説明

自動車用ドアロック装置

【課題】 側面衝突による衝撃荷重が加わってもケーブルが引っ張られることのない自動車用ドアロック装置を提供する。
【解決手段】 車体に固定されてなるストライカと、ドアに支持され且つ前記ストライカに係合離脱可能なるラッチと、前記ドアの室内側に配された合成樹脂製のドアトリムに支持され且つ室内側から操作可能なるインサイドハンドル2と、該インサイドハンドル2及び前記ラッチを連結してなるケーブルとより少なくとも構成されてなる自動車用ドアロック装置において、前記インサイドハンドル2は、前記ラッチがストライカから離脱しないだけのケーブルに加わった荷重により前記ドアトリムから離脱可能 取付部材12により支持されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ドアロック装置としては、例えば、車体に固定されてなるストライカと、ドアに支持され且つ前記ストライカに係合離脱可能なるラッチと、前記ドアの室内側に配された合成樹脂製のドアトリムに支持され且つ室内側から操作可能なるインサイドハンドルと、該インサイドハンドル及び前記ラッチを連結してなるケーブルとより少なくとも構成されてなる。そして、インサイドハンドルの操作手段を室内側から回転させると、ケーブルが引っ張られて移動し、ラッチを回転させることで、ストライカからラッチが離脱し、ドアが開成可能となる(例えば、特許文献1。)。
【特許文献1】特開平11一198655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる自動車用ドアロック装置を搭載した自動車の横に他車が衝突する、所謂側面衝突による衝撃荷重が加わった場合、自重に食込む他車によりケーブルが引っ張られるおそれがあり、かかる場合、インサイドハンドルの操作手段が恰も回転操作されたのと同じ現象が生じ、ラッチがストライカから離脱するおそれがある。
【0004】
本発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、側面衝突による衝撃荷重が加わってもケーブルが引っ張られることのない自動車用ドアロック装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、車体に固定されてなるストライカと、ドアに支持され且つ前記ストライカに係合離脱可能なるラッチと、前記ドアの室内側に配された合成樹脂製のドアトリムに支持され且つ室内側から操作可能なるインサイドハンドルと、該インサイドハンドル及び前記ラッチを連結してなるケーブルとより少なくとも構成されてなる自動車用ドアロック装置において、前記インサイドハンドルは、前記ラッチがストライカから離脱しないだけのケーブルに加わった荷重により前記ドアトリムから離脱可能な取付部材により支持されてなることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の自動車用ドアロック装置であって、前記取付部材は、前記ドアトリムの車外側の面より突設されてなると共に前記インサイドハンドルが支持可能な面が形成されてなるボスと、該ボスの根元のドアトリムに形成されてなる脆弱部とより構成されてなることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の自動車用ドアロック装置であって、前記取付部材は、前記ドアトリムの車外側の面より突設されてなるボスに支持され且つ前記ケーブルに連結されてなる操作手段を支持してなるハウジングと、該ハウジングより突出され且つ前記ボスの支持面に固定されてなる支持部とよりなり、該支持部に脆弱部が形成されてなることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の自動車用ドアロック装置であって、前記取付部材は、前記ドアトリムの車外側の面より突設され且つ前記インサイドハンドルが係合支持が可能な爪が形成されてなると共に脆弱部が形成されてなる支持部材と、前記ケーブルに連結されてなる操作手段を支持してなり且つ前記支持部材の爪に係合されてなるハウジングとよりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ラッチがストライカから離脱しないだけのケーブルに加わった荷重により、前記ドアトリムからインサイドハンドルの取付部材が離脱するため、ケーブルに張力が加わらず、ラッチがストライカから離脱してしまうことが確実に防止できることになる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、ドアトリムの車外側の面より突設されてなると共にインサイドハンドルが支持可能な面が形成されてなるボス状の取付部材は、該取付部材の根元の脆弱部が、ラッチが回転しないだけのケーブルに加わった荷重により破壊してドアトリムから離脱するため、ケーブルに張力が加わらず、ラッチがストライカから離脱してしまうことが確実に防止できることになる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、前記取付部材は、前記ドアトリムの車外側の面より突設されてなるボスに支持され且つ前記ケーブルに連結されてなる操作手段を支持してなるインサイドハンドルと、該インサイドハンドルより突出され且つ前記ボスの支持面に固定されてなる支持部とよりなり、該支持部に脆弱部が形成されてなるため、該取付部材の支持部の脆弱部が、ラッチがストライカから離脱しないだけのケーブルに加わった荷重により破壊してインサイドハンドルドアトリムから離脱するため、ケーブルに張力が加わらず、ラッチがストライから離脱してしまうことが確実に防止できることになる。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、ドアトリムの車外側 面より突設され且つインサイドハンドルが係合支持が可能な爪が形成されてな と共に脆弱部が形成されてなる取付部材は、該取付部材の脆弱部が、ラッチがストライカから離脱しないだけのケーブルに加わった荷重により破壊してドアトリムから離脱するため、ケーブルに張力が加わらず、ラッチがストライカから離脱してしまうことが確実に防止できることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
側面衝突による衝撃荷重が加わってもケーブルが引っ張られることのない自動車用ドアロック装置を提供する、という目的を、車体に固定されてなるストライカと、ドアに支持され且つ前記ストライカに係合離脱可能なるラッチと、前記ドアの室内側に配された合成樹脂製のドアトリムに支持され且つ室内側から操作可能なるインサイドハンドルと、該インサイドハンドル及び前記ラッチを連結してなるケーブルとより少なくとも構成されてなる自動車用ドアロック装置において、前記インサイドハンドルは、前記ラッチがストライカから離脱しないだけのケーブルに加わった荷重により前記ドアトリムから離脱可能な部材により支持されてなることで、実現した。
【実施例1】
【0014】
本発明の第1実施例を、図1〜図5に基づいて説明する。図1はドアトリム1にインサイドハンドル2を設けた状態を示す斜視図であり、図2は図1のインサイドハンドル2を示す斜視図であり、図3は図1のIII−III線に沿った断面図であり、図4は図3の矢視IVにかかる拡大正面図であり、図5は図3の状態からボス等が離脱した状態を示す作用説明断面図である。
【0015】
自動車のドア3には、自動車用ドアロック装置4が配されている。該自動車用ドアロック装置4は、図示しない車体であるセンターピラーやりアピラーに固定されてなるストライカに係合離脱可能なるラッチ5と、前記ドア3の室内側に配された合成樹脂製のドアトリム1に支持され且つ室内側から操作可能なるインサイドハンドル2と、該インサイドハンドル2及び前記ラッチ5を連結してなるケーブル6とより少なくとも構成されてなる。この他に自動車用ドアロック装置4としては、防盗装置や電気式ロック手段などがある。
【0016】
前記インサイドハンドル2は、前記ドア3の図示しない関口に没入されてなるPOMなどの合成樹脂製のハウジング7と、該ハウジング7内に回転自在に軸支され且つ常時図示しないスプリングによりハウジング7内に付勢されてなる「操作手段」であるレバー8と、前記ハウジング7の前後位置に配されてなる支持部9、9とより構成されてなる。支持部9には、後述するビス14の下穴16が形成されている。
【0017】
前記ドアトリム1は、PPCなどの合成樹脂製の芯材10と、該芯材10の室内側を覆うクロス或いはポリ塩化ビニルなどの合成樹脂製の表皮11とより重層的に構成されてなる。前記芯材10の車外側の面には、「取付部材」であるボス12が突設形成されてなる。該ボス12の自由端部の面12aには、前記インサイドハンドル2の支持部9が当接して、該面12aに形成された下穴12bに螺合されてなるビス14により前記インサイドハンドル2の支持部9が支持されてなる。該ボス12の根元周囲のドアトリム1の芯材10には、前記ラッチ5がストライカから離脱しないだけのケーブル6に加わった荷重により前記芯材10から離脱可能なる「脆弱部」である肉抜き部13が形成されてなる。
【0018】
前記肉抜き部13は、図4に示すように、ボス12の周面の三方を囲むように形成されてなる周縁部13aと、前記ハウジング7の支持部9の上辺9a、下辺9b、自由端辺9cに直角な方向にそれぞれ切り込まれるように形成されてなる切り込み部13bとよりなる。
【0019】
前記ボス12の周面と、前記肉抜き部13の切り込み部13bとの間には、前記ボス12を支えるリブ15,15,15が形成されてなる。
【0020】
この実施例に係るインサイドハンドル2は、以上説明した如く、ラッチ5がストライカから離脱しないだけのケーブル6に加わった荷重により、前記ドアトリム1の芯材10からインサイドハンドル2のハウジング7の支持部9を支持したボス12の根元が図5に示すように離脱するため、ケーブル6に張力が加わらず、ラッチ5がストライカから離脱してしまうことが確実に防止できることになる。
【0021】
ドアトリム1の芯材10の車外側の面より突設されてなると共にインサイドハンドル2のハウジング7の支持部9が支持可能な面12aが形成されてなるボス12は、該ボス12の根元の肉抜き部13が、他車が自車の側面に衝突する所謂側突時に、食い込んできた他車によりラッチ5がストライカから離脱しないだけのケーブル6に加わった荷重により破壊することで、ボス12がドアトリム1の芯材10から難脱するため、ケーブル6に張力が加わらず、ラッチ5がストライカから離脱してしまうことが確実に防止できることになる。
【実施例2】
【0022】
本発明の第2実施例を、図6に基づいて説明する。第1実施例との構成上の相違点は、取付部材がインサイドハンドルの支持部に形成されてなることである。
【0023】
インサイドハンドル20は、前記ドア3(図1参照)の図示しない開ロに没入されてなるPOMなどの合成樹脂製のハウジング21と、該ハウジング21内に回転自在に軸支され且つ常時図示しないスプリングによりハウジング21内に付勢されてなる「操作手段」であるレバー8と、前記ハウジング21の前後位置に配されてなる「取付部材」である支持部22、22とより構成されてなる。支持部22には、前記下穴16と同様の下穴が形成されている。
【0024】
前記ドアトリム1の芯材10の車外側の面に突設形成されてなるボス12の自由端部の面12a(図3参照)には、前記インサイドハンドル20の「取付部材」である支持部2 2が当接して、該面12aに形成された下穴12b(図3参照)に螺合されてなるビス14により前記インサイドハンドル20の支持部22が支持されてなる。前記支持部22,22には、「脆弱部」であるスリット23,23が形成されてなる。
【0025】
この実施例に係るインサイドハンドル20は、以上説明した如く、ラッチ5がストライカから離脱しないだけのケーブル6に加わった荷重により、前記ドアトリム1の芯材10のボス12に支持されてなるインサイドハンドル20のハウジング21の支持部22がスリット23から離脱するため、ケーブル6に張力が加わらず、ラッチ5がストライカから離脱してしまうことが確実に防止できることになる。
【実施例3】
【0026】
本発明の第3実施例を、図7に基づいて説明する。第1実施例との構成上の相運点は、取付部材がインサイドハンドルに係合する支持部で形成されてなることである。
【0027】
インサイドハンドル25は、前記ドア3(図1参照)の図示しない開口に没入されてなるPOMなどの合成樹脂製のハウジング26と、該ハウジング26内に回転自在に軸支され且つ常時図示しないスプリングによりハウジング26内に付勢されてなる「操作手段」であるレバー8と、前記ハウジング26の前後位置に配されてなる支持部27,27とより構成されてなる。支持部27には、下穴28が形成されている。
【0028】
前記ドアトリム1は、図3に示すように、PPCなどの合成樹脂製の芯材10と、該芯材10の室内側を覆うクロス或いはポリ塩化ビニルなどの合成樹脂製の表皮11とより重層的に構成されている。前記芯材10の車外側の面には、「取付部材」である係止爪29が突設形成されてなる。該係止爪29は、前記ドアトリム1の車外側の面より突設され且つ前記インサイドハンドル25の下穴28に係合支持が可能な爪30が形成されてなると共に「脆弱部」であるスリット31が係止爪29の周囲に囲繞されるように形成されている。
【0029】
この実施例に係るインサイドハンドル25は、以上説明した如く、ラッチ5がストライカから離脱しないだけのケーブル6に加わった荷重により、前記ドアトリム1の芯材10の係止爪29にインサイドハンドル2 5のハウジング2 6の支持部27の下穴28が支持されて、係止爪29がスリット31で破断することで芯材10からインサイドハンドル25のハウジング26が離脱するため、ケーブル6に張力が加わらず、ラッチ5がストライカから離脱してしまうことが確実に防止できることになる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
前記実施例の操作手段は、レバーを用いて説明したが、これに限定されるものではなく、ハンドルやダイヤルやスイッチでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施例に係るドアトリムにインサイドハンドルを設けた状態を示す斜視図。
【図2】図1のインサイドハンドルを示す斜視図。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図。
【図4】図3の矢視IVにかかる拡大正面図。
【図5】図3の状態からボス等が離脱した状態を示す作用説明断面図。
【図6】本発明の第2実施例に係る図2相当斜視図。
【図7】本発明の第3実施例に係る図2相当斜視図。
【符号の説明】
【0032】
1 ドアトリム
2,20,25 インサイドハンドル
3 ドア
4 自動車用ドアロック装置
5 ラツチ
6 ケーブル
7,21,26 ハウジング
8 レバー(操作手段)
9,27 支持部
10 芯材
12 ボス(取付部材)
12a 面
12b、28 下穴
13 肉抜き穴(脆弱部)
22 支持部(取付部材)
23,31 スリット(脆弱部)
29 係止爪(支持部材)
30 爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固定されてなるストライカと、ドアに支持され且つ前記ストライカに係合離脱可能なるラッチと、前記ドアの室内側に配された合成樹脂製のドアトリムに支持され且つ室内側から操作可能なるインサイドハンドルと、該インサイドハンドル及び前記ラッチを連結してなるケーブルとより少なくとも構成されてなる自動車用ドアロック装置において、
前記インサイドハンドルは、前記ラッチがストライカから離脱しないだけのケーブルに加わった荷重により前記ドアトリムから離脱可能な取付部材により支持されてなることを特徴とする自動車用ドアロック装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動車用ドアロック装置であって、
前記取付部材は、前記ドアトリムの車外側の面より突設されてなると共に前記インサイドハンドルが支持可能な面が形成されてなるボスと、該ボスの根元のドアトリムに形成されてなる脆弱部とより構成されてなることを特徴とする自動車用ドアロック装置。
【請求項3】
請求項1に記載の自動車用ドアロック装置であって、
前記取付部材は、前記ドアトリムの車外側の面より突設されてなるボスに支持され且つ前記ケーブルに連結されてなる操作手段を支持してなるインサイドハンドルと、該インサイドハンドルより突出され且つ前記ボスの支持面に固定されてなる支持部とよりなり、該支持部に脆弱部が形成されてなることを特徴とする自動車用ドアロック装置。
【請求項4】
請求項1に記載の自動車用ドアロック装置であって、
前記取付部材は、前記ドアトリムの車外側の面より突設され且つ前記インサイドハンドルが係合支持が可能な爪が形成されてなると共に脆弱部が形成されてなる支持部材と、前記ケーブルに連結されてなる操作手段を支持してなり且つ前記支持部材の爪に係合されてなるハウジングとよりなることを特徴とする自動車用ドアロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−15624(P2007−15624A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200789(P2005−200789)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】