説明

自動車用シートレールのためのロック機構

【課題】従来技術における欠点を備えないようにロック機構を改善する。
【解決手段】自動車用シートレールのためのロック機構は、車両に固定のロアレールと、このロアレール内を案内されるシートに固定のアッパレールとを備えている。アッパレールは、アッパレールの長手方向に互いに間隔を置いた多数の予緊張された、ロアレールとのロックのためのロック要素を備える。ロック機構は、更に、アッパレールの長手方向に配設された、操作装置に設けられた操作要素を介してロアレールとの係入及び係脱をするロック要素の運動のためのシート部分に固定で旋回可能に配設された操作装置を備えている。操作装置は、アッパレールに対して横に延在する旋回軸を備え、この旋回軸を中心として、操作要素が操作装置と共に旋回可能であり、その際、操作要素は、ロック要素を同時に操作装置の旋回の際に運動させることができるように、操作装置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の自動車用シートレールのためのロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のためのシートレールのロック部は、通常互いに独立してスライド可能な複数のロック要素を備える。これら爪状のロック要素は、シートレール(アッパレール)内を案内され、その内の少なくとも幾つかは、相応に別のシートレール(ロアレール)に設けられたパターン穴の形に形成された切欠き部に係合する。このパターン穴の配設によって、シートレールの調整の可能性の細かい段階付けが可能であり、その際、少なくとも常に1つのロック要素が実際に1つのロック部を生じさせ得ることが保証される。
【0003】
このようなロック部において問題となるのは、ロック要素が、通常予緊張下で保持され、従って、少なくとも1つのロック要素は、確かにロックされる、即ち相応の切欠き部に没入させられるが、残りのロック要素の没入は、摩擦によって互いにレールがロックしているために困難にされ、これが、クラッシュの場合に安全問題にと成り得ることである。特許文献1では、ロック要素を同時に操作することが提案される。このため、ロック要素をロックレールに対して平行な軸(車両の長手方向の軸)を中心として旋回させる機構が使用される。車両の搭乗者によるこの旋回運動の操作をするために旋回レバーが設けられており、この旋回レバーは、通常1つの軸を中心として車両の長手方向に対して横に旋回可能でなければならない。即ち、ハンドレバーからこのハンドレバーに対して垂直に旋回可能なロック要素への運動の伝達が行なわれなければならない。このために必要な機構は、付加的な構造上の費用を要し、その上、望ましくない公差の累積に至る。
【特許文献1】仏国特許第2 759 330号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の課題は、前記の欠点を備えない冒頭で述べたロック機構を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1の特徴によって解決される。更なる有利な実施形は、下位の請求項にある。
【0006】
本発明によれば、操作要素が配設されたロック機構のアッパレールに対して横に旋回可能な操作装置が設けられている。この場合、操作要素は、車両の長手方向に配設されており、その際、各操作要素は、ロック要素と協働するために形成されている。操作要素の本発明による形成によって、旋回軸からの距離が異なっており、かつ旋回の際に戻される道程が異なっているにもかかわらずロック要素との協働が常にほぼ同時に行なわれる。このため、操作装置が設けられており、その操作要素は、特にバネ鋼から成る指状の要素であり、これらの要素は、操作装置に固定されているか、この操作装置と一体的に形成されている。この場合、操作要素は、特に異なった弾性変形能力をもって形成されており、従って、これらの操作要素は、旋回軸を中心として操作要素を旋回させる際に、戻されるべき道程が異なっているにも関わらず、同時かつ一様なロック要素との協働を生じさせる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を、以下で図1〜6を基にして概略を詳細に説明する。
【0008】
図1に、本発明によるロック機構の斜視図を示す。通常はボディに固定で取り付けられているロアレール1と、ロック要素3が設けられている、ロアレール1内を案内されるアッパレール2と、操作装置4とが図示されている。ロック要素3は、特にボルト状に形成されており、バネ7によって予緊張されており、係合要素8を備え、これら係合要素は、特に爪状に形成されている。係合要素8は、突出部8aを備え、これら突出部は、ロアレール1の相応の切欠き部に係合することができる。係合要素8とロアレール1の切欠き部間の係合は、特に、ロック要素3がバネ7の予緊張に抗して押し下げられることによって解除される。
【0009】
ロック要素3を押し下げるため、操作要素5が操作装置4に設けられている。これら操作要素は、特に指状に形成されており、それぞれ1つのロック要素3に対応している。示した実施形においては、操作装置4が、車両の長手方向に対して横に延在する軸Sを中心として旋回可能であるレバーチューブ6によって構成される。レバーチューブ6の一部分から操作要素5が広がっており、これら操作要素は、レバーチューブ6の旋回によってほぼ同時にロック要素3の上に位置するようになるよう、個々に又は一体的に設けることができる。示された一体的な実施形の場合、操作要素5は、指状にフィンガプレートからレール1,2に対して垂直に突出する。操作要素(フィンガ)5は、特にバネ鋼から成り、異なった長さで形成されている。レバーチューブ6の旋回軸Sの最も近くに位置するフィンガ5は、最も短く、フィンガ5の長さは、フィンガが旋回軸Sから離れるに従って連続的に増加する。これにより、フィンガ5は、ロック要素3との協働に際して異なった強さで弾性変形させられる。
【0010】
旋回軸Sから最も遠くに間隔を置いた操作要素は、特に最大の弾性変形能力を備える。旋回軸Sの最も近くに位置する操作要素は、これに対して最小の弾性変形能力を備える。個々の操作要素5の弾性変形能力は、操作要素5がレバーチューブの旋回に際してそれぞれのロック要素3との接触領域において個々の操作要素5が進む異なった道程の補償をするように選択されている。これにより、それぞれのロック要素3に対する操作要素5のほぼ同時で一様な作用が得られる。
【0011】
図2は、本発明による操作装置4の選択的な実施形を示す。図1からのフィンガプレートは、レバーチューブ6に固定された、レール1,2に対して平行に配設されたレバー10によって置換されており、このレバーに操作要素(フィンガ)5’が存在し、これらの操作要素は、ほぼレバー方向に延在し、板バネの様式により形成されている。操作要素5’は、その弾性変形能力に関連して再び操作装置4の旋回に際してロック要素3の方向に進むべき道筋に向かって整向されている。示した例では、旋回軸に最も近い操作要素は、フィンガ5’によって構成されるのではなく、むしろここでは、レバー10の一部分が、直接ロック要素3と協働する。
【0012】
示された両方の変化形に対して一致している別の作用方法は、図3〜6を基にして、図1に示した実施形の例で詳細に説明する。
【0013】
図3は、操作要素5が、バネ7によって予緊張されたロック要素3との接触を何ら備えない操作装置4の第1の状態を示す。ロック要素3は、係合要素8と結合されており、これら係合要素は、突出部8aによって(図1参照)爪状に形成されており、ロアレール1の相応の切欠き部9に係合する。切欠き部9は、パターン穴としてロアレール1に設けられており、このパターン穴は、できるだけ多くの爪のための係合の可能性及びこれによりできるだけ多くのレール1,2の互いの調整の可能性を提供するために、ロアレール1の全長にわたって一様に形成された穴を備える。ロアレール1の穴によって、個々の係合要素8が相応の突出部8aをもってロアレール1の切欠き部9に収容され、これが、ロック要素3がバネ7を圧縮して下の非係合位置に残っている(図3の中央のロック要素を参照)ようにすることが可能である。ロアレール1の穴は、特に、示した例で、係合要素8の少なくとも2つが常にロアレール1の切欠き部9で係止されるように設けられている。
【0014】
ロアレール1からロック要素3もしくは係合要素8を解除するため、レバーチューブ6、従って操作要素5は、矢印Pの方向に旋回される。この工程の別の経過は、図4〜6から分かる。
【0015】
図4では、フィンガプレートが、操作要素5によって複数のロック要素3上に載っている。レバーチューブ6の更なる旋回に際して、フィンガプレートは、操作要素5で更にロック要素3に押し付けられ、その際、操作要素5は、上に向かって曲がる。この場合、左の操作要素は、最も強く上に向かって曲げられ、中央の操作要素は、若干強く、そして旋回軸Sの最も近くに配された右の操作要素は、全く又はほとんど変形されない。個々の操作要素の変形能力は、ここでは、使用されるバネ7の張力並びに旋回の際に方向P沿って個々の操作要素5が進む道程に適合させられている。この場合、長い道筋を、大きな弾性変形能力が必要とする。操作要素の異なった弾性変形能力によって、ロック要素3は、バネ7の緊張に抗して一様に下に向かって押される。この場合、係合要素8は、下に向かって、ロアレール1との係合がもはや何らなくなるまで移動する。この状況は、図6に図示されている。ロック男要素3は、操作要素5によって最大に下に向かって押されており、従って、アッパレール2及びロアレール1は、互いに運動され、所望の調整位置に調整され得る。引き続き、係合は、操作要素5の解放又は逆旋回によって再び生じさせられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明によるロック機構の実施形の斜視図を示す。
【図2】本発明によるロック機構の選択的な実施形の斜視図を示す。
【図3】操作装置が操作されない第1の位置に存在する、図1からの実施形の側面図を示す。
【図4】操作された操作装置が第2の位置に存在する図1からの実施形の別の側面図を示す。
【図5】操作された操作装置が第3の位置に存在する図1からの実施形の別の側面図を示す。
【図6】操作された操作装置が第4の位置に存在する図1からの実施形の別の側面図を示す。
【符号の説明】
【0017】
1 ロアレール
2 アッパレール
3 ロック要素
4 操作装置
5 操作要素
6 レバーチューブ
7 バネ
8 係合要素
8a 突出部
S 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に固定のロアレール(1)と、このロアレール(1)内を案内されるシートに固定のアッパレール(2)−この場合、このアッパレール(2)は、アッパレール(2)の長手方向に互いに間隔を置いた多数の予緊張された、ロアレール(1)とのロックのためのロック要素(3)を備える−と、そして、アッパレール(2)の長手方向に配設された、操作装置(4)に設けられた操作要素(5)を介してロアレール(1)との係入及び係脱をするロック要素(3)の運動のためのシート部分に固定で旋回可能に配設された操作装置(4)とを有する自動車用シートレールのためのロック機構において、
操作装置(4)が、アッパレール(2)に対して横に延在する旋回軸(S)を備え、この旋回軸を中心として、操作要素(5)が操作装置(4)と共に旋回可能であり、その際、操作要素(5)は、ロック要素(3)を同時に操作装置(4)の旋回の際に運動させることができるように、操作装置(4)に設けられていることを特徴とするロック機構。
【請求項2】
操作要素(5)が、一体的な部品として形成され、かつ操作装置(4)と結合されていることを特徴とする請求項1に記載のロック機構。
【請求項3】
操作装置(4)が、レバーチューブ(6)を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のロック機構。
【請求項4】
ロック要素(3)が、アッパレール(2)の長手方向に対して垂直に形成された、バネ(7)によってアッパレール(2)から離れて予緊張されたボルトであり、これらのボルトを、操作要素(5)が、操作装置(4)を旋回させた際に押圧することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のロック機構。
【請求項5】
ボルト(3)が、ロアレール(1)の相応の切欠き部(9)に係合するための係合要素(8)を備えることを特徴とする請求項4に記載のロック機構。
【請求項6】
操作要素が、異なった弾性変形能力をもって形成されており、その際、各操作要素(5)の弾性変形能力が、それぞれの操作要素(5)の進んだ道筋に適合されており、この道筋を、付属するロック要素(3)を運動させた際に、操作装置(4)の旋回によりそれぞれの操作要素が進むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のロック機構。
【請求項7】
操作要素(5)が、指状の突出部であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のロック機構。
【請求項8】
個々の操作要素(5)の弾性変形能力が、旋回軸(S)からの間隔が増加すると共に増加することを特徴とする請求項6又は7に記載のロック機構。
【請求項9】
操作要素(5)の弾性変形能力が、それぞれのロック要素(3)の予緊張に適合させられていることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1つに記載のロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−117229(P2006−117229A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254511(P2005−254511)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(597040511)フアウレシア・アウトジッツェ・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシヤフト (3)
【Fターム(参考)】