説明

自動車用サスペンションアーム

サスペンションアーム本体(1)が、厚さは薄く、慣性力は最大になる形状にスタンピング操作で薄板に形成されるとともに、ボールジョイント(2)とフロントサスペンションブッシュ(3)とリアサスペンションブッシュ(4)とを容易に装着できるモジュール式エレメントで構成される。ボールジョイント(2)は、フロントハウジング(5)の外周部内に配置され、互いに嵌合しレーザで溶接された下部ソケット(6)と覆い板(7)とを用いて装着される。フロントサスペンションブッシュ(3)は、円筒体を示すブロックであって、その表面からは数ペアの固定用フラップ(11)が、半径方向に延び、凹曲面状フロントハウジング(9)内に規定されたスロット(8)に挿入され、突き出たフラップは折り曲げられ、さらにレーザ溶接で接合される。リアサスペンションブッシュ(4)は、圧入式ブッシュ(15)を用いてリアハウジング(12)に装着される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用サスペンションアームに関する。このサスペンションアームは、追加部品を一体化するのに最適化された部分を備える軽量単一ピースにプレス加工された薄板メタルの形で製造され、自動車の組立ラインにおいて車両に直ぐに取り付けできる単一ピースで構成される。
【0002】
このサスペンションアームは、最大限に好ましい慣性力を得るのに適した幾何学形状で設計された軽量ボディで製造され、ハウジングを3個備え、各ハウジングにはそれぞれ、ボールジョイントと、フロント側振動吸収用サスペンションブッシュと、リア側振動吸収用サスペンションブッシュとが装着される。ボールジョイントはレーザ溶接されたソケットとカバーに保持されてしっかりと固定されている。フロント側振動吸収用サスペンションブッシュは、固定用フラップを折り曲げ、さらにレーザ溶接を行うことによって装着され、バックエンド振動吸収用サスペンションブッシュは、圧入されるブッシュでアームボディに装着される。
【背景技術】
【0003】
自動車のフロント部分は、通常、自動車のホイールハブをシャシにリンク可能とするサスペンションアームを備える。サスペンションアームは、ホイール側のボールジョイントとシャシ側の2個のサスペンションブッシュとから成る3個の固定用ポイントを備えるボディから構成される。この構成により、リンク装置は可動となり、自動車は各ホイールごとの独立懸架装置を備えることになる。自動車サスペンションの形式(マクファーソン式または従来式)や使用材質が変われば、サスペンションアームも相異なる形式となる。
【0004】
鍛造品アームがマクファーソン式サスペンションに用いられ場合は、アームにボールジョイントが機械加工され、さらに2個のサスペンションブッシュが搭載される。
【0005】
薄板アームは、マクファーソン式サスペンションと従来式サスペンションとの双方に用いられる。この場合、薄板から打ち出された2枚のピースを組み立て、溶接し、ボックス形状に成形する。使用材質は、高弾性限度を備える高品質のもので、サスペンションに本質的に加わる衝撃によってもアーム変形が生じないことが保証される材質でなければならない。
【0006】
薄板メタル製のこれらのサスペンションアームでは、鍛造品アームに比較して重量低減が達成される。しかし、薄板アームは、所要の慣性力と機械的強度を得るに好適なマス量に欠けるのが普通である。
【0007】
他方、サスペンションアームは、アルミニウムでも設計可能で、重量が少なくても他の材質と同じ機能特性が得られる。
【0008】
欧州特許第0401547号に記載の発明に、単板の三角形状のサスペンションアームが見出される。この三角形サスペンションアームは、三角形の頂点の一つにホイール・ストラット保持装置に連結するボールジョイントを備え、他の二つの頂点にはシャシに対して旋回する個々のサスペンションブッシュを関節状に備えている。
【0009】
【特許文献1】欧州特許第0401547号明細書
【発明の開示】
【0010】
本発明の自動車用サスペンションアームは、自動車アセンブリラインにおいて直ちに組み込まれ得るモジュール式の解決策を提供する。このサスペンションアームは、プレス加工で成形された薄板のボディに、レーザ溶接プロセスで接合されたボールジョイントと圧入ブッシュで固定されたリアサスペンションブッシュと固定用フラップとレーザ溶接双方で接合されたフロントサスペンションブッシュとを備えるものである。
【0011】
開示のサスペンションアームは、他のサスペンションアームと対照的に、相異なる機能を統合した単一のモジュールであり、以下にその特徴を記載する。
【0012】
第一に、ボールジョイントを取り囲む2個の金属部品に適用されるレーザ溶接技術を採用することによって、サスペンションアームにボールジョイントを締結または装着する操作を低コストで行う新たなアセンブリ操作が提唱される。金属部品の片方は、下部ソケットからなる部品である。下部ソケットは、アーム本体の一頂点に予め取り付けられた外部フロントハウジングに設けられ、前記ハウジングの円周外縁部に円周状突起で支えられている。下部ソケットの内部には、ボールジョイントが保持されている。ボールジョイントはさらにもう一つの金属部品で覆われている。このもう一つの金属部品は、覆い板からなる部品である。覆い板は下部ソケットの上を覆う蓋となり、アーム本体の上面にレーザで溶接され、そのような構成のアセンブリが確実に締結されるようにする。
【0013】
第二には、サスペンションアームの本体は、厚さは薄く、慣性力は最大となる特別な幾何学的形状を備え、最適な方法でホイールとシャシとの間の連結を確実に行えるモジュール式単一部品で構成することを意図していることである。
【0014】
求められた第三の機能は、フロントサスペンションブッシュを用いてフロントエンド振動を吸収する機能からなる。フロントサスペンションブッシュの装着は、サスペンションアームの内部フロント頂点に予め取り付けられた凹曲面内部フロントハウジング内に固定用フラップを折り曲げ、さらにレーザ溶接を行うことによって、新たな単純な方法で行われる。より具体的に述べれば、フロントサスペンションブッシュには、多くの枚数の固定用フラップがペアとなるようにグループ化されて備えられ、フラップの方向はフロントサスペンションブッシュの円筒本体に直角の方向になっている。これらのフラップを、フロントハウジング内部に設けられたスロットに挿入し、その後突き出たペアのフラップをそれぞれ反対方向に折り曲げ、フロントサスペンションブッシュを確実に固定する。その後、溶接を行って、フロントサスペンションブッシュをサスペンションアーム本体に確実に装着する。
【0015】
第四の機能は、リアサスペンションブッシュを用いてリアエンド振動を吸収する機能に関する。リアサスペンションブッシュは、2個のブッシュを用いることによって、サスペンションアームの後ろの頂点に予め取り付けられたリアハウジング内に単純な方法で装着される。2個のブッシュは両側から内部に圧入される。
【0016】
前記のサスペンションアームで達成される第五の機能は、前記の機能を統合し、自動車メーカーの組み立てラインにて直ちに組み込め得る経済的、かつ軽量のアセンブリが得られエレメントとしてのアーム自体のモジュール式概念に関連する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の目的を構成する自動車用サスペンションアームは、基本的に本体(1)から構成され、ボールジョイント(2)によって車のホイールのストラット保持装置に連結され、一方、フロントサスペンションブッシュ(3)とリアサスペンションブッシュ(4)とによって車のシャシに連結されるものである。
【0018】
この基本的な構成から始まり、本発明のサスペンションアームは、本体(1)が、厚さは薄く、慣性力は最大になる形状にプレス加工で薄板より形成されるとともに、ボールジョイント(2)とフロントサスペンションブッシュ(3)とリアサスペンションブッシュ(4)とを容易に装着できるモジュール式エレメントで構成されることを主に特徴とするものである。
【0019】
ボールジョイント(2)は、本体(1)の外部フロントハウジング(5)内で、下部ソケット(6)と覆い板(7)との間に連結される。下部ソケット(6)は、前記フロントハウジング(5)の外円周部に挿入され、前記フロントハウジング(5)外円周部の縁に円周状突起(14)によって支えられる。覆い板(7)は、下部ソケット(6)を覆い、本体(1)の上面にレーザで溶接され、溶接ビード(13)が盛り上がっている。
【0020】
フロントサスペンションブッシュ(3)は、円筒体を示し、その表面から数ペアの固定用フラップ(11)が半径方向に延びている。固定用フラップ(11)は、本体(1)の凹曲面状フロントハウジング(9)内に形成されたスロット(8)に挿入され、突き出たペアのフラップは交互に反対方向に折り曲げられる。フロントサスペンションブッシュ(3)は、レーザ溶接で得られた溶接ビード(10)で本体(1)に接合される。
【0021】
リアサスペンションブッシュ(4)は、圧力挿入式ブッシュ(15)を用いてリアハウジング(12)に装着される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の説明を完結するため、本発明の特徴をより良好に理解するのを助けるため、本発明の実施の形態の好ましい実施例に基づいて、本発明の重要な一部として、詳細な説明に添付するのは、以下の一連の図面である。しかし、以下の図面は、説明のためであり、限定を目的とするものではない。
【図1】機能エレメントが組み込まれたモジュール式サスペンションアームの斜視図である。
【図2】サスペンションアーム本体の斜視図で、各頂点にハウジングが見られる図である。
【図3】サスペンションアームの斜視図で、サスペンションアーム本体のハウジングにサスペンションブッシュとボールジョイントのアセンブリが見られる図である。
【図4】フロントサスペンションブッシュなどを組み込むシーケンスの概略図である。
【図5】本体のフロントハウジング内部にフロントサスペンションブッシュを装着するのを示す図で、折り曲げられた固定用フラップと溶接ビードが見られる図である。
【図6】本体のフロントハウジング内部にフロントサスペンションブッシュを装着した状態を示す拡大斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボールジョイント(2)を用いて車のホイールのストラット保持装置に連結され、フロントサスペンションブッシュ(3)とリアサスペンションブッシュ(4)とを用いて車のシャシに連結される本体(1)を備える自動車用サスペンションアームにおいて、
本体(1)が、厚さは薄く、慣性力は最大になる形状にスタンピング操作で薄板に形成されるとともに、ボールジョイント(2)とフロントサスペンションブッシュ(3)とリアサスペンションブッシュ(4)とを容易に装着できるモジュール式エレメントで構成されることを主に特徴とし、
ボールジョイント(2)は、本体(1)の外部フロントハウジング(5)内で、下部ソケット(6)と覆い板(7)との間に連結され、下部ソケット(6)は、前記フロントハウジング(5)の外円周部に挿入されて前記フロントハウジング(5)外円周部の縁に円周状突起(14)によって支えられ、覆い板(7)は、下部ソケット(6)を覆い、本体(1)の上面にレーザで溶接され、溶接ビード(13)が盛り上がり、
フロントサスペンションブッシュ(3)は、円筒体を示し、その表面から数ペアの固定用フラップ(11)が半径方向に延びていて、固定用フラップ(11)は、本体(1)の凹曲面状フロントハウジング(9)内に形成されたスロット(8)に挿入され、突き出たペアのフラップは交互に反対方向に折り曲げられ、フロントサスペンションブッシュ(3)は、レーザ溶接で得られた溶接ビード(10)で本体(1)に接合され、
リアサスペンションブッシュ(4)は、圧力挿入式ブッシュ(15)を用いてリアハウジング(12)に装着されている、
自動車用サスペンションアーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−514578(P2007−514578A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503818(P2005−503818)
【出願日】平成15年7月7日(2003.7.7)
【国際出願番号】PCT/ES2003/000336
【国際公開番号】WO2005/005180
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(503291842)セタエフェ アンサ レムフェルデル ソシエダッド リミターダ (1)
【Fターム(参考)】