説明

自動車の車体下部構造

【課題】 エンジンルームの下方を耐熱性を有するアンダーカバーで覆いながら、エンジンルーム内のメンテナンスを容易に行えるようにする。
【解決手段】 エンジンルームの下方を覆うアンダーカバー11の合成樹脂製の本体部12に形成した開口12bに着脱自在に固定される金属製のリッド13が、エンジンルーム内の高熱源である排気管15に対向するので、排気管15によるアンダーカバー11の損傷を防止できるだけでなく、アンダーカバー11全体を取り外すことなく、リッド13を取り外すだけでエンジンルーム内のメンテナンスを行うことができる。しかもリッド13は前端が本体部12の開口12bの縁に凹凸係合して他端がボルト17で固定されるので、その着脱が容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンルームの下方をアンダーカバーで覆う自動車の車体下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンルームの下方を覆う合成樹脂製のカバーパネル(アンダーカバー)の上面に多孔質金属板で構成した通気用のダクト部を設け、このダクト部をエンジンやトランスミッションの下面に対向させて耐熱性や遮音性を得るものが、下記特許文献1により公知である。
【特許文献1】特許第3154282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、自動車のエンジンルームに搭載したエンジンはオイルの交換やオイルフィルターの交換のようなメンテナンスが必要であるが、エンジンルームの下方がアンダーカバーで覆われていると、そのアンダーカバーを取り外さないと前記メンテナンスを行えないために利便性が損なわれる問題がある。
【0004】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、エンジンルームの下方を耐熱性を有するアンダーカバーで覆いながら、エンジンルーム内のメンテナンスを容易に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、エンジンルームの下方を覆うアンダーカバーを、合成樹脂製の本体部と、本体部に形成した開口に着脱自在に固定される金属製のリッドとで構成し、前記リッドはエンジンルーム内の高熱源に対向する部分に配置され、一端が前記開口の縁に凹凸係合して他端がボルトあるいはクリップで固定されることを特徴とする自動車の車体下部構造が提案される。
【0006】
尚、実施例の排気管15は本発明の高熱源に対応する。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の構成によれば、エンジンルームの下方を覆うアンダーカバーの合成樹脂製の本体部に形成した開口に着脱自在に固定される金属製のリッドがエンジンルーム内の高熱源に対向するので、高熱源によるアンダーカバーの本体部の損傷を防止できるだけでなく、アンダーカバー全体を取り外すことなく、リッドを取り外すだけでエンジンルーム内のメンテナンスを行うことができる。しかもリッドは一端が本体部の開口の縁に凹凸係合して他端がボルトあるいはクリップで固定されるので、石などが当たって変形しても着脱が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0009】
図1〜図9は本発明の一実施例を示すもので、図1はアンダーカバーの平面図、図2はアンダーカバーの斜視図、図3は図1の3−3線拡大断面図、図4は図1の4−4線拡大断面図、図5は図1の5−5線拡大断面図、図6は図1の6−6線拡大断面図、図7は図1の7−7線拡大断面図、図8は図1の8−8線拡大断面図、図9は図1の9−9線拡大断面図である。
【0010】
図1および図2に示すように、自動車のエンジンルームの下方を覆う概ね平坦なアンダーカバー11は、その合成樹脂製の本体部12の前寄りの左右両側に上向きに立ち上がる取付部12a,12aを備えており、それらの取付部12a,12aの上端が図示せぬ車体フレームに固定される。本体部12の左右の取付部12a,12aの間には着脱自在な金属製(実施例ではアルミニウム製)のリッド13が設けられ、本体部12の後端には金属製(実施例ではアルミニウム製)の遮熱パネル14が固定される。アンダーカバー11はエンジンルームの下面の空気の流れを整流して空力性能を向上させる。
【0011】
リッド13はエンジンルームに搭載されたエンジンEの下方に対応する位置に設けられる。またエンジンEの前面に接続されて車体後方に延びる高熱源としての排気管15はリッド13および遮断熱パネル14の上面に沿って配置されており、排気管15の熱による合成樹脂製の本体部12の損傷を防止している。
【0012】
アンダーカバー11の本体部12に形成した開口12bの前縁部には、図4に示すように、後方に向かって開口するスリット12cが形成されており、このスリット12cにリッド13の前縁部が後方から嵌合する。リッド13の前縁部を除く周囲の5カ所に、図3に示すように、断面U字状のナットホルダ16…が嵌合する。リッド13の外周部を下方から上向きに貫通したボルト17…は、本体部12の外周部およびナットホルダ16…を貫通し、ナットホルダ16…の上面に溶接したウエルドナット18…に締結される。これにより、リッド13は本体部12の開口12bを覆うように固定され、その着脱も容易である。またナットホルダ16…を用いてウエルドナット18…を支持したことにより、ボルト17…の締結力を分散して本体部12の損傷を防止することができる。
【0013】
エンジンEの下面にはオイルフィルター19およびオイルドレインプラグ20が設けられており、アンダーカバー11の本体部12からリッド13を取り外すとオイルフィルター19およびオイルドレインプラグ20が目視可能になるため、アンダーカバー11を取り外すことなくメンテナンスを行うことができる。
【0014】
図1、図2および図5に示すように、アンダーカバー11の本体部12の前縁近傍の3カ所に空気取り入れ口21…が形成される。各々の空気取り入れ口21は、概ね水平な上壁21aと、概ね水平で上壁21aよりも一段低くなった下壁21bと、上壁21aおよび下壁21bの左右両端を接続する概ね鉛直な左右の側壁21c,21cとで区画されており、車両の走行に伴って冷却用の外気をエンジンルームに導入する。空気取り入れ口21の上壁21aおよび下壁21bは、概ね鉛直方向に延びる複数枚(実施例では5枚)の平行四辺形状のフィン21d…で接続される。
【0015】
アンダーカバー11の空気取り入れ口21にフィン21d…を設けたことにより、雪路の走行中に雪が空気取り入れ口21から侵入するのを抑制するとともに、エンジンルームの内部で雪が成長するのを防止し、空気取り入れ口21から取り入れた空気によるエンジンルーム内の冷却性能を確保することができる。
【0016】
図1、図2および図6に示すように、アンダーカバー11の本体部12の前縁に左右一対の発泡ポリプロピレン製の緩衝ブロック22,22が接着等により固定される。各々の緩衝ブロック22の上面はラジエータ等を支持するバルクヘッド23の下面に当接する。アンダーカバー11の前部下面が傾斜した路面や路面の突起物に接触したとき、アンダーカバー11がバルクヘッド23のような車体構造物に直接固定されていると、車体構造物が損傷する可能性がある。しかしながら、アンダーカバー11と車体構造物との間に緩衝ブロック22,22を配置したことで、車体構造物やアンダーカバー11が受ける衝撃を低減止することができる。
【0017】
図1、図2および図7に示すように、遮熱パネル14の前縁および左右両側縁は、アンダーカバー11の本体部12の後縁に形成した切欠12eに複数のリベット24を介して固定される。
【0018】
図1、図2、図8および図9に示すように、アンダーカバー11の本体部12の後縁および遮熱パネル14の後縁には、斜め後上方に折り曲げられた気流ガイド部12d,14aが形成される。この気流ガイド部12d,14aでエンジンルームから流出する気流を上向きに偏向することで、アンダーカバー11の下面に沿って流れる気流が乱され難くなり、アンダーカバー11による整流効果を確保することができる。
【0019】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0020】
例えば、実施例ではアンダーカバー11の本体部12の開口12bにリッド13をボルト17…で固定しているが、それをクリップで固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】アンダーカバーの平面図
【図2】アンダーカバーの斜視図
【図3】図1の3−3線拡大断面図
【図4】図1の4−4線拡大断面図
【図5】図1の5−5線拡大断面図
【図6】図1の6−6線拡大断面図
【図7】図1の7−7線拡大断面図
【図8】図1の8−8線拡大断面図
【図9】図1の9−9線拡大断面図
【符号の説明】
【0022】
11 アンダーカバー
12 本体部
12b 開口
13 リッド
15 排気管(高熱源)
17 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームの下方を覆うアンダーカバー(11)を、合成樹脂製の本体部(12)と、本体部(12)に形成した開口(12b)に着脱自在に固定される金属製のリッド(13)とで構成し、前記リッド(13)はエンジンルーム内の高熱源(15)に対向する部分に配置され、一端が前記開口(12b)の縁に凹凸係合して他端がボルト(17)あるいはクリップで固定されることを特徴とする自動車の車体下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−327429(P2006−327429A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154509(P2005−154509)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】