説明

自動車ガラス用撥水性コーティング剤

【課題】簡易な処理により、優れた撥水機能と、紫外線および/または赤外線遮蔽機能とをガラス表面に付与し、かつ、耐久性に優れた被膜を形成することのできる自動車ガラス用撥水性コーティング剤を提供すること。
【解決手段】湿気硬化性シリコーンオリゴマーと、硬化触媒と、シリコーンオイル(好ましくは、反応性シリコーンオイル)、含フッ素シラン系化合物およびアルコキシシラン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の含ケイ素化合物と、紫外線吸収剤および/または赤外線吸収剤と、必要に応じて、その他の添加剤とを配合して、自動車ガラス用撥水性コーティング剤を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ガラス用撥水性コーティング剤に関し、詳しくは、自動車の前面窓、側面窓、後面窓、天窓などの窓ガラスに用いられる自動車ガラス用撥水性コーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車の前面窓、側面窓、後面窓、天窓などの窓ガラスに、紫外線や赤外線の遮蔽機能を付与するためには、例えば、紫外線や赤外線の吸収剤を含有するフィルムをガラスに貼り付ける処理や、例えば、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)やITO(インジウジムドープ酸化スズ)などの透明導電性金属酸化物を、ガラス表面に蒸着する処理が行われている。また、例えば、自動車の窓ガラスなどには、雨天時などの視界確保を目的として、撥水処理が施されている。
【0003】
特許文献1には、透明基材の片面に形成した撥水性薄膜と、該基板のもう一方の表面に蛍光増白剤および紫外線吸収剤および赤外線吸収剤を溶解添加してなる合成樹脂系プライマーコーティング溶液を塗布して加熱硬化し形成した紫外線赤外線吸収性薄膜と、該紫外線赤外線吸収性薄膜上にシロキサンプレポリマーが有機溶剤に溶解されてなるシリコーン系ハードコーティング溶液を塗布して加熱硬化し被覆形成した保護薄膜とを備えてなる撥水性紫外線赤外線吸収ガラスが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、赤外線吸収剤、カチオン性ポリマー、アニオン系界面活性剤、アルコール系溶剤、及び水を含有してなる光線遮蔽用ガラスコーティング剤が記載されている。
【特許文献1】特開平7−291667号公報
【特許文献2】特開2004−10416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、特許文献1に記載の撥水性紫外線赤外線吸収ガラスは、撥水性と、紫外線や赤外線の吸収性とを併せ持っているものの、透明基材の一方の面に撥水性薄膜を形成し、他方の面に紫外線赤外線吸収性薄膜を形成する必要があるため、例えば、窓ガラスの一方側からの処理だけでは、撥水性と、紫外線や赤外線の吸収性との双方の機能を同時に発揮させることができない。また、上記薄膜の形成には、加熱硬化処理などの、複雑で手間のかかる処理が必要であるため、例えば、自動車の窓ガラスのように、既に窓枠内に取り付けられているガラスに対して、エンドユーザーが上記処理をすることは困難である。
【0006】
一方、特許文献2に記載の光線遮蔽用ガラスコーティング剤を用いる場合には、エンドユーザーが、既に窓枠内に取り付けられている自動車の窓ガラスに対して処理をし、赤外線遮蔽機能を付与することが可能である。また、同文献の段落[0011]の記載によれば、上記光線遮蔽用ガラスコーティング剤により形成されるカチオン化ポリマーの皮膜によって、ガラスが曇りにくくなるという副次的効果が得られる。
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載の光線遮蔽用ガラスコーティング剤を用いた場合は、光線遮蔽機能と撥水機能とを、ともに優れたものとすることや、耐久性に優れた皮膜を形成することが困難である。
そこで、本発明の目的は、簡易な処理により、優れた撥水機能と、紫外線および/または赤外線遮蔽機能とをガラス表面に付与し、かつ、耐久性に優れた被膜を形成することのできる自動車ガラス用撥水性コーティング剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の自動車ガラス用撥水性コーティング剤は、湿気硬化性シリコーンオリゴマーと、硬化触媒と、シリコーンオイル、含フッ素シラン系化合物およびアルコキシシラン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の含ケイ素化合物と、紫外線吸収剤および/または赤外線吸収剤と、を含有することを特徴としている。
また、本発明の自動車ガラス用撥水性コーティング剤では、前記湿気硬化性シリコーンオリゴマーが、下記一般式(1)で示されるアルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物であることが好適である。
【0009】
【化1】

(一般式(1)中、R1は、水素原子、または、置換もしくは非置換の1価の炭化水素基を示し、R2は、アルキル基を示し、xは、0〜3の整数を示す。また、R1およびR2は、同一または互いに異なっていてもよい。)
また、本発明の自動車ガラス用撥水性コーティング剤では、前記シリコーンオイルが、下記一般式(2)で示される反応性シリコーンオイルであることが好適である。
【0010】
【化2】

(一般式(2)中、R3およびR4は、同一または互いに異なって、置換または非置換の1価の炭化水素基を示し、mは、0〜2の整数を示し、nは、0〜400の整数を示す。)
また、本発明の自動車ガラス用撥水性コーティング剤では、前記含フッ素シラン系化合物が、フルオロアルキルシランまたはフルオロポリエーテルシランであることが好適である。
【0011】
また、本発明の自動車ガラス用撥水性コーティング剤では、前記アルコキシシラン系化合物が、下記一般式(3)で示されることが好適である。
【0012】
【化3】

(一般式(3)中、R5は、アルコキシ基を示し、R6、R7およびR8は、同一または互いに異なって、アルキル基またはアルコキシ基を示す。)
また、本発明の自動車ガラス用撥水性コーティング剤は、前記含ケイ素化合物が、前記湿気硬化性シリコーンオリゴマー100重量部に対して、100重量部以下の割合で含有されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動車ガラス用撥水性コーティング剤によれば、簡易な処理により、優れた撥水機能と、紫外線および/または赤外線遮蔽機能とを、ガラスに付与することができ、例えば、エンドユーザーの処理により、あらかじめ窓枠内に取り付けられている自動車の窓ガラスに対し、優れた撥水機能と、紫外線および/または赤外線遮蔽機能とを付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の自動車ガラス用撥水性コーティング剤は、湿気硬化性シリコーンオリゴマーと、硬化触媒と、シリコーンオイル、含フッ素シラン系化合物およびアルコキシシラン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の含ケイ素化合物と、紫外線吸収剤および/または赤外線吸収剤と、を含有している。
本発明において、湿気硬化性シリコーンオリゴマーは、例えば、分子末端にアルコキシシリル基を有する低分子量のシリコーンアルコキシオリゴマーであって、後述する硬化触媒の存在下で、アルコキシシリル基の架橋により、常温で硬化するものが挙げられる。
【0015】
このような湿気硬化性シリコーンオリゴマーとしては、例えば、下記一般式(1)で示されるアルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物が挙げられる。
【0016】
【化4】

(一般式(1)中、R1は、水素原子、または、置換もしくは非置換の1価の炭化水素基を示し、R2は、アルキル基を示し、xは、0〜3の整数を示す。また、R1およびR2は、同一または互いに異なっていてもよい。)
1としては、例えば、水素原子、または、置換もしくは非置換の1価の炭化水素基が挙げられる。
【0017】
1において、非置換の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどの炭素数1〜18のアルキル基が挙げられる。
【0018】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどの炭素数3〜8のシクロアルキル基などが挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリルなどの炭素数6〜8のアリール基が挙げられる。
【0019】
アラルキル基としては、例えば、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、o、mまたはp−メチルベンジルなどの炭素数7または8のアラルキル基が挙げられる。
1において、置換の1価の炭化水素基としては、上記した非置換の1価の炭化水素基の水素原子を置換基で置換したものが挙げられ、このような置換基としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素、フッ素、臭素およびヨウ素など)、ヒドロキシル、シアノ、アミノ、カルボキシルなどが挙げられる。これらの置換基は、同一であっても、それぞれ異なっていてもよく、また、例えば、1〜3個置換していてもよい。
【0020】
1のうち、好ましくは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜8のアリール基が挙げられる。
2としては、例えば、アルキル基が挙げられ、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどの炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0021】
また、R1とR2とは、各々独立し、同一またはそれぞれ相異なっていてもよい。
nは、例えば、0〜3の整数を示し、好ましくは、1または2を示す。
上記アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物におけるアルコキシシラン化合物としては、具体的には、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、または、これらの混合物などが挙げられる。
【0022】
アルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物とは、上記したアルコキシシラン化合物に水を加えて、触媒の存在下で撹拌しながら昇温することにより、部分的に加水分解を生じさせるとともに、縮合させることにより得られるものである。
また、湿気硬化性シリコーンオリゴマーは、下記の平均組成式(4)で示すこともできる。
【0023】
【化5】

(平均組成式(4)中、R1は、水素原子、または、置換もしくは非置換の1価の炭化水素基を示し、R2は、アルキル基を示し、aは、その平均値で0.40から1.70までの範囲にある値を示し、bは、平均組成式(4)で示される化合物中でのOR2基の含有比率が、その平均値で5重量%以上となる値を示す。)
平均組成式(4)中、R1およびR2としては、上記した一般式(1)中のR1およびR2と同様のものが挙げられる。
【0024】
また、本発明において、湿気硬化性シリコーンオリゴマーの動粘度は、例えば、0.1〜200mm2/s〈25℃〉以下であり、好ましくは、0.5〜100mm2/s〈25℃〉以下である。湿気硬化性シリコーンオリゴマーの動粘度が、200mm2/s〈25℃〉を上回ると、均一な被膜が得られなくなる場合がある。
湿気硬化性シリコーンオリゴマーは、市販品として入手可能であり、市販品としては、例えば、品名「X−40−2308」、品名「KR−500」、品名「KC−89S」、品名「KR−217」(以上、信越化学工業(株)製)などが挙げられる。これら湿気硬化性シリコーンオリゴマーは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0025】
湿気硬化性シリコーンオリゴマーの配合量は、本発明の自動車ガラス用撥水性コーティング剤の全重量に対して、好ましくは、0.1〜50重量%、より好ましくは、1〜30重量%である。湿気硬化性シリコーンオリゴマーが、自動車ガラス用撥水性コーティング剤の全重量に対して、1〜30重量%の範囲内で含有されると、ガラス表面に対し極めて優れた撥水機能と、紫外線および/または赤外線遮蔽機能を付与することができ、さらに、その機能を、長期間持続させることができる。一方、0.1重量%を下回ると、均一な被膜が得られなくなる場合があり、50重量部%上回ると、被膜形成においては何ら問題を生じないが、被膜を形成する際の作業性が低下する場合や、被膜の仕上がりにムラが生じる場合がある。
【0026】
本発明において、硬化触媒は、湿気硬化性シリコーンオリゴマーを硬化させ得る触媒であれば、特に制限されないが、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクチレート、ジブチル錫ジラウレートなどの有機錫化合物、例えば、アルミニウムトリス(アセチルアセトン)、アルミニウムトリス(アセトアセテートエチル)、アルミニウムジイソプロポキシ(アセトアセテートエチル)などの有機アルミニウム化合物、例えば、ジルコニウム(アセチルアセトン)、ジルコニウムトリス(アセチルアセトン)、ジルコニウムテトラキス(エチレングリコールモノメチルエーテル)、ジルコニウムテトラキス(エチレングリコールモノエチルエーテル)、ジルコニウムテトラキス(エチレングリコールモノブチルエーテル)などの有機ジルコニウム化合物、例えば、チタニウムテトラキス(エチレングリコールモノメチルエーテル)、チタニウムテトラキス(エチレングリコールモノエチルエーテル)、チタニウムテトラキス(エチレングリコールモノブチルエーテル)などの有機チタニウム化合物などの有機金属化合物、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸などの鉱酸類や、ギ酸、酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸類などの酸、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基や、エチレンジアミン、アルカノールアミンなどの有機塩基などのアルカリ、例えば、アミノ変性シリコーン、アミノシラン、シラザン、アミン類などのアミノ化合物などが挙げられる。これらのうち、好ましくは、有機錫化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタニウム化合物、鉱酸類が挙げられ、より好ましくは、有機チタニウム化合物が挙げられる。
【0027】
また、硬化触媒は、市販品として入手可能であり、例えば、品名「DX−9740」、品名「D−20」、品名「DX−175」(以上、信越化学工業(株)製)などが挙げられる。これら硬化触媒は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
硬化触媒の配合量は、湿気硬化性シリコーンオリゴマー100重量部に対して、好ましくは、0.1〜15重量部であり、より好ましくは、3〜10重量部である。
【0028】
また、本発明において、湿気硬化性シリコーンオリゴマーは、予め硬化触媒が含有されている湿気硬化性シリコーンオリゴマーの市販品を用いてもよい。そのような市販品としては、例えば、品名「KR−400」(硬化触媒DX−9740;10重量%含有、信越化学工業(株)製)、品名「KR−401」(硬化触媒DX−175;5重量%含有、信越化学工業(株)製)などが用いられる。これらの硬化触媒を予め含有した湿気硬化性シリコーンオリゴマーは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0029】
本発明において、含ケイ素化合物としては、シリコーンオイル、含フッ素シラン系化合物およびアルコキシシラン系化合物が挙げられ、これらは単独で、または、2種以上混合して用いられる。
上記含ケイ素化合物のうち、シリコーンオイルとしては、例えば、反応性シリコーンオイル、非反応性シリコーンオイルが挙げられ、なかでも、好ましくは、反応性シリコーンオイルが挙げられる。
【0030】
反応性シリコーンオイルは、シリコーンオイルの側鎖および/または末端(片末端、両末端)に、反応性の有機基(例えば、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、メルカプト基など。)を有する変性シリコーンオイルであって、なかでも、好ましくは、例えば、分子の片末端に少なくとも1つのアルコキシ基を有する、下記一般式(2)で示されるシリコーンオイルが挙げられる。
【0031】
【化6】

(一般式(2)中、R3およびR4は、同一または互いに異なって、置換または非置換の1価の炭化水素基を示し、mは、0〜2の整数を示し、nは、0〜400の整数を示す。)
上記一般式(2)に示す反応性シリコーンオイルにおいて、R3およびR4は、互いに同一の基であってもよく、互いに異なる基であってもよい。R3およびR4としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、フェニル基などの置換または非置換の1価の炭化水素基が挙げられる。なかでも、R3としては、好ましくは、メチル基が挙げられ、R4としては、好ましくは、メチル基またはエチル基が挙げられ、より好ましくは、メチル基が挙げられる。
【0032】
また、上記一般式(2)中のnは、好ましくは、5〜250の整数である。
また、反応性シリコーンオイルは、市販品として入手可能であり、市販品としては、例えば、品名「X−24−9377」(信越化学工業(株)製)、品名「X−24−9011」(信越化学工業(株)製)などが挙げられる。これら反応性シリコーンオイルは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0033】
反応性シリコーンオイルの動粘度は、例えば、好ましくは、1〜1000mm2/s(25℃)であり、より好ましくは、2〜800mm2/s(25℃)である。1000mm2/s(25℃)を上回ると、均一な被膜が得られなくなる場合がある。
シリコーンオイルの配合量は、上記湿気硬化性シリコーンオリゴマー100重量部に対して、好ましくは、100重量部以下、より好ましくは、50重量部以下である。シリコーンオイルの配合量が100重量部を上回ると、被膜形成や耐久性に不具合が生じる場合がある。
【0034】
上記含ケイ素化合物のうち、含フッ素シラン系化合物としては、フルオロアルキルシランおよびフルオロポリエーテルシランが挙げられ、これらは単独で、または、2種以上混合して用いられる。
フルオロアルキルシランとしては、これに限定されないが、例えば、下記一般式(5)で示される含フッ素アルコキシシラン系化合物が挙げられる。
【0035】
【化7】

(一般式(5)中、R9は、アルキル基またはアルコキシ基を示し、R10およびR11は、同一または互いに異なって、アルコキシ基を示し、xは、0〜10の整数を示し、yは、0〜2の整数を示す。)
上記一般式(5)中のR9で示されるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチルなどのアルキル基が挙げられる。また、上記一般式(5)中のR9、R10およびR11で示されるアルコキシ基は、同一または互いに異なる置換基であって、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシなどのアルコキシ基が挙げられる。なかでも、好ましくは、R9、R10およびR11が、ともにメトキシである。
【0036】
含フッ素アルコキシシラン系化合物は、市販品として入手可能であり、市販品としては、例えば、パーフルオロヘキシルエチルトリメトキシシランが挙げられる。具体的には、例えば、CF3(CF25(CH22Si(OCH33(品名「TSL8257」、GE東芝シリコーン(株)製)、CF3(CF27(CH22Si(CH3)(OCH32(品名「TSL8231」、GE東芝シリコーン(株)製)、CF3(CF27(CH22Si(OCH33(品名「TSL8233」、GE東芝シリコーン(株)製または品名「KBM7803」、信越化学工業(株)製)、CF3(CH22Si(OCH33(品名「TSL8282」、GE東芝シリコーン(株)製、品名「AY43−013」、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製または品名「KBM7103」、信越化学工業(株)製)、CF3(CF23(CH22Si(OC253(品名「AY43−154E」、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、CF3(CF27(CH22Si(OC253(品名「AY43−158E」、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)などが挙げられる。これら含フッ素シラン系化合物は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0037】
フルオロポリエーテルシランとしては、例えば、パーフルオロポリエーテル含有シラン化合物が挙げられる。
含フッ素シラン系化合物の配合量は、上記湿気硬化性シリコーンオリゴマー100重量部に対して、好ましくは、100重量部以下、より好ましくは、50重量部以下である。含フッ素シラン系化合物の配合量が100重量部を上回ると、被膜形成や耐久性に不具合が生じる場合がある。
【0038】
上記含ケイ素化合物のうち、アルコキシシラン系化合物は、アルコキシ基を有するシラン系化合物であって、なかでも、好ましくは、下記一般式(3)で示される化合物、すなわち、下記式(3)で示されるモノアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシランまたはテトラアルコキシシランが挙げられる。
【0039】
【化8】

(一般式(3)中、R5は、アルコキシ基を示し、R6、R7およびR8は、同一または互いに異なって、アルキル基またはアルコキシ基を示す。)
上記一般式(3)中のR5、R6、R7およびR8で示されるアルコキシ基や、R6、R7およびR8で示されるアルキル基としては、上記したのと同様の基が挙げられる。
【0040】
アルコキシシラン系化合物は、市販品として入手可能であり、市販品としては、例えば、CH3(CH25Si(OCH33(品名「Z−6582」、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、CH3(CH27Si(OC253(品名「Z−6341」、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)などが挙げられる。これらアルコキシシラン系化合物は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0041】
アルコキシシラン系化合物の配合量は、上記湿気硬化性シリコーンオリゴマー100重量部に対して、好ましくは、100重量部以下、より好ましくは、50重量部以下である。アルコキシシラン系化合物の含有量が100重量部を上回ると、被膜形成や耐久性に不具合が生じる場合がある。
また、本発明において、含ケイ素化合物全体としての配合量は、上記湿気硬化性シリコーンオリゴマー100重量部に対して、好ましくは、100重量部以下、より好ましくは、0.1〜100重量部、さらに好ましくは、0.1〜50重量部である。含ケイ素化合物が、その総量として、上記湿気硬化性シリコーンオリゴマー100重量部に対し、上記範囲内で含有されると、ガラス表面に極めて優れた撥水機能を付与することができ、さらに、その機能を、長期間持続させることができる。一方で、含ケイ素化合物の配合量が、その総量として、0.1重量部を下回ると、撥水性に優れた被膜を形成できなくなる場合があり、100重量部を上回ると、被膜形成や耐久性に不具合が生じる場合がある。
【0042】
本発明において、紫外線吸収剤と赤外線吸収剤は、少なくともいずれか一方が配合される。また、紫外線吸収剤と赤外線吸収剤との両方が配合されていてもよい。
紫外線吸収剤は、概ね、300〜400nmの波長の光線を有効に吸収し得るものであればよく、これに限定されないが、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系化合物、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−4,4−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物、例えば、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートなどのシアノアクリレート系化合物、例えば、フェニルサリシレート、p−tertブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレートなどのサリチル酸系化合物、例えば、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイドなどの金属フェノレート系などが挙げられる。なかでも、紫外線吸収剤は、後述する溶剤に溶解するか、分散され易いものであることが好ましく、具体的には、使用する溶剤に合わせて選択されるが、例えば、好ましくは、ベンゾトリアゾール系化合物や、ベンゾフェノン系化合物が挙げられる。これら紫外線吸収剤は、単独で、または、2種以上混合して用いることができる。
【0043】
紫外線吸収剤の配合量は、上記湿気硬化性シリコーンオリゴマー100重量部に対して、好ましくは、50重量部以下、より好ましくは、0.1〜50重量部、さらに好ましくは、0.1〜20重量部である。0.1重量部を下回ると、紫外線を吸収する効果が得られない場合があり、50重量部を上回ると、塗膜の物性が低下する場合があり、コスト的にも不利である。
【0044】
赤外線吸収剤は、概ね、750〜2500nmの波長の光線を有効に吸収し得るものであればよく、これに限定されないが、例えば、酸化スズ、ATO、ITO、酸化バナジウム(VO)などの金属酸化物や、例えば、アミニウム系化合物、イモニウム系化合物、ポリメチン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフタロシアニン系化合物などが挙げられる。なかでも、赤外線吸収剤は、後述する溶剤に溶解するか、分散され易いものであることが好ましく、具体的には、使用する溶剤に合わせて選択されるが、例えば、好ましくは、アミニウム系化合物などを単独で用いるか、上記金属酸化物と併用して用いることが好ましい。
【0045】
赤外線吸収剤の配合量は、上記湿気硬化性シリコーンオリゴマー100重量部に対して、好ましくは、30重量部以下、より好ましくは、0.1〜30重量部、さらに好ましくは、0.1〜20重量部である。0.1重量部を下回ると、赤外線を吸収する効果が得られない場合があり、20重量部を上回ると、塗膜の物性が低下する場合があり、コスト的にも不利である。
【0046】
また、本発明において、紫外線吸収剤および赤外線吸収剤全体としての配合量は、上記湿気硬化性シリコーンオリゴマー100重量部に対して、好ましくは、80重量部以下、より好ましくは、0.1〜80重量部、さらに好ましくは、0.2〜40重量部である。80重量部を上回ると、塗膜の物性が低下する場合があり、コスト的にも不利である。
そして、本発明の自動車ガラス用撥水性コーティング剤は、上記した成分を溶剤などに配合することにより、適宜調製することができる。
【0047】
溶剤としては、湿気硬化性シリコーンオリゴマーと、硬化触媒と、含ケイ素化合物とを溶解または分散できるものであればよい。それゆえ、特に制限されないが、例えば、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶剤、例えば、ミネラルスピリットなどの石油系溶剤、例えば、ヘキサン、ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0048】
溶剤の配合割合は、本発明の自動車ガラス用撥水性コーティング剤の全重量に対して、各成分が配合された残余の重量部でよい。それゆえ、これに限定されないが、例えば、自動車ガラス用撥水性コーティング剤の全重量に対し、25〜99重量%、好ましくは、75〜98重量%である。
また、本発明の自動車ガラス用撥水性コーティング剤には、その他に、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、例えば、粘度調整剤、老化防止剤、香料、界面活性剤、シリコーンパウダーなどの添加剤を、必要に応じて適宜、配合することができる。添加剤として、シリコーンパウダーを用いると、自動車ガラス用撥水性コーティング剤の塗布後の拭き取りを効率よく行うことができる。
【0049】
そして、このようにして得られた本発明の自動車ガラス用撥水性コーティング剤の用途は、特に制限されないが、例えば、家屋、ビルディングなどの建築物や自動車、電車などの車両に設けられている窓ガラスに対し、紫外線や赤外線の遮蔽機能と撥水機能とを付与するためのコーティング剤として用いられる。
本発明の自動車ガラス用撥水性コーティング剤は、例えば、効果処理などの手間をかけることなく、作業効率よく、ガラス面に塗布することができる。ガラス面に対する塗布は、特に制限されず、例えば、本発明の自動車ガラス用撥水性コーティング剤をスポンジに含浸させて、そのスポンジで、ガラス面を擦るなど、適宜公知の方法が用いられる。なお、塗布方法は、例えば、刷毛塗り、スプレーコーティングなど、その目的および用途により適宜選択することができる。なお、塗布後は所定時間後に、必要により拭き取ればよい。
【0050】
このようにして、ガラス面に塗布された自動車ガラス用撥水性コーティング剤は、溶剤成分が揮発するに伴って、硬化触媒および空気中の水分が作用して湿気硬化性シリコーンオリゴマーが硬化し、ガラス面に被膜が形成される。そして、この被膜が、ガラス面に、優れた撥水機能と、紫外線および/または赤外線遮蔽機能を付与するコーティングの役割を果たす。しかも、湿気硬化性シリコーンオリゴマーがガラス面において硬化することで被膜を形成しつつ、その湿気硬化性シリコーンオリゴマーのアルコキシ基と含ケイ素化合物のアルコキシ基とが結合するために、含ケイ素化合物が経時的に消失することなく、含ケイ素化合物が湿気硬化性シリコーンオリゴマーを介して、ガラス面に定着し、ガラス面に良好な撥水性および紫外線および/または赤外線の遮蔽性を与える。そのため、この被膜は、塗布直後、洗浄後、さらには、長期にわたる耐久後においても、ガラス面に良好な撥水機能と、紫外線および/または赤外線の遮蔽機能とを付与することができる。
【0051】
なお、本発明の自動車ガラス用撥水性コーティング剤は、家屋、ビルディングなどの建築物や自動車、電車などの車両に設けられている窓ガラスだけでなく、例えば、車両のバックミラー、洗面所、浴室などの鏡、その他、家庭用または産業用の各種製品に対して、広く用いることができる。
【実施例】
【0052】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明を説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。
実施例および比較例で使用した成分を、下記に示す。
・湿気硬化性シリコーンオリゴマー:動粘度25mm2/s(25℃)、上記平均組成式(4)のR1がメチル基、上記平均組成式(4)のアルコキシ基(OR2)の含有量が28重量%、商品名「KR−500」、信越化学工業(株)製。
・反応性シリコーンオイル:動粘度6mm2/s(25℃)、メトキシタイプ、品名「X−24−9377」、信越化学工業(株)製。
・含フッ素シラン系化合物(フルオロアルキルシラン):パーフルオロヘキシルエチルトリメトキシシラン(CF3(CF25(CH22Si(OCH33)、品名「TSL8257」、GE東芝シリコーン(株)製。
・アルコキシシラン系化合物:CH3(CH25Si(OCH33、品名「Z−6582」、東レ・ダウコーニング社製。
・紫外線吸収剤:ベンゾフェノン系化合物、品名「ケミソーブ111」、ケミプロ化成(株)製。
・赤外線吸収剤:アミニウム系化合物、品名「KAYASORB IRG−168」、日本化薬(株)製。
【0053】
実施例1
湿気硬化性シリコーンオリゴマー15重量部と、硬化触媒0.7重量部と、反応性シリコーンオイル1重量部と、紫外線吸収剤3重量部と、赤外線吸収剤2重量部とを、イソプロピルアルコール78.3重量部に対して、順次配合し、攪拌しながら完全に溶解させて、自動車ガラス用撥水性コーティング剤を得た。
【0054】
実施例2
湿気硬化性シリコーンオリゴマー15重量部と、硬化触媒0.7重量部と、含フッ素シラン系化合物1重量部と、紫外線吸収剤3重量部と、赤外線吸収剤2重量部とを、イソプロピルアルコール78.3重量部に対して、順次配合し、攪拌しながら完全に溶解させて、自動車ガラス用撥水性コーティング剤を得た。
【0055】
実施例3
湿気硬化性シリコーンオリゴマー15重量部と、硬化触媒0.7重量部と、アルコキシシラン系化合物1重量部と、紫外線吸収剤3重量部と、赤外線吸収剤2重量部とを、イソプロピルアルコール78.3重量部に対して、順次配合し、攪拌しながら完全に溶解させて、自動車ガラス用撥水性コーティング剤を得た。
【0056】
実施例4
湿気硬化性シリコーンオリゴマー15重量部と、硬化触媒1重量部と、反応性シリコーンオイル1重量部と、含フッ素シラン系化合物1重量部と、紫外線吸収剤3重量部と、赤外線吸収剤2重量部とを、イソプロピルアルコール77重量部に対して、順次配合し、攪拌しながら完全に溶解させて、自動車ガラス用撥水性コーティング剤を得た。
【0057】
実施例5
湿気硬化性シリコーンオリゴマー10重量部と、硬化触媒0.5重量部と、反応性シリコーンオイル10重量部と、紫外線吸収剤3重量部と、赤外線吸収剤2重量部とを、イソプロピルアルコール74.5重量部に対して、順次配合し、攪拌しながら完全に溶解させて、自動車ガラス用撥水性コーティング剤を得た。
【0058】
実施例6
湿気硬化性シリコーンオリゴマー15重量部と、硬化触媒0.7重量部と、反応性シリコーンオイル1重量部と、紫外線吸収剤3重量部とを、イソプロピルアルコール80.3重量部に対して、順次配合し、攪拌しながら完全に溶解させて、自動車ガラス用撥水性コーティング剤を得た。
【0059】
実施例7
湿気硬化性シリコーンオリゴマー15重量部と、硬化触媒0.7重量部と、反応性シリコーンオイル1重量部と、赤外線吸収剤2重量部とを、イソプロピルアルコール81.3重量部に対して、順次配合し、攪拌しながら完全に溶解させて、自動車ガラス用撥水性コーティング剤を得た。
【0060】
実施例8
湿気硬化性シリコーンオリゴマー10重量部と、硬化触媒0.7重量部と、反応性シリコーンオイル15重量部と、紫外線吸収剤3重量部と、赤外線吸収剤2重量部とを、イソプロピルアルコール69.3重量部に対して、順次配合し、攪拌しながら完全に溶解させて、自動車ガラス用撥水性コーティング剤を得た。
【0061】
比較例1
湿気硬化性シリコーンオリゴマー15重量部と、硬化触媒0.7重量部と、紫外線吸収剤3重量部と、赤外線吸収剤2重量部とを、イソプロピルアルコール79.3重量部に対して、順次配合し、攪拌しながら完全に溶解させて、自動車ガラス用撥水性コーティング剤を得た。
【0062】
比較例2
湿気硬化性シリコーンオリゴマー10重量部と、反応性シリコーンオイル0.5重量部と、アルコキシシラン系化合物0.5重量部と、紫外線吸収剤3重量部と、赤外線吸収剤2重量部とを、イソプロピルアルコール84重量部に対して、順次配合し、攪拌しながら完全に溶解させて、自動車ガラス用撥水性コーティング剤を得た。
【0063】
比較例3
湿気硬化性シリコーンオリゴマー10重量部と、含フッ素シラン系化合物0.5重量部と、紫外線吸収剤3重量部と、赤外線吸収剤2重量部とを、イソプロピルアルコール84.5重量部に対して、順次配合し、攪拌しながら完全に溶解させて、自動車ガラス用撥水性コーティング剤を得た。
【0064】
比較例4
湿気硬化性シリコーンオリゴマー15重量部と、アルコキシシラン系化合物1重量部と、紫外線吸収剤3重量部と、赤外線吸収剤2重量部とを、イソプロピルアルコール79重量部に対して、順次配合し、攪拌しながら完全に溶解させて、自動車ガラス用撥水性コーティング剤を得た。
【0065】
物性評価試験
4×3cmにカットしたパフ付きウレタンスポンジに、各実施例および各比較例の自動車ガラス用撥水性コーティング剤1gを垂らし、このウレタンスポンジでガラス板の表面を擦ることにより、ガラス板の表面に、自動車ガラス用撥水性コーティング剤を均一に塗布した。
【0066】
塗布後、3分間乾燥させて、別のパフ付きウレタンスポンジを用いて、ガラス板の処理面を軽く拭き取り、さらに、その後3日間乾燥させて、試験片を得た。
次に、こうして得られた試験片を用いて、撥水性、紫外線および赤外線遮蔽性、ならびに、耐久性の各項目について評価した。その結果を表1に示す。
・撥水性
接触角測定装置(型式「FTA125」、FTA社製)を使用し、試験片上に滴下された水4μLについて、室温(22℃)での接触角(°)を測定して、下記の基準で、撥水性を評価した。
◎:96°以上
○:90°以上96°未満
×:90°未満
・紫外線および赤外線遮蔽性
分光光度計(日本分光(株)製)を使用し、紫外線(355nm)、赤外線(1000nm)の各波長において、上記試験片の透過率(%)を測定した。透過率(%)の値が小さいほど、紫外線や赤外線の遮蔽効果が良好であることを示している。
【0067】
・耐久性
上記試験片を、耐洗浄性試験機(No.0552ガードナー式ワッシャビリティーテスター、(株)安田精機製作所製)にセットし、コットン製不織布を用いて、450gの荷重を加えながら、試験片の表面を10往復擦った。その後、上記試験片について、上記不織布により削り取られた被膜の面積を目視で観察して、被膜の耐久性を、下記の基準で評価した。
◎:被膜は、90%以上の面積が残存していた。
○:被膜は、60%以上の面積が残存していた。
△:被膜は、30%以上の面積が残存していた。
×:被膜は、30%未満の面積しか残存せず、ほとんど剥れていた。
【0068】
【表1】

なお、表1中の<組成>で示した値は、各成分の配合量(重量部)であって、表に示していない水の配合量と合わせて、全体で100重量部となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿気硬化性シリコーンオリゴマーと、硬化触媒と、シリコーンオイル、含フッ素シラン系化合物およびアルコキシシラン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の含ケイ素化合物と、紫外線吸収剤および/または赤外線吸収剤と、を含有することを特徴とする、自動車ガラス用撥水性コーティング剤。
【請求項2】
前記湿気硬化性シリコーンオリゴマーが、下記一般式(1)で示されるアルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物であることを特徴とする、請求項1に記載の自動車ガラス用撥水性コーティング剤。
【化1】

(一般式(1)中、R1は、水素原子、または、置換もしくは非置換の1価の炭化水素基を示し、R2は、アルキル基を示し、xは、0〜3の整数を示す。また、R1およびR2は、同一または互いに異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記シリコーンオイルが、下記一般式(2)で示される反応性シリコーンオイルであることを特徴とする、請求項1または2に記載の自動車ガラス用撥水性コーティング剤。
【化2】

(一般式(2)中、R3およびR4は、同一または互いに異なって、置換または非置換の1価の炭化水素基を示し、mは、0〜2の整数を示し、nは、0〜400の整数を示す。)
【請求項4】
前記含フッ素シラン系化合物が、フルオロアルキルシランまたはフルオロポリエーテルシランであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の自動車ガラス用撥水性コーティング剤。
【請求項5】
前記アルコキシシラン系化合物が、下記一般式(3)で示されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の自動車ガラス用撥水性コーティング剤。
【化3】

(一般式(3)中、R5は、アルコキシ基を示し、R6、R7およびR8は、同一または互いに異なって、アルキル基またはアルコキシ基を示す。)
【請求項6】
前記含ケイ素化合物が、前記湿気硬化性シリコーンオリゴマー100重量部に対して、100重量部以下の割合で含有されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の自動車ガラス用撥水性コーティング剤。

【公開番号】特開2008−94971(P2008−94971A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278806(P2006−278806)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000227331)株式会社ソフト99コーポレーション (84)
【Fターム(参考)】