説明

自動車用ドアウエザーストリップ

【課題】 ボディ側アウターリップとドア側アウターリップとの間部分である見切り部に凹溝を形成したドアウエザーストリップにおいて、ドア閉じ性や生産性を低下させることなく、雨天走行時に凹溝に溜まった雨水が飛散してサイドウインドウガラスに付着し、そこからの視界を遮ってしまうことのない製品を提供する。
【解決手段】 自動車のドア本体1に取付けられ、ボディパネル2に弾接する中空シール部14の他に、該中空シール部14よりも車外側で当該ボディパネル2に弾接するボディ側アウターリップ11と、ドア本体1の内面に弾接するドア側アウターリップ12の二つのアウターリップを有し、両者の空間部分である見切り部Pに凹溝13を形成したドアウエザーストリップにおいて、前記凹溝13を、比重0.05〜0.4、好ましくは0.1〜0.3の低比重柔軟弾性材16を付設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のドア本体に取付けられ、ボディパネルに弾接する中空シール部の他に、該中空シール部よりも車外側で当該ボディパネルに弾接するボディ側アウターリップと、ドア本体の内面に弾接するドア側アウターリップの二つのアウターリップを有し、両者の間部分である見切り部に凹溝を形成したドアウエザーストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1および図2を参照して説明する。自動車のドア本体1に取付けられる、通常比重0.4〜0.7のスポンジゴム材で構成されているところのドアウエザーストリップ20において、ドア閉後のアウターリップの車外側へのはみ出しを防止するために、ボディパネル2の車外側に弾接するボディ側アウターリップ21と、ドア本体1の内面に弾接するドア側アウターリップ22の二つのアウターリップを設け、両者の間部分であり、外から視覚される部分である見切り部Pに凹溝24を形成したものがある。
【0003】
このドアウエザーストリップ20は、見切り部Pに凹溝24を形成することで、ボディ側アウターリップ21の車外へのはみ出しを防止している。
【0004】
ちなみに、従来、図3に示すように、ボディ側アウターリップ31を釣針状に形成し、その先端部分31aをドア本体1に当接させたドアウエザーストリップ30が創案されているが(例えば、特許文献1参照)、これは、その先端部分31aが肉薄のリップ状であるため、走行時における吸い出し現象によってはみ出してしまい易いといった問題がある。また、当該先端部分31aの室内側には空間部Sが形成されているので、この空間部Sにヒンジやフロントピラー部分から空気が侵入し、異音が発生するといった問題も発生し易い。
【特許文献1】実開平3−10922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記したボディ側アウターリップ21とドア側アウターリップ22を有し、見切り部Pに凹溝24を形成した従来のドアウエザーストリップ20には、走行時においては風切り音が発生し、また、雨天走行時においては凹溝24に溜まった雨水が飛散してサイドウインドウガラス3に付着し、そこからの視界が遮られてしまうといった問題がある。
【0006】
こうした問題を解決するために、例えば、図4に示すドアウエザーストリップ40のように、ボディ側アウターリップ41の肉厚を同一材料で大きく設定して凹溝42を小さくすることが考えられる。しかし、そうするとボディ側アウターリップ41の剛性が大きくなるため、ドア閉じ性が悪化するといった新たな問題が発生する。
【0007】
また、図5に示すドアウエザーストリップ50のように、ボディ側アウターリップ51に中空部51aを形成して凹溝52を小さくすることも考えられる。しかし、この場合は、このドアウエザーストリップ50の型成形部を形成する場合に、金型に中空部51aを形成するための中芯抜き孔を形成する必要があるので、その構造が複雑となり、生産性の点から好ましくない。
【0008】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、中空シール部の他にボディ側アウターリップとドア側アウターリップを備え、その間部分である見切り部に凹溝を形成したドアウエザーストリップにおいて、ドア閉じ性や生産性を低下させることなく、雨天走行時に凹溝に溜まった雨水が飛散してサイドウインドウガラスに付着し、そこからの視界を遮ってしまうといった問題の発生しない構造の製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
図1および図6を参照して説明する。請求項1に記載の自動車用ドアウエザーストリップ10は、自動車のドア本体1に取付けられ、ボディパネル2に弾接する中空シール部14の他に、該中空シール部14よりも車外側で当該ボディパネル2に弾接するボディ側アウターリップ11と、ドア本体1の内面に弾接するドア側アウターリップ12の二つのアウターリップを有し、両者の間部分である見切り部Pに凹溝13を形成したドアウエザーストリップにおいて、前記凹溝13を、比重0.05〜0.4、好ましくは0.1〜0.3の、該ドアウエザーストリップよりも低比重であるところの低比重柔軟弾性材16を付設したことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の自動車用ドアウエザーストリップ10は、自動車のドア本体1に取付けられ、ボディパネル2に弾接する中空シール部14の他に、該中空シール部よりも車外側で当該ボディパネル2に弾接するボディ側アウターリップ11と、ドア本体1の内面に弾接するドア側アウターリップ12の二つのアウターリップを有し、両者の間部分である見切り部Pに凹溝13を形成したドアウエザーストリップにおいて、前記凹溝13を、比重0.05〜0.4、好ましくは0.1〜0.3の、該ドアウエザーストリップよりも低比重であるところの低比重柔軟弾性材16を付設してなり、前記低比重柔軟弾性材16は、合成樹脂、ゴム、繊維またはそれらの組合わせで形成されたものであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載の自動車用ドアウエザーストリップ10は、請求項1および2に記載の発明において、低比重柔軟弾性材16が、ドアウエザーストリップを押出成形する際に同時押出成形された合成樹脂又はゴムであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載のドアウエザーストリップ10は、見切り部Pに形成した凹溝13に、低比重柔軟弾性材16をドア閉後には該凹溝13が確実に埋まって無くなるように付設したので、雨天走行時に凹溝13に雨水が溜まり、その雨水が飛散してサイドウインドウガラス3に付着し、そこからの視界を妨げるといった問題を解決することができる。
【0013】
また、低比重柔軟弾性材16は柔軟性に富むので、ドア閉時にボディパネル2に弾接したボディ側アウターリップ11は従来通り容易に弾性変形することができる。従って、ボディ側アウターリップ11を同一材料で肉厚に設定する場合と異なり、良好なドア閉じ性を維持することができる。なお、低比重柔軟弾性材16の比重は、0.4を超えると剛性が大きくなり、ドア閉じ性が悪化するので好ましくない。
【0014】
また、ボディ側アウターリップ11の形状はそのまま維持でき、中空部を形成するといった複雑な形状としないので、型成形部を形成する場合に金型構造も簡易なものとすることができ、生産性を良好に維持することができる。
【0015】
さらに、ドア閉後には凹溝13は埋まるので、走行時の風切り音を確実に防止することができると共に、該低比重柔軟弾性材16は外力による変形で体積を小さくすることも可能であるため、ドア閉後に見切り部Pが車外側にはみ出してしまうといったこともない。
【0016】
請求項2に記載の自動車用ドアウエザーストリップ10は、請求項1に記載の発明と同様に、凹溝13に溜まって水が飛散して、サイドウインドウガラスに付着し、そこからの視界を悪くするといったことがない。また、ドア閉じ性と生産性を良好に維持することができる。さらに、異音の発生や見切り部Pのはみ出しも未然に防止することができる。
【0017】
また、低比重柔軟弾性材16を、合成樹脂、ゴム、繊維あるいはそれらの組合わせで形成するので、ボディ側アウターリップ11の肉厚や形状等に対応して、最も適切な材料を選択し、上記の効果を効率的に発揮させることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1および2に記載の発明と同様の効果を発揮する。また、低比重柔軟弾性材16は、ドアウエザーストリップ10を押出成形する際に同時押出成形するので、効率的な製造が可能となり、生産性の向上に貢献する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る自動車用ドアウエザーストリップ10の実施形態を、図1および図6〜図9に示す。図6を参照して本実施形態1に係るドアウェザーストリップについて説明する。これは、自動車のドア本体1に取付けられるもので、当該ドア本体1に組付く基底部15と、ボディパネル2に弾接する中空シール部14と、当該ボディパネル2の車外側に弾接するボディ側アウターリップ11と、該ボディ側アウターリップ11の根元から枝分かれし、ドア本体1の内面に弾接するドア側アウターリップ12を有する。また、ボディ側アウターリップ11とドア側アウターリップ12の間部分であり、外から視覚される部分である見切り部PにV字形の凹溝13を形成している。なお、ボディパネル2には、ドア本体1に弾接するボディフランジウエザーストリップ4を取り付けている。
【0020】
そして、この凹溝13を、比重0.25の低比重柔軟弾性材(ゴム)16を付設して埋めている。なお、本実施形態における付設は、ボディ側アウターリップ11のボディパネル2に弾接する先端部11a、およびドア側アウターリップ12のドア本体1に弾接する先端部12aを露出した状態で、かつ、低比重柔軟弾性材16の表面をドア外壁面5に対して略平行とした状態でドア開時でも既に該凹溝13が埋まって無くなっている。両先端部11a,12aを露出させたのは、その弾力性を確保して、ボディパネル2およびドア本体1に対する密着性を良好に保つためである。また、低比重柔軟弾性材16の表面をドア外壁面5に対して略平行としたのは、見切り部Pの見栄えを良好に保つためである。なお、凹溝13の充填の程度は、本実施形態のものに限定されるものではなく、それより少なく、または多くすることができる。また、ボディ側アウターリップ11及びドア側アウターリップ12の厚みTは、ドア閉時のドア閉じ性に応じて薄くすることもできる。
【0021】
次に図7を参照して本実施形態2に係るドアウェザーストリップについて説明する。図7は、凹溝13に、比重0.25の低比重柔軟弾性材(ゴム)16を付設しているが、実施形態1とは低比重柔軟弾性材(ゴム)16を付設する量が異なり、且つ、付設する部位を限定している。
【0022】
本実施形態2では、ボディ側アウターリップ11の側面に低比重柔軟弾性材(ゴム)16を付設している。付設する量は、ドア閉後にボディ側アウターリップ11とドア側アウターリップ12の隙間が埋まって無くなる程度に調整されている。
【0023】
次に図8を参照して本実施形態3に係るドアウェザーストリップについて説明する。図8は、凹溝13に、比重0.25の低比重柔軟弾性材(ゴム)16を付設しているが、実施形態2とは付設する部位が異なる。
【0024】
本実施形態3では、ドア側アウターリップ12の側面に低比重柔軟弾性材(ゴム)16を付設している。付設する量は、ドア閉後にボディ側アウターリップ11とドア側アウターリップ12の隙間が埋まって無くなる程度に調整されている。
【0025】
次に図9を参照して本実施形態4に係るドアウェザーストリップについて説明する。図9は、凹溝13に、比重0.25の低比重柔軟弾性材(ゴム)16を付設しているが、実施形態2及び3とは低比重柔軟弾性材(ゴム)16を付設する量と部位が異なる。
【0026】
本実施形態4では、ボディ側アウターリップ11とドア側アウターリップ12の隙間の略中央部に凹溝13の底辺から低比重柔軟弾性材(ゴム)16をボディ側アウターリップ11とドア側アウターリップ12に略平行に付設している。付設する量は、ドア閉後にボディ側アウターリップ11とドア側アウターリップ12の隙間が埋まって無くなる程度に調整されている。
【0027】
本実施形態2乃至4に係るドアウェザーストリップ10は、見切り部Pに形成した凹溝13に、低比重柔軟弾性材16を、ドア閉じ後には凹溝13が無くなるように付設したので、雨天走行時に凹溝13に雨水が溜まり、その雨水が飛散してサイドウインドウガラス3に付着し、そこからの視界を妨げるといった事態を未然に阻止することができる。
【0028】
また、本実施形態2乃至4は、実施形態1のように、凹溝13全体を低比重柔軟弾性材16で充填して埋めておらず、ドア開時には凹溝13が形成されているので、実施形態1と比較してドア閉時の抵抗が少なく、従って、良好なドア閉じ性を維持することができる。
【0029】
また、本実施形態1乃至4における低比重柔軟弾性材は、ウエザーストリップを押出成形する際に、同時押出成形している。これによって、効率的な製造を可能とし、生産性の向上を図っている。なお、低比重柔軟弾性材16は、同時押出成形する代わりに、先に成形しておいて、ウエザーストリップ押出成形の際に付加する方法や、ウエザーストリップを押出して加硫後に再度押出機を設置してここで押出成形する方法、または別体成形した後、接着剤で凹溝13に貼着することもできる。
【0030】
本実施形態1乃至4においては、比重0.25の低比重柔軟弾性材(ゴム)16を使用しているが、そのモジュラス値は、100%伸長時にJISK6251でテストを行った結果86kPaであることを確認した。これは、同様のテストにおいて通常のスポンジゴム材(比重0.53)のモジュラス値(950kPa)と比較して1/11程度と大幅に低く、柔軟性に富むものである。
【0031】
本実施形態1乃至4に係る自動車用ドアウエザーストリップ10は、見切り部Pに形成した凹溝13に、低比重柔軟弾性材16を付設しているので、雨天走行時に凹溝13に雨水が溜まり、その雨水が飛散してサイドウインドウガラス3に付着し、そこからの視界を妨げるといった事態を未然に阻止することができる。
【0032】
また、低比重柔軟弾性材16は柔軟性に富むので、ドア閉時にボディパネル2に弾接したボディ側アウターリップ11は容易に弾性変形することができる。従って、良好なドア閉じ性を維持することができる。
【0033】
また、ボディ側アウターリップ11の形状を同一材料で肉厚を大きくしたり、中空部を形成したりせず、従来同様に肉薄のまま維持するので、良好なドア閉じ性を維持し、生産性の低下を未然に防止することができる。
【0034】
さらに、低比重柔軟弾性材16で凹溝13を付設しているので、走行時の風切り音を確実に防止することができると共に、ドア閉後に見切り部Pが車外側にはみ出してしまうといったこともない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】ドアウエザーストリップを取り付けた自動車を示す側面図である。
【図2】従来例に係るドアウエザーストリップを示すもので、図1におけるX−X線断面図である。
【図3】他の従来例に係るドアウエザーストリップを示すもので、図1におけるX−X線断面図である。
【図4】他の構造のドアウエザーストリップを示すもので、図1におけるX−X線断面図である。
【図5】さらに他の構造に係るドアウエザーストリップを示すもので、図1におけるX−X線断面図である。
【図6】本発明に係るドアウエザーストリップの実施形態1を示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図7】本発明に係るドアウエザーストリップの実施形態2を示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図8】本発明に係るドアウエザーストリップの実施形態3を示すもので、図1のX−X線断面図である。
【図9】本発明に係るドアウエザーストリップの実施形態4を示すもので、図1のX−X線断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 ドア本体
2 ボディパネル
3 サイドウインドウガラス
4 ボディフランジウエザーストリップ
5 ドア外壁面
10 ドアウエザーストリップ
11 ボディ側アウターリップ
11a 先端部
12 ドア側アウターリップ
12a 先端部
13 凹溝
14 中空シール部
15 基底部
16 低比重柔軟弾性材
20 ドアウエザーストリップ
21 ボディ側アウターリップ
22 ドア側アウターリップ
23 中空シール部
24 凹溝
30 ドアウエザーストリップ
31 ボディ側アウターリップ
31a 先端部分
40 ドアウエザーストリップ
41 ボディ側ウエザーストリップ
42 凹溝
50 ドアウエザーストリップ
51 ボディ側ウエザーストリップ
51a 中空部
52 凹溝
P 見切り部
S 空間部
T リップ11及び12の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドア本体(1)に取付けられ,ボディパネル(2)に弾接する中空シール部(14)の他に,該中空シール部(14)よりも車外側で該ボディパネルに弾接するボディ側アウターリップ(11)と,ドア本体の内面に弾接するドア側アウターリップ(12)の二つのアウターリップを有し,両者の間部分である見切り部(P)に凹溝(13)を形成したドアウエザーストリップにおいて、前記凹溝を,比重0.05〜0.4,好ましくは0.1〜0.3の、該ドアウエザーストリップよりも低比重であるところの低比重柔軟弾性材(16)を付設したことを特徴とする自動車用ドアウエザーストリップ。
【請求項2】
自動車のドア本体(1)に取付けられ,ボディパネル(2)に弾接する中空シール部(14)の他に,該中空シール部(14)よりも車外側で該ボディパネルに弾接するボディ側アウターリップ(11)と,ドア本体の内面に弾接するドア側アウターリップ(12)の二つのアウターリップを有し,両者の間部分である見切り部(P)に凹溝(13)を形成したドアウエザーストリップにおいて、前記凹溝を,比重0.05〜0.4,好ましくは0.1〜0.3の、該ウエザーストリップよりも低比重であるところの低比重柔軟弾性材(16)を付設しており、前記低比重柔軟弾性材は,合成樹脂,ゴム,繊維またはそれらの組合わせで形成されたものであることを特徴とする自動車用ドアウエザーストリップ。
【請求項3】
低比重柔軟弾性材(16)は、ドアウエザーストリップを押出成形する際に同時押出成形された合成樹脂又はゴムであることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用ドアウエザーストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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