説明

自動車用ウェザーストリップ

【課題】 リップ部の外面に被覆層を設けたオープニングシールなどにおいて、そのリップ部と被覆層との比重差によって、リップ部が変形することのない自動車用のウェザーストリップを提供する。
【解決手段】 発泡状材Sであるリップ部10の外面11に、所望色の熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製ソリッド材であり、リップ部10より比重の大きい被覆層Cを設ける。リップ部10の外面11とは逆側の面である内面12にも、被覆層Cを部分的または全体的に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のボディパネルに取付けられ、外面に被覆層(所望色の熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製のカラーソリッド材)Cを設けた湾曲状のリップ部を備えるオープニングシールなどのウェザーストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車ボディパネル2のドア開口縁には、図1および図2に示すように、ドアパネルに弾接してシール性を確保するためにオープニングシール(ウェザーストリップ)40が取付けられている。このオープニングシール40は、取付フランジに組付く断面略U字状の取付基部20と、それに一体成形されドアに弾接する中空シール部30と、取付基部20から突設され、内装トリム4に当接するリップ部10を備える。
【0003】
また、こうした形態のオープニングシール40には、図2に示すように、取付基部20の底壁21とそれに連続するリップ部10の外面11に、意匠性などを目的としてカラーソリッド材(所望色の熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製のソリッド材)C1を設けたものが多く使用されている。
【0004】
このカラーソリッド材C1は比重が0.9〜1.3である。また、取付基部20とリップ部10は微発泡ソリッド材で形成され、その比重は0.9〜1.1である。また、中空シール部30はスポンジ材Pで形成され、その比重は通常0.4〜0.6である。
【0005】
なお、リップ部10の外面11にソリッド材を設ける技術は、例えば、特許文献1および2に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、オープニングシールの軽量化を図るために、取付基部20を発泡状材Sである微発泡ソリッド材(比重0.9〜1.1)又はこれよりも軽い、軽量化微発泡ソリッド材S1(比重0.6〜0.95)で形成することを目的に研究を重ねてきた。しかし、特に取付基部20を軽量微発泡ソリッド材とし、外面(意匠面)に被膜層であるカラーソリッド材C1を共押出しして形成すると、加硫工程の熱によってリップ部10が、図2の想像線で示すように下方へ反り返ってしまうという問題が発生する。
【0007】
これは、取付基部20の比重を0.9〜1.1の範囲(微発泡ソリッド材),又は更に0.6〜0.95(軽量化微発泡ソリッド材S1)まで小さくしたことにより、リップ部10の外面11に設けられた被膜層C(比重0.9〜1.3)との比重差が、より大きい場合(比重0.2以上)に起因するものである。
【0008】
すなわち、加硫工程において、発泡状材であるリップ部10は発泡して膨張するが、その外面11の被覆層Cは発泡しない又は発泡しても微量であると共に、それに隣接するリップ部10の発泡状材の発泡を妨げてしまう。これにより、発泡した部分が膨らみ、被覆層Cの部分は膨らまない又は発泡しても微量であるので、リップ部10が図2の下方へ反り返るように変形する。前記した被覆層Cとリップ部10の比重差が大きくなったことによって、こうした傾向が顕著に現れる。
【0009】
本発明は、こうした問題に鑑み創案されたもので、リップ部の外面11に被覆層を設けたオープニングシールなどにおいて、そのリップ部と被覆層との比重差によって、リップ部が変形することのない自動車用のウェザーストリップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
図1、図3および図4を参照して説明する。請求項1に記載の自動車用ウェザーストリップ1は、発泡状材S特に軽量化微発泡ソリッド材S1であるリップ部10の外面11に、例えば所望色の熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製ソリッド材であり、前記リップ部10より比重の大きい被覆層Cを設けたものにおいて、前記リップ部10の外面11とは逆側の面である内面12にも、前記被覆層Cを部分的または全体的に設けたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載の自動車用ウェザーストリップ1は、ボディパネル2のドア開口縁に沿って形成されたフランジ部3に組付く断面略U字状で、発泡状材S特に軽量化微発泡ソリッド材S1である取付基部20と、その取付基部20に一体成形され、ドアに弾接する中空シール部30と、前記取付基部20の底壁21から突設され、内装トリム4に当接する発泡状物材Sであるリップ部10を備え、前記取付基部20の底壁21と前記リップ部10の外面11に、例えば所望色の熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製ソリッド材であり、前記取付基部20およびリップ部10より比重の大きい被覆層Cを設けたものにおいて、前記リップ部10の内面12の一部または全体にも前記被覆層Cを設けたことを特徴とするものである。
【0012】
ここで請求項1又は2に記載の発泡状材Sの被膜層の比重差は0.2以上である。
【0013】
請求項3に記載の自動車用ウェザーストリップ1は、請求項1または2に記載の発明において、発泡状材S1である取付基部20およびリップ部10の比重が0.6〜1.1であり、熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製ソリッド材である被覆層Cの比重が0.9〜1.3であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載の自動車用ウェザーストリップ1は、請求項2または3に記載の発明において、被覆層Cを、リップ部10の内面12の基端部であり、取付基部20の室内側壁22に連続する湾曲面13に設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の自動車用ウェザーストリップ1は、発泡状材Sであるリップ部10の外面11に、所望色の熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製ソリッド材であり、前記リップ部10より比重の大きい被覆層Cを設けたものにおいて、リップ部10の外面11とは逆側の面である内面12にも、被覆層Cを部分的または全体的に設けたので、加硫発泡後においても、リップ部10は一方向に反り返ることなく、加硫前の原形をそのまま維持することができる。
【0016】
すなわち、リップ部10の内面12にも、外面11と同様に被覆層Cを設けているので、リップ部10(特に軽量化微発泡状ソリッド材S1)の外面11と内面12の被覆層Cに当接している部分は、発泡しない又は発泡しても微量の被覆層Cの影響によってその膨らみ(発泡)が同じように抑制される。従って、リップ部10は、その内部は発泡するものの、被覆層Cによる抑制によって変形が防止される。
【0017】
請求項2に記載の自動車用ウェザーストリップ1は、断面略U字状で発泡状材Sである取付基部20の底壁21とリップ部10の外面11に、例えば所望色の熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製ソリッド材であり、前記取付基部20およびリップ部10より比重の大きい被覆層Cを設けたものにおいて、リップ部10の内面12の一部または全体にも被覆層Cを設けたので、リップ部10が車外側に反り返るといった事態を未然に防止することができる。
【0018】
すなわち、リップ部10の外面11と同様に内面12にも被覆層Cを設けているので、加硫発泡時において、リップ部10(発泡状物材S)の、外面11と内面12の被覆層Cに当接している部分は、その膨らみ(発泡)が同じように抑制される。従って、リップ部10の内部は発泡するものの、従来のように下方へ反り返るといった変形が未然に防止される。
【0019】
請求項3に記載の自動車用ウェザーストリップ1は、請求項1および2に記載の発明と同様の効果を発揮する。また、発泡状材S1である取付基部20およびリップ部10の比重0.6〜1.1であり、熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製ソリッド材である被覆層Cの比重が1.1〜1.3である。特に発泡状材に軽量化微発泡ソリッド材を使用した場合、特に、取付基部20およびリップ部10を通常の微発泡ソリッド材(比重0.9〜1.1)で形成していた場合よりも明らかに大きい。これは、両者の比重差が0.2以上であるためと考えられる。
【0020】
従って、外面11に被覆層Cを設けると、リップ部10は下方に大きく反り返る結果となる。本発明では、リップ部10の内面12にも、外面11と同じ被覆層Cを設けているので、こうした大きな比重差にもかかわらず、リップ部10の反り返りを確実に防止することができる。
【0021】
請求項4に記載の自動車用ウェザーストリップ1は、請求項2又は3に記載の発明と同様の効果を発揮する。また、被覆層Cを、リップ部10の内面12の基端部であり、取付基部20の室内側壁22に連続する湾曲面13に設けたので、被覆層Cを内面12の全体に設けることなく、効果的にリップ部10の反り返りを防止することができる。
【0022】
すなわち、リップ部10の湾曲面13は、リップ部10が下方へ反り返る際に最も大きな応力を受けて変形する部分であり、よって、この湾曲面13の変形を抑制することによってリップ部10の全体の変形を効果的に防止することができる。これにより、被覆層,特に着色されたカラーソリッド材C(高価)の使用量を削減して、生産性の向上を図るとことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】ウェザーストリップを備えた自動車を示す側面図である。
【図2】従来例に係るウェザーストリップを示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図3】本発明の第一実施形態に係るウェザーストリップを示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図4】本発明の第二実施形態に係るウェザーストリップを示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図5】本発明と同じ課題を解決するウェザーストリップを示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図6】本発明と同じ課題を解決する他のウェザーストリップを示すもので、図1のX−X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る自動車用ウェザーストリップ1の第一実施形態を、図1および図3に示す。このウェザーストリップ1は、ボディパネル2のドア開口縁に沿って形成されたフランジ部3に組付く断面略U字状で、取付リップ23を有し、芯材24を埋設した取付基部20と、該取付基部20に一体成形され、ドアに弾接する中空シール部30と、前記取付基部20の底壁21から突設され、内装トリム4に当接するリップ部10を備えるオープニングシールである。
【0025】
このオープニングシール1の取付基部20の底壁21とリップ部10の外面11には、連続的に、所望色の熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製ソリッド材である被覆層Cを設けている。この取付基部20およびリップ部10は、比重0.6〜1.1の発泡状材Sで形成している。また、被覆層Cの比重は前記発泡状材Sよりも比重が0.2程度大きい1.1〜1.3である。なお、中空シール部30は、スポンジゴム(比重0.4〜0.8)で形成している。そして、被覆層Cを、リップ部10の内面12の基端部であり、取付基部20の室内側壁22に連続する湾曲面13にも設けている。
【0026】
このウェザーストリップ1は、リップ部10の内面12にも被覆層Cを設けているので、リップ部10(発泡状材S)の、外面11と内面12の被覆層Cに当接している部分は、その膨らみが同じように抑制される。従って、リップ部10の内部は発泡するものの、下方へ反り返るように変形するといった事態が防止される。
【0027】
また、被覆層Cを湾曲面13に設けているので、内面12の全体に設けることなく、効果的にリップ部10の反り返りを防止することができる。リップ部10の湾曲面13は、リップ部10が車外側へ反り返る際に最も大きな応力を受けて変形する部分であるが、この湾曲面13の変形を抑制することによってリップ部10の全体の変形を効果的に防止している。これにより、被覆層Cの使用量を減らして、生産性を高めることができる。
【0028】
本発明に係る自動車用ウェザーストリップ1の第二実施形態を、図1および図4に示す。このウェザーストリップ1の特徴は、被覆層Cを、リップ部10の内面12の全体に設けたことである。これにより、取付基部20の底壁21からリップ部10の湾曲面13に至る全域に連続的に被覆層Cを設けて、リップ部10の反り返りを確実に防止している。
【0029】
なお、ウェザーストリップ1のリップ部10の変形を防止するための手段として、本発明者らは、内面12に被覆層Cを設けることの他に、図5および図6に示すものを創案した。図5に示すウェザーストリップ1は、取付基部20の底壁21からリップ部10の外面11に連続して被覆層Cを設けたものにおいて、リップ部10のほぼ付け根部分を発泡状材S(比重0.6〜0.95)よりも比重が0.2程度大きいソリッド材S2で形成した硬質部14を備えるものである。
【0030】
また、図6に示すウェザーストリップ1は、同じく取付基部20の底壁21からリップ部10の外面11に連続して被覆層Cを設けたものにおいて、リップ部10の室内側部分の全体を発泡状材S1よりも比重が0.2程度大きいソリッド材S2で形成した硬質部14を備えている。
【0031】
なお、本発明に係る自動車用ウェザーストリップ1は、オープニングシールのみに限定されるものではなく、リップ部10を備える他のウェザーストリップの全てに適用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 ウェザーストリップ
2 ボディパネル
3 フランジ部
4 内装トリム
10 リップ部
11 外面
12 内面
13 湾曲面
14 硬質部
20 取付基部
21 底壁
22 室内側壁
23 取付リップ
24 芯材
30 中空シール部
40 ウェザーストリップ
C 被覆層
C1 カラーソリッド材
S 発泡状材
S1 軽量化微発泡ソリッド材
S2 ソリッド材
P スポンジ材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】特開2008−132858号公報
【特許文献2】特開2008−132859号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡状材(S)であるリップ部(10)の外面(11)に,熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製であり,前記リップ部より比重の大きい被覆層(C)を設けた自動車のウェザーストリップにおいて、前記リップ部の外面とは逆側の面である内面(12)にも,前記被覆層を部分的または全体的に設けたことを特徴とする自動車用ウェザーストリップ。
【請求項2】
ボディパネル(2)のドア開口縁に沿って形成されたフランジ部(3)に組付く断面略U字状で,発泡状材(S)である取付基部(20)と,該取付基部に一体成形され,ドアに弾接する中空シール部(30)と,前記取付基部の底壁(21)から突設され,内装トリム(4)に当接する発泡状材であるリップ部(10)を備え,前記取付基部の底壁と前記リップ部の外面(11)に,熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製であり,前記取付基部およびリップ部より比重の大きい被覆層(C)を設けた自動車のウェザーストリップにおいて、前記リップ部の内面(12)の一部または全体にも前記被覆層を設けたことを特徴とする自動車用ウェザーストリップ。
【請求項3】
発泡状材(S)である取付基部(20)およびリップ部(10)の比重が0.6〜1.1であり、熱硬化性又は熱可塑性エラストマー製である被覆層(C)の比重が0.9〜1.3であることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用ウェザーストリップ。
【請求項4】
被覆層(C)を、リップ部(10)の内面(12)の基端部であり、取付基部(20)の室内側壁(22)に連続する湾曲面(13)に設けたことを特徴とする請求項2または3に記載の自動車用ウェザーストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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