説明

自動車内装材用粘着剤組成物及び粘着シート

【課題】粘着特性に優れ、かつフォギング現象が極めて少ない自動車内装材用粘着剤組成物及び自動車内装材用粘着剤シートを提供すること。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系重合体、及び粘着付与剤を含有する粘着剤組成物であって、上記粘着付与剤が安定化ロジンエステル樹脂であることを特徴とする自動車内装材用粘着剤組成物。及び前記粘着剤組成物を基材の少なくとも一方の面に設けてなる自動車内装材用粘着シートであって、該粘着シートのフォギング度が60%以上である自動車内装材用粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内装材用途に好適に使用でき、フォギング現象が極めて少ない、自動車内装材用アクリル系粘着剤組成物及び該組成物を用いた自動車内装材用粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来多くの粘着テープに使用される粘着剤には、目的とする粘着性能を得るために、粘着付与剤等の添加剤が含まれている。しかし、粘着付与樹脂を添加して作製された粘着テープでは、例えば自動車の内装材として長期間使用した際に、粘着テープ中の揮発成分がフロントガラス等に付着し曇りを生じさせる、いわゆるフォギング現象が見られ問題となっていた。フォギング現象は主に揮発性の低分子成分が原因となっているため、低分子量成分を少量に抑えることでフォギング現象を抑制する方法が提案されている(特許文献1参照)。しかし、この方法では、ホットメルト粘着剤に限定されているため、溶剤系粘着剤や水分散型粘着剤では適応することができないという不具合がある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−327938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記発明に鑑みて、温度依存性なしに接着作業が行えて、耐熱性や耐候性等の特質に優れたアクリル系ポリマーを主材料として、フォギング現象が極めて少なく、自動車内装材用途に好適に使用できる粘着剤組成物、特に有機溶媒を使用せずに製造できる水分散型粘着剤組成物を提供することを目的とする。又、上記粘着剤組成物を基材上に設けてなる、フォギング現象が極めて少ない自動車内装材用粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的に対し鋭意検討した結果、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする粘着剤に対し、粘着付与樹脂として安定化ロジンエステル樹脂を使用することにより、フォギング現象を低減できることを知り、本発明を完成することに至った。
【0006】
すなわち本発明は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系重合体、及び粘着付与剤を含有する粘着剤組成物であって、上記粘着付与剤が安定化ロジンエステル樹脂であることを特徴とする自動車内装材用粘着剤組成物を提供する。
【0007】
本発明の自動車内装材用粘着剤組成物は、アクリル系重合体100重量部に対して、粘着付与剤を5〜100重量部含んでいることが好ましい。
【0008】
本発明の自動車内装材用粘着剤組成物は、アクリル系重合体エマルションと水分散型粘着付与剤とを混合して得られる水分散型粘着剤組成物であることが好ましい。
【0009】
本発明は又、基材の少なくとも一方の面に上記粘着剤組成物から成る粘着剤層を設けてなる自動車内装材用粘着シートを提供する。
【0010】
上記自動車内装材用粘着シートは、フォギング度が60%以上であることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粘着剤組成物により、アクリル系粘着剤が持つ接着力や耐熱性、耐候性等の優れた特性を維持しつつ、フォギング現象が極めて少なく、自動車内装材用粘着剤として好適に使用することができる粘着剤層を形成することができる。また、本発明の粘着シートは、フォギング現象が極めて少なく、接着力や耐熱性、耐候性等に優れており、又温度依存性なしに接着作業を行うことができるため、自動車内装材用途に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系重合体及び粘着付与樹脂を含む。(メタ)アクリル酸エステルは、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルであって、下記一般式(1)で表される。
CH2=CR1COOR2 (1)
((1)式中、R1は水素原子又はメチル基を、R2は炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基若しくは脂環式基を示す。)
【0013】
2としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソアミル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ラウリル基、ボルニル基、イソボルニル基、ミリスチル基、ペンタデシル基、ステアリル基などが挙げられる。
【0014】
(1)式で表される(メタ)アクリル酸エスエルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。
【0015】
これら(メタ)アクリル酸エステルは、適宜、単独又は併用して用いられる。また、これら(メタ)アクリル酸エステルは、モノマー成分全量に対して、50重量%以上の割合で含まれていることが好ましい。50重量%より少ないと、アクリル系重合体としての特性が発現しにくくなる場合がある。
【0016】
また、上記(メタ)アクリル酸エステルに加えて、これらと共重合可能なモノマーを併用してもよい。そのような共重合可能なモノマーとして、例えば、官能基を含有する官能基含有モノマーなどが挙げられる。
【0017】
官能基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチルなどの水酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸ジアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのグリシジル基含有モノマー;その他、(メタ)アクリロニトリル、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。これら官能基含有モノマーは、適宜単独又は併用して用いられる。
【0018】
アクリル系重合体は、上記モノマーをを用いて、公知の重合方法(例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法、紫外線照射による重合方法)により調製することができる。なお、重合の際には、一般的な一括仕込み方法(一括重合方法)、モノマー滴下方法(連続滴下方法、分割滴下方法など)などの各種重合方法を採用することができる。重合温度は、モノマーの種類や、重合開始剤の種類などに応じて適宜選択することができ、例えば20〜100℃の範囲から選択できる。
【0019】
本発明においては、乳化剤を用いて水性媒体中で重合に付すのが好ましい。この場合、例えば、水性媒体に重合開始剤を添加したところへ、モノマーを連続滴下する方法などが挙げられる。水性媒体としては、水や、必要に応じて水にアルコール類などの水溶性溶媒が少量添加されているものが適宜用いられる。なお、水性媒体と、モノマー成分の割合は特に制限されないが、例えば、最終的に得られるアクリル系ポリマーエマルションの固形分は20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%とするのがよい。
【0020】
重合開始剤としては、乳化重合の重合開始剤として通常使用される公知のものが用いられる。例えば、2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2′−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレートなどのアゾ系開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤;硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせや過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムなどの組み合わせなど、過酸化物と還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤などのラジカル重合開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
重合開始剤の添加量は、全モノマー成分100重量部に対して、通常、0.01〜1重量部、好ましくは0.02〜0.5重量部である。
【0022】
乳化剤としては、乳化重合において通常使用される公知の乳化剤が用いられ、特に制限されないが、本発明においてはアニオン系乳化剤又はノニオン系乳化剤を用いるのがよい。
【0023】
アニオン系乳化剤としては例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0024】
ノニオン系乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどが挙げられる。これらの乳化剤は適宜単独又は併用して用いられる。なお、例えば、プロペニル基などを導入したラジカル重合性の乳化剤を用いてもよい。
【0025】
乳化剤の添加量は、モノマー成分100重量部に対して通常0.3〜10重量部、好ましくは 0.5〜5重量部である。乳化剤の添加量が、0.3重量部より少ないと、安定した乳化を維持できず、凝集物を生成する場合がある。一方、10重量部を超えると、粘着剤組成物の接着力が低下したり、耐水性に劣ることがある。
【0026】
アクリル系重合体を調製する際には、架橋剤や連鎖移動剤、その他の添加剤などを添加してもよい。架橋剤は通常用いる架橋剤を使用することができ、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤などを挙げることができる。
【0027】
連鎖移動剤は、ポリマーの分子量を調節するために用いられ、公知の連鎖移動剤から適宜選択して用いられる。例えば、乳化重合の際に通常使用される連鎖移動剤としては、1−ドデカンチオール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどが挙げられる。これらの連鎖移動剤は、1種又は2種以上を組み合わせて用いられる。連鎖移動剤の添加量は、モノマー成分100重量部に対して、通常0.001〜5重量部、好ましくは0.001〜1重量部である。
【0028】
その他の添加剤としては、特に制限されないが、例えば、乳化重合によりアクリル系重合体を調製する場合であれば、pH緩衝剤、中和剤、発泡防止剤、安定剤など、乳化重合の添加剤として通常使用される公知のものが挙げられる。
【0029】
本発明の粘着剤組成物には、粘着付与樹脂として安定化ロジンエステル樹脂を含む。安定化ロジンエステル樹脂は、アクリル系重合体100重量部に対して、5〜100重量部、好ましくは10〜80重量部含まれる。
【0030】
安定化ロジンエステル樹脂としてはロジンに精製処理や不均化、水素添加、などの処理を施し安定化を図り、さらにアルコールとエステル化反応させることによりロジンエステルとしたものを用いることができる。
【0031】
上記精製処理とは、原料ロジンに含まれていた過酸化物から生起したと考えられる高分子量物や、該原料ロジンにもともと含まれている不鹸化物を除去することを意味し、具体的には、蒸留、再結晶、抽出等の操作により行うことができる。原料ロジンに精製処理を施してから不均化、水素添加、などの安定化処理を施してもよく、安定化処理を施したロジンを精製処理してもよい。
【0032】
上記安定化ロジンを各種の多価アルコールとエステル化反応させることにより安定化ロジンエステル樹脂を調製できる。多価アルコールとしては例えば、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの2価アルコール;グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール;ペンタエリスリトールなどの4価アルコールなどが挙げられる。エステル化反応は、通常行われるエステル化反応の方法をそのまま用いることができる。例えば、不活性ガス気流下に前記安定化ロジンと多価アルコールとを通常大気圧で150〜300℃程度に加熱して反応生成水を系外に除去することにより行う。
【0033】
前記安定化ロジンエステル樹脂はエステル化反応中又はエステル化反応後に、脱水素化処理を施してもよい。脱水素化処理は特に制限されず、通常の条件を採用できる。例えば、エステル化反応後に脱水素処理を行う場合は、得られたロジンエステルを、パラジウム系、ロジウム系、白金系などの公知の脱水素化触媒の存在下、加圧加熱する方法などが挙げられる。脱水素処理の代わりに水素化処理を施してもよい。
【0034】
上記安定化ロジンエステル樹脂の市販の例としてはハリマ化成(株)製、商品名「ハリエスターSK−90D」;ハリマ化成(株)製、商品名「ハリエスターSK−70D」;ハリマ化成(株)製、商品名「ハリエスターSK−70E」;ハリマ化成(株)製、商品名「ネオトール115E」;荒川化学工業(株)製、商品名「スーパーエステルE−720」;荒川化学工業(株)製、商品名「スーパーエステルE730−55」などが挙げられる。
【0035】
アクリル系重合体と、安定化ロジンエステル樹脂を混合することにより、本発明の粘着剤組成物を製造することができる。安定化ロジンエステル樹脂は、固体、各種溶媒に溶解した状態など、いずれの状態でアクリル系重合体と混合してもよいが、本発明においては、水性媒体に分散させた水分散型安定化ロジンエステル樹脂と、同じく水性媒体に分散させたアクリル系重合体とを混合し、水分散型粘着剤組成物とするのがよい。水分散型とすることにより、人体への悪影響が懸念されるVOC(揮発性有機化合物)を含有しない粘着シートが得られる。
【0036】
本発明の粘着剤組成物には、必要に応じて、粘着特性やフォギング性を損なわない範囲内で、例えば充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤等の粘着剤組成物の添加剤として通常用いられる添加剤を使用することもできる。
【0037】
本発明の自動車内装材用粘着シートは、例えば、上記粘着剤組成物を基材上に塗布、乾燥して粘着剤層を形成することにより製造できる。粘着剤層は、基材の片面のみに設けられていてもよく、基材の両面に設けられていてもよい。
【0038】
本発明の自動車内装材用粘着シートは、ドイツ工業規格DIN75201に従って測定されるフォギング度が60%以上であることが望ましい。前記フォギング度は、具体的には以下に説明する方法により測定される。粘着シートを直径80mmの円形に切断し、剥離紙を剥離した状態(基材の両面に粘着剤が設けられている場合においては、片面のみ剥離紙を剥離した状態)で、100℃のオイルバスにより加熱されているビーカーの底に静置し、ビーカーの上面には常に20℃に冷却されているガラス板を設置する。その状態で3時間放置した後、ガラス板上のフォギング度を以下の式にて算出する。
フォギング度(%)=(試験後のガラス板の60°の入射反射率)/(試験前のガラス板の60°の入射反射率)×100
粘着シートのフォギング度は、粘着剤のベースポリマーであるアクリル系重合体を構成するモノマーの種類やその割合、アクリル系重合体の分子量、粘着付与剤の種類とその量、粘着剤層の厚み、粘着剤組成物のタイプ(溶剤型、水分散型等)を調節することにより調製できる。
【0039】
粘着剤層の厚みは制限されないが、通常1000μm以下(例えば1〜1000μm、好ましくは20〜200μm程度)とするのがよい。必要に応じて粘着剤組成物に増粘剤等を添加して粘度を増し、これにより塗布した際の厚みを調節することもできる。
【0040】
基材としては、特に制限されず、粘着シートの基材として通常用いられるものから適宜選択して使用すればよい。例えば、布、不織布、ネットなどの繊維系基材;ゴムシートなどのゴム系基材;金属箔、金属板などの金属系基材;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系基材などが挙げられる。基材の表面は、粘着剤層との密着性を高めるため、適宜慣用の表面処理や、下塗り剤や剥離剤等によるコーティング処理が施されていてもよい。
【0041】
本発明において粘着剤組成物を基材上に塗布する方法は特に制限されず、慣用の塗布法を採用できる。例えばロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ナイフコーター、グラビアコーター、メイヤーバーコーター等を用いて塗布すればよい。尚、粘着剤組成物を基材上に直接塗布してもよく、剥離紙等の上に塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、これを基材上に貼り合わせ、剥離紙付き粘着シートとしてもよい。
【0042】
本発明の粘着剤組成物により形成した粘着剤層は、粘着特性に優れ、しかもフォギング現象が極めて少ないため、自動車内装材用途に好適に用いることができる。また、本発明の自動車内装用粘着シートは、自動車の内装材全般、例えば、天井材、トランクルーム用内装材、フロア部材等の接着用途に使用でき、フォギング現象が極めて少なく、粘着特性に優れた粘着シートである。
【実施例】
【0043】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
(実施例1)
[アクリル系重合体エマルションの調製]
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に、2,2′−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬工業(株)製、商品名「VA−057」)0.1重量部とイオン交換水40重量部をセパラブルフラスコに投入し、窒素ガスを導入しながら、1時間撹拌した。別にアクリル酸ブチル68重量部、アクリル酸2−エチルヘキシル29重量部、アクリル酸2.9重量部、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム26重量%水溶液8重量部を、水24.3重量部に添加して乳化し、乳化滴下液を調製した。この乳化滴下液を、上記セパラブルフラスコ中に4時間かけて滴下し、滴下終了後3時間熟成を行った。重合後、アンモニウム水を添加してpH8に調整した。
[粘着剤組成物の調製]
上記アクリル系重合体エマルションの固形分100重量部に対し、粘着付与剤として安定化ロジンエステル樹脂(ハリマ化成(株)製、商品名「SK−90D−55」)を固形分で30重量部加え、水分散型粘着剤組成物を得た。
[粘着シートの作製]
得られた水分散型粘着剤組成物を増粘剤で増粘し、乾燥後の厚みが60μmとなるように剥離紙に塗布し、100℃で2分間乾燥した。粘着剤層を付設した同様の形態の粘着シートを2枚作製し、坪量14g/m2の不織布の表裏にそれらを貼り合わせることにより、両面粘着シートを作製した。
【0045】
(実施例2)
粘着付与剤として安定化ロジンエステル樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名「E−720」)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い粘着シートを得た。
【0046】
(比較例1)
粘着付与剤としてテルペンフェノール系樹脂(荒川化学工業(株)製、商品名「E−200])を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い粘着シートを得た。
【0047】
(比較例2)
粘着付与剤として重合ロジンエステル樹脂(ハリマ化成(株)製、商品名「SK−508H」)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い粘着シートを得た。
【0048】
(比較例3)
粘着付与剤としてテルペン系樹脂(ヤスハラケミカル株式会社製、商品名「ナノレットR1050」)を用いた以外は実施例1と同様の操作を行い粘着シートを得た。
【0049】
(試験評価)
実施例及び比較例で得た粘着シートについて次の特性を調べた。測定結果を表1に示す。
[フォギング度]
測定はドイツ工業規格DIN75201に従って実施した。各粘着シートを直径80mmの円形に切断し、剥離紙を一枚剥離した状態で100℃のオイルバスにより加熱されているビーカーの底に静置し、ビーカーの上面には常に20℃に冷却されているガラス板を設置した。その状態で3時間放置した後、ガラス板上のフォギング度を以下の式にて算出した。
フォギング度(%)=(試験後のガラス板の60°の入射反射率)/(試験前のガラス板の60°の入射反射率)×100
[接着力]
粘着シートの片面を厚さ25μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)基材に貼り付け、幅20mm、長さ100mmに切断し、もう片方の面を粒度280番の研磨紙で磨いたSUS板に重さ2kg重のゴムローラを1往復させる方法にて圧着し、23℃下に30分放置後、23℃雰囲気中にて剥離に要する力を測定した(180°ピール、剥離速度300mm/分)。又同様の試験片と被着体を用い、70℃下に30分放置後、70℃雰囲気中にて剥離に要する力も測定した。
[保持力試験]
粘着シートの片方の面を厚さ25μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)基材に貼り付け、幅10mmに切断し、もう片方の面をフェノール樹脂板に対し10mm×20mmの接着面積で貼り付け、一晩室温に放置し、さらに40℃下に30分放置した後、フェノール樹脂板を垂下し、粘着テープの自由端に500gの均一荷重を負荷し、1時間後に粘着シートがずれた距離を測定した。
【0050】
なお、自動車内装材用途の粘着シートとして好ましい粘着特性は、23℃下の接着力が10N/20mm以上、70℃下の接着力が5N/20mm以上、かつ、40℃下での保持力が2mm以下である。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系重合体、及び粘着付与剤を含有する粘着剤組成物であって、上記粘着付与剤が安定化ロジンエステル樹脂であることを特徴とする自動車内装材用粘着剤組成物。
【請求項2】
アクリル系重合体100重量部に対して、粘着付与剤を5〜100重量部含む請求項1記載の自動車内装材用粘着剤組成物。
【請求項3】
アクリル系重合体エマルションと水分散型粘着付与剤とを混合して得られる水分散型粘着剤組成物である、請求項1又は2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
基材の少なくとも一方の面に請求項1〜3の何れかの項に記載の粘着剤組成物から成る粘着層を設けてなる自動車内装材用粘着シート。
【請求項5】
フォギング度が60%以上である、請求項4記載の自動車内装材用粘着シート。

【公開番号】特開2006−96895(P2006−96895A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−285764(P2004−285764)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】