説明

自動車フロント領域の支持構造体

【課題】 冷却コンポーネント、特に熱交換器を支持構造体に簡単かつ安価に固着する。
【解決手段】 ファン穴(11)を有する後壁(12)によって裏側を覆うことのできる支持枠(13)を備えた自動車フロント領域の支持構造体(1)において、冷却コンポーネント、特に熱交換器(4、9)を受容するための保持枠(3)が走行方向で支持枠(13)の前で揺動可能に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン穴を有する後壁によって裏側を覆うことのできる支持枠を備えた自動車フロント領域の支持構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロント領域は今日しばしばいわゆるフロントエンドモジュールとして形成されており、車両内で固着されるべき支持構造体またはいわゆる組立支持体を有する。支持構造体もしくは組立支持体に、なかんずく、各種熱交換器および/またはファン送風機等の冷却コンポーネントが固着される。フロントエンドモジュールは予め完全に組み立てられ、構造ユニットとして自動車に嵌挿される。
【0003】
特許文献1により公知となった自動車用フロントエンドモジュールは支持構造体を有し、この支持構造体内でなかんずく冷却材冷却器が受容され固着されている。この固着は架枠によって行われ、この架枠は一方で冷却器を受容し、他方で支持構造体と強固に結合されている。冷却器を‐例えば修理目的のために‐交換するとき、冷却器は前方に取り出されねばならず、そのことから走行方向で付加的構造空間が必要となる。
【0004】
特許文献2により公知となったフロントエンドモジュール用支持構造体にはファンシュラウドが固着されている。例えば冷却材冷却器または凝縮器等の熱交換器の配置についてこの刊行物のなかでは何も開示されていない。
【0005】
熱交換器の態様の冷却コンポーネントを1つの構造ユニット、冷却モジュールまたはいわゆる冷却カセットへとまとめ、車両構造体に対して直接支えることも知られている。
【0006】
特許文献3によりプラスチック製枠、いわゆるカセットを備えた自動車用熱交換ユニットが公知であり、なかんずくこのカセット内に冷却材冷却器、凝縮器等の各種熱交換器が受容され保持されている。熱交換器を備えたカセットは正面側に、熱交換器を取付けるための桁と側部に支承ピンを備えた取付具とを有し、取付具によってカセット全体が熱交換器も含めて車両内で、すなわち車両構造体で支えられる。
【0007】
特許文献4によって公知となった類似の冷却カセットには冷却器の冷却ブロックが引出し状にまたは「カセット方式で」嵌挿される。冷却ブロック用カセット全体もしくは取付兼案内枠が車両構造体に固着されている。
【特許文献1】独国特許出願公開第69912263号明細書
【特許文献2】米国特許第6685258号明細書
【特許文献3】独国特許発明第4142023号明細書
【特許文献4】独国特許発明第3922814号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、冷却コンポーネント、特に熱交換器を支持構造体に簡単かつ安価に固着することである。熱交換器の単純な構造も可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、冷却コンポーネント、特に熱交換器を受容するための保持枠が走行方向で支持枠の前で揺動可能に配置されていることによって解決される。
【発明の実施の形態】
【0010】
本発明によれば、冷却コンポーネントを受容するための保持枠が走行方向で支持構造体の前で揺動可能に配置されている。主に、揺動軸は保持枠の下側領域にあり、この保持枠は有利には2つの側部揺動ピンを有し、揺動ピンは支持構造体の相応する軸受内に受容されている。こうして揺動可能な保持枠は上から下へと、僅かに傾斜した位置で軸受内に嵌挿し、次に支持構造体もしくは支持枠へと閉じることができる。固着のために保持枠および支持枠に相応する固着手段が例えばクリップ結合部の態様で設けられており、このクリップ結合部は再び容易に脱離することもできる。保持枠は有利には側部案内手段を有し、これらの案内手段は熱交換器を上から‐引出しまたはカセットの方式で‐保持枠に押込むことを可能とする。同様に、保持枠を傾動させて熱交換器を取り出すことが可能である。本発明に係る揺動可能な保持枠では利点として枠内で熱交換器の簡単な固着が行われ、この固着はいわば嵌合式に行われる。このことは特に全金属製熱交換器もしくは全アルミニウム製熱交換器、例えば冷媒凝縮器または冷却材冷却器の場合に有利である。なぜならば、これによって付加的固着手段の取付が省かれるからである。これは費用節約を意味する。というのも、固着手段は‐プラスチック集合箱におけるように‐射出成形できるのでなく、蝋付されねばならないからである。さらに、閉じと傾動とによって簡単な組立および分解の可能性が、特に修理のとき得られる。
【0011】
本発明の有利な構成において保持枠はその内面が、すなわち熱交換器との接触時、密封が起き、空気がバイパス空気またはいわゆる擬空気として熱交換器を通過することのないように形成されている。
【0012】
本発明の他の有利な構成において保持枠は外面も、支持構造体もしくは支持枠に対して密封が起きるように形成されている。その限りで、完全な周囲密封が与えられている。
【0013】
本発明の他の有利な1構成によれば、保持枠の下側領域に他の案内筒体が配置されており、この案内筒体は正面全体の一部を占めるだけの付加的熱交換器、例えば給気冷却器を受容することができる。
【0014】
有利には、保持枠は一体なプラスチック射出成形品として、すなわち側部案内要素、軸受、および閉じ位置用固着要素も含めて製造可能である。それとともにプラスチック射出成形品として製造すると、使用される熱交換器、例えば箱状冷却材箱を備えた全アルミニウム製冷却材冷却器、円筒形集合管を備えた凝縮器に案内軌道の横断面を正確に適合させることができる。
【0015】
主に保持枠の揺動可能な固着は確かに、フロントエンドモジュール用に設けられているような支持構造体、すなわちいわゆる組立支持体に対して行われる。しかしこのことは、本発明に係る固着が自動車の支持構造体、例えばその前壁に直接行うこともできることを排除しない。
【0016】
本発明の1実施例が図面に示してあり、以下で詳しく説明される。
【実施例】
【0017】
図1は図示しない自動車のフロントエンドモジュール用の組立支持体1として形成される支持構造体を示す。組立支持体1の上方に配置される横支持体2、いわゆる錠支持体は図示しない仕方で車両ボデーと結合されている。同様に、組立支持体1は車両ボデー、例えば図示しないサイドメンバと結合されている。組立支持体1の(走行方向に見て)前側に保持枠3が配置され、組立支持体1と揺動可能に結合されている。保持枠3は複数の熱交換器、なかんずく凝縮器4を受容し、凝縮器の正面は長方形保持枠3から完全に解放され、周囲空気を矢印Lの方向で流入させることができる。保持枠3は2つの側部通材、つまり縦通材3a、3bを有し、縦通材はそれらの上端が横桁3cによって結合されている。保持枠3の下側領域は(空気流れ方向に見て)前方および後方が開口した案内筒体5を有し、この案内筒体に図示しない他の熱交換器、例えば給気冷却器が嵌挿可能である。縦通材3aに下側領域で配置される揺動ピン6は組立支持体1のここには認めることのできない軸受によって受容される。縦通材3aの上側領域に配置される固着要素7は主にクリップ結合部の一部として形成されている。反対側の縦通材3bに‐この図には認めることができないが‐相応する固着要素6、7がある。保持枠3は図中、閉じ位置にある。すなわち、保持枠は‐自動車内に組込状態のとき‐実質垂直に向いており、組立支持体1で成端する。さらに、保持枠3は‐図示されてはいないが‐組立支持体1に対しても‐主に正面側で‐密封されており、空気‐いわゆる擬空気‐がバイパス内で熱交換器の周囲を流れることはない。
【0018】
図2は組立支持体1と傾動位置の保持枠3とを側面図で示す。側部に配置される揺動ピン6はU形に形成される上向きに開口した揺動軸受8内に受容されており、この揺動軸受は組立支持体1に固着されている。こうして保持枠3は図示位置において上から下へと両方の揺動軸受8に掛け、引き続き閉じることができ、すなわち組立支持体1へと閉じることができる。上側領域と下側領域に保持枠3が空気誘導要素3d、3eを有し、空気誘導要素は空気流を熱交換器の方向に案内する。空気流れ方向で前記凝縮器の下流側に、ここには認めることのできない冷却材冷却器9が配置されており、そのうち冷却材嵌め管9a、9bのみ認めることができる。
【0019】
図3は保持枠3を組立支持体1に対して傾動させた位置で示す斜視図であり、両方の熱交換器4、9用の上側押込み穴10が認められる。空気流れ方向で凝縮器4の下流側に配置される冷却材冷却器9は全アルミニウム製熱交換器、すなわち完全蝋付部材として形成されている。この斜視図には空気誘導要素3c、3d、3eも十分に認めることができる。組立支持体1に設けられた穴11のなかで図示しないファンが回転する。その他、組立支持体1は裏側を後壁12、いわゆるファンシュラウドによって閉鎖されている。組立支持体1がその中央領域に有する支持枠13は空気貫流用の窓状穴を備えており、支持枠13は形状および大きさが保持枠3に概ね一致している。支持枠13は組立支持体1の一部である。
【0020】
図4は保持枠3をやはり傾動位置で示しており、冷却材冷却器9は保持枠3から部分的に上方に引き出されている。冷却材冷却器9は‐触れたように‐全アルミニウム製熱交換器として形成され、案内帯板として役立つ2つの箱状冷却材箱9c、9dを有する。縦通材3a、3bはそれぞれ冷却材箱9c、9dに横断面を適合された案内形材を有し、冷却材冷却器9は押込み時および取出し時に引出しのように直線的に案内される。
【0021】
図5は保持枠3をやはり傾動位置で示しており、凝縮器4も冷却材冷却器9も十分に保持枠3もしくは縦通材3a、3bから引き出されている。縦通材3bの内部に凝縮器4もしくはその集合管4a用案内レール14を認めることができる。冷却材冷却器9は案内形材15を介して案内される。縦通材3a、3b内の案内形材もしくは案内軌道が付加的に密封手段として形成されており、熱交換器4、9は同時に保持枠3に対して密封される。
【0022】
以上の説明から明らかとなるように、熱交換器、すなわち凝縮器4と冷却材冷却器9は簡単に組み立て、分解することもできる。両方とも保持枠3を傾動させて行われ、押込み穴10は開放されている。熱交換器の押込み後、保持枠3は閉じられ、固着要素7によって組立支持体1に固着、主にクリップ止めされる。分解は逆の順番で、すなわち固着手段を緩め、保持枠3を傾動させ、熱交換器4、9を取り出して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る閉じた保持枠を備えた支持構造体を示す。
【図2】傾動した揺動可能な保持枠を備えた支持構造体の側面図である。
【図3】傾動した保持枠と支持構造体との立体図である。
【図4】傾動した保持枠と部分的に引き出された冷却材冷却器とを示す。
【図5】傾動した保持枠と引き出された冷却材冷却器と引き出された凝縮器とを示す。
【符号の説明】
【0024】
1 組立支持体(支持枠を備えた支持構造体)
2 横支持体(錠支持体)
3 保持枠
3a 縦通材
3b 縦通材
3c 横桁
3d 空気誘導要素
3e 空気誘導要素
4 凝縮器
4a 集合管
5 案内筒体
6 揺動ピン
7 固着手段(クリップ)
8 揺動軸受
9 冷却材冷却器
9a 冷却材嵌め管
9b 冷却材嵌め管
9c 冷却材箱
9d 冷却材箱
10 押込み穴
11 ファン穴
12 後壁(ファンシュラウド)
13 支持枠
14 案内レール
15 案内形材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファン穴(11)を有する後壁(12)によって裏側を覆うことのできる支持枠(13)を備えた自動車フロント領域の支持構造体(1)において、冷却コンポーネント、特に熱交換器(4、9)を受容するための保持枠(3)が走行方向で支持枠(13)の前で揺動可能に配置されていることを特徴とする支持構造体。
【請求項2】
下側に配置される概ね水平に延びる軸の周りで保持枠(3)が揺動可能であることを特徴とする、請求項1記載の支持構造体。
【請求項3】
揺動軸受の諸部品が保持枠(3)に配置されていることを特徴とする、請求項1または2記載の支持構造体。
【請求項4】
諸部品が保持枠(3)から横に突出する揺動ピン(6)として形成されていることを特徴とする、請求項3記載の支持構造体。
【請求項5】
揺動ピン(6)を受容するためのU形材(8)が支持枠(13)に配置されていることを特徴とする、請求項4記載の支持構造体。
【請求項6】
保持枠(3)を支持枠(13)に脱離可能に固着するための側部固着手段(7)が保持枠(3)に、主に揺動進出可能な上側領域に配置されていることを特徴とする、請求項1〜5の少なくとも1項記載の支持構造体。
【請求項7】
保持枠(3)が、側部に配置される案内要素(14、15)、特に少なくとも1つの熱交換器(4、9)を受容するための案内レールを有することを特徴とする、請求項1〜6の少なくとも1項記載の支持構造体。
【請求項8】
保持枠(3)がその上面に押込み穴(10)を有し、この押込み穴を通して前記少なくとも1つの熱交換器(4、9)が揺動軸の方向で保持枠(3)内に押込み可能、また逆方向に再び取出し可能であることを特徴とする、請求項1〜7の少なくとも1項記載の支持構造体。
【請求項9】
他の熱交換器を受容するための案内筒体(5)が保持枠(3)に揺動軸の領域で配置されていることを特徴とする、請求項1〜8の少なくとも1項記載の支持構造体。
【請求項10】
前記他の熱交換器、特に給気冷却器が、残りの熱交換器を横切って案内筒体(5)に押込み可能であることを特徴とする、請求項9記載の支持構造体。
【請求項11】
熱交換器(4、9)がその周面で保持枠(3)に対して密封可能であることを特徴とする、請求項1〜10の少なくとも1項記載の支持構造体。
【請求項12】
保持枠(3)が正面側で支持枠(13)に対して密封可能であることを特徴とする、請求項1〜11の少なくとも1項記載の支持構造体。
【請求項13】
熱交換器の1つが冷却材冷却器(9)、特に全アルミニウム製熱交換器として形成されていることを特徴とする、請求項1〜12の少なくとも1項記載の支持構造体。
【請求項14】
熱交換器の1つが空調装置用冷媒凝縮器(4)として形成されていることを特徴とする、請求項1〜13の少なくとも1項記載の支持構造体。
【請求項15】
保持枠(3)が実質的に2つの位置、つまり第1傾動位置と第2閉じ位置とに揺動可能であることを特徴とする、請求項1〜14の少なくとも1項記載の支持構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−513427(P2009−513427A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536959(P2008−536959)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009537
【国際公開番号】WO2007/048483
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(508048702)ハーベーペーオー ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】