持ち上げられ(図3に二点鎖線で示す)、第1パネル81は後上がりの状態に傾き、結果、可動フロアパネル8は上昇することになる。このとき、第2パネル82の後端部はフロアパネル4に沿って移動するが、この後端部は弾性ローラ支持部12aおよび剛性ローラ支持部12bによって支持されているので、円滑に移動させることができ、しかも弾性ローラ支持部12aによって上方に付勢されながら移動するので傾きやガタツキが抑制され、静粛に移動させることができる。しかも、揺動アーム部92の当接ローラ部921は第1パネル81の下面に沿って転動することから、可動フロアパネル8を円滑かつ比較的静粛に上下昇降させることができる。
【0059】
一方、シート6が中間位置よりも後方に位置調整されると、このシート6の移動に伴って移動力が動力伝達ケーブル14を介して当該動力伝達ケーブル14の先端部のウォームギヤ140に伝達されて当該ウォームギヤ140が回転されることになるが、この回転方向はシート6を前方に位置調整する場合の上記例と反対方向となっている。従って、昇降機構9の駆動機構94としてのウォームギヤも上記例と反対方向に回転し、これにより揺動アーム部92が下方に揺動回転する。これに伴って、第1パネル81は自重により後下がりの状態に引き下げられ、第1パネル81は後下がりの状態に傾き、結果、可動フロアパネル8は下降することになる。このときも、第2パネル82の後端部はフロアパネル4に沿って移動するが、この後端部は弾性ローラ支持部12aおよび剛性ローラ支持部12bによって支持されているので、円滑かつ静粛に移動させることができる。
【0060】
なお、以上に説明した可動フロア装置1は、本発明に係る装置の一実施形態であって、装置の具体的構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であり、変形例を以下に説明する。
【0061】
(1)上記実施形態では、弾性ローラ支持部12aは、ローラ部121が弾性部材で構成されることにより弾性を有するものとなされているが、抵抗伸縮部の具体的構成はこれに限定されるものではない。例えば、ローラ部は剛性部材によって構成される一方、保持アーム部123が、サスペンションのように、ガイド機構とつる巻きばね等の弾性部材を介在させて取付プレート124に弾性的に取り付けられているものであってもよい。また、この構成に加え、或いはこの構成に代えて、図13に示すような、伸縮に伴い所定の抵抗力を発生させるダンパー部材130を介在させてもよい。このダンパー部材130は、図13に示すように、公知のオイルダンパーであり、シリンダ131とこのシリンダ131内を移動するピストン132とからなり、ピストン132に設けられたオリフィス132aを通過するオイルの抵抗を利用してローラ部121の急激な変位に対して抵抗を発生させるように構成されている。このダンパー部材を介在させた場合には、可動フロアパネル8の昇降動に伴って可動フロアパネル8とフロアパネル4との相対変位に伴ってダンパー部材130が伸縮するとともにこの伸縮に伴って当該ダンパー部材130が所定の抵抗力を発生させるので、急激な変位を伴わず可動フロアパネルを昇降動させることができ、これによりガタツキや隙間の発生を効果的に抑制することができる。
【0062】
また、これらのローラ支持部12に加えて、図14に示すように、第1パネル81を昇降可能に支持する棒状ステー部材135を設けてもよい。この棒状ステー部材135は長尺のシリンダ136と同じく長尺のピストン137とを有するダンパー部材138が組み込まれ、可動フロアパネル8の昇降動に伴ってこの昇降動に対して抵抗を発生させるものとなされている。このように構成しても、可動フロアパネル8の昇降動に伴って可動フロアパネル8とフロアパネル4との相対変位に伴ってダンパー部材135が伸縮するとともにこの伸縮に伴って当該ダンパー部材135が所定の抵抗力を発生させるので、急激な変位を伴わず可動フロアパネルを昇降動させることができ、これによりガタツキや隙間の発生を効果的に抑制することができる。
【0063】
(2)上記実施形態では、抵抗伸縮部が設けられた支持部(変位許容支持部)および変位規制支持部として、弾性ローラ支持部12aおよび剛性ローラ支持部12bを例にとって説明したが、これらのローラ支持部12の配設個数や配設位置等具体的構成は特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0064】
また、変位規制支持部について上記実施形態における剛性ローラ支持部12bに代えてフロアパネル上を車体前後方向にのみスライド移動するスライド機構を設けるものであってもよい。すなわち、このスライド機構を採用した可動フロア装置を図10に示す。この図10に示す可動フロア装置は、ヒンジ弾性支持部13の下端部が第1パネル81の前端部下面に取着されている点、第2パネル82の後端部を変位を規制しつつ支持する支持部としてスライド機構112が設けられている点で、上記実施形態の装置と異なる。従って、ここではスライド機構について説明する。
【0065】
すなわち、スライド機構112は、車体前後方向に沿って延びフロアパネル(図示せず)に固定されたスライドレール112aと、スライドレール112aの前後端部に固定されたストッパー112bと、スライドレール112aに沿ってスライド移動するスライダー112cとを備える。このスライドレール112aは、公知のスライド機構に採用されるレール部材であり、例えば上面が開口した断面視略C字状の溝型鋼等からなり、その内部にスライダー112cの下端部が挿入されるとともに、このスライダー112cの下端部に設けられた水平軸回りに回転自在に支持された左右一対のスライドローラ(図示せず)が、スライドレール112aの底部に沿って転動すること等により、スライダー112cがスライド変位するように構成されている。スライダー112cは上下部からなりこれらがヒンジ連結されることによりスライド変位に伴う第2パネル82の傾斜角度に追随できるように構成されている。
【0066】
このように、変位規制支持部としてスライド機構を用いた場合には、第2パネル82の下端部の上下高さ方向の移動を確実に規制することができるとともに、可動フロアパネル8の剛性感を向上させることができる。
【0067】
(3)また、図11はさらに他の実施形態に係る可動フロア装置を示す斜視図であり、図12は図11のXII−XII線断面図である。
【0068】
この装置は、剛性ローラ支持部としてマグネットローラ支持部212bを備える点で上記実施形態と異なる。すなわち、この装置は、第2パネル82の後端部であって図例では車幅方向右側に配設された変位許容支持部としての弾性ローラ支持部212aと、第2パネル82の後端部であって図例では車幅方向左側に配設された変位規制支持部としてのマグネットローラ支持部212bと、このマグネットローラ支持部212bの軌道上であってフロアパネル(図示せず)上に配設されたレール部材212cとを備える。
【0069】
マグネットローラ支持部212bは、図12に示すように、車幅方向に沿った水平軸回りに回転する回転軸部213と、この回転軸部213の一端部に取着されたローラ部214と、回転軸部213の他端部に配設された軸受部215と、回転軸部213と軸受部215との間に介装されたブッシュ部216とを備え、回転軸部213がブッシュ部216を介して軸受部215に回転自在に支持されることによりローラ部214が回転するように構成されている。このローラ部214は、磁力を有する磁性部材によって構成されており、鉄板等に吸着するものとなされている。従って、ローラ部214は、レール部材212cを介してフロアパネル4に吸着され、これにより第2パネル82の上下方向への移動を規制する変位規制部として機能する。
【0070】
このように構成すれば、マグネットローラ支持部212bを磁力によってレール部材212cに吸着させることにより可動フロアパネル8の上下方向への移動を規制することができ、一方、磁力に抗して可動フロアパネル8を上方に持ち上げることにより第2パネル82の下側の空間を開放させることができ、従って清掃時等に便利なものとなる。
【0071】
また、上記ブッシュ部216を弾性部材により構成すれば、このマグネットローラ支持部212bによって第2パネル82を弾性的に支持でき、これにより可動フロアパネル8の各種寸法誤差や、組付誤差などをこのマグネットローラ支持部212bで吸収させることができ、各種寸法・組付誤差等に基づく可動フロアパネル8のガタツキ、異音、隙間の発生を有効に防止することができるとともに、可動フロアパネル8が傾いたり撓んだりしている場合でも可動フロアパネル8を安定姿勢で支持することができ、これにより当該可動フロアパネル8を円滑に昇降動させることができる。
【0072】
(4)昇降機構の具体的構成は特に限定するものではなく、例えば第1パネル81の下面に特許文献1に示されるようなジャッキ機構が取り付けられているものであってもよい。
【0073】
(5)上記実施形態では昇降機構9によって第1パネル81を上下揺動させるように構成されているが、この昇降機構9によって第2パネル82を揺動させるようにしてもよい。この場合は、第2パネル82の後端部がフロアパネル4に枢支されるとともに、当該第2パネル82の昇降動に伴って第1パネル81の前端縁がフロアパネル4上に沿って移動することになる。従って、この第1パネル81の前端縁にローラ支持部が配設されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係る可動フロア装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】同装置を示す側面図である。
【図3】同装置を拡大して示す側面図である。
【図4】同装置の可動フロアを示す斜視図である。
【図5】(a)は同装置の弾性ローラ支持部を示す斜視図であり、(b)は同装置の弾性ローラ支持部を示す正面図である。
【図6】同装置の昇降機構を示す斜視図である。
【図7】(a)は同装置の昇降機構の平面図、(b)、(c)は図(a)のb−b線、c−c線断面図である。
【図8】同装置の使用状態を示す背面図である。
【図9】同装置の使用状態を示す平面図である。
【図10】本発明に係る可動フロア装置の他の実施形態を示す斜視図である。
【図11】本発明に係る可動フロア装置のさらに別の実施形態を示す斜視図である。
【図12】図11のXII−XII線断面図である。
【図13】本発明の抵抗伸縮部の別の実施形態を示す説明図である。
【図14】本発明に可動フロア装置のさらに別の実施形態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0075】
1 可動フロア装置
4 フロアパネル(固定フロア部)
6 シート
7 ペダル
8 可動フロアパネル(可動フロア部)
9 昇降機構
12a 弾性ローラ支持部(変位許容支持部)
12b 剛性ローラ支持部(変位規制支持部)
13 ヒンジ弾性支持部(変位許容支持部)
81 第1パネル
81a 前端縁
82 第2パネル
82a 後端縁
212a 弾性ローラ支持部
212b マグネットローラ支持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に延びる固定フロア部と、この固定フロア部上に配設されたシートと、上記固定フロア部上であって上記シートに着座する乗員の足部載置領域に配設されている可動フロア部と、この可動フロア部を上記固定フロア部に対して昇降動させる昇降機構とを備えた自動車の可動フロア装置において、
上記可動フロア部と固定フロア部との間に上記可動フロア部の昇降動に伴うこの可動フロア部と上記固定フロア部との間の相対変位に応じて伸縮するとともに少なくとも収縮時に所定の抵抗力を発生させる抵抗伸縮部が設けられていることを特徴とする自動車の可動フロア装置。
【請求項2】
上記昇降機構による可動フロア部の昇降動に伴って上記可動フロア部を固定フロア部に昇降可能に支持させる支持部がさらに設けられ、当該支持部に上記抵抗伸縮部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項3】
上記抵抗伸縮部は、上記相対変位に応じて弾性変形し収縮時に抵抗力を発生させる弾性部材を含んで構成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項4】
上記抵抗伸縮部は、上記相対変位に応じて伸縮し伸縮時に抵抗力を発生させるダンパー部材を含んで構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項5】
上記可動フロア部は、前端部および後端部のうち少なくとも後端部が上記固定フロア部に略連続するように配置されるとともに、前端縁および後端縁のうち少なくとも一方が上記昇降機構による可動フロア部の昇降動に応じて上記固定フロア部に沿って移動するように構成され、この昇降動に伴って移動する端縁に、可動フロア部を支持する複数の上記支持部が設けられ、この支持部のうち少なくとも一つに上記抵抗伸縮部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項6】
上記支持部のうち少なくとも一つは、上下方向の変位を規制しつつ上記可動フロア部を支持する変位規制支持部であることを特徴とする請求項5記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項7】
上記変位規制支持部は、上記固定フロア部上を車体前後方向に沿ってのみ移動するスライド機構であることを特徴とする請求項6記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項8】
上記変位規制支持部は、磁力によって上記固定フロア部に吸着されることにより上記可動フロア部の上下方向への移動を規制するように構成されていることを特徴とする請求項6記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項9】
上記可動フロア部は、上記昇降機構により昇降動される第1パネルと、前端部がこの第1パネルに枢支されるとともに後端縁がこの昇降動に伴って上記固定フロア部に沿って移動する第2パネルとを備えることを特徴とする請求項5ないし請求項8のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項10】
上記第1パネルは、その前端部が上記固定フロア部に枢支され、上記昇降機構によって揺動変位することを特徴とする請求項9記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項11】
上記抵抗伸縮部は、上記可動フロア部を上方に付勢するブッシュであることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項12】
上記抵抗伸縮部は、車体前後方向に沿って転動するゴムローラであることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項1】
車体前後方向に延びる固定フロア部と、この固定フロア部上に配設されたシートと、上記固定フロア部上であって上記シートに着座する乗員の足部載置領域に配設されている可動フロア部と、この可動フロア部を上記固定フロア部に対して昇降動させる昇降機構とを備えた自動車の可動フロア装置において、
上記可動フロア部と固定フロア部との間に上記可動フロア部の昇降動に伴うこの可動フロア部と上記固定フロア部との間の相対変位に応じて伸縮するとともに少なくとも収縮時に所定の抵抗力を発生させる抵抗伸縮部が設けられていることを特徴とする自動車の可動フロア装置。
【請求項2】
上記昇降機構による可動フロア部の昇降動に伴って上記可動フロア部を固定フロア部に昇降可能に支持させる支持部がさらに設けられ、当該支持部に上記抵抗伸縮部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項3】
上記抵抗伸縮部は、上記相対変位に応じて弾性変形し収縮時に抵抗力を発生させる弾性部材を含んで構成されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項4】
上記抵抗伸縮部は、上記相対変位に応じて伸縮し伸縮時に抵抗力を発生させるダンパー部材を含んで構成されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項5】
上記可動フロア部は、前端部および後端部のうち少なくとも後端部が上記固定フロア部に略連続するように配置されるとともに、前端縁および後端縁のうち少なくとも一方が上記昇降機構による可動フロア部の昇降動に応じて上記固定フロア部に沿って移動するように構成され、この昇降動に伴って移動する端縁に、可動フロア部を支持する複数の上記支持部が設けられ、この支持部のうち少なくとも一つに上記抵抗伸縮部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項6】
上記支持部のうち少なくとも一つは、上下方向の変位を規制しつつ上記可動フロア部を支持する変位規制支持部であることを特徴とする請求項5記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項7】
上記変位規制支持部は、上記固定フロア部上を車体前後方向に沿ってのみ移動するスライド機構であることを特徴とする請求項6記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項8】
上記変位規制支持部は、磁力によって上記固定フロア部に吸着されることにより上記可動フロア部の上下方向への移動を規制するように構成されていることを特徴とする請求項6記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項9】
上記可動フロア部は、上記昇降機構により昇降動される第1パネルと、前端部がこの第1パネルに枢支されるとともに後端縁がこの昇降動に伴って上記固定フロア部に沿って移動する第2パネルとを備えることを特徴とする請求項5ないし請求項8のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項10】
上記第1パネルは、その前端部が上記固定フロア部に枢支され、上記昇降機構によって揺動変位することを特徴とする請求項9記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項11】
上記抵抗伸縮部は、上記可動フロア部を上方に付勢するブッシュであることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【請求項12】
上記抵抗伸縮部は、車体前後方向に沿って転動するゴムローラであることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の自動車の可動フロア装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−248443(P2006−248443A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69905(P2005−69905)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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