説明

自動車の空調設備のための、生理学的データのセンサを備える制御システム

【課題】技術的要素のアクチュエータまたは空気温度、空気流量および空気分布を調節できる制御機構に接続された出力を含む制御装置を含む、自動車の暖房、換気、または空調設備のための制御システムを提案することによって、少なくとも1名の乗員に与えられる空気力学的快適性を改善する。
【解決手段】センサ13によって、乗員の身体の各種部分の所定ゾーンにそれぞれ関連する複数の温度パラメータを測定し、制御装置12によって、上記温度パラメータに依存して乗員の快適性データTSを決定し、上記の快適性データを、空気温度、空気流量および空気分布の調節のために制御装置において利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内の暖房、換気、または状態調節を含む空調設備のための制御システムの領域に関する。
【背景技術】
【0002】
車内に位置する乗員によって選択された少なくとも1つのパラメータ(例えば、空気流温度、空気流量、または空気流分布)、および外部データ(例えば、内部温度/外部温度差、太陽熱流など)から、温度的快適性を自動的に形成する自動化制御システムを使用することは知られている。このシステムにおいては、快適性アルゴリズムが使用される。
【0003】
選択されたパラメータは、車内の空気熱力学的パラメータ(即ち、空気温度、空気流量、空気分布)を改善することによって、空調設備を調節できるアクチュエータの制御信号を、上記パラメータに依存して決定する制御装置に伝達される。
【0004】
公知のシステムには、乗車する者が、パラメータ(例えば、温度)を選択できるよう、車の制御システムに習熟していなければならないと云う欠点がある。更に、一般的に、乗員に適する温度を最終的に見いだす前に、模索を行わなければならない。
【0005】
上記欠点を回避するため、特許文献1には、赤外線センサで乗員の頭部の皮膚の温度を測定し、検知されたこの温度を、空気熱力学的パラメータの調節に利用する形式の、換気、暖房、または空調設備のための制御システムが記載されている。
【0006】
しかしながら、このような測定には、乗員が取る実際の温度感覚の決定が不明確であると云う欠点がある。これに関連して、頭部は、多数の異質ゾーンを有する。上記ゾーンの各々は、隣接ゾーンの熱的特性とは明らかに異なる熱的特性を有する。一方では、頭部のこれらの異なるゾーンの間には、大きな温度的差異が現れ、他方では、頭部の若干のゾーンは、周囲の温度変化または空気力学的変化により大きく応答する。更に、頭部の若干のゾーンの温度は、他のゾーンの温度よりも、乗員が取る温度感覚を良好に反映する。
【0007】
従って、乗員の温度感覚に対して最適な空気熱力学的快適性を得るため、乗員の若干の特殊ゾーンの温度を、正確に測定する必要がある。
【特許文献1】米国特許第5,172,856号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主たる課題は、技術的要素のアクチュエータ、または空気温度、空気流量および空気分布を調節できる制御機構に接続された出力を含む制御装置を含む、自動車の暖房、換気、または空調設備のための制御システムを提案することによって、少なくとも1名の乗員に与えられる空気力学的快適性を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る制御システムは、自動車の少なくとも1名の乗員の温度状態に関する量を測定できる少なくとも1つのセンサを含んでいる。上記センサによって行った測定は、空気温度、空気流量、および空気分布の調節のため、制御装置において利用される。更に、センサは、乗員の身体の各種部分の所定ゾーンにそれぞれ関連する複数の温度パラメータを測定でき、制御装置は、上記温度パラメータに依存して乗員の快適性データを決定できる。上記の快適性データは、空気温度、空気流量および空気分布の調節のために、制御装置において利用される。
【0010】
このようなシステムを使用すれば、空気熱力学的パラメータの選択は、乗員の温度状態に関する量の測定によって完全に自動化される。測定によって、空気流温度、空気流分布、または空気流量の選択のため、ユーザの作用に依拠することなく、生理学的情報が得られる。更に、上記システムが、乗員の各種部分の所定ゾーンに関連する複数の温度パラメータを測定できるので、少なくとも1名の乗員の温度感覚、暖状態または冷状態に最適に応答する空気流温度、空気流量および空気流分布の供給が保証される。
【0011】
第1実施例によると、乗員の各種部分の1つは、顔面、または少なくとも1つの腕である。
【0012】
第1変更例によると、制御装置は、更に、乗員の衣服の温度パラメータに依存して、乗員の快適性データを決定できる。
【0013】
上記第1実施例の他の変更例により、センサは、更に、車内の各種部分にそれぞれ関連する複数の温度パラメータを測定できる。車内部分の1つが、少なくとも1つの窓ガラス、または少なくとも1つの座席であれば有利である。センサが赤外線センサであれば好ましい。
【0014】
上記特徴にもとづき、乗員の身体外面、特に、顔面の温度且つまたキャビン(座席、窓ガラス……)の表面温度などの車環境に関する情報、および乗員の服装に関する情報を決定できる。
【0015】
他の好ましい実施例にもとづき、センサは、超音波センサである。この特徴にもとづき、乗員の衣服の状態を確認でき、温度および空気熱力学的パラメータの選択を適合させることができる。実際、超音波によって、超音波を反射する材料の性質を識別できる。従って、乗員の着用衣服のタイプ、および外部周辺に対するその絶縁性を決定できる。
【0016】
本発明の有利な特徴にもとづき、制御装置は、指令空気熱力学的バラメータを計算する快適性アルゴリズムにもとづくアーキテクチャを含み、制御装置は、指令空気熱力学的バラメータの計算のため、快適性アルゴリズムの入力として、アーキテクチャに必要な少なくとも1つの空気熱力学的バラメータを決定できる少なくとも1つの決定モジュールを含み、空気熱力学的バラメータは、乗員の温度状態のセンサによって行った測定から決定される。
【0017】
この特徴にもとづき、通常は公知の制御システムにおいて、インプレメンテーションされるよう、アーキテクチャを改質する必要はない。
【0018】
本発明は、快適性アルゴリズムのアーキテクチャの機能に必要なデータを供給することになる所要のモジュールにおいて実施される。換言すれば、空気熱力学的パラメータの決定モジュールは、1つまたは複数のパラメータ(温度、分布および/または流量)を決定する。これらのパラメータは、アーキテクチャがその機能のために必要とするパラメータおよび乗員が、制御システムにおいて、制御装置(回転ボタン、押しボタン、キー、カーソル……)に作動することによって、換気、暖房、または空調システムの制御表から、手操作で選択するパラメータである。かくして、乗員は、快適性アルゴリズムにもとづくアーキテクチャの決定モジュールのインプレメンテーションにもとづき、空気熱力学的パラメータの手動制御を行う必要なく、熱処理された空気流を受容する。
【0019】
実際のアーキテクチャにおいて、乗員の位置は、全く考慮されない。運動の検知にもとづきまたは皮膚の色の検知にもとづきまたは、更に、頭部/肩輪郭の存在の検知にもとづき、乗員の頭部の位置を検知する手段が存在する。これらの操作は、ステレオ観察手段または色調情報手段にもとづく。これは、車室内で実施するのが困難で経費のかかる操作である。
【0020】
更に、本発明の部分的特徴にもとづき、センサによって行った測定は、空間内に乗員を位置決めできる位置決定手段において利用される。
【0021】
この位置決定手段は、一般に、映像処理手段に含まれており、次いで、乗員の各種の身体ゾーンに関する位置を決定できる。すべてのステレオ観察手段がない場合には、乗員に向けられたセンサによる唯一つの温度測定が必要であるに過ぎない。位置決定手段が、空間内の乗員の顔の位置を決定できれば有利である。
【0022】
空間内の乗員の顔の位置を決定するのが、特に有利である。頭部は、一般に、車内周辺において最もアクセスし易い身体部分であり、乗員の温度状態の良好な決定を実現できる。
【0023】
更に、快適性モデルにもとづき機能するアルゴリズムによって、快適性データを決定すれば有利である。
【0024】
付加的特徴にもとづき、制御システムは、更に、内部温度/外部温度差、車内で測定された温度、観察された太陽熱負荷から選択した量を測定できる少なくとも1つのセンサを含んでいる。制御装置は、空気温度、空気分布、または空気流量の調節のため、上記データを利用できる。
【0025】
本発明は、更に、本発明に係る制御装置において実施される、自動車の暖房、換気、または空調設備の制御方法に関し、この方法は、下記の工程、即ち、
−自動車の乗員の温度状態に関する量の1つ、または複数の測定値を得る工程、
−乗員の温度状態に関する量、または車の各種センサの測定値に依存する空気温度、空気流量および空気分布の調節の空気熱力学的バラメータを計算する工程、
−制御機構のアクチュエータに接続された制御装置の出力に、空気温度、空気流量および空気分布を調節できる制御指示を供給する工程を含んでいる。
【0026】
好ましいインプレメンテーションにもとづき、本発明の方法の各工程は、コンピュータプログラムの指示によって決定される。従って、本発明は、更に、コンビュータプログラムにも関する。このプログラムは、制御装置において実施でき、本発明に係る方法の工程の実施に適合された指示を含む。
【0027】
このプログラムは、任意のプログラム言語を使用でき、ソースコード、オブジェクトコード、またはソースコードとオブジェクトコードとの間の中間コードの形、例えば、部分的にコンパイルされた形、または他の任意の所望の形である。
【0028】
本発明は、更に、制御装置によって読取ることができ、上記の如きコンピュータプログラムの指示を含む情報担体に関する。情報担体は、任意の実体またはプログラムを記憶できる装置であってよい。例えば、担体は、ROMの如き記憶手段、例えば、CD−ROM、マイクロエレクトロニクス回路のROM、メモリカードまたは、更に、磁気記録手段、例えば、ディスク(フロツピーディスク)またはハードディスクを含むことができる。他の方式にもとづき、情報担体は、プログラムを組込んだ集積回路であってよく、この回路は、本発明の方法を実施するのに適するか、その実施において使用するのに適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の他の特徴および利点は、制約を全く意味するものではない実施例を示す添付の図面を参照して行う以下の説明から、明らかとなると思う。
【0030】
図1は、自動車に設置された暖房、換気、または空調設備10のための制御システムを示す。
【0031】
このシステムは、設備10の各種の空気熱力学的パラメータ(例えば、空気温度、空気流量および空気分布)を調節できる技術要素アクチュエータ、または制御機構A1−A4、にそれぞれ接続された複数の出力S1−S4を含む少なくとも1つの制御装置12を含んでいる。
【0032】
制御装置12は、制御装置12に信号S(TMS)を供給できる少なくとも1つのセンサ13に接続されている。制御装置12において、信号S(TMS)は、設備10のアクチュエータA1−A4を制御するため制御装置12の各出力S1−S4に送信される制御信号SC1−SC4の定義モジュール14において処理される。
【0033】
センサ13から供給された信号S(TMS)は、自動車の乗員の温度状態に関する測定に対応する。温度状態は、乗員の各種身体部分の温度、および乗員の着用衣服の温度の全体を意味する。
【0034】
第1実施例によると、センサ13は、赤外線センサである。このタイプのセンサは、非接触センサと考えられ、即ち、対象と機械的に接触することなく、対象の温度を測定できる。赤外線カメラまたは赤外線像捕獲装置が有利である。即ち、信号S(TMS)は、乗員または運転者(一般に、“乗員”と呼ぶ)が位置する車ゾーンの一連の像または赤外線像を構成する。
【0035】
図2は、本発明に係る制御装置12の定義モジュール14(例えば、インプレメンテーション)を示す。信号S(TMS)の形で捕捉された1つまたは複数の像は、収集モジュール141に入力される。この収集モジュール141は、捕捉された1つまたは複数の像の各種ゾーンを検知できる像処理手段を含んでいる。特に、収集像において、高温ゾーン、大きい温度コントラストを有するゾーン、または低温ゾーンをマーキングする。
【0036】
収集モジュール141が、更に、捕捉像の特定された各種ゾーンの温度を精密に決定できれば有利である。
【0037】
かくして、収集モジュールの出力には、ゾーン、および関連温度のアイデンティフィケーションを含む、概ね、符号TMSで示したデータが得られる。これらデータは、空気熱力学的パラメータの決定モジュール142に送られる。
【0038】
本発明に係る換気、暖房、または空調設備において利用される空気熱力学的パラメータは、空気温度、空気流量、および空気分布である。図2においては、これらのパラメータを、それぞれ、T,DeおよびDiで示してある。
【0039】
しかしながら、更に、決定モジュール142によって、上記パラメータの1つまたは2つを決定するように構成できる。本発明は、更に、上記の3つのパラメータ以外に他のパラメータを決定する制御システムにも関する。
【0040】
決定モジュール142によって決定された空気熱力学的パラメータT,De,Diは、それぞれ、空気熱力学的パラメータT,De,Diに関連する指令値Tc,Dec,Dicの計算モジュール143の入力に供給される。計算モジュール143は、温度およびユーザによって選択された他のパラメータを受取る自動化制御システムのア−キテクチャモジュールであれば有利である。更に、ユーザの介在なく、温度およびパラメータを供給できる2つのモジュール141,142からなる発明も、システムの実質的改造を要する事なく、インプレメンテーションされる。
【0041】
指令空気熱力学的パラメータTc,Dec,Dicの決定と並行して、他の測定も実施できる。この測定は、乗員の温度状態には関せず、温度状態が進展する環境に関する。このため、当該センサは、収集モジュール144に信号S(PMS)を供給する。
【0042】
信号S(PMS)は、モジュール144において処理され、かくして、モジュール144の出力には、下記、即ち、
−観察された車内温度、
−観察された空気流量、
−観察された空気分布、
−空気流の方向、
−観察された湿度、
−観察された太陽熱負荷、
−観察された車外温度、
−内部温度/外部温度差、または、更に、環境を表現する他のデータを、少なくとも、例えば、個々にまたは組合せて含むデータPMSが供給される。
【0043】
特に、信号S(PMS)のうち空気流の方向のデータPMSに関する1つの信号は、空気流が車の乗員の頭部へ向いている場合、精密な2元情報であると云える。
【0044】
本発明の有利な特徴にもとづき、2元情報は、空気分配フラップの位置に依存して、開路された断続器によって供給される。
【0045】
図10aおよび図10bは、軸X(この場合、水平軸)のまわりに回転自在に設置された少なくとも1つの側部支持部材31によって側方へ支持されたフラップ30を含む空気方向決定システムを示す。図10aに示す実施例においては、支持部材31は、ミゾ31´を含んでいる。ミゾ31´は、押込自在、または抜出自在の接点32´を含む断続器32の開閉に役立つ。
【0046】
側部支持部材31の変位、特に、回転によって、接点32´およびミゾ31´を対向させることができる。かくして、接点32´は、図10bに示すように、解放される。かくして、側部支持部材31の位置に関する情報が伝達される。他の実施例として、接点32´の開閉手段としてカムを使用することが考えられる。更に、空気流の適切な各分配位置を特定するため、複数のミゾ31´を設けることができる。
【0047】
接点32´が解放される角度セクタは、車のジオメトリに依存して選定される。車の特殊なジオメトリについて、乗員の頭部が存在し得る位置は、統計的に知られる。
【0048】
かくして、頭部の統計的に知られた位置へ空気を送るためのフラップ角度は、容易に決定でき、断続器32に関して、支持部材31およびそのミゾ31´の位置決めに利用できる。
【0049】
図10aおよび図10bは、空気流分配システムについて回転自由度のみを示す。本発明は、更に、フラップが、垂直軸線のまわりにまたは各種の方向へ回転自在である形式の空気流分配システムにも関する。この場合、乗員の頭部の位置は、統計的に知られる。
【0050】
フラップの所定の角度セクタについて、断続器を開閉するための側部支持部材と組合せた簡単な断続器の使用の利点は、その低コストにある。
【0051】
他の実施例において、フラップの位置を決定するためポテンショメータを使用できる。これにより、ポテンショメータの使用にもとづき、フラップの角度位置をより良好に確認できる。しかしながら、この解決法は、経費がかかり、乗員の頭部の統計的位置が知られている限り、不要である。
【0052】
脈動空気流の方向、特に、乗員の頭部へ向く方向を確認することに関する情報は、若干の行動(例えば、空気流の減少、またはフラップを乗員の頭部へ向けた際に、フラップ30を介して流れる空気の温度の低下)を開始するのに十分である。
【0053】
乗員が移動する環境のデータPMSのグループ、および指令空気熱力学的パラメータTc,Dec,Dicのグループは、制御モジュール145の入力に供給される。制御モジュール145において、モジュール145の出力に快適性指令CCiを供給するため、データPMSを指令データTc,Dec,Dicと比較する。
【0054】
次いで、出力Si、特に、制御装置12の出力S1−S4に供給された命令信号SCiを計算できる計算モジュール146において、上記の快適性指令CCiを処理する。
【0055】
快適性指令CCiの例を、次に示す。
−脈動空気の温度。
−脈動空気の湿度。
−所定の空気流量。一般に、可能な最大空気流量の%の形で示す。
−車内の脈動空気の分布。一般に、空気を分配できる開口における空気分配%の形で示す。
−空気の再循環%。
【0056】
若干の制御信号SCiは、
−脈動空気中の温空気/冷空気の配分(この配分にもとづき脈動空気の温度が決定される)、
−各開口のレベルにおける車内の空気分布、
−外部空気/再循環空気の配分、
−空気流量
を制御する各フラップ、または制御機構の位置を直接に制御できる。
【0057】
制御信号SCiには、更に、設備10において使用される電動ベンチレータの各グループの速度を制御できる信号も含まれる。
【0058】
図3は、空気熱力学的バラメータの決定モジュール142の機能を詳細に示す。モジュール142において、乗員の温度状態に関する測定値TMSは、モデル化モジュール151の入力に供給され、測定値TMSは、快適性モデルにおいて、快適性データを構成し、乗員によって感じられる温度感覚TSをモデル化して決定するよう利用される。温度感覚TSは、マイクロコントローラ152の入力に供給され、マイクロコントローラの出力において、温度感覚TSに依存して、所定の空気熱力学的パラメータT,De,Diを計算する。
【0059】
次に、温度モデルの例を示す。この例の場合、計算された空気熱力学的データを、快適温度を計算できるアルゴリズム内に組込む。
【0060】
図4は、モデル化モジュール151によって定められた温度感覚TSを、例えば、図8aおよび図8bに示した尺度のゼロに等しい数値で示した目標温度感覚TStと比較できる比較器161を含むマイクロコントローラ152の機能を詳細に示す。目標温度感覚TStのゼロに等しい数値は、乗員の最適な快適状態に対応する。何故ならば、この場合、暑くも寒くもないからである。
【0061】
マイクロコントローラ152は、更に、比例積分手段162および飽和制御モジュール163を含み、この場合、飽和制御モジュールの出力には、乗員が目標温度感覚TStに対応する最適温度感覚にあるのに適する空気熱力学的データT,DeおよびDiが供給される。
【0062】
図5は、図2において説明した如き定義モジュールの実施例を示す。この場合、観察された空気熱力学的パラメータの測定センサから来る信号S(PMS)、および乗員の温度状態の生理学的測定のためのセンサから来る信号S(TMS)の収集のため、センサから来る信号の改質した同一の収集モジュール144´を使用する。この実施例の場合、本発明は、制御システムのアーキテクチャに組込まれる。従って、このような制御システムの要素を改質する必要がある。
【0063】
改質した収集モジュール144´の出力には、測定値TMSおよびPMSが供給され、改質した制御モジュール145´の入力に送られる。
【0064】
これと並行して、快適性の空気熱力学的パラメータT,De,Diの決定モジュール142´を、指令空気熱力学的パラメータTc,Dec,Dicを計算できる計算モジュール143と組合せて使用する。快適性アルゴリズムを使用する決定モジュール142´は、乗員に対して行った生理学的測定を考慮しない。
【0065】
指令空気熱力学的パラメータTc,Dec,Dic、および測定値TMS,PMSは、制御モジュール145´の入力に供給される。この制御モジュールは、快適性制御CCiの計算において、乗員の温度状態TMSに関する測定値を考慮できる。
【0066】
かくして、温度測定値は、指令空気熱力学的パラメータTc,Dec,Dicを無視して快適性制御CCiに影響を与える恐れがあり、快適性制御は、最終的に、乗員において行った測定にもとづき、指令に対応しない。従って、この場合、生理学的測定値TMSに依存して、指令空気熱力学的パラメータTc,Dec,Dicを修正することが対象となる。
【0067】
このため、制御モジュール145´は、快適性モデルを使用し、測定値TMSを考慮するのみならず、指令パラメータTc,Dec,Dicも考慮する。更に、この温度モデルは、更に、乗員の環境に関する測定値PMSを処理できるよう構成するのが有利である。
【0068】
従って、乗員の温度状態の考慮は、図2に関連して説明した実施例において行った考慮と同一である。次いで、計算モジュール146において、アクチュエータAiの制御のための指令信号SCiを計算する。
【0069】
図6および図7は、自動車の乗員の温度状態を赤外線センサで測定する例を示す。まず、空間内の乗員の位置決めを行い、次いで、空間内の顔面の全体的位置決めにもとづき、マークした顔面の各ゾーンの温度が低下することを考える。
【0070】
既述の如く、制御装置12は、センサ13にもとづいて得られた赤外線像の処理手段を有する。以下において、上記の像処理手段の機能を詳細に説明する。
【0071】
第1に、上記像処理手段は、空間内の乗員の顔面を位置決めできる。このため、センサ13によって像を得た乗員顔面の所定の若干のゾーンを特定する必要がある。かくして、乗員顔面の他の各ゾーンの温度を得ることができ、これらの温度は、乗員の温度的快適性の評価に使用される。
【0072】
有利なことには、本発明に係る像処理手段は、実質的に常に同一の温度特性を有する若干のゾーンがヒトの顔面に存在する事実を利用している。
【0073】
顔面の最高温のゾーン、または大きい温度コントラストを有するゾーンを考慮でき、これらのゾーンは、赤外線像によって容易に特定できると云う利点を有する。詳細には説明していない各種手段は、赤外線像のこのようなゾーンを位置決めするための像処理の分野の当業者に周知である。
【0074】
ヒトの顔面の特殊な事例において、顔の皮膚の温度の不均一性を利用する。特に、正常の環境温度条件において、顔面の若干のゾーンは、常に、周囲のゾーンよりも高温であると云う事実を利用する。
【0075】
図6aは、眼61dおよび61gの内側にある特殊な第1ゾーンを示す顔60aの略図である。涙が流れる箇所のレベルにあるこれらゾーン61dおよび61gは、常に、顔面の最高温のゾーンである。
【0076】
感熱カメラまたは感熱像センサによる測定によって、上記ゾーン61dおよび61gを容易に特定でき、従って、顔面60aの位置を決定できる。
【0077】
従って、良く知られているように、顔面の最高温の2つのゾーン61dおよび61gは、眼の内側面の鼻の両側にあり、上記ゾーンは、一般に、約4cm±1cmだけ相互に離れている。更に、上記ゾーンは、多くの場合、概ね±10゜を越えない角度誤差で水平線上にある。顔面60aの位置は、人体計測データに依拠して、上記特徴から空間内にあると決定される。
【0078】
図6bに示す如く、乗員は、メガネを着用している。従って、模式的に示した顔面60bは、メガネについてゾーンから得られたゾーンである。眼の内側に対応するゾーン61dおよび61gは、赤外線像において検知できない。その代わりに、顔面60bを構成する隣接ゾーンの温度よりも、常に低い温度のメガネのレンズに対応する2つのゾーン62dおよび62gを観察する。
【0079】
従って、赤外線像処理手段が、顔面の生理学的温度よりも低い温度で、かつ隣接ゾーンよりも常に低温のゾーン62dおよび62gを検知できれば十分である。
【0080】
この検知によって、メガネの2つのレンズの形状および位置を特定できる。観察された温度にもとづき、メガネであることを検証できる。次いで、乗員の顔面60bの位置を決定できる。
【0081】
顔面60bの最低温の2つのゾーン62dおよび62gおよび生理学的温度よりも低い温度が検知されれば、これらがメガネに対応すると云うことが知られる。これらは、一般に、垂直線に関して対称である。更に、これらが、メガネのレンズに、それぞれ対応してゾーン当り3cm2の最小表面を有し、これらが、一般に、4cm±1cmだけ相互に離れていると云うことが知られている。これらは、更に、水平線に対して、±10゜に位置する。かくして、顔面60bの位置は、人体測定データに依拠してゾーン62dおよび62gの位置から演繹できる。
【0082】
顔面の他の特殊なゾーンは、同じく、顔面の位置決めのために利用できる。例えば、図6cの模式的に示した顔面60cから知られる如く、赤外線像処理手段は、まさに鼻孔の下方に且つ唇のまわりにあるゾーン63dおよび63gを検知できる。これらのゾーンは、乗員の呼吸周波数に対応する概ね規則的な周波数で、交互に暖かくまたは冷たい。さて、間欠的温度測定システム(例えば、赤外線カメラ)は、上記ゾーン63dおよび63gを特定でき、空間内の乗員の顔面60cを位置決めできる。
【0083】
従って、赤外線カメラによって把握された像シーケンス上の乗員の呼吸周波数に対応して、20−40拍/minの範囲の温度脈動を観察することによって、上記ゾーン63dおよび63gを位置決めする。
【0084】
ゾーン63dおよび63gは、一般に、垂直線のまわりに対称であり、それぞれ、鼻孔に対応してゾーン当り1cm2の最大表面を有し、一般に、2cm±1cmだけ相互に離れている。これらゾーン63dおよび63gは、水平線に対して±10゜に位置する。
【0085】
頭部を位置決めできるゾーンは制限されるので、従って、頭部の位置を決定するには、非接触の温度測定が必要であり、十分である。何故ならば、自動車の環境において、乗員および運転者の顔面は、常に、座席の垂直中心面に調心されており、道路環境の観察のため、大半の時間において前方を見ているからである。
【0086】
空間内で乗員の顔面を位置決めすれば、顔面の各ゾーンの各種温度を確認できる。顔面のゾーンの生理学的温度群の確認にもとづき、乗員の快適性を良好に予見できると云うことは明らかである。これは、絶対温度、相対温度および温度変化の測定にもとづき、他方、顔面の各ゾーンの温度差にもとづく。従って、乗員の最大快適性を提供するため、顔面の最大数のゾーンにおいて温度データを決定する必要がある。
【0087】
図7は、複数のゾーン、即ち、額71,こめかみ72d,73g,眼のゾーン73d,73g,眼の内側にあるゾーン61d,61g、鼻74,頬75d,75g,唇76,顎77および首78に顔面70を分割する例を示す。
【0088】
上記各ゾーンの温度は、公知の態様で、顔面を位置決めした後、顔面70の赤外線像の処理から演繹される。本発明の他の実施例にもとづき、各ゾーンの温度は、顔面の位置決め工程を行うことなく、顔面70の赤外線像の処理から直ちに演繹される。
【0089】
次いで、本発明は、乗員の顔面の温度データ温度データ、および温度変化をパラメータとして使用する数式にもとづく快適性モデルを利用する。これらのモデルは、顔面70の観察を行った乗員の温度快適性を開示する実時間数値を与える。
【0090】
モデルの精度は、温度が知られているゾーンの数に依存する。
【0091】
次いで、鼻および頬のレベルにおいて観察された温度のみに依存して、簡単な快適性モデルを得る。
【0092】
このモデルは、非限定的例として示す下式を利用する。
【0093】
【数1】

【0094】
式中、T74は、鼻の測定温度であり、T75は、頬の測定温度である。
【0095】
上記の式は、温度感覚TSの尺度に対応して、数値−3〜+3の範囲にある結果を与える。
【0096】
上記段階は、以下に示す如く、極めて寒い感覚(数値−3に対応)から極めて暑い感覚(+3に対応)までの感覚を定義するものであり、数値は、感覚数値に対応し、中立はゼロである。
【0097】
【数2】

【0098】
図8aは、頬温度および鼻温度の積の平方根に対応して(T74*T751/2の関数として温度感覚TSを定義する曲線を示す。上記モデルは、極めて冷と極めて温との間の上記の尺度−3〜+3において、その感覚に依存して、被検対象の35名のパネルにおいて、70%を越える相関関係を観察できると云うことができる。
【0099】
このモデルは、顔面70の2つのゾーンの温度を利用する。しかしながら、ある種の顔面の構成にもとづき、頬よび鼻の温度を測定することはできない。例えば、頬の温度は、頬を被うヒゲにもとづき測定できない。
【0100】
かくして、快適性の式は、下式となる。
【0101】
【数3】

【0102】
図8bは、鼻温度T74に関して温度感覚TSを示すモデルの対応する曲線を示す。
このモデルを使用して、35名のパネルにおいて、60%を越える相関関係を観察した。
【0103】
図9は、快適性モデルを使用した完全処理における温度感覚TSの実時間推移を示す。点は、点が得られた当該時点において、被検者グループによって報告された温度感覚TSの平均値を示すものである。
【0104】
温度感覚TS、例えば、実被検者が感じた温度感覚とモデルによって予測された如き温度感覚TSとの間に、良好な相関関係が存在することが認められる。
【0105】
従って、図3を参照して、温度感覚TSは、例えば、−3〜+3の範囲にある数字である。数字−3は、乗員が感じる温度感覚が極めて冷であることを示すものであり、数字+3は、乗員が極めて温であることを示すものである。温度感覚TSは、マイクロコントローラ152の入力に供給され、マイクロコントローラの出力において、温度感覚TSに依存して、空気熱力学的パラメータT,De,Diを計算する。
【0106】
更に、温度感覚の計算に際して、乗員の温度敏感性を考慮することができる。この温度敏感性にもとづき、即ち、乗員が寒がりであるか、逆に、暑さを嫌う場合には、乗員に依存して、車の温度調節を更に精密に適合させることができる。
【0107】
現在まで、温度感覚の観点から統計的に中立の個体群を考慮しても、人間を熱的に特徴づけることはできなかった。さて、温度感覚は、人毎に異なると云える。実際、所与の環境において、通常は寒がりの者は、極めて寒く、他方、暑さに可成り敏感な者は、絶対的快適さを感じる。
【0108】
乗員の頭部を取囲む環境において、乗員が感じる温度感覚TSおよび平均的個体群が感じる温度感覚を認識すれば、乗員が、平均的個体群の温度敏感さを有するか、平均的個体群よりも暑さまたは寒さに敏感であるかを知ることができる。
【0109】
本発明に係るシステムを使用する場合、温度的環境パラメータは、乗員の顔面の皮膚の温度の測定とは無関係にアクセスできる。
【0110】
上記パラメータのうち、伝導熱流(例えば、座席温度による伝導熱流)、対流熱流(例えば、空気温度および空気速度による対流熱流)、輻射熱流(例えば、太陽、熱せられたボードまたは冷たい窓ガラスによる輻射熱流)を考慮する。
【0111】
乗員を囲む温度的環境の上記特徴から、統計的に中立(中庸)の者が感じる温度感覚を評価するため、ヒトの温度モデルを利用する。この温度感覚は、乗員の全身体のレベルにおいて、またはその頭部のレベルのみにおいて求めることができる。
【0112】
乗員について直接に測定した乗員頭部の温度感覚と、統計的に中立の者において観察された温度観察とを比較することによって、乗員の敏感性を知ることができる。
【0113】
乗員に適する温度敏感性のカテゴリを考慮することによって、温度感覚TSを調節できる。
【0114】
図11aおよび図11bは、乗員の温度敏感性を考慮するモデル化モジュールの2つの実施例151および151´を示す。
【0115】
図示の実施例の場合、生理学的センサは、例えば、乗員およびその環境の像TMSを与える赤外線センサである。この像TMSは、まず像処理モジュール171において処理するためのモデル化モジュール151の入力のデータである。鼻温度T74,額温度T71および頬温度T75を測定し、未修正の乗員頭部温度感覚TSOの計算モジュール172の入力に供給する。頭部レベルの温度感覚TSOは、詳述したアルゴリズムによって計算する。
【0116】
この計算と並行して、車内の温度環境センサが、環境データS(PMS)を供給し、上記環境データは、観察された環境条件において、乗員の身体、頭部および四肢のレベルにおいて予期される等価温度Teg(図11aの場合)、または等価熱流Feq(図11bの場合)を評価できる評価モジュール173において利用される。
【0117】
等価温度Teqの計算は、車内の環境のモデル化に依拠する。図11aの場合、等価温度Teqは、次いで、中立の個体群の生理学的知覚の決定モジュール174の入力に供給される。
【0118】
モジュール174は、標準温度感覚TSSを修正モジュール175の入力に供給する。この場合、修正モジュールは、乗員によって感じられた温度感覚TSOを、環境条件から中立の個体群について評価された標準温度感覚TSSと比較する。
【0119】
修正モジュール175は、この比較から、対象者が寒がりであるか、逆に、暑さに敏感であるかを演繹する。図5に示す如く、修正された温度感覚TSを計算し、マイクロコントローラ152の入力に供給する。
【0120】
図11bの実施例の場合には、等価熱流Feqは、温度モデル計算モジュール174´の入力に供給される。この温度モデル計算モジュール174´は、若干数のモデル化温度Tmodを計算するため熱流Feqに関するデータを利用する。各モデル化温度Tmodは、モデルの身体ゾーン(例えば、頭部、腹部、四肢)のための皮膚のモデル温度に対応する。
【0121】
この計算は、等価熱流Feqおよび校正モジュール177によって実施されたモデル校正Cから実施される。
【0122】
校正モジュール177は、入力に、測定された乗員の頭部温度、例えば、鼻温度T74,額温度T71および頬温度T75を受信し、出力から、温度モデル計算モジュール174´の入力に校正パラメータを供給する。この校正にもとづき、モジュール174´に含まれたモデルを、センサによって観察された対象者に適合させることができる。
【0123】
モジュール174´において、ヒトの生理学的モデルを使用することにより、乗員の温度状態を特徴づけるモデル化データTmodを生理学的知覚計算モジュール175´の入力に供給できる。これらのモデル化データTmodおよび既述の式にもとづいて決定した頭部温度感覚TSOの組合せによって、修正された温度感覚TSを決定できる。
【0124】
有利なことには、像処理モジュール171は、図11aおよび図11bに破線で示した如く、衣服温度Tvに関するデータを供給でき、これらのデータは、衣服の断熱特徴の決定モジュール176において利用できる。これらの衣服特徴は、評価モジュール173において、的確に利用できる。
【0125】
乗員の温度状態の確認に利用されるセンサ(特に、赤外線センサ)は、車の周辺の温度(例えば、キャビン(座席、窓ガラス……)、および乗員の衣服の表面温度)も測定できる。特に、衣服の表面温度は、簡単な温度センサ(例えば、自動車の乗員の温度状態に関する量の測定に使用されるセンサ)によって測定できる。
【0126】
乗員または運転者が着用した衣服の特徴は、上記の温度測定にもとづき知ることができる。皮膚温度Tpおよび衣服表面で観察された温度Tvを知れば、乗員が着用している衣服の温度抵抗を計算できる。
【0127】
衣服表面温度Tvが皮膚温度Tpに近い場合、この温度抵抗は僅かである。かくして、乗員が衣服をほとんど着用してないか、軽い衣服を着用していることを演繹できる。
【0128】
逆に、温度抵抗が大きい場合、これは、乗員が暖かい衣服または多数の衣服を着用していることを意味する。従って、衣服表面温度Tvは、衣服内で観察された空気温度Tacに近い。
【0129】
従って、非接触センサ(例えば、赤外線センサ)によって、衣服の外面温度Tvを測定することにより、乗員の着衣を決定できる。
【0130】
これについて、衣服温度Tvは、対流によって車内環境に依存し、輻射によって衣服が受ける放射線(特に、太陽光)に依存し、伝導によって衣服へ向く皮膚に依存すると云うことが分かる。
【0131】
更に、皮膚温度Tpは、ほぼ34℃に等しく、従って、この温度は、測定する必要がないと云うことが分かる。車内の空気温度Tacは、同じく、センサを使用することによって知られ、場合によっては、温度アルゴリズムを使用することによって知られる。従って、温度測定に依存して、下表に示した乗員の衣服の3つの事例を決定できる。
【0132】
【表1】

【0133】
上表にもとづき、測定された衣服表面温度Tvが、皮膚温度Tpに近い場合、対象者は、軽装と考えられる。測定された衣服表面温度Tvが、キャビンの空気温度Tacに近い場合、対象者は、暖衣着用と考えられる。
【0134】
衣服の温度抵抗特定モジュールに依拠するアルゴリズムを使用すると有利である。このアルゴリズムは、測定された衣服表面温度と、モデルとして記録された衣服温度との差を最小化する。上記温度抵抗は、例えば、上表に示した3つのクラスであってよい。
【0135】
乗員の衣服に関する上記情報は、等価データ評価モジュール173の入力に供給される。この情報は、温度感覚の計算において、従って、本発明に係るシステムの調節において、乗員の温度敏感性を考慮するのに役立つ。
【0136】
乗員の衣服に関して得られるデータは、車室内スクリーンに表示できる。乗員の温度状態に関するデータは、同じく、上記スクリーン上に記号で表示できる。このような表示によって、乗員の各身体部分について、温度感覚の各種レベルが提示される。
【0137】
この提示は、中立でなければならず、最大数の対象者によって理解されなければならない。かくして、5つの色(例えば、青、緑、橙、黄および赤)によって表した温度感覚の5つのレベルを、中立の態様で示したヒトの各種身体部分、特に、下肢、胸部、腕、頭部、および足について、各身体部分の温度感覚の特定のために使用できる。
【0138】
ある実施例の場合、スクリーンにマネキンを表示する。暖房、換気、または空調設備の制御システムによって測定された温度感覚に依存して、以上に列記した各種身体部分を区別し、異なる色に着色する。
【0139】
乗員の衣服の表示に関して、最大数の対象者によって理解される中立表示について、3つの衣服レベルを使用することが考えられる。実施例にもとづき、上半身は、任意の厚さの衣服で包んで示すことができる。
【0140】
超音波センサは、それ自体で、反射を行う材料の性質を区別できる。かくして、当事者が着用する衣服のタイプ、および外部環境に対するその断熱性が決定される。
【0141】
赤外線温度センサ、または超音波センサの場合、乗員の衣服状態が認知され、かくして、温度および関連する空気熱力学的パラメータの選択を適合させることができる。指令温度は、乗員が厚着の場合は、低下でき、乗員が軽装の場合は、上昇できる。
【0142】
以上本発明を、赤外線センサを使用する例について説明した。しかしながら、本発明において、他のタイプのセンサ(例えば、超音波センサ)を使用できる。
【0143】
更に付言するが、本発明の原理にもとづき、各種の利用を実現できる。特に、本発明にもとづき、各種のセンサ、特に、超音波センサ、および赤外線センサを使用し、これらセンサによって行った測定を、最終的に暖房、換気、または空調システムのアクチュエータへ送られる制御信号の定義に使用する形式の制御システムを実現できる。
【0144】
更に、制御システムのユーザが、生理学的データセンサを使用する完全自動モードと温度、または他の所定パラメータの選択の可能性を保持する部分自動モードとの間で選択し得ることも考えられる。
【0145】
本発明は、特に、自動車の暖房、換気、または空調設備に適用される。もちろん、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、例としてのみ適用されるものではなく、請求項の範囲内で、上述の各種実施例のすべての組合せにおいて、当業者が考え得る他の実施例を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明に係る暖房、換気、または空調設備の制御システムの略図である。
【図2】本発明に係る制御装置において、インプレメンテーションされる如き制御信号定義モジュールの図である。
【図3】本発明に係る空気熱力学的パラメータの決定モジュールの機能の詳細図である。
【図4】本発明に係る空気熱力学的パラメータの決定モジュールにインプレメンテーションされる如きマイクロコントローラの機能を示す図である。
【図5】本発明に係る制御装置にインプレメンテーションされる如き制御信号定義モジュールの実施例を示す図である。
【図6a】乗員の外面の位置決めのための外面像の略展開図である。
【図6b】乗員の外面の位置決めのための外面像の略展開図である。
【図6c】乗員の外面の位置決めのための外面像の略展開図である。
【図7】本発明に係るモデルに使用するため温度測定を行ったゾーンを定義するため本発明の必要にもとづき切欠した各種顔面ゾーンを示す図である。
【図8a】本発明において使用される快適性モデルを示す図である。
【図8b】本発明において使用される快適性モデルを示す図である。
【図9】上記モデルと乗員の実際の感覚との間の相関関係を示す図である。
【図10a】本発明およびその機能のために使用されるフラップの角度方向センサの実施例を示す図である。
【図10b】本発明およびその機能のために使用されるフラップの角度方向センサの実施例を示す図である。
【図11a】本発明に係る快適性データの計算に使用される乗員の温度感覚を決定できる本発明の実施例の略図である。
【図11b】本発明に係る快適性データの計算に使用される乗員の温度感覚を決定できる本発明の実施例の略図である。
【符号の説明】
【0147】
10 設備
12 制御装置
13 センサ
14 信号定義モジュール
30 フラップ
31 支持部材
31´ ミゾ
32 断続器
32´ 接点
60a,60b,60c,61d,61g,70 顔面ゾーン
62d,62g 窓ガラス
63d,63g 顔面ゾーン
71 額
72d,72g こめかみ
73d,73g 眼ゾーン
74 鼻
75d,75g 頬
76 唇
77 顎
78 首
141 収集モジュール
142,142´ 空気熱力学的パラメータ決定モジュール
143,146 計算モジュール
144,144´ 信号収集モジュール
145,145´ 制御モジュール
151,151´ モデル化モジュール
152 マイクロコントローラ
161 比較モジュール
162 部分積分手段
163 飽和制御モジュール
171 像処理モジュール
172 計算モジュール
173 評価モジュール
174 生理学的知覚決定モジュール
174´ 温度モデル計算モジュール
175 修正モジュール
176 断熱特性決定モジュール
177 校正モジュール
A1−A4 アクチュエータ
SCi 命令信号
CCi 快適性指令
Feq 等価熱流
PMS 温度関係データ
S1−S4 出力
SC1−SC4 制御信号
S(PMS),S(TMS) 信号
Tac 車内空気温度
T,De,Di 空気熱力学的パラメータ
Tc,Dec,Dic 指令空気熱力学的パラメータ
TMS 温度状態量
Tp 皮膚温度
Tv 衣服温度
71 額温度
74 鼻温度
75 頬温度
TS,TSO 温度感覚
TSt 目標温度感覚
TSS 標準温度感覚
mod モデル化温度
X 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気温度、空気流量、および空気分布を調節できる制御機構のアクチュエータ(A1−A4)に接続された出力(S1−S4)を含む制御装置(12)を備える、自動車の暖房、換気、または空調設備(10)の制御システムであって、
この制御システムは、更に、自動車の少なくとも1名の乗員の温度状態に関する量(TMS)を測定できる少なくとも1つのセンサ(13)を有し、センサ(13)によって行った測定(TMS)を、空気温度、空気流量、および空気分布の調節のため、制御装置(12)において利用する形式のものにおいて、センサ(13)は、乗員の身体の各種部分の所定ゾーンにそれぞれ関連する複数の温度パラメータを測定することができ、制御装置(12)は、上記温度パラメータに依存して乗員の快適性データ(TS)を決定することができ、上記の快適性データ(TS)は、空気温度、空気流量および空気分布の調節のために制御装置(12)において利用されることを特徴とする制御システム。
【請求項2】
乗員の各種部分の1つが、乗員の顔面ゾーン(60a,60b,60c,70)であることを特徴とする請求項1の制御システム。
【請求項3】
乗員の各種部分の1つが、少なくとも1つの腕であることを特徴とする請求項1または2の制御システム。
【請求項4】
センサが、更に、車内の各種部分にそれぞれ関連する複数の温度パラメータを測定できることを特徴とする請求項1−3の1つに記載の制御システム。
【請求項5】
車内部分の1つが、少なくとも1つの窓ガラスであることを特徴とする請求項4の制御システム。
【請求項6】
車内部分の1つが、少なくとも1つの座席であることを特徴とする請求項4または5の制御システム。
【請求項7】
センサ(13)が、赤外線センサであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項8】
センサ(13)が、超音波センサであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項9】
制御装置(12)が、指令空気熱力学的バラメータ(Tc,Dec,Dic)を計算する快適性アルゴリズムにもとづくアーキテクチャ(143,144,145,146)を含み、制御装置(12)が、指令空気熱力学的バラメータ(Tc,Dec,Dic)の計算のため快適性アルゴリズムの入力として、アーキテクチャ(143,144,145,146)に必要な少なくとも1つの空気熱力学的バラメータ(T,De,Di)を決定できる少なくとも1つの決定モジュール(142)を含み、空気熱力学的バラメータ(T,De,Di)が、乗員の温度状態のセンサ(13)によって行った測定から決定されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項10】
センサ(13)によって行われた測定が、空間内の乗員の位置を決定できる位置決定手段において利用されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項11】
位置決定手段が、空間内の乗員の顔面(60a,60b,60c,70)の位置を決定できることを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
制御装置(12)は、乗員の各種部分の所定ゾーンに関連する温度パラメータおよび車内で測定された環境パラメータに依存して乗員の温度感受性を決定でき、上記温度感受性は、快適性データ(TS)の決定に利用されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項13】
フラップの方向が所定の角度セクタ内にあるか否かを示すことができるフラップ方向情報を供給する2元断続器を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項14】
センサ(13)が、更に、乗員の着衣に関するデータを測定でき、制御装置(12)が、乗員の着衣のタイプを決定するため上記着衣データを利用でき、このシステムが、制御装置における快適性データ(TS)の決定、または空気温度、空気流量および空気分布の調節のために、上記着衣タイプを利用できることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項15】
乗員の着衣に関するデータは、乗員の皮膚温度Tp、車内の空気温度Tacに依存して決定した衣服温度Tvであることを特徴とする請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
快適性データ(TS)は、快適性モデルにもとづき機能するアルゴリズムによって決定されていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項17】
制御装置(12)は、更に、内部温度/外部温度差、車内で測定された温度、観察された太陽熱負荷から選択した量(PMS)を測定でき、制御装置(12)は、空気温度、空気流量および空気分布の調節のために、上記測定量(PMS)を利用できることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1つに記載のシステム。
【請求項18】
請求項1〜13のいずれか1つに記載の制御装置(12)において実施される、自動車の暖房、換気、または空調設備(10)の制御方法において、下記工程、即ち、
−自動車の乗員の温度状態に関する量(TMS)の1つまたは複数の測定値を得る工程、
−乗員の温度状態に関する量、または車の各種センサの測定値に依存する空気温度、空気流量、および空気分布の調節の空気熱力学的バラメータ(T,De,Di)を計算する工程、
−制御機構のアクチュエータ(A1−A4)に接続された制御装置の出力(S1−S4)に、空気温度、空気流量および空気分布を調節できる制御指示(12)を供給する工程を含み、更に、
−乗員の各種部分の所定ゾーンに関連する複数の温度パラメータを測定する工程と、
−上記温度パラメータに依存して制御装置によって乗員の快適性データ(TS)を決定し、空気温度、空気流量および空気分布の調節のため、制御装置(12)において上記快適性データ(TS)を利用する工程とを含む方法。
【請求項19】
請求項18に記載の制御方法の工程を実施するための指示を含むコンピュータプログラムにおいて、制御装置において、上記プログラムを実施することを特徴とするプログラム。
【請求項20】
請求項18に記載の制御方法の工程を実施するための指示を含むコンピュータプログラムが記録されており、コンピュータによって読取られる記録担体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図6c】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8a】
image rotate

【図8b】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10a】
image rotate

【図10b】
image rotate

【図11a】
image rotate

【図11b】
image rotate


【公開番号】特開2008−302924(P2008−302924A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147985(P2008−147985)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(505113632)ヴァレオ システム テルミク (81)
【Fターム(参考)】