説明

自動車の操縦室支持構造

【課題】 自動車の操縦室支持構造を提供する。
【解決手段】 クロスメンバ(11)を有し、自動車の車体構造に当該クロスメンバ(11)を接続するためのブラケット(13、14、15、16、17)を有し、および当該クロスメンバ(11)に機能部品を接続するためのブラケット(18、19、20)を有する自動車の操縦室支持構造であって、当該クロスメンバ(11)およびブラケット(13、14、15、16、17、18、19、20)が全てマグネシウム合金材料製である、操縦室支持構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段による自動車の操縦室(cockpit)の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
(特許文献1)には、クロスメンバと複数のブラケットとを有する自動車の操縦室構造が開示されている。この従来技術から公知の前記操縦室支持構造のクロスメンバは2つの異形材部分を含み、それら異形材部分は、その長手方向にみたとき、互いに対して位置を変えることができる。クロスメンバには複数のブラケットが接続されている。これらブラケットは、具体的には、クロスメンバを車体構造のフロントピラーに接続可能にするサイドブラケット、クロスメンバを車体構造のトンネル部に接続可能にする中央ブラケット、乗員用エアバッグを締結するためのブラケット、および自動車のステアリング装置の各部分を締結するためのブラケットである。(特許文献1)では、操縦室支持構造の個々の組立体は、金属材料、例えばアルミニウムなどの軽金属から作られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第0 990 578B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上を出発点として、本発明の目的は、自動車の新規の操縦室支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的は、請求項1による操縦室支持構造によって達成される。本発明によれば、クロスメンバおよびブラケットは全て、マグネシウム合金材料製である。本発明によれば、操縦室支持構造の構成部品の全て、具体的にはクロスメンバおよびブラケットは、マグネシウム合金材料製である。こうすることで、本発明による操縦室支持構造の重量を、従来公知の操縦室支持構造よりも、減少させることができる。
【0006】
本発明の有利な一改良形態では、クロスメンバは少なくとも2つのチューブ状異形材を有し、それらチューブ状異形材は、互いに入れ子式にはめ込まれるか、または互いに対して入れ子式に位置を変えることができる。前記チューブ状異形材は、第1のマグネシウム合金材料から押し出し異形材として形成される。ここで、クロスメンバを車体構造に接続する各ブラケットは、第2のマグネシウム合金材料から鋳造部品として形成される。また、クロスメンバを乗員用エアバッグに、および/またはグローブボックスに、および/または計器盤のカバーに接続する各ブラケットは、第3のマグネシウム合金材料からシートメタル部品として形成される。
【0007】
上述のように、本発明による操縦室支持構造の構成部品を、押し出し異形材、鋳造部品およびシートメタル部品として形成することは、特に好ましい。なぜなら、第1に、重量を最小限にすることが可能になるからであり、第2に、そうすることで、操縦室支持構造の個々の構成部品を、それら構成部品が果たすべき役割に最適に適合させることが可能となるからである。クロスメンバを自動車の車体構造に接続する役目を果たす操縦室支持構造の構成部品は、このようにマグネシウム合金鋳造部品として形成され、それにより、軽量でありながら、接続および一体化に必要な箇所を備える。乗員用エアバッグおよび/またはグローブボックスおよび/または計器盤のカバーを接続する役目を果たす操縦室支持構造の構成部品は、マグネシウム合金シートメタル部品として形成され、それにより、それら構成部品を、締結すべき機能部品に簡単に適応できるようにする。
【0008】
クロスメンバの異形材は好ましくは、それらの相対的位置を固定するために、互いに溶接される。ここで、ブラケットは、常温接合(cold joining)によってクロスメンバに接続される。入れ子式の相対的位置を固定するためにクロスメンバの異形材を溶接することは、強度の点からも好ましい。常温接合でクロスメンバへブラケットを接続することによって、熱間接合(hot joining)の場合に生じ得る操縦室支持構造のいずれの歪みも、絶対最小値まで低減させることができる。昇温接合(warm joining)もまた可能であることは自明である。
【0009】
本発明の好ましい改良形態は、下位請求項および以下の説明から明らかとなる。本発明の例示的な実施形態を、図面に基づいてより詳細に説明するが、本発明は前記例示的な実施形態に限定されない。図面においては以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、自動車の操縦室支持構造の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、自動車の操縦室支持構造に関する。
【0012】
図1は、本発明による操縦室支持構造10を概略的に示す斜視図である。
【0013】
本発明による操縦室支持構造10はクロスメンバ11を有し、ここでこのクロスメンバ11は、異形材12a、12bによって形成されており、これら異形材は入れ子式に互いにはめ込まれる。図示の例示的な実施形態では、クロスメンバ11は、上述の2つのチューブ状の異形材12aおよび12bを含む。これら異形材は互いにはめ込まれ、かつ、自動車に操縦室支持構造を組み立てる前に、これら異形材を、それらの軸方向に入れ子式に位置を変えることにより、幅の異なる自動車に操縦室支持構造を適合させることが可能である。このチューブ状異形材12bは、他方のチューブ状異形材12aにはめ込むためより小さな口径を有しており、好ましくは操縦室支持構造の助手席側に割り当てられる。チューブ状異形材12a、12bが互いにはめ込まれる部分では、運転席側の異形材12aの内径は、助手席側の異形材12bの外径に一致する。
【0014】
操縦室支持構造10は、クロスメンバ11に加えて、ブラケット13、14、15および16を有し、このブラケットは、クロスメンバ11を自動車の車体構造に接続する役目を果たす。2つの側方ブラケット13および14は、操縦室支持構造10のクロスメンバ11を車体構造のフロントピラーに接続する役目を果たす。中央ブラケット15および16は、クロスメンバ11を車体構造のトンネル部に接続する役目を果たす。
【0015】
図1に示すように、操縦室支持構造は、ブラケット13、14、15および16に加えて、さらに別のブラケット17を含む。このブラケット17により、クロスメンバ11を、同様に自動車の車体構造に、特にフロントガラスのカウルにまたは車体構造のバルクヘッドに接続できる。ここで前記ブラケット17はさらに、自動車のステアリングコラム装置をクロスメンバ11に接続する役目も果たす。
【0016】
操縦室支持構造10のクロスメンバ11を自動車の車体構造に接続できるようにする前記ブラケット13、14、15、16および17に加えて、操縦室支持構造10は、さらに別のブラケット18、19および20を含む。ここで、これらブラケット18、19および20は、クロスメンバ11に機能部品を接続する役目を果たす。ブラケット18は、クロスメンバ11に車両の操縦室の計器盤のカバーを接続する役目を果たす。ブラケット19は、クロスメンバ11にグローブボックスを接続する役目を果たす。ブラケット20によって、操縦室支持構造10のクロスメンバ11に乗員用エアバッグを接続できる。
【0017】
本発明による操縦室支持構造10の組立体の全て、すなわちクロスメンバ11およびブラケット13〜20が、マグネシウム合金材料製である。そうすることで、操縦室支持構造を軽量にできる。
【0018】
クロスメンバ11、具体的にはその2つのチューブ状異形材12a、12bは、第1のマグネシウム合金材料から押し出し異形材として作製される。押し出し異形材用の、従ってクロスメンバ11のチューブ状異形材12a、12b用の第1のマグネシウム合金材料として、特にマグネシウム合金材料AZ31すなわちMgAl3Zn1が使用される。
【0019】
クロスメンバ11を自動車の車体構造に接続できるようにするブラケット13、14、15、16および17は、好ましくは第2のマグネシウム合金材料から鋳造品として作製される。ここで、鋳造部品用の第2のマグネシウム合金材料として、特にマグネシウム合金材料AM50すなわちMgAl5Mnが使用される。
【0020】
乗員用エアバッグおよび/またはグローブボックスおよび/または計器盤のカバーなどの機能部品を接続する役目を果たすブラケット18、19および20は、好ましくは第3のマグネシウム合金材料からシートメタル部品として作製される。ここで、シートメタル部品用の第3のマグネシウム合金材料として、好ましくはマグネシウム合金材料AZ31BすなわちMgAl3Zn1が使用される。
【0021】
従って、操縦室支持構造の構成部品の全てがマグネシウム合金材料から作製される。クロスメンバ11のチューブ状異形材は、好ましくは第1のマグネシウム合金材料から押し出し異形材として作製される。クロスメンバ11を車体構造に接続し、かつ適切な場合にはクロスメンバ11に別の構成部品を接続する役目を果たすブラケットの全てが、第2のマグネシウム合金材料から鋳造部品として作製される。機能部品をクロスメンバ11に接続する役目のみを果たすブラケット18、19および20は、第3のマグネシウム合金材料からシートメタル部品として作製される。
【0022】
従って、本発明による操縦室支持構造はモジュール形式の設計構造であり、操縦室支持構造のモジュールまたは組立体の全てがマグネシウム合金材料から作製される。
【0023】
本発明による操縦室支持構造10を自動車に組み立てるために、前記操縦室支持構造10は、クロスメンバ11のチューブ状異形材12aおよび12bを互いにはめ込んで、軸方向に入れ子式に位置を変えることによって、自動車の幅に適合させることができる。ここで、クロスメンバ11のチューブ状異形材12aおよび12bが所望の相対的位置にあるとき、2つの異形材12aおよび12bを、好ましくは溶接によって互いに接続する。
【0024】
クロスメンバ11を車体に接続させる役目を果たすブラケット13、14、15、16および17は、クロスメンバ11上に係合する端部において、好ましくは常温接合によって、特に接着接合および追加的な機械的な固定手法によって、クロスメンバ11に接続される。追加的な機械的な固定は、例えばリベット締めによって実現され得る。
【0025】
車体に接続される前記ブラケット13、14、15、16および17の対向側の端部では、前記ブラケットは、好ましくは車体構造の各部分にねじで固定される。
【0026】
ブラケット18、19および20もまた、好ましくは同様に、クロスメンバ11に対して、およびクロスメンバ11と接続される各機能部品に対して、具体的には、クロスメンバ11の側では常温接合、特に接着接合および追加的な機械的な固定によって、および各機能部品の側ではねじによって、接続される。
【0027】
クロスメンバ11のチューブ状異形材12aおよび12bのみが溶接によって接続され、操縦室支持構造10のブラケット13〜20の全てが常温接合によってクロスメンバ11に接続される場合、熱間接合、特に溶接の場合にクロスメンバ11に生じ得る歪みを、絶対最小値まで低減させることが可能となる。
【0028】
本発明による操縦室支持構造は軽量であり、かつ異なるタイプの自動車に容易に適合させることができる。
【0029】
従って、本発明による操縦室支持構造は、クロスメンバ11のチューブ状異形材12aおよび12bを軸方向に変位させることによって、幅の異なる自動車に適合させることができる。クロスメンバ11へのブラケット、特にブラケット17の接続位置を変えることによって、本発明による操縦室支持構造10を、左ハンドルの自動車および右ハンドルの自動車に容易に適合させることが可能となる。
【0030】
操縦室支持構造の個々の構成部品またはモジュールを、押し出し異形材、鋳造部品またはシートメタル部品として相応させて形成することによって、操縦室支持構造10の個々のモジュールを、それらモジュールが果たすべき役割に個別に適合させることが可能となる。このようにすることで、操縦室支持構造を可能な限り軽量のまま維持し、かつ同数の接続のための箇所および一体化のための箇所を備えつつ、操縦室支持構造の十分な安定性を確保することが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
10 操縦室支持構造
11 クロスメンバ
12a、12b チューブ状異形材
13、14、15、16、17、18、19、20 ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスメンバ(11)を有し、自動車の車体構造に前記クロスメンバ(11)を接続するためのブラケット(13、14、15、16、17)を有し、および前記クロスメンバ(11)に機能部品を接続するためのブラケット(18、19、20)を有する操縦室支持構造において、前記クロスメンバ(11)および前記ブラケット(13、14、15、16、17、18、19、20)が全て、マグネシウム合金材料製であることを特徴とする操縦室支持構造。
【請求項2】
請求項1に記載の操縦室支持構造において、前記クロスメンバ(11)が少なくとも2つのチューブ状異形材(12a、12b)を有し、それらチューブ状異形材を入れ子式に互いにはめ込むことを特徴とする操縦室支持構造。
【請求項3】
請求項2に記載の操縦室支持構造において、前記クロスメンバ(11)の前記異形材(12a、12b)が、マグネシウム合金材料から押し出し異形材として形成されることを特徴とする操縦室支持構造。
【請求項4】
請求項2または3に記載の操縦室支持構造において、前記クロスメンバ(11)の前記異形材(12a、12b)が、それらの相対的位置を固定するために、互いに溶接されることを特徴とする操縦室支持構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の操縦室支持構造において、前記ブラケットの内で、前記クロスメンバ(11)を前記車体構造のフロントピラーに、および前記車体構造のトンネル部に、接続するためのブラケット(13、14、15、16)が、マグネシウム合金材料から鋳造部品として形成されることを特徴とする操縦室支持構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の操縦室支持構造において、前記ブラケットの内で、前記クロスメンバ(11)を前記車体構造に、および前記自動車のステアリングコラム装置に、接続するためのブラケット(17)が、マグネシウム合金材料から鋳造部品として形成されることを特徴とする操縦室支持構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の操縦室支持構造において、前記ブラケットの内で、前記クロスメンバ(11)を乗員用エアバッグに、および/またはグローブボックスに、および/または計器盤のカバーに、接続するためのブラケット(18、19、20)が、マグネシウム合金材料からシートメタル部品として形成されることを特徴とする操縦室支持構造。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の操縦室支持構造において、前記ブラケット(13、14、15、16、17、18、19、20)が、常温接合によって前記クロスメンバ(11)に接続されることを特徴とする操縦室支持構造。
【請求項9】
請求項8に記載の操縦室支持構造において、前記ブラケット(13、14、15、16、17、18、19、20)が、前記クロスメンバ(11)に接着接合され、かつ追加的に機械的に固定されることを特徴とする操縦室支持構造。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の操縦室支持構造において、前記ブラケット(13、14、15、16、17、18、19、20)が、前記自動車の前記車体構造に、および前記乗員用エアバッグに、および/または前記グローブボックスに、および/または前記計器盤のカバーに、ねじで固定されることを特徴とする操縦室支持構造。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−28337(P2013−28337A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−157606(P2012−157606)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【出願人】(510238096)ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (63)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】