説明

自動車ドアの遮吸音構造

【課題】 自動車のドアを構成する内装パネルに形成されたハンドル取付部に残存する隙間から音が侵入するのを防止し、室内の静粛性の向上を図った自動車ドアの遮吸音構造を提供する。
【解決手段】 車外側に位置するアウターパネル11およびそのアウターパネル11の室内側に位置し、作業孔13が穿設されたインナーパネル12を備えるドアパネル本体10と、前記インナーパネル12の室内側に位置し、ハンドル取付部21にドア開閉ハンドルを設けた内装パネル20とを備える自動車のドアにおいて、前記インナーパネル12の室内側に、前記作業孔13を塞ぐシート材14を設ける。また、前記シート材14の室内側の、少なくとも前記内装パネル20のハンドル取付部21に対応する箇所に、前記ハンドル取付部21に密着する遮吸音ブロック15aを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ドアの遮吸音構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1および図2を参照して説明する。通常、自動車のドアは、車外側に位置するアウターパネル31と室内側に位置するインナーパネル32とで構成されるドアパネル本体30と、インナーパネル32の室内側に位置する内装パネル33とを備える(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【0003】
また、インナーパネル32には、ドアガラスGの摺動機構を組付けるための作業孔32aが形成されており、内装パネル33には、ドア開閉ハンドルを取付けるためのハンドル取付部34が形成されている。このハンドル取付部34は開口状であるため、ドア開閉ハンドルを取付けた後に、隙間が形成される。
【0004】
こうした構成のドアにおいては、室内の静粛性を確保するために、インナーパネル32の作業孔32aを、室内側から、スポンジゴムシート35aと合成樹脂フィルム35bを熱溶着して形成したシート材35を貼付けて塞ぐことによって、静粛性の向上を図っている。
【0005】
また、内装パネル33の車外側(インナーパネル側)には、遮吸音材36を貼付けて、さらなる静粛性の向上を図っている。ただし、隙間の存在するハンドル取付部34には、この遮吸音材を貼付けていない。内装パネル33は、ドアパネル本体30に設けたラッチやロック機構から延びるワイヤーをハンドル取付部34に固定したドアハンドルと連結した後に、ドアパネル本体30に固定されるため、ハンドル取付部34に遮吸音材を貼付けると、ワイヤー等の連結作業の障害となるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−223341号公報
【特許文献2】特開2006−039379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の発明者らは、自動車ドアの遮音性をさらに向上させるために、従来のドアを使用して遮音性の実験を行った。この実験では、車外側から音を発生させ、細分化したドアの室内側の各部分において、ドアを透過して侵入してきた音の大きさを測定した。その結果、特に、ハンドル取付部34と内装パネル33の外周部分から音が侵入することを特定することができた。
【0008】
このうち、特に、ハンドル取付部34は、前記したように、ドア開閉ハンドルの取付け作業を行うために遮吸音材で覆うことができないので、必然的に隙間がそのまま残存してしまう。従って、何らかの手段を講じる必要がある。
【0009】
本発明は、こうした問題に鑑み創案されたもので、主として、自動車のドアを構成する内装パネルに形成されたハンドル取付部に残存する隙間から音が侵入するのを防止し、静粛性の向上を図った自動車ドアの遮吸音構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
用語の定義:遮吸音とは遮音及び吸音のことを言う。
図1および図3乃至図7を参照して説明する。請求項1に記載の自動車ドアの遮吸音構造1は、車外側に位置するアウターパネル11およびそのアウターパネル11の室内側に位置し、作業孔13が穿設されたインナーパネル12を備えるドアパネル本体10と、前記インナーパネル12の室内側に位置し、ハンドル取付部21にドア開閉ハンドル22を設けた内装パネル20とを備える。
【0011】
そして、前記インナーパネル12の室内側に、前記作業孔13を塞ぐシート材14を設ける。また、前記シート材14の室内側の、少なくとも前記内装パネル20のハンドル取付部21に対応する箇所に、前記ハンドル取付部21に密着する遮吸音ブロック15aを設けて構成する。
【0012】
請求項2に記載の自動車ドアの遮吸音構造1は、車外側に位置するアウターパネル11およびそのアウターパネル11の室内側に位置し、作業孔13が穿設されたインナーパネル12を備えるドアパネル本体10と、前記インナーパネル12の室内側に位置し、ハンドル取付部21にドア開閉ハンドル22を設けた内装パネル20とを備える。
【0013】
そして、前記インナーパネル12の室内側に、前記作業孔13を塞ぐシート材14を設ける。また、前記シート材14の室内側の、前記内装パネル20のハンドル取付部21に対応する箇所に、前記ハンドル取付部21に密着する遮吸音ブロック15aを設ける。さらに、前記シート材14の室内側の、前記作業孔13の周端部分(作業孔13の外周端部と、それを形成するインナーパネル12の内周端部にわたる部分)に対応する箇所に、前記内装パネル20に弾接する遮吸音ブロック15bを設けて構成する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の自動車ドアの遮吸音構造1は、シート材14の室内側の、少なくとも内装パネル20のハンドル取付部21に対応する箇所に、そのハンドル取付部21に密着する遮吸音ブロック15aを設けたので、ハンドル取付部21に残存する隙間を、その遮吸音ブロック15aで塞ぐことができる。これにより、車外の音が隙間を通って室内へ侵入するのを防止することができるので、室内の静粛性の向上を図ることができる。
【0015】
請求項2に記載の自動車ドアの遮吸音構造1は、請求項1に記載の発明と同様の効果を発揮する。また、シート材14の室内側の、作業孔13の周端部分に対応する箇所に、内装パネル20に弾接する遮吸音ブロック15bを設けたので、作業孔13の周端部分とシート材14とを密着させることができる。これにより、作業孔13とシート材14との間から音が室内へ侵入するのを、より効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ドア遮吸音構造を備えた自動車を示す側面図である。
【図2】従来例に係るドア遮吸音構造を示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図3】本発明に係るドア遮吸音構造の実施形態を示すもので、図1のX−X線断面図である(内装パネルを取付ける前の状態)。
【図4】本発明に係るドア遮吸音構造の実施形態を示すもので、図1のX−X線断面図である(内装パネルを取付けた後の状態)。
【図5】図4の要部拡大図である。
【図6】本発明に係るドア遮吸音構造の実施形態におけるドアパネル本体と内装パネルの内面側を示す正面図である。
【図7】本発明に係るドア遮吸音構造の他の実施形態におけるドアパネル本体を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る自動車ドアの遮吸音構造1を、図1および図3乃至図6に示す。このドア遮吸音構造1は、金属製のドアパネル本体10と硬質合成樹脂製の内装パネル20を備える。ドアパネル本体10は、車外側に位置するアウターパネル11と、そのアウターパネル11の室内側に位置し、ほぼ中央部にドアガラスGの摺動機構を取付けるための作業孔13が穿設されたインナーパネル12とを備える。内装パネル20は、インナーパネル12の室内側に位置し、ドア開閉ハンドル22を固定するための開口状のハンドル取付部21を備える。
【0018】
インナーパネル12の室内側面には、作業孔13を塞ぐシート材14を設けている。このシート材14は、作業孔13よりやや大きく、当該作業孔13を完全に塞ぐ大きさのスポンジゴムシート14aと、当該スポンジゴムシート14aの室内側面(内装パネル側)に配置され、インナーパネル12とほぼ同じ又はやや小さな大きさを有する合成樹脂フィルム(ポリエチレン製)14bとを、スポンジゴムシート14aの外周端部に沿って溶着することによって一体化している。そして、このシート材14の外周端部をインナーパネル12に線状に配した接着剤(または粘着材)16によって貼付けている。
【0019】
そして、シート材14の室内側面の、内装パネル20のハンドル取付部21に対応する箇所に、ハンドル取付部21に密着する遮吸音ブロック15aを貼着している。これにより、内装パネル20をドアパネル本体10に取付けることのみによって、遮吸音ブロック15aの室内側面がハンドル取付部21に密着して、そこに残存する隙間を塞ぐので、当該隙間から音が室内へ侵入するのを未然に防止することができる。
【0020】
また、シート材14の室内側面の、作業孔13の周端部分に対応する複数箇所に、内装パネル20の車外側面に弾接する遮吸音ブロック15bを貼着している。これにより、遮吸音ブロック15bの弾力によってシート材14をインナーパネル12に密着させることができるので、作業孔13を通過した音が、シート材14とインナーパネル12との間から室内へ侵入するのを、より確実に防止することができる。
【0021】
なお、遮吸音ブロックを設けることによって、内装パネル20に遮吸音材を取付ける必要がなくなるので、作業性の向上を図ることができる。特に、シート材14と遮吸音ブロックとをあらかじめ一体化させておくことによって、ドアの組立現場においては、当該シート材14と遮吸音ブロックとの一体物をインナーパネル12に取付けるのみでドアの遮吸音性を確保することができる。従って、ドアの組立作業性を大幅に向上させることができる。
【0022】
本発明における遮吸音ブロックの材質は限定されるものではなく、遮音性及び/又は吸音性や弾性に富むものであれば良く、例えば、ゴムスポンジ或はゴム様弾性体である合成樹脂スポンジ(熱可塑性エラストマー含む)などの多孔質材であるスポンジや繊維材などが好適である。
【0023】
本発明に係るドア遮吸音構造1は、従来技術と同様に、内装パネル20の車外側に遮吸音材36を貼着することもできる(図3参照)。これにより、室内の静粛性の向上に貢献できる。
【0024】
なお、遮吸音ブロックの形状や配置は、上記実施形態に限定されるものではない。従って、例えば、図7に示すように、遮吸音ブロック15bを、インナーパネル12の車体前後方向に直線的に設けることによって、ドアパネル本体10の下端部に形成されている排水口から侵入した音がその上方(ベルトライン部分の隙間)を通って室内へ侵入するのを効果的に防止することができる。また、例えば、遮吸音ブロックを作業孔13の周端部に沿った略リング状とすることもできる。また、例えば、シート材14の外周端部を内装パネル20の外周(インナーパネルとの接触縁)と同形状とし、該シート材14の外周端部全周あるいは少なくとも底部に、好ましくは車体の前後側面と底部に遮吸音ブロック(例えば、比重0.05〜0.4のスポンジゴムであるエプトシーラー(商品名))17を紐状に設置することもできる(図4参照)。これによって、音がシート材14とインナーパネル12との間から室内へ侵入するのを、さらに確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 ドア遮吸音構造
10 ドアパネル本体
11 アウターパネル
12 インナーパネル
13 作業孔
14 シート材
14a スポンジゴムシート
14b 合成樹脂フィルム
15a,15b 遮吸音ブロック
16 接着剤
17 紐状遮吸音ブロック
20 内装パネル
21 ハンドル取付部
22 ドア開閉ハンドル
30 ドアパネル本体
31 アウターパネル
32 インナーパネル
32a 作業孔
33 内装パネル
34 ハンドル取付部
35 シート材
35a スポンジゴムシート
35b 合成樹脂フィルム
36 遮吸音材
G ドアガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外側に位置するアウターパネル(11)および該アウターパネルの室内側に位置し,作業孔(13)が穿設されたインナーパネル(12)を備えるドアパネル本体(10)と,前記インナーパネルの室内側に位置し,ハンドル取付部(21)にドア開閉ハンドル(22)を設けた内装パネル(20)とを備える自動車ドアの遮吸音構造であって、前記インナーパネルの室内側に,前記作業孔を塞ぐシート材(14)を設け、前記シート材の室内側の,少なくとも前記内装パネルのハンドル取付部に対応する箇所に,前記ハンドル取付部に密着する遮吸音ブロック(15a)を設けたことを特徴とする自動車ドアの遮吸音構造。
【請求項2】
車外側に位置するアウターパネル(11)および該アウターパネルの室内側に位置し,作業孔(13)が穿設されたインナーパネル(12)を備えるドアパネル本体(10)と,前記インナーパネルの室内側に位置し,ハンドル取付部(21)にドア開閉ハンドル(22)を設けた内装パネル(20)とを備える自動車ドアの遮吸音構造であって、前記インナーパネルの室内側に,前記作業孔を塞ぐシート材(14)を設け、前記シート材の室内側の,前記内装パネルのハンドル取付部に対応する箇所に,前記ハンドル取付部に密着する遮吸音ブロック(15a)を設け、前記シート材の室内側の,前記作業孔の周端部分に対応する箇所に,前記内装パネルに弾接する遮吸音用ブロック(15b)を設けたことを特徴とする自動車ドアの遮吸音構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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