自動車用のドアウェザストリップ
【課題】先閉めのドアと、該ドアのフランジに差込んで取付けられるドアウェザストリップとの間より車室内に水が侵入するのを防止すると共に、フランジが挿入される差込溝が深くても、該差込溝へのシーラーの注入が容易に行えるような自動車用のドアウェザストリップを提供する。
【解決手段】型成形部23が深い差込溝29を備えた広幅部31aを有し、該広幅部31aの差込溝29を形成する車室内側の側壁31はフランジ25の屈曲部に沿った横部31a1と縦部31a2を備え、該縦部31a2と接する横部31a1には広幅部31aの側壁側端面よりドア幅方向にスリット52を差込溝29の溝底近くまで形成し、スリット52より下流側の横部31a1端に前記フランジ25に弾接して下流側への水止めを行う突起53をスリット52に面し、かつ該スリット52に沿って形成する。
【解決手段】型成形部23が深い差込溝29を備えた広幅部31aを有し、該広幅部31aの差込溝29を形成する車室内側の側壁31はフランジ25の屈曲部に沿った横部31a1と縦部31a2を備え、該縦部31a2と接する横部31a1には広幅部31aの側壁側端面よりドア幅方向にスリット52を差込溝29の溝底近くまで形成し、スリット52より下流側の横部31a1端に前記フランジ25に弾接して下流側への水止めを行う突起53をスリット52に面し、かつ該スリット52に沿って形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観音開きドアを備えた自動車のドア間をシールするため、両ドアのうちの一方に取付けられるドアウェザストリップに関する。なお、本明細書において上下方向とは、車両に対する方向を示し、左右方向とは車両の後方から車両の後部を見た場合の方向を示すものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、自動車のバックドアを観音開きとした例を示すもので、図示するバックドアは車体後面に形成されるドア開口縁部1の右側縁にヒンジ2により回動可能に連結され、ドア開口縁部1の右側部分を開閉する右ドア3と、ドア開口縁部1の左側縁に同じくヒンジ2により回動可能に連結され、ドア開口縁部1の左側部分を開閉する左ドア4とよりなり、ドア閉時には右ドア3と左ドア4のうち、一方のドアを先に閉じたのち、他方のドアが閉じられる。
【0003】
ドア3、4は一般に上側縁が車内側に向けて湾曲して形成され、ドア閉時に車体のドア開口縁部上縁とドア3、4との間をシールするため、図1のa部で示す前記ドア開口縁部上縁には、ボデーウェザストリップとメインウェザストリップが取付けられ、また閉じた右ドア3と左ドア4の間をシールするため、先に閉じられる先閉めドア3又は4の上下方向の側縁にはドアウェザストリップが取付けられる。以下これらウェザストリップについて順に説明する。
【0004】
ボデーウェザストリップ6は図2(図1のE−E線断面)に示されるように、ドア開口縁部上縁のボデーパネル7より車外側に向けて突出形成されるドリップ部8の車内側側壁8aに取着されて車外側に向けて突出するフランジ9に差し込んで取付けられる横向きの略U形断面をなす取付基部11と、該取付基部11より上向きに突設され、ドア3、4の閉時にドア上縁の車内側に向けて突出するドア上端のフランジ12が弾接する中空状のシール部13よりなり、またメインウェザストリップ15は車外側に向けて斜めに突出形成されるドリップ部端のフランジ8bに差し込んで取付けられる略U形断面の取付基部16と、該取付基部16より車外側に斜めに突設され、ドア閉時にドア3、4に弾接する中空状のシール部17よりなり、ボデーウェザストリップ6とメインウェザストリップ15とでドア上縁と車体のドア開口縁部上縁との間をシールする二重シール構造を構成している。
【0005】
ドアウェザストリップ21は、押出成形部と、該押出成形部の上下端に一体形成される型成形部よりなり、図3〜図8には、このうち押出成形部22の上端部と、押出成形部22の該上端部に一体形成され、図1のaで示す両ドア3、4の合せ部上端をシールする型成形部23を示し、図示する例において、ドアウェザストリップ21は右ドア3と左ドア4のうち、右ドア3に取付けられている。
【0006】
ドアウェザストリップ21を構成する前記押出成形部22は、図6に示すように右ドア3を構成するインナーパネル3aとアウターパネル3bの側縁を重ねた接合部により形成されるフランジ25に差し込んで取付けられる横向きの略U形断面をなす芯金入りの取付基部26と、該取付基部26より車外側に突設される中空シール部27より構成され、右ドア3を閉じたのち左ドア4を閉じると、左ドア4の車内側側縁の周辺部が中空シール部27に弾接するようになっている。
【0007】
次に型成形部23を図3〜図9に基づいて説明する。ここで図3は、押出成形部22に一体形成される型成形部23の全体構造を示す斜視図であり、図4は右ドア3に取付けられるドアウェザストリップ21の型成形部23を車外側から見た斜視図、図5は同じく右ドア3に取付けた型成形部23を車内側から見た正面図、図6は図5のB−B線での拡大断面図、図7は同C−C線断面図、図8は型成形部23が取付けられる右ドアコーナ部の斜視図である。ドアウェザストリップ21を示す図において、三角印は黒く塗り潰した部分の側が型成形部、非塗り潰し部分の側が押出成形部を示す。
【0008】
型成形部23は押出成形部22の取付基部26と同様、前記フランジ25が差し込まれる差込溝29(図7参照)を有し、該差込溝29を構成する車内側の前記側壁31は前記取付基部26の車内側側壁の延長上に形成されている。そして押出成形部22近くより先端まで幅広の段状をなす幅広の広幅部31aが形成され、該広幅部31aは図2に示すように、上向きに屈曲するフランジ25の屈曲部に沿って屈曲し、肉厚をなす略横向きの肉厚の横部31a1と、縦向きの縦部31a2を有し、前記横部31a1は型成形部23を右ドア3のインナーパネル3aに取付けたのち、横部31a1の側方端で右ドア3のインナーパネル3aにクリップ33により止着されている(図5参照)。
【0009】
型成形部23が取付けられる右ドア3のコーナ部は図8に示すように、フランジ25と該フランジ25に続いて車外側に向けて突出形成される段35を備え、該段35は先端に向かって次第に低くなり、先端部では段35が解消されてフランジ25が幅広に形成されている。フランジ25の幅に対応して前記差込溝29を構成する型成形部23の車外側の側壁36は、先端部では幅広になっている。そして型成形部23の下側部には図4に示すように前記側壁36と一体をなし、前記段35に被さる段状のカバー部37を有している。
【0010】
型成形部23の下側部はまた、押出成形部22の中空シール部27に続く中空部38を備え、該中空部38は先端に向かう程断面が次第に小さくなり、ついには解消される。そして前記広幅部31aに対応する箇所付近から先端までの側壁36は肉厚となり、中空部36aを備えている(図7参照)。
【0011】
型成形部23はまた、広幅部31aの縦部31a2と略直交して前記フランジ12に車室内側より当てがわれ、車外側側面が前記側壁36の車外側側面と面一をなすヒレ部39を備え、該ヒレ部39及び側壁36の車外側側面には、左ドア4を閉じたとき、該左ドア4の図示しないフランジが被さるようになっている。ヒレ部39にはまた、その側端に被覆部41を備え、該被覆部41が前記フランジ12の側端を被覆することによりヒレ部39がフランジ12に支持されるようになっている(図4参照)。
【0012】
以上のように構成された型成形部23が右ドア3に取付けられた図2の状態において、雨水や洗車時の洗浄水がフランジ12先端とボデーウェザストリップ6の中空状シール部13との間を潜り抜け、型成形部23の車室内側側壁31とフランジ12との間に入り込んだとき、図2及び図5の矢印で示すように侵入して型成形部23の広幅部28aより車室内に侵入するようになる。
【0013】
前記フランジ12を被覆する被覆部41を図4の矢印方向に拡げて幅広に形成すれば、拡げた分だけフランジ12と側壁31との間より水が浸入するのを防ぐことができるが、被覆部41は右ドア上に露出するため、被覆部41が幅広となるほど、外観を損ない、好ましくない。
【0014】
下記特許文献1には、バックドアのドア開口部上縁に形成されるドリップ部の車外側側壁に車体側ウェザストリップを取付け、観音開きの右ドアと左ドアを閉じたとき、左ドアのフランジが車体側ウェザストリップのシール面に弾接し、右ドアに取付けたシール材が車体側ウェザストリップのシール面に弾接するシール構造において、車体側ウェザストリップのシール面と、左ドアのフランジ先端面と右ドアに取付けたシール材とで囲まれる隙間から水が車室内に侵入するのを防止するため、車体側ウェザストリップに水抜き穴を形成して前記隙間に侵入した雨水を水抜き穴を通してドリップ部内に流出させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】実願昭61−55574号(実開昭62−166128号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1に開示されるシール構造は、車体に取付けられるウェザストリップと、ドア閉時に先に閉じられる一方の先閉めドアのフランジ先端面と、他方のドアに取付けられるシール材とで囲まれる隙間から車室内に水が侵入するのを防止するものであるのに対し、本発明は、観音開きドアを構成するドアのうち、先に閉じられるドアの側縁に取付けられる押出成形部と該押出成形部上端に一体形成される型成形部を備え、先閉めドアと後から閉じられる後閉めドアとの間をシールするドアウェザストリップを対象とし、先閉めドアと該ドアに取付けられるドアウェザストリップとの間より水が車室内に侵入するのを防止しようとするものである。
【0017】
またフランジへの差込溝を備えたウェザストリップにおいては、シール性を持たせるために差込溝にシーラーを注入し、フランジ先端をシーラーに差込ませることが行われるが、前記差込溝29の溝底にシーラーを注入しようとする場合、図7に示す広幅部分での差込溝29のように溝29の奥が深いと、シーラー挿入用のノズルが差込溝29の奥まで届かず、シーラーの注入を困難にする。差込溝29の奥深くまでシーラーの注入を行えるようにするためにノズルを伸ばすと、ノズル自体の剛性がなくなり、途中で折れ易くなる。図8に示す30は、前記差込溝29の溝底に注入されるシーラーである。
【0018】
本発明は、先閉めのドアと、該ドアのフランジに差込んで取付けられるドアウェザストリップとの間より車室内に水が侵入するのを防止すると共に、フランジが挿入される差込溝が深くても、該溝へのシーラーの注入が容易に行えるような自動車用のドアウェザストリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に係る発明は、観音開きドアを構成するドアのうち、先閉めドアの上下方向の側縁に形成されるフランジに差込んで取付けられる押出成形部と、該押出成形上端に一体形成される型成形部を備え、ドアを閉じたとき、先閉めドアと後閉めドアの間をシールする自動車用のドアウェザストリップであって、前記型成形部は前記フランジへの深い差込溝を備えた広幅部を有するドアウェザストリップにおいて、前記深い差込溝を構成する広幅部の両側壁のうち、一方の側壁には該側壁側端面よりドア幅方向に切り込んで一端を開口した水抜き用のスリットが形成され、前記フランジと型成形部との間より侵入した水を水抜き用のスリットを通してボデーのドア開口部上縁に設けられるドリップ部内に流出させることを特徴とする。
【0020】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記車内側の側壁の広幅部は、横部と該横部より屈曲部を介して上向きに延びる縦部を備えた前記フランジに添設される横部と縦部を有し、前記スリットは前記横部と縦部の間であって、かつ前記屈曲部と対応する箇所に形成されることを特徴とし、
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記広幅部の横部端と共に前記スリットを形成する縦部の下端は前記屈曲部より離れて下向きに突出することを特徴とする。
【0021】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に係る発明において、前記スリットは前記横部の縦部と接する箇所に形成されることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記スリットより下流側の車内側の側壁には、前記フランジに弾接して下流側への水止めを行う突起が前記スリットに沿い、好ましくはスリットに面して突出形成されることを特徴とする。
【0022】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかの発明において、前記スリットが形成される車内側の側壁は、差込溝へのシーラー注入後、前記先閉めドアに止着手段により止着されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明は、観音開きドアを閉じたとき、先閉めドアと後閉めドアの間をシールするドアウェザストリップにおいて、上端の型成形部には、ドア側縁のフランジに差込まれる深い差込溝を備え、該差込溝を構成する両側壁のうち、一方の側壁には該側壁端面よりドア幅方向に切り込んで一端を開口したスリットを形成してなるもので、前記フランジと型成形部との間より水が浸入するようなことがあったとしても、スリットを通してボデーのドア開口部上縁に設けられたドリップ部内に流出するようになり、車室内に侵入するのを防止することができる。また深い差込溝を構成する側壁をスリットにより開いて差込み溝を拡開させることができ、これよりノズルを差込んでシーラーの注入を容易に行うことができる。
【0024】
請求項2に係る発明によると、側壁の縦部に沿って侵入する水は、スリットより垂れ落ちてドリップ部内に流出するようになる。
請求項3に係る発明によると、側壁の縦部に沿って侵入する水は、広幅部の縦部の下端より垂れ落ちてそのままドリップ部内に流出するようになり、スリットより下流側への侵入を生じにくくする。
【0025】
請求項4に係る発明によると、側壁の縦部に沿って侵入する水はそのままスリットより流出するようになり、スリットより下流側への侵入を生じにくくする。
請求項5に係る発明によると、突起によって水が堰止められ、フランジの横部と広幅部の横部の間を通って車室内へ水が侵入するのをより確実に防ぐことができる。
【0026】
請求項6に係る発明によると、シーラー注入後、スリットを形成した側壁が開いてめくれるのが阻止される。またスリットが形成される車内側の側壁は着手段により止着されるが、この止着箇所はスリットに近くなるほど突起をフランジに強く押圧できるようになり、水の侵入をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】自動車のバックドアの正面図。
【図2】先閉めドアを閉じたときの図1のE−E線における断面図で、型成形部は図5のA−A線での断面を示す。
【図3】ドアウェザストリップの型成形部の斜視図。
【図4】図3に示す型成形部を先閉めドアのコーナに取付けた斜視図。
【図5】先閉めドアのコーナに取付けた型成形部を車内側から見た従来例の正面図。
【図6】図5のB−B線拡大断面図。
【図7】同C−C線断面図。
【図8】型成形部が取付けられる先閉めドアコーナ部の斜視図。
【図9】本発明に係るドアウェザストリップの型成形部の斜視図。
【図10】先閉めドアのコーナに取付けた図9に示す型成形部を車内側から見た正面図。
【図11】図1のE−E線に相当する箇所における断面図であり、かつ図10のD−D線での断面図。
【図12】横部を開いた状態を示す図。
【図13】図11、図12及び図13のb部の拡大断面図。
【図14】別の態様のスリットを備えた広幅部の断面図。
【図15】更に別の態様のスリットを備えた広幅部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態のドアウェザストリップについて図面により説明する。図中、図1〜図8に示す構造と同一構造部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0029】
図9は、図3と同様、ドアウェザストリップの型成形部51の全体構造を示す斜視図であり、図10は、図5と同様、右ドア3に取付けたドアウェザストリップの型成形部51を車内側から見た正面図、図11は図1のE−E線に相当する箇所における断面であり、かつ図10のD−D線での断面、図12は差込溝29を構成する車内側の側壁31の広幅部31aの横部31a1を開いた状態を示すものである。
【0030】
本実施形態の型成形部51が図2〜図7に示す従来の型成形部23と異なる点は、広幅部31aの縦部31a2と横部31a1の接する箇所に、広幅部31aの側端面よりドア幅方向にスリット52を差込溝29の溝底近くまで形成する。そして前記スリット52を境として横部31a1と区分けされる縦部31a2の下端面と、メインウェザストリップ15外周の車外側に位置する横部31a1のドア上端のフランジ側の端面(図11に示す横部31a1の右端面)の両端面のうち、下流側の横部31a1の前記端面には、図13に示すように、この端面に面し、かつ前記フランジ25に弾接して下流側への水止めを行う突起53をスリット52に沿い、スリット底に至るまで形成したことである。ここで前記スリット52は、図10に示す縦部31a2上端面とヒレ部39の傾斜した側端面が交差する点bを通る垂線nよりドア3とドア4の合せ部方向(図10に示す垂線nの右方)に突出して形成する必要がある。これにより前記点bより図の左方の縦部31a2とフランジ25との間に侵入した水がスリット52よりドリップ部8内に確実に流出できるようになる。
【0031】
本実施形態によると、車室内側側壁31の広幅部31aの縦部31a2とフランジ25との間に侵入した水は図11の点線で示すようにスリット52よりドリップ部8内に流出し、横部31a1への侵入は突起53により遮られるため、図2に矢印で示すように、車室内に侵入するのが防止される。また広幅部31aの差込溝29に前記シーラー30を注入する際には、スリット52より下流側の広幅部31aの横部31a1を図12の矢印で示す方向に開いて差込み溝19の開口部を拡げることによりシーラー注入用のノズルの挿入が容易となり、シーラー注入が容易に行えるようになる。シーラー注入後、ドアウェザストリップは右ドア3のインナーパネル3aのフランジ25に差し込まれる。そして前記広幅部31aの横部31a1の側方端部が図10に示すように、止着手段としてのクリップ33により右ドア3のインナーパネル3aに止着され、これによりシーラー注入後、広幅部31aが開くのが阻止される。また突起53に近接した位置をグリップ33で止着するため、突起53をフランジ25に強く押圧できるようになり、より一層水の侵入を防止できる。
【0032】
前記実施形態では、スリット52は前述するように縦部31a2と接する横部31a1のドア上端のフランジ側の側端(図11の右側端)に沿って形成されている。換言すればスリット52は前記横部31a1の縦部31a2と接する箇所に形成されている。しかし前記スリット52は縦部31a2に形成してもよいし、水がドリップ部内に流出できれば、メインウェザストリップ15外周の車外側に位置する前記横部31a1を含む広幅部31aのいずれの位置に形成してもよい。
【0033】
前述する型成形部51は、図11に示すフランジ12に車内側より当てがわれるヒレ部39やフランジ12の側方端を覆う被覆部41を備えているが(図9、図10参照)、これらヒレ部39や被覆部41は必須でなく、省いてもよい。また型成形部51の車室内側の側壁31は段状をなして横部31a1や縦部31a2は肉厚に形成されているが、広幅部31aは全体が同じ幅であってもよいし、肉厚も同じ肉厚であってもよい。
【0034】
前記実施形態の図示するスリット52は、溝幅が一定になっているが、スリット52の開口側が拡開し、或いは縮小するように形成されていてもよい。
【0035】
スリット52はまた、次のように設けてもよい。
図13は横部25a1と該横部25a1より上向きに屈曲する縦部25a2を備えたフランジ25の屈曲部Rにおいてスリット52が形成された別の例を示すものである。スリット52を屈曲部Rと対応する箇所に形成する場合、縦部25aの下端は図13に示すように屈曲部Rより上方に引込んだ状態としてもよいが、図14に示すように、屈曲部Rより離れて下向きに突出させるのが望ましい。これにより図10に示す実施形態と同様、フランジ25と前記縦部25a2との間に侵入した水は、図14の矢印で示すようにフランジ25の前記屈曲部Rを伝うことなく縦部25a2を伝ってドリップ部8に確実に流出するようになる。
【0036】
前述する型成形部23はまた、横部31a1をインナーパネル3aに止着する止着手段としてクリップ33を示しているが、両面テープその他既知の任意の止着手段を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、観音開きのバックドアに適用されるが、フロントドアやリヤドアが観音開きをなすサイドドアに適用することもできる。
【符号の説明】
【0038】
1・・ドア開口縁部
3・・右ドア
4・・左ドア
6・・ボデーウェザストリプ
8・・ドリップ部
8a、9、25・・フランジ
12・・ドア上端のフランジ
15・・メインウェザストリップ
21・・ドアウェザストリップ
22・・押出成形部
23、51・・型成形部
29・・差込溝
31・・車内側の側壁
31a・・広幅部
31a1・・横部
31a2・・縦部
33・・クリップ
39・・ヒレ部
41・・被覆部
52・・スリット
53・・突起
【技術分野】
【0001】
本発明は、観音開きドアを備えた自動車のドア間をシールするため、両ドアのうちの一方に取付けられるドアウェザストリップに関する。なお、本明細書において上下方向とは、車両に対する方向を示し、左右方向とは車両の後方から車両の後部を見た場合の方向を示すものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、自動車のバックドアを観音開きとした例を示すもので、図示するバックドアは車体後面に形成されるドア開口縁部1の右側縁にヒンジ2により回動可能に連結され、ドア開口縁部1の右側部分を開閉する右ドア3と、ドア開口縁部1の左側縁に同じくヒンジ2により回動可能に連結され、ドア開口縁部1の左側部分を開閉する左ドア4とよりなり、ドア閉時には右ドア3と左ドア4のうち、一方のドアを先に閉じたのち、他方のドアが閉じられる。
【0003】
ドア3、4は一般に上側縁が車内側に向けて湾曲して形成され、ドア閉時に車体のドア開口縁部上縁とドア3、4との間をシールするため、図1のa部で示す前記ドア開口縁部上縁には、ボデーウェザストリップとメインウェザストリップが取付けられ、また閉じた右ドア3と左ドア4の間をシールするため、先に閉じられる先閉めドア3又は4の上下方向の側縁にはドアウェザストリップが取付けられる。以下これらウェザストリップについて順に説明する。
【0004】
ボデーウェザストリップ6は図2(図1のE−E線断面)に示されるように、ドア開口縁部上縁のボデーパネル7より車外側に向けて突出形成されるドリップ部8の車内側側壁8aに取着されて車外側に向けて突出するフランジ9に差し込んで取付けられる横向きの略U形断面をなす取付基部11と、該取付基部11より上向きに突設され、ドア3、4の閉時にドア上縁の車内側に向けて突出するドア上端のフランジ12が弾接する中空状のシール部13よりなり、またメインウェザストリップ15は車外側に向けて斜めに突出形成されるドリップ部端のフランジ8bに差し込んで取付けられる略U形断面の取付基部16と、該取付基部16より車外側に斜めに突設され、ドア閉時にドア3、4に弾接する中空状のシール部17よりなり、ボデーウェザストリップ6とメインウェザストリップ15とでドア上縁と車体のドア開口縁部上縁との間をシールする二重シール構造を構成している。
【0005】
ドアウェザストリップ21は、押出成形部と、該押出成形部の上下端に一体形成される型成形部よりなり、図3〜図8には、このうち押出成形部22の上端部と、押出成形部22の該上端部に一体形成され、図1のaで示す両ドア3、4の合せ部上端をシールする型成形部23を示し、図示する例において、ドアウェザストリップ21は右ドア3と左ドア4のうち、右ドア3に取付けられている。
【0006】
ドアウェザストリップ21を構成する前記押出成形部22は、図6に示すように右ドア3を構成するインナーパネル3aとアウターパネル3bの側縁を重ねた接合部により形成されるフランジ25に差し込んで取付けられる横向きの略U形断面をなす芯金入りの取付基部26と、該取付基部26より車外側に突設される中空シール部27より構成され、右ドア3を閉じたのち左ドア4を閉じると、左ドア4の車内側側縁の周辺部が中空シール部27に弾接するようになっている。
【0007】
次に型成形部23を図3〜図9に基づいて説明する。ここで図3は、押出成形部22に一体形成される型成形部23の全体構造を示す斜視図であり、図4は右ドア3に取付けられるドアウェザストリップ21の型成形部23を車外側から見た斜視図、図5は同じく右ドア3に取付けた型成形部23を車内側から見た正面図、図6は図5のB−B線での拡大断面図、図7は同C−C線断面図、図8は型成形部23が取付けられる右ドアコーナ部の斜視図である。ドアウェザストリップ21を示す図において、三角印は黒く塗り潰した部分の側が型成形部、非塗り潰し部分の側が押出成形部を示す。
【0008】
型成形部23は押出成形部22の取付基部26と同様、前記フランジ25が差し込まれる差込溝29(図7参照)を有し、該差込溝29を構成する車内側の前記側壁31は前記取付基部26の車内側側壁の延長上に形成されている。そして押出成形部22近くより先端まで幅広の段状をなす幅広の広幅部31aが形成され、該広幅部31aは図2に示すように、上向きに屈曲するフランジ25の屈曲部に沿って屈曲し、肉厚をなす略横向きの肉厚の横部31a1と、縦向きの縦部31a2を有し、前記横部31a1は型成形部23を右ドア3のインナーパネル3aに取付けたのち、横部31a1の側方端で右ドア3のインナーパネル3aにクリップ33により止着されている(図5参照)。
【0009】
型成形部23が取付けられる右ドア3のコーナ部は図8に示すように、フランジ25と該フランジ25に続いて車外側に向けて突出形成される段35を備え、該段35は先端に向かって次第に低くなり、先端部では段35が解消されてフランジ25が幅広に形成されている。フランジ25の幅に対応して前記差込溝29を構成する型成形部23の車外側の側壁36は、先端部では幅広になっている。そして型成形部23の下側部には図4に示すように前記側壁36と一体をなし、前記段35に被さる段状のカバー部37を有している。
【0010】
型成形部23の下側部はまた、押出成形部22の中空シール部27に続く中空部38を備え、該中空部38は先端に向かう程断面が次第に小さくなり、ついには解消される。そして前記広幅部31aに対応する箇所付近から先端までの側壁36は肉厚となり、中空部36aを備えている(図7参照)。
【0011】
型成形部23はまた、広幅部31aの縦部31a2と略直交して前記フランジ12に車室内側より当てがわれ、車外側側面が前記側壁36の車外側側面と面一をなすヒレ部39を備え、該ヒレ部39及び側壁36の車外側側面には、左ドア4を閉じたとき、該左ドア4の図示しないフランジが被さるようになっている。ヒレ部39にはまた、その側端に被覆部41を備え、該被覆部41が前記フランジ12の側端を被覆することによりヒレ部39がフランジ12に支持されるようになっている(図4参照)。
【0012】
以上のように構成された型成形部23が右ドア3に取付けられた図2の状態において、雨水や洗車時の洗浄水がフランジ12先端とボデーウェザストリップ6の中空状シール部13との間を潜り抜け、型成形部23の車室内側側壁31とフランジ12との間に入り込んだとき、図2及び図5の矢印で示すように侵入して型成形部23の広幅部28aより車室内に侵入するようになる。
【0013】
前記フランジ12を被覆する被覆部41を図4の矢印方向に拡げて幅広に形成すれば、拡げた分だけフランジ12と側壁31との間より水が浸入するのを防ぐことができるが、被覆部41は右ドア上に露出するため、被覆部41が幅広となるほど、外観を損ない、好ましくない。
【0014】
下記特許文献1には、バックドアのドア開口部上縁に形成されるドリップ部の車外側側壁に車体側ウェザストリップを取付け、観音開きの右ドアと左ドアを閉じたとき、左ドアのフランジが車体側ウェザストリップのシール面に弾接し、右ドアに取付けたシール材が車体側ウェザストリップのシール面に弾接するシール構造において、車体側ウェザストリップのシール面と、左ドアのフランジ先端面と右ドアに取付けたシール材とで囲まれる隙間から水が車室内に侵入するのを防止するため、車体側ウェザストリップに水抜き穴を形成して前記隙間に侵入した雨水を水抜き穴を通してドリップ部内に流出させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】実願昭61−55574号(実開昭62−166128号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1に開示されるシール構造は、車体に取付けられるウェザストリップと、ドア閉時に先に閉じられる一方の先閉めドアのフランジ先端面と、他方のドアに取付けられるシール材とで囲まれる隙間から車室内に水が侵入するのを防止するものであるのに対し、本発明は、観音開きドアを構成するドアのうち、先に閉じられるドアの側縁に取付けられる押出成形部と該押出成形部上端に一体形成される型成形部を備え、先閉めドアと後から閉じられる後閉めドアとの間をシールするドアウェザストリップを対象とし、先閉めドアと該ドアに取付けられるドアウェザストリップとの間より水が車室内に侵入するのを防止しようとするものである。
【0017】
またフランジへの差込溝を備えたウェザストリップにおいては、シール性を持たせるために差込溝にシーラーを注入し、フランジ先端をシーラーに差込ませることが行われるが、前記差込溝29の溝底にシーラーを注入しようとする場合、図7に示す広幅部分での差込溝29のように溝29の奥が深いと、シーラー挿入用のノズルが差込溝29の奥まで届かず、シーラーの注入を困難にする。差込溝29の奥深くまでシーラーの注入を行えるようにするためにノズルを伸ばすと、ノズル自体の剛性がなくなり、途中で折れ易くなる。図8に示す30は、前記差込溝29の溝底に注入されるシーラーである。
【0018】
本発明は、先閉めのドアと、該ドアのフランジに差込んで取付けられるドアウェザストリップとの間より車室内に水が侵入するのを防止すると共に、フランジが挿入される差込溝が深くても、該溝へのシーラーの注入が容易に行えるような自動車用のドアウェザストリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に係る発明は、観音開きドアを構成するドアのうち、先閉めドアの上下方向の側縁に形成されるフランジに差込んで取付けられる押出成形部と、該押出成形上端に一体形成される型成形部を備え、ドアを閉じたとき、先閉めドアと後閉めドアの間をシールする自動車用のドアウェザストリップであって、前記型成形部は前記フランジへの深い差込溝を備えた広幅部を有するドアウェザストリップにおいて、前記深い差込溝を構成する広幅部の両側壁のうち、一方の側壁には該側壁側端面よりドア幅方向に切り込んで一端を開口した水抜き用のスリットが形成され、前記フランジと型成形部との間より侵入した水を水抜き用のスリットを通してボデーのドア開口部上縁に設けられるドリップ部内に流出させることを特徴とする。
【0020】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記車内側の側壁の広幅部は、横部と該横部より屈曲部を介して上向きに延びる縦部を備えた前記フランジに添設される横部と縦部を有し、前記スリットは前記横部と縦部の間であって、かつ前記屈曲部と対応する箇所に形成されることを特徴とし、
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記広幅部の横部端と共に前記スリットを形成する縦部の下端は前記屈曲部より離れて下向きに突出することを特徴とする。
【0021】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に係る発明において、前記スリットは前記横部の縦部と接する箇所に形成されることを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記スリットより下流側の車内側の側壁には、前記フランジに弾接して下流側への水止めを行う突起が前記スリットに沿い、好ましくはスリットに面して突出形成されることを特徴とする。
【0022】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかの発明において、前記スリットが形成される車内側の側壁は、差込溝へのシーラー注入後、前記先閉めドアに止着手段により止着されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明は、観音開きドアを閉じたとき、先閉めドアと後閉めドアの間をシールするドアウェザストリップにおいて、上端の型成形部には、ドア側縁のフランジに差込まれる深い差込溝を備え、該差込溝を構成する両側壁のうち、一方の側壁には該側壁端面よりドア幅方向に切り込んで一端を開口したスリットを形成してなるもので、前記フランジと型成形部との間より水が浸入するようなことがあったとしても、スリットを通してボデーのドア開口部上縁に設けられたドリップ部内に流出するようになり、車室内に侵入するのを防止することができる。また深い差込溝を構成する側壁をスリットにより開いて差込み溝を拡開させることができ、これよりノズルを差込んでシーラーの注入を容易に行うことができる。
【0024】
請求項2に係る発明によると、側壁の縦部に沿って侵入する水は、スリットより垂れ落ちてドリップ部内に流出するようになる。
請求項3に係る発明によると、側壁の縦部に沿って侵入する水は、広幅部の縦部の下端より垂れ落ちてそのままドリップ部内に流出するようになり、スリットより下流側への侵入を生じにくくする。
【0025】
請求項4に係る発明によると、側壁の縦部に沿って侵入する水はそのままスリットより流出するようになり、スリットより下流側への侵入を生じにくくする。
請求項5に係る発明によると、突起によって水が堰止められ、フランジの横部と広幅部の横部の間を通って車室内へ水が侵入するのをより確実に防ぐことができる。
【0026】
請求項6に係る発明によると、シーラー注入後、スリットを形成した側壁が開いてめくれるのが阻止される。またスリットが形成される車内側の側壁は着手段により止着されるが、この止着箇所はスリットに近くなるほど突起をフランジに強く押圧できるようになり、水の侵入をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】自動車のバックドアの正面図。
【図2】先閉めドアを閉じたときの図1のE−E線における断面図で、型成形部は図5のA−A線での断面を示す。
【図3】ドアウェザストリップの型成形部の斜視図。
【図4】図3に示す型成形部を先閉めドアのコーナに取付けた斜視図。
【図5】先閉めドアのコーナに取付けた型成形部を車内側から見た従来例の正面図。
【図6】図5のB−B線拡大断面図。
【図7】同C−C線断面図。
【図8】型成形部が取付けられる先閉めドアコーナ部の斜視図。
【図9】本発明に係るドアウェザストリップの型成形部の斜視図。
【図10】先閉めドアのコーナに取付けた図9に示す型成形部を車内側から見た正面図。
【図11】図1のE−E線に相当する箇所における断面図であり、かつ図10のD−D線での断面図。
【図12】横部を開いた状態を示す図。
【図13】図11、図12及び図13のb部の拡大断面図。
【図14】別の態様のスリットを備えた広幅部の断面図。
【図15】更に別の態様のスリットを備えた広幅部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態のドアウェザストリップについて図面により説明する。図中、図1〜図8に示す構造と同一構造部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0029】
図9は、図3と同様、ドアウェザストリップの型成形部51の全体構造を示す斜視図であり、図10は、図5と同様、右ドア3に取付けたドアウェザストリップの型成形部51を車内側から見た正面図、図11は図1のE−E線に相当する箇所における断面であり、かつ図10のD−D線での断面、図12は差込溝29を構成する車内側の側壁31の広幅部31aの横部31a1を開いた状態を示すものである。
【0030】
本実施形態の型成形部51が図2〜図7に示す従来の型成形部23と異なる点は、広幅部31aの縦部31a2と横部31a1の接する箇所に、広幅部31aの側端面よりドア幅方向にスリット52を差込溝29の溝底近くまで形成する。そして前記スリット52を境として横部31a1と区分けされる縦部31a2の下端面と、メインウェザストリップ15外周の車外側に位置する横部31a1のドア上端のフランジ側の端面(図11に示す横部31a1の右端面)の両端面のうち、下流側の横部31a1の前記端面には、図13に示すように、この端面に面し、かつ前記フランジ25に弾接して下流側への水止めを行う突起53をスリット52に沿い、スリット底に至るまで形成したことである。ここで前記スリット52は、図10に示す縦部31a2上端面とヒレ部39の傾斜した側端面が交差する点bを通る垂線nよりドア3とドア4の合せ部方向(図10に示す垂線nの右方)に突出して形成する必要がある。これにより前記点bより図の左方の縦部31a2とフランジ25との間に侵入した水がスリット52よりドリップ部8内に確実に流出できるようになる。
【0031】
本実施形態によると、車室内側側壁31の広幅部31aの縦部31a2とフランジ25との間に侵入した水は図11の点線で示すようにスリット52よりドリップ部8内に流出し、横部31a1への侵入は突起53により遮られるため、図2に矢印で示すように、車室内に侵入するのが防止される。また広幅部31aの差込溝29に前記シーラー30を注入する際には、スリット52より下流側の広幅部31aの横部31a1を図12の矢印で示す方向に開いて差込み溝19の開口部を拡げることによりシーラー注入用のノズルの挿入が容易となり、シーラー注入が容易に行えるようになる。シーラー注入後、ドアウェザストリップは右ドア3のインナーパネル3aのフランジ25に差し込まれる。そして前記広幅部31aの横部31a1の側方端部が図10に示すように、止着手段としてのクリップ33により右ドア3のインナーパネル3aに止着され、これによりシーラー注入後、広幅部31aが開くのが阻止される。また突起53に近接した位置をグリップ33で止着するため、突起53をフランジ25に強く押圧できるようになり、より一層水の侵入を防止できる。
【0032】
前記実施形態では、スリット52は前述するように縦部31a2と接する横部31a1のドア上端のフランジ側の側端(図11の右側端)に沿って形成されている。換言すればスリット52は前記横部31a1の縦部31a2と接する箇所に形成されている。しかし前記スリット52は縦部31a2に形成してもよいし、水がドリップ部内に流出できれば、メインウェザストリップ15外周の車外側に位置する前記横部31a1を含む広幅部31aのいずれの位置に形成してもよい。
【0033】
前述する型成形部51は、図11に示すフランジ12に車内側より当てがわれるヒレ部39やフランジ12の側方端を覆う被覆部41を備えているが(図9、図10参照)、これらヒレ部39や被覆部41は必須でなく、省いてもよい。また型成形部51の車室内側の側壁31は段状をなして横部31a1や縦部31a2は肉厚に形成されているが、広幅部31aは全体が同じ幅であってもよいし、肉厚も同じ肉厚であってもよい。
【0034】
前記実施形態の図示するスリット52は、溝幅が一定になっているが、スリット52の開口側が拡開し、或いは縮小するように形成されていてもよい。
【0035】
スリット52はまた、次のように設けてもよい。
図13は横部25a1と該横部25a1より上向きに屈曲する縦部25a2を備えたフランジ25の屈曲部Rにおいてスリット52が形成された別の例を示すものである。スリット52を屈曲部Rと対応する箇所に形成する場合、縦部25aの下端は図13に示すように屈曲部Rより上方に引込んだ状態としてもよいが、図14に示すように、屈曲部Rより離れて下向きに突出させるのが望ましい。これにより図10に示す実施形態と同様、フランジ25と前記縦部25a2との間に侵入した水は、図14の矢印で示すようにフランジ25の前記屈曲部Rを伝うことなく縦部25a2を伝ってドリップ部8に確実に流出するようになる。
【0036】
前述する型成形部23はまた、横部31a1をインナーパネル3aに止着する止着手段としてクリップ33を示しているが、両面テープその他既知の任意の止着手段を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、観音開きのバックドアに適用されるが、フロントドアやリヤドアが観音開きをなすサイドドアに適用することもできる。
【符号の説明】
【0038】
1・・ドア開口縁部
3・・右ドア
4・・左ドア
6・・ボデーウェザストリプ
8・・ドリップ部
8a、9、25・・フランジ
12・・ドア上端のフランジ
15・・メインウェザストリップ
21・・ドアウェザストリップ
22・・押出成形部
23、51・・型成形部
29・・差込溝
31・・車内側の側壁
31a・・広幅部
31a1・・横部
31a2・・縦部
33・・クリップ
39・・ヒレ部
41・・被覆部
52・・スリット
53・・突起
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観音開きドア3,4を構成するドアのうち、先閉めドア3の上下方向の側縁に形成されるフランジ25に差込んで取付けられる押出成形部22と、該押出成形上端に一体形成される型成形部51を備え、ドア3,4を閉じたとき、先閉めドア3と後閉めドア4の間をシールする自動車用のドアウェザストリップであって、前記型成形部51は前記フランジ25への深い差込溝29を備えた広幅部31aを有するドアウェザストリップにおいて、前記深い差込溝29を構成する広幅部31aの両側壁31、36のうち、一方の側壁31には該側壁31の側端面よりドア幅方向に切り込んで一端を開口した水抜き用のスリット52が形成され、前記フランジ25と型成形部51との間より侵入した水を前記水抜き用のスリット52を通してボデーのドア開口部上縁に設けられるドリップ部8内に流出させることを特徴とする自動車用のドアウェザストリップ。
【請求項2】
前記車内側の側壁31の広幅部31aは、横部25a1と該横部25a1より屈曲部Rを介して上向きに延びる縦部25a2とを備えた前記フランジ25に添設される横部31a1と縦部31a2を有し、前記スリット52は前記横部31a1と縦部31a2の間であって、かつ前記屈曲部Rと対応する箇所に形成されることを特徴とする請求項1記載の自動車用のドアウェザストリップ。
【請求項3】
前記広幅部31aの横部31a1端と共に前記スリット52を形成する縦部31a2の下端は前記屈曲部Rより離れて下向きに突出することを特徴とする請求項2記載の自動車用のドアウェザストリップ。
【請求項4】
前記スリット52は前記横部31a1の縦部31a2と接する箇所に形成されることを特徴とする請求項2又は3記載の自動車用のドアウェザストリップ。
【請求項5】
前記スリット52より下流側の車内側の側壁31には、前記フランジ25に弾接して下流側への水止めを行う突起53が前記スリット52に沿い突出形成されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの請求項に記載の自動車用のドアウェザストリップ。
【請求項6】
前記スリット52が形成される車内側の側壁31は、差込溝29へのシーラー30注入後、前記先閉めドア3に止着手段33により止着されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの請求項に記載の自動車用のドアウェザストリップ。
【請求項1】
観音開きドア3,4を構成するドアのうち、先閉めドア3の上下方向の側縁に形成されるフランジ25に差込んで取付けられる押出成形部22と、該押出成形上端に一体形成される型成形部51を備え、ドア3,4を閉じたとき、先閉めドア3と後閉めドア4の間をシールする自動車用のドアウェザストリップであって、前記型成形部51は前記フランジ25への深い差込溝29を備えた広幅部31aを有するドアウェザストリップにおいて、前記深い差込溝29を構成する広幅部31aの両側壁31、36のうち、一方の側壁31には該側壁31の側端面よりドア幅方向に切り込んで一端を開口した水抜き用のスリット52が形成され、前記フランジ25と型成形部51との間より侵入した水を前記水抜き用のスリット52を通してボデーのドア開口部上縁に設けられるドリップ部8内に流出させることを特徴とする自動車用のドアウェザストリップ。
【請求項2】
前記車内側の側壁31の広幅部31aは、横部25a1と該横部25a1より屈曲部Rを介して上向きに延びる縦部25a2とを備えた前記フランジ25に添設される横部31a1と縦部31a2を有し、前記スリット52は前記横部31a1と縦部31a2の間であって、かつ前記屈曲部Rと対応する箇所に形成されることを特徴とする請求項1記載の自動車用のドアウェザストリップ。
【請求項3】
前記広幅部31aの横部31a1端と共に前記スリット52を形成する縦部31a2の下端は前記屈曲部Rより離れて下向きに突出することを特徴とする請求項2記載の自動車用のドアウェザストリップ。
【請求項4】
前記スリット52は前記横部31a1の縦部31a2と接する箇所に形成されることを特徴とする請求項2又は3記載の自動車用のドアウェザストリップ。
【請求項5】
前記スリット52より下流側の車内側の側壁31には、前記フランジ25に弾接して下流側への水止めを行う突起53が前記スリット52に沿い突出形成されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの請求項に記載の自動車用のドアウェザストリップ。
【請求項6】
前記スリット52が形成される車内側の側壁31は、差込溝29へのシーラー30注入後、前記先閉めドア3に止着手段33により止着されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの請求項に記載の自動車用のドアウェザストリップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−86767(P2013−86767A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231998(P2011−231998)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】
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